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特許7579504表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置及び、表示制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置及び、表示制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20241031BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20241031BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20241031BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20241031BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20241031BHJP
   G09G 5/37 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
G09G5/00 510A
G09G5/00 550C
G09G5/10 B
G09G5/36 500
G09G5/37 320
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020197060
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085399
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笠原 毅
(72)【発明者】
【氏名】板垣 惇平
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015216984(DE,A1)
【文献】国際公開第2017/002344(WO,A1)
【文献】特開2020-109453(JP,A)
【文献】特開2018-045143(JP,A)
【文献】特開2019-119281(JP,A)
【文献】特開2020-112667(JP,A)
【文献】特表2023-510680(JP,A)
【文献】特開2020-170067(JP,A)
【文献】特開2003-341383(JP,A)
【文献】特開2012-203176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00-35/90
G09G 5/00-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部分領域(D)を有し、前記部分領域(D)毎に選択的に照明光を出射可能な光源素子(60,60A)と、
前記光源素子(60,60A)から入射した前記照明光を変調して表示光として出射する光変調素子(51)と、
異なる前記部分領域(D)から出射された前記照明光が前記光変調素子(51)により変調された前記表示光毎に、アイボックス(200)内の異なる領域に向けて集光させる集光光学系(2,40,77,77A)と、
被投影部に前記表示光を投影することで、前記アイボックスの範囲内から観察者が虚像を視認するヘッドアップディスプレイ装置(20)を制御する表示制御装置(30)において、
前記光源素子(60,60A)を制御するプロセッサ(33)、を備え、
前記プロセッサ(33)は、
前記アイボックス(200)から前記被投影部に向く前記観察者の前後方向の目位置に関する情報、又は前記観察者の前記前後方向の前記目位置を推定可能な情報を取得し、
前記観察者の前記前後方向の前記目位置が第1の位置(Z1)にある場合、所定の光強度以上の前記照明光を出射する前記部分領域(D)(以下、発光領域(DM)と呼ぶ。)を、第1の発光領域(DM1)に設定することと、
前記目位置が前記第1の位置(Z1)よりも前記被投影部に近い第2の位置(Z2)にある場合、前記発光領域(DM)を、前記第1の発光領域(DM1)より広い第2の発光領域(DM2)に設定することと、を含む、発光面積変更処理、を実行する、
表示制御装置(30)。
【請求項2】
前記目位置を推定可能な前記情報は、運転席の前後方向の位置に関する情報を含み、
前記発光面積変更処理は、前記運転席の前後方向の前記位置に基づき、
前記観察者の前記前後方向の前記目位置が前記第1の位置(Z1)にあると推定される場合、前記第1の発光領域(DM1)に設定することと、
前記目位置が前記第1の位置(Z1)よりも前記被投影部に近い第2の位置(Z2)にあると推定される場合、前記第2の発光領域(DM2)に設定することと、を含む、
請求項1に記載の表示制御装置(30)。
【請求項3】
前記プロセッサ(33)は、
前記第2の発光領域(DM2)を、前記第1の発光領域(DM1)より、前記虚像の縦方向に対応する前記光変調素子(51)の縦方向に沿う方向及び、前記虚像の横方向に対応する前記光変調素子(51)の横方向に沿う方向に少なくとも広く設定する、
請求項1又は2に記載の表示制御装置(30)。
