(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】フープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクおよびその製作方法
(51)【国際特許分類】
F17C 1/06 20060101AFI20241030BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20241030BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20241030BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20241030BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241030BHJP
【FI】
F17C1/06
B29C70/32
B29C70/68
F16J12/00 A
H01M8/04 J
(21)【出願番号】P 2022530920
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 KR2020016268
(87)【国際公開番号】W WO2021107486
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0154076
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ユ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ヨン グァン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ グン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウォニョン
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/020597(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/073108(WO,A1)
【文献】特開2015-157449(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0119956(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/06
B29C 70/32
B29C 70/68
F16J 12/00
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー部と前記シリンダー部の両端にそれぞれ形成される2個のドーム部を有するライナ、および前記ライナの外周面にフープ層およびヘリカル層が巻き取られた複合材層を含む高圧タンクにおいて、
前記ヘリカル層は
、
前記シリンダー部に巻き取られたメイン巻き取り部と、
前記シリンダー部と前記ドーム部の間の接合部位にかけて巻き取られた捩れ部
とを含み、
前記メイン巻き取り部の巻取角は、前記シリンダー部の中心軸方向に対して一定角度θを維持し、
前記捩れ部は前記ヘリカル層が前記フープ層を通過して前記ドーム部側にワインディングされる時捩れ、前記フープ層の終端を包みながら巻き取られ
、前記捩れ部の巻取角は前記メイン巻き取り部の一定角度θと異なるように変化することを特徴とする、高圧タンク。
【請求項2】
前記メイン巻き取り部の
巻取角θは次の数式1によって定義されることを特徴とする、請求項1に記載の高圧タンク:
【数1】
D:シリンダー部の直径
A:シリンダー部の長手方向への長さ。
【請求項3】
前記シリンダー部の直径は前記シリンダー部の外周面に前記フープ層が巻き取られた状態でのフープ層の厚さを含む直径であることを特徴とする、請求項2に記載の高圧タンク。
【請求項4】
前記フープ層および前記ヘリカル層はトウプレグ(towpreg)で形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の高圧タンク。
【請求項5】
シリンダー部と前記シリンダー部の両端にそれぞれ形成される2個のドーム部を有するライナ、および前記ライナの外周面の複合材層を含む高圧タンクの製造方法において、
前記シリンダー部の外周面に連続複合材が巻き取られるフープ層の巻き取り段階;および
前記フープ層および前記ドーム部の外周面に連続複合材が巻き取られるヘリカル層の巻き取り段階を含み、
前記ヘリカル層の巻き取り段階は
、
連続複合材が前記シリンダー部に巻き取られるメイン巻き取り部の巻き取り段階と、
前記連続複合材が前記シリンダー部と前記ドーム部の間の接合部位にかけて巻き取られる捩れ部の巻き取り段階
とを含み、
前記メイン巻き取り部の巻き取り段階において、前記メイン巻き取り部の巻取角は、前記シリンダー部の中心軸方向に対して一定角度θを維持し、
前記捩れ部の巻き取り段階
において、
前記連続複合材が前記フープ層を通過して前記ドーム部側にワインディングされる時前記フープ層の終端を押しながら捩れて巻き取られ
