IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝ソリューション株式会社の特許一覧 ▶ 東芝キヤリア株式会社の特許一覧

特許7579424製造プロセスおよびサービスを自律制御する情報管理システム並びに方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】製造プロセスおよびサービスを自律制御する情報管理システム並びに方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20241030BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2023506915
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007927
(87)【国際公開番号】W WO2022196295
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2021045381
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堺 隆史
(72)【発明者】
【氏名】彌富 康孝
(72)【発明者】
【氏名】白石 達紀
(72)【発明者】
【氏名】井内 新輔
(72)【発明者】
【氏名】梶村 幸子
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-177580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0005118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造プロセスおよびサービスにおける稼働制御を自律的に行う情報管理システムであって、
サイバーフィジカルシステムの第1のフィードバックループを構築するループ接続部と、
前記製造プロセスに必要な特定情報を前記第1のフィードバックループから取得する情報取得部と、
前記特定情報を解析する情報解析部と、
前記情報解析部で取得した解析結果に基づき、前記稼働制御を自律的に行わせる自律稼働制御部と、
前記ループ接続部と前記自律稼働制御部が協働することで構築されるものであり、新たな前記解析結果に応答して新規な第2のフィードバックループを形成するループ連携制御部と、を備え、
前記特定情報は、
作業者に装着された生体センサから取得したデータを解析し、製品の品質に影響をする前記作業者の体調を判定可能な情報を含み、さらに
外部から導入され、自社の工場の設備の使用電力の増減調整を行うのに参考とされる再生エネルギー生産情報、
同じ製品の増産や減産の自律制御のために参照可能とされる前記製品の消費情報、
環境負荷の低減対策を行うのに利用可能な環境負荷情報
の中の1つ又は複数を含む、前記特定情報である、
ことを特徴とする情報管理システム。
【請求項2】
前記新規な第2のフィードバックループは、今までに存在したが利用されていなかったフィードバックループが改めて起動されたものである、請求項1記載の情報管理システム。
【請求項3】
前記新規な第2のフィードバックループは、今までに存在しなかった新しいフィードバックループが形成されたものである、請求項1記載の情報管理システム。
【請求項4】
前記新規な第2のフィードバックループは、複数のフィードバックループが束ねられ形成されたものである、請求項1記載の情報管理システム。
【請求項5】
前記第2のフィードバックループは、既存のフィードバックループと新しいフィードバックループの束、または複数の既存の第2のフィードバックループの束、または複数の新しいフィードバックループの束のいずれかの束である、請求項1記載の情報管理システム。
【請求項6】
前記情報解析部と前記自律稼働制御部は、前記第1のフィードバックループを、前記製造プロセスである第1の制御対象を制御するための第1の制御ループとして構築し、前記情報解析部と前記ループ連携制御部は、前記第2のフィードバックループを、前記第1の制御対象をさらに制御する第2の制御ループとして構築する、
請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項7】
前記情報解析部と前記自律稼働制御部は、前記第1のフィードバックループを、前記製造プロセスである第1の制御対象を制御するための第1の制御ループとして構築し、前記情報解析部と前記ループ連携制御部は、前記第2のフィードバックループを、第2の制御対象をさらに制御する第2の制御ループとして構築する、
請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項8】
前記情報解析部と前記自律稼働制御部は、前記第2のフィードバックループの前記第2の制御ループを、前記第1のフィードバックループの前記第1の制御ループとともに束ねて継続させる、
請求項6に記載の情報管理システム。
【請求項9】
前記情報解析部と前記自律稼働制御部は、前記第2のフィードバックループの前記第2の制御ループを、前記第1のフィードバックループの前記第1の制御ループとともに一時的に束ねて継続させ、所定の条件で前記第2のフィードバックループの前記第2の制御ループを解除する、
請求項6に記載の情報管理システム。
【請求項10】
前記情報解析部と前記自律稼働制御部は、前記第1のフィードバックループを、前記製造プロセスである第1の制御対象を制御するための第1の制御ループとして構築し、前記情報解析部と前記ループ連携制御部は、前記第2のフィードバックループを、前記製造プロセスとは異なる第2の制御対象を制御する第2の制御ループとして構築する、
請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項11】
前記情報解析部と前記ループ連携制御部は、前記第2のフィードバックループの制御目的が完了した場合、前記第2のフィードバックループを解除する、請求項8に記載の情報管理システム。
【請求項12】
前記情報解析部と前記ループ連携制御部は、前記第2のフィードバックループによる制御結果を解析し、解析内容に応じて、さらに、第3のフィードバックループを、第1の制御ループおよび第2の制御ループの制御対象とは異なる第3の制御対象を制御する第3の制御ループとして構築する、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項13】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、ビルの設備管理を行う制御システムに適用されている請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項14】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、ロボットの制御を行う制御システムに適用されている請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項15】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ制御において、前記第2のフィードバックループは、工場で生産された前記製品を用いるユーザドメインからの情報を利用している、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項16】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、物流センターにおける荷物の入庫、出庫、仕分け、搬送、パンニングを行うロボット制御システムに適用されている請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項17】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、複数の事業体の使用電力を計算するとともに、前記使用電力の使用量の協力要請を行う制御システムに適用されている、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項18】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、複数の電力送配電設備の制御システムに適用されている、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項19】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、第1の工場と第2の工場とが使用するソフトウエアのバージョンの違いを検出する制御部においても適用されている、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項20】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、製造工場においてリサイクル部品およびリユース部品の少なくともいずれかを使用するか否かを判断する制御部においても適用されている、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項21】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、以下の制御部に適用されるものである、
製造工場の製造ラインが上流から下流に複数の製造ステップを有し、前記制御部は、いずれの製造ステップの段階の中間製品でもそれぞれに適した製造ステップで当該中間製品を受け入れることができるように制御を行う、
請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項22】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、第1の製造ラインと第2の製造ラインを有する工場で前記製造ラインを制御する制御部に適用されるものである、
前記制御部は、共通の搬送路で搬送されてきた第1の製品と第2の製品とを前記第1の製造ラインと前記第2の製造ラインに振り分ける制御を行う、
請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項23】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、発電プラントの発電制御システムに適用されている、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項24】
少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ連携制御は、車または家電製品のいずれか1つの制御システムに適用されている、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項25】
前記ループ接続部および前記ループ連携制御部の少なくともいずれかは、
制御対象となる装置のプログラムの構成を変更または前記プログラムを入れ替えすることを特徴とする請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項26】
前記制御対象となる装置は、発電プラントの制御装置または工場の制御装置または車または家電製品である、請求項25に記載の情報管理システム。
【請求項27】
前記サイバーフィジカルシステムは、複数のサイバーフィジカルシステムを形成しており、
前記複数のサイバーフィジカルシステムは、それぞれが管轄する事業のエネルギー使用量を示すデータを把握しており、
統合制御部は、業種の種類毎の前記エネルギー使用量を示すデータを可視化した表示用データを生成する、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項28】
サイバーフィジカルシステムのサイバー空間を形成する装置の前記サイバー空間の形成方法であって、
前記装置はフィジカル空間の製造装置と接続部を介して接続されており、
前記装置は
前記製造装置との間で、前記サイバーフィジカルシステムの第1のフィードバックループを接続するループ接続ステップと、
前記フィジカル空間の作業者に装着された生体センサから取得したデータを解析し、製品の品質に影響をする前記作業者の体調を判定可能な情報を含み、
さらに前記装置の外部から導入され、前記製造装置を有する自社の工場の設備の使用電力の増減調整を行うのに参考とされる再生エネルギー生産情報、
同じ製品の増産や減産の自律制御のために参照可能とされる前記製品の消費情報、
環境負荷の低減対策を行うのに利用可能な環境負荷情報、
の中の1つ又は複数を含む特定情報を準備するステップと、
製造プロセスに必要な前記特定情報を前記第1のフィードバックループから取得する情報取得ステップと、
前記特定情報を解析する情報解析ステップと、
報解析部で取得した解析結果に基づき、稼働制御を自律的に行わせる自律稼働制御ステップと、
ープ接続部と自律稼働制御部が協同し、新たな前記解析結果に応答して新規な第2のフィードバックループを構築するループ連携制御ステップと、
を備える情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は製造プロセスおよびサービスを自律制御する情報管理システム並びに方法に関し、生産性向上・その自動化および自律制御に係り、さらに詳しくは、デジタルモデリングを活用する自動化および自律制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の物(製品、部品等)の製造ライン上の製造プロセスおよび設備等の情報(フィジカル空間の情報)を、IoT(Internet of Things)技術を用いて、サイバー(Cyber)空間に伝送し、サイバー空間上にフィジカル(Physical)空間の環境をデジタル的に再現する技術が発展している。デジタル的に実現したサイバー(Cyber)空間は、デジタルツインとも称される。また、このような全体環境は、サイバーフィジカルシステム(以下CPSと記述する)とも称される。なおフィジカル空間は、具体的には、例えば送受信装置およびコンピュータおよびメモリを含むデジタルデータ処理装置で構築されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-507157号公報
【文献】特表2020-515963号公報
【文献】WO2019/093386号公報
【文献】WO2017/138620号公報
【文献】特開2020-175339号公報
【文献】特開2020-148359号公報
【文献】特開2020-145672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CPSのサイバー空間では、フィジカル空間で生じた様々な事象を、それぞれデジタル的に分析することができる。
【0005】
例えば、フィジカル空間で稼働する第1の製造プロセスおよび設備の第1のフィジカル空間情報をサイバー空間に取り込み、第1のサイバー空間情報として蓄積する。そして、第1のサイバー空間情報から、第1の製造プロセスおよび設備の問題点(例えば温度が急に上昇しすぎる)、製造効率(例えば上流ステップと下流ステップとの処理時間のズレがある)、などを分析することが可能である。この分析結果に応じて、例えば第1の製造プロセスおよび設備に対して、付属的な支援装置を組み込むなどして、問題点の解消、製造効率の改善などを得ることができる。
【0006】
さらにまた、フィジカル空間に、前記第1の製造プロセスおよび設備と同様な第2の製造プロセスおよび設備を設置する場合、前記第1のサイバー空間情報(例えば制御パラメータ、プロセス制御ソフトウエア等含む)を微調整した第2のサイバー空間情報を、第2の製造プロセスおよび設備に転写することができる。これにより、第1の製造プロセスおよび設備における高度な技術を、第2の製造プロセスおよび設備で反映することができる。上記のCPSは、さらに多種の技術やサービス分野への活用が望まれている。
【0007】
そこで、実施形態では、CPS内のフィードバックループ(単に制御ループと称してもよい)を多彩化して、製造プロセスおよび設備およびサービスを自律制御する情報管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、実施形態では、あるフィジカル空間で得られる例えば熟練者(匠、或は人間と称してもよい)の技を反映したフィジカル高度技術データを、サイバー高度技術データとして、サイバー空間に反映する、そして、サイバー高度技術データを、様々な他のフィジカル空間の装置や機器に反映し得る、製造プロセスおよび設備およびサービスを自律制御する情報管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、実施形態では、地球環境の保全に有用であり、ひいては人への適合性・親和性が優れた自律制御機能を持つ情報管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、
製造プロセスおよびサービスにおける稼働制御を自律的に行う情報管理システムであって、サイバーフィジカルシステムのフィードバックループを接続するループ接続部と、前記製造プロセスに必要な特定情報を前記フィードバックループから取得する情報取得部と、前記特定情報を解析する情報解析部と、前記情報解析部で取得した解析結果に基づき、前記稼働制御を自律的に行わせる自律稼働制御部と、を備える情報管理システム、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは本発明の実施形態が適用されるフィジカル空間とサイバー空間との環境を概念的に示す説明図である。
図1B図1Bは本発明の実施形態が適用されるフィジカル空間とサイバー空間とで形成されるセンサデータ、フィードバックデータなどデータ系路を説明する概念図である。
図2A図2Aはグローバル化したサイバー空間E200のシステムブロックを示した説明図である。
図2B図2Bはグローバル化したサイバー空間E200を利用する一例を、第1のフィードバックループ(エンタープライズループと称してもよい)K503と、第2のフィードバックループ(パブリックループと称してもよい)K510を示して説明する説明図である。
図2C図2Cはグローバル化したサイバー空間E200におけるエンタープライズループK503と、パブリックループK510の他の例を示す図である。
図2D図2DはエンタープライズループK503と、パブリックループK510のさらに他の例を示す図である。
図2E図2Eは複数のフィードバックループの接続(連携或は連係と称してもよい)例を説明するための図である。
図2F図2Fはサイバー空間E200の階層構造の例を示す図である。
図3A図3Aはサイバー空間E200がグローバル化したことにより、さらにサイバー空間のフィードバック機能が多様化できることを説明する図である。
図3B図3Bは、サイバー空間E200において、本CPSが実現し得る効果の例を説明するために、製造空間の達成機能M11と製造空間に対するアプローチ機能M13とを分けて示す図である。
図4図4はフィジカル空間E100(図下側)と、サイバー空間E200(図上側)をより具体的な各種の事業とともに示す図である。
図5A図5Aはフィジカル空間E100からサイバー空間E200へ送信される匠データF100の種類とその送信系路と、製造ラインF221に配置されている各種センサF224から取得した装置データF200の送信系路を説明する図である。
図5B図5Bは匠E122から取得可能な各種の匠データF100を分類して示す説明図である。
図6図6はフィジカル空間E100からサイバー空間E200に、取り込んだデータの多様な活用・解析方法と、この活用・解析により得られる効果を説明するために示すデータ活用ブロック図である。
図7A図7Aは実施形態に係るメガネ型眼球回転検出装置の一例を正面から見た図である。
図7B図7Bはメガネ型眼球回転検出装置の一例を後ろ上方から見た図である。
図7C図7Cはメガネ型眼球回転検出装置の一例を着用したユーザを右前方から見た図である。
図8図8は眼球回転検出装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図9図9は種々な眼動に対するEOG信号の波形の一例を示す図である。
図10図10はウェアラブルセンサの他の例を示す図である。
図11図11は製品の仕上がり品質と作業員の感情の変化の相関の一例を示す図である。
図12A図12Aは本CPSにおけるフィードバックループを利用して、環境負荷を抑制する場合の一例を示す図である。
図12B図12Bは本CPSにおけるフィードバックループを利用して、環境負荷を抑制する場合の他の例を示す図である。
図12C図12Cは本CPSにおけるフィードバックループを利用して、環境負荷を抑制する場合のさらに他の例を示す図である。
図13A図13Aはサイバー空間E200とフィジカル空間E100と間のフィードバックループの基本的な使用例を示す図である。
図13B図13Bはサイバー空間E200の自律的な制御部E500が実行したプログラムのフローチャートの例を示している。
図14A図14Aはフィジカル空間E100に第1の工場(或は第1のセクション)G1、第2の工場(或は第2のセクション)G2が存在する例を示す図である。
図14B図14Bは第2の工場G2の製造プロセスを管理している制御部EB503から、統合制御部E504が第2の工場G2で用いるプログラム(ソフトウエア)に関する情報を受け取った場合の動作フローを示す図である。
図14C図14Cは第2の工場G2の製造プロセスを管理している制御部EB503から、統合制御部E504が第2の工場G2で用いるプログラム(ソフトウエア)のバージョンの異なる情報を受け取った場合の動作フローを示す図である。
図15図15はCPSが環境負荷軽減と資源の有効活用に貢献できる工夫がなされていることを説明するための製造工程の説明図である。
図16A図16AもCPSが環境負荷軽減と資源の有効活用に貢献できる工夫がなされていることを説明するためのシステム図である。
図16B図16BもCPSが環境負荷軽減と資源の有効活用に貢献できる工夫がなされていることを説明するためのフローチャートである。
図17A図17AはCPSが環境負荷軽減と資源の有効活用にさらに貢献できる工夫がなされていることを説明するための工場システムの図である。
図17B図17BはCPSが環境負荷軽減と資源の有効活用にさらに貢献できる工夫がなされていることを説明するための他の工場システムの図である。
図18図18図17A図17Bの工場システムを有効に活用するCPSの機能を説明するフローチャートである。
図19図19は環境負荷を軽減できる発電プラントH100の基本的な構成例を示す図である。
図20】本実施形態におけるCPSにより、プログラム(ソフトウエア)サービスが行われた場合の実施形態を示す説明図である。
図21図21は、工場内の各種の設備(自律走行ロボット・ドローン)などが、周辺地域(街中、駅など)で事故、災害が生じたとき、出動できる体制にあることを説明する図である。
図22図22は自動走行ロボット・ドローンなどの基本構成を示している。
図23図23はエッジコンピュータ(ゲートウェイと称してもよい)の管理方法の一例を示す説明図である。
図24図24もエッジコンピュータの管理方法の一例を示す説明図であり、図23の続きを説明している。
図25図25は、エッジコンピュータの管理システムの応用例を説明するために示した説明図である。
図26図26は、エッジコンピュータの管理システムの他の応用例を説明するために示した説明図である。
図27A図27Aは、センサおよびまたはエッジコンピュータの管理方法の一例を示す説明図である。
図27B図27Bは、センサおよびまたはエッジコンピュータの管理テーブルの一例を示す説明図である。
図28A図28Aは、物理空間上の工場で働くロボットの制御システムの一例を示す説明図である。
図28B図28Bは、上記ロボットの動作工程を示すフローチャートである。
図28C図28Cは、上記ロボットの動作を制御するフィードバックループのデータ処理工程の一例を示す説明図である。
図28D図28Dは、図28Cの工程管理プログラム3023のさらに下位の層SH1、SH2における動作の一例を示す説明図である。
図29図29は、上記ロボットのフィードバックループのデータがサイバー空間E200のデータ蓄積部に格納された様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1A図1Bは、本実施形態が適用されるフィジカル空間(実世界)E100と、サイバー空間(仮想世界)E200の概要を示す。フィジカル空間E100には、豊富な事業ドメイン資産が存在する。フィジカル空間の各種センシングデータA1は、サイバー空間E200にネットワークを介して送信される。サイバー空間E200は、センシングデータA1を認識・理解し、この認識・理解に基づいて、分析・予測データ、最適化・計画データを生成する。そして、分析・予測データ、最適化・計画データに基づいて、制御データを生成して、フィジカル空間E100にフィードバックしている。
【0013】
このフィードバックされた制御データにより、フィジカル空間では価値創出が得られる。フィジカル空間E100には、監視対象、制御対象、参照対象となる豊富な事業ドメインがある。上記のセンシングデータの系路と、上記の制御データの系路を合わせてフィードバックループと称することにする。
【0014】
フィジカル空間E100に存在する種々の産業の物(部品、車、ドローン、発電プラント、ビルなど)、流体(気体、液体、燃焼ガスやその他の作動流体など)、そしてサービス(販売、通信、取引、画像、音声など)等は、デジタル化された形で、サイバー空間E200に形成されている。したがって、サイバー空間E200は、外見では、例えば大型のサーバ、或は複数のサーバが集合して連携するサーバ群を含む情報システムで構築されている。
【0015】
なお本明細書においては、複数のサーバ、或は複数の機器、複数のフィードバックループが、連絡を取り協力して例えば制御を行うことを総称して「連携」と記載している。しかし本願のシステムでは、複数のフィードバックループが互いつながりを持ち、並列的な動作、或は直列的な動作を行うこともあるので、この場合は、「連携」は、「連係」と言う意味も含む。また、フィードバックループは、その呼び名が固定されるものではなく、制御ループと称される、或は、ループが形成される目的や場所に応じて、メインフィードバックループ、ローカルフィードバックループと称されてもよい。またフィードバックループは、CPSループ、エンタープライズループ、パブリックループと称される場合もある。
【0016】
また上記フィードバックループは、多種のループが存在し、新たに形成されるもの、既存のフィードバックループを束ねるもの、既存フィードバックと新たなフィードバックを束ねるものが存在する。さらに、新規のものであれ、既存のものであれ、フィードバックループの中には、ループの途中で人(例えば熟練技術者、医者、科学者など)が介在するフィードバックループも存在する。
【0017】
フィジカル空間E100からサイバー空間E200には種々のセンシングデータA1が送信される。センシングデータA1に基づいてサイバー空間E200で生成された制御データは、サイバー空間E200とフィジカル空間E100との間に流れるフィードバックループA41,A42で帰還される。さらにサイバー空間E200とフィジカル空間E100との間で、自社のデータ(センシングデータを含む)を活用するフィードバックループA411、さらには自社を除く他社のデータ(センシングデータを含む)を活用するフィードバックループA412も形成されている。自社および他社のデータとしては、例えば、ものづくりにおいては、ベテラン技術者が採用した調整値、使用材料などのデータがある。またものづくりに関するデータのみならず、サービス分野(複数商品間の販売価格のバランス制御情報や、ものづかい(製品出荷後にエンドユーザーにより使用されている状態)局面でのものづくりに関する制御情報など)においても、上記フィードバックループA411、A412のデータを利用可能である。上記のフィードバックループA41、A42、フィードバックループA411、A412の型は、垂直統合型と称してもよい。フィードバックループA41,A42、フィードバックループA411、A412の一部若しくは全部には、量子暗号通信(Quantum Key Distribution: QKD)技術が採用されていてもよい。
