(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】心腔内除細動カテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
A61N1/39
(21)【出願番号】P 2023506372
(86)(22)【出願日】2021-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2021010260
(87)【国際公開番号】W WO2022195644
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平尾 卓也
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特許第4545216(JP,B1)
【文献】特開2018-122091(JP,A)
【文献】特開2017-176351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心腔内に挿入されて除細動を行う除細動カテーテルの電極に直流電圧を印加する電源装置であって、
前記電源装置は、コンデンサを備えたDC電源部と、
前記DC電源部からの直流電圧の出力回路と、
前記除細動カテーテルと心電計との間に介在する第1ON/OFFスイッチと、
前記除細動カテーテルと前記出力回路との間に介在する第2ON/OFFスイッチとを備え、
前記電極により心電位を測定するときには、前記第1ON/OFFスイッチが「ON」であり、
前記除細動カテーテルにより除細動を行うときには、前記第2ON/OFFスイッチが「ON」であ
り、
前記電源装置は、除細動を行う準備をするためのエネルギー印加準備スイッチと、電気エネルギーを印加して除細動を実行するためのエネルギー印加実行スイッチとを備えてなり、
前記エネルギー印加準備スイッチが入力された後、前記エネルギー印加実行スイッチが入力されるまでは、前記第1ON/OFFスイッチが「ON」であり、
前記エネルギー印加実行スイッチが入力されると、前記第1ON/OFFスイッチが「OFF」となることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心腔内除細動カテーテルシステムに関し、更に詳しくは、心腔内に挿入される除細動カテーテルと、この除細動カテーテルの電極に直流電圧を印加する電源装置と、心電計とを備えたカテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動等を起こした心臓の除細動治療を行うための心腔内除細動カテーテルシステムとして、本出願人は、心腔内に挿入されて除細動を行う除細動カテーテルと、この除細動カテーテルの電極に直流電圧を印加する電源装置と、心電計とを備え;前記除細動カテーテルは、絶縁性のチューブ部材の先端領域に装着された複数のリング状電極からなる第1電極群と、前記第1電極群から基端側に離間して前記チューブ部材に装着された複数のリング状電極からなる第2電極群と、前記第1電極群を構成する電極の各々に先端が接続された複数のリード線からなる第1リード線群と、前記第2電極群を構成する電極の各々に先端が接続された複数のリード線からなる第2リード線群とを備えてなり;前記電源装置は、DC電源部と、前記除細動カテーテルの第1リード線群および第2リード線群の基端側に接続されるカテーテル接続コネクタと、前記心電計の入力端子に接続される心電計接続コネクタと、外部スイッチの入力に基いて前記DC電源部を制御するとともに、当該DC電源部からの直流電圧の出力回路を有する演算処理部と、1回路2接点の切替スイッチからなり、共通接点に前記カテーテル接続コネクタが接続され、第1接点に前記心電計接続コネクタが接続され、第2接点に前記演算処理部が接続された切替部とを備えてなり;前記除細動カテーテルの第1電極群および/または第2電極群を構成する電極により心電位を測定するときには、切替部において第1接点が選択され、前記除細動カテーテルからの心電位情報が、前記電源装置の前記カテーテル接続コネクタ、前記切替部および前記心電計接続コネクタを経由して前記心電計に入力され、前記除細動カテーテルにより除細動を行うときには、前記電源装置の前記演算処理部によって前記切替部の接点が第2接点に切り替わり、前記DC電源部から、前記演算処理部の出力回路、前記切替部および前記カテーテル接続コネクタを経由して、前記除細動カテーテルの前記第1電極群と、前記第2電極群とに、互いに異なる極性の電圧が印加されるカテーテルシステムを提案している(下記特許文献1参照)。
【0003】
この心腔内除細動カテーテルシステムによれば、心臓カテーテル術中に心房細動等を起こした心臓に対して、除細動に必要かつ十分な電気エネルギーを確実に供給することができる。また、除細動治療を必要としないときには、カテーテルシステムを構成する除細動カテーテルを心電位測定用の電極カテーテルとして用いることができる。
【0004】
特許文献1に記載された心腔内除細動カテーテルシステムによる除細動治療において、「心電位測定モード」にある電源装置のモード切替スイッチを入力することにより、電源装置のモードが一定時間(例えば1秒間)「除細動モード」に切り替わる。この間に、除細動カテーテルの第1電極群と第2電極群との間のインピーダンスが測定される。その後、印加エネルギー設定スイッチを入力して、除細動を行う際に印加する電気エネルギーを設定し、充電スイッチを入力することにより、測定されたインピーダンスと設定した電気エネルギーに基いて決定される電圧がDC電源部にチャージされる。チャージ完了後、エネルギー印加スイッチを入力することにより、切替部の接点が第1接点から第2接点に切り替わり(これにより、電源装置のモードが「心電位測定モード」から「除細動モード」に切り替わり)、演算処理部からの制御信号を受けたDC電源部から、演算処理部の出力回路、切替部およびカテーテル接続コネクタを経由して、除細動カテーテルの第1電極群と、第2電極群とに、互いに異なる極性の直流電圧が印加される。
【0005】
