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特許7579486基材に形成された透明窓を備える機密文書
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】基材に形成された透明窓を備える機密文書
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/29 20140101AFI20241030BHJP
   B42D 25/351 20140101ALI20241030BHJP
【FI】
B42D25/29
B42D25/351
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024521143
(86)(22)【出願日】2023-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2023059177
(87)【国際公開番号】W WO2023213495
(87)【国際公開日】2023-11-09
【審査請求日】2024-04-08
(31)【優先権主張番号】102022111099.0
(32)【優先日】2022-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014188
【氏名又は名称】ケーニッヒ ウント バウアー アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Koenig & Bauer AG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Koenig-Str. 4, 97080 Wuerzburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルノー クラッス
(72)【発明者】
【氏名】ロベール ステュアート
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト スティーアマン
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/087138(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/011249(WO,A2)
【文献】米国特許第10766293(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2018/196980(US,A1)
【文献】特開2014-046667(JP,A)
【文献】特開2013-095032(JP,A)
【文献】特開2010-111072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00-25/485
B42D 15/02
B41M 3/14
G07D 7/00- 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(26)に形成された透明窓(04)を備える機密文書(02)であって、少なくとも前記透明窓(04)の領域において前記基材(26)の一方の側には、複数のマイクロレンズ(11)から成るマイクロ光学構造(03)が配置されており、該マイクロ光学構造(03)に向いている側とは反対の側の、前記基材(26)の他方の側には、少なくとも前記透明窓(04)の領域に第1の印刷画像(27)が配置されており、該第1の印刷画像(27)は、点状または線状の網目スクリーン内に複数の画像要素(28a~28j)を有しており、該画像要素(28a~28j)の画素サイズ(38)または線太さ(38)はそれぞれ、前記マイクロ光学構造(03)内に配置された前記マイクロレンズ(11)のレンズ幅(18)よりも小さく形成されており、前記第1の印刷画像(27)の、前記マイクロ光学構造(03)に向いている側とは反対の側における一部に、該第1の印刷画像(27)を被覆するように面状に広げられた層(39)が配置されており、前記第1の印刷画像(27)の一部を被覆する前記層(39)の、前記マイクロ光学構造(03)に向いている側とは反対の側に、第2の印刷画像(41)が配置されている機密文書(02)において、
該第2の印刷画像(41)は、前記第2の印刷画像(41)を、折曲げ線(07)において折畳みが実施された後に、当該機密文書(02)の前記基材(26)の他方の側に被着された前記マイクロ光学構造(03)と位置を重ね合わせることが可能になるように、前記第1の印刷画像(27)の一部を被覆する前記層(39)に配置されており、位置を重ね合わせることにより、前記第2の印刷画像(41)または前記第2の印刷画像(41)に含まれる少なくとも1つの情報が、前記マイクロ光学構造(03)の側の方向からの観察において可視かつ/または識別可能になることを特徴とする機密文書(02)。
【請求項2】
前記第1の印刷画像(27)の前記画像要素(28a~28j)は、白色とは異なる色調で形成されており、前記第1の印刷画像(27)の一部を被覆する前記層(39)は、前記第1の印刷画像(27)を成す、少なくとも1つの白色とは異なる色調よりも明るい色調から成ることを特徴とする請求項1に記載の機密文書(02)。
【請求項3】
前記折曲げ線(07)は、前記第1の印刷画像(27)の一部を被覆する前記層(39)から離間されて配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【請求項4】
前記折曲げ線(07)は、前記第1の印刷画像(27)上に配置された前記層(39)が被覆していない前記第1の印刷画像(27)の部分に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【請求項5】
前記基材(26)の、前記マイクロ光学構造(03)に向いている側とは反対の側に配置された前記第1の印刷画像(27)は、オフセット印刷法で作成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【請求項6】
前記第1の印刷画像(27)の一部を被覆する前記層(39)は、インクジェット印刷法で作成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【請求項7】
前記第1の印刷画像(27)の一部を被覆する前記層(39)は、オフセット印刷法で作成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【請求項8】
前記第1の印刷画像(27)の一部を被覆する前記層(39)は、スクリーン印刷法で作成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【請求項9】
前記基材(26)の、前記マイクロ光学構造(03)に向いている側とは反対の側に配置された前記印刷画像(27)は、重畳印刷から成るか、またはそれぞれ異なる印刷インクで印刷された複数の部分印刷画像の重畳から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【請求項10】
目視方向において前記マイクロ光学構造(03)の下に配置された前記印刷画像(27)の複数の画像要素(28a~28j)は、複数の異なる印刷モチーフに属すように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【請求項11】
前記マイクロ光学構造(03)は、レンズアレイとしてまたはレンチキュラーとして形成されており、前記レンズアレイまたは前記レンチキュラーは、それぞれ複数の平凸のマイクロレンズ(11)から成り、該マイクロレンズ(11)は、レンズアレイの場合には、回転対称に球面状または非球面状に形成されており、レンチキュラーの場合には、軸線対称に棒状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【請求項12】
記基材(26)が繊維を含む印刷材料またはポリマーフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【請求項13】
当該機密文書(02)は、紙幣として形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機密文書(02)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、基材に形成された透明窓を備える機密文書に関する。
【0002】
