(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
G01R15/20 B
G01R15/20 D
(21)【出願番号】P 2023578400
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2022045525
(87)【国際公開番号】W WO2023149082
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2022016502
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 学
(72)【発明者】
【氏名】植田 千亜紀
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/150802(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/070834(WO,A1)
【文献】特開2016-148620(JP,A)
【文献】特開2020-115104(JP,A)
【文献】特開平08-075817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れる平板状でかつ第1方向へ延設されたバスバと、前記バスバの一方の板面に対向して配置された磁気センサと、前記バスバの他方の板面に対向して配置された平板状の基部を備えたシールドとを有するユニットを複数備え、複数の前記ユニットが一体に形成された電流センサであって、
複数の前記ユニットは、前記バスバに相対的に大きな電流が流れる大電流用ユニットと、前記バスバに相対的に小さな電流が流れる小電流用ユニットとを有しており、
前記バスバの前記板面の法線方向を第2方向、前記第1方向および前記第2方向に直交する方向を第3方向としたときに、
前記第2方向における、前記バスバと前記磁気センサとの間の第1の距離は、前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとで同じであり、
前記第2方向における、前記バスバと前記基部との間の第2の距離は、前記大電流用ユニットが前記小電流用ユニットよりも
大きく、
複数の前記ユニットが前記第3方向に並べて配置され、
隣り合う前記ユニットの前記バスバに流れる電流の大きさが異なる場合、隣り合う前記ユニットは前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されており、
隣り合う前記ユニットの前記バスバに流れる電流の大きさが同じ場合、隣り合う前記ユニットは前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されていないことを特徴とする、電流センサ。
【請求項2】
電流が流れる平板状でかつ第1方向へ延設されたバスバと、前記バスバの一方の板面に対向して配置された磁気センサと、前記バスバの他方の板面に対向して配置された平板状の基部を備えたシールドとを有するユニットを複数備え、複数の前記ユニットが一体に形成された電流センサであって、
複数の前記ユニットは、前記バスバに相対的に大きな電流が流れる大電流用ユニットと、前記バスバに相対的に小さな電流が流れる小電流用ユニットとを有しており、
前記バスバの前記板面の法線方向を第2方向、前記第1方向および前記第2方向に直交する方向を第3方向としたときに、
前記第2方向における、前記バスバと前記磁気センサとの間の第1の距離は、前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとで同じであり、
前記第2方向における、前記バスバと前記基部との間の第2の距離は、前記大電流用ユニットが前記小電流用ユニットよりも大きく、
複数の前記大電流用ユニットを有する大電流用ユニット群と、複数の前記小電流用ユニットを有する小電流用ユニット群と、を有しており、
前記大電流用ユニット群は前記大電流用ユニットの前記バスバが平面A上に配置され、
前記小電流用ユニット群は前記小電流用ユニットの前記バスバが平面B上に配置され、
前記平面Aと前記平面Bとは同一平面であり、
前記大電流用ユニット群において、隣り合う前記大電流用ユニットは前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されておらず、
前記小電流用ユニット群において、隣り合う前記小電流用ユニットは前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されておらず、
隣接する前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとは、前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されていることを特徴とする、電流センサ。
【請求項3】
電流が流れる平板状でかつ第1方向へ延設されたバスバと、前記バスバの一方の板面に対向して配置された磁気センサと、前記バスバの他方の板面に対向して配置された平板状の基部を備えたシールドとを有するユニットを複数備え、複数の前記ユニットが一体に形成された電流センサであって、
複数の前記ユニットは、前記バスバに相対的に大きな電流が流れる大電流用ユニットと、前記バスバに相対的に小さな電流が流れる小電流用ユニットとを有しており、
前記バスバの前記板面の法線方向を第2方向、前記第1方向および前記第2方向に直交する方向を第3方向としたときに、
前記第2方向における、前記バスバと前記磁気センサとの間の第1の距離は、前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとで同じであり、
