(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020178225
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2020027507
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】中川 修士
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/172622(WO,A2)
【文献】特表2007-521612(JP,A)
【文献】特開2003-094659(JP,A)
【文献】国際公開第2013/122047(WO,A1)
【文献】特開2014-030788(JP,A)
【文献】特開平03-066182(JP,A)
【文献】特開2012-164727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
H02N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース電極と、
前記ベース電極に対向する対向電極と、
前記ベース電極に接続された第1端子と、
前記対向電極に接続された第2端子と
を備え、
前記ベース電極は、
非金属基材と、
前記非金属基材の前記対向電極に対向する側面に配置された導電薄膜と、
前記導電薄膜の上に配置された絶縁層と
を備え、
前記第1端子は、前記導電薄膜に接続されており、
前記対向電極は、
前記第1端子と前記第2端子に電圧が印加された際に、前記ベース電極と前記対向電極との間に作用するクーロン力によって変形可能な可撓性を有する導電体からな
り、
前記ベース電極は、順に向かい合うように配置された複数並べられており、
前記対向電極は、前記ベース電極の間に配置されており、
前記ベース電極は、
前記対向電極に対向する側面に凹凸形状を有する非金属基材と、
前記凹凸形状を覆う導電薄膜と、
前記導電薄膜を覆う絶縁層と
を備え、
前記ベース電極と前記対向電極との間に電圧が印加された場合には、作用するクーロン力によって、前記対向電極は、前記ベース電極に引きつけられ、前記ベース電極の対向する面に合せて変形するとともに、前記ベース電極にくっつき、
前記ベース電極と前記対向電極との間への電圧の印加が停止された場合には、クーロン力がなくなり、前記対向電極の形状が戻り、前記対向電極は前記ベース電極から離れる、
アクチュエータ。
【請求項2】
前記絶縁層がセラミックスの薄膜である、請求項
1に記載されたアクチュエータ。
【請求項3】
前記絶縁層は、ペロブスカイト構造を有する、請求項
2に記載されたアクチュエータ。
【請求項4】
前記絶縁層が不織布である、請求項1から
3までの何れか一項に記載されたアクチュエータ。
【請求項5】
前記導電薄膜と前記絶縁層との間に導電ペーストまたは導電ゲルが配置された、請求項1から
4までの何れか一項に記載されたアクチュエータ。
【請求項6】
前記導電薄膜と前記絶縁層との間に硬化した導電材料が配置された、請求項1から
5までの何れか一項に記載されたアクチュエータ。
【請求項7】
前記導電薄膜が、金属薄膜である、請求項1から
6までの何れか一項に記載されたアクチュエータ。
【請求項8】
前記対向電極は、導電材を含有したエラストマで構成されている、請求項1から
7までの何れか一項に記載されたアクチュエータ。
【請求項9】
前記導電薄膜と前記対向電極とに電圧を印加する電源と、
前記導電薄膜および前記対向電極と前記電源との接続と切断とを切り替える第1スイッチと、
をさらに備えた、請求項1から
8までの何れか一項に記載されたアクチュエータ。
【請求項10】
前記第1スイッチを操作する制御装置をさらに備えた、請求項
9に記載されたアクチュエータ。
【請求項11】
前記電源を介在させずに、前記導電薄膜と前記対向電極とを電気的に接続する接続配線と、
前記接続配線に設けられ、前記接続配線によって前記導電薄膜と前記対向電極とが電気的に接続された状態と、前記接続配線が切断された状態とを切り替える第2スイッチとを備えた、請求項
9に記載されたアクチュエータ。
【請求項12】
前記第1スイッチが接続されたときに前記第2スイッチが切断され、かつ、前記第1スイッチが切断されたときに前記第2スイッチが接続されるように構成された制御装置をさらに備えた、請求項
11に記載されたアクチュエータ。
【請求項13】
前記導電薄膜を接地させる第1接地線と、
前記対向電極を接地させる第2接地線と、
前記第1接地線に設けられ、前記第1接地線の接続と切断を切り替える第3スイッチと、
前記第2接地線に設けられ、前記第2接地線の接続と切断を切り替える第4スイッチと
をさらに備えた、請求項
10に記載されたアクチュエータ。
【請求項14】
前記第1スイッチが接続されたときに前記第3スイッチと前記第4スイッチとがそれぞれ切断され、かつ、前記第1スイッチが切断されたときに前記第3スイッチと前記第4スイッチとがそれぞれ接続されるように構成された制御装置をさらに備え、請求項
13に記載されたアクチュエータ。
【請求項15】
予め定められた形状に成形された非金属基材を準備する工程と、
前記非金属基材の予め定められた領域の表面に導電薄膜を配置する工程と、
前記導電薄膜の上に絶縁層を配置する工程と
を含む、アクチュエータの製造方法。
【請求項16】
前記絶縁層が、セラミックスの薄膜で用意され、
前記導電薄膜の上に絶縁層を配置する工程において、前記セラミックスの薄膜が前記導電薄膜の上に配置される、請求項
15に記載されたアクチュエータの製造方法。
【請求項17】
前記セラミックスの薄膜が、不織布である、請求項
16に記載されたアクチュエータの製造方法。
【請求項18】
前記導電薄膜または前記セラミックスの薄膜の少なくとも一方に、導電ペーストまたは導電ゲルが塗布され、かつ、前記セラミックスの薄膜が前記導電薄膜の上に配置される、請求項
17に記載されたアクチュエータの製造方法。
【請求項19】
前記導電ペーストまたは導電ゲルを硬化させる工程を有する、請求項
18に記載されたアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許5714200号には、2つの電極間にポリマが挟まれたジェネレータおよびトランスデューサが開示されている。同公報で開示されるジェネレータおよびトランスデューサでは、2つの電極に電圧が印加されることによって生じる電極間の蓄積電荷のクーロン力によって、電極が引き合い、ポリマが変形し、電極間に変位を発生するとされている。
【0003】
特開2012-161957号公報には、低耐熱性の基材上に高温処理を施したセラミック膜を転写する方法が開示されている。同公報では、例えば、支持体上にポリイミド膜を形成する。ポリイミド膜の上に金属アルコキシドや金属塩化物塩などの金属塩の溶液を塗布した後、500℃以上に加熱し、焼成する。これによって、ポリイミド膜上に酸化チタンや酸化インジウムスズなどのセラミック膜が形成される。そして、セラミック膜がプラスチック等の低耐熱性の基材上に転写されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5714200号
【文献】特開2012-161957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許5714200号に開示された構成では、アクチュエータで得られる変位はポリマの圧縮変形を伴う。かかる変形では、アクチュエータとしてより大きな変位が得られにくい。また、用途によっては、アクチュエータは軽量化が求められる。
