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特許7579428監視装置、鞍乗型車両、情報端末、監視方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】監視装置、鞍乗型車両、情報端末、監視方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241030BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20241030BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20241030BHJP
   B62J 45/40 20200101ALI20241030BHJP
   B62J 50/20 20200101ALI20241030BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20241030BHJP
【FI】
G08G1/16 F
B60R11/04
B62J45/00
B62J45/40
B62J50/20
B62J27/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023508769
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2022005584
(87)【国際公開番号】W WO2022201957
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021049129
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩丸 虎喜
(72)【発明者】
【氏名】武智 崚
(72)【発明者】
【氏名】西岡 修
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107798(JP,A)
【文献】特開2010-073027(JP,A)
【文献】特開2001-030971(JP,A)
【文献】特開2010-033409(JP,A)
【文献】特開2016-136332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60R 9/00 - 11/06
B60J 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両に搭載され、前記鞍乗型車両の運転者および/または前記鞍乗型車両の異常を監視する監視装置であって、
前記運転者および前記鞍乗型車両の状況を示す状況情報を取得する取得手段と、
前記取得手段で取得された状況情報に基づいて所定の状況を検出した場合に、前記異常が発生したと判断する判断手段と、
を備え、
前記状況情報は、前記鞍乗型車両のシートに着座している前記運転者を撮影可能で且つ前記鞍乗型車両に設けられた第1撮影部で得られる第1画像と、前記鞍乗型車両の周囲を撮影可能で且つ前記鞍乗型車両に設けられた第2撮影部で得られる第2画像とを含み、
前記所定の状況は、前記運転者が前記シートに着座していない第1状況と、前記鞍乗型車両の周囲において前記運転者が路上に横たわっている第2状況とを含み、
前記判断手段は、前記取得手段で取得された前記第1画像に基づいて前記第1状況を検出し、且つ、前記取得手段で取得された前記第2画像に基づいて前記第2状況を検出した場合に、前記異常として、前記運転者による前記鞍乗型車両の運転中での前記鞍乗型車両の転倒が発生したと判断する、ことを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記第1状況は、前記運転者がハンドルを把持していない状況も含む、ことを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記第1画像に基づいて前記第1状況が検出され、且つ前記第2画像に基づいて前記第2状況が検出されなかった場合、前記運転者が無事であると判断する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記所定の状況は、前記鞍乗型車両のイグニッションがオンしている第3状況と、前記鞍乗型車両が転倒状態であるとの第4状況とを更に含み、
