(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】踏み間違え暴走防止システム及びアクセル・ブレーキ変換装置
(51)【国際特許分類】
B60K 28/10 20060101AFI20241030BHJP
B60K 26/02 20060101ALI20241030BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20241030BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20241030BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20241030BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20241030BHJP
B60W 10/184 20120101ALI20241030BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B60K28/10 Z
B60K26/02
B60W30/09
B60W10/00 120
B60W10/06
B60W10/184
F02D29/02 311
(21)【出願番号】P 2022517466
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2021016102
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2020204087
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520485930
【氏名又は名称】日本反射器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 重樹
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-194088(JP,A)
【文献】特開2013-056653(JP,A)
【文献】登録実用新案第3145455(JP,U)
【文献】特開2017-200811(JP,A)
【文献】特開2020-185978(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106427562(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 28/10
B60K 26/02
B60W 30/09
B60W 10/04
B60W 10/06
B60W 10/184
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル動作では、アクセルポジションセンサーを介し
てアクセルペダルのポジションの信号を受けてスロットル駆動
手段又はモータ駆動手段を作動させる、非踏込み初期位置に向けて付勢されるアクセルペダルを備え、アクセルペダルの動作に関係してスロットル開度又はモータ駆動の調整動作を操作させる自動車において、
通常加速時に必要な踏み込み力でアクセルペダルを動作させるアクセル機構を、ブレーキを稼働させる非常動作基板
である傾動板上に設け、該ブレーキ稼働のための非常動作基板
である傾動板を通常のアクセルペダルの少なくとも3倍以上の踏み込みばね荷重で動作するように構成し、該非常動作基板
である傾動板を踏み込み荷重が通常のアクセル踏み込み力の3倍以上の、踏み込み力でのみ動作するようにし、通常のアクセルペダルの踏み込み力での動作ではブレーキが稼働せず、非常時の踏み間違え動作で、踏み込み力が通常の3倍以上であったときに、これを受けて上記非常動作基板
である傾動板が動作し、上記スロットル駆動手段
又はモータ駆動手段を停止させる一方、ブレーキ駆動手段を作動させ、通常ブレーキ及び/又は電動パーキングブレーキを作動させることを特徴とす
る踏み間違え誤操作暴走防止システム。
【請求項2】
請求項1
の踏み間違え誤操作暴走防止システムを、その他の衝突防止システムと組み合わせる請求項1記載の複合踏み間違え誤操作暴走防止システム。
【請求項3】
アクセルペダルの踏み間違え誤操作による暴走を防止する装置であって、
車体側の固定構造部分に取付けられるベース板(10)と、
