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特許7579364自動変速機、自動変速機の制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】自動変速機、自動変速機の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20241030BHJP
   F16H 59/18 20060101ALI20241030BHJP
   F16H 59/72 20060101ALI20241030BHJP
   F16H 61/662 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/18
F16H59/72
F16H61/662
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022576608
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2022000493
(87)【国際公開番号】W WO2022158327
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2021007013
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下川原 一恵
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/133021(WO,A1)
【文献】特開2019-132351(JP,A)
【文献】特開2004-076906(JP,A)
【文献】特開2001-173776(JP,A)
【文献】特開2014-149050(JP,A)
【文献】特開2010-230131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
F16H 61/662
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機であって、
駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、
前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備え、
アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには第1変速比に設定され、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには前記第1変速比よりもLow側の前記ストッパによって規定される前記最Low変速比である第2変速比に設定さ
前記第2変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記第2変速比よりもHigh側の変速比に変速される、
自動変速機。
【請求項2】
走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比に変速する自動変速機であって、
駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、
前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備え、
アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには、前記停車変速比よりもHigh側の変速比に設定され、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには、前記停車変速比に設定され、
前記停車変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記停車変速比よりもHigh側の変速比に変速され、
前記停車変速比は、前記ストッパによって規定される前記最Low変速比である、
自動変速機。
【請求項3】
走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比に変速する自動変速機であって、
駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、
前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備え、
アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには、前記停車変速比に設定され、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには、前記停車変速比よりもLow側の前記ストッパによって規定される前記最Low変速比に設定さ
前記最Low変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記最Low変速比よりもHigh側の変速比に変速される、
自動変速機。
【請求項4】
駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備える自動変速機の制御方法であって、
アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには前記自動変速機を第1変速比に設定し、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには前記自動変速機を前記第1変速比よりもLow側の前記ストッパによって規定される前記最Low変速比である第2変速比に設定
前記第2変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記第2変速比よりもHigh側の変速比に変速する、
自動変速機の制御方法。
【請求項5】
駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備え、走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比に変速する自動変速機の制御方法であって、
アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには、前記自動変速機を前記停車変速比よりもHigh側の変速比に設定し、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには、前記自動変速機を前記停車変速比に設定し、
前記停車変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記停車変速比よりもHigh側の変速比に変速し、
前記停車変速比は、前記ストッパによって規定される前記最Low変速比である、
自動変速機の制御方法。
【請求項6】
駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備え、走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比に変速する自動変速機の制御方法であって、
アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには、前記自動変速機を前記停車変速比に設定し、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには、前記自動変速機を前記停車変速比よりもLow側の前記ストッパによって規定される前記最Low変速比に設定
前記最Low変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記最Low変速比よりもHigh側の変速比に変速する、
自動変速機の制御方法。
【請求項7】
駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備える自動変速機のコンピュータが実行可能なプログラムであって、
アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには前記自動変速機を第1変速比に設定し、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには前記自動変速機を前記第1変速比よりもLow側の前記ストッパによって規定される前記最Low変速比である第2変速比に設定する手順と、
前記第2変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記第2変速比よりもHigh側の変速比に変速する手順と、
を前記コンピュータに実行させる、
プログラム。
【請求項8】
駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備え、走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比に変速する自動変速機のコンピュータが実行可能なプログラムであって、
アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには、前記自動変速機を前記停車変速比よりもHigh側の変速比に設定し、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには、前記自動変速機を前記停車変速比に設定する手順と、
前記停車変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記停車変速比よりもHigh側の変速比に変速する手順と、
を前記コンピュータに実行させ、
前記停車変速比は、前記ストッパによって規定される前記最Low変速比である、
プログラム。
【請求項9】
駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備え、走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比に変速する自動変速機のコンピュータが実行可能なプログラムであって、
アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには、前記自動変速機を前記停車変速比に設定し、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには、前記自動変速機を前記停車変速比よりもLow側の前記ストッパによって規定される前記最Low変速比に設定する手順と、
前記最Low変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記最Low変速比よりもHigh側の変速比に変速する手順と、
を前記コンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機、自動変速機の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アイドルストップ判定があり、かつ無段変速機(自動変速機)の変速比が最大変速比(最Low変速比)でないときに、エンジン停止までに前進クラッチを解放状態にすると共にプライマリプーリの油圧をドレンさせて無段変速機を最大変速比へ戻す車両の制御装置が開示されている。この制御装置では、最大変速比のときには、プライマリプーリの可動シーブがストッパに当たっている。そのため、ストッパからの反力によって、セカンダリプーリによる推力がベルト張力を介してプライマリプーリにアシスト力として作用する。これにより、プライマリプーリへの油圧供給が遅れた場合にも、ベルト滑りが生じることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-230131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動変速機の変速比が最大変速比であると、車両の発進時にエンジン回転速度が高くなり、燃費が悪化するおそれがある。