前記判断手段は、前記第2状況の代わりに、前記取得手段で取得された前記状況情報に基づいて前記第3状況および前記第4状況を検出した場合に、前記運転者による前記鞍乗型車両の運転中での前記鞍乗型車両の転倒が発生したと判断する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記状況情報は、イグニッションキーを撮影可能なカメラで得られた画像、イグニッションキーの位置、前記鞍乗型車両に搭載されたバッテリの状態のうち少なくとも1つを示す情報を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の監視装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記イグニッションの位置がオフ位置にある場合、前記運転者による前記鞍乗型車両の運転中での前記鞍乗型車両の転倒が発生しておらず、前記鞍乗型車両から運転者が降車したと判断する、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の監視装置。
【請求項7】
前記判断手段は、前記第1状況および前記第3状況を検出し、かつ前記第4状況を検出しない場合、前記運転者が前記イグニッションをオフにし忘れたと判断する、ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項8】
前記判断手段により前記異常が発生したと判断された場合に前記異常を報知する報知手段を更に備え、
前記判断手段は、前記取得手段で取得された前記状況情報に基づいて前記異常の種類を決定し、前記異常の種類に応じて、前記報知手段による報知態様を変更する、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項9】
前記第1撮影部および前記第2撮影部は、前記鞍乗型車両に備えられている、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の監視装置を備える鞍乗型車両。
【請求項11】
鞍乗型車両と通信可能に接続された情報端末であって、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の監視装置を備え、前記鞍乗型車両から前記状況情報を取得する、ことを特徴とする情報端末。
【請求項12】
鞍乗型車両の運転者および/または前記鞍乗型車両の異常を監視する監視方法であって、
前記運転者および前記鞍乗型車両の状況を示す状況情報を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された状況情報に基づいて所定の状況を検出した場合に、前記異常が発生したと判断する判断工程と、
を含み、
前記状況情報は、前記鞍乗型車両のシートに着座している前記運転者を撮影可能で且つ前記鞍乗型車両に設けられた第1撮影部で得られる第1画像と、前記鞍乗型車両の周囲を撮影可能で且つ前記鞍乗型車両に設けられた第2撮影部で得られる第2画像とを含み、
前記所定の状況は、前記運転者が前記シートに着座していない第1状況と、前記鞍乗型車両の周囲において前記運転者が路上に横たわっている第2状況とを含み、
前記判断工程では、前記取得工程で取得された前記第1画像に基づいて前記第1状況を検出し、且つ、前記取得工程で取得された前記第2画像に基づいて前記第2状況を検出した場合に、前記異常として、前記運転者による前記鞍乗型車両の運転中での前記鞍乗型車両の転倒が発生したと判断する、ことを特徴とする監視方法。
【請求項13】
請求項12に記載の監視方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者および/または鞍乗型車両の異常を監視する監視技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載されたドライブレコーダから送信される事故発生時の前後の映像または音声に基づいて事故状況を解析し、その解析結果を緊急救急センタに送信する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-123814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、事故状況を解析するにあたり、ドライブレコーダで得られた映像または音声に対して高度な(複雑な)処理が必要である。しかしながら、例えば鞍乗型車両では、車両コストの増加を抑制するとの観点から、運転者および/または車両の異常(転倒など)を単純な構成・処理で精度よく検出することが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、運転者および/または車両の異常を単純な構成・処理で精度よく検出するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての監視装置は、鞍乗型車両に搭載され、前記鞍乗型車両の運転者および/または前記鞍乗型車両の異常を監視する監視装置であって、前記運転者および前記鞍乗型車両の状況を示す状況情報を取得する取得手段と、前記取得手段で取得された状況情報に基づいて所定の状況を検出した場合に、前記異常が発生したと判断する判断手段と、を備え、前記状況情報は、前記鞍乗型車両のシートに着座している