上記ベース板(10)に傾動可能に枢支され、第1のばね部材により所定の初期位置に付勢された傾動板(11)と、
該傾動板(11)に揺動可能に設けられ、第2のばね部材によりアクセルペダルの所定の非踏込み初期位置に向けて揺動付勢されたアクセルペダル(12)と、
上記第1のばね部材と第2のばね部材の付勢力を調整し、
上記アクセルペダル(12)の稼働領域に、所定の強さ以下の、所定の踏込み角度以下で踏込まれるときに動作可能な第2のばね部材で付勢されるアクセル動作領域(27)と、上記アクセルペダル(12)が所定の強さ以上の、踏込み角度以上で踏み込まれるとき、動作可能な第1のばね部材で付勢される重負荷ブレーキ領域(28)とを備え、
上記重負荷ブレーキ領域(28)で上記傾動板(11)の傾動動作を検知するブレーキセンサー(17)と、上記アクセル動作領域でアクセルペダル(12)の踏込み角度を検知するアクセル装置内蔵のアクセルポジションセンサー(13)と、該アクセルポジションセンサー(13)の信号を受けてスロットル駆動又はモータ駆動手段を作動させる一方、上記ブレーキセンサー(17)の信号を受け、上記スロットル駆動又はモータ駆動手段を停止させ、ブレーキ駆動手段を作動させるエンジンコントロールユニットとで構成され、互いに協働するアクセル・ブレーキ動作変換機構と、
を備えたことを特徴とするアクセルペダルのアクセル・ブレーキ動作変換装置。
【請求項4】
上記第1のばね部材であるばね部材(15、25)の弾性力に抗して上記傾動板(11)を初期位置に係止するストッパー(16)を備える請求項3に記載のアクセルペダルのアクセル・ブレーキ動作変換装置。
【請求項5】
上記傾動板(11)を初期位置に保持するばね部材は、上記ベース板(10)に立設されたばね取付けステー(14)と上記傾動板(11)の間に張架されたコイルばね(15)である請求項
3記載のアクセルペダルのアクセル・ブレーキ動作変換装置。
【請求項6】
上記傾動板(11)を初期位置に保持するばね部材は、上記ベース板(10)の前部と上記傾動板(11)の前部の間に圧接して介設された板ばね(25)又はコイルばね(25)である請求項3記載の
アクセルペダルのアクセル・ブレーキ動作変換装置。
【請求項7】
上記アクセルペダルの稼働領域にアクセル動作領域とブレーキ動作領域とを連続して設け、両者の間に重負荷壁が形成されるようにアクセル動作領域に低負荷抵抗を、ブレーキ動作領域に重負荷抵抗を付与する二種の強度からなる電磁石ブレーキを設けてなる請求項3記載の
アクセルペダルのアクセル・ブレーキ動作変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パニック等で誤ってアクセルペダルの踏み込みとなる誤動作が起こった途端、安全のため、アクセル機能を遮断し、ブレーキ機能に変換するシステム及びそれを実施するアクセル・ブレーキ変換ペダル装置に関し、特に通常の加速操作では誤動作なくアクセル動作を行うことができる一方、運転者がパニックになって誤ってアクセルを更に大きく強く踏み込んだときにはそれを検知し、アクセル動作を遮断し、ブレーキ機能に自動的に変換できるようにする踏み間違え暴走防止システム及びそれを実施するアクセル・ブレーキ変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
初心者や高齢者が車両を運転する場合、アクセルペダルを踏み込んだときに予想外の発進スピードになると、その恐怖心から全身が硬直してしまうことがある。
また、走行中に何らかの誤操作によりブレーキペダルと勘違いしてアクセルペダルを踏み込む誤操作してしまうと、運転者の気持ちに反して逆に速度が速くなり、ブレーキをかけるべくアクセルペダルをさらに踏み込んでしまうことがある。
【0003】
かかる状況ではアクセルペダルに置いたままの足も突っ張っており、アクセルペダルを無意識に最大踏み込みフルスロットル操作(電動車ではモータ全出力に相当)することになり、障害物に衝突するまで停止せず、人身事故を起こすことが懸念される。これに対し、アクセルペダルの誤踏込みによる障害物に対する衝突を回避し、人身事故を確実に防止できるようにした装置が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0004】
