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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】信号処理装置及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20241030BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H04B7/0413
H04L27/26 200
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023522932
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 CN2021107048
(87)【国際公開番号】W WO2022077985
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】202011091511.0
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】崔星星
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼英
(72)【発明者】
【氏名】張作鋒
(72)【発明者】
【氏名】別業楠
(72)【発明者】
【氏名】田▲テン▼
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0052945(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106972876(CN,A)
【文献】特表2007-529173(JP,A)
【文献】特開2011-166725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0413
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理モジュール、判断モジュール、処理モジュール及び変換モジュールを備え、
前記前処理モジュールは、各サブキャリアのチャネル行列に基づいて組み合わせ行列を生成するとともに、前記各サブキャリアのQAM信号のパラレル-シリアル変換を行って、前記各サブキャリアに対応する第1のサブ信号を含む直列QAM信号を得るように構成され、
前記判断モジュールは、前記第1のサブ信号の各要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張すべきか否かの判断結果に基づいて、対応する要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定するように構成され、
前記処理モジュールは、各要素におけるコンスタレーション点それぞれについて、前記組み合わせ行列、前記直列QAM信号及び対応する判断結果に基づいて凸最適化モデルを作成し、前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係及び前記凸最適化モデルに基づいて、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するように構成され、
前記変換モジュールは、前記組み合わせ時間領域信号のシリアル-パラレル変換を行って、前記各アンテナチャネルに対応する時間領域信号を得るように構成される
信号処理装置。
【請求項2】
前記制約関係は、実部の制約関係及び虚部の制約関係を含み、
前記判断モジュールは、前記第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張すべきと判断した場合、前記要素におけるコンスタレーション点の前記コンスタレーション図における位置に基づいて、前記要素におけるコンスタレーション点の、大なり関係、小なり関係又はイコール関係を含む実部の制約関係及び虚部の制約関係を決定するように構成される
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記判断モジュールは、
前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第1の領域に位置する場合、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係はいずれもイコール関係であると決定し、
前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第2の領域に位置する場合において、前記要素におけるコンスタレーション点と実軸との距離が予め設定された第1の閾値より小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより大きいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は大なり関係又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は小なり又はイコール関係であると決定し、
前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第2の領域に位置する場合において、前記要素におけるコンスタレーション点と虚軸との距離が予め設定された第2の閾値より小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより大きいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は大なり関係又はイコール関係であり、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は小なり又はイコール関係であり、
前記要素におけるコンスタレーション点が前記要素におけるコンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより大きい場合、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は大なり関係又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより小さい場合、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は小なり又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより大きい場合、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は大なり関係又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより小さい場合、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は小なり又はイコール関係であると決定するよう構成され、
前記第1の領域と原点との距離は、前記第2の領域と原点との距離より小さく、前記第2の領域と原点との距離は、前記第3の領域と原点との距離より小さい
請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記判断モジュールは、前記第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張すべきでないと判断した場合、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係はいずれもイコール関係であると決定するようにさらに構成される
請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記処理モジュールは、第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張すべきでないと判断した場合、Split Bregmanアルゴリズム及び前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係を用いて前記凸最適化モデルを変換し、変換された凸最適化モデルに基づいて各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するように構成される