前記運転者を撮影可能で且つ前記鞍乗型車両に設けられた第1撮影部で得られる第1画像と、前記鞍乗型車両の周囲を撮影可能で且つ前記鞍乗型車両に設けられた第2撮影部で得られる第2画像とを含み、前記所定の状況は、前記運転者が前記シートに着座していない第1状況と、前記鞍乗型車両の周囲において前記運転者が路上に横たわっている第2状況とを含み、前記判断手段は、前記取得手段で取得された前記第1画像に基づいて前記第1状況を検出し、且つ、前記取得手段で取得された前記第2画像に基づいて前記第2状況を検出した場合に、前記異常として、前記運転者による前記鞍乗型車両の運転中での前記鞍乗型車両の転倒が発生したと判断する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、運転者および/または車両の異常を単純な構成・処理で精度よく検出するために有利な技術を提供することができる。
【0008】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】情報端末を鞍乗型車両に搭載した例を示す図
図2】監視装置を含むシステムの構成例を示すブロック図
図3】車両における撮影部(カメラ)の配置例を示す図
図4】車両の運転中の異常を監視する監視処理を示すフローチャート
図5A】撮影部で得られた画像の一例を示す図
図5B】撮影部で得られた画像の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内での構成の変更や変形も含む。また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明に必須のものとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、その説明を省略する。
【0011】
<第1実施形態>
以下に、本発明に係る監視装置を鞍乗型車両に適用する例について説明する。本発明に係る監視装置は、運転者および/または車両の異常(例えば転倒など)を監視し、当該異常を検知するための装置である。以下の実施形態では、鞍乗型車両として自動二輪車を例示して説明するが、三輪車などの他の形式の鞍乗型車両、四輪車など鞍乗型以外の車両にも、本発明に係る監視装置を適用することができる。また、当該監視装置は、車両に設けられた車載装置として構成されてもよいが、本実施形態では情報端末(携帯端末)として構成されうる。情報端末とは、例えば、近年において一般に広く普及しているスマートフォンやタブレット端末など、通信機能や通話機能などの様々な機能を有する機器のことであり、例えば図1に示されるように、専用の保持機構HMにより鞍乗型車両Vに対して着脱可能に構成されうる。図1は、専用の保持機構HMを用いて、携帯端末としての情報端末20を鞍乗型車両Vに搭載した例を示している。
【0012】
図2は、本実施形態の監視装置を含むシステム100の構成例を示すブロック図である。本実施形態のシステム100は、車両Vに搭載された車載装置10と、当該車両Vの運転者(ユーザ)が所有する情報端末20とを含みうる。本実施形態において、情報端末20は、運転者および/または車両Vの異常を監視する監視装置として理解されてもよい。車載装置10と情報端末20とは、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)などの通信方式を用いて相互に通信可能に接続されうるが、インターネットを介して相互に通信可能に接続されてもよい。
【0013】
まず、車両Vに搭載された車載装置10の構成例について説明する。車載装置10は、例えば、システムバス16を介して相互に通信可能に接続された処理部11、記憶部12、撮影部13、状態検知センサ14、および通信部15を含みうる。処理部11は、例えばECU(Electronic Control Unit)であり、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含みうる。記憶部12には、プロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納されており、処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラムをメモリ等の記憶デバイスに読み出して実行することができる。
【0014】
撮影部13は、例えばカメラを含み、車両Vの一部(運転者)および/または車両Vの周囲を撮影して画像(映像)を取得するように車両Vに設けられる。例えば、撮影部13は、静止画を繰り返し(例えば周期的に)取得するように撮影を行ってもよいし、動画を取得するように撮影を行ってもよい。本実施形態の撮影部13は、図3に示すように車両Vに配置された複数のカメラ13a~13fを含みうる。図3は、鞍乗型車両としての車両Vを上方から見た図であり、車両Vにおける撮影部13(カメラ13a~13f)の配置例を示している。図中において、破線の扇形状は各カメラの撮影方向(撮影範囲)を表しており、「FR」は車両Vの前方、「RR」は車両の後方をそれぞれ示している。
