(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】無機粒子分散スラリー組成物及び無機焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241030BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20241030BHJP
C08K 5/1539 20060101ALI20241030BHJP
C04B 35/626 20060101ALI20241030BHJP
C04B 35/632 20060101ALI20241030BHJP
C04B 35/634 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/00
C08K5/1539
C04B35/626 250
C04B35/632
C04B35/634 240
(21)【出願番号】P 2024517137
(86)(22)【出願日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2023043243
(87)【国際公開番号】W WO2024122491
(87)【国際公開日】2024-06-13
【審査請求日】2024-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022195844
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山内 健司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 丈
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-173765(JP,A)
【文献】特開昭63-319248(JP,A)
【文献】特開昭64-033054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)、無機粒子(B)及び溶剤(C)を含有し、
更に、脱バインダー助剤(D)として、沸点200℃以上、かつ、酸素原子の含有量が40重量%以上であるカルボン酸無水物を含有
し、
前記バインダー樹脂(A)100重量部に対する前記カルボン酸無水物の含有量が5重量部以上30重量部以下である、無機粒子分散スラリー組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸無水物は、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、グルタル酸、ジグリコール酸、メトキシ酢酸、イタコン酸、シトラコン酸、トリメリット酸、シクロブタンテトラカルボン酸、トリカルバリル酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種のカルボン酸の無水物である、請求項1に記載の無機粒子分散スラリー組成物。
【請求項3】
前記バインダー樹脂(A)は、(メタ)アクリル樹脂を含む、請求項1又は2に記載の無機粒子分散スラリー組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基の炭素数が4以上であり、かつ、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを50重量%以上含む、請求項
3に記載の無機粒子分散スラリー組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の無機粒子分散スラリー組成物を乾燥させて無機粒子分散成形体を得る工程、及び、前記無機粒子分散成形体を300℃以下で脱脂する工程を有する、無機焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子分散スラリー組成物及び無機焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック粉末、ガラス粒子等の無機粒子をバインダー樹脂に分散させた無機粒子分散スラリー組成物が、様々な電子部品の生産に用いられている。これらのスラリー組成物は塗工、乾燥工程を経てシート状に成型され、グリーンシートと呼ばれている。
無機粒子とバインダー樹脂からなるセラミックグリーンシートは、その上にスクリーン印刷等により電極層が形成され積層され、この積層体は焼成炉で加熱され、内部に含まれるバインダー樹脂を分解除去し、無機粒子を焼結させることで様々な電子部品が製造されている。
昨今の持続可能な事業プロセスの必要性の高まりから、より低温、短時間で脱バインダー処理ができるバインダー樹脂が求められている。低温処理が可能となることで、加熱炉のエネルギーが低減される他、電子部品中の無機成分の熱劣化や酸化劣化を防ぐことが可能となり、より信頼性の高い電子部品が生産可能となる。
特許文献1では全固体電池の製造において低温分解アクリルバインダーを用い、大気中、昇温速度20℃/分で室温から500℃まで昇温し、500℃で30分間保持して脱脂を実施している。
また、特許文献2では低融点ガラスペーストにおいて低温分解バインダーとして脂肪族ポリプロピレンカーボネートを用い、電子部品の封着材料を製造している。この際、窒素雰囲気下で430℃まで昇温し、その焼成温度で10分間保持した上で、室温まで冷却することで脱脂し、ガラスペーストを焼成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-77989号公報
【文献】特開2011-178606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクリルバインダーは溶媒選択性が高く、また、樹脂強度の調整が容易であるため、特許文献1に記載の方法によれば、グリーンシートを作製するためのスラリー組成物を提供できるが、脱脂には空気雰囲気下で500℃という高温が必要であり、用いる無機材料によっては酸化等の性能劣化が容易に起こるという問題がある。
また、特許文献2に記載のプロピレンカーボネートは窒素雰囲気下での分解性はアクリル樹脂よりも優れるものの、溶媒選択性に乏しく、また、pHが中性以外の環境では樹脂が分解してしまい、無機粒子分散スラリーの貯蔵安定性に問題がある。
【0005】
本発明は、貯蔵安定性、印刷性に優れるとともに、低温でも脱バインダー処理を促進することができ、無機粒子の酸化を抑制することができ、焼成後の残留炭素が少なく焼結性に優れ、信頼性の高い電子部品を得ることができる無機粒子分散スラリー組成物を提供することを目的とする。また、該スラリー組成物を用いた無機焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示(1)は、バインダー樹脂(A)、無機粒子(B)及び溶剤(C)を含有し、更に、脱バインダー助剤(D)として、沸点200℃以上、かつ、酸素原子の含有量が40重量%以上であるカルボン酸無水物を含有する、無機粒子分散スラリー組成物である。
本開示(2)は、前記カルボン酸無水物は、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、グルタル酸、ジグリコール酸、メトキシ酢酸、イタコン酸、シトラコン酸、トリメリット酸、シクロブタンテトラカルボン酸、トリカルバリル酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種のカルボン酸の無水物である、本開示(1)の無機粒子分散スラリー組成物である。
本開示(3)は、前記バインダー樹脂(A)100重量部に対する前記カルボン酸無水物の含有量が5重量部以上30重量部以下である、本開示(1)又は(2)の無機粒子分散スラリー組成物である。
本開示(4)は、前記バインダー樹脂(A)は、(メタ)アクリル樹脂を含む、本開示(1)~(3)のいずれかとの任意の組み合わせの無機粒子分散スラリー組成物である。
本開示(5)は、前記(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基の炭素数が4以上であり、かつ、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを50重量%以上含む、本開示(4)の無機粒子分散スラリー組成物である。
本開示(6)は、本開示(1)~(5)のいずれかの無機粒子分散スラリー組成物を乾燥させて無機粒子分散成形体を得る工程、及び、前記無機粒子分散成形体を300℃以下で脱脂する工程を有する、無機焼結体の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、バインダー樹脂と特定の構造を有する脱バインダー助剤とを含有するスラリー組成物が貯蔵安定性、印刷性に優れることを見出した。また、当該スラリー組成物を無機焼結体の製造に用いた場合、低温でも脱バインダー処理を促進することができ、無機粒子の酸化を抑制することができ、焼成後の残留炭素が少なく焼結性に優れ、信頼性の高い電子部品を生産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
<バインダー樹脂(A)>
上記スラリー組成物は、バインダー樹脂(A)を含有する。
上記バインダー樹脂(A)としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。なかでも、低温分解性に優れることから(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
上記スラリー組成物において、(メタ)アクリル樹脂と後述するカルボン酸無水物とを組み合わせることで、脱バインダー処理において酸素を用いることなく窒素雰囲気下でも低温で脱バインダー処理を進行させることができ、無機粒子の酸化を抑制することができる。