例えば、ブレーキベダルのアームをアクセルベダルのアームと伝達部材によって連携させ、アクセルベダルのアームの踏込み角度が通常の踏込み範囲の最大角度を超えた角度に踏み込まれたときに、ブレーキペダルのアームをアクセルペダルのアームとともに踏込み方向に揺動させてブレーキをかけ、次いでアクセルペダルのアームの踏込み角度がさらに大きくなると、アクセルペダルのアームとスロットルバルブとの接続を解除してアクセルを戻し、車両の暴走を抑制するようにした装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3217039号公報
【文献】特許第4598207号公報
【文献】特許第5355800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の装置ではアクセルペダルが一定位置以上に大きく踏込まれたときにブレーキペダルのアームが連携されてブレーキが作動され、次いでアクセルワイヤーが戻されるようになっているので、運転者が加速を行おうとしてアクセルペダルを強く踏込んだ時にブレーキがかかって運転者がパニックを起こすおそれがある。
【0007】
なお、特許文献2記載の装置では足を傾けてペダルを踏込む必要があるので、運転中に不自然な姿勢を強いられ、絶えずアクセルペダルを操作していることに気をつけていないと、運転者が意図的な加速を行うためにペダルを強く踏込んだ場合にブレーキがかかることになり、場合によって急ブレーキとなって運転者がパニックを起こすおそれがある。
【0008】
また、特許文献3記載の装置ではアクセルからブレーキへの変化の境界がなく、自然と深く踏み過ぎるとブレーキとなる。このため、運転者が意図的な加速を行うためにペダルを強く踏み込むとブレーキがかかることになり、場合によっては急ブレーキとなって運転者がパニックを起こすおそれがある。
【0009】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑み、通常の加速操作を誤動作なく安全に行うことができる一方、パニックになってアクセルペダルを誤って更に大きく強く踏み込んだときにのみブレーキ動作を実行する、即ち、通常アクセル動作ではブレーキ作動の誤動作を避け、踏み間違えによるアクセル動作による暴走を防止するシステム及びそれを実現するアクセル・ブレーキ変換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
踏み間違えによるアクセル動作による暴走は、パニック動作であって、通常の考えでは防止することが難しい。なぜなら、通常運転者が踏み変えなければならないアクセル動作とブレーキ動作を自動車自体が識別し、防止してやらねばならないからである。踏み間違えによる過剰なアクセル動作を、ブレーキ動作へ変換するものであるので、アクセル動作をブレーキ動作に変換する動作にあたっては、運転者がパニックで識別できない、通常のアクセル動作と誤作動のアクセル動作を識別し、アクセルとは反対のブレーキ機能を発揮させる必要がある、すなわち、誤作動のアクセル操作を停止してブレーキ機能を発揮させる必要がある。そこで、本発明者はパニック状態では身体が硬直してアクセル動作からブレーキ動作に移ることが難しく、逆にアクセル動作を拡張して大事故につながる場合が多いことに着目し、鋭意研究の結果、アクセルペタルの稼働範囲に通常のアクセル動作領域と非常時のブレーキ動作領域との二種類の動作領域を設定し、通常のアクセル動作ではアクセル領域で稼働させる一方、通常のアクセル動作ではブレーキ動作領域に入ることなく、誤動作により通所の踏み込み動作より強く踏み込むときのみ、ブレーキ動作領域に入ることができるように、アクセルペダルの稼働領域毎に稼働負荷抵抗力又は稼働付勢力を変化させた。即ち、通常のアクセル動作荷重とブレーキ動作開始荷重の差を倍、好ましくは3倍以上に大きくしてやると、非常時のみに限り、アクセルペダルの踏み込みがアクセル領域を超えることとなり、アクセル動作が逆のブレーキ動作に変換されるようになる。そして、当事者が誤動作を起こしても過大なアクセル動作が起こず、誤動作という操作ミスが事故につながらないことを見出した。