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記処理モジュールは、前記凸最適化モデル及び前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係に基づいて初期モデルを生成し、前記初期モデルを制約関係付きの第1のモデルに変換し、前記第1のモデルを制約関係なしの第2のモデルに変換し、Split Bregmanアルゴリズムに基づいて、前記第2のモデルを第1のサブモデルに分割して、前記第1のサブモデルを最適化し、最適化された第1のサブモデルを予め設定された回数だけ反復し、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するように構成される
請求項5に記載の信号処理装置。
【請求項7】
【請求項8】
各サブキャリアのチャネル行列に基づいて組み合わせ行列を生成するとともに、前記各サブキャリアのQAM信号のパラレル-シリアル変換を行って、前記各サブキャリアに対応する第1のサブ信号を含む直列QAM信号を得るステップと、
前記第1のサブ信号の各要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張すべきか否かの判断結果に基づいて、対応する要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定するステップと、
各要素におけるコンスタレーション点それぞれについて、前記組み合わせ行列、前記直列QAM信号及び対応する判断結果に基づいて凸最適化モデルを作成するステップと、
前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係及び前記凸最適化モデルに基づいて、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するステップと、
前記組み合わせ時間領域信号のシリアル-パラレル変換を行って、前記各アンテナチャネルに対応する時間領域信号を得るステップとを含む
信号処理方法。
【請求項9】
前記制約関係は、実部の制約関係及び虚部の制約関係を含み、
前記第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張すべきか否かの判断結果に基づいて、相応のコンスタレーション点の制約関係を決定するステップは、
前記第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張すべき場合、前記要素におけるコンスタレーション点の前記コンスタレーション図における位置に基づいて、前記要素におけるコンスタレーション点の、大なり関係、小なり関係又はイコール関係を含む実部の制約関係及び虚部の制約関係を決定することを含む
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記要素におけるコンスタレーション点の前記コンスタレーション図における位置に基づいて、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係を決定するステップは、
前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第1の領域に位置する場合、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係はいずれもイコール関係であると決定することと、
前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第2の領域に位置する場合において、前記要素におけるコンスタレーション点と実軸との距離が予め設定された第1の閾値より小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係がイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより大きいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は、大なり関係又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は、小なり又はイコール関係であると決定することと、
前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第2の領域に位置する場合において、前記要素におけるコンスタレーション点と虚軸との距離が予め設定された第2の閾値より小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係がイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより大きいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は、大なり関係又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は、小なり又はイコール関係であると決定することと、
前記要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより大きい場合、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は大なり関係又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより小さい場合、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は小なり又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより大きい場合、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は大なり関係又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより小さい場合、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は小なり又はイコール関係であると決定することと、を含み、
前記第1の領域と原点との距離は、前記第2の領域と原点との距離より小さく、前記第2の領域と原点との距離は、前記第3の領域と原点との距離より小さい
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張すべきか否かの判断結果に基づいて、対応する要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定するステップは、
前記第1のサブ信号におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張すべきでない場合、前記コンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係はいずれもイコール関係であると決定するステップをさらに含む
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係及び前記凸最適化モデルに基づいて、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するステップは、
第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張すべきでない場合、Split Bregmanアルゴリズム及び前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係を用いて前記凸最適化モデルを変換し、変換された凸最適化モデルに基づいて各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するステップを含む