また、バインダー樹脂(A)として、(メタ)アクリル樹脂と上述した他のバインダー樹脂とを組み合わせることで低温分解性により優れたものとできる。
【0009】
上記バインダー樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、2万以上であることが好ましく、400万以下であることが好ましい。
上記Mwが2万以上であると、スラリー組成物の粘度が低くなりすぎることがなく、また、無機粒子の分散性を良好なものとできる。上記Mwが400万以下であると、塗膜強度を高めることができ、また、スラリー組成物の粘度が充分に高くなり貯蔵安定性を向上させて、印刷性に優れたものとできる。
上記Mwは3万以上であることが好ましく、4万以上であることがより好ましく、300万以下であることが好ましく、200万以下であることがより好ましく、100万以下であることが更に好ましく、50万以下であることが更により好ましい。上記Mwは、2万~400万が好ましく、3万~300万がより好ましく、4万~200万が更に好ましく、4万~100万が更により好ましく、4万~50万が特に好ましい。
【0010】
上記バインダー樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが更に好ましく、80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることが更に好ましく、50℃以下であることが更により好ましい。上記Tgは、20~80℃が好ましく、30~70℃がより好ましく、40~60℃が更に好ましく、40~50℃が更により好ましい。
なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、例えば、示差走査熱量計(DSC)等を用いて測定することができる。
【0011】
上記スラリー組成物における上記バインダー樹脂(A)の含有量は特に限定されないが、3重量%以上であることが好ましく、4重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることが更に好ましく、6重量%以上であることが更により好ましく、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、12重量%以下であることが更に好ましい。上記バインダー樹脂(A)の含有量は、3~30重量%が好ましく、4~20重量%がより好ましく、5~12重量%が更に好ましく、6~12重量%が更により好ましい。
上記バインダー樹脂の含有量を上記範囲内とすることで、低温で焼成できるスラリー組成物が製造できる。
【0012】
上記バインダー樹脂(A)は、(メタ)アクリル樹脂を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを有することが好ましい。
エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基が直鎖状の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする(メタ)アクリル樹脂よりも分解終了温度が低い。(メタ)アクリル樹脂は天井温度を超える環境ではモノマーに分解される解重合反応を示すが、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルは再度重合し難い特性を有するため分解終了温度が低い。このため、上記構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、低温分解性に優れる。
【0013】
上記エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分岐構造を有するアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
上記エステル置換基の炭素数は、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、例えば10以下である。上記エステル置換基の炭素数は、3~20が好ましく、4~15がより好ましく、4~12が更に好ましく、4~10が更により好ましい。
【0014】
上記分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル等が挙げられる。
なかでも、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシルが好ましく、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシルがより好ましく、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルが更に好ましい。
【0015】
上記分岐構造を有するアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールとしては、プロピレングリコール単位を有するもの等が挙げられる。また、上記分岐構造を有するアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールは、末端にアルコキシ基を有するものであってもよい。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
上記分岐構造を有するアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールは、アルキレングリコール単位の数は3以上が好ましく、4以上がより好ましく、10以下が好ましく、8以下がより好ましい。上記アルキレングリコール単位の数は、3~10が好ましく、4~8がより好ましい。
【0016】
上記(メタ)アクリル樹脂における上記エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は50重量%以上が好ましい。
上記範囲であると、低温分解性により優れたスラリー組成物とすることができる。
上記エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上が更に好ましく、100重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。上記エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は、50~100重量%が好ましく、60~100重量%がより好ましく、70~90重量%が更に好ましい。
上記含有量は、例えば、熱分解GC-MSにより測定することができる。
【0017】
上記(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基の炭素数が4以上であり、かつ、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを有することが好ましい。
上記構成を有することで、低温分解性により優れたスラリー組成物とすることができる。
【0018】
また、上記(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントとして、メタクリル酸イソブチルに由来するセグメント、メタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメント、メタクリル酸イソデシルに由来するセグメント、メタクリル酸イソノニルに由来するセグメントからなる群から選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。
上記構成を有することで、低温分解性により優れたスラリー組成物とすることができる。
【0019】
上記(メタ)アクリル樹脂における上記エステル置換基の炭素数が4以上であり、かつ、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は50重量%以上が好ましい。
上記範囲であると、低温分解性により優れたスラリー組成物とすることができる。
上記エステル置換基の炭素数が4以上であり、かつ、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上が更に好ましく、例えば100重量%以下であり、90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。上記エステル置換基の炭素数が4以上であり、かつ、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は、50~100重量%が好ましく、60~90重量%がより好ましく、70~80重量%が更に好ましい。
【0020】
上記(メタ)アクリル樹脂は、更に、エステル置換基が直鎖状である(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメント、エステル置換基が環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメント等の他のセグメントを含んでいてもよい。
上記構成を有することで塗膜強度を高めることができる。
上記エステル置換基が直鎖状である(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
上記エステル置換基の炭素数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。上記エステル置換基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6がより好ましい。
【0021】