、前記捩れ部の巻取角は、前記メイン巻き取り部の一定角度θと異なるように変化することを特徴とする、高圧タンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクおよびその製作方法に関し、フィラメントワインディング法によってライナ表面に繊維を巻き取ってフープ層およびヘリカル層を形成する際、シリンダー部とドーム部の接合部位でフープ層の端部によって生じ得る空隙を防止するフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクおよびその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に使用される燃料供給システムのうち、水素供給系に備えられる水素タンクには約700bar程度の高圧圧縮水素が貯蔵されており、この貯蔵された圧縮水素は水素タンクの入口部に装着された高圧調節器のオン/オフ(on/off)に応じて高圧ラインに放出された後、始動弁と水素供給弁を経て減圧されて燃料電池スタックに供給される。
【0003】
この時、高圧のガスが燃料(水素)として使用され、そのためガスを必要に応じて貯蔵、排出するためにガスの貯蔵容器が必要である。特にガスは容器内の貯蔵密度が低いので、高圧で貯蔵することが効率的であり、高圧でガスを貯蔵するために容器のシーリング性が大変重要である。特に、代替燃料ガス車両などの場合、その貯蔵容器の搭載空間が限定されているので、貯蔵圧力を高圧に維持しながらも安定性を維持することが求められる。
【0004】
このような燃料ガス貯蔵容器のうち複合材容器の場合、水素ガスの高い内圧に耐えるために比強度および比剛性が高い繊維強化複合材料で外皮が補強されるべきであり、内部にはガスの気密性を維持するライナが挿入される。詳細には、フィラメントワインディング法に基づいた圧力容器の製作方法はタンクの枠を成すライナを形成する工程、およびライナ外郭に連続した繊維を巻き取る工程を含む。
【0005】
一般的なフィラメントワインディング法は、ウェット(wet)ワインディング法とトウプレグ(towpreg)ワインディング法に分けることができる。ウェット(wet)ワインディング法はフィラメントワインディング時に含浸工程を設けて繊維を樹脂に含浸させて巻き取る工程であり、トウプレグ(towpreg)ワインディング法はドライ(dry)ワインディング法ともいい、樹脂に既に含浸された繊維を材料として使用して巻き取る工程である。ウェットワインディング法はトウプレグワインディング法とは異なり、曲面を有するドーム部でスリップ(slip)が発生しやすく、中角度ないし高角度ヘリカルワインディングが難しく、また、繊維のバンド幅の広がりによってドーム部に巻き取られた繊維のパターンが設計のとおり形成されない短所がある。
【0006】
この時、
図1を参照すると、ライナ1は円筒形状を有するシリンダー部2と、シリンダー部の両端部にドーム形状を有するドーム部3を含む。シリンダー部2とドーム部3はその形状が異なるので、ライナ外郭に連続した繊維からなる複合材層4を巻き取る時、それぞれ繊維の巻き取り方法を異なるようにする。シリンダー部2には、
図2の(a)を参照すると、連続した繊維が中心軸に垂直な方向に巻き取られることによってフープ層5を形成し、これは高圧タンクにガスを投入する時発生するガスの内圧によるライナ周囲方向に及ぼす応力を支持する役割をする。ドーム部3には、
図2の(b)を参照すると、連続した繊維が中心軸に特定角度方向に巻き取られることによってヘリカル層6を形成し、これは前記ガスの内圧によるライナの主に軸方向に作用する応力を支持する役割をする。
【0007】
一方、水素タンクの巻き取られる繊維のパターン設計は該当タンクが所望する設計破裂圧まで到達するように製作することにその目的があり、通常破裂時の安全性のために破裂圧に到達する時、ドーム部3またはシリンダー部とドーム部の接合(junction)部位7よりはシリンダー部2の本体領域8での先破裂を誘導する。しかし、
図1の接合部位7で、
図3に示すように段差生成による空隙8などの欠陥が発生する場合には、設計時に誘導した応力分布のとおり形成されないので、設計と解釈の間に誤差が発生する問題がある。
【0008】
前記接合部位7での強度を向上させるための従来の技術として、日本特開第2011-163354号公報(以下、特許文献1という)、および日本特許第6354846号公報(以下、特許文献2という)が公開されている。
【0009】
前記特許文献1では接合部位上のナックル部の強度確保のためにタンク軸方向にライナの陥没部位を形成してライナ樹脂より高強度の材料を補強した後ワインディングを製作する。しかし、このような場合、ライナ内側の陥没部の形成に対する工程が追加され、ライナ内部の容積が減少する問題がある。
【0010】
前記特許文献2では、高角のヘリカル層をシリンダー部で延びた部分まで先に巻き取って、その後にフープ層を巻き取って強度を向上させる。しかし、このような場合、フープ層を巻き取るための延長ヘリカル層を追加で巻き取ることによって不必要な複合材の重量が増加する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開第2011-163354号公報