【0015】
図3に示す例において、カメラ13a~13bは、車両Vを運転している運転者を撮影可能に車両Vに配置されたカメラ(第1撮影部)である。カメラ13aは、車両Vの後部の画像を取得するように車両Vに設けられており、シート32に着座している運転者の前面を撮影する。カメラ13bは、車両Vの前部の画像を取得するように車両Vに設けられており、シート32に着座している運転者の背面を撮影する。本実施形態の場合、カメラ13a~13bは、ハンドル31(左右のグリップ)やシート32(運転席)、イグニッションキー33を撮影可能に配置されうる。また、カメラ13c~13fは、車両Vの周囲を撮影可能に車両Vに配置されたカメラ(第2撮影部)である。カメラ13cは車両Vの前方を、カメラ13dは車両Vの後方を、カメラ13eは車両Vの左側方を、カメラ13fは車両Vの右側方をそれぞれ撮影しうる。
【0016】
状態検知センサ14は、車両Vの各種状態を検知するセンサである。例えば、状態検知センサ14は、車両Vの現在位置を検知する位置センサ(GPSセンサ)、車両Vの速度を検知する速度センサ、車両Vの加速度を検知する加速度センサ、車両Vの姿勢(傾き)を検知する姿勢センサ(傾きセンサ)を含みうる。また、状態検知センサ14は、車両Vのイグニッションの状態(オン状態またはオフ状態)を検知するセンサ、停車時に車両Vを自立させるためのサイドスタンドの位置を検知するセンサなどを含んでもよい。
【0017】
通信部15は、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)などの通信方式を用いて情報端末20と通信する。具体的には、通信部15は、情報端末20に情報を送信する送信部としての機能と、情報端末20から情報を受信する受信部としての機能とを有しうる。
【0018】
次に、監視装置として構成される情報端末20の構成について説明する。情報端末20は、前述したように、スマートフォンやタブレット端末など、車両Vの車載装置10と情報の送受信を行うことができる機器(装置)であり、システムバス26を介して相互に通信可能に接続された処理部21、記憶部22、報知部23、入出力部24、および通信部25を含みうる。
【0019】
処理部21は、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶部22には、プロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納されており、処理部21は、記憶部22に記憶されたプログラムをメモリ等の記憶デバイスに読み出して実行することができる。本実施形態の場合、記憶部22には、運転者および/または車両Vの異常(例えば転倒)を監視するためのアプリケーションプログラム(以下では、監視プログラムと表記することがある)が格納されており、処理部21は、記憶部22に記憶された監視プログラムをメモリ等の記憶デバイスに読み出して実行しうる。つまり、処理部21は、監視プログラムを実行するコンピュータとなりうる。
【0020】
本実施形態の処理部21には、取得部21aと、判断部21bとが設けられうる。取得部21aは、運転者の状況および車両Vの状況を示す状況情報を、撮影部13および/または状態検知センサ14から取得する。状況情報は、運転者および車両Vの現在の状況を示す情報であり、カメラ13a~13b(第1撮影部)により運転中の運転者を撮影することで得られた画像(第1画像)、および/または、カメラ13c~13f(第2撮影部)により車両Vの周囲を撮影することが得られた画像(第2画像)を含みうる。また、状況情報は、状態検知センサ14の各種センサで検知された車両Vの位置、速度、加速度、および姿勢の少なくとも1つの情報を含みうる。状況情報は、車両Vのイグニッションの状態に関する情報や、サイドスタンドの位置に関する情報を含んでもよい。また、判断部21bは、取得部21aで取得された状況情報に基づいて、運転者および/または車両Vに異常(例えば運転中の異常)が生じたか否かを判断する。例えば、判断部21bは、取得部21aで取得された状況情報に基づいて所定の状況を検出した場合に、当該異常が発生したと判断することができる。所定の状況は、異常(転倒)の発生を判断(推定)するために用いられる判断項目として理解されてもよく、その詳細については後述する。
【0021】
報知部23は、異常が発生した旨を報知する。例えば、報知部23は、情報端末20がスピーカを有する場合、当該スピーカから音声を出力することにより異常の発生を報知することができる。また、報知部23は、通信部25を介して車両Vの車載装置10と通信し、車両Vに搭載されたスピーカから音声を出力させたり、車両Vの灯火器(ヘッドライト、テールライト)やハザードランプを点灯・点滅させたりすることにより異常の発生を報知してもよい。報知部23は、情報端末20に搭載されている電話機能やメール機能などを用いて、異常の発生を外部機関(例えば消防署や警察署、保険会社など)に連絡することにより異常の発生を報知してもよい。