上記直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチルがより好ましい。また、低温分解性により優れたスラリー組成物とできることから、上記(メタ)アクリル樹脂は、更に、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメントを有することが好ましい。
【0022】
上記直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールとしては、エチレングリコール単位を有するもの、トリメチレングリコール単位を有するもの等が挙げられる。また、上記直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールは、末端にアルコキシ基を有するものであってもよい。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。上記アルコキシ基は分岐構造を有さないものである。なかでも、エチレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールが好ましく、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールがより好ましい。
上記直鎖状のアルキレングリコール単位を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、アルキレングリコール単位の数は4以上が好ましく、10以上がより好ましく、23以下が好ましく、20以下がより好ましい。上記アルキレングリコール単位の数は、4~23が好ましく、10~20がより好ましい。
【0023】
上記エステル置換基が環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0024】
特に、上記(メタ)アクリル樹脂は、モノマーとして酸素を多く含むものを用いることが好ましく、直鎖状のポリアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールは酸素含有量が多く、このような(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを有することが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂の解重合反応は吸熱反応であり、低温分解では分解に必要な熱量が得られにくい。上記のような酸素を多く含むモノマーに由来するセグメントを有することで、窒素雰囲気下であっても(メタ)アクリル樹脂の天井温度付近で自己の酸素を用いて燃焼分解するため、低温分解性をより高めることができる。
上記直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールは、酸素組成比が30重量%以上であることが好ましく、35重量%以上であることがより好ましい。
【0025】
上記(メタ)アクリル樹脂における上記エステル置換基が直鎖状である(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は、例えば0重量%以上であり、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上が更に好ましく、40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。上記エステル置換基が直鎖状である(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は、0~40重量%が好ましく、1~30重量%がより好ましく、5~30重量%が更に好ましく、10~30重量%が更により好ましい。
上記範囲とすることで、印刷性等の取り扱い性が向上する。
上記含有量は、例えば、熱分解GC-MSにより測定することができる。
【0026】
上記(メタ)アクリル樹脂におけるメタクリル酸イソブチルに由来するセグメント、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントの合計含有量は70重量%以上であることが好ましい。
上記構成を満たすことで、低温分解性により優れたスラリー組成物とすることができる。
上記合計含有量は、75重量%以上がより好ましく、80重量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されず、例えば、100重量%以下であり、90重量%以下がより好ましい。上記合計含有量は、70~100重量%が好ましく、75~90重量%がより好ましく、80~90重量%が更に好ましい。
上記含有量は、例えば、熱分解GC-MSにより測定することができる。
【0027】
上記(メタ)アクリル樹脂はグリシジル基、カルボキシル基又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを有していてもよい。
上記グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が挙げられる。
上記水酸基又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0028】
上記(メタ)アクリル樹脂における上記グリシジル基、カルボキシル基又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は1重量%以上が好ましく、4重量%以上がより好ましく、10重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましい。上記グリシジル基、カルボキシル基又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は、1~10重量%が好ましく、4~7重量%がより好ましい。
上記範囲とすることで、低温分解性をより高めることができ、また、得られる無機粒子分散シートの強靭性を向上させることができる。
【0029】
上記(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2万以上であることが好ましく、400万以下であることが好ましい。
上記Mwが2万以上であると、スラリー組成物の粘度が低くなりすぎることがなく、また、無機粒子の分散性を良好なものとできる。上記Mwが400万以下であると、塗膜強度を高めることができ、また、スラリー組成物の粘度が充分に高くなり貯蔵安定性を向上させて、印刷性に優れたものとできる。
上記Mwは3万以上であることが好ましく、4万以上であることがより好ましく、300万以下であることが好ましく、200万以下であることがより好ましく、100万以下であることが更に好ましく、50万以下であることが更により好ましい。上記Mwは、2万~400万が好ましく、3万~300万がより好ましく、4万~200万が更に好ましく、4万~100万が更により好ましく、4万~50万が特に好ましい。
【0030】
上記(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、通常1以上であり、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。上記Mw/Mnは、1~5が好ましく、1.5~3がより好ましく、2~3が更に好ましい。
上記範囲内とすることで、低重合度の成分が適度に含有されるため、スラリー組成物の粘度が好適な範囲となり、生産性を高めることができる。
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ポリスチレン換算による平均分子量であり、カラムとして例えばカラムLF-804(昭和電工社製)を用いてGPC測定を行うことで得ることができる。
【0031】
上記(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが更に好ましく、80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることが更に好ましく、50℃以下であることが更により好ましい。上記Tgは、20~80℃が好ましく、30~70℃がより好ましく、40~60℃が更に好ましく、40~50℃が更により好ましい。
なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、例えば、示差走査熱量計(DSC)等を用いて測定することができる。
【0032】
上記バインダー樹脂(A)における上記(メタ)アクリル樹脂の含有量は、10重量%以上が好ましく、100重量%以下が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以下がより好ましい。
【0033】
上記スラリー組成物における上記(メタ)アクリル樹脂の含有量は特に限定されないが、3重量%以上であることが好ましく、4重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることが更に好ましく、6重量%以上であることが更により好ましく、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、12重量%以下であることが更に好ましい。上記(メタ)アクリル樹脂の含有量は、3~30重量%が好ましく、4~20重量%がより好ましく、5~12重量%が更に好ましく、6~12重量%が更により好ましい。
上記(メタ)アクリル樹脂の含有量を上記範囲内とすることで、低温で焼成できるスラリー組成物が製造できる。
【0034】
上記(メタ)アクリル樹脂を製造する方法としては特に限定されない。例えば、まず、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル等を含む原料モノマー混合物に有機溶剤等を加えてモノマー混合液を調製し、更に、得られたモノマー混合液に重合開始剤を添加して、重合させて(メタ)アクリル樹脂を作製する方法が挙げられる。