一方、車両の発進時の加速性能を向上させるためには、最大変速比での走行が要求される。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、燃費の悪化を抑制しながら、車両の発進時の加速性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、自動変速機は、駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備え、アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには第1変速比に設定され、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには前記第1変速比よりもLow側の前記ストッパによって規定される前記最Low変速比である第2変速比に設定され、前記第2変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記第2変速比よりもHigh側の変速比に変速される
【0007】
本発明の他の態様によれば、走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比に変速する自動変速機は、駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備え、アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには、前記停車変速比よりもHigh側の変速比に設定され、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには、前記停車変速比に設定され、前記停車変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記停車変速比よりもHigh側の変速比に変速され、前記停車変速比は、前記ストッパによって規定される前記最Low変速比である
【0008】
本発明の他の態様によれば、走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比に変速する自動変速機は、駆動源側と駆動輪側とに各々設けられる一対のプーリと、前記一対のプーリの間に掛け回された無端状部材と、を有する変速機構と、前記変速機構の最もLow側の最Low変速比を規定するストッパと、を備え、アクセルペダル開度が所定開度未満で発進するときには、前記停車変速比に設定され、前記アクセルペダル開度が前記所定開度以上で発進するときには、前記停車変速比よりもLow側の前記ストッパによって規定される前記最Low変速比に設定され、前記最Low変速比に設定されて発進した後、所定時間が経過するか、前記一対のプーリのシーブ面の温度が所定値以上になるか、又は潤滑油の温度が所定値以上になったら、前記最Low変速比よりもHigh側の変速比に変速される
【発明の効果】
【0009】
上記態様では、アクセルペダル開度が所定開度以上の場合には、所定開度未満の場合の変速比よりもLow側の変速比に設定されて発進するので、運転者の加速要求に対応した発進加速を実現できる。一方、アクセルペダル開度が所定開度未満の場合には、所定開度以上の場合の変速比よりもHigh側の変速比に設定されて発進するので、燃費が悪化することを抑制できる。したがって、燃費の悪化を抑制しながら、車両の発進時の加速性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機を備える車両の概略構成図である。
図2図2は、変速機コントローラが行う発進時の変速制御の処理をフローチャートで示す図である。
図3図3は、第2変速比に設定された後にHigh側の変速比に変速する変速制御の処理をフローチャートで示す図である。
図4図4は、アクセルペダル開度が所定開度未満で発進した後、所定時間が経過してHigh側の変速比に変速されることを説明するタイミングチャートである。
図5図5は、アクセルペダル開度が所定開度未満で発進した後、プーリのシーブ面の温度が所定値以上になってHigh側の変速比に変速されることを説明するタイミングチャートである。
図6図6は、アクセルペダル開度が所定開度未満で発進した後、自動変速によるアップシフト指示によってHigh側の変速比に変速されることを説明するタイミングチャートである。
図7図7は、アクセルペダル開度が所定開度未満で発進した後、アクセル戻しによるアップシフト指示によってHigh側の変速比に変速されることを説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。以下において、変速比が大きい場合をLow、変速比が小さい場合をHighと言う。また、変速比がLow側に変更されることをダウンシフトと言い、High側に変更されることをアップシフトと言う。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機20を備える車両100の概略構成図である。図1に示すように、車両100は、駆動源としてのエンジン10と、自動変速機20と、エンジンコントローラ30と、変速機コントローラ40と、を備える。
【0013】
自動変速機20は、トルクコンバータ2と、動力伝達機構としての前後進切替機構3と、変速機構としてのバリエータ4と、油圧制御回路5と、オイルポンプ6と、を備える。
【0014】
車両100においては、エンジン10で発生した回転が、トルクコンバータ2、前後進切替機構3、バリエータ4、歯車組7、ディファレンシャルギヤ装置8を経て駆動輪50に伝達される。
【0015】