また、本出願人は、心電計から演算処理部に入力される心電図のベースラインが動揺(ドリフト)しているときに、除細動カテーテルの電極に電圧が印加されることを回避し、ベースラインが安定しているときに、当該心電図のR波に同期して、除細動カテーテルの電極に直流電圧を印加して除細動を行うことができる心腔内除細動カテーテルシステムとして、除細動カテーテルと、電源装置と、心電計とを備えたカテーテルシステムであって;前記電源装置は、DC電源部と、前記除細動カテーテルの第1リード線群および第2リード線群の基端側に接続されるカテーテル接続コネクタと、前記心電計の入力端子に接続される心電計接続コネクタと、電気エネルギーの印加準備スイッチおよび印加実行スイッチを含む外部スイッチと、前記DC電源部からの直流電圧の出力回路を有し、前記外部スイッチの入力に基いて、前記DC電源部を制御する演算処理部と、1回路2接点の切替スイッチからなり、共通接点に前記カテーテル接続コネクタが接続され、第1接点に前記心電計接続コネクタが接続され、第2接点に前記演算処理部が接続された切替部と、前記演算処理部および前記心電計の出力端子に接続される心電図入力コネクタとを備えてなり;前記印加準備スイッチの入力後に前記印加実行スイッチを入力することにより前記除細動カテーテルによって除細動が行われ、除細動が行われるときには、前記DC電源部から、前記演算処理部の出力回路および前記カテーテル接続コネクタを経由して、前記除細動カテーテルの第1電極群と第2電極群とに、互いに異なる極性の電圧が印加され;前記電源装置の演算処理部は、前記心電図入力コネクタを経由して前記心電計から入力された心電図からR波と推定されるイベントを逐次センシングし、前記印加実行スイッチの入力後にセンシングされたイベント(Vn )の極性が、少なくとも、その1つ前にセンシングされたイベント(Vn-1 )の極性およびその2つ前にセンシングされたイベント(Vn-2 )の極性と一致し、かつ、前記印加準備スイッチを入力してから前記印加実行スイッチを入力するまでの間に異常波高イベントが発生したときには、前記異常波高イベントの発生から一定の待機時間の経過後に前記イベント(Vn )がセンシングされている場合に限り、当該イベント(Vn )に同期して、前記第1電極群および前記第2電極群に電圧が印加されるように演算処理して前記DC電源部を制御する心腔内除細動カテーテルシステムを提案している(下記特許文献2参照)。
【0006】
この心腔内除細動カテーテルシステムによれば、3つのイベント(Vn-2 ),(Vn-1 ),(Vn )の極性が一致し、印加準備スイッチを入力してから印加実行スイッチを入力するまでの間に異常波高イベントの発生を検知したときには異常波高イベントの発生から一定の待機時間の経過後にイベント(Vn )がセンシングされている場合に限り、このイベント(Vn )に同期させて電圧を印加するよう、電源装置の演算処理部がDC電源部を制御するので、心電計から演算処理部に入力される心電図のベースラインが動揺(ドリフト)しているときに、除細動カテーテルの電極に電圧が印加されることを回避し、ベースラインが安定しているときに、当該心電図のR波に同期して、除細動カテーテルの電極に直流電圧を印加して除細動を行うことができる。
【0007】
特許文献2に記載の心腔内除細動カテーテルシステムを構成する電源装置は、エネルギーを印加するための外部スイッチとして、エネルギー印加準備スイッチとエネルギー印加実行スイッチとを備えている。エネルギー印加準備スイッチが入力されると、演算処理部の制御信号を受けた切替部の接点が第1接点から第2接点に切り替わり(これにより、電源装置のモードが「心電位測定モード」から「除細動モード」に切り替わり)、カテーテル接続コネクタから切替部を経由して演算処理部に至る経路が確保される。そして、エネルギー印加準備スイッチの入力後(またはこれと同時に)エネルギー印加実行スイッチを入力すると、演算処理部からの制御信号を受けたDC電源部から、演算処理部の出力回路、切替部およびカテーテル接続コネクタを経由して、除細動カテーテルの第1電極群と、第2電極群とに、互いに異なる極性の直流電圧が印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4545216号公報
【文献】特許第6632511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
直流電圧を印加する直前において、第1電極群の構成電極および第2電極群の構成電極により測定される心電位情報はきわめて重要である。
しかしながら、上記特許文献2に記載された心腔内除細動カテーテルシステムにおいて、エネルギー印加準備スイッチを入力してからエネルギー印加実行スイッチを入力するまでの間(通常8~10数秒間とされる)、1回路2接点の切替スイッチからなる切替部は第2接点を選択していて、当該切替部を経由してカテーテル接続コネクタから心電計接続コネクタに至る経路が遮断されているので、システムを構成する心電計は、第1電極群および/または第2電極群の構成電極によって測定される心電位情報を取得することができない。
【0010】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものある。本発明の目的は、除細動カテーテルの第1電極群と第2電極群とに直流電圧が印加される直前まで、第1電極群および/または第2電極群の構成電極からの心電位情報を取得することができる心腔内除細動カテーテルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の心腔内除細動カテーテルシステムは、心腔内に挿入されて除細動を行う除細動カテーテルと、この除細動カテーテルの電極に直流電圧を印加する電源装置と、心電計とを備えたカテーテルシステムであって、
前記除細動カテーテルは、絶縁性のチューブ部材と、前記チューブ部材の先端領域に装着された複数のリング状電極からなる第1電極群(第1DC電極群)と、
前記第1電極群から基端側に離間して前記チューブ部材の前記先端領域に装着された複数のリング状電極からなる第2電極群(第2DC電極群)とを備えてなり;
前記電源装置は、コンデンサを備えたDC電源部と、
入力手段である外部スイッチと、
前記外部スイッチの入力に基いて前記DC電源部を制御するとともに、当該DC電源部からの直流電圧の出力回路を有する演算処理部と、
前記除細動カテーテルの第1DC電極群および第2DC電極群のそれぞれに電気的に接続されるカテーテル接続コネクタと、
前記心電計の入力端子に接続される心電計接続コネクタと、
前記カテーテル接続コネクタと前記心電計接続コネクタとの間に介在する第1ON/OFFスイッチと、
前記カテーテル接続コネクタと前記演算処理部との間に介在する第2ON/OFFスイッチとを備えてなり、
前記除細動カテーテルの第1DC電極群および/または前記第2DC電極群を構成する前記電極により心電位を測定するときには、前記第1ON/OFFスイッチが「ON」となり、前記除細動カテーテルからの心電位情報が、前記カテーテル接続コネクタ、前記第1ON/OFFスイッチおよび前記心電計接続コネクタを経由して前記心電計に入力され、
前記除細動カテーテルにより除細動を行うときには、前記第2ON/OFFスイッチが「ON」となり、前記DC電源部から、前記演算処理部の出力回路、前記第2ON/OFFスイッチおよび前記カテーテル接続コネクタを経由して、前記除細動カテーテルの前記第1DC電極群と前記第2DC電極群とに互いに異なる極性の電圧が印加されることを特
徴とする。
【0012】
このような構成の除細動カテーテルシステムによれば、1回路2接点の切替スイッチとは異なり、第1ON/OFFスイッチおよび第2ON/OFFスイッチが互いに独立しているので、これらの両方を「ON」にしたり、「OFF」にしたりすることが可能である。
