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特許7579462アルテミンに対するヒト抗体及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】アルテミンに対するヒト抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20241030BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241030BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241030BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241030BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241030BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241030BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241030BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241030BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P19/06
A61P25/02
A61P25/04
A61P29/00
A61P43/00 105
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2023562889
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022025424
(87)【国際公開番号】W WO2022225985
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】63/177,369
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】クロール スーザン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド リン
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー アンドリュー ジェイ.
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0344550(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0281756(US,A1)
【文献】Thornton P. et al.,Neurosci Lett,2013年,Vol. 545,pp. 23-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号64のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号68のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号72のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号74のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(c)配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(d)配列番号44のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号48のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、ヒトアルテミンに特異的に結合する、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号64のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号68のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号72のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号74のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
配列番号44のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号48のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
配列番号62のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
配列番号2のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
配列番号22のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
配列番号42のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号50のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
配列番号78のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
完全にヒトである、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項19】
抗ヒトアルテミン抗体又はその抗原結合断片を産生する方法であって、請求項17に記載の発現ベクターを宿主細胞に導入することと、前記抗体又はその抗原結合断片の産生を可能にする条件下で前記宿主細胞を増殖させることと、産生される前記抗体又は抗原結合断片を回収することとを含む、方法。
【請求項20】
細胞におけるアルテミン活性化シグナル伝達を阻害する方法に使用するための、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物であって、前記方法が、前記細胞を前記医薬組成物と接触させ、それによって、前記細胞におけるアルテミン活性化シグナル伝達を阻害することを含む、医薬組成物。
【請求項21】
前記細胞が、対象内にある、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
アルテミン発現又はアルテミン活性の増加に関連する、疼痛関連の疾患、障害、又は状態を治療するための、医薬組成物であって、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片を含む、医薬組成物。
【請求項23】
前記疼痛関連の疾患、障害、又は状態が、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、全身神経痛、内臓痛、変形性関節炎性痛、痛風、神経根痛、座骨神経痛、背痛、頭頸部痛、突出痛、術後痛、化学療法誘発性神経障害性疼痛、放射線療法誘発性神経障害性疼痛、放射線関連疼痛、又はがん疼痛である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記疼痛関連の疾患、障害、又は状態が、片頭痛、群発頭痛、慢性頭痛、又は緊張性頭痛である、請求項22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、アルテミンに特異的に結合するヒト抗体及びヒト抗体の抗原結合断片、並びにその使用方法に関する。
【0002】
配列表
配列表の正式なコピーは、10907WO01_Sequence_Listing_ST25というファイル名、2022年4月19日の作成日、及び約69,632キロバイトのサイズを有するASCIIフォーマットの配列表として、EFS-Webを介して電子的に本明細書と同時に提出される。このASCIIフォーマットの文書に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
アルテミン(ARTN)は、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーのリガンドのメンバーである神経栄養因子である。各GDNFファミリーリガンドは、細胞膜に関連するグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型受容体に結合する。この受容体のファミリーは、GDNFファミリー受容体アルファ(GFRα)ファミリーと称され、4つの異なる受容体、GFRα1~4から構成される。ARTNは、受容体GFRα3に優先的に結合し、GFRα3の唯一の既知のリガンドである。ARTN及び他のGDNFファミリーリガンドは、最初にがん原遺伝子として発見されたRET(「トランスフェクション中に再編成された」)受容体チロシンキナーゼを通してシグナル伝達する。RETは、リガンドがそのGFRα受容体に最初に結合された場合にのみ、GDNFファミリーメンバーによって活性化される(Airaksinen et al,Nature Reviews Neuroscience(2002),3:383-394(非特許文献1))。
【0004】
ARTN及びGFRα3の両方は、発達中に高度に発現され、交感神経系発達に関与する。成体マウスでは、ARTNは、精巣、子宮、甲状腺、前立腺、及び精巣上体、並びに嗅覚球、並びに腸及び腸間膜内の細動脈で発現される(Airaksinen et al,Nature Reviews Neuroscience(2002),3:383-394(非特許文献1)、Airaksinen et al,Brain,Behavior and Evolution,(2006),68:181-190(非特許文献2))。成体におけるGFRα3発現は、主に後根神経節(DRG)の感覚ニューロンに限定される(Orozco et al,European J.Neuroscience,(2001),13:2177-2182(非特許文献3))。ARTN又はGFRα3を欠くマウスは、交感神経系の遊走及び軸索投射パターンに異常を呈し、標的組織の異常な神経支配をもたらす(Honma et al.,Neuron,(2002),35:267-282(非特許文献4))。
【0005】
疼痛及び熱知覚におけるARTN及びGFRα3の潜在的な役割が、いくつかの研究で示されている。例えば、齧歯類の後肢内へのアルテミンタンパク質の注射は、熱痛覚過敏を引き起こし、この侵害受容は、アルテミンがNGFと同時注射されたときに増強されたことが実証されている(Malin et al,J.Neuroscience,(2006),26(33):8588-8599(非特許文献5))。他の研究は、アルテミンmRNA発現がマウス炎症モデルにおいて上方制御され、アルテミントランスジェニックマウスがTRPV1及びTRPA1の発現の上昇、並びに熱及び低温に対する行動感受性の増加を有することを示した(Elitt et al,J.Neuroscience,(2006),26(33):8578-8587(非特許文献6))。加えて、アルテミン及びGFRα3発現は、片頭痛のラットモデル(Shang et al.,J Headache Pain,(2016),17(1):81(非特許文献7))及び放射線療法で治療されたイヌ(Nolan et al,Radiat Res,(2020),193(3):241-248(非特許文献8))において増加する。アルテミン発現はまた、口腔灼熱症候群を有する患者の舌粘膜、及び口腔灼熱症候群のマウスモデルでも増加する(Shinoda et al.,PAIN,(2015),156(12):2528-2537(非特許文献9))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Airaksinen et al,Nature Reviews Neuroscience(2002),3:383-394
【文献】Airaksinen et al,Brain,Behavior and Evolution,(2006),68:181-190
【文献】Orozco et al,European J.Neuroscience,(2001),13:2177-2182
【文献】Honma et al.,Neuron,(2002),35:267-282
【文献】Malin et al,J.Neuroscience,(2006),26(33):8588-8599
【文献】Elitt et al,J.Neuroscience,(2006),26(33):8578-8587
【文献】Shang et al.,J Headache Pain,(2016),17(1):81
【文献】Nolan et al,Radiat Res,(2020),193(3):241-248
【文献】Shinoda et al.,PAIN,(2015),156(12):2528-2537
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、アルテミンに特異的に結合する単離抗体又はその抗原結合断片が提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトアルテミンに結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、25℃における表面プラズモン共鳴アッセイによる測定で、5nM未満のKでヒトアルテミンに結合する。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
(a)ELISAによる測定で、ヒトGFRα3でコーティングされた固体支持体へのヒトアルテミン結合の少なくとも65%を遮断し、
(b)GFRα3及びRET受容体チロシンキナーゼを通したアルテミン活性化シグナル伝達を阻害若しくは低減し、かつ/又は
(c)インビボでアルテミン誘導性熱痛覚過敏を阻害若しくは低減する。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つの非ヒト種由来のアルテミンと交差反応する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、サルアルテミンと交差反応する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、マウスアルテミンと交差反応する。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
(a)配列番号4、24、44、及び64からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、
(b)配列番号6、26、46、及び66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)と、
(c)配列番号8、28、48、及び68からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)と、
(d)配列番号12、32、52、及び72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、
(e)配列番号14、34、54、及び74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)と、
(f)配列番号16、36、56、及び76からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)と
を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(c)配列番号44のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号48のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(d)配列番号64のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号68のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号72のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号74のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号2、22、42、及び62からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号10、30、50、及び70からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むLCVR、又は
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むLCVR、又は
(c)配列番号42のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号50のアミノ酸配列を含むLCVR、又は
(d)配列番号62のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むLCVR
を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
(a)配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(b)配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(c)配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号60のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(d)配列番号78のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号80のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む。
【0016】
いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。いくつかの態様では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号78のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、完全にヒトである。
【0018】
別の態様では、抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物が提供される。
【0019】
別の態様では、抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、表9に記載される1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0020】
更に別の態様では、本明細書に開示される核酸分子を含む発現ベクター及び宿主細胞が提供され、本明細書に開示される核酸分子、発現ベクター、及び宿主細胞を使用して、抗アルテミン抗体を産生する方法も同様に提供される。
【0021】