請求項8に記載の方法。
【請求項13】
Split Bregmanアルゴリズム及び前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係を用いて前記凸最適化モデルを変換し、変換された凸最適化モデルに基づいて各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するステップは、
前記凸最適化モデル及び前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係に基づいて初期モデルを生成するステップと、
前記初期モデルを制約関係付きの第1のモデルに変換するステップと、
前記第1のモデルを制約関係なしの第2のモデルに変換するステップと、
Split Bregmanアルゴリズムに基づいて、前記第2のモデルを第1のサブモデルに分割し、前記第1のサブモデルを最適化するステップと、
最適化された第1のサブモデルを予め設定された回数だけ反復し、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するステップとを含む
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年10月13日に提出した中国特許出願202011091511.0号の優先権を主張し、当該中国出願のすべての内容を参照により援用する。
【0002】
本開示は、通信及びデジタル信号処理の技術分野に関し、具体的には、信号処理装置及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現代の移動通信システムでは、マルチキャリア伝送技術及び高次のデジタル変調方式によって、システムのピーク電力対平均電力比(Peak-Average Power Ratio:PAPR)が一層高く、信号伝送帯域幅が一層大きくなっている。帯域幅が大きくなるに伴い、信号のPAPRも益々増加しているが、これによって送信信号の平均電力が著しく減少し、さらには電力増幅器(Power Amplifier:PA)の効率が低下してしまう。次世代無線通信システムでは、PAの効率低下がもたらす影響は一層顕著である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題を解決するため、現在、FITRAアルゴリズムを用い、大規模MIMOによるプレコーディングの高い自由度を用いて、最適プリコーディング行列を探すことで、最適プリコーディング行列によって、マルチユーザ干渉(Multi-User Interference:MUI)を除去しながら、時間領域信号のPAPRの最小化を図ることが可能となっている。元の信号が損失を受けないため、このようなアルゴリズムの誤差ベクトル振幅(Error Vector Magnitude:EVM)は性能が非常に高く、一般に悪化しない。しかし、このような解決手段は、自由度への影響が大きく、送信アンテナの数が少ないとき、例えば、従来のマイモ(Multiple-In Multiple-Out:MIMO)において送信アンテナ数/受信アンテナ数が2より小さいときにプレコーディングの自由度が低いと、PAPRを低減することのできるプレコーディング行列を探すことが難しく、PAPR性能が劣ったものとなる。したがって、このような解決手段は、従来のMIMOのシーンに用いることができず、大規模MIMOのシーン(即ち、送信アンテナ数/受信アンテナ数が2より大きいシーン)でしか使用できない。
【0005】
現在、妨害信号を追加するアルゴリズムもあり、このアルゴリズムでは、大規模MIMOによるNull Spaceの高い自由度を利用し、ノイズに最も近い信号をNull Space内で探して元の信号と相殺することによって、ノイズ信号がチャネルを通過して伝送された後にチャネルと自動的に相殺し、受信端がEVMに与える影響を除去している。このような解決手段も同様に送信アンテナの数に影響されやすく、応用シーンが限られ、従来のMIMOのシーンに使用することができない。
【0006】
このように、関連する解決手段は、PAPRを低減することはできるが、送信アンテナの数に敏感であり、大規模MIMOのシーンにしか用いることができず、送信アンテナ数の少ない従来のMIMOのシーンに応用できなるものではなく、汎用性が低い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、本開示の実施例に係る信号処理装置を提供し、前処理モジュール、判断モジュール、処理モジュール及び変換モジュールを備え、
前記前処理モジュールは、各サブキャリアのチャネル行列に基づいて組み合わせ行列を生成するとともに、前記各サブキャリアのQAM信号のパラレル-シリアル変換を行って、前記各サブキャリアに対応する第1のサブ信号を含む直列QAM信号を得るように構成され、
前記判断モジュールは、前記第1のサブ信号の各要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張しているか否かの判断結果に基づいて、対応する要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定するように構成され、
前記処理モジュールは、各要素におけるコンスタレーション点それぞれについて、前記組み合わせ行列、前記直列QAM信号及び相応の判断結果に基づいて凸最適化モデルを作成し、前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係及び前記凸最適化モデルに基づいて、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するように構成され、
前記変換モジュールは、前記組み合わせ時間領域信号のシリアル-パラレル変換を行って、前記各アンテナチャネルに対応する時間領域信号を得るように構成される。
【0008】
第2の態様は、本開示の実施例に係る信号処理信号処理方法をさらに提供し、
各サブキャリアのチャネル行列に基づいて組み合わせ行列を生成するとともに、前記各サブキャリアのQAM信号のパラレル-シリアル変換を行って、前記各サブキャリアに対応する第1のサブ信号を含む直列QAM信号を得るステップと、
前記第1のサブ信号の各要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張しているか否かの判断結果に基づいて、対応する要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定するステップと、
各要素におけるコンスタレーション点それぞれについて、前記組み合わせ行列、前記直列QAM信号及び相応の判断結果に基づいて凸最適化モデルを作成するステップと、
前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係及び前記凸最適化モデルに基づいて、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するステップと、
前記組み合わせ時間領域信号のシリアル-パラレル変換を行って、前記各アンテナチャネルに対応する時間領域信号を得るステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施例に係る信号処理装置の構造模式図である。
図2a】関連技術におけるMIMO送信機の模式図である。
図2b】本開示の実施例に係る信号処理装置の、MIMO送信機における模式図である。
図3】本開示の実施例に係る信号処理装置の動作過程を示す模式図である。
図4】本開示の実施例に係る16QAM変調信号を示すコンスタレーション図である。
図5】本開示の実施例に係る、Split Bregmanアルゴリズムを用いて凸最適化モデルを解いた模式図である。
図6】16*4 MIMOの異なる反復回数において、Split Bregmanアルゴリズムを用いて凸最適化モデルを解いたPAPR性能と関連技術的解決手段のPAPR性能とを比較した模式図である。
