(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】誤り率測定装置及び誤り率測定方法
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
H04L1/00 C
(21)【出願番号】P 2023044408
(22)【出願日】2023-03-20
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】城所 久生
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-158414(JP,A)
【文献】特開2021-087216(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0042380(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0232520(US,A1)
【文献】MX183000A ハイスピード シリアルデータ テスト ソフトウエア 取扱説明書 [online],第24版,日本,アンリツ株式会社,2023年10月17日,Page 1-2, 130-133,https://dl.cdn-anritsu.com/ja-jp/test-measurement/files/Manuals/Operation-Manual/MP1900A/mx183000a_opm_j_24_0.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00-1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EIEOSとSKP OSを含むMCP、前記MCPのパターン長、ハイスピードバス規格で定義されるレーン数に応じたFlit長、Flitエラーを判別するための閾値、前記MCPのパターン先頭、SRISかNot SRISの選択の設定を行う操作部(2)と、
前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を発生してループバック状態の被測定物(W)に送信するパターン発生器(3)と、
前記ループバック状態の被測定物から折り返して送信される前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を受信し、受信したPAM4信号のMCPスクランブル領域を擬似的に前記Flit長の長さに区切り、前記EIEOSと前記SKP OSに相当する部分を測定対象外としてFlitに相当する部分のエラーを検出してカウントするエラー検出部(44)と、前記Flitに相当する部分のECC GroupごとのFECシンボルエラーを検出してFECシンボルエラー数をカウントし、FECシンボルエラー数が前記閾値を超えたものをFlitエラーと判定するFlitエラー検出部(45)と、前記エラー検出部にて検出される前記Flitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を上回ったときに、前記MCPのパターン先頭の再取得を指示する同期状態管理部(46)とを含むエラー検出器(4)と、
を備えたことを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項2】
前記SKP OSに相当する部分を測定対象外とするときに、該当部分のビットエラーをマスクするか、前記SKP OS自体をフィルタリングして除去するかを前記操作部にて選択設定することを特徴とする請求項1に記載の誤り率測定装置。
【請求項3】
前記Flitに相当する部分について、前記ハイスピード
バス規格のコーディング解除無しか、前記ハイスピード
バス規格のコーディング解除有りかを前記
操作部にて選択設定することを特徴とする請求項1に記載の誤り率測定装置。
【請求項4】
前記被測定物とリンクトレーニングを行い、前記被測定物のLTSSMをループバック状態に遷移させることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の誤り率測定装置。
【請求項5】
EIEOSとSKP OSを含むMCP、前記MCPのパターン長、ハイスピードバス規格で定義されるレーン数に応じたFlit長、Flitエラーを判別するための閾値、前記MCPのパターン先頭、SRISかNot SRISの選択の設定を行う操作部(2)と、
前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を発生してループバック状態の被測定物(W)に送信するパターン発生器(3)と、
前記ループバック状態の被測定物から折り返して送信される前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を受信し、受信したPAM4信号のMCPスクランブル領域を擬似的に前記Flit長の長さに区切り、前記EIEOSと前記SKP OSに相当する部分を測定対象外としてFlitに相当する部分のエラーを検出してカウントするエラー検出部(44)と、前記Flitに相当する部分のECC GroupごとのFECシンボルエラーを検出してFECシンボルエラー数をカウントし、FECシンボルエラー数が前記閾値を超えたものをFlitエラーと判定するFlitエラー検出部(45)と、前記エラー検出部にて検出される前記Flitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を上回ったときに、前記MCPのパターン先頭の再取得を指示する同期状態管理部(46)とを含むエラー検出器(4)と、
を備え、
前記SKP OSに相当する部分を測定対象外とするときに、該当部分のビットエラーをマスクするか、前記SKP OS自体をフィルタリングして除去するかを前記操作部にて選択設定し、
前記Flitに相当する部分について、前記ハイスピード
バス規格のコーディング解除無しか、前記ハイスピード
バス規格のコーディング解除有りかを前記
操作部にて選択設定し、
前記被測定物とリンクトレーニングを行い、前記被測定物のLTSSMをループバック状態に遷移させることを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項6】
EIEOSとSKP OSを含むMCP、前記MCPのパターン長、ハイスピードバス規格で定義されるレーン数に応じたFlit長、Flitエラーを判別するための閾値、前記MCPのパターン先頭、SRISかNot SRISの選択の設定を操作部(2)にて行うステップと、
前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号をパターン発生器(3)にて発生してループバック状態の被測定物(W)に送信するステップと、
エラー検出器(4)のエラー検出部(44)により、前記ループバック状態の被測定物から折り返して送信される前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を受信し、受信したPAM4信号のMCPスクランブル領域を擬似的に前記Flit長の長さに区切り、前記EIEOSと前記SKP OSに相当する部分を測定対象外としてFlitに相当する部分のエラーを検出してカウントするステップと、
前記エラー検出器のFlitエラー検出部(45)により、前記Flitに相当する部分のECC GroupごとのFECシンボルエラーを検出してFECシンボルエラー数をカウントし、FECシンボルエラー数が前記閾値を超えたものをFlitエラーと判定するステップと、
前記エラー検出器にて検出される前記Flitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を上回ったときに、前記MCPのパターン先頭の再取得を指示するステップと、を含むことを特徴とする誤り率測定方法。