重合させる方法は特に限定されず、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、界面重合、溶液重合等が挙げられる。なかでも、溶液重合が好ましい。
【0035】
上記重合開始剤としては、例えば、ジラウリルパーオキサイド、P-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロキシパーオキサイド、t-ブチルハイドロキシパーオキサイド、過酸化シクロヘキサノン、ジコハク酸パーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
これらの市販品としては、例えば、パーメンタH、パークミルP、パーオクタH、パークミルH-80、パーロイル355、パーブチルH-69、パーヘキサH、パーロイルSA、パーロイルL(何れも日油社製)、トリゴノックス27、トリゴノックス421(何れもNouryon社製)等が挙げられる。
【0036】
<無機粒子(B)>
上記スラリー組成物は、無機粒子を含有する。
上記無機粒子としては、例えば、セラミック粉末、ガラス粉末、蛍光体粒子、ケイ素酸化物、金属粒子等が挙げられる。
【0037】
上記セラミック粉末としては、例えば、アルミナ、フェライト、ジルコニア、ジルコン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ランタン、チタン酸ネオジウム、チタン酸ジルコン鉛、窒化アルミ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ガリウム、炭化ホウ素、錫酸バリウム、錫酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ムライト、ステアタイト、コーディエライト、フォルステライト等が挙げられる。
また、ITO、FTO、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タングステン、ランタンストロンチウムマンガナイト、ランタンストロンチウムコバルトフェライト、イットリウム安定化ジルコニア、ガドリニウムドープセリア、酸化ニッケル、ランタンクロマイト、Sm2Fe17N3、Nd2Fe14B、MnAlC、L10FeNi、La2/3-xLi3xTiO3、La(1-x)/3LixNbO3、LaGaO3、LaScO3、CaZrO3、(La0.875Sr0.125)MnO3、PbZrTiO3、SrBi2Ta2O9、BiFeO3、KNbO3、PbVO3、BiCo3、Bi(Zn1/2Ti1/2)3等も使用することができる。
上記セラミック粉末を用いることで、セラミックグリーンシート用スラリー組成物として好適に用いることができる。
【0038】
上記ガラス粉末としては、例えば、酸化ビスマスガラス、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、亜鉛ガラス、ボロンガラス等のガラス粉末や、CaO-Al2O3-SiO2系、MgO-Al2O3-SiO2系、LiO2-Al2O3-SiO2系等の各種ケイ素酸化物のガラス粉末等が挙げられる。
また、上記ガラス粉末として、SnO-B2O3-P2O5-Al2O3混合物、PbO-B2O3-SiO2混合物、BaO-ZnO-B2O3-SiO2混合物、ZnO-Bi2O3-B2O3-SiO2混合物、Bi2O3-B2O3-BaO-CuO混合物、Bi2O3-ZnO-B2O3-Al2O3-SrO混合物、ZnO-Bi2O3-B2O3混合物、Bi2O3-SiO2混合物、P2O5-Na2O-CaO-BaO-Al2O3-B2O3混合物、P2O5-SnO混合物、P2O5-SnO-B2O3混合物、P2O5-SnO-SiO2混合物、CuO-P2O5-RO混合物、SiO2-B2O3-ZnO-Na2O-Li2O-NaF-V2O5混合物、P2O5-ZnO-SnO-R2O-RO混合物、B2O3-SiO2-ZnO混合物、B2O3-SiO2-Al2O3-ZrO2混合物、SiO2-B2O3-ZnO-R2O-RO混合物、SiO2-B2O3-Al2O3-RO-R2O混合物、SrO-ZnO-P2O5混合物、SrO-ZnO-P2O5混合物、BaO-ZnO-B2O3-SiO2混合物等も用いることができる。なお、Rは、Zn、Ba、Ca、Mg、Sr、Sn、Ni、Fe及びMnからなる群より選択される元素を示す。
特に、PbO-B2O3-SiO2混合物のガラス粉末や、鉛を含有しないBaO-ZnO-B2O3-SiO2混合物又はZnO-Bi2O3-B2O3-SiO2混合物等の無鉛ガラス粉末が好ましい。
【0039】
上記無機粒子は、リチウムを含有することで、全固体リチウムイオン電池用の電解質スラリー組成物として好適に用いることができる。上記リチウムを含有する無機粒子としては、具体的には例えば、LiO2・Al2O3・SiO2系無機ガラス等の低融点ガラス、Li2S-MxSy(M=B、Si、Ge、P)等のリチウム硫黄系ガラス、LiCoO2等のリチウムコバルト複合酸化物、LiMnO4等のリチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムバナジウム複合酸化物、リチウムジルコニウム複合酸化物、リチウムハフニウム複合酸化物、ケイリン酸リチウム(Li3.5Si0.5P0.5O4)、リン酸チタンリチウム(LiTi2(PO4)3)、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、Li4/3Ti5/3O4、リン酸ゲルマニウムリチウム(LiGe2(PO4)3)、Li2-SiS系ガラス、Li4GeS4-Li3PS4系ガラス、LiSiO3、LiMn2O4、Li2S-P2S5系ガラス・セラミクス、Li2O-SiO2、Li2O-V2O5-SiO2、LiS-SiS2-Li4SiO4系ガラス、LiPON等のイオン導電性酸化物、Li2O-P2O5-B2O3、Li2O-GeO2Ba等の酸化リチウム化合物、LixAlyTiz(PO4)3系ガラス、LaxLiyTiOz系ガラス、LixGeyPzO4系ガラス、Li7La3Zr2O12系ガラス、LivSiwPxSyClz系ガラス、LiNbO3等のリチウムニオブ酸化物、Li-β-アルミナ等のリチウムアルミナ化合物、Li14Zn(GeO4)4等のリチウム亜鉛酸化物等が挙げられる。
【0040】
上記蛍光体粒子は特に限定されず、例えば、蛍光体物質としては、ディスプレイ用の蛍光体物質として従来知られている青色蛍光体物質、赤色蛍光体物質、緑色蛍光体物質などが用いられる。青色蛍光体物質としては、例えば、MgAl10O17:Eu、Y2SiO5:Ce系、CaWO4:Pb系、BaMgAl14O23:Eu系、BaMgAl16O27:Eu系、BaMg2Al14O23:Eu系、BaMg2Al14O27:Eu系、ZnS:(Ag,Cd)系のものが用いられる。赤色蛍光体物質としては、例えば、Y2O3:Eu系、Y2SiO5:Eu系、Y3Al5O12:Eu系、Zn3(PO4)2:Mn系、YBO3:Eu系、(Y,Gd)BO3:Eu系、GdBO3:Eu系、ScBO3:Eu系、LuBO3:Eu系のものが用いられる。緑色蛍光体物質としては、例えば、Zn2SiO4:Mn系、BaAl12O19:Mn系、SrAl13O19:Mn系、CaAl12O19:Mn系、YBO3:Tb系、BaMgAl14O23:Mn系、LuBO3:Tb系、GdBO3:Tb系、ScBO3:Tb系、Sr6Si3O3Cl4:Eu系のものが用いられる。その他、ZnO:Zn系、ZnS:(Cu,Al)系、ZnS:Ag系、Y2O2S:Eu系、ZnS:Zn系、(Y,Cd)BO3:Eu系、BaMgAl12O23:Eu系のものも用いることができる。
【0041】
上記金属粒子は特に限定されず、例えば、鉄、銅、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、アルミニウム、タングステンやこれらの合金等からなる粉末等が挙げられる。
また、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等との吸着特性が良好で酸化されやすい銅や鉄等の金属も好適に用いることができる。これらの金属粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、金属錯体のほか、種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ等を使用してもよい。
【0042】
上記無機粒子の平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。上記平均粒子径は、0.1~100μmが好ましく、0.5~50μmがより好ましい。
上記範囲であると、無機粒子の比表面積が大きくなりすぎず、焼成により緻密な成形体とすることができる。
なお、上記無機粒子の平均粒子径は、例えば透過型電子顕微鏡を用いて観察する方法や分散液の光散乱法によって測定することができる。
【0043】
上記スラリー組成物における上記無機粒子の含有量は特に限定されないが、40重量%以上が好ましく、90重量%以下が好ましい。上記範囲とすることで、無機粒子の密度を十分に高めることができる。また、無機粒子の分散性を充分に高めて、成形性を向上させることができる。上記無機粒子の含有量は、40~90重量%が好ましい。
【0044】
<溶剤(C)>
上記スラリー組成物は、溶剤を含有する。
上記溶剤は特に限定されないが、無機粒子分散シートを作製する際に、塗工性、乾燥性、無機粒子の分散性等に優れるものが好ましい。