別の態様では、細胞におけるアルテミン活性化シグナル伝達を阻害する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、本明細書に開示される抗体若しくは抗原結合断片又は医薬組成物と接触させ、それによって、細胞におけるアルテミン活性化シグナル伝達を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、対象内にある。いくつかの実施形態では、標的細胞は、インビトロ又はエクスビボである。
【0022】
別の態様では、アルテミン発現又は活性に関連する疾患、障害、又は状態を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に開示される抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を、治療を必要とする対象(例えば、アルテミン発現又は活性に関連する疾患、障害、又は状態を有する対象)に投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物は、第2の治療剤と組み合わせて対象に投与される。
【0023】
別の態様では、抗アルテミン抗体若しくはその抗原結合断片、又は抗アルテミン抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物は、アルテミン発現又は活性に関連する疾患、障害、又は状態を治療する方法で使用するために提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に開示される抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を、治療を必要とする対象(例えば、アルテミン発現又は活性に関連する疾患、障害、又は状態を有する対象)に投与することを含む。いくつかの態様では、抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物は、第2の治療剤と治療的に組み合わせられる。いくつかの態様では、抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物は、第2の治療剤と組み合わせられる。
【0024】
別の態様では、アルテミン発現又は活性に関連する疾患、障害、又は状態を治療する方法で使用するための薬剤の製造における、抗アルテミン抗体若しくはその抗原結合断片、又は抗アルテミン抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物の使用が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に開示される抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を、治療を必要とする対象(例えば、アルテミン発現又は活性に関連する疾患、障害、又は状態を有する対象)に投与することを含む。いくつかの態様では、抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物は、第2の治療剤と治療的に組み合わせられる。いくつかの態様では、抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物は、第2の治療剤と組み合わせられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、疾患、障害、又は状態は、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、全身神経痛、内臓痛、変形性関節炎性痛、痛風、神経根痛、座骨神経痛、背痛、頭頸部痛、突出痛、術後痛、化学療法誘発性神経障害性疼痛、放射線療法誘発性神経障害性疼痛、放射線関連疼痛、又はがん疼痛である。いくつかの実施形態では、疾患、障害、又は状態は、片頭痛、群発頭痛、慢性頭痛、又は緊張性頭痛である。
【0026】
他の実施形態は、後に続く詳細な説明の検討から明らかになるであろう。
[本発明1001]
ヒトアルテミンに特異的に結合する、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1002]
前記抗体が、25℃における表面プラズモン共鳴による測定で、5nM未満のK でヒトアルテミンに結合する、本発明1001の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1003]
前記抗体が、
(i)ELISAによる測定で、ヒトGFRα3でコーティングされた固体支持体へのヒトアルテミン結合の少なくとも65%を遮断し、
(ii)GFRα3及びRET受容体チロシンキナーゼを通したアルテミン活性化シグナル伝達を阻害若しくは低減し、かつ/又は
(iii)インビボでアルテミン誘導性熱痛覚過敏を阻害若しくは低減する、
本発明1001の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1004]
(a)配列番号4、24、44、及び64からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、
(b)配列番号6、26、46、及び66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)と、
(c)配列番号8、28、48、及び68からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)と、
(d)配列番号12、32、52、及び72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、
(e)配列番号14、34、54、及び74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)と、
(f)配列番号16、36、56、及び76からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)と
を含む、本発明1001~1003のいずれかの単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1005]
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(c)配列番号44のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号48のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(d)配列番号64のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号68のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号72のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号74のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、本発明1001~1004のいずれかの単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1006]
配列番号2、22、42、及び62からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む、本発明1001~1005のいずれかの単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1007]
配列番号10、30、50、及び70からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、本発明1001~1006のいずれかの単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1008]
(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むLCVR、又は
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むLCVR、又は
(c)配列番号42のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号50のアミノ酸配列を含むLCVR、又は
(d)配列番号62のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むLCVR
を含む、本発明1001~1007のいずれかの単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1009]
(a)配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(b)配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(c)配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号60のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(d)配列番号78のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号80のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、本発明1001~1008のいずれかの単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1010]
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(b)配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(c)配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(d)配列番号78のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、本発明1009の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1011]
完全にヒトである、本発明1001~1010のいずれかの単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1012]
非ヒト種由来のアルテミンと交差反応する、本発明1001~1011のいずれかの単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[本発明1013]
本発明1001~1012のいずれかのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
[本発明1014]
本発明1001~1012のいずれかのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
[本発明1015]
表9に記載される1つ以上のヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
[本発明1016]
本発明1014又は1015の核酸分子を含む、発現ベクター。
[本発明1017]
本発明1016の発現ベクターを含む、宿主細胞。
[本発明1018]
抗ヒトアルテミン抗体又はその抗原結合断片を産生する方法であって、本発明1016の発現ベクターを宿主細胞に導入することと、前記抗体又はその抗原結合断片の産生を可能にする条件下で前記宿主細胞を増殖させることと、産生される前記抗体又は抗原結合断片を回収することと、を含む、方法。
[本発明1019]
細胞におけるアルテミン活性化シグナル伝達を阻害する方法であって、前記細胞を、本発明1001~1012のいずれかのモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、又は本発明1013の医薬組成物と接触させ、それによって、前記細胞におけるアルテミン活性化シグナル伝達を阻害することを含む、方法。
[本発明1020]
前記細胞が、対象内にある、本発明1019の方法。
[本発明1021]
アルテミン発現又は活性に関連する疾患、障害、又は状態を治療する方法であって、本発明1001~1012のいずれかのモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、又は本発明1013の医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを含む、方法。
[本発明1022]
前記疾患、障害、又は状態が、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、全身神経痛、内臓痛、変形性関節炎性痛、痛風、神経根痛、座骨神経痛、背痛、頭頸部痛、突出痛、術後痛、化学療法誘発性神経障害性疼痛、放射線療法誘発性神経障害性疼痛、放射線関連疼痛、又はがん疼痛である、本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記疾患、障害、又は状態が、片頭痛、群発頭痛、慢性頭痛、又は緊張性頭痛である、本発明1021の方法。
[本発明1024]
前記モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、又は前記医薬組成物が、第2の治療剤と組み合わせて前記対象に投与される、本発明1021~1023のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】アルテミンmAb捕捉Octetバイオセンサー表面への異なる濃度のhアルテミン-MMH(ヒトアルテミン)の結合。
図2】アルテミンmAb捕捉Octetバイオセンサー表面への異なる濃度のMfアルテミン-MMH(カニクイザルアルテミン)の結合。
図3】アルテミンmAb捕捉Octetバイオセンサー表面への異なる濃度のmアルテミン-MMH(マウスアルテミン)の結合。
図4】10mg/kgで抗アルテミン抗体(H4H33331P、H4H33335P、H4H33336P、若しくはH4H33349P)又はアイソタイプ対照抗体(陰性対照)を投与された動物におけるアルテミン誘導性足底熱痛覚過敏の阻害。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
定義
本発明を説明する前に、本発明が記載される特定の方法及び実験条件に限定されず、したがって、方法及び条件が変化し得ることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって制限されるものとなることから、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的で使用されており、制限することを意図しないことも理解されたい。
【0029】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の言及される数値に関して使用されるときに、値が言及された値から1%以下まで変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現には、99及び101、並びにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合の「アルテミン」又は「ARTN」という用語は、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーリガンドを指す。Baloh et al.,Neuron,(1998),21(6):1291-1302を参照されたい。本明細書で使用される場合、「アルテミン」という用語は、前駆体形態、又は全長処理形態若しくはその断片などの成熟形態(すなわち、処理形態)を指し得る。いくつかの実施形態では、「アルテミン」という用語は、ヒトアルテミンタンパク質又はその断片を指す。いくつかの実施形態では、アルテミンタンパク質は、NCBIアクセッション番号NP_476432.2に記載されるヒトアルテミン又はその断片(例えば、タンパク質分解処理された部分)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、アルテミンタンパク質は、Uniprotアクセッション番号Q5T4W7に記載されるヒトアルテミン、又はその断片(例えば、タンパク質分解処理された部分)、若しくはそのアイソフォームのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、アルテミンタンパク質は、米国特許第6,284,540号に記載されるアルテミンタンパク質又は断片のアミノ酸配列を含む。
【0032】
「アルテミンに結合する抗体」又は「抗アルテミン抗体」という用語は、単量体アルテミンを特異的に認識する抗体及びその抗原結合断片、並びに二量体アルテミンを特異的に認識する抗体及びその抗原結合断片を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合の「抗体」という用語は、特定の抗原(例えば、ARTN)に特異的に結合するか、又はそれと相互作用する、相補性決定領域(CDR)のセットを含む、抗原結合分子又は分子複合体を指す。本明細書で使用される場合の「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む、免疫グロブリン分子、並びにその多量体(例えば、IgM)を含む。典型的な抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVと省略される)と、重鎖定常領域と、を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインC1、C2、及びC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVと省略される)と、軽鎖定常領域と、を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。V領域及びV領域は、フレームワーク領域(FR)と称される比較的保存された領域が間に配された、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域に更に細分することができる。各V及びVは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。いくつかの実施形態では、抗体(又はその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であり得るか、又は自然に若しくは人工的に修飾され得る。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合の「抗体」という用語は、完全抗体分子の抗原結合断片も含む。本明細書で使用される場合の抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」、及び同等物という用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に取得可能である、合成の、若しくは遺伝子操作されたポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、抗体可変領域及び任意選択的に定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を伴う、タンパク質分解消化又は組換え遺伝子工学技法などの任意の適切な標準的技法を使用して、完全抗体分子に由来し得る。そのようなDNAは、既知であり、かつ/又は例えば、市販の供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、若しくは合成され得る。DNAは、配列決定され、例えば、1つ以上の可変ドメイン及び/若しくは定常ドメインを好適な構成に配置するか、又はコドンを導入する、システイン残基を作成する、アミノ酸を修飾する、付加する、若しくは欠失させるためなどに、化学的に、又は分子生物学技法を使用することによって操作され得る。