本発明はかかる知見に基づき、なされたもので、アクセルペダルの揺動する稼働範囲に、通常加速時に必要な踏み込み力でアクセルペダルを動作させるアクセル動作領域と、そのアクセル動作領域の踏込み角度を超え、通常踏み込み力では動作せず、それより大きい、運転者が明らかに区別できる踏み込み力で動作するブレーキ動作領域を設け、上記アクセルペダル(12)のアクセル動作領域では、踏込み角度を検知するアクセルポジションセンサー(13)を介して該アクセルペダル(12)のポジションの信号を受けてアクセル動作領域ではスロットル駆動手段(ガソリン及びディーゼル車ではスロットルであるが、電動車ではモータ回転手段に相当する。したがって、本発明では、スロットル駆動手段とは電動車でのモータ回転手段を含む意味として記載される。)を作動させる一方、通常のアクセルペダルの踏み込み力での動作ではアクセルペダルがブレーキ動作領域に入れないようにするとともに、非常時の踏み間違え動作で、万一アクセルペダル(12)がアクセル動作領域を超えてブレーキ動作領域に入ったときは、上記ブレーキ動作領域の踏み込み角度又は位置を検知するブレーキセンサー(17)を介してこの信号を受け、上記スロットル駆動手段を停止させる一方、ブレーキ駆動手段を作動させ、通常ブレーキ及び/又は電動パーキングブレーキを作動させることを特徴とする踏み間違え誤操作暴走防止システムを提供するものである。
【0011】
また、このアクセル・ブレーキ動作変換システムは、以下の装置により実施できる。
第1の具体例である本発明に係るアクセル・ブレーキ変換ペダル装置は、傾動版を介してアクセルペダルの揺動可能な稼働範囲に通常加速時に必要な踏み込み力で可動するアクセル動作領域と、そのアクセル動作領域を超え、通常踏み込み力(3~5kg重)より大きい、2倍以上好ましくは3倍以上の踏み込み力(10~15kg重)で可動するブレーキ動作領域を設けて制御することを要旨とするもので、
アクセルペダルの踏み間違え誤操作による暴走を防止する装置であって、
車体側の固定構造部分に取付けられるベース板(10)と、
上記ベース板(10)に傾動可能に枢支され、第1のばね部材により所定の初期位置に付勢された傾動板(11)と、
該傾動板(11)に揺動可能に設けられ、第2のばね部材によりアクセルペダルの所定の非踏込み初期位置に向けて揺動付勢されたアクセルペダル(12)と、
上記第1のばね部材と第2のばね部材の付勢力を調整し、該アクセルペダル(12)の稼働領域に、所定の踏込み角度以下の、所定の強さ以下で踏込まれるときに動作可能な第2のばね部材で付勢されるアクセル動作領域(27)と、上記アクセルペダル(12)が踏込み角度以上の、所定の強さ以上で踏み込まれるとき、動作可能な第1のばね部材で付勢される重負荷ブレーキ領域(28)とを備え、
上記ブレーキ動作領域(28)で上記傾動板(11)の傾動動作を検知するブレーキセンサー(17)と、上記アクセル動作領域でアクセルペダル(12)の踏込み角度を検知するアクセル装置内蔵のアクセルポジションセンサー(13)と、該アクセルポジションサ(13)の信号を受けてスロットル駆動手段を作動させる一方、上記ブレーキセンサー(17)の信号を受け、上記スロットル駆動手段を停止させ、ブレーキ駆動手段を作動させるエンジンコントロールユニットとで構成され、互いに協働するアクセル・ブレーキ動作変換機構と、
を備えたことを特徴とするアクセルペダルのアクセル・ブレーキ動作変換装置にある。
なお、電動車ではスロットル駆動手段の代わりにモータ駆動手段が用いられるので、モータ駆動手段を制御する電動車にも要旨を変更することなく、適用可能である。
【0012】
上記好ましい第1の態様においては、車体側の固定構造部分に取付けられるベース板に傾動板の一端側部分を傾動可能に枢支し、アクセルペダルがばね部材の付勢力(所定の強さ)以下又は所定の踏込み角度以下に踏み込まれるとき、つまり、第1のばね部材の付勢力によって想定される重負荷壁(
図3参照)を超えない踏込み(普通アクセル領域)のときには第2のばね部材の付勢力によって、好ましくは、ストッパーとともに、傾動板を初期位置に保持し、エンジンコントロールユニットによって公知のスロットル駆動手段を作動させてエンジン(モータ)を駆動する一方、アクセルペダルが第2のばね部材の付勢力(所定の強さ)以上又は所定の踏込み角度以上に踏み込まれたとき、つまり上述の重負荷壁(
