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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】音盤を切削するためのカッターユニット
(51)【国際特許分類】
   G11B 3/00 20060101AFI20241030BHJP
   G01B 21/02 20060101ALI20241030BHJP
   G11B 3/20 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G11B3/00 Z
G01B21/02 A
G11B3/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023513914
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2021073289
(87)【国際公開番号】W WO2022043270
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2024-08-22
(31)【優先権主張番号】01055/20
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523067595
【氏名又は名称】フォノカット・マシーネン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PHONOCUT MASCHINEN GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】クヌヒェル,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】バイス,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】シグリスト,マルティン
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04317192(US,A)
【文献】米国特許第02867694(US,A)
【文献】特開昭54-058002(JP,A)
【文献】米国特許第05003522(US,A)
【文献】米国特許第02948783(US,A)
【文献】特開昭50-015505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 3/00
G01B 21/02
G11B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音盤を切削するためのカッター(6)を担持するためのカッターユニット(3)であって、
前記カッターユニット(3)は、カッターキャリヤ(31)とカッターヘッド(4)とを備え、
前記カッターヘッド(4)は、前記カッターキャリヤ(31)によって担持され、前記カッターキャリヤ(31)に対して変位されるよう構成され、
前記カッターヘッド(4)は、前記カッター(6)と記録媒体との間に一定の距離を維持するためのアドバンスボール(5)を担持し、前記カッター(6)に対する前記アドバンスボール(5)の高さは、調整機構によって調整可能であり、前記調整機構は、前記アドバンスボール(5)を担持するアドバンスボールキャリヤ(52)を含み、前記アドバンスボールキャリヤ(52)は、前記カッターヘッド(4)に対して調整可能に変位されるように取り付けられ、
前記カッターヘッド(4)は、前記カッターキャリヤ(31)に対して、カッターピボット(32)の周りで回転するよう構成され、前記アドバンスボールキャリヤ(52)は、前記カッターヘッド(4)に対して、アドバンスボールキャリヤピボット(53)の周りで回転するよう構成され、前記カッターピボット(32)の回転軸および前記アドバンスボールキャリヤピボット(53)の回転軸は、互いに対して直角であり、
前記カッターユニット(3)は、前記カッターユニット(3)を囲み保護するカートリッジ(2)内に配置され、前記カッター(6)は動作位置において前記カートリッジ(2)から突出している、カッターユニット(3)。
【請求項2】
前記調整機構は、調整要素(56)、特に調整ねじと、前記調整要素(56)の変位を前記アドバンスボール(5)の変位にリンクする機械的リンク機構(51)とを含み、前記リンク機構(51)は、前記変位を少なくとも2、特に少なくとも3、特に少なくとも4の低減係数によって低減する、請求項に記載のカッターユニット(3)。
【請求項3】
前記カッターヘッド(4)は、前記カッター(6)に作用する切削力および/または前記カッターヘッド(4)の重量によって、前記カッターキャリヤ(31)に対して変位可能であり、この重量は、釣合いおもりおよびカッターばね(33)のうちの少なくとも1つによって打ち消され、前記カッターばね(33)は、予め応力をかけられた状態にあり、
特に、前記カッターヘッド(4)は、前記カッターキャリヤ(31)に対して、カッターピボット(32)の周りで回転するよう構成され、前記カッターヘッド(4)は、前記カッター(6)に作用する切削力および/または前記カッターヘッド(4)の重量によって、前記カッターピボット(32)の周りで回転可能であり、この重量は、釣合いおもりおよびカッターばね(33)の少なくとも1つによって打ち消され、前記カッターばね(33)は予め応力をかけられた状態にあり、特に、前記カッターばね(33)は、前記カッターピボット(32)に関して、前記カッターヘッド(4)と反対側にあるカウンタアーム(41)に作用する、請求項1または2に記載のカッターユニット(3)。
【請求項4】
前記カッターばね(33)の長さおよび前記カッターヘッド(4)に対するその配置は、前記カッターヘッド(4)がそれの2つの停止位置の間で変位されるときに、前記カッターばね(33)の長さが25パーセント未満、特に10パーセント未満、特に、5パーセント未満だけ変化するよう設計される、請求項に記載のカッターユニット(3)。
【請求項5】
取付点(42)の反対側にある前記カッターばね(33)の端部を前記カッターキャリヤ(31)に対して変位させるよう構成されるカッターばね調節要素(34)、特に調節ねじを備える、請求項またはに記載のカッターユニット(3)。