トルクコンバータ2には、ロックアップクラッチ2aが設けられる。ロックアップクラッチ2aが締結されると、トルクコンバータ2の入力要素としての入力軸2bと出力要素としての出力軸2cとが直結し、入力軸2bと出力軸2cとが同速回転する。よって、ロックアップクラッチ2aが締結された状態では、エンジン10の出力軸10aの回転がそのままトルクコンバータ2の出力軸2cから前後進切替機構3に伝達される。
【0016】
前後進切替機構3は、ダブルピニオン遊星歯車組を主たる構成要素とし、そのサンギヤをトルクコンバータ2を介してエンジン10に結合し、キャリアをバリエータ4の入力軸4d(プライマリプーリ4a)に結合する。前後進切替機構3は更に、ダブルピニオン遊星歯車組のサンギヤ及びキャリア間を直結する前進クラッチ3a、及びリングギヤを固定する後進ブレーキ3bを備え、前進クラッチ3aの締結時にエンジン10からトルクコンバータ2を経由した入力回転をそのままプライマリプーリ4aに伝達し、後進ブレーキ3bの締結時にエンジン10からトルクコンバータ2を経由した入力回転を逆転減速してプライマリプーリ4aへ伝達する。
【0017】
バリエータ4は、入力軸4dに伝達されたエンジン10の回転を変速して出力軸4eから駆動輪50に伝達する無段変速機構である。バリエータ4は、動力伝達経路においてエンジン10側に設けられたプライマリプーリ4aと、駆動輪50側に設けられたセカンダリプーリ4bと、プライマリプーリ4aとセカンダリプーリ4bとに掛け回された無端状部材としてのベルト4cと、を備える。
【0018】
バリエータ4では、プライマリプーリ4aに供給される油圧とセカンダリプーリ4bに供給される油圧とが制御されることで、各プーリ4a、4bとベルト4cとの接触半径が変更され、変速比が変更される。ベルト4cは、各プーリ4a、4bのシーブ面4f、4gに当接して、プライマリプーリ4aとセカンダリプーリ4bとの間で動力を伝達する。
【0019】
セカンダリプーリ4bには、バリエータ4の構造上最もLow側の最Low変速比RMLを規定するストッパ4hが設けられる。これに代えて、プライマリプーリ4aにストッパを設けてもよく、プーリ4a、4bの両方にストッパを設けてもよい。
【0020】
オイルポンプ6は、エンジン10の回転が入力されエンジン10の動力の一部を利用して駆動される機械式のオイルポンプである。オイルポンプ6から吐出された油は、油圧制御回路5に供給される。
【0021】
油圧制御回路5は、オイルポンプ6から供給された作動油の圧力を調圧して必要な油圧を生成するレギュレータバルブ5a、プライマリプーリ4aに供給される油圧を調整するプライマリソレノイドバルブ5b、セカンダリプーリ4bに供給される油圧を調整するセカンダリソレノイドバルブ5c、ロックアップクラッチ2aに供給される油圧を調整するロックアップソレノイドバルブ5d、前進クラッチ3aに供給される油圧及び後進ブレーキ3bに供給される油圧を調整するセレクトソレノイドバルブ5e、前進クラッチ3a及び後進ブレーキ3bへの油圧の供給経路を切り換えるマニュアルバルブ5f、等を有する。
【0022】
油圧制御回路5は、変速機コントローラ40からの制御信号に基づき、調整された油圧をトルクコンバータ2、前後進切替機構3、バリエータ4の各部位に供給する。
【0023】
エンジンコントローラ30は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータで構成される。エンジンコントローラ30は、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の処理を行う。エンジンコントローラ30は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0024】
エンジンコントローラ30は、車両100の各部位の状態を検出する各種センサからの信号に基づきエンジン10の回転速度及びトルク等を制御する。
【0025】
変速機コントローラ40は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータで構成され、エンジンコントローラ30と通信可能に接続される。変速機コントローラ40は、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の処理を行う。変速機コントローラ40は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。変速機コントローラ40とエンジンコントローラ30とを統合して1つのコントローラとしてもよい。
【0026】
変速機コントローラ40は、車両100の各部位の状態を検出する各種センサからの信号に基づきロックアップクラッチ2aの締結状態、バリエータ4の変速比、前進クラッチ3a及び後進ブレーキ3bの締結状態等を制御する。
【0027】
変速機コントローラ40には、アクセルペダル開度APOを検出するアクセルペダル開度センサ61からの信号、ブレーキペダルの操作量に対応したブレーキ液圧BRPを検出するブレーキ液圧センサ62からの信号、シフター63の位置を検出するインヒビタスイッチ64からの信号、トルクコンバータ2の出力軸2cの回転速度Ntを検出するタービン回転速度センサ65からの信号、バリエータ4の入力軸4d(プライマリプーリ4a)の回転速度Npを検出するプライマリ回転速度センサ66からの信号、バリエータ4の出力軸4e(セカンダリプーリ4b)の回転速度Nsを検出するセカンダリ回転速度センサ67からの信号、プライマリプーリ4aに供給されるプライマリ油圧Ppを検出するプライマリ油圧センサ68からの信号、セカンダリプーリ4bに供給されるセカンダリ油圧Psを検出するセカンダリ油圧センサ69からの信号、等が入力される。
【0028】
続いて、図2及び図3を参照して、変速機コントローラ40が行う変速制御の処理について説明する。図2は、変速機コントローラ40が行う発進時の変速制御の処理をフローチャートで示す図である。図3は、第2変速比R2に設定された後にHigh側の変速比に変速する変速制御の処理をフローチャートで示す図である。変速制御の処理は、変速機コントローラ40にて一定時間ごとに実行される。