【請求項7】
前記SKP OSに相当する部分を測定対象外とするときに、該当部分のビットエラーをマスクするか、前記SKP OS自体をフィルタリングして除去するかを前記操作部にて選択設定するステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の誤り率測定方法。
【請求項8】
前記Flitに相当する部分について、前記ハイスピード
バス規格のコーディング解除無しか、前記ハイスピード
バス規格のコーディング解除有りかを前記
操作部にて選択設定するステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の誤り率測定方法。
【請求項9】
前記被測定物とリンクトレーニングを行い、前記被測定物のLTSSMをループバック状態に遷移させるステップを含むことを特徴とする請求項6~8の何れかに記載の誤り率測定方法。
【請求項10】
EIEOSとSKP OSを含むMCP、前記MCPのパターン長、ハイスピードバス規格で定義されるレーン数に応じたFlit長、Flitエラーを判別するための閾値、前記MCPのパターン先頭、SRISかNot SRISの選択の設定を操作部(2)にて行うステップと、
前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号をパターン発生器(3)にて発生してループバック状態の被測定物(W)に送信するステップと、
エラー検出器(4)のエラー検出部(44)により、前記ループバック状態の被測定物から折り返して送信される前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を受信し、受信したPAM4信号のMCPスクランブル領域を擬似的に前記Flit長の長さに区切り、前記EIEOSと前記SKP OSに相当する部分を測定対象外としてFlitに相当する部分のエラーを検出してカウントするステップと、
前記エラー検出器のFlitエラー検出部(45)により、前記Flitに相当する部分のECC GroupごとのFECシンボルエラーを検出してFECシンボルエラー数をカウントし、FECシンボルエラー数が前記閾値を超えたものをFlitエラーと判定するステップと、
前記エラー検出器にて検出される前記Flitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を上回ったときに、前記MCPのパターン先頭の再取得を指示するステップと、
前記SKP OSに相当する部分を測定対象外とするときに、該当部分のビットエラーをマスクするか、前記SKP OS自体をフィルタリングして除去するかを前記操作部にて選択設定するステップと、
前記Flitに相当する部分について、前記ハイスピード
バス規格のコーディング解除無しか、前記ハイスピード
バス規格のコーディング解除有りかを前記
操作部にて選択設定するステップと、
前記被測定物とリンクトレーニングを行い、前記被測定物のLTSSMをループバック状態に遷移させるステップと、を含むことを特徴とする誤り率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンクトレーニングでループバック状態に遷移するデバイスを被測定物とし、ループバック状態の被測定物から折り返して送信されるMCPのビット列データに基づくPAM4信号のエラー測定を行う誤り率測定装置及び誤り率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誤り率測定装置は、固定データを含む既知パターンのテスト信号を被測定物に送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信した被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較してビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定する装置として従来から知られている。
【0003】
また、下記特許文献1に開示されるように、IEEE 802.3規格に準拠したRS-FEC測定機能を有する誤り率測定装置が知られている。この誤り率測定装置では、コードワード長で区切った領域のコードワード長ごとのFECシンボルエラー数を集計し、各々のエラーカウント数及びエラーレートを取得して表示していた。
【0004】
ところで、PCI Express5.0の物理層評価は、被測定物のLTSSM(Link Training and Status State Machine)とリンクトレーニングを行って被測定物をLoopback状態(信号折り返しの状態)にし、MCP(Modified Compliance Pattern)を用いて行われていた。このときの性能指標は、BER<10-12 である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PCI Express6.0ではFECが導入された。しかしながら、PCI Express6.0でもMCPが定義されているが、FECガードの対象外となっている。性能指標用に用意されたMCPは、FECガードされたFlitと異なるパターンであり、FECによるエラー訂正を持っていない。このため、Flitとは異なるパターン長、SKP OS(SKP Ordered Sets)間隔のMCPを用いてビットエラーの状況を評価するだけでは、実際にFlitパターンを流したときのFlitエラーの状況を把握することが難しいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、MCPを用いてビットエラーだけでなく、Flitエラーの測定を同時に行う誤り率測定装置及び誤り率測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された誤り率測定装置は、EIEOSとSKP OSを含むMCP、前記MCPのパターン長、ハイスピードバス規格で定義されるレーン数に応じたFlit長、Flitエラーを判別するための閾値、前記MCPのパターン先頭、SRISかNot SRISの選択の設定を行う操作部2と、
前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を発生してループバック状態の被測定物Wに送信するパターン発生器3と、
前記ループバック状態の被測定物から折り返して送信される前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を受信し、受信したPAM4信号のMCPスクランブル領域を擬似的に前記Flit長の長さに区切り、前記EIEOSと前記SKP OSに相当する部分を測定対象外としてFlitに相当する部分のエラーを検出してカウントするエラー検出部44と、前記Flitに相当する部分のECC GroupごとのFECシンボルエラーを検出してFECシンボルエラー数をカウントし、FECシンボルエラー数が前記閾値を超えたものをFlitエラーと判定するFlitエラー検出部45と、前記エラー検出部にて検出される前記Flitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を上回ったときに、前記MCPのパターン先頭の再取得を指示する同期状態管理部46とを含むエラー検出器4と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載された誤り率測定装置は、請求項1の誤り率測定装置において、