【請求項6】
前記カッターヘッド(4)が動作するよう設計される向きにおける前記カッターばね(33)および前記カッターヘッド(4)の重量によってかけられる正味トルクは、前記アドバンスボール(5)および前記カッター(6)に対して作用する0.1N~0.5Nの力に対応する、請求項のいずれかに1項に記載のカッターユニット(3)。
【請求項7】
前記カッターキャリヤ(31)に対する前記カッターヘッド(4)の変位の変化を検出するよう構成されるカッターヘッド変位センサ(35)を備える、請求項1~のいずれかに1項に記載のカッターユニット(3)。
【請求項8】
前記カッターヘッド(4)は、前記カッターキャリヤ(31)に対して、カッターピボット(32)の周りで回転するよう構成され、前記カッターピボット(32)と前記カッター(6)の切削点との間の距離は、10cm~2cm、特に7cm~3cm、特に5cm~3.5cmである、請求項1~のいずれかに1項に記載のカッターユニット(3)。
【請求項9】
前記カッターヘッド(4)と前記カッターキャリヤ(31)との間の変位を実現するカッター軸受、特にカッターピボット(32)は、
・遊びのない軸受、特にピボット、および前記軸受または前記ピボットの摩擦によって、特にばね荷重式円錐形滑り接触軸受によって、特に調整可能な予張力で実現される減衰機能、
・別個の減衰要素と組み合わされた、ローラ軸受またはコンプライアント軸受などの、内部摩擦が低い軸受、特にピボット、の1つを含む、請求項1~のいずれかに1項に記載のカッターユニット(3)。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに1項に記載のカッターユニット(3)であって、
カートリッジ(2)を備え、
記カートリッジ(2)は、ロック用要素(23)の動作によって互いに対して移動可能な第1のハウジングセクション(21)および第2のハウジングセクション(22)を含み、前記カッター(6)は、前記第1のハウジングセクション(21)とともに移動するよう構成され、
・第1の方向における前記ロック用要素(23)の移動は、前記カッター(6)を動作位置において前記第2のハウジングセクション(22)から突出させ、
・前記第1の方向と反対の第2の方向における前記ロック用要素(23)の移動は、前記カッター(6)を前記第2のハウジングセクション(22)の中へと、保護された位置に引き込ませる、カッターユニット(3)
【請求項11】
さらに、
・前記第1の方向における前記ロック用要素(23)の移動は、1つ以上のロック用突出部(26)を前記カートリッジ(2)から延出させ、
・前記第2の方向における前記ロック用要素(23)の移動は、前記1つ以上のロック用突出部(26)を前記カートリッジ(2)内に引き込ませる、請求項10に記載のカッターユニット(3)
【請求項12】
カッターヘッド(4)を担持するカッターキャリヤ(31)を備え、前記カッターヘッド(4)は、動作構成において、前記カッターキャリヤ(31)に対して移動可能であり、さらに、
・前記第1の方向における前記ロック用要素(23)の移動は、輸送保護突起(25)に、前記カッターキャリヤ(31)に対する前記カッターヘッド(4)の移動を阻止させず、
・前記第2の方向における前記ロック用要素(23)の移動は、前記輸送保護突起(25)に、前記カッターキャリヤ(31)に対する前記カッターヘッド(4)の移動を阻止させる、請求項10または11に記載のカッターユニット(3)
【請求項13】
前記第1のハウジングセクション(21)と前記第2のハウジングセクション(22)との間の相対移動を防止する少なくとも1つの戻り止め(29)を備え、前記少なくとも1つの戻り止め(29)は、前記カートリッジ(2)から突出するセクションを含み、前記戻り止め(29)は、前記突出セクションを内方向に押すことによって解放可能である、請求項1012のいずれかに1項に記載のカッターユニット(3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音盤の機械的切削の分野に関する。本発明は、音盤を切削するためのカッターユニット、カッターユニットのためのカートリッジ、音盤のためのブランク、およびブランクから情報を読み取るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音盤を切削するための切削装置は、記録産業において一般に知られている。専門的な切削旋盤は、記録物からマスターディスクを作成するために、または直接ディスクに記録するセッションにおいて、使用される。それらは一般に高価であり、専門家によって取り扱われ調整されなければならない。趣味レベルの表音記録器旋盤は入手可能であるが、品質にばらつきがある。
【0003】
US2528826は、調整可能なアドバンスボールを有する記録装置を開示している。アドバンスボールは、切削スタイラス(または単にカッター)に近接するカッターヘッド上に担持される、丸端ピンまたはボールである。アドバンスボールは、ディスク上に載り、ディスクが回転するにつれてディスク上で回り、カッターをディスクに対して一定距離に保つ。カッターは、アドバンスボールの高さより下に突出し、したがって、カッター高さの先端に対するアドバンスボールの高度は、切削の深さを制御する。この高度を調整するための機構が提示され、この機構では、調整ねじがアドバンスボールの高さを設定する。さらに、音盤の平面上に突出される、カッターに対するアドバンスボールの位置を変化させることができる。これにより、カッターによって切削された切屑がアドバンスボールと干渉することを回避しつつ、装置を内側から外または外側から内に切削することに適合させることができる。
【0004】
US4441177は、レコードプレーヤーのためのスタイラス保護機構を開示している。それは、スタイラスが横方向にたわんだ場合にスタイラスを保護ゾーン内に移動させるように構成される。
【0005】
US4178489は、カッターアーム上に回転可能に懸架されるカッターヘッドを開示し、釣合いおもり、およびカッターアームにトルクを印加するための電気DCモータを伴う。モータへの入力は、切削されるべき音声信号と、ホール素子によって測定されるアームの位置とに基づく。
