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特許7579431太陽電池モジュールの製造方法及びその製造方法を用いて製造された太陽電池モジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールの製造方法及びその製造方法を用いて製造された太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20241030BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023511129
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2022014029
(87)【国際公開番号】W WO2022210270
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2021057261
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】棚村 浩匡
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-161806(JP,A)
【文献】特開2016-106388(JP,A)
【文献】特開2014-013876(JP,A)
【文献】特開2013-030541(JP,A)
【文献】特開平11-145504(JP,A)
【文献】国際公開第2011/039860(WO,A1)
【文献】特開2010-021498(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0199176(US,A1)
【文献】特開2012-195359(JP,A)
【文献】特開2012-094742(JP,A)
【文献】特開2009-272376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方がガラスで構成される受光面側カバー層及び裏面側カバー層間に配置され互いに電気的に接続され、表面及び裏面を有する複数の太陽電池セルを配置し、該複数の太陽電池セルの表裏面のうちの少なくとも一方の面に封止樹脂層を積層して積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体を加熱及び加圧することにより、前記封止樹脂層を溶融して前記受光面側カバー層と前記裏面側カバー層との間に前記複数の太陽電池セルを封止した一体化された太陽電池モジュールを形成するラミネート工程と、を備えた太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記ラミネート工程において、前記積層体の端面からの前記封止樹脂層の封止樹脂のはみ出しを防止すべく、少なくとも該積層体の積層方向全域を覆うとともに外周方向全域に亘るように封止部を設けて前記太陽電池モジュールを形成し、
前記封止部は、前記積層体の外周を囲う環状のスペーサから構成され、
前記ラミネート工程における一体化された太陽電池モジュールの形成は、真空引きすることによって行い、
前記スペーサは、前記積層体の外周面側に突出する凸部と該積層体の外周面から離間して配置され、積層方向にガスを抜くための凹部とが外周方向で隣り合うように形成される凹凸部を備えていることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
少なくとも一方がガラスで構成される受光面側カバー層及び裏面側カバー層間に配置され互いに電気的に接続され、表面及び裏面を有する複数の太陽電池セルを配置し、該複数の太陽電池セルの表裏面のうちの少なくとも一方の面に封止樹脂層を積層して積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体を加熱及び加圧することにより、前記封止樹脂層を溶融して前記受光面側カバー層と前記裏面側カバー層との間に前記複数の太陽電池セルを封止した一体化された太陽電池モジュールを形成するラミネート工程と、を備えた太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記ラミネート工程において、前記積層体の端面からの前記封止樹脂層の封止樹脂のはみ出しを防止すべく、少なくとも該積層体の積層方向全域を覆うとともに外周方向全域に亘るように封止部を設けて前記太陽電池モジュールを形成し、
前記ラミネート工程における一体化された太陽電池モジュールの形成は、真空引きすることによって行い、