米国特許出願公開第20180196980号明細書に基づき、セキュリティ基材が公知であり、このセキュリティ基材は、以下の、第1および第2の表面を備えたポリマー基材と、ポリマー基材の第1の領域にわたる、表面レリーフの形態の集束素子の配置であって、表面レリーフは、透明な基層の表面において画定されており、透明な基層は、ポリマー基材またはその上に構成された層を含む、集束素子の配置と、透明な基層上でポリマー基材の第2の領域にわたり構成された光学適合層であって、第2の領域は、少なくとも第1の領域を取り囲んでおり、光学適合層は、透明な基層の表面レリーフと接触する第1の表面と、反対側に位置する、可視光を集束させるために有効ではないプロファイルを備えた第2の表面と、を有しており、光学適合層は、集束素子の配置の第1の下部領域にわたり延在する第1の透明材料を含み、第1の下部領域は、第1の領域全体または第1の領域の一部のみを含み、第1の透明材料は、透明な基層とは異なる屈折率を有しており、配置の第1の下部領域における集束素子は、機能性集束素子であり、光学適合層とポリマー基材の第3の領域にわたり構成された、反射性かつ/または非透明の材料を含む少なくとも1つの第1のマスキング層を含み、第3の領域は、少なくとも1つのギャップを第1のマスキング層に画定しており、ギャップは、第1の下部領域の少なくとも一部を取り囲むことにより、配置の機能性集束素子が、少なくとも1つのギャップにより露になる。
【0003】
米国特許出願公開第20190232708号明細書に基づき公知のセキュリティ装置は、少なくとも1つの第1の方向において規則的な周期性を有する集束素子の配置であって、各集束素子は、観察角度に応じて異なる部分が観察者に向けられる光学的なフットプリントを有している、集束素子の配置と、少なくとも第1の方向における規則的な周期性を有しており、集束構造の配置に重畳している画像要素の配置であって、画像要素は、少なくとも2つの各画像の部分を表しており、各画像の少なくとも1つの画像要素は、各集束構造の光学的なフットプリント内に位置している画像要素の配置と、を含み、セキュリティ装置は、第1の領域と、第1の領域から横方向にずらされた第2の領域と、を取り囲んでおり、第1の領域内の画像要素は、横方向において少なくとも第1の方向に、第2の領域内の画像要素に対して相対的に移動させられていることにより、第1の観察角度の場合には、装置の第1の領域において集束構造が、第1の画像に相応する画像要素を観察者に伝えることで、第1の画像が装置の第1の領域にわたり表示されると同時に、装置の第2の領域において集束構造が、第2の画像に相応する画像要素を観察者に伝えることにより、第2の画像が装置の第2の領域にわたり表示されることになり、第2の観察角度の場合には、第2の画像が装置の第1の領域にわたり表示されると同時に、第1の画像が装置の第2の領域にわたり表示されることになり、セキュリティ装置はさらに、画像要素と観察者との間のインサート内に位置するカラーフィルタを含み、カラーフィルタは、集束素子の配置の少なくとも一部と、画像要素の配置と、に重畳しており、カラーフィルタは、第1の色を装置の第1の領域に有しており、かつ別の色を装置の第2の領域に有することにより、装置の第1および第2の領域それぞれにおける第1および第2の画像の発色は異なっている。
【0004】
欧州特許出願公開第2493700号明細書に基づき、セキュリティ装置を製造する方法が公知であり、この方法は以下の、透明基材の一方の側にレンズ状の集束素子の配置を準備するステップと、透明基材の他方の面に、対応する、複数組の画像ストリップの配置を準備するステップとを含み、画像ストリップとレンズ状の集束素子とは、レンズ状の装置を画定しており、これにより、異なる観察方向において、対応する各組の画像ストリップが、各レンズ状の集束素子を介して観察される。
【0005】
国際公開第2011/107783号に基づき公知の機密文書は、互いに離間された少なくとも2つの透明なまたは透き通った窓を備えた文書基材と、透明基材を有する装置と、を含み、透明基材は、i)第1の表面において焦点面を規定する、マイクロ集束素子の均一な配置と、ii)対応する、実質的に集束素子の焦点面と一致する平面内に位置する第1の色のマイクロ画像要素の第1の配置と、iii)対応する、実質的に集束素子の焦点面と一致する平面内に位置する第1の色とは異なる色のマイクロ画像要素の第2の配置と、を支持しており、マイクロ集束素子と、マイクロ画像要素の第1および第2の配置と、のピッチならびにこれらの相対位置は、マイクロ集束素子の配置とマイクロ画像要素の第1および第2の各配置とが協働することにより、各配置のマイクロ画像要素のそれぞれの拡大バージョンがモアレ効果に基づき発生するようになっており、マイクロ画像要素の第1の配置の少なくとも1つの区間は、第2の配置と重畳しておらず、マイクロ画像要素の第2の配置の少なくとも1つの区間は、第1の配置と重畳しておらず、装置は、文書基材に組み込まれているか、または少なくとも2つの窓と整列するように適用されており、装置は、文書基材に関して、第1のマイクロ画像要素配置の拡大バージョンを、2つの窓のうちの第1の窓を介して見ることができ、第2のマイクロ画像要素配置の拡大バージョンを、2つの窓のうちの第2の窓を介して見ることができるように見当合わせされており、2つのマイクロ画像要素配置の間の移行部は、2つの窓の間の文書基材により覆い隠されている。
【0006】
独国特許発明第112010000957号翻訳文に基づき、物体面における複数の画像要素を結像させるレンズアレイが公知であり、このレンズアレイは、一方の側に画像要素を備えた透明または半透明の材料の反対側に配置されて形成された複数のマイクロレンズを含み、レンズアレイは、各マイクロレンズの頂点から物体面までの距離に相当するゲージ厚さを有しており、各マイクロレンズは、一組のレンズパラメータを有しており、ゲージ厚さおよび/または少なくとも1つのレンズパラメータは、各マイクロレンズが、物体面における画像要素のサイズと実質的に等しいか、または画像要素のサイズと所定の寸法だけ異なる、物体面における焦点サイズを有するように最適化されている。この場合、レンズアレイのゲージ厚さは、好適には全てのマイクロレンズの焦点距離よりも小さい。画像要素は、例えば点または線の形状をとることができる。独国特許発明第112010000957号翻訳文に記載されたレンズアレイは、当該マイクロレンズ内に画像要素に向かって入射する光の円錐または角度範囲内で、当該マイクロレンズの主平面に対して平行に位置する断面内に、相並んで配置された画像要素のうちの単一の画像要素だけが常に配置されているように形成されており、これにより、特定の観察角度で印刷画像を観察する観察者にとって、特定の時点において常に単一のフレームのみを知覚することができるようになっている。
【0007】
本発明の根底を成す課題は、基材に形成された透明窓を備える機密文書を提供することにある。
【0008】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する機密文書により解決される。従属請求項には、見いだされた解決手段の有利な構成および/または改良が示されている。
【0009】
図面には1つの実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】光学結像構造を有するセキュリティ素子を備えた機密文書を示す図である。
図2】少なくとも1つの印刷画像と、光学結像構造内に組み込まれ、第1の観察角度から光が入射する単一の平凸マイクロレンズと、を有するアレイの大幅に拡大された断面図である。
図3】第2の観察角度から光が入射する、図2に示した配置を示す図である。
図4】自己認証手段を備えた機密文書を示す図である。
図5】コントラストを強調する裏側を備える機密文書を示す図である。
図6】コントラストを強調する裏側と、自己認証手段と、を備える機密文書を示す図である。
図7】特に図5または図6に示した機密文書を製造する印刷機の簡略化された概略図である。
【0011】
光学において「レンズ」という用語は、光の光路内に配置された少なくとも1つの光屈折表面を備えた、光に対して透過性の構成素子を指す。ここで、光という用語は、人間の目に見える電磁放射線の部分を意味する。電磁スペクトル内で、光の範囲は、約380nm(紫)~780nm(赤)の波長を含む。以下では、集束レンズ、つまり入射光を集束させるレンズ、とりわけ平凸に形成されたレンズが基礎となる。好適な構成形式は、一方では球面状または非球面状に形成された回転対称のレンズであり、かつ他方では棒状に形成された軸線対称のレンズであり、当該レンズの各対称軸線と光軸とは、それぞれ一致して延びている。つまり光軸は、通常は凸レンズ表面の曲率中心点を通って延びる直線である。平坦なレンズ表面の場合には、光軸は、このレンズ表面に対して垂直である。光屈折性の例えば凸表面の曲率は、その曲率半径により示され、曲率半径は、その原点を光軸上に有している。平坦なレンズ表面は、無限に大きな曲率半径により規定されている。
【0012】
棒状のレンズは、それぞれその棒長さの形状において、2等分された直線的な円筒または楕円形の円筒のように形成されており、このようなレンズの各対称軸線は、各棒長さに対して直交して延びている。球面状に形成されたレンズの場合には、光屈折表面は、球の表面の一部として、つまり例えば球冠の形態で形成されている。非球面状に形成されたレンズは、球形または平坦な形状とは異なる少なくとも1つの光屈折表面を有している。回転対称の非球面状の面の形状は、通常、円錐断面(円、楕円、放物線、双曲線)に高次の変形に対する補正多項式を加えたものとして示される。
【0013】