【0022】
入出力部24は、運転者(ユーザ)に情報を出力したり、運転者から情報の入力を受け付けたりする。例えば、入出力部24は、表示部(ディスプレイ)および入力部(ボタン)を含むユニットであってもよいし、タッチパネル式ディスプレイであってもよい。また、通信部25は、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)などの通信方式を用いて車両Vの車載装置10と通信する。具体的には、通信部25は、車載装置10に情報を送信する送信部としての機能と、車載装置10から情報を受信する受信部としての機能とを有しうる。
【0023】
[監視処理]
次に、監視プログラムが実行されたときに情報端末20の処理部21で行われる処理(監視処理)のフローについて説明する。図4は、処理部21で行われる監視処理を示すフローチャートである。前述したように、本実施形態の処理部21は、撮影部13および/または状態検知センサ14で得られた状況情報を取得し、当該状況情報に基づいて所定の状況を検出した場合に異常が発生したと判断する。所定の状況とは、状況情報から検出される複数種類の状況の所定の組み合わせによって構成されうる。即ち、処理部21は、状況情報から複数種類の状況の所定の組み合わせが検出された場合に、異常が発生したと判断することができる。当該複数の状況の各々は、異常(転倒)の発生を判断(推定)するために用いられる判断項目として理解されてもよい。なお、本フローチャートは、ユーザ(例えば運転者)が監視プログラムを立ち上げた(起動させた)場合に開始し、ユーザが監視プログラムを立下げない限り繰り返し実行されうる。即ち、本フローチャートは、終了した後もステップS11から新たに開始されうる。また、本フローチャートの実行中、車両Vの車載装置10では、撮影部13による撮影と状態検知センサ14による検知とが周期的に(逐次的に)繰り返し実行されているものとする。
【0024】
ステップS11では、処理部21は、運転者が車両Vを運転中か否かを判断する。具体的には、処理部21(取得部21a)は、撮影部13のカメラ13a~13bから画像(第1画像)を取得する。そして、処理部21(判断部21b)は、カメラ13a~13bから取得した画像(第1画像)に対して公知の画像処理技術を実施することにより、当該画像に基づいて、運転者がハンドル31(左右のグリップの少なくとも一方)を把持している状況か、および/または、運転者が車両Vのシート32(運転席)に着座している状況か否かを判断する。運転者がハンドル31を把持している状況、および/または、車両Vのシート32に運転者が着座している状況を検出した場合、運転者が車両Vを運転中であると判断してステップS11を繰り返す。一方、カメラ13a~13bからの画像において、運転者がハンドル31を把持していない状況、および/または、車両Vのシート32に運転者が着座していない状況を検出した場合、運転者が車両Vを運転していない状況(第1状況)であると判断してステップS12に進む。
【0025】
ステップS12では、処理部21は、車両の周囲で運転者を検出したか否かを判断する。具体的には、処理部21(取得部21a)は、取得部21aにより、撮影部13のカメラ13c~13fから画像(第2画像)を取得する。そして、処理部21(判断部21b)は、カメラ13c~13fから取得した画像(第2画像)に対して公知の画像処理技術を実施することにより、当該画像に基づいて、車両の周囲で運転者を検出したか否かを判断する。一例として、処理部21は、車両Vの運転中にカメラ13a~13bから得られた画像に基づいて、ヘルメットや服の色や模様などの運転者の特徴点を抽出して記憶しておくことにより、本ステップS12でカメラ13c~13fから取得した画像に運転者が映っているか否かを判断することができる。カメラ13c~13fから取得した画像に運転者が映っている場合には、車両Vの周囲で運転者を検出したと判断してステップS13に進む。一方、カメラ13c~13fから取得した画像に運転者が映っていない場合には、車両Vの周囲で運転者を検出しなかったと判断してステップS17に進む。
【0026】