【0006】
US2716551は、第1の軸を中心に回転するカッターアームに配置されたカッターヘッドを開示し、アドバンスボールが、第1の軸とは異なる第2の軸を中心に回転するよう構成され、粘性潤滑剤が、第2の軸に対応する軸受に塗布される。
【0007】
US4317192は、サスペンションアセンブリが高速に下降することによる損傷を防止するためにサスペンション速度制御装置を伴うカッターヘッドを開示している。カッターヘッドは、切削されるマスターディスクの上方に浮遊するように設計されたエアパックと、エアパックに対するスタイラスアセンブリの垂直位置のための調整機構とを備える。カッターヘッドは、2つの鋼ばねを有する平行四辺形サスペンションによって支持される。
【0008】
US2867694は、トラッキングスタイラスが、切削スタイラスの径方向位置を制御するガイド溝内を走行する、ディスクレコード用の記録ヘッドを開示している。2つのスタイラスの相対的な垂直位置は調整され得る。切削ヘッドは、既存の再生スタイラスを取り外す必要なく、レコードプレーヤーのトーンアームに取り付けることができる完全なユニットである。
【0009】
US4157460は変調システムに向けられ、アドバンスボール機構を開示する。
US5003522は、ディスクの機械的不完全性、例えばレコードの反りおよびランブル雑音を補償するための再生システムを開示している。切削旋盤のアドバンスボールと同様のグライダーを含む、ディスク表面を追跡するための様々な機構が提示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の可能な目的は、直接ディスク記録に適し、ロバストであり、専門家でないユーザによって操作され得る、音盤を切削するためのカッターユニットを作成することである。
【0011】
本発明の可能な目的は、直接ディスク記録に適し、ロバストであり、専門家でないユーザによって操作され得る、カッターユニットのためのカートリッジを作成することである。
【0012】
本発明の可能な目的は、音盤のためのブランクを作成すること、およびブランクから情報を読み取るための方法である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、対応する請求項による、音盤を切削するためのカッターユニット、カッターユニットのためのカートリッジ、音盤のためのブランク、およびブランクから情報を読み取るための方法によって達成される。
【0014】
カッターユニットは、音盤を切削するためのカッターを担持する役割を果たす。カッターユニットは、カッターキャリヤと、カッターヘッドとを備え、
カッターヘッドは、カッターキャリヤによって担持され、カッターキャリヤに対して変位されるように、特にカッターピボットの周りで回転するように、構成され、
カッターユニットは、カッターユニットを囲み保護するカートリッジ内に配置される。
【0015】
この結果、カッターユニットが使用される記録機から、カッターユニットを取り外すことができる。繊細な、重要な構成要素は、カートリッジによって保護される。それらを調整する必要がある場合、またはカッターを交換する必要がある場合、カートリッジ全体を取り外し、専門のワークショップに送ることができる。さらに、カートリッジを交換するだけで、記録機はアップグレードされ得る。
【0016】
カッターキャリヤに対するカッターヘッドの変位は、異なる方法で実現され得る。異なる実施形態によれば、例えば、
・カッターヘッドは、カッターキャリヤに対して、カッターピボットの周りで回転するよう構成され;
・カッターヘッドは、リニア継手またはリニア軸受によって、カッターキャリヤに対して並進するように、すなわち直線的に変位するよう構成され;
・カッターヘッドは、カッターキャリヤに対して、回転と並進とを組み合わせた軌道に沿って移動するよう構成される。
【0017】
それぞれの場合において、軸受は、滑り軸受またはころ軸受またはコンプライアント軸受(または弾性ヒンジまたは剛性継手)であり得る。実施形態では、相対移動は、機械的リンク機構、例えば4バーリンク機構、特に平行四辺形リンク機構によって画定される。
【0018】
実施形態では、カッターヘッドは、カッターと記録媒体との間に一定の距離を維持するためのアドバンスボールを担持し、カッターに対するアドバンスボールの高さは、調整機構によって調整可能であり、調整機構は、アドバンスボールを担持するアドバンスボールキャリヤを備え、アドバンスボールキャリヤは、カッターヘッドに対して調整可能に変位されるよう、特に、カッターヘッドに対して、アドバンスボールキャリヤピボットの周りで回転するよう取り付けられる。
【0019】
カッターヘッドおよび対応する軸受に対するアドバンスボールキャリヤの変位は、カッターキャリヤに対するカッターヘッドについて説明されるように、異なる方法で実現され得る。
【0020】
実施形態では、カッターヘッドは、カッターキャリヤに対して、カッターピボットの周りで回転するよう構成され、アドバンスボールキャリヤは、カッターヘッドに対して、アドバンスボールキャリヤピボットの周りで回転するように取り付けられ、カッターピボットの回転軸およびアドバンスボールキャリヤピボットの回転軸は、互いに対して直角である。
【0021】
一般に、2つの軸は同じ平面内にない。次いで、軸間の角度は、軸のうちの第1の軸と、軸のうちの第2の軸の、第1の軸を通って第2の軸に平行な平面上への投影との間の角度として定義される。その結果、切削深さが調整機構によって変更されるとき、切削深さは、カッターピボットの周りのカッターヘッドの回転とは本質的に無関係のままである。
【0022】
実施形態では、調整機構は、調整要素、特に調整ねじと、調整要素の変位をアドバンスボールの変位にリンクする機械的リンク機構とを備え、リンク機構は、変位を少なくとも2、特に少なくとも3、特に少なくとも4の低減係数だけ低減する。
【0023】
換言すれば、低減係数は、調整要素の変位をアドバンスボールの変位で除したものである。これは、小さい調整ねじまたは他の調整要素を用いても、アドバンスボールの変位、したがって切削深さの変位を正確に制御することを可能にする。
【0024】
