(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】電動機または発電機の電流を決定する方法、デバイス、およびコンピュータで読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
H02P 21/22 20160101AFI20241030BHJP
H03H 17/02 20060101ALI20241030BHJP
H03H 17/04 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H02P21/22
H03H17/02 601R
H03H17/04 613A
(21)【出願番号】P 2023524537
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(86)【国際出願番号】 KR2020095141
(87)【国際公開番号】W WO2022085866
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0136251
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518304915
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ オーシャン サイエンス テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スン,ソ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】カン,へ ジン
(72)【発明者】
【氏名】シム,ヒュン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンシク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユンホ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジャン ピョ
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220407(JP,A)
【文献】特開2000-206167(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049328(WO,A1)
【文献】特表2014-507108(JP,A)
【文献】特開2017-135513(JP,A)
【文献】特表2002-530987(JP,A)
【文献】特開2014-138539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/22
H03H 17/02
H03H 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機または発電機の電流を決定する方法において、
前記電動機または前記発電機の電流を決定する過程で発生するノイズをフィルタリングするフィルタの特性を取得する段階と、
前記電動機または前記発電機の動作周波数の変化による前記フィルタの特性を示す位相の変化に基づいて前記フィルタによって発生する時間遅延を決定する段階と、
前記時間遅延を補償して前記電動機または前記発電機の電流を決定する段階と、を含み、
前記時間遅延を決定する段階は、
前記フィルタの特性を示す伝達関数の位相を前記動作周波数で微分して前記時間遅延を決定し、
前記伝達関数の位相は、前記動作周波数の関数として表わされ、
前記伝達関数(G
2(s))が下記の数学式(1)を満足する時、
前記時間遅延(ρ
2)は下記の数学式(2)を満足する、方法。
【数1】
(ここで、ωは動作周波数であり、ω
n
は遮断周波数であり、sは周波数領域演算子であり、ζは減衰指数である。)
【請求項2】
電動機または発電機の電流を決定する方法において、
前記電動機または前記発電機の電流を決定する過程で発生するノイズをフィルタリングするフィルタの特性を取得する段階と、
前記電動機または前記発電機の動作周波数の変化による前記フィルタの特性を示す位相の変化に基づいて前記フィルタによって発生する時間遅延を決定する段階と、
前記時間遅延を補償して前記電動機または前記発電機の電流を決定する段階と、を含み
、
前記時間遅延を決定する段階は、
前記フィルタの特性を示す伝達関数の位相を前記動作周波数で微分して前記時間遅延を決定し、
前記伝達関数の位相は、前記動作周波数の関数として表わされ、
前記伝達関数(G
1(s))が下記の数学式(3)を満足する時、
前記時間遅延(ρ
1)は下記の数学式(4)を満足する、方法。
【数2】
(ここで、ωは動作周波数であり、ω
n
は遮断周波数であり、sは周波数領域演算子であり、Ψ
1
は第1位相関数である。)
【請求項3】
電動機または発電機の電流を決定する方法において、
前記電動機または前記発電機の電流を決定する過程で発生するノイズをフィルタリングするフィルタの特性を取得する段階と、
前記電動機または前記発電機の動作周波数の変化による前記フィルタの特性を示す位相の変化に基づいて前記フィルタによって発生する時間遅延を決定する段階と、
前記時間遅延を補償して前記電動機または前記発電機の電流を決定する段階と、を含み、
前記時間遅延を決定する段階は、
前記フィルタの特性を示す伝達関数の位相を前記動作周波数で微分して前記時間遅延を決定し、
前記伝達関数の位相は、前記動作周波数の関数として表わされ、
前記伝達関数(A(s))が下記の数学式(5)を満足する時、
前記時間遅延(ρ
S)は下記の数学式(6)を満足する、方法。
【数3】
(ここで、ωは動作周波数であり、ω
n
は遮断周波数であり、sは周波数領域演算子であり、R
1
は第1抵抗値であり、R
2
は第2抵抗値であり、C
1
は第1キャパシタンスであり、C
2
は第2キャパシタンスであり、k
1
は第1フィルタ係数であり、k
2
は第2フィルタ係数である。)
【請求項4】
前記フィルタの特性を示す利得および前記フィルタの特性を示す位相は前記動作周波数により決定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記発電機の電流を決定する段階は、