図7】4*4 MIMOにおいて、本開示の実施例のコンスタレーション図の拡張にかかる解決手段と関連技術的解決手段のPAPR性能を比較した模式図である。
図8】4*4 MIMOにおいて、本開示の実施例のコンスタレーション図の拡張にかかる解決手段と関連技術的解決手段のコンスタレーション図とを比較した模式図である。
図9】本開示の実施例に係る信号処理のフローチャートである。
図10】本開示の実施例に係る制約関係を決定するフローチャートである。
図11】本開示の実施例に係る、コンスタレーション図におけるコンスタレーション点の位置に基づいて制約関係を決定するフローチャートチャートである。
図12】本開示の実施例に係る、Split Bregmanアルゴリズムを用いて凸最適化モデルを解いたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して例示的実施例について詳細に説明するが、例示的実施例は、異なる形態によって実施することができ、本明細書で述べる実施例に制限されるものと理解されるべきではない。これらの実施例は、本開示が十分かつ完全なものとなり、本開示の範囲を当業者が十分理解できるように、提案するものである。
【0011】
本明細書において「及び/又は」という用語は、関連する列挙アイテムの1つ又は複数の任意及び全ての組み合わせを含む。
【0012】
本明細書で使用されている用語は、特定の実施例を説明するためのものにすぎず、本開示を限定することを意図したものではない。本明細書で使用される単数形の「1つの」及び「当該」は、文脈から明らかでない限り、複数形も含むことを意図している。また、「備える」及び/又は「……からなる」という用語が本明細書で使われている場合、特定の特徴、全体、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素が存在することを意味するが、他の特徴、全体、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群が、1つ又は複数存在すること、或いは追加されることを排除するものではない。
【0013】
本明細書に記載の実施例は、本開示の理想的な模式図によって平面図及び/又は断面図を参照して説明する場合がある。したがって、製造技術及び/又は許容範囲に基づいて例示的な図示を変更する場合がある。したがって、実施例は、図示する実施例に限定されるものではなく、製造工程に基づいて形成される構成の変更が含まれる。したがって、図示される例示的な領域は例示的な属性を有し、図示される領域の形状は要素の領域の具体的な形状を示すが、制限的なものではない。
【0014】
他の限定がない限り、本明細書で使用する用語(技術的用語及び科学的用語を含む)はすべて、当業者に通常理解されているものと同じ意味を有する。また、通常使われる辞書に定義されたような用語は、関連した技術分野及び本開示を背景とする場合と同じ意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明確に限定されない限り、理想化するか又は過度に形式的な意味に解釈してはならない。
【0015】
本開示の実施例は、信号処理装置を提供する。図1及び図3を参照すると、この信号処理装置は、前処理モジュール1、判断モジュール2、処理モジュール3及び変換モジュール4を備えている。前処理モジュール1は、各サブキャリアのチャネル行列に基づいて組み合わせ行列を生成するとともに、各サブキャリアのQAM信号のパラレル-シリアル変換を行って、各サブキャリアに対応する第1のサブ信号を含む直列QAM信号を得るように構成される。判断モジュール2は、第1のサブ信号の各要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張しているか否かの判断結果に基づいて、相応の要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定するように構成される。処理モジュール3は、各要素におけるコンスタレーション点それぞれについて、組み合わせ行列、直列QAM信号及び相応の判断結果に基づいて凸最適化モデルを作成し、各要素におけるコンスタレーション点の制約関係及び凸最適化モデルに基づいて、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するように構成される。変換モジュール4は、組み合わせ時間領域信号のシリアル-パラレル変換を行って、各アンテナチャネルに対応する時間領域信号を得るように構成される。
【0016】
本開示の実施例に係る信号処理装置において、前処理モジュールは、各サブキャリアのチャネル行列に基づいて組み合わせ行列を生成するとともに、各サブキャリアのQAM信号のパラレル-シリアル変換を行って、各サブキャリアに対応する第1のサブ信号を含む直列QAM信号を得るように構成される。判断モジュールは、第1のサブ信号の各要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張しているか否かの判断結果に基づいて、相応の要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定するように構成される。処理モジュールは、各要素におけるコンスタレーション点それぞれについて、組み合わせ行列、直列QAM信号及び相応の判断結果に基づいて凸最適化モデルを作成し、各要素におけるコンスタレーション点の制約関係及び凸最適化モデルに基づいて、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するように構成される。変換モジュールは、組み合わせ時間領域信号のシリアル-パラレル変換を行って、各アンテナチャネルに対応する時間領域信号を得るように構成される。本開示の実施例では、第1のサブ信号の各要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張しているか否かを判断し、判断結果に基づいて、各要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定する。要素におけるコンスタレーション点が拡張している場合、MIMOにおけるプレコーディングの自由度及びコンスタレーション図の自由度を同時に用いてPAPRを低減することによって自由度を増大させることができ、大規模MIMOのシーン及び従来のMIMOのシーンへの適用が可能であり、使用シーンがより広く、使用の汎用性が向上する一方で、拡張方向を制御できるため、受信端での信号の復調性能に影響せず、したがって、硬判定方式を用いれば、コンスタレーション点の判定の正確性を確保することができる。本開示の実施例は、ピーククリッピング、プレコーディング、IDFT組み合わせ処理を実現することができ、PAPRを低減しつつもEVMを悪化させず、後のピーククリッピングを省略することもでき、信号処理プロセスが簡略化される。
【0017】
図2aに示すように、関連技術におけるMIMO送信機において、信号はQAM変調を経た後、プレコーディング処理、再配列処理及びIDFT処理を順に経て、さらに拡張サイクリック・プレフィックス(Cyclic Prefix:CP)処理、ピーククリッピング処理(CFR)及びデジタルアナログ変換/無線周波数回路(DAC/RF)を経て送信され、チャネルに入る。本開示の実施例に係る信号処理装置のMIMO送信機における位置を図2bに示す。信号処理装置は、QAM変調装置の後、拡張サイクリック・プレフィックス装置の前に位置し、即ち、本開示の実施例において信号処理は、QAM変調処理の後、かつ拡張CP処理の前に行われる。図2aと図2bを比較すると分かるように、本開示の実施例に係る信号処理装置は、プレコーディング、再配列、IDFT及びCFR処理を統合して、CFR-プレコーディング-IDFTを組み合わせて処理しており、信号処理ステップ及び信号処理装置の複数の機能が簡略化されている。
【0018】
図1及び図3を参照すると、前処理モジュール1は、以下の2つの機能(1)及び(2)を有する。
【0019】
【0020】
(2)各サブキャリアのチャネル行列に基づいて組み合わせ行列を生成する。具体的には、以下の4つのステップ(a)~(d)を含む。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