前記封止部は、前記積層体の外周に巻き付けてられて付着されるテープと、該テープの外周を覆うように配置される環状のスペーサと、を備え、
前記テープは、前記封止樹脂層に面する部分にガス抜き用のスリット又は孔を備え、前記スペーサは、前記積層体の外周面側に突出する凸部と該積層体の外周面から離間して配置され、積層方向にガスを抜くための凹部とが外周方向で隣り合うように形成される凹凸部を備え、
前記テープに設けられるスリット又は孔に前記スペーサの凹部が一致していることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2021-57261号に基づく優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、太陽電池モジュールの製造方法及びその製造方法を用いて製造された太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
太陽電池モジュールの製造方法として、第1保護基板、第1封止樹脂膜、太陽電池セル、第2封止樹脂膜、第2保護基板を積層して積層体を構成し、該積層体をラミネータで加熱及び加圧することにより、第1封止樹脂膜及び第2封止樹脂膜が溶融して一体化された太陽電池モジュールを製造する方法がある。この製造時において、前記溶融した封止樹脂が積層体の端面からはみ出すことがある。前記封止樹脂のはみ出し量を抑制するための樹脂止め膜を第1保護基板の側面から積層体の端面を覆って第2保護基板の側面に亘るように配置している。そして、積層体の端面からはみ出した封止樹脂を刃部材によって確実に切り取ることができるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2013-30541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の製造方法では、積層体の端面からはみ出した封止樹脂を刃部材によって切り取る作業が必要となり、面倒な作業になるという不都合があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、積層体の端面から封止樹脂がはみ出すことを防止することによって、面倒な作業を不要にできる太陽電池モジュールの製造方法及びその製造方法を用いて製造された太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、少なくとも一方がガラスで構成される受光面側カバー層及び裏面側カバー層間に配置され互いに電気的に接続され、表面及び裏面を有する複数の太陽電池セルを配置し、該複数の太陽電池セルの表裏面のうちの少なくとも一方の面に封止樹脂層を積層して積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体を加熱及び加圧することにより、前記封止樹脂層を溶融して前記受光面側カバー層と前記裏面側カバー層との間に前記複数の太陽電池セルを封止した一体化された太陽電池モジュールを形成するラミネート工程と、を備えた太陽電池モジュールの製造方法であって、前記ラミネート工程において、前記積層体の端面からの前記封止樹脂層の封止樹脂のはみ出しを防止すべく、少なくとも該積層体の積層方向全域を覆うとともに外周方向全域に亘るように封止部を設けて前記太陽電池モジュールを形成することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、前記封止部が、前記積層体の外周に巻き付けられて付着されるテープから構成されていてもよい。
【0009】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、前記ラミネート工程における一体化された太陽電池モジュールの形成は、真空引きすることによって行い、前記テープは、前記封止樹脂層に面する部分にガス抜き用のスリット又は孔を備えていてもよい。
【0010】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、前記封止部が、前記積層体の外周を囲う環状のスペーサから構成されていてもよい。
【0011】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、前記ラミネート工程における一体化された太陽電池モジュールの形成は、真空引きすることによって行い、前記スペーサは、前記積層体の外周面側に突出する凸部と該積層体の外周面から離間して積層方向にガスを抜くための凹部とが外周方向で隣り合うように形成される凹凸部を備えていてもよい。