【0035】
抗原結合断片の非限定的な例としては、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、及び(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基、又は拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドからなる最小認識単位が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失した抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子もまた、本明細書で使用される場合、「抗原結合断片」という表現に包含される。
【0036】
抗体の抗原結合断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意の大きさ又はアミノ酸組成であってもよく、一般的には、1つ以上のフレームワーク配列に隣接するか、又はインフレームである、少なくとも1つのCDRを含むであろう。Vドメインに会合するVドメインを有する抗原結合断片において、Vドメイン及びVドメインは、任意の好適な配置で互いに対して位置し得る。例えば、可変領域は、二量体であって、V-V、V-V又はV-V二量体を含み得る。代替的に、抗体の抗原結合断片は、単量体V又はVドメインを含み得る。
【0037】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。抗体の抗原結合断片内で見出され得る可変ドメイン及び定常ドメインの非限定的な例示的構成としては、(i)V-C1、(ii)V-C2、(iii)V-C3、(iv)V-C1-C2、(v)V-C1-C2-C3、(vi)V-C2-C3、(vii)V-CL、(viii)V-C1、(ix)V-C2、(x)V-C3、(xi)V-C1-C2、(xii)V-C1-C2-C3、(xiii)V-C2-C3、及び(xiv)V-Cが挙げられる。上記で列挙された例示的な構成のうちのいずれかを含む、可変ドメイン及び定常ドメインの任意の構成では、可変ドメイン及び定常ドメインは、互いに直接的に連結され得るか、又は完全若しくは部分ヒンジ若しくはリンカー領域によって連結され得るかのいずれかである。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子における隣接する可変ドメイン及び/又は定常ドメイン間の可動性又は半可動性連鎖をもたらす、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個以上)のアミノ酸からなり得る。更に、抗体の抗原結合断片は、互いと、及び/又は1つ以上の単量体Vドメイン若しくはVドメインと(例えば、ジスルフィド結合によって)非共有結合性会合している、上記に列挙される可変及び定常ドメイン構成のうちのいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(若しくは他の多量体)を含み得る。
【0038】
本明細書で使用される場合の「抗体」という用語はまた、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体を含む。多重特異性抗体又は抗体の抗原結合断片は、典型的に、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別個の抗原、又は同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することが可能である。任意の多重特異性抗体フォーマットは、当該技術分野で利用可能な常套的技法を使用して、本開示の抗体又は抗体の抗原結合断片に関連した使用のために適合され得る。例えば、本開示は、免疫グロブリンの一方のアームが、ARTN又はその断片に特異的であり、免疫グロブリンの他方のアームが、第2の治療標的に特異的であるか、又は治療部分にコンジュゲートされている、二重特異性抗体の使用を含む方法を含む。本開示に関連して使用され得る例示的な二重特異性フォーマットとしては、例えば、scFvベース又はダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、Quadroma、ノブ・イントゥ・ホール、共通軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを有する共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、及びMab二重特異性フォーマットが挙げられるが、これらに限定されない(前述のフォーマットの概説については、例えば、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11、及びその中で引用される参考文献を参照されたい)。二重特異性抗体はまた、例えば、直交的な化学反応性を有する非天然アミノ酸が、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチド結合体を生成するために使用され、次いで、これが、規定の組成、結合価及び構造を有する多量体複合体に自己集合する、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもできる。(例えば、Kazane et al.,J.Am.Chem.Soc.[Epub:Dec.4,2012]を参照されたい)。
【0039】
本明細書で使用される場合の「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図している。それにもかかわらず、本開示のヒト抗体は、例えば、CDRにおいて、特にCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの無作為若しくは部位特異的変異誘発によって、又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される場合の「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列上に移植されている、抗体を含むことを意図していない。
【0040】
本明細書で使用される場合の「組換え抗体」という用語は、組換え手段によって調製、発現、作成、又は単離される全ての抗体を含むことを意図している。この用語は、宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、BHK細胞、若しくはHEK293細胞)又は細胞発現系にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体、組換え組み合わせヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及びヒト以外の動物(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックであるマウスなどのマウスを含むが、これらに限定されない(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照)。いくつかの実施形態では、組換え抗体は、組換えヒト抗体である。いくつかの実施形態では、組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常ドメインを有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(又はヒトIg配列の動物トランスジェニックが使用される場合、インビボ体細胞変異誘発)を受け、したがって、組換え抗体のV及びV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列V配列及びV配列に由来し、それらに関連するが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しない場合がある、配列である。
【0041】
「単離抗体」は、その天然環境の少なくとも1つの構成要素から同定及び分離され、かつ/又は回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの構成要素から、又は当該抗体が自然に存在するか、若しくは自然に産生される組織若しくは細胞から分離又は除去された抗体は、「単離抗体」である。単離抗体はまた、組換え細胞内でインサイチュの抗体を含む。単離抗体は、少なくとも1つの精製工程又は単離工程を受けた抗体である。ある特定の実施形態によると、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0042】
「特異的に結合する」という用語又は同等物は、抗体又はその抗原結合断片が、生理学的条件下で比較的安定している抗原と複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-6M以下、例えば、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、又は10-12Mの平衡解離定数によって特徴付けられ得る(例えば、より小さいKは、より緊密な結合を示す)。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORE(商標))、バイオレイヤー干渉法アッセイ(例えば、Octet(登録商標)HTXバイオセンサー)、溶液親和性ELISA、及び同等物を含む。いくつかの実施形態では、特異的結合は、例えば、25℃又は37℃で、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される。1つの種由来の抗原に特異的に結合する抗体又は抗原結合断片は、別の種由来のオーソロガス抗原などの他の抗原に対する交差反応性を有する場合とそうではない場合がある。
【0043】
本明細書で使用される場合の「K」という用語は、特定の抗体・抗原相互作用の平衡解離定数を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合の「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えば、BIACORE(商標)システム(Cytiva、Marlborough,MA)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によってリアルタイム生体分子相互作用の分析を可能にする、光学現象を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合の「バイオレイヤー干渉法」又は「BLI」という用語は、例えば、Octet(登録商標)システム(Sartorius AG、Gottingen,Germany)を使用して、試料プレートに分注された1つの生体分子をバイオセンサープレート上に固定化された第2の生体分子に結合することによって引き起こされる干渉パターンを分析することによって、リアルタイム生体分子相互作用を測定するための光学技法を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合の「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域内の特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、1つよりも多くのエピトープを有し得る。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域に結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。「エピトープ」という用語はまた、B細胞及び/又はT細胞が応答する抗原上の部位も指す。これはまた、抗原によって結合される抗原の領域も指す。エピトープは、直線状又は不連続(例えば、立体構造的)のいずれかであり得る。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基によって産生されるエピトープである。立体構造的エピトープは、直線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。ある特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基などの分子の化学的活性表面基である決定基を含み得、ある特定の実施形態では、特異的三次元構造特徴、及び/又は比電荷特性を有し得る。エピトープはまた、構造的又は機能的と定義され得る。機能的エピトープは、概して、構造エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。エピトープは、典型的には、固有の空間立体構造に少なくとも3個、より一般的には、少なくとも5個、又は8~10個のアミノ酸を含む。
【0047】
抗原結合タンパク質、例えば、抗体又は抗原結合断片のエピトープを決定するための方法としては、アラニンスキャニング変異分析、ペプチドブロット分析(Reineke,Methods Mol Biol 2004,248:443-463)、ペプチド切断分析、結晶学的研究、及びNMR分析が挙げられる。加えて、抗原のエピトープ除外、エピトープ抽出、及び化学修飾などの方法を用いることができる(Tomer,Prot Sci 2000,9:487-496)。抗原結合タンパク質(例えば、抗体又は抗原結合断片)が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換(HDX)である。例えば、Ehring,Analytical Biochemistry 1999,267:252-259、Engen and Smith,Anal Chem 2001,73:256A-265Aを参照されたい。
【0048】
「実質的な同一性」又は「実質的に同一」という用語は、核酸又はその断片に関連して使用される場合、別の核酸(又はその相補鎖)との適切なヌクレオチド挿入又は欠失と最適に整列された場合、以下で考察されるように、FASTA、BLAST、又はGAPなどの配列同一性の任意の周知のアルゴリズムによる測定で、ヌクレオチド塩基の少なくとも約85%、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、約95%、96%、97%、98%、又は99%にヌクレオチド配列同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、ある特定の事例では、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じ又は実質的に類似したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。
【0049】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な同一性」及び「実質的に同一」という用語は、2つのペプチド配列が、最適に整列された場合、少なくとも約85%の配列同一性、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を共有することを意味する。いくつかの実施形態では、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換が異なっている。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を伴う側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されているものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させないであろう。
【0050】
ポリペプチドについての配列類似性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、種々の置換、欠失及び他の修飾へ割り当てられた類似性の測定値を使用して、類似の配列を照合する。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間、又は野生型タンパク質とその変異タンパク質との間の配列相同性又は配列同一性を判定するために既定パラメータとともに使用することができる、GAP及びBESTFITなどのプログラムを含む。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列はまた、GCGバージョン6.1におけるプログラムである、既定又は推奨パラメータを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列との間の最良重複の領域の整列及び配列同一性率を提供する(Pearson,2000、上記)。本開示の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを使用した、コンピュータープログラムBLAST、特に、BLASTP又はTBLASTNである。(例えば、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403-410及び1997 Nucleic Acids Res.25:3389-3402を参照されたい)。
【0051】
本明細書に具体的に記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン、VH、VL、重鎖、軽鎖、又はCDRなどのポリペプチドの「バリアント」は、比較がBLASTアルゴリズムによって実施されるときに、参照ポリペプチド配列(例えば、以下の配列表に記載される)と少なくとも約70%~99.9%(例えば、少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、又は99.9%)同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを指し、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列間の最大一致を生じるように選択される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドのバリアントは、1つ以上の(例えば、1~10個、又は20個未満、又は10個未満)のミスセンス変異(例えば、保存的置換)、ナンセンス変異、欠失、又は挿入がない、参照ポリペプチド配列(例えば、以下の配列表に記載される)のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0052】
「治療有効量」という用語は、それが投与される対象にとって所望の効果を生じる量を指す。正確な量は、治療の目的に依存し、既知の技法を使用して当業者によって確認できるであろう(例えば、Lloyd(1999)The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照されたい)。