いくつかの実施形態において、制約関係は、実部の制約関係及び虚部の制約関係を含む。判断モジュール2は、第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張していると判断した場合、当該要素におけるコンスタレーション点のコンスタレーション図における位置に基づいて、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係(大なり関係、小なり関係又はイコール関係を含むことができる)を決定するように構成される。
【0027】
【0028】
本開示の実施例において、要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張している場合について、各要素におけるコンスタレーション点のコンスタレーション図における位置に基づいて、各要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定する。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記判断モジュール2は、要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図における第1の領域に位置する場合、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係はいずれもイコール関係であると決定するように構成される。
【0030】
要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図における第2の領域に位置する場合において、当該要素におけるコンスタレーション点と実軸との距離が予め設定された第1の閾値より小さいとき、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係はイコール関係であると決定し、当該要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより大きいとき、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は大なり関係又はイコール関係であると決定し、当該要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより小さいとき、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は小なり又はイコール関係であると決定する。要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図における第2の領域に位置する場合において、当該要素におけるコンスタレーション点と虚軸との距離が予め設定された第2の閾値より小さいとき、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係はイコール関係であると決定し、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより大きいとき、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は大なり関係又はイコール関係であると決定し、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより小さいとき、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は小なり又はイコール関係であると決定する。
【0031】
要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ当該要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより大きい場合、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は大なり関係又はイコール関係であると決定し、要素におけるコンスタレーション点が前記コンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ当該要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより小さい場合、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は小なり又はイコール関係であると決定し、要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ当該要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより大きい場合、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は大なり関係又はイコール関係であると決定し、要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図における第3の領域に位置し、かつ当該要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより小さい場合、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は小なり又はイコール関係であると決定する。
【0032】
第1の領域と原点との距離は、第2の領域と原点との距離より小さく、第2の領域と原点との距離は、第3の領域と原点との距離より小さい。
【0033】
16QAMのコンスタレーション図を例に、要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張している場合の制約関係について説明する。図4に示す16QAMのコンスタレーション図について、コンスタレーション図におけるコンスタレーション点は、以下のA、B、Cの3種類に分けることができる。
【0034】
(1)A類コンスタレーション点:このコンスタレーション点は、コンスタレーション図の内部領域(即ち、第1の領域)に位置し、判定に影響することのないよう、これらのコンスタレーション点の悪化を許容しない。
【0035】
(2)B類コンスタレーション点:このコンスタレーション点は、コンスタレーション図の第2の領域に位置し、実部又は虚部に対する制約を緩和することができる。例えば、B1、B2、B3、B4の4つのB類コンスタレーション点は、その実部を外部に拡張してもよく、B5、B6、B7、B8の4つのB類コンスタレーション点は、その虚部を外部に拡張してもよい。
【0036】
(3)C類コンスタレーション点:このコンスタレーション点は、コンスタレーション図の第3の領域に位置し、実部及び虚部に対する制約をさらに緩和してもよい。例えば、図4に示す4つのC類コンスタレーション点は、その実部及び虚部を同時に外部に拡張してもよい。
【0037】
なお、要素におけるコンスタレーション点が第1の領域、第2の領域、第3の領域に位置することの判断条件は、予め設定されてもよい。例えば、第1の領域、第2の領域、第3の領域の境界と実軸及び虚軸との間の距離を設定することにより、第1の領域、第2の領域、第3の領域の大きさ、及びコンスタレーション図における位置を定義することによって実現してもよい。
【0038】
【0039】
要素におけるコンスタレーション点がB類コンスタレーション点である場合、即ち、要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図における第2の領域に位置する場合、以下の2つのシーンに分ける必要がある。
【0040】
