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特許7579393組織保持力を向上させたアグレッシブな機能クリップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】組織保持力を向上させたアグレッシブな機能クリップ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/122 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
A61B17/122
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023104417
(22)【出願日】2023-06-26
(62)【分割の表示】P 2021505243の分割
【原出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2023112211
(43)【公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】62/735,728
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ライアン、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ピャタエバ、イリーナ
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0085122(US,A1)
【文献】特開2012-045397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0333040(US,A1)
【文献】特開2004-073646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を処置するためのシステムであって、
身体の外側に留まるように構成された近位端と遠位端との間に延びる挿入セクションと、
第1及び第2のクリップアームを備えるクリップであって、前記第1及び第2のクリップアームは、それぞれが近位端から遠位端に延び、前記クリップは、前記挿入セクションの遠位端に着脱可能に結合され、前記第1のクリップアームは、前記第1のクリップアームの遠位端の近位に第1の組織穿刺特徴を含み、前記第2のクリップアームは、前記第2のクリップアームの遠位端の近位に第2の組織穿刺特徴を含み、前記第1及び第2の組織穿刺特徴は、前記クリップが標的組織の上で閉じられるにつれて、前記標的組織を穿刺するように構成されている、クリップと、を備え
前記第1の組織穿刺特徴は、前記クリップが前記標的組織の上で閉じられた後に少なくとも部分的に開かれたときに、以前に突き刺していた前記標的組織を解放するように構成されており、前記第2の組織穿刺特徴は、前記クリップが少なくとも部分的に開かれた後に、以前に突き刺していた前記標的組織に埋め込まれた状態を維持するように構成されており、前記第2の組織穿刺特徴は、前記第2のクリップアームの内面から前記第2のクリップアームの長手軸に対して20度から90度の角度で延びる、システム。
【請求項2】
前記クリップはカプセルを備え、前記カプセルは、前記挿入セクションの遠位端に着脱可能に結合された近位端から遠位端に延び、前記カプセルは、前記第1及び第2のクリップアームの近位端を受け入れるようにサイズ設定及び成形されたチャネルを画成している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第のクリップアームは、前記第2の組織穿刺特徴の近位に第3の組織穿刺特徴を含み、前記第3の組織穿刺特徴は、前記クリップが標的組織の上で閉じられるにつれて、標的組織を穿刺し、前記クリップが少なくとも部分的に開かれた後に、以前に突き刺していた標的組織に埋め込まれた状態を維持するように構成されており、前記第3の組織穿刺特徴は、前記第2のクリップアームの内面から前記第2のクリップアームの長手軸に対して20度から90度の角度で延びる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1及び第2の組織穿刺特徴は、前記第1及び第2のクリップアームから、前記第1及び第2のクリップアームの対応する一方の長手軸に対して90度の角度で延びる