レンズは、光の光路と交差する2つの表面、いわゆる包絡面を有しており、光束に関する定義上、平凸に形成された集束レンズへの光入射は、その都度凸状に湾曲した包絡面において行われ、このレンズからの光出射は、その平坦な包絡面において行われる。これらの包絡面はそれぞれ、光がそれぞれ伝播する異なる媒体間の境界面である。これらの媒体のうちの一方は、当該レンズの物質、すなわち構成材料により形成される。少なくとも1つの他方の媒体は、当該レンズが位置している、通常は空気で満たされた空間である。光の光路内に配置された媒体のうちの少なくとも2つにおいて、少なくともそれぞれの光学的な材料特性が互いに異なるため、光は、これらの互いに境を接する媒体の間の境界面において屈折される。つまり、各レンズの包絡面のうちの少なくとも1つにおいて、特にレンズの湾曲した包絡面において、それぞれ光の屈折が生じる。光の屈折と関連する光学的な材料特性は、当該媒体の各屈折率により表される。屈折率は、当該媒体中の光の波長と位相速度とが真空中に比べて小さくなる率を示す無次元の物理量である。1つの共通の境界面を形成する、それぞれ異なる屈折率を有する2つの媒体のうち、より高い屈折率を有する媒体は、光学的により高い屈折率と呼ばれる。逆分散率とも呼ばれるアッベ数は、レンズの光学的な分散特性を特徴付ける無次元量であり、光の波長により、レンズの屈折率がどの程度大きく変化するかを示す。当該レンズを介して観察される物体から光学画像を形成することができるレンズの特性は、各レンズの材料の屈折率と、それぞれ異なる媒体間で境界面を形成するレンズの包絡面の形状と、に依存する。
【0014】
この構成素子において当該レンズの対称軸線に対して直交して配置された平面は、レンズの主平面と呼ばれる。対称軸線に沿って位置する最大延在長さ、すなわちレンズの厚さが、その凸状包絡面の曲率半径よりも極めて小さいと見なされる薄いレンズの場合、凸状包絡面の曲率半径がこの厚さよりも例えば少なくとも5倍大きいことから、当該レンズの特性を評価することにおいて単一の主平面のみを仮定したとしても、大抵は十分な精度を得られる。平凸レンズの場合、この主平面は平坦なレンズ表面と一致する。レンズの焦点距離は、当該レンズの主平面とそのフォーカス(焦点)との間の間隔であり、レンズの焦点とは、互いに平行にレンズに入射し、このレンズにより集束される複数の光線の交点を意味する。この場合、互いに平行にレンズに入射する光線は、必ずしもレンズの光軸に対して平行には入射せず、当該レンズの主平面に対して任意の、特に鋭角の入射角度で入射する。焦点内に光軸に対して直交して配置された平面は、フォーカス面または焦点面と呼ばれる。
【0015】
当該レンズの、光入射に用いられる包絡面は、その光軸に対して軸対称に、それぞれ反対の側に位置し、この包絡面を画定する、例えばこのレンズの主平面内に位置する2つの境界点を有しており、これら2つの境界点の距離が、当該レンズの幅を決定する(=レンズ幅)。レンズの開口または開口幅は、光線が支障なく受光され得るレンズの開いた開口またはその直径を表し、最大でレンズ幅に相当する。光軸と、当該レンズの光入射に用いられる包絡面との交点に位置する点は、頂点と呼ばれる。頂点は、光入射に用いられる包絡面において、このレンズの焦点から最も遠くに配置されている。
【0016】
回転対称の、球面状または非球面状に形成されたレンズは、入射する光を、円錐形またはコーン形に集束させ、この円錐またはコーンの底面の直径は、最大でレンズ幅に相当し、かつこの円錐またはコーンの底面に対して垂直に延在する高さは、当該レンズの焦点距離に相当する。軸線対称の、棒状に形成されたレンズは、入射する光を、鋭角の角度範囲内で集束させ、この角度範囲の原点は、このレンズの焦点に位置する。開口数は、レンズの光を集束させる能力を表す。開口数は、焦点に形成可能な光点の最小の大きさを決定するものであり、ひいては分解能を制限する重要な値である。
【0017】
正方形または六角形の格子セルから成る、好ましくは均一な格子内に、特にそれぞれ隙間なく重畳せずに配置された、それぞれ回転対称の、球面状または非球面状に形成された複数のレンズは、レンズアレイとも呼ばれる1つのレンズ群を形成する。それぞれその棒長さに対して直交して、やはり好適にはそれぞれ隙間なく重畳せずに相接して並べられた、それぞれ軸線対称の、棒状に形成された複数のレンズは、レンチキュラーとも呼ばれる1つのレンズ網目スクリーンを形成する。1つの格子状のレンズ群および/または1つのレンズ網目スクリーン内に配置された複数のレンズは、それらの各結合群においてそれぞれ、平面または湾曲面にわたり延在する、幾何学的な図形の形態の光学結像構造を形成する。光学結像構造の面は、任意の輪郭、例えば矩形、円形、楕円形または多角形の輪郭を有していてよい。幾何学では、幾何学的な図形は点集合からなると解釈される。光学結像構造に関して、幾何学的な図形を形成する点の少なくとも1つの部分集合あたりに、それぞれ1つのレンズが配置されている。
【0018】
光学結像構造では、1つまたは複数の、それぞれ格子状のレンズ群のみ、または1つまたは複数の、それぞれレンズ網目スクリーン内に配置されたレンズのみが配置されていてもよいし、またこれら両方のレンズアレイが、それぞれ別のレンズアレイと一緒に混合されて配置されていてもよいため、同一の光学結像構造内には、格子状のレンズ群と、レンズ網目スクリーン内に配置されたレンズと、が共に配置されていてもよい。当該光学結像構造に形成された複数のレンズ網目スクリーンは、例えばそれぞれ異なる向きを有していてもよく、この場合、当該レンズ網目スクリーンのそれぞれの向きは、当該レンズ網目スクリーンの構造に関与するレンズの棒長さの各方向により定められている。
【0019】
マイクロレンズは、従来のレンズの小型化された形態である。マイクロレンズという用語は、ここでは、レンズ幅が100μm未満であり、好適には20μm~65μmの範囲にあるレンズを意味する。マイクロレンズは、例えば100μm未満、好適には最大で95μmの焦点距離を有している。マイクロレンズは、今日では工業的に製造可能である。プラスチックまたは樹脂から成るマイクロレンズは、例えば(射出)注型法または(射出)エンボス加工法または印刷法を用いて製造され得る。マイクロレンズから成る光学結像構造は、マイクロ光学構造とも呼ばれる。
【0020】
特にマイクロレンズから形成された光学結像構造が、この光学結像構造が、例えば印刷画像を有する基材に被着されるかもしくは被着されていることにより、好適には面状に形成された印刷画像と共に組み合わせられて配置されるかもしくは配置されている場合には、光学結像構造を介して印刷画像を観察する観察者に対して様々な効果が生ぜしめられる。つまり、少なくとも1つの印刷画像と少なくとも1つの光学結像構造とから成るアレイは、例えばいわゆる切替え画像もしくは揺動画像(フリップ)および/または立体的な、すなわち三次元的な効果および/またはモーフィング効果および/またはズーム効果および/またはアニメーションを生ぜしめることができる。これらの効果は、観察者が印刷画像を異なる観察角度で交互に観察した場合、観察者にとって、光学的な補助手段なしで知覚可能である。観察者に異なる観察角度によって示される知覚画像は、レンチキュラー画像とも呼ばれる。
【0021】
通常は面状の印刷画像は、好適には2次元に形成された基材に、例えば工業的な製造プロセスで、好適には印刷機により形成される。基材は、例えば印刷材料ウェブまたは印刷シートとして形成されている。印刷画像は、例えば点状または線状の網目スクリーンで基材に被着される。したがって印刷画像は、例えば複数の、特に多数の画素および/または線から成る。この場合、画素サイズまたは線太さは、100μm未満、好適には50μm未満、特に20μm未満の範囲内、例えば約5μm~10μmの範囲内にある。以下では、光学結像構造と一緒に用いられる印刷画像の形成にそれぞれ関与する画素の画素サイズおよび/または線の線太さは、例えばそれぞれ最大で、当該光学結像構造の構造に関与するレンズの各レンズ幅に比べて同じ大きさであり、好適にはより小さく、特に1/2未満の大きさであることを想定する。
【0022】
光学において、微細な構造の識別能力、つまり、例えば2つの画素または2つの線が、これらを別個の画素または線として知覚することができるようにするために互いに有する必要がある最小間隔を、分解能と呼ぶ。肉眼の分解能は、人ごとに異なる。正視の成人は、25cmの距離において大抵は、150μmの間隔の構造をなお識別することができる。これは、約2分角の視角に相当し、このことは、角度分解能と呼ばれる。コントラストが弱いと、人間の目の視力は著しく低下し、この場合、視力は、分解能の逆数を表す。よってマイクロレンズのレンズ幅は、一般に正視の成人の肉眼の分解能よりも小さい。
【0023】