図3参照)を超える踏込み(重負荷ブレーキ領域)のときにはアクセルペダルの終了位置、即ち、傾動板の初期位置からの傾動が許容され、ブレーキセンサーで傾動板の傾動動作を検知してエンジンコントロールユニットによってスロットル駆動手段を停止させてエンジンをアイドル状態に戻すとともに、公知のブレーキ駆動手段を作動させてブレーキをかけるようにするのがよい。本発明においては、アクセルペダル12の誤動作を確実に検知してブレーキを作動させるので、傾動板11の付勢力は傾動版11とブレーキスイッチ15の協働動作を確保し、安全動作を確保するのに重要である。
図6では傾動板の側面から傾動板11の動作を受け、圧力スイッチ29を押圧する鍔片30が突出させている。なお、傾動板11は
図5と同様にコイルばね15(第1のばね部材)により重負荷のブレーキ動作領域28を形成するように付勢されている。他方。アクセルペダル12は傾動板11上に、低負荷の、第2のばね部材、すなわち、巻きばね15‘で付勢され、アクセル動作領域27を形成している。
図8では傾動板11の先端にスイッチ押圧ボタン32を下向きに設け、傾動板11の下降により、上向きスイッチ(圧力センサー)31をスィッチングにするようにしている。ここで、圧力センサーは感知圧力が一定時間以上の変動がなければ、運転者の身体的異常と判断し、車を停止させる機能を有している。
図9ではオルガン式アクセルペダル12とは別に傾動板11を設け、ベース板10に設置したコイルばね15で付勢して傾動させ、高負荷壁のブレーキ動作領域28を形成する一方、アクセルペダル12はねじりばね15‘で底負荷壁のアクセル動作領域27を形成する。
【0013】
本発明の第2の好ましい態様においては、上記傾動版を設けずとも、アクセルペダル12の踏み込み角度及び/又は踏み込み力によって、アクセル稼働領域に、アクセル動作領域とブレーキ動作領域を設け、高負荷壁で区分するにあたり、第1及び第2のブレーキ部材15及び15‘のばね常数の違いによって、区分したが、第2の好ましい態様においては、傾動板によらず、これを行う。ブレーキアクセルペダル12の取り付け部から前方に鍔片30を突出させ、これを下方に設けたセンサースイッチ29に当接するようにする一方、アクセルペダル動作を付勢力弱い第2のばね部材15‘と、付勢力の強い第1のばね部材15により行うようにすれば、通常のアクセル動作領域と非常時のブレーキ動作領域とを識別し、通常のアクセル動作の時にブレーキ動作に入ることがなく、非常時のみブレーキ動作を取るように制御することができる。この時、例えば、アクセルペダルの第1の傾動動作を巻き締めばね15’で行い、アクセルペダルの第2の傾動動作をコイルばね15で実行するようにしてもよい。また、アクセル動作の負荷によりアクセル動作領域とブレーキ動作領域を区分するに、第1及び第2ばね部材のばね常数の差異により行う機械的システム以外に、この動作を電磁的システム等の制御で行うこともできる。踏む込み力の差による動作領域の識別は最も安全な識別作用であるが、これに動作量又は動作角度を取り入れることはより操作の安全性を高めることができる。
【0014】
これにより、運転者がパニックになってアクセルペダルを更に大きく強く踏み込んだ場合には自動的に確実にブレーキをかけることができるので、車両の暴走を抑制することができる。本発明の装置は、その他の衝突防止システム又は装置と組み合わせて障害物への衝突を防止し、人身事故を起こすことがないようにすることができる。
要するに、通常の加速操作ではブレーキ動作に入ることを制限し、非常時の不可避な動作による誤動作でアクセル加速動作が起こらないようにすることが肝要であり、アクセル稼働領域に通常のアクセル動作領域と非常時のブレーキ操作領域を識別できるように設けることが誤操作という非常時を検知し、誤動作による非常時のパニック動作による事故を回避することになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るアクセル・ブレーキ複合変身ペダル装置の好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
【
図2】上記実施形態の構造を示す概略斜視図である。
【
図3】上記実施形態における要部の構成を示す側面図である。
【
図5】第2の実施形態におけるアクセル・ブレーキ変換装置の変形例を示す概略側面図である。
【
図6】巻きばねで付勢したアクセルペタルをコイルばねで付勢した傾動板上に設置し、傾動板の側部からブレーキスイッチを押圧する鍔片を突出させた実施形態の斜視図である。
【
図7】
図6の傾動板をなくした場合の第1の変形例である。
【