前記第2方向における、前記バスバと前記基部との間の第2の距離は、前記大電流用ユニットが前記小電流用ユニットよりも大きく、
複数の前記小電流用ユニットを有する小電流用ユニット群と、前記大電流用ユニットと、を有しており、
前記大電流用ユニットの前記バスバが平面A上に配置され、
前記小電流用ユニット群は前記小電流用ユニットの前記バスバが平面B上に配置され、
前記平面Aと前記平面Bとは同一平面であり、
前記小電流用ユニット群における、隣り合う前記小電流用ユニットは前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されておらず、
隣接する前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとは、前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されていることを特徴とする、電流センサ。
【請求項4】
前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとは、前記バスバ、前記磁気センサおよび前記シールドが同じである、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記シールドは、前記基部の前記第3方向における両端に、前記第2方向における前記バスバおよび前記磁気センサが配置されている側へ延設された立設部をそれぞれ有する、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記シールドの端部が、前記第2方向における、前記磁気センサと前記バスバとの間に位置する、
請求項5に記載の電流センサ。
【請求項7】
複数の前記大電流用ユニットが前記第3方向に間隔a1で配置された大電流用ユニット群と、複数の前記小電流用ユニットが前記第3方向に間隔a2で配置された小電流用ユニット群と、を有しており、
隣り合う前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとの間隔が間隔bであり、
前記大電流用ユニット群は前記大電流用ユニットの前記バスバが平面A上に配置され、
前記小電流用ユニット群は前記小電流用ユニットの前記バスバが平面B上に配置され、
前記平面Aと前記平面Bとは同一平面であり、
前記間隔bが前記間隔a1より大きく、
前記間隔bが前記間隔a2より大きい、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項8】
前記大電流用ユニットに流れる電流の電流値と、前記小電流用ユニットに流れる電流の電流値との間の大きさの電流値の電流が流れる中電流用ユニットをさらに備えている、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバスバに流れる被測定電流を磁気に基づいて測定する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱炭素化への要求の高まりに伴い、自動車走行時のCO2排出量を抑制するためにエンジンからモータへのシフト、すなわち脱ガソリン車/電動化(EVシフト)が進んでいる。電動自動車/ハイブリッド自動車(EV/HEV、Electric Vehicle/ Hybrid Electric Vehicle)等において複数モータ搭載に対応したインバータや昇圧コンバータを一体化したインバータ=パワーコントロールユニット(PCU)が実用化されている。このように、異なる容量のモータ電流や昇圧部の電流などの測定に用いられる、異なる大きさの電流を測定する電流センサが必要である。
【0003】
PCUを小型化するためには、複数ある検出ユニットを一体化する必要がある。しかし、検出ユニットごとに異なる大きさの被測定電流を流した場合、大電流を流した検出ユニットにおいて磁気センサの測定範囲外になったり、検出ユニットの備えるシールドの磁気飽和や他の検出ユニットの影響などにより誤差が生じたりする問題が発生することがあった。
【0004】
特許文献1には、入力電流の広いダイナミックレンジが得られる電流センサを提供することを目的として、電流によって発生する磁気を検出する電流センサにおいて、電流中心からの距離が異なる位置に磁気抵抗素子を複数個設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の電流センサでは、広いダイナミックレンジを有する電流センサの電流検出部を構成するために、大電流用磁気抵抗素子と小電流用磁気抵抗素子とを設け、導体に対する位置を設計している。しかし、大電流用と小電流用とで異なる磁気抵抗素子を用いると、電流センサの構成が複雑になるという問題がある。
本発明の目的は、大電流が流れる大電流用ユニットと小電流が流れる小電流用ユニットとが一体になった電流センサにおいて、大電流用ユニットの測定範囲が広く、シールドの磁気飽和や他の検出ユニットの影響などによる測定誤差が抑えられた電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述した課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