上記溶剤としては、例えば、脂肪族アルコール類、グリコール類、テルペンアルコール類、芳香族アルコール類等のアルコール類、芳香族炭化水素類、エステル類、ケトン類、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
上記脂肪族アルコール類としては、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
上記グリコール類としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチルカルビトールアセテート等が挙げられる。
上記テルペンアルコール類としては、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等が挙げられる。
上記芳香族アルコール類としては、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、クレゾール等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素類としては、トルエン等が挙げられる。
上記エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、酢酸イソアミル、酪酸ブチル、メトキシ酢酸ブチル、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等が挙げられる。
上記ケトン類としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン等が挙げられる。
なかでも、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、酪酸ブチル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸ブチル、エチルカルビトールアセテート、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノールが好ましく、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、テルピネオール、エチルカルビトールアセテートがより好ましく、酢酸ブチル、テルピネオール、ベンジルアルコールが更に好ましい。
なお、これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の一実施態様において、有機溶剤は上記脱バインダー助剤とは異なる。
【0045】
上記溶剤の沸点は、90℃以上が好ましく、230℃以下が好ましく、120℃以上がより好ましく、210℃以下がより好ましい。上記沸点は、90~230℃が好ましく、120~210℃がより好ましい。
上記範囲であると、蒸発が早くなりすぎることがなく、また、送風オーブン等により容易に乾燥させることができる。また、印刷性を向上させて、表面が平滑な塗工物を得ることができる。
【0046】
上記スラリー組成物における上記溶剤の含有量は、10重量%以上が好ましく、60重量%以下が好ましく、20重量%以上がより好ましく、50重量%以下がより好ましい。
上記範囲とすることで、塗工性、無機粒子の分散性をより向上させることができる。上記溶剤の含有量は、10~60重量%が好ましく、20~50重量%がより好ましい。
【0047】
<脱バインダー助剤(D)>
上記スラリー組成物は、脱バインダー助剤を含有する。
上記バインダー助剤は、沸点200℃以上、かつ、酸素原子の含有量が40重量%以上であるカルボン酸無水物を含有する。
上記脱バインダー助剤は、分子中の酸素原子量が多く、窒素雰囲気下でも自己の酸素を消費して燃焼し、上記バインダー樹脂と混合することでバインダー樹脂の熱分解を補助する。このため、酸素分圧を高めることなく脱バインダー処理を促進して焼結残渣を著しく減少させることができ、また、無機粒子の酸化を抑制して、信頼性の高い電子部品を生産できる。
【0048】
上記カルボン酸無水物における酸素原子の含有量は、脱バインダー性及び無機粒子の酸化抑制の観点から、40重量%以上であり、45重量%以上が好ましく、48重量%以上がより好ましい。また溶剤への溶解性の観点から、上記酸素原子の含有量は55重量%以下が好ましく、50重量%以下が好ましい。上記酸素原子の含有量は、40~55重量%が好ましく、45~50重量%がより好ましく、48~50重量%が更に好ましい。
上記酸素原子の含有量は、1分子中の酸素原子の含有量であり、脱バインダー助剤の分子量及び酸素の原子量に基づいて算出できる。また、上記酸素原子の含有量は、炭素の原子量を12、水素の原子量を1、酸素の原子量を16として算出することができる。
【0049】
上記カルボン酸無水物の沸点は200℃以上である。
上記沸点とすることで、スラリー組成物を塗工乾燥させた際、溶剤とともに蒸発してしまうことがなく、脱バインダー処理を促進する効果を発揮することができる。
上記沸点は、390℃以下が好ましく、250℃以上がより好ましく、370℃以下がより好ましく、270℃以上が更に好ましく、350℃以下が更に好ましい。上記沸点は、200~390℃が好ましく、250~370℃がより好ましく、270~350℃が更に好ましい。
上記沸点が270℃以上であるカルボン酸無水物は可塑剤として機能する。このようなカルボン酸無水物を脱バインダー助剤として用いることで可塑剤添加量を低減することが可能となる。
なお、上記カルボン酸無水物は、空気雰囲気下では200℃未満で燃焼開始してしまうため、沸点の測定は減圧条件下で行うことが好ましい。減圧条件下での沸点の換算方法としては、Science of Petroleum, Vol.II. p.1281 (1938).等の方法を用いることができる。
【0050】
上記カルボン酸無水物としては、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、グルタル酸、ジグリコール酸、メトキシ酢酸、イタコン酸、シトラコン酸、トリメリット酸、シクロブタンテトラカルボン酸、トリカルバリル酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、マロン酸等の無水物が挙げられる。
なかでも、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、グルタル酸、ジグリコール酸、メトキシ酢酸、イタコン酸、シトラコン酸、トリメリット酸、シクロブタンテトラカルボン酸、トリカルバリル酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸の無水物が好ましく、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、ジグリコール酸、メトキシ酢酸の無水物がより好ましい。
上記カルボン酸無水物は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
上記カルボン酸無水物を脱バインダー助剤として用いることで、酸素分圧を高めることなく脱バインダー処理を促進して焼結残渣を著しく減少させることができ、また、無機粒子の酸化を抑制して、信頼性の高い電子部品を生産できる。
【0051】
上記カルボン酸無水物としては、具体的には、無水コハク酸(沸点261℃、酸素含有量48.0重量%)、無水マレイン酸(沸点202℃、酸素含有量49.0重量%)、無水クエン酸(沸点520℃、酸素含有量55.2重量%)、無水グルタル酸(沸点283℃、酸素含有量42.1重量%)、ジグリコール酸無水物(沸点240℃、酸素含有量55.2重量%)、無水イタコン酸(沸点232℃、酸素含有量42.9重量%)、シトラコン酸無水物(沸点213℃、酸素含有量42.9重量%)、トリメリット酸無水物(沸点393℃、酸素含有量41.7重量%)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(沸点545℃、酸素含有量49.0重量%)、2-メトキシ酢酸無水物(沸点215℃、酸素含有量49.4重量%)、トリカルバリル酸無水物(沸点390℃、酸素含有量50.6重量%)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(沸点492℃、酸素含有量48.5重量%)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(沸点527℃、酸素含有量45.7重量%)、マロン酸無水物(酸素含有量55.8重量%)、等が挙げられる。
なかでも、酸素含有量が高く、沸点が高いという利点があることから、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水クエン酸、ジグリコール酸無水物、無水イタコン酸、シトラコン酸無水物、トリメリット酸無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2-メトキシ酢酸無水物、トリカルバリル酸無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物が好ましく、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水クエン酸、ジグリコール酸無水物、2-メトキシ酢酸無水物がより好ましい。
【0052】
上記スラリー組成物における上記カルボン酸無水物の含有量は、0.1重量%以上が好ましく、15重量%以下が好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、10重量%以下がより好ましく、0.4重量%以上が更に好ましく、5重量%以下が更に好ましい。上記範囲とすることで、脱バインダー効果を充分に高めつつ、脱バインダー助剤がスラリー組成物中に析出することがなく、印刷性に優れたものとできる。上記カルボン酸無水物の含有量は、0.1~15重量%が好ましく、0.2~10重量%がより好ましく、0.4~5重量%が更に好ましい。