【請求項4】
前記プロセッサ(33)は、
前記第2の発光領域(DM2)における平均の光強度が、前記第1の発光領域(DM1)における平均の光強度より低くなるように設定する、
請求項1乃至3のいずれか一項に表示制御装置(30)。
【請求項5】
前記プロセッサ(33)は、
前記アイボックス(200)内の前記観察者の右目位置及び左目位置に関する情報、又は前記右目位置及び前記左目位置を推定可能な情報を取得し、
前記発光領域(DM)は、
前記右目位置が配置される部分視域(E)に応じて設定される、右目発光領域(DMR)と、
前記左目位置が配置される前記部分視域(E)に応じて設定される、左目発光領域(DML)と、を含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表示制御装置(30)。
【請求項6】
前記プロセッサ(33)は、
前記右目発光領域(DMR)の発光パターンと前記左目発光領域(DML)の発光パターンとを時分割的に切り替える、
請求項5に記載の表示制御装置(30)。
【請求項7】
前記プロセッサ(33)は、
前記発光領域(DM)が、前記目位置に前記表示光の光強度のピークが向けられるための前記照明光を出射する部分領域(D)(以下、主部分領域(DA))と、前記目位置の周辺に前記表示光の光強度のピークが向けられるための前記照明光を出射する部分領域(D)(以下、副部分領域(DB))と、を含むように設定し、
前記副部分領域(DB)の発光強度を、前記主部分領域(DA)の発光強度の0.7倍より高くする、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表示制御装置(30)。
【請求項8】
前記プロセッサ(33)は、
前記発光領域(DM)が、前記目位置に前記表示光の光強度のピークが向けられるための前記照明光を出射する部分領域(D)(以下、主部分領域(DA))と、前記目位置の周辺に前記表示光の光強度のピークが向けられるための前記照明光を出射する部分領域(D)(以下、副部分領域(DB))と、を含むように設定し、
前記副部分領域(DB)の発光強度を、前記主部分領域(DA)の発光強度より高くする、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の表示制御装置(30)。
【請求項9】
被投影部に表示光を投影することで、アイボックス(200)の範囲内から観察者が虚像を視認するヘッドアップディスプレイ装置(20)において、
複数の部分領域(D)を有し、前記部分領域(D)毎に選択的に照明光を出射可能な光源素子(60,60A)と、
前記光源素子(60,60A)から入射した前記照明光を変調して前記表示光として出射する光変調素子(51)と、
異なる前記部分領域(D)から出射された前記照明光が前記光変調素子(51)により変調された前記表示光毎に、アイボックス(200)内の異なる領域に向けて集光させる集光光学系(2,40,77,77A)と、
前記光源素子(60,60A)を制御するプロセッサ(33)と、を備え、
前記プロセッサ(33)は、
前記アイボックス(200)から前記被投影部に向く観察者の前後方向の目位置に関する情報、又は前記観察者の前記前後方向の前記目位置を推定可能な情報を取得し、
前記観察者の前記前後方向の前記目位置が第1の位置(Z1)にある場合、所定の光強度以上の前記照明光を出射する前記部分領域(D)(以下、発光領域(DM)と呼ぶ。)を、第1の発光領域(DM1)に設定することと、
前記目位置が前記第1の位置(Z1)よりも前記被投影部に近い第2の位置(Z2)にある場合、前記発光領域(DM)を、前記第1の発光領域(DM1)より広い第2の発光領域(DM2)に設定することと、を含む、発光面積変更処理、を実行する、
ヘッドアップディスプレイ装置(20)。
【請求項10】
複数の部分領域(D)を有し、前記部分領域(D)毎に選択的に照明光を出射可能な光源素子(60,60A)と、
前記光源素子(60,60A)から入射した前記照明光を変調して表示光として出射する光変調素子(51)と、
異なる前記部分領域(D)から出射された前記照明光が前記光変調素子(51)により変調された前記表示光毎に、アイボックス(200)内の異なる領域に向けて集光させる集光光学系(2,40,77,77A)と、
被投影部に前記表示光を投影することで、前記アイボックスの範囲内から観察者が虚像を視認するヘッドアップディスプレイ装置(20)の表示制御方法において、
前記アイボックス(200)から前記被投影部に向く前記観察者の前後方向の目位置に関する情報、又は前記観察者の前記前後方向の前記目位置を推定可能な情報を取得することと、
前記観察者の前記前後方向の前記目位置が第1の位置(Z1)にある場合、所定の光強度以上の前記照明光を出射する前記部分領域(D)(以下、発光領域(DM)と呼ぶ。)を、第1の発光領域(DM1)に設定すること、
前記目位置が前記第1の位置(Z1)よりも前記被投影部に近い第2の位置(Z2)にある場合、前記発光領域(DM)を、前記第1の発光領域(DM1)より広い第2の発光領域(DM2)に設定すること、を含む、発光面積変更処理と、を実行する、