【0053】
抗アルテミン抗体及びその抗原結合断片
一態様では、本開示は、アルテミンに結合する抗体及びその抗原結合断片に関する。アルテミンは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,284,540号に記載されるように、前駆体形態(例えば、プレプロタンパク質)又はタンパク質分解処理された形態で存在し得る。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、アルテミン又はその断片の前駆体形態に結合する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、アルテミン又はその断片のタンパク質分解処理された形態に結合する。
【0054】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒトアルテミン(例えば、ヒトプロタンパク質又はタンパク質分解処理された形態)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒトアルテミンに特異的に結合し、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、又はチンパンジーアルテミンなどであるがこれらに限定されない、1つ以上の他の非ヒト種由来のアルテミンと交差反応する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒトアルテミンに特異的に結合し、アルテミンの少なくともいくつか(例えば、全てではないがいくつか)の非ヒト形態(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル又はチンパンジーアルテミン)と交差反応する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、非ヒト種由来のアルテミンと交差反応しない。
【0055】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体又はその抗原結合断片は、
(a)配列番号4、24、44、及び64からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、
(b)配列番号6、26、46、及び66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)と、
(c)配列番号8、28、48、及び68からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)と、
(d)配列番号12、32、52、及び72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、
(e)配列番号14、34、54、及び74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)と、
(f)配列番号16、36、56、及び76からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)と
を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号2、22、42、及び62からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(HCVR)を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号2、22、42、及び62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCVRを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号10、30、50、及び70からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(LCVR)を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号10、30、50、及び70からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体又はその抗原結合断片は、
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、又は
(b)配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3、又は
(c)配列番号44のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号48のアミノ酸配列を含むHCDR3、又は
(d)配列番号64のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号2と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、HCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、HCVRを含み、HCVRは、配列番号2と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号18と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号22と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、HCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、HCVRを含み、HCVRは、配列番号22と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号38と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号42と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、HCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号42のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号44のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号48のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、HCVRを含み、HCVRは、配列番号42と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号58と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号62と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、HCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号62のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号64のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む、HCVRを含み、HCVRは、配列番号62と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号78と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号78のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体又はその抗原結合断片は、
(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(b)配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(c)配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(d)配列番号72のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号74のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号10と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、LCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、LCVRを含み、LCVRは、配列番号10と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号20と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号30と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、LCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号30のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、LCVRを含み、LCVRは、配列番号30と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号40と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号50と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、LCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号50のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、LCVRを含み、LCVRは、配列番号50と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号60と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号70と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、LCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号70のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号72のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号74のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、LCVRを含み、LCVRは、配列番号70と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号80と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号2と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号10と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの態様では、抗アルテミン抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号22と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号30と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの態様では、抗アルテミン抗体は、配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号44のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号48のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号42と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号50と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号42のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号50のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの態様では、抗アルテミン抗体は、配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号64のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号66のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号68のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号72のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号74のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号62と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号70と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、配列番号62のアミノ酸配列を含むHCVR、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの態様では、抗アルテミン抗体は、配列番号78のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、アルテミンの単量体形態に結合する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、アルテミンの二量体形態に結合する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、アルテミンタンパク質の成熟形態(例えば、配列番号81のアミノ酸108~220)に結合する。
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示の抗アルテミン抗体又は抗体結合断片は、別の機能分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質に連結されるか、又はそれと共発現され得る。例えば、抗体又はその断片は、別の抗体又は抗体断片などの1つ以上の他の分子実体に(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、若しくは非共有会合によって、又は別様に)機能的に連結されて、第2の結合特異性を有する二重特異性又は多重特異性抗体を産生することができる。
【0074】
配列バリアント
本開示の抗体及び抗原結合断片は、個々の抗体が由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失を含み得る。そのような変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公開抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって、容易に確認され得る。本開示の抗体は、本明細書に開示される例示的なアミノ酸配列のうちのいずれかに由来する抗原結合断片を含み、1つ以上のフレームワーク及び/又はCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基、又は別のヒト生殖系列配列の対応する残基、若しくは対応する生殖系列残基の保存的アミノ酸置換に変異させられる(そのような配列変化は、本明細書では集合的に「生殖細胞系変異」と称される)。当業者であれば、本明細書に開示される重鎖及び軽鎖可変領域配列から開始して、1つ以上の個々の生殖系列変異又はそれらの組み合わせを含む、多数の抗体及び抗原結合断片を容易に産生することができる。ある特定の実施形態では、V及び/又はVドメイン内のフレームワーク及び/又はCDR残基の全てが、抗体が最初に由来した元の生殖系列配列に見出される残基に戻って変異させられる。他の実施形態では、ある特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸内、若しくはFR4の最後の8個のアミノ酸内に見出される変異残基のみ、又はCDR1、CDR2、若しくはCDR3内に見出される変異残基のみが、元の生殖系列配列に戻って変異させられる。他の実施形態では、フレームワーク及び/又はCDR残基のうちの1つ以上が、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が最初に由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基に変異させられる。更に、抗体又は抗原結合断片は、フレームワーク及び/又はCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含み得、例えば、ある特定の個々の残基が、特定の生殖系列配列の対応する残基に変異させられる一方で、元の生殖系列配列とは異なる、ある特定の他の残基は、維持されるか、又は異なる生殖系列配列の対応する残基に変異させられる。取得されると、1つ以上の生殖細胞系列変異を含む抗体及び抗原結合断片は、結合特異性の改善、結合親和性の増大、拮抗性又は作動性の生物学的特性の改善又は増強、免疫原性の低減などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な様式で取得された抗体及び抗原結合断片は、本開示内に包含される。
【0075】
本開示はまた、1つ以上の保存的置換を有する、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のうちのいずれかのバリアントを含む、抗体又は抗原結合断片も含む。例えば、本開示は、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のうちのいずれかに対して、例えば、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、又は1個の保存的アミノ酸置換を有する、HCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を含む抗体又は抗原結合断片を含む。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されるものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させない。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられ、(7)含硫側鎖は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸及びアスパラギン-グルタミンである。代替的に、保存的置換とは、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されているPAM250対数尤度行列において正の値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度行列において負ではない値を有する任意の変化である。