【0029】
まず、図2を参照して、変速機コントローラ40が行う発進時の変速制御の処理について説明する。発進時の変速制御は、運転者によってアクセルペダルが踏み込まれて車両100が発進するときに実行される。
【0030】
ここで、「発進」とは、車速がゼロの状態からアクセルペダルが踏み込まれて走行状態に移行する場合だけでなく、ブレーキペダルの操作が解除されて僅かな車速で走行する状態(クリープ走行状態)からアクセルペダルが踏み込まれて通常の走行状態に移行する場合も含むものである。
【0031】
ステップS11では、変速機コントローラ40は、発進時のアクセルペダル開度APOが所定開度以上か否かを判定する。ステップS11にて、アクセルペダル開度APOが所定開度未満であると判定された場合には、ステップS12に移行する。一方、ステップS11にて、アクセルペダル開度APOが所定開度以上であると判定された場合には、ステップS13に移行する。
【0032】
ステップS12では、アクセルペダル開度APOが比較的小さく、運転者の加速要求が大きくないので、変速機コントローラ40は、自動変速機20の変速比を第1変速比R1に設定する。
【0033】
ステップS13では、アクセルペダル開度APOが比較的大きく、運転者の加速要求が大きいので、変速機コントローラ40は、自動変速機20の変速比を第1変速比R1よりもLow側の第2変速比R2に設定する。
【0034】
ここで、自動変速機20は、車両100が走行状態から減速して停車状態になる前に、停車時の停車変速比RSに変速される。この停車変速比RSは、通常の変速制御にて用いる変速比の範囲のうち最もLow側のLow変速比RLである。これに対して、自動変速機20では、車両100の発進時に、ストッパ4hによって規定されるバリエータ4の構造上最もLow側の最Low変速比RMLを利用する。この最Low変速比RMLは、通常の変速制御にて用いる変速比の範囲よりも更にLow側の変速比である。
【0035】
自動変速機20は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進するときには、停車変速比RSであるLow変速比RL(第1変速比R1)に設定されたままであり、アクセルペダル開度APOが所定開度以上で発進するときには、Low変速比RLよりも更にLow側の最Low変速比RML(第2変速比R2)に変速される。即ち、運転者の加速要求が大きいときには、一対のプーリ4a、4bを有する自動変速機20として構造上得られる最Low側の最Low変速比RMLを利用して発進する。
【0036】
このように、アクセルペダル開度APOが所定開度以上の場合には、最Low変速比RMLで発進するので、運転者の発進加速要求に対応することができる。一方、アクセルペダル開度APOが所定開度未満の場合には、最Low変速比RMLよりもHigh側のLow変速比RLで発進するので、燃費が悪化することを抑制できる。したがって、燃費の悪化を抑制しながら、車両100の発進時の加速性能を向上させることができる。
【0037】
これに代えて、自動変速機20は、車両100が走行状態から減速して停止状態になる前に、最Low変速比RMLに変速されるものであってもよい。即ち、停車変速比RSは、最Low変速比RMLであってもよい。
【0038】
この場合、自動変速機20は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進するときには、停車変速比RSである最Low変速比RMLよりもHigh側の変速比(第1変速比R1)に変速され、アクセルペダル開度APOが所定開度以上で発進するときには、最Low変速比RML(第2変速比R2)に設定されたままである。
【0039】
この場合にも同様に、燃費の悪化を抑制しながら、車両100の発進時の加速性能を向上させることができる。
【0040】
次に、図3を参照して、第2変速比R2に設定された後にHigh側の変速比に変速する変速制御の処理について説明する。High側の変速比に変速する変速制御は、自動変速機20が第2変速比R2に設定されて車両100が発進した後に実行される。
【0041】
自動変速機20では、通常の変速制御にて用いる変速比の範囲よりも更にLow側の変速比である最Low変速比RMLを利用する。最Low変速比RMLを長い時間利用し続けると、ベルト4cとの接触面であるシーブ面4f、4gに作用する面圧が大きくなり、シーブ面4f、4gの温度が上昇する。また、最Low変速比RMLでの走行を続けると、エンジン回転速度が高い状態が続き、燃費が悪化するおそれがある。
【0042】
そこで、変速機コントローラ40は、運転者の加速要求に対応した後に、自動変速機20を第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速する。このとき、望ましくは、自動変速機20は、第1変速比R1か、若しくは第1変速比R1よりもHigh側の変速比に変速される。
【0043】
ステップS21では、変速機コントローラ40は、車両100が発進してから所定時間が経過したか否かを判定する。この所定時間は、例えば数秒程度に設定される。ステップS21にて、所定時間が経過したと判定された場合には、ステップS25に移行して、自動変速機20は、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0044】
このように、自動変速機20は、第2変速比R2に設定されて発進した後、所定時間が経過したら(ステップS21でYesの判定)、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される(ステップS25)。これにより、車両100の発進時の運転者の加速要求に対応してから所定時間が経過したら、自動変速機20はHigh側の変速比に変速されるので、燃費の悪化を抑制できる。
【0045】
一方、ステップS21にて、所定時間が経過していないと判定された場合には、ステップS22に移行する。