ステップS13では、処理部21は、ステップS12で取得した画像(第2画像)において、運転者が路上に横たわっているか否かを判断する。具体的には、処理部21(判断部21b)は、ステップS12で取得した画像に対して公知の画像処理技術を実施することにより、当該画像に基づいて、運転者が路上に横たわっている状況(第2状況)を検出したか否かを判断する。運転者が路上に横たわっている状況(第2状況)を検出した場合にはステップS14に進み、処理部21は、運転者による車両Vの運転中に異常が発生して運転者が車両Vから投げ出されたと判断する。そして、ステップS15に進み、処理部21は、報知部23によって異常の発生を報知する。報知部23による報知態様としては、前述したように、情報端末20や車両Vのスピーカからの音声の出力、車両Vの灯火器やハザードランプの点灯・点滅、電話機能やメール機能などを用いることによる異常の発生の外部機関への連絡などが挙げられる。
【0027】
一方、ステップS13において、運転者が路上に立っていたり、路上を歩いていたりしている状況などが検出され、運転者が路上に横たわっている状況(第2状況)を検出しなかった場合にはステップS16に進み、処理部21(判断部21b)は、運転者が無事であると判断して終了する。この場合、運転者自身が異常の発生を報知する可能性や、異常が発生していない可能性があるため、本実施形態では、異常の発生の報知を行わずに終了している。
【0028】
ステップS12において車両Vの周囲で運転者を検出しなかったと判断した場合に進むステップS17では、処理部21は、車両Vのイグニッションがオンしている状況(第3状況)か否かを判断する。具体的には、処理部21(取得部21a)は、撮影部13のカメラ13a~13bから画像(第1画像)を取得する。一例として、図5Aは、撮影部13のカメラ13bで得られた画像41を示している。図5Aに示される画像41には、ハンドル31、シート32およびイグニッションキー33の像が含まれている。そして、処理部21(判断部21b)は、カメラ13a~13bから取得した画像(図5Aの画像41)に対して公知の画像処理技術を実施することにより、当該画像からイグニッションキー33の位置(回転位置)がオン位置にあるのか又はオフ位置にあるのかを検出し、車両Vのイグニッションがオンしている状況か否かを判断する。車両Vのイグニッションがオフして状況であると判断した場合にはステップS18に進み、処理部21(判断部21b)は、運転者が車両Vから正常に降車した(即ち、異常が発生していない)と判断して終了する。一方、車両Vのイグニッションがオンしている状況(第3状況)であると判断した場合にはステップS19に進む。
【0029】
ここで、本実施形態のステップS17では、処理部21は、カメラ13a~13bから取得された画像に基づいて、車両Vのイグニッションがオンしている状況か否かを判断したが、それに限られるものではない。車両Vのイグニッションの状態を検知するイグニッション検知センサが状態検知センサ14の1つとして車両Vに設けられている場合、処理部21は、当該イグニッション検知センサから取得されたイグニッションの状態情報に基づいて、車両Vのイグニッションがオンしている状況か否かを判断してもよい。例えば、イグニッション検知センサとして、イグニッションキー33の位置(回転位置)を検知するセンサが用いられている場合には、処理部21は、当該センサから取得されたイグニッションキー33の位置を示す状態情報に基づいて、車両Vのイグニッションがオンしている状況か否かを判断してもよい。また、車両Vが電気車両(EV;Electric Vehicle)である場合には、処理部21は、車両Vに搭載されたバッテリの状態(残量、或いは出力量)を検知するセンサをイグニッション検知センサとして用い、当該センサから取得されたバッテリの状態を示す状態情報に基づいて、車両Vのイグニッションがオンしている状況か否かを判断してもよい。
【0030】
ステップS19では、処理部21は、車両Vが転倒状態である状況(第4状況)か否かを判断する。具体的には、処理部21(取得部21a)は、撮影部13のカメラ13c~13fから取得した画像(第2画像)を取得する。そして、処理部21(判断部21b)は、カメラ13c~13fから取得した画像(第2画像)に対して公知の画像処理技術を実施することにより、当該画像に基づいて、車両Vが転倒状態か否かを判断する。一例として、図5Bは、車両Vが転倒した場合に撮影部13のカメラ13cで得られた画像42を示している。図5Bに示される画像42には、他車両OVの像が含まれている。処理部21は、公知の画像処理技術として、画像42内における被写体(オブジェクト)の特徴点を抽出することにより当該被写体が何の構造物であるか(図5Bでは他車両OV)を特定し、通常時にカメラ13cで得られうる当該構造物(他車両OV)の傾きに対して、画像42内における当該構造物(他車両OV)がどれだけ傾いているのか(傾き量)を算出する。その算出された傾き量が閾値以上である場合に、車両Vが転倒状態である状況と判断することができる。車両Vが転倒状態ではないと判断した場合にはステップS20に進み、処理部21(判断部21b)は、運転者が車両Vから離れる際にイグニッションをオフにし忘れた(即ち、異常が発生していない)と判断して終了する。例えば、処理部21は、車両Vが転倒状態でないと判断してから所定時間においてイグニッションがオンしている場合に、運転者が車両Vから離れる際にイグニッションをオフにし忘れたと判断することができる。一方、車両Vが転倒状態である状況(第4状況)と判断した場合にはステップS14に進み、処理部21(判断部21b)は、異常が発生したと判断した後、ステップS15において報知部23により異常の発生を報知する。