シーン1:要素におけるコンスタレーション点と実軸との距離が予め設定された第1の閾値より小さい場合、即ち、要素におけるコンスタレーション点が実軸附近(即ち、B1、B2、B3、B4)に位置する場合、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係はイコール関係(=)である。当該要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより大きい(即ち、B3、B4)場合、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は、大なり又はイコール関係(≧)である。当該要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより小さい(即ち、B1、B2)場合、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は、小なり又はイコール関係(≦)である。
【0041】
シーン2:要素におけるコンスタレーション点と虚軸との距離が予め設定された第2の閾値より小さい場合、即ち、要素におけるコンスタレーション点が虚軸附近(即ち、B5、B6、B7、B8)に位置する場合、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係はイコール関係(=)である。当該要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより大きい(即ち、B5、B6)場合、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は、大なり又はイコール関係(≧)である。当該要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより小さい(即ち、B7、B8)場合、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は、小なり又はイコール関係(≦)である。
【0042】
要素におけるコンスタレーション点がC類コンスタレーション点である場合において、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより大きいときには、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は、大なり又はイコール関係(≧)であり、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより小さいときには、当該要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は、小なり又はイコール関係(≦)であり、当該要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより大きいときには、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は、大なり又はイコール関係(≧)であり、当該要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより小さいときには、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は、小なり又はイコール関係(≦)である。
【0043】
【0044】
判断モジュール2は、第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張していると判断した場合、当該要素におけるコンスタレーション点のコンスタレーション図における位置に基づいて、当該要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係を決定する。図4における16QAMコンスタレーション図を例に説明する。図4において、各要素におけるコンスタレーション点の制約関係は、以下のように表すことができる。
【0045】
【0046】
(2)B類コンスタレーション点は、以下の2つのシーンに分かれる。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
処理モジュール3は、最終的に、制約関係付きの凸最適化モデルを解き、PAPRが低減された時間領域信号を得る。要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張している場合ついて、一般的な凸最適化の解法(例えば、勾配降下法、ニュートン反復法等)を用いて凸最適化モデルを解くことができる。なお、このような制約関係は唯一のものではなく、例えば、コンスタレーション図が外部に著しく拡張するのを防止するために、外部に拡張する境界を制約して、コンスタレーション図全体の最大値がある特定値を超えないようにしてもよい。コンスタレーション図を有限に拡張することは、すべて本開示の実施例の保護範囲にある。
【0051】
いくつかの実施形態において、処理モジュール3は、第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張していないと判断した場合、Split Bregmanアルゴリズム及び各要素におけるコンスタレーション点の制約関係を用いて凸最適化モデルを変換し、変換された凸最適化モデルに基づいて各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するように構成される。
【0052】
いくつかの実施形態において、処理モジュール3は、凸最適化モデル及び各要素におけるコンスタレーション点の制約関係に基づいて初期モデルを生成し、初期モデルを制約関係付きの第1のモデルに変換し、第1のモデルを制約関係なしの第2のモデルに変換し、Split Bregmanアルゴリズムに基づいて第2のモデルを第1のサブモデルに分割して、第1のサブモデルを最適化し、最適化された第1のサブモデルを予め設定された回数だけ反復し、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するように構成される。
【0053】
【0054】
図12を参照し、要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張していない場合、Split Bregmanアルゴリズムを用いて凸最適化モデルを解くプロセスについて詳細に説明する。
【0055】
【0056】
処理モジュール3がSplit Bregmanアルゴリズムを用いて凸最適化モデルを解くプロセスは、以下のステップS31~S36を含む。
【0057】
ステップS31では、凸最適化モデル及び各要素におけるコンスタレーション点の制約関係に基づいて、制約関係なしの初期モデルを生成する。
【0058】
【0059】
ステップS32では、初期モデルを制約関係付きの第1のモデルに変換する。
【0060】
【0061】
ステップS33では、第1のモデルを制約関係なしの第2のモデルに変換する。
【0062】
【0063】
【0064】
ステップS34では、Split Bregmanアルゴリズムに基づいて、第2のモデルを第1のサブモデルに分割する。
【0065】
【0066】
ステップS35では、第1のサブモデルを最適化する。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
なお、無限ノルム制約は、2ノルム制約を含むため、切り捨てることができる。
【0074】
ステップS362は、以下のステップa~cを含んでもよい。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
なお、先に第1のサブモデルを最適化したときにパラメータbを定義したため、毎回の反復プロセスにおいてさらにパラメータbの値を更新する必要がある。したがって、ステップS361及びステップS362を実行した後、ステップS363をさらに実行する。
【0080】
ステップS363では、パラメータbを更新する。
【0081】
【0082】
【0083】