実施形態では、カッターヘッドは、カッターに作用する切削力および/またはカッターヘッドの重量によって、カッターキャリヤに対して変位可能であり、この重量は、釣合いおもりおよびカッターばねのうちの少なくとも1つによって打ち消され、カッターばねは、予め応力をかけられた状態にある。
【0025】
実施形態では、カッターヘッドは、カッターに作用する切削力および/またはカッターヘッドの重量によって、カッターピボットの周りで回転可能であり、この重量は、釣合いおもりおよびカッターばねのうちの少なくとも1つによって打ち消され、カッターばねは、予め応力をかけられた状態にあり、特に、カッターばねは、カッターピボットに関してカッターヘッドに対向するカウンタアームに作用する。
【0026】
ばねは、カッターキャリヤ内に取り付けられると予め張力をかけられた状態にあるように寸法決めされ得る。これは、カッターばねがカウンタアームを下向きに押してカッターヘッドの重量を打ち消す取付点において作用し、カッターピボットは支点として作用する。カッターヘッドが静止位置もしくは下側成角停止位置またはそれより上にあるとき、その重量が下向きに引っ張ることによって及ぼされるトルクは、カッターばねがカウンタアーム上で下向きに押すことによって及ぼされるトルクによって、部分的に均衡させられる。
【0027】
カッターばねは、取付点がデバイスの通常動作において経験する最大変位に対して相対的に長くなるように設計される。その結果、取付点の変位、したがってばねの長さの差は、相対的に小さく、ばねによって及ぼされる力は、カッターヘッドがその静止位置から変位されるときに有意に変化しない。
【0028】
代替実施形態では、カッターばねは、カッターピボットに関してカッターヘッドと同じ側に作用し、したがって、カッターヘッドを上方に引っ張るよう予め応力が加えられ、カッターヘッドの重量に対抗する。この実施形態では、カウンタアームは存在しなくてもよい。他の実施形態では、カッターばねがカッターヘッドと同じ側に、またはカウンタアームに作用する状態で、カウンタアームは、釣合いおもりを担持し得るか、またはカッターヘッドに対する釣合いおもりとして作用するよう形状化され得る。さらなる実施形態では、そのような釣合いおもりのみが存在し、カッターばねは存在しない。
【0029】
カッターばねは、例えば、つる巻きばね、脚ばね(leg spring)、またはねじりばねのうちの1つとし得る。
【0030】
実施形態では、カッターヘッドがその2つの停止位置の間で変位されるとき、特にカッターヘッドがその角度停止位置間でカッターピボットの周りを回転するとき、カッターばねの長さおよびカッターヘッドに対するその構成は、カッターばねの長さが、25パーセント未満、特に10パーセント未満、特に5パーセント未満だけ変化するように設計される。
【0031】
関与する力に関して、カッターヘッドの最大変位、特にカッターばねがカッターキャリヤ内でその最も伸長された状態にある最大可能角度へのカッターヘッドの回転は、カッターばねがカッターキャリヤ内でその最も圧縮された状態にある最小変位または角度におけるその値の25パーセント未満、特に10パーセント未満、特に5パーセント未満だけ、反力を変化させる。
【0032】
実施形態では、カッターユニットは、取付点の反対側にあるカッターばねの端部を、カッターばね調節要素、特に、カッターキャリヤに対して変位させるように配置される調節ねじを備える。
【0033】
これにより、カッターばねの長さを調節することができ、カッターヘッドが切削時に音盤ブランクを押す力を調節することができる。これは、アドバンスボールおよびカッターによってブランクに対して及ぼされる力であり、カッターヘッドは、その上側停止位置と下側停止位置との間にあり、かつその上側停止位置および下側停止位置と接触していない。
【0034】
実施形態では、カッターヘッドが動作するよう設計される向きにおけるカッターばねおよびカッターヘッドの重量によってかけられる正味トルクは、アドバンスボールおよびカッターに対して作用する0.1N~0.5Nの力に対応する。
【0035】
これは、カッターヘッドがその停止位置の1つにないと仮定する。この力は、切削時にカッターヘッドが音盤ブランクを押す力でもある。これは、次いで、ブランクに対してカッターによって及ぼされる力とアドバンスボールによって及ぼされる力との合計である。実施形態では、カッターによって及ぼされる力は、0.1N~0.2Nにある。実施形態では、アドバンスボールによって及ぼされる力は、0.25N~0.5Nにある。
【0036】
実施形態では、カッターユニットは、カッターキャリヤに対するカッターヘッドの変位の変化を検出するよう構成されるカッターヘッド変位センサを備える。カッターヘッドが回転する実施形態では、変位センサは、角度センサであり得る。
【0037】
カッターヘッド変位センサは、ブランクに対するカッターユニット間の距離を制御するために使用され得る。これは、カートリッジの高さをブランクの厚みに自動的に適合させることを可能にする。カッターユニットの位置を、カッターによって切削されるように配置されたブランクの厚みに適合させるための対応する方法は、
・カッターユニットがブランクと接触するまで、カッターユニットをブランクに向かって移動させ、それによって、カッターヘッドをカッターキャリヤに対して移動させるステップと、
・この移動をカッターヘッド変位センサによって検出するステップと、
カッターユニットのブランクに向かう移動を停止するか、またはカッターヘッド変位センサからのセンサ値に基づいてカッターユニットの位置を制御して、カッターキャリヤに対するカッターヘッドの所与の相対変位に到達するステップとを含む。
【0038】
カッターユニットがブランクと接触することは、典型的には、アドバンスボールおよび/またはカッターがブランクと接触することによって生じる。
【0039】
カッターユニットの位置の測定を前提として、ヘッド変位センサは、ブランクの厚みを測定するために使用することもできる。厚みが変化する領域を含むブランクの場合、それは、厚みの変動を測定するためにも使用され得る。厚みの変動は、情報を符号化し得る。符号化された情報は、例えば、ブランクの材料、またはブランクのタイプ、またはブランクの製造業者のうちの1つ以上に関連し得る。
【0040】