電流が流れる平板状でかつ第1方向へ延設されたバスバと、前記バスバの一方の板面に対向して配置された磁気センサと、前記バスバの他方の板面に対向して配置された平板状の基部を備えたシールドとを有するユニットを複数備え、複数の前記ユニットが一体に形成された電流センサであって、複数の前記ユニットは、前記バスバに相対的に大きな電流が流れる大電流用ユニットと、前記バスバに相対的に小さな電流が流れる小電流用ユニットとを有しており、前記バスバの前記板面の法線方向を第2方向、前記第1方向および前記第2方向に直交する方向を第3方向としたときに、前記第2方向における、前記バスバと前記磁気センサとの間の第1の距離は、前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとで同じであり、前記第2方向における、前記バスバと前記基部との間の第2の距離は、前記大電流用ユニットが前記小電流用ユニットよりも大きいことを特徴とする。
第2の距離を大きくすることで、バスバに流れる電流によって生じた磁気を増強するシールドの機能が小さくなるため、大電流用ユニットにより測定可能な電流の範囲を大きくすることができる。また、バスバからの磁気によってシールドが磁気飽和することを抑えて、電流センサの測定誤差を小さくすることができる。
【0008】
前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとは、前記バスバ、前記磁気センサおよび前記シールドが同じであってもよい。
大電流用ユニットと小電流用ユニットにおいて共通する部材を用いることにより、電流センサの製造費用を抑えることができる。
【0009】
前記シールドは、前記基部の前記第3方向における両端に、前記第2方向における前記バスバおよび前記磁気センサが配置されている側へ延設された立設部をそれぞれ有してもよい。
また、前記シールドの端部が、前記第2方向における、前記磁気センサと前記バスバとの間に位置してもよい。
上記の構成により、バスバに流れる電流により生じた磁気をシールドで増強する効果を調整して、大電流用ユニットおよび小電流ユニットの測定可能な電流の範囲を調整することができる。それにより、ノイズ耐性の改善が可能となる。
【0010】
複数の前記大電流用ユニットが前記第3方向に間隔a1で配置された大電流用ユニット群と、複数の前記小電流用ユニットが前記第3方向に間隔a2で配置された小電流用ユニット群と、を有しており、隣り合う前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとの間隔が間隔bであり、前記大電流用ユニット群は前記大電流用ユニットの前記バスバが平面A上に配置され、前記小電流用ユニット群は前記小電流用ユニットの前記バスバが平面B上に配置され、前記平面Aと前記平面Bとは同一平面であり、前記間隔bが前記間隔a1より大きく、前記間隔bが前記間隔a2より大きくてもよい。
【0011】
複数の前記大電流用ユニットが前記第3方向に間隔a1で配置された大電流用ユニット群と、複数の前記小電流用ユニットが前記第3方向に間隔a2で配置された小電流用ユニット群と、を有しており、隣り合う前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとの間隔が間隔bであり、前記大電流用ユニット群は前記大電流用ユニットの前記バスバが平面A上に配置され、前記小電流用ユニット群は前記小電流用ユニットの前記バスバが平面B上に配置され、前記平面Aと前記平面Bとは異なる平面であり、前記間隔bが前記間隔a1以上であり、前記間隔bが前記間隔a2以上であってもよい。
大電流用ユニットと小電流用ユニットとの間隔bを、同一の電流用ユニット間の間隔a1、a2よりも大きくすることで、大電流用ユニットのバスバに流れる電流に起因する磁気による、当該大電流用ユニットに隣接する小電流用ユニットへの影響を抑制できる。
平面Aと平面Bとを同じ平面にすれば、第2の方向の電流センサのサイズを小さくすることができ、平面Aと平面Bとを異なる平面にすれば、第3の方向の電流センサのサイズを小さくすることができる。
【0012】
複数の前記ユニットが前記第3方向に並べて配置され、隣り合う前記ユニットの前記バスバに流れる電流の大きさが異なる場合、隣り合う前記ユニットは前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されており、隣り合う前記ユニットの前記バスバに流れる電流の大きさが同じ場合、隣り合う前記ユニットは前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されていなくてもよい。
この構成により、大電流用ユニットのバスバに流れる電流に起因する磁気が当該大電流用ユニットに隣接する小電流用ユニットの磁気センサに及ぼす影響を、シールドによって抑えることができる。
【0013】
複数の前記大電流用ユニットを有する大電流用ユニット群と、複数の前記小電流用ユニットを有する小電流用ユニット群と、を有しており、前記大電流用ユニット群は前記大電流用ユニットの前記バスバが平面A上に配置され、前記小電流用ユニット群は前記小電流用ユニットの前記バスバが平面B上に配置され、前記平面Aと前記平面Bとは同一平面であり、前記大電流用ユニット群において、隣り合う前記大電流用ユニットは前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されておらず、前記小電流用ユニット群において、隣り合う前記小電流用ユニットは前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されておらず、隣接する前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとは、前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されていてもよい。
【0014】