【0012】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、前記ラミネート工程における一体化された太陽電池モジュールの形成は、真空引きすることによって行い、前記封止部は、前記積層体の外周に巻き付けてられて付着されるテープと、該テープの外周を覆うように配置される環状のスペーサと、を備え、前記テープは、前記封止樹脂層に面する部分にガス抜き用のスリット又は孔を備え、前記スペーサは、前記積層体の外周面側に突出する凸部と該積層体の外周面から離間して積層方向にガスを抜くための凹部とが外周方向で隣り合うように形成される凹凸部を備え、前記テープに備えるスリット又は孔に前記スペーサの凹部が一致していてもよい。
【0013】
また、本発明は、上記太陽電池モジュールの製造方法を用いて製造された太陽電池モジュールであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の太陽電池モジュールの分割斜視図である。
図2】同太陽電池モジュールを製造する工程を示すブロック図である。
図3A】同太陽電池モジュールの部品を積層した積層体を示す短手方向で切断した断面図である。
図3B】同太陽電池モジュールの部品を積層した積層体を示す長手方向で切断した断面図である。
図4A】積層体の長手方向の横側面を覆うために上面の一方の縁部に第1テープを貼り付けた状態を示す長手方向から見た図である。
図4B】積層体の長手方向の横側面を覆うために上面の一方の縁部に第1テープを貼り付けた状態を示す短手方向から見た図である。
図5A図4Aの状態から第1テープを積層体の横側面と下面の縁部に貼り付けた状態を示す長手方向から見た図である。
図5B図4Bの状態から第1テープを積層体の横側面と下面の縁部に貼り付けた状態を示す短手方向から見た図である。
図6A図5Aの積層体の他方側にも第1テープを貼り付けた状態を示す長手方向から見た図である。
図6B図5Bの積層体の他方側にも第1テープを貼り付けた状態を示す短手方向から見た図である。
図7A】積層体の短手方向の一方の横側面を覆うために上面の一方の縁部に第2テープを貼り付けた状態を示す長手方向から見た図である。
図7B】積層体の短手方向の一方の横側面を覆うために上面の一方の縁部に第2テープを貼り付けた状態を示す短手方向から見た図である。
図8A図7Aの状態から第2テープを積層体の短手方向の横側面に貼り付けた状態を示す長手方向から見た図である。
図8B図7Bの状態から第2テープを積層体の短手方向の横側面に貼り付けた状態を示す短手方向から見た図である。
図9A図8Aの状態から第2テープの下端部を積層体の下面の縁部に貼り付けた状態を示す長手方向から見た図である。
図9B図8Bの状態から第2テープの下端部を積層体の下面の縁部に貼り付けた状態を示す短手方向から見た図である。
図10A図9Aの第2テープの積層体から左右両側にはみ出している部分のうちの上側部分及び下側部分を長手方向の横側面の縁部に貼り付けた状態を示す長手方向から見た図である。
図10B図9Bの第2テープの積層体から左右両側にはみ出している部分のうちの上側部分及び下側部分を長手方向の横側面の縁部に貼り付けた状態を示す短手方向から見た図である。
図11A図10Aの第2テープの積層体から左右両側にはみ出している部分のうちの上下方向中間部分を長手方向の横側面の縁部に貼り付けた上側部分及び下側部分に重ねるように貼り付けた状態を示す長手方向から見た図である。
図11B図10Bの第2テープの積層体から左右両側にはみ出している部分のうちの上下方向中間部分を長手方向の横側面の縁部に貼り付けた上側部分及び下側部分に重ねるように貼り付けた状態を示す短手方向から見た図である。
図12A図11Aと同様に積層体の短手方向の他方の横側面を第2テープを貼り付けて覆った状態を示す長手方向から見た図である。
図12B図11Bと同様に積層体の短手方向の他方の横側面を第2テープを貼り付けて覆った状態を示す短手方向から見た図である。
図13A】4枚のテープで外周が覆われた積層体の外周を覆うようにスペーサを配置した状態を示す長手方向から見た図である。
図13B】4枚のテープで外周が覆われた積層体の外周を覆うようにスペーサを配置した状態を示す短手方向から見た図である。
図14A図13Aの状態でラミネート工程を実行して太陽電池モジュールが作製された状態を示す長手方向から見た図である。
図14B図13Bの状態でラミネート工程を実行して太陽電池モジュールが作製された状態を示す短手方向から見た図である。
図15A】4枚のテープの平面図である。
図15B】第1テープの正面図である。
図15C】第2テープの正面図である。
図16A】スペーサの平面図である。
図16B】スペーサの長辺側部分を内側から見た図である。