色付きの印刷画像を形成するには、基材に複数の印刷インクが印刷され、もしくは印刷されており、例えば基材上に、一次色と呼ばれる印刷インクである赤、緑、青および場合により黒の印刷インクが形成されている。印刷画像は通常、当該印刷画像の様々な位置に配置された複数の小面積の画像要素の配置から成り、各画像要素は、好適には複数の画素または線を有しており、通常、100μm未満の長さにわたり延在している。各画像要素または隣り合う画像要素群は、例えばレンズを介して観察すべき対象を形成する。個々の画像要素は、1つの印刷画像内に、通常はこの印刷画像の情報含有量を決定する印刷モチーフを形成するように配置されている。マイクロレンズと共に使用される個々の画像要素は、その限定的な、通常は不十分な分解能のため、人間の肉眼によってその一単位を知覚することは通常できない。人により知覚される印刷画像またはこの印刷画像の少なくとも一部の色印象は、観察者の眼および脳において行われる、当該画像要素においてそれぞれ異なる印刷インクで印刷された画素および/または線の加色混合により生じる。各2つの一次色の重畳により、二次色と呼ばれるイエロー、シアンおよびマゼンタの色印象が生じる。3つの一次色を全て重畳させることにより、ホワイトの色印象が生じる。互いに相対的に配置された、それぞれ異なる印刷インクの画素および/または線の色見当、すなわち適合保持、すなわち適合精度は、ここで考察する本発明の実施例では、それぞれ20μm未満、好適には10μm未満であり、特に約5μmの範囲内にある。
【0024】
ここで考察する本発明の実施例に関連して設けられた光学結像構造は、好適には複数の異なる印刷インクの画素および/または線の組み合わせとして配置されている。印刷画像は、好適には複数の部分印刷画像の重畳として形成されているか、または複数の部分印刷画像の重畳により製造され、複数の部分印刷画像、または好適には各部分印刷画像は、例えば別の印刷インクで印刷されている、もしくは印刷される。この場合、重畳は、基材に対する連続的な重畳印刷により、または好適には部分印刷画像を印刷部材に、例えば胴に集め、かつ同時に基材に転移させることにより生ぜしめられていてよいか、もしくは生ぜしめられてよい。部分印刷画像自体は、それぞれ画素および/または線から成り、これらの画素の画素サイズおよび/または当該線の線の太さは、それぞれマイクロメートル範囲内にあり、例えば20μm未満の範囲内にある。印刷画像を観察する観察者の場合、この観察者の知覚において、この印刷画像に関与する複数の部分印刷画像が重畳して、例えば1つのカラーの全体印象を形成する。
【0025】
少なくとも1つの印刷画像と少なくとも1つの光学結像構造とから成る配置により、印刷画像を観察する観察者は、様々な観察角度で複数の異なる個別画像を知覚することができ、観察者の知覚において連続する個別画像により、切替え画像もしくは揺動画像(フリップ)および/または立体的な、すなわち三次元的な効果および/またはモーフィング効果および/またはズーム効果および/またはアニメーションが生ぜしめられる。これらの個別画像のそれぞれは、フレームとも呼ばれる。観察者によりそれぞれ所定の観察角度で知覚可能な個別画像は、マイクロレンズの各位置において、そこにある少なくとも1つの画像要素またはそこにある複数の画像要素に基づき知覚可能な部分印刷画像の集合から、光学結像構造により決定される選択に基づき生じ、印刷画像の位置に関する色の全体印象は、この位置に存在する知覚可能な全ての部分印刷画像の重畳により生ぜしめられる。したがって、印刷画像と組み合わせられて配置された光学結像構造は、光学結像構造の面と重なり合うように配置された、当該印刷画像に関与する部分印刷画像の光学的なマスキングである。
【0026】
印刷画像を観察する観察者にとって、その都度特定の観察角度でその都度複数のフレームが同時に知覚可能にすることにより、例えばより複雑なかつ/またはより細分化されたアニメーションを実現するために、例えば、1つの印刷画像と、複数の平凸マイクロレンズから成る光学結像構造と、を有する配置が使用され、この配置では、当該光学結像構造の少なくとも1つのマイクロレンズの下に相並んで、複数の、好適には4つ以上の、特に5~10の画像要素が配置されており、これらの画像要素は、当該マイクロレンズのレンズ幅の延在部とその焦点との間で、当該マイクロレンズの主平面に対して平行に位置する断面内に配置されており、この断面は、その都度当該マイクロレンズのレンズ幅を通り、相並んで配置された画像要素に向かって入射する光の円錐または角度範囲と交差するように配置されており、円錐または角度範囲の内側の断面内には同時に、互いに異なる複数の画像要素が相並んで配置されている。
【0027】
これにより、1つの印刷画像と、複数の平凸マイクロレンズから成る1つの光学結像構造と、を有する1つの配置が得られ、これらのマイクロレンズはそれぞれ、印刷画像に沿って好適には100μm未満のレンズ幅を有しており、印刷画像は、多数の画像要素を有しており、当該光学結像構造の少なくとも1つのマイクロレンズの下には、それぞれ複数の画像要素が配置されており、当該光学結像構造の少なくとも1つのマイクロレンズの下にそれぞれ配置されたこれら複数の画像要素は、レンズ幅に沿って相並んで配置されており、かつそれぞれレンズ幅の方向に、それぞれ当該レンズ幅よりも小さな長さにわたり延在しており、当該マイクロレンズのレンズ幅の延在部とその焦点との間で、その都度当該マイクロレンズのレンズ幅を通り、相並んで配置された画像要素に向かって入射する光の円錐または角度範囲内で当該マイクロレンズの主平面に対して平行に位置する断面内には同時に、それぞれ互いに異なる複数の、好適には少なくとも3つの、特に4つ以上の画像要素が相並んで配置されている。この配置により、印刷画像を観察する観察者にとって、その都度所定の観察角度でその都度複数のフレームが同時に知覚可能であり、これにより、複雑なかつ/または細分化されたアニメーション、ならびに相応に着色されて形成された画像要素の場合には滑らかな色遷移、および/または複数の画像要素から形成されたそれぞれ異なる印刷モチーフの場合には滑らかなフレーム遷移が生ぜしめられる。
【0028】
基材は、例えば繊維を含む印刷材料、特に紙、またはフィルム、好適にはポリマーフィルムである。基材は、不透明または透明に形成されていてよい。基材は、単層または多層に、特に部分的に多層に形成されていてよい。多層の基材のそれぞれ異なる層は、様々な材料から形成されていてよく、例えば1つの層は紙から形成されており、かつ別の層はポリマーフィルムから形成されていてよい。基材またはこの基材の少なくとも1つの層はそれぞれ、所定の材料厚さ、すなわち、例えば100μm未満、好適には50μm未満、特に約25μmの厚さを有している。基材上に形成された印刷画像は、例えば10μm未満、好適には5μm未満、特に1μm~2μmの範囲の層厚を有している。基材は、片面または両面に印刷されていてよい。
【0029】
印刷画像と光学結像構造とから成る配置は、本発明の好適な実施形態では、セキュリティ素子または文書、特に機密文書の構成要素である。これらの文書には、例えば紙幣、クレジットカード、小切手、有価証券、株券、パスポート、身分証明書、運転免許証、所有権証明書、航空券または鉄道乗車券等の旅行文書、入場券、研究資料、ならびに出生証明書、死亡証明書または婚姻証明書等の、その他の公的なまたは官公庁の証明書が含まれる。この列挙は例示的なものであるに過ぎず、完結してはいない。ただし、好適には紙幣のことである。
【0030】
図1には例示的に、その上にまたは内部に少なくとも1つのセキュリティ素子01が配置された文書02、特に機密文書02が示されている。文書02および/または当該セキュリティ素子01は、部分面または全面に、少なくとも1つの光学結像構造03を有しており、各光学結像構造03は、好適には複数のマイクロレンズ11から形成されたマイクロ光学構造03として形成されている。当該光学結像構造03は例えば、文書02に形成または被着された印刷画像27を少なくとも部分的に覆うように配置されている。
【0031】
図2には、特に図1に示したセキュリティ素子01または文書02のうちの一部として、マイクロレンズ11の一群または網目スクリーンに組み込まれた単一の平凸マイクロレンズ11を備えた配置が、大幅に拡大された断面図で例示的に示されている。当該マイクロレンズ11は、対称軸線12を有しており、この対称軸線12は同時に、このマイクロレンズ11の光軸12をも形成している。マイクロレンズ11は、回転対称に球面状または非球面状に形成されているか、または、例えば軸線対称に棒状に形成されていてよく、軸線対称に棒状に形成されたマイクロレンズ11において、対称軸線12は、その棒長さに対して直交して延びている。マイクロレンズ11は、例えば透明なプラスチックまたは樹脂から、射出技術または注型技術またはエンボス加工技術または印刷技術により製造されている。マイクロレンズ11は、光入射に用いられる凸状の包絡面13を有しており、例えば互いに平行な複数の光線14の束が、この包絡面13に入射する。マイクロレンズ11は、凸状の包絡面13の頂点37を通って延びる光軸12に対して軸線対称に互いに反対の側に位置する、凸状の包絡面13を画定する2つの境界点16;17を有しており、これら2つの境界点16;17の間隔が、レンズ幅18と呼ばれるこのマイクロレンズ11の幅を決定する。1つのマイクロレンズ11のレンズ幅18は、100μm未満である。凸状の包絡面13の2つの境界点16;17は、当該マイクロレンズ11の光軸12に対して直交して配置された、このマイクロレンズ11の主平面19とも呼ばれる1つの平面内に位置している。図2に示す実施例では、主平面19は、当該マイクロレンズ11の平坦な包絡面21を形成している。マイクロレンズ11の主平面19と、そのフォーカス23(焦点)と、の間の距離が、当該マイクロレンズ11の焦点距離22を形成しており、フォーカス23は、特にマイクロレンズ11に互いに平行に入射して集束された複数の光線14の交点である。1つのマイクロレンズ11の焦点距離22は、100μm未満である。フォーカス23において光軸12に直交するように配置された平面は、焦点面24と呼ばれる。
