(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】アイソレータ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/28 20060101AFI20241030BHJP
G02B 6/126 20060101ALI20241030BHJP
G02F 1/095 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G02B27/28 A
G02B6/126
G02F1/095
(21)【出願番号】P 2024535336
(86)(22)【出願日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2023038093
【審査請求日】2024-06-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】泉二 玲緒奈
(72)【発明者】
【氏名】杉田 丈也
(72)【発明者】
【氏名】前田 暖
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-131665(JP,A)
【文献】特開2022-182107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0269395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/28
G02F 1/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面に沿って延在し、該主面上に並んで位置する複数の導波路部と、
前記複数の導波路それぞれの延在方向に垂直な断面において前記複数の導波路部それぞれの外縁の少なくとも一部を覆い、前記主面の法線方向から見て前記複数の導波路部の中の一部の第1の導波路部と重なる位置に前記基板の反対側の表面から陥凹する凹部を有する絶縁層と、
前記凹部内で前記主面の法線方向から見て前記第1の導波路部の少なくとも一部と重なるように位置する非相反性部材とを備え、
前記第1の導波路部の延在方向に垂直な断面において、前記法線方向に垂直な幅方向の前記第1の導波路部の長さをw1、前記非相反性部材の端と前記第1の導波路部に隣接する前記導波路部との該幅方向の間隔をx、前記第1の導波路部のモードフィールド径をmfd1、該導波路部のモードフィールド径をmfd2、該導波路部の該幅方向の長さをw2、及び前記非相反性部材の前記幅方向の長さw3とすると、以下の(1)、(2)式を満たす
アイソレータ。
w1≦w3≦mfd1+mfd2-w2-2×x (1)
x≧(mfd2-w2)/2 (2)
【請求項2】
請求項1に記載のアイソレータにおいて、
前記第1の導波路部の少なくとも一部が、前記非相反性部材に接する
アイソレータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアイソレータにおいて、
前記法線方向における前記凹部の底面の位置は、前記第1の導波路部の前記基板側とは反対側の表面の位置よりも前記基板に近い
アイソレータ。
【請求項4】
請求項1に記載のアイソレータにおいて、
前記第1の導波路部及び前記非相反性部材の間に、前記絶縁層が位置する
アイソレータ。
【請求項5】
請求項4に記載のアイソレータにおいて、
前記第1の導波路部及び前記非相反性部材の間に位置する前記絶縁層の前記法線方向の厚みは、前記第1の導波路部のモードフィールド径及び前記第1の導波路部の前記法線方向の厚みに基づいて定まる値以下である
アイソレータ。
【請求項6】
請求項1
又は2に記載のアイソレータにおいて、
前記凹部の前記幅方向の長さは、前記非相反性部材の結晶サイズより長い
アイソレータ。
【請求項7】
請求項1
又は2に記載のアイソレータにおいて、
前記非相反性部材はYIG(イットリウム・鉄・ガーネット)を含む
アイソレータ。
【請求項8】
請求項1
又は2に記載のアイソレータにおいて、
前記凹部を画定する面の中で、前記延在方向の端部に位置する面は、該延在方向の垂直面に対して傾斜する
アイソレータ。
【請求項9】
請求項1
又は2に記載のアイソレータにおいて、
前記凹部を画定する面の中で、前記延在方向の端部に位置する面は、前記法線方向に対して前記凹部の外側に向かって傾斜する
アイソレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイソレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非相反位相効果を利用したアイソレータが提案されている(特許文献1参照)。当該アイソレータを、半導体基板上に形成することが検討されている。半導体基板には、他の構成要素も積層されるため、基板から比較的高い位置まで絶縁膜が成膜される。半導体基板上にアイソレータを形成するためには、基板上に形成されるコアとなる導波路に隣接させて、磁性部材を配置する必要がある。磁性部材を設ける位置に、エッチングによりトレンチを形成して半導体プロセスを完了させ、形成したトレンチに磁性体を埋込むことが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アイソレータに対して、非相反位相効果を発揮しながら、小型化させることが求められている。
【0005】
従って、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、非相反位相効果を発揮しながら小型化が可能なアイソレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点によるアイソレータは、
基板と、
前記基板の主面に沿って延在し、該主面上に並んで位置する複数の導波路部と、
前記複数の導波路それぞれの延在方向に垂直な断面において前記複数の導波路部それぞれの外縁の少なくとも一部を覆い、前記主面の法線方向から見て前記複数の導波路部の中の一部の第1の導波路部と重なる位置に前記基板の反対側の表面から陥凹する凹部を有する絶縁層と、
前記凹部内で前記主面の法線方向から見て前記第1の導波路部の少なくとも一部と重なるように位置する非相反性部材とを備え、
前記第1の導波路部の延在方向に垂直な断面において、前記法線方向に垂直な幅方向の前記第1の導波路部の長さをw1、前記非相反性部材の端と前記第1の導波路部に隣接する前記導波路部との該幅方向の間隔をx、前記第1の導波路部のモードフィールド径をmfd1、該導波路部のモードフィールド径をmfd2、該導波路部の該幅方向の長さをw2、及び前記非相反性部材の前記幅方向の長さw3とすると、以下の(1)、(2)式を満たす。
w1≦w3≦mfd1+mfd2-w2-2×x (1)
x≧(mfd2-w2)/2 (2)
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態のアイソレータの第1の導波路部の延在方向に垂直な断面で切断した断面図である。
【
図2】
図1のアイソレータを法線方向から見た導波路部の構成を説明するための図である。
【
図3】
図2の変形例を法線方向から見た導波路部の構成を説明するための図である。
【
図4】
図1のアイソレータの変形例の断面図である。
【
図5】
図1のアイソレータの別の変形例の断面図である。
【
図6】
図1の凹部を法線方向から見た形状を説明するための図である。
【
図7】
図6の変形例の凹部を法線方向から見た形状を説明するための図である。
【
図8】
図6の別の変形例の凹部を有するアイソレータを幅方向に垂直な断面で切断した断面図である。
【
図9】
図1のアイソレータにおける一部の構成要素の幅方向のサイズを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を適用したアイソレータの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1に示すように、アイソレータ10は、基板11、複数の導波路部12、絶縁層13、及び非相反性部材14を含んで構成される。アイソレータ10は、更にボックス層15を含んで構成されてよい。アイソレータ10が適用される電磁波の波長は、1200nm~1600nmが想定されている。アイソレータ10は、放射源に結合されていてよい。放射源が放射する電磁波の波長が1200nm~1600nm内で選択されてよい。
【0010】
基板11は、平板状である。基板11は、金属等の導体、シリコン等の半導体、ガラス、又は樹脂等によって形成されてよい。本実施形態において、基板11は、シリコン(Si)である。
【0011】
ボックス層15は、基板11の基板面を覆うように積層されてよい。ボックス層15は、シリコン酸化膜等の絶縁体によって形成されてよい。
【0012】