表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両で使用され、車両の前景に画像を重畳して視認させるヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置、及びヘッドアップディスプレイ装置及び、表示制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の運転席に着座する様々な体格の乗員(観察者)の目位置が存在すると想定されるアイリプスの大部分又は全部を含むアイボックスと呼ばれる領域全体に向けて、表示光を配光するように光学設計するヘッドアップディスプレイ装置が記載されている。これによれば、乗員(観察者)は、目位置がアイボックス内にあれば、ヘッドアップディスプレイ装置が表示する画像(虚像)を所望の表示態様(例えば、所望の輝度範囲内)で視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-203176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のヘッドアップディスプレイ装置は、アイボックス全体に表示光を向けているため、観察者の目が存在していないアイボックスの他の領域に向けた表示光は、無駄になってしまう。言い換えると、ヘッドアップディスプレイ装置が出射する表示光の利用効率(ここで、利用効率は、出射される表示光に対する観察者に視認される表示光の割合である。)が低くなってしまうという問題があった。また、別の観点では、消費電力が高いという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示される特定の実施形態の要約を以下に示す。これらの態様が、これらの特定の実施形態の概要を読者に提供するためだけに提示され、この開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実際に、本開示は、以下に記載されない種々の態様を包含し得る。
【0006】
本開示の概要は、光利用効率を向上させることに関する。また、本開示の概要は、光利用効率を向上させつつ、観察者に表示品位の低い画像を視認させにくくすることにも関する。
【0007】
したがって、本明細書に記載される表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置及び、表示制御方法は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。本実施形態では、光変調素子を照明する面状照明部において、所定の光強度以上の照明光を出射する領域の広さを、観察者の目位置に応じて変える、ことをその要旨とする。
【0008】
本明細書に記載される第1の態様における表示制御装置では、複数の部分領域を有し、部分領域毎に選択的に照明光を出射可能な光源素子と、光源素子から入射した照明光を変調して表示光として出射する光変調素子と、異なる部分領域から出射された照明光が光変調素子により変調された表示光毎に、アイボックス内の異なる領域に向けて集光させる集光光学系と、被投影部に表示光を投影することで、アイボックスの範囲内から観察者が虚像を視認するヘッドアップディスプレイ装置を制御する表示制御装置において、光源素子を制御するプロセッサ、を備え、プロセッサは、アイボックスから被投影部に向く観察者の前後方向の目位置に関する情報、又は観察者の前後方向の目位置を推定可能な情報を取得し、観察者の前後方向の目位置が第1の位置にある場合、所定の光強度以上の照明光を出射する部分領域(以下、発光領域とも呼ぶ。)を、第1の発光領域に設定することと、目位置が第1の位置よりも被投影部に近い第2の位置にある場合、発光領域を、第1の発光領域より広い第2の発光領域に設定することと、を含む、発光面積変更処理、を実行する。
【0009】
第1の態様における表示制御装置によれば、目位置が被投影部に近い場合、光源素子における発光領域を広くする。換言すると、第1の態様における表示制御装置は、ヘッドアップディスプレイ装置が搭載される自車両の前後方向における目位置が比較的前方に配置される場合、後方に配置される場合と比較し、光源素子における発光領域を広くする。これによれば、目位置が被投影部に近い場合、光源素子における発光領域を広くすることで、虚像表示領域の外縁付近に視認される虚像の輝度の低下を抑制し、視認しやすい虚像を表示することができる。また、目位置が被投影部から遠い場合、光源素子における発光領域を狭くすることで、目位置以外に向かう表示光を低減することができる(光利用効率を向上させることができる)。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、いくつかの実施形態に係る、車両用表示システムの車両への適用例を示す図である。
図2図2は、いくつかの実施形態に係る、ヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す図である
図3図3は、いくつかの実施形態に係る、ヘッドアップディスプレイ装置における光路を説明する図である。