前記SKP OSに相当する部分を測定対象外とするときに、該当部分のビットエラーをマスクするか、前記SKP OS自体をフィルタリングして除去するかを前記操作部にて選択設定することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に記載された誤り率測定装置は、請求項1の誤り率測定装置において、
前記Flitに相当する部分について、前記ハイスピードバス規格のコーディング解除無しか、前記ハイスピードバス規格のコーディング解除有りかを前記操作部にて選択設定することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に記載された誤り率測定装置は、請求項1~3の何れかの誤り率測定装置において、
前記被測定物とリンクトレーニングを行い、前記被測定物のLTSSMをループバック状態に遷移させることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5に記載された誤り率測定装置は、EIEOSとSKP OSを含むMCP、前記MCPのパターン長、ハイスピードバス規格で定義されるレーン数に応じたFlit長、Flitエラーを判別するための閾値、前記MCPのパターン先頭、SRISかNot SRISの選択の設定を行う操作部2と、
前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を発生してループバック状態の被測定物Wに送信するパターン発生器3と、
前記ループバック状態の被測定物から折り返して送信される前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を受信し、受信したPAM4信号のMCPスクランブル領域を擬似的に前記Flit長の長さに区切り、前記EIEOSと前記SKP OSに相当する部分を測定対象外としてFlitに相当する部分のエラーを検出してカウントするエラー検出部44と、前記Flitに相当する部分のECC GroupごとのFECシンボルエラーを検出してFECシンボルエラー数をカウントし、FECシンボルエラー数が前記閾値を超えたものをFlitエラーと判定するFlitエラー検出部45と、前記エラー検出部にて検出される前記Flitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を上回ったときに、前記MCPのパターン先頭の再取得を指示する同期状態管理部46とを含むエラー検出器4と、
を備え、
前記SKP OSに相当する部分を測定対象外とするときに、該当部分のビットエラーをマスクするか、前記SKP OS自体をフィルタリングして除去するかを前記操作部にて選択設定し、
前記Flitに相当する部分について、前記ハイスピードバス規格のコーディング解除無しか、前記ハイスピードバス規格のコーディング解除有りかを前記操作部にて選択設定し、
前記被測定物とリンクトレーニングを行い、前記被測定物のLTSSMをループバック状態に遷移させることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項6に記載された誤り率測定方法は、EIEOSとSKP OSを含むMCP、前記MCPのパターン長、ハイスピードバス規格で定義されるレーン数に応じたFlit長、Flitエラーを判別するための閾値、前記MCPのパターン先頭、SRISかNot SRISの選択の設定を操作部2にて行うステップと、
前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号をパターン発生器3にて発生してループバック状態の被測定物Wに送信するステップと、
エラー検出器4のエラー検出部44により、前記ループバック状態の被測定物から折り返して送信される前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を受信し、受信したPAM4信号のMCPスクランブル領域を擬似的に前記Flit長の長さに区切り、前記EIEOSと前記SKP OSに相当する部分を測定対象外としてFlitに相当する部分のエラーを検出してカウントするステップと、
前記エラー検出器のFlitエラー検出部45により、前記Flitに相当する部分のECC GroupごとのFECシンボルエラーを検出してFECシンボルエラー数をカウントし、FECシンボルエラー数が前記閾値を超えたものをFlitエラーと判定するステップと、
前記エラー検出器の同期状態管理部46により、前記エラー検出部にて検出される前記Flitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を上回ったときに、前記MCPのパターン先頭の再取得を指示するステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項7に記載された誤り率測定方法は、請求項6の誤り率測定方法において、
前記SKP OSに相当する部分を測定対象外とするときに、該当部分のビットエラーをマスクするか、前記SKP OS自体をフィルタリングして除去するかを前記操作部にて選択設定するステップを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項8に記載された誤り率測定方法は、請求項6の誤り率測定方法において、
前記Flitに相当する部分について、前記ハイスピードバス規格のコーディング解除無しか、前記ハイスピードバス規格のコーディング解除有りかを前記操作部にて選択設定するステップを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項9に記載された誤り率測定方法は、請求項6~8の何れかの誤り率測定方法において、
前記被測定物とリンクトレーニングを行い、前記被測定物のLTSSMをループバック状態に遷移させるステップを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項10に記載された誤り率測定方法は、EIEOSとSKP OSを含むMCP、前記MCPのパターン長、ハイスピードバス規格で定義されるレーン数に応じたFlit長、Flitエラーを判別するための閾値、前記MCPのパターン先頭、SRISかNot SRISの選択の設定を操作部2にて行うステップと、
前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号をパターン発生器3にて発生してループバック状態の被測定物Wに送信するステップと、
エラー検出器4のエラー検出部44により、前記ループバック状態の被測定物から折り返して送信される前記MCPのビット列データに基づくPAM4信号を受信し、受信したPAM4信号のMCPスクランブル領域を擬似的に前記Flit長の長さに区切り、前記EIEOSと前記SKP OSに相当する部分を測定対象外としてFlitに相当する部分のエラーを検出してカウントするステップと、
前記エラー検出器のFlitエラー検出部45により、前記Flitに相当する部分のECC GroupごとのFECシンボルエラーを検出してFECシンボルエラー数をカウントし、FECシンボルエラー数が前記閾値を超えたものをFlitエラーと判定するステップと、
前記エラー検出器にて検出される前記Flitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を上回ったときに、前記MCPのパターン先頭の再取得を指示するステップと、
前記SKP OSに相当する部分を測定対象外とするときに、該当部分のビットエラーをマスクするか、前記SKP OS自体をフィルタリングして除去するかを前記操作部にて選択設定するステップと、
前記Flitに相当する部分について、前記ハイスピードバス規格のコーディング解除無しか、前記ハイスピードバス規格のコーディング解除有りかを前記操作部にて選択設定するステップと、