【0006】
ところで、アクチュエータとして取り出される仕事量は、発生する力と、変位量の大きさが重要な性能となりうる。本発明者の知見では、誘電弾性体を一対の電極で挟んだアクチュエータでは、発生する力と変位量の大きさとの間には、背反する関係がある。発生する力Fは、F=QE=(CV)×(V/d)で表される。ここで、Q:蓄積電荷、E:電界強度、C:誘電弾性体の静電容量、d:電極間距離、V:印加電圧である。つまり、電極間距離dは、誘電弾性体の厚さで定まる。大きな変位量を取り出すためには、誘電弾性体の厚さ(≒電極間距離d)を大きくする必要がある。しかし、誘電弾性体の厚さ(≒電極間距離d)を大きくすると、発生する力Fは小さくなる。このため、単純に誘電弾性体を一対の電極で挟んだアクチュエータでは、大きな変位量を取り出すことが難しい。また、誘電弾性体として用いられうる誘電エラストマには、高い比誘電率を示す材料が乏しく、十分な性能が得られにくい。本発明者は、かかる観点で、アクチュエータの新規構造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示されるアクチュエータは、ベース電極と、ベース電極に対向する対向電極と、ベース電極に接続された第1端子と、対向電極に接続された第2端子とを備えている。ベース電極は、非金属基材と、非金属基材の対向電極に対向する側面に配置された導電薄膜と、導電薄膜の上に配置された絶縁層とを備えている。第1端子は、導電薄膜に接続されている。対向電極は、第1端子と第2端子に電圧が印加された際に、ベース電極と対向電極との間に作用するクーロン力によって変形可能な可撓性を有する導電体からなる。かかるアクチュエータによれば、ベース電極が非金属基材で構成されるので、軽量化が図られる。また、アクチュエータの駆動に、絶縁層の大きな圧縮変形を伴わないため、発生するクーロン力に対して、大きな変位量が得られ得る。
【0008】
ベース電極は、順に向かい合うように配置された複数並べられていてもよい。対向電極は、ベース電極の間に配置されていてもよい。
【0009】
また、ベース電極は、対向電極に対向する側面に凹凸形状を有する非金属基材と、凹凸形状を覆う導電薄膜と、導電薄膜を覆う絶縁層とを備えていてもよい。
【0010】
絶縁層は、セラミックスの薄膜であってもよい。絶縁層は、ペロブスカイト構造を有していてもよい。絶縁層が不織布であってもよい。導電薄膜と絶縁層との間に導電ペーストまたは導電ゲルが配置されていてもよい。導電薄膜と絶縁層との間に硬化した導電材料が配置されていてもよい。導電薄膜が、金属薄膜であってもよい。対向電極は、導電材を含有したエラストマで構成されていてもよい。
【0011】
アクチュエータは、導電薄膜と対向電極とに電圧を印加する電源と、導電薄膜および対向電極と電源との接続と切断とを切り替える第1スイッチと、をさらに備えていてもよい。また、アクチュエータは、第1スイッチを操作する制御装置をさらに備えていてもよい。また、アクチュエータは、電源を介在させずに、導電薄膜と対向電極とを電気的に接続する接続配線と、接続配線に設けられ、接続配線によって導電薄膜と対向電極とが電気的に接続された状態と、接続配線が切断された状態とを切り替える第2スイッチとを備えていてもよい。また、アクチュエータは、第1スイッチが接続されたときに第2スイッチが切断され、かつ、第1スイッチが切断されたときに第2スイッチが接続されるように構成された制御装置をさらに備えていてもよい。
【0012】
他の形態として、アクチュエータは、導電薄膜を接地させる第1接地線と、対向電極を接地させる第2接地線と、第1接地線に設けられ、第1接地線の接続と切断を切り替える第3スイッチと、第2接地線に設けられ、第2接地線の接続と切断を切り替える第4スイッチとをさらに備えていてもよい。かかるアクチュエータは、第1スイッチが接続されたときに第3スイッチと第4スイッチとがそれぞれ切断され、かつ、第1スイッチが切断されたときに第3スイッチと第4スイッチとがそれぞれ接続されるように構成された制御装置をさらに備えていてもよい。
【0013】
アクチュエータの製造方法は、予め定められた形状に成形された非金属基材を準備する工程と、非金属基材の予め定められた領域の表面に導電薄膜を配置する工程と、導電薄膜の上に絶縁層を配置する工程とを含んでいてもよい。かかるアクチュエータの製造方法によれば、アクチュエータの軽量化が図られる。
【0014】
ここで、絶縁層が、セラミックスの薄膜で用意されてもよい。この場合、導電薄膜の上に絶縁層を配置する工程において、セラミックスの薄膜が導電薄膜の上に配置されてもよい。また、セラミックスの薄膜は、不織布であってもよい。導電薄膜またはセラミックスの薄膜の少なくとも一方に、導電ペーストまたは導電ゲルが塗布されてもよい。そして、当該セラミックスの薄膜が当該導電薄膜の上に配置されてもよい。さらに導電ペーストまたは導電ゲルを硬化させる工程を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、アクチュエータ10の模式図である。
【
図2】
図2は、アクチュエータ10の模式図である。
【
図3】
図3は、アクチュエータ10を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、アクチュエータ10を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、他の形態に係るアクチュエータ10Aを示す模式図である。
【
図6】
図6は、他の形態に係るアクチュエータ10Aを示す模式図である。
【
図7】
図7は、他の形態に係るアクチュエータ10Bを示す模式図である。
【
図8】
図8は、他の形態に係るアクチュエータ10Cを示す模式図である。
【
図9】
図9は、アクチュエータ10の模式図である。
【
図11】
図11は、他の実施形態にかかるアクチュエータ10Dを模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、他の実施形態にかかるアクチュエータ10Dを模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、他の実施形態にかかるアクチュエータ10Eを模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、他の実施形態にかかるアクチュエータ10Eを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ここで開示されるアクチュエータの一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。本発明は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。
【0017】
〈アクチュエータ10〉
図1および
図2は、アクチュエータ10の模式図である。
図3および
図4は、アクチュエータ10を模式的に示す斜視図である。なお、
図3と
図4では、それぞれ電源50,スイッチ52および制御装置60などの図示が省略されている。
図1および
図3では、それぞれスイッチ52がOFFの状態が示されている。
図2および
図4では、それぞれスイッチ52がONの状態が示されている。アクチュエータ10は、
図1に示されているように、ベース電極11と、対向電極12とを備えている。
