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特許7579490マルチガスマスフローコントローラ及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】マルチガスマスフローコントローラ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20241031BHJP
   G01F 1/86 20060101ALI20241031BHJP
   G01F 1/68 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G05D7/06 B
G01F1/86
G01F1/68 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022529097
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044766
(87)【国際公開番号】W WO2021124876
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】16/720,891
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】724014121
【氏名又は名称】桑名金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ,アレクセイ ヴィ.
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-019917(JP,A)
【文献】特開平08-094406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0247390(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02365411(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00-7/06
G01F 1/56-1/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスフローコントローラを制御する方法であって、
前記マスフローコントローラの流量センサにプロセスガスを供給すること、
特性ガスに関連した前記流量センサ用の感度係数をプロセスガス用の変換係数で調整して、前記流量センサ用のガス調整された感度係数を取得すること、
特性ガスに関連した前記流量センサ用の非線形性データをプロセスガス用の非線形性係数で調整して、前記流量センサ用のガス調整された非線形性データを取得すること、
前記ガス調整された感度係数及び前記ガス調整された非線形性データを用いて、前記流量センサ用のガス調整された特性データを作成すること、
前記流量センサからの流量センサ信号を用いて、前記ガス調整された特性データから流量値を取得すること、並びに、
セットポイント信号と共に前記流量値を用いて、前記マスフローコントローラの弁を制御すること
を含む方法。
【請求項2】
前記流量センサ用のガス調整された感度係数を取得することは、
前記流量センサが特性ガスと使用された際に前記流量センサの理想的な信号を示す前記流量センサ用の感度係数を得ること、
前記マスフローコントローラのメモリから前記プロセスガス用の変換係数を得ること、及び、
前記感度係数を前記変換係数で調整して、前記ガス調整された感度係数を取得すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流量センサ用のガス調整された非線形性データを取得することは、
前記流量センサ用の特性ガスに関連した非線形性データを得ること、
前記プロセスガス用の非線形性係数を前記マスフローコントローラのメモリから得ること、及び、
前記流量センサ用の非線形性データを前記プロセスガス用の非線形性係数で調整して、前記ガス調整された非線形性データを取得すること
を含んでおり、
前記非線形性データは、前記特性ガスに関連して事前に作成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス調整された感度係数は、
特性ガス用の感度係数を取得し、前記特性ガス用の感度係数を前記プロセスガス用の変換係数で除することにより、