前記時間遅延に前記動作周波数をかけて取得した値に基づいて前記電動機または前記発電機の電流の位相を更新する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記動作周波数と前記時間遅延(ρ
2)との関係は、下記数学式(7)を満足し、
前記減衰指数(ζ)は0以上1以下である、請求項1に記載の方法。
【数4】
【請求項7】
電動機または発電機の電流を決定するデバイスにおいて、
前記電動機または前記発電機の電流を決定する過程で発生するノイズをフィルタリングするフィルタと、
前記フィルタの特性を取得し、前記電動機または前記発電機の動作周波数の変化による前記フィルタの特性を示す位相の変化に基づいて前記フィルタによって発生する時間遅延を決定し、前記時間遅延を補償して前記電動機または前記発電機の電流を決定するプロセッサと、を含み、
前記プロセッサは、
前記フィルタの特性を示す伝達関数の位相を前記動作周波数で微分して前記時間遅延を決定し、
前記伝達関数の位相は、前記動作周波数の関数として表わされ、
前記伝達関数(G
2(s))が下記の数学式(1)を満足する時、
前記時間遅延(ρ
2)は下記の数学式(2)を満足する、デバイス。
【数5】
(ここで、ωは動作周波数であり、ω
n
は遮断周波数であり、sは周波数領域演算子であり、ζは減衰指数である。)
【請求項8】
電動機または発電機の電流を決定するデバイスにおいて、
前記電動機または前記発電機の電流を決定する過程で発生するノイズをフィルタリングするフィルタと、
前記フィルタの特性を取得し、前記電動機または前記発電機の動作周波数の変化による前記フィルタの特性を示す位相の変化に基づいて前記フィルタによって発生する時間遅延を決定し、前記時間遅延を補償して前記電動機または前記発電機の電流を決定するプロセッサと、を含み、
前記プロセッサは、
前記フィルタの特性を示す伝達関数の位相を前記動作周波数で微分して前記時間遅延を決定し、
前記伝達関数の位相は、前記動作周波数の関数として表わされ、
前記伝達関数(G
1(s))が下記の数学式(3)を満足する時、
前記時間遅延(ρ
1)は下記の数学式(4)を満足する、デバイス。
【数6】
(ここで、ωは動作周波数であり、ω
n
は遮断周波数であり、sは周波数領域演算子であり、Ψ
1
は第1位相関数である。)
【請求項9】
電動機または発電機の電流を決定するデバイスにおいて、
前記電動機または前記発電機の電流を決定する過程で発生するノイズをフィルタリングするフィルタと、
前記フィルタの特性を取得し、前記電動機または前記発電機の動作周波数の変化による前記フィルタの特性を示す位相の変化に基づいて前記フィルタによって発生する時間遅延を決定し、前記時間遅延を補償して前記電動機または前記発電機の電流を決定するプロセッサと、を含み、
前記プロセッサは、
前記フィルタの特性を示す伝達関数の位相を前記動作周波数で微分して前記時間遅延を決定し、
前記伝達関数の位相は、前記動作周波数の関数として表わされ、
前記伝達関数(A(s))が下記の数学式(5)を満足する時、
前記時間遅延(ρ
S)は下記の数学式(6)を満足する、デバイス。
【数7】
(ここで、ωは動作周波数であり、ω
n
は遮断周波数であり、sは周波数領域演算子であり、R
1
は第1抵抗値であり、R
2
は第2抵抗値であり、C
1
は第1キャパシタンスであり、C
2
は第2キャパシタンスであり、k
1
は第1フィルタ係数であり、k
2
は第2フィルタ係数である。)
【請求項10】
前記フィルタの特性を示す利得および前記フィルタの特性を示す位相は前記動作周波数により決定される、請求項7~9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記時間遅延に前記動作周波数をかけて取得した値に基づいて前記電動機または前記発電機の電流の位相を更新する、請求項7~9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記動作周波数と前記時間遅延(ρ
2)との関係は、下記数学式(7)を満足し、
前記減衰指数(ζ)は0以上1以下である、請求項7に記載のデバイス。
【数8】
【請求項13】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載された方法をコンピュータで実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電動機または発電機の電流を決定する方法およびデバイスに関し、さらに詳細には、フィルタによって発生する時間遅延を効果的に補償して電動機または前記発電機の電流を制御できる方法、デバイス、およびコンピュータで読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、3相の同期電動機/発電機の制御システムは、PWM(Pulse Width Modulation)を使う電力転換部とトルク/電流/速度/位置などを制御するためのリアルタイム制御部で構成される。最も基本的に、トルク制御のためには電動機/発電機の電流信号を測定して3相の回転座標系を2相の停止座標系に変換した後、回転子の位置情報に基づいて電流制御を遂行して所望のトルクを生成する。この時、3相同期電動機/発電機の電流測定のためにはホールセンサ(Hall Sensor)のような非接触センサを使用し、電流信号に含まれた電気的雑音とPWMのような高調波雑音信号を除去するために低域通過フィルタを使うことが必須である。電流信号測定のために使う低域通過フィルタは、アナログフィルタとデジタルフィルタなどの多様な形態で構成することができる。しかし、フィルタの影響によって、フィルタの出力信号は入力信号に比べて時間遅延が発生することになる。このような時間遅延を群遅延(Group delay)といい、測定された電流信号と回転子位置情報の同期が群遅延だけ差が発生することになって、同期電動機/発電機制御システムの2相停止座標系のd-q軸の位相がずれてしまう結果をもたらし、最適の性能を得られない結果を引き起こす。
【0003】