【0018】
フィジカル空間E100内においても種々の産業における業種とのデータの流通A420(図1B参照)が行われ、同様にサイバー空間E200内においてもデータの流通A430(図1B参照)が行われる。このデータの流通A420、データの流通A430に基づく制御の型は、水平統合型と称してもよい。またデータの流通A420、データの流通A430の一部若しくは全部には、量子暗号通信技術が採用されていてもよい。
【0019】
なおサイバー空間E200においては、世界標準時刻が用いられるほうが好ましい。この場合、例えば業種間で、瞬間的な消費電力などの比較が容易である。
【0020】
図2Aはフィジカル空間E100およびグローバル化したサイバー空間E200を構成するシステムのシステムブロックを示した説明図である。フィジカル空間E100におけるエッジコンピュータ(ゲートウェイと称してもよい)E900は、制御部(Control)を含み、制御部には、通信機能(Communication)、エッジ解析機能(Edge Analytics)、変換機能(Transformation)、感覚機能(Sense)、作動機能(Actuation)を備えている。
【0021】
サイバー空間E200は、プラットフォーム(Platform)K100、エンタープライズサービス(Enterprise Service)K200を含む。さらにまたエンタープライズサービス(Enterprise Service)K200と連携する他のドメインK300を備える。また、エッジコンピュータE900、プラットフォーム(Platform)K100、エンタープライズサービス(Enterprise Service)K200に共通する共通サービス機能K400として、通信やデータに対して、安全性を得るセキュリティー機能(Security)、データやプログラムなどを保存する登録機能(Logging)、課金や費用に関する会計・経理・決済機能(Billing)が存在する。またこの共通サービスは、フィジカル空間とサイバー空間のフィードバックループを形成する接続部として位置付けられる。
【0022】
プラットフォーム(Platform)K100は、大別してデータ部(Data)K111,解析部(Analytics)K112,操作部(Operations)(制御部E503に相当)K113を含む。
データ部(Data)K111は、マスターデータ(Master Data)、データレイク(Data lake)を含み、データの取り扱いを容易にしている。マスターデータ(Master Data)は、エッジから収集されたデータ、エッジおよび使用環境の仕様、設計図、メンテナンス履歴などのデータを含む。
【0023】
解析部(Analytics)K112は、上記の各種データをベースにして、統計部(Statistics),電子頭脳(Artificial Intelligence;AI)と称される(機械学習部(Machine learning)、深層学習部)、最適化部(Optimization)を含む。さらに操作部(Operations)K113は、モニタおよび診断部(Monitoring & Diagnosis)、管理部(Management)を含む。つまり、操作部(Operations)K113は、例えばAIによりデータを解析した結果に応じて、エッジコンピュータE400側へフィードバック制御を行う。この制御のための情報は、エッジコンピュータE400の制御状態を変化させるための情報であればどのようなものであってもよく、例えば、通信、エッジコンピュータE900での分析、状態変化、センシング、操作の指示等をエッジコンピュータE400で実行させるような情報であればよい。上記の自律的な操作部K113は、自律稼働制御と称してもよい。
【0024】
なおエッジコンピュータE900は、IoT機器などから収集したデータをプラットフォームK100に伝送する。またプラットフォームK100からのフィードバックデータや指示データ(制御情報)を受信する。そしてこの制御情報をIoT機器や他の制御対象となる装置へ与える。このような動作を断続的に行うことで、IoT機器から収集されるセンサデータの時系列での変化に基づくフィードバック制御ループが構築されている。
【0025】
上記のようにサイバー空間E200とフィジカル空間E100との間で、フィードバックループ(CPSループと称してもよい)が形成されることで、各種の作業の効率化、安全性向上、環境負荷の軽減、など多数の利点を生み出すことができる。また多数の事業の各エッジコンピュータE900が、上記のように制御されることで、社会全体にその効果が広がることになる。
【0026】
エンタープライズサービス(Enterprise Service)K200は、サービス部(Service)K211、ビジネス部(Business)K212、システムオブシステムズ部(System of Systems)K213を含む。そして、サービス部(Service)K211は、知的発見手法エンジン(Intelligent Heuristic Engine)、アプリケーションプログラムインターフェース
(API)&ユーザーインターフェース(UI)、ロジック(Logic)&ワークフロー(Workflow)機能を備える。ビジネス部(Business)K212は、CRM、ERP、PLM&EAMとの関連機能を備える。システムオブシステムズ部(System of Systems)K213は、システム間のアプリケーションインターフェース&サービス(SoS API& Service)機能、望ましい形への統合機能(Orchestrator)を備える。システムオブシステムズ部(System of Systems)K213全体或はOrchestratorも、統合(integration)制御部または自律制御部あるは自律稼働制御部と称してもよい。
【0027】
上記のエンタープライズサービス(Enterprise Service)K200は、プラットフォームに蓄積されたデータおよび解析結果を管理担当者に伝えることができる。管理担当者(熟練者であってもよい)は、CPSループの状態を人の検知に基づいて、検査したり、検査に基づき人手により、状態を変化させたり、調整したり、また切替えたりすることができる。
【0028】
例えばサービス部(Service)K211では、管理担当者は、専門家としての人間の検知に基づき、CPSループの検査、監査を行い、当該システムが正常に動作しているかどうかを確認する。また、管理担当者は、CPSループの検査、監査など行い、異常発生、外部からの攻撃を専門家としての検知に基づき判断している。管理担当者は、CPSループの異常を検知した場合は、サービス部K211を介して、或はその他の方法で、CPSループのトラブルシューティングを実施してもよい。
【0029】
ビジネス部K212は、CRM(営業支援或は顧客管理機能)、ERP(顧客接点力強化機能)、PLM(プロダクト・ライフ・サイクル管理機能)&EAM(設備資産管理機能)など他の基幹システムと連携し、データの送受信などを行う。システムオブシステムズ部K213は、例えばライフサイクルの異なる複数のシステム群を統合することができるシステム部である。複数のシステム群に含まれる各システムは、管理方法や操作方法がそれぞれ独立して設計されているものがある。また、各システムは、地理的に分布する場合もある。システムオブシステムズ部K213は、上記のような複数のシステムを統括した制御を行うことができる。例えば、各システムが有する多数のCPSループを識別して統括して認識することができる。またシステムオブシステムズ部K213は、プラットフォームK100に蓄積されたデータおよび解析(分析)により、1つのシステムとしての新たなCPSループを構築することができる。システムオブシステムズ部K213は、例えば、エッジコンピュータE900から作業用情報を受け取り、その作業の結果得られた解析情報を新たなCPSループを介してエッジコンピュータE900へフィードバックすることができる。この場合の機能は、例えば、追加の作業システム、或は定期的なメンテナンス作業システムとして連携するときに有効である。
【0030】
上記のシステムオブシステムズ部K213は、複数のフィードバックループを取り扱う場合、柔軟性を備える。例えば、第1のフィードバックループに対して、第2のフィードバックループを追加し、複数のフィードバックループを束ねることができる。この場合、第2のフィードバックループは、第1のフィードバックループを構築している第1のCPSとは異なる第2のCPSからの制御データ(例えばソフトウエアの一部やパラメータ)として第1のフィードバックループの制御データに加えることができる。そして、一定期間の並列制御(連携)の結果、第2のフィードバックループによる制御内容が、第1のフィードバックループの制御内容に組み込まれた場合、第2のフィードバックループが切り離される。しかし、制御内容によっては、第1のフィードバックループと第2のフィードバックループが連続して並走して運転される場合もある。事例としては、例えば、温度変化が一定範囲であれば第1のフィードバックループによる温度制御で十分であるが、温度変化が前記一定範囲を超えるような場合、第2のフィードバックループによる強い冷却制御を稼働させるようなシステムの場合である。
【0031】
上記した第2のフィードバックループのみならず、システムオブシステムズ部K213は、第3、第4のフィードバックループを連携させることも可能である。このような場合、他のドメインK300(後述するハブ)を経由したループが構築される。
【0032】
エッジコンピュータE900とプラットフォームK100間は、例えばIoTバス(IoT Bus)を介して接続されており、プラットフォームとエンタープライズサービスとは、サービスバス(Service Bus)を介して接続されている。上記のIoTバス、サービスバス、共通サービスなどは、システムオブシステムズ部K213が主体となり接続部或はループ接続部を構築することができる。そして、ループ接続部は、ループ連携制御部(AIも含めたソフトウエア)を含み、フィードバックループを新たに構築したり、複数のフィードバックループを連携させたり、フィードバックループを解除したりする機能を有する。
【0033】
図2Bはグローバル化したサイバー空間E200を利用する一例を示す説明図である。この例は、例えば、ロボットK501を利用してビルが監視されるものとする。サイバー空間のプラットフォームK100には、ロボットK501からの監視情報を解析して、ビルの環境(エアコン、照明等)、ビルの設備(エスカレータ、エレベータ、ドアなど)、さらにはロボットK501自身を制御するプログラムが配備されている。これにより、環境、および設備を自律的にコントロールする、またロボットK501の監視機能を制御するフィードバックループ(エンタープライズループと称してもよい)K503が形成されている。ここでロボットK501の監視機能を制御するための調整パラメータには、熟練した警備員などの匠のデータが含まれる場合がある。これは、ビルの状態と監視場所を良く熟知した警備員であると、監視スポット、監視レベルおよび監視角度、監視用照明などをオリジナルで設定する場合があるからである。
【0034】
さらに、サイバー空間E200はグローバル化しているので、ビルのオーナーは、例えば上空からドローンによる巡視・点検サービス部K512(他のドメインの業者)に依頼することも可能である。このときは、このビル監視システムは、異なる他のドメインとの連携を行ってもよい。
【0035】
この連携のために、例えばビルやプラントの見取り図や点検個所を記載した資料K511を巡視・点検サービス部(ドローンを含む)K512に提供することができる。巡視・点検サービス部K512は、例えばドローンによる巡視・点検が終了すると、その状況報告(解析結果)K513をエッジコンピュータE900に送信する。解析結果としては、例えば監視位置の追加を要請するデータであったり、監視ロボット、或は監視員の追加(或は削減)を要求するデータであったりする。この循環によりサービスループ(パブリックループと称してもよい)K510が構築される。この時の作業は、例えば先のシステムオブシステムズ部K213が主導となって行われる。この例は、ビルの監視作業であり、ビル内のロボットのみでは監視が不十分な場合に、ドローンを用いた例を示している。
【0036】
上記の例では、少なくとも第1のフィードバックループ、第2のフィードバックループによるループ連携制御が、ビルの設備管理を行う制御システムに適用されている。しかし、上記のビルの監視作業におけるロボットおよびドローンを用いた例以外にもインフラ設備(橋、高速道路など)の点検や補修作業、ビルの外の窓ガラスの点検や掃除、或は山の地形や河川の状態などの点検が、定期的或は任意の時期に、拡張して実施される場合に、上記の第1および第2のフィードバックループの連携技術は有効に活用できる。拡張して実施とは、常時の点検(現地に常設されているIoT機器を用いた点検)と異なり、常時の点検では、死角(或は不十分)となっているような点検が実施されることである。また、拡張点検は、台風の後、季節の変わり目等に実施されてもよい。ここで示したフィードバックループ(サービスループ或はパブリックループ)K510は一例であり、本システムは種々のサービスを可能としている。例えば、飛行機の搭乗者、車両の乗客(通勤時、旅行時)が、簡単に保健期間を指定(月指定、日数指定、時間指定など)し、保険に加入可能とするシステムも構築できる。例えば、搭乗者が、搭乗券に記載されている指定情報の欄の保険会社、加入日、加入時間、保険金などを選択し加入マークを付ける。すると、搭乗券が搭乗口の光学読み取り器で読み取られると、自動的に搭乗者名と保険内容とが、保険会社にサイバー空間のループを介して通知され契約が成立する。なお搭乗者と保険会社とは、このような一時的な保険加入を行う事の契約を事前に交しておく必要がある。保険の種類としては例えば生命保険、傷害保険、入院保険などがある。
【0037】
図2Cは、フィードバックループ(エンタープライズループと称してもよい)「K503と、フィードバックループ(パブリックループと称してもよい)K510の他の例を示す図である。ロボットK505を制御するための基本的なプログラムは、エッジコンピュータE900に格納されている。さらにロボットK505の動作に基づき発生する音は、音響センサK506により検出され、音響検出信号は、A/DコンバータK507でデジタル化され、プラットフォームK100の分析器(解析器)で解析され解析データK121が生成される。
【0038】
解析結果はエッジコンピュータE900にフィードバックループK503により制御データとして帰還され、ロボットK500の自律制御に反映される。
【0039】
また解析結果の解析データK121は、エンタープライズサービスK200の可視化部K221にて可視化表示され、熟練者(匠)或いは熟練者(匠)の経験則を学習させた匠AIにより評価される。ここで熟練者或いは匠AIが、ロボットK505は老朽化している、或は故障する時期が近づいていると判断した場合(熟練者の経験則に基づく判断)、熟練者或いは匠AIは、ロボットK505に対する応急的な制御信号K510を送る。これにより、ロボットK505自体やロボットK501を含む工場の突然の事故などが防止される。
【0040】
上記の例では、少なくとも第1のフィードバックループ、2のフィードバックループによるループ連携制御は、ロボットの制御を行う制御システムに適用されている。
【0041】
上記した図2B図2Cに示す実施形態では、図1A図1Bで説明した垂直統合型のフィードバックループが複数連携する例を示している。即ち、フィジカル空間E100のエッジ装置E900と、サイバー空間E200のプラットフォームK100と、前記サイバー空間E200のサービス部K200と、前記エッジ装置と前記プラットフォームとの間に設けられた第1のフィードバックループK503と、前記エッジ装置と前記サービス部との間に設けられた第2のフィードバックループK510と、を備えている。そして、前記プラットフォームに設けられ、前記第1のフィードバックループを介して特定情報を取得する情報取得部K111と、前記特定情報を解析する情報解析部K112と、前記情報解析部で解析した解析結果に基づき、前記フィジカル空間の装置に対して稼働制御およびまたはサービスを自律的に行わせる自律的な操作部K113と、前記サービス部に設けられ、前記エッジ装置からの検出情報およびまたは前記自律的な制御部から前記解析結果の情報を受け取り、前記検出情報およびまたは前記解析結果の情報に基づき調整された調整情報を前記第2のフィードバックループを介して前記エッジ装置へ変換するシステムオブシステムズ部K213を備えている。
【0042】
図2Dは、第1のフィードバックループ(エンタープライズループ)K503と、第2のフィードバックループ(パブリックループ)K510の他の例を示す図である。いまフィジカル空間E100の工場で、例えばモニタが製造されているものとする。サイバー空間E200のプラットフォームK100から工場のエッジコンピュータに対して、フィードバックループK503が構築されている。
【0043】
ここで、工場から出荷されたモニタは、販売されたのちユーザにより使用され、ユーザドメインK300で使用状況が管理される。使用状況は例えばログデータとして、メーカの専用サーバ(例えばユーザドメインK300)にアップロードされる。ユーザドメインK300は、エンタープライズサービスK200と連携が可能であり、ユーザドメインK300からは、エンタープライズサービスK200に対して例えば、APIや使用状況などを示すデータK301が送信される。このデータK301に応答して、エンタープライズサービスK200からは、アクションデータK302が送られてくる。例えば、アクションデータK302は、モニタの特殊な制御方法や、復活用コマンドなどがある。
【0044】
したがって、エンタープライズサービスK200は、ユーザが要望するモニタの機能などのデータを集約できることになる。このデータは、製造元の工場に、ユーザの同意の元でフィードバックされる。このときのルートが、フィードバックループ(パブリックループ)K510である。このフィードバックされるデータは、工場でモニタの設計者の参照データとすることが可能である。
【0045】
即ち、上記の実施形態は、少なくともフィードバックループK503(第1のフィードバックループ)と、フィードバックループK510(第2のフィードバックループ)によるループ制御において、第2のフィードバックループは、工場で生産された製品を用いるユーザドメインからの参照情報を利用している。
【0046】
図2Eは、複数のフィードバックループの接続(連携と称してもよい)例を説明するための他の図である。本実施形態におけるループ接続は、新規のフィードバックループを構築すること、複数のフィードバックループ同士を接続或は連携させることの意味を含む。したがってループ接続の自律化(インテリジェント化)を行っている点が、製造プロセス/サービスにおける稼働制御の自律化を実現することになる。そして、ループ接続には、ループ群を束ねる機能が含まれ、またループ群同士の接続境界となるハブが存在する。ループ接続部は、ループ連携制御部を含む。
【0047】
図2Eに示すように、例えば工場(ビルでもよい)K541内に製造ラインの照明管理、エレベータの管理、製造ラインの稼働状況管理、床清掃ロボットの管理、製品の品質管理などを行う工場管理制御装置が存在するものとする。この工場管理制御装置が取得したセンサデータは、エッジコンピュータを介してサイバー空間E200のプラットフォームK100に送信される。プラットフォームK100内における各種のデータ(解析結果等)は、エンタープライズサービスK200にも通知されている。
【0048】
今、製造ラインの床の水検出センサ(監視カメラでもよい)から、床に水たまりができていることが、プラットフォームK100に通知されたとする。すると、プラットフォームK100は、データ解析の結果として、フィードバックループK503を構築し、床清掃ロボットに対して、床掃除を行わせる。
【0049】
さらにこの場合、プラットフォームK100の自律稼働制御部の解析部が、水たまりの水量、直前の気象情報等をAIにより解析し、例えば工場K541の外回りの視察が必要と判断したとする。すると、プラットフォームK100からエンタープライズサービスK200に判断情報が送られる。エンタープライズサービスK200のサービス部K211は、判断情報の内容に基づいて、システムオブシステムズK213を介して、例えばドローンK543により工場の窓などの視察を行わせる。このための制御ループとして、カメラを搭載したドローン543を飛翔させる第2のフィードバックループK510が構築される。つまりこの構築は、ループ接続部を形成しているループ連携制御部が働いたことを意味する。
【0050】
上記の視察の結果、工場K541の窓ガラスK542が破損しており、修理が必要であることを検出したとする。この窓ガラス破損情報は、ドローンK543からの撮像画像を、プラットフォームK100の自律稼働制御部が解析することで得られる。
【0051】
この解析の結果、プラットフォームK100からエンタープライズサービスK200に「窓修理要」情報が送られる。エンタープライズサービスK200のサービス部K211は、「窓修理要」情報に基づき、運搬車K545と窓ガラス販売店K546に対する通知を行うための第3、第4のフィードバックループK515とK516を構築する。この構築は、ループ接続部のループ連携制御部がさらに働いたことを意味する。このとき、先の第2のフィードバックループK510は解除される。すなわち、ループ連携制御部は、自身の目的を達成したフィードバックループを解除する機能も有する。
【0052】
上記のように本システムは、複数のフィードバックループ同士を接続或は連携させることができる。その動作は、製造プロセス/サービスにおける稼働制御の自律化を実現している。そして、ループ接続には、ループ群を束ねる機能が含まれており、またループ群同士の接続境界となるハブが存在する。また必要に応じて、排水管などの資材が必要な場合は、配管業者K547に対する通知を行うフィードバックループも構築される。
【0053】
上記したフィードバックループK510,K515,K516は、本来の目的を達成すると、自律的に解除されるものである。ドローンK543による視察のためのフィードバックループK510は、例えば予め与えられた所定のルート(例えば工場K541から提供される撮影エリアのデータ)の風景を撮像し終えた時点で終了する。また、窓ガラスや配管などを調達するために構築されたフィードバックループK515,K516は、例えば運搬車K545が工場K541に到着した時点で終了する。具体的には、例えば運搬車K545の運転者が携帯端末を操作し(あるいは自動走行車や自動走行ロボットでもよい)、窓ガラスの運搬を開始した時点と、目的の工場K541に到着して、所定の作業を終えた時点で、販売店K546のエッジコンピュータへ「開始」と「終了」を通知することで、フィードバックループK515,K516も終了する。
【0054】
なお上記は一例を示しただけであり、部品調達、資材調達、人材確保についても上記したフィードバックループの考え方が適用可能である。
【0055】
また上記した本CPSは「製造(ものづくり)」に関連付けて説明するものであるが、本明細書では「製造」は、例えば発電制御における「エネルギー製造」と言う意味も含む。さらに、自動車(コネクテッドカー)や家電製品の制御プログラムの更新(自動車や家電製品を常時インターネットに接続し、ソフトウエアを自動更新する技術、つまりOTA(オーバー・ジ・エア)を用いるもの)も「ものづかい局面での製造(ものづくり)」として捉えている。また大量の荷物の仕分けや運搬などを行う物流センターの物流処理工程も、製造(ものづくり)プロセスの一環)として捉えている。
【0056】
上記したように本CPSは、種々のフィードバックループを自律的に連携させることができるという柔軟性をもつ。本CPSにおける上記「ハブ」はフィードバックループ同士(もしくはフィードバックループ群同士)の接続を仲介(或は連携)するシステムとして説明している。そのため、フィードバックループ同士(もしくはフィードバックループ群同士)を、適時・適切に中継し“つなぐ”役割を持つものを「ハブ」と称することができる。このハブを利用する各々のフィードバックループとしては独立したライフサイクルを持ち稼働しているループも存在する。また、その異なるループ間が接続(或は構築)される境界の概念は「接続境界」或は「境界領域」と称される。なお、ネットワーク機器のハブ(Hub)も、ネットワークの世界で複数ネットワーク同士をつなぎ仲介する同様の役割を担っているが、本CPSでは、ネットワークがフィードバックループとして機能するものである。
【0057】
さらに、上記した第2のフィードバックループ、第3のフィードバックループ、第4のフィードバックループは、海外のハブを経由することもあり得る。例えば輸入した装置を使用する工場においては、そのサービスを海外のメーカから受けることが可能である。国内の製造工場から製造部品などを発注する場合、海外のメーカに発注する場合がある。そのため、サイバー空間内は、世界統一時間が用いられることが望ましいが、世界統一時間と国内時間が併用されていてもよい。海外との情報とのやり取りにおいては、衛星通信手段が用いられる場合もある。
【0058】
複数のフィードバックループが連携する形としては、種々の形がある。例えば、情報解析部と前記自律稼働制御部により、第1のフィードバックループを、製造プロセスである第1の制御対象を制御するための第1の制御ループとして構築する。この状態で情報解析部とループ連携制御部は、第2のフィードバックループを、前記第1の制御対象をさらに制御する第2の制御ループとして構築する場合がある。
【0059】
また、情報解析部と自律稼働制御部は、前記第1のフィードバックループを、製造プロセスである第1の制御対象を制御するための第1の制御ループとして構築する。この状態で、情報解析部と前記ループ連携制御部は、第2のフィードバックループを、第2の制御対象をさらに制御する第2の制御ループとして構築する場合がある。
【0060】
さらにまた、情報解析部と自律稼働制御部は、前記第2のフィードバックループの前記第2の制御ループを、前記第1のフィードバックループの前記第1の制御ループとともに束ねて継続させることもできる。或は、情報解析部と自律稼働制御部は、前記第2のフィードバックループの前記第2の制御ループを、前記第1のフィードバックループの前記第1の制御ループとともに一時的に束ねて継続させ、所定の条件で前記第2のフィードバックループの前記第2の制御ループを解除することもできる。
【0061】
図2Fは、さらにサイバー空間E200の構築例を示す説明図である。この例では、サイバー空間E200を階層的に構成して、全体の制御を容易にした例である。
【0062】
このサイバー空間E200は、例えば物流センターの作業ロボットを制御する自律的な制御部E500を有する。この自律的な制御部E500は、階層化した第1の制御部E521,第2の制御部E522、第3の制御部E523を含む。
【0063】
第1の制御部E521は、フィードバックループC11,C12(図1Bで説明した垂直統合型)を利用してフィジカル空間E100に存在する多数のロボットと情報交換を実施しながら、効率的に物流の作業を行う。
【0064】
ロボットとしては、例えばトラックや棚から荷下ろしをする荷下ろしロボットK521、降ろした荷物の搬送を行うかご車搬送ロボットK522、搬送されてきた荷物を棚へ格納する棚格納ロボットK523、棚から荷物を取り出しするピッキングロボットK524、ピッキングロボットが取り出した荷物を例えばトラックに載せる荷積みようのパンニングロボットK525などがある。上記のように複数のロボットを制御する場面は、情報解析部と自律稼働制御部が、複数のフィードバックループを、製造プロセスである複数の制御対象を制御するための複数の制御ループとして構築していることである。
【0065】