前記被測定物とリンクトレーニングを行い、前記被測定物のLTSSMをループバック状態に遷移させるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リンクトレーニングで被測定物をループバック状態に遷移させた後、PCIe Gen6の物理層評価で使われているMCP(Modified Compliance Pattern)を用いて、擬似的にFlitとそれ以外とに区別を行い、Flit領域についてのFECシンボルエラー状況から、Flitエラーが起きるかを推定することが可能となる。また、FECでガードされたパターンと、FECでガードされていないパターンが混在する環境でもFECでガードされたパターンを識別し、Uncorrectableになるかの判定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る誤り率測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1におけるエラー検出器の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】PCI Express6.0規格で定義されるFlitの説明図である。
【
図4】FlitのECC Groupごとのエラー数、Flit内のFECシンボルエラー数ごとのFlit数の一例を示す図である。
【
図5】Not SRISパターンのときの本発明に係る誤り率測定装置によるエラー測定方法の概略説明図である。
【
図6】SRISパターンのときの本発明に係る誤り率測定装置によるエラー測定方法の概略説明図である。
【
図7】本発明に係る誤り率測定装置における各種エラー検出のタイミングチャートの一例を示す図である。
【
図8】
図2におけるFlitエラー検出部の内部構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明に係る誤り率測定装置におけるECC Group毎のFECシンボルエラー検出のタイミングチャートの一例を示す図である。
【
図10】本発明に係る誤り率測定装置の処理動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態の誤り率測定装置1は、リンクトレーニングでループバック状態に遷移するデバイスを被測定物(DUT:Device Under Test)Wとし、ハイスピードバス規格としてのPCI Express6.0(以下、PCIe Gen6と言う)規格の物理層のエラー測定において、MCPを用いてビットエラーだけでなく、Flitエラー(FlitのFECがUncorrectableになるか)の測定を同時に行う機能を有するものであり、操作部2、パターン発生器3、エラー検出器4を備えて概略構成される。
【0022】
なお、本実施の形態が対象とするPCIe Gen6規格では、取り扱う信号がPAM4信号となる。また、Flitの概念はPCIe Gen6から定義されたが、同様のFlitの概念を用いた今後のPCI Express規格にも本発明の適用は可能である。さらに、本実施の形態では、PCIe Gen6を例示して説明するが、例えばUSB等の他のハイスピードバス規格において、Flitエラーを測定する場合にも本発明の適用は可能である。
【0023】
[Flitについて]
まず、本実施の形態の誤り率測定装置1が取り扱うPCIe Gen6規格で定義されるFlitについて
図3および
図4を参照しながら説明する。Flitは、PCIe Gen6規格において、LTSSM(Link Training and Status State Machine:リンク状態管理機構)のステートがL0のとき送信されるデータフォーマットであり、FECによるエラー訂正機能を有している。
【0024】
1Flitは、
図3に示すように、3つのECC Group(ECC Group0、ECC Group1、ECC Group2)でインターリーブされる。1つのECC Groupは、1FECシンボル(4PAM4シンボル=8bit)で区切られる。
【0025】
そして、FlitがUncorrectableになる条件を要約すると、1Flit内において同じECC Groupに2回FECシンボルエラーが入った場合にUncorrectableとなる。
【0026】
さらに
図4を用いて説明する。
図4はFlitのECC Groupごとのエラー数、Uncorrectable数(2以上)、Flit内のFECシンボルエラー数(0~7、8以上)ごとのFlit数の一例を示している。なお、
図4において、右下がりの斜線で示す部分はUncorrectableになる部分を示し、右上がりの斜線で示す部分はUncorrectableになる場合とUncorrectableにならない場合がある部分を示している。
【0027】
例えばFECシンボルエラー閾値:n≧2の場合を例にとって
図4を参照しながら説明する。
図4の点線で囲まれるA(Flit数:3)では、Flit内のFECシンボルエラーが2個発生しているが、別々のECC Group(この場合、ECC Group0とECC Group1)のエラー数が1個ずつなので、Uncorrectableにならない。
【0028】
これに対し、
図4の点線で囲まれるB(Flit数:5)では、Flit内のFECシンボルエラーが4個発生しているだけでなく、ECC Groupごとのエラー数で見ても、何れかのECC Group(この場合、ECC Group0)のエラー数が2個なので、Uncorrectableになる。
【0029】
また、
図4の点線で囲まれるC(Flit数:9)では、Flit内のFECシンボルエラーが2個発生し、同じECC Group(この場合、ECC Group0)のエラー数が2個なので、Uncorrectableになる。
【0030】
このように、PCIe Gen6では、新しくFlitのモードが導入されており、Flitは256FECシンボル長(1FECシンボル=8bit)で、FECによるエラー訂正機能を有している。また、Gen6のFlitは1b/1bエンコーディングされているものなので、1FECシンボル=1b/1bシンボルでもある。FlitのFECは、3-way interleaved ECCであり、各ECC Groupはシングルバイトエラー(1FECシンボルのエラー)を訂正することができる。
【0031】
そして、1Flitでは、3FECシンボルまでの誤りが訂正可能であり、誤り訂正ができない場合、Flitエラー(ECCがUncorrectable)となる。しかし、3FECシンボル誤りでも誤り位置の発生状況によっては、訂正不可となってしまう。例えば、ECC Group0のシンボル0、ECC Group1のシンボル1、ECC Group2のシンボル2が誤りであった場合は訂正可能であるが、同じECC Group0のシンボル0、3、6が誤りであった場合は訂正不可となる。これは同じビットエラーレートでも、ビットエラーの発生位置によってFlitエラー発生数が異なることを意味する。
【0032】
[本発明の概要について]
図5や
図6に示すように、誤り率測定装置1は、被測定物Wをリンクトレーニングでループバック状態にした後に被測定物WにMCPを送信する。このとき受信したMCPのスクランブル領域(16 1b/1bシンボル×256Block=32768bit)を一定間隔で区切り(擬似的にFlitの長さ(256FECシンボル=2048bit)に区切り)、Flitに相当する部分のエラー(ビットエラー、PAM4シンボルエラー、FECシンボルエラー)とFlitエラーを同時に測定する。このとき、SKP OS(SKP Ordered Sets、以下、SKPと省略する:図面上では「SKP」にて図示)位置のパターンをマスクし、さらにEIEOS(Electrical Idle Exit Ordered Set)位置のパターンをマスクすることで測定対象外とし、Flitに相当する部分のみエラー(ビットエラー、PAM4シンボルエラー、FECシンボルエラー)をカウントする。また、Flit部分については、ECCグループ毎のFECシンボルエラーをカウントし、FECシンボルエラー数がFECシンボルエラー閾値を超えたものをFlitエラーと判定する。