作成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ガス調整された特性データは{(f,si/CF+NLF×z)|i=1,2,・・・,n}で示され、CFは前記プロセスガス用の変換係数であり、NLFはガス特定の非線形性係数であり、s=SC×fであって、fは流量値であり、SCは前記流量センサ及び特性ガス用の感度係数であり、zはs-yに等しい非線形性値であって、yは{(f,y)|i=1,2,・・・,n}で示される前記特性ガス用の特性データの信号値である、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
マスフローコントローラであって、
ガス用の主流路、
前記主流路を通る前記ガスの流量を制御する弁、
前記主流路に連結しており、前記ガスの質量流量を示す流量センサ信号を提供する流量センサ、
感度係数をプロセスガス用の変換係数で調整して、前記流量センサが特性ガスと使用された際に前記流量センサの理想的な信号を示す前記流量センサ用のガス調整された感度係数を作成するように構成された感度調整モジュール、
前記流量センサ用の特性ガスに関連した非線形性データを前記プロセスガス用の非線形性係数で調整して、前記特性ガスに関連して事前に作成されるガス調整された非線形性データを作成するように構成された非線形性調整モジュール、
前記ガス調整された感度係数及び前記ガス調整された非線形性データを用いて、前記流量センサ用のガス調整された特性データを作成し、前記流量センサからの前記流量センサ信号を用いて、前記ガス調整された特性データから流量値を取得するように構成された特性モジュール、並びに、
セットポイント信号と共に前記流量値を用いて、前記マスフローコントローラの前記弁を制御するように構成されたコントローラ
を備えるマスフローコントローラ。
【請求項7】
前記感度係数、前記非線形性データ、前記変換係数、及び、前記非線形性係数を記憶する不揮発性メモリを備える、
請求項6に記載のマスフローコントローラ。
【請求項8】
前記変換係数及び前記非線形係数をネットワーク接続を介して受け取るように構成されたインターフェイスコンポーネントを備える、
請求項6に記載のマスフローコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスフローセンサ及びマスフローコントローラに関し、特に、限定はされないが、本発明は、マスフローセンサの精度を向上することに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なマスフローコントローラ(MFC)は、さまざまな工業プロセスの中でも、熱エッチング、ドライエッチングなどの工業プロセスにおけるガスの流量を設定し、測定し、制御する装置である。MFCの重要な部分は、装置を通って流れるガスの質量流量を測定する熱式流量センサである。
【0003】
(ガスの質量流量に対して完全な線形従属性を有する)理想的な流量センサ信号とは対照的に、熱式流量センサにて出力される流量センサ信号は、流体の実際の流量に対して非線形であり、熱式流量センサの感度はより大きい流量にて低下する。言い換えると、流量に対する流量センサ信号の感度は、一定ではなく、流量が増加するにつれて減少する。ここで、感度とは、測定されたガスの質量流量に対する流量センサ信号の割合を意味する。
【0004】
典型的なマスフローコントローラでは、熱式流量センサの非線形性が特性ガスを用いて特徴付けられ、MFCのメモリ内にテーブル形式で特性データとして格納される。熱式流量センサからの流量センサ信号は特性データを用いて調整され、測定流量を提供する。
【0005】
プロセスガスが制御される際に、このプロセスガスの生のガスデータにて特性データが調整されるが、この調整は(各マスフローコントローラの熱式流量センサ間の)違いを考慮していない。例えば、センサ構成及び電圧調整のような多くの内部の態様は熱式流量センサ間で変化するため、特性データへの調整の適用は不正確な流量測定の結果を招く。
【0006】
したがって、流量センサ信号へのマルチガス非線形性調整による現在の方法の欠点を克服する新規で画期的な特徴を提供できる方法及び/または装置の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
一態様は、マスフローコントローラの流量センサにプロセスガスを供給することと、流量センサ用のガス調整された感度係数を取得することと、流量センサ用のガス調整された非線形性データを取得することとを含む、マスフローコントローラを制御する方法に特徴付けられる。この方法は、また、ガス調整された感度係数及びガス調整された非線形性データを用いて、流量センサ用のガス調整された特性データを作成することを含む。流量センサからの流量センサ信号を用いて、ガス調整された特性データから流量値が取得され、セットポイント信号と共にこの流量値が用いられて、マスフローコントローラの弁を制御する。
【0008】