【0046】
ステップS22では、変速機コントローラ40は、プーリ4a、4bのシーブ面4f、4gの温度が所定値以上になったか否かを判定する。ここで、シーブ面4f、4gの温度は、例えば、以下の数式によって推定される。
Tp=ΔT+Tlub=(Qin-Qout)/C×(t1-t2)+Tlub
【0047】
このとき、Tpはシーブ面4f、4gの温度[℃]、ΔTは上昇温度[℃]、Tlubは潤滑油温(オイルパン油温)[℃]、(t1-t2)は単位時間[sec]、Qinは発熱率[J/sec]、Qoutは放熱率[J/sec]、Cは熱容量[J/℃]である。Qin≒「プライマリプーリ4aの推力」×「スリップ量」であり、「スリップ量」∝「プライマリプーリ4aの回転数」である。Qoutは、「チェーン潤滑流量」及び「プライマリプーリ4aの回転数」から求められ、「チェーン潤滑流量」は、「エンジン10の回転速度」、「ライン圧」、「油温」、及び「ロックアップクラッチ2aのON/OFF」から求められる。熱容量Cは、「潤滑流量」及び「プライマリプーリ4aの回転数」から求められる。
【0048】
ステップS22にて、シーブ面4f、4gの温度が所定値以上になったと判定された場合には、ステップS25に移行して、自動変速機20は、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0049】
このように、自動変速機20は、第2変速比R2に設定されて発進した後、所定時間が経過する前であっても(ステップS21でNoの判定)、プーリ4a、4bのシーブ面4f、4gの温度が所定値以上になったら(ステップS22でYesの判定)、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される(ステップS25)。これにより、車両100の発進時の運転者の加速要求に対応してから、プーリ4a、4bのシーブ面4f、4gの温度が所定以上になったらHigh側の変速比に変速されるので、プーリ4a、4bの負荷を軽減することができる。
【0050】
一方、ステップS22にて、シーブ面4f、4gの温度が所定値以上になっていないと判定された場合には、ステップS23に移行する。
【0051】
ステップS23では、変速機コントローラ40は、潤滑油の温度が所定値以上になったか否かを判定する。ステップS23にて、潤滑油の温度が所定値以上になったと判定された場合には、ステップS25に移行して、自動変速機20は、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0052】
このように、自動変速機20は、第2変速比R2に設定されて発進した後、所定時間が経過する前であっても(ステップS21でNoの判定)、潤滑油の温度が所定値以上になったら(ステップS23でYesの判定)、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される(ステップS25)。これにより、車両100の発進時の運転者の加速要求に対応してから、潤滑油の温度が所定以上になったら自動変速機20はHigh側の変速比に変速されるので、プーリ4a、4bの負荷を軽減することができる。
【0053】
一方、ステップS23にて、潤滑油の温度が所定値以上になっていないと判定された場合には、ステップS24に移行する。
【0054】
ステップS24では、変速機コントローラ40は、アップシフト指示があるか否かを判定する。アップシフト指示は、車両100がある程度の速度まで加速した場合の自動変速によるアップシフト指示か、若しくは運転者が踏み込んでいたアクセルペダルを戻した場合のアクセル戻しによるアップシフト指示である。ステップS24にて、アップシフト指示があると判定された場合には、ステップS25に移行して、自動変速機20は、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0055】
このように、自動変速機20は、第2変速比R2に設定されて発進した後、所定時間が経過する前であっても(ステップS21でNoの判定)、アップシフト指示があった場合には(ステップS24でYesの判定)、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される(ステップS25)。
【0056】
一方、ステップS24にて、アップシフト指示がないと判定された場合には、ステップS21に戻って判定を繰り返す。
【0057】
続いて、図4から図7を参照して、変速機コントローラ40が行う発進時の変速制御について具体的に説明する。
【0058】
まず、図4を参照して、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進した後、所定時間が経過してHigh側の変速比に変速される場合について説明する。図4は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進した後、所定時間が経過してHigh側の変速比に変速されることを説明するタイミングチャートである。
【0059】
時刻T11では、運転者によってアクセルペダルが踏み込まれる。これにより、エンジントルクが上昇する。このとき、アクセルペダル開度APOが所定開度以上であるため、セカンダリプーリ4bに供給される油圧の指示圧(SEC指示圧)が上昇する。これにより、自動変速機20の目標変速比が、停車変速比RSであるLow変速比RL(第1変速比R1)からLow変速比RLよりも更にLow側の最Low変速比RML(第2変速比R2)に設定される。また、目標変速比が最Low変速比RMLに設定されてからの経過時間がタイマによってカウントされる。
【0060】
時刻T12では、時刻T11から所定時間が経過したので、自動変速機20は、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。これにより、車両100の発進時の運転者の加速要求に対応してから所定時間が経過したらHigh側の変速比に変速されるので、燃費の悪化を抑制できる。