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記クリップは、前記クリップが閉じられたときに、前記第1及び第2の組織穿刺特徴が互いに対して長手方向にオフセットされるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の組織穿刺特徴はスパイクを含み、前記第2の組織穿刺特徴はフックを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の組織穿刺特徴は複数のバーブを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の組織穿刺特徴の前記複数のバーブのうちの第1のバーブは、前記第2のクリップアームの長手軸に対して90度の角度で延びる、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
再装填可能なクリップ装置であって、
カテーテルと該カテーテルを通って延びる制御部材とを含むアプリケータであって、前記制御部材は、近位端から遠位端まで延びるとともに、前記アプリケータに対して長手方向に移動可能である、アプリケータと、
前記アプリケータに結合された少なくとも1つのクリップアセンブリであって、各クリップアセンブリは、
第1及び第2のクリップアームを備えるクリップであって、前記第1及び第2のクリップアームは、それぞれが近位端から遠位端に延び、前記第1のクリップアームは、前記第1のクリップアームの遠位端の近位に第1の組織穿刺特徴を含み、前記第2のクリップアームは、前記第2のクリップアームの遠位端の近位に第2の組織穿刺特徴を含み、前記第1及び第2の組織穿刺特徴は、前記クリップが標的組織の上で閉じられるにつれて、前記標的組織を穿刺するように構成されている、クリップ
を備える、少なくとも1つのクリップアセンブリと、を備え
前記第1の組織穿刺特徴は、前記クリップが前記標的組織の上で閉じられた後に少なくとも部分的に開かれたときに、以前に突き刺していた前記標的組織を解放するように構成されており、前記第2の組織穿刺特徴は、前記クリップが少なくとも部分的に開かれた後に、以前に突き刺していた前記標的組織に埋め込まれた状態を維持するように構成されており、前記第2の組織穿刺特徴は、前記第2のクリップアームの内面から前記第2のクリップアームの長手軸に対して20度から90度の角度で延びる、装置。
【請求項10】
前記第のクリップアームは、前記第2の組織穿刺特徴の近位に第3の組織穿刺特徴を含み、前記第3の組織穿刺特徴は、前記クリップが標的組織の上で閉じられるにつれて、標的組織を穿刺し、前記クリップが少なくとも部分的に開かれた後に、以前に突き刺していた標的組織に埋め込まれた状態を維持するように構成されており、前記第3の組織穿刺特徴は、前記第2のクリップアームの内面から前記第2のクリップアームの長手軸に対して20度から90度の角度で延びる、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1及び第2の組織穿刺特徴は、前記第1及び第2のクリップアームから、前記第1及び第2のクリップアームの対応する一方の長手軸に対して90度の角度で延びる、請求項に記載の装置。
【請求項12】
前記クリップは、前記クリップが閉じられたときに、前記第1及び第2の組織穿刺特徴が互いに対して長手方向にオフセットされるように構成されている、請求項に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の組織穿刺特徴はスパイクを含み、前記第2の組織穿刺特徴はフックを含む、請求項に記載の装置。
【請求項14】
前記第2の組織穿刺特徴は複数のバーブを含む、請求項に記載の装置。
【請求項15】
前記第2の組織穿刺特徴の前記複数のバーブのうちの第1のバーブは、前記第2のクリップアームの長手軸に対して90度の角度で延びる、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮クリップ、より具体的には、内視鏡を通して標的部位に送達されて胃腸管に沿った血管の止血する圧縮クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