【0033】
上記エラー測定を行うにあたって、SKPに相当する部分を測定対象外とする方法は、該当部分のビットエラーをマスクする方法と、SKP自体をフィルタリングして除去する方法の2つを操作部2にて選択可能とする。また、Flitに相当する部分については、PCIe Gen6のコーディング解除無しと、PCIe Gen6のコーディング解除有りを操作部2にて選択可能とし、コーディング解除の有無によるエラーの発生具合を確認可能とする。なお、MCPは、Not SRISパターンと、SRISパターンとの2種類が存在するが、
図5や
図6に示すように、どちらのパターンでも測定を行うことができる。
【0034】
[誤り率測定装置の各部の構成について]
操作部2は、設定手段や表示手段としても機能するものであり、
図1の誤り率測定装置1の本体に備える例えば操作ノブ、各種キー、スイッチ、ボタンや表示手段の表示画面上のソフトキーなどのユーザインタフェースで構成され、ユーザの操作に応じて各種設定、指示や測定結果の表示を行う。
【0035】
操作部2にて設定される設定内容としては、MCP(含むEIEOS,SKP)、MCPのパターン長、レーン数に応じたFlit長、SKPに相当する部分をマスクするためのマスクパターン長、SKPの繰り返し周期に相当するマスクパターン周期、Flitエラーを判別するための閾値、EIEOSに相当する部分をマスクするためのマスクパターン長、EIEOSの挿入周期、MCPのパターン先頭、SRISかNot SRISの選択の設定がある。また、操作部2では、SKPを測定対象外とする方法として、該当部分のビットエラーをマスクする方法と、SKP自体をフィルタリングして除去する方法の何れかを選択可能とし、Flit部分については、PCIe Gen6のコーディング解除無しと、PCIe Gen6のコーディング解除有りの何れかを選択可能としている。
【0036】
パターン発生器3は、操作部2からの指示に従い、MCPエラー測定パターンを発生するもので、
図1に示すように、第1選択部11、第1シーケンス発生部12、第2シーケンス発生部13、測定パターン発生部14、第1エンコーダ15、第2エンコーダ16、第2選択部17、ビット分割部18、PAM4エンコーダ19を備えて構成される。
【0037】
第1選択部11は、Link Speedに応じて第1シーケンス発生部12、第2シーケンス発生部13、測定パターン発生部14からの何れかの送信完了信号を選択してLTSSM36に出力する。
【0038】
第1シーケンス発生部12は、PCIe Gen1-2で使用されるTS1、TS2、EIEOS、SKPなどのトレーニングシーケンス(TSx OS)と、PCIe Gen3-5で使用されるTS1、TS2、EIEOS、SKPなどのトレーニングシーケンス(TSx OS)を選択的に発生する。
【0039】
第2シーケンス発生部13は、PCIe Gen6で使用されるTS0、TS1、TS2、EIEOS、SKPなどのトレーニングシーケンス(TSx OS)を発生する。
【0040】
測定パターン発生部14は、被測定物Wに送信するMCPエラー測定パターンの元になるパターンとして、操作部2にて設定されるMCP(含むEIEOS,SKP)の1周期、レーン数に応じたFlit長によるMCPを発生する。
【0041】
第1エンコーダ15は、8b/10bエンコーダと128b/130bエンコーダから構成される。8b/10bエンコーダは、第1シーケンス発生部12にて発生するトレーニングシーケンスに対し、PCIe Gen1-2で使用される8b/10bエンコーディングを行う。また、128b/130bエンコーダは、第1シーケンス発生部12にて発生するトレーニングシーケンスに対し、PCIe Gen3-5で使用される128b/130bエンコーディングを行う。
【0042】
第2エンコーダ16は、第1シーケンス発生部12にて発生するトレーニングシーケンスに対し、PCIe Gen6で使用される1b/1bエンコーディングを行う。
【0043】
第2選択部17は、LTSSM36からのLTSSM状態とLink Speedに応じて測定パターン発生部14、第1エンコーダ15、第2エンコーダ16の何れかの出力データを選択する。
【0044】
ビット分割部18は、LTSSM36から指示されるLink Speedに応じて、入力信号を最上位ビット列データ(以下、MSBデータと言う)と最下位ビット列データ(以下、LSBデータと言う)に振り分ける。なお、PCIe Gen1-5では、NRZとなるようにMSBデータとLSBデータに同じ信号を出力し、PCIe Gen6では、PAM4信号となるように入力信号をビットインターリーブしてMSBデータとLSBデータに出力する。
【0045】
PAM4エンコーダ19は、ビット分割部18にて分割されたMSBデータとLSBデータをPAM4エンコードし、PAM4エンコードしたPAM4信号をFlitエラー測定パターンとして出力する。
【0046】
エラー検出器4は、パターン発生器3からMCPエラー測定パターン(PAM4信号)が被測定物Wに送信されたときに、リンクトレーニングによりループバック状態に遷移した被測定物Wから折り返されるMCPエラー測定パターン(PAM4信号)を受信してエラーを検出するもので、
図2に示すように、PAM4デコーダ21、ビット合成部22、第1同期部23、第1SKPフィルタ部24、処理回路25、第1スクランブル解析部26、第2同期部27、第2SKPフィルタ部28、Precodingデコーダ29、第1遅延部30、第1選択部31、Graycodingデコーダ32、第2遅延部33、第2選択部34、第2スクランブル解析部35、LTSSM36、第3選択部37、ビット分割部38、同期パターン検出部39、リファレンスパターン生成部40、シンボルマスク生成部41、第3遅延部42、第4遅延部43、エラー検出部44、Flitエラー検出部45、同期状態管理部46を備えて構成される。
【0047】
PAM4デコーダ21は、被測定物Wから受信したMCPエラー測定パターン(PAM4信号)のPAM4シンボルを、MSBデータとLSBデータにデコードして分離する。
【0048】
ビット合成部22は、PAM4デコーダ21にてデコードされたMSBデータとLSBデータをビットMUXにより合成して第1同期部23、第2同期部27に出力する。
【0049】
第1同期部23、第1SKPフィルタ部24、デコーダ25、第1スクランブル解析部26は、PCIe Gen1-5に対応した回路である。
【0050】
第1同期部23は、8b/10b同期部と128b/130b同期部から構成される。8b/10b同期部は、ビット合成部22にて合成されたデータからPCIe Gen1-2のEIEOSパターンを見つけ、10bitの区切りでシンボル同期を取り、入力データをシンボル境界で揃えて出力する。また、128b/130b同期部は、ビット合成部22にて合成されたデータからPCIe Gen3-5のEIEOSパターンを見つけ、130bitの区切りでシンボル同期を取り、入力データをシンボル境界で揃えて出力する。
【0051】
第1SKPフィルタ部24は、第1同期部23からの入力ビット列からPCIe Gen1-5のSKPを特定し、入力ビット列からSKPを取り除く。
【0052】