別の態様は、ガス用の主流路と、主流路を通るガスの流量を制御する弁と、主流路に連結しており、ガスの質量流量を示す流量センサ信号を提供する流量センサとを備えるマスフローコントローラに特徴付けられる。マスフローコントローラの感度調整モジュールは、感度係数をプロセスガス用の変換係数で調整して、流量センサ用のガス調整された感度係数を作成するように構成されている。マスフローコントローラの非線形性調整モジュールは、流量センサ用の特性ガスに関連した非線形性データをプロセスガス用の非線形性係数で調整して、ガス調整された非線形性データを作成するように構成されている。マスフローコントローラの特性モジュールは、ガス調整された感度係数及びガス調整された非線形性データを用いて、流量センサ用のガス調整された特性データを作成するように構成され、また、流量センサからの流量センサ信号を用いて、ガス調整された特性データから流量値を取得するように構成されている。マスフローコントローラのコントローラは、セットポイント信号と共に流量値を用いて、マスフローコントローラの弁を制御するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】流量センサ信号へのマルチガス非線形性調整のための改良された手法を内蔵したマスフローコントローラ(MFC)のブロック図である。
図2】開示された実施の形態に関連して実行される典型的な方法を示すフローチャートである。
図3図1に示されたMFCの態様を実現するために使用されるMFCの内部コンポーネントを示すブロック図である。
図4】特性ガスに関連した流量センサ用の特性データを示すグラフである。
図5】特性ガスに関連した流量センサ用の理想的な線形性信号を示すグラフである。
図6】流量センサ用の非線形性データの作成を示すグラフである。
図7】特性ガスに関連した流量センサ用の典型的な非線形性データを示すグラフである。
図8】プロセスガスに関連した流量センサ用の理想的な信号を示すグラフである。
図9】プロセスガスに関連した流量センサ用のガス調整された非線形性データを作成するための図7における非線形性データの調整を示すグラフである。
図10】流量センサ用のガス調整された特性データの作成を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照すると、図1は、多様なガスのタイプにわたって測定及び制御の正確性を改善するための手法を内蔵したMFC100を示している。これらのコンポーネントの図示された配置は、論理上のものであって、実際のハードウェア図を意味しない。よって、実際の実装時にあっては、これらのコンポーネントは、結合されたり、更に分離されたり、消去されたり、及び/又は、追加されたりすることができる。当業者であれば、図1に示されるコンポーネントは、ハードウェアにて構成されても良く、ファームウェアと結びついたハードウェアにて構成されても良く、及び/又は、ソフトウェアにて構成されても良いことを理解する。また、この明細書を考慮すれば、個々のコンポーネントの構造は当該分野における通常の技術として良く知られている。
【0011】
開示を通して、制御されるガスに関していくつかの例及び実施の形態が述べられるが、そのような例及び実施の形態が、ガス又は液体である流体に概して適用されることは認識すべきであり、流体は単体の混合物及び/又は化合物であっても良い。例えば、液体は硫酸であっても良く、ガスは窒素であっても良い。本適用によれば、MFC100は、ガス状の流体(例えば、窒素)、及び/又は液相の流体(例えば、塩酸)を、例えば半導体工場の工具へ送達する。多くの実施の形態におけるMFC100は、異なるタイプの流体を、変化する温度及び圧力の下で、異なるタイプのコンテナ、容器へ送達するように構成されている。
【0012】
図示するように、MFC100のベース105は、ガスが流れるバイパス110を有する。バイパス110は、主流路115とセンサ管120とに一定の割合でガスを分配する。結果として、センサ管120を通るガスの流量が、MFC100の主流路115を通って流れるガスの流量を示すことになる。
【0013】
本実施の形態では、センサ管120は、MFC100の流量センサ123の一部をなす小さな孔の管体である。図示するように、センサ素子125,130がセンサ管120の外側に(例えば、巻き付けられて)結合している。一つの例示される実施の形態では、センサ素子125,130は測温抵抗素子(例えば、導線のコイル)であるが、他のタイプのセンサ(例えば、抵抗温度検出器(RTD)、熱電対)を利用しても良い。更に、別の実施の形態は、異なるセンサ部材、センサからの信号を処理するための異なる構成を、本発明の範囲から逸脱しない限りで利用しても良い。
【0014】