これを解決するために、電流測定時にフィルタの帯域幅を電動機/発電機の基本駆動周波数より大きく設定して群遅延を制御可能な水準に最小化するか、簡単な1次のRCフィルタのように群遅延を容易に求めることができる場合にはルックアップ(Look up)テーブルを活用して補償する技法が提案されてきた。
【0004】
しかし、このような方法は電動機の同期抵抗およびインダクタンスが非常に小さい高速機器では使うのが難しい側面があり、PWMによって生成される高周波雑音および電力転換素子のスイッチング雑音を効果的に除去できない問題点がある。このような問題を解決するためには、電流測定センサ部に少なくとも2次以上のフィルタとデジタル電動機制御アルゴリズム演算のために使うADC(Analog-Digital Converter)の前段にAAF(Anti-Aliasing Filter)を設置し、ADCを通過した信号にFIRフィルタのようなデジタルフィルタを使って電気的雑音を除去しなければならないが、前述したように、フィルタの性能が高くなるとフィルタによる遅延時間も共に増加する結果をもたらして電動機/発電機の制御性能を低下させる原因として作用する。
【0005】
したがって、前述した問題点を解決するための技術に対する要求が次第に増大している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一実施例は前述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、フィルタによって発生する時間遅延を効果的に補償して電動機または前記発電機の電流を制御できる方法、デバイス、およびコンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することができる。
【0007】
本開示の目的は以上で言及した目的に制限されず、言及されていないさらに他の目的は下記の記載から明確に理解され得るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1側面に係る電動機または発電機の電流を決定する方法は、前記電動機または前記発電機の電流を決定する過程で発生するノイズをフィルタリングするフィルタの特性を取得する段階;前記電動機または前記発電機の動作周波数の変化による前記フィルタの特性を示す位相の変化に基づいて前記フィルタによって発生する時間遅延を決定する段階;および前記時間遅延を補償して前記電動機または前記発電機の電流を決定する段階;を含むことができる。
【0009】
また、前記フィルタの特性を示す大きさおよび前記フィルタの特性を示す位相は前記動作周波数により決定され得る。
【0010】
また、前記フィルタは低域通過フィルタ、アンチエイリアシング(anti-aliasing)フィルタおよびFIR(finite impulse response)フィルタのうち少なくとも一つを含むことができる。
【0011】
また、前記フィルタは低域通過フィルタ、アンチエイリアシング(anti-aliasing)フィルタおよびFIR(finite impulse response)フィルタを含み、前記低域通過フィルタによって発生する第1時間遅延、前記アンチエイリアシングフィルタによって発生する第2時間遅延および前記FIRフィルタによって発生する第3時間遅延を足して前記時間遅延を決定することができる。
【0012】
また、前記発電機の電流を決定する段階は、前記時間遅延に前記動作周波数をかけて取得した値に基づいて前記電動機または前記発電機の電流の位相を更新することができる。
【0013】
また、前記時間遅延を決定する段階は、前記フィルタの特性を示す伝達関数の位相を前記動作周波数で微分して前記時間遅延を決定し、前記伝達関数の位相は前記動作周波数を変数入力で利用することができる。
【0014】
また、前記伝達関数(G2(s))が下記の数学式(1)を満足する時、前記時間遅延(ρ2)は下記の数学式(2)を満足することができる。
【0015】
【0016】
本開示の第2側面に係る電動機または発電機の電流を決定するデバイスは、前記電動機または前記発電機の電流を決定する過程で発生するノイズをフィルタリングするフィルタ;および前記フィルタの特性を取得し、前記電動機または前記発電機の動作周波数の変化による前記フィルタの特性を示す位相の変化に基づいて前記フィルタによって発生する時間遅延を決定し、前記時間遅延を補償して前記電動機または前記発電機の電流を決定するプロセッサ;を含むことができる。
【0017】
また、前記フィルタの特性を示す大きさおよび前記フィルタの特性を示す位相は前記動作周波数により決定され得る。
【0018】
また、前記フィルタは低域通過フィルタ、アンチエイリアシング(anti-aliasing)フィルタおよびFIR(finite impulse response)フィルタのうち少なくとも一つを含むことができる。
【0019】
また、前記フィルタは低域通過フィルタ、アンチエイリアシング(anti-aliasing)フィルタおよびFIR(finite impulse response)フィルタを含み、前記低域通過フィルタによって発生する第1時間遅延、前記アンチエイリアシングフィルタによって発生する第2時間遅延および前記FIRフィルタによって発生する第3時間遅延を足して前記時間遅延を決定することができる。
【0020】
また、前記プロセッサは前記時間遅延に前記動作周波数をかけて取得した値に基づいて前記電動機または前記発電機の電流の位相を更新することができる。
【0021】
また、前記プロセッサは前記フィルタの特性を示す伝達関数の位相を前記動作周波数で微分して前記時間遅延を決定し、前記伝達関数の位相は前記動作周波数を変数入力で利用することができる。
【0022】
また、前記伝達関数(G2(s))が下記の数学式(1)を満足する時、
前記時間遅延(ρ2)は下記の数学式(2)を満足することができる。
【0023】
【0024】
本開示の第3側面は第1側面に係る方法をコンピュータで実行させるためのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することができる。または本開示の第4側面は第1側面に係る方法を具現するために記録媒体に保存されたコンピュータプログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一実施例によると、フィルタによって発生する時間遅延を効果的に補償して電動機または前記発電機の電流を制御することができる。