第1ON/OFFスイッチおよび第2ON/OFFスイッチの両方を「ON」とすることにより、カテーテル接続コネクタから第2ON/OFFスイッチを経由して演算処理部に至る経路が確保されてエネルギーの印加が可能となる(エネルギー印加の準備が完了する)とともに、除細動カテーテルの第1DC電極群および/または第2DC電極群の構成電極からの心電位情報を取得することができる。これにより、第1ON/OFFスイッチを「OFF」に切り替えるまで、第1DC電極群および/または第2DC電極群の構成電極からの心電位情報を取得することができる。
【0013】
(2)本発明の心腔内除細動カテーテルシステムにおいて、前記電源装置は、前記外部スイッチとして、除細動を行う準備をするためのエネルギー印加準備スイッチと、電気エネルギーを印加して除細動を実行するためのエネルギー印加実行スイッチとを備えてなり、
前記第1ON/OFFスイッチが「ON」、前記第2ON/OFFスイッチが「OFF」となっているときに、前記エネルギー印加準備スイッチが入力されると、前記演算処理部は、前記第1ON/OFFスイッチが「ON」の状態を維持し、前記第2ON/OFFスイッチが「OFF」から「ON」に切り替わるように、これらのON/OFFスイッチを制御し、
前記エネルギー印加準備スイッチの入力後に、前記エネルギー印加実行スイッチが入力されると、前記演算処理部は、前記第2ON/OFFスイッチが「ON」の状態を維持し、前記第1ON/OFFスイッチが「ON」から「OFF」に切り替わるように、これらのON/OFFスイッチを制御することを特徴とすることが好ましい。
【0014】
このような構成の除細動カテーテルシステムによれば、エネルギー印加準備スイッチの入力によりエネルギー印加の準備が完了した段階であっても、エネルギー印加実行スイッチが入力されるまで、除細動カテーテルの第1DC電極群および/または第2DC電極群の構成電極からの心電位情報を取得することができる。
これにより、治療部位の心電位情報が安定していることを確認してからエネルギー印加実行スイッチを入力(除細動を実行)することができる。
【0015】
また、エネルギー印加実行スイッチを入力することにより、第1ON/OFFスイッチが「ON」から「OFF」に切り替わり、カテーテル接続コネクタから第1ON/OFFスイッチを経由して心電計接続コネクタに至る経路が直ちに遮断されているので、心電計に直流電圧が印加されることはない。
【0016】
(3)上記(2)の心腔内除細動カテーテルシステムにおいて、前記電源装置は、主電源スイッチと、心電位測定モードと除細動モードを切り替えるためのモード切替スイッチと、除細動の際に印加する電気エネルギーを設定するための印加エネルギー設定スイッチと、設定された電気エネルギーに基いて決定される電圧をDC電源部に蓄積するための充電スイッチと、前記エネルギー印加準備スイッチと、前記エネルギー印加実行スイッチとを備えてなり、
前記演算処理部は、前記主電源スイッチが入力されたときには、前記第1ON/OFFスイッチが「ON」、前記第2ON/OFFスイッチが「OFF」となり、
前記モード切替スイッチが入力されてから一定時間、前記第1ON/OFFスイッチが「OFF」、前記第2ON/OFFスイッチが「ON」となり、
前記印加エネルギー設定スイッチまたは前記充電スイッチが入力されることによって、
前記第1ON/OFFスイッチおよび前記第2ON/OFFスイッチの「ON」/「OFF」は切り替わらず、
前記エネルギー印加準備スイッチが入力されたときには、前記第1ON/OFFスイッチおよび前記第2ON/OFFスイッチの両方が「ON」となり、
前記エネルギー印加実行スイッチが入力されたときには、前記第1ON/OFFスイッチが「OFF」、前記第2ON/OFFスイッチが「ON」となるように、
前記第1ON/OFFスイッチおよび前記第2ON/OFFスイッチを制御することが好ましい。
【0017】
このような構成の除細動カテーテルシステムによれば、主電源スイッチを入力することによる初期モードが「心電位測定モード」となり、モード切替スイッチを入力することで一定時間「除細動モード」となって、除細動カテーテルの第1DC電極群と第2DC電極群との間のインピーダンスの測定が可能となり、印加する電気エネルギーの設定およびDC電源部への充電時には「心電位測定モード」を維持し、エネルギー印加準備スイッチを入力することにより、エネルギー印加の準備が完了するとともに、除細動カテーテルの第1DC電極群および/または第2DC電極群の構成電極からの心電位情報を取得すること(当該心電位情報に係る心電図のベースラインなどを監視すること)ができ、エネルギー印加実行スイッチを入力することにより、第1DC電極群と第2DC電極群とに直流電圧を印加して除細動を実行することができる。
【0018】
(4)上記(3)の心腔内除細動カテーテルシステムにおいて、前記電源装置の前記演算処理部は、前記モード切替スイッチが入力されてから前記一定時間において、前記除細動カテーテルの前記第1DC電極群と前記第2DC電極群との間のインピーダンスを測定するよう制御することが好ましい。
【0019】
(5)上記(4)の心腔内除細動カテーテルシステムにおいて、前記電源装置の前記演算処理部は、測定されたインピーダンスと、前記印加エネルギー設定スイッチを入力して設定された電気エネルギーとに基いて決定される電圧を前記DC電源部に蓄積させるよう制御することが好ましい。
【0020】
(6)本発明の心腔内除細動カテーテルシステムにおいて、前記電源装置は、前記演算処理部および前記心電計の出力端子に接続される心電図入力コネクタを備えていることが好ましい。
【0021】
このような構成の除細動カテーテルシステムによれば、心電計から出力される心電位情報を演算処理部に入力することができ、演算処理部では、この心電位情報に基いて、DC電源部、第1ON/OFFスイッチおよび第2ON/OFFスイッチを制御することができる。
【0022】
(7)本発明の心腔内除細動カテーテルシステムにおいて、前記除細動カテーテルは、前記第1DC電極群または前記第2DC電極群から離間して前記チューブ部材に装着された複数の電極からなり、前記カテーテル接続コネクタと電気的に接続される電位測定電極群を備えてなり、
前記電源装置には、前記カテーテル接続コネクタと、前記心電計接続コネクタとを直接結ぶ経路が形成され、
前記電位測定電極群を構成する電極によって測定された心電位情報は、前記電源装置の前記カテーテル接続コネクタから、前記第1ON/OFFスイッチを経ることなく、前記心電計接続コネクタを経由して前記心電計に入力されることが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、除細動カテーテルの第1DC電極群および前記第2DC電極
群の構成電極からの心電位情報を心電計が取得することのできない除細動治療の際にも、電位測定電極群によって測定された心電位を心電計が取得することができる。
【0024】
(8)本発明の心腔内除細動カテーテルシステムにおいて、前記心電計には、前記除細動カテーテル以外の心電位測定手段が接続されていることが好ましい。