【0032】
図2に示す実施例では、マイクロレンズ11は、レンズアレイまたはレンズ網目スクリーンの一部であり、レンズアレイまたはレンズ網目スクリーン内には、任意の輪郭の所定の面積において、多数のマイクロレンズ11がそれぞれ好適には隙間なくかつ重畳することなしに配置されている。レンズアレイまたはレンズ網目スクリーンは、基材26上に配置されており、基材26は、例えば繊維を含み、透明窓を有する印刷材料、特に紙として、またはフィルムとして、好適には透明なポリマーフィルムとして形成されている。基材26は、例えば100μm未満、好適には50μm未満、特に約25μmの材料厚さ29もしくは厚さ29を有している。基材26は、好適にはセキュリティ素子01または文書02、特に機密文書02の一部である。基材26は、少なくとも各マイクロレンズ11の平坦な包絡面21により被覆された領域において、透明に形成されている。
【0033】
図2に示す実施例では、基材26の裏側に、すなわちこの基材26の、マイクロレンズ11に向いている側とは反対の側に、例えば10μm未満の小さな層厚さ36の印刷画像27が被着されており、この印刷画像27は、それぞれ互いに異なる多数の個別の画像要素28を有している。これらの個別の画像要素28は、極小面積に形成されており、レンズ幅18に対して平行に、数マイクロメートルにわたり、例えば最大10μmにわたり延在している。したがって、複数の、例えば10のこのような画像要素28a~28jを、マイクロレンズ11の平坦な包絡面21により被覆された領域内に、例えば隣り合うように相並べて配置することが可能である。これらの画像要素28a~28jのうちの少なくとも1つは、好適にはそれぞれ異なる印刷インクで印刷された画素および/または線を有しており、特に例えば隣り合って配置された画像要素28a~28jの数に応じて、画像要素28a~28jの各画素は画素サイズ38が、かつ/または画像要素28a~28jの線は線太さ38が、それぞれ数マイクロメートルの範囲内、好適には20μm未満の範囲内である。印刷画像27は、好適には重畳印刷から成るか、またはそれぞれ異なる印刷インクで印刷された複数の部分印刷画像の重畳から成る。マイクロレンズ11の平坦な包絡面21により被覆された領域に、すなわち当該マイクロレンズ11の下に特に互いに隣り合って配置された画像要素28a~28jは、好適にはそれぞれ異なる印刷モチーフに属している。
【0034】
当該マイクロレンズ11の下に例えば隣り合って配置された画像要素28a~28jは、有利には、マイクロレンズ11のフォーカス23よりもマイクロレンズ11の近くに配置されている。好適には、これらの画像要素28a~28jは、当該マイクロレンズ11とそのフォーカス23との間で、当該マイクロレンズ11の主平面19に対して平行に位置する断面31に配置されており、断面31は、その都度当該マイクロレンズ11のレンズ幅18を通って例えば隣り合って配置された画像要素28a~28jに向かって入射する光の円錐32または角度範囲32と交差するように配置されており、円錐32または角度範囲32の内側の断面31内には同時に、好適には画像要素28a~28jのうちの複数が相並んで配置されている。図2に示す実施例では、円錐32または角度範囲32の内側に、同時に例えば5つの画像要素28c~28gが相並んで配置されているのに対し、マイクロレンズ11の平坦な包絡面21により被覆された領域内に配置されたその他の画像要素28a、28bおよび28h~28jは、印刷画像27を観察している観察者にとって、入射する光線14に対応する例えば鋭角の第1の観察角度33では知覚することができない。印刷画像27を観察している観察者にとって、観察角度が、第1の観察角度33とは異なる例えば鈍角の第2の観察角度34に変化させられると、観察者にとって、観察者により知覚可能な画像要素28a~28jも変化する。このことは、図2と同様に、印刷画像27と、複数の平凸マイクロレンズ11から成る光学結像構造03と、を備えた同一の配置を有する図3に示されている。第1の観察角度33とは異なる第2の観察角度34に基づき、図3に示す実施例では、印刷画像27を観察している観察者にとって画像要素28d~28hのみが知覚可能であるのに対して、その他の画像要素は知覚不能である。
【0035】
説明したように、図2および図3に示す、個別のマイクロレンズ11の平坦な包絡面21により被覆された領域に配置された画像要素28a~28jは、好適にはそれぞれ、異なる印刷インクで印刷された画素および/または線により形成される。通常、当該画素の各画素サイズ38および/または当該線の各線太さ38はそれぞれ、当該マイクロレンズ11のレンズ幅18よりも大幅に小さく、好適には数マイクロメートルの範囲内、特に20μm未満の範囲内で形成されている。特に、これらの画像要素28a~28jを含む印刷画像27を機械可読式に形成するために、これらの画像要素28a~28jのうちの少なくとも1つは、印刷に際してそれぞれ特別な印刷流体、特にインクが使用される画素および/または線を有しており、これらの印刷流体は、その光学特性において、一般的な印刷流体、特に一般的な印刷インクまたはインクとは異なっている。これらの特別な印刷流体は、例えば人間の目に見える電磁スペクトルの外側に位置する励起なしに、正視の観察者の人間の肉眼では不可視のインク、特に赤外線を吸収するインク、または赤外線を反射するインク、または赤外線を可視に変換するインク、または紫外線により蛍光発光するインク、または磁気インクである。これらの、特に昼光条件下では不可視のインクは、相応の励起により、その他の印刷インクと同様に様々な色調で、例えば青色、緑色または赤色の色域において知覚可能になり得る。この励起は、好適には電磁的な励起または磁気的な励起である。
【0036】
インクという用語は、本明細書では、大抵は水または別の溶媒に溶解または分散した色素から成る、強力に着色された着色液体を意味し、これらの溶媒は、バインダを含まないか、または墨として形成されたインクの場合には、少量のバインダを含んでいる。色素は、色を付ける物質、例えば顔料および染料であり、無機的または有機的に、自然にまたは人工的に製造されていてよい。これに対して、印刷インクは、色素を含む混合物であり、印刷版を介して基材、すなわち印刷材料に転移される。印刷インクは、無機顔料および有機顔料、例えば白色顔料としての二酸化チタン、または黒色顔料としてのカーボンブラック、ならびに顔料を包むバインダを含む。従来の印刷インクも、昼光条件下で人間の目には不可視のインクを含むインクも、印刷流体という用語に包含され得る。
【0037】
赤外線(IR)に反応する上述の特別なインクは、例えば近赤外領域(NIR)の電磁放射線に関連して使用され、好適には、780nm~2000nmの範囲、特に780nm~1200nmの範囲の波長を有する放射線が使用される。赤外線(IR;NIR)に反応するインクは、エネルギ吸収後に可視スペクトル領域および/または赤外領域(NIR)の放射線を放出する、例えば無機の、通常は顔料状の発光団を含む。赤外線を可視に変換するインクは、いわゆるアンチストークス顔料を含む。
【0038】
紫外線、略してUVまたはUV線は、人間の目には不可視であり、可視光よりも短い波長を有する電磁放射線である。紫外線のスペクトルは、広く受け入れられた区分によれば、100nm~380nmの波長、つまり短波領域から可視光への境界までに到る波長を含む。紫外線により蛍光発光するインクは、蛍光色顔料を含み、蛍光色顔料は、紫外線照射時に強力に発光し、場合により、昼光の紫外線を利用する。
【0039】
磁性インクとは、特に酸化鉄粒子が混合されたインクを意味する。これらの粒子は、基材26と光学結像構造30とを有する当該配置に対して外部の、地球の磁場とは異なる磁場により磁化し、ひいては磁気光学的に分析しかつ読み出すことができる。
【0040】
基材26に被着された印刷画像27と、印刷画像27の少なくとも一部を被覆する光学結像構造03と、を有する、機械可読性に関して有利な配置は、光学結像構造03が、複数の平凸マイクロレンズ11の一群または網目スクリーンを有しており、マイクロレンズ11の平坦な包絡面21は、基材26に面しており、基材26に配置された印刷画像27は、好適にはその光学結像構造03に面した側で配置されており、かつ少なくとも1つの画素および/または線を備えた少なくとも1つの画像要素28a~28jを有しており、これらの画素および/またはこれらの線は、印刷技術により印刷流体でもって形成されており、印刷流体は、人間の目に見える電磁スペクトルの外側による励起に基づいてのみ、人間の目に見えることを想定している。この印刷流体は、好適には赤外線を吸収するインク、または赤外線を反射するインク、または赤外線を可視に変換するインク、または紫外線により蛍光発光するインク、または磁気インクとして形成されている。よって、機械可読印刷画像27の当該の少なくとも1つの画像要素28a~28jは、例えばセキュリティ素子01または文書02、特に機密文書02において当該配置に組み込まれた構成要素である。印刷流体の、人間の目に見える電磁スペクトルの外側に位置する励起光は、印刷画像27の少なくとも一部を被覆する光学結像構造03に関して、この励起光が光学結像構造03を貫いて作用するように形成されている場合には表側で、すなわちマイクロレンズ11の各凸状の包絡面13に向けられて行われ、または光学結像構造03がこの励起光を遮断するように形成されている場合には裏側で、すなわち基材側で、もしくはマイクロレンズ11の各平坦な包絡面21に向けられて行われる。