図4A図4Aは、いくつかの実施形態に係る、アイボックス内を仮想的に区切った部分視域の態様と、観察者の目位置に対応して複数の部分視域に表示光が向けられる態様を説明する図である。
図4B図4Bは、いくつかの実施形態に係る、アイボックスの部分視域と、指向性光源ユニットの各部分領域から出射された照明光に基づく表示光が集光される位置と、の関係を概略的に示す図である。
図4C図4Cは、図4Aのスポットライティングパターンに表示光を向けるために、光拡散光学系の発光領域に照明用レーザービームが照射される様子を示す図である。
図5A図5Aは、いくつかの実施形態に係る、スポットライティングパターンに表示光が配光された際の光量(輝度)の分布の例を示す図である。
図5B図5Bは、図5Aの状態の後、目位置が移動した様子を示す図である。
図5C図5Cは、図5Bの状態の後、スポットライティングパターンが、以前の部分視域に対応するものから新しい部分視域Eに対応するものに切り替わった様子を示す図である。
図6図6は、いくつかの実施形態に係る、車両用表示システムのブロック図である。
図7A図7Aは、いくつかの実施形態に従って、観察者の目位置に基づき、スポットライティングパターン(表示光が配光される位置)を設定する動作を実行する方法を示すフロー図である。
図7B図7Bは、図7Aにつづく方法を示すフロー図である。
図7C図7Cは、図7Bにつづく方法を示すフロー図である。
図8A図8Aは、いくつかの実施形態に係る、アイボックス内を仮想的に区切った部分視域の態様と、観察者の目位置に対応して複数の部分視域に表示光が向けられる態様を説明する図である。
図8B図8Bは、いくつかの実施形態に係る、アイボックスの部分視域と、指向性光源ユニットの各部分領域から出射された照明光に基づく表示光が集光される位置と、の関係を概略的に示す図である。
図9図9は、いくつかの実施形態に係る、ヘッドアップディスプレイ装置における光路を説明する図である。
図10図10は、面状照明部における、第1の発光領域及び、第2の発光領域DM2、の一態様を示す図である。
図11図11は、いくつかの実施形態に係る、ヘッドアップディスプレイ装置における光路を説明する図である。
図12図12は、図11に示す光源アレイの一態様を示す図である。
図13A図13Aは、光源アレイの発光パターンの一態様を示す図である。
図13B図13Bは、光源アレイの発光パターンの一態様を示す図である。
図14A図14Aは、いくつかの実施形態に係る、アイボックスの部分視域と、指向性光源ユニットの各部分領域から出射された照明光に基づく表示光が集光される位置と、の関係の変形例示す図である。
図14B図14Bは、いくつかの実施形態に係る、アイボックスの部分視域と、指向性光源ユニットの各部分領域から出射された照明光に基づく表示光が集光される位置と、の関係の変形例示す図である。
図14C図14Cは、いくつかの実施形態に係る、アイボックスの部分視域と、指向性光源ユニットの各部分領域から出射された照明光に基づく表示光が集光される位置と、の関係の変形例示す図である。
図14D図14Dは、いくつかの実施形態に係る、アイボックスの部分視域と、指向性光源ユニットの各部分領域から出射された照明光に基づく表示光が集光される位置と、の関係の変形例示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1ないし図14Dでは、例示的な車両用表示システム、ヘッドアップディスプレイ装置、表示制御装置の構成、及び動作の説明を提供する。なお、本発明は以下の実施形態(図面の内容も含む)によって限定されるものではない。下記の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略する。
【0012】
図1の車両用表示システム10は、車両1に搭載され、ヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置とも記載する。)20と、HUD装置20を制御する表示制御装置30と、後述する非正反射素子3(省略可能。)を含み、HUD装置20からの表示光Kを受ける被投影部2と、から構成される。HUD装置20は、観察者(典型的には、車両の運転席に着座する運転者)の正面(前記正面は、前方、車両の進行方向とも換言できる。)に配置される車両のフロントウインドシールド(被投影部2の一例。)に向けて表示光Kを投影する。
【0013】
非正反射素子3は、例えばホログラフィック素子、回折光学素子(DOE)で構成することができる。ホログラフィック素子は、例えば,フォトポリマーや重クロム酸ゼラチンなどのホログラム材料などからなり、入射した光を所望の方向へ向けて回折する光学部材であり、物体光と参照光の干渉パターンを記録することで作成される。非正反射素子3は、例えば、シート状であり、被投影部2に内包され、HUD装置20が投影する表示光Kを車両1の内側の所定の領域であるアイボックス200へ回折する。例えば、後述する非正反射素子3は、HUD装置20から受けた表示光Kを回折することで、観察者に視認される画像(虚像)のサイズを大きくすることができる。観察者は、アイボックス200内に目700を配置することで、被投影部2より遠方側に、HUD装置20が表示する表示画像(不図示)の虚像Vを視認することができる。なお、上述したように、非正反射素子3は、省略されても良い。すなわち、車両用表示システム10は、被投影部2(非正反射素子3)での非正反射光を視認させるものではなく、被投影部2(非正反射素子3を含まない)での正反射光を視認させるものであってもよい。