図1および
図2に示されているように、ベース電極11に接続された第1端子31と、対向電極12に接続された第2端子32とを備えている。
図1および
図2に示された形態では、ベース電極11のうち少なくとも対向電極12に対向する面は、凹凸形状を有している。さらに、ベース電極11のうち少なくとも対向電極12に対向する面は、絶縁層11cで覆われている。対向電極12は、ベース電極11に対向するように配置されている。対向電極12は、ベース電極11と対向電極12との間に電圧を印加した際に生じるクーロン力によって変形可能な可撓性を有する導電体からなる。
図1および
図2に示された形態では、対向電極12は、可撓性を有するプレート状の導電体からなる。
【0018】
〈ベース電極11〉
ベース電極11は、
図1および
図2に示されているように、非金属基材11aと、導電薄膜11bと、絶縁層11cとを備えている。
【0019】
〈非金属基材11a〉
非金属基材11aは、例えば、セラミックスやプラスチックで用意されてもよい。セラミックスで用意される場合には、焼成されたセラミックスで用意されてもよい。また、プラスチックで用意される場合には、所要の剛性を備えているとよい。ここで、非金属基材11aとしてセラミックスやプラスチックに用いられる材料は、ベース電極11としての所要の機械的強度が確保される材料が選択されるとよい。かかるセラミックス材料には、例えば、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)などが挙げられる。また、非金属基材11aとして用いられるプラスチック材料には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられうる。また、非金属基材11aとして用いられるプラスチック材料は、ガラス繊維や炭素繊維などを含む繊維強化プラスチックであってもよい。
【0020】
〈導電薄膜11b〉
導電薄膜11bは、非金属基材11aの対向電極12に対向する側面に配置されている。導電薄膜11bは、例えば、導電性の良い金属材料からなる金属薄膜であるとよい。金属薄膜に用いられる材料としては、例えば、銅やアルミなどが挙げられる。また、金属薄膜には、酸化されにくい材料として、白金や金が用いられてもよい。かかる導電薄膜11bとして金属薄膜は、例えば、非金属基材11aの対向電極12に対向する側面にスパッタリングやCVD法(化学的気相法)などの成膜方法によって形成されているとよい。第1端子31は、かかる導電薄膜11bに電気的に導通するように接続されているとよい。なお、導電薄膜11bとして、ここでは金属薄膜が例示されているが、導電薄膜11bは金属薄膜に限定されない。導電薄膜11bは、導電性を有するシート状の材料でもよい。導電性を有するシート状の材料からなる導電薄膜11bは、後述する導電ゲルで作製されてもよい。
【0021】
〈絶縁層11c〉
絶縁層11cは、導電薄膜の上に配置されている。絶縁層11cは、例えば、高誘電体セラミック薄膜で形成されているとよい。ベース電極11と対向電極12との間の絶縁性は、かかる絶縁層11cによって、確実に確保されるとよく。また、絶縁層11cによって、ベース電極11に溜った電荷が確実に、維持されるとよい。このような観点において、絶縁層11cには、セラミックスからなる強誘電体が用いられうる。セラミックスからなる強誘電体は、例えば、ペロブスカイト構造を有していてもよい。
【0022】
ペロブスカイト構造を有する強誘電体としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3),チタン酸鉛(PbTiO3),チタン酸ジルコン鉛(Pb(Zr,Ti)O3),チタン酸ジルコン酸ランタン鉛((Pb,La)(Zr,Ti)O3),チタン酸ストロンチウム(SrTiO3),チタン酸バリウムストロンチウム((Ba,Sr)TiO3)ニオブ酸カリウムナトリウム((NaK)NbO3)などが挙げられる。なお、絶縁層11cに用いられる材料は、ここで例示されるものに限定されない。上述のようなベース電極11の導電薄膜11bと対向電極12との間に大きなクーロン力を得るとの観点において適当な材料が採用されうる。また、適当な添加剤を含む複合材料でもよい。例えば、チタン酸バリウムは、CaZrO3やBaSnO3などの物質が固溶されていてもよい。
【0023】
チタン酸バリウムは、比誘電率が1000~10000前後と高い強誘電体の代表的な材料である。チタン酸ジルコン酸鉛は比誘電率が500~5000であり、チタン酸ストロンチウムは比誘電率が200~500である。絶縁層11cには、このように比誘電率が高い材料を採用することができる。なお、比誘電率を例示しているが、同じ材料でも、厚さや結晶構造や、結晶構造の緻密さや測定条件(例えば、温度)や測定装置などによって比誘電率が変動しうる。絶縁層11cは、アクチュエータ10の予め定められた使用環境に応じて所要の性能を有するものであればよい。なお、ここでは、絶縁層11cに用いられる材料の好適な例として、ペロブスカイト構造を有する強誘電体を例示している。絶縁層11cに用いられる材料は、特段の言及がない限りにおいて、ペロブスカイト構造を有する強誘電体に限定されない。この実施形態では、絶縁層11cは、チタン酸バリウムで構成されている。ここでは、絶縁層11cを例に説明されている。他の形態の絶縁層についても、ここで例示される材料が適宜に用いられる。
【0024】
絶縁層11cは、所要の比誘電率を有しているとよい。かかる絶縁層11cによって、ベース電極11と対向電極12との間に電圧が印加されたときに、ベース電極11と対向電極12との間に所要のクーロン力が発生する。絶縁層11cの比誘電率は、例えば、セラミックス、例えば、ファインセラミックスが採用されることによって、絶縁層11cの比誘電率を1000以上とすることができる。ここで例示される比誘電率の測定には、例えば、Radiant Technologies社(米国)の強誘電体測定装置であるプレシジョンLCIIが用いられうる。また、絶縁層11cの比誘電率は、温度や、測定用の電流の周波数や、絶縁層を形成する材料の結晶構造などに依存する傾向がある。絶縁層11cの比誘電率は、例えば、23℃程度の常温、100Hz~1000Hzで予め定められた周波数によって測定するとよい。絶縁層11cは、アクチュエータ10の予め定められた使用環境に応じて、所要の比誘電率を発揮するものが用いられるとよい。
【0025】
ここでは、ベース電極11は、非金属基材11aを基材としている。絶縁層11cにセラミック薄膜が採用されている。セラミック薄膜は焼成する必要があり、その際、高温で処理される。非金属基材11aに、絶縁層11cとしてのセラミック薄膜を焼成するのに要する所要の耐熱性能を有する材料が用いられている場合には、非金属基材11aの上に導電薄膜11bを形成し、その上に絶縁層11cとなるセラミック薄膜の素材粒子を載せて、焼成してもよい。しかし、非金属基材11aが所要の耐熱性を有さない場合には、かかる方法は採用できない。
【0026】