図示するように、センサ素子125,130は、センサ素子回路135に電気的に接続されている。一般的に、センサ素子回路135は、(センサ素子125,130からの信号146,148に応じて)流量センサ信号150を提供するように構成されている。この流量センサ信号150は、センサ管120を通る流量を示しているため、MFC100の主流路115を通る流量を示している。
【0015】
流量センサ信号150は、センサ素子125,130間の温度差に影響を及ぼすセンサ管120に沿った温度プロフィールにより定義される。流量センサ信号150は、流量の範囲の全体にわたってセンサ管120を通る流量に対して非線形であり、流量センサ信号150の感度はより大きな流量で(より小さな流量に比べて)低下する。例えば、簡潔に図4を参照すると、窒素などの特性ガスにおける流量センサ信号150と流量センサ123を通る流体の質量流量との関係を表す流量センサ123用の典型的な特性データが示されている。図4に示すように、流量センサ123の感度がより大きな流量で(より小さな流量に比べて)低下していることを、典型的な特性データは示している。
【0016】
図4に示される特性データは、MFC100が顧客に販売される前に、特性プロセスの間に作成されて良い。この特性プロセスは、例えば、流量センサ123にガスを流すこと、流量センサ123の作動域の0%から100%までの流量値の範囲にわたる多様な流量のための正確なマスフローメータ(図示せず)を用いてガスの流量を測定すること、及び、測定された流量のそれぞれにおける流量センサ信号150の値を取得することを含んでいる。(特性ガスに関連した流量センサ123用の)特性データは、{(f,y)|i=1,2,・・・,n}で示され、fは流量値であり、yは信号値である。
【0017】
上述したように、典型的なマスフローコントローラにあって、流量センサ123の非線形性は、特性ガスによって特徴付けられ、MFC100のメモリ内にテーブル形式にて特性データとして格納される。その後、特性データを用いて流量センサ123からの流量センサ信号150が調整され、流量の測定を提供する。特性データはプロセスガス用の生のガスデータにより調整されるが、従来例の調整では、それぞれの異なるマスフローコントローラの熱式流量センサ間の差異が考慮されていない。例えば、熱式流量センサ間でセンサ構成及び電圧調整などの多くの内部態様が変動するので、特性データへの調整によって不正確な流れ測定及び正しくないマスフロー制御になる。
【0018】
本開示の態様は、流量センサ123が流量センサ123の2つの作動態様に関係している点に特徴付けされており、これらの2つの態様のそれぞれは、測定されて制御されるプロセスガスに基づいて調整される。より詳細には、図4に示される特性データは、1)(感度係数162として示される)理想的な信号部分と、2)(非線形性データ167として格納され、理想的な信号データと図4の特性データとの差異値として示される)非線形性部分との2つの部分に分離される。
【0019】
図2を参照すると、多様なガスのタイプにわたって改善された測定及び制御の正確性を提供するための方法が示されている。示すように、流量センサ123用の感度係数162が、特性データの理想的な信号部分の提示として、作成されてMFC100に格納される(ブロック200)。更に、流量センサ123用の非線形性データ167が、特性データの非線形性部分の提示として、作成されてMFC100に格納される(ブロック202)。図5図7は、まとめて、特性データを理想的な信号部分と非線形性部分とに分ける典型的な手法を示している。図1に示すように、非線形性データ167と感度係数162とは、流量センサ123用の特性ガスデータとして格納されている。
【0020】
図5を参照すると、線形である理想的な流量センサ信号を示す特性ガス用の典型的な理想的な信号部分を示すグラフが示されている。理想的な信号部分(理想信号とも称する)は、理想信号を表す線に沿った任意の点における理想的な流量センサ信号と質量流量との比である感度係数(SC)としての信号値で表される。流量センサ123は、(MFC100が制御するように設計されている)図5に示すような質量流量の範囲内において理想的な信号部分を実際には出力しないが、非常に低い流量にあっては、流量センサ123は線形状に作動する。結果として、感度係数を取得するために低い流量にて流量センサ信号150をサンプリングすることにより、理想的な信号部分が作成され、高い流量での理想的な信号値を算出するために、感度係数が使用される。理想的な信号部分の各理想的な信号値はs=SC×fで表され、SCは感度係数であって、fはi=1,2,・・・,nとした流量値である。
【0021】