これらのロボットK521、K522、K523、K524、K525は、直接的に第1の階層である第1の制御部E521により制御される。第2の制御部E522は、第1の制御部E521からロボットの稼働状況の報告C12を受ける。そして、機器(ロボット)運用を最適化するための制御データC10を出力している。例えば、物流センターに入庫する荷物K53としては、大小の物があり、種々の形があり、種々の重さの物があり、硬いもの、柔らかい物など多種多様である。そこで、第2の制御部E522は、荷物をカメラや光センサ、RFID等により、画像で認識、或はバーコードや二次元コードで認識、或いは無線センサで認識する。そして、第2の制御部E522は、重い荷物や単純な作業でよい荷物に対してはロボット担当用荷物K532として、ロボットを割り当てる。また、ロボットでは取り扱いが困難な荷物に対しては、ベテラン作業員用荷物K532、或は新人作業員用荷物K533として判断する。これらの判断結果は、制御データC10として第1の制御部E521に通知される。これにより荷下ろしロボットK521が、荷物K532を取得に向かっていく。
【0066】
第2の制御部E522は、作業実績C15を第3の制御部E523へ通知する。作業実績C15は、物流センターへ運び込まれた荷物の処理状況(荷物の処理個数、処理重量などを示している)である。第3の制御部E523は、作業実績C15に応じて、物流センター内の在庫管理、入庫・出庫管理を行う。第3の制御部E523は、作業実績C15を解析して、仕分け作業が計画どおり進捗していると判断した場合、第2の制御部E522に対して、入庫・出庫などの作業を作業手順の中に組み込むように制御データC14により通知する。例えば、荷下ろしロボットを荷下ろしエリアへ多く配置することも可能であり、物流センターへの乗り入れを待って待機しているトラック等に対して電話で乗り入れ許可(入庫許可)の通知を行うことも可能である。
【0067】
即ち、上記の物流センターの物流管理に対する情報管理システムは、第1の制御部E521が、フィジカル空間に配置されているエッジコンピュータから、荷下ろし、荷物の運搬、荷物の格納、荷物の取り出し、荷物の荷積みの各作業を行うそれぞれのロボットの制御状態を示すデータを受け取り、前記それぞれのロボットが、設定されているロボット制御プログラムに準じて機能するようフィードバックを行う。第2の制御部E522が前記物流センターに入庫した荷物の中からロボットの作業に適する荷物を識別し、前記荷下ろしを実行させるための情報を前記ロボット制御プログラムに通知する。そして、第3の制御部E523は、前記第1の制御部E521および第2の制御部E522からの通知データC15を介して、作業実績の情報を受け取り、前記作業実績に応じて前記物流センター内の荷物の在庫管理をおこなうために、入庫、出庫管理のための情報を、前記第2の制御部E522にフィードバックする。これにより、物流センターにおける効率的な仕分け処理、入庫、出庫処理が行われ、ひいては電力の効率的な使用(環境負荷の軽減)が得られる。
【0068】
今まで説明した本CPSにおいて、フィードバックループは主としてループ接続部を用いて構築される。ループ接続部はループ連携制御部を含む、或はループ連系制御部と協働することができる。そして、ループ連携制御部がフィードバックループK503、K510等を構築する。この場合、ループ連携制御部が、サイバー空間E200内の種々の要素を利用する。例えば図2B図2Cにおいては、プラットフォームK100がフィードバックループK503の構築要素となり、またプラットフォームK100、エンタープライズサービス部K200が、フィードバックループK510の構築要素となっている。また、図2Dにおいては、プラットフォームK100がフィードバックループK503の構築要素となり、またプラットフォームK100、ユーザドメインK300、エンタープライズサービス部K200が、フィードバックループK510の構築要素となっている。
【0069】
上記の各実施形態では、分かり易くするために、フィードバックループK503が1つ、フィードバックループK510が1つの例を説明している。しかし実際のCPSにおいては、複数のフィードバックループ(エンタープライズループ)K503、複数のフィードバックループ(パブリックループ)K510が存在することがある。
【0070】
従って、フィードバックループK503、K510等を構築するループ接続部は、次のような機能と意味を備える。即ち、自律的な制御部の動作と相まってループ接続部は、サイバー空間とフィジカル空間との間で、新規なフィードバック用のループを構築することができる。また、ループ接続部のループ連携制御部は、フィードバック用の複数のループ同士を接続することができる。即ち、図2C図2D図2Eのように、エッジコンピュータE900を介して、複数のループを接続することができる。さらにまた、ループ接続部のループ連携制御部は、複数のループ(ループ群)を束ね、ループ群同士の接続境界となるハブが存在することを許容している。ハブは、例えば図2A図2Bの例では、システムオブシステムズ部K200が相当し、図2Dの例では、システムオブシステムズ部K200とユーザドメインK300が相当する。
【0071】
上記したように、本CPSにおいては、多種のループが存在し、新たに形成されるもの、既存のフィードバックループを束ねるもの、既存フィードバックと新たなフィードバックを束ねるものが存在する。さらに、新規のものであれ、既存のものであれ、フィードバックループの中には、ループの途中で人(例えば熟練技術者、医者、科学者など)が介在するフィードバックループも存在する。例えば、制御対象機器の付近に人がいる場合において、安全性の観点から当該人の確認完了のアクションを検出の上、制御対象機器の動作を行う場合など、制御対象先の環境や状況との関係も考慮した処理やタイミングなども最適化したフィードバックループが構築される。既存のフィードバックループと連携する場合の一例として例えば、夏場に下位フィードバックループの空調システムに対して、上位フィードバックループ(電力会社)のデマンドで空調設定温度を上げる要求があった場合に作業者、病人、赤ん坊がいる場合には上限値が設定される。この上限値はその他のフィードバックループを構成する各種産業システム(工場:生産管理システム、病院:カルテや看護師等病院スタッフ専用システム、保育所:体調管理システム、家庭内:スマホの個別システムなど)から必要に応じて必要なデータのみ適時融通されるように制御される。上記に示したように、本CPSは、種々のフィードバックループを自在に利用することができる。そのために、本CPSは、フィードバックループ管理部を含む。フィードバックループ管理部は、サイバー空間E200の情報取得部K111のデータ内に設定されてもよいし、情報解析部K112に配置されてもよい。さらには、フィードバックループ管理部は、外部のサーバ、或は所定のエッジコンピュータに配置されていてもよい。
【0072】
フィードバックループ管理部は、複数のフィードバックループ情報を保存している。各フィードバックループ情報は、ヘッダーを有し、ヘッダー内にラベリングデータ(ループ識別情報)を有する。ラベリングデータは、フィードバックループを識別するためのデータである。さらにヘッダーに連続したデータ格納部には、ループを形成するために利用する機器情報、制御対象となる被制御機器の機器識別情報、ループが被制御機器を制御するために必要なパラメータ、制御対象となる機器識別情報、ループのライフサイクルに関する情報、ループ内データに関するオーナー情報や権利関係情報、データ利用に関する許諾情報、個人情報の有無や産業データの秘密レベル情報などが格納され、また、他のフィードバックループと連携可能な場合は、そのフィードバックループのラベリングデータを有する。その他、ループの稼働期間の制限情報、利用価格情報などが存在してもよい。またフィードバック管理部は、新しく形成されたフィードバックループ情報を受け付けて管理することも可能である。さらには、フィードバックループが利用された後、その利用実績データがフィードバック管理部で管理されてもよい。
【0073】
さらにフィードバックループ情報の、「稼働期間の制限情報」、およびまたは「パラメータ」は、人(匠)による入力が存在する場合がある。なお上記したフィードバックループを識別するためのデータ、ループを形成するために利用する機器情報、制御対象となる被制御機器の機器識別情報、ループが被制御機器を制御するために必要なパラメータ、制御対象となる機器識別情報、また、他のフィードバックループと連携可能な情報などは、フィードバックループの属性情報と称してもよい。
【0074】
上記のようにフィードバックループ情報がフィードバックループ管理部で管理されることにより、本CPSは、自律的に多種多様の被制御機器や装置に対して適応することが可能となる。したがって、本CPSシステムにおいては、ループ連携制御部がループ系路に形成されるもので、このループ連携制御部は、ループ接続部と自律稼働制御部が協働することで構築されるものであり、新たな解析結果に応答して新規なフィードバックループを形成することができる。
【0075】
前記新規なフィードバックループは、既存のフィードバックループの情報が利用される場合があるし、新たにフィードバックループが形成されこともある。さらには、既存のフィードバックループと新たなフィードバックループを群として束ねた上位層の新規フィードバックループが形成される場合もある。さらにまた複数の既存のフィードバックループが束ねた状態で形成される場合もある。これらの形態は、制御対象となる機器や現場の状況に応じて変化可能である。例えば、センサ情報などの時系列データに基づき制御対象となる機器を制御するプログラムを実行する場合に、緊急の場合とそうでない場合とで、実行する処理は同じでもフィードバックループ同士をつなぐタイミングは緊急度に応じて異ならせても良い等、時間との関係からの判断を行うことも可能である。
【0076】
上記したようにフィードバックループ管理部が存在するために、ループ接続部と自律稼働制御部は、フィードバックループ情報をサーチするループサーチ機能を備える。ループサーチ機能は、例えばセンサからのセンシングデータを検知し、予め設定しているループテーブルを参照する。ループテーブルには、予めセンシングデータを送って来たセンサに対応するループ識別情報が記述されている。例えば図2Eにおいて説明した例では、水漏れ検出センサに対応して、ドローンによる視察に必要なフィードバックループが指名される。このループテーブルは、予め利用者が作成してもよいし、サイバー空間E200の管理者が、予め提供してもよい。
【0077】
図3Aは、上記したように、サイバー空間E200がグローバル化したことにより、社会的な多方面に対して各種のサービスの提供が可能となり、また製造プロセスにおいて使用される移動体は、有効に活用されることが可能となることの一例をサイバー空間上で示している。
【0078】
例えば飛行機L101が、バードストライクにより第1のエンジンに故障を生じたとする。飛行機L101の機体の稼働状況(運航状況)は、常に、リアルタイムでリモート監視システムL102により監視されている。リモート監視システムL102は、飛行機L101の製造元である国のコネクテッド工場(いつでも工場と称してもよい)L103へ通知する。また飛行機L101の状況は、パイロットから管制塔へ通知される。
【0079】
今、パイロット(機長)は、現在の状態で、目的地(現地)の飛行場まで、飛行することが可能であることが報告されたとする。また、管制室もそのことを許可したものとする。
このときは、パイロットおよび管制室は、気象予測システムL112からの情報も参考にしている。
【0080】
するとリモート監視システムL102は、コネクテッド工場L103へ修理に必要な設計部品或はその交換用の製造部品(例えば複合部品)の工場や販売店が、目的地(現地)の飛行場の近くにあるかどうかの問い合わせをする。例えば、コネクテッド工場L103は、現地の設計を行う製品工場L104と、製造を行う製品工場L105に対して、問合せをする。現地の製品工場L104はE-BOM(Engineering-BOM:設計部品表)を参照し、製品工場L105はM-BOM(Manufacturing-BOM:製造部品表)のデータを基に在庫状況をチェックし、修理部品や交換用の製造部品(複合部品)が存在すること或は不足していることを自律的にコネクテッド工場L103へ連絡する。製品工場L104は、設計を行うことを主とし、最終製品の部品で設計不備、不足がないか常に監視し製造を行う。製品工場L105は、製造、組み立てを行うことを主とし、製品工場L104で設計された製品の製造も行う。
【0081】
例えば飛行機L101が製品工場L105の近くの飛行場で修理を受ける場合、コネクテッド工場L103は、例えば現地の製品工場L104に対して、部品を現地の製品工場L105に配送するように指令することができる。
【0082】
なお製品工場L105は、製造する部品や複合部品に応じて、自律的に製造ラインを構築するタイプの工場であってもよい。このタイプの製品工場L105は、コンビニ工場(或はどこでも工場)と称される場合がある。
【0083】
さらに、コネクテッド工場L103は、カスタム製造を行うシェアリング工場(だれでも工場ということもできる)L106も有効に活用することができる。
【0084】
シェアリング工場L106は、オーダーメイドによる部品を製造可能であり、3Dプリンタなどを所有する。コネクテッド工場L103は、製品工場L105から、製造部品の量が不足する、或いは、一部の部品の製造が飛行機到着までに間に合わないような場合、次のような処置を行う。即ち、コネクテッド工場L103は、シェアリング工場L106に臨時でオーダーを行い、当該部品を製品工場L105へ届けるように指示する。3Dプリンタによる製造では、後で説明する匠の技術が反映される。
【0085】
上記のシェアリング工場L106は、地域生活者にとって便利な機能を発揮することができる。地域生活者L121は、使用している装置や製品に対する評価を設計者レベルまでフィードバック可能となる。
【0086】
これは、シェアリング工場L106は、オーダーメイドを可能とするので、製品の設計レベルの変更依頼があっても、当該変更依頼を製品の設計レベルに反映できるからである。また生活者は、化粧品に関して、添加物フリーの情報をインターネット情報、SNSなどを介してシェアリング工場L106に送ることができる。その他、生活者は、食品に関しては、アレルゲン対応、ヴィーガンに関する情報をシェアリング工場L106に送ることができる。また、生活者は、カスタム品などを制作したい場合(パーソナルニーズがある場合)もシェアリング工場L106を活用できる。
【0087】
サイバー空間E200には、例えば総合的に部品などの在庫状況を管理する管理部L122が存在する。管理部L122は、部品の在庫の変動L2aを解析し、需要の予測を行うことができる。在庫が不足するような場合は、例えばコネクテッド工場L103に対して、自動的に不足するかもしれない部品の発注L2bを自動的に実行することができる。
【0088】
地域や地方によっては、救急患者が発生する場合がある。このような場合もCFS(コンテナフレートステーション)の作業車は、救急患者発生エリアL123からの通知を受けて、必要な物資の供給を行うことができる(L3b)。たとえば、街中を走行する無人搬送車(AGV;Automatic Guided Vehicle)またはロボットに設置された監視カメラが、救急患者を検出する。救急患者の状態は、その振る舞いや倒れ方の画像を、ロボットに搭載されている赤外センサ、マイクとカメラが取得し、当該ロボットに搭載されている診断装置が救急診断する。診断装置は、救急診断データを、例えばサイバー空間E200の自律的な制御部E500に通知する。サイバー空間E200のフィードバック用の制御部E503は、エリアL123における異常な状態を判定した場合、その場所や、状況を、例えば、コネクテッド工場L103に通知することができる。コネクテッド工場L103は、エリアL123からの通知L3bを受けて、物資(例えば救護用の物資、応急処置用の医療用具、AED等)の供給L3aを行うことができる。
【0089】
なお、上記センサ、マイク、カメラおよび診断装置は、街中の複数個所の定位置に配置されていてもよい。さらにまた、診断装置は、遠隔医療機関L124とも交信を行うことができる。この交信により、現場のスタッフは、救急患者を治療する場合、遠隔の医療機関L124に所属する医師からのアドバイスを受けることができる。この場合、現場のスタッフは、例えばVR(Virtual Reality)装置或はAR(Augmented Reality)装置を用いて遠隔の医療機関L124に所属する医師からのアドバイスを受けることができる。VRやARは、例えばコネクテッド工場L103から供給されたものであってもよい。
【0090】
図3Bは、サイバー空間E200において、本CPSが達成する効果を説明するために、製造空間において目的を達成するための目的達成機能M11と、作業員が存在する作業空間(工場内の製造空間も含む)において各種の操作を発生させる操作機能M13とを分けて示す図である。
【0091】
まず、操作機能M13としては、代表的なものとして、五感情報センシング機能M131、屋内環境の快適性機能M132、製造環境の自律制御機能M133がある。
【0092】
五感情報センシング機能M131は、作業員のウェアラブルセンサからの情報、作業員の操作情報、温度調整情報などを参照する。快適性機能M132は、自律制御、或は作業員の操作により、例えばエアコンディショナー、送風装置、湿度調整装置などの調整を行う機能である。
【0093】
さらに、製造環境の自律制御機能M133は、作業員の五感情報や作業員の操作に基づく情報に応じて、作業空間を快適な状態に維持するように自動的な自律制御を行う。この場合、自律制御は作業員の五感情報や作業員の操作に基づく情報に単純に応答するのでなく、目的達成機能M11の各種の要件を満たすような自律制御を行う。
【0094】
目的達成機能M11は、環境負荷の最小化を狙いとする機能M112、生産性の最適化機能M113、作業員の経験・知識参照機能M114、人材の適材適所対応機能M115を備える。また、エネルギー消費算出機能(二酸化炭素排出量測定機能でもよい)M116、製造コスト見積もり機能M117、生産性・利益見積もり機能M118を備える。
【0095】
そして、エネルギー消費、製造コストが低く、生産性・利益が高い値となるように、生産性の最適化,経験・知識の豊富な作業員選択、人材の適材適所への配備を行うための理想的な計画情報を作成し、必要とする作業員に通知を行うことができる。作業員は、現在工場に居なくても経験豊富であれば地域住民が活用されてもよい。
【0096】
上記した、理想的な計画情報が作成される場合、屋内環境の快適性を得るために、作業員の五感情報や作業員の操作に基づく情報に単純に応答するのでなく、目的達成機能M11の各種の要件を満たすような自律制御を行われる。
【0097】
そのために、例えば製造する製品に対する経験豊富なベテラン人材の選択がなされた場合、未経験な人材に比べてベテランは屋内の暑さを感じないかもしれない。若干の送風量或は湿度を下げるだけで、ベテラン人材は満足かもしれない。或は、製造する製品の生産量を抑制した場合(販売動向のデータの参照結果)、作業員の負担が軽くなり、屋内の温度を下げる必要がなくなるかもしれない。この結果、エネルギー消費量が低減し、環境負荷を軽減できるCPSとすることができる。
【0098】
図4は、フィジカル空間E100(図下側)と、サイバー空間E200(図上側)をより具体的なエレメント(各種の事業)とともに示している。ここで示すエレメントも、代表的なものであり、存在するすべてを示しているものではない。
<フィジカル空間>
事業には、エネルギー(電力発電)の事業E11がある。事業E11は、例えば、電池製造関連事業、原子力発電関連事業、水力発電関連事業、風力発電関連(洋上風力発電関連も含む)、火力発電関連、海洋発電関連、地熱発電関連、自律型水素エネルギー事業、太陽光発電関連を含む。ここで、本明細書内での関連事業は、事業に関する開発、実験、設備設置の関連事業も含むものとする。また、試作事業者(或は試作事業部)を含んでもよい。
【0099】
また、電力を地方へ供給・分配するための送電・変電・配電事業E12がある。さらに情報・通信事業E13もある。情報・通信事業E13としては、遠距離および近距離に関する送信装置および受信装置、アンテナ、衛星通信、放送などの関連事業ある。
【0100】
また運輸の事業E14(トラック、鉄道、航空、船、倉庫、作業車、ブルドーザー、トラクター、農業機械およびその関連事業等)がある。さらにビル管理事業E15(エレベータ事業、オフィス照明、エスカレータ、ビル用マルチエアコン事業など)、資材調達の事業E16、高度医療・予防医療の事業E17、ロボットE19、インフラの事業E20、老朽化対策の事業E21、デバイス・ストレージの事業E22(車載・産業用パワーデバイス、車載用デジタルIC、ハードディスク関連、半導体製造装置、ファインセラミック等)、農業E23、林業E24、漁業E25、リサイクル業E26、採掘業(石油、石炭、鉱物)E27、およびこれらの関連事業がある。
【0101】
さらにまた、上記した各種の事業を行うための部品、機器、デバイス、設備、システムなどの製造を行う事業、部品や機器を組み立てる事業、さらには、部品、機器、装置を解体する、破棄するなどの事業E30も存在する。また、商業(イベントも含む)事業E29も存在する。この事業E29は,例えば各種事業の実施に関連して機能するサービス実施業、物流、販売業、ホテル業、学校業、金融業、旅行企画事業、コマーシャルや通知・公報などの業およびその関連事業などを含む。またその他、電池事業も存在する。
【0102】
本実施形態においては、フィジカル空間E100上で、各種の事業にそれぞれ熟練者(匠と称される場合もある)が関わる場合、匠の技能(技)E10を有効に活用すべく構成されている。またサービス事業に関係する局面においても、地域への支援、人の救護、救出の実施に対して熟練者による対応処置を有効に活用することが可能となる。
<サイバー空間>
上記のフィジカル空間E100は、各種の事業現場のセンサから得られるセンサデータと、各種の事業で用いられるプログラム(ソフトウエア)および使用される制御パラメータなどのデータと、匠の技能のデータとをサイバー空間E200に送信して、いわゆるデジタルツインを構築している。サイバー空間E200は、種々のデータやプログラム(ソフトウエア)を格納するデータ蓄積部E310を有する。
【0103】
サイバー空間E200は、フィジカル空間E100からの各種データをネットワークから接続部E700(IoTバス、Servisバス、共通サービスK400などを含む)を介して受け取る。ネットワークにおけるデータ伝送路には、一部或は全体にわたり、量子鍵暗号化技術が用いられていてもよい。特に、医療に関するサービス事業、金融に関するサービス事業、公務に関するサービス事業に関しては、量子鍵暗号化技術が用いられることが望ましい。
【0104】
サイバー空間E200は、AI(或はシステム制御部と称してもよい)E300を含む。AI(E300)は、データ蓄積E310のデータを利用する。また、サイバー空間E200は、それぞれの事業に対するフィードバックループ(図はサイバーフィジカル間フィードバックループ(以下Cy-Ph・FBループと記述する)E201,202、E203,E204・・・を代表して示している)を有する。なお、1事業に対して1つのフィードバックループとは限らず、複数のフィードバックループが設けられてもよい。これらCy-Ph・FBループE201,202、E203,E204・・・は、それぞれサイバー空間と各種事業との間で形成されており、垂直統合型の系路を実現している。
【0105】
上記のようにCy-Ph・FBループE201・・・が存在するため、AI(E300)は、ある事業の制御システムのプログラムや制御パラメータに対して修正、追加、変更などを行う必要が生じたと判断した場合、該当する事業のCy-Ph・FBループを介して、当該修正、追加、変更などを実行することができる。 AI(E300)は、当該修正、追加、変更を、後述するように自律的に実行することもできる。
【0106】
AI(E300)は、シミュレーションエリアE400、自律的な制御部E500、変動情報取得部E601、研究情報取得部E602を含む。AI(E300)はシステム制御部、或は人工知能と称される場合もある。 AI(E300)は、さらに多くの処理機能(各種処理部E800)を含む。例えば、サービス事業、宇宙事業対応処理のための機能、他のドメインとの連結処理のための機能、さらには制御ループおよびフィードバックループの連携を拡張するための機能などがある。
【0107】
シミュレーションエリアE400は、フィジカル空間E100からAI(E300)を介して受け取った製品製造用のプログラム(設計図に相当)と、製造のための材料情報(環境情報も含む)とを仮想試作用データとして用いることができ、そして仮想の3Dプリンタにより仮想的な仮想試作品を構築することができる。
【0108】
なお、仮想試作品は例えばデジタル画像データである。サイバー空間の管理者は、デジタル画像データを画像表示装置、CADシステムなどで観察することができる。また管理者は、仮想試作品のデジタル画像データを、希望しているユーザに配信することも可能である。
【0109】
またシミュレーションエリアE400は、実際に、製品製造用のプログラム(設計図に相当)と製造のための材料情報(環境情報も含む)とを実物試作用データとして、フィジカル空間の試作事業者(或は試作事業部)に送信することができる。これにより、試作事業者(或は試作事業部)は、保有している3Dプリンタ、或は製造設備と、実物試作用データを用いて、実際の実物試作品を製造することができる。そして、試作事業者(或は試作事業部)は、前記実物試作品の検査、実験等を行うことも可能である。
【0110】
また、サイバー空間E200の管理者は、実物試作用データを、希望しているユーザ、例えば研究機関、或はビジネス展開希望者に配信することも可能である。
【0111】
上記のように、サイバー空間E200とフィジカル空間E100との間でデータのやり取りが行われる。そのために、AI(E300)の例えば自律的な制御部E500内には、試作用データのやり取りの対象となる事業(事業部、会社などの識別データ)と、当該試作用データの種類(設計図等の識別データ)を含むテーブルが存在する。またこれに加えて、それぞれのデータの料金が含まれてもよい。このテーブルは、サイバー空間E200の管理者により作成されるもので、管理者はテーブルを利用するユーザとの間で契約(秘密保持、使用料金など)を交わして当該テーブルを作成する。
【0112】
シミュレーションエリアE400が提供する上記した仮想試作用データ、実物試作用データは、匠が製品製造に関わったことで発生した技能データを含んでもよいことはもちろんである。さらには、AI(E300)は、仮想試作用データ或は実物試作用データとして、匠の技能データを含む第1の試作用データと、含まれていない第2の試作用データとを準備し、実験者が、第1、第2の仮想試作品同士、或は第1、第2の実物試作品同士の性能や品質を比較できるようにしてもよい。
【0113】
シミュレーションエリアE400は、例えば、上記した試作品の検査においては、その強度計算、重心位置の計測などを行うことも可能である。
【0114】
例えば、発電事業に用いるタービンをデジタルデータでイメージ(画像データ)的に試作し、その強度計算、重心位置の計測などを行うことも可能である。このような場合、本システムでは、フィジカル空間から送信されたデータには、匠の技能データも付随して送信されている。そして、匠の技能により、複数の金属材料の配分割合、重量、形状の微修正、加工時の加圧力、温度などの調整制御パラメータが修正され、高品質のタービンの作成を可能としている。
【0115】
自律的な制御部E500は、例えば製造プロセスに必要な特定情報(条件:IF)をCy-Ph・FBループから取得する情報取得部E501と、特定情報を解析する情報解析部E502と、情報解析部で取得した解析結果に基づき、稼働制御を自律的に行う自律稼働制御部E503(実行:THEN)を含む。
【0116】