【0025】
(9)上記(8)の心腔内除細動カテーテルシステムにおいて、前記心電位測定手段が電極パッドまたは電極カテーテルであることが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、除細動カテーテルの第1DC電極群および前記第2DC電極群の構成電極からの心電位情報を心電計が取得することのできない除細動治療の際にも、当該心電位測定手段によって測定された心電位を心電計が取得することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の心腔内除細動カテーテルシステムによれば、除細動カテーテルの第1電極群と第2電極群とに直流電圧が印加される(除細動が実行される)直前まで、第1電極群および/または第2電極群の構成電極からの心電位情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の心腔内除細動カテーテルシステムの一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示したカテーテルシステムを構成する除細動カテーテルを示す説明用平面図である。
【
図3】
図1に示したカテーテルシステムを構成する除細動カテーテルを示す説明用平面図(寸法および硬度を説明するための図)である。
【
図5】
図2のB-B断面、C-C断面、D-D断面を示す横断面図である。
【
図6】
図2に示した除細動カテーテルの一実施形態のハンドルの内部構造を示す斜視図である。
【
図7】
図1に示したカテーテルシステムにおいて、除細動カテーテルのコネクタと、電源装置のカテーテル接続コネクタとの連結状態を模式的に示す説明図である。
【
図8】
図1に示したカテーテルシステムにおける電源装置の動作および操作を示すフローチャートである。
【
図9】
図1に示したカテーテルシステムにおいて、主電源スイッチをONした後の心電位測定モードにおける心電位情報の流れを示すブロック図である。
【
図10】
図1に示したカテーテルシステムにおいて、モード切替スイッチの入力後の除細動モードにおける電極群間のインピーダンスの測定値に係る情報および心電位情報の流れを示すブロック図である。
【
図11】
図1に示したカテーテルシステムにおいて、モード切替スイッチを入力してから一定時間経過後の心電位測定モードにおける心電位情報の流れを示すブロック図である。
【
図12】
図1に示したカテーテルシステムにおいて、印加準備スイッチの入力後における心電位情報の流れを示すブロック図である。
【
図13】
図1に示したカテーテルシステムにおいて、印加実行スイッチの入力後における心電位情報の流れを示すブロック図である。
【
図14】
図1に示したカテーテルシステムにおいて、印加実行スイッチの入力後における直流電圧印加時の状態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<実施形態>
図1に示すように、本実施形態の心腔内除細動カテーテルシステムは、除細動カテーテル100と、電源装置700と、心電計800と、心電位測定手段900とを備えている。
【0030】
図2~
図6に示すように、本実施形態のカテーテルシステムを構成する除細動カテーテル100は、マルチルーメンチューブ10と、ハンドル20と、第1DC電極群31Gと、第2DC電極群32Gと、基端側電位測定電極群33Gと、第1リード線群41Gと、第2リード線群42Gと、第3リード線群43Gとを備えている。
【0031】
図4および
図5に示すように、マルチルーメンチューブ10には、4つのルーメン(第1ルーメン11、第2ルーメン12、第3ルーメン13、第4ルーメン14)が形成されている。
【0032】
図4および
図5において、15は、ルーメンを区画するフッ素樹脂層、16は、低硬度のナイロンエラストマーからなるインナー(コア)部、17は、高硬度のナイロンエラストマーからなるアウター(シェル)部であり、
図4における18は、編組ブレードを形成するステンレス素線である。
【0033】
本実施形態における除細動カテーテル100を構成するハンドル20は、ハンドル本体21と、摘まみ22と、ストレインリリーフ24とを備えている。摘まみ22を回転操作することにより、マルチルーメンチューブ10の先端部を偏向(首振り)させることができる。
【0034】
マルチルーメンチューブ10の先端領域には、第1DC電極群31G、第2DC電極群32Gおよび基端側電位測定電極群33Gが装着されている。ここに、「電極群」とは、同一の極を構成し(同一の極性を有し)、または、同一の目的を持って、狭い間隔(例えば5mm以下)で装着された複数の電極の集合体をいう。
【0035】
第1DC電極群31Gは、マルチルーメンチューブ10の先端領域に装着された8個のリング状電極31から構成されている。第1DC電極群31Gを構成する電極31は、第1リード線群41Gを構成するリード線41および後述するコネクタを介して、電源装置700のカテーテル接続コネクタ72に接続されている。
除細動カテーテル100の使用時(心腔内に配置されるとき)において、第1DC電極群31Gは、例えば冠状静脈内に位置する。
【0036】
第2DC電極群32Gは、第1DC電極群31Gの装着位置から基端側に離間してマルチルーメンチューブ10の先端領域に装着された8個のリング状電極32から構成されている。第2DC電極群32Gを構成する電極32は、第2リード線群42Gを構成するリード線42および後述するコネクタを介して、電源装置700のカテーテル接続コネクタ72に接続されている。
除細動カテーテル100の使用時(心腔内に配置されるとき)において、第2DC電極群32Gは、例えば右心房に位置する。
【0037】
基端側電位測定電極群33Gは、第2DC電極群32Gの装着位置から基端側に離間してマルチルーメンチューブ10の先端領域に装着された4個のリング状電極33から構成されている。基端側電位測定電極群33Gを構成する電極33は、第3リード線群43Gを構成するリード線43および後述するコネクタを介して、電源装置700のカテーテル接続コネクタ72に接続されている。
除細動カテーテル100の使用時(心腔内に配置されるとき)において、基端側電位測定電極群33Gは、例えば上大静脈に位置する。
【0038】
除細動カテーテル100の先端には、先端チップ35が装着されている。
この先端チップ35には、リード線は接続されておらず、本実施形態では電極として使用していない。
【0039】
図4および
図5に示される第1リード線群41Gは、第1DC電極群31Gを構成する8個の電極31の各々に接続された8本のリード線41の集合体である。
第1リード線群41Gにより、第1DC電極群31Gを構成する8個の電極31の各々を電源装置700に電気的に接続することができる。
【0040】