【0031】
ここで、本実施形態のステップS19では、処理部21は、カメラ13c~13fから取得された画像に基づいて、車両Vが転倒状態である状況か否かを判断したが、それに限られるものではない。例えば、車両Vのサイドスタンドの状態(位置)を検知するスタンド検知センサが状態検知センサ14の1つとして車両Vに設けられている場合、処理部21は、当該スタンド検知センサから取得されたサイドスタンドの状況情報に基づいて、車両Vが転倒状態である状況か否かを判断してもよい。また、車両Vの姿勢(傾き)を検知する姿勢センサ(傾きセンサ)が状態検知センサ14の1つとして車両Vに設けられている場合、処理部21は、当該姿勢センサから取得された状況情報(車両Vの姿勢情報)に基づいて、車両Vが転倒状態である状況か否かを判断してもよい。
【0032】
上述したように、本実施形態の監視装置(情報端末20)では、車両Vを運転している運転者を撮影可能な撮影部13のカメラ13a~13b(第1撮影部)で得られた画像(第1画像)を用いて、運転者および/または車両Vの異常を監視(検出、判断)する。これにより、単純な構成・処理で精度よく当該異常を検出することが可能となる。
【0033】
<第2実施形態>
上記実施形態において、処理部21(判断部21b)は、取得部21aにより撮影部13および/または状態検知センサ14から取得した状況情報に基づいて、異常の種類を決定し、当該異常の種類に応じて、報知部23による報知態様を変更してもよい。例えば、図4のフローチャートにおいて、ステップS13で運転者が路上に横たわっている状況を検出したことによって異常の発生を判断した場合(以下、第1の場合と表記する)と、ステップS19で車両Vが転倒状態である状況を検出したことによって異常の発生を判断した場合(以下、第2の場合と表記する)とでは、異常の種類(態様)が異なりうる。具体的には、第1の場合における異常は、運転者が路上に横たわっているというものである。そのため、一例として、救急車を依頼する旨の音声を車両Vの周囲に対して出力したり、救急車を依頼する連絡を消防署に行ったりとの報知態様がとられうる。一方、第2の場合における異常は、車両Vから燃料が漏れている可能性があるというものである。そのため、車両Vから離れる旨の音声を車両Vの周囲に対して出力したり、消防車を依頼する連絡を消防署に行ったりとの報知態様がとられうる。また、第2の場合には、車両Vのイグニッションのオフを依頼する旨の音声を車両Vの周囲に対して出力してもよい。
【0034】
<第3実施形態>
上記実施形態では、情報端末20を、運転者および/または車両Vの異常を監視する監視装置として機能させる例について説明したが、車載装置10を監視装置として機能させてもよい。この場合、情報端末20の処理部21に含まれる取得部21aおよび判断部21bの機能が、車載装置10の処理部11に設けられうる。また、情報端末20の報知部23の機能も、車載装置10に搭載されうる。
【0035】
<その他の実施形態>
また、上記実施形態で説明された1以上の機能を実現するプログラムは、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給され、該システム又は装置のコンピュータにおける1以上のプロセッサは、このプログラムを読み出して実行することができる。このような態様によっても本発明は実現可能である。
【0036】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の監視装置は、
運転者および/または車両(例えばV)の異常を監視する監視装置(例えば20)であって、
前記運転者および前記車両の状況を示す状況情報を取得する取得手段(例えば21a)と、
前記取得手段で取得された状況情報に基づいて所定の状況を検出した場合に、前記異常が発生したと判断する判断手段(例えば21b)と、
を備え、
前記状況情報は、前記車両を運転している前記運転者を撮影可能な第1撮影部(例えば13a~13b)で得られる第1画像を含む。
この実施形態によれば、運転者および/または車両における異常の発生を、単純な構成・処理により精度よく検出(判断)することができる。
【0037】
2.上記実施形態において、
前記所定の状況は、前記運転者が前記車両を運転していない第1状況を含み、
前記判断手段は、前記第1画像に基づいて前記第1状況を検出可能である。
この実施形態によれば、運転者を撮影可能な第1撮影部で得られた第1画像を用いるだけで、運転者が車両を運転していない第1状況を、異常の発生を判断するための判断項目として精度よく検出することができる。