【0041】
人間の目に見える電磁スペクトルの外側に位置する励起光に基づいてのみ人間の目に見える印刷流体が、光学結像構造03のマイクロレンズ11と相互作用すべきではないことが想定されている場合には、このような配置において、当該画素の各画素サイズ38および/または当該線の各線太さ38は、例えば当該マイクロレンズ11のレンズ幅18よりもそれぞれ大きく形成されている。
【0042】
さらに、基材26と光学結像構造03とから成る当該配置において、複数の平凸マイクロレンズ11を有する各光学結像構造03の群または複数の平凸マイクロレンズ11を有する各光学結像構造03の網目スクリーン内の複数の個別の位置において、各マイクロレンズ11が形成されないままであり、当該欠落箇所には、少なくとも1つの画素および/または線を有する印刷画像27の少なくとも1つの画像要素28a~28jが配置されることが想定されていてよく、この画素および/またはこの線は、印刷技術により、人間の目に見える電磁スペクトルの外側に位置する励起光に基づいてのみ人間の目に見える印刷流体でもって形成されている。したがって、通常条件下では人間の目に見えない印刷流体は、各光学結像構造03内の選択された欠落箇所に適用または配置されるか、もしくは適用または配置されている。
【0043】
上述のように、基材26と光学結像構造03とから成る配置は、印刷画像27を有していてよく、印刷画像27は、光学結像構造03を通して印刷画像27を肉眼で観察している正視の観察者に、様々な観察角度で複数の異なる個別画像を知覚させ、観察者の知覚において連続する個別画像により、切替え画像もしくは揺動画像(フリップ)および/または立体的な、すなわち三次元的な効果および/またはモーフィング効果および/またはズーム効果および/またはアニメーションが生ぜしめられる。これらの異なる個別画像は、フレームとも呼ばれる。上述したこれらの効果は、それぞれ複数の部分印刷画像に基づいており、これらの部分印刷画像から、少なくとも1つの当該印刷画像27が合成されている。基材26と光学結像構造03とから成り、少なくとも1つの機械可読印刷画像27を備えた配置を形成するために、当該印刷画像27は少なくとも、光学結像構造03により被覆された領域内に、複数の部分印刷画像を有していることが想定されている。これらの部分印刷画像のうちの少なくとも1つの部分印刷画像は、少なくとも1つの画素および/または線を有する画像要素28a~28jを有しており、当該画素および/または当該線は、印刷技術により、それぞれ人間の目に見える電磁スペクトルの外側に位置する励起光に基づいてのみ人間の目に見える印刷流体でもって形成されている。1つの択一的または追加的な構成では、機械可読式に形成されるべき複数の部分印刷画像を含む印刷画像27の少なくとも1つの部分印刷画像の少なくとも1つの画像要素28a~28jは、1つの混合体により形成されていることが想定されていてよく、この混合体は、人間の目に、特に昼光条件下で見える印刷流体と、人間の目に見える電磁スペクトルの外側に位置する励起光に基づいてのみ人間の目に見える印刷流体とを含む。
【0044】
さらに、少なくとも1つの機械可読印刷画像27を備えた配置を形成するために、印刷画像27を有する基材26と、この印刷画像27を光学的に結像する構造03と、を有する配置において、光学結像構造03により被覆された第1の領域では、そこに配置された印刷画像27の画像要素28a~28jはそれぞれ、特に昼光条件下で人間の目に見える印刷流体により形成されており、かつ光学結像構造03により被覆された第2の領域では、そこに配置された印刷画像27の画像要素28a~28jはそれぞれ、人間の目に見える電磁スペクトルの外側に位置する励起光に基づいてのみ人間の目に見える印刷流体により形成されていることが想定されていてよい。
【0045】
基材26の各構成および/または基材26上に形成された光学結像構造03の各構成および/または少なくとも1つの印刷画像27の形成に用いられる印刷流体の種類を考慮せずに、特に昼光条件下で人間の目に見える印刷流体が使用されるのか、または人間の目に見える電磁スペクトルの外側に位置する励起光に基づいてのみ人間の目に見える印刷流体が使用されるのか、またはセキュリティ素子01または機密文書02を形成するために、上述の2種類の印刷流体が同一の印刷画像27の作成用に一緒に使用されるのかを考慮せずに、以下に説明することが想定されていてよい。
【0046】
図4には、機密文書02、例えば紙幣が例示的に示されており、機密文書02の基材26は、例えば繊維を含む印刷材料、特に紙から成り、少なくとも1つの透明窓04を有している。択一的に、機密文書02の基材26は、フィルム、好適には透明なポリマーフィルムまたは透明窓04を備えたフィルムであってもよい。機密文書02の一方の側において、少なくとも当該透明窓04の領域には、この窓04を部分的にまたは全面的に被覆するマイクロ光学構造03が配置されている。このマイクロ光学構造03は、それぞれ複数の平凸マイクロレンズ11から成る1つのレンズアレイまたは1つのレンチキュラーとして形成されている。これらのマイクロレンズ11は、レンズアレイの場合には、回転対称に球面状または非球面状に形成されており、レンチキュラーの場合には、例えば軸線対称に棒状に形成されている。透明窓04の領域から外側に離間された、この機密文書02の他方の側には、すなわち機密文書02の、上述したレンズアレイまたはレンチキュラーを有していない側には、印刷画像27が形成または被着されており、この印刷画像27は、特に昼光条件下で人間の目に見える印刷流体により形成されているか、または人間の目に見える電磁スペクトルの外側に位置する励起光に基づいてのみ人間の目に見える印刷流体により形成されていてよい。当該印刷画像27は、人間にとって直接に識別可能な情報を含んでいるか、または機械可読式にのみ形成されていてよい。この印刷画像27は、画像要素28a~28jから成る、例えば点状または線状の網目スクリーンで基材26に被着されており、好適には工業的な印刷プロセスで、例えばオフセット印刷法で作成されている。基材26に被着された印刷画像27の画像要素28a~28jの画素サイズ38または線太さ38は、レンズアレイまたはレンチキュラー内に配置されたマイクロレンズ11のレンズ幅18よりも小さく形成されており、ひいては100μmを大幅に下回っており、好適には約20μm以下である。機密文書02のこの基材26において部分的または全面的にマイクロ光学構造03により被覆された窓04が、裏側にも、すなわち機密文書02の基材26の、マイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側にも、好適にはやはりオフセット印刷法で作成された別の印刷画像27を有している場合、透明窓04の領域に配置されたこの別の印刷画像27は、マイクロ光学構造03により被覆された領域に、少なくとも1つの非印刷面、すなわち切欠き06を有しており、これにより、窓04の領域に配置された別の印刷画像27における当該切欠き06が、この機密文書02の基材26に被着されたマイクロ光学構造03を部分的に露出させ、マイクロ光学構造03内に配置された平凸マイクロレンズ11のそれぞれの平坦な包絡面21に対する視野を、透明窓04を通じて開放する。
【0047】
マイクロ光学構造03を有する機密文書02を認証する方法は、機密文書02の基材26を(図4に矢印で示唆されているように)この機密文書02を好適には横断する折曲げ線07において折り畳み、これにより、透明窓04の領域から外側に離間されて形成または被着された印刷画像27を、この機密文書02の基材26の他方の側に被着されたマイクロ光学構造03または少なくとも、窓04の領域に配置された印刷画像27においてマイクロ光学構造03を部分的に露出させる切欠き06のうちの1つと位置を重ね合わせるか、または少なくとも位置を重ね合わせることが可能であることを特徴とする。機密文書02の基材26は(図4に示唆されているように)折曲げ線07において、例えばほぼ半分に折り曲げられてよく、これにより、透明窓04の領域から外側に離間されて被着された印刷画像27を有する、基材26の折り曲げられた部分は、この基材26の、透明窓04とマイクロ光学構造03とを有する他方の部分に載置されるか、または少なくとも載置可能である。機密文書02の基材26を折り畳むことにより、透明窓04の領域から外側に離間されて被着された印刷画像27は、この機密文書02の基材26の透明窓04内で、マイクロ光学構造03内に配置された平凸マイクロレンズ11のそれぞれの平坦な包絡面21上に載置される。
【0048】