第1DC電極群31Gを構成する8個の電極31は、それぞれ、異なるリード線41に接続される。リード線41の各々は、その先端部分において電極31の内周面に溶接されるとともに、マルチルーメンチューブ10の管壁に形成された側孔から第1ルーメン11に進入する。第1ルーメン11に進入した8本のリード線41は、第1リード線群41Gとして、第1ルーメン11に延在する。
【0041】
図4および
図5に示される第2リード線群42Gは、第2DC電極群32Gを構成する8個の電極32の各々に接続された8本のリード線42の集合体である。
第2リード線群42Gにより、第2DC電極群32Gを構成する8個の電極32の各々を電源装置700に電気的に接続することができる。
【0042】
第2DC電極群32Gを構成する8個の電極32は、それぞれ、異なるリード線42に接続される。リード線42の各々は、その先端部分において電極32の内周面に溶接されるとともに、マルチルーメンチューブ10の管壁に形成された側孔から第2ルーメン12に進入する。第2ルーメン12に進入した8本のリード線42は、第2リード線群42Gとして、第2ルーメン12に延在する。
【0043】
上記のように、第1リード線群41Gが第1ルーメン11に延在し、第2リード線群42Gが第2ルーメン12に延在していることにより、両者は、マルチルーメンチューブ10内において完全に絶縁隔離されている。このため、除細動に必要な電圧が印加されたときに、第1リード線群41G(第1DC電極群31G)と、第2リード線群42G(第2DC電極群32G)との間の短絡を確実に防止することができる。
【0044】
図4に示される第3リード線群43Gは、基端側電位測定電極群33Gを構成する電極33の各々に接続された4本のリード線43の集合体である。
第3リード線群43Gにより、基端側電位測定電極群33Gを構成する電極33の各々を電源装置700に電気的に接続することができる。
【0045】
基端側電位測定電極群33Gを構成する4個の電極33は、それぞれ、異なるリード線43に接続されている。リード線43の各々は、その先端部分において電極33の内周面に溶接されるとともに、マルチルーメンチューブ10の管壁に形成された側孔から第3ルーメン13に進入する。第3ルーメン13に進入した4本のリード線43は、第3リード線群43Gとして、第3ルーメン13に延在する。
【0046】
上記のように、第3ルーメン13に延在している第3リード線群43Gは、第1リード線群41Gおよび第2リード線群42Gの何れからも完全に絶縁隔離されている。このため、除細動に必要な電圧が印加されたときに、第3リード線群43G(基端側電位測定電極群33G)と、第1リード線群41G(第1DC電極群31G)または第2リード線群42G(第2DC電極群32G)との間の短絡を確実に防止することができる。
【0047】
図4および
図5において65はプルワイヤである。
プルワイヤ65は、第4ルーメン14に延在し、マルチルーメンチューブ10の中心軸に対して偏心して延びている。プルワイヤ65の先端部分は、ハンダによって先端チップ35に固定されている。一方、プルワイヤ65の基端部分は、ハンドル20の摘まみ22に接続されており、摘まみ22を操作することによってプルワイヤ65が引っ張られ、これにより、マルチルーメンチューブ10の先端部が偏向する。
【0048】
本実施形態における除細動カテーテル100は、ハンドル20の内部においても、第1リード線群41Gと、第2リード線群42Gと、第3リード線群43Gとが絶縁隔離されている。
【0049】
図6は、本実施形態における除細動カテーテル100のハンドルの内部構造を示す斜視図である。
図6に示すように、マルチルーメンチューブ10の基端部は、ハンドル20の先端開口に挿入され、これにより、マルチルーメンチューブ10とハンドル20とが接続されている。
【0050】
ハンドル20の基端部には、円筒状のコネクタ50が内蔵されている。
ハンドル20の内部には、3つのリード線群(第1リード線群41G、第2リード線群42G、第3リード線群43G)の各々が挿通される3本の絶縁性チューブ(第1絶縁性チューブ26、第2絶縁性チューブ27、第3絶縁性チューブ28)が延在している。
【0051】
第1絶縁性チューブ26の先端部は、マルチルーメンチューブ10の第1ルーメン11に挿入され、これにより、第1絶縁性チューブ26は、第1リード線群41Gが延在する第1ルーメン11に連結されている。
第1絶縁性チューブ26は、ハンドル20の内部に延在する第1の保護チューブ61の内孔を通ってコネクタ50の近傍まで延びており、第1リード線群41Gの基端部をコネクタ50の近傍に案内する挿通路を形成している。
第1絶縁性チューブ26の基端開口から延び出した第1リード線群41Gは、8本のリード線41にばらされ、これらリード線41の各々は、コネクタ50の先端面に配置されたピン端子の各々にハンダにより接続固定されている。
【0052】
第2絶縁性チューブ27の先端部は、マルチルーメンチューブ10の第2ルーメン12に挿入され、これにより、第2絶縁性チューブ27は、第2リード線群42Gが延在する第2ルーメン12に連結されている。
第2絶縁性チューブ27は、ハンドル20の内部に延在する第2の保護チューブ62の内孔を通ってコネクタ50の近傍まで延びており、第2リード線群42Gの基端部をコネクタ50の近傍に案内する挿通路を形成している。
第2絶縁性チューブ27の基端開口から延び出した第2リード線群42Gは、8本のリード線42にばらされ、これらリード線42の各々は、コネクタ50の先端面に配置されたピン端子の各々にハンダにより接続固定されている。
【0053】
第3絶縁性チューブ28の先端部は、マルチルーメンチューブ10の第3ルーメン13に挿入され、これにより、第3絶縁性チューブ28は、第3リード線群43Gが延在する第3ルーメン13に連結されている。
第3絶縁性チューブ28は、ハンドル20の内部に延在する第2の保護チューブ62の内孔を通ってコネクタ50の近傍まで延びており、第3リード線群43Gの基端部をコネクタ50の近傍に案内する挿通路を形成している。
第3絶縁性チューブ28の基端開口から延び出した第3リード線群43Gは、4本のリード線43にばらされ、これらリード線43の各々は、コネクタ50の先端面に配置されたピン端子の各々にハンダにより接続固定されている。
【0054】
上記のような構成を有する本実施形態における除細動カテーテル100によれば、第1絶縁性チューブ26内に第1リード線群41Gが延在し、第2絶縁性チューブ27内に第2リード線群42Gが延在し、第3絶縁性チューブ28内に第3リード線群43Gが延在していることで、ハンドル20の内部においても、第1リード線群41Gと、第2リード線群42Gと、第3リード線43Gとを完全に絶縁隔離することができる。
【0055】
図1に示したように、本実施形態のカテーテルシステムを構成する電源装置700は、DC電源部71と、カテーテル接続コネクタ72と、心電計接続コネクタ73と、外部スイッチ(入力手段)74と、演算処理部75と、第1ON/OFFスイッチ761と、第2ON/OFFスイッチ762と、心電図入力コネクタ77とを備えている。