胃腸(GI)系、胆道樹、血管系、その他の体管腔や中空器官の病状は、内視鏡を用いた処置によって治療されることが多く、その多くは出血を抑えるために止血を必要とする。止血クリップは、傷口の周囲の組織をつかみ、傷口の縁を一時的に一緒に保持して、自然治癒の過程で傷口を恒久的に閉塞可能にする。特殊な内視鏡クリップ装置が用いられ、クリップを体内の所望の位置に送達し、その後、クリップ送達装置を引き抜いて、クリップは、体内に留置される。止血することに加えて、内視鏡クリップ装置はまた、例えば、装置を自然の体管腔の壁に通すことによる内部組織へのアクセスを含む内視鏡を用いた処置からの、内視鏡マーキング及び管腔穿孔を閉塞するために使用され得る。
【0003】
クリップの開口幅は通常、クリップが閉じる可能性のある傷の最大サイズを決定する。最大クリップ開口幅よりも大きい傷を閉じるために、いくつかの高度な閉塞技術が開発されてきたが、該技術は、スネア、「8リング」、又は他の装置の追加使用を必要とすることが多い。これらの高度で技術的に困難な方法の代替として、傷を閉塞するための新しい技術は、口語的に「ホールドアンドドラッグ」として知られる技術を使用する。該技術は、従来のクリップのみを使用してかなり大きな損傷閉塞することを可能にする。この技術は、大きな傷の閉塞を簡素化するとともに、処置に必要な時間を短縮する。しかしながら、この手法を使用する際の最大の課題は、クリップを再度開いた際に組織が滑り落ちるリスクが高いことである。その結果、この技術を適用する場合、傷を正常に閉塞するために多くの試行が必要になることは珍しくない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、近位から遠位に長手方向に延びるとともに全長にわたって延びるチャネルを含むカプセルと、第1、第2のクリップアームとを備え、該第1、第2のクリップアームのそれぞれは、近位端から遠位端に延び、近位端は、クリップアームの遠位端が互いに離れる開いた組織受入態様と、クリップアームの遠位端が動いて互いに向かい合う閉じた組織クリップ態様との間で移行するべくカプセルのチャネル内に受け入れられ、第1のクリップアームは、その遠位端に第1の組織保持機構を含み、該第1の組織保持機構は、組織クリップ態様にある場合には標的組織に突き刺さるとともに、クリップアームが少なくとも部分的に開いた態様に動いた場合には標的組織をその後で解放するように構成されており、第2のクリップアームは、その遠位端に第2の組織保持機構を含み、該第2の組織保持機構は、閉じた組織クリップ態様と開いた組織受入態様の両方の場合において標的組織に突き刺さり標的組織を保持するように構成される、組織を処置するためのシステムである。
【0005】
一実施態様において、第1の組織保持機構は、第1のアームの遠位先端に単一のスパイクを含み、第2の組織保持機構は、第2のアームの遠位先端に2つのスパイクを含む。
一実施態様において、スパイクは、クリップアームの長手軸に対して90度の角度で第1及び第2のアームの遠位先端から延びる。
【0006】
一実施態様において、クリップアームが閉じた態様にある場合には、対向するクリップアームの各スパイクは、互い違いになるように構成される。
一実施態様において、第1の組織保持機構は、第1のアームの遠位先端に少なくとも1つのスパイクを含み、第2の保持機構は、第2のアームの遠位先端から延びるフックである。
【0007】
一実施態様において、第2の組織保持機構は、第2のクリップアームの内面から延びる複数のバーブを含む。
一実施態様において、バーブは、第2のクリップアームの長手軸に対して90度の角度で延びる。
【0008】
本発明はまた、カテーテルとカテーテル内に延びる制御部材を含むアプリケータを備え、制御部材は、近位端から遠位端に延びるとともにアプリケータに対し相対的に長手方向に移動可能であり、アプリケータに結合される少なくとも1つのクリップアセンブリを備え、各クリップアセンブリは、近位端から遠位端に長手方向に延びるとともに全長にわたって延びるチャネルを含むカプセルと、第1、第2のクリップアームとを備え、該第1、第2のクリップアームのそれぞれは、近位端から遠位端に延び、近位端は、クリップアームの遠位端が互いに離れる開いた組織受入態様と、クリップアームの遠位端が動いて互いに向かい合う閉じた組織クリップ態様との間で移行するべくカプセルのチャネル内に受け入れられ、第1のクリップアームは、その遠位端に第1の組織保持機構を含み、該第1の組織保持機構は、組織クリップ態様にある場合には標的組織に突き刺さるとともに、クリップアームが少なくとも部分的に開いた態様に動いた場合には標的組織をその後で解放するように構成されており、第2のクリップアームは、その遠位端に第2の組織保持機構を含み、該第2の組織保持機構は、閉じた組織クリップ態様と開いた組織受入態様の両方の場合において標的組織に突き刺さり標的組織を保持するように構成される、再装填可能なクリップ装置である。