図10】本発明の暴走防止システムの典型的なフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1ないし
図3は本発明に係るアクセル・ブレーキ変換装置の好ましい第1実施形態を示す。図において、ベース板10は車体フロア(車体側の固定構造部分)に取付けられ、ベース板10の一端側には傾動板11が傾動可能に枢支されている。
【0017】
傾動板11にはアクセルポジションセンサー内蔵のアクセル装置13が取付けられ、アクセル装置13にはアクセルペダル12のロッドの一端部が揺動可能に枢支され、アクセルペダル12のロッドはばね部材(図示せず)によって非踏込み位置に向けて揺動付勢されるとともに、ストッパー(図示せず)によって非踏込み位置に位置決め係止され、アクセルポジションセンサーによってアクセルペダル12の踏込み動作、具体的には踏込み量及び踏込み速度が検知されるようになっている。
【0018】
また、ベース板10の後部には左右のばね取付け用ステー14が起立して設けられ、ばね取付け用ステー14と傾動板11の前部の間にはコイルばね15が張架される一方、ベース板10には逆L字状のストッパー16が固定され、ストッパー16はコイルばね15の付勢力に抗してベース板10を初期位置に位置決め係止するようになっている。
【0019】
さらに、ベース板10にはブレーキセンサー17が設けられ、ブレーキセンサー17のロッド18が傾動板11の逆L字状レバー19の下側に差し込まれるなどによって連携され、ブレーキセンサー17のロッド18は傾動板11の傾動動作によって作動されてブレーキ動作、具体的にはアクセルペダル12の踏込み速度を検知するようになっている。
【0020】
傾動板11はアクセルペダル12が所定の強さ以下か又は所定の踏込み角度以下に踏み込まれる、つまり重負荷壁26に達しない普通アクセル領域27内で操作されるときには傾動板11は初期位置に位置決め保持され、通常のアクセル操作が行われる。
【0021】
また、アクセルペダル12が所定の強さ以上か所定の踏込み角度以上に踏み込まれた、つまり重負荷壁26を越えた重負荷ブレーキ領域28内で操作されるときにはコイルばね15の付勢力に抗して傾動板11の初期位置からの傾動を許容される。
【0022】
さらに、傾動板11にはブレーキランプスイッチ20が設けられ、ブレーキが作動されたときにブレーキランプを点灯させるようになっている。
【0023】
アクセル装置13内蔵アクセルポジションセンサー及びブレーキセンサー17の信号はエンジンコントロールユニット(ECU)に入力され、公知のスロットル駆動手段を作動させ、エンジンを駆動する一方、公知のブレーキ駆動手段を作動させてブレーキを働かせるようになっている。
【0024】
アクセルペダル12が普通アクセル領域27内にて踏込み操作されるときには傾動板11はコイルばね15の付勢力とストッパー16の係止によって初期位置に保持され傾動しないので、アクセル装置13内蔵のアクセルポジションセンサーによってアクセルペダル12の踏込み量及び踏込み速度が検知され、ECUがスロットル駆動手段を作動させ、エンジンの加減速及び一定速度による走行が制御される。
【0025】
他方、アクセルペダル12が所定の強さ以上か所定の踏込み角度以上に更に大きく強く踏み込まれたときに傾動板11はコイルばね15の付勢力に抗して初期位置から重負荷ブレーキ領域28内で傾動され、ブレーキセンサー17がアクセルペダル12の踏込み量を検知し、ECUはスロットル駆動手段を停止させてエンジンをアイドル状態に戻すとともに、ブレーキ駆動手段に信号を送ってブレーキを作動させて車両を自動的に停止させる。
【0026】
通常の加速操作ではコイルばね15によって傾動板11の傾動動作が強く制限されているので、ブレーキがかかることはなく、運転者が加速を行おうとしてアクセルペダル12を大きく踏み込んだ時にブレーキがかかって運転者がパニックを起こすこともない。
【0027】
また、運転者がパニックになってアクセルペダル12を更に大きく強く踏み込んだ場合にはエンジンをアイドル状態に戻すとともに、ブレーキを自動的にかけることができるので、車両の暴走を抑制することができ、障害物に衝突し人身事故を起こすそれもない。
【0028】
図4は第2の実施形態を示し、図において
図1ないし