【0056】
DC電源部71にはコンデンサが内蔵されている。
【0057】
カテーテル接続コネクタ72には、除細動カテーテル100の第1リード線群41G、第2リード線群42Gおよび第3リード線群43Gの各々の基端が接続されている。
これにより、カテーテル接続コネクタ72は、第1DC電極群31G、第2DC電極群32Gおよび基端側電位測定電極群33Gのそれぞれに電気的に接続されている。
【0058】
カテーテル接続コネクタ72は、除細動カテーテル100のコネクタ50と接続され、第1リード線群41G、第2リード線群42Gおよび第3リード線群43Gの基端側と電気的に接続される。
【0059】
図7に示すように、除細動カテーテル100のコネクタ50と、電源装置700のカテーテル接続コネクタ72とが、コネクタケーブルC1によって連結されることにより、
第1リード線群を構成する8本のリード線41を接続固定したピン端子51(実際には8個)と、カテーテル接続コネクタ72の端子721(実際には8個)、
第2リード線群を構成する8本のリード線42を接続固定したピン端子52(実際には8個)と、カテーテル接続コネクタ72の端子722(実際には8個)、
第3リード線群を構成する4本のリード線43を接続固定したピン端子53(実際には4個)と、カテーテル接続コネクタ72の端子723(実際には4個)が、それぞれ接続されている。
【0060】
ここに、カテーテル接続コネクタ72の端子721および端子722は、第1ON/OFFスイッチ761に接続され、端子723は、第1ON/OFFスイッチ761を経ることなく心電計接続コネクタ73に直接接続されている。
これにより、第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gにより測定された心電位情報は、第1ON/OFFスイッチ761を経由して心電計接続コネクタ73に到達し、基端側電位測定電極群33Gにより測定された心電位情報は、第1ON/OFFスイッチ761を経ることなく、心電計接続コネクタ73に到達する。
【0061】
心電計接続コネクタ73は、心電計800の入力端子に接続されている。
入力手段である外部スイッチ74は、電源装置700を起動させる主電源スイッチ740、心電位測定モードと除細動モードとを切り替えるためのモード切替スイッチ741、除細動の際に印加する電気エネルギーを設定するための印加エネルギー設定スイッチ742、設定された電気エネルギーに基いて決定される電圧をDC電源部に蓄積するための充電スイッチ743、除細動を行う準備(リレーの切替え)をするためのエネルギー印加準備スイッチ744、電気エネルギーを印加して除細動を実行するためのエネルギー印加実行スイッチ745からなる。
これら外部スイッチ74からの入力信号はすべて演算処理部75に送られる。
【0062】
演算処理部75は、外部スイッチ74の入力に基づいて、DC電源部71、第1ON/OFFスイッチ761および第2ON/OFFスイッチ762を制御する。
この演算処理部75は、DC電源部71からの直流電圧を第2ON/OFFスイッチ762を介して除細動カテーテル100の電極に出力するための出力回路751と、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gと第2DC電極群32Gとの間のインピーダンスを測定するためのCPU回路752と、動作確認(テスト)のために使用する抵抗値既知の内部抵抗753と、出力回路751およびCPU回路752の各々の接続先を内部抵抗753と第2ON/OFFスイッチ762との間で切り替える切替部754とを有している。
【0063】
出力回路751により、
図7に示したカテーテル接続コネクタ72の端子721(最終的には、除細動カテーテル100の第1DC電極群31G)と、カテーテル接続コネクタ72の端子722(最終的には、除細動カテーテル100の第2DC電極群32G)とが互いに異なる極性となる(一方の電極群が-極のときには、他方の電極群は+極となる)ように直流電圧を印加することができる。
【0064】
CPU回路752により、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gと第2DC電極群32Gとの間のインピーダンスを測定することができ、この測定値は、DC電源部71に蓄積させる目標電圧の決定に利用される。
【0065】
第1ON/OFFスイッチ761は、カテーテル接続コネクタ72に接続されるとともに心電計接続コネクタ73に接続されている。
第2ON/OFFスイッチ762は、カテーテル接続コネクタ72に接続されるとともに演算処理部75に接続されている。
【0066】
第1ON/OFFスイッチ761を「ON」とし、第2ON/OFFスイッチ762を「OFF」とすることにより、除細動カテーテル100からの心電位情報を、カテーテル接続コネクタ72、第1ON/OFFスイッチ761および心電計接続コネクタ73を経由して心電計800に入力させることができる(心電位測定モード)。
【0067】
また、切替部754を介して出力回路751と第2ON/OFFスイッチ762とが接続されている状態で、第1ON/OFFスイッチ761を「OFF」とし、第2ON/OFFスイッチ762を「ON」とすることにより、DC電源部71から、演算処理部75の出力回路751、切替部754、第2ON/OFFスイッチ762およびカテーテル接続コネクタ72を経由して、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gと第2DC電極群32Gとに互いに異なる極性の電圧を印加することができる(除細動モード)。
【0068】
また、切替部754を介してCPU回路752と第2ON/OFFスイッチ762とが接続されている状態で、第1ON/OFFスイッチ761を「OFF」とし、第2ON/OFFスイッチ762を「ON」とすることにより、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gと第2DC電極群32Gとの間のインピーダンスを測定することができる。
第1ON/OFFスイッチ761および第2ON/OFFスイッチ762の「ON」と「OFF」の切替えは、外部スイッチ74であるモード切替スイッチ741およびエネルギー印加準備スイッチ744の入力に基いて演算処理部75により制御される。
【0069】
心電図入力コネクタ77は、演算処理部75に接続され、また、心電計800の出力端子に接続される。
この心電図入力コネクタ77により、心電計800から出力される心電位情報(通常、心電計800に入力された心電位情報の一部)を演算処理部75に入力することができ、
演算処理部75では、この心電位情報に基いて、DC電源部71、第1ON/OFFスイッチ761および第2ON/OFFスイッチ762を制御することができる。
【0070】