【0076】
本開示はまた、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のうちのいずれかと実質的に同一であるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を含む、抗体又は抗原結合断片も含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、表1、表2、又は表9に開示される配列と少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する、HCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、表1、表2、又は表9に開示される配列と少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する、HCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を含み、表1、表2、又は表9に開示される配列に対するアミノ酸配列の差異は、保存的置換又は適度に保存的な置換である。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、キメラ、ヒト化、又は完全にヒトである。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、完全にヒトである。
【0078】
Fcバリアントを含む抗体
いくつかの実施形態では、例えば、中性pHと比較して酸性pHにおいて、FcRn受容体への抗体結合を増強するか、又は減少させる、1つ以上の変異を含むFcドメインを含む、抗アルテミン抗体又はその抗原結合断片が提供される。例えば、本開示は、FcドメインのCH2及び/又はCH3領域に1つ以上の変異を含む抗体又は抗原結合断片を含み、変異は、酸性環境において(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲であるエンドソームにおいて)FcRnに対するFcドメインの親和性を増大させる。そのような変異は、動物に投与されたときに抗体の血清半減期の増加をもたらし得る。そのようなFc修飾の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、E若しくはQ)、250位及び428位(例えば、L若しくはF)、252位(例えば、L/Y/F/W若しくはT)、254位(例えば、S若しくはT)、及び256位(例えば、S/R/Q/E/D若しくはT)における修飾、又は428位及び/若しくは433位(例えば、H/L/R/S/P/Q若しくはK)及び/若しくは434位(例えば、H/F若しくはY)における修飾、又は250位及び/若しくは428位における修飾、又は307位若しくは308位(例えば、308F、V308F)、及び434位における修飾が含まれる。一実施形態では、修飾は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)修飾、428L、259I(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)修飾、433K(例えば、H433K)及び434(例えば、434Y)修飾、252、254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)修飾、250Q及び428L修飾(例えば、T250Q及びM428L)、並びに307及び/又は308修飾(例えば、308F及び/又は308P)を含む。
【0079】
例えば、本開示は、以下からなる群から選択される変異の1つ以上の対又は群を含むFcドメインを含む、抗アルテミン抗体を含む:250Q及び248L(例えば、T250Q及びM248L);252Y、254T及び256E(例えば、M252Y、S254T及びT256E);428L及び434S(例えば、M428L及びN434S);並びに433K及び434F(例えば、H433K及びN434F)。前述のFcドメイン変異、及び本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の変異のあらゆる可能な組み合わせが、本開示の範囲内で企図される。
【0080】
ポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片をコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む核酸、並びにそのようなポリヌクレオチド配列をコードするベクター(例えば、発現ベクター)、及びそのようなベクターが導入されている宿主細胞を提供する。
【0081】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、表1又は表9に開示される抗体又は抗原結合断片をコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、表2又は表9に記載される1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、それぞれ、配列番号4、6、及び8のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号2の配列を含むHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号3、5、及び7のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号1のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号1と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号17のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号17と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、それぞれ、配列番号24、26、及び28のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号22の配列を含むHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号23、25、及び27のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号21のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号21と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号37のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号37と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。
【0084】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、それぞれ、配列番号44、46、及び48のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号42の配列を含むHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号43、45、及び47のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号41のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号41と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号57のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号57と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。
【0085】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、それぞれ、配列番号64、66、及び68のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号62の配列を含むHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号63、65、及び67のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号61のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号61と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号77のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号77と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、それぞれ、配列番号12、14、及び16のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号10の配列を含むLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号11、13、及び15のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号9のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号9と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号19のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号19と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。
【0087】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、それぞれ、配列番号32、34、及び36のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号30の配列を含むLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号31、33、及び35のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号29のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号29と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号39のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号39と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。
【0088】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、それぞれ、配列番号52、54、及び56のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号50の配列を含むLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号51、53、及び55のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号49のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号49と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号59のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号59と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、それぞれ、配列番号72、74、及び76のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号70の配列を含むLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号71、73、及び75のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号69のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号69と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号79のポリヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号79と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性)を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される1つ以上の核酸分子(例えば、抗アルテミン抗体のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子、及び抗アルテミン抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の核酸分子)を含む組成物が提供される。
【0091】
本開示はまた、本明細書に開示される1つ以上の核酸分子を担持する組換え発現ベクター、並びにそのようなベクターが導入されている宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、2つ以上の発現ベクター(例えば、抗アルテミン抗体のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子を含む第1の発現ベクター、及び抗アルテミン抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の核酸分子を含む第2の発現ベクター)が提供される。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、2つ以上の核酸分子を含む(例えば、(i)抗アルテミン抗体のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子、及び(ii)抗アルテミン抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の核酸分子を含む、発現ベクター)。また、本明細書では、本明細書に記載される核酸配列及び/又はベクターを使用して、抗アルテミン抗体又は抗原結合断片を産生する方法も提供される。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片を産生する方法は、抗体又は抗原結合断片の産生を可能にする条件下で本明細書に記載される1つ以上の核酸配列及び/又は発現ベクターを含む宿主細胞を培養することと、そのように産生された抗体又は抗原結合断片を回収することと、を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の核酸配列及び/又はベクターを含む宿主細胞は、原核細胞(例えば、E.coli)である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、非ヒト哺乳類細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、BHK細胞、又はHEK293細胞)などの真核細胞である。また、本明細書では、抗体又は抗原結合断片の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することによって、抗アルテミン抗体又はその抗原結合断片を産生し、そのように産生された抗体及び抗原結合断片を回収する方法も提供される。
【0093】
抗アルテミン抗体の特性評価
本開示は、高い親和性でヒトアルテミンに結合する抗体及びその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、本明細書の実施例2で定義されるアッセイフォーマットを使用した、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉法による測定で、約5nM未満のKで(例えば、25℃において)ヒトARTNに結合する抗体及びその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトARTNは、ARTNの成熟形態、例えば、配列番号81に記載されるヒトARTNタンパク質配列のアミノ酸108~220である。ある特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例2で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似するアッセイを使用した、表面プラズモン共鳴アッセイによる測定で、約5nM未満、約1nM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約100pM未満、約90pM未満、約80pM未満、約70pM未満、約60pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、約10pM未満、約5pM未満、約4pM未満、約2pM未満、約1pM未満、約0.5pM未満、約0.2pM未満、約0.1pM未満、又は約0.05pM未満のKでヒトARTNに結合する。
【0094】
いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、本明細書の実施例2で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似するアッセイを使用した、25℃における表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉法による測定で、約30分を超える解離半減期(t1/2)でヒトARTNに結合する抗体及びその抗原結合断片を含む。ある特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例2で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似するアッセイを使用した、25℃における表面プラズモン共鳴による測定で、約30分を超える、約40分を超える、約50分を超える、約60分を超える、約70分を超える、約80分を超える、約90分を超える、約100分を超える、約150分を超える、約200分を超える、約250分を超える、又は約300分を超えるt1/2で、ヒトARTNに結合する。