処理回路25は、8b/10bデコーダ、128b/130bデコーダ、Precodingデコーダ、遅延回路、選択回路を備えて構成される。8b/10bデコーダは、PCIe Gen1-2で使用される8b/10bコード変換を行うデコーダであり、第1SKPフィルタ部24にてSKPが取り除かれた10bitシンボルの入力ビット列を8bitシンボルに変換する。また、128b/130bデコーダは、PCIe Gen3-5で使用される128b/130bコード変換を行うデコーダであり、第1SKPフィルタ部24にてSKPが取り除かれた130bitシンボルの入力ビット列を128bitシンボルに変換する。Precodingデコーダは、128b/130bデコーダにてデコードされたデータにおけるPCIe Gen5のPrecodingを解除するためのデコーダである。遅延回路は、Precodingデコーダの処理時間と同じ遅延量を持ち、128b/130bデコーダからのデータをPrecodingデコーダと同位相で出力する。選択回路は、LTSSM36の指示により、Precodingデコーダと遅延回路の何れかの出力を選択する。
【0053】
第1スクランブル解析部26は、処理回路25からのデータに対し、PCIe Gen1-2で適用されているスクランブルを解除するためのデスクランブラーと、PCIe Gen3-5で適用されているスクランブルを解除するためのデスクランブラーから構成される。
【0054】
第2同期部27は、ビット合成部22にて合成されたデータからPCIe Gen6のEIEOSパターンを見つけたときに、8bitの区切りでシンボル同期を取り、入力データをシンボル境界で揃えて出力する。
【0055】
第2SKPフィルタ部28は、第2同期部27からの入力ビット列からPCIe Gen6のSKPを特定し、入力ビット列からSKPを取り除く。
【0056】
Precodingデコーダ29は、第2SKPフィルタ部28にてSKPが取り除かれた入力ビット列に対し、PCIe Gen6のPrecodingを解除するためのデコーダである。
【0057】
第1遅延部30は、Precodingデコーダ29の処理時間と同じ遅延量を持ち、第2SKPフィルタ部28からのデータをPrecodingデコーダ29と同位相で出力する。
【0058】
第1選択部31は、LTSSM36の指示により、Precodingデコーダ29と第1遅延部30の何れかの出力を選択する。
【0059】
Graycodingデコーダ32は、第1選択部31にて選択された入力ビット列に対し、PCIe Gen6のGraycodingを解除するためのデコーダである。
【0060】
第2遅延部33は、Graycodingデコーダ32の処理時間と同じ遅延量を持ち、第1選択部31にて選択された入力ビット列をGraycodingデコーダ32と同位相で出力する。
【0061】
第2選択部34は、LTSSM36の指示により、Graycodingデコーダ32と第2遅延部33の何れかの出力を選択する。
【0062】
第2スクランブル解析部35は、第2選択部34にて選択されたデータに対し、PCIe Gen6で適用されているスクランブルを解除するためのデスクランブラーである。
【0063】
LTSSM36は、第1スクランブル解析部26、第2スクランブル解析部35からのT0(第2スクランブル解析部35からのみ出力)、TS1とTS2トレーニングシーケンス、アイドルシンボル、アイドルFlitを解析し、LTSSM値(内部ステート値)、Link Speedを進めるためのステートマシーンである。また、LTSSM36は、パターン発生器への送信REQを生成し、パターン送信器からの送信ACKを受けることで送信パターンの管理を行う。
【0064】
第3選択部37は、第2同期部27からの入力生データ、第2SKPフィルタ部28からのSKP除去後のデータ、第2スクランブル解析部35からのSKPの除去後にコードを解除したデータ、すなわち、Precoding、Graycoding、スクランブルを解除したデータの何れかを選択するセレクタであり、操作部2からの指示により選択される。
【0065】
ビット分割部38は、第3選択部37にて選択して出力されるデータをビットDMUXによりMSBデータとLSBデータに分割して第3遅延部43に出力する。
【0066】
同期パターン検出部39は、操作部2にて設定されたMCPのパターン先頭と同じパターンを第3選択部37にて選択して出力されるデータから検索してパターン先頭信号を出力する。
【0067】
リファレンスパターン生成部40は、同期パターン検出部39からのパターン先頭信号をトリガとして、操作部2にて設定されたレーン数に応じたMCP(含むEIEOS,SKP)の1周期、レーン数に応じたFlit長によるリファレンスMCPとして、MSBリファレンスパターンとLSBリファレンスパターンを生成する。
【0068】
シンボルマスク生成部41は、同期パターン検出部39からのパターン先頭信号をトリガとして、入力パターンであるMSBデータとLSBデータをFlit領域と区別するのか、SKP領域、EIEOS領域と区別するのかの、1b/1bシンボル単位のマスクパターンを操作部2にて設定されるマスクパターン長、マスクパターン周期に基づいて生成する。また、シンボルマスク生成部41は、マスクパターン先頭信号をエラー検出部44に出力する。
【0069】
なお、PCIe Gen6のMCPは1FECシンボル=8bitであり、1FECシンボルはMSBデータとLSBデータにビットインターリーブされているため、4PAM4シンボル単位のマスクとなる。本実施の形態では、0:Flit領域、1:EIEOS領域、SKP領域とする。マスクパターンは、操作部2の設定操作により
図5、
図6に対応したものを事前に計算し、シンボルマスク生成部41の内部メモリに設定しておく。なお、第3選択部37により、第2SKPフィルタ部28からのSKP除去後のデータ、または第2スクランブル解析部35からのSKPを除去してPCIe Gen6のコードを解除したデータが選択されていた場合は、エラー検出部44に入力されるデータはSKPが除去されているので、SKP領域のマスクが無いパターンを設定する(EIEOS領域を区別するマスクパターンを設定する)。
【0070】
第3遅延部42は、エラー検出部44に入力されるMSBデータ、LSBデータ、パターン先頭信号、MSBリファレンスパターン、LSBリファレンスパターン、マスクパターン、マスクパターン先頭信号が同位相となるように、MSBデータとLSBデータを所定時間遅延させてエラー検出部44に入力する。
【0071】
第4遅延部43は、エラー検出部44に入力されるMSBデータ、LSBデータ、パターン先頭信号、MSBリファレンスパターン、LSBリファレンスパターン、マスクパターン、マスクパターン先頭信号が同位相となるように、パターン先頭信号を所定時間遅延させてエラー検出部44に入力する。
【0072】
エラー検出部44は、MCPによるMSBデータとLSBデータ、パターン先頭信号、MSBリファレンスパターン、LSBリファレンスパターン、マスクパターン、マスクパターン先頭信号を用いて、ビットエラー(MSBビットエラー、LSBビットエラー)の検出及びカウント、PAM4シンボルエラーの検出及びカウント、FECシンボルエラーの検出及びカウントを行い、カウント結果を操作部2に出力する。
【0073】
ここで、
図7は誤り率測定装置1のエラー検出部44による各種エラー検出のタイミングチャートの一例を示している。
図7はMCPのビット列データに基づくPAM4信号を被測定物Wに送信したときのタイミングチャートの一例である。
【0074】
図7のマスクパターン先頭信号入力後のCLK位置1~36に着目した場合を例にとって説明する。この場合、入力MCPのMSB(MCPによるMSBデータに相当)の各ビットとリファレンスMCPのMSB(MSBリファレンスパターンに相当)の対応する各ビットとを比較し、入力MCPのLSB(MCPによるLSBデータに相当)の各ビットとリファレンスMCPのLSB(LSBリファレンスパターンに相当)の対応する各ビットとを比較する。
【0075】