【文献】特許第6354846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、フィラメントワインディング法によってライナ表面に繊維を巻き取って複合材層を形成する時、シリンダー部とドーム部の接合部位でフープ層の端部によって生じ得る空隙を防止するフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクおよびその製作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような課題を解決するための本発明は、高圧タンクであって、シリンダー部と前記シリンダー部の両端にそれぞれ形成される2個のドーム部を有するライナ、および前記ライナの外周面にフープ層およびヘリカル層が巻き取られた複合材層を含む高圧タンクにおいて、前記ヘリカル層は前記シリンダー部と前記ドーム部の間の接合部位にかけて巻き取られた捩れ部を含み、前記捩れ部は前記ヘリカル層が前記フープ層を通過して前記ドーム部側にワインディングされる時捩れ、前記フープ層の終端を包みながら巻き取られ得る。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記ヘリカル層は前記シリンダー部に巻き取られるメイン巻き取り部を含み、前記メイン巻き取り部の角度(θ)は次の数式1によって定義され得る。
【数1】
D:シリンダー部の直径
A:シリンダー部の長手方向への長さ
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記シリンダー部の直径は前記シリンダー部の外周面に前記フープ層が巻き取られた状態でのフープ層の厚さを含む直径であり得る。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記フープ層およびヘリカル層はトウプレグ(towpreg)で形成され得る。
【0017】
本発明の一実施例による高圧タンクの製造方法によれば、シリンダー部と前記シリンダー部の両端にそれぞれ形成される2個のドーム部を有するライナ、および前記ライナの外周面の複合材層を含む高圧タンクの製造方法において、前記シリンダー部の外周面に連続複合材が巻き取られるフープ層の巻き取り段階;および前記フープ層および前記ドーム部の外周面に連続複合材が巻き取られるヘリカル層の巻き取り段階を含み、前記ヘリカル層の巻き取り段階は前記シリンダー部と前記ドーム部の間の接合部位にかけて巻き取られる捩れ部の巻き取り段階を含み、前記捩れ部の巻き取り段階は、連続複合材が前記フープ層を通過して前記ドーム部側にワインディングされる時前記フープ層の終端を押しながら捩れて巻き取られ得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、連続的な複合材繊維を巻き取ってヘリカル層を形成する時、ヘリカル層を形成する連続的な複合材繊維がシリンダー部とドーム部の接合部位でフープ層の端部に形成された段差を強く押しながら巻き取られるようにすることによってフープ層の端部によって生じ得る空隙を防止することができる。
【0019】
また、従来の高圧タンクのように前記接合部位を支える別途の構成を有するようにするか、またはヘリカル層を複数回積層して厚く巻き取る方法を取らず、既に使用されていた素材をそのまま使用しながらも効果的に空隙を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来のフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクを示す断面図である。
【
図2】フープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクにおいて、複合材層のうちフープ層とヘリカル層がそれぞれ巻き取られた状態を示す図である。
【
図3】従来のフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクでの段差生成による空隙を示す図である。
【
図4】本発明によるフィラメントワインディング法を適用してヘリカル層を巻き取った状態を示す図である。
【
図5】本発明によるヘリカル層を巻き取る角度を計算するためのシリンダー部の展開図である。
【
図6】ライナ表面にフィラメントワインディング法によって繊維を巻き取ってヘリカル層を形成する時、捩れ部なしでシリンダー部とドーム部全体でメイン巻き取り部と同じ角度で繊維が巻き取られた高圧タンクを示す図である。
【
図7】ライナ表面にフィラメントワインディング法によって繊維を巻き取ってヘリカル層を形成する時、捩れ部なしでシリンダー部とドーム部全体でメイン巻き取り部と同じ角度で繊維が巻き取られた高圧タンクを示す図である。
【
図8】本発明の捩れ部を含まない構成と含む構成のフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクを比較した図である。
【
図9】従来のフィラメントワインディング法と本発明によるフィラメントワインディング法をそれぞれ適用した場合のシリンダー部とドーム部の接合部位での空隙の発生の有無を示す比較図である。