【0038】
3.上記実施形態において、
前記第1状況は、前記運転者がハンドル(例えば31)を把持していない状況、および/または、前記運転者が前記車両の運転席(例えば32)に着座していない状況を含む。
この実施形態によれば、第1画像を用いて運転者の着座状況および/または運転者のハンドルの把持状況を検出するだけで、運転者が車両を運転していない第1状況を、異常の発生を判断するための判断項目として精度よく検出することができる。
【0039】
4.上記実施形態において、
前記状況情報は、前記車両の周囲を撮影可能な第2撮影部(例えば13c~13f)で得られる第2画像を含み、
前記所定の状況は、前記運転者が横たわっている第2状況を更に含み、
前記判断手段は、前記第2画像に基づいて前記第2状況を検出可能であり、前記第1状況に加えて前記第2状況を検出した場合に前記異常が発生したと判断する。
この実施形態によれば、複数種類の状況の組み合わせを検出することによって、運転者および/または車両の異常を精度よく検出することができるとともに、第2画像に基づいて運転者の状況も検出することができるため、運転者の状況に応じた処置(処理、報知)を適切に行うことが可能となる。
【0040】
5.上記実施形態において、
前記判断手段は、前記第2画像において前記運転者が横たわっていない場合、前記運転者が無事であると判断する。
この実施形態によれば、第2画像に基づいて検出される運転者の状況に応じた処置(処理、報知)を適切に行うことが可能となる。
【0041】
6.上記実施形態において、
前記所定の状況は、前記車両のイグニッションがオンしている第3状況を更に含み、
前記判断手段は、前記状況情報に基づいて前記第3状況を検出可能である。
この実施形態によれば、車両がどのような状況かを精度よく検出することができるとともに、当該状況に応じた処置(処理、報知)を適切に行うことができる。
【0042】
7.上記実施形態において、
前記判断手段は、イグニッションキー(例えば33)を撮影可能なカメラ(例えば13a~13b)で得られた画像、イグニッションキー(例えば33)の位置、前記車両に搭載されたバッテリの状態のうち少なくとも1つを示す情報に基づいて、前記第3状況を検出可能である。
この実施形態によれば、車両のイグニッションがオンしている第3状況を精度よく検出することができる。
【0043】
8.上記実施形態において、
前記判断手段は、前記イグニッションがオフしている場合、前記車両から運転者が降車したと判断する。
この実施形態によれば、検出した複数種類の状況に組み合わせに基づいて、運転者が車両を適切に降車したのか否かを精度よく判断することができる。
【0044】
9.上記実施形態において、
前記所定の状況は、前記車両が転倒状態であるとの第4状況を更に含み、
前記判断手段は、前記第1状況に加えて、前記第3状況および前記第4状況を検出した場合に、前記異常が発生したと判断する。
この実施形態によれば、検出した複数種類の状況の組み合わせに基づいて、運転者および/または車両における異常の発生を精度よく検出することができる。
【0045】
10.上記実施形態において、
前記判断手段は、前記車両が転倒状態でない場合、前記運転者が前記イグニッションをオフにし忘れたと判断する。
この実施形態によれば、検出した複数種類の状況の組み合わせに基づいて、運転者が車両のイグニッションをオフにし忘れたことを認識することが可能となる。
【0046】
11.上記実施形態において、
前記判断手段により前記異常が発生したと判断された場合に前記異常を報知する報知手段(例えば23)を更に備え、
前記判断手段は、前記取得手段で取得された前記状況情報に基づいて前記異常の種類を決定し、前記異常の種類に応じて、前記報知手段による報知態様を変更する。
この実施形態によれば、運転者および/または車両に発生した異常の種類に応じて、異常の発生を適切に報知することができるため、当該異常の処置(処理)を適切に行うことが可能となる。
【0047】
12.上記実施形態において、
前記車両は、鞍乗型車両である。
この実施形態によれば、鞍乗型車両における異常の発生を精度よく検出することが可能となる。
【0048】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0049】
本願は、2021年3月23日提出の日本国特許出願特願2021-049129を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。
【符号の説明】
【0050】
V:車両、10:車載装置、13:撮影部、14:状態検知センサ、20:情報端末(監視装置)、21:処理部、21a:取得部、21b:判断部、23:報知部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B