図6は、基地局端の送信アンテナ数がM=16、シングルアンテナユーザの数がK=4(即ち、16*4 MIMO)の場合において、サブキャリアの数がN=1024であるとき、異なる反復回数でSplit Bregmanアルゴリズムを用いて凸最適化モデルを解いたPAPR性能と関連技術的解決手段のPAPR性能とを比較した模式図である。図6から分かるように、反復回数が等しい場合、Split Bregmanアルゴリズムを用いて凸最適化モデルを解いたPAPR性能は、関連技術的解決手段FITRAによるPAPR性能より明らかに優れている。PAPRが等しい場合、本開示の実施例の解決手段を用いたときに必要とされる反復回数は、関連技術的解決手段FITRAが必要とする反復回数より明らかに少ない。関連技術的解決手段に比べ、本開示の実施例の性能の優位性は非常に顕著である。
【0084】
図7は、基地局端の送信アンテナ数がM=16、シングルアンテナユーザの数がK=4(即ち、16*4 MIMO)の場合において、サブキャリアの数がN=1024であるとき、コンスタレーション点の拡張にかかる解決手段と関連技術的解決手段のPAPR性能を比較した模式図である。図7から分かるように、本開示の実施例のコンスタレーション点の拡張にかかる解決手段のPAPRは、6.9dB程度であるのに対し、関連技術的解決手段のPAPRは、9.6dB程度であり、当該シーンにおいて、関連技術的解決手段に比べ、本開示の実施例のコンスタレーション点の拡張にかかる解決手段はPAPRが2.7dB改善しており、その優位性は顕著である。本開示の実施例のコンスタレーション点の拡張にかかる解決手段のピーククリッピング性能は、関連技術的解決手段のそれより著しく優れている。
【0085】
図8は、4*4 MIMOにおける本開示の実施例のコンスタレーション点の拡張に係る解決手段と関連技術解決手段のコンスタレーション図とを比較した模式図である。図8から分かるように、本開示の実施例のコンスタレーション点の拡張にかかる解決手段では、PAPRが低減された後に、コンスタレーション図の外側のコンスタレーション点が顕著に拡張しているのに対し、関連技術的解決手段のコンスタレーション図におけるコンスタレーション点では拡張が生じていない。なお、このようなコンスタレーション点の拡張は、コンスタレーション図の硬判定に影響せず、ビットストリームの判定ミスにつながらないため、受信端の復調に実質的に影響しない。
【0086】
関連技術におけるPAPR低減の解決手段に比べ、本開示の実施例に係る信号処理の解決手段を用いてPAPRを低減することには、以下の利点がある。
【0087】
(1)応用シーンがより広く、要素におけるコンスタレーション点が拡張しているか否かの判断が追加されるため、すべてのMIMOのシーンで使用できる。
【0088】
(2)ピーククリッピング性能がより優れており、関連技術的解決手段に比べ、Split Bregmanアルゴリズムに基づいて反復して凸最適化モデルを解く解決手段では、より少ない反復回数で同等のピーククリッピング性能が得られ、収斂速度がさらに速い。
【0089】
本開示の実施例が提示する信号処理の解決手段は、プレコーディング及びコンスタレーション点の拡張を適宜設計することによってPAPRを低減するものであり、従来のMIMOのシーン(即ち、送信アンテナ数/受信アンテナ数が2より小さいMIMOのシーン。例えば、4*4 MIMOのシーン、8*8 MIMOのシーン)及び大規模MIMOのシーン(即ち、送信アンテナ数/受信アンテナ数が2より大きいMIMOのシーン。例えば、32*4 MIMOのシーン、64*4 MIMOのシーン等)に適用することができる。要素におけるコンスタレーション点が拡張している場合であれば、自由度がさらに増し、いかなるMIMOのシーンでも当該信号処理の解決手段を使用することができる。要素におけるコンスタレーション点が拡張していない場合には、当該信号処理の解決手段は、大規模MIMOのシーンに適用される。要素におけるコンスタレーション点を拡張しないシーンについては、Split Bregmanアルゴリズムを用いて凸最適化モデルを解くことで、反復回数が少なくてすむようになっており、即ち、システム信号のPAPRを大幅に低減することができ、性能と複雑度との間でバランスを図ることができる。関連技術的解決手段と比べ、MIMOにおけるプレコーディングの自由度だけでなく、コンスタレーション図の自由度も利用することができ、応用シーンが広がり、信号のピーククリッピングを行わないため、EVMが悪化しない。
【0090】
本開示の実施例において、信号処理装置によって処理される信号は、ロングターム・エボリューション(Long Term Evolution:LTE)信号であってもよいし、次世代通信システムにおけるニューラジオ(New Radio:NR)信号であってもよい。
【0091】
本開示の実施例は、信号処理方法をさらに提供する。図1及び9を参照すると、前記方法は、以下のステップS11~S15を含んでもよい。
【0092】
ステップS11では、各サブキャリアのチャネル行列に基づいて組み合わせ行列を生成するとともに、各サブキャリアのQAM信号のパラレル-シリアル変換を行って、各サブキャリアに対応する第1のサブ信号を含む直列QAM信号を得る。
【0093】
ステップS12では、前記第1のサブ信号の各要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張しているか否かの判断結果に基づいて、相応のコンスタレーション点の制約関係を決定する。
【0094】
ステップS13では、各要素におけるコンスタレーション点それぞれについて、前記組み合わせ行列、前記直列QAM信号及び相応の判断結果に基づいて凸最適化モデルを作成する。
【0095】
ステップS14では、前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係及び前記凸最適化モデルに基づいて、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定する。
【0096】
ステップS15では、前記組み合わせ時間領域信号のシリアル-パラレル変換を行って、前記各アンテナチャネルに対応する時間領域信号を得る。
【0097】
本開示の実施例に係る信号処理方法では、各サブキャリアのチャネル行列に基づいて組み合わせ行列を生成するとともに、各サブキャリアのQAM信号のパラレル-シリアル変換を行って、各サブキャリアに対応する第1のサブ信号を含む直列QAM信号を得る。前記第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張しているか否かの判断結果に基づいて、相応の要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定する。各要素におけるコンスタレーション点それぞれについて、前記組み合わせ行列、前記直列QAM信号及び相応の判断結果に基づいて凸最適化モデルを作成し、前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係及び前記凸最適化モデルに基づいて、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定する。前記組み合わせ時間領域信号のシリアル-パラレル変換を行って、前記各アンテナチャネルに対応する時間領域信号を得る。本開示の実施例では、第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張しているか否かを判断し、拡張判断結果に基づいて、各要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定する。要素におけるコンスタレーション点が拡張している場合、MIMOにおけるプレコーディングの自由度及びコンスタレーション図の自由度を同時に用いてPAPRを低減することによって自由度を増大させることができ、大規模MIMOのシーン及び従来のMIMOのシーンへの適用が可能であり、使用シーンがより広く、使用の汎用性が向上する一方で、拡張方向を制御できるため、受信端での信号の復調性能に影響せず、したがって、硬判定方式を用いれば、コンスタレーション点の判定の正確性を確保することができる。本開示の実施例は、ピーククリッピング、プレコーディング、IDFT組み合わせ処理を実現することができ、PAPRを低減しつつもEVMを悪化させず、後のピーククリッピングを省略することもでき、信号処理プロセスが簡略化される。
【0098】