図16C】スペーサの短辺側部分を内側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1に示すように、太陽電池モジュールは、下側から受光面側カバー層である第1板状部材1と、第1封止樹脂層である第1封止樹脂材2と、6台の太陽電池ストリング3と、6台の太陽電池ストリング3を電気的に接続するための複数の配線材4と、第2封止樹脂層である第2封止樹脂材5と、裏面側カバー層である第2板状部材6と、を備えている。
【0017】
第1板状部材1は、長方形状で板状の透明なガラスから構成されている。また、第2板状部材6は、第1板状部材1と略同一の大きさで、かつ、略同一の厚みを有する透明なガラスから構成されている。この実施形態では、第1板状部材1及び第2板状部材6をガラスから構成しているが、一方をガラス以外の材料、例えば合成樹脂でシート状に構成してもよい。また、この第2板状部材6は、必ずしも透明でなくてもよい。
【0018】
第1封止樹脂材2は、第1板状部材1と略同一の大きさでシート状に構成された透明な封止樹脂材から構成されている。また、第2封止樹脂材5は、第1封止樹脂材2と同様に、第2板状部材6と略同一の大きさでシート状に構成された透明な封止樹脂材から構成されている。第1封止樹脂材2及び第2封止樹脂材5の材料としては、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)、POE(ポリオレフィンエラストマー)、PVB(ポリビニルブチラール)、アイオノマー等が挙げられる。
【0019】
各太陽電池ストリング3は、複数の太陽電池セル31を直列接続して構成され、短手方向に長い長方形状に構成されている。複数の太陽電池セル31は、シングリング接続によって接続される。シングリング接続は、下側に位置する太陽電池セル31が有するバスバー電極に対して上側に位置する太陽電池セル31が有する裏面バスバー電極が重なるように配置し、各電極が重なった部分が導電性部材を介して電気的に接続される。このように配置することで、複数の太陽電池セル31がそれぞれ直列接続され、太陽電池ストリング3が構成される。ここでは、シングリング接続を説明したが、シングリング接続以外の接続、つまり短辺方向に並べた複数の太陽電池セル31の導電部同士を導電性ワイヤにて接続してもよい。
【0020】
そして、太陽電池モジュールの製造方法は、図2に示すように、図1に示した複数の部材を積層して積層体を形成する積層体形成工程7と、積層体形成工程7で積層した積層体を加熱及び加圧することにより一体化された太陽電池モジュールを形成するラミネート工程8と、を備えている。図3A図3Bに、積層体形成工程7で積層した略直方体形状の積層体9を示している。図3Aは、積層体9を短手方向で切断した断面図であり、図3Bは、積層体9を長手方向で切断した断面図である。
【0021】
ラミネート工程8における一体化された太陽電池モジュールを形成する一体化された太陽電池モジュールを形成は、真空引きすることによって行われる。ラミネート加工は、加熱及び加圧して溶融した封止樹脂層2,5の封止樹脂が積層体9の端面からはみ出すことを防止すべく、少なくとも積層体9の積層方向全域を覆うとともに外周方向全域に亘るように封止部10(図2参照)を設けて太陽電池モジュールを形成する工程を含む。ラミネート工程は、加熱及び加圧して溶融した封止樹脂層2,5の封止樹脂が積層体9の端面からはみ出すことを防止すべく、少なくとも積層体9の端面の積層方向全域に亘るように封止部10を設ける工程を含む。
【0022】
封止部10は、積層体9の外周に巻き付けられて付着されるテープから構成されている。具体的に、図15Aに示すように、封止部10は、積層体9の4つの外周面をそれぞれ覆う長方形状の4枚のテープ11,12,13,14から構成されている。
【0023】
4枚のテープ11,12,13,14は、裏面に粘着層が形成されている樹脂フィルムからなるマスキングテープから構成され、積層体9の長手方向の一対の第1面9A,9Bを覆うための第1テープ11,12(図6A図6B参照)と、積層体9の短手方向の一対の第2面9C,9Dを覆うための第2テープ13,14(図12A図12B参照)と、を備えている。
【0024】