【0061】
次に、図5を参照して、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進した後、プーリ4a、4bのシーブ面4f、4gの温度が所定値以上になってHigh側の変速比に変速される場合について説明する。図5は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進した後、プーリ4a、4bのシーブ面4f、4gの温度が所定値以上になってHigh側の変速比に変速されることを説明するタイミングチャートである。
【0062】
時刻T21では、運転者によってアクセルペダルが踏み込まれる。これにより、エンジントルクが上昇する。このとき、アクセルペダル開度APOが所定開度以上であるため、セカンダリプーリ4bに供給される油圧の指示圧(SEC指示圧)が上昇する。これにより、自動変速機20の目標変速比が、停車変速比RSであるLow変速比RL(第1変速比R1)からLow変速比RLよりも更にLow側の最Low変速比RML(第2変速比R2)に設定される。また、目標変速比が最Low変速比RMLに設定されてからの経過時間がタイマによってカウントされる。
【0063】
時刻T22では、時刻T21から所定時間が経過していないが、プーリ4a、4bのシーブ面4f、4gの温度が所定値以上になったので、自動変速機20は、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。これにより、プーリ4a、4bの負荷を軽減することができる。
【0064】
なお、シーブ面4f、4gの温度ではなく潤滑油の温度が所定値以上になった場合も同様の変速制御が行われ、プーリ4a、4bの負荷を軽減することができる。
【0065】
次に、図6を参照して、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進した後、自動変速によるアップシフト指示によってHigh側の変速比に変速される場合について説明する。図6は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進した後、自動変速によるアップシフト指示によってHigh側の変速比に変速されることを説明するタイミングチャートである。
【0066】
時刻T31では、運転者によってアクセルペダルが踏み込まれる。これにより、エンジントルクが上昇する。このとき、アクセルペダル開度APOが所定開度以上であるため、セカンダリプーリ4bに供給される油圧の指示圧(SEC指示圧)が上昇する。これにより、自動変速機20の目標変速比が、停車変速比RSであるLow変速比RL(第1変速比R1)からLow変速比RLよりも更にLow側の最Low変速比RML(第2変速比R2)に設定される。また、目標変速比が最Low変速比RMLに設定されてからの経過時間がタイマによってカウントされる。
【0067】
時刻T32では、車両100がある程度の速度まで加速した場合の自動変速によるアップシフト指示により、自動変速機20は、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0068】
このように、自動変速機20は、第2変速比R2に設定されて発進した後、所定時間が経過する前であっても、自動変速によるアップシフト指示があった場合には、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0069】
次に、図7を参照して、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進した後、アクセル戻しによるアップシフト指示によってHigh側の変速比に変速される場合について説明する。図7は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進した後、アクセル戻しによるアップシフト指示によってHigh側の変速比に変速されることを説明するタイミングチャートである。
【0070】
時刻T41では、運転者によってアクセルペダルが踏み込まれる。これにより、エンジントルクが上昇する。このとき、アクセルペダル開度APOが所定開度以上であるため、セカンダリプーリ4bに供給される油圧の指示圧(SEC指示圧)が上昇する。これにより、自動変速機20の目標変速比が、停車変速比RSであるLow変速比RL(第1変速比R1)からLow変速比RLよりも更にLow側の最Low変速比RML(第2変速比R2)に設定される。また、目標変速比が最Low変速比RMLに設定されてからの経過時間がタイマによってカウントされる。
【0071】
時刻T42では、運転者が踏み込んでいたアクセルペダルを戻した場合のアクセル戻しによるアップシフト指示により、自動変速機20は、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0072】
このように、自動変速機20は、第2変速比R2に設定されて発進した後、所定時間が経過する前であっても、アクセル戻しによるアップシフト指示があった場合には、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0073】
以上の本実施形態の構成及び作用効果について、まとめて説明する。
【0074】
自動変速機20は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進するときには第1変速比R1に設定され、アクセルペダル開度APOが所定開度以上で発進するときには第1変速比R1よりもLow側の第2変速比R2に設定される。
【0075】
また、自動変速機20の制御方法は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進するときには自動変速機20を第1変速比R1に設定し、アクセルペダル開度APOが所定開度以上で発進するときには自動変速機20を第1変速比R1よりもLow側の第2変速比R2に設定する。