いくつかの実施形態において、制約関係は、実部の制約関係及び虚部の制約関係を含む。図10に示すように、前記第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張しているか否かの判断結果に基づいて、相応の要素におけるコンスタレーション点の制約関係を決定するステップは、以下のステップS21~S23を含んでもよい。
【0099】
ステップS21では、第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張しているか否かを判断する。拡張していない場合、ステップS23を実行し、拡張している場合、ステップS22を実行する。
【0100】
ステップS22では、前記要素におけるコンスタレーション点の前記コンスタレーション図における位置に基づいて、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係を決定する。
【0101】
前記実部の制約関係及び前記虚部の制約関係は、大なり関係、小なり関係又はイコール関係を含む。前記要素におけるコンスタレーション点の前記コンスタレーション図における位置に基づいて、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係を決定する。図11を参照して後で詳細に説明する。
【0102】
ステップS23では、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係はいずれもイコール関係であると決定する。
【0103】
以下、図11を参照して、前記要素におけるコンスタレーション点の前記コンスタレーション図における位置に基づいて、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係を決定するステップ(即ち、ステップS22)の実現プロセスについて詳細に説明する。図11に示すように、前記ステップS22は、以下のステップS221~S226を含む。
【0104】
ステップS221では、要素におけるコンスタレーション点のコンスタレーション図における位置を判断する。要素におけるコンスタレーション点が第1の領域に位置する場合、ステップS222を実行し、要素におけるコンスタレーション点が第2の領域に位置する場合、ステップS223を実行し、要素におけるコンスタレーション点が第3の領域に位置する場合、ステップS224を実行する。
【0105】
ステップS222では、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係及び虚部の制約関係はいずれもイコール関係であると決定する。
【0106】
ステップS223では、前記要素におけるコンスタレーション点と実軸との距離が予め設定された第1の閾値より小さい場合、ステップS225を実行し、前記要素におけるコンスタレーション点と虚軸との距離が予め設定された第2の閾値より小さい場合、ステップS226を実行する。
【0107】
ステップS224では、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより大きいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は、大なり又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は、小なり又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより大きいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は、大なり関係又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は、小なり又はイコール関係であると決定する。
【0108】
ステップS225では、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係がイコール関係であると決定した場合において、前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより大きいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は、大なり関係又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の実部がゼロより小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係は、小なり又はイコール関係であると決定する。
【0109】
ステップS226では、前記要素におけるコンスタレーション点の実部の制約関係がイコール関係であると決定した場合において、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより大きいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は、大なり関係又はイコール関係であると決定し、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部がゼロより小さいとき、前記要素におけるコンスタレーション点の虚部の制約関係は、小なり又はイコール関係であると決定する。
【0110】
【0111】
いくつかの実施形態において、前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係及び前記凸最適化モデルに基づいて、各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するステップ(即ち、ステップS14)は、第1のサブ信号の要素におけるコンスタレーション点がコンスタレーション図において拡張していない場合、Split Bregmanアルゴリズム及び各要素におけるコンスタレーション点の制約関係を用いて前記凸最適化モデルを変換し、変換された凸最適化モデルに基づいて各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するステップを含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、図12に示すように、Split Bregmanアルゴリズム及び前記各要素におけるコンスタレーション点の制約関係を用いて前記凸最適化モデルを変換し、変換された凸最適化モデルに基づいて各アンテナチャネルの組み合わせ時間領域信号を決定するステップは、以下のステップS31~S36を含む。
【0113】
ステップS31では、凸最適化モデル及び各要素におけるコンスタレーション点の制約関係に基づいて、制約関係なしの初期モデルを生成する。
【0114】
【0115】
ステップS32では、初期モデルを制約関係付きの第1のモデルに変換する。
【0116】
【0117】
ステップS33では、第1のモデルを制約関係なしの第2のモデルに変換する。
【0118】
【0119】
【0120】
ステップS34では、Split Bregmanアルゴリズムに基づいて、第2のモデルを第1のサブモデルに分割する。
【0121】
【0122】
ステップS35では、第1のサブモデルを最適化する。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
本明細書では、例示的な実施例を開示しており、具体的な用語を用いたが、それらは一般的な説明的な意味にのみ用いられ解釈されるべきであり、限定を目的としたものではない。いくつかの例では、特に明記しない限り、特定の実施例に関連して説明された特徴、特性及び/又は要素を単独で使用してもよいし、他の実施例と関連して説明された特徴、特性及び/又は要素と組み合わせて使用してもよいことが当業者には自明である。したがって、添付の特許請求の範囲によって示される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な形態および詳細における変更が可能であることを当業者は理解するであろう。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12