複数の前記小電流用ユニットを有する小電流用ユニット群と、前記大電流用ユニットと、を有しており、前記大電流用ユニットの前記バスバが平面A上に配置され、前記小電流用ユニット群は前記小電流用ユニットの前記バスバが平面B上に配置され、前記平面Aと前記平面Bとは同一平面であり、前記小電流用ユニット群における、隣り合う前記小電流用ユニットは前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されておらず、隣接する前記大電流用ユニットと前記小電流用ユニットとは、前記第3方向に延びる同一の直線上に配置されていてもよい。
上記の構成により、第3方向におけるユニット間の距離を小さくして、電流センサを小型化することができる。
【0015】
前記大電流用ユニットに流れる電流の電流値と、前記小電流用ユニットに流れる電流の電流値との間の大きさの電流値の電流が流れる中電流用ユニットをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
第2の距離を大きくすることで、大電流用ユニットにより測定可能な電流の範囲を広げ、電流に起因する磁気によるシールドの飽和を抑えることができる。したがって、測定可能な電流の範囲が広く、測定誤差の小さい、大電流用ユニットと小電流用ユニットとが一体になった電流センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】第1の実施形態に係る電流センサの要部を模式的に示す平面図である。
【
図1B】第1の実施形態に係る電流センサの要部を模式的に示す断面図である。
【
図2A】変形例に係る電流センサの要部を模式的に示す平面図である。
【
図2B】変形例に係る電流センサの要部を模式的に示す断面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る電流センサユニットの要部の位置関係を模式的に示す断面図である。
【
図4】変形例に係る電流センサユニットにおける要部の位置関係を模式的に示す断面図である。
【
図5A】第3の実施形態に係る電流センサユニットにおける要部の位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図5B】第3の実施形態に係る電流センサユニットにおける要部の位置関係を模式的に示す断面図である。
【
図6A】変形例に係る電流センサユニットにおける要部の位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図6B】変形例に係る電流センサユニットにおける要部の位置関係を模式的に示す断面図である。
【
図7A】変形例に係る電流センサユニットにおける要部の位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図7B】変形例に係る電流センサユニットにおける要部の位置関係を模式的に示す断面図である。
【
図8A】実施例1の電流センサユニットの要部の位置関係および電流値を示す断面図である。
【
図8B】実施例1の電流センサユニットの要部の位置関係および電流値を示す断面図である。
【
図8C】実施例1の電流センサユニットの要部の位置関係および電流値を示す断面図である。
【
図10】実施例3の電流センサユニットにおける要部の位置関係を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。各図面において同じ部材には同じ番号を付して、適宜、説明を省略する。各図には、基準座標として、X-Y-Z座標を示す。
[第1の実施形態]
図1Aおよび
図1Bは、本実施形態に係る電流センサ10の要部を模式的に示す平面図および断面図である。同図に示すように、電流センサ10は、ユニット11を複数備え、複数のユニット11が一体に形成されてなるものである。複数のユニット11はそれぞれ、バスバ12と、磁気センサ13と、シールド14とを有している。本発明では、バスバ12の延設方向(第1方向)をX軸方向、バスバ12の板面12a、12bの法線方向(第2方向)をY軸方向、第1方向および第2方向に直交する方向(第3方向)をZ軸方向とする。
【0019】
バスバ12は、平板状でかつ第1方向(X軸方向)へ延設され、検出対象である電流が流れるものであり、銅、真鍮、アルミなどで構成される。なお、バスバ12は、磁気センサ13及びシールド14と対向する箇所以外の箇所において、曲げ加工などがされ平板状になっていなくてもよい。
【0020】
磁気センサ13は、バスバ12の一方(Y軸方向Y1側)の板面12aに対向して配置され、図示しない基板に実装されて、バスバ12に流れる被測定電流に起因して生じる磁気を検出する。磁気センサ13として、例えば、外部磁場によって電気抵抗が変化する磁気抵抗効果を利用したGMR素子やTMR素子などの磁気抵抗効果素子などが用いられる。
【0021】
シールド14は、バスバ12の他方(Y軸方向Y2側)の板面12bに対向して配置された平板状の基部14aを備えている。また、シールド14は、第3方向(Z軸方向)における、基部14aの両側の端14cから第2方向(Y軸方向)における一方側へ延設された立設部14bを有している。なお、第2方向における一方側とは、ユニット11としてシールド14が組み込まれたときに、基部14aからみてバスバ12および磁気センサ13が配置されている側である。シールド14は、バスバ12に起因する電磁干渉を抑制する。例えば、同一形状の金属製の板状体を複数枚重ねることにより、シールド14が構成される。
【0022】
複数のユニット11は、バスバ12に相対的に大きな電流が流れる大電流用ユニット11Aと、バスバ12に相対的に小さな電流が流れる小電流用ユニット11Bとを含んでいる。大電流用ユニット11Aと小電流用ユニット11Bとを区別しない場合、適宜、ユニット11と記す。