【0053】
上記スラリー組成物における上記カルボン酸無水物の含有量は、上記バインダー樹脂(A)100重量部に対して5重量部以上が好ましく、30重量部以下が好ましい。
上記範囲とすることで、脱バインダー効果を充分に高めつつ、脱バインダー助剤がスラリー組成物中に析出することがなく、印刷性に優れたものとできる。
上記カルボン酸無水物の含有量は、8重量部以上が好ましく、25重量部以下が好ましく、10重量部以上がより好ましく、20重量部以下がより好ましい。上記カルボン酸無水物の含有量は、上記バインダー樹脂(A)100重量部に対して5~30重量部が好ましく、8~25重量部がより好ましく、10~20重量部が更に好ましい。
【0054】
また、上記脱バインダー助剤(D)は、上記カルボン酸無水物以外にホウ酸硝子などの無機酸化物等を他の脱バインダー助剤を含んでいてもよい。
【0055】
上記スラリー組成物における上記脱バインダー助剤(D)の含有量は、0.1重量%以上が好ましく、15重量%以下が好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、10重量%以下がより好ましく、0.4重量%以上が更に好ましく、5重量%以下が更に好ましい。上記脱バインダー助剤(D)の含有量は、0.1~15重量%が好ましく、0.2~10重量%がより好ましく、0.4~5重量%が更に好ましい。上記範囲とすることで、脱バインダー効果を充分に高めつつ、脱バインダー助剤がスラリー組成物中に析出することがなく、印刷性に優れたものとできる。
【0056】
上記スラリー組成物における上記脱バインダー助剤(D)の含有量は、上記バインダー樹脂(A)100重量部に対して5重量部以上が好ましく、30重量部以下が好ましい。
上記範囲とすることで、脱バインダー効果を充分に高めつつ、脱バインダー助剤がスラリー組成物中に析出することがなく、印刷性に優れたものとできる。
上記カルボン酸無水物の含有量は、上記(メタ)アクリル樹脂100重量部に対して8重量部以上が好ましく、25重量部以下が好ましく、10重量部以上がより好ましく、20重量部以下がより好ましい。上記カルボン酸無水物の含有量は、上記(メタ)アクリル樹脂100重量部に対して5~30重量部が好ましく、8~25重量部がより好ましく、10~20重量部が更に好ましい。
【0057】
(その他の添加剤)
上記スラリー組成物は、上記バインダー樹脂(A)、上記無機粒子(B)、上記溶剤(C)、上記カルボン酸無水物を含む脱バインダー助剤(D)以外に、可塑剤、界面活性剤、分散剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0058】
上記可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールジヘキサノエート、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸ジエチル、アセチルクエン酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、アセチルオキシマロン酸ジエチル、エトキシマロン酸ジエチル等が挙げられる。
これらの可塑剤を用いることで、通常の可塑剤を使用する場合と比較して可塑剤添加量を低減することが可能となる
なお、上記可塑剤は、上記脱バインダー助剤とは異なるものである。
また、構造中にベンゼン環等の芳香環を有する可塑剤は燃焼して煤になりやすいため、非芳香族の可塑剤を用いることが好ましく、アジピン酸、トリエチレングリコール、クエン酸に由来する成分を含有することがより好ましい。
【0059】
上記可塑剤としては、エチル基、ブチル基等の炭素数が2以上のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が4以上のアルキル基を有するものがより好ましい。
炭素数が2以上のアルキル基を含有することで、可塑剤への水分の吸収を抑制して、得られる無機粒子分散シートにボイドやふくれ等の不具合を発生することを防止することができる。特に、可塑剤のアルキル基は分子末端に位置していることが好ましい。
分子末端にエチル基等の炭素数が2の置換基を有する可塑剤はメタクリル酸エチルに由来するセグメントとの相性がよく、分子末端にブチル基等の炭素数が4の置換基を有する可塑剤はメタクリル酸ブチルに由来するセグメントとの相性がよい。このような可塑剤は上記(メタ)アクリル樹脂との相性がよく、樹脂の脆性を改善することができる。更には、ブトキシエチル基を有する可塑剤はメタクリル酸エチルに由来するセグメント及びメタクリル酸ブチルに由来するセグメントの両方との相性がよく好ましく用いることができる。
【0060】
上記可塑剤は、炭素:酸素比が5:1~3:1であることが好ましい。
炭素:酸素比を上記範囲とすることで、可塑剤の燃焼性を向上させて、残留炭素の発生を防止することができる。また、(メタ)アクリル樹脂との相溶性を向上させて、少量の可塑剤でも可塑化効果を発揮させることができる。
また、プロピレングリコール骨格やトリメチレングリコール骨格の高沸点有機溶剤も、炭素数が4以上のアルキル基を含有し、炭素:酸素比が5:1~3:1であれば好ましく用いることができる。
【0061】
上記可塑剤の沸点は、240℃以上が好ましく、390℃未満が好ましい。
上記範囲であると、乾燥工程で蒸発しやすく、成形体への残留を防止でき、また、残留炭素が生じることを防止できる。
なお、上記沸点は、常圧での沸点をいう。
【0062】
上記スラリー組成物における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、0.1重量%以上が好ましく、3.0重量%以下が好ましい。上記可塑剤の含有量は、0.1~3.0重量%が好ましい。
上記範囲とすることで、シート取り扱い性と焼結性とを両立することができる。
【0063】
上記界面活性剤としては、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が挙げられる。
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されないが、HLB値が10以上20以下のノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ここで、HLB値とは、界面活性剤の親水性、親油性を表す指標として用いられるものであって、計算方法がいくつか提案されており、例えば、エステル系の界面活性剤について、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとし、HLB値を20(1-S/A)等の定義がある。具体的には、脂肪鎖にアルキレンエーテルを付加させたポリエチレンオキサイドを有するノニオン系界面活性剤が好適であり、具体的には例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が好適に用いられる。なお、上記ノニオン系界面活性剤は、熱分解性がよいが、大量に添加すると無機粒子分散スラリー組成物の熱分解性が低下することがあるため、含有量の好ましい上限は5重量%である。
【0064】
上記分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪族アミン、アルカノールアミド、リン酸エステルが好適である。また、シランカップリング剤等を配合してもよい。
上記脂肪酸としては特に限定されず、例えば、ベヘニン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、ヤシ脂肪酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、牛脂脂肪酸、ヒマシ硬化脂肪酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。なかでも、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が好適である。
上記脂肪族アミンとしては特に限定されず、例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アルキル(ヤシ)アミン、アルキル(硬化牛脂)アミン、アルキル(牛脂)アミン、アルキル(大豆)アミン等が挙げられる。
上記アルカノールアミドとしては特に限定されず、例えば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
上記リン酸エステルとしては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステルが挙げられる。
【0065】
上記スラリー組成物は、脱バインダー助剤(D)として上記カルボン酸無水物を含有するため、含水率が少ない方が好ましく、含水率が1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。
上記含水率を低減する方法は特に限定されないが、例えば、減圧脱気法やモレキュラーシーブ法等が挙げられる。
【0066】
上記スラリー組成物の粘度は特に限定されないが、20℃においてB型粘度計を用いプローブ回転数を5rpmに設定して測定した場合の粘度の好ましい下限が0.1Pa・s、好ましい上限が100Pa・sである。上記粘度は、0.1~100Pa・sが好ましい。
上記粘度を0.1Pa・s以上とすることで、ダイコート印刷法等により塗工した後、得られる無機粒子分散シートが所定の形状を維持することが可能となる。また、上記粘度を100Pa・s以下とすることで、ダイの塗出痕が消えない等の不具合を防止して、印刷性に優れるものとできる。
【0067】