【0014】
本実施形態の説明で用いる「アイボックス」とは、(1)領域内では画像の虚像Vの全部が視認でき、領域外では画像の虚像Vの少なくとも一部分が視認されない領域、(2)領域内では画像の虚像Vの少なくとも一部が視認でき、領域外では画像の虚像Vの一部分も視認されない領域、(3)領域内では画像の虚像Vの少なくとも一部が所定の輝度以上で視認でき、領域外では画像の虚像Vの全体が前記所定の輝度未満である領域、又は(4)HUD装置20が立体視可能な虚像Vを表示可能である場合、虚像Vの少なくとも一部が立体視でき、領域外では虚像Vの一部分も立体視されない領域である。すなわち、観察者が目(両目)をアイボックス200外に配置すると、観察者は、画像の虚像Vの全体が視認できない、画像の虚像Vの全体の視認性が非常に低く知覚しづらい、又は画像の虚像Vが立体視できない。前記所定の輝度とは、例えば、アイボックスの中心で視認される画像の虚像の輝度に対して1/50程度である。「アイボックス」は、HUD装置20が搭載される車両で観察者の視点位置の配置が想定されるエリア(アイリプスとも呼ぶ。)と同じ、又は前記アイリプスの大部分(例えば、80%以上。)を含むように設定される。
【0015】
虚像表示領域VSは、HUD装置20の内部で生成された画像が、虚像Vとして結像する平面、曲面、又は一部曲面の領域であり、結像面とも呼ばれる。虚像表示領域VSは、HUD装置20の後述する表示器50の表示面(例えば、液晶光変調素子の出射面)52が虚像として結像される位置であり、すなわち、虚像表示領域VSは、HUD装置20の後述する表示面52に対応し(言い換えると、虚像表示領域VSは、後述する表示器50の表示面52と、共役関係となる。)、そして、虚像表示領域VSで視認される虚像は、HUD装置20の後述する表示面52に表示される画像に対応している、と言える。虚像表示領域VS自体は、実際に観察者の目に視認されない、又は視認されにくい程度に視認性が低いことが好ましい。
【0016】
虚像表示領域VSには、車両1の左右方向(X軸方向)を軸とした水平方向(XZ平面)とのなす角度(図1のチルト角θt)と、アイボックス200の中心205と虚像表示領域VSの上端VS1とを結ぶ線分と、アイボックス中心と虚像表示領域VSの下端VS2とを結ぶ線分とのなす角度を虚像表示領域VSの縦画角として、この縦画角の二等分線と水平方向(XZ平面)とのなす角度(図1の縦配置角θv)と、が設定される。縦配置角θvは、典型的には、水平方向(XZ平面)より下向きに設定され、例えば、+2[degree]である(ここでは、縦配置角θvの正方向は、前記縦画角の二等分線が、アイボックス200の中心205から下向きとなる俯角であり、縦配置角θvの負方向は、前記縦画角の二等分線が、アイボックス200の中心205から上向きとなる仰角であるとも言える。)。
【0017】
また、本実施形態の虚像表示領域VSは、前方(Z軸正方向)を向いた際に概ね正対するように、概ね90[degree]のチルト角θtを有する。但し、チルト角θtは、これに限定されるものではなく、40≦θt<90[degree]の範囲で変更し得る。この場合、例えば、チルト角θtは、60[degree]に設定され、虚像表示領域VSは、観察者から見て上側の領域が下側の領域より遠方になるように配置されてもよい。
【0018】
図2は、本実施形態のHUD装置20の構成を示す図である。HUD装置20は、画像を表示する表示面52を有する表示器50と、リレー光学系(集光光学系)40及び、これら表示器50とリレー光学系40を収納し、表示器50からの表示光Kを内部から外部に向けて出射可能な光出射窓21を有する筐体22、を有する。なお、後述する本実施形態の表示器50は、2D表示器であるが、3D表示器であってもよい。すなわち、HUD装置20は、アイボックス200に配置された前記アイポイント(左右の目)に対応した視差画像を表示することで、虚像表示領域VSを基準に立体画像の虚像を観察者に知覚させてもよい(なお、3D表示器は、両眼視差方式の3D表示器でなくてもよい。)。また、リレー光学系40の一部は、省略され得る。
【0019】
図2の表示器50は、光変調素子51と、指向性光源ユニット60と、から構成される。表示面52は、光変調素子51の観察者側の表面であり、画像の表示光Kを出射する。表示面52の中心からリレー光学系40及び被投影部2を介してアイボックス200(アイボックス200の中心205)へ向かう表示光Kの光軸Kpに対する、表示面52の角度の設定により、虚像表示領域VSの角度(チルト角θtを含む。)が設定され得る。また、後述する指向性光源ユニット60が、照明光の向きを変えることにより、アイボックス200内で虚像Vを視認できる(視認しやすい)位置を変化させることができる。
【0020】