非金属基材11aが所要の耐熱性を有さない場合には、非金属基材11aの上に導電薄膜11bを形成する。絶縁層11cは、非金属基材11aとは別体で形成したものを用意し、導電薄膜11bの上に配置してもよい。絶縁層11cとなるセラミック薄膜を別体で用意する方法としては、特開2012-161957号公報で開示されるように、低耐熱性基材の上に高温処理を施したセラミック膜を転写する方法が採用されうる。例えば、支持体上にポリイミド膜を形成する。ポリイミド膜の上に、強誘電体として代表的なチタン酸バリウム(BaTiO3)の金属塩のゲル溶液を用意し、支持体の上に形成されたポリイミド膜に塗布する。その後、500℃以上に加熱し、焼成する。これによって、ポリイミド膜の上にチタン酸バリウム(BaTiO3)のセラミック膜が形成される。そして、かかるチタン酸バリウムのセラミック膜が、非金属基材11aの上に形成された導電薄膜11bの上に転写されるとよい。ここで、チタン酸バリウムの焼成温度は、大凡550℃である。チタン酸バリウムのセラミック膜を作製する際に用いられるポリイミドは、チタン酸バリウムの焼成温度に対する所要の耐熱性を有しているとよい。チタン酸バリウムのセラミック膜を作製する際に用いられるポリイミドは、例えば、大凡600℃程度の耐熱性を有しているとよい。
【0027】
かかる絶縁層11cは、所要の緻密さを有するとよく、また、薄ければ薄いほど、ベース電極11の導電薄膜11bと、対向電極12との電極間距離が近くなる。絶縁層11cが薄ければ薄いほど、ベース電極11と対向電極12とに電圧が印加された際に高いクーロン力が生じる。また、絶縁層11cは、ベース電極11と対向電極12とに電圧が印加された際に、ベース電極11に溜った電荷の漏れが小さいほどよい。ベース電極11と対向電極12との間に大きなクーロン力を得るとの観点において、絶縁層11cは、リーク電流(換言すれば、電荷の漏れ)が少なく、絶縁破壊強度が高く、かつ、ベース電極11の導電薄膜11bを薄く覆っているとよい。かかる観点において、絶縁層11cは、例えば、ポリイミド膜のような耐熱性を有する膜の上にセラミックスの薄膜として形成され、焼成された後で、導電薄膜11bの上に転写されるものでもよい。なお、絶縁層11cの形成方法は、上述した方法に限定されない。絶縁層11cの形成方法には、絶縁層11cに用いられる材料に応じ、リーク電流(換言すれば、電荷の漏れ)が少なく、かつ、絶縁破壊強度が高くなるように適当な薄膜形成方法が適宜に採用されうる。
【0028】
〈対向電極12〉
対向電極12は、ベース電極11に対向し、かつ、柔軟な(可撓性を有する)導電体からなる。詳しくは、この実施形態では、対向電極12は、
図1に示されているように、絶縁層11cが介在した状態でベース電極11に対向している。
図2に示されているように、ベース電極11と対向電極12との間に電圧が印加されている状態では、ベース電極11との間に作用するクーロン力によって、対向電極12は、ベース電極11にくっつくように変形する。
図1に示されているように、ベース電極11と対向電極12との間に電圧が印加されていない状態では、クーロン力が作用しない。このため、対向電極12は、形状が戻る。対向電極12は、クーロン力が作用しない状態において、形状が戻るように所要の弾性力を備えているとよい。
【0029】
かかる観点で、対向電極12は、例えば、導電ゴムや導電ゲルなどで形成されうる。この実施形態では、対向電極12には、導電ゴムが採用されている。対向電極12に採用される導電ゴムは、導電材を混ぜ合わせて成形したエラストマであるとよい。ここで導電材には、カーボンブラックやアセチレンブラックやカーボンナノチューブの微粉末や、銀や銅の金属微粉末、シリカやアルミナなど絶縁体にスパッタなどで金属をコートしたコアシェル構造の導電体微粉末が挙げられる。導電ゲルとしては、例えば、3次元ポリマーマトリックスの中に、水や保湿剤などの溶媒、電解質、添加剤などを保持させた機能性ゲル材料が採用されうる。このようなゲル材料には、例えば、積水化成品工業株式会社のテクノゲル(登録商標)が採用されうる。
【0030】
また、対向電極12は、ベース電極11に沿って弾性変形しうる板ばねで構成されていてもよい。例えば、シート状の薄い板ばねでもよい。この場合、対向電極12は、金属で構成されていてもよい。このように、対向電極12は、適度な可撓性を有する部材が採用されてもよい。また、対向電極12は、粘弾性体や弾塑性体でもよい。この場合、対向電極12は、例えば、弾性域とみなせる範囲で使用されればよい。ここでは、対向電極12を例に説明されている。他の形態の対向電極についても、ここで例示される材料が適宜に用いられる。
【0031】
このようにアクチュエータ10のベース電極11は、非金属基材11aと、非金属基材11aの対向電極12に対向する側面に配置された導電薄膜11bと、導電薄膜11bの上に配置された絶縁層11cとを備えている。このアクチュエータ10では、ベース電極11の基材が、非金属材料で構成されている。このため、基材全体が金属で構成されている場合に比べて、ベース電極11が軽量に作製される。電源50に接続された第1端子31は、ベース電極11の導電薄膜11bに接続されている。第2端子32は、対向電極12に接続されている。第1端子31と第2端子32とは、配線51を通じて電源50に接続されている。配線51には、スイッチ52が設けられている。スイッチ52には、例えば、スイッチング素子が用いられる。
【0032】
スイッチ52がOFFの状態の状態では、
図1および
図3に示されているように、対向電極12は、ベース電極11の対向する面に全体としてくっついていない。
図2および
図4に示されているように、スイッチ52がONの状態では、ベース電極11と対向電極12との間に作用するクーロン力によって、対向電極12は、ベース電極11に引きつけられ、ベース電極11の対向する面に合せて変形するとともに、ベース電極11にくっつく。スイッチ52がOFFの状態では、クーロン力がなくなり、対向電極12の形状が戻り、対向電極12はベース電極11から離れる。このように、
図1および
図2に示されたアクチュエータ10では、スイッチ52がONの状態と、スイッチ52がOFFの状態とで、対向電極12が変形し、これに応じて駆動する。スイッチ52のON、OFFは、制御装置60によって切り替えられるとよい。
【0033】
かかるアクチュエータ10によれば、第1端子31と第2端子32に電圧が印加された際に、ベース電極11と対向電極12との間に作用するクーロン力によって、対向電極12が変形する。アクチュエータ10は、対向電極12の変形に伴い駆動する。アクチュエータ10の駆動に、絶縁層11cの大きな圧縮変形を伴わないため、発生するクーロン力に対して、大きな変位量が得られ得る。
【0034】
アクチュエータ10の絶縁層11cには、セラミックの薄膜が用いられている。金属の基材の上にセラミックの薄膜を形成する場合、焼成時の熱膨張率の差に起因して、セラミックスの薄膜に亀裂が生じる場合がある。この実施形態では、アクチュエータ10の絶縁層11cは、基材11aおよび導電薄膜11bとは別体で作製されている。このため、絶縁層11cに亀裂が生じにくい。また、基材11aや導電薄膜11bは、絶縁層11cを焼成する際の熱処理の影響を受けない。このため、基材11aや導電薄膜11bに用いられる材料の選定に、自由度が得られる。例えば、基材11aには、絶縁層11cの焼成温度よりも低い温度で溶融する材料、例えば、プラスチックを用いることができる。
【0035】
図5および
図6は、他の形態に係るアクチュエータ10Aを示す模式図である。
図5では、アクチュエータ10Aのスイッチ52がOFFの状態が示されている。
図6では、アクチュエータ10Aのスイッチ52がONの状態が示されている。アクチュエータ10Aでは、
図5および