後述するように上記の特定情報は、人間の五感情報およびまたは感情情報を含むことができる。これにより、五感情報と、装置、製品、部品の仕上がりデータ(精度、特性等)との相関性を解析することで、五感情報に基づく装置、製品、部品の仕上がりの良し悪しの程度を予測することが可能となる。
【0117】
また複数のフィードバックループとの連携を模索することが可能となる。例えば互いに関連する複数の事業のフィードバックループが、互いに連携することで、製品の生産性の効率、生産量の最適化、人員配置の効率化などが得られることが可能となる。その一例として、部品の配送事業の配送量の調整フィードバックループと、その部品を使用して装置を組み立てる組み立て事業の組み立て速度の調整を行うフィードバックループとの間で、互いに関連性がある。そこで配送量が少ない場合は、組み立て速度の調整、或は、組み立て人数の調整、使用電力量の調整を行わせることができる。この場合、使用電力量が少なくなる方向への調整は、調整を行うフィードバックループを即時応答するループにセットすることで、環境負荷の軽減に寄与できることになる。この環境負荷の軽減の効果は、調整を行うフィードバックループ数(事業数)が多くなればなるほど有効な効果となる。
【0118】
特定情報は、人間に装着された生体センサから取得したデータを解析し生成したものであってもよい。さらに、特定情報は、再生エネルギー生産情報、消費情報、環境負荷情報の少なくとも1つを含んでもよい。
【0119】
つまり、外部から導入される再生エネルギー生産情報、消費情報、環境負荷情報、のいずれか1つまたは複数を参照することで、例えば以下のフィードバック制御を行うことが可能となる。
【0120】
外部から受け取っている再生エネルギー生産情報を参照することで、自社の工場の設備の使用電力の増減調整を行うことも可能である。例えば、外部の再生エネルギー生産量が増加した場合、自社の設備の使用電力に余裕ができることになり、増産制御が可能であり、外部の再生エネルギー生産量が減少すれば、自社の設備の使用電力の調整を行い、減産制御を行うことが可能となる。
【0121】
また外部からの製品の消費情報を参照することで、同じ製品の増産や減産の自律制御が可能となる。例えば製品Aの消費量が増加した場合、製品Aの自社のシェアに応じた割合で増産制御を自律的に行うことが可能となり、製品Aの消費量が減少した場合、製品Aの自社のシェアに応じた割合で減産制御を自律的に行うことが可能となる。
【0122】
さらに環境に負荷を与える情報(環境負荷情報)を参照し、自社の使用薬品、使用材料、使用部品のチェック、排出物などを環境負荷情報と対比させるチェックを行うことができる。この結果に基づいて、環境負荷の低減対策を行うことができる。例えば、工場で利用されている部品や材料に環境負荷を与えるものがあれば、その代替部品や代替材料を利用する方向転換も可能である。また環境負荷となる部品や材料が破棄される場合、当該部品や材料に対して破棄処理方法のメッセージの記述、或は破棄物回収先の記述や印などを行うようなフィードバック制御を行うことが可能となる。破棄物回収先とは、例えばプラスチック製品を専門に取り扱うような業者である。
【0123】
さらに本システムは、環境負荷情報(例えば二酸化炭素の排出量、予測排出量でもよい)と、工場の作業員(或は匠)の環境情報(温度、湿度、気圧など)とのトレードオフ制御も可能となる。例えば工場の作業員は、温度、湿度が高いと、エアコン等の運転をパワーアップするような調整を行う。しかし、エアコン等の電力使用量が大きくなるとそれだけ発電エネルギーが多くなり二酸化炭素排出量も多くなることがある。そこで、本システムでは、作業員や匠の五感情報をチェックし、作業員が快適に過ごせる環境を維持し、かつ電力使用量を最小限に抑制し得るフィードバック制御を行うように設定可能である。
【0124】
また上記した複数のフィードバックループは、パーソナルな情報で構築されるデジタルツイン(デジタルダブル)に関連していてもよい。パーソナルな情報で構築したデジタルツインおよびそのデジタルツインのフィードバックループの場合、個々の工場や作業場、或は個人的な小工場や作業場に対して、特殊な制御を可能とする。例えば、ユニークな製品作成(例えば製造品に対して芸術的な彫り物・造形を加えるような作業)を可能とする。即ち、基本形の製品に対して、一律の模様や変形を加えるのではなく、オーダーメイドの特殊な模様や変形を加える場合、或は、発注先の商標や会社名などの刻印を施すことのできるフィードバック制御も可能である。この場合も、匠の技のデータが効果的に利用される。このループを利用するユーザ(匠や芸術家)は、フィジカル空間(前記個々の工場や作業場、或は個人的な小工場や作業場)において、オリジナル(或はベーシック)の物造りプログラムの一部のステップに、例えば表面に刻印を行う処理ステップの追加およびパラメータ(着色)等の追加を行う。すると、処理ステップの変化がサイバー空間の AIで認識されて、フィジカル空間にあるものづくり機械(例えば3Dプリンタ)に対して、フィードバック制御が行われ、製造する製品の表面に刻印と着色が行われる。
【0125】
さらにまた、複数のフィードバックループは、工場へのフィードバック(制御や情報提供)のみならず、装置、部品、材料の設計者にフィードバック(情報提供)することが可能である。例えば、フィードバック情報としては、装置のメンテナンスや修理の容易性、部品交換の容易性など、装置や製品を使用するパーソナルな情報を、設計者へフィードバックすることが可能である。また建築部材(例えば階段、手すりなど)のデザイン、使い勝手の良さ、安全性などの意見がある。この場合、パーソナルな情報を外部から取得するルートとしては、例えばコマーシャルに応答するインターネット情報、SNSなどの情報がある。さらには、当該装置や部品を取り扱うサービスセンターや販売店からの情報もある。
【0126】
さらに上記サイバー空間E200は、外部情報取得部E601、E602含む。この外部情報取得部E601は、例えば、国内気象、海外気象、経済、災害、事故、衛星、法律、政策などの変化データを取得している。さらにまた外部情報取得部E601は、関連しているフィジカル空間内の要素の情報として、インターネット、SNSなどの情報を取り込む機能を持っていてもよい。外部情報取得部E602は、例えば、研究機関の発表論文、学術論文などのデータを取得している。
【0127】
国内気象、海外気象、経済、災害、事故、衛星、法律、政策などの変化データは、例えば以下のように利用できる。これら項目からのデータの変化に影響を受ける製造ラインに対して、プログラム(ソフトウエア)の切り替え・調整、制御パラメータの変更・調整などを自律的に行うフィードバックループを構築することができる。例えば地震や強風などの通知データに基づいて、半導体など緻密な部品を製造する工場においては、工場内の気密性のレベル調整、製造の一時停止、製品の仕分け(不良品)判別のレベルが切替られてもよい。
【0128】
また研究機関の発表論文、学術論文などのデータは、例えば以下のように利用できる。これらの論文の内容やキーワードを参照することで、既存のフィードバックループの制御パラメータや使用材料の修正を自律的に行うことが可能となる。例えば、あるメーカの接着剤が改良されたような場合、フィードバックループを利用して、古いタイプの使用接着剤の使用指令を、新しいタイプの接着剤の使用指令に変更することができる。勿論、この変更前に、シミュレーションエリアE400により、新しいタイプの接着剤と使用箇所の適合性(使用環境、接着強度など)を検証することも可能である。また、医療情報も医療機関において参照可能となる。例えば病院で、ドクターのミーティングがあるときに、自動的に最新医療情報がミーティング室の例えばモニタにフィードバックループにより送信されて提示されてもよい。
<匠データ・装置データ>
図5Aは、フィジカル空間E100からサイバー空間E200へ送信される匠データF100の種類とその送信系路と、装置(製造ライン)F221に配置されている各種センサF224から取得した装置データF200の送信系路を示している。以下、匠データF100を匠管理部F120が管理し、装置データF200を装置管理部F220が管理するものとして説明する。匠管理部F120、装置管理部F220は、エッジコンピュータF900と連携している、ユニットコンピュータ(或はゲートウエイ)の一種である。そして各ユニットコンピュータの内部には、コンピュータが取り扱うデータやコンピュータが制御する機能をイメージ的に示している。
【0129】
装置データF200は、製造ラインの各種機器、デバイスなどの稼働状況を示す稼働データと、被製造物(材料・部品・製品、装置等)の仕上がり状態を示す計測・検査データなども含む。
【0130】
稼働状況を示す稼働データは、機器や装置、部品などの識別データ、アームなどの移動位置、移動速度、回転位置、回転速度、回転角度、コンプレッサなどの測定温度、測定圧力、消費電力、燃料残量、撮影監視データなどがある。また製造に使用する材料などの分量、重量、特性データなどがある。また被製造物の計測・検査データは、大きさや厚み、長さ、重量などの計測データ、被製造物の動きをテストしたテストデータ、被製造物の画像データなどがある。
【0131】
F225は、フィジカル空間E100の製造ラインF221に対して、サイバー空間E200からフィジカル制御が繰り返し行われるフィードバックループを示している。フィードバックループF225のデータは、製造ラインF221と一体のフィードバック処理部F223で受け取られ、制御装置F222に反映される。製造ラインF221は、通常は制御装置F222との間でデータの相互のやり取りを行い、製品の製造制御或はシステムの運転制御を実行している。製造ラインF221と制御装置F222の間では、ローカル(或は専用)フィードバックループが機能している。
【0132】
制御装置F222は、初期設定されたときは、デフォルトのプログラム、制御パラメータ等をメモリに有し、CPUの制御に基づきプログラムが実行される。しかし、フィードバックループF225により、プログラムの例えば処理ステップの調整、使用する制御パラメータの変更や調整などが行われることで、製造プロセスにおける制御内容が微調整されることがある。これにより、製品の品質改善、製品の生産量調整、製造の一時停止、生産効率の改善、変更などを実現することが可能である。
【0133】
匠(作業員と称することもある)F122は、工場内の操作室F121に入室し、例えばスマートフォン、或はタブレットPC、或はパーソナルコンピュータF125から、自己情報(匠識別データF123,基本データF124(匠のキャリアデータ、つまり匠がこれまでに操作した製造ラインや装置などを示すータ)を、例えば行動入力部F130のメモリにセットすることができる。匠管理部F120は、匠の自己情報を参照して、匠F122が操作する信頼度係数を与えてもよい。この信頼度係数は、本設備を運用し、運用実績を積むことで信頼性の高い信頼度係数に更新される。運用実績とは、例えば複数の作業員(経験の浅い人から経験の多い人)と、各作業員の運転のもとで製造された製品の品質の評価値との相関性情報を積み上げた情報である。
【0134】
製造ラインF221が稼働を始めると、稼働状態を示す例えば画像データが製造ラインF221の複数個所から取得されて、複数のモニタF131に表示される。匠F122は、モニタF131(或は表示機能を持つメガネ)を見ながら必要に応じて、行動入力部F130の操作子(ボタン、レバー、ハンドル)などを操作する。これにより、製造プロセスに匠の技が反映されることになる。例えば、温度の上下調整、搬送部品の停止位置調整、液体(例えば塗料、洗浄液等)の吹き付け量調整、材料の加減、搬送速度の調整、などがある。これらの行動データF132は、匠データF100として、サイバー空間E200に送信される。匠データF100には、さきの信頼度係数が含まれていてもよい。
【0135】
さらに、行動データF131に応じて、製造ライン上では、各種センサF224が様々な装置の状態、製品の状態を検出する。この検出データは、装置データF200としてサイバー空間E200に送信される。各種センサF224としては、温度計測、圧力計測、稼働アームなどの位置(回転位置、移動位置、上下位置など)の計測、振動計測、液体量検出、重さ計測、量計測、色検出、画像検出、速度、加速度検出などを行う各種のセンサが用いられる。
【0136】
ここで、匠データF100には、五感データ(五感情報と称してもよい)F101、感情データ(感情情報と称してもよい)F106も含まれる。五感データF101は、例えば臭気センサで取得できるものはセンサ出力が利用されるが、臭気センサで取得できないものは、匠F122が、臭気を感じたとき、各種の臭気感知ボタンを押す、或は発話による音声を入力し、その入力データに基づいて臭気データが特定されて収集される。五感データF101、感情データF106の収集には、ウェアラブルセンサ、マイク、センサを有するメガネなどが用いられる。
【0137】
図5Bは、匠E122から取得可能な各種の匠データを分類して示している。感情データF106は、例えば、マイク、カメラ、メガネセンサなどから取得される。マイクは、匠E122の発話を発話解析器に送信する。発話解析器は、発話を解析し、発話内容に応じて匠E122の感情を解析する。発話解析器は、例えば「あっいけない」「あっ失敗した」・・・などをネガティブな発話として解釈し、例えば「いいですよ、いいですよ」「いいね」「行け、行け」、匠の鼻歌・・・・などをポジティブな発話として解釈する。これにより匠E122がネガティブな気分であるか、ポジティブな気分であるか区別することができる。
【0138】
上記した感情データは、当該感情データが発生した時間帯に製造された製品の品質の良否、或は当該製品の特性の良否と相関性がある。
【0139】
例えば、ネガティブな発話があった時間帯に対応する製品は、ポジティブな発話があった時間帯に対応する製品より、特性や性能が劣る場合が多い。したがって、感情データを取得し解析することは部品や製品の信頼性判断に重要となる。
【0140】
五感データF101には、臭覚、聴覚、触覚、視覚、味覚があるが、例えば、匠がこれらの感覚を感じたときに、感覚に対応したボタンやレバーを操作するか、或はスマートフォンF125の表示ボタン(感覚に対応したボタン)をタッチ操作する。さらにはマイクを通して発話し、この発話を音声認識装置が解釈し、該装置が五感データを作成することができる。これにより匠E122の五感データを取得することが可能である。
【0141】
例えば、水処理装置の運転において、匠は特有の臭気を感じる場合がある。このような臭気を抑制する菌としてバチルス属菌(以下バチルスと記す)が存在する。バチルスは、溶菌作用のある酵素や抗生物質を排出する、また硫酸還元細菌の働きを止める作用を有するので、余剰汚泥や臭気を抑制することができる。
【0142】
従って、水処理装置の汚泥槽の臭気を、匠が敏感に感じとったとき、匠はバチルスを活性化させて増殖させる活性剤を水槽に投入することがある。またこのとき匠は、例えば「臭気有」操作ボタンを操作する。この場合、ボタン操作情報と、活性剤の投入量とを匠の技データ(活性剤の投入量、臭気有操作ボタンのデータ)とし、サイバー空間へ送信してもよい。また、このときの汚泥物質の温度や、周辺温度、湿度、汚泥物質に含まれる芽胞の数を測定したデータとともにサイバー空間へ送信してもよい。
【0143】
さらにまた、例えば、食品(クッキー、ケーキ、等)の製造ラインでは、温度や材料、水分の分量を調整することで、「臭覚」、「触覚」、「視覚」、「味覚」などの調整が求められることが多い。このような調整によるデータは、匠データとしてサイバー空間へ送信される。
【0144】
また稼働機械の状況を把握する場合は「聴覚」により稼働機械のコンディションを把握することが求められることがある。
【0145】
また、匠E122は、稼働機械に対して超音波発生器、或は振動発生器を当接して、反射音をマイクで集音し解析器で解析してもよい。解析器は、その反射音の特性に応じて、ねじの緩み、ボディや鉄骨のひび割れ、傷などを検出することができる。なおひび割れ、傷などを検出するとき、超解像度のカメラにより撮像した画像も採用される場合もある。したがって、匠E122が居る部屋には、超音波発生器、或は振動発生器などの操作装置も存在することがある。なお、匠E122と工場との関係を示したが、この技術は、インフラ構造物の状態を点検・監視するときも応用可能である。
【0146】
さらに匠データF100は、匠の行動を表す行動データF102も含む。行動データF102は、例えば匠122が稼働機械を直接操作したときの入力データF1021である。例えばスイッチをオンまたはオフ操作した場合には、対応する稼働機械の識別データ、スイッチの状態データ、操作時の時刻などがセットとなり1単位の行動データとして扱われる。また、温度や速度を調整した場合は、対応する稼働機械の識別データ、温度の設定値データ或は速度の設定値データ、操作時の時刻などがセットとなり1単位の行動データとして扱われる。
【0147】
さらに匠データF100は、匠の生体状態を表す生体データF103も含む。生体データF103は、例えば、ウェアラブルセンサF1031から取得される。ウェアラブルセンサF1031としては、メガネタイプ、腕時計タイプ(血圧計、心拍計、体温計、マイク等を含む)、体重計、発汗計測計などがある。この生体センサからの生体データF103により、匠の体調が分かり、任務時間などの変更・設定が可能となる。
【0148】
さらに匠データF100は、認識モデルデータF104、技・知見・知識データF105も含む。これらデータは、先にも説明したように、匠の自己データである。この自己データとしては、匠識別データF123、匠のキャリアデータ、つまり匠がこれまでに操作した製造ラインや装置などの型名を示すデータ、研修経歴、専門分野、指導経験、およびそれらと取り組んだ年数などのデータである。これにより匠に対してグレードデータ(信頼度係数に対応する)が付加されてもよい。匠のグレードに応じて、製品の品質に差異が出る可能性がある。特に、匠がネガティブな感情のときに製造された製品には、匠のグレードの違いに応じて品質に顕著な差異が出ることが多いからである。例えば、グレードの低い匠は、ネガティブな感情のときに品質の劣る製品数が多く製造され、グレードの高い匠は、ネガティブな感情のときでも品質の劣る製品数は少ない。
また技・知見・知識データF105は、匠の経験などにより、プログラムを切り替える場合や、プログラムにおいて使用されるパラメータのテーブルなどを切り替える場合に採用されてもよい。特に、プログラムのバージョンが複数存在する場合、制御対象となる機器(例えばロボットなど)とプログラムとの相性が存在することがある。そのような場合、匠はその経験や実績の積み重ねからプログラムおよびまたは使用するパラメータのテーブルを切り替えることもあり得る。また、装置が変更された場合、装置の周辺環境が変化した場合もプログラムを切り替える必要が生じる場合がある。さらにまた、環境負荷を軽減する目的で節電のためにプログラムやパラメータが切替られる場合もある。そしてこれらの切り替えの決断は、匠(熟練者)の五感に伴い実行されることがある。
<フィジカル空間での各種データの活用>
図6は、フィジカル空間E100からサイバー空間E200に、取り込んだデータの多様な活用方法と、この活用により得られる効果を説明するために示すデータ活用ブロック図である。
【0149】
上記したようにサイバー空間E200には、匠データF100、装置データF200が送信される。さらにサイバー空間E200内には、匠データF100、装置データF200以外の取得データF300も存在する。勿論、先にも説明したように、変動情報取得部E601、研究情報取得部E602により取得される取得データも存在する。したがって、例えば変動情報取得部E601が、取得データF300を取得してもよい。
【0150】
取得データF300の種類としては、例えば、環境データF301、気象データF302、サプライチェーンのデータF303、地域活性を示すデータF304、リユース・リサイクル関連データF305、に分類されている。
【0151】
環境データF301は、例えば製造ラインが存在する工場内の環境(温度、湿度、粉塵密度、作業人員数、各作業員の役割など)のデータである。気象データF302は、例えば工場が存在する地域の気象変化、さらには、関連工場(例えば同じ会社の他の工場、同じ製品や関連製品を製造している他の工場など)の気象変化(地震情報も含む)などである。さらにサプライチェーンのデータF303は、部品の材料、調達、配送、販売、消費などの量や、在庫、出荷済、移動中などの状況データである。地域活性を示すデータF304は、地域の人口の増減、年齢層の分布、商業の勢い(商店の売り上げや納税状況)、役所から当該地域へ投入される活動予算などのデータである。
【0152】
リユース・リサイクル関連データF305は、例えばフィジカル空間E100の解体業のセンサから得られた情報である。解体業は、各種の装置を、部品や製品(複合部品)ごとに分類するが、各部品や製品には、その識別データと共に、リユース可能、リサイクル可能などの刻印や印などが付加されていることがある。これらの情報が、レーザ或は画像認識センサにより読み取られリユース・リサイクル関連データF305としてサイバー空間E200に送信されている。
【0153】
AI(E300)には、上記した匠データF100、装置データF200、取得データF300が存在し、これらのデータの一部を組み合わせて解析することにより、解析データF400を得ることができる。
【0154】
この解析データF400は、分析・予測データ、最適化・計画データに反映することができる。例えば、解析データF400は、未来予測用のデータF401、自律制御用のデータF402、人の支援用のデータF403、人材教育用のデータF404,自動化/効率化用のデータF405として活用できる。この活用処理は、 AI(E300)が行うもので、 AI(E300)は、匠データF100、装置データF200、取得データF300などを常時監視し、所定の条件がそろった場合にデータ活用と制御を自律的に実行することができる。
【0155】
・未来予測用のデータF401としての活用は以下が考えられる。
例えば、気象データに応じて匠の行動データF102が変化し、その結果、被製造物の特性や品質が影響を受けることが分かったとする。すると、気象データF302と匠の行動データF102の相関性を監視することで、被製造物の特性や品質を予測することができる。この予測に応じて、自律的な制御部は、製造ラインにおける被製造物の品質ランク付けの処理、或は、製造ラインにおける被製造物の仕分け作業に対してフィードバック制御を行うことができる。
【0156】
・自律制御用のデータF402としての活用は以下が考えられる。
例えば、サプライチェーンのデータに大きな変化があったとする。すると、サプライチェーンにより搬入される部品・資材の供給が遅れる、或は過剰になる工場が発生する。そこで、自律制御用のデータF402は、部品・資材の供給が遅れる、或は過剰になる工場に対して、製造ラインの減産、或は増産指令を与えることが可能である。勿論、自律制御用のデータF402は、先の気象データF302と匠の行動データF102の相関性を示すデータも含む。
【0157】
・人の支援用のデータF403にとしての活用は以下が考えられる。
【0158】
例えば、地域活性状況データF304を参照することにより、工場への交代要員の割り振りなどを指示することができる。さらには、先の環境データF301に含まれる人員数や人員配置データ参照し、適切な地域(通勤し易い地域)の工場へ、交代要員の割り振りの指示や提案をすることも可能である。
【0159】
・人材教育用のデータF404にとしての活用は以下が考えられる。
【0160】
例えば、本システムでは匠データがサイバー空間のデータ蓄積部E310に蓄積されている。AI(E300)は、この匠データの識別情報、匠の専門分野などを判断することが可能である。また本システムでは、新しい工場が新設される場合、例えば、工場の設計者は設計図を商業事業E29からサイバー空間に入力することも可能である。これにより、AI(E300)は、匠を必要とする工場、必要な人数などを予測することも可能である。
【0161】
さらにまた、AI(E300)は、データ蓄積部E310に蓄積されている匠データの経験数や年齢から、匠の老齢化(定年)などを判断することも可能である。このような判断や上記の予測から、 AI(E300)は、今後、必要となる匠の人数を予測し、例えば各工場や企業、教育業界に対して、匠の人材教育の要請を通知することも可能である。
【0162】
・自動化/効率化のデータF405としての活用は以下が考えられる。
【0163】
AI(E300)は、複数の同種の工場の製造プロセスの比較・監視、同様な処理工程の比較・監視、生産量の比較・監視を行うことが可能である。このために、AI(E300)は、以下を判断することが可能である。例えば第2の工場では、製品の組み立てをマニュアルで行っている処理工程があり、人員が多く必要で、生産効率が劣る、しかし、第1の工場では、製品の組み立てをロボット化し、人員も少数でよく、生産効率が良い。このような場合、もし、第2の工場で、製品の組み立て工程にロボットが導入された場合、自律的に、ロボット制御プログラムを第2の工場へフィードバックループを介して提供することができる。また人の支援用のデータF403に、余剰人員を登録することも可能である。また、未来予測のデータF401では、第2の工場の製品生産効率が上がるために、製品運搬業(物流)に対して今後の予測データを提供することが可能となる。
【0164】
上記したように、AI(E300)は、サイバー空間上で多種の事業のデータを活用し、生産性の高い、また効率的な製造プロセス環境を整備することが可能である。
【0165】
図7A図7B図7Cは、匠の特定情報を得るウェアラブルセンサの例であり、ここではメガネの例を示している。
眼球の基礎情報を説明する。成人の眼球の直径は約25mmである。生後は17mm程度で、成長に伴い大きくなる。成人男性の瞳孔間距離は約65mmである。そのため、一
般市販のステレオカメラは65mmの間隔で作られている物が多い。成人女性の瞳孔間距離は男性に比べて数mm短い。眼電位は数十mVである。眼球は角膜側にプラス、網膜側
にマイナスの電位を持つ。これを皮膚の表面で測定すると数百μVの電位差(眼電位と称する)として現れる。
【0166】
眼球の回転範囲(一般的な成人の場合)は、左右方向(水平方向とも称する)では、左方向: 50°以下、右方向: 50°以下であり、上下方向(垂直方向とも称する)では、下方
向: 50°以下、上方向: 30°以下である。自分の意思で動かせる上下方向の角度範囲は、上方向は狭い。これは、閉眼すると眼球が上転する「ベル現象」があるため、閉眼すると
上下方向の眼球移動範囲は上方向にシフトするためである。なお、輻輳角(左右の眼球の視線方向が交差する角度)は20°以下である。
【0167】
図7A図7B図7Cを参照して、眼球回転検出装置の構成の一例を説明する。眼球回転検出装置の形態は種々あるが、ここでは、アイウェアの形態の眼球回転検出装置を示す。アイウェアとしては、ゴーグル、メガネ(サングラスはメガネと等価である)等があるが、ここではメガネ型眼球回転検出装置を説明する。図7Aはメガネ型眼球回転検出装置の一例を正面から見た図、図7Bはメガネ型眼球回転検出装置の一例を後ろ上方から見た図である。図7Cはメガネ型眼球回転検出装置の一例をかけたユーザを右前方から見た図である。
【0168】
眼球回転の種類は、上下回転と左右回転がある。上下回転は、瞬目、目瞑り、ウインク等を含む。左右回転は、左右の眼球が同じ向きに無意識に回転する緩徐運動(Slow Eye M
ovement)と、左右の眼球が同じ向きに意識的に回転する視線移動と、左右の眼球が反対向きに回転する動作に輻輳・開散に大別される。輻輳は左右眼球の視線方向が交差することであり、開散は左右眼球の視線方向が発散することである。眼球回転は眼電位の変化に基づいて検出される。眼電位は眼球を挟む一対の電極からの電圧の差分により検出できる。眼球を挟む方向は左右、上下、前後のいずれの方向でもよいし、斜めでもよい。眼球を上下から挟むように配置された電極対で検出される眼電位から瞬目、目瞑り、ウインク等が検出できる。眼球を上下および左右から挟むように配置された電極対で検出される眼電位から、瞬目、目瞑り、ウインク、緩徐運動および視線移動が検出できる。眼球を前後および左右から挟むように配置された電極対で検出される眼電位から、緩徐運動、視線移動および輻輳・開散が検出できる。