場合により、マイクロ光学構造03と、このマイクロ光学構造03に重ね合わされた、透明窓04の領域から外側に離間されて形成または被着された印刷画像27と、の間の相対運動を実施すると、または折曲げ線07において折り畳まれた機密文書02全体の傾倒運動を実施することにより、この印刷画像27または少なくともこの印刷画像27に含まれる情報が、凸状の包絡面13の方向からマイクロ光学構造03を通して当該印刷画像27に向けられた観察において可視もしくは識別可能になり、このことは、図4に例示的に、好適には人間により読取り可能な「&」記号により示されている。
【0049】
見いだされた解決手段の利点は、機密文書20が、外部手段を利用することなしに認証可能である、という点にある。つまり、提案する方法は、当該機密文書02自体が有する手段のみに基づいて、当該機密文書02の自己認証を可能にする。したがって、本明細書で提案する認証は、当該機密文書02がオリジナル、特に本物の紙幣である、という証明を、いつでもどこでも実施可能である。
【0050】
透明窓04の領域において、基材26の裏側に、すなわち、この基材26の、マイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側に、昼光条件下で人間の目に通常見える印刷流体により作成された印刷画像27は、特に弱光条件下、例えば薄明光条件下では、凸状の包絡面13の方向から当該マイクロ光学構造03を通じて当該印刷画像27へ向けられた観察において、時々十分良好に識別可能ではないことが確認された。
【0051】
このような印刷画像27の、特に人間の目に対する識別性を改善するために、基材26の裏側の透明窓04の領域に作成された印刷画像27を、当該印刷画像27の作成に使用される印刷流体の色調よりも明るい色調を有する印刷流体により、重畳印刷することを提案する。基材26の裏側の透明窓04の領域に被着された印刷画像27が、異なる色調の複数の印刷流体から作成されている場合、このように作成されたこの印刷画像27の重畳印刷には、当該印刷画像27の作成に使用される印刷流体の最も明るい色調よりも明るい色調を有する印刷流体が使用される。好適には、基材26の裏側の透明窓04の領域に被着された印刷画像27は、少なくとも部分的に、白色インクから成る層39により重畳印刷される。この層39は、基材26の裏側の透明窓04の領域に被着された印刷画像27に対して、明るい、特に白色インクから成る面状に広げられた被覆層を形成する。この場合、この被覆層は不透明に、すなわち、約380nm(紫)~780nm(赤)の範囲内の波長を有する電磁放射線に対して非透過性に、すなわち不透光性に、または約380nm(紫)~780nm(赤)の範囲内の波長を有する電磁放射線に対して、部分的に透明に形成されていてよい。部分透明度は、被覆層の2次元の面状の広がりにわたり段階的に変化するように形成されていてよく、これにより、被覆層のいくつかの箇所が、この被覆層の他の箇所よりも透明に形成されている。透過度の度合いは、入射光に対して、好適には10%~90%の範囲内であってよい。
【0052】
したがって、(図5に例示的に示すように)基材26に形成された透明窓04を備えた機密文書02が得られ、少なくとも透明窓04の領域において基材26の一方の側には、複数のマイクロレンズ11から成るマイクロ光学構造03が配置されており、このマイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側の、基材26の他方の側には、少なくとも1つの印刷画像27が配置されている。当該印刷画像27は、点状または線状の網目スクリーン内に複数の画像要素28a~28jを有しており、これらの画像要素28a~28jは、白色とは異なる色調で形成されている。これらの画像要素28a~28jの画素サイズ38または線太さ38はそれぞれ、マイクロ光学構造03内に配置されたマイクロレンズ11のレンズ幅18よりも小さく形成されている。ここで、コントラスト強調のために、当該印刷画像27の、マイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側における当該印刷画像27の少なくとも部分面に、すなわち、当該印刷画像27の一部に、当該印刷画像27を被覆するように面状に広げられた層39が配置されていることが想定されており、この層39は、当該印刷画像27を成す、少なくとも1つの白色とは異なる色調よりも明るい色調から成る。好適には、この層39は白色の色調で形成されている。上述のように、当該印刷画像27を被覆する層39は、380nm~780nmの範囲内の波長を有する電磁放射線に対して不透過に形成されている、またはこの層39は、380nm~780nmの範囲内の波長を有する電磁放射線に対して透明に形成されていてもよく、この電磁放射線に対する透明度の度合いは、例えば10%~90%の範囲内である。さらに、当該印刷画像27を被覆する層39の2次元の面状の広がりにわたる透明度は、段階的に変化するように形成されていてよく、これにより、この層39のいくつかの箇所が、この層39の他の箇所とは異なる透明度の度合いで形成されている。これにより、当該印刷画像27の特定の画像要素28a~28jを、それらの人間の目に対する識別性の改善に基づき強調することができるのに対して、当該印刷画像27の別の画像要素28a~28jは、それぞれの識別性において、意図的に、より低く形成されたままになる。好適な構成では、当該印刷画像27を被覆する層39は、インクジェット印刷法またはオフセット印刷法またはスクリーン印刷法で作成されるのに対して、基材26の、マイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側である他方の側に配置された当該印刷画像27は、オフセット印刷法で作成されている。
【0053】
基材26の裏側の透明窓04の領域に被着された印刷画像27に重畳印刷することにより、この印刷画像27に含まれる画像要素28a~28j、すなわち印刷画像27の画素および/または線と、画像要素28a~28それぞれの直接的な外縁部と、の間のコントラストが高められることが達成される。コントラストとは一般に、1つの画像において隣り合う明るい箇所と暗い箇所との間の明るさの差を意味する。基材26の裏側の透明窓04の領域に被着された印刷画像27に、明るい、特に白色インクから成る層39でもって重畳印刷することにより、凸状の包絡面13の方向からマイクロ光学構造03を通して当該印刷画像27に向けられた観察において、当該印刷画像27の複数の、好適には大部分の、特に全ての画像要素28a~28jのコントラストが高められ、これにより、この印刷画像27または少なくとも印刷画像27に含まれる情報は、特に弱光条件下、例えば薄明光条件下でも、人間の目をもってより良好に識別可能であるか、もしくは識別可能になる。
【0054】
本発明の1つの特に有利な構成では、図6に断面図で例示的に示すと共に以下で説明するように、自己認証手段と共に、基材26の裏側にコントラストを強調する層39を備えた機密文書20が得られる。
【0055】
図6には、図5に例示的に示した、基材26に形成された透明窓04を備えた機密文書02が示されており、少なくとも透明窓04の領域において基材26の一方の側には、複数のマイクロレンズ11から成るマイクロ光学構造03が配置されており、このマイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側の、基材26の他方の側には、第1の印刷画像27が配置されている。この実施例でも、この第1の印刷画像27は、点状または線状の網目スクリーン内に複数の画像要素28a~28jを有しており、これらの画像要素28a~28jは、好適には白色とは異なる色調で形成されている。これらの画像要素28a~28jの画素サイズ38または線太さ38はそれぞれ、マイクロ光学構造03内に配置されたマイクロレンズ11のレンズ幅18よりも小さく形成されている。ここでもコントラスト強調のために、第1の印刷画像27の、マイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側における第1の印刷画像27の少なくとも部分面もしくは一部に、この第1の印刷画像27を被覆するように面状に広げられた層39が配置されていることが想定されており、この層39は、好適には、第1の印刷画像27を成す、少なくとも1つの白色とは異なる色調よりも明るい色調から成る。
【0056】
図6に基づき提案する機密文書20は、図5に示した実施例と、第1の印刷画像27の一部を被覆する層39の、マイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側に、第2の、すなわち別の、好適にはやはりオフセット印刷法で作成された印刷画像41が配置されている、という点で異なっている。この第2の印刷画像41は、この第2の印刷画像41が、機密文書02を好適には横断する折曲げ線07において図6に矢印により示す折畳みが実施された後に、(図4に例示的に示したように)この機密文書02の基材26の他方の側に被着されたマイクロ光学構造03と位置を重ね合わせられているかまたは少なくとも重ね合わせ可能であるように、第1の印刷画像27の一部を被覆する層39に配置されており、これにより、この第2の印刷画像41または第2の印刷画像41に含まれる少なくとも1つの情報が、マイクロ光学構造03の側の方向からの観察において可視かつ/または認識可能であるか、もしくは可視かつ/または認識可能になる。この機密文書02の基材26が折り畳まれる折曲げ線07は、好適には第1の印刷画像27の一部を被覆する層39の外側に、すなわちこの層39から離間されて配置されている。この折曲げ線07は、好適には、第1の印刷画像27に配置された層39が被覆していない第1の印刷画像27の部分に配置されている。