図6に示されているように、複数のベース電極11が、順に向かい合うように並べられている。複数のベース電極11のうち隣接するベース電極11の間に、対向電極12がそれぞれ配置されている。この場合、ベース電極11の基材11aのうち対向電極12に対向する面は、導電薄膜11bで覆われており、さらに絶縁層11cで覆われているとよい。そして、複数のベース電極11を並列に接続する第1配線31aを有していてもよい。また、複数の対向電極12を並列に接続する第2配線32aを有していてもよい。
【0036】
図6に示されているように、スイッチ52がONの状態でベース電極11と対向電極12との間に電圧が印加されている状態では、ベース電極11との間に作用するクーロン力によって、対向電極12は、ベース電極11にくっつくように変形する。
図5に示されているように、スイッチ52がOFFの状態でベース電極11と対向電極12との間に電圧が印加されていない状態では、クーロン力が作用しない。このため、対向電極12は、形状が戻り、ベース電極11の間隔が広がる。
【0037】
この実施形態では、ベース電極11の非金属基材11aは、対向電極12に対向する側面に、それぞれ凹凸形状を有している。導電薄膜11bは、非金属基材11aの凹凸形状を覆っている。絶縁層11cは、さらに導電薄膜11bを覆っている。対向電極12は、スイッチ52がONの状態でベース電極11の凹凸形状に沿って変形し、ベース電極11にくっつく。ここで、向かい合うベース電極11の凹凸形状は互いに嵌まり合う形状を有している。このため、スイッチ52がONの状態でベース電極11の凹凸形状に沿って対向電極12が変形し、ベース電極11にくっつくと、向かい合うベース電極11の凹凸形状が嵌まり合い、ベース電極11の間隔が狭くなる。また、スイッチ52がOFFの状態でベース電極11と対向電極12との間に電圧が印加されていない状態では、クーロン力が作用しない。このため、対向電極12は、形状が戻り、向かい合うベース電極11の間隔が広がる。ここで向かい合うベース電極11の変位がアクチュエータ10の変位量として得られる。
【0038】
図7は、他の形態に係るアクチュエータ10Bを示す模式図である。
図8は、他の形態に係るアクチュエータ10Cを示す模式図である。
図7に示されているように、対向電極12は、波板形状でもよい。また、
図8に示されているように、アクチュエータ10Cの対向電極12は、板ばねでもよい。これらの場合、
図7および
図8に示されているように、ベース電極11は、対向電極12に対向する面が平坦であってもよい。このように、ベース電極11や対向電極12の形状は種々変更されうる。
【0039】
例えば、対向電極12が、波板形状である場合には、
図7に示されているように、この際、スイッチ52がOFFになると、クーロン力がなくなり、対向電極12の形状が波板形状に復元する。対向電極12の形状が復元することによって、一対のベース電極11の間隔が広げられる。スイッチ52がONになると、図示は省略するが、ベース電極11と対向電極12との間にクーロン力が作用する。このとき、対向電極12が変形し、対向電極12がベース電極11にくっつく。このため、ベース電極11の間隔が狭くなる。
【0040】
また、
図8に示されているように、対向電極12は、板ばねでもよい。この場合、対向電極12は、
図8に示されているように、跳ね上がる部位12aを有していてもよい。跳ね上がる部位12aは、スリット12bによって、対向電極12において切り離されており、スリット12bによって形成された穴12cに収まりうる。この場合、スイッチ52がOFFになると、クーロン力がなくなり、対向電極12の形状が復元し、跳ね上がる部位12aによって、対向電極12を挟むベース電極11の間隔が広がる。これに対して、スイッチ52がONになると、図示は省略するが、ベース電極11と対向電極12との間にクーロン力が作用する。このとき、対向電極12が変形し、対向電極12がベース電極11にくっつく。このため、ベース電極11の間隔が狭くなる。このとき、跳ね上がる部位12aは、スリット12bによって形成された穴12cに収まる。かかる対向電極12の変形によって、対向電極12を挟むベース電極11の間隔が狭くなる。また、スイッチ52がOFFになると、クーロン力がなくなり、対向電極12が復元する。対向電極12が復元すると、
図8に示されているように、跳ね上がる部位12aが跳ね上がり、対向電極12を挟むベース電極11の間隔が広くなる。
【0041】
このように、対向電極12およびベース電極11の形状は、種々変更されうる。何れの場合も、アクチュエータ10は、ベース電極11間の距離の変化を変位量として出力することができる。アクチュエータ10は、絶縁層11cの圧縮変形による制限を受けにくく大きな変位量が得られ得る。この場合も、ベース電極11は、非金属基材11aと、非金属基材11aの対向電極12に対向する側面に配置された導電薄膜11bと、導電薄膜11bの上に配置された絶縁層11cとを備えているとよい。
【0042】
次に、ベース電極11の構造について、他の形態をさらに説明する。
【0043】
ここで、
図9および
図10は、アクチュエータ10の模式図である。
図9および
図10では、アクチュエータ10は、より単純化されて図示されている。
図9では、アクチュエータ10Aのスイッチ52がOFFの状態が示されている。
図10では、アクチュエータ10Aのスイッチ52がONの状態が示されている。なお、
図9および
図10は、アクチュエータ10の模式図であり、実際のアクチュエータを必ずしも示していない。以下、
図9および
図10を参照しつつ、特に、アクチュエータ10のベース電極11の他の形態を説明する。
【0044】
例えば、アクチュエータ10のベース電極11の基材11aには、金属で導通性を有する材料が用いられてもよい。この場合、導電薄膜11bが設けられず、基材11aの上に絶縁層11cが配置されてもよい。しかし、このような金属の基材11aの上で、絶縁層11cとなるセラミックスの薄膜を焼成すると、絶縁層11cに亀裂が生じる場合がある。基材11aに用いられた金属と、絶縁層11cに用いられたセラミックスとの熱膨張率の大きな違いがある。例えば、チタン酸バリウムの熱膨張率は、大凡5×10-6/Kである。銅の熱膨張率は、大凡16.8×10-6/Kである。アルミニウムの熱膨張率は、大凡23×10-6/Kである。ステンレス(SUS410)の熱膨張率は、大凡10.4×10-6/Kである。ここで挙げる熱膨張率は、線熱膨張率である。金属からなる基材11aとセラミックスからなる絶縁層11cとでは、熱膨張率が大きく異なる。かかる熱膨張率の違いにより、熱膨張率が小さく薄膜で形成されたセラミックスの薄膜からなる絶縁層11cは、焼成時に、金属の基材11aの膨張に追従できない。このため、セラミックスの薄膜からなる絶縁層11cに亀裂が生じる場合がある。
【0045】
このような亀裂を抑制するため、ベース電極11の基材11aは、例えば、絶縁層11cに用いられるセラミックスと同程度の熱膨張率を有する材料が用いられていてもよい。例えば、ベース電極11の基材11aは、焼成前のセラミックスの原料粉末を成形した成形体で用意されてもよい。その上に、導電薄膜11bとしての金属薄膜が成膜される。次に、導電薄膜11bとしての金属薄膜の上に、絶縁層11cとなる高誘電体セラミックスの粉末が所定の厚さで敷き詰められる。絶縁層11cとなる高誘電体セラミックスは、ゲル形態で所定の厚さで、導電薄膜11bとしての金属薄膜の上に塗布されてもよい。ここで基材11aと絶縁層11cとには、同程度の熱膨張率の材料が用いられていてもよい。基材11aと絶縁層11cとが、同程度の熱膨張率の材料が用いられていると、絶縁層11cが焼成される際に、焼成にされる際の熱処理に起因して絶縁層11cに亀裂が生じにくくなる。