その結果、Flit領域(マスク信号が0)のエラー結果は、MSBビットエラーが「0」、「1」、「0」、「1」、 「1」、「0」、「1」、「1」、 「0」、「0」、「0」、「0」、 「1」、「1」、「0」、「1」、 「1」、「1」、「1」、「1」、LSBビットエラーが「1」、「0」、「0」、「0」、 「1」、「0」、「1」、「1」、 「0」、「0」、「0」、「0」、 「0」、「0」、「0」、「0」、 「0」、「0」、「0」、「0」、PAM4シンボルエラーが「1」、「1」、「0」、「1」、 「1」、「0」、「1」、「1」、 「0」、「0」、「0」、「0」、 「1」、「1」、「0」、「1」、 「1」、「1」、「1」、「1」、FECシンボルエラーが「1」、「1」、「0」、「1」、「1」となる。
【0076】
これに対し、EIEOS、SKP領域(マスク信号が0)のエラー結果は、MSBビットエラーが「0」、「1」、「0」、「1」、 「0」、「1」、「0」、「1」、 「0」、「0」、「0」、「0」、 「1」、「1」、「0」、「0」、LSBビットエラーが「1」、「0」、「1」、「0」、 「0」、「0」、「0」、「0」、 「0」、「0」、「0」、「0」、 「0」、「0」、「0」、「0」、PAM4シンボルエラーが「1」、「1」、「1」、「1」、 「0」、「1」、「0」、「1」、 「0」、「0」、「0」、「0」、 「1」、「1」、「0」、「0」、FECシンボルエラーが「1」、「1」、「0」、「1」となる。
【0077】
なお、エラー検出部44は、シンボルマスク生成部41から入力されるマスクパターンとマスクパターン先頭信号を、シンボル単位のエラー検出結果と位相を合わせ、シンボル単位のエラー検出結果と共にFlitエラー検出部45に出力する。ここで、シンボルマスク生成部41からのマスクパターン先頭の代わりに、第4遅延部43からのパターン先頭信号を用いても良い。
【0078】
Flitエラー検出部45は、マスクパターンを用いて、Flit領域(マスク信号が0)と、EIEOS、SKP領域(マスク信号が1)に分けてFECシンボルエラーの検出及びカウントを行う。
【0079】
また、Flitエラー検出部45は、1Flit長において、何れかのECC Group内のFECシンボルエラー数が、操作部2にて設定されたFECシンボルエラー閾値を超えたか否かの検出とカウントを行い、カウント結果を操作部2に出力する。
【0080】
なお、Flitエラー検出部45の検出結果を用いて、キャプチャなどを行うこともできる。
【0081】
同期状態管理部46は、エラー検出部44のエラー検出結果に基づくエラー数情報を基に、Flitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を下回ったときに、同期確立を操作部2に通知する。また、同期状態管理部46は、エラー検出部44のエラー検出結果に基づくエラー数情報を基に、Flitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を上回ったときに、同期未確立を操作部2に通知し、同期パターン検出部39にMCPのパターン先頭の再取得(パターン先頭の再探索)を指示する。なお、同期確立や同期未確立の通知先は操作部2に限定されるものではない。例えば外部の端末装置であってもよく、メッセージ表示や音声などでユーザに知らせることもできる。
【0082】
次に、
図2におけるFlitエラー検出部45の内部構成について
図8を参照しながら説明する。
【0083】
図8に示すように、Flitエラー検出部45は、Flit長タイミングカウンタ45a、ECC Groupタイミングカウンタ45b、第1ECC Groupエラー検出部45c、第2ECC Groupエラー検出部45d、第3ECC Groupエラー検出部45e、第1ECC Groupエラーカウント部45f、第2ECC Groupエラーカウント部45g、第3ECC Groupエラーカウント部45h、比較部45i、Flitエラーカウント部45jを備えて構成される。
【0084】
Flit長タイミングカウンタ45aは、マスクパターン先頭信号をトリガにして、操作部2にて設定されたFlit長をカウントする。カウンタは、マスクパターンがFlit領域(マスク信号が0)のときにカウントアップし、Flit長に達したら0からカウントを繰り返す。
【0085】
ECC Groupタイミングカウンタ45bは、ECC Groupの区別に使用するカウンタであり、Flit長タイミングカウンタ値を3で割った余りを出力するカウンタである。
【0086】
第1ECC Groupエラー検出部45cは、ECC Groupタイミングカウンタ45bのカウンタ値が0、かつ、マスクパターンがFlit領域(マスク信号が0)のFECシンボルエラーを検出する。
【0087】
第1ECC Groupエラーカウント部45fは、第1ECC Groupエラー検出部45cが検出した1Flit長区間のFECシンボルエラー数をFlit長区間ごとにカウントする。
【0088】
第2ECC Groupエラー検出部45dは、ECC Groupタイミングカウンタ45bのカウンタ値が1、かつ、マスクパターンがFlit領域(マスク信号が0)のFECシンボルエラーを検出する。
【0089】
第2ECC Groupエラーカウント部45gは、第2ECC Groupエラー検出部45dが検出した1Flit長区間のFECシンボルエラー数をFlit長区間ごとにカウントする。
【0090】
第3ECC Groupエラー検出部45eは、ECC Groupタイミングカウンタ45bのカウンタ値が2、かつ、マスクパターンがFlit領域(マスク信号が0)のFECシンボルエラーを検出する。
【0091】
第3ECC Groupエラーカウント部45hは、第3ECC Groupエラー検出部45eが検出した1Flit長区間のFECシンボルエラー数をFlit長区間ごとにカウントする。
【0092】
比較部45iは、1Flit長区間のFECシンボルエラー数と、操作部2にて設定されたFECシンボルエラー閾値:nとを比較し、1Flit長区間のFECシンボルエラー数がFECシンボルエラー閾値:nを超えたECC GroupがあったときにFlitエラー検出信号をFlitエラーカウント部45jに出力する。
【0093】
Flitエラーカウント部45jは、比較部45iからのFlitエラー検出信号をカウントし、カウント結果(Flitエラーカウント値)を操作部2に出力する。
【0094】
ここで、
図9は誤り率測定装置1のFlitエラー検出部45によるECC GroupごとのFECシンボルエラー検出のタイミングチャートの一例を示している。この例では、Flit長が8シンボル、FECシンボルエラー閾値nが3シンボルに設定されているものとする。
【0095】
図9のCLK位置0~15のFlit領域に着目すると、FECシンボルエラーとして「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「1」、「0」が入力し、Flit領域内における4PAM4シンボル=8bitごとのECC Group0のFECシンボルエラー数が「2」、「3」、ECC Group1のFECシンボルエラー数が「1」、「1」、ECC Group2のFECシンボルエラー数が「1」、「1」となっている。そして、CLK位置8~15のFlit領域におけるECC Group0のFECシンボルエラー数が「3」であり、FECシンボルエラー閾値:n=「3」以上なので、Flitエラー1がエラー結果として出力される。
【0096】
なお、
図9のSKP領域のCLK位置16~20、37~41は、マスクパターンによってマスクされるため、エラーの検出及びカウントは行われない。
【0097】
次に、上記構成の誤り率測定装置1によるPCIe Gen6物理層のエラー測定時の処理動作について