【0095】
いくつかの実施形態では、本開示は、ARTNタンパク質がGFRα3に結合することを妨害する、抗体及びその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、本明細書の実施例2で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似するアッセイを使用した、ブロッキングELISAアッセイによる測定で、ヒトGFRα3への単量体ARTN(例えば、ヒト、カニクイザル、及び/又はマウスARTN)タンパク質結合を遮断する抗体及びその抗原結合断片を含む。ある特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合断片は、例えば、本明細書の実施例3で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似するアッセイを使用した、ブロッキングELISAによる測定で、ヒトGFRα3へのヒトARTN結合の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%を遮断する。
【0096】
いくつかの実施形態では、本開示は、アルテミン媒介性細胞シグナル伝達を阻害する抗体及びその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、実施例4に記載されるヒトGFRα3及びヒトRETを発現する細胞株におけるバイオアッセイ、又は実質的に類似するアッセイを使用した測定で、アルテミン媒介性細胞シグナル伝達を阻害する抗体及びその抗原結合断片を含む。
【0097】
エピトープマッピング及び関連技術
いくつかの実施形態では、本開示の抗体が結合するARTN上のエピトープは、ARTNタンパク質の3個以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上)のアミノ酸の単一連続配列からなり得る。代替的に、エピトープは、ARTNの複数の非連続的アミノ酸(又はアミノ酸配列)からなり得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ARTN単量体内に含まれるアミノ酸と相互作用し得るか、又はARTN二量体の2つの異なる鎖上のアミノ酸と相互作用し得る。本明細書で使用される場合の「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られている抗体分子の可変領域中の特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、1つより多くのエピトープを有し得る。したがって、異なる抗体が、抗原上の異なる領域に結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、立体構造的又は直線状のいずれであり得る。立体構造的エピトープは、直線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基によって産生されるエピトープである。ある特定の状況では、エピトープは、抗原上の糖、ホスホリル基、又はスルホニル基の部分を含み得る。
【0098】
当業者に公知である様々な技法を使用して、抗体がポリペプチド又はタンパク質内の「1つ以上のアミノ酸と相互作用する」かどうかを決定することができる。特定の抗体のエピトープ又は結合ドメインを決定するために使用することができる例示的な技法としては、例えば、Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor,NY)に記載されているものなどの常套的クロスブロッキングアッセイ、点変異誘発(例えば、アラニンスキャニング変異誘発、アルギニンスキャニング変異誘発など)、ペプチドブロット分析(Reineke,2004,Methods Mol Biol 248:443-463)、プロテアーゼ保護、及びペプチド切断分析が挙げられる。加えて、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出、及び化学修飾などの方法を用いることができる(Tomer,2000,Protein Science 9:487-496)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析法によって検出される水素/重水素交換である。一般的には、水素/重水素交換は、対象のタンパク質を重水素標識し、続いて、抗体を重水素標識タンパク質に結合することを伴う。次に、タンパク質/抗体複合体は、水に移され、抗体によって保護された残基(重水素標識されたままである)を除く全ての残基で、水素・重水素交換を生じさせる。抗体の解離後、標的タンパク質は、プロテアーゼ切断及び質量分析法解析を受け、それによって、抗体が相互作用する特異的アミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259、Engen and Smith(2001)Anal. Chem. 73:256A-265Aを参照されたい。X線結晶構造分析を使用して、抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定することもできる。
【0099】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される特異的な例示的抗体(例えば、以下の表1又は表9に記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかを含む抗体)と同じエピトープに結合する、抗アルテミン抗体を提供する。
【0100】
いくつかの実施形態では、本開示は、ARTNへの結合について、本明細書に記載される特異的な例示的抗アルテミン抗体のうちのいずれかと競合する、抗アルテミン抗体を提供する。
【0101】
当業者であれば、当該技術分野で公知である常套的方法を使用することによって、その特定の抗体が本開示の参照抗体と同じエピトープに結合するか、又は結合について競合するかどうかを決定することができる。例えば、試験抗体が本開示の参照抗体と同じARTN上のエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体は、最初に、ARTNタンパク質に結合させられる。次に、ARTNタンパク質に結合する試験抗体の能力が評価される。試験抗体が参照抗体との飽和結合後にARTNに結合することができる場合、試験抗体は、参照抗体とは異なるARTN上のエピトープに結合すると結論付けることができる。一方で、試験抗体が参照抗体との飽和結合後にARTNに結合することができない場合、試験抗体は、本開示の参照抗体によって結合されたエピトープと同じARTNのエピトープに結合し得る。次いで、追加の常套的実験(例えば、ペプチド変異及び結合分析)を実行して、観察された試験抗体の結合の欠如が、実際に、参照抗体と同じエピトープへの結合に起因するかどうか、又は立体遮断(若しくは別の現象)が、観察された結合の欠如の原因であるかどうかを確認することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、又は当技術分野で利用可能な任意の他の定量的若しくは定性的抗体結合アッセイを使用して実施することができる。本開示のある特定の実施形態によれば、競合結合アッセイにおいて測定されると、例えば、一方の抗体の1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、又は100倍余剰量が、他方の抗体の結合を少なくとも50%であるが、好ましくは75%、90%、又は更には99%阻害する場合、2つの抗体は同じ(又は重複する)エピトープに結合する(例えば、Junghans et aI.,Cancer Res.1990:50:1495-1502を参照)。代替的に、一方の抗体の結合を低減又は排除する抗原中の本質的に全てのアミノ酸変異が、他方の抗体の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は、同じエピトープに結合するとみなされる。一方の抗体の結合を低減又は排除するアミノ酸変異のサブセットのみが、他方の抗体の結合を低減又は排除する場合、2つ抗体は、「重複エピトープ」を有するとみなされる。
【0102】
試験抗体又はその抗原結合断片が、参照抗原結合分子と結合について競合するかどうかを決定するために、以下の2つの方向性で上述の結合方法論が実施される:第1の方向性では、参照抗体は、飽和条件下でARTNタンパク質に結合させられ、続いて、ARTNタンパク質への試験抗体の結合の評価が行われる。第2の方向性では、試験抗体は、飽和条件下でARTNタンパク質に結合させられ、続いて、ARTNタンパク質への参照抗体の結合の評価が行われる。両方の方向性で、第1の(飽和)抗体のみがARTN質に結合することが可能である場合、試験抗体及び参照抗体は、ARTNへの結合について競合すると結論付けられる。当業者によって理解されるように、参照抗体と結合について競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合するわけではない場合があるが、重複又は隣接するエピトープに結合することによって参照抗体の結合を立体的に遮断し得る。
【0103】
抗体の調製
本明細書に開示される抗体は、当該技術分野で公知である任意の抗体生成技術によって調製することができる。ある特定の実施形態では、抗体の個々の成分(例えば、重鎖及び軽鎖)のうちの1つ以上は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体に由来する。そのような抗体を作製するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、本開示の抗体の重鎖及び/又は軽鎖のうちの1つ以上は、VELOCIMMUNE(商標)技術を使用して調製することができる。VELOCIMMUNE(商標)技術(又は任意の他のヒト抗体生成技術)を使用して、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する特定の抗原(例えば、ARTN)に対する高親和性キメラ抗体が、最初に単離される。抗体は、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特性評価され、選択される。マウス定常領域は、所望のヒト定常領域と置き換えられて、抗体に組み込まれ得る完全ヒト重鎖及び/又は軽鎖を生成する。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗体は、任意選択的にアジュバントと組み合わせて、マウスに免疫原(例えば、任意選択的に担体にコンジュゲートされた、配列番号82に示されるペプチド)を投与することによって生成することができる。免疫付与後、脾細胞が採取され、マウス骨髄腫細胞と融合されて、その生存率を維持し、ハイブリドーマ細胞株を形成する。ハイブリドーマ細胞株が、スクリーニング及び選択されて、アルテミン特異的抗体を産生する細胞株を同定する。代替的に、抗原特異的キメラ抗体をコードするDNA、又は軽鎖及び重鎖の可変ドメインは、各々が参照によりその全体で組み込まれる、U.S.2007/0280945又はWO2016077666に記載されるように、骨髄腫細胞に融合することなく、抗原陽性B細胞から直接単離され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された動物が、ヒト抗体を作製するために使用され得る。非限定的な例示的遺伝子組換えマウス、及び遺伝子組換えマウスから抗体を生成する方法は、US8,697,940、US10,130,081、US10,561,124、及びUS10,640,800に記載されており、その各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される場合、「完全ヒト」とは、抗原結合分子、抗体、抗原結合断片、又はその免疫グロブリンドメインの各ポリペプチドの全長にわたってヒト配列に由来するDNAによってコードされるアミノ酸配列を含む、抗原結合分子、例えば、抗体、又はその抗原結合断片若しくは免疫グロブリンドメインを指す。いくつかの事例では、完全ヒト配列は、ヒトに内因性のタンパク質に由来する。他の事例では、完全ヒトタンパク質又はタンパク質配列は、各構成要素配列がヒト配列に由来するキメラ配列を含む。いずれか1つの理論に拘束されないが、キメラタンパク質又はキメラ配列は、一般的に、例えば、任意の野生型ヒト免疫グロブリン領域又はドメインと比較して、構成要素配列の接合部における免疫原性エピトープの生成を最小限にするように設計されている。
【0106】
生物学的同等物
本開示は、記載された抗体のアミノ酸配列とは異なるが、ARTNに結合する能力を保持する、アミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。そのようなバリアント分子は、親配列と比較するとアミノ酸の1つ以上の付加、欠失、又は置換を含むが、記載された抗体の生物学的活性とは本質的に同等である生物学的活性を呈する。同様に、本開示の抗体をコードする核酸配列は、開示された配列と比較すると1つ以上の付加、欠失、又は置換を含むが、本明細書に開示される抗体と本質的に生物学的に同等である抗体又は抗体断片をコードする、配列を包含する。
【0107】
本開示は、本明細書に記載される例示的な抗体のうちのいずれかと生物学的に同等である抗体を含む。2つの抗体は、例えば、類似実験条件下で同じモル用量において、単回用量又は複数回用量のいずれかで投与されたときに、吸収の速度及び程度が有意差を示さない、薬学的同等物又は薬学的代替物である場合、生物学的に同等とみなされる。いくつかの抗体は、その吸収速度ではなく、その吸収の程度が同等である場合に、同等物又は薬学的代替物とみなされ、その上、吸収速度のそのような差異が意図的であり、ラベリングに反映されており、例えば、慢性使用での有効体内薬物濃度の獲得に必須ではなく、研究される特定の医薬品にとって医学的に重要ではないとみなされるため、生物学的に同等とみなされ得る。
【0108】
一実施形態では、2つの抗体は、その安全性、純度、及び効力において臨床的に有意義な差異がない場合、生物学的に同等である。
【0109】
一実施形態では、患者を第1の抗体(例えば、参照製品)と第2の抗体(例えば、生物学的製品)との間で1回以上切り替えることができ、そのような切り替えがない継続的療法と比較して、免疫原性の臨床的に有意な変化又は有効性の減少を含む、有害作用のリスクの予期される増加がない場合、2つの抗体は、生物学的に同等である。
【0110】
一実施形態では、2つの抗体は、両方とも、1つ又は複数の使用条件のための1つ又は複数の共通の作用機序によって、そのような機序が知られている程度に作用する場合に、生物学的に同等である。
【0111】
生物学的同等性は、インビボ及びインビトロ方法によって実証され得る。生物学的同等性の測定値の非限定的な例としては、例えば、(a)抗体又はその代謝物の濃度が、時間の関数として血液、血漿、血清、又は他の生体液中で測定される、ヒト又は他の哺乳動物におけるインビボ検査、(b)ヒトインビボ生体利用効率データと相関しており、このデータを合理的に予測するインビトロ検査、(c)抗体(又はその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定される、ヒト又は他の哺乳動物におけるインビボ検査、及び(d)抗体の安全性、有効性、又は生体利用効率若しくは生物学的同等性を立証する、適切に管理された臨床試験が挙げられる。
【0112】
本明細書に記載される例示的な抗体の生物学的に同等なバリアントは、例えば、残基若しくは配列の種々の置換を行うことによって、又は生物学的活性に必要とされない末端若しくは内部残基若しくは配列を欠失させることによって構築され得る。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生時に不必要又は不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失させるか、又は他のアミノ酸で置き換えることができる。他の実施形態では、生物学的に同等の抗体には、抗体のグリコシル化特性を修飾するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を排除又は除去する変異を含む、本明細書に記載される例示的な抗体が含まれ得る。
【0113】
医薬組成物
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される抗アルテミン抗体及び抗原結合断片を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容されるビヒクル、担体、及び/又は賦形剤と製剤化される。様々な薬学的に許容される担体及び賦形剤が、当該技術分野で周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAを参照されたい。いくつかの実施形態では、担体は、静脈内、筋肉内、経口、腹腔内、髄腔内、経皮、局所、又は皮下投与に好適である。
【0114】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内、及び筋肉内注射、点滴などのための剤形などの注射可能な調製物を含む。これらの注射可能な調製物は、既知の方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射に従来使用される無菌水性媒体又は油性媒体に、上述される抗体又はその塩を溶解、懸濁、又は乳化させることによって、調製され得る。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースを含有する等張液、及び他の助剤などがあり、これは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用され得る。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが採用され、これは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用され得る。このようにして調製された注射液は、適切なアンプル中に充填され得る。
【0115】
本開示の方法に従って患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢及び大きさ、症状、状態、投与経路、及び同等物に応じて変化し得る。用量は、典型的には、体重又は体表面積に従って計算される。状態の重症度に応じて、治療の頻度及び期間を調整することができる。本明細書に開示される医薬組成物を投与するための有効投与量及びスケジュールは、経験的に決定され得、例えば、患者の進行を定期的な評価によって監視し、それに応じて、用量を調整することができる。更に、当該技術分野で周知の方法を使用して、投与量の種間スケーリングを実施することができる(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0116】