図6に示すように、理想的な信号部分における複数の信号値sのそれぞれと、特性ガス用の特性データの対応する信号値yとの差を取得することにより、非線形性データが作成される。非線形性データは、{(f,z)|i=1,2,・・・,n}として表され、fは流量値であり、zは特性ガス用の流量値に関連した非線形性値であり、非線形性値zはs-yに等しい。図7は、結果としての非線形性データを示す図である。よって、流量センサ123用の感度係数162と非線形性データ167との関係に、流量センサ123は特徴付けられる。
【0022】
このような手法に合わせて、図1は、流量センサ123用の格納された感度係数162及び格納された非線形性データ167を示している。上述したように、この格納された感度係数162及び格納された非線形性データ167は、特性プロセスの間に作成され、MFC100が使用のために販売される前にMFC100内に格納される。
【0023】
理想的な信号部分(例えば、感度係数162)及び非線形性部分(例えば、非線形性データ167)についてMFC100の流量センサ123を特徴付けることは、使用されるプロセスガスのタイプに基づいてこれらの2つの作動態様が各別に調整されることを可能にする。
【0024】
更に、変換係数CFがMFC100内に格納されて、格納された変換係数164を作成する(ブロック204)。変換係数164のそれぞれは、特性ガスに関連したいくつかの特定パラメータ用の値のプロセスガスに関連したその特定パラメータ用の値に対する割合である。例えば、変換係数のそれぞれは、特定の流量値について、特性ガス用の理想的な信号値の特定のプロセスガス用の理想的な信号値に対する割合を表している。受け付けられた正確性の度合いに応じて、変換係数のそれぞれは、特性ガスの熱容量のプロセスガスの熱容量に対する割合を表す。
【0025】
更に、ガスに特有の非線形性係数(NLF)がMFC100内に格納されて、格納された非線形性係数168を作成する(ブロック206)。この非線形性係数は、経験的に又は実験的に(例えば、生のガスの測定結果から)由来する。
【0026】
ブロック200~206を参照して述べられた過程は、MFC100が利用者に販売される前に実行される特性プロセスの間に実施される。作動中に、プロセスガスの流量の制御を調整するために、特性データの理想的な信号部分(例えば、感度係数162)及び特性データの非線形性部分(例えば、非線形性データ167)が調整される。より詳細には、格納された感度係数162が感度調整モジュール160にて(プロセスガス用の)変換係数164の1つにより調整されて、ガス調整された感度係数(GASC)を取得する(ブロック208)。上述したように、感度係数は流量センサ123用の特性データの理想的な信号部分を表し、感度係数をプロセスガス用の変換係数で除することによりそのガス調整された感度係数が取得される(GASC=SC/CF)。図8は、特性ガス用の理想的な信号部分とプロセスガス用の理想的な信号部分とを示している。
【0027】
更に、非線形性調整モジュール166は、格納されている非線形性データ167をプロセスガス用の非線形性係数168の1つにより調整して、ガス調整された非線形性データ(GANL)を取得する(ブロック210)。図9は、ガス調整された特性データを作成するための特性ガス用の非線形性データの調整を示す。ガス調整された特性データは、プロセスガス用の非線形性値として表される。
【0028】
示すように、流量センサ123用及びプロセスガス用のガス調整された特性データ(GACD)は、ガス調整された感度係数(GASC)とガス調整された非線形性データ(GANL)の非線形性値とを用いて、特性モジュール169にて作成される(ブロック212)。図10は、ガス調整された特性データの作成を図示している。ガス調整された特性データは{(f,si/CF+NLF×z)|i=1,2,・・・,n}で表され、CFはプロセスガス用の変換係数であり、NLFはガス特定の非線形性係数である。
【0029】
作動時に、流量センサ123はMFC100を通って流れるガスに応じて流量センサ信号150を出力し、流量センサ123からの流量センサ信号150を用いて、ガス調整された特性データ(GACD)からの流量値が取得される(ブロック214)。図10にあって、例えば、fs1の値を有する流量センサ信号150はfv1の値を有する流量値に対応する。取得された流量値はセットポイント信号186と共に、MFC100の弁140を制御するために用いられる。特に、流量値は測定フロー信号161にて表され、セットポイント信号186は所望の質量流量を表すので、流量値が所望の質量流量に等しくなるまで、コントローラ170は弁140を制御する。
【0030】
明瞭化のために示されていないが、特性モジュール169がアナログ/デジタル変換器を用いて流量センサ信号150をデジタル表現に増幅及び変換できることは、認識されるべきである。この流量センサ信号150のデジタル表現は、流量センサ信号150に対応した流量値を取得するために用いられ、特性モジュール169は、取得された流量を表すデジタル信号として測定フロー信号161を出力する。