実施形態では、カッターヘッドは、カッターキャリヤに対して、カッターピボットの周りで回転するよう構成され、カッターピボットとカッターの切削点との間の距離は、10cm~2cm、特に7cm~3cm、特に5cm~3.5cmである。
【0041】
実施形態では、カッターヘッドとカッターキャリヤとの間の変位を実現するカッター軸受、特にカッターピボットは、遊びのない軸受、特にピボットと、軸受またはピボットの摩擦によって実現される減衰機能とを備える。これは、例えば、特に調整可能な予張力を伴うばね荷重式円錐滑り接触軸受であり得る。
【0042】
実施形態では、カッターピボットを実現する軸受は、別個の減衰要素と組み合わされた、ローラ軸受またはコンプライアント軸受などの、低い内部摩擦を有する軸受、特にピボットを備える。
【0043】
これにより、遊びがなく(または隙間がなく)、摩擦による減衰特性を有する軸受が可能になる。
【0044】
カートリッジは、好ましくは、本明細書に説明されるようなカッターユニットのためのものであり、カートリッジは、ロック用ノブとも呼ばれるロック用要素の動作によって互いに対して移動可能な第1のハウジングセクションおよび第2のハウジングセクションを備え、カッターは、第1のハウジングセクションとともに移動するよう構成され、
・第1の方向におけるロック用要素の移動は、カッターを動作位置において第2のハウジングセクションから突出させ、
・第1の方向と反対の第2の方向におけるロック用要素の移動は、カッターを第2のハウジングセクションの中へと、保護される位置に引き込ませる。
【0045】
これは、カートリッジが動作構成にないときにカッターを損傷から保護するカッター保護機能を実現する。
【0046】
カートリッジの実施形態では、
・第1の方向におけるロック用要素の移動は、1つ以上のロック用突出部をカートリッジから延出させ、
・第2の方向におけるロック用要素の移動は、1つ以上のロック用突出部をカートリッジ内に引き込ませる。
【0047】
カートリッジがカートリッジキャリヤ内に配置されると、ロック用突出部は、カートリッジキャリヤの対応する開口部またはロック用スリット内に突出し、それによって、カートリッジキャリヤが動作構成にあるときにカートリッジキャリヤに対するカートリッジの位置をロックする。
【0048】
実施形態では、カートリッジは、カッターヘッドを担持するカッターキャリヤを備え、動作構成におけるカッターヘッドは、カッターキャリヤに対して移動可能であり、さらに、
・第1の方向におけるロック用要素の移動は、輸送保護突起に、カッターキャリヤに対するカッターヘッドの移動を阻止させず、
・第2の方向におけるロック用要素の移動は、輸送保護突起に、カッターキャリヤに対するカッターヘッドの移動を阻止させる。
【0049】
これは、輸送保護機能を実現し、カートリッジが動作構成にないとき、カッターヘッドの移動を防止する。
【0050】
実施形態では、カートリッジは、第1のハウジングセクションと第2のハウジングセクションとの間の相対移動を防止する少なくとも1つの戻り止めを備え、少なくとも1つの戻り止めは、カートリッジから突出するセクションを含み、戻り止めは、突出セクションを内方向に押すことによって解放可能である。
【0051】
戻り止めは、カートリッジをカートリッジキャリヤ内へと摺動させることによって解放され得る。これは、ロック機能を実現し、ユーザがカートリッジをカートリッジキャリヤの外側で不注意に動作構成にすることを防止する。
【0052】
音盤用のブランクは、平坦なディスクであり、少なくとも片側に環状領域を含み、環状領域において、ブランクの表面の高さは、角度位置とともに変化し、高さの変動は、高さ信号を表し、高さ信号は、ブランクに関連付けられる情報を符号化する。
【0053】
実施形態では、環状領域はブランクの外周に位置する。
実施形態では、環状領域は、ブランクの内側領域において、記録溝がブランクに切削される記録領域内に位置する。
【0054】
ブランクから情報を読み取るための方法は、任意選択で、本明細書に記載のカッターユニットを使用し、
・ブランクおよびカートリッジ、特にカッターユニットを、環状領域の半径に対応する径方向位置まで、互いに対して移動させるステップと、
・ブランクをカートリッジに対して、特にカッターユニットに対して回転させ、環状領域に符号化された高さ信号を測定するステップと、
・高さ信号から情報を抽出するステップとを含む。
【0055】
実施形態において、高さ信号を測定するステップは、
・カッターヘッドは、環状領域においてブランク上に載り、カッターキャリヤに対するカッターヘッドの変位を測定し、それによって、環状領域において符号化された高さ信号を測定するステップを含む。
【0056】
実施形態において、高さ信号を測定するステップは、
・カートリッジの一部、特にカッターユニットの一部である距離センサを用いて、環状領域内に符号化された高さ信号を測定するステップを含む。
【0057】
実施形態では、距離センサは非接触センサである。他の実施形態では、距離センサは、ブランクが回転するときにブランクと機械的に接触し、ブランクによって機械的に変位される。距離センサは、例えば、ブランクの表面上を滑走するプローブ先端、またはブランクの表面上を転動するローラを備え得る。
【0058】
本明細書に提示されるカッターユニットは、本明細書に提示されるようなカートリッジの一部として、またはそのようなカートリッジから独立して、実現され得る。
【0059】
本明細書に提示されるカートリッジは、本明細書に提示されるようなカッターユニットを備えるか、またはそのようなカッターユニットから独立して、実現され得る。
【0060】
さらなる好ましい実施形態は、従属請求項から明らかである。
本発明の主題は、添付の図面に概略的に示される好ましい例示的な実施形態を参照して、以下の文においてより詳細に説明される:
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】記録機を示す図である。
図2】記録機で使用されるカッターヘッドを含むカートリッジを示す図である。
図3】カートリッジの輸送構成および動作構成を示す図である。
図4】カートリッジの輸送構成および動作構成を示す図である。
図5】カートリッジの輸送構成および動作構成を示す図である。
図6】カートリッジを輸送構成においてロックするための移動止めを示す図である。