例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、変異ウイルスを発現することが可能な組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスといった、様々な送達系が既知であり、医薬組成物を投与するために使用され得る(例えば、Wu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照)。投与方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、任意の便宜的な経路によって、例えば、注入若しくはボーラス注射によって、上皮若しくは粘膜皮膚内層(linings)(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通した吸収によって投与され得、かつ他の生物学的活性剤と一緒に投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、皮下投与される。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体又は抗体を含む医薬組成物は、容器内に含まれる。したがって、別の態様では、本明細書に開示される抗体又は医薬組成物を含む容器が提供される。例えば、いくつかの実施形態では、抗体又は医薬組成物は、ガラスバイアル、シリンジ、ペン型送達デバイス、及び自己注射器からなる群から選択される容器内に含まれる。
【0118】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体又は医薬組成物は、標準的な針及びシリンジを用いて、例えば、皮下又は静脈内に送達される。いくつかの実施形態では、シリンジは、事前充填されたシリンジである。いくつかの実施形態では、ペン型送達デバイス又は自己注射器は、本開示の抗体又は医薬組成物を送達するために(例えば、皮下送達のために)使用される。ペン型送達デバイスは、再利用可能又は使い捨てであり得る。再利用可能なペン型送達デバイスは、一般的に、医薬組成物を含む交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジを容易に廃棄し、医薬組成物を含む新しいカートリッジと交換することができる。次いで、ペン型送達デバイスを再利用することができる。使い捨てペン型送達デバイスでは、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスは、医薬組成物がデバイス内のリザーバ内に保持されている、事前に充填された状態で販売される。リザーバが医薬組成物を出して空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0119】
好適なペン及び自己注射器型送達デバイスの例としては、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I、II、及びIII(Novo Nordisk、Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen,Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、及びOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis、Frankfurt,Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下送達において用途を有する、使い捨てペン型送達デバイスの例としては、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自己注射器(Amgen、Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、並びにHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗体又は医薬組成物は、制御放出系を使用して送達される。一実施形態では、ポンプが使用され得る(Langer、上記、Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施形態では、高分子材料を使用することができる。Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照されたい。更に別の実施形態では、制御放出系を組成物の標的の近傍に配置することができ、したがって、全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,1984,Medical Applications of Controlled Release、上記、vol.2,pp.115-138を参照)。他の制御放出系は、Langer,1990,Science 249:1527-1533による概説で考察されている。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される使用のための医薬組成物は、活性成分の用量を適合させるために適した単位用量で剤形に調製される。単位用量におけるそのような剤形には、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル剤)、坐剤などが含まれる。いくつかの実施形態では、剤形中に含有される抗原結合分子の量は、約5~約500mg、例えば、約5~約100mg又は約10~約250mgである。
【0122】
治療上の使用
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される抗アルテミン抗体及び抗原結合断片を使用する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗アルテミン抗体及び抗原結合断片は、アルテミン発現(例えば、過剰発現)又は活性に関連する任意の疾患、障害、又は状態の治療、予防、及び/又は改善に有用である。いくつかの実施形態では、疾患、障害、又は状態は、疼痛、例えば、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、神経痛(例えば、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、若しくは全身神経痛)、内臓痛、変形性関節炎性痛、痛風、神経根痛、座骨神経痛、背痛、頭頸部痛、突出痛、術後痛、化学療法誘発性神経障害性疼痛、放射線療法誘発性神経障害性疼痛、放射線関連疼痛、又はがん疼痛(例えば、骨肉腫若しくは膵臓がんに関連する疼痛)である。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗アルテミン抗体及び抗原結合断片は、頭痛又は頭痛に関連する疼痛の治療、予防、及び/又は改善に(例えば、片頭痛、群発頭痛、慢性頭痛、又は緊張性頭痛に)有用である。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片はまた、以下の状態のうちのいずれか:非悪性急性疼痛、慢性疼痛、又は骨折痛、関節炎(例えば、変形性関節炎又は関節リウマチ)に関連する疼痛、脊髄狭窄症、神経障害性腰痛、筋筋膜性疼痛症候群、線維筋症、側頭骨顎関節痛、内臓痛、慢性頭痛の痛み、群発頭痛を含む緊張性頭痛、片頭痛、糖尿病性神経障害、HIV関連神経障害、シャルコー・マリー・トゥース神経障害、遺伝性感覚神経障害、末梢神経損傷、有痛性神経腫、異所性近位及び遠位排出、神経根障害、化学療法誘発性神経障害性疼痛、放射線療法誘発性神経障害性疼痛、乳房切除後疼痛、中枢性疼痛、脊髄損傷疼痛、脳卒中後疼痛、視床痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、幻肢痛、難治性疼痛、筋骨格痛、関節痛、急性痛風疼痛、掻痒症、機械的腰痛、頸部痛、腱炎、負傷/運動痛、腹痛、心臓痛を含む胸痛、骨盤痛、腎疝痛、陣痛を含む急性産科疼痛、帝国切開痛、熱傷及び外傷痛、子宮内膜症、帯状疱疹痛、突出痛、副鼻腔痛又は歯痛を含む口腔顔面痛、多発性硬化症痛、ハンセン病痛、ギラン・バレー痛、並びに口腔灼熱症候群を治療するために使用され得る。
【0125】
投与量及び投与レジメン
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に従って対象に投与される抗アルテミン抗体又は抗原結合断片の量は、治療有効量である。本明細書で使用される場合、「治療有効量」という語句は、それが投与される、所望の効果を生じる量である。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗体は、体重ベースの用量として対象に投与される。「体重ベースの用量」(例えば、mg/kg単位の用量)は、対象の体重に応じて変化するであろう抗体の用量である。
【0127】
他の実施形態では、抗体は、固定用量として投与される。「固定用量」(例えば、mg単位の用量)は、体重などの任意の具体的な対象関連因子にかかわらず、抗体の1回の用量が全ての対象に使用されることを意味する。1つの特定の実施形態では、抗体の固定用量は、所定の体重又は年齢に基づく。
【0128】
典型的には、抗体の好適な用量は、レシピエントの1キログラムの体重当たり約0.001~約200.0ミリグラムの範囲内、一般的には、1キログラムの体重当たり約1~50mgの範囲内であり得る。例えば、抗体は、単回投与当たり約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、又は約50mg/kgで投与することができる。列挙された値の中間である値及び範囲もまた、本開示の一部であることを意図している。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗体は、約5mg~約2500mgの固定用量として投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、約500mg、約525mg、約550mg、約575mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、約700mg、約725mg、約750mg、約775mg、約800mg、約825mg、約850mg、約875mg、約900mg、約925mg、約950mg、約975mg、約1000mg、約1500mg、約2000mg、又は約2500mgの固定用量として投与される。列挙された値の中間である値及び範囲もまた、本開示の一部であることを意図している。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗体は、治療応答が達成される限り、1週間に約4回、1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、8週間毎に1回、12週間毎に1回、又はより少ない頻度の投与頻度で対象に投与される。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体の複数回用量が、規定の時間経過にわたって対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、抗体の複数回用量を対象に逐次的に投与することを含む。本明細書に使用される場合、「逐次的に投与すること」とは、抗体の各用量が、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週、又は数カ月)によって分離された異なる日に、対象に投与されることを意味する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、抗体の単回の初回用量、続いて、抗体の1回以上の二次用量、任意選択的に続いて、抗体の1回以上の三次用量を患者に逐次的に投与することを含む。
【0132】
「初回用量」、「二次用量」、及び「三次用量」という用語は、抗体の投与の時間的な順序を指す。したがって、「初回用量」は、治療レジメンの開始時に投与される用量であり(「負荷用量」とも称される)、「二次用量」は、初回投与の後に投与される用量であり、「三次用量」は、二次投与の後に投与される用量である。いくつかの実施形態では、初回用量、二次用量、及び三次用量は全て、同量の抗体を含有し得るが、投与頻度に関しては互いに異なり得る。いくつかの実施形態では、初回用量、二次用量、及び/又は三次用量に含有される抗体の量は、治療経過の間に互いに変化する(例えば、適宜上方又は下方に調整される)。ある特定の実施形態では、1回以上(例えば、1、2、3、4、又は5回)の用量が、治療レジメンの開始時に「負荷用量」として投与され、その後に、より低い頻度ベースで投与される後続の用量(例えば、「維持用量」)が続く。いくつかの実施形態では、初回用量及び1回以上の二次用量は各々、同量の抗体を含有する。他の実施形態では、初回用量は、抗体の第1の量を含み、1回以上の二次用量は各々、抗体の第2の量を含む。例えば、抗体の第1の量は、抗体の第2の量よりも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍又は5倍以上であり得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、各二次及び/又は三次用量は、直前の用量の1~14週間(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5週間以上)後に投与される。本明細書で使用される場合の「直前の用量」という語句は、複数回投与の順序において、介在する用量がない順序でまさに次の用量の投与の前に患者に投与される抗体の用量を意味する。
【0134】
本開示の方法は、抗体の任意の数の二次及び/又は三次用量を患者に投与することを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、単回の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単回の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回以上)の三次用量が患者に投与される。
【0135】
複数の二次用量を含むいくつかの実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与される。例えば、各二次用量は、直前の用量の1、2、3、又は4週間後に患者に投与され得る。同様に、複数の三次用量を伴ういくつかの実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与される。代替的に、二次用量及び/又は三次用量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの経過にわたって変化し得る。投与の頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師によって治療の経過中に調整され得る。
【0136】
併用療法
いくつかの実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合断片は、1つ以上の他の治療剤と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗体、小分子、阻害性核酸(例えば、RNAi)、抗体薬物コンジュゲート、二重特異性抗体、又はそれらの組み合わせである。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示の抗アルテミン抗体は、別のアルテミン阻害剤、GFRα3の阻害剤(例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2014/031712に開示されている抗体)、別のGDNFファミリーリガンド若しくは受容体の阻害剤、例えば、GDNF、ニュールツリン(NRTN)、ペルセフィン(PSPN)、GFRα1、GFRα2、若しくはGFRα4の阻害剤、又はRET阻害剤と組み合わせて投与することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗アルテミン抗体は、疼痛を低減、緩和、又は改善する追加の治療剤と組み合わせて投与される。例示的な追加の治療剤としては、COX-2阻害剤、局所麻酔薬、NMDAモジュレーター、カンナビノイド受容体アゴニスト、P2Xファミリーモジュレーター、VR1アンタゴニスト、サブスタンスPアンタゴニスト、電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)の阻害剤、例えば、Nav1.7アンタゴニスト、Nav1.8アンタゴニスト、若しくはNav1.9アンタゴニスト(例えば、Nav1.7、Nav1.8、若しくはNav1.9に対する抗体、小分子阻害剤、若しくは阻害性核酸)、カルシウムチャネル阻害剤、カリウムチャネル阻害剤、サイトカイン阻害剤若しくはサイトカイン受容体拮抗薬(例えば、インターロイキン-1(IL-1)阻害剤(リロナセプト(「IL-1トラップ」、Regeneron)若しくはインターロイキン-1受容体(IL-1R)阻害剤、IL-18阻害剤、IL-6若しくはIL-6R阻害剤、IL-17阻害剤、腫瘍壊死因子(TNF)若しくはTNF受容体阻害剤(例えば、アダリムマブ)、又はTWEAKの阻害剤(TNF関連WEAKアポトーシス誘導剤)など)、成長因子阻害剤(例えば、小分子NGFアンタゴニスト若しくは抗NGF抗体などの神経成長因子(NGF)阻害剤)、神経栄養因子阻害剤(例えば、BDNF、TrkA、TrkB、若しくはp75の阻害剤、又はGDNFファミリーリガンド若しくは受容体の別の阻害剤)、抗てんかん/抗痙攣薬(例えば、ガバペンチン、プレガバリン)、オピオイド、モルヒネ、低用量コルヒチン、アスピリン若しくは別のNSAID、ステロイド(例えば、プレドニゾン、メトトレキサートなど)、低用量シクロスポリンA、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗鬱薬、酸感知イオンチャネル(例えば、ASIC1又はASIC3)の阻害剤、尿酸合成阻害剤(例えば、アロプリノール)、尿酸排出プロモーター(例えば、プロベネシド、スルフィンピラゾン、ベンズブロマロンなど)、及び/又はコルチコステロイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
追加の治療的活性成分は、本開示の抗体の投与の直前に、それと同時に、又はその直後に投与され得る。本開示の目的のために、そのような投与レジメンは、追加の治療的活性成分「と組み合わせた」抗体の投与とみなされる。
【0140】
本開示は、本開示の抗体が、本明細書の他の箇所に記載される追加の治療的活性成分のうちの1つ以上と共製剤化される、医薬組成物を含む。
【実施例
【0141】
以下の実施例は、本開示の方法及び組成物をどのように作製及び使用するかの完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示され、本発明者らがその発明とみなすものの範囲を限定することを意図していない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、いくらかの実験誤差及び偏差を考慮に入れるべきである。別途指示のない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0142】
実施例1:ヒトアルテミンに対するヒト抗体の生成
VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖及びカッパ鎖可変領域をコードするDNAを含む操作されたマウス)を、ヒトアルテミン抗原(C末端mmHタグを有するhARTN(A108-G220)、配列番号82)で免疫付与し、続いて、同じ免疫原を有するブースターによって免疫付与することによって、ヒトアルテミンに対する抗体を取得した。
【0143】