【0023】
なお、本実施形態においては、電流センサ10の大電流用ユニット11Aと小電流用ユニット11Bとは、バスバ12、磁気センサ13およびシールド14として同じものを用いている。各ユニット11に同じ部材を用いることで、電流センサ10の製造コストを抑えることができる。本実施形態の説明において、バスバ12が同じとは、第2方向(Y軸方向)において磁気センサ13およびシールド14に重なる部分が同じという意味である。このため、バスバ12は、第1方向(X軸方向)における、長さや端部形状が異なっていてもよい。
【0024】
第2方向における、バスバ12と磁気センサ13との間の距離(第1の距離)L1は、大電流用ユニット11Aにおける距離L1Aと、小電流用ユニット11Bにおける距離L1Bとが同じである。対して、第2方向における、バスバ12とシールド14の基部14aとの間の距離(第2の距離)L2は、大電流用ユニット11Aにおける距離L2Aのほうが、小電流用ユニット11Bにおける距離L2Bよりも大きい。また、第2方向における、シールド14(立設部14b)の端部14eと磁気センサ13との間の距離(第3の距離)L3は、大電流用ユニット11Aにおける距離L3Aのほうが、小電流用ユニット11Bにおける距離L3Bよりも大きい。なお、
図1Aでは距離L3Aが0になっている。本発明において、各部材間の距離L1、L2およびL3は、第2方向における各部材の中心の距離をいう。
【0025】
シールド14は、バスバ12に流れる電流により生じる磁気(誘導磁界)のヨークとしても機能し、シールド14の端部14eから出た磁気が磁気センサ13によって測定される。このため、距離L2および距離L3によって、磁気センサ13に測定されるバスバ12の電流に起因する磁気の大きさを調整することができる。すなわち、距離L2および距離L3を大きくすれば、バスバ12の電流による磁気を増強するシールド14の効果を抑えて、磁気センサ13に到達する磁気を小さくすることができる。
【0026】
大電流用ユニット11A用のシールド14と小電流用ユニット11B用のシールド14とを異なる形状にすることで、大電流用ユニット11Aと小電流用ユニット11Bとで距離L2および距離L3に差を設けることができる。しかしながら、本願においては大電流用ユニット11A用のシールド14と小電流用ユニット11B用のシールド14とは同じ部品で構成されている。
【0027】
すなわち、距離L2に差をつけることで、磁気センサ13とシールド14の端部14eとの距離L3にも差が生じるため、同じシールド14を用いて、バスバ12の電流により生じた磁気を増強する効果を異ならせることができる。距離L2を大きくすれば距離L3が大きくなるため、大電流用ユニット11Aにおけるシールド14の磁気を増強する効果を抑えることができる。距離L2および距離L3を大きくすることにより、バスバ12に大きな電流を流した場合において磁気センサ13に到達する磁気を小さくすることができる。したがって、大電流用ユニット11Aにより測定可能なバスバ12に流れる電流の範囲を広げることが可能である。
【0028】
また、距離L2を大きくすることにより、バスバ12からの磁気によりシールド14が磁気的に飽和することを抑制できる。したがって、シールド14の磁気を防ぐ機能を維持して、電流の検出誤差が小さい電流センサ10とすることが可能になる。
【0029】
また、シールド14(立設部14b)の端部14eは、第2方向における、磁気センサ13とバスバ12との間に位置しているため、バスバ12に流れる電流により生じた磁気をシールド14により増強することができる。第2方向における、磁気センサ13とバスバ12との間に端部14eが位置するとは、第2方向における、磁気センサ13の中心点とバスバ12の中心点との間に端部14eがあることをいう。このため、
図1Bに示すように、磁気センサ13の中心点と端部14eとが、第2方向において同じ位置にある場合も含む。シールド14の端部14eとは、シールド14のZ軸方向における両側の端14cではなく、立設部14bにおけるY軸方向におけるY1側の末端をいう。
【0030】
電流センサ10では、第2方向(Y軸方向)における磁気センサ13とシールド14の端部14eとの距離L3について、大電流用ユニット11Aの距離L3Aが小電流用ユニット11Bの距離L3Bよりも大きい。この構成により、同じシールド14を用いて、大電流用ユニット11Aと小電流用ユニット11Bとにおける、バスバ12に流れる電流によって生じた磁気を増強する効果を異ならせている。大電流用ユニット11Aにおけるシールド14の磁気を増強する効果を、小電流用ユニット11Bにおけるシールド14よりも小さくすることで、大電流用ユニット11Aにより測定可能な電流の範囲が広くなる。
【0031】
[変形例]
図2Aは変形例に係る電流センサ20の要部を模式的に示す平面図であり、
図2Bは断面図である。これらの図に示すように、電流センサ20の大電流用ユニット21Aおよび小電流用ユニット21B(ユニット21)は、立設部14bを備えたシールド14に変えて、基部24aのみからなる平板状のシールド24を備えている。この構成において、電流センサ20は電流センサ10と異なっている。
【0032】