上記スラリー組成物を作製する方法は特に限定されず、従来公知の攪拌方法が挙げられ、具体的には、例えば、上記バインダー樹脂(A)、上記無機粒子(B)、上記溶剤(C)、上記カルボン酸無水物を含む上記脱バインダー助剤(D)、その他必要に応じて添加される添加剤を混合して3本ロール等で攪拌する方法等が挙げられる。
【0068】
上記スラリー組成物を用いることで電子部品、ネオジム磁石等の磁石等を作製することができる。
【0069】
上記電子部品としては、例えば、ダイアタッチペースト(ACP)、ダイアタッチフィルム(ACF)、TSV、TGV用ビア電極、タッチパネル、RFIDやセンサー基板の各種回路、各種ダイボンディング剤、MEMSデバイスの封止剤、太陽電池、積層セラミックスコンデンサー、LTCC、シリコンコンデンサ、全固体電池等の電極材料等が挙げられる。また、上記電極回路用途以外に、圧電素子、インダクター、焼結磁石、抗菌部材や電磁波シールド、触媒、蛍光材料等にも用いることができる。
【0070】
例えば、上記スラリー組成物を基材上に塗工し、乾燥させて無機粒子分散成形体を作製し、更に、得られた無機粒子分散成形体を熱処理して脱バインダー処理(脱脂)を行い、その後、無機粒子の焼結温度まで加熱して焼成することで無機焼結体を得ることができる。
上記無機粒子分散スラリー組成物を乾燥させて無機粒子分散成形体を得る工程、及び、上記無機粒子分散成形体を300℃以下で脱脂する工程を有する無機焼結体の製造方法もまた本発明の1つである。
【0071】
上記無機粒子分散スラリー組成物の成形する方法は特に限定されないが、U字に開口させたスクリーン版を上下交互に塗りながらコイル状を形成したり、基材上に直接印刷して積層体を形成したり、無機粒子分散スラリー組成物を基材にディップコートしてもよい。高沸点の溶媒を用いることでスクリーン印刷等を用いて成形することが可能となる。
【0072】
上記スラリー組成物を、片面離型処理を施した支持フィルム上に塗工し、溶剤を乾燥させ、シート状の無機粒子分散成形体とすることで、無機粒子分散シートを製造することができる。
上記無機粒子分散シートは、厚みが1~20μmであることが好ましい。
【0073】
上記塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、ダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーター等の塗工方法を用いることができる。
【0074】
上記乾燥させる方法としては、例えば、加熱乾燥等が挙げられる。
乾燥温度は80℃以上が好ましく、130℃以下が好ましい。
【0075】
上記無機粒子分散シートを製造する際に用いる支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有するとともに可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコーター、ブレードコーター等によって支持フィルムの表面に無機粒子分散スラリー組成物を塗布することができ、得られる無機粒子分散シート形成フィルムをロール状に巻回した状態で保存し、供給することができる。
【0076】
上記支持フィルムを形成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレン等の含フッ素樹脂、ナイロン、セルロース等が挙げられる。
上記支持フィルムの厚みは、例えば、20~100μmが好ましい。
また、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましく、これにより、転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
【0077】
上記無機粒子分散成形体を熱処理して脱バインダー処理(脱脂)する脱脂工程を行い、その後、無機粒子の焼結温度まで加熱して焼成する焼成工程を行うことで無機焼結体を得ることができる。
【0078】
上記脱脂工程は、300℃以下で行うことが好ましい。
上記スラリー組成物を用いることで、300℃以下という低温環境でも脱バインダー処理を充分に進行させることができる。
上記温度は、250℃以上が好ましく、280℃以下が好ましい。
また、上記温度を保持する時間は、0.1時間以上が好ましく、1時間以下が好ましい。
更に、昇温速度は20℃/分以上が好ましく、100℃/分以下が好ましい。
上記脱脂工程は、用いる無機粒子が空気中の酸素により変質しやすい場合は窒素雰囲気下で行うことが好ましく、また、用いる無機粒子が空気中の酸素に対して比較的安定である場合は空気雰囲気下で行ってもよい。空気雰囲気下で行う場合、窒素雰囲気下と比較してより素早く脱バインダー処理を進行させることができ、焼結体に残留する焼成残渣を少なくすることができる。
【0079】
上記脱脂工程の後、無機粒子の焼結温度まで加熱して焼成する焼成工程を行う。
これにより無機焼結体を得ることができる。
焼成温度は無機粒子の種類により適宜設定されるため特に限定されないが、例えば、300℃以上、1000℃以下である。
また、昇温速度は20℃/分以上が好ましく、100℃/分以下が好ましい。
上記焼成工程は、窒素雰囲気下で行ってもよく、空気雰囲気下で行ってもよく、真空下で行ってもよく、水素ガスを微量に含有した還元雰囲気下で行ってもよい。
【0080】
上記スラリー組成物において無機粒子(B)としてセラミック粉を用いることでセラミック焼結体を製造することができる。
上記セラミック焼結体は、セラミック積層体であってもよく、セラミック単層体であってもよい。
上記セラミック積層体は、積層セラミックスコンデンサー、積層セラミック基板、全固体電池等に用いることができ、セラミック単層体は、セラミックパッケージ、低温同時焼成セラミックス(LTCC)、アルミナ等の回路基板、窒化アルミ、窒化ケイ素等のセラミックス放熱基板、静電チャック、セラミックスカラム、温度センサー、圧電素子、各種機械部品等に用いることができる。
上記スラリー組成物、上記無機粒子分散シートを、全固体電池の正極、固体電解質、負極の材料として使用することで全固体電池を製造することができる。また、上記スラリー組成物、上記無機粒子分散シートを、誘電体グリーンシート、電極ペーストに用いることで積層セラミックスコンデンサーを製造することができる。
【0081】
上記全固体電池の製造方法は、上記スラリー組成物を用いて無機粒子分散シートを作製する工程、電極活物質及び電極活物質層用バインダーを含有する電極活物質層用スラリーを成形して電極活物質シートを作製する工程、前記電極活物質シートと上記無機粒子分散シートとを積層して積層体を作製する工程、及び、前記積層体を焼成する工程とを有することが好ましい。
【0082】
上記積層セラミックスコンデンサーの製造方法は、上記スラリー組成物を用いて無機粒子分散シートを作製する工程、上記無機粒子分散シートに導電ペーストを印刷、乾燥して、誘電体シートを作製する工程、及び、前記誘電体シートを積層する工程を有することが好ましい。
【0083】
上記導電ペーストは、導電粉末を含有するものである。
上記導電粉末の材質は、導電性を有する材質であれば特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、インジウム、白金、金、銀、銅及びこれらの合金等が挙げられる。これらの導電粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記導電ペーストを印刷する方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、ダイコート印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。
【0085】
上記積層セラミックスコンデンサーの製造方法では、上記導電ペーストを印刷した誘電体シートと電極層を積層することで、積層セラミックスコンデンサーが得られる。
【0086】
上記脱バインダー助剤を含有する無機粒子分散シート、導電ペースト組成物を積層させた生のセラミック部品を焼成し焼成済みセラミック部品を作製し、更に外部電極を設置することにより、電子部品が作製できる。
焼成する際の条件は特に限定されないが、電極層に用いる遷移金属が酸化されないように不活性ガス、還元性ガス雰囲気下で焼成することが好ましい。
また、脱バインダー工程と無機粒子の焼成工程とは目的に合わせた温度で保持しても良い。
脱バインダー工程は不活性ガス雰囲気下で250℃以上、350℃以下で1時間から3時間保持することでバインダーや可塑剤等有機物含有量を20%以下に低減させ、無機粒子焼成工程へ移行させる。無機粒子焼成工程は不活性ガス雰囲気もしくは還元性ガス雰囲気下で800℃から1300℃に昇温することで無機粒子が焼結される。昇温速度は5℃/分以上100℃/分以下が好ましい。
【0087】
上記焼成済みセラミック部品に外部電極を設置することで電子部品を作製することができる。
外部電極の組成や設置方法は特に限定されない。金属メッキや、熱硬化性導電性樹脂、金属ペースト等が好ましく用いることができる。金属ペーストに用いることができる金属は導電性が高く、低温で焼結するものが好ましい。例えば、銅、ニッケル、銀、パラジウム等が挙げられる。
【0088】
例えば、上記スラリー組成物において無機粒子(B)として、Nd2Fe14Bを用いる場合、フェライト磁石基板上に上記スラリー組成物を塗工、乾燥し、磁力プレスを掛け、磁力を配向させながら300℃程度で焼成することで、磁力の低下が抑えられたネオジム磁石を製造することができる。
また、例えば、無機粒子(B)としてLa2/3-xLi3xTiO3(LLTO)を用いる場合、負極Li箔上に上記スラリー組成物を塗工、乾燥し、正極としてLLTO、導電助剤としてアセチレンブラック、正極活物質としてリチウム酸ニオブ等からなる正極シートと張り合わせ、300℃程度で焼成することで、容量の大きい全固体電池を製造することができる。