リレー光学系40は、表示器50から出射された表示光K(表示器50からアイボックス200へ向かう光。)の光路上に配置され、表示器50からの表示光KをHUD装置20の外側のフロントウインドシールド2に投影する1つ又はそれ以上の光学部材で構成される。図2のリレー光学系40は、1つの凹状の第1ミラー41と、1つの平面の第2ミラー42と、を含む。
【0021】
第1ミラー41は、例えば、正の光学的パワーを有する自由曲面形状である。換言すると、第1ミラー41は、領域毎に光学的パワーが異なる曲面形状であってもよく、すなわち、表示光Kが通る領域(光路)に応じて表示光Kに付加される光学的パワーが異なってもよい。具体的には、表示面52の各領域からアイボックス200へ向かう第1表示光K1、第2表示光K2、第3表示光K3(図2参照)とで、リレー光学系40によって付加される光学的パワーが異なってもよい。
【0022】
なお、第2ミラー42は、例えば、平面ミラーであるが、これに限定されるものではなく、光学的パワーを有する曲面であってもよい。すなわち、リレー光学系40は、複数のミラー(例えば、本実施形態の第1ミラー41、第2ミラー42。)を合成することで、表示光Kが通る領域(光路)に応じて付加される光学的パワーを異ならせてもよい。なお、第2ミラー42は、省略されてもよい。すなわち、表示器50から出射される表示光Kは、第1ミラー41により被投影部(フロントウインドシールド)2に反射されてもよい。
【0023】
また、本実施形態では、リレー光学系40は、2つのミラーを含んでいたが、これに限定されるものではなく、これらに追加又は代替で、1つ又はそれ以上の、レンズなどの屈折光学部材、ホログラムなどの回折光学部材、反射光学部材、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0024】
また、本実施形態のリレー光学系40は、この曲面形状(光学的パワーの一例。)により、虚像表示領域VSまでの距離を設定する機能、及び表示面52に表示された画像を拡大した虚像を生成する機能、を有するが、これに加えて、フロントウインドシールド2の湾曲形状により生じ得る虚像の歪みを抑制する(補正する)機能、を有していてもよい。
【0025】
また、リレー光学系40は、表示制御装置30により制御される図示しない単数又は複数のアクチュエータが取り付けられ、回転(及び/又は移動)可能であってもよい。
【0026】
光変調素子51は、例えば、透過性表示パネルであるLCDであり、指向性光源ユニット60から照明光を入射し、空間光変調した表示光Kをリレー光学系40(第2ミラー42)へ向けて出射する。光変調素子51は、例えば、観察者から見た虚像Vの上下方向(Y軸方向)に対応する画素が配列される方向が短辺であり、これと直交する観察者から見た虚像Vの左右方向(X軸方向)に対応する画素が配列される方向が長辺である矩形状である(典型的には)。観察者は、光変調素子51の透過光(光変調素子51の種類によっては反射光、回折光なども考えられる。)を、虚像光学系90を介して視認する。虚像光学系90は、図2で示すリレー光学系40とフロントウインドシールド2(これに含まれる非正反射素子3)とを合わせたものである。なお、光変調素子51(表示器50)は、LCoSやDMDを用いた反射型表示パネルであってもよい。
【0027】
(第1の実施形態)
図3を参照する。図3は、視点追従スポットライティング制御を実施する機能を備えたHUD装置20(第1の実施形態の指向性光源ユニット60)の主要な構成の一例を示す図である。図3に示されるHUD装置20(指向性光源ユニット60)では、アイボックス200は、観察者(車両の運転者)が車両の前方を向いた場合の左右方向(X軸方向)に5個に分割され、上下方向(Y軸方向)に5個に分割されたn個(本実施例では、25個。)の部分視域E(図4AにおけるE(1,1)~E(5,5))に分割されている。HUD装置20(指向性光源ユニット60)は、運転者(ユーザー)の目位置が検出された部分視域E毎に、発光パターンを異ならせて、運転者(ユーザー)の目位置が検出された部分視域Eに向けて表示光Kを局所的に向ける視点追従スポットライティング制御が実施される。
【0028】
後述する表示制御装置30は、後述する目位置検出部411から観察者の目位置を検出し、その観察者の目位置、及びその周辺でのみ明るい画像(虚像V)が視認されるように指向性光源ユニット60を制御する。これらについては、後で詳述する。
【0029】
第1の実施形態の指向性光源ユニット(光源素子)60は、光源70、走査デバイス(スキャナ)75、第1のフィールドレンズ(照明光学系)76、第2のフィールドレンズ(照明光学系)77、及び光拡散光学系80から構成される。走査デバイス75は、光源70から出射されるレーザー光を、光拡散光学系80のm個(m>n)の部分領域D(本実施形態の部分領域Dは、D(1,11)~D(11,11)までの121個。)上を走査可能であり、表示制御装置30が、目位置検出部411で検出した目位置が存在する部分視域Eに対応する部分領域D(発光領域DM)に強いレーザー光を照射するように、光源70を制御することで、観察者に画像(虚像V)を視認させる。発光領域DMは、部分領域Dのうち、所定の光強度の照明光を光変調素子51に向けて出射する部分領域Dである。