【0031】
弁140は、圧電式弁またはソレノイド弁にて実現されて良く、制御信号180は、電圧(圧電式弁の場合)または電流(ソレノイド弁の場合)であって良い。
【0032】
次に図3を参照すると、図1を参照して示されるMFC100を実現するために利用され得る内部コンポーネント1100を表すブロック図が示されている。示すように、表示部1112及び不揮発性メモリ1120はバス1122に接続しており、バス1122は、また、ランダムアクセメモリ(RAM)1124、(N個の処理コンポーネントを含む)処理部1126、ソレノイド/ピエゾ型弁1130に連結している弁駆動コンポーネント1128、インターフェイスコンポーネント1132、通信コンポーネント1134、及びマスフローセンサ1136に接続している。図3に示すコンポーネントは内部のコンポーネントを表しているが、図3はハードウェア図を意図しているのではなく、図3に示されるコンポーネントの多くは、共通の構成で実現されるかまたは追加の内部コンポーネント中に分配されても良い。更に、他の現存する及びまだ開発されていない内部コンポーネント及び構造が、図3を参照して示されている機能コンポーネントを実装するために利用され得ることは、間違いなく予期される。
【0033】
表示部1112は概して作動してユーザに内容の表示を提供し、いくつかの実装では、表示部1112はLCD表示装置またはOLED表示装置で実現される。例えば、表示部1112は、測定フロー信号161のグラフ的または数的な表現として、指し示された流量を提供して良い。一般的に、不揮発性メモリ1120は、デ-タと図1に示された機能コンポーネントに関連するコードを含む実行可能なコードとを格納する(例えば、永続的に格納する)ように機能する。例えばいくつかの実施の形態にあっては、不揮発性メモリ1120は、ブートローダコード、ソフトウェア、作動システムコード、ファイルシステムコード、及び、図1に関連して述べられたモジュールの1または複数の部分の実装を容易にするためのコードを含んでいる。
【0034】
多くの実装において、不揮発性メモリ1120はフラッシュメモリ(例えば、NANDまたはONENANDメモリ)で実現されるが、他のタイプのメモリが利用され得ることは容易に予想される。不揮発性メモリ1120からのコードを実行することは可能であるが、不揮発性メモリ1120内の実行可能なコードが典型的にRAM1124にロードされて処理部1126内のN個の処理コンポーネントのうちの1または複数にて実行される。示すように、処理部1126は、コントローラ170にて実行される機能によって利用されるアナログの温度及び圧力の入力を受け取るようにしても良い。RAM1124に接続されたN個の処理コンポーネントは一般的に作動して、図1に示される機能コンポーネントを発効させるために不揮発性メモリ1120に格納されている指示を実行する。
【0035】
インターフェイスコンポーネント1132は一般的に、ユーザがMFC100と相互に作用し合えるようにする1または複数のコンポーネントを表現する。インターフェイスコンポーネント1132は、例えば、キーパッド、タッチスクリーン、及び1または複数のアナログまたはデジタルのコントローラを含んでおり、インターフェイスコンポーネント1132がユーザからの入力をセットポイントに翻訳するように使用されても良い。また、通信コンポーネント1134は一般的に、MFC100が外部の処理ツールを含む外部のネットワーク及び装置と通信できるようにする。例えば、指し示された流量は通信コンポーネント1134を介して外部の装置へ通信されても良い。当業者であれば、通信コンポーネント1134が、様々な無線通信(例えば、WiFi)及び有線通信(例えば、イーサーネット)が可能である(例えば、集積されたまたは分散された)コンポーネントを含んでも良いことを認識する。
【0036】
図3に示されたマスフローセンサ1136は、図1に示された流量センサ123を実現するために当業者に知られたコンポーネントの集まりを示している。これらのコンポーネントは、センサ素子、増幅器、アナログ/デジタル変換器、フィルタを含んでも良い。
【0037】
これらの実施の形態に対する種々の変更は当業者にとって明らかであり、ここで定義される一般原則が、本発明の精神及び範囲を逸脱しないで他の実施の形態に適用されても良い。よって、本発明は、ここに示された実施の形態に限定されることを意図してはおらず、ここで開示された原理及び新規な特徴に一致する最も広い範囲に符合する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10