【0026】
また、電動機/発電機制御システムで使用できる多様なフィルタに対する特性分析に基づいてフィルタの時間遅延に対する最適な補償を遂行できる。
【0027】
また、効果的な時間遅延の補償により機械的出力、回転速度、同一電流でのトルクなどを顕著に改善することができる。
【0028】
本開示の効果は前記の効果に限定されるものではなく、本開示の詳細な説明または特許請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一実施例に係る電流決定デバイスの構成を概略的に図示したブロック図である。
【
図2】一実施例に係る電流決定デバイスの構成の一例をより具体的に図示したブロック図である。
【
図3】第6実施例に係るフィルタのブロック図を示す。
【
図4】第6実施例に係るデバイスの動作を説明するための概念図を示す。
【
図5】第4実施例に係るサレンキー方式の低域通過フィルタの回路図を示す。
【
図6】第4実施例に係るデバイスが複数個の類型のフィルタそれぞれに対して決定した大きさ特性および時間遅延特性に対するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図7】第4実施例に係るデバイスが複数個の類型のフィルタそれぞれに対して決定した大きさ特性および時間遅延特性に対するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図8】第6実施例により多様なフィルタが結合されたデバイスの周波数応答特性に対するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】一実施例に係るデバイスが電動機または発電機の電流を決定する方法を説明するためのフローチャートである。
【
図10】一実施例に係るデバイスが時間遅延を効果的に補償することによって改善されるシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図11】一実施例に係るデバイスが時間遅延を効果的に補償することによって改善されるシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図12】一実施例に係るデバイスが時間遅延を効果的に補償することによって改善されるシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図13】一実施例に係るデバイスが時間遅延を効果的に補償することによって改善されるシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図14】一実施例に係るデバイスが時間遅延を効果的に補償することによって改善されるシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図15】一実施例に係るデバイスが時間遅延を効果的に補償することによって改善されるシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施例で使われる用語は本開示での機能を考慮しつつ、できる限り現在広く使われる一般的な用語を選択したが、これは当分野に従事する技術者の意図または判例、新しい技術の出現などにより変わり得る。また、特定の場合には出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、該当する発明の説明の部分で詳細にその意味を記載するであろう。したがって、本開示で使われる用語は単純な用語の名称ではない、その用語が有する意味と本開示の全般にわたった内容に基づいて定義されるべきである。
【0031】
明細書全体において或る部分が何らかの構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対の記載がない限り他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、明細書に記載された「…部」、「…モジュール」等の用語は少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、これはハードウェアまたはソフトウェアで具現されるかハードウェアとソフトウェアの結合で具現され得る。
【0032】
下記では添付した図面を参照して本開示の実施例について、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本開示は多様な異なる形態で具現され得、ここで説明する実施例に限定されない。
【0033】
以下では、図面を参照して本開示の実施例を詳細に説明する。
【0034】
図1は、一実施例に係る電流決定デバイス1000の構成を概略的に図示したブロック図である。
【0035】
図1を参照すると、電流決定デバイス1000はフィルタ100およびプロセッサ200を含むことができる。
【0036】
フィルタ100は電動機または発電機10の電流を決定する過程で発生するノイズをフィルタリングでき、例えば、フィルタ100の前段に配置されて電動機または発電機10の電流信号を測定する電流センサ部(図示されず)から電流信号を受信し、電流信号に含まれたノイズを除去して出力することができる。
【0037】
一実施例において、フィルタ100は低域通過フィルタ110、アンチエイリアシング(anti-aliasing)フィルタ120およびFIR(finite impulse response)フィルタ130のうち少なくとも一つを含むことができるが、これに制限されるものではなく、電動機または発電機10の電流を制御する過程で要求される多様な種類のフィルタをさらに含むことができ、アナログフィルタとデジタルフィルタなどの多様な形態で構成され得る。
【0038】
一実施例において、フィルタ100は1次以上の次数を有する一つ以上のフィルタを含んで具現され得、例えば、低域通過フィルタ110は1次フィルタまたは2次フィルタで構成されるか、一つ以上の1次フィルタと2次フィルタの組み合わせで構成されて特定の次数と設計され得る。
【0039】