図10のフローチャートを参照しながら説明する。なお、PCIe Gen6物理層のエラー測定を行うにあたっては、誤り率測定装置1がPCIe Gen1-5まで正常に動作し、リンクトレーニングにより被測定物Wがループバック状態に遷移しているものとする。
【0098】
まず、MCPのビット列データに基づくPAM4信号をパターン発生器3から発生してループバック状態の被測定物Wに送信する(ST1)。
【0099】
そして、エラー検出器4は、パターン発生器3から被測定物WへのPAM4信号の送信に伴って被測定物Wから折り返されるPAM4信号を受信し、受信したPAM4信号をPAM4デコーダ21によりMSBデータとLSBデータに分割する(ST2)。このPAM4デコーダ21により分割されたMSBデータとLSBデータは、ビット合成部22にてビットMUXして第2同期部27に出力される。
【0100】
そして、第2同期部27は、ビット合成部22にて合成されたデータからPCIe Gen6のEIEOSパターンを見つけると、8bitの区切りでシンボル同期を取り、入力データをシンボル境界で揃えて第2SKPフィルタ部28と第3選択部37に出力する(ST3)。
【0101】
続いて、同期パターン検出部39は、操作部2にて設定されたMCPのパターン先頭と同じパターンを第3選択部37にて選択されたデータ(第2同期部27からのデータ、第2SKPフィルタ部28からのデータ、第2スクランブル解析部35からのデータの何れか)から検索してパターン先頭信号を出力する(ST4)。
【0102】
ここで、上述した第3選択部37にてデータを選択するにあたっては、下記の処理が実行される。まず、第2SKPフィルタ部28は、第2同期部27からの入力ビット列からSKPを取り除き、Precodingデコーダ29、第1遅延部30、第3選択部37に出力する。続いて、Precodingデコーダ29は、SKPが取り除かれた入力ビット列からPCIe Gen6のPrecodingを解除して第1選択部31に出力する。また、第1遅延部30は、第2SKPフィルタ部28からの入力ビット列をPrecodingデコーダ29と同位相で第1選択部31に出力する。そして、第1選択部31において、LTSSM36の指示により、Precodingデコーダ29と第1遅延部30の何れかの出力が選択され、Graycodingデコーダ32と第2遅延部33に入力される。
【0103】
続いて、Graycodingデコーダ32は、第1選択部31にて選択された入力ビット列に対するPCIe Gen6のGraycodingを解除して第2選択部34に出力する。また、第2遅延部33は、第1選択部31からの入力ビット列をGraycodingデコーダ32と同位相で第2選択部34に出力する。そして、第2選択部34において、LTSSM36の指示により、Graycodingデコーダ32と第2遅延部33の何れかの出力が選択され、第2スクランブル解析部35に入力される。さらに、第2スクランブル解析部35は、第2選択部34にて選択されたデータからPCIe Gen6で適用されているスクランブルを解除してLTSSM36と第3選択部37に出力する。
【0104】
そして、リファレンスパターン生成部40は、同期パターン検出部39からのパターン先頭信号をトリガとして、MSBリファレンスパターンとLSBリファレンスパターンを生成する(ST5)。
【0105】
また、シンボルマスク生成部41は、同期パターン検出部39からのパターン先頭信号をトリガとして、操作部2にて設定されるマスクパターン長およびマスクパターン周期に基づくFECシンボルマスクパターンを生成する(ST6)。
【0106】
そして、エラー検出部44は、MCPによるMSBデータとLSBデータ、パターン先頭信号、MSBリファレンスパターン、LSBリファレンスパターン、マスクパターン、マスクパターン先頭信号を用いて、ビットエラーの検出及びカウント、PAM4シンボルエラーの検出及びカウント、FECシンボルエラーの検出及びカウントを行う(ST7)。このときのカウント結果は操作部2に出力される。その際、エラー検出部44が検出するFlitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を下回ると、同期状態管理部46から同期確立が操作部2に通知される。これに対し、エラー検出部44が検出するFlitに相当する部分のエラーの量が同期条件閾値を上回ると、同期状態管理部46から同期未確立が操作部2に通知され、同期パターン検出部39にMCPのパターン先頭の再取得(パターン先頭の再探索)が指示される。
【0107】
また、Flitエラー検出部45は、1Flit長において、何れかのECC Group内のFECシンボルエラー数が、操作部2にて設定されたFECシンボルエラー閾値を超えたか否かの検出とカウントを行う(ST8)。このときのカウント結果は操作部2に出力される。
【0108】
このように、本実施の形態によれば、リンクトレーニングで被測定物をループバック状態に遷移させた後、PCIe Gen6の物理層評価で使われているMCP(Modified Compliance Pattern)を用いて、擬似的にFlitとそれ以外とに区別を行い、Flit領域についてのFECシンボルエラー状況から、Flitエラーが起きるかを推定することが可能となる。しかも、誤り訂正を行わないため、回路規模を小さくできる。
【0109】
また、FECでガードされたパターンと、FECでガードされていないパターンが混在する環境でもFECでガードされたパターンを識別し、Uncorrectableになるかの判定を行うことが可能となる。
【0110】
さらに、エラー測定するデータを入力生データと、SKP除去後のデータと、SKP除去し、PCIe Gen6のコードを解除したデータから選択することができるため、PCIe Gen6コーディングによるビットエラーとFlitエラーの発生具合を正しく把握することができるようになる。
【0111】
また、エラーレートが高く、SKP除去が困難な場合でも、SKP部分のビットエラーをマスクする方法を選択できるようにすることで、SKPを測定対象外とすることが可能となる。
【0112】
以上、本発明に係る誤り率測定装置及び誤り率測定方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0113】
1 誤り率測定装置
2 操作部
3 パターン発生器
4 エラー検出器
11 第1選択部
12 第1シーケンス発生部
13 第2シーケンス発生部
14 測定パターン発生部
15 第1エンコーダ
16 第2エンコーダ
17 第2選択部
18 ビット分割部
19 PAM4エンコーダ
21 PAM4デコーダ
22 ビット合成部
23 第1同期部
24 第1SKPフィルタ部
25 処理回路
26 第1スクランブル解析部
27 第2同期部
28 第2SKPフィルタ部
29 Precodingデコーダ
30 第1遅延部
31 第1選択部
32 Graycodingデコーダ
33 第2遅延部
34 第2選択部
35 第2スクランブル解析部
36 LTSSM
37 第3選択部
38 ビット分割部
39 同期パターン検出部
40 リファレンスパターン生成部
41 シンボルマスク生成部
42 第3遅延部
43 第4遅延部
44 エラー検出部
45 Flitエラー検出部
45a Flit長タイミングカウンタ
45b ECC Groupタイミングカウンタ
45c 第1ECC Groupエラー検出部
45d 第2ECC Groupエラー検出部
45e 第3ECC Groupエラー検出部
45f 第1ECC Groupエラーカウント部
45g 第2ECC Groupエラーカウント部
45h 第3ECC Groupエラーカウント部
45i 比較部
45j Flitエラーカウント部
46 同期状態管理部
W 被測定物