【0169】
メガネは右フレーム12と、左フレーム14と、両フレーム12、14を繋ぐブリッジ26とを含む。ユーザがメガネを常用しない場合は、単なるガラスが右フレーム12、左フレーム14に嵌め込まれてもよい。眼電位検出だけの装置ではなく、眼電位から視線移動または輻輳角変化を検出し、その検出結果を応用する製品、例えばAR表示が可能なメガネ型ウェアラブル装置を構成する場合は、右フレーム12、左フレーム14の少なくとも一部にAR表示用の液晶パネル或いは有機ELパネルが嵌め込まれてもよい。
【0170】
実施形態では、輻輳・開散を検出するために、同一の平面内において、左右それぞれの眼球に対して同相(同じベクトル)となる前後位置、かつ左右それぞれの眼球に対して逆相(逆のベクトル)となる左右位置から眼球を挟むように電極が配置される。
【0171】
右眼球ERの眼電位を検出するために、図7Bに示すように、右眼球ERの右側に右テンプル電極32が設けられ、右眼球ERの左側の右ノーズパッド22の鼻に接する表面に右ノーズパッド電極42が設けられる。平面図(図7Bは平面図とみなす)において、右テンプル電極32と右ノーズパッド電極42は、右テンプル電極32と右ノーズパッド電極42とを結ぶ線が右眼球ERを通過するように配置されている。
【0172】
正面図(図7Aは正面図とみなす)において、右テンプル電極32は右眼球ERの左側に設けられ、右ノーズパッド電極42は右眼球ERの右側に設けられる。右テンプル電極32と右ノーズパッド電極42は、右テンプル電極32と右ノーズパッド電極42とを結ぶ線が右眼球ERを通過するように配置されている。また、正面図において、右ノーズパッド電極42は右テンプル電極32より若干上側に設けられている。
【0173】
側面図において、右テンプル電極32は右眼球ERの後側、すなわち右側面図では右眼球ERの左側、左側面図では右眼球ERの右側に設けられ、右ノーズパッド電極42は右眼球ERの前側、すなわち右側面図では右眼球ERの右側、左側面図では右眼球ERの左側に設けられる。右テンプル電極32と右ノーズパッド電極42は、右テンプル電極32と右ノーズパッド電極42とを結ぶ線が右眼球ERを通過するように配置される。
【0174】
図7Cは、右テンプル電極32と右ノーズパッド電極42とを結ぶ線が頭部の正面図、平面図、側面図において右眼球ERを通過する様子を示す。なお、2つの電極を結ぶ線は右眼球ERの中心に限らず眼球のいずれかの部分を通過すればよい。図7Cでは顔に隠されているが、左眼球についても同様である。
【0175】
なお、右眼球ERの眼電位を検出する右テンプル電極32と右ノーズパッド電極42は、平面図、正面図、側面図のいずれにおいて、右テンプル電極32と右ノーズパッド電極
42を結ぶ線が右眼球ERを通過するように配置されているが、平面図、正面図および側面図の少なくともいずれかにおいて、右テンプル電極32と右ノーズパッド電極42とを
結ぶ線が右眼球ERを通過するように配置されていればよい。
【0176】
同様に、左眼球ELの眼電位を検出するために、平面図において左眼球ELの右側、例えば左フレーム14とブリッジ16の接続箇所付近に取り付けられる左ノーズパッド24
の鼻に接する表面に左ノーズパッド電極44が設けられ、左眼球ELの左側、例えば左テンプル20の耳に掛かる部分に左テンプル電極36が設けられる。左ノーズパッド電極4
4と左テンプル電極36は、左ノーズパッド電極44と左テンプル電極36とを結ぶ線が左眼球ELを通過するように配置されている。
【0177】
右テンプル電極32、左テンプル電極36は右フレーム12と左フレーム14を結ぶ直線の中点と直交する直線(例えば鼻の中心から後頭部に延びる直線)に関して線対称である。
【0178】
正面図において、左ノーズパッド電極44は左眼球ELの左側に設けられ、左テンプル電極36は左眼球ELの右側に設けられる。左ノーズパッド電極44と左テンプル電極36は、左ノーズパッド電極44と左テンプル電極36とを結ぶ線が左眼球ELを通過するように配置されている。また、正面図において、左ノーズパッド電極44は第2左電極42より若干上側に設けられている。
【0179】
側面図において、左ノーズパッド電極44は左眼球ELの前側、すなわち右側面図では左眼球ELの右側、左側面図では左眼球ELの左側に設けられ、左テンプル電極36は左眼球ELの後側、すなわち右側面図では左眼球ELの左側、左側面図では左眼球ELの右側に設けられる。左ノーズパッド電極44と左テンプル電極36は、左ノーズパッド電極44と左テンプル電極36とを結ぶ線が左眼球ELを通過するように配置されている。
【0180】
右テンプル電極32は右テンプル18の側面(側頭部に接する)と下面(耳の付け根に接する)に亘って設けられ、メガネが顔に装着される際、テンプル18の自重により、右テンプル電極32が耳の付け根の硬毛が生えていない領域に接触するようになっている。左テンプル電極36は左テンプル20の側面(側頭部に接する)と下面(耳の付け根に接
する)に亘って設けられ、メガネが顔に装着される際、テンプル20の自重により、左テンプル電極36が耳の付け根の硬毛が生えていない領域に接触するようになっている。これにより、右テンプル電極32と左テンプル電極36はユーザの皮膚に密着し、眼電位を正確にセンスすることができる。
【0181】
なお、左眼球ELの眼電位を検出する左ノーズパッド電極44と左テンプル電極36も、平面図、正面図および側面図の少なくともいずれかにおいて、左ノーズパッド電極44と左テンプル電極36とを結ぶ線が左眼球ELを通過するように配置されていればよい。
【0182】
ブリッジ16の内側に額に接する額パッド26が設けられ、額パッド26の額に接する表面に中性電極46が設けられる。中性電極46は眼電位検出のための中性電位を確保す
るための電極であり、皮膚、例えば額に接触している。中性電極46は、中性電極46と右テンプル電極32との距離と中性電極46と左テンプル電極36との距離が等しく、中性電極46と右ノーズパッド電極42との距離と中性電極46と左ノーズパッド電極44との距離が等しくなるように配置される。中性電極46がこのような位置に配置される理
由は、後述する輻輳角検出のためである。輻輳角は、左右それぞれの眼球に対して正面から見て左右対称の眼球回転を検出した結果を基に検出されるからである。例えば、心電計
では、眼球回転の影響が無視できる体の部位、例えば、右足の末端で中性電位を取っている。眼球回転の影響を多少は受けるものの、左右の眼球から均等に影響を受ける場所、額の中央で中性電位を取ることにより、中性電極が左右それぞれの眼球から受ける眼電位の影響を均等化することができる。
【0183】
右テンプル電極32、右ノーズパッド電極42、左ノーズパッド電極44、左テンプル電極36、中性電極46は銅等の金属箔、金属小片、ステンレススチール等の金属球または導電性のシリコンゴムシート等を含む。これらの電極32、42、44、36は後述するように眼電位を検出するための電極であるので、EOG電極とも称する。
<EOG信号>
図7Bに示すように、一方のテンプル、例えば右テンプル18のフレーム12に近い部分に眼電位の検出のための処理部30が内蔵或いは外付けされている。他方のテンプル、
例えば左テンプル20のフレーム12に近い部分に処理部30のためのバッテリ34が内蔵或いは外付けされている。処理部30は単に眼電位検出だけではなく、AR表示が可能なメガネ型ウェアラブル装置においては、表示制御も行ってもよい。処理部30はメガネに内蔵するのではなく、メガネの外部に設け、無線またはワイヤでメガネと処理部30と
を接続してもよい。その場合、バッテリ34は処理部30に内蔵してメガネの外部に設けることができる。また、処理部30の機能を2つに分けて、電極からの信号をセンスする第1処理部のみメガネに設け、センス信号から眼電位を検出したり、検出結果に応じて制御する第2処理部をメガネの外部に設たりしてもよい。スマートフォン等の携帯端末を第2処理部として使用することができる。第2処理部はメガネに直接接続される携帯端末等に限らず、ネットワークを介して接続されるサーバ等も含む。
【0184】
右テンプル電極32からの信号が第1のアナログ/デジタル(A/D)コンバータ62の-端子に入力され、第2左電極36からの信号が第1のA/Dコンバータ62の+端子に入力され、差分信号である第1のEOG信号ADC Ch0が出力される。右テンプル電極32と左テンプル電極36は眼球を左右から挟むので、第1のEOG信号ADC C
h0は左右眼球の左右回転を示す。
【0185】
右テンプル電極32からの信号が第2のA/Dコンバータ64の-端子に入力され、右ノーズパッド電極42からの信号が第2のA/Dコンバータ64の+端子に入力され、差
分信号である第2のEOG信号ADC Ch1が出力される。右テンプル電極32と右ノーズパッド電極42は右眼球を上下および左右から挟むので、第2のEOG信号ADC C
h1は右眼球の左右回転と上下回転を示す。
【0186】
左ノーズパッド電極44からの信号が第3のA/Dコンバータ66の+端子に入力され、左テンプル電極36からの信号が第2のA/Dコンバータ66の-端子に入力され、差
分信号である第3のEOG信号ADC Ch2が出力される。左ノーズパッド電極44と左テンプル電極36は左眼球を上下および左右から挟むので、第3のEOG信号ADC Ch2は左眼球の左右回転と上下回転を示す。
【0187】
第2のEOG信号ADC Ch1に関する2つの電極の左右位置と第3のEOG信号ADC Ch2に関する2つの電極の左右位置は反対(A/Dコンバータの入力の+/-が反転)なので、第2のEOG信号ADC Ch1と第3のEOG信号ADC Ch2の波形から左右の眼球が同じ向きまたは反対向きに左右回転しているかが検出できる。
【0188】
右テンプル電極32、右ノーズパッド電極42、左ノーズパッド電極44、左テンプル電極36からの電圧信号は微弱であるので、ノイズの影響が大きい。このノイズをキャン
セルするために、A/Dコンバータ62、64、66の基準アナログ電圧Vcc(=3.3Vまたは5.5V)とグランド(GND)との間に抵抗R1とR2の直列回路が接続され、抵抗R1とR2の接続点に中性電極46が接続される。抵抗R1、R2は等しい値、例えば1MΩである。A/Dコンバータ62、64、66は0V(グランド)から基準アナログ電圧Vccまでのアナログ電圧を検出可能であり、検出可能範囲の中点、例えば3.3Vの1/2の電圧(中点電圧と称する)を中心に0Vから3.3Vの範囲で入力アナログ電圧をデジタル値に変換する。抵抗R1とR2の接続点が中点電圧端に接続され、中性電極46が抵抗R1とR2の接続点に接続されるので、A/Dコンバータ62、64、66の中点電圧は人体の電圧と同じになる。その結果、人体の電圧に連動してA/Dコンバータ62、64、66の中点電圧が変動し、EOG電極32、42、44、36からの電圧信号に混入されたノイズがA/Dコンバータ62、64、66の出力であるデジタル値に混入することがない。これにより、眼電位の検出のS/Nを向上できる。
【0189】
図8は眼球回転検出装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。処理部30はA/Dコンバータ62、64、66を含んでもよいし、A/Dコンバータ62、64、6
6は処理部30に外付けされてもよい。
【0190】
右テンプル電極32からの信号が第1のA/Dコンバータ62の-端子に入力され、左テンプル電極36からの信号が第1のA/Dコンバータ62の+端子に入力され、第1チ
ャネルのEOG信号ADC Ch0が得られる。右テンプル電極32からの信号が第2のA/Dコンバータ64の-端子に入力され、右ノーズパッド電極42からの信号が第2の
A/Dコンバータ64の+端子に入力され、第2チャネルのEOG信号ADC Ch1が得られる。左ノーズパッド電極44からの信号が第3のA/Dコンバータ66の+端子に入力され、左テンプル電極36からの信号が第2のA/Dコンバータ66の-端子に入力され、第3チャネルのEOG信号ADC Ch2が得られる。
【0191】
中性電極46からの信号がA/Dコンバータ62、64、66の中点電圧端に供給され、A/Dコンバータ62、64、66の中点電圧が中性電極46により検出された人体の電圧とされる。
【0192】
A/Dコンバータ62、64、66から出力されるEOG信号が眼球回転(以下、眼動と称することもある)を検出する眼動検出部75に入力される。眼動検出部75はハードウェアから構成してもよいが、ソフトウエアから構成してもよい。後者の場合、CPU74とROM76とRAM78がバスラインに接続され、眼動検出部75もバスラインに接続される。眼動検出部75はCPU74がROM76に格納されたプログラムを実行することにより実現する。バスラインには無線LANデバイス80も接続され、処理部30は無線LANデバイス80を介してスマートフォン等の携帯端末84に接続される。携帯端末84はインターネット等のネットワーク86を介してサーバ88に接続されてもよい。眼動検出部75はA/Dコンバータ62、64、から出力されるEOG信号に基づき眼電位を検出し、検出した眼電位から左右眼球それぞれの左右回転(輻輳・開散)および眼球の左右回転(視線移動)、上下回転(瞬目、眼瞑り)を検出することができる。さらに、眼動検出部75は検出した眼動からユーザの種々の状態(例えば、集中力が欠け落ち着きが無い状態か集中している状態、緊張し精神的にストレスを受けた状態、疲労しており業務や作業に集中しがたい状態)を推定することができる。どの種類の眼球回転を検出し、どの種類の状態を推定するかはCPU74が実行するプログラムを変えることにより変更可能である。この変更指示は携帯端末84から行ってもよい。
【0193】
無線LANデバイス80の代わりにZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標) Low Energy、Wi-Fi(登録商標)などの通信方式による通信機器を利用してもよい。眼動検出部75の検出結果(眼動検出結果、状態推定結果)は、RAM78に一時的に格納され、その後無線LANデバイス80等の通信機器を介して、携帯端末84に送られてもよい。或いは、眼動検出部75の検出結果は携帯端末84にリアルタイムで送られてもよい。携帯端末84は眼動検出部75の検出結果を図示しない内蔵のメモリに格納してもよいし、検出結果をネットワーク86を介してサーバ88へ転送してもよい。携帯端末84は眼動検出部75の検出結果に応じて何かの処理を開始してもよく、処理結果を内蔵のメモリに格納してもよいし、処理結果をネットワーク86を介してサーバ88へ転送してもよい。サーバ88は多くの眼動検出部75からの検出結果や多くの携帯端末84の処理結果を集約して、いわゆるビッグデータ解析を行ってもよい。
【0194】
図9は、ユーザの種々な眼動と、A/Dコンバータ62、64、66から得られるEOG信号ADC Ch0、ADC Ch1、ADC Ch2の関係の一例を説明する眼電図(EOG)である。縦軸はA/Dコンバータ62、64、66(例えば、3.3V,24ビットのA/Dコンバータ)のサンプル値を示し、横軸は時間を示す。
【0195】
瞬目S1、目瞑りS2、視線左S3、視線右S4、寄り目S5、の各EOG信号ADC Ch0、ADC Ch1、ADC Ch2を解析することで、匠が注目している視点を追跡することが可能である。
【0196】
図10は、腕時計タイプのウェアラブルセンサ90である。腕時計の本体部には、体温計、心拍計、血圧計が内蔵されている。そして表示部901には、現在の使用者(匠)の体温91、心拍92、血圧93の名称と、その測定結果が名称の横にバー表示される。
ウェアラブルセンサ90には、マイク94が設けられてもよい。ウェアラブルセンサ90も無線通信機能を有し、その入力データが匠管理部F120で管理される。
【0197】
利用者の感情の変化により、上記したウェアラブルセンサの検出出力がどのような特性パターンの検出出力となるか、多くのテストを経て特定されることが望ましい。また、利用者よっては、特性パターンに独自性が現れることがある。
【0198】
図11は、ある匠の感情が安定している場合に製造された製品の品質検査結果と、匠の感情が不安定となったときに製造された製品の品質検査結果に基づき、品質Qの分布PGQを示したものである。匠の感情が安定している領域EL1では、製品は、品質合格ラインQrを超えた品質であり、匠の感情が不安定の領域EL2では、製品は、品質合格ラインQrを下回る品質のものが多くなる。上記の作業は、例えば、作業員(或は匠)が溶接ロボットを操作して移動中の筐体にアームを溶接して取り付けた場合の作業を行った場合である。筐体とアームの接合強度の検査を行うと、作業員(或は匠)の感情不安定なときに製造されたアームの接合強度が弱い。
【0199】
またベルトコンベア上で一定時間停止する配線基板上の配線に部品の端子を作業員が半田付け作業した場合の結果も同様な結果が得られた。配線と端子間の通電検査を行うと、作業員の感情が不安定なときに製造された製品に不良品が多くなっている。
【0200】
図12Aは、フィードバックループを利用して、例えば事業所、或は製造ラインの作業環境を快適にする場合、環境負荷を抑制する場合の一例を示している。
【0201】
フィジカル空間E100から、作業員(或は匠)F122の行動に伴う操作データ、生体データなどがサイバー空間E200に送信される。作業員は、操作室F121に入り、作業現場が寒い、暑い、丁度良い(快適)などの選択ボタンを操作することができる。
【0202】
作業現場F530は、温度計により周囲温度F521が計測され、湿度計により周囲湿度F522が計測されている。また、作業現場F530の気流や送風状態(風量・風速)F523、照明色F524、なども計測されている。さらに作業員F122の運動量(消費カロリーと称してもよい)F525,発汗状況(湿度)F526もウェアラブルセンサにより計測されている。
【0203】
上記の計測データは、常時、サイバー空間E200の自律的な制御部E500により読み取られ、エアコンディショナー、送風機、照明器などの制御データ(調整データ)作成のための要素として用いられる。自律的な制御部E500は、また作業現場F530から送られてくるデフォルトデータ、および、制約条件データも保存している。デフォルトデータは、例えば製造ラインが構築されたときに、現場において、担当者が周囲温度、周囲湿度、送風状態(風量・風速)、照明色などを指定した値を示すデータである。また制約条件データは、担当者が周囲温度、周囲湿度、送風状態(風量・風速)、照明色の変化に対して上限・下限、色合い、などに制約を与えるデータである。これは、製造ラインで製造する製品に応じて、各種の制限があるからである。
【0204】
今、作業員F122が、暑いと感じて、現場の温度をさげるための指示ボタンを操作したとする。すると自律的な制御部E500は、単純に温度制御指令を作業現場のエッジコンピュータを介してエアコンディショナーに与えるだけではなく、次のように送風や湿度調整による知的制御を実行する。例えば、エアコンディショナーを制御して温度を下げなくても、送風を与える、或は湿度を下げると作業員は暑いと感じなくなる場合がある。また、照明色を例えばオレンジ系から白或はブルー系に変えても作業員は暑いと感じなくなる場合がある。そこで自律的な制御部E500は、次のような判断と制御を行うことができる。
【0205】
例えば、今、エアコンディショナーの台数が多く、その使用電力が、他の少数の制御機器(例えば作業室内の送風機・湿度調整器)の使用電力より大きいとする。或は、現状よりも運転出力を上げた場合、設定したエアコンディショナーのための使用電力が上限値になるとする。この場合、自律的な制御部E500は、総合使用電力を最小とする制御状態E5031を設定する。即ち、作業員F122が、温度をさげるための指示ボタンを操作した場合、自律的な制御部E500は、送風機およびまたは湿度調整器を制御するための指令を現場に向けて送信する。
【0206】
上記のようなフィードバックループを有することにより、本システムは、環境負荷の削減に貢献するものである。
【0207】
図12Bは、フィードバックループを利用して、例えば事業、或は製造ラインの作業環境を快適にする場合、環境負荷を抑制する場合の他の例を示している。この例では、再生エネルギー生産情報F601(風力発電、ソーラー発電などの情報)、消費情報(工場や事業所の電力使用量)F602、環境負荷情報(二酸化炭素放出量など)F603の少なくとも1つが、特定情報としてサイバー空間E200に送られてくる。またエネルギー生産情報F604もエネルギー事業E11から送られてくる。各情報は、それぞれの事業のエッジコンピュータを介して送られてくる。
【0208】
自律的な制御部E500は、総合的な現実の消費電力と、現実の生産電力とを用いて、最良(生産と消費が一定の割合で均衡した状態)な使用電力を計算する。この場合、環境負荷計算部E5021は、総合的に環境負荷をできるだけ軽減できる(再生エネルギーができるだけ多く活用される)ように、各事業に対して再生エネルギー使用割合の増減要請を行うことができる。或いは、総合的な現実の消費電力のグラフと、現実の生産電力のグラフと、最良な使用電力のグラフを画像データにより提供する。また事業体自身が使用している使用電力のグラフの中で、当該事業体の再生エネルギー使用割合を提示する。そして、当該事業体の再生エネルギー使用割合として、さらに再生エネルギー使用割合を増加してもよい場合は、その使用割合の増加分を推奨する。このような情報が、協力要請情報F610としてフィードバックされる。
【0209】
サイバー空間E200が、このようなサービス情報を各事業体に提示することで、総合的に環境負荷の軽減を行うことが可能としている。
【0210】
図12Cは、フィードバックループを利用して、例えば電力事業の電力使用環境を制御し、環境負荷を抑制する場合のさらに他の例を示している。フィジカル空間E100の第1のエリアには、第1の電力送配電設備F711,第1の電力管理装置F721、第1の電力の使用状況をサイバー空間E200に通知するエッジコンピュータF731が存在する。またフィジカル空間E100の第2のエリアには、第2の電力送配電設備F712,第2の電力管理装置F722、第2の電力の使用状況をサイバー空間E200に通知するエッジコンピュータF732が存在する。
【0211】
さらに、第1の電力送配電設備F711と第2の電力送配電設備F712とは、お互いに電力を融通しあうときに使用される電力アダプタF740が存在する。電力アダプタF740は、例えば、第1の電力が第1の周波数であり、第2の電力が第2の周波数である場合、第1の周波数の電力を第2の周波数の電力に変換することができ、また逆に第2の周波数の電力を第1の周波数の電力に変換することができる。また、電圧や電流値も、互いの電力を変換することができる。
【0212】
一方、サイバー空間E200の第1の自律的な制御部EA500は、第1の電力の使用状況を解析する第1の電力使用状況解析部EA502,第1の電力使用状況解析部EA502の解析結果に基づき、ループKA500を介してエッジコンピュータF731へのフィードバックデータを生成する制御部EA503を備える。また、サイバー空間E200の第2の自律的な制御部EB500は、第2の電力の使用状況を解析する第2の電力使用状況解析部EB502,第2の電力使用状況解析部EB502の解析結果に基づき、ループKB503を利用してエッジコンピュータF732へのフィードバックデータを生成する制御部EB503を備える。
【0213】
上記したシステムによると、制御部EA503、EB503は、電力アダプタF740を制御し、第1の電力を第2のエリアへ提供したり、第2の電力を第1のエリアへ提供したりすることが可能となる。例えば一方の電力の容量が不足した場合、余っている電力を受電できるシステム制御が可能である。このときは、制御ループKA510、およびKB510が利用される。また、再生エネルギーの使用状況に応じて、全体としてできるだけ再生エネルギーが使用されるように制御することができ、環境負荷の軽減が可能である。なお上記の例は、第1と第2の電力を使用する実施形態を説明したが、第3、第4の電力が電力使用エリアとして存在しても、上記の考え方を本システムに適用することが可能である。
【0214】
また勿論のことであるが、上記の図12A図12Bの電力管理システム、図12Cの電力送配電設備の管理においても、図2A図2Fで説明したケースと同様な対応が可能である。即ちサイバー空間におけるループ制御部は、自律稼働制御部の新たな解析結果に応答して新規のフィードバックループを構築或はその解除を行うループ連携制御部を有してもよい。
【0215】
図13Aは、ある1つの工場が、サイバー空間E200とフィジカル空間E100との間のフィードバックループを使用する単純な例を示している。
【0216】
フィジカル空間E100には第1の工場G1が存在する。第1の工場G1内には図5A図5Bで説明したように匠管理部F120が存在し、ここから匠データF100が得られる。匠データF100は、第1の工場G1における例えば環境負荷を制御する、或は生産効率や製品の品質を向上させるのに有効なデータである。この匠データF100(例えば第1の工場G1の作業員の自己情報)と第1の工場G1の装置データE200は、サイバー空間E200に送信され、解析される。この解析において、フィジカル空間E100の装置に対してフィードバックすべきデータがある否かが判定される。例えば、装置に対して、今まで与えていた制御パラメータに対して、匠が調整を加えたときのほうが製品の品質が向上しているかどうかの判定が行われる。なおここでは、製品の品質の向上だけでなく、生産効率なども監視されている。生産効率は、例えば一日当たりの生産数が良くなっているかどうかの判断である。このような場合、匠データが品質向上や生産効率に寄与しており、かつそのときの工場データにおける制御パラメータが変化しているか否かの解析がなされる。
【0217】
工場データにおける制御パラメータが変化している場合、制御部E503は、当該変化した新しい制御パラメータが当該工場には適していると判定し、フィードバックループを介して、工場における既存の制御パラメータ(或はデフォルトの制御パラメータ)を、新しい制御パラメータに変更する。或は既存の制御パラメータを修正して、新しい制御パラメータに変更する。
【0218】
図13Bは、上記したサイバー空間E200の自律的な制御部E500が実行したプログラムのフローチャートを示している。自律的な制御部E500は、匠データF100,装置データF200を取得し(SA1)、解析する(SA2)。解析の結果、フィードバックデータがあると判定した場合(SA3のYES)、フィジカル空間がフィードバックデータの受け取りを許可しているかどうかを判定し(SA4)、許可している場合は(SA4のYES)、フィードバックデータをフィジカル空間の制御部へ送信する(SA5)。一方、解析の結果、フィードバックデータなしと判定した場合(SAのNO)は処理を終了する。また、解析の結果、フィードバックデータがあると判定されたものの(SA3のYES)、フィジカル空間が受け取りを許可していない場合(SA4のNO)も同様に処理を終了する。
【0219】
上記の例は、分かり易くするために簡単な構成を説明したが、実際にはさらに多くの工場とそのフィードバックループが存在する。
【0220】
図14Aは、例えばフィジカル空間E100に第1の工場(或は第1のセクションと称してもよい)G1、第2の工場(或は第2のセクションと称してもよい)G2が存在する例を示している。第1の工場G1の匠データF100と装置データF200並びに第2の工場G2の匠データF100と装置データF200は、サイバー空間E200に送信され、解析される。サイバー空間E200は、先に説明したように、第1の工場G1に対するフィードバックデータの作成機能、第2の工場G2に対するフィードバックデータの作成機能を備える。
【0221】