複数の導波路部12は、基板11の主面に沿って延在する。主面とは、最も大きな面であってよい。複数の導波路部12は、主面に沿って並んで位置する。複数の導波路部12は、それぞれ並行であってよい。複数の導波路部12は、
図2に示すように直接的又は間接的に連続する単一の導波路の一部であってよく、又は、
図3に示すように別々に独立した、言換えると異なる導波路の一部であってよい。
【0013】
図1に示すように、複数の導波路部12は、第1の導波路部16及び第2の導波路部17を含む。第1の導波路部16は、基板11の主面の法線方向から見て、後述する、絶縁層13の凹部18に重なって位置する。本願明細書において、法線方向は、基板11の主面の法線方向を意味する。第1の導波路部16の幅方向における少なくとも一部が、凹部18に重なってよく、幅方向におけるすべてが重なってよい。幅方向は、導波路部12の延在方向及び法線方向の両者に垂直な方向である。本願明細書において、特に限定しない場合、幅方向及び延在方向はそれぞれ、導波路部12の幅方向及び延在方向を意味する。第2の導波路部17は、法線方向から見て、凹部18から外れて位置してよい。第1の導波路部16及び第2の導波路部17は、以後の説明において区別しない限り、導波路部12と呼ばれる。
【0014】
導波路部12は、少なくとも絶縁層13及びボックス層15に覆われる。導波路部12は、更に、非相反性部材14に覆われてよい。導波路部12は、コアとも称される。絶縁層13及びボックス層15は、クラッドとも称される。コア及びクラッドは、誘電体を含んで構成されてよい。導波路部12は、誘電体線路とも称される。コア及びクラッドの材質は、コアの比誘電率がクラッドの比誘電率よりも大きくなるように定められる。言換えれば、コア及びクラッドの材質は、クラッドの屈折率がコアの屈折率より大きくなるように定められる。このような構成により、コアを伝搬する電磁波は、クラッドとの境界において全反射され得る。その結果、コアを伝搬する電磁波の損失が低減され得る。
【0015】
コア及びクラッドの比誘電率は、空気の比誘電率よりも大きくてよい。コア及びクラッドの比誘電率が空気の比誘電率よりも大きいことにより、アイソレータ10からの電磁波の漏れが抑制され得る。結果として、アイソレータ10から外部に電磁波が放射されることによる損失が低減され得る。導波路部12は、例えば、シリコンによって形成されてよい。
【0016】
絶縁層13は、延在方向に垂直な断面において、複数の導波路部12それぞれの外縁の少なくとも一部を覆う。絶縁層13は、基板11における導波路部12が位置する側に位置してよい。絶縁層13は、ボックス層15の基板11とは反対側に積層されていてよい。
【0017】
絶縁層13は、例えば、第1の導波路部12の少なくとも側面の少なくとも一部を覆ってよい。側面は、延在方向及び法線方向の両者に平行な面である。又は、
図4に示すように、絶縁層13は、導波路部12の側面の一部を覆ってよい。更に、絶縁層13は、第2の導波路部17の側面全体を覆ってよい。
【0018】
図5に示すように、絶縁層13は、第1の導波路部16の、基板11側とは反対側の面を覆ってよい。又、
図1、4に示すように、絶縁層13は、第2の導波路部17の、基板11側とは反対側の面を覆ってよい。
【0019】
図1、4、5に示すように、絶縁層13は、法線方向から見て、複数の導波路部12の中の一部である第1の導波路部16と重なる位置に凹部18を有してよい。凹部18は、絶縁層13の基板11とは反対側の表面から陥凹する。
【0020】
図1に示すように、法線方向における凹部18の底面の位置は、第1の導波路部16の基板11側とは反対側の表面(以後、「上面」とも呼ぶ。)の位置と同一であってよい。言換えると凹部18の底面と、第1の導波路部16の上面とは面一である。又は、
図4に示すように、法線方向における凹部18の底面の位置は、第1の導波路部の上面よりも基板11に近くてよい。又は、
図5に示すように、法線方向における凹部18の底面の位置は、第1の導波路部16の上面よりも基板11から離れていてよい。
【0021】
なお、
図4に示すように、法線方向における凹部18の底面の位置が第1の導波路部16の上面よりも基板11に近い構成において、凹部18の底面及び第1の導波路部16の上面の段差が100nm以下であってよい。当該段差は非相反性部材14の結晶化に影響を及ぼすことがあるためである。非相反性部材14としてCe:YIG(セリウム置換のイットリウム・鉄・ガーネット)が用いられる構成において、Ce:YIGをアニール処理によって結晶化させるときに、段差におけるCe:YIGの膜の不連続が結晶化を阻害することがある。それゆえ、結晶化の阻害を抑制するためには、上述のように段差が100nm以下であることが好ましい。