図7】カッターユニットを示す図である。
図8】カッターユニットの詳細を示す図である。
図9】表音信号を記録するためのブランクを示す図である。
図10】カッターピボットの詳細を示す図である。
図11】アドバンスボールキャリヤリンク機構の詳細を示す図である。
図12】カッターピボットおよびアドバンスボールキャリヤリンク機構の回転軸を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
原則として、図面において、同じ部分には同じ参照符号が付されている。
図1は、記録機1を示す。これは、ターンテーブル駆動部17によって駆動され音盤ブランク9を担持するためのターンテーブル16を備える。カッターユニット3を含むカートリッジ2が、カートリッジキャリヤ10内に取り外し可能に配置される。カートリッジキャリヤ10は、キャリヤ駆動部15によって、ターンテーブル16に対して垂直方向に移動可能である。ターンテーブル16は、ターンテーブル変位駆動部18によって、カートリッジ2に対して水平方向に移動可能である。駆動部の作動、ならびにカートリッジ2内のセンサならびに駆動部に関連付けられるセンサからのセンサ値およびユーザ入力要素の読み取りならびに処理は、制御ユニット100によって、典型的にはマイクロプロセッサを使用して、行われる。音声信号は、デジタルおよび/またはアナログ電子機器によって処理され得る。
【0063】
注:記載が、「水平」および「垂直」に言及する場合、それは、ブランク9が水平面内にある状態で記録機1を動作させる状態を指す。しかしながら、本発明は、記録機1を異なる向きにして、例えばブランク9を垂直平面内において実現することもできる。そのような場合、記録機1は、必要とされる場合には、特にカッターヘッド4をブランク9に押し付けるために、重力に取って代わるよう、例えばばねを有するように変更され得る。
【0064】
ブランク9に音声信号を記録するために、制御ユニット100は、ターンテーブル変位駆動部18を制御してターンテーブル16を移動させ、カッターユニット3がブランク9の開始半径で切削を開始し得るようにする。それは、カートリッジキャリヤ10をブランク9に向かって、例えばカートリッジ2内のセンサによって検出され得る切削高さに達するまで下げるように、キャリヤ駆動部15を制御する。このように、それは、ブランク9の上面の高さ、したがってブランク9の厚みも判断し得る。音声信号に対応する溝をブランク9に切削するために、制御ユニット100は、カートリッジ2を切削高さに制御し、ターンテーブル駆動部17はターンテーブル16を回転させ、ターンテーブル変位駆動部18はターンテーブル16をゆっくりと移動させて螺旋状の溝を切削し、その間、音声信号は、カッターユニット3に配置された2つの駆動部によって、‐ステレオ信号に対応して‐2次元でカッター6の変位を制御するよう使用される。
【0065】
精密に調整される必要がある繊細な構成要素は、カートリッジ2内に配置される。カートリッジ2は、例えば、各々10センチメートル未満の高さおよび幅ならびに15センチメートル未満の長さのサイズを有し得る。一実施形態では、高さおよび幅は各々6センチメートルであり、長さは11センチメートル未満である。
【0066】
図2は、カートリッジ2の分解図を示す。カートリッジ2は、直線運動で互いに対して摺動するように構成された2つの主要セクションを備える。上部セクションは、第1のハウジングセクション21およびカッターユニット3を備える。カッターユニット3は、第1のハウジングセクション21に堅固に取り付けられたカッターキャリヤ31と、切削中のブランク9の高さの変化に追従するために、水平軸の周りでカッターキャリヤ31に対して枢動し得るカッターヘッド4とを備える。ロック用要素またはノブ23が、ロック用ノブ23の軸の周りを回転するように第1のハウジングセクション21に配置される。底部セクションは、第2のハウジングセクション22と、互いに堅固に取り付けられた従動部品222とを備える。
【0067】
ここで示されるロック用要素は、回転され、それによって、以下で説明されるように、さらなる要素に影響を及ぼすように構成される。図示されていない他の実施形態では、ロック用要素は、回転されるように構成されたレバー、またはユーザによって直線的に変位するように構成された押しボタンもしくはスライダである。
【0068】
ロック用ピン24は、ロック用ノブ23内に配置され、ロック用ノブ23の軸の周りでロック用ノブ23と共に回転する。ロック用ピン24は、第1のハウジングセクション21の水平スリット211を通過し、ロック用ノブ23を、ロック用ノブ23の軸に沿って見て、第1のハウジングセクション21に対して、同じ位置に維持する。ロック用ピン24は、従動部品222の、1つ以上の傾斜した螺旋状の従動部221も通過する。ロック用ピン24の一部は、1つ以上の従動部221と相互作用するカム27として作用する。これにより、ロック用ノブ23が回転すると、従動部品222および第2のハウジングセクション22がロック用ノブ23軸と平行に直線変位する。
【0069】
この動きを図3および図4に示す。非動作または輸送構成(各図の左)では、第2のハウジングセクション22は、カッター6を保護するように延在される。ロック用ノブ23を時計回りに90度回転させると、カートリッジ2は、カッター6が第2のハウジングセクション22から突き出る動作構成(各図では右)になる。
【0070】
これらの2つの図では、ロック用ピン24の1つまたは両方の外側先端がロック用突出部26として作用することがさらに示されており、ロック用ノブ23が回転すると、それらは、第2のハウジングセクション22のロック用開口部28を通ってカートリッジ2から突出し、カートリッジキャリヤ10のロック用スリット12内にロックし、カートリッジ2をカートリッジキャリヤ10内で動作位置にロックする。少なくとも動作構成におけるロック用突出部26の位置の周囲のロック用スリット12の形状は、カートリッジ2がカートリッジキャリヤ10内に配置されたときのロック用開口部28の形状に本質的に対応する。
【0071】