プロセッサ200はフィルタ100の特性を取得することができる。一実施例において、フィルタ100の特性を示す大きさおよびフィルタ100の特性を示す位相は動作周波数により決定され得る。例えば、プロセッサ200は予め保存されたフィルタ100の特性を示す伝達関数から周波数ドメインでの大きさ関数および位相関数を決定することができる。一実施例において、フィルタ100の特性を示す情報(例:伝達関数、次数情報、回路具現方式、回路設計パラメータなど)は使用者設定に基づいてメモリに保存されるか、使用者インターフェースまたは外部デバイスから受信され得る。
【0040】
プロセッサ200は電動機または発電機10の動作周波数の変化によるフィルタ100の特性を示す位相の変化に基づいて、フィルタ100により発生する時間遅延を決定することができる。一実施例において、フィルタ100の特性を示す伝達関数の位相を動作周波数で微分して時間遅延を決定することができ、伝達関数の位相は動作周波数を変数入力で利用することができる。
【0041】
プロセッサ200は時間遅延を補償して電動機または発電機10の電流を決定することができる。一実施例において、プロセッサ200は時間遅延に動作周波数をかけて取得した値に基づいて、電動機または発電機10の電流の位相を更新することができる。例えば、プロセッサ200は低域通過フィルタ110、アンチエイリアシングフィルタ120およびFIRフィルタ130それぞれによって発生する第1時間遅延~第3時間遅延を足して時間遅延を取得した後、回転子の位置情報に基づいて演算されたwの積で演算して利得関数の減衰比を補償することができる。
【0042】
以下、フィルタ100により発生する時間遅延を決定および補償する多様な実施例について、
図2~
図9をさらに参照して叙述することにする。
【0043】
図2は、一実施例に係る電流決定デバイス1000の構成の一例をより具体的に図示したブロック図である。
【0044】
図2を参照すると、電流決定デバイス1000はフィルタ100の特性に基づいてフィルタ100により発生する時間遅延を決定する第1部分1000aおよび決定された時間遅延に基づいて電動機または発電機10の電流を決定および制御する第2部分1000bに区分され得る。
【0045】
一実施例において、第1部分1000aに関連して、プロセッサ200は微分器210および時間遅延演算器220を含むことができる。
【0046】
一実施例において、微分器210はフィルタ100の特性を示す伝達関数の位相を動作周波数で微分でき、例えば、微分器210の前段に配置されて電動機または発電機10の回転子の位置を検出する回転子位置検出部(図示されず)から位相角(θ)を受信し、低域通過フィルタ110の伝達関数から決定される位相関数を動作周波数wで微分して時間遅延(ρ)の特性を示す時間遅延関数(ρ(t))を決定することができる。
【0047】
一実施例において、時間遅延演算器220は微分器210により決定される時間遅延関数(ρ(t))に基づいて時間遅延(例:Tg)を決定し、決定された時間遅延に電動機または発電機10の動作周波数をかけて時間遅延補償のための位相補償値(θd)を決定することができる。
【0048】
一実施例において、第2部分1000bに関連して、プロセッサ200は電動機または発電機10の電流の位相(θ)および位相補償値(θd)に基づいて電動機または発電機10の電流を決定することができ、決定された電流により電動機または発電機10の駆動を制御することができる。
【0049】
前述した動作はフィルタ100の特性に応じて異なる方式で遂行され得、以下では、多様なフィルタ次数およびフィルタ具現方法によってより正確に時間遅延を決定し補償する具体化された方法に関して叙述することにする。
【0050】
第1実施例において、フィルタ100に含まれる低域通過フィルタ110は1次フィルタであり、低域通過フィルタ110の第1伝達関数(G1(s))が数学式1を満足する時、第1時間遅延(ρ1)は数学式4を満足することができる。より具体的には、低域通過フィルタ110の第1伝達関数は入出力される信号の利得と位相情報を含んでいるので数学式1で表現され得、プロセッサ200は数学式1による第1伝達関数を周波数領域演算子(s=jw)に置き換えて低域通過フィルタ110の第1大きさ関数(M1)および第1位相関数(Ψ1)をそれぞれ数学式2および数学式3のように決定することができ、数学式3による第1位相関数(Ψ1)を周波数wに対して微分して周波数に対する瞬時遅延時間を示す第1時間遅延(ρ1)を数学式4のように決定することができる。
【0051】
【0052】
第1実施例に係る周波数に対する利得と時間遅延グラフは
図5に図示された通りであり、周波数によって時間遅延が変わることを確認することができ、最大時間遅延はw
n
-1であり、(0.1*w
n~w
n)の領域で単位周波数当たり時間遅延の変化量が最も大きく、利得が-3dBになる地点で最大時間遅延の1/2になることを確認することができる。
【0053】
第2実施例において、フィルタ100に含まれる低域通過フィルタ110は2次フィルタであり、低域通過フィルタ110の第2伝達関数(G2(s))が数学式5を満足する時、第2時間遅延(ρ2)は数学式8を満足することができる。より具体的には、低域通過フィルタ110の第2伝達関数は数学式5で表現され得、プロセッサ200は数学式5による第2伝達関数を周波数領域演算子(s=jw)に置き換えて低域通過フィルタ110の第2大きさ関数(M2)および第2位相関数(Ψ2)をそれぞれ数学式6および数学式7のように決定することができ、数学式7による第2位相関数(Ψ2)を周波数wに対して微分して周波数に対する瞬時時間遅延を示す第2時間遅延(ρ2)を数学式8のように決定することができる。
【0054】
【0055】
第2実施例において、プロセッサ200は数学式8に基づいて周波数wと第2時間遅延(ρ2)の関係を数学式9のように決定することができる。一実施例において、減衰指数(Damping Factor、ζ)は0以上1以下の整数で設定され得、万一ζ=1である場合、第1実施例に係る1次フィルタでと同様に周波数が(0~wn)の範囲で2倍の差が発生し、1次フィルタに比べて群遅延が2倍に大きくなることを確認することができる。
【0056】
【0057】