本実施形態のカテーテルシステムを構成する心電計800(入力端子)は、電源装置700の心電計接続コネクタ73に接続され、除細動カテーテル100(第1DC電極群31G、第2DC電極群32Gおよび基端側電位測定電極群33Gの構成電極)により測定された心電位情報は、心電計接続コネクタ73から心電計800に入力される。
【0071】
また、心電計800(他の入力端子)は心電位測定手段900にも接続され、心電位測定手段900により測定された心電位情報も心電計800に入力される。
ここに、心電位測定手段900としては、12誘導心電図を測定するために患者の体表面に貼付される電極パッド、患者の心臓内に装着される電極カテーテル(除細動カテーテル100とは異なる電極カテーテル)を挙げることができる。
【0072】
心電計800(出力端子)は、電源装置700の心電図入力コネクタ77に接続され、心電計800に入力された心電位情報(除細動カテーテル100からの心電位情報および心電位測定手段900からの心電位情報)の一部を、心電図入力コネクタ77から演算処理部75に送ることができる。
【0073】
本実施形態における除細動カテーテル100は、除細動治療を必要としないときには、心電位測定用の電極カテーテルとして用いることができる。
【0074】
除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび/または第2DC電極群32Gを構成する電極によって測定された心電位は、カテーテル接続コネクタ72、第1ON/OFFスイッチ761および心電計接続コネクタ73を経由して心電計800に入力される。
また、除細動カテーテル100の基端側電位測定電極群33Gを構成する電極によって測定された心電位は、カテーテル接続コネクタ72から、第1ON/OFFスイッチ761を通ることなく直接心電計接続コネクタ73を経由して心電計800に入力される。
【0075】
除細動カテーテル100からの心電位情報(心電位波形)は、心電計800のモニタ(図示省略)に表示される。
また、除細動カテーテル100からの心電位情報の一部(例えば、第1DC電極群31Gを構成する電極31(第1極と第2極)間の電位差)を、心電計800から、心電図入力コネクタ77を経由して演算処理部75に入力することができる。
【0076】
上記のように、心臓カテーテル術中において除細動治療を必要としないときには、除細動カテーテル100を心電位測定用の電極カテーテルとして用いることができる(心電位測定モード)。
【0077】
そして、心臓カテーテル術中において心房細動が起こったときには、電極カテーテルとして使用していた除細動カテーテル100によって直ちに除細動治療を行うことができる(除細動モード)。この結果、心房細動が起きたときに、除細動のためのカテーテルを新に挿入するなどの手間を省くことができる。
【0078】
以下、本実施形態の心腔内除細動カテーテルシステムによる除細動治療の一例について、
図8に示すフローチャートに沿って説明する。
【0079】
(1)除細動カテーテル100を電源装置700(カテーテル接続コネクタ72)に接続して、当該電源装置700の主電源スイッチ740をONにする(STEP1)。
ここに、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gは冠状静脈洞(CS)に位置させ、第2DC電極群32Gは右心房(RA)に位置させ、基端側電位測定電極群33Gは上大静脈(SVC)に位置させている。
【0080】
(2)主電源スイッチ740をONにしたときの電源装置700のモード(初期モード)は「心電位測定モード」である(STEP2、
図9)。
図9に示すように、第1ON/OFFスイッチ761が「ON」の状態であり、第2ON/OFFスイッチ762が「OFF」の状態である。
これにより、第1DC電極群31Gおよび/または第2DC電極群32Gの構成電極により測定された心電位情報は、カテーテル接続コネクタ72、第1ON/OFFスイッチ761、心電計接続コネクタ73を経由して心電計800に入力される。また、基端側電位測定電極群33Gの構成電極によって測定された心電位情報は、カテーテル接続コネクタ72、心電計接続コネクタ73を経由して心電計800に入力される。心電計800に入力されたこれらの心電位情報は、心電図入力コネクタ77を経由して演算処理部75に入力される。
また、心電位測定手段900(体表面に貼付した電極パッド)によって測定された心電位情報(12誘導心電図)も心電計800に入力され、心電位測定手段900による心電位情報も心電図入力コネクタ77を経由して演算処理部75に入力される。
図9に示した演算処理部75において、切替部754を介して、CPU回路752と内部抵抗753とが接続されており、この段階では、CPU回路752によって内部抵抗753の抵抗値を測定し、既知の抵抗値に合致しているか否かを確認(テスト)することができる。
【0081】
(3)モード切替スイッチ741を入力する(STEP3)。
【0082】
(4)モード切替スイッチ741が入力されたことにより、電源装置700のモードが「除細動モード」となる(STEP4、
図10)。
図10に示すように、第1ON/OFFスイッチ761が「OFF」の状態となり、第2ON/OFFスイッチ762が「ON」の状態となる。
また、
図10に示した演算処理部75では、切替部754を介して、CPU回路752と第2ON/OFFスイッチ762とが接続されている。
【0083】
なお、第1ON/OFFスイッチ761が「OFF」の状態になることにより、カテーテル接続コネクタ72から、第1ON/OFFスイッチ761を経由して心電計接続コネクタ73に至る経路が遮断されるので、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gの構成電極からの心電位情報は、心電計800に入力することはできない(従って、この心電位情報を演算処理部75に送ることもできない。)。但し、第1ON/OFFスイッチ761を経由しない基端側電位測定電極群33Gの構成電極からの心電位情報は心電計800に入力される。
【0084】
(5)演算処理部75のCPU回路752により、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gと第2DC電極群32Gとの間のインピーダンスが測定される(STEP5、
図10)。
【0085】
(6)電源装置700のモードが「心電位測定モード」に戻る(STEP6、
図11)。
図11に示すように、第1ON/OFFスイッチ761が「ON」の状態となり、第2ON/OFFスイッチ762が「OFF」の状態となる。
また、
図11に示した演算処理部75では、切替部754を介して、出力回路751と内部抵抗753とが接続されており、この段階では、内部抵抗753に直流電圧を印加することが可能であり、設定したとおりの電気エネルギーを内部抵抗753に印加すること
ができるか否かを確認(テスト)することができる。
【0086】
(7)印加エネルギー設定スイッチ742を入力して、除細動の際の印加エネルギーを設定する(STEP7)。