【0030】
光源70は、例えば、異なる3色(例えばR,G,B)をそれぞれ出射可能な複数のレーザーダイオードなどであり、複数のレーザービームをダイクロイックミラーなどで混色(例えば、白色)し、1つの照明用レーザービーム74として走査デバイス75に向ける。光源70は、後述する表示制御装置30からの制御のもと、照明用レーザービーム74の強度を調整可能である(消灯も含む)。
【0031】
走査デバイス(スキャナ)75は、光源70から出射された照明用レーザービーム74を2次元的に偏向する素子であり、例えば、ポリゴンビラー、ガルバノミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical System)、技術を用いたMEMSミラー装置)などの光走査装置である。走査デバイス75は、互いに直交する2軸を用いて揺動しうるように構成された微小なミラーである。走査デバイス75は、例えば、主走査方向で高速で走査し、かつ主走査方向と直交する副走査方向で低速で走査する。
【0032】
第1のフィールドレンズ76は、走査デバイス75と光拡散光学系80との間の走査デバイス75が走査する照明用レーザービーム74の光路上に配置されている。第1のフィールドレンズ76は、受光した照明用レーザービーム74を、第1のフィールドレンズ76の光軸に平行な方向に平行化させる機能を持つ。なお、第1のフィールドレンズ76は、必須の構成部品ではないため、省略しても良い。ただし、第1のフィールドレンズ76を設けることにより、光拡散光学系80の各発光領域DMから出射された照明用レーザービーム74が変調された表示光Kを、アイボックス200の各部分視域Eに精度よく向かわせることができる。なお、第1のフィールドレンズ76は、屈折光学系であるが、走査デバイス75と光拡散光学系80との間の照明用レーザービーム74の光路上には、これに代えて、1つ又は複数の他の屈折光学系、反射光学系、回折光学系を設けても良い。
【0033】
第2のフィールドレンズ(集光光学系)77は、光拡散光学系80と光変調素子51との間の各部分領域D(発光領域DM)により拡散された照明用レーザービーム74の光路上に配置されており、異なる(発光領域DM)から出射された照明光が光変調素子51により変調された表示光K毎に、アイボックス200内の異なる領域に向けて集光させる集光光学系として機能する。本実施形態の第2のフィールドレンズ77は、1つ又は複数のフィールドレンズから構成され、光拡散光学系80の各部分領域D(発光領域DM)により拡散された照明用レーザービーム74が光変調素子51の全面を透過照明するように設計された前段光学部材(バックライト光学部材)である。また、第2のフィールドレンズ77は、光変調素子51から出射される表示光Kが虚像光学系90(リレー光学系40及びフロントウインドシールド2から構成されるHUD光学部材)を経てアイボックス200内の任意の位置にある部分視域Eに届くように設計されている。異なる部分領域D(発光領域DM)から出射されたが光変調素子51により変調された表示光K毎に、アイボックス200内の異なる部分視域Eに向けて集光させる集光光学系は、フィールドレンズに代えて(又は加えて)、この他の1つ又は複数の屈折光学系、反射光学系、回折光学系、など様々な光学系を含んでいても良い。なお、表示光Kは、光変調素子51からアイボックス200に到達するまでに、リレー光学系40や被投影部2を通過する。この際、表示光Kは、リレー光学系40や被投影部2により少なからず偏向されてからアイボックス200内の異なる領域に向けて集光する。したがって、集光光学系は、第2のフィールドレンズ(集光光学系)77に加えて、リレー光学系40や被投影部2を含むとも言える。また、集光光学系は、第2のフィールドレンズ(集光光学系)77が省略され、リレー光学系40や被投影部2で構成され得る。
【0034】
拡散板78は、光変調素子51と第2のフィールドレンズ77との間の照明用レーザービーム74の光路上に配置されている。拡散板78は、受光した照明用レーザービーム74光を拡散させて光変調素子51に出射する。これにより、アイボックス200の各部分視域Eで視認される発光領域DMから出射された照明用レーザービーム74により生成される表示光Kにおける輝度ムラを低減できる。拡散板78は、光を拡散させる機能がある光学部材であれば良く、例えばその表面がビーズ部材や微細な凹凸構造、粗面で構成される。また、ドットシートや透過性の乳白色のシートでも良い。
【0035】
まず、光拡散光学系80として、レンズアレイ81を用いる例を説明する。本実施形態のレンズアレイ81は、m個の部分領域Dに分かれており、各部分領域Dには、曲率を有する微小なレンズが形成される。各部分領域Dに照明用レーザービーム74が入射されると、微小レンズによって屈折された照明用レーザービーム74が拡散光となって放射される。より詳細には、光源70からレンズアレイ81(光拡散光学系80)のm個のいずれかの部分領域Dに入射された照明用レーザービーム74は、微小レンズで屈折されて、第2のフィールドレンズ77、拡散板78、を透過した後に、光変調素子51の全面に照射され、光変調された表示光Kが虚像光学系90を通過した後に、目位置700が存在する部分領域Dを少なくとも含むアイボックス200の所定の領域に照射される。