【
図10】本発明によるフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクの製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図11】本発明によるフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクの製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では添付する図面を参照して本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現でき、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、添付する図面は本明細書に開示された実施例を容易に理解できるようにするためのものであり、添付する図面によって本明細書に開示された技術的思想は制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更物、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。そして、図面で本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図面に示す各構成要素の大きさ、形態、形状は多様に変形でき、明細書全体にかけて同一/類似の部分に対しては同一/類似の図面符号を付けた。
【0022】
明細書全体で、ある部分が他の部分と「連結(接続、接触または結合)」されているという時、これは「直接的に連結(接続、接触または結合)」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を間に置いて「間接的に連結(接続、接触または結合)」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む(備えるまたは設ける)」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに「含む(備えるまたは設ける)」ことができることを意味する。
【0023】
本明細書で使用した用語は単に特定の実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含み、分散して実施される構成要素は特別な制限がない限り結合された形態で実施されることもできる。本明細書で、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0024】
また、本明細書で使用される第1、第2などのように序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されるべきではない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を外れない範囲で第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、類似に第2構成要素も第1構成要素と名付けられてもよい。
【0025】
図4は本発明によるフィラメントワインディング法を適用してヘリカル層を巻き取った状態を示す図である。また、
図5は本発明によるヘリカル層を巻き取る角度を計算するためのシリンダー部の展開図である。
【0026】
図4を参照すると、本発明によるフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクは、ライナ10とライナの外周面を補強するための複合材層20を含むことができる。
【0027】
詳細には、ライナ10外部面にワインディングされる複合材層20は一定の幅を有する連続的な複合材繊維を巻き取って形成されることができる。この時、複合材層20をなす連続的な繊維はワインディングの前に事前に準備され得、巻き取り装置によって定められた角度でライナ10の外周面にワインディングされ得る。詳細には、あらかじめ射出されたライナ10を固定させた状態で、巻き取り装置(図示せず)が移動し、ライナ10に対して一定の角度を形成した後、一定の幅を有する連続的な複合材繊維がライナ10の外周面に一定の張力を有しながらワインディングされて複合材層20を形成することができる。
【0028】
ライナ10は、高圧タンクの中心軸方向に沿って形成されるシリンダー部11、およびシリンダー部11の両端にそれぞれ形成される2個のドーム部12を含むことができる。シリンダー部11と2個のドーム部12は概ね同じ直径を有することができる。
【0029】
シリンダー部11は円筒形状でライナ10およびライナを構成要素とする高圧タンクの本体をなし、ドーム部12はシリンダー部11の両側端部に半球形で形成される。
図5に示されたようなシリンダー部11の展開図を参照すると、シリンダー部11の展開図上でシリンダー部11は高圧タンクの軸方向に沿っては曲率を有しない直線を形成する。ただし、シリンダー部11の立体形状においては、シリンダー部11は高圧タンクの円周方向に沿って曲率を有する形状であり得る。反面、高圧タンクのドーム部12は高圧タンクの軸方向および円周方向に沿ってすべて曲率を有する表面であり得る。