免疫付与後、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許 第7,582,298号に記載されるように、抗体を抗原陽性マウスB細胞から直接単離した。この方法を使用して、完全ヒト抗hARTN抗体(すなわち、ヒト可変ドメイン及びヒト定常ドメインを保有する抗体)を取得した。この方法を使用して生成された抗ARTN抗体を、H4H33331P、H4H33335P、H4H33336P、及びH4H33349Pと指定した。この実施例の方法に従って生成される例示的な抗ARTN抗体の特定の生物学的特性は、以下に記載される実施例で説明される。
【0144】
(表1)アミノ酸配列識別子
【0145】
(表2)核酸配列識別子
【0146】
実施例2:アルテミン抗体の結合特性評価
アルテミンモノクローナル抗体のOctet結合
Octet HTXバイオセンサープラットフォーム(Pall ForteBio Corp.)上でリアルタイムの標識を含まないバイオレイヤー干渉法(BLI)アッセイを使用して、アルテミンモノクローナル抗体(mAb)H4H33331P、H4H33335P、H4H33336P、及びH4H33349Pの各々へのアルテミンの結合を決定した。c末端においてエピトープタグmyc-myc-6xHisに融合したヒト(hアルテミン、Uniprot Q5T4W7-1、アミノ酸A108-G220)、カニクイザル(Macaca fascicularis、Mfアルテミン、XP_015292608.1、アミノ酸A108-G220;X110G、X111P、X112G、X113S、X114R、X115P、X116R;Xは、それらの特異的位置でのヒト配列を示す)、又はマウス(mアルテミン、Uniprot Q9Z0L2-1、アミノ酸A112-G224)タンパク質の成熟領域を含む、タグ付けされたアルテミンタンパク質を生成した。「hアルテミン-MMH」と称されるタグ付けされたヒトアルテミンの配列は、配列番号82に記載され、「Mfアルテミン-MMH」と称されるタグ付けされたサルアルテミンの配列は、配列番号83に記載され、「mアルテミン-MMH」又は「msアルテミン-MMH」と称されるタグ付けされたマウスアルテミンの配列は、配列番号84に記載される。
【0147】
プレートを1000rpmの速度で振盪させながら、25℃において、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.02%NaN3及び0.05%v/v界面活性剤Tween-20、並びに1mg/mLのBSA、pH7.4(HBS-EBT)緩衝液中で、実験全体を実施した。2μg/mLのアルテミンmAbを含むウェルにバイオセンサーチップを40秒間浸漬することによって、異なるアルテミンmAbを、最初に、抗ヒト抗体(AHC)でコーティングしたOctetバイオセンサーチップ(Fortebio Inc、#18-5064)上に捕捉した。アルテミンmAb捕捉バイオセンサーチップを、後に、異なる濃度(30~3.75nM、2倍連続希釈)のタグ付けされたヒト、サル、又はマウスアルテミンタンパク質を含むウェルに3分間浸漬し、HBS-EBT緩衝液中のその解離を20分間監視した。全てのアルテミン及びアルテミンmAb試料を、HBS-EBT緩衝液中で調製した。リアルタイム結合応答を実験の過程全体の間に監視し、全工程の終了時に結合応答を記録した。
【0148】
異なるアルテミンmAbへの様々なアルテミン試薬の結合が表3で報告され、濃度依存性結合データも図1~3で提供される。
【0149】
表3及び図1に示されるように、4つ全てのアルテミンmAbが、25℃でhアルテミン-MMHに結合した。
【0150】
表3及び図2に示されるように、4つ全てのアルテミンmAbが、25℃でMfアルテミン-MMHに結合した。
【0151】
表3及び図3に示されるように、4つ全てのアルテミンmAbが、25℃でmアルテミン-MMHに結合した。
【0152】
(表3)異なるアルテミンmAbへの様々なアルテミン試薬の結合
は、アイソタイプmAb捕捉表面へのアルテミンの結合が、指示された濃度で試験されなかったことを示す。
【0153】
アルテミンモノクローナル抗体のBiacore結合動態
リアルタイム表面プラズモン共鳴Biacore T200センサーを使用して、アルテミンモノクローナル抗体(mAbs)H4H33331P、H4H33335P、H4H33336P、及びH4H33349Pの各々へのアルテミン結合の平衡解離定数(K)を決定した。全ての結合研究を、25℃において、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、及び0.05%v/v界面活性剤Tween-20、pH7.4(HBS-ET)泳動緩衝液中で実施した。Biacore CM4センサーチップ表面を、抗myc mAbとのアミンカップリングによって最初に誘導体化して、hアルテミン-MMH、Mfアルテミン-MMH、又はmアルテミン-MMHを捕捉した。HBS-EP泳動緩衝液中で調製された異なる濃度のアルテミンmAb(60~2.2nM、3倍連続希釈)を、50μL/分の流量でアルテミン捕捉表面にわたって3分間注射し、HBS-ET泳動緩衝液中のその解離を5分間監視した。各サイクルの終了時に、20mMリン酸の6秒間の注射を使用して、アルテミン捕捉表面を再生した。
【0154】
Scrubber 2.0c曲線適合ソフトウェアを使用して、質量輸送限界を用いてリアルタイム結合センサーグラムを1:1結合モデルに適合させることによって、会合速度(k)及び解離速度(k)を決定した。結合解離平衡定数(K)及び解離半減期(t1/2)を、以下のように運動速度から計算した: K(M)=k/k、及びt1/2(分)=[ln2/(60*k)]。
【0155】
25℃における本発明の異なるアルテミンmAbへのアルテミン結合の結合動態パラメータが、表4~6に示される。
【0156】
表4に示されるように、4つ全てのアルテミンmAbが、25℃において119pM~2.91nMの範囲のK値でhアルテミン-MMHに結合した。
【0157】
表5に示されるように、4つのアルテミンmAbのうちの3つ(H4H33331P、H4H33335P、及びH4H33349P)が、25℃において111pM~1.51nMの範囲のK値でMfアルテミン-MMHに結合した。特異的結合はまた、mAb H4H33335Pについても観察されたが、現在の実験条件下では結合動態パラメータを決定することができなかった。
【0158】
表6に示されるように、4つのアルテミンmAbのうちの2つ(H4H33331P及びH4H33349P)は、25℃において、それぞれ、113pM及び346pMのK値でmアルテミン-MMHに結合した。特異的結合はまた、mAb H4H33335P及びH4H33336Pについても観察されたが、現在の実験条件下では結合動態パラメータを決定することができなかった。
【0159】
(表4)25℃におけるhアルテミン-MMHへの異なるアルテミンモノクローナル抗体の結合動態パラメータ
は、現在の実験条件下では結合が観察されなかった(NB)ことを示す。
【0160】
(表5)25℃におけるMfアルテミン-MMHへの異なるアルテミンモノクローナル抗体の結合動態パラメータ
は、現在の実験条件下では結合が観察されなかった(NB)ことを示す。
は、特異的結合が観察されたが、現在の実験条件下では結合動態パラメータを決定することができず、したがって、利用可能ではない(NA)ことを示す。
【0161】
(表6)25℃におけるmアルテミン-MMHへの異なるアルテミンモノクローナル抗体の結合動態パラメータ
は、現在の実験条件下では結合が観察されなかった(NB)ことを示す。
は、特異的結合が観察されたが、現在の実験条件下では結合動態パラメータを決定することができず、したがって、利用可能ではない(NA)ことを示す。
【0162】
実施例3:GFRα3へのARTN結合の抗ARTN抗体遮断
ヒトGFRα3(グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ファミリー受容体アルファ3)への単量体ヒト、サル(Macaca fascicularis)及びマウスARTNタンパク質結合を遮断する抗アルテミン(ARTN)抗体の能力を決定するために、ELISAベースのフォーマットを使用して、複数のアルテミン遮断アッセイを開発した。
【0163】
実験で使用されたアルテミンタンパク質は、上記の実施例2に開示されるhアルテミン-MMH、Mfアルテミン-MMH、又はmアルテミン-MMHであった。実験で使用されるヒトGFRα3は、c末端にヒトIgG1のFc部分を有する、UniProtKBアクセッション番号O60609のアミノ酸D32-W382から構成され、「hGFRa3.hFc」(配列番号85)と称される。
【0164】
以下の手順を使用して、実験を実行した。プレートを、3つ全てのアッセイについて4℃で一晩、96ウェルマイクロタイタープレート上のPBS中の2μg/mlのhGFRa3.hFcでコーティングした。一晩コーティングした後、その後、PBS中の0.5%(w/v)BSAを使用して、非特異的結合部位を室温で1時間遮断した。他のマイクロタイタープレートでは、一定量の75pM hARTN.mmh、400pM mfARTN.mmh、又は150pM msARTN.mmhのいずれかを、PBS+0.5%BSA中の0.0017nM~100nMの連続希釈系列において抗ARTN抗体及び無関係のIgG4抗体対照と別々に結合した。1時間のインキュベーション後、混合物溶液を、hGFRa3.hFcでコーティングされたマイクロタイタープレートに移した。室温での1時間のインキュベーション後、ウェルをPBSTで洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Qiagen)とコンジュゲートされた抗ペンタ-His抗体を用いてプレート結合ARTNを検出した。次いで、製造業者の推奨に従ってTMB基質溶液(BD Biosciences、#555214)を使用して、プレートを現像し、450nmでの吸光度をVictor X5プレートリーダー上で測定した。
【0165】
Prism(商標)ソフトウェア(GraphPad)内でシグモイド用量反応モデルを使用して、結合データを分析した。プレートでコーティングされたhGFRa3.hFcへのARTN.mmh結合の50%を遮断するために必要とされる抗体の濃度として定義される、計算されたIC50値を、遮断効力の指標として使用した。hARTN.mmh、mfARTN.mmh、及びmARTN.mmhのIC50のアッセイの下限(LLOA)は、1つの抗体への2つのアルテミンの結合化学量論に基づいて、それぞれ、18.8pM、100pM、及び37.5pMであった。計算されたIC50値がLLOAを下回った場合、LLOA未満が報告された。以下に列挙される式を使用して試験され、全ての試験された抗体について報告された最高抗体濃度で観察されたバックグラウンド補正結合シグナルに基づいて、100nM抗体における遮断率を計算した:
【0166】
結果
複数のブロッキングELISAフォーマットを使用して、ヒトGFRa3へのヒト、サル、及びマウスのアルテミン結合を遮断する抗ARTN抗体の能力を評価した。これらのアッセイでは、75pM hARTN.mmh、400pM mfARTN.mmh、又は150pM msARTN.mmhを、広範囲の濃度の抗ARTN抗体で滴定し、抗体の存在下でのhGFRa3.hFcへの3種のアルテミンの結合を評価した。プレート結合ARTN.mmhを、HRPコンジュゲート抗ペンタ-His抗体を用いて検出した。
【0167】
4つの試験抗体は、試験された抗体の最高濃度において1nMを下回るIC50及び50%超の遮断で、プレート結合ヒトGFRa3へのヒト、サル、及びマウスのアルテミン結合を強く遮断した。抗ARTN抗体の最高試験濃度における遮断IC50及び遮断率が、表7に要約される。無関係のアイソタイプ対照抗体は、遮断活性を示さなかった。
【0168】
(表7)ヒトGFRα3へのヒト、サル、及びマウスアルテミンの結合を遮断する抗体の効力
アッセイの下限を下回る
【0169】
実施例4:アルテミンモノクローナル抗体によるアルテミン媒介性細胞シグナル伝達の阻害
アルテミン媒介性細胞シグナル伝達の抗アルテミン抗体阻害を評価するために、HEK293細胞(ヒト胚腎臓、ATCC、#CRL-1573)においてバイオアッセイを確立した。HEK293細胞を、血清応答要素ルシフェラーゼレポーター(SRE-Luc、SA Biosciences)で形質導入し、完全長ヒトGFRα3(Genbankアクセッション番号NP_001487.2のアミノ酸M1~W400)及び完全長ヒトRETアイソフォームc(G691S及びR982Cに2つのアミノ酸置換を有するGenbankアクセッション番号NP_065681.1のアミノ酸M1~F1073)を安定して発現するように操作した。最適な細胞クローンを単離し、結果として得られた細胞株をHEK293/SRELuc/hRET/hGFRa3 cl.A3と命名した。アルテミンタンパク質hアルテミン-MMH、Mfアルテミン-MMH、又はmアルテミン-MMHは、上記の実施例2に開示される。
【0170】
バイオアッセイについては、アッセイ緩衝液(Opti-MEM培地中の0.1%FBS)を使用して、細胞を2.5×10細胞/ウェルで96ウェルプレート内に播種し、一晩(37℃、5%CO)培養した。翌日、本発明の抗体又はアイソタイプ対照抗体を、アッセイ培地中で100nM~1.7pMの範囲の最終濃度まで連続希釈(1:3)し(試験分子を含まないアッセイ培地単独については追加のウェルを用いる)、5%CO中で37℃において固定濃度のアルテミン(500pMのhアルテミン、3nMのmfアルテミン、又は1nMのmアルテミン)を含む細胞に添加した。シグナル伝達活性化の程度を評価するために、アルテミン(h、mf、又はm)を、100nM~1.7pMの最終濃度まで連続希釈(1:3)し(アッセイ培地単独については追加のウェルを用いる)、細胞に添加した。5時間のインキュベーション後、OneGlo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム試薬(Promega E6130)の添加によってルシフェラーゼ活性を評価し、Envision多重標識プレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して、相対発光単位(RLU)を測定した。Prism(登録商標)8で非線形回帰(4パラメータロジスティック)を使用して結果を分析し、EC50及びIC50値を取得した。以下の方程式を使用して、阻害の割合を計算した:
阻害%=100×[(RLUアルテミン-RLU阻害)/(RLUアルテミン-RLUベースライン)]
【0171】
この方程式では、RLUアルテミンは、抗体を含まない一定のアルテミンで処置された細胞からのRLU値を指す。「RLU阻害」は、一定のアルテミンを含む最大濃度の抗体で測定されたRLU値を指す。「RLUベースライン」は、リガンド又は抗体の非存在下で測定された細胞のRLU値を指す。
【0172】
表8に示されるように、抗アルテミン抗体H4H33331P、H4H33335P、H4H33336P、及びH4H33349Pを、500pMのhアルテミン、3nMのmfアルテミン、又は1nMのmアルテミンを含むHEK293/SRELuc/hRET/hGFRa3 cl.A3細胞で試験した。ヒト、カニクイザル、及びマウスアルテミンは、それぞれ、813pM、2.26nM、及び620pMのEC50値で、ヒトGFRα3受容体及びRet受容体を通したシグナル伝達を活性化した。
【0173】
(表8)HEK293/SRELuc/hRET/hGFRa3 cI.A3細胞における抗アルテミン抗体によるヒト、カニクイザル、及びマウスアルテミンの阻害
【0174】
実施例5:アルテミンモノクローナル抗体による足底内アルテミン誘導性熱痛覚過敏の阻害
動物対象
10~16週齢の成体C57BL/6雄マウス(Jackson Laboratories)を実験に使用した。動物を、水及び標準的実験室飼料が自由に利用可能である12時間の明暗サイクルで、温度制御環境において最大5匹の群で収容した。全ての実験手順は、RegeneronのAnimal Care and Use Committeeによって承認され、動物の群割り当てを知らない実験者によって実施された。
【0175】
順応及びベースライン化
足底内注射の前の週に、マウスを取り扱い、Hargreaves行動試験装置内に少なくとも1日2時間配置し、それらを部屋及び機器に順応させた。加えて、動物を、全試験セッションの前に少なくとも1時間順応させた。ベースライン侵害受容応答を、週の終わりに得た。
【0176】
成長因子誘導性足底熱痛覚過敏の誘導
10mg/kgでのアルテミン抗体の皮下(s.c.)注射の前に、Hargreaves試験(以下に記載される)を使用して、ベースライン熱痛覚過敏を評価した。後肢が露出した状態で透明なプラスチック拘束器内にマウスを配置することによって、PBS(1つの群)又は20μl生理食塩水中のR&D Systemsからの組換えマウスアルテミン(5つの群)を、3日後に後肢に注射した。左後肢を伸張させて、0.5μgのアルテミンを足の足底表面に注射した。熱痛覚過敏を4日後に再評価した。0.80の出力レベル及び0.05のアルファにおけるアルテミン注射からのパイロット結果を使用して、7~8匹の動物のうちのn匹が、抗体治療で離脱するまでのベースライン潜時への復帰を検出するために必要とされることが計算された。成長因子応答の完全な遮断が予期されるため、7匹の動物という試料サイズを選択し、したがって、検出力分析から最小推奨試料サイズを選択することによって、動物の使用を最小限化することができた。
【0177】
熱痛覚過敏:Hargreaves試験(Hargreaves et al,Pain,1988,32:77-88)を使用して、動物を熱感受性について試験した。マウスを、個々のチャンバ内の30℃に加熱したガラス(モデル400加熱基部を有するIITCモデル390G)上に配置し、読み取りセッションの前に順応させた。装置を15%のレーザー強度に設定し、同側後肢の足底表面上で反復測定(足当たり3回の測定)を使用して、試験を実施した。組織損傷を回避するために20秒の最大ビーム露光を許容して、離脱するまでの平均潜時を記録した。一元配置独立群ANOVAを使用して、離脱するまでの潜時を統計的に分析し、治療群を0.05に設定されたαで比較した。テューキー事後検定を使用して、治療の有意な主効果を精査した。
【0178】
結果
4つの選択されたヒト抗アルテミン抗体(H4H33331P、H4H33335P、H4H33336P、及びH4H33349P)を、足底内成長因子誘導性痛覚過敏モデルで評価した。図4に示されるように、4つ全ては、離脱潜時が足底内PBSで治療された群と類似するように、皮下10mg/kgにおけるHargreaves試験でアルテミンによって誘発された熱痛覚過敏を完全に遮断することが示された。抗アルテミン抗体を受けた動物の離脱閾値は、アイソタイプ対照抗体を受けた動物のものとは著しく異なり、4つ全てのアルテミン抗体がアルテミン誘導性痛覚過敏を阻害することに効果的であることを示唆した。
【0179】
(表9)非公式配列表
【0180】
本発明は、本明細書に記載される具体的実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際に、本発明の種々の修正は、本明細書に記載されるものに加えて、上記の説明及び添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような修正は、添付される特許請求の範囲内にあることを意図している。本明細書に引用される全ての特許及び非特許文献の開示は、参照によりそれらの全体で明示的に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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