図4A図4B図6A図6Bに示すように、第1テープ11,12は、第1面9A,9Bの左右方向の寸法と同一に構成され、上下方向の寸法が第1面9A,9Bの上下方向の寸法よりも長い寸法に構成されている。これにより、第1テープ11,12は、積層体9の第1面9A,9Bの左右方向全域を覆うことができ、かつ、第1面9A,9Bの上下端から上下にそれぞれ延びて積層体9の上面の第1面9A又は9B側の上面縁部91及び下面の第1面9A又は9B側の下面縁部92を覆うことができる。第1テープ11,12の上下方向中央部には、図15Bに示すように、長手方向に間隔を置いて長手方向に長い同一長さのスリット(切り込み)S1,S2,S3が形成されている。これらスリットS1,S2,S3から太陽電池モジュールの製造時に発生するガスを外部に排出することによって、太陽電池モジュールの破損等を防止できる。これらスリットS1,S2,S3のうちの長手方向両端に位置するスリットS1,S1から第1テープ11,12の両端までの距離L1が最も短く設定され、長手方向両端に位置するスリットS1,S1から長手方向で隣り合うスリットS2,S2までの距離L2が2番目に短く設定され、前記スリットS2,S2から隣り合うスリットS3,S3までの距離L3及び残る他のスリットS3,S3同士の距離L3が最も長く設定されている。このような構成により、太陽電池モジュールの角部でのガスの排出を確実に行える。尚、図5A図5B図14A図14Bの第1テープ11,12及び第2テープ13,14には、スリットS1,S2,S3を描いていない。また、図4A図4B図14A図14Bの積層体9を、長方形の外形のラインのみで描いている。
【0025】
図8A図8B及び図9A図9Bに示すように、第2テープ13,14は、第2面9C,9Dの左右方向の寸法よりも長い左右寸法に構成され、かつ、上下方向の寸法が第2面9C,9Dの上下方向の寸法よりも長い寸法に構成されている。これにより、第2テープ13,14は、積層体9の第2面9C,9Dの左右方向両端から左右方向外側にはみ出し、かつ、第2面9C,9Dの上下端から上下にそれぞれ延びて積層体9の上面の第2面9C,9D側の上面縁部93及び下面の第2面9C,9D側の下面縁部94を覆うことができる。また、第2テープ13,14の上下方向中央部には、長手方向に間隔を置いて長手方向に長い同一長さのスリット(切り込み)S1,S2が形成されている。これらスリットS1,S2から太陽電池モジュールの製造時に発生するガスを外部に排出することによって、太陽電池モジュールの破損等を防止できる。これらスリットS1,S2のうちの長手方向両端に位置するスリットS1,S1から第2テープ13,14の両端までの距離L1が前記第1テープ11,12の場合と同じ距離に設定され、前記スリットS1,S1から隣り合うスリットS2,S2までの距離L3及び残る他のスリットS2,S2同士の距離L3(第1テープ11,12のスリットS3,S3同士間の距離L3と同じ距離)が、前記距離L1よりも長く設定されている。これにより、太陽電池モジュールの角部でのガスの排出を確実に行える。
【0026】
この実施形態の封止部10は、4枚のテープ11,12,13,14の他に、積層体9を巻いたテープ11,12,13,14の外周を囲うように配置される四角環状で金属(例えば、アルミニウム)製のスペーサ15(図16A図16B図16C参照)を備えている。スペーサ15の長辺側の部位の内側は、図16Bに示すように、積層体9の外周面側に突出する凸部15A,15B,15Cと積層体9の外周面から離間して積層方向に太陽電池モジュールの製造時に発生するガスを外部に抜く(排出する)ための凹部15Dとが外周方向で隣り合うように多数形成されて構成される凹凸部を備えている。スペーサ15の長辺側の部位の長手方向両端に位置する第1凸部15A,15Aの長手方向の長さH1が最も短く設定され、スペーサ15の長手方向両端に位置する第1凸部15A,15Aと隣り合う第2凸部15B,15Bの長手方向の長さH2が2番目に短く設定され、残りの他の第3凸部15Cの長手方向の長さH3が最も長く設定されている。これにより太陽電池モジュールの角部でのガスの排出を確実に行えるようにしている。また、図16Cに示すように、スペーサ15の短辺側の内側の部位の長手方向両端に位置する第1凸部15A,15Aの長手方向の長さH1が短く設定され、スペーサ15の長手方向両端に位置する第1凸部15A,15Aと隣り合う第3凸部15C,15Cの長手方向の長さH3(図16Bの長辺側の長さH3と同じ長さ)が、前記長さH1よりも長く設定されている。これにより太陽電池モジュールの角部でのガスの排出を確実に行えるようにしている。また、前記凹凸部の凹部15Dが、テープ11,12,13,14に備えるスリットS1,S2,S3に一致するように形成されている。したがって、前記構成のスペーサ15を、4枚のテープ11,12,13,14が巻き付けられた積層体9の外周に配置することによって、スペーサ15の凸部15A,15B,15Cでテープ11,12,13,14が径方向外側に膨張することを防止しながらも、封止樹脂の溶融時に発生したガスが、テープ11,12,13,14に備えるスリットS1,S2,S3を通してスペーサの凹部15Dに移動したのち、凹部15Dを通して上下方向の外部へ確実に排出することができる。尚、スリットS1,S2,S3の長さと凹部15Dの水平方向の幅寸法とを同一又は略同一に設定する、あるいはスリットS1,S2,S3の長さよりも凹部15Dの水平方向の幅寸法が長くなるように設定することが好ましい。