【0030】
再び
図4を参照すると、複合材層20はフープ層21およびヘリカル層22を含む。この時、フープ層21は連続的な複合材繊維をシリンダー部11の外周面に中心軸のほぼ垂直方向に巻き取って形成する。フープ層21は高圧の周囲方向への応力を支持する役割をする。ヘリカル層22は連続的な複合材繊維をフープ層21およびドーム部12の外周面に中心軸と傾斜するようにして連続的に巻き取って形成する。ヘリカル層22は高圧タンクの軸方向に作用する応力を主に支持する役割をする。すなわち、フープ層21は高圧タンクのシリンダー部11にかけて巻き取られるが、高圧タンクのドーム部12にかけて巻き取られるものではない。反面、ヘリカル層22は高圧タンクのシリンダー部11上のフープ層21および高圧タンクのドーム部12にかけて巻き取られ得る。
【0031】
また、
図4を参照すると、ヘリカル層22はメイン巻き取り部221と捩れ部222を有する。
【0032】
メイン巻き取り部221はシリンダー部11の本体領域にかけてシリンダー部11の直径とシリンダー部11の中心軸方向の長さから定まる一定の角度で巻き取られる。また、捩れ部222はシリンダー部11とドーム部12の間の接合部位13にかけてメイン巻き取り部221と異なる角度に変わって巻き取られる。
【0033】
ここで、メイン巻き取り部221と捩れ部222はヘリカル層22の一部をなす区間として設定される。メイン巻き取り部221はヘリカル層22でシリンダー部11を一定の角度で横切る区間のうちの一部を示す。捩れ部222はメイン巻き取り部221が巻き取られる角度と異なる角度に変わって巻き取られる区間のうちの一部を示す。この時、捩れ部222はシリンダー部11とドーム部12の間の接合部位13にかけて捩れて巻き取りされながら前記接合部位13に沿って包みながら巻き取られる。フープ層21の端部が接合部位13に沿って位置するので、捩れ部222はフープ層21の端部を押しながら巻き取られる。
【0034】
また、本発明では巻き取り装置により一定の幅を有する連続的な複合材繊維を巻き取る方式が用いられるので、連続的な複合材繊維をライナ10に巻き取ってヘリカル層を形成する時、前記メイン巻き取り部221と捩れ部222は繰り返して現れる。
【0035】
一方、本明細書でシリンダー部11とドーム部12の間の接合部位13とは、シリンダー部11とドーム部12が接合される接合点を含み、前記接合点でフープ層21とヘリカル層22の間でフープ層21の端部によって発生する段差によって空隙が形成される可能性のある一定範囲の周辺領域も共に含む意味で使用されることができる。
【0036】
この時、
図5を参照すると、メイン巻き取り部221が巻き取られる一定の角度(θ)は事前に定められるシリンダー部11の直径(D)とシリンダー部11の長手方向への長さ(A)によって適宜設定でき、例えば次のような数式1により定義されることができる。
【数1】
D:シリンダー部の直径
A:シリンダー部の長手方向への長さ
【0037】
例えば、シリンダー部11の長さが約580mmであり、直径が約322mmである通常の高圧タンクの場合には、シリンダー部11本体の多くの面積にかけて巻き取られるメイン巻き取り部221の角度は概ね40度程度に導き出され得る。この時、捩れ部222を除いたメイン巻き取り部221の角度は概ね一定の角度を維持する。
【0038】
この時、前記ヘリカル層22のメイン巻き取り部221はシリンダー部11本体にかけてフープ層21上に巻き取られるので、フープ層21が巻き取られることにより増える巻き取り直径を考慮しなければならない。このために、シリンダー部11の直径はシリンダー部11の外周面にフープ層21が巻き取られた状態でのフープ層21の厚さを含む直径として前記メイン巻き取り部221の角度(θ)を計算することが好ましい。
【0039】
図6および
図7はライナの表面にフィラメントワインディング法によって繊維を巻き取ってヘリカル層を形成する時、捩れ部なしでシリンダー部とドーム部全体でメイン巻き取り部と同じ角度で繊維が巻き取られた高圧タンクを示す図である。
【0040】
図6を参照すると、メイン巻き取り部221はシリンダー部11の直径とシリンダー部11の中心軸方向の長さから定められる角度、すなわち、例えば前記定義されたようなメイン巻き取り部221の一定の角度(θ)で巻き取られる。この時、メイン巻き取り部221はシリンダー部とドーム部の間の接合部位に位置する第1終端2211と第2終端2212を横切る角度で巻き取られる。この時、メイン巻き取り部221の第1終端2211と第2終端2212は
図5に示されたシリンダー部の展開図で中心軸とシリンダー部の半径を対角線で横切る直線を設定する時その両終端に該当するヘリカル層22の一部で定義される。
【0041】
ところが、
図7から分かるように、ヘリカル層22のメイン巻き取り部221が