さらに、サイバー空間E200の自律的な制御部E500は、第1の工場G1用の制御部E503Aと、第2の工場G2用の制御部E503Bとの間に統合制御部E504を有する。統合制御部E504は、図2A図2E図3A図3Bで説明したループ接続部(具体的にはシステムオブシステムズK213)が形成するループ連携制御部に相当する若しくはループ連携制御部を含む。この統合制御部E504は、第1の工場G1と第2の工場G2との間で、互いに連携する制御、関連する制御を自動検出することができる。統合制御部E504は、制御部E503Aおよび制御部E503Bと、定期的に情報交換を行っている。そして、統合制御部E504は、制御部E503Aおよび制御部EB503との間で、互いに連携する制御、関連する制御を検知した場合、統合制御部E504は、制御部E503Aおよびまたは制御部E503Bに対して、例えばフィードバック制御のための指令を与えることができる。
【0222】
フィードバック制御の内容は、様々であり、第1の工場G1と第2の工場G2との関係がどのような関係にあるかにより、制御の内容が異なる。例えば、部品調達情報、作業人員情報の情報交換を行い、生産ラインの稼働速度制御、稼働部分の切り替え制御などが行われる。勿論、図2B図2Fで説明したケースと同様な対応が可能である。即ちサイバー空間におけるループ制御部は、自律稼働制御部の新たな解析結果に応答して新規のフィードバックループを構築或はその解除を行うループ連携制御部を有する。例えば、一方の工場に対して、ソフトウエア開発事業所から新たなソフトウエアの購入を指示する制御、或はパーツ会社から、製造ラインの適切なパーツを購入指示するような連携制御を実現することも可能である。
【0223】
図14Bは、第2の工場G2の製造プロセスを管理している制御部E503Bから、統合制御部E504が第2の工場G2で用いるプログラム(ソフトウエア)に関する情報を受け取った場合の動作フローを示している。今、統合制御部E504は、第2の工場G2が新設された旨の通知を受けたとする(SB1)。ここで統合制御部E504は、制御部E503Bに対して、第2の工場の製造プロセスで用いる装置やプログラムは、第1の工場G1のものと同じかどうかを問い合せる(SB2)。制御部E503Bから、プログラムのバージョン(第1のバージョン)の通知を受けて、自身のバージョン(第1の工場G1用の第2のバージョン)と異なると判断した場合は(SB2のNO)、その旨を、制御部E503Bに通知する。制御部E503Bは、第2の工場G2の管理者へ、使用できるプログラムが見つかりませんなどの通知を行い、次の指示を待つ(SB5)。
【0224】
ステップSB2において、第2の工場G2で使用するプログラムのバージョンが、第1の工場G1で使用するプログラムのバージョンと同じ(第2のバージョン)との判断の場合は(SB2のYES)、自動的に、制御部E503Bへ当該プログラムを転送する(SB3)。そして、制御部E503Bは、当該プログラム(第2のバージョン)を、第2の工場G2の制御装置へ転送する。このときプログラムで利用する匠データ(各種パラメータ等)がある場合には、その匠データも転送する(SB4)。
【0225】
図14Cは、第1の工場G1用の制御部E503Aが、第2の工場G2の管理者へ、使用できるプログラムが見つかりませんなどの通知を行い、次の指示を待った(SB5=SC1)後の処理を示すフローチャートである。指示待ちの結果、第2の工場G2の管理者から、不要との応答があった場合(SC2のYES)、処理は終了する。一方、第2の工場G2の管理者から不要との応答がなく(SC2のYES)、プログラムの別のバージョン(例えば第3のバージョン)が指定された場合(SC3のYES)、その第3のバージョンを自身(第1の工場G1用のデータベース)が所有するかどうかを判定する(SC4)。ここで、第1の工場G1用のデータベースに、指定されたバージョン(この場合第3のバージョン)が存在した場合(SC4のYES)、当該プログラムと、制御パラメータを第2の工場のサーバ制御部へ送信する(SC5)。上記以外(SC3のNO、SC4のNO)の場合は指示待ちの状態に戻る(SC1)。
【0226】
上記図14A図14Cの技術は次のような思考に基づいている。即ち、
本システムは、フィジカル空間E100のエッジ装置E900と、サイバー空間E200のプラットフォームK100と、前記エッジ装置と前記プラットフォームとの間に設けられた第1のフィードバックループとを有する。さらに、第1の情報取得部K111は、第1のフィードバックループを介して第1の特定情報を取得する。第1の情報解析部K112は、前記第1の特定情報を解析する。第1の自律的な操作部K113は、前記情報解析部で解析した第1の解析結果に基づき、前記フィジカル空間の第1の装置に対して稼働制御およびまたはサービスを自律的に行わせる。なお上記の説明では、第1の工場と第2の工場の関係を説明したが、第3の工場、第4の工場が存在しても同様な考え方が適用される。
【0227】
また、本システムは、上記と同様な第2のフィードバックループと、第2の情報取得部K111と、第2の情報解析部K112と、第2の自律的な操作部K113とを有する。そして、統合制御部E504は、前記第1と第2の自律的な制御部を連携させて、前記第1の解析結果と前記第2の解析結果の相違を判定し、前記相違に応じて設定される制御データを得る。この制御データを前記第1または前記第2のフィードバックループを介して前記第1の装置または第2の装置に反映させる。制御データは、第1の装置または第2の装置が使用するプログラムに関する制御データおよびまたはパラメータである。さらには、次に説明するように制御データは、リユース材料または部品または装置、リサイクル材料または部品または装置に関するデータであってもよい。
また統合制御部E504は、前記第1と第2の自律的な制御部を連携させて、前記第1の解析結果の一部若しくは全部を前記第2の解析結果として、前記第2のフィードバックループを介して前記第2の装置に反映させる場合もある。
【0228】
図15図16A図16Bは、上記したCPSは、環境負荷軽減にさらに貢献できる工夫がなされていることを説明するための図である。
【0229】
図15において、今、第3の工場G3が、材料および資材を用いて、複合部品を製造する工場であるものとする。製造工程は、例えば次のステップを有する。材料・資材搬入G31、材料・資材の加工G32、加工品の成形・切削G33、部品G34の製造。次に、製造工程は、複数部品G35の調達、複数部品の組み立てG36、復号部品の構成G37のステップをとり得る。さらに梱包のステップ(図示せず)があってもよい。
【0230】
上記の製造工程において、第3の工場G3では、単品部品GA、GBおよびまたは複合部品GCおよびまたは物(材料を含む)GDに対して、リユース「可能」、「不可」の付加情報、或はリサイクル「可能」、「不可」、完全焼却「可能」、「不可」の識別情報を付している。この付加情報は、例えばQRコード(登録商標)或はバーコードなどの刻印またはインクによる印刷技術により付加されている。
【0231】
またこの単品部品およびまたは複合部品の上記の付加情報G110は、テーブル化されてサイバー空間E200のデータ蓄積部E310に送信され保存されている。テーブルには、単品部品GA、GB、複合部品GCの情報フォーマットの例を示している。各部品には、識別データG111と、リユース情報G112とリサイクル情報G113がセットで与えられている。テーブル化された情報フォーマットの例では、
・単品部品GAは、識別データA-ID、リユース不可、リサイクル可能の情報が与えられており、
・単品部品GBは、識別データB-ID、リユース可能、リサイクル可能の情報が与えられており、
・複合部品GCは、識別データC-ID、リユース不可、リサイクル可能の情報が与えられており、
・物(材料含む)は、識別データD-ID、完全焼却可能の情報が与えられている。ただし、ここに分類された物は、焼却される時は二酸化炭素が放出されるが、有害物質は排出されないものである。したがって、物は、焼却後は炭素物となる。
【0232】
上記のように付加情報G110が与えられた場合、解体事業者が上記のような部品を含む装置を解体した場合、次のように、付加情報G110に基づいて地球資源を無駄にせず有効に活用できるという環境負荷軽減を得ることができる。
【0233】
図16Aは、第4の工場(解体事業)E30とそのサイバー空間E200、および、第5の工場G5とそのサイバー空間E200の関連を示している。第4の工場(解体事業)E30に対して、サイバー空間E500には、解体プロセスに必要な特定情報をフィードバックループから取得する情報取得部E501Aと、特定情報を解析する情報解析部EA502と、情報解析部で取得した解析結果に基づき、稼働制御を自律的に行わせる自律稼働制御部EA503とを備える。
【0234】
フィードバックループが利用され、例えば、制御部E503Aから解体しようとする装置や建造物の骨格情報、さらには便利な解体順序が、例えばARやVRを介して作業員に通知される。装置や建造物の骨格情報、さらには便利な解体順序などは、製造メーカにより補足データとして提供されている。
【0235】
また解体した部品については、カメラ、レーザビーム、赤外線などの光学的読み取り機などにより、部品に刻印或は印刷されている付加情報G110が読み取られる。この付加情報G110の内容に応じて、各部品は、ベルトコンベア群により分類され、リユース部品、リサイクル部品と言う形で保管される。またリユース部品、リサイクル部品の情報は、サイバー空間E200のデータ蓄積部E310に、テーブルの形で格納される。
【0236】
今、第5の工場G5が、たとえば第4の工場G4の解体作業で生じた部品を使用可能な装置を製造しているものとする。
【0237】
第5の工場G5に対して、サイバー空間E500には、製造プロセスに必要な特定情報をフィードバックループから取得する情報取得部E501Bと、特定情報を解析する情報解析部EB502とB、情報解析部E502Bで取得した解析結果に基づき、稼働制御を自律的に行わせる自律稼働制御部EB503とを備える。
【0238】
ここで、情報取得部E501Bは、第5の工場G5で使用する部品情報も取得している。よって、解析部E502Bは、部品情報の中に上記テーブルで説明したリユース部品、リサイクル部品の識別データに対応するものがあるかどうかを判定することができる。この判定ができるのは、例えば、制御部EB503が、統合制御部E504、制御部EA503を介して、データ蓄積部E310内のテーブルを参照することができるからである。
【0239】
次に制御部EB503は、第5の工場G5の責任者(或は作業員)に対して、リユース部品およびまたはリサイクル部品を使用するかどうかの指示を仰ぐことになる。予め、責任者(或は作業員)が、リユース部品およびまたはリサイクル部品を使用するという設定を行っていれば、指示を仰ぐ必要はない。この場合は、リユース部品およびまたはリサイクル部品の名称・価格・量など、第5の工場G5の責任者へ通知する。責任者は、必要に応じて、利用するリユース部品およびまたはリサイクル部品の種類や数量を指定してサイバー空間へ返信するか、または、使用しない旨を通知する。リユース部品およびまたはリサイクル部品の種類や数量が決定したら、制御部E503Bは、例えば解体業者へ自動的に発注することができる。
【0240】
さらに、完全焼却可能な物(材料を含む)(焼却時は二酸化炭素が放出されるが、有害物質は排出されない)は、例えば後述する発電プラントなどに送られる。
【0241】
勿論、第4の工場(解体事業)、第5の工場においても、それぞれ、図2B図2Fで説明したケースと同様な対応が可能であり、この場合は、実際に第2のフィードバックループを利用していることになる。即ちサイバー空間におけるループ制御部は、自律稼働制御部の新たな解析結果に応答して新規のフィードバックループ(第2のフィードバックループ)を構築或はその解除を行うループ連携制御部を有している。
【0242】
図16Bは、第5工場G5を管理する制御部E503Bの動作例を示すフローチャートである。まず、今後、製造する装置或は複合部品などに対して、リサイクル部品或はリユース部品を利用してよいかどうかを判断する(SD1)。使用してよいとの設定がなされている場合は(SD1のYES)、当該リサイクル部品或はリユース部品の識別データを工場の管理室に通知する(SD2)。使用不可の場合(SD1のNO)は再利用せずそのまま焼却する。管理室からの通知に対して、責任者がリサイクル部品或はリユース部品の使用を許可した場合(SD3のYES)は、自律的に第4の工場G4に対して部品の発注を行う(SD4)。一方、責任者(管理者或は匠)が、リサイクル部品或はリユース部品の使用を否定した場合(SD3のNO)は再利用せずそのまま焼却する。
【0243】
図17Aは、第6の工場G6の製造プロセスを簡単に示している。この工場G6は、製造ラインの上流から下流に複数の製造ステップを有する。そしてこの製造ラインは、いずれの製造ステップの段階の中間製品でもそれぞれに適した製造ステップで当該中間製品を受け入れることができるように制御部により制御される。各製造ステップに配置された各ロボットはそれぞれ第1のフィードバックループによる制御を受ける。しかし、途中で中間製品を受け入れる場合は、第2のフィードバックループによる制御である。
【0244】
通常は、製造対象となる対象製品Q11は、第1の取り込み装置G201により取り込まれ、ベルトコンベアG200上に置かれる。例えば組み立てがなされる対象製品Q11は、第1の部品が第1のロボットG211により取り付けられ、次に第2の部品が第2のロボットG212により取り付けられる。さらに対象製品Q11は、第3の部品が第3のロボットG213により取り付けられ、次に第4の部品が第4のロボットG214により取り付けられる。そして、最後に第1乃至第4の部品を有する対象製品Q11は、梱包ロボットG215により梱包される。
【0245】
ところで上記の製造ラインは、第2の取り込み装置G202を有する。この第2の取り込み装置G202は、製造ラインの複数の工程の位置(第2のロボットG212、第3のロボットG213、第4のロボットG214)のいずれにも移動して、途中まで部品が取り付けられた対象製品(中間製品)を製造ラインに投入することができる。
【0246】
図の例では、第3のロボットG213の位置に、第2の取り込み装置G202が位置し、ここから、半完成状態の対象製品Q12を製造ラインG200に投入することができる。
【0247】
したがって、上記の第6の工場G6は、任意の工程から対象製品Q12を梱包工程まで処理することができる。
【0248】
このような多様性を有する工場は、他の同様な工場の例えば第1、第2のロボットG211、G212が故障したような場合、自律的な制御部E500の仲介により、他の同様な工場の生産を支援することが可能となる。これにより、社会に対する製品の供給が安定化する。また社会全体の製品の生産効率がよくなり、ひいては環境負荷の軽減に寄与することができる。
【0249】
図17Bは、第7の工場G7の製造プロセスを簡単に示している。第7の工場G7は、2つの製造ラインG400と、G500を有する。製造ラインG400と、G500は、平行に配列されている。即ち、第1の製造ラインと第2の製造ラインを有する工場であり、製造ラインを制御する制御部が各製造工程を第1のフィードバックループを介して制御する。ここで制御部は、さらに共通の搬送路で搬送されてきた第1の製品と第2の製品とを第1の製造ラインと第2の製造ラインに振り分ける制御を行い、この場合は、第2のフィードバックループにより取り込み装置を制御し、第1の製品と第2の製品が混在して搬送されてきても、第1の製品と第2の製品とを適切に振り分けることができる。
【0250】
この製品の取り込み装置G45は、いずれか一方の製造ラインG400またはG500に例えば加工対象品或は組み立て対象品を選択的に導入することができる。製造ラインG400には、作業ロボットG411,G412,G413,G414が順位配置され、製造ラインG500には、作業ロボットG511,G512,G513が順位配置されている。
【0251】
作業ロボットG411,G412,G413,G414は、例えばそれぞれ、クリーニングG411、カラー塗装剤吹き付けG412、乾燥G413、梱包G414を行うロボットである。一方、作業ロボットG511,G512,G513は、例えばそれぞれ、刻印G511、掃除G512、梱包G513を行うロボットである。
【0252】
この工場G7においても自律的な制御部のE500の仲介により、社会に設立された工場を効果的に利用することができる。しかも、製造技術に匠の技が反映された工場を活用することができる。よって、社会全体の製品の生産効率がよくなり、ひいては環境負荷の軽減に寄与することができる。
【0253】
図18は、サイバー空間E200の自律的な制御部E500が有する支援プログラムの一例を示している。この支援プログラムは、予め種々の工場からの支援可能な作業情報を受けて蓄積したデータベースを参照する。また、データベースに蓄積されている種々の工場からの支援要求情報を参照することができる。支援可能な作業情報、支援要求情報には、それぞれ支援可能または支援を要求している日時、或は日時と時間帯などの情報、工場地域、作業内容などが含まれている。支援プログラムは、各工場からの情報を解析する(SF1)。例えば部品の製造に関する「支援要求」の情報があるかどうかを判断する(SF2)。
要求があった場合(SF2のYES)、その要求は例えば「部品調達要求」(SF3)、「作業員要求」(SF5)、「製造ライン要求」(SF7)、「製造ロボットの修理部品要求」(SF9)であるかどうかを判断する。
【0254】
支援プログラムは、「部品調達要求」(SF3)であった場合、該当部品の製造工場または販売店の在庫情報を判断し、要求している工場または会社の管理者に通知を行う(SF4)。
支援プログラムは、「作業員要求」(SF5)であった場合、当該部品の製造の経験者または他の工場の同種の作業経験者に通知する(この場合、要求している工場に近い人へ優先的に通知する)。「製造ライン要求」(SF7)であった場合、要求している工場の製造ラインと同じ製造ラインを有する他の工場の管理者へ通知すると共に、要求している工場の管理者へも通知する(SF8)。製造ロボットの修理部品要求」(SF9)であった場合、修理部品の販売や製造を行っている会社に通知を行うと共に、同じ製造ロボットを有する工場の管理者へも通知する(SF10)。
【0255】
上記のように、図17A図17B図18に記載の情報管理システムは、製造過程に複数のロボットを順次配置している製造ラインに対する情報管理システムである。第1の制御部は、複数の工場のエッジコンピュータから製品の製造に関する支援要求情報を判断する。第2の制御部は、前記第1の制御部の内容が、部品調達、作業員要求、製造ライン要求、製造ロボットの修理部品要求の少なくともいずれかであることを判断する。第3の制御部は、前記判断が、前記製造ライン要求であった場合、前記要求している工場の製造ラインと同じ製造ラインを有する他の工場の管理者へ前記要求を通知するとともに、前記要求している工場の管理者へも通知する。
【0256】
上記した図17A図17B図18の実施形態は、図2B図2Fで説明したケースと同様な対応が可能である。即ちサイバー空間におけるループ制御部は、自律稼働制御部の新たな解析結果に応答して新規のフィードバックループを構築或はその解除を行うループ連携制御部を行っていることを意味する。
【0257】
図19は、窒素酸化物を放出せず、二酸化炭素COの一部をサイクリックに利用し、環境負荷を軽減できる発電プラントH100の基本的な構成例を示している。
【0258】
H101は、酸化剤供給源、H102は燃料供給源である。酸化剤Fo、燃料Ffは、ノズルH103で供給量が調整されて、燃焼器H104に供給される。酸化剤Foは、例えば超臨界の酸素である。燃料Ffは、例えば天然ガスおよび二酸化炭素を含む超臨界の混合気である。またノズルには作動流体Fwも供給されており、例えば超臨界の二酸化炭素である。なお、燃料Ffは、例えばメタンのような他の炭化水素や石炭ガス化ガスであってもよい。
【0259】
燃焼器H104は、ノズルH103で調整された酸化剤Foおよび燃料Ffを燃焼させる。酸化剤Foおよび燃料Ffの流量は、それぞれが完全に混合した状態において、理論混合比となるように調整されている。ここでは、匠(熟練者或は作業員)による酸化剤Foおよび燃料Ffの混合量の調整が実施されてもよい。匠は、燃焼室の燃焼状態を見ながら、視覚・聴覚などの五感を働かせて混合量を調整する場合もある。
【0260】
燃焼器H104は、燃焼ガスFcを勢いよく排出する。燃焼ガスFc1は、燃焼によって生成された二酸化炭素および水蒸気と、作動流体Fwである二酸化炭素とを含む。この燃焼ガスFc1は、タービン装置H105に導入され、タービンを回転させる。タービンの回転は回転軸を介して発電機H106を駆動する。発電機H106で発電された電気は、各種の用途に利用される。
【0261】
タービン装置H105において、膨張して仕事をした燃焼ガスFc2は、二酸化炭素、水分を含む。燃焼ガスFc2は、第1の熱交換器H107を通過する。第1の熱交換器H107で温度を下げられた燃焼ガスFc2は、さらに第1の熱交換器H108にてさらに温度を下げられて、湿分分離器H109に導入され、ここでは水H110が分離される。
【0262】
湿分分離器H109からは、二酸化炭素が導出され、この二酸化炭素は、圧縮機H111に導かれる。圧縮機H111では、高圧の二酸化炭素(ドライにされた燃焼ガス)が出力される。この高圧の二酸化炭素は、例えば回収装置に回収される。また高圧の二酸化炭素は、先の作動流体Fwとして用いられる。
【0263】
上記した発電システムは、その燃焼制御のために匠の技が関与する場合がある。また発電規模に応じて、小型、中型、大型のものが建造されることがある。
【0264】
このために、先の図14で説明した第1の工場と第2の工場との間の製造プロセスの関係と同様な関係が、第1の発電プラントと第2の発電プラントの間の制御プロセスの関係で生じる。即ち、同じ発電システムであっても、制御パラメータなどが互いに異なる場合がある。この場合も本CPSは、柔軟に対応し、それぞれの発電システムが、効率的な稼働を実行し得る。
【0265】
上記の発電プラントは、エネルギーの製造を行う。この発電プラントの管理に対しても、図2Eで説明したケースと同様な対応が可能である。即ちサイバー空間におけるループ接続部は、自律稼働制御部の新たな解析結果に応答して新規のフィードバックループを構築或はその解除を行うループ連携制御部を有してもよい。
【0266】
図20は、本CPSにより、プログラム(ソフトウエア)サービスが行われた場合の実施形態を示す説明図である。例えば地域(或は国)J201から他の地域(或は国)J202へ車J101-J104が販売(或は輸出)されるものとする。統合制御部E504には,複数の種類の管理部J10,J11,J30,J20,J21が設けられている。この場合、国J201において船J110に荷積みされるまでは、車J101-J104に対しては、制御プログラム<管理部J10>とカーナビゲーションシステム<管理部J11)が用いられる。一方、国J202においては、制御プログラム<管理部J20>とカーナビゲーションシステム<管理部J21>が、サイバー空間E200から車J101-J104に対してダウンロードされる。この処理は自律的に行われる。
【0267】
例えば運転に関する制御プログラムが、車の制限速度を維持するように構成されている場合、車が国J201にあるときは、国J201の規則を守るように当該制御プログラムは動作する。また、カーナビゲーションシステムJ11は、国J201に適合した道路案内を実行する。
【0268】
車J101-J104が船積みされた場合、車J101-J104の運転機能は、ロック制御部J30からの指令により、輸出先の国J202に到着するまでは、運転のロック状態となる。これにより、車の盗難を防止することができる。或いは、輸出先の国J202に到着するまでは、運転制御のためのプログラムは、船や車両からの荷下ろしを行える程度の最低限の機能を実現できるレベルのプログラムであってもよい。
【0269】
船J110が国J202の目的の港に着くと、車J101-J104は、サイバー空間E200に識別データを送信する。すると、各車J101-J104に対して、サイバー空間E200から国J202に適合した制御プログラム,カーナビゲーションシステムがダウンロードされる。これにより、各車J101-J104は、国J202のルールに適合した制限速度制御、並びにカーナビゲーション(道路案内)を受けることが可能となる。
【0270】
上記の例では、車J101-J104は、船J110により輸送される例を示したが、貨物列車、或は大型トラックにより輸送される場合であっても、上記の例と同様な取り扱いを受けることが可能である。
【0271】
また上記では車の例を示したが、家電製品でもプログラムの更新が可能なものもある。したがって、車や家電製品に対しても、サイバー空間E200のループ接続部が有するループ連携制御部が働きかけることができる。ループ連携制御部は、内臓プログラムを制御することが可能である。例えば輸送中は、車や家電製品の内蔵プログラムを休眠状態とし、販売が決まったら起動することも可能である。
【0272】
上記したように、本実施形態におけるCPSは、製造プロセスのみならず、各種のサービス事業(輸出業、輸送業、解体業など)にも容易に適用することが可能である。上記の例は、車の輸出に関する説明であったが、例えば複合部品についてもローカルな制御プログラムが、搭載されているものであれば、図20で説明した技術と同様な技術が可能である。例えば出発時は、複合部品や装置には、基本プログラムのみがインストールされ、ローカルな制御プログラムはインストールとされず、複合部品や装置が目的の現地に到着したときに、初めてローカル制御プログラムが自動的にインストールされる仕組みであってもよい。
即ち、第1の制御プログラム管理部が、輸出および輸入する装置に対する情報管理システムであって、サイバー空間に配置されており、フィジカル空間に配置されている前記輸装置のエッジコンピュータから、位置情報および前記装置で用いられる制御プログラムの情報を受け取り、第1の制御プログラムを前記装置に設定する。第2の制御プログラム管理部は、前記装置が目的の輸入先に到着したら、前記第1の制御プログラムとは異なる第2の制御プログラムを前記装置に設定する。
<非常時の地域貢献>
図21は、工場内の各種の設備(自動走行ロボット・ドローン)などが、周辺地域(街中、駅など)で事故、災害が生じたとき、出動できる体制にあることを説明する図である。フィジカル空間の状態が、サイバー空間で管理されウオッチングされている。
【0273】
工場P310では、資材搬送、部品搬送などに自動走行ロボットP311、P312、P313、P314が使用されている。またドローンP315、P316が利用されることもある。自動走行ロボットP311、P312、P313、P314、ドローンP315、P316などは、周辺エリアP100で負傷者、災害が生じた場合などに、出動し、周辺エリアに貢献できる体制を整えている。自動走行ロボットP311、P312、P313、P314、ドローンP315、P316などは、工場の敷地から外へ出かける場合、また外出先から帰還した場合、消毒・クリーニングゲートP320を通過する義務がある。
【0274】
今、周辺エリアP100において、事故、或は災害、或は救急を要する事態が発生したとする。周辺エリアP100に、デパートP101、学校P102、スーパーマーケットP103、民家などがあり、ここで、例えば火事、または洪水、または雪害、など人命救助を要する非常事態が生じたとする。
【0275】
この状況は、例えばデパートP101、学校P102、スーパーマーケットP103、民家などに設置されているエッジコンピュータ、或は監視カメラなどのIoT設備により、サイバー空間へ通知されるとともに、警察署P201,消防署P202,病院P203へ自動的に通知される。この通知は、エッジコンピュータから直接警察署P201,消防署P202,病院P203へ通知されてもよく、サイバー空間を介して通知されてもよい。
【0276】
非常事態の対応マニュアルは、予め設定されており、例えば、警官が非常事態現場に急行し、救助隊の規模(消防、医者、作業員などの必要な人数や必要な設備)を判断し、また、現場へ救助隊が駆けつけるための導線(道路)を確保する。これら非常事態情報は、警察本部へ通知されるとともに、自動的にサイバー空間へ送信される。すると、非常事態情報は、自律的な制御部E500により解析されて、消防署P202,病院P203へ通知されるとともに、地域の工場P310のエッジコンピュータへ通知される。