【0009】
一実施態様において、第1の組織保持機構は、第1のアームの遠位先端に単一のスパイクを含み、第2の組織保持機構は、第2のアームの遠位先端に2つのスパイクを含む。一実施態様において、スパイクは、クリップアームの長手軸に対して90度の角度で第1及び第2のアームの遠位先端から延びる。
【0010】
一実施態様において、クリップアームが閉じた態様にある場合には、対向するクリップアームの各スパイクは、互い違いになるように構成される。
一実施態様において、第1の組織保持機構は、第1のアームの遠位先端に少なくとも1つのスパイクを含み、第2の保持機構は、第2のアームの遠位先端から延びるフックである。
【0011】
一実施態様において、第2の組織保持機構は、第2のクリップアームの内面から延びる複数のバーブを含む。
一実施態様において、複数のバーブは、第2のクリップアームの長手軸に対して90度の角度で延びる。
【0012】
一実施形態において、第1のクリップアームの内面は平らである。
本発明はまた、組織を処置する方法であって、該方法は、第1のクリップアセンブリを内視鏡の作業チャネルによって生体内の標的部位に挿入する工程を備える。第1のクリップアセンブリは、カプセルと、第1、第2のクリップアームとを含み、第1、第2のクリップアセンブリは、クリップアームの遠位端が互いに離れる開いた態様と、クリップアームの遠位端が互いに引き合う閉じた態様との間で移行可能にカプセル内に摺動可能に受け入れられる。該方法は、第1の標的組織と接触するクリップアームを位置決めるすることと、第1のクリップアームの遠位端にある第1の組織保持機構と第2のクリップアームの遠位端にある第2の組織保持機構とが第1の標的組織を突き刺すように第1のクリップアセンブリを開いた態様から閉じた態様に移行することと、第1の組織保持機構が第1の標的組織を解放する一方、第2の組織保持機構が第1の標的組織を保持しつつ第1のクリップアセンブリを閉じた態様から開いた態様に移行することと、クリップアームを位置決めして第2の標的組織に接触させることと、第1、第2の標的組織を第1、第2のクリップアーム間にクリップするために、第1のクリップアセンブリを開いた態様から閉じた態様に移行することと、を備える。
【0013】
一実施態様において、第1の組織保持機構はスパイクである。
一実施態様において、第2の組織保持機構は、複数のバーブ、複数のスパイク、及びフックのうちの1つである。
【0014】
一実施形態において、この方法は、アプリケータの制御部材をクリップアームの近位端に結合することによって、アプリケータに第1のクリップアセンブリを装填することをさらに備える。
【0015】
一実施態様において、この方法は、クリップアセンブリをアプリケータから解放し、アプリケータの制御部材をクリップアームの近位端に結合することによって、第2のクリップアセンブリをアプリケータに装填することをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の例示的な実施形態によるクリップシステムの上面図。
図2図1のクリップシステムのクリップアセンブリの正面図。
図3図1のクリップシステムのクリップアセンブリのクリップアームの遠位端の斜視図。
図4図1のクリップシステムのクリップアセンブリの斜視図。
図5】本発明の第2の例示的な実施形態によるクリップシステムの上面図。
図6図5のクリップシステムのクリップアセンブリの正面図。
図7】本発明の第3の例示的な実施形態によるクリップシステムの上面図。
図8図7のクリップシステムのクリップアセンブリの正面図。
図9図7のクリップシステムのクリップアセンブリのクリップアームの遠位端の斜視図。
図10】本発明の第4の例示的な実施形態によるクリップシステムの上面図。
図11図10のクリップシステムのクリップアセンブリの正面図。
図12図10のクリップシステムのクリップアセンブリのクリップアームの遠位端の側面図。
図13図1のクリップシステムの使用方法の第1のステップを示す図。
図14図1のクリップシステムの使用方法の第2のステップを示す図。