図5に示された展開図により求められた前記一定の角度(θ)で巻き取られると、前記ヘリカル層22は第1終端2211からシリンダー部11を横切って対角線状に巻き取られた後、その端部がメイン巻き取り部221の第2終端2212を通過して第2ドーム部122の接合部位13を越えて巻き取られてドーム部12に至るように巻き取られる。すなわち、前記一定の角度(θ)でメイン巻き取り部221を巻き取る場合、ドーム部12はシリンダー部11とは異なり概ね半円形状を有するため、それによって生じ得る曲率の影響を受けるので、シリンダー部11の両端にそれぞれ形成される2個のドーム部12に至るヘリカル層22の両端部は接合部位13を越えてドーム部12の突出した終端に近く巻き取られる。
【0042】
図6および
図7に示すように、捩れ部222なしでヘリカル層22を前記一定の角度のメイン巻き取り部221と同じ角度で巻き取った時には、接合部位13に加えるヘリカル層22の圧力が制限される。このような構成は、ヘリカル層22がフープ層21の端部によって生じ得る階段状段差を十分に押すことが難しい。したがって、シリンダー部11とドーム部12の接合部位13でフープ層21の端部によって生じ得る空隙を完全に防止することは難しい。
【0043】
このような理由から、本発明では一定の角度でシリンダー部の本体領域にかけて巻き取られるメイン巻き取り部221だけでなく、シリンダー部11とドーム部12の間の接合部位13にかけて前記メイン巻き取り部221と異なる角度に変わって巻き取られる捩れ部222を適用することができる。
【0044】
図8は本発明の捩れ部222を含まない構成と含む構成のフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクを比較した図である。
図8の(a)は本発明の捩れ部222を含まない構成であり、
図8の(b)は本発明の捩れ部222を含む構成を示す。
【0045】
図8の(b)を参照すると、捩れ部222が巻き取られる前記異なる角度は、例えば、
図8の(a)に示すようにシリンダー部の展開図で計算されるメイン巻き取り部221の角度(θ)よりさらに大きい角度であり得る。ただし、捩れ部222が巻き取られる前記異なる角度は、
図5の展開図の側面で見る時、一定の角度からなるのではなく、巻き取られながら変わる角度であり得る。
【0046】
図8の(a)のヘリカル層22のメイン巻き取り部221の一定の角度(θ)は、例えば、シリンダー部11の長さが約580mmであり、直径が約322mmである場合、概ね40度の中角が導き出され得る。この時、ヘリカル層22は第1終端2211からシリンダー部11を横切って対角線状に巻き取られた後、その端部がメイン巻き取り部221の第2終端2212を通過して第2ドーム部122の接合部位13を越えて巻き取られてドーム部12に至る。この時、複数のヘリカル層22のドーム部12側に巻き取られた端部を連結すると概ね円形を導き出し得、前記円形の直径Sは約207mmになる。
【0047】
反面、本発明による
図8の(b)のヘリカル層22はメイン巻き取り部221がシリンダー部11のフープ層21上に一定の角度(θ)で巻き取られながら、フープ層21がないドーム部12の一部まで捩れ部222が捩れて巻き取られて接合部位13の周囲を包む形状になる。この時、捩れ部222の接合部位13を包む部分を連結すると概ね円形を導き出し得、前記円形の直径S’は約270mmになる。
【0048】
一方、フープ層21は一定の厚さを有するので、フープ層21がシリンダー部11上で巻き取られる時、シリンダー部11を越えてフープ層21が巻き取られていないドーム部12の一定領域を巻き取るヘリカル層22との間で階段状段差が発生し得る。このような階段状段差によってヘリカル層22とフープ層21の間には空隙が生成され得る。
【0049】
かかる問題を解決するために、本発明では捩れ部222はヘリカル層22がフープ層21を通過してドーム部12にワインディングされる時フープ層21の終端を押しながら捩れて巻き取られるようにすることができる。そのため、捩れ部222がシリンダー部11とドーム部12の間の接合部位13に包みながらフープ層21の端部を効果的に押すことができるので、前記フープ層の端部によって生じ得る空隙を防止することができる。
【0050】
図8の(b)を参照すると、捩れ部222はヘリカル層22がドーム部12に巻き取られる時ヘリカル層22が全体的にドーム部12との接触を維持する範囲で巻き取り方向が高圧タンクの中心軸を基準として転換される捩れ転換部2221を有する。捩れ転換部2221は前述したように捩れ部222がフープ層21の終端を押しながら捩れて巻き取られる過程で形成される。ただし、捩れ転換部2221は前記巻き取りはドーム部12の終端に向かうように高圧タンクの中心軸を一方向に沿って継続して巻き取られるのではなく、前記一方向と反対になる他の方向にヘリカル層22が巻き取られる方向が転換される部分を意味する。
【0051】
この時、捩れ転換部2221はシリンダー部11とドーム部12の間の接合部位13に位置する。捩れ転換部2221は捩れて巻き取る過程によりヘリカル層22の多くの張力が集中し、このように集中した張力が接合部位13に作用する内圧による応力を支持するようにする。これにより、接合部位13が弱くなって破裂することを防止する。
【0052】
また、