【0022】
図6に示すように、凹部18を画定する面の中で、第1の導波路部16の延在方向における端部に位置する第1の面s1は、当該延在方向に垂直であってよい。又は、
図7に示すように、第1の面s1は、当該延在方向の垂直面から法線方向に平行な直線を軸に傾斜してよい。又は、
図8に示すように、第1の面s1は、法線方向に対して凹部18の外側に向かって傾斜してよい。
【0023】
凹部18の幅方向の長さは、後述する、凹部18内に位置する非相反性部材14の長さ以上であってよい。凹部18の幅方向の長さは、
図8のように法線方向において変化する構成においては、最小長さであってよい。凹部18の幅方向の長さは、凹部18内に位置する非相反性部材14を結晶化した結晶の大きさよりも長くてよい。言換えれば、凹部18の幅方向の長さは、当該凹部18内に位置する非相反性部材14の結晶サイズより長くてよい。
【0024】
非相反性部材14は、第1の導波路部16を伝搬するTMモードの電磁波の位相をずらす。なお、非相反性部材14に非相反性を発現させるための磁場が、アイソレータ10には印加されてよい。
【0025】
図1、4、5、8に示すように、非相反性部材14は、少なくとも凹部18内で、法線方向から見て第1の導波路部16の少なくとも一部と重なるように位置してよい。非相反性部材14は、更に、法線方向から見て、絶縁層13の凹部18以外の領域を覆うように位置してよい。
【0026】
非相反性部材14は、凹部18の底面の少なくとも一部に接して位置してよい。例えば、非相反性部材14は、凹部18の底面の一部に接して位置してよい。又は、
図1、4、5に示すように、非相反性部材14は、凹部18の底面全体に接して位置してよい。
【0027】
図1、4に示すように、非相反性部材14は、第1の導波路部16の少なくとも一部に接してよい。例えば、
図1、4に示すように、非相反性部材14は、第1の導波路部16の上面全体に接してよい。又、
図4に示すように、非相反性部材14は、第1の導波路部16の幅方向の両端面、言換えると側面の上面側の一部に接してよい。
【0028】
図5に示すように、非相反性部材14は、第1の導波路部16に接しなくてよい。具体的には、非相反性部材14及び第1の導波路部16の間に、絶縁層13が位置してよい。第1の導波路部16及び非相反性部材14の間に位置する絶縁層13の法線方向の厚みは、第1の値以下であってよい。第1の値は、第1の導波路部16のモードフィールド径及び第1の導波路部16の法線方向の厚みに基づいて定められてよい。より具体的には、第1の値は、第1の導波路部16のモードフィールド径から、第1の導波路部16の法線方向の厚みの1/2を減じた値であってよい。
【0029】
本実施形態において、導波路部12は矩形の断面形状を有する。このような構成において、モードフィールド径が定義される。導波路部12を伝搬するTMモードの電磁波の電場成分のエネルギーは、導波路部12の外において導波路12から離れるほど減少する。導波路部12の外におけるTMモードの電磁波の電場成分のエネルギーの大きさはガウス分布に従う。モードフィールド径は、導波路部12の延在方向に垂直な断面の中心における電場成分のエネルギーの大きさに対して、エネルギーの大きさが1/e2にまで減少する位置までの距離として定義される。
【0030】
本開示において、モードフィールド径は、以下の方法により測定されてよい。第1の導波路部16の一方の端面に光を入射させ、他方の端面からの出射光をカメラで撮像することにより、当該端面における光強度分布が検出される。当該光強度分布において、強度のピークに対して、1/e2の強度である位置と、ピーク位置との間隔がモードフィールド径として測定される。
【0031】
導波路部12におけるモードフィールド径は、導波路部12の延在方向に垂直な断面における導波路部12の幅方向の長さ、導波路部12の法線方向の長さと、導波路部12の屈折率、絶縁層13の屈折率、及び導波路部12を伝搬する電磁波の波長に基づいて定まる。導波路部12を伝搬する電磁波の波長は、アイソレータ10に結合する放射源によって定められてよい。
【0032】