第2実施例に係る複数の減衰指数(ζ)での周波数に対する大きさ(magnitude)と群遅延(group delay)グラフは、
図6に図示された通りであり、減衰指数は0<ζ<1の値が適用され得、群遅延はζ<0.7である場合がζ=1である場合より小さく、遮断周波数付近で最大値を有し、また、減衰指数が小さくなれば遮断周波数w
nでの利得と時間遅延が大きく増加することを確認することができる。
【0058】
第2実施例において、プロセッサ200は数学式6に基づいて利得関数のピーク値(peak value)を数学式10のように求めることができる。また、プロセッサ200は群遅延のピーク値(peak value)も算出することができ、分母が4次多項式であり、分子が2次多項式であるので、周波数に対して微分をする場合、分母項は8次多項式で、分子項は5次多項式で示されるため解が多数個出るが、群遅延が0より大きくなければならないので数学式11を利用することができる。
【0059】
【0060】
第2実施例において、プロセッサ200は数学式10により実数値が算出されるために成立しなければならない(1-2ζ2)>0である条件に基づいて、2次低域通過フィルタの減衰指数ζに対して
【0061】
【0062】
の関係を定義し、wnでの利得関数を数学式6に基づいて数学式12のように決定することができる。
【0063】
【0064】
第2実施例において、プロセッサ200は遮断周波数wnでの利得値が-3[dB]となるように減衰指数ζを決定することができ、例えば、数学式12による出力値が-3[dB]となるようにζを0.707に設計することができる。
【0065】
第3実施例において、フィルタ100に含まれる低域通過フィルタ110は一つ以上の1次フィルタと2次フィルタの組み合わせで構成され得、例えば、数学式1~8のうち一つ以上を利用して高次数のフィルタとして設計され得る。
【0066】
第4実施例において、フィルタ100に含まれるアナログフィルタはアンチエイリアシングフィルタ120を含むことができる。一実施例において、アナログフィルタは回路具現方式と回路パラメータに基づいて決定され得、例えば、サレンキー(Sallen-Key)方式およびマルチプルフィードバック(Multiful feedback)方式のうちいずれか一つにより設計され得る。ここで、サレンキー方式は単一利得または20[dB]以下の信号を増幅するのに利用され得、マルチプルフィードバック方式は20[dB]以上の信号を増幅するのに利用され得る。
【0067】
第4実施例に係るサレンキー方式の低域通過フィルタ110の回路図は
図7に図示された通りであり、サレンキー方式による低域通過フィルタ110の第3伝達関数(A(s))は数学式13により決定され得る。このような場合、プロセッサ200は前述した実施例と同様の方式で数学式13から第3時間遅延(ρ
S)を算出することができ、具体的には、低域通過フィルタ110の第3伝達関数(A(s))が数学式13を満足する時、低域通過フィルタ110の第3大きさ関数(M
S)および第3位相関数(Ψ
S)はそれぞれ数学式14および15を満足し、第3時間遅延(ρ
S)は数学式16を満足することができる。
【0068】
【0069】
第4実施例において、プロセッサ200は数学式8を利用してフィルタ係数および利得特性値を表1のように取得することができ、一実施例において、回路の抵抗値をR1=R2=Rに設定してキャパシタンスC1およびC2を数学式17のように決定することができるが、これに制限されるものではなく、使用者によって選択入力される特定値で各抵抗値を設定してもよい。
【0070】
【0071】
(ここで、Butt.はButterworthを意味し、CはChebyshevを意味し、LPはLinear Phaseを意味する)
【0072】
【0073】
第4実施例において、プロセッサ200は表1を利用して半遮断周波数(half cutoff frequency)(=0.5wn)での大きさ(M2(0.5wn))、最大大きさを有する周波数(wMp)および最大大きさ値(M2(wMp))を表2のように取得することができ、Butterworth、ChebyshevおよびEllipticフィルタは半遮断周波数で利得特性が大きく変動しないが、Bessel、Linear phaseおよびGaussianフィルタは徐々に周波数の増加につれて利得特性が減少することを確認することができる。
【0074】
【0075】
第4実施例において、プロセッサ200は表2を利用して群遅延を決定し、周波数ドメインで示される時間遅延特性を表3および
図8のように取得することができる。このように多様なフィルタの種類によって時間遅延特性に多くの差があり、Butterworth、ChebyshevおよびGaussian filterの場合は比較的大きい時間遅延変化率を示しており、Bessel、Linear PhaseおよびEllipticフィルタの場合、半遮断周波数で最も小さい時間遅延変化率を示し、特にEllipticフィルタは0.5w
nまでの時間遅延が最も小さく示されることを確認することができる。
【0076】
【0077】
第4実施例において、フィルタ100はアンチエイリアシングフィルタ120を含むことができ、アンチエイリアシングフィルタ120はEllipticフィルタを含むことができる。例えば、アンチエイリアシングフィルタ120は電動機または発電機10の制御アルゴリズム演算に利用されるADC(Analog-Digital Converter)の前段に配置されるEllipticフィルタを含むことができ、このような場合、表3および
図9に図示されたように、Ellipticフィルタが通過帯域で相対的に差が少なく出る特徴および0.5w
nまでの時間遅延が最も小さい特徴を利用して、時間遅延が少なく示されるように具現することによって性能を向上させることができる。第5実施例において、フィルタ100に含まれるデジタルフィルタはFIRフィルタ130およびIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ(図示されず)のうちいずれか一つを含むことができる。第5実施例において、IIRフィルタはアナログフィルタの伝達関数を利用して具現され得、IIRフィルタの群遅延はアナログフィルタのような特性を有する。一実施例において、IIRフィルタは数学式5を連続空間状態方程式(continuous state equation)に変換し、変換された式を離散状態方程式(discrete state equation)に変換して具現することができ、例えば、IIRフィルタの離散状態方程式は数学式18を利用することができる。ここで、数学式f