図15図1のクリップシステムの使用方法の第3のステップを示す図。
図16図1のクリップシステムの使用方法の第4のステップを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、以下の説明及び添付図面を参照してさらに理解することが可能である。図面では、類似の要素は、同一参照番号で参照する。本発明は、クリップシステムに関するものであり、特に、組織の穿孔、傷、及び/又は出血を処置するための単一使用又は再装填可能な内視鏡クリップシステムに関する。本発明の例示的な実施形態は、クリップが少なくとも部分的に開いた態様にある場合には標的組織への付着を改善するための積極的な把持又は保持機能を有する止血クリップを説明する。特に、例示的な実施形態は、単一のクリップアームによる組織の把持及び保持を可能にするための把持機構として、スパイク、フック、バーブ及び他の形状を有するクリップアームを備えた止血クリップを説明する。本明細書で使用される「近位」及び「遠位」という用語は、装置の使用者に向かう方向(近位)及び離れる方向(遠位)を指すことが意図されていることに留意されたい。
【0018】
図1に示されるように、本発明の例示的な実施形態によるシステム100は、例えば、内視鏡の作業チャネルによって処置されるべき標的組織まで生体に挿入可能なクリップアセンブリ102を備える。アセンブリ102は、当該アセンブリが体内の蛇行路を通過する(例えば、生来の身体開口部を介してアクセスされる生来の体管腔内に挿入される柔軟な内視鏡の作業チャネル内を進行する)ことを許容するのに十分な可撓性を備える。例示的な実施形態において、クリップアセンブリ102は、標的組織をクリップするためにクリップアセンブリ102を生体に挿入する前に、アプリケータ104の遠位部分に装填可能である。アプリケータ104及びクリップアセンブリ102は、クリップアセンブリ102を生体内に留置した後、新しいクリップアセンブリ102を生体内の標的組織の第2の部分に送達して同じアプリケータ104を使用し得るように、新しいクリップアセンブリ102をアプリケータ104に装填し得るように構成される。アプリケータ104は、カテーテル(図示せず)及び当該カテーテルを通って延びる制御部材108を含み得る。クリップアセンブリ102は、第1及び第2のクリップアーム110、112を含む。該第1及び第2のクリップアームは、カプセル116の長手チャネル114内に摺動可能に受け取られる。第1及び第2のクリップアーム110、112は、クリップアーム110、112の遠位端120、122がそれぞれ互いに離れて両者間に標的組織を受け入れる開いた組織受入態様と、クリップアーム110、112の遠位端120、122がそれぞれ動いて互いに向かい合い、両者間に標的組織を把持する閉じた組織把持態様との間で移行可能である。クリップアーム110、112は、カプセル116内に延びる制御部材108によって開いた態様と閉じた態様との間で移行可能である。制御部材108の近位端(図示せず)は、人体の外側に配置された、ハンドルのアクチュエータに接続される。この実施形態において、制御部材108の遠位端は、クリップアーム110、112の近位端に結合されている。
【0019】
図1にさらに示されるように、本発明の例示的な実施形態によるクリップアーム110、112は、近位端(図示せず)から遠位端120、122まで延びる。当業者が理解するように、この実施形態のアーム110、112は、遠位端120、122が組織を受容するために互いに離れる開いた組織受入位置に付勢されている。すなわち、アーム110、112は、当該アーム110、112が遠位に動かされてカプセル116の拘束から解放されたときに、組織受入位置にばねで開くように形成される。しかしながら、当業者によって理解されるように、クリップアセンブリ102は、この付勢力に加えて、又は代替として、クリップアーム110、112が互いに離れるように促す別個の部材を含み得る。例示的な実施形態において、クリップアーム110、112は、クリップアセンブリ102が留置されたときにカプセル116内の遠位部品と係合するために、当該クリップアームの近位端にロックタブ(図示せず)を含み得る。ロックタブ(図示せず)はまた、クリップが留置された後、カプセル116の側面に形成されたウィンドウとともに機械的ロックを形成し得る。