【0046】
例えば、絶縁層11cにチタン酸バリウムに用いられる場合には、基材11aには、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)などが用いられるとよい。ここで、チタン酸バリウムの熱膨張率は、大凡5×10-6/Kである。シリコン(Si)の熱膨張率は、大凡3.9×10-6/Kである。炭化ケイ素(SiC)の熱膨張率は、大凡4.4×10-6/Kである。窒化アルミニウム(AlN)の熱膨張率は、大凡4.6×10-6/Kである。これらは、基材11aに金属が用いられる場合に比べて、チタン酸バリウムとの熱膨張率の差が小さく抑えられる。このように、絶縁層11cにチタン酸バリウムに用いられる場合には、基材11aには、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)などが選定されてもよい。このように、絶縁層11cにチタン酸バリウムに用いられる場合には、基材11aには、好ましくは3×10-6/K以上、より好ましくは3.5×10-6/K以上、また、好ましくは7×10-6/K以下、より好ましくは6.5×10-6/K以下の線熱膨張率を有する材料が選定されるとよい。
【0047】
このように基材11aには、セラミックス材料が用いられていてもよい。この場合、絶縁層11cに用いられるセラミックス材料と、熱膨張率の差が小さければ小さいほどよい。また、基材11aの上に配置される導電薄膜11bとしては、金属薄膜が採用されているとよい。特に、焼成の際の熱処理において酸化されにくい材料が選定されるとよい。かかる観点において、導電薄膜11bには、白金や金が用いられるとよい。白金や金は、酸化されにくいので、焼成の際に、絶縁層11cとして用いられるチタン酸バリウムから酸素原子を奪いにくい。このため、焼成の際に、チタン酸バリウムの結晶構造を劣化させにくい。
【0048】
本発明者の知見では、例えば、シリコン(Si)の基材の上に導電薄膜として白金の薄膜を150nm~200nmの厚さで成膜する。次に、チタン酸バリウムの絶縁層を150nm~200nmの厚さで成膜し、焼成したところ、チタン酸バリウムからなる絶縁層には亀裂や剥離などが確認されなかった。かかる構造をアクチュエータ10のベース電極11に適用するとよい。
【0049】
また、絶縁層11cは、セラミックスの不織布で用意され、焼成されてもよい。例えば、絶縁層11cとなるセラミックスの薄膜は、金属基材11aの上に形成されてもよい。つまり、導電薄膜11bを配置せず、金属基材11aの上に、不織布の形態で用意されたセラミックスの不織布を絶縁層11cとして配置して、焼成してもよい。この場合、不織布の形態で用意されているので、繊維形態であり、多少動くことができる。このため、焼成にされる際の熱処理に起因して絶縁層11cに亀裂が生じにくい。なお、セラミックスの不織布は、絶縁層11cとして、所要の緻密さを有するとよく、また、薄ければ薄いほどよい。かかるセラミックスの不織布を得る方法として、電解紡糸法が挙げられる。電解紡糸法によれば、細いセラミックス素材の繊維によって構成された薄く緻密な不織布のシートが得られる。
【0050】
さらにベース電極11の他の形態として、絶縁層11cとなるセラミックスの薄膜は、基材11aや導電薄膜11bとは別体で作製され、かつ、焼成され、基材11aや導電薄膜11bの上に配置されてもよい。この場合、絶縁層11cが、基材11aや導電薄膜11bとは別体で作製されるので、絶縁層11cを焼成する際の熱処理において、絶縁層11cに亀裂が生じにくい。例えば、絶縁層11cとなるセラミックスの薄膜は、焼成された後、金属基材11aの上に配置されてもよい。つまり、導電薄膜11bを配置せず、金属基材11aの上に、焼成されたセラミックスの薄膜を絶縁層11cとして配置してもよい。
【0051】
また、絶縁層11cとなるセラミックスの薄膜は、基材11aや導電薄膜11bとは別体で作製されることによって、基材11aには、プラスチックのような非金属基材11aが用いられうる。この場合、同形状であれば、基材11aに金属材料が用いられる場合に比べて軽量化が図られる。この場合、ベース電極11の絶縁層11cは、焼成されたセラミックスの不織布で構成されていてもよい。
【0052】
セラミックスの不織布は、例えば、チタン酸バリウムの焼成温度に対する所要の耐熱性を有するポリイミドの上に作製されるとよい。そして、ポリイミドの上にセラミックスの不織布を作製し、そのままポリイミドの上で焼成するとよい。また、セラミックスの不織布が作製されるポリイミドの形状は、絶縁層11cが配置される基材11aや導電薄膜11bの形状に、予め合わせられているとよい。これによって、絶縁層11cが配置される基材11aや導電薄膜11bの形状に合った、セラミックスの不織布が焼成された状態で得られる。
【0053】
このように焼成されたセラミックスの薄膜を絶縁層11cは、基材11aや導電薄膜11bとは別体で設けられてもよい。焼成されたセラミックスの薄膜は、絶縁層11cとして、基材11aや導電薄膜11bの上に配置される。この際、基材11aや導電薄膜11bと、絶縁層11cとしての焼成されたセラミックスの薄膜との間に、微細な隙間が生じる。隙間は、セラミックスの薄膜が、不織布の形態であるか否かにかかわらず生じうる。かかる隙間には空気が入り込むので、基材11aや導電薄膜11bと対向電極12との間の比誘電率を低下させる。
【0054】
そこで、絶縁層11cが配置される基材11aや導電薄膜11bと、絶縁層11cとの間に、導電性を有するペーストやゲルが配置されてもよい。この場合、絶縁層11cが配置される基材11aや導電薄膜11bと、絶縁層11cとの隙間は、導電性を有するペーストやゲルによって埋められる。このため、当該隙間に空気が入り込まない。このため、ベース電極11と対向電極12との間の比誘電率が著しく低下することが防止され、アクチュエータ10に安定した性能が得られ得る。
【0055】
導電性を有するペーストやゲルは、絶縁層11cが配置される基材11aや導電薄膜11bと、絶縁層11cとの隙間を埋めることができる形態であるとよい。導電材には、カーボンブラックやアセチレンブラックやカーボンナノチューブの微粉末や、銀や銅の金属微粉末、シリカやアルミナなど絶縁体にスパッタなどで金属をコートしたコアシェル構造の導電体微粉末が挙げられる。導電性ペーストは導電材料の粒子をポリマ等のバインダー樹脂の溶液に分散させて用意されるとよい。ペースト溶媒には、所要の粘性を有する適当な溶媒が採用されうる。導電ゲルとしては、例えば、3次元ポリマーマトリックスの中に、水や保湿剤などの溶媒、電解質、添加剤などを保持させた機能性ゲル材料が採用されうる。このようなゲル材料には、例えば、積水化成品工業株式会社のテクノゲル(登録商標)が採用されうる。
【0056】
なお、導電性を有するペーストやゲルは、絶縁層11cが配置される基材11aや導電薄膜11bの上に予め定められた厚さで塗られるとよい。そして、焼成されたセラミックスの薄膜からなる絶縁層11cがかかる導電性を有するペーストやゲルの上に転写されるとよい。絶縁層11cが配置される基材11aや導電薄膜11bと、絶縁層11cとの隙間を埋めた状態で硬化させてもよい。つまり、基材11aや導電薄膜11bと絶縁層11cとの間に、硬化した導電材料が配置されていてもよい。ここで、絶縁層11cとして用いられる焼成されたセラミックスの薄膜は、上述したようにポリイミドの膜の上に成形されてもよい。これにより、絶縁層11cが配置される基材11aや導電薄膜11bと、絶縁層11cとの間に空気が入り込みにくくなり、ベース電極11と対向電極12との間の比誘電率が著しく低下することが防止され、アクチュエータ10に安定した性能が得られ得る。