【0057】
図6に示す本発明の実施形態でも、第1の印刷画像27の画像要素28a~28jは、白色とは異なる色調で形成されていることが想定されていてよく、第1の印刷画像27の一部を被覆する層39は、第1の印刷画像27を成す、少なくとも1つの白色とは異なる色調よりも明るい色調から成る。
【0058】
さらに、図6に示す本発明の実施形態も、技術的に有意なあらゆる組合せにおいて、既に図1および図5に関連して説明した少なくともいくつかの特徴を有し得る。
【0059】
次に図7に基づき、特に図5または6に示した実施形態による機密文書02を製造し得る方法をさらに説明する。既に説明したように、当該印刷画像27を被覆する、特にコントラストを強調する層39は、好適な構成ではインクジェット印刷法で作成されるにもかかわらず、オフセット印刷法またはスクリーン印刷法でも作成され得るのに対して、基材26の、マイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側に配置された当該印刷画像27は、オフセット印刷法で作成されている。印刷画像27は、少なくとも2つの異なる印刷インクで印刷された複数の画像要素28a~28jから成り、これらの画像要素28a~28j自体は、画素および/または線を形成している。画素サイズ38または線太さ38は、好適には20μm未満の範囲内、例えば約5μm~10μmの範囲内にある。それぞれ異なる印刷インクで印刷された画像要素28a~28jの色見当、すなわち互いに相対的な配置の精度は、ここで考察する実施例では、それぞれ20μm未満、好適には10μm未満であり、特に約5μmの範囲内にある。
【0060】
上述の色見当合わせを伴う印刷画像27の製造は、例えば輪転印刷機械として形成された印刷機において、特に有価物印刷に使用される印刷機において行われ、例えば印刷材料ウェブまたは印刷シートとして形成された基材26が、例えば圧胴42として形成された胴を介して案内され、このとき当該印刷画像27に関与する印刷インクが、連続的な重畳印刷により基材26に被着されるか、または好適な構成では、当該印刷画像27に関与する複数の印刷インクが、例えば転移胴43に集められ、この転移胴43から一緒に、圧胴42により案内される基材26に供給される。基材26は、例えばポリマーフィルムの形態の印刷材料ウェブとして、または紙から成る印刷シートとして形成されている。
【0061】
転移胴43の周囲には、少なくとも2つの版胴44が当て付けられているかまたは少なくとも当て付け可能であり、これらの版胴44はそれぞれ、当該印刷画像27に関与する印刷インクのうちの1つを転移胴43に転移させる。圧胴42、転移胴43および版胴44の各回転方向は、図7にそれぞれ回転方向矢印により示されている。各版胴44に、各1つのインク装置(図7には図示せず)が対応して配置されていることは、当業者には周知である。好適な構成では、転移胴43に当て付けられた版胴44から転移される印刷インクは、それぞれその色調が異なっている。
【0062】
転移胴43が、この転移胴43に集められた印刷インクを、印刷画像27を作成するために圧胴42により案内された基材26に印刷する転移箇所の下流側には、基材26の、転移箇所において作成された印刷画像27に向いている側と同じ側に、印刷装置が設けられており、この印刷装置は、明るい色調の、好適には白色インクから成る層39でもって、印刷画像27に少なくとも部分的に重畳印刷する。この印刷装置は、好適には少なくとも1つのインクジェット印刷ヘッド46として形成されている。好適な構成では、当該インクジェット印刷ヘッド46により印刷されるインクの色調は、転移胴43から基材26に被着される印刷インクの各色調よりも明るい。
【0063】
印刷機には、好適にはエンボス加工装置47も設けられており、このエンボス加工装置47により、マイクロレンズ11から成るマイクロ光学構造03が基材26に形成される。したがって、このエンボス加工装置47は印刷機において圧胴42の上流側に配置されていてよい。ただし、1つの特に有利な実施形態では、圧胴42は、その周囲にこのエンボス加工装置47を有しており、この場合、このエンボス加工装置47により、マイクロレンズ11から成るマイクロ光学構造03が形成され、この圧胴42の回転中に、この圧胴42により案内される基材26に配置される。例えばプラスチックまたは樹脂から形成されたマイクロレンズ11は、例えば100μm未満、好適には20μm~65μmのレンズ幅18を有している。
【0064】
これにより、機密文書02を製造する印刷機が得られ、機密文書02の基材26を案内する圧胴42と、転移箇所において圧胴42と協働して印刷画像27を基材26に印刷する転移胴43と、が設けられている。機密文書02の基材26は、少なくとも1つの透明窓04を有しており、少なくとも、基材26の一方の側の当該透明窓04の領域に、複数のマイクロレンズ11から成るマイクロ光学構造03が設けられている。圧胴42と転移胴43とは、協働するように配置されており、これにより、印刷プロセス中に、少なくとも当該透明窓04の領域において基材26の一方の側には、複数のマイクロレンズ11から成るマイクロ光学構造03が配置され、このマイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側の、基材26の他方の側には、少なくとも透明窓04の領域に、少なくとも1つの印刷画像27が配置される。エンボス加工装置47により形成された、複数のマイクロレンズ11から成るマイクロ光学構造03ならびに圧胴42および転移胴43により透明窓04の領域に形成された少なくとも1つの印刷画像27のこの配置は、上述の転移箇所において同時に、または圧胴42の周囲において異なる箇所で、時間的にずらされて生ぜしめられてよい。
【0065】
印刷機にはさらに、印刷装置が設けられており、この印刷装置は少なくとも、当該印刷画像27の、マイクロ光学構造03に向いている側とは反対の側における当該印刷画像27の一部に、当該印刷画像27を被覆するように面状に広げられた層39を被着する。この印刷装置は、転移胴43が印刷画像27を、圧胴42により案内された基材26に印刷する転移箇所の下流側において、基材26の、転移箇所において作成された印刷画像27に向いている側と同じ側に配置されており、本発明では、少なくとも1つのインクジェット印刷ヘッド46として形成されている。当該印刷画像27は、その好適な構成において点状または線状の網目スクリーン内に複数の異なる色の画像要素28a~28jを有しており、これらの画像要素28a~28jはそれぞれ、白色とは異なる色調で形成されており、少なくとも1つのインクジェット印刷ヘッド46により形成された層39は、当該印刷画像27を成す、白色とは異なる色調よりも明るい色調から成る。
【0066】
有利には、高い見当精度を維持するために、圧胴42は、その周囲にエンボス加工装置47を有しており、エンボス加工装置47は、複数のマイクロレンズ11から成るマイクロ光学構造03を形成しており、かつこの圧胴42の回転中に、すなわち印刷プロセスの進行中に、エンボス加工装置47が複数のマイクロレンズ11から成るマイクロ光学構造03を、この圧胴42により案内される基材26に形成するように配置されている。この場合、当該印刷画像27の画像要素28a~28jの画素サイズ38または線太さ38は、好適にはそれぞれ、マイクロ光学構造03内に配置されたマイクロレンズ11のレンズ幅18よりも小さく形成されている。
【0067】
この印刷機の1つの好適な構成では、転移胴43の周囲に当て付けられるかまたは少なくとも当て付け可能な少なくとも2つの版胴44が設けられており、これらの版胴44はそれぞれ、当該印刷画像27に関与する印刷インクのうちの1つを転移胴43に転移させ、転移胴43は、これらの異なる色の印刷インクを集め、転移胴43に集められた印刷インクは、圧胴42により案内される基材26に一緒に転移される。
【符号の説明】
【0068】
01 セキュリティ素子
02 機密文書
03 光学結像構造、マイクロ光学構造
04 窓
05 -
06 切欠き
07 折曲げ線
08 -
09 -
10 -
11 マイクロレンズ
12 対称軸線、光軸
13 凸状の包絡面
14 光線
15 -
16 境界点
17 境界点
18 レンズ幅
19 主平面
20 -
21 平坦な包絡面
22 焦点距離
23 フォーカス
24 焦点面
25 -
26 基材
27 印刷画像
28 画像要素(28a~28j)
29 材料厚さ、厚さ
30 -
31 断面
32 円錐、角度範囲
33 第1の観察角度
34 第2の観察角度
35 -
36 層厚さ
37 頂点
38 画素サイズ、レンズ厚さ
39 層
40 -
41 印刷画像
42 圧胴
43 転移胴
44 版胴
45 -
46 インクジェット印刷ヘッド
47 エンボス加工装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7