しかしながら、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、クリップアセンブリ102(例えば、クリップアームを含むカプセル)を挿入装置に着脱可能に結合するための任意の様々な公知の機構を採用し得ることが、理解できるであろう。上掲したように、クリップアーム110、112は開いた態様に付勢される結果、クリップアーム110、112がカプセル116の遠位端126を越えて遠位に移動すると、クリップアーム110、112の遠位端120、122は、開いた態様に互いに離れる。クリップアーム110、112がカプセル116内に近位へ引き込まれると、カプセル116との接触により、クリップアーム110、112は互いに向かって閉じた態様に引き寄せられる。留置されると、クリップアーム110、112は、当業者によって理解されるように、当該クリップアームを閉位置に保持するカプセル116内にロックされる。上記のように、クリップアーム110、112は、制御部材108によって開いた態様と閉じた態様との間に移行し、制御部材108は、体外に留まるハンドルのアクチュエータによってカプセル116に対して相対的に近位及び遠位に移動する。
【0020】
例示的な実施形態において、クリップアーム110、112の一方又は両方は、クリップアーム110、112の遠位先端130の内側から延びるスパイク128を含み得る。図2図3に示すように、第1のクリップアーム110は単一のスパイク128を有し、第2のクリップアーム112は2つのスパイク128を有する。スパイク128は、クリップアーム110、112の内面から半径方向内側に向かってクリップアーム110、112の他方に向かって概ね直角に延びる。例示的な実施形態において、スパイク128は、(傷を横切って引っ張ることによる)組織の張力によってスパイク128と組織とがさらに係合するように、組織に突き刺さるか、又は少なくとも係合するように設計される。例えば、釣り針形状は、組織に突き刺されるとこの係合を呈する。同じ方向に追加の力が加わると、組織がフックをさらに上に押し上げられる一方、フックを取り外すには力の方向を逆にする必要がある。図3にみられるように、対向するアーム110、112の各スパイク128は、組織の傷の周りにおけるクリップアーム110、112の完全な閉塞を妨げないように、互いに長手方向に偏倚している。例えば、図3に示されるように、第1のクリップアーム110のスパイク128は、クリップアセンブリ102が閉じた態様にある場合には、第2のクリップアーム112の2つのスパイク128の遠位又は近位の一方に配置される。さらに、図4に示すように、第1及び第2のクリップアーム110、112の各スパイクは、互いに横方向に偏倚されており、その結果、第1のクリップアーム110のスパイク128は、何ら干渉することなく、第2のクリップアーム112のスパイク128の間に受け入れられる。代替的な実施形態において、各スパイク128は、他のアームのスパイク128から干渉することなく、対向するアームに受け入れられるように異なる平面に延びるように構成される。例えば、第1のクリップアーム110のスパイク128は、クリップアセンブリ102が閉じた態様にある場合には、第2のクリップアーム112の2つのスパイク128の間に収まるように配置される。別の実施形態において、スパイク128の両方は、アーム110、112が閉じた態様にある場合には、対向するアーム110、112からのスパイク128の端部が互いに接触するように、概ね同じ平面内に延びるように構成される。当業者によって理解されるように、スパイク128は、組織に突き刺さりその中に引っ掛かるのに十分に鋭利である。一実施形態において、第2のクリップアーム112のスパイク128は、クリップアーム112の残りの部分に対してより大きな角度で傾斜し、その結果、当該スパイク128は、クリップアセンブリ102が組織の別の部分を把持するために開いた態様に動かされた場合に標的組織内に引っ掛かったままである。具体的には、各スパイク128は、クリップアーム110、112が開いた態様の場合に当該各スパイク128が組織を把持し続けることを可能にするように、クリップアーム112の長手軸Lに対して20度から90度の間の様々な角度でクリップアーム112の内面から同様に延び得る。
【0021】