本実施形態における電極装置700によれば、印加エネルギーは1Jから30Jまで、1J刻みで設定することができる。
【0087】
(8)充電スイッチ743を入力する(STEP8)。
【0088】
(9)STEP5で測定されたインピーダンスと、STEP7で設定された電気エネルギーとに基づいて決定された目標電圧がDC電源部に蓄積される(STEP9)。
【0089】
(10)エネルギー印加準備スイッチ744を入力する(STEP10)。
【0090】
(11)エネルギー印加準備スイッチ744が入力されたことにより、演算処理部75からの制御信号を受けて、第1ON/OFFスイッチが「ON」の状態を維持し、第2ON/OFFスイッチが「OFF」から「ON」に切り替わる(STEP11、
図12)。
また、
図12に示した演算処理部75では、切替部754を介して、出力回路751と第2ON/OFFスイッチとが接続されている。
【0091】
(12)除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび/または第2DC電極群32Gの構成電極からの心電位情報に係る心電図を目視により確認する(STEP12)。このとき、基端側電位測定電極群33Gの構成電極からの心電位情報および/または心電位測定手段900による心電位情報に係る心電図を併せて確認してもよい。
【0092】
(13)心電図においてモード切替え等に伴うドリフト(ベースラインの動揺)が収まっているか否かを判断し、収まっている場合にはSTEP14に進み、収まっていな場合にはSTEP12に戻る(STEP13)。
【0093】
(14)エネルギー印加実行スイッチ745を入力する(STEP14)。
【0094】
(15)エネルギー印加実行スイッチ745が入力されたことにより、演算処理部75からの制御信号を受けて、第2ON/OFFスイッチ762が「ON」の状態を維持し、第1ON/OFFスイッチが「ON」から「OFF」に切り替わり、カテーテル接続コネクタ72から心電計接続コネクタ73に至る経路が直ちに遮断される(STEP15、
図13および
図14)。これにより、心電計800に直流電圧が印加されることはない。
【0095】
(16)演算処理部75からの制御信号を受けたDC電源部71から、演算処理部75の出力回路751および切替部754、第2ON/OFFスイッチ762並びにカテーテル接続コネクタ72を経由して、除細動カテーテル100の第1DC電極群と、第2DC電極群とに、互いに異なる極性の直流電圧が印加される(STEP16、
図14)。
【0096】
(17)DC電源部71からの電圧の印加が停止した後、電源装置700のモードが「心電位測定モード」に戻り、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび第2DC電極群32Gの構成電極からの心電位情報が、心電計800に入力される(STEP17)。
【0097】
(18)心電計800のモニタに表示される、除細動カテーテル100の構成電極(第1DC電極群31G、第2DC電極群32Gおよび基端側電位測定電極群33Gの構成電極)からの心電位情報(心電図)、並びに、心電位測定手段900からの心電位情報(12
誘導心電図)を観察し、「正常」であれば終了とし、「正常でない(心房細動が治まっていない)」場合には、STEP2に戻る(STEP18)。
【0098】
本実施形態のカテーテルシステムによれば、第1ON/OFFスイッチ761および第2ON/OFFスイッチ762が互いに独立しているので、両方のON/OFFスイッチを「ON」にしたり、「OFF」にしたりすることが可能である。
そして、エネルギー印加準備スイッチ744が入力されることにより、第1ON/OFFスイッチ761および第2ON/OFFスイッチ762の両方が「ON」となり、カテーテル接続コネクタ72から第2ON/OFFスイッチ762を経由して演算処理部75に至る経路が確保されてエネルギーの印加が可能となりエネルギー印加の準備が完了するとともに、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gおよび/または第2DC電極群32Gの構成電極からの心電位情報を取得することができる。
【0099】
また、エネルギー印加実行スイッチ745が入力されることにより、第1ON/OFFスイッチ761が「OFF」に切り替えられるので、除細動カテーテル100の第1DC電極群31Gと第2DC電極群32Gとに直流電圧が印加されて除細動が実行される直前まで、第1DC電極群31Gおよび/または第2DC電極群32Gの構成電極からの心電位情報を取得することができる。
これにより、エネルギー印加準備スイッチ744の入力後においても、治療部位の心電位情報に基づく患者の状態を監視することができ、当該心電位情報が安定していることを確認してからエネルギー印加実行スイッチを入力(除細動を実行)することができる。
【0100】
また、切替部754によりCPU回路752と内部抵抗753とを接続することにより、CPU回路752によって内部抵抗753の抵抗値を測定し、CPU回路752を含むインピーダンスの測定系統の動作状態を確認することができる。
【0101】
また、切替部754により出力回路751と内部抵抗753とが接続することにより、出力回路751によって内部抵抗753に電気エネルギーを印加することにより、出力回路751を含む直流電圧の出力系統の動作状態を確認することができる。
【符号の説明】
【0102】
100 除細動カテーテル
10 マルチルーメンチューブ
11 第1ルーメン
12 第2ルーメン
13 第3ルーメン
14 第4ルーメン
15 フッ素樹脂層
16 インナー(コア)部
17 アウター(シェル)部
18 ステンレス素線
20 ハンドル
21 ハンドル本体
22 摘まみ
24 ストレインリリーフ
26 第1絶縁性チューブ
27 第2絶縁性チューブ
28 第3絶縁性チューブ
31G 第1DC電極群
31 リング状電極
32G 第2DC電極群
32 リング状電極
33G 基端側電位測定電極群
33 リング状電極
35 先端チップ
41G 第1リード線群
41 リード線
42G 第2リード線群
42 リード線
43G 第3リード線群
43 リード線
50 除細動カテーテルのコネクタ
51,52,53 ピン端子
61 第1の保護チューブ
62 第2の保護チューブ
65 プルワイヤ
700 電源装置
71 DC電源部
72 カテーテル接続コネクタ
721,722,723 端子
73 心電計接続コネクタ
74 外部スイッチ(入力手段)
740 主電源スイッチ
741 モード切替スイッチ
742 印加エネルギー設定スイッチ
743 充電スイッチ
744 エネルギー印加準備スイッチ
745 エネルギー印加実行スイッチ(放電スイッチ)
75 演算処理部
751 出力回路
752 CPU回路
753 内部抵抗
754 切替部
761 第1ON/OFFスイッチ
762 第2ON/OFFスイッチ
77 心電図入力コネクタ
800 心電計
900 心電位測定手段