電流センサ20は、各ユニット21が、YZ平面の断面がU字型のシールド14に代えて、平板状のシールド24を備えている。この場合も、第2方向におけるバスバ12と磁気センサ13との間の距離L1は、大電流用ユニット21Aにおける距離L1Aと、小電流用ユニット21Bにおける距離L1Bとが同じである。また、第2方向における、バスバ12とシールド24の基部24aとの間の距離L2は、大電流用ユニット21Aにおける距離L2Aのほうが、小電流用ユニット21Bにおける距離L2Bよりも大きい。そして、磁気センサ13とシールド24の端部24eとの距離L3は、大電流用ユニット21Aにおける距離L3Aのほうが、小電流用ユニット21Bにおける距離L3Bよりも大きい。これにより、電流センサ10同様、電流センサ20の大電流用ユニット21Aにより測定可能な電流の範囲を広げ、電流の検出誤差の小さくすることができる。
【0033】
また、
図2では、各ユニット21の構成として、バスバ12を挟んで磁気センサ13の反対側にシールド24が配置された構成を示したが、第2方向(Y軸方向)に沿って対向するように配置された一対のシールド24の間にバスバ12と磁気センサ13とを配置する構成であってもよい。
【0034】
[第2の実施形態]
図3は、電流センサ30の要部の位置関係を模式的に示す断面図である。電流センサ30は、第3方向において隣り合って配置された大電流用ユニット群31と小電流用ユニット群32と、を有している。大電流用ユニット群31は複数の大電流用ユニット11Aが第3方向(Z軸方向)に間隔a1で配置されている。小電流用ユニット群32は複数の小電流用ユニット11Bが第3方向に間隔a2で配置されている。また、隣り合う大電流用ユニット11Aと小電流用ユニット11B、すなわち、大電流用ユニット群31を構成する複数の大電流用ユニット11Aのうち隣り合って配置された小電流用ユニット群32に最も近い位置に配置された大電流用ユニット11Aと、小電流用ユニット群32を構成する複数の小電流用ユニット11Bのうち隣り合って配置された大電流用ユニット群31に最も近い位置に配置された小電流用ユニット11Bとが、第3方向に間隔bで配置されている。
【0035】
より具体的には、
図3において第3方向であるZ軸方向の最もZ1側端に配置された大電流用ユニット11AとZ軸方向の最もZ2側端に配置された小電流用ユニット11Bとが、第3方向に間隔bで配置されている。間隔とは、第3方向において隣り合って配置された各ユニット11の中心点と中心点との間の距離をいう。
【0036】
大電流用ユニット群31は大電流用ユニット11Aのバスバ12が平面A上に配置されている。小電流用ユニット群32は小電流用ユニット11Bのバスバ12が平面B上に配置されている。平面Aと平面Bとは同一平面であり、いずれもXZ平面上に位置している。
図3に示した、大電流用ユニット群31および小電流用ユニット群32はそれぞれ、大電流用ユニット11Aおよび小電流用ユニット11Bをそれぞれ3つ備えているが、1、2または4以上であってもよい。
【0037】
隣接する大電流用ユニット11Aと小電流用ユニット11Bとの間隔bは、大電流用ユニット11Aの間隔a1よりも大きく、かつ、小電流用ユニット11Bの間隔a2より大きい。すなわち、大電流用ユニット群31と小電流用ユニット群32との境界を挟んで隣り合う、大電流用ユニット11Aと小電流用ユニット11Bとの間隔bを、同じユニット群に属するユニット11の間隔a1、a2よりも広くしている。この構成により、異なるユニット群に属する隣接するユニット11のバスバ12に流れる電流により生じる磁気が、他のユニット11の磁気センサ13に及ぼす影響を抑えることができる。したがって、隣接するユニット11からの影響、特に、大電流用ユニット11Aのバスバ12に流れる電流に起因する磁気による、隣接する小電流用ユニット11Bの磁気センサ13への影響を抑えて、電流の検出誤差を小さくすることができる。
【0038】
[変形例]
図4は変形例に係る電流センサ40における要部の位置関係を模式的に示す断面図である。電流センサ40は、大電流用ユニット群31と、小電流用ユニット群32と、を有している。大電流用ユニット11AのZ軸方向の間隔a1、小電流用ユニット11BのZ軸方向の間隔a2および、隣り合う大電流用ユニット11Aと小電流用ユニット11BとのZ軸方向の間隔bの大小関係は、電流センサ30と同じである。大電流用ユニット11Aのバスバ12が配置された平面Aと、小電流用ユニット11Bのバスバ12が平面B上に配置された平面Bとは異なる平面である構成において、電流センサ30と異なっている。
【0039】
図4に示した電流センサ40は、間隔bが間隔a1および間隔a2のいずれよりも大きい。しかし、間隔bは間隔a1および間隔a2のいずれか一方または両方と等しくてもよい。また、Y軸方向における平面Aと平面Bとの位置は、
図4とは逆であってもよい。
【0040】
Y軸方向における、大電流用ユニット11Aのバスバ12が配置された平面Aは、
図4に示すように、小電流用ユニット11Bのバスバ12が配置された平面Bに対して、小電流用ユニット11Bの磁気センサ13とは反対側(Y2側)に位置することが好ましい。小電流用ユニット11Bの磁気センサ13とは反対側に大電流用ユニット11Aのバスバ12を配置することにより、大電流用ユニット11Aのバスバ12と小電流用ユニット11Bの磁気センサ13との距離を大きくすることができる。したがって、大電流用ユニット11Aのバスバ12の磁気による、隣接する小電流用ユニット11Bへの影響を抑えることができる。
【0041】
[第3の実施形態]
図5Aは第3の実施形態に係る電流センサ50における要部の位置関係を模式的に示す平面図であり、
図5Bは断面図である。これらの図では、ユニット11を区別するために、Z軸方向のZ1側からZ2側に向かって、大電流用ユニット11Aを11A1、11A2、11A3とし、小電流用ユニット11Bを11B1、11B2、11B3として示す。
【0042】