使用中、操作者は、第2のクリップアーム112が組織の傷の外側にあり、第1のクリップアーム110が組織の傷の内側にあるように、クリップアーム110、112を方向付ける。次に、操作者は、組織の傷の縁でクリップアセンブリ102を閉じるとともに、スパイク128は、粘膜層を突き刺して、組織をクリップアーム110、112内に保持する。クリップアセンブリ102が組織の傷の反対側の端に引き寄せられ、緩やかに再び開かれるとき、組織のフラップは依然として第2のクリップアーム112に引っ掛けられるが、第1のアーム110からは解放される。すなわち、第1のクリップアーム110の力の方向は逆になり、その結果、組織は、第2のクリップアーム112上に留まりながら、第1のクリップアーム110からクリップ解除される。次に、第1のクリップアーム110を使用して、クリップアセンブリ102の内側に傷の反対側の縁を引っ張ることができる。両方の顎部110、112の各スパイク128は、傷の縁が確実に捕捉され、クリップが閉じられて留置されたときに滑り落ちないことを確実にする。組織の傷の2つの対向する縁がクリップアセンブリ102によって接続されると、クリップアセンブリ102はアプリケータ104から解放され、詳細に後述するように、さらなるクリップが組織の傷に沿って配置されて閉塞を完了する。
【0022】
図5図6に示される別の例示的な実施形態において、システム200は、本明細書に記載されている場合を除いて、システム100と概ね同様である。システム200は、第1及び第2のクリップアーム210、212を備えたクリップアセンブリ202を含む。この実施形態において、クリップアーム210、212は、フックとスパイクとの組み合わせを使用して、第1の組織の縁を一方のアームに保持する一方、第2の組織の縁を第2のアームで第1の縁に向かって引き寄せる。具体的には、図5に示すように、第1のアーム210は、2つのスパイク228を含む。同スパイク228は、クリップアセンブリ102のスパイク128と同様に、クリップアーム210の内面から半径方向内側に第2のクリップアーム212に向かって概ね直角に延びる。第2のアーム212は、フック付き遠位端222を有する。同フック付き遠位端は、その上に組織を突き刺して保持するように構成された鋭利な遠位先端230を備える。例示的な実施形態において、遠位先端230は、クリップアーム212の残りの部分に対して約90度から180度の角度で傾斜している。例えば、一実施形態において、第2のクリップアーム212の遠位端222は、遠位先端230がクリップアーム212の残りの部分とほぼ平行になるように、クリップアセンブリ202に向かって曲がり得る。この実施形態は、遠位先端230が組織の傷を突き刺すと、高度の組織保持を提供する。別の例では、遠位端222は、遠位先端がクリップアーム212の近位部分に概ね直角であるように、90度を超える屈曲を有し得る。この実施形態は、組織の傷を遠位先端230がより容易に突き刺さすことを可能にする。
【0023】
使用中、第2のクリップアーム212のフック付き遠位端222は、上記のように、組織に付着し、クリップアーム210、212の内側に組織の傷の第1の縁を維持するように設計される一方、第1のアーム210のスパイク228は、クリップアセンブリ202が再び開かれたときに、組織の傷の第1の縁を解放し、組織の傷の反対側の第2の縁を引き寄せるように設計される。このアグレッシブな機構の組み合わせは、「ホールドアンドドラッグ」手法に特に効果的であることが実証されてきた。
【0024】
図7図9に示される別の例示的な実施形態において、システム300は、本明細書に記載されている場合を除いて、システム100、200と概ね同様である。システム300は、第1及び第2のクリップアーム310、312を備えたクリップアセンブリ302を含む。この実施形態において、第1のクリップアーム310は、当該第1のクリップアーム310の遠位部分の内面334に取り付けられた1つ以上のバーブ332を含む。バーブのあるクリップアームは、操作者がバーブのあるアームを標的組織に対して平らに押圧することができる場合に特に効果的である。アームを組織に対して平らに配置することは、各バーブ332が粘膜下組織層を突き刺し、高張力下でも組織をクリップアームに取り付けたまま加圧し得る。図8及び図9に示すように、この実施形態の第1のクリップアーム310は、4つのバーブ332を含み、これらバーブ332は、第1のクリップアーム310の内面334から第2のクリップアーム312に向かって半径方向内側に概ね直角に延びる。本実施形態は4つのバーブ332を含むが、任意の数のバーブを使用できることが理解されよう。