【0277】
上記の警官が発する非常事態情報は、熟練警官による情報である場合、いわゆる匠の技のデータ(五感データ)に等しいと言える。つまりマニュアルによる情報に対して、さらに工夫がなされることがあるし、むしろ、工夫がなされる場合が多い。
【0278】
工場P310は、緊急時に活用可能な自動走行ロボットP311、P312、P313、P314、ドローンP315、P316を予め設定することができる。エッジコンピュータから、緊急の呼び出しが生じた場合、サイバー空間から、フィードバックループを介して、自動走行ロボットP311、P312、P313、P314、ドローンP315、P316に対して、作業指令が通知される。この場合、当該ロボットやドローンに対して、緊急現場の地図情報や、警官が確保している導線の道路情報などのパラメータも通知され、搬送物資(食料、水、医療器具など)、現場の撮影、TV中継なども割り当てることが可能である。さらに必要に応じて工場内の作業員も当該ロボットに同行することができる。また、大量の雨量があり、洪水が生じ、工場が造船を行っている場合は、サイバー空間E200の自律的な制御部E500は、救助用のボートなどを派遣するようにフィードバックループを利用して指令することも可能である。
【0279】
また、サイバー空間E200の自律的な制御部E500からの指令に基づいて、カメラを搭載しているドローンP315,P316は、例えば管轄地域の道路の凍結状態の監視を行うことができる。凍また、自律的な制御部E500は、常時、天気予報情報を取得し、管理可能なエリアの天候を予測することができ、予測に基づき、結防止剤を道路に散布するなどの作業も可能である。
【0280】
上記の機能は、地域エリアP100のみならず、例えば駅構内などで、複数の利用客が急病になった場合なども容易に展開可能である。例えば、駅構内に備えられているAED(Automatic External Defibrillator)の数が不足する場合がある。このような場合、サイバー空間の制御部は、所定領域(駅構内)のAEDの利用状況を把握する機能を持ち、不足していると判定した場合、自動的に地域の工場P310が、AEDの補充を行うようにフィードバックによる指令を出すことができる。
【0281】
この場合、工場P310から所定領域(駅構内)への輸送手段には、ドローンが用いられてもよい。例えば駅員は、先にも説明したように、遠隔医療機関L124とも交信を行うことができる。この交信により、現場の駅員は、救急患者を治療する場合、遠隔の医療機関L124に所属する医師からのアドバイスを受けることも可能である。
【0282】
さらに駅構内にも、常時荷物を運ぶ自動走行ロボットが存在してもよい。この自動走行ロボットは、例えば、旅行者の携帯端末と交信可能である。旅行者が、携帯端末の機器識別データを自動走行ロボットの制御部に登録し、携帯端末から「運搬」の指令ボタンを押すと、自動走行ロボットは、携帯端末を保持している旅行者の後方を追尾することができる。したがって、重い荷物を自動走行ロボットに乗せておけば、旅行者は、荷物を抱えることなく駅構内を移動することができる。旅行者は、目的の場所(ホームや電車の乗車口)で、荷物を降ろして、携帯端末の「解除」の指令ボタンを押すと、自動走行ロボットは、待機エリアに自動的に戻ることができる。このような制御を駅構内のエッジコンピュータとサイバー空間の制御部E500との連携で実現することが可能である。なお上記の荷物は、乳母車であってもよい。
【0283】
自動走行ロボットは、カメラと人物認識機能を持つ。自動走行ロボットは、旅行者が、携帯端末の機器識別データを自動走行ロボットの制御部に登録したとき、旅行者の全身の姿勢、衣服の形や色、顔、靴などをカメラでとらえて認識することができる。自動走行ロボットは、旅行者を追尾するときは、常時、旅行者の全身の姿勢、衣服の形や色、顔、靴などを確認しながら追尾する。またマイクとスピーカを備えており、旅行者がトラック番号と、電車名や、乗車する車両番号、などを伝えると、地図データを参照して、旅行者を目的のトラック(プラットホーム)に案内することも可能である。
【0284】
上記したフィジカル空間上の種々の出来事は、サイバー空間で把握されており、サイバー空間は、当該出来事に対する対応策を自律的に実施することができる。この対応策には、さらに保険事業者に対する情報提供(例えば事故の様子、災害の規模など)を適格に連絡することが可能である。さらには、サイバー空間の自律制御部は、被災者の状況に応じて、被災者を非難させるために、ホテルなどの宿泊施設の確保、予約などを管理することが可能である。
【0285】
図22は、自動走行車およびドローン(以下単純にロボットと称して説明する)P500の基本構成を示している。自動走行或は自動飛翔のために、その動力エネルギー源であるバッテリP501は、充電が可能な例えば2次電池が用いられる。制御部P510は、全体の動作を統括する。制御部P510は、プログラム部P511のプログラムを読み取りプログラム手順に従い全体を制御する。制御部P510は、例えばビデオカメラP513を制御し、撮影した映像データをメモリP512に記憶およびまたは送受信器P516を介してサイバー空間およびまたはロボットの管理者へ送信する。またバッテリP501の残量と今後の作業予測時間などの情報もサイバー空間およびまたは管理者へ送信する。送受信器P516は、近距離無線通信機能、Wi-Fi(登録商標)、ビーコン無線通信機能も有する。したがってこのロボットは、携帯端末との通信も可能である。
【0286】
また、制御部P510は、GPS機能P571からの信号を受け取り、自身の走行位置或は飛翔位置を把握している。この位置情報も、サイバー空間およびまたは管理者へ例えば5秒乃至10秒間隔で送信されている。制御部P510は、第1の駆動回路P522を制御し、移動・回転機構(エンジン)P524を制御する。この制御により、ロボットP500は、プログラムに従い或は自律的な判断により自由に移動することができる。
【0287】
自律的な判断とは、例えば温度センサ(図示せず)により、周囲温度が異常に高温となり、ロボット自身に危険が迫った場合、危険エリアから離れる方向へ移動する、と言う判断である。このような自律的な判断による動作は、予めベーシックプログラム(反射神経型プログラムと称してもよい)としてプログラム部P511に格納されている。またカメラP513により、移動方向へ障害物が現れたような場合は、それを避けて目的とする移動方向へ移動するベーシックプログラムが存在する。
【0288】
さらにロボットP500を目的に応じて活動を実行させるための実行プログラム(思考型プログラムと称してもよい)は、プログラム部P511にあるが、書き換え可能である。例えば工場内では割り当てられた作業を行うための実行プログラムが、プログラム部P511にインストールされ、また、外出時(出動時)は、その出動目的に応じた実行プログラムが、プログラム部P511にインストールされる。例えば、周囲を監視して交通整理を行う、或は、負傷者の下へ医療品を届ける、或は、被災者に救命道具を届けるなどの実行プログラムが、或はこれらの組み合わせプログラムが、プログラム部P511にインストールされる。
【0289】
移動・回転機構P524は、例えば自動走行用の車輪、或は歩行用足、或はキャタピラ等であり、種々のタイプがある。そのためにこの移動・回転機構P524は、作業現場に応じて、そのタイプを交換することができる。交換が行われるときは、ロボット本体と移動・回転機械P524との間でアダプタ機構P523が用いられる。
【0290】
また制御部P510は、第2の駆動回路P525を介して作業機械P528を制御することができる。例えば、作業機械P528も作業内容に応じて種々のタイプがあるので、交換可能な対策が講じられている。交換が行われるときは、ロボット本体と作業機械P528との間でアダプタ機構P527が用いられる。
【0291】
図23図24は、エッジコンピュータの管理方法の一例を示している。フィジカル空間E100の多数のエッジコンピュータから様々のデータがサイバー空間E200にアップされる。このためにサイバー空間E200では、エッジコンピュータを管理し、データの出所、或はフィードバックデータの送信先を適格に管理する必要がある。
【0292】
図23図24において、基本概念を説明する。まず、地球儀R100を、赤道を境界にして北半球と南半球に分ける。次に、地球儀R100の表面を、横の線(緯線R101)と、縦の線(経線R102)とで2次元的に区分する。
【0293】
即ち、北極Pの部分を、国(政府)Pとして設定する。一方、南極Sの部分を人の脳として設定する。また赤道に対応する部分を家庭(人)Q14として設定する。
【0294】
すると、赤道から北極P(国(政府)Q11)までの複数の緯線により、家庭(人)Q14、人の集合(地方(コミュニティー))Q13、都市Q12、国Q11と言う段階的な複数の領域に区分することができる。また赤道から脳Sまでの複数の緯線により、人の経歴、性別、年齢、人の身体の皮膚、腕、足、筋肉、骨、臓器、脳と言う風に段階的な領域に区分することができる。この種の情報は、個人情報となり得るので秘匿情報として取り扱われる。
【0295】
次に、複数の経線により区分される複数の領域は、図23図24に示すように、先に説明した各種の業種の情報源(匠の技E10、エネルギーの事業E11、情報・通信の事業E13、運輸の事業E14、ビル管理の事業E15、高度医療・予防医療(精密医療も含む)の事業E17、インフラ(道路・橋などを含む)の事業E20、農業E25、商業(物流を含む)事業E29、工場関連の事業E30、など)に割り当てることができる。
【0296】
上記のように管理した場合、エッジコンピュータの識別と、同業種や異業種との間でフィードバックループを連携させる必要が生じた場合、管理および制御が容易となる。
【0297】
本CPSは、上記したように各種の製造プロセスの他に、各種のサービス事業に対しても有効に活用できる。
【0298】
図25は、多数のサイバー空間のデータを連携させるシステムの説明図である。上記した事業の分類において、エッジコンピュータが利用された。このために、サイバー空間が多数生じたとしても多数のサイバー空間のデータを連携させることが容易になっている。即ち、サイバー空間は、工場単位で形成されたり、地域単位で形成されたり、国単位で形成されることがある。このように複数のサイバー空間が生じた場合、サイバー空間と他のサイバー空間との間を取り持つスーパー統合制御部が必要となる。
【0299】
そこで、図25に示すように、サイバー空間E2001、E2002、E2003、E2004、・・・・を統合するスーパー統合制御部E550を設置する。
サイバー空間E2001、E2002、E2003、E2004、・・・・は、それぞれ担当分野において、業種で分類されているエッジコンピュータE9001,E9002,E9003・・・を管理している(図24参照)。
【0300】
スーパー統合制御部E550は、さらにサイバー空間の上位に位置するものであり、サイバー空間E2001、E2002、E2003、E2004、・・・・で管理しているエッジコンピュータE9001,E9002,E9003・・・を統合して管理する。
【0301】
スーパー統合制御部E550は、サイバー空間E2001、E2002、E2003、E2004、・・・・中の同じタイプ或は類似するタイプの工場(例えば、第8の工場と第9の工場)の間で、環境負荷の抑制が優秀な工場を検索することができる。例えば、第8の工場と第9の工場では、生産効率がほぼ同じであるが、数日間の電力使用量の平均値を監視すると、電力使用量が多く、かつ生産効率が低い工場(例えば第9の工場)の場合は、環境負荷の抑制が旨くなされていないことである。
【0302】
この場合、スーパー統合制御部E550は、優秀な工場(第8の工場)における製造プロセスに用いられるプログラムおよびそのパラメータと、他の工場(環境負荷の抑制が劣る工場(第9の工場))のプログラムおよびそのパラメータとを比較し、異なる要素を検出することができる。そして異なる要素を第9の工場へ通知し、環境負荷の抑制を要求することができる。
【0303】
図26は、さらに、エッジコンピュータの管理システムの他の応用例を説明するために示した説明図である。スーパー統合制御部E550およびローカルのサイバー空間に所属するローカルの統合制御部E504(図14A図16A参照)は、業種別のエッジコンピュータを識別して管理している。このために、例えば業種毎の消費電力をアスペクト(または軸)として分類したり、関係する作業員数をアスペクト(または軸)として分類したり、さらには、関係する地域をアスペクト(または軸)として分類することができる。そして、図26に示すように、例えば北半球のイメージ図により、例えば業種毎の消費電力量を可視化して示すことが可能である。図の例のように、消費電力量T14,T15を示し、例えば運送の事業E14と、ビル管理の事業E15とでは、どちらが消費電力を多く利用しているかなどを視覚的に見ることが可能となる。また、ローカルレベル或は世界の規模のレベルで、事業間の消費電力を比較することも可能である。さらにまた、統合制御部の利用を工夫することで、家庭(人)Q14、人の集合(地方(コミュニティー))Q13、都市Q12、国Q11と言う段階的な複数の領域ごとに、消費電力の分布を観察することも可能となる。なおスーパー統合制御部E550およびローカルの統合制御部E504は、一体となっていてもよい。或は業種別エネルギー情報処理用の制御部が存在してもよい。
【0304】
即ち、上記システムは、複数のサイバー空間と、それぞれのサイバー空間に接続されているフィジカル空間のエッジコンピュータと、を管理する情報管理システムであって、第1の制御部が、前記エッジコンピュータの分類を前記エッジコンピュータが所属する業種を識別した分類区分にしている。また第2の制御部が前記エッジコンピュータから送られてきた電力消費情報を、前記業種別に識別するデータ処理を行っている。
【0305】
なお上記はエネルギー使用量を観察するものであるが、さらに作業員の人数分布、占有エリア(面積)の分布、外部情報を参照して資本分布なども推定することが可能である。また単一のサイバー空間と複数のエッジコンピュータとの関係においても、上記の考え方は適用可能である。
【0306】
図27Aは、センサおよびまたはエッジコンピュータの管理方法の一例を示す説明図である。フィジカル空間E1001のエッジコンピュータE9001,E9002,E9003,はそれぞれセンサ(IoT機器)の情報をサイバー空間E2001に送信している。このとき、センサ(IoT機器)の識別情報も送信している。したがって、サイバー空間E2001のローカル統合制御部E504は、フィジカル空間E1001でどのようなセンサが使用されているかを把握可能であり、エッジコンピュータ毎にセンサを分類して管理することができる。
【0307】
図27Bは、例えばローカル統合制御部E504がフィジカル空間E1001で使用されているセンサを管理しているテーブルTA1の例を示している。ローカル統合制御部E504は、このテーブルTA1を利用して、新たなエッジコンピュータが追加された場合、或はエッジコンピュータが取り外された場合、を検知することができる。またローカル統合制御部E504は、エッジコンピュータが掌握しているセンサが取り外された場合、或は新たに追加された場合も容易に管理することができる。
【0308】
先に説明したように、市街地で災害が発生した場合は、管理情報からエッジコンピュータが消滅する場合があるし、市街地が復興した場合は、新たなエッジコンピュータが管理情報に追加される場合もある。このように、正確にエッジコンピュータやセンサの状態を管理することにより、サービス面では商品(例えばセンサ)の製造販売情報を作成可能であり、また、環境面では、環境負荷情報の増減を安定して管理することが可能である。
【0309】
上記したように、本システムにおいては、各種の事業において使用されている種々のフィードバックループに着目した。そして、種々のフィードバックループを組み合わせたり、或は複合フィードバックループから一部のフィードバックループを開放したりすることができることを説明した。
【0310】
以下では、さらにフィードバックループを、効果的に且つ効率よく利用可能とするフィードバックループマネージャを説明する。フィードバックループマネージャは、サイバー空間のプラットフォームK100内(図2A)(図4ではシステム制御部E300内)に設けられている。
【0311】
製造・組み立て施設、或は物流の施設においては、フィードバックループが最も活用されている対象としてロボットがある。フィードバックループは、ロボットのサーボ機構に採用されている。
【0312】
製品の製造・組み立て現場の施設では、ロボット(即ちフィードバックループ集合体)の性能により、製品の製造・組み立て効率、製品の品質、作業員の安全性が影響を受ける。また製品の流通施設では、ロボット(即ちフィードバックループ集合体)の性能により、製品の流通効率、作業員の安全性が影響を受ける。さらにまた、サービス分野で利用される無人車両、ドローンなど移動体(即ちロボット)に用いられるフィードバックループの性能は、移動体の制御の安定性、安全性、正確性に影響を与える。
【0313】
そこで以後の説明は、フィードバックループの性能を評価し、有能なフィードバックループを選定し得るフィードバックループマネージャを具体的に説明する。
【0314】
フィードバックマネージャは、フィードバックループで発生したデータ及び使用されたデータを用いて、フィードバックループを評価することができる。
【0315】
フィードバックループで発生したデータとは、フィードバックループで使用されている各種のセンサ出力データと、前記センサ出力データと目標値に基づいて生成される制御データ(例えば目標値とセンサ出力データとの差の値)などを含む。また、フィードバックループで使用されたデータは、前記目標値を含む。
【0316】
図28Aは、ロボット3111が、ベルトコンベア3002で搬送されてくる基板3003、3004に対して、ねじを取り付けている様子を示している。ロボット3111の姿勢を制御するためには、ロボット3111及びその周囲に各種のセンサが配置される。この例では、移動位置センサ3011、角度センサ3012、回転位置センサ3013、温度センサ3014、湿度センサ3015、音センサ3016、臭気センサ3017、Co2センサ3018を例として示している。また状態監視センサ(例えばカメラ)3019も装備される。
【0317】
移動位置センサ3011は、例えばロボット3111全体の立ち位置を検出するもので、例えば、床上の目印のある所定の移動位置にロボット3111が位置するかどうかを検出する。移動位置センサ3011としては、例えばカメラによる目印検出、或はGPSやビーコン、Wi-Fi(登録商標)、PDR(Pedestrian Dead Reconing)、IMES(Indoor MEssaging System)、超音波等による位置検出手段が利用される。
【0318】
角度センサ3012は、ロボットの頭、腕、足、胴体等に配置され、頭(顔)の向き(上下・左右・正面)を示す角度、指、手首、腕や足の各関節の屈折角度、胴体の屈曲角度などを検出するために利用される。
【0319】
回転位置センサ3013は、手首、腕、足の各関節の回転角度、胴体の回転角度などを検出するために利用される。
【0320】
温度センサ3014、湿度センサ3015は、ロボット周辺の温度や湿度、作業室の温度や湿度、ロボットに使用されているモータの近辺の温度を検出するために利用されている。
【0321】
音センサ3016は、ロボット3111周囲の作業場の空間音、及び各フィードバックループで制御される部品の近くで発生する音をピックアップするために利用される。臭気センサ3017は、ロボット3111周囲の作業場の空間で発生する臭気、及び各フィードバックループで制御される部品の近くで発生する臭気を検出するために利用される。
【0322】
上記センサからの検出出力は、センサ出力検出回路3010を介して、ロボット用の制御部3030に伝送される。センサ出力検出回路3010と制御部3030間は、有線或は無線で接続される。
【0323】
制御部3030は、工程管理プログラム処理部3032と目標値メモリ3031を有する。工程管理プログラム3032は、ロボット3111の振る舞いの手順を設定する。ロボット3111の振る舞いを制御するために、制御部3030は、電源制御器3041を介して、ロボット3111に装備されているモータ群3050を制御する。モータ群3050の回転は、それぞれ動力変換機群3051により回転動力を、所望の方向の動力に変換される。動力変換機群3051は、したがって、歯車、ベルト、アーム、カムなどを含む。変換された動力は、動力伝達具群3052(アーム、ベルト、プーリ、或はワイヤ、ヒンジなど)を介して、被駆動機群3053(ロボットの手関節機構、腕関節機構、足関節機構、胴回転機構、胴屈曲機構、移動用車輪)に伝えられる。
【0324】
上記の制御ループにより、ロボット3111の姿勢、向き、動きなどの振る舞いを自由に制御可能である。
【0325】
ロボット3111が動くと、その状態を検出するセンサ群からのフィードバックデータが工程管理プログラム3032により処理される。工程管理プログラム3032は、それぞれのセンサの目標値を目標値メモリ3031から読出し、フィードバックデータ(センサ出力)と比較し、その差の値を得る。前記差の値が許容値以内であれば、目標の姿勢に制御されたことを意味する。しかし、前記差の値が許容値を超えている場合は、モータ群3050、動力変換機群3051、動力伝達具群3052を制御し、前記差の値が許容値の以内になるように制御を続ける(フィードバックループ群の制御を行う)。
【0326】
制御部3030で取り扱われた各種データは、ネットワークNETを介してサイバー空間E200に送信される。
【0327】
図28Bは、上記ロボット3111の基本的な振る舞いを説明するために示したフローチャートである。
【0328】
SG1:工程管理プログラム3032がスタートすると、まずロボット3111は、その基本姿勢(初期姿勢)にセットされる。そのために、工程管理プログラム3032は、目標値メモリ3031から目標値を読出し、準備し、各センサの初期データと目標値を比較し、その差の値に応じて、モータ群3050、動力変換機群3051、動力伝達具群3052を制御し、前記差の値が許容値以内になるように制御を行う(フィードバックループ制御を行う)。
SG2:次に工程管理プログラム3023は、ロボット3111がねじ供給機(図示せず)の方向へ向くように姿勢制御変更のための制御を実施する。
SG3:次に工程管理プログラム3023は、ロボット3111がねじ供給機(図示せず)からねじを掴み取り出すように制御を実行する。
SG4:次に工程管理プログラム3023は、ロボット3111が基本姿勢に戻るように制御を実行する。
SG5:次に工程管理プログラム3023は、ロボット3111が搭載しているカメラを利用して、ベルトコンベア上に基板があるかどうかの判定を行う処理を実行する。
SG6:ベルトコンベア上に基板があることが判定された場合、工程管理プログラム3023は、ロボット3111をベルトコンベアの方向へ姿勢制御するとともに、そして腕をのばして基板の近くへ手が位置するように、ロボットの状態制御を実行する。
SG7:次に工程管理プログラム3023は、ロボット3111の腕を回転させて基板へのねじ締め付け制御を実行する。
SG8:次に工程管理プログラム3023は、ロボット3111が基本姿勢に戻るように制御を実行する。
SG9:次に工程管理プログラム3023は、終了又は停止コマンドがあるかどうかを判定する。終了又は停止コマンドが無い場合は、ステップSG2に戻り、次のねじ締め付け動作をロボット3111に実行させる。
終了又は停止コマンドがあった場合は、ロボット3111のねじ締め付け作業は終了する。終了又は停止コマンドは、工程管理プログラム3032が、外部からの入力を受け付ける、あるいは、カメラからの基板映像が一定時間内に取得できない場合に発生するように仕組まれている。
【0329】
上記した各ステップSG1、SG2、SG3・・・SG9は、複数のセンサのフィードバックループ(束のフィードバックループ)が一体となって動作して、ロボットを制御する様子を説明した。
【0330】
図28Cは、工程管理プログラム3032のさらに中間の層における動作を示す。つまり複数のセンサの出力に基づいて動作する複数のフィードバックループの運転が、複数のステップに於いて実行される様子を示している。
【0331】
SH1:動作開始指令があり、指定されたステップ(先の例ではSG1又はSG2又は・・・・SG9)におけるフィードバックループ群の運転が開始される。ロボットを制御するために、各種のセンサを持つ複数のフィードバックループが同時或は時間差を以て運転される。
SH2:現在のステップにおいて必要なフィードバックループ群の運転が完了したかどうかの判定がなされる。運転が完了していない場合は、SH1,SH2が繰り替えされる。SH2での判定は、例えば先の基本姿勢がセットされたかどうか、或はねじ供給機の方向へロボットの姿勢が変更されたかどうか等の判定に相当する。
SH3: SH2でYESの場合は、次のステップにおけるフィードバックループ群の各フィードバックループの運転に移行する。
またこの時、ステップSG1、SG2、SG3・・・SG9の中の1つのステップの処理に要した所要時間も計測されており、記録される。
【0332】
SH4:全ステップ(SG1、SG2、SG3・・・SG9)おけるフィードバックループ群の運転が完了しているかどうかの判定がなされ、完了していない場合は、SH5において、次のステップの処理に移行する。しかし最後のステップにおける処理が完了している場合(先の例ではSG9で停止コマンドが入力している場合)は、動作が停止する。
【0333】
図28Dは、工程管理プログラム3023のさらに下位の層における動作を示す。つまり先のステップSH1,SH2に含まれる、ステップSH11-SH20を示している。
【0334】
SH11:現在運転対象としているフィードバックループのセンサ出力とその目標値との差を求める。
SH12:差の値(D)が許容値(α)より格段に大きく異常値の場合(目標値から大きくずれている場合)は、異常(非常)停止する(SH20)。
SH13:差の値(D)が、異常値ではないが、許容値(α)より大きい場合は、許容値(α)にすべく、SH13,SH14,SH15,SH11,SH12のループの処理が繰り替えされる。ただし、ループの動作の設定時間を超えた場合(SH14で判定)は、異常停止する(SH20)。当該フィードバックループが異常をきたしていることである。
【0335】
SH16:SH13において、差の値(D)が許容値(α)より小さいことが分かった場合、許容値(α)以内であることを再確認する。許容値(α)は、固定の値ではなく、ある程度の微少の変動範囲(変動レベル)をもつ値であり、この微少の変動範囲の種々の値は、ループの性能やロボットの状態を判断するのに利用可能な値となる。
SH17:SH16において再確認が得られた場合、ループの制御状態を確定し、差の値(D)を保存する。
SH18:差の値を求める必要がある、次のフィードバックループが存在するかどうかを判断し、存在する場合はSH11に移る。
SH19:次のフィードバックループが存在しない場合は、SH19にて、次のステップ(SG2又は・・・・SG9)におけるフィードバックループ群の運転が開始される。
【0336】
上記したように、各ステップのフィードバックグループ群の運転が実行されることで、ロボットが所望の動きを実現する。
【0337】
図29は、上記したロボット制御に基づいて、サイバー空間E200のデータ蓄積部E310のフィードバックループデータ格納部4001に、フィードバックループデータが蓄積された様子を示している。図29Aの右側に示すテーブルでは、縦方向に各種のフィードバックループの種類をFBL-S1、FBL-S2、FBL-S3、・・・・FBL-Snとして示し、横方向に、ロボットの動きの各ステップSG1-SG9を示している。
【0338】