図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではコイルばね15に代え、板ばね25を採用し、ばね取付けステー14をなくす一方、板ばね25は傾動板11の前端部とベース板10との間に湾曲して圧接されて設けられている。
【0029】
なお、板ばね25に代え、
図5に示されるように、板ばね25の位置にコイルばね25を圧縮して介在させるようにしてもよい。
【0030】
瞬発的に強い力で踏み込んでも、車両が停止するまで踏込み筋力の維持が困難な運転者に対応するため、ストッパー16等に踏込み量に応じて傾動板を一時停止保持できる機構を備える。一時停止保持機構は車両が停止後に簡便に解除できるものである。すなわち、本発明によれば、
図10に記載のように、アクセルペダルによりスロットルを開き、車の発進・加速を行う。次いで、運転者が何らかのパニックによる誤作動を起こすと、身体的反応で足が突出する。これによりアクセルペダルを強力に踏むことになると、ペダルは重負荷壁を越えて、アクセル動作領域からブレーキ動作領域に入る。この動作はブレーキセンサーにより検知されるので、スロットルは閉じられるとともに、ブレーキが作動する結果、自動車は停止することになり、暴走事故は防止される。この停止状態はアクセルの再始動により解除信号を送信し、原点に復帰させることになる。
【0031】
上記実施例ではガソリンエンジン車を例にして説明したが、電動車においてもスロットル駆動手段に代えてモータ駆動手段を制御することにより、同様の制御が可能である。また、上記実施例においては、アクセル稼働領域において、アクセル動作領域とブレーキ動作領域とをばね常数の差によって区別したが、アクセルペダルの踏み込み荷重変動を、電磁的な手段により低負荷抵抗と重負荷抵抗とをスイッチングすることにより切り替え、低負荷領域と重負荷領域を区別するようにすることは当業者であれば、容易である。すなわち、上記アクセルペダルの稼働領域にアクセル動作領域とブレーキ動作領域とを連続して設け、両者の間に重負荷壁が形成されるようにアクセル動作領域に低負荷抵抗を、ブレーキ動作領域に重負荷抵抗を付与する二種の負荷強度からなる電磁石ブレーキを設け、アクセル・ブレーキ動作変換するようにすることもできる。また、ばね常数による機械的動作変換と電気的なスイッチングによる電磁的負荷抵抗の動作変換とは単独で、又は併用して動作させるようにすることができるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0032】
10 ベース板
11 傾動板
12 アクセルペダル
13 アクセルポジションセンサー内蔵アクセル装置
14 ばね取付けステー
15 コイルばね(高負荷ばね部材)、15‘ 低負荷ばね部材
16 ストッパー
17 ブレーキセンサー
18 ブレーキセンサー17のロッド
19 傾動板側の逆L字状レバー
20 ブレーキランプスイッチ
25 板ばね又はコイルばね(ばね部材)
26 重負荷壁
27 普通アクセル領域
28 重負荷ブレーキ領域
29 非常停止釦
30 非常鄭氏釦用ステ
31 圧力センサー
32 圧接部
33 傾動板係止位置保持ばね
【要約】
【課題】通常の加速操作を行うことができ、運転者がパニックになってアクセルを更に大きく強く踏み込んだときにはブレーキを変換できる踏み間違え誤操作暴走防止システム及びそれを実行するアクセル・ブレーキ動作変換装置を提供する。
【解決手段】アクセルペタルの稼働範囲に通常のアクセル動作領域と非常時のブレーキ動作領域との二種類の動作領域を設定し、通常のアクセル動作ではアクセル領域で稼働させる一方、通常のアクセル動作ではブレーキ動作領域に入ることなく、誤動作により通所の踏み込み動作より強く踏み込むときのみブレーキ動作を行うようにした踏み間違え誤操作暴走防止システムであって、アクセルペダルが所定の強さ以下又は所定の踏込み角度以下に踏み込まれるときは、アクセルポジションセンサーによってアクセルペダルの踏込み動作を検知し、エンジンコントロールユニットでアクセルポジションサーの信号を受けてスロットル駆動手段を作動させる一方、アクセルペダルが所定の強さ以上又は所定の踏込み角度以上に踏み込まれるときに傾動板の初期位置からの傾動を許容し、ブレーキセンサーで傾動板の傾動動作を検知し、エンジンコントロールユニットでブレーキセンサーの信号を受けたときにはスロットル駆動手段の作動を停止させ、ブレーキ駆動手段を作動させる。
【選択図】
図3