【0027】
太陽電池モジュールを製造する手順について説明する。まず、図1に示す部品を図3A図3Bに示すように積層して積層体9を構成する。構成された積層体9の外周の4面を4枚のテープ11,12,13,14で覆う。
【0028】
具体的には、第1テープ11の上端部を積層体9の上面の短手方向一端部の上面縁部91に貼り付ける(図4A図4B参照)。これにより、積層体9の長手方向の一対の横側面である第1面9A,9Bのうちの一方の第1面9Aを覆うことができる。この状態から第1テープ11を積層体9の第1面9A及び下面の短手方向一端部の下面縁部92に貼り付ける(図5A図5B参照)。
【0029】
続いて、積層体9の長手方向の一対の第1面9A,9Bのうちの他方の第1面9Bを、前述と同様に第1テープ12で覆う(図6A図6B参照)。次に、第2テープ13の上端部を積層体9の上面の長手方向一端部の上面縁部93に貼り付ける(図7A図7B参照)。これにより積層体9の短手方向の一対の横側面である第2面9C,9Dのうちの一方の第2面9Cを覆うことができる。このとき、第2テープ13の長手方向両端部が先に貼り付けた第1テープ11,12の上端に重なった状態になるとともに、第2テープ13の長手方向両端が長手方向外側にはみ出た状態になっている。
【0030】
図7A図7Bの状態の第2テープ13を積層体9の一方の第2面9Cに貼り付ける(図8A図8B参照)。引き続いて図8A図8Bの状態の第2テープ13を積層体9の下面の下面縁部94に貼り付ける(図9A図9B参照)。このとき、第2テープ13の長手方向両端部の上側部分13A及び下側部分13Bが、先に貼り付けた第1テープ11,12の上端及び下端にそれぞれ重ねた状態で貼り付けられる。
【0031】
次に、積層体9の短手方向両端からはみ出た第2テープ13の長手方向両端部を、積層体9の長手方向両横側面である第1面9A,9Bにそれぞれ貼り付ける。まず、第2テープ13の長手方向両端部のうちの一端部の上側部分13A及び下側部分13Bを積層体9の第1面9A,9Bのうちの一方の第1面9Aに貼り付けてから、第2テープ13の長手方向両端部のうちの他端部の上側部分13A及び下側部分13Bを積層体9の他方の第1面9Bに貼り付ける(図10A図10B参照)。このとき、第2テープ13の長手方向両端部それぞれの上下端部が図10Bに示すように短辺方向から見て略台形状に折り畳まれた上下部分13C,13Dが形成される。
【0032】
続いて、第2テープ13の2組の上下部分13C,13D、13C,13Dを、図10Aの矢印で示す内側へ倒すように折り込むことによって、先に貼り付けた上側部分13A及び下側部分13Bに重ねるように貼り付ける(図11A図11B参照)。
【0033】
残りの第2テープ14を、積層体9の他方の第2面9Dに、前述同様に貼り付けて、4枚のテープ11,12,13,14の貼り付け作業を終了する(図12A図12B参照)。次に、ラミネート工程を実行するために、図示していない真空ラミネート装置内に、4枚のテープ11,12,13,14でマスキングされた積層体9を入れるとともに、スペーサ15を積層体9の外周に配置する(図13A図13B参照)。この配置後、真空引きした状態で積層体9を加熱及び加圧することにより一体化された太陽電池モジュール16を形成することができる(図14A図14B参照)。図14A図14Bでは、第1封止樹脂材2及び第2封止樹脂材5が溶融されて上下方向の厚みが薄くなった状態になる。このように、封止部10を設けることによって、真空引きした状態で積層体9を加熱及び加圧する時に溶融する封止樹脂が積層体9の端面(外周面)からはみ出すことを防止できる。よって、はみ出した封止樹脂を刃部材によって切り取る作業等の面倒な作業を不要にできる。
【0034】
この実施形態では、封止部10が積層体9の少なくとも端面(外周面)をマスキングするテープ11,12,13,14とスペーサ15と備える。よって、真空引きした状態で積層体9を加熱及び加圧する時にテープ11,12,13,14が必要以上に膨張する場合に、これをスペーサ15で防止することができ、より一層確実に溶融する封止樹脂が積層体9の端面(外周面)からはみ出すことを防止できる。なお、テープ11,12,13,14及びスペーサ15のいずれか一方のみを設けて実施することもできる。また、径の大きさを調整できるようにスペーサを構成し、そのスペーサの内側に両面に接着層を備える環状のテープを貼り付けて一体化した封止部であってもよい。この場合、積層体の外径寸法よりも内径寸法を大きく調整したスペーサを積層体の外周に配置し、配置後にスペーサの内径を小さくすることによって、スペーサの内側のテープが積層体の外周面に貼り付けられることで封止部を配置することができる。また、実施形態で示したテープを貼り付ける順番やテープの貼り付け方などは、自由に変更可能である。また、本発明は、前述した製造方法を用いて製造された太陽電池モジュールであってもよい。