例えば、導波路部12の幅方向の長さが400nm、導波路部12の法線方向の長さが220nm、導波路部12の屈折率が3.45、絶縁層13の屈折率が1.53、導波路部12を伝搬するTMモードの電磁波の波長が1550nmである構成において、モードフィールド径は800nmである。
【0033】
又は、例えば、導波路部12の幅方向の長さが500nm、導波路部12の法線方向の長さが220nm、導波路部12の屈折率が3.45、絶縁層13の屈折率が1.53、導波路部12を伝搬するTMモードの電磁波の波長が1550nmである構成において、モードフィールド径は520nmである。
【0034】
図9に示すように、第1の導波路部16の延在方向に垂直な断面において、非相反性部材14の幅方向の長さw3は、以下の(1)式を満たす。
【0035】
w1≦w3≦mfd1+mfd2-w2-2×x (1)
【0036】
(1)式において、w1は、第1の導波路部16の幅方向の長さである。w2は、第1の導波路部16に隣接する第2の導波路部17の幅方向の長さである。なお、w2は、第1の導波路部16の幅方向の両側に第2の導波路部17が隣接する構成においては、より近くに位置する第2の導波路部17の幅方向の長さであってよい。xは、非相反性部材14の幅方向における端と、第1の導波路部16に隣接する第2の導波路部17との幅方向の間隔である。なお、xは、第1の導波路部16の幅方向の両側に第2の導波路部17が隣接する構成においては、より近くに位置する第2の導波路部17との間隔であってよい。mfd1は、第1の導波路部16のモードフィールド径である。mfd2は、第1の導波路部16に隣接する第2の導波路部17のモードフィールド径である。なお、mfd2は、第1の導波路部16の幅方向の両側に第2の導波路部17が隣接する構成においては、より近くに位置する第2の導波路部17のモードフィールド径であってよい。
【0037】
非相反性部材14の幅方向における端と、第1の導波路部16に隣接する第2の導波路部17との幅方向の間隔xは、更に、以下の(2)式を満たす。
【0038】
x≧(mfd2-w2)/2 (2)
【0039】
非相反性部材14の材料として、YIG(イットリウム・鉄・ガーネット)が用いられてよい。したがって、非相反性部材14は、YIGを含んでよい。非相反性部材14の材料としてのYIGは、例えば、Ce:YIG又は、Bi:YIG(ビスマス置換のYIG)等のYIGの一部置換物質であってよい。非相反性部材14の材料として、FeCo、FeNi若しくはCoPt等の強磁性体、又は、強磁性体を含む物質等が用いられてもよい。非相反性部材14の材料として、磁性体ナノ粒子がコンポジットされた誘電体、例えばナノグラニュラー材が用いられてもよい。これらに限られず他の種々の磁性材料が非相反性部材14として用いられてよい。
【0040】
以上のような構成の本実施形態のアイソレータ10は、基板11と、基板11の主面に沿って延在し且つ当該主面上に並んで位置する複数の導波路部12と、複数の導波路12それぞれの延在方向に垂直な断面において複数の導波路部12それぞれの外縁の少なくとも一部を覆い且つ主面の法線方向から見て複数の導波路部12の中の一部の第1の導波路部16と重なる位置に基板11の反対側の表面から陥凹する凹部18を有する絶縁層13と、凹部18内で主面の法線方向から見て第1の導波路部16の少なくとも一部と重なるように位置する非相反性部材14とを備え、第1の導波路部16の延在方向に垂直な断面において、法線方向に垂直な幅方向の第1の導波路部16の長さをw1、非相反性部材14の端と第1の導波路部16に隣接する導波路部17との当該幅方向の間隔をx、第1の導波路部16のモードフィールド径をmfd1、当該導波路部17のモードフィールド径をmfd2、当該導波路部17の該幅方向の長さをw2、及び非相反性部材14の幅方向の長さをw3とすると、(1)、(2)式を満たす。アイソレータの小型化のためには、導波路を部分的に隣接させることが考えられる。ただし、導波路の間隔が短いと方向性結合器として機能し、一方の導波路から他方の導波路に電磁波が伝播することが起こり得る。又、非相反性の発現が望まれない導波路を、非相反性を発現させる導波路に近付けると非相反性の発現が望まれない導波路にも非相反性が発現し得る。このような事象に対して、上述の構成を有するアイソレータ10は、(2)式を満たすので、第2の導波路部17への非相反性の発現を抑制し得る。又、アイソレータ10は、(1)式を満たすので、第1の導波路部16の導波路部16及び第2の導波路部17を方向性結合器として機能させることを防ぎながら非相反性の発現効果を向上し得る。したがって、アイソレータ10は、望ましい非相反性の発現及び他の導波路部12への染み出しの抑制を行いながら、第1の導波路部16及び第2の導波路部17の間隔を狭小化し得る。結果としてアイソレータ10は、望まれる非相反性効果を発揮しながら、小型化され得る。