【0076】
これらの構成によれば、アクセルペダル開度APOが所定開度以上の場合には、自動変速機20が所定開度未満の場合の変速比よりもLow側の変速比に設定されて発進するので、運転者の加速要求に対応した発進加速を実現できる。一方、アクセルペダル開度APOが所定開度未満の場合には、自動変速機20が所定開度以上の場合の変速比よりもHigh側の変速比に設定されて発進するので、燃費が悪化することを抑制できる。したがって、燃費の悪化を抑制しながら、車両100の発進時の加速性能を向上させることができる。
【0077】
また、自動変速機20は、エンジン10側と駆動輪50側とに各々設けられる一対のプーリ4a、4bと、一対のプーリ4a、4bの間に掛け回されたベルト4cと、を有するバリエータ4と、バリエータ4の最もLow側の最Low変速比RMLを規定するストッパ4hと、を備え、第2変速比R2は、最Low変速比RMLである。
【0078】
この構成によれば、一対のプーリ4a、4bを有する自動変速機20として構造上得られる最もLow側の変速比で発進することができるので、車両100の発進時の加速性能を向上させることができる。
【0079】
また、自動変速機20は、第2変速比R2に設定されて発進した後、所定時間が経過したら、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0080】
この構成によれば、車両100の発進時の運転者の加速要求に対応してから所定時間が経過したらHigh側の変速比に変速されるので、燃費の悪化を抑制できる。
【0081】
また、自動変速機20は、第2変速比R2に設定されて発進した後、一対のプーリ4a、4bのシーブ面4f、4gの温度が所定値以上になったら、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0082】
この構成によれば、車両100の発進時の運転者の加速要求に対応してから、プーリ4a、4bのシーブ面4f、4gの温度が所定以上になったらHigh側の変速比に変速されるので、プーリ4a、4bの負荷を軽減することができる。
【0083】
また、自動変速機20は、第2変速比R2に設定されて発進した後、潤滑油の温度が所定値以上になったら、第2変速比R2よりもHigh側の変速比に変速される。
【0084】
この構成によれば、車両100の発進時の運転者の加速要求に対応してから、潤滑油の温度が所定以上になったらHigh側の変速比に変速されるので、プーリ4a、4bの負荷を軽減することができる。
【0085】
また、走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比RSに変速する自動変速機20は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進するときには、停車変速比RSよりもHigh側の変速比に設定され、アクセルペダル開度APOが所定開度以上で発進するときには、停車変速比RSに設定される。
【0086】
また、走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比RSに変速する自動変速機20の制御方法は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進するときには、自動変速機20を停車変速比RSよりもHigh側の変速比に設定し、アクセルペダル開度APOが所定開度以上で発進するときには、自動変速機20を停車変速比RSに設定する。
【0087】
これらの構成によれば、アクセルペダル開度APOが所定開度未満の場合には、停車変速比RSよりもHigh側の変速比で発進することにより、運転者の加速要求に対応することができる。また、アクセルペダル開度APOが所定開度未満の場合には、停車変速比RSで発進することにより、燃費の悪化を抑制することができる。
【0088】
また、走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比RSに変速する自動変速機20は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進するときには、停車変速比RSに設定され、アクセルペダル開度APOが所定開度以上で発進するときには、停車変速比RSよりもLow側の変速比に設定される。
【0089】
また、走行状態から停車状態になる前に停車時の停車変速比RSに変速する自動変速機20の制御方法は、アクセルペダル開度APOが所定開度未満で発進するときには、自動変速機20を停車変速比RSに設定し、アクセルペダル開度APOが所定開度以上で発進するときには、自動変速機20を停車変速比RSよりもLow側の変速比に設定する。
【0090】
これらの構成によれば、アクセルペダル開度APOが所定開度以上の場合には、所定開度未満の場合の変速比よりもLow側の変速比で発進することにより、運転者の加速要求に対応することができる。また、アクセルペダル開度APOが所定開度未満の場合には、所定開度以上の場合の変速比よりもHigh側の変速比で発進することにより、燃費の悪化を抑制することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0092】
変速機コントローラ40が実行する各種プログラムは、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体に記憶されたものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0093】
20 自動変速機
4 バリエータ
4a プライマリプーリ(プーリ)
4b セカンダリプーリ(プーリ)
4f シーブ面
4g シーブ面
4h ストッパ
40 変速機コントローラ(コンピュータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7