Z軸方向(第3方向)に並べて配置された大電流用ユニット11A1、11A2および11A3において、隣り合う大電流用ユニット11A1と11A2、隣り合う大電流用ユニット11A2と11A3は、いずれも同一の直線上に配置されていない。同一の直線とはZ軸方向(第3方向)に平行な直線である。両側の大電流用ユニット11A1および11A3はZ軸と平行な直線C上に配置されており、大電流用ユニット11A1と11A3との間に配置された大電流用ユニット11A2は、直線Cと平行な直線D上に配置されている。
【0043】
Z軸方向に並べて配置された小電流用ユニット11B1、11B2および11B3も同様に、隣り合う小電流用ユニット11B1と11B2、隣り合う小電流用ユニット11B2と11B3が同一の直線上に配置されていない。両側の小電流用ユニット11B1および11B3はZ軸と平行な直線C上に配置されており、その間の小電流用ユニット11B2は、直線Cと平行な直線D上に配置されている。
【0044】
大電流用ユニット群51および小電流用ユニット群52のいずれにおいても、隣り合うユニット11のバスバ12に流れる電流の大きさが同じ場合、隣り合うユニット11はZ軸方向に延びる同一の直線上に配置されていない。この構成により、大電流用ユニット群51および小電流用ユニット群52のZ軸方向のサイズを小さくすることができる。
【0045】
また、本実施形態においてはあるユニット11の両隣に配置された二つのユニット11をZ軸方向に延びる同一の直線上に配置しているため、大電流用ユニット群51および小電流用ユニット群52のZ軸方向のサイズを小さくするとともに、X軸方向のサイズも小さくすることができる。
【0046】
大電流用ユニット11A1と小電流用ユニット11B3とは、バスバ12に流れる電流の大きさが異なる、隣り合うユニット11であり、Z軸方向に延びる同一の直線C上に配置されている。この構成により、Z方向における、大電流用ユニット11A1のバスバ12と小電流用ユニット11B3の磁気センサ13との間に、大電流用ユニット11A1および小電流用ユニット11B3のシールド14(立設部14b)が二重に配置される。したがって、大電流用ユニット11A1のバスバ12に流れる電流に起因する磁気が小電流用ユニット11B3の磁気センサ13に及ぼす影響をシールド14によって抑制することができる。
【0047】
また、シールド14が立設部14bを備えない基部14aのみからなる平板状のものである場合には、一対のシールド24(基部14a)の間にバスバ12と磁気センサ13とを配置する構成とすることで、大電流用ユニット11A1のバスバ12に流れる電流に起因する磁気が小電流用ユニット11B3の磁気センサ13に及ぼす影響を効率よく抑制することができる。
【0048】
図5Bに示すように、大電流用ユニット群51の大電流用ユニット11A1、11A2および11A3のバスバ12は、XZ平面に平行な平面A上に配置されている。小電流用ユニット群52の小電流用ユニット11B1、11B2および11B3のバスバ12は、XZ平面に平行な平面B上に配置されている。平面Aと平面Bとを同一平面とすることで、電流センサ50のY軸方向のサイズを小さくすることができる。ただし、
図4に示すように、平面Aと平面Bとは同一平面でなくてもよい。
【0049】
[変形例]
図6Aは、変形例に係る電流センサ60における要部の位置関係を模式的に示す平面図であり、6Bは断面図である。電流センサ60は、大電流用ユニット群51に代えて大電流用ユニット11Aを備えている構成において、電流センサ50と異なっている。一つの大電流用ユニット11Aを用いる場合も、二つの小電流用ユニット群52を構成する複数の小電流用ユニット11Bのうち、Z軸方向において、大電流用ユニット11AのZ1方向側に隣接する小電流用ユニット11B3と、Z1方向側に隣接する小電流用ユニット11B1および大電流用ユニット11Aを、Z軸方向に延びる同一の直線C上に配置する。この構成により、大電流用ユニット11Aのバスバ12に流れる電流による磁気が小電流用ユニット11B3の磁気センサ13に及ぼす影響を抑えて、測定誤差の少ない電流センサ60とすることができる。
【0050】
図7Aは他の変形例に係る電流センサ70における要部の位置関係を模式的に示す平面図であり、
図7Bは断面図である。電流センサ70は、大電流用ユニット群51と小電流用ユニット群52との間に、中電流用ユニット群53をさらに備えている構成において、
図5の電流センサ50とは異なっている。中電流用ユニット群53は、大電流用ユニット11Aに流れる電流の電流値と、小電流用ユニット11Bに流れる電流の電流値との間の大きさの電流値の電流が流れる中電流用ユニット11Cで構成される。大電流用ユニット群51、小電流用ユニット群52に加えて、中電流用ユニット群53を備えていることにより測定可能な電流の範囲が広くなるから、用途によっては、中電流用ユニット群53を備えた電流センサ70がより適切な場合がある。
【0051】
中電流用ユニット11Cは、大電流用ユニット11Aおよび小電流用ユニット11B同様、バスバ12、磁気センサ13およびシールド14を備えている。中電流用ユニット11Cを構成する各部材の相対的な位置関係も、大電流用ユニット11Aおよび小電流用ユニット11Bと同様である。
【0052】
中電流用ユニット11Cは、Y軸方向におけるバスバ12と磁気センサ13との距離L1(
図1B参照)が大電流用ユニット11Aおよび小電流用ユニット11Bと等しい。中電流用ユニット11Cは、Y軸方向におけるバスバ12とシールド14との距離L2(
図1B参照)が、大電流用ユニット11Aよりも小さく、かつ、小電流用ユニット11Bよりも大きい。このように、測定電流範囲に応じて距離L2を調整することにより、異なる電流範囲を測定する場合であっても、磁気センサ13が最も精度よく測定できる範囲を用いて電流測定することが実現される。