sはサンプリング周波数(sampling frequency)を意味し、u(k)はフィルタの入力信号、y(k)はフィルタの出力信号、x
1およびx
2は状態変数であり、Kは数学式19が利用され、定数ζ、w
nおよびf
sはフィルタの設計過程で使用者によって設定され、行列内の値はすべて定数で示されることになって状態方程式の演算を通じてIIRフィルタの出力値を算出することができ、同様に数学式8を演算して同一の方式で時間遅延を算出することができる。
【0078】
【0079】
第5実施例において、FIRフィルタはすべての周波数領域で一定の群遅延を有し、直接具現(direct realization)方式または最適具現(optimized realization)方式により具現され得る。一実施例において、直接具現方式はFIRフィルタのTAP数(N)にサンプリング周波数を割る演算を通じて決定され、最適具現方式は数学式20に基づいて決定され得る。
【0080】
【0081】
図3は第6実施例に係るフィルタ100のブロック図を示し、
図4は第6実施例に係るデバイス100の動作を説明するための概念図を示す。
【0082】
図3を参照すると、フィルタ100は低域通過フィルタ110、アンチエイリアシングフィルタ120およびFIRフィルタ130を含むことができる。一実施例において、デバイス100は電動機または発電機10を効果的に制御するために多様な類型のフィルタを結合して使用でき、例えば、フィルタ100は電動機または発電機10の電流を測定するための電流センサ部(図示されず)に位置する低域通過フィルタ110、ADCの前段に位置するアンチエイリアシングフィルタ120およびADCを制御するためにロジックモジュール(例:FPGA)を利用する場合、ロジックモジュール内に位置するFIRフィルタ130を含むことができ、電動機または発電機10をリアルタイム制御するプロセッサ200または駆動部300に連結されて最終的に電流信号から電気的雑音およびPMW周波数を除去するIIRフィルタなどをさらに含むことができる。
【0083】
図4を参照すると、フィルタ100は電流センサ部の後段に配置されるセル(Bessel)タイプの2次の低域通過フィルタ110、ADCの前段に配置されるエリプティックタイプの2次のアンチエイリアシングフィルタ120、およびFPGA内に配置されるブラックマンハリス(Blackman-Harris)方式のFIRフィルタ130を含むことができ、プロセッサ200は低域通過フィルタ110を通過しながら発生する第1時間遅延(T
d1)、低域通過フィルタ110およびアンチエイリアシングフィルタ120を通過しながら発生する第2時間遅延(T
d2)および低域通過フィルタ110、アンチエイリアシングフィルタ120およびFIRフィルタ130を通過しながら発生する第3時間遅延(T
d3)を合算して時間遅延(T
g)を決定し、回転子の位置情報および前述した数学式を利用して周波数wを算出し、時間遅延(T
g)に算出された周波数wをかける演算を通じて時間遅延補償のための位相補償値(θ
d)を決定することができる。
【0084】
第6実施例において、第1時間遅延(Td1)~第3時間遅延(Td3)は前述した方式に基づいて決定され得、例えば、プロセッサ200は表1での減衰指数ζおよび数学式6および8により決定される遮断周波数wn=2πfを利用してベッセルタイプの低域通過フィルタ110に対する利得関数(M2B)と時間遅延関数(ρ2B)を数学式21および22のように決定し、数学式23による遮断周波数wnEに基づいてエリプティックタイプのアンチエイリアシングフィルタ120に対する利得関数(M2E)と時間遅延関数(ρ2E)を数学式24および25のように決定することができる。
【0085】
【0086】
第6実施例において、プロセッサ200は数学式20~25を利用して決定される半遮断周波数での利得および時間遅延を表4のように取得することができる。表5で、半遮断周波数での利得が-1.44[dB]であって約15%程度減少することを確認することができ、時間遅延は605.38[uSec]であって約2.8%の差が発生することを確認することができる。第6実施例により多様なフィルタが結合されたデバイス100の周波数応答特性は
図10に図示された通りであり、5[kHz]以上で利得特性が-100[dB]で示されることによって、電気的雑音をほとんど除去できることが分かり、PWM周波数を5[kHz]以上に設定する場合にはPWMによる影響をほぼ完ぺきに除去できることが分かる。
【0087】
【0088】
一実施例において、プロセッサ200は時間遅延を補償する過程で低域通過フィルタ110およびアンチエイリアシングフィルタ120の場合には数学式15を利用して遅延位相角を算出し、FIRフィルタ130の場合はアナログフィルタの時間遅延を算出することができる。このような場合、FIRフィルタ130で所要する演算時間を短縮して演算を遂行するMCUのリソース消耗の側面で効率的であり得る。一実施例において、プロセッサ200は利得関数の大きさが1以下であるかどうかに基づいて時間遅延を補償することができる。例えば、プロセッサ200は利得関数の大きさが1以下であれば、
図4に図示されたように利得関数の減衰比を補償し、利得関数の大きさが1未満であれば、演算された利得関数の値から1より大きい値だけ減算して利得関数の減衰比を補償することができ、このような場合、数学式26に基づいて利得関数補償器M
kを決定することができる。
【0089】
【0090】