バーブ334は、クリップアーム310、312が開いた態様にある場合には当該バーブ332が組織を把持することを可能になるように、クリップアーム310の長手軸Lに対して20度から90度の間、より具体的には45度の様々な角度で内面334から同様に延びる。すなわち、バーブ332は、第1のクリップアーム310の内面334を含む平面に概ね直角な平面内で第1のクリップアーム310の内面334から外向きに延び得るか、或いは、ある角度で、つまり、クリップアーム310の内面334を含む平面とは直角ではない平面内で延び得る。一実施形態において、図8及び図9に示されるように、バーブ332は、互いに概ね平行な対として内面334に配置される。しかしながら、バーブ332は、例えば、クリップアーム310の中心長手軸に沿った単一の長手のラインの長手方向に互い違いになる等、任意の構成をとることができることが理解される。各図に見られるように、第2のアーム312は、その長さに沿って平らな輪郭を有する。
【0025】
スパイク、フック、バーブに加えて、標的組織の傷に対するクリップアームの取り付けを改善するために他の形状を使用可能である。例えば、別の例示的な実施形態において、図10図12に示されるクリップシステム400のクリップアセンブリ402は、第1及び第2のクリップアーム410、412のうちの少なくとも1つの遠位先端430に鋭利な歯440を含む。例えば、図11及び図12に見られるように、第1のクリップアーム410は、第1のクリップアーム410の遠位先端430の内面に配置された3つの歯440を含む。この実施形態は3つの歯を含むが、当業者によって理解されるように、任意の数の歯を使用し得ることに留意されたい。歯440は、組織への突き刺さり及び保持を可能にするために鋭利な先端を有する。加えて、第1のクリップアーム410の遠位先端430は、クリップアーム410、412が再び開かれたときに組織の保持を可能にするために、クリップアーム410の残りの部分に対して約90度の角度で傾斜し得る。
【0026】
例示的な実施形態によるシステム100の使用方法は、図13図16に示されている。最初に、クリップアセンブリ102は、内視鏡(又は任意の他の挿入装置)の作業チャネルを通して挿入され、クリップされて閉塞されるべき組織の標的傷10に隣接する部位に(例えば、自然な体管腔を通して)体内に挿入される。クリップアセンブリ102は、作業チャネルを容易に通過するために閉じた態様で標的組織に挿入される。標的組織の傷の部位に到達すると、クリップアセンブリ102は、内視鏡の作業チャネルの遠位端から外側に進行されて、クリップアーム110、112は、カプセル116から延び、クリップアーム110、112を開いた組織受入態様に移行される。傷のある標的組織の第1の縁12がクリップアーム110、112の間に受け入れられると、クリップアーム110、112は、第1の縁12がクリップアーム110、112の遠位端の間で把持されるべく、スパイク128が組織の傷の第1の縁12を突き刺すように、閉じた態様に移行する。クリップアーム110、112は、カプセル116に対して相対的に近位方向に制御部材を引くことによって、組織把持態様に移行する。クリップアセンブリ102が閉じた組織把持態様に移行すると、第1の縁12は、アプリケータ104によって、クリップアセンブリ102を介し、傷の第2の縁14に向かって引き寄せられる。組織の傷の第1及び第2の縁12、14が互いに隣接した際に、クリップアーム110、112は緩やかに再び開かれる。クリップアーム110、112が再び開かれると、第1のアーム110は組織の傷の第1の縁12を解放するが、第2のクリップアーム112の2つのスパイク128は、第1の縁12を第2のクリップアーム112に取り付けたままにする。続いて、クリップアーム110、112は、組織の傷の両縁12、14を挟んで再び閉じられ、第1のクリップアセンブリ102は、アプリケータ104からアクチュエータによって留置される。追加のクリップアセンブリ102を組織の縁に沿って配置して、傷を閉じ得る。
【0027】
本発明の概念から逸脱することなく上記実施形態を変更できることは、当業者であれば理解できる。さらに、実施形態の1つに関連する構造的な特徴及び方法は、他の実施形態に組み込むことができることも理解できる。従って、本発明は、説明した特定の実施形態に限定されず、変更形態も添付の請求項によって定義される本発明の範囲内に含まれることが理解できる。
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