図8の(b)を参照すると、ヘリカル層22は巻き取り装置によってフープ層21およびドーム部12の外周面に連続的に巻き取られるものであって、前記連続的な巻き取りによって複数の捩れ転換部2221が現れるように巻き取られ得る。この時、ヘリカル層22は前記複数の捩れ転換部2221が接合部位13を包みながら巻き取られることができる。そのため、複数の捩れ転換部2221が接合部位13の最大限多くの領域を包みながらフープ層21の端部を全体的に押すことになるので、フープ層21の端部によって生じ得る空隙を防止することができる。
【0053】
また、この時、ヘリカル層22は粘着性を有するトウプレグで形成される。そのため、ヘリカル層22が曲面のドーム部12で捩れて巻き取られる時にも捩れ部222とドーム部12の間で発生する滑りや捩れが最小化されることができる。
【0054】
図9は従来のフィラメントワインディング法と本発明によるフィラメントワインディング法をそれぞれ適用した場合のシリンダー部とドーム部の接合部位での空隙の発生の有無を示す比較図である。
図9の(a)は従来のフィラメントワインディング法を適用する時の空隙が形成された状態を示す図であり、
図9の(b)は本発明によるフィラメントワインディング法を適用した場合の空隙が防止された状態を示す図である。
【0055】
すなわち、本発明のフィラメントワインディング法を用いると、ヘリカル層22が接合部位13でのフープ層21とヘリカル層22との間に生成される階段状段差部をより強く押して、空隙を防止することができる。また、本発明は従来方式のように前記接合部位13を支える別途の構成を有するようにしたり、ヘリカル層22を複数回積層して厚く巻き取りせずとも、従来に使用されていた素材をそのまま使用しながらも空隙を効果的に防止できる効果を有する。
【0056】
図10および
図11は本発明によるフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクの製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【0057】
図10および
図11を参照して、上記のように構成されるフープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクの製造方法について簡略に説明すると、次のとおりである。上述したフィラメントワインディング法が適用された高圧タンクの各構成に係る説明は便宜上省略するが、高圧タンクの製造方法においてもそのまま適用することができる。
【0058】
図10を参照すると、フープ層およびヘリカル層がワインディングされた高圧タンクの製造方法は、フープ層の巻き取り段階(S10)、ヘリカル層の巻き取り段階(S20)、メイン巻き取り部の巻き取り段階(S21)、および捩れ部の巻き取り段階(S22)を含むことができる。
【0059】
フープ層の巻き取り段階(S10)は、フープ層21がシリンダー部11の外周面に中心軸の垂直方向に巻き取られる段階であり得る。また、ヘリカル層の巻き取り段階(S20)はメイン巻き取り部221と捩れ部222を有するヘリカル層22がフープ層21およびドーム部12の外周面に中心軸と傾斜するようにして連続的に巻き取られる段階であり得る。
【0060】
ここでヘリカル層の巻き取り段階(S20)はメイン巻き取り部の巻き取り段階(S21)および捩れ部の巻き取り段階(S22)を含むことができる。
【0061】
メイン巻き取り部の巻き取り段階(S21)は、メイン巻き取り部221がシリンダー部11の本体領域でシリンダー部11の直径とシリンダー部11の中心軸方向の長さから定められる一定の角度で巻き取られるようにする段階であり得る。
【0062】
捩れ部の巻き取り段階(S22)は、捩れ部222がシリンダー部11とドーム部12の間の接合部位13でメイン巻き取り部221と異なる角度で巻き取られるようにする段階であり得る。
【0063】
また、捩れ部の巻き取り段階(S22)では、捩れ部222がヘリカル層22がフープ層21を通過してドーム部12にワインディングされる時フープ層21の終端を押しながら捩れて巻き取られ、シリンダー部とドーム部の接合部位13でフープ層21の端部によって生じ得る空隙を防止することができる。
【0064】
図11を参照すると、前記捩れ部の巻き取り段階(S22)は、ヘリカル層の転換段階(S221)および接合部位の巻き取り段階(S222)をさらに含むことができる。
【0065】
ヘリカル層の転換段階(S221)はヘリカル層22がドーム部12に巻き取られる時ヘリカル層22が全体的にドーム部12と接触を維持する範囲で捩れ転換部2221の巻き取り方向が高圧タンクの中心軸を基準として転換されるようにする段階であり得る。
【0066】
また、接合部位の巻き取り段階(S222)は、捩れ転換部2221がシリンダー部11とドーム部12の間の接合部位13に位置するようにする段階であり得る。
【0067】
この分野の保護の範囲は以上で明示的に説明した実施例の記載と表現に制限されるものではない。また、本発明が属する技術分野で自明な変更や置換によって本発明の保護の範囲が制限されることもできないことをもう一度付け加える。
【符号の説明】
【0068】
10 ライナ
11 シリンダー部
12 ドーム部
13 接合部位
20 複合材層
21 フープ層
22 ヘリカル層
221 メイン巻き取り部
222 捩れ部
2221 捩れ転換部
θ メイン巻き取り部の角度