【0035】
前記実施形態に関する構成と作用につき、以下にまとめて記載する。前記実施形態は、積層体9の積層方向全域を覆うとともに外周方向全域に亘るように封止部10を設けることによって、積層体9を加熱及び加圧する時に溶融する封止樹脂が積層体9の端面からはみ出すことを防止できる。よって、はみ出した封止樹脂を刃部材によって切り取る作業等の面倒な作業を不要にできる。
【0036】
また、積層体9の外周にテープ11,12,13,14を巻き付けるだけで、積層体9を加熱及び加圧する時に溶融する封止樹脂が積層体9の端面からはみ出すことを防止できる。
【0037】
また、テープ11,12,13,14が、ガス抜き用のスリットS1,S2,S3又は孔を備えていれば、封止樹脂の溶融時に発生したガスを、スリットS1,S2,S3又は孔を通して外部へ排出できる。
【0038】
また、積層体9の外周をスペーサ15で覆うだけで、積層体9を加熱及び加圧する時に溶融する封止樹脂が積層体の端面からはみ出すことを防止できる。
【0039】
また、スペーサ15が、凹凸部を備えていれば、封止樹脂の溶融時に発生したガスを、凹凸部の凹部15Dを通して外部へ排出できる。
【0040】
また、封止部10が、積層体9の外周に巻き付けてられて付着されるテープ11,12,13,14と、テープ11,12,13,14の外周を覆うように配置される環状のスペーサ15と、を備えることによって、積層体9を加熱及び加圧する時に溶融する封止樹脂が積層体9の端面から外側にはみ出ることによりテープ11,12,13,14が外側へ膨張することをスペーサ15の凸部15A,15B,15Cで防止することができる。また、テープ11,12,13,14に備えるスリットS1,S2,S3又は孔にスペーサ15の凹部15Dが一致しているので、封止樹脂の溶融時に発生したガスが、テープ11,12,13,14に備えるスリットS1,S2,S3又は孔を通してスペーサ15の凹部15Dに移動したのち、凹部15Dを通して外部へ確実に排出することができる。
【0041】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。また、本発明は、上記した作用効果に限定されるものでもない。
【0042】
前記実施形態では、積層体の外周に巻き付けられるテープに、ガス抜き用のスリットを形成したが、溶融した封止樹脂の通過を阻止する大きさの複数の孔を形成してもよい。また、テープを4枚のテープから構成したが、1枚又は複数枚の任意の枚数のテープから構成してもよい。また、積層体9の端面(外周面)に加えて積層体9の上面の上面縁部91,93及び下面の下面縁部92,94にもテープを貼り付けるようにしたが、積層体9の端面(外周面)のみにテープを貼り付けるようにしてもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、スペーサ15に、積層体9の外周面側に突出する凸部15A,15B,15Cと積層体9の外周面から離間して積層方向にガスを抜くための凹部15Dとが外周方向で隣り合うように形成される凹凸部を備えたが、ガス抜き用のスリット又は孔を備えてもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、2枚の封止樹脂材2,5を設けたが、1枚の封止樹脂材又は3枚以上の任意の枚数の封止樹脂材を設けて実施してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…第1板状部材(受光面側カバー層)、2…第1封止樹脂材(第1封止樹脂層)3…太陽電池ストリング、4…配線材、5…第2封止樹脂材(第2封止樹脂層)、6…第2板状部材(裏面側カバー層)、7…積層体形成工程、8…ラミネート工程、9…積層体、9A,9B…第1面、9C,9D…第2面、10…封止部、11,12…第1テープ、13,14…第2テープ、13A…上側部分、13B…下側部分、13C,13D…上下部分、15…スペーサ、15A,15B,15C…凸部、15D…凹部、16…太陽電池モジュール、31…太陽電池セル、91,93…上面縁部、92,94…下面縁部、L1,L2,L3…距離、S1,S2,S3…スリット(切り込み)
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C