【0041】
又、アイソレータ10では、第1の導波路部16の少なくとも一部が、非相反性部材14に接する。このような構成により、アイソレータ10は、第1の導波路部16及び非相反性部材14の間隔を最小化させるので、第1の導波路部16に発現させる非相反性の大きさを増大し得る。
【0042】
又、アイソレータ10では、第1の導波路部16及び非相反性部材14の間に、絶縁層13が位置する。このような構成により、アイソレータ10は、製造工程の非相反性部材を形成するサブ工程において絶縁層13が第1の導波路部16を保護するので、完成後の第1の導波路部16の電磁波の損失を低減させ得る。
【0043】
又、アイソレータ10では、第1の導波路部16及び非相反性部材14の間に位置する絶縁層13の法線方向の厚みは、第1の導波路部16のモードフィールド径及び第1の導波路部16の法線方向の厚みに基づいて定まる値以下である。このような構成により、アイソレータ10は、第1の導波路部16及び非相反性部材17の間に絶縁層13が位置する構成であっても、第1の導波路部16に非相反性を発現させ得る。
【0044】
又、アイソレータ10では、凹部18の幅方向の長さは、非相反性部材14の結晶サイズより長い。このような構成により、アイソレータ10は、非相反性部材14の結晶化を促進し得るので、非相反性部材14に十分な非相反性を発現させ得る。
【0045】
又、アイソレータ10では、凹部18を画定する面の中で、延在方向の端部に位置する面s1は、当該延在方向の垂直面に対して傾斜する。このような構成により、アイソレータ10は、第1の導波路部16の実効屈折率を、凹部18に重なる範囲から凹部18の範囲外に向かって緩やかに変化させる。アイソレータ10は、第1の導波路部16の実効屈折率を穏やかな変化によって、第1の導波路部16の凹部18に重なる範囲と凹部18の範囲外との境界において電磁波の反射を抑制する。その結果、アイソレータ10は、電磁波の損失を低減する。
【0046】
又、アイソレータ10は、凹部18を画定する面の中で、延在方向の端部に位置する面s1は、法線方向に対して凹部18の外側に向かって傾斜する。このような構成により、アイソレータ10は、第1の導波路部16の上面から非相反性部材14までの距離が徐々に長くなるので、第1の導波路部16の実効屈折率を凹部18に重なる範囲から凹部18の範囲外に向かって緩やかに変化させる。その結果、アイソレータ10は、電磁波の損失を低減する。
【0047】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0048】
本開示において「第1」、「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」、「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1の導波路部は、第2の導波路部と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」、「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0049】
10 アイソレータ
11 基板
12 導波路部
13 絶縁層
14 非相反性部材
15 ボックス層
16 第1の導波路部
17 第2の導波路部
18 凹部
s1 第1の面
【要約】
アイソレータ10は基板11と複数の導波路部12と絶縁層13と非相反性部材14とを有する。複数の導波路部12は基板11の主面に沿って延在する。複数の導波路部12が主面状に並んで位置する。絶縁層13は複数の導波路部13の外縁の少なくとも一部を覆う。絶縁層13は主面の法線方向から見て第1の導波路部16と重なる位置に凹部18を有する。非相反性部材14は凹部18内で法線方向から見て第1の導波路部16の少なくとも一部と重なるように位置する。第1の導波路部16の延在方向に垂直な断面において(1)、(2)式を満たす。w1≦w3≦mfd1+mfd2-w2-2×x (1)、x≧(mfd2-w2)/2 (2)