図5は、ロック用ノブ23の動作に関連するさらなる機能を示し、以下により詳細に説明されるように、カッターユニット3は、カッターキャリヤ31に対して枢動し得るカッターヘッド4を含む。ロック用ノブ23は、カッターヘッド4と相互作用する輸送保護突起25を備え、輸送構成(図の左)では、輸送保護突起25は、カッターヘッド4がその停止位置の1つから移動することを阻止する。動作構成(図の右側)では、輸送保護突起25は、カッターヘッド4に対して回転することによって、カッターヘッド4の移動を妨げない。
【0072】
図6は、カートリッジ2の断面図を示し、カートリッジ2がカートリッジキャリヤ10内に配置されない限り、第1のハウジングセクション21と第2のハウジングセクション22との間の移動を防止する安全機構を示し、カートリッジ2の各側には、第1のハウジングセクション21と第2のハウジングセクション22との間の相対移動を妨げるように、止め291を有する戻り止め29が配置されている。戻り止め29の一部は、カートリッジ2の外側に突出している。カートリッジ2がカートリッジキャリヤ10内に配置されると、この部分はカートリッジ2の内側に向かって押され、第2のハウジングセクション22の移動を阻止する止め291は解放される。
【0073】
要約すると、実施形態によれば、カートリッジ2は、輸送構成から動作構成に不注意にもたらされ得ない。動作構成は、カートリッジ2がカートリッジキャリヤ10に挿入されたときにのみ可能であり、次いで、カッターヘッド4の輸送保護をロック解除することと、カッター6が第2のハウジングセクション22から突出するように第2のハウジングセクション22を引くことと、ロック用突出部26によってカートリッジ2をカートリッジキャリヤ10にロックすることとを含む。
【0074】
図7は、カッターユニット3をより詳細に示す。カッターヘッド4は、カッターキャリヤ31に対して、カッターピボット32の周りで回転するように構成される。図は、カッターヘッド4の重量によって下方に引っ張られた、下側停止位置にあるカッターヘッド4を示す。カッターヘッド4とは反対側のカウンタアーム41は、取付点42で、カッターばね33によって押し下げられている。カウンタアーム41に作用するばね力は、カッターヘッド4の重量とある程度平衡し、切削時にカッターヘッド4によって下方にかけられる正味の力は、特定の範囲内にある。
【0075】
この範囲は、例えば、約0.2N~0.5Nに対応する、20~50グラムの正味重量に対応する。これは、0.1N~0.2Nのカッター力と0.25~0.5Nのアドバンスボール力との間で分割され得る。
【0076】
カッターばね33は、カッターキャリヤ31に取り付けられたカッターばね33の端部を移動させることを可能にするカッターばね調節要素34によって調節可能であり、それによって、カッターばね33が延在する空間の長さを延長または短縮し、それによって、カッターばね33の予張力を変化させる。
【0077】
カートリッジ2の動作中、ブランク9の上方のカッターユニット3の高さは、例えば、カッターヘッド4の回転が下側停止位置と上側停止位置との間にあるように、キャリヤ駆動部15によってカートリッジキャリヤ10を上昇または下降させることによって、調整される。次いで、カッターヘッド4は、ブランク9が回転し、溝が切削されるにつれて、ブランク9の高さの変動に追従して、自由に上下動する。
【0078】
カッターばね33の長さは、カートリッジ2の通常動作の下でカッターヘッド4が上下動するときの取付点42の撓みと比較して相対的に長い。その結果、カッターばね33が押し下げる反力は僅かな程度までしか変化しない。
【0079】
図7は、カッター6を駆動するボイスコイル駆動部7の構成も示す。2つのボイスコイル駆動部7は、ステレオ音声信号を符号化する溝93を切削するために、各々、それぞれの力伝達シャフト733を介して、カッター6の移動を直交方向に変調するよう構成される。ボイスコイル駆動部7は、カッターヘッド4の一部であり、カッターヘッド4と共に移動する。溝93が切削されると、カッター6の高さは、アドバンスボール5によってブランク9の高さの変動に適合され、カッターヘッド4をカッターピボット32の周りで回転させる。
【0080】
典型的には、溝の深さは、50マイクロメートル未満、特に約40マイクロメートル付近である。溝の幅は、溝の深さの2倍である。
【0081】
図8は、カッターキャリヤ31に対して下側停止位置にあり、カッターピボット32の周りで上方に回転されたカッターヘッド4を示す。相対位置または変位、この場合は角度は、カッターヘッド変位センサ35によって検出可能である。カッターヘッド変位センサ35は、例えば、磁気センサ、光学センサ、誘導センサ、または容量センサであり得る。カッターヘッド変位センサ35は、変位または回転角度をそれぞれ表すアナログ値またはデジタル値を提供し得る。このセンサを使用して、キャリヤ駆動部15は、切削ヘッド4がブランク9と接触し、それによってカッターキャリヤ31に対して上昇されるまで、カートリッジキャリヤ10をブランク9上に下げることができる。このカッターヘッド4の変位の変化は、カッターヘッド変位センサ35によって検出され得、ブランク9への移動を停止し得る。カッターヘッド変位センサ35が、変位が閾値を超えたことを示すデジタルセンサ値を提供する場合、ブランク9に対するカッターユニット3の距離についての単純なオンオフ高さコントローラを実現し得る。カッターヘッド変位センサ35がアナログ距離または変位または角度値を提供する場合、ブランク9に対するカッターユニット3の距離についての連続的または準連続的な高さコントローラを実現し得る。そのような高さコントローラは、通常、ブランクに対するカッターユニットの初期高さを設定するために使用される。そして、ブランク9を切削する際、カートリッジキャリヤ10、したがってカートリッジ2の高さは変化せず、ブランク9の高さの変動は、カッターヘッド4がカッターばね33の力に抗してカッターピボット32の周りで枢動することによって吸収される。
【0082】
実施形態では、記録機1、特にキャリヤ駆動部15は、カートリッジキャリヤ10、したがってカートリッジ2の、記録機1に対する、したがってターンテーブル16に対する位置を判断するよう構成される。これにより、ターンテーブル16上に載置されたブランク9の厚みを判断することができる。
【0083】
実施形態では、記録機1は、このようにしてブランクの厚みを判断するよう、および/またはブランクが全く存在しないかどうかを判断するよう構成される。