【0057】
また、ここで提案されるアクチュエータ10の製造方法では、例えば、上述のように予め定められた形状に成形された非金属基材11aを準備する工程と、非金属基材11aの予め定められた領域の表面に導電薄膜11bを配置する工程と、導電薄膜11bの上に絶縁層11cを配置する工程とが含まれている(
図9参照)。
【0058】
絶縁層11cは、セラミックスの薄膜で用意されてもよい。この場合、導電薄膜11bの上に絶縁層11cを配置する工程において、セラミックスの薄膜が導電薄膜11bの上に配置されてもよい。また、絶縁層11cを構成するセラミックスの薄膜は、不織布であってもよい。また、導電薄膜11bまたは絶縁層11cを構成するセラミックスの薄膜の少なくとも一方に、導電ペーストまたは導電ゲルが塗布された状態で、導電薄膜11bの上にセラミックスの薄膜が配置されてもよい。そして、かかる導電ペーストまたは導電ゲルを硬化させる工程を有していてもよい。なお、セラミックスの薄膜が、不織布の形態である場合には、導電ペーストまたは導電ゲルは、対向電極12に導通しない程度に薄く塗られているとよい。また、導電ペーストまたは導電ゲルは、不織布の形態のセラミックスの薄膜に含浸し過ぎない程度に、所要の粘性を備えているとよい。
【0059】
ところで、ここで開示されたアクチュエータは、上述したように、スイッチ52がONの状態では、絶縁層11cを介して、ベース電極11の導電薄膜11bと対向電極12との間にクーロン力が作用する。かかるクーロン力によって、対向電極12は、ベース電極11の導電薄膜11bに引きつけられ、ベース電極11に合せて変形するとともに、ベース電極11にくっつく(
図2参照)。スイッチ52がOFFの状態で、クーロン力がなくなると、対向電極12の形状が戻り、対向電極12はベース電極11から離れる(
図1参照)。スイッチ52がONの状態からOFFの状態になったときに、速やかにクーロン力がなくなると、対向電極12の形状が速やかに戻り、対向電極12はベース電極11から速やかに離れるようになり、応答速度が向上する。
【0060】
〈アクチュエータ10D〉
応答速度を向上させるとの観点では、スイッチ52がONの状態からOFFの状態になったときに、速やかにクーロン力がなくなることが望ましい。なお、ここでは、
図1および
図2に示された形態を例にしてさらなる変形例を説明する。かかる変形例で示されたアクチュエータの形態は、
図1および
図2で示された形態に限定されず、種々の形態に適用されうる。
図11および
図12は、他の実施形態にかかるアクチュエータ10Dを模式的に示す断面図である。
図11および
図12に示されたアクチュエータ10Dにおいて、
図1に示されたアクチュエータ10と同一の作用を奏する部材・部位には同じ符号が付されており、適宜に重複する説明は省略する。
図11は、アクチュエータ10Dの第1スイッチ52がONの状態、換言すると、ベース電極11と対向電極12とがくっついた状態が示されている。
図12は、アクチュエータ10Dの第1スイッチ52がOFFの状態、換言すると、ベース電極11と対向電極12とが離れた状態が示されている。
【0061】
図11および
図12に示されたアクチュエータ10Dは、ベース電極11と、対向電極12と、電源50と、第1スイッチ52と、接続配線55と、第2スイッチ56と、第1制御装置60と、第2制御装置62とを備えている。
【0062】
電源50は、ベース電極11の導電薄膜11bと対向電極12とに電圧を印加する装置である。第1スイッチ52は、導電薄膜11bおよび対向電極12と、電源50との接続と切断とを切り替えるスイッチである。この実施形態では、電源50と第1スイッチ52とは、それぞれ配線51に設けられている。配線51は、ベース電極11の導電薄膜11bに接続された第1端子31と、対向電極12に接続された第2端子32とを電源50に接続するための配線である。第1制御装置60は、第1スイッチ52の接続と切断とを操作する制御装置である。
【0063】
接続配線55は、電源50を介在させずに、ベース電極11と対向電極12とを電気的に接続する配線である。この実施形態では、接続配線55は、
図11および
図12に示されているように、導電薄膜11bに接続された第1端子31と、対向電極12に接続された第2端子32とを電源50に接続する配線51に対して、電源50をバイパスするように設けられている。なお、接続配線55は、配線51とは別に、導電薄膜11bに接続された第1端子31と、対向電極12に接続された第2端子32とを接続するように設けられていてもよい。また、接続配線55は、第1端子31と第2端子32とのうち、何れか一方、または、両方を介さずに、導電薄膜11bと対向電極12とを接続するように設けられていてもよい。
【0064】
第2スイッチ56は、接続配線55に設けられている。第2スイッチ56は、接続配線55によって導電薄膜11bと対向電極12とが電気的に接続された状態と、接続配線55が切断された状態とを切り替えるスイッチである。第2制御装置62は、第2スイッチ56の接続と切断とを操作する制御装置である。
【0065】
第1制御装置60と第2制御装置62とは、
図11に示されているように、第1スイッチ52が接続されたときに第2スイッチ56が切断されるように構成されているとよい。さらに、第1制御装置60と第2制御装置62とは、
図12に示されているように、第1スイッチ52が切断されたときに第2スイッチ56が接続されるように構成されているとよい。
【0066】
このアクチュエータ10Dは、第1スイッチ52が接続されると、導電薄膜11bおよび対向電極12に電圧が印加され、ベース電極11と対向電極12とがくっつく。第1スイッチ52が切断されると、導電薄膜11bおよび対向電極12に印加されていた電圧がなくなり、さらにクーロン力が解消されるとベース電極11と対向電極12とが離れる。
【0067】
かかるアクチュエータ10Dで第1スイッチ52がONの状態では、
図11に示されているように、導電薄膜11bと対向電極12とがそれぞれ帯電しており、導電薄膜11bと対向電極12とにクーロン力を生じている。そして、第1スイッチ52が接続された状態(ONの状態)から切断された状態(OFFの状態)になったときに、
図12に示されているように、第2スイッチ56が接続されて導電薄膜11bと対向電極12とが電気的に接続されるとよい。導電薄膜11bと対向電極12とが電気的に接続されると、導電薄膜11bの帯電と対向電極12の帯電とがそれぞれ速やかに解消される。このため、導電薄膜11bと対向電極12との間に作用するクーロン力が速やかに解消され、対向電極12の形状が速やかに戻り、対向電極12がベース電極11から速やかに離れる。このように、第2スイッチ56が設けられていることによって、第1スイッチ52が接続された状態(ONの状態)から切断された状態(OFFの状態)になったときに、ベース電極11と対向電極12とが離れる際の応答速度が速くなる。
【0068】
アクチュエータ10Dは、第1スイッチ52が接続されたときに第2スイッチ56が切断され、かつ、第1スイッチ52が切断されたときに第2スイッチ56が接続されるように構成された制御装置60,62を備えている。
図11および