一実施例において、プロセッサ200は時間遅延位相に対する誤差が既設情許容誤差範囲以内である場合、時間遅延に関する情報を含むルックアップテーブルに基づいて時間遅延補償のための位相を決定することができる。例えば、表5に図示されたように、時間遅延位相と半遮断周波数までの誤差が2.8%程度であって許容誤差範囲(例:3%)内にある場合、第6実施例により算出された時間遅延Tgを数学式27に基づいて定数値で示すことができ、時間遅延Tgをルックアップテーブルの形態で利用することができ、電動機または発電機10が正格周波数で動作する場合には数学式28に基づいて遅延位相角を決定することができ、利得誤差はデバイス100のエラー力学関係(Error dynamics)により自然に補償され得る。このような場合、プロセッサ200の演算のために、FPU(floating point unit)が内蔵されていない安価型MCU(Micro Controller Unit)が利用されてもアルゴリズムの演算を容易に遂行できる。
【0091】
【0092】
一実施例において、プロセッサ200はデバイス100の構成要素を通過する3相の電流信号を数学式28に基づいて数学式29のように決定することができ、数学式29に基づいて3相の電流信号を2相の回転座標系(Clarke Transformation)でDQ変換して数学式30のように決定することができ、数学式30を利用して2相の停止座標系(Park Transformation)を数学式31のように決定することができる。
【0093】
【0094】
一実施例において、プロセッサ200は電動機または発電機10の電流を決定するための一連の動作を遂行でき、デバイス100の動作全般を制御するCPU(central processor unit)を含んで具現され得、フィルタ100およびその他の構成要素と電気的に連結されてこれら間のデータの流れを制御することができる。
【0095】
一実施例において、デバイス100はプロセッサ200による制御信号に基づいて駆動器または発電機10の駆動を制御する駆動部300および駆動部300の供給電力に基づいて回転子を回転させる電動機または発電機10をさらに含むことができる。
【0096】
また、
図1に図示された構成要素の他に他の汎用的な構成要素がデバイス100にさらに含まれ得ることを関連技術分野で通常の知識を有する者であれば理解することができる。例えば、デバイス100は電動機または発電機10に印加される電流を検出できる電流検出部、電動機または発電機10で回転する回転子の位置を検出できる回転子位置検出部などをさらに含むことができ、また、他の実施例において、
図1または
図2に図示された構成要素のうち一部は省略され得る。
【0097】
図11は、一実施例に係るデバイス100が電動機または発電機10の電流を決定する方法を説明するためのフローチャートである。
【0098】
図11を参照すると、段階S1110でデバイス100は、電動機または発電機10の電流を決定する過程で発生するノイズをフィルタリングするフィルタ100の特性を取得することができる。一実施例において、フィルタ100の特性を示す大きさおよびフィルタ100の特性を示す位相は動作周波数により決定され得る。
【0099】
段階S1120でデバイス100は、電動機または発電機10の動作周波数の変化によるフィルタ100の特性を示す位相の変化に基づいてフィルタ100により発生する時間遅延を決定することができる。一実施例において、デバイス100はフィルタ100の特性を示す伝達関数の位相を動作周波数で微分して時間遅延を決定することができる。
【0100】
段階S1130でデバイス100は、時間遅延を補償して電動機または発電機10の電流を決定することができる。一実施例において、デバイス100は時間遅延に動作周波数をかけて取得した値に基づいて電動機または発電機の電流の位相を更新することができる。
【0101】
本発明の一実施例によると、デバイス100はフィルタ100の特性を示す位相の変化に基づいてフィルタ100により発生する時間遅延を正確に決定して電動機または発電機10の電流を効果的に補償することができる。
【0102】
図12~
図15は、一実施例に係るデバイス100が時間遅延を効果的に補償することによって改善されるシミュレーション結果を示すグラフである。
【0103】
図12を参照すると、デバイス100はフィルタ100により発生する時間遅延を効果的に補償することにより、機械的出力を約38.7%改善したのであり、
図13を参照すると、回転速度を約28.2%改善したのであり、
図14を参照すると、同一電流で約14.6%さらに大きいトルクを生成したのであり、
図15を参照すると、回転速度が増加するほどトルクが改善される程度が約10.8%以上顕著に増加することを確認することができる。また、デバイス100はその他にも、時間遅延補償により消耗電流、消耗電力などを改善することができ、設定RPM(例:12000RPM)まで一定のトルクを維持するなどの効果を提供することができる。
【0104】
一方、前述した方法はコンピュータで実行され得るプログラムで作成可能であり、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を利用して前記プログラムを動作させる汎用デジタルコンピュータで具現され得る。また、前述した方法で使われたデータの構造は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に多様な手段を通じて記録され得る。前記コンピュータで読み取り可能な記録媒体はマグネチック保存媒体(例えば、ロム、ラム、USB、フロッピーディスク、ハードディスクなど)、光学的読み取り媒体(例えば、CD-ROM、ディーブイディーなど)のような保存媒体を含む。
【0105】
前述した本開示の説明は例示のためのものであって、本開示が属する技術分野の通常の知識を有する者は本開示の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形可能であることが理解できるであろう。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり限定的ではないものと理解されるべきである。例えば、単一型と説明されている各構成要素は分散して実施されてもよく、同様に分散されたものと説明されている構成要素も結合された形態で実施され得る。
【0106】
本開示の範囲は後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態も本開示の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。