【0084】
実施形態では、記録機1は、高さコントローラがブランク9の高さの変動に追従し得る速度でブランク9を回転させることによって、ブランク9の高さをブランク9の環状コード領域94内において測定するよう構成される。
【0085】
実施形態では、コード領域94の幅は、少なくとも1mmで20mm未満、特に10mm未満、特に5mm未満であり、コード領域94の高さの変動は、0.05mm~0.3mm、特に0.1mm~0.2mmである。
【0086】
図示されていない他の実施形態では、ブランクに関連付けられるコードまたはブランクのタイプを表す情報は、以下のうちの1つまたは組合せによって表される:
・バーコードや二次元コード等の光学コード。これは、赤外線または紫外線領域においてのみ可視であるコードを含む。そのようなコードは、ブランクに取り付けられるラベル上に印刷され得る。
・RFIDタグ。そのようなタグは、ブランクに埋め込まれ得るかまたはラベルの一部であり得る。
・ブランクもしくはラベルに埋め込まれるかまたはそれを覆う光学的または磁気的に活性な粒子。そのような粒子は、ブランクまたはラベル上に均等に分布させられ得、それによって、ブランクのタイプ等の少量の情報を表し得る。代替として、そのような粒子は、ブランク上にパターンを形成し、それによって、より多くの情報を符号化し得る。光学的に活性な粒子は、可視光またはUV光下で蛍光性であり得る。
【0087】
図9は、中心孔91と、溝93が切削される記録領域92と、コード領域94とを有する音盤のブランク9を示す。コード領域94は、ブランク9の外周に示されているが、他の実施形態では、記録領域92の径方向内側でも位置し得る。
【0088】
したがって、コード領域94においてブランクの表面の高さの変動によって表される情報を伴って、ブランク9を製造し得る。上述のように、ターンテーブル16上でブランク9を回転させ、カッターヘッド4でコード領域94内のその高さを追跡することによって、ブランク9から情報を読み取ることができる。高さは、カッターヘッド変位センサ35の読み取り値から判断され得る。実施形態では、高さは、高さコントローラを使用して、カッターヘッド変位センサ35からのフィードバックに基づいて判断され、カートリッジキャリヤ10の高さをキャリヤ駆動部15によって連続的に調整する。
【0089】
情報は、アナログ信号、またはアナログ信号としてコード化されたデジタル情報を表し得る。情報は、ブランク9の材料、ブランクのタイプのうちの1つ以上を表し得、それは、次いで、ブランクの材料および/もしくは品質、またはブランクの製造業者に関連付けられ得る。
【0090】
この情報は、典型的には制御ユニット100によって、例えばブランク9のタイプまたは材料を識別するために使用され得、これに基づいて、以下の1つ以上を実行し得る:
・ブランク9を拒否する、すなわち、ブランク9に対していかなる切削も実施しない(例えば、カッター6がブランク9の材料と適合しない場合)。
・切削された1つ以上のタイプのブランク9の数を追跡し、これに基づいて、カートリッジ2、特にカッター6の保守または交換の必要性を判定する。
・音声信号に応じてカッターの移動を駆動する駆動信号の条件付けを、ブランク9の特性、特にブランク9の材料の特性に応じた条件付けの態様で、行う。
【0091】
図10は、カッターピボット32の詳細を示し、それは、2つの円錐形摩擦軸受によって実現され、各軸受は円錐形シート322内に円錐形ピン321を含む。軸受はばね荷重式とし得る。軸受のプレストレスを調整するために、軸受力調整セクション323が存在し得る。例えば、これは、概略的にのみ示される、ばねと組み合わせたねじであり得る。
【0092】
図示されていない他の実施形態では、軸受は、特に追加の減衰要素を有する転がり軸受によって実現される。図示されていない他の実施形態では、軸受は、弾性ヒンジ(剛性継手、コンプライアント機構)によって、特に追加の減衰要素とともに、実現される。
【0093】
図11は、カッター6に対するアドバンスボール5の相対高さを調整するための調整機構の、異なる図を示す。カッター6は、カッターヘッド4の本体に取り付けられている。本体は、調整ねじ56の移動をアドバンスボール5のより小さい移動に低減するリンク機構51を担持する。アドバンスボール5は、アドバンスボールキャリヤ52上に配置され、アドバンスボールキャリヤは、接続リンク54を介して、調整ねじ56によって位置が制御される第1のリンク55に連結される。引張ばね57がアドバンスボールキャリヤピボット53に作用して、アドバンスボール5がブランク9上に載っているときに行うのと同じ方向のトルクを発生させる。引張ばね57は、リンク機構51が遊びなく動作することを保証する。調整機構は、製造公差に起因するカッター6およびアドバンスボール5の相対高さの、設計値からの偏差を補正することを可能にする。
【0094】
リンク機構51は、調整ねじ56の直線変位を少なくとも2、特に少なくとも3、特に少なくとも4の低減係数によって低減する。すなわち、この係数の分だけアドバンスボール5の変位がより小さくなる。図11の下側の2つの図は、調整ねじの2つの極端位置に対するアドバンスボール5の高さの差を示す。アドバンスボール5の、2つの対応する高さは、点線で示されている。異なる幾何学的形状を有するが、同じ原理による、他の機械的リンク機構を使用して、そのような低減を実現し得る。
【0095】
図12は、互いに対して直角である、カッターピボット32およびアドバンスボールキャリヤピボット53の相対的な向きを示す。図は、アドバンスボールキャリヤ52は、ボイスコイル駆動部7の配置の周りを通るように成形されていることも示している。直角のおかげで、カッターピボット32の周りのカッターヘッド4の角度の変動は、アドバンスボールの高さによって調整されるとおりの切削深さに有意な影響を与えない。
【0096】
本発明を本発明の好ましい実施形態で説明してきたが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲内で様々に具体化し実施し得ることを明確に理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12