図12に示された形態では、アクチュエータ10Dは、第1制御装置60によって第1スイッチ52が電気的に操作されるように構成されている。また、第2制御装置62によって第2スイッチ56が電気的に操作されるように構成されている。このため、第1スイッチ52と第2スイッチ56が、電気的に素早く操作され、さらにタイミングが合わせられる。ここで、第1制御装置60と第2制御装置62とは、それぞれ別々の制御装置で実現されてもよいし、1つの制御装置で実現されてもよい。第1制御装置60と第2制御装置62とは、例えば、1つのマイコンで実現することができる。
【0069】
ここで、制御装置は、このアクチュエータを含む装置の種々の電気的な処理を行う装置でありうる。制御装置は、予め定められたプログラムに沿って駆動するコンピュータによって具現化されうる。具体的には、制御装置の各機能は、制御装置を構成する各コンピュータの演算装置(プロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)とも称される)や記憶装置(メモリーやハードディスクなど)によって処理される。例えば、制御装置の各構成は、コンピュータによって具現化されるデータを予め定められた形式で記憶するデータベース、データ構造、予め定められたプログラムに従って所定の演算処理を行う処理モジュールなどとして、または、それらの一部として具現化されうる。また、図示は省略するが、制御装置は、複数の制御装置が協働するものでもよい。例えば、制御装置は、LANケーブルや無線回線やインターネットなどを通じて、他のコンピュータとデータ通信可能に接続されていてもよい。制御装置の処理は、このような他のコンピュータと協働で行われてもよい。例えば、制御装置に記憶される情報または一部の情報を、外部のコンピュータが記憶してもよいし、制御装置が実行する処理または処理の一部を、外部のコンピュータが実行してもよい。
【0070】
〈アクチュエータ10E〉
図13および
図14は、他の実施形態にかかるアクチュエータ10Eを模式的に示す断面図である。
図13および
図14に示されたアクチュエータ10Eにおいて、
図1に示されたアクチュエータ10と同一の作用を奏する部材・部位には同じ符号が付されており、適宜に重複する説明は省略する。
図13は、アクチュエータ10EのスイッチがONの状態が示されている。
図14は、アクチュエータ10EのスイッチがOFFの状態が示されている。
【0071】
図13および
図14に示されたアクチュエータ10Eは、第3制御装置63と、第4制御装置64と、第1接地線71と、第2接地線72と、第3スイッチ73と、第4スイッチ74とを備えている。また、アクチュエータ10Eは、上述した第1スイッチ52と、第1制御装置60とを備えている。
【0072】
第1接地線71は、導電薄膜11bを接地させる電気配線である。第3スイッチ73は、第1接地線71に設けられており、第1接地線71の接続と切断とを切り替えるスイッチである。第3制御装置63は、第3スイッチ73を操作し、導電薄膜11bの接地を制御する装置である。
【0073】
第2接地線72は、対向電極12を接地させる電気配線である。第4スイッチ74は、第2接地線72に設けられており、第2接地線72の接続と切断とを切り替えるスイッチである。第4制御装置64は、第4スイッチ74を操作し、対向電極12の接地を制御する装置である。
【0074】
第1制御装置60と第3制御装置63と第4制御装置64とは、第1スイッチ52が接続されたときに第3スイッチ73と第4スイッチ74とがそれぞれ切断されるように構成されている。さらに、第1制御装置60と第3制御装置63と第4制御装置64とは、第1スイッチ52が切断されたときに第3スイッチ73と第4スイッチ74とがそれぞれ接続されるように構成されている。
【0075】
このアクチュエータ10Eは、
図13に示されているように、第1スイッチ52が接続されると、導電薄膜11bおよび対向電極12に電圧が印加され、ベース電極11と対向電極12とがくっつく。かかるアクチュエータ10Eで第1スイッチ52がONの状態では、導電薄膜11bと対向電極12とがそれぞれ帯電しており、絶縁層11cを介して導電薄膜11bと対向電極12とにクーロン力を生じている。第1スイッチ52が切断されると、導電薄膜11bおよび対向電極12に印加されていた電圧がなくなり、さらにクーロン力が解消されるとベース電極11と対向電極12とが離れる。
【0076】
アクチュエータ10Eでは、第1スイッチ52が接続された状態(ONの状態)から切断された状態(OFFの状態)になったときに、
図14に示されているように、第3スイッチ73と第4スイッチ74が接続されて導電薄膜11bと対向電極12とがそれぞれ接地される。導電薄膜11bと対向電極12とがそれぞれ接地されると、導電薄膜11bの帯電と対向電極12の帯電とがそれぞれ速やかに解消される。このため、導電薄膜11bと対向電極12との間に作用するクーロン力が速やかに解消され、対向電極12の形状が速やかに戻り、対向電極12がベース電極11から速やかに離れる。このように、第3スイッチ73と第4スイッチ74が設けられていることによって、第1スイッチ52が接続された状態(ONの状態)から切断された状態(OFFの状態)になったときに、ベース電極11と対向電極12とが離れる際の応答速度が速くなる。
【0077】
このようにアクチュエータ10Eは、第1スイッチ52が接続されたときに第3スイッチ73と第4スイッチ74とがそれぞれ切断され、かつ、第1スイッチ52が切断されたときに第3スイッチ73と第4スイッチ74とがそれぞれ接続されるように構成された制御装置60,63,64を備えている。
図13および
図14に示された形態では、アクチュエータ10Eは、第1制御装置60によって第1スイッチ52が電気的に操作されるように構成されている。また、第3制御装置63によって第3スイッチ73が電気的に操作されるように構成されている。さらに、第4制御装置64によって第4スイッチ74が電気的に操作されるように構成されている。このため、第1スイッチ52と第3スイッチ73と第4スイッチ74が、電気的に素早く操作され、さらに各スイッチの動作タイミングが適切に調整される。ここで、第1制御装置60と第3制御装置63と第4制御装置64とは、それぞれ別々の制御装置で実現されてもよいし、1つまたは2つの制御装置で実現されてもよい。第1制御装置60と第3制御装置63と第4制御装置64とは、例えば、1つまたは2つのマイコンで実現することができる。アクチュエータは、ここで例示されるように、さらに複雑な構造を備えうる。アクチュエータは、予め定められたプログラムに基づいて制御装置で操作されることによって、より複雑な動作が可能になる。
【0078】
以上、ここで開示されるアクチュエータおよびアクチュエータの製造方法について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられたアクチュエータおよびアクチュエータの製造方法の実施形態などは、本発明を限定しない。
【符号の説明】
【0079】
10,10A,10B,10C アクチュエータ
11 ベース電極
11a 基材(金属基材、非金属基材)
11b 導電薄膜
11c 絶縁層
12 対向電極
12a 跳ね上がる部位
12b スリット
12c 穴
31 第1端子
31a 第1配線
32 第2端子
32a 第2配線
50 電源
51 配線
52 スイッチ(第1スイッチ)
55 接続配線
56 第2スイッチ
60 制御装置(第1制御装置)
62 第2制御装置
63 第3制御装置
64 第4制御装置
71 第1接地線
72 第2接地線
73 第3スイッチ
74 第4スイッチ