【0053】
この場合も、バスバ12に流れる電流の電流値が異なるユニット11をZ軸方向に延びる同一直線上に配置する。すなわち、Z軸方向において隣接する大電流用ユニット11Aと中電流用ユニット11Cとを同一の直線C上に配置し、Z軸方向において隣接する小電流用ユニット11Bと中電流用ユニット11Cを同一の直線C上に配置する。この構成により、隣接するユニット11のバスバ12に相対的に大きな電流が流れることにより生じる磁気の、相対的に小さい電流を測定する磁気センサ13への影響をシールド14により抑えることができる。したがって、測定誤差の少ない電流センサ70とすることができる。
【0054】
本明細書において開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0055】
[実施例1]
図8A~
図8Cに示す構成を備えたユニット11について、Y軸方向における、バスバ12と磁気センサ13との距離L1と、バスバ12とシールド14の基部14aとの距離L2が、磁気センサ13により検出される磁束密度およびシールド14内磁束密度に及ぼす影響を測定した。実施例1では、立設部14bを備えた断面U字状のシールド14を用いた。距離L1を2.6mmとし、距離L2を表2に示す大きさにしたユニットのバスバ12に異なる大きさの電流を流して測定を行った。また、比較例1として、距離L1を2.6mmとし、距離L2を1.2mmとしたユニットについても、実施例1と同様にして測定した。表2に実施例1および比較例1について測定、検出された磁束密度およびシールド内磁束密度の結果を示す。
【0056】
【0057】
【0058】
表1に示すようにバスバ12とシールド14との距離L2を変更することで、バスバ12で発生する磁気の分布を変えて、表2に示すように磁気センサ13により検出される磁束密度を70mT以下とすることができた。このように、バスバ12とシールド14との距離L2を変更することにより、磁気センサ13とバスバ12との間に位置するシールド14の端部14eから磁気センサ13までの距離を調整することができる。したがって、同じシールド14を使用して距離L2を変更することにより、距離L2を変更しない場合には検出できない大きさの電流を測定することが可能になる。
【0059】
また、バスバ12とシールド14との距離L2を変更することで、シールド14によってバスバ12で発生する磁気を集める能力を調整し、シールド14内の磁束密度を抑えて、シールド14が磁気的に飽和することを防止できた。
【0060】
図9は、実施例1において、バスバ12において流れる被測定電流の向きを変えて、測定した結果を示すグラフである。同図に示すように、測定された電流値の誤差は、被検出電流の大きさに関わらず同等であった。
【0061】
[実施例2]
図5Aに示す電流センサ50について、隣接するユニット11のバスバ12に流れる電流によって生じる測定誤差を測定した。大電流用ユニット群51および小電流用ユニット群52として、以下の構成を備えたものを用いた。
[大電流用ユニット群51]
電流:800A
距離L1:2.6mm、距離L2:3.5mm(
図1B参照)
間隔a1:12.5mm(
図3参照)
[小電流用ユニット群52]
電流:300A
距離L1:2.6mm、距離L2:1.2mm(
図1B参照)
間隔a2:13.5mm
隣接する大電流用ユニット11A1と小電流用ユニット11B3との間隔b:17.5mm
直線Cと直線DとのX軸方向における距離7.5mm(
図5A参照)
【0062】
[実施例3]
図10に示す電流センサ80について、隣接するユニット11のバスバ12に流れる電流によって生じる測定誤差を測定した。電流センサ80は、大電流用ユニット群51に代えて、大電流用ユニット群81を備えている点において、実施例2の電流センサ50と異なっている。
大電流用ユニット群81と、大電流用ユニット群51とは、大電流用ユニット11Aの配置のみが異なっている。具体的には、
図10に示すように、両側の大電流用ユニット11A1および11A3が直線D上に配置されており、大電流用ユニット11A1と11A3との間の大電流用ユニット11A2が直線C上に配置されている。
【0063】
実施例2および実施例3についての測定結果を表3に示す。
【表3】
隣接する大電流用ユニット11A1と小電流用ユニット11B3とを、
図5Aに示す実施例2のように同一の直線上に配置することにより、
図10に示す実施例3のように異なる直線上に配置した場合よりも測定誤差を小さくすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明は、モータを備えた電気自動車やハイブリッド車において、大きさの異なる電流を測定する電流センサとして有用である。
【符号の説明】
【0065】
10、20、30、40、50、60、70、80:電流センサ
11、21:ユニット
11A、11A1、11A2、11A3、21A:大電流用ユニット
11B、11B1、11B2、11B3、21B:小電流用ユニット
11C :中電流用ユニット
12 :バスバ
12a :板面(一方の板面)
12b :板面(他方の板面)
13 :磁気センサ
14、24:シールド
14a、24a:基部
14b :立設部
14c :端
14e、24e:端部
31、51、81:大電流用ユニット群
32、52:小電流用ユニット群
53 :中電流用ユニット群
A、B:平面
C、D:直線
L1、L1A、L1B:距離(第1の距離)
L2、L2A、L2B:距離(第2の距離)
L3、L3A、L3B:距離(第3の距離)
a1、a2、b :間隔