更に、無機粒子(B)としてチタン酸バリウムを用いたスラリー組成物、及び、無機粒子(B)としてニッケル粒子を用いたスラリー組成物を組み合わせた構成とすることで、積層セラミックスコンデンサーを製造することができる。
また、無機粒子(B)としてNi-Zn-Cuフェライトを用いたスラリー組成物、及び、無機粒子(B)として銅粒子を用いたスラリー組成物を組み合わせた構成とすることで、インダクターを製造することができる。
また、300℃程度の焼成では無機粒子(B)の焼結性が不充分である場合、ほう珪酸塩やリン酸塩等を焼結助剤として添加してもよい。
【発明の効果】
【0089】
本発明によれば、貯蔵安定性、印刷性に優れるとともに、低温でも脱バインダー処理を促進することができ、無機粒子の酸化を抑制することができ、焼成後の残留炭素が少なく焼結性に優れ、信頼性の高い電子部品を得ることができる無機粒子分散スラリー組成物を提供することができる。また、該スラリー組成物を用いた無機焼結体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0091】
<(メタ)アクリル樹脂の作製>
(合成例1)
撹拌機、冷却器、温度計、湯浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコを用意した。2Lセパラブルフラスコにメタクリル酸イソブチル(iBMA)50重量部を添加した。更に、メタクリル酸n-ブチル(nBMA)50重量部を加えた。更に、有機溶剤としてテルピネオール100重量部を混合し、モノマー混合液を得た。
モノマー混合液に窒素ガスをバブリングして溶存酸素を除去した後、湯浴によってフラスコ内温が80℃になるように昇温した。その後、重合開始剤としてラウリルパーオキサイド2.0重量部を数回に分けて添加し、6時間後、重合を終了させ、(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。樹脂固形分は50.0重量%であった。
得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を乾燥させ、テトラヒドロフラン(THF)中に樹脂濃度0.1重量%にて溶解させてカラムとしてSHODEX LF-804を用い、GPCによりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mwは表1の通りであった。
【0092】
(合成例2)
撹拌機、冷却器、温度計、湯浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコを用意した。2Lセパラブルフラスコにメタクリル酸イソブチル(iBMA)60重量部及びメタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)20重量部を添加した。更に、メタクリル酸n-ブチル(BMA)20重量部を加えた。更に、有機溶剤として酢酸ブチル10重量部を混合し、モノマー混合液を得た。
モノマー混合液に窒素ガスをバブリングして溶存酸素を除去した後、湯浴によってフラスコ内温が80℃になるように昇温した。重合開始剤としてラウリルパーオキサイド2.0重量部を数回に分けて添加し、6時間後、重合を終了させた。樹脂固形分は90.9重量%であった。
【0093】
(合成例3)
iBMAの添加量を40重量部、nBMAの添加量を60重量部とした以外は合成例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を作製した。
【0094】
(合成例4)
iBMAの添加量を40重量部とし、2EHMAを添加せず、nBMAの添加量を60重量部とした以外は合成例2と同様にして(メタ)アクリル樹脂を作製した。
【0095】
(実施例1)
バインダー樹脂(A)として合成例1で得られた(メタ)アクリル樹脂10.0重量部、脱バインダー助剤(D)として無水コハク酸2.0重量部を溶剤(C)としてのテルピネオール38.0重量部に投入し、高速撹拌機を用いて均一に溶解させた。更に、無機粒子(B)としてリチウム硫黄系ガラス粉末Li10GeP2S12(LGPS、平均粒子径10μm)50.0重量部を添加し、3本ロールミルを用いて無機粒子を分散させ無機粒子分散スラリー組成物を得た。
【0096】
得られたスラリー組成物について、スクリーン印刷機を用いてセラミック板上に5cm角の印刷像を印刷し、120℃に設定した送風オーブンで30分間乾燥させ、印刷基板を得た。
内温280℃に設定して内部を窒素ガスで置換した電気炉内で得られた印刷基板を60分間熱処理し、脱脂を完了させて焼成基板を得た。
【0097】
(実施例2)
無機粒子(B)としてLi2S-P2S5ガラス粉末(平均粒子径10μm)50.0重量部と溶剤(C)として酢酸ブチル38.0重量部とを混合し密閉型ビーズミル装置を用いて無機粒子(B)を2時間攪拌した。その後、バインダー樹脂(A)として合成例2で得られた(メタ)アクリル樹脂10.0重量部、脱バインダー助剤(D)として無水マレイン酸2.0重量部を添加し、更に3時間攪拌して無機粒子分散スラリー組成物を得た。
【0098】
得られたスラリー組成物について、ダイコーターを用いてインジウム基板上に印刷し、120℃に設定した送風オーブンで30分間乾燥させ、印刷基板を得た。
内温280℃に設定して内部を窒素ガスで置換した電気炉内で得られた印刷基板を60分間熱処理し、脱脂を完了させて焼成基板を得た。
【0099】
(実施例3~5、比較例1、3、4、6)
表1に記載の配合となるようにした以外は実施例1と同様にして無機粒子分散スラリー組成物、焼成基板を得た。
なお、無機粒子(B)としてNd2Fe14B(平均粒子径5μm)を用いた実施例3~5、比較例3では、電気炉の内温を300℃に設定して脱脂した後、更に、窒素雰囲気下、700℃で1時間焼成して焼成基板を得た。
【0100】
(実施例6~8、比較例2、5、7)
表1に記載の配合となるようにした以外は実施例2と同様にして無機粒子分散スラリー組成物、焼成基板を得た。
なお、無機粒子(B)としてSm2Fe17N3(平均粒子径5μm)を用いた実施例6、7、比較例5では、電気炉の内温を300℃に設定して脱脂した後、更に、窒素雰囲気下、400℃で1時間焼成して焼成基板を得た。
また、無機粒子(B)としてGaN(平均粒子径3μm)を用いた実施例8、比較例7では、電気炉の内温を300℃に設定して脱脂した後、更に、窒素雰囲気下、1100℃で2時間焼成して焼成基板を得た。
【0101】
(比較例8)
表3に記載の配合となるようにした以外は実施例1と同様にして無機微粒子分散スラリー組成物を得た。
得られたスラリー組成物について、ダイコーターを用いてインジウム基板上に印刷し、120℃に設定した送風オーブンで30分間乾燥させ、印刷基板を得た。
内温300℃に設定して乾燥空気雰囲気の電気炉内で得られた印刷基板を60分間熱処理し、脱脂を完了させて焼成基板を得た。
【0102】
(実施例9、比較例9)
表3に記載の配合となるようにした以外は実施例2と同様にして無機粒子分散スラリー組成物、焼成基板を得た。
【0103】
(実施例10、比較例10)
表3に記載の配合となるようにした以外は実施例3と同様にして無機粒子分散スラリー組成物、焼成基板を得た。
【0104】
(比較例11)
表3に記載の配合となるようにした以外は実施例6と同様にして無機粒子分散スラリー組成物、焼成基盤を得た。
【0105】
(評価)
得られたスラリー組成物、焼成基板について以下の評価を行った。結果を表2、表4に示した。
【0106】
(1)粘度
得られたスラリー組成物について、作製直後、25℃での粘度をB型粘度計を用いて測定した。また、作製後2週間静置した後、25℃での粘度を同様に測定した。更に、作製直後と2週間経過後との粘度を用いて下記式により粘度変化率を算出し、以下の基準で評価した。なお、粘度変化率が小さいと貯蔵安定性に優れるといえる。
粘度変化率(%)=|(2週間後の粘度-作製直後の粘度)/(作製直後の粘度)|×100
〇:粘度変化率が20%未満であった。
×:粘度変化率が20%以上であった。
【0107】
(2)印刷性
印刷基板上の印刷像を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
〇:掠れ、滲み等がなく良好であった。
×:掠れ、滲み等の不良が確認された。
【0108】
(3)残留炭素
得られた焼成基板を粉砕し、高周波誘導加熱炉燃焼-赤外線吸収法により得られたCO量、CO2量から残留炭素量を測定し、以下の基準で評価した。
〇:残留炭素量が200ppm以下であった。
×:残留炭素量が200ppm超であった。
【0109】
(4)含有酸素
得られた焼成基板について、酸素・窒素分析装置EMGA-920を用いて含有酸素量を測定し、以下の基準で評価した。
〇:含有酸素量が0.2重量%未満であった。
×:含有酸素量が0.2重量%以上であった。
【0110】
(5)断面観察
得られた焼成基板の断面をSEMを用いて観察し、以下の基準で評価した。なお、焼結基板中のボイドは樹脂の分解に起因するものと考えられ、ボイドが少ない場合、より信頼性の高い電子部品を得ることができるといえる。
〇:ボイドが確認されなかった。
△:ボイドが1個以上10個未満確認された。
×:ボイドが10個以上確認された。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明によれば、貯蔵安定性、印刷性に優れるとともに、低温でも脱バインダー処理を促進することができ、無機粒子の酸化を抑制することができ、焼成後の残留炭素が少なく焼結性に優れ、信頼性の高い電子部品を得ることができる無機粒子分散スラリー組成物を提供することができる。また、該スラリー組成物を用いた無機焼結体の製造方法を提供することができる。