フィードバックループデータ(蓄積データ、特定情報と言える)は、ロボット名、ロボットの専門作業、年齢(使用年数)、住所(配置工場住所と工場内の場所)、修理履歴、点検履歴、を含む。さらに、先に説明したステップSG1-SG9において得られた各フィードバックループ(FBL-S1、FBL-S2、FBL-S3、・・・・FBL-Sn)の運転時の差の値(許容値α内の具体的値、異常値など)が記述される。図の矢印Stは、図28BのステップSG1-SG9の方向を示し、図の矢印Ctは、ロボットの基本動作の繰り返し(例えば基本姿勢からねじを掴み基板にねじを取り付け、基本姿勢に戻る工程の繰り返し)を示す。
【0339】
したがって、蓄積データ(特定情報)は、どのロボットにおいて、何時のステップで、どのフィードバックループが異常停止したか、どのフィードバックループが設定時間をオーバーしたか、どのフィードバックループでどのような音があったか、どのフィードバックループで臭気が発生したかなどを含む。また、各フィードバックループで得られた「差の値」も蓄積データにふくまれる。「差の値」は、許容値α内であることが検出された時点のデータである。
【0340】
さらに、ロボットが有するカメラ映像4002、先に説明した目標値4003、異常停止履歴4004、ループ運転の最大時間(設定時間)を超えた場合の設定時間オーバー履歴4005も格納されている。
【0341】
さらにまた、ステップSG1-SG9の中で、1つのステップの処理が要した所要時間もテーブル内に記録されている。
【0342】
図29では、説明のために電子頭脳E300の内部を簡素化して示している。フィードバックマネージャ4010は、図2Aでは、プラットフォームに設けられ、フィードバックループを介して特定情報を取得する情報取得部K111と、前記特定情報を解析する情報解析部K112などに相当する。また、図4では、自律的な制御部E500の内部の取得部E501、解析部E502,制御部E503などに相当する。
【0343】
フィードバックループマネージャ4010は、格納部4001のデータを読み取りフィードバックループの評価を行う。評価内容や評価方法は、結果を使用する目的に応じて異なる。
【0344】
<フィードバックループの評価に基づきロボットの特性を判断>
上記の蓄積データは、フィードバックループの評価を行い、その結果、例えばロボットの特性を判断するのに有効なデータである。「差の値」が小さいほど、ロボットの制御精度(ロボットの動作位置が予定の位置に極めて近く)が高精度であり比較的安定していることになる。「差の値」が大きいほど、ロボットの制御がラフである、又は設定した目標値がずれている、又は、センサ出力値又はセンサ取り付け位置がずれている、ことを考慮する必要がある。また「差の値」が時間経過とともに、小から大に変化している場合は、ロボットの制御精度が高精度からラフに変化したことを考慮する必要がある。
【0345】
さらにまた、ステップSG1-SG9の中で、1つのステップの所要時間が短いロボットは、作業効率が良いと判断できる。
【0346】
電子頭脳(システム制御部)E300のフィードバックマネージャ4010は、フィードバックループ評価器4011と、その評価データ格納器4012を含む。
【0347】
フィードバックループ評価器4011は、上記したフィードバックループデータ格納部4001のデータを参照して、各ロボットの特性を評価し、その評価データを評価データ格納器4012に格納する。ロボットの特性は、例えば、当該ロボットの作業内容に応じて評価可能である。つまりロボットに各種の作業を行わせ、作業に応じた目標値を準備することができる。
【0348】
上記の蓄積データはまた、同じ機種のロボットを比較する場合も有効に活用することができる。
【0349】
例えば、テイストケースとして、一方のロボットを動作させるときの目標値を、他のロボットを動作させるときの目標値として使用する。そして、2つのロボットに同じ作業を行わせる。その後、それぞれのロボットのフィードバックループデータ(蓄積データ)を比較する。
【0350】
第1のロボットと第2のロボット間で、蓄積データの違いがあった場合、どの作業ステップにおいて、どのフィードバックループの差の値に違いを生じているかを見つけることができる。このことは、前記差の値に違いを生じたフィードバックループが配備されている例えば第2のロボットにおいて、当該フィードバックループが関係しているロボット機構が影響しているかもしれない。そこで、第2のロボットの修理、点検を行う場合に、「当該差の値の違い」が有効な参考データとなる。また次の第3のロボットを製造する場合の参考データとなり得る。
【0351】
また他の例として、第1のロボットのフィードバックループの目標値を、匠が調整することもあり得る。そして、調整された目標値を、第2のロボットのフィードバックループの目標値として利用することもある。これにより、匠の技が、第1のロボットから第2のロボットに移植され得る。
【0352】
さらに他の例として、ロボットの作業内容に応じて、フィードバックループを束ねて利用する場合、或は、束ねたフィードバックループを分離して利用することは多々あり得る。この場合、ロボットの利用環境に応じて、各フィードバックループの蓄積データやその蓄積データに対応する目標値を種々備えておくことで、ロボットの作業の切り替え、複数ロボット複合利用が円滑となる。
【0353】
上記したように、本システムにおけるフィードバックループにおいては、フィードバックループに使用されたデータ(目標値)、フィードバックループのセンサと目標値の差の値、複数のフィードバックループの制御を含む機械(ロボット)動作の1ステップ当たりの所要時間などを参照データとして蓄積し、少なくとも1つのフィードバックループの評価を可能としている。
【0354】
上記したCPSは、種々のアスペクトにおける有用な特徴を多数備えている。以下まとめを記載する。
【0355】
A1)製造プロセスおよびまたはサービスにおける稼働制御を自律的に行う情報管理システムであって、
サイバーフィジカルシステムの第1のフィードバックループを構築するループ接続部と、
前記製造プロセスに必要な特定情報を前記第1のフィードバックループから取得する情報取得部と
前記特定情報を解析する情報解析部と、
前記情報解析部で取得した解析結果に基づき、前記稼働制御を自律的に行わせる自律稼働制御部と、
前記ループ接続部と前記自律稼働制御部が協働して構築されるものであり、新たな前記解析結果に応答して新規な第2のフィードバックループを形成するループ連携制御部と、
を備えることを特徴とする情報管理システム。
【0356】
なお前記新規な第2のフィードバックループは、今までに存在したが利用されていなかったフィードバックループが改めて起動されたものであってもよい。或は、前記新規な第2のフィードバックループは、今までに存在しなかった新しいフィードバックループが形成されたものであってもよい。或は、前記新規な第2のフィードバックループは、複数のフィードバックループが束ねられ形成されたものであってもよい。或は、前記複数のフィードバックループは、既存のフィードバックループと新しいフィードバックループの束、または複数の既存の第2のフィードバックループの束、または複数の新しいフィードバックループの束のいずれかの束であってもよい。
【0357】
A2)前記情報解析部と前記ループ接続部は、前記第1のフィードバックを、製造プロセスである第1の制御対象を制御するための第1の制御ループとして構築し、前記情報解析部と前記ループ連携接続部とは、前記第2のフィードバックループを、前記製造プロセスとは異なる第2の制御対象を制御する第2の制御ループとして構築する、(A1)に記載の情報管理システム。
【0358】
A3)前記情報解析部と前記ループ連携制御部は、前記第2のフィードバックループの制御目的が完了した場合、前記第2のフィードバックループを解除する、(A2)に記載の情報管理システム。
【0359】
A4)前記情報解析部と前記ループ連携制御部は、前記第2のフィードバックループによる制御結果を解析し、解析内容に応じて、さらに、第3のフィードバックループを、前記第1の制御ループおよび前記第2の制御ループの制御対象とは異なる第3の制御対象を制御する第3の制御ループとして構築する、請求項(A2)または(A3)に記載の情報管理システム。
【0360】
A5)少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ制御は、発電プラントの発電制御システムに適用されている(A1)乃至A4)のいずれかに記載の情報管理システム。
【0361】
A6)少なくとも前記第1のフィードバックループ、前記第2のフィードバックループによるループ制御は、車または家電製品のいずれか1つの制御システムに適用されている請求項(A1)乃至(A4)のいずれかに記載の情報管理システム。
【0362】
A7)上記の特定情報は、基本的なデータに対して、さらに経験およびまたは熟練により得られた熟練者の調整データを含む。
【0363】
A8)前記特定情報は、人間の五感情報を含む、または、人間に装着された生体センサから取得したデータを解析し生成したもの、または、
再生エネルギー生産情報、消費情報、環境負荷情報の少なくとも1つを含むものであり、または、
前記フィードバックループは、パーソナルな情報で構築されるデジタルツイン(デジタルダブル)を含むものであり、または、
前記情報解析部は、人間の能力や経験をモデル化した匠データモデルに基づき前記特定情報の解析を行うものである、または、
前記自律稼働制御部は、前記解析結果に基づき、対象製品の製造に最適な製造ラインを選択するものであり、または、
製造ラインは、少なくとも3Dプリンティング機能を備え、リモートからの製品製造リクエストを少なくとも含む前記特定情報に基づき製品製造を行うものであり、または、
前記製造プロセスは、第1の製造プロセスと第2の製造プロセスを含み、前記自律稼働制御部は、前記第1の製造プロセスで得られた第1の特定情報を前記第2の製造プロセスのフィードバックループに反映させる手段を含む、または上記の項目を組み合わせたものを含むものである。
【0364】
B1)サイバーフィジカルシステムのサイバー空間を形成する装置の形成方法であって、前記サイバーフィジカルシステムの第1のフィードバックループを接続するループ接続ステップと、製造プロセスおよびまたはサービスに必要な特定情報を前記第1のフィードバックループから取得する情報取得ステップと、前記特定情報を解析する情報解析ステップと、前記情報解析部で取得した解析結果に基づき、前記稼働制御を自律的に行わせる自律稼働制御ステップと、
前記ループ接続ステップに含まれ、前記自律稼働制御ステップの新たな解析結果に応答して新規な第2のフィードバックループを構築するループ連携制御ステップと、を備える。
【0365】
C1)サイバーフィジカルシステムのサイバー空間を形成する装置である。前記サイバーフィジカルシステムのフィードバックループを接続するループ接続部と、工場或は施設の製造プロセスおよびまたはサービス業に必要な特定情報を前記フィードバックループから取得する情報取得部と、前記特定情報を解析する情報解析部と、前記情報解析部で取得した解析結果に基づき、稼働制御を自律的に行わせる自律稼働制御部と、を備える。そして前記自律稼働制御部の統合制御部は、前記工場或は施設に待機するロボットに対して、前記工場或は施設の外へ出動するように指令を出す機能を備える。
【0366】
C2)前記自律稼働制御部の前記統合制御部は、前記出動するロボットの移動系路の案内情報として、熟練者である警察からの情報を参照する。
【0367】
D1)サイバーフィジカルシステムのサイバー空間を形成する装置である。ループ接続部と、情報取得部と、情報解析部と、自律稼働制御部と、を備えるもので、前記フープ接続部は、フィジカル空間の複数のエッジコンピュータまたはゲートウェイと接続されており、第1のエッジコンピュータまたはゲートウェイから得られた第1のプログラムと第2のエッジコンピュータまたはゲートウェイから得られた第2のプログラムとの同一性または違いを検出する統合制御部を備える。
【0368】
D2)前記違いに応じて、いずれか一方のエッジコンピュータ側で用いるプログラムのパラメータを他方のエッジコンピュータ側に移植する手段を有する。 D3)前記移植は、第1の発電プラントから第2の発電プラントに対して行われる。 D4)前記第1およびまたは第2の発電プラントは、原子力、火力、再生可能エネルギーお用いるプラントである。
【0369】
E1)サイバーフィジカルシステムのサイバー空間を形成する装置である。ループ接続部と、情報取得部と、情報解析部と、自律稼働制御部と、を備えるもので、前記ループ接続部は、フィジカル空間の複数のエッジコンピュータまたはゲートウェイと接続されている。前記複数のエッジコンピュータまたはゲートウェイの移動位置に応じて、異なるプログラムを当該エッジコンピュータまたはゲートウェイに自律的に与え得る制御部を備える。
【0370】
E2)前記複数のエッジコンピュータは、それぞれ輸出或は輸入される装置に搭載されている。 E3)前記移動位置は、第1の移動位置と第2の移動位置とで地域の法律が異なり、前記異なるプログラムは、それぞれ前記第1の移動位置と前記第2の移動位置の各ルールに適合するように制御対象を制御するものである。
【0371】
F1)サイバーフィジカルシステムのサイバー空間を形成する装置である。ループ接続部と、情報取得部と、情報解析部と、自律稼働制御部と、を備えるもので、前記フープ接続部は、フィジカル空間の複数のエッジコンピュータと接続されている。前記複数のエッジコンピュータを属する業種により分類して管理する統合制御部を有する。 F2)前記統合制御部は、前記複数のエッジコンピュータから送信されるそれぞれの電力消費量を比較する可視化用データを作成する。 F3)前記統合制御部は、前記複数のエッジコンピュータからアップされるセンサ識別データを受け取り、前記複数のエッジコンピュータの識別データと、前記複数のエッジコンピュータにそれぞれ管理されているセンサの前記識別データとを、テーブルに配置し、前記識別データを監視することで、プラグイン、プラグアウトを判定する手段を有する。
【0372】
G1)サイバーフィジカルシステムのサイバー空間を形成する装置である。ループ接続部と、情報取得部と、情報解析部と、自律稼働制御部と、を備えるもので、前記フープ接続部は、フィジカル空間の複数のエッジコンピュータと接続されている。前記複数のエッジコンピュータを属する業種により分類して管理する統合制御部を有する。さらに業種ごとの使用エネルギー量を算出し、可視化を行う制御を行う手段を備える。
【0373】
J1)(垂直統合)(図2A
フィジカル空間(E100)のエッジ装置E900と、
サイバー空間(E200)のプラットフォームK100と、
前記エッジ装置と前記プラットフォームとの間に設けられたフィードバックループと、
前記プラットフォームに設けられ、前記フィードバックループを介して特定情報を取得する情報取得部K111と
前記特定情報を解析する情報解析部K112と、
前記情報解析部で解析した解析結果に基づき、前記フィジカル空間の装置に対して稼働制御およびまたはサービスを自律的に行わせる自律的な操作部K113と、
を有した情報管理システム。
【0374】
J2)(0065)(環境負荷を軽減)
上記のJ1において、前記解析結果により得られるデータは、前記装置が稼働することによる環境負荷を軽減するデータであり、前記装置の周囲環境の風量、温度、湿度のいずれか若しくは組み合わせを制御するデータである。 J3)(図12A)(環境負荷を軽減)上記のJ1において、前記解析結果により得られるデータは、前記装置が稼働することで生じる環境負荷を、軽減するためのデータであり、前記装置の電力使用量を制御するデータである。 J4)(図12B)(環境負荷を軽減)上記のJ1において、前記解析結果により得られるデータは、前記装置および前記装置とは異なる装置が稼働することで生じる総合使用電力を、抑制するために、前記異なる装置に対して電力使用量を低減することの協力要請を行うデータである。
【0375】
J5)(図2C)(五感情報を利用)
上記のJ1において、前記解析結果により得られるデータは、
前記装置により製造される製品の品質を維持するため、およびまたは前記装置の動作の安定動作を制御するためデータであり、前記装置を操作する作業者の五感情報の一部が反映されたデータである。J6)(柔軟性(五感情報利用・環境負荷を軽減も含む))上記のJ1において、前記解析結果により得られるデータは、前記装置で使用されるプログラムの切り替えを実行させるためのデータである。J7)(図2C図5B) 上記のJ5において、前記作業者の前記五感情報は、少なくとも視覚、聴覚、触覚、臭覚の情報のうちの1つまたは組み合わせである。
【0376】
K1)(垂直統合+サービス・・・独立)(図2A乃至図2E)(第1のフィードバックループと第2のフィードバックループ)
フィジカル空間E100のエッジ装置E900と、サイバー空間E200のプラットフォームK100と、前記サイバー空間E200のサービス部K200と、前記エッジ装置と前記プラットフォームとの間に設けられた第1のフィードバックループと、前記エッジ装置と前記サービス部との間に設けられた第2のフィードバックループと、前記プラットフォームに設けられ、前記第1のフィードバックループを介して特定情報を取得する情報取得部K111と、前記特定情報を解析する情報解析部K112と、前記情報解析部で解析した解析結果に基づき、前記フィジカル空間の装置に対して稼働制御およびまたはサービスを自律的に行わせる自律的な操作部K113と、前記サービス部に設けられ、前記エッジ装置からの検出情報およびまたは前記自律的な制御部から前記解析結果の情報を受け取り、前記検出情報およびまたは前記解析結果の情報に基づき調整された調整情報を前記第2のフィードバックループを介して前記エッジ装置へ返還するシステムオブシステムズ部K213と、を備える。
【0377】
K2)上記K1に対して、上記J2からJ7のいずれか1つまたはその組み合わせを適用することが可能である。K3)(図2D)上記(K1)において、前記第2のフィードバックループK510は、その途中にユーザドメイン(K300)とサービス部(K200)を含み、前記調整情報は、前記ユーザドメイン(K300)から入力されたデータの影響を受けている。
【0378】
L1)(水平統合)(図1B図1C)、(図14A図14C
フィジカル空間E100のエッジ装置E900と、
サイバー空間E200のプラットフォームK100と、
前記エッジ装置と前記プラットフォームとの間に設けられた第1のフィードバックループと、
前記プラットフォームに設けられ、前記第1のフィードバックループを介して第1の特定情報を取得する第1の情報取得部K111と
前記第1の特定情報を解析する第1の情報解析部K112と、
前記情報解析部で解析した第1の解析結果に基づき、前記フィジカル空間の第1の装置に対して稼働制御およびまたはサービスを自律的に行わせる第1の自律的な操作部K113と、
前記エッジ装置と前記プラットフォームとの間に設けられた第2のフィードバックループと、
前記プラットフォームに設けられ、前記第2のフィードバックループを介して第2の特定情報を取得する第2の情報取得部K111と
前記第2の特定情報を解析する第2の情報解析部K112と、
前記情報解析部で解析した第2の解析結果に基づき、前記フィジカル空間の第2の装置に対して稼働制御およびまたはサービスを自律的に行わせる第2の自律的な操作部K113と、
前記第1と第2の自律的な制御部を連携させて、前記第1の解析結果と前記第2の解析結果の相違を判定し、前記相違に応じて設定される制御データを、前記第1または前記第2のフィードバックループを介して前記第1の装置または第2の装置に反映させる統合制御部E504、E505と、を有した情報管理システム。
【0379】
L2)(図14C)前記制御データは、前記第1の装置または前記第2の装置が使用するプログラムに関する制御データおよびまたはパラメータである。L3)(環境負荷の低減)(図15図16A図16B)前記制御データは、リユース材料または部品または装置、またはリサイクル材料または部品または装置に関するデータである。 L4)(図17A図17B図18)前記統合制御部は、さらに前記第2の装置から製品の製造に関する支援要求の情報があった場合、前記支援要求の情報の内容を判定し、前記第2の装置が構成する製造ラインの製造工程の制御を実施する、制御データを出力する。 L5)(図18)前記統合制御部は、さらに前記第2の装置から製品の製造に関する支援要求の情報があった場合、前記支援要求の情報が、「部品の調達要求」、「作業員要求」、「製造ラインの製造工程の制御に関する要求」、「製造ロボット修理部品要求」のいずれか1つまたは複数であるかを判定する。
【0380】
L6)上記L1の前記第1の解析結果およびまたは第2の解析結果に対して、上記J2からJ7のいずれか1つまたはその組み合わせを適用することが可能である。 L7)上記のL1において、前記解析した第1の解析結果は、前記装置が稼働することによる環境負荷を軽減するデータであり、前記第1の装置の周囲環境の風量、温度、湿度のいずれか若しくは組み合わせを制御するデータである。 L8)上記のL1において、前記解析した第1の解析結果は、前記第1の装置により製造される製品の品質を維持するためのデータであり、前記第1の装置の動作音およびまたは前記第1の装置を操作する作業者の五感情報の一部が反映されたデータである。 L9)上記のL1において、前記第1の特定情報は第1のプログラムおよびプログラムで用いる第1のパラメータ、第2の特定情報は第2のプログラムおよびプログラムで用いる第2のパラメータである。
【0381】
M1)(図19)発電プラントに対する情報管理システムであって、サイバー空間に配置されており、
第1の発電プラントの制御プログラムに関する第1の情報と、第2の発電プラントの制御プログラムに関する第2の情報をそれぞれのエッジコンピュータから受け取る第1の制御部と、前記第1の制御部により、前記第1の情報と前記第2の情報とを解析し、前記解析結果に応じて、前記第2の発電プラントの前記エッジコンピュータに対して、前記制御プログラムに関する調整データを自律的にフィードバックする自律制御する第2の制御部とを備える、情報管理システム。
【0382】
N1)(図2F)物流センターの物流管理に対する情報管理システムであって、サイバー空間に配置されており、
フィジカル空間に配置されているエッジコンピュータから、荷下ろし、荷物の運搬、荷物の格納、荷物の取り出し、荷物の荷積みの各作業を行うそれぞれのロボットの制御状態を示すデータを受け取り、前記それぞれのロボットが、設定されているロボット制御プログラムに準じて機能するようフィードバックを行う、第1の制御部E521と、
前記物流センターに入庫した荷物の中からロボットの作業に適する荷物を識別し、前記荷下ろしを実行させるための情報を前記ロボット制御プログラムに通知する、第2の制御部E522と、
前記第1の制御部E521および第2の制御部E522からの通知データC15を介して、作業実績の情報を受け取り、前記作業実績に応じて前記物流センター内の荷物の在庫管理、入庫、出庫管理のための情報を、前記第2の制御部E522にフィードバックする第3の制御部E523を備える。
【0383】
O1)(図20)輸出および輸入する装置に対する情報管理システムであって、サイバー空間に配置されており、
フィジカル空間に配置されている前記装置のエッジコンピュータから、位置情報および前記装置で用いられる制御プログラムの情報を受け取り、第1の制御プログラムを前記装置に設定する第1の制御プログラム管理部と、
前記装置が目的の輸入先に到着したら、前記第1の制御プログラムとは異なる第2の制御プログラムを前記装置に設定する第2の制御プログラム管理部と、を備える。
【0384】
P1)(図17A図17B図18)製造過程に複数のロボットを順次配置している製造ラインに対する情報管理システムであって、サイバー空間に配置されており、
複数の工場のエッジコンピュータから製品の製造に関する支援要求情報を判断する第1の制御部と、
前記第1の制御部の内容が、部品調達、作業員要求、製造ライン要求、製造ロボットの修理部品要求の少なくともいずれかであることを判断する第2の制御部と、
前記判断が、前記製造ライン要求であった場合、前記要求している工場の製造ラインと同じ製造ラインを有する他の工場の管理者へ前記要求を通知するとともに、前記要求している工場の管理者へも通知する第3の制御部を備える。
【0385】
Q1)(図21)工場で作業するロボットを管理する情報管理システムであって、サイバー空間に配置されており、
前記工場とは異なる地域のエッジコンピュータから、支援要求があった場合、前記工場
の前記ロボットの制御プログラムを変更し、前記異なる地域に出動させる制御部を備える。
【0386】
R1)(図25)複数のサイバー空間と、それぞれのサイバー空間に接続されているフィジカル空間のエッジコンピュータと、を管理する情報管理システムであって、
前記エッジコンピュータの分類を前記エッジコンピュータが所属する業種を識別した分類区分にしている第1の制御部と、
前記エッジコンピュータから送られてきた電力消費情報を、前記業種別に識別するデータ処理を行う第2の制御部と、を備える。
【0387】
Z1)上記した各J~Rの記載の組み合わせを持つサイバーフィジカルシステムおよびサイバーフィジカル方法。
【0388】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。さらにまた、請求項の各構成要素において、構成要素を分割して表現した場合、或いは複数を合わせて表現した場合、或いはこれらを組み合わせて表現した場合であっても本発明の範疇である。また、複数の実施形態を組み合わせてもよく、この組み合わせで構成される実施例も発明の範疇である。
【0389】
また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、模式的に表される場合がある。また請求項を制御ロジックとして表現した場合、コンピュータを実行させるインストラクションを含むプログラムとして表現した場合、および前記インストラクションを記載したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として表現した場合でも本発明の装置を適用したものである。また、使用している名称や用語についても限定されるものではなく、他の表現であっても実質的に同一内容、同趣旨であれば、本発明に含まれるものである。例えば、サイバー空間E200内のFAE300は、ループ接続部と、情報取得部と、特定情報を解析する情報解析部と、解析結果に基づき、稼働制御を自律的に行わせる自律稼働制御部と、前記ループ接続部と前記自律稼働制御部が協同し、新たな前記解析結果に応答して新規な第2のフィードバックループを構築するループ連携制御部をソフトウエアにより構成してもよい。そしてこれらのソフトウエアが、記録媒体(メモリ)に格納されていてもよい。
【符号の説明】
【0390】
A1・・・センシングデータ、A41、A42・・・フィードバックループデータ、A411・・・自社のデータを活用する系路、A412・・・他社のデータを活用する系路、
A420、A430・・・データ流通、E100・・・サイバー空間、E200・・・フィジカル空間、E900・・・エッジコンピュータ、K100・・・プラットフォーム、
K200・・・エンタープライズサービス、K111・・・データ部(Data)、
K112・・・解析部(Analytics)、K113・・・操作部(Operations)、
K211・・・サービス部(Service)、K212・・・ビジネス部(Business)、K213・・・システムオブシステムズ部(System of Systems)、K300・・・他のドメイン、K400・・・共通サービス機能、E300・・・電子頭脳(Artificial Intelligence;AI)、E310・・・データ蓄積部、E400・・・シミュレーションエリア、E500・・・自律的な制御部、E501・・・情報取得部、E502・・・情報解析部、E503・・・自律稼働制御部、E601・・・変動情報取得部、E602・・・研究情報取得部、E700・・・接続部、E800・・・各種処理部。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図28A
図28B
図28C
図28D
図29