【0036】
次に、光拡散光学系80として、ホログラム記録媒体82を用いる例を説明する。本実施形態のホログラム記録媒体82は、m個の部分領域Dに分かれており、各部分領域Dには、干渉縞が形成される。各部分領域Dに照明用レーザービーム74が入射されると、干渉縞によって回折された照明用レーザービーム74が拡散光となって放射される。より詳細には、光源70からホログラム記録媒体82(光拡散光学系80)のm個のいずれかの部分領域Dに入射された照明用レーザービーム74は、干渉縞で回折されて、第2のフィールドレンズ77、拡散板78、を透過した後に、光変調素子51の全面に照射され、光変調された表示光Kが虚像光学系90を通過した後に、所定の部分領域Dに対応するアイボックス200の所定の領域に照射される。なお、光拡散光学系80は、フレネルレンズであってもよい。
【0037】
図4Cは、走査デバイス(スキャナ)75が、光拡散光学系80を走査する様子を示す図である。この図4Cでは、第1のフィールドレンズ76は省略してある。光拡散光学系80は、アイボックス200の部分視域Eが水平方向に並ぶ第1の方向(X軸)に対応する第3の方向(α軸)と、部分視域Eが鉛直方向に並ぶ第2の方向(Y軸)に対応する第4の方向(β軸)と、を有する。走査デバイス75は、第3の方向(α軸)に沿って主走査を行いながら、第4の方向(β軸)に沿って副走査を行う。図4Cの例では、走査デバイス75は、主走査の往路と復路とで、異なる部分領域Dを通り、表示制御装置30の制御により所定の部分領域Dに照明用レーザービーム74を照射するようになっている。具体的には、走査デバイス75は、往路として、部分領域D(11,1)からD(1,1)まで高速で走査しながら表示制御装置30が選択する所定の部分領域D(発光領域DM)に照明用レーザービーム74を照射し、表示制御装置30が選択しない部分領域Dには照明用レーザービーム74を照射せず、その後、復路として、部分領域D(1,2)からD(11,2)まで走査しながら表示制御装置30が選択する所定の部分領域D(発光領域DM)に照明用レーザービーム74を照射する。しかし、走査デバイス(スキャナ)75が光拡散光学系80上を走査する態様は、これに限定されない。
【0038】
他の例の走査デバイス75は、往路のみ(代替えとして、復路のみ)で照明用レーザービーム74が照射されてもよい。具体的には、走査デバイス75は、往路として、部分領域D(11,1)からD(1,1)まで走査しながら表示制御装置30が選択する所定の部分領域D(発光領域DM)に照明用レーザービーム74を照射した後、照明用レーザービーム74を照射することなく、部分領域D(11,2)まで走査し、再び往路として、部分領域D(11,2)からD(2,2)まで走査しながら表示制御装置30が選択する所定の部分領域D(発光領域DM)に照明用レーザービーム74を照射してもよい。
【0039】
他の例の走査デバイス75は、往路と復路で同じ部分領域Dに照明用レーザービーム74を照射してもよい具体的には、走査デバイス75は、往路として、部分領域D(11,1)からD(1,1)まで走査しながら表示制御装置30が選択する所定の部分領域D(発光領域DM)に照明用レーザービーム74を照射した後、復路として、再び部分領域D(1,1)からD(11,1)まで走査しながら表示制御装置30が選択する所定の部分領域D(発光領域DM)に照明用レーザービーム74を照射する。なお、往路と復路とで照明用レーザービーム74が照射される部分領域D内での位置は異なる。すなわち、照明用レーザービーム74は、往路では、所定の部分領域Dのうち上側(βの負方向)の位置に照射され、復路では、所定の部分領域Dのうち下側(βの正方向)の位置に照射されるようにしてもよい。
【0040】
図4Aは、アイボックス内を仮想的に区切った部分視域の態様と、観察者の目位置に対応して複数の部分視域に表示光が向けられる態様を説明する図である。ここで、観察者の右目700Rは、部分視域E(2,3)で検出され、左目700Lは、部分視域E(4,3)で検出されたとする。右目用表示光Kが向けられる部分視域E(以下では、右目用スポットライティングパターンSPRとも呼ぶ。)は、部分視域E(2,3)を中心として、上側の部分視域E(2,2)の上部、下側の部分視域E(2,4)の下部、右側の部分視域E(1,3)の右部、左側の部分視域E(3,3)の左部、左上の部分視域E(3,2)の左上部、左下の部分視域E(3,4)の左下部、右下の部分視域E(1,4)の右下部、及び右上の部分視域E(1,2)の右上部の9つの部分視域Eに跨る横長の楕円状の領域である。また、同様に、 左目用表示光Kが向けられる部分視域E(以下では、左目用スポットライティングパターンSPLとも呼ぶ。)は、部分視域E(4,3)を中心として、上側の部分視域E(4,2)の上部、下側の部分視域E(4,4)の下部、右側の部分視域E(3,3)の右部、左側の部分視域E(5,3)の左部、左上の部分視域E(5,2)の左上部、左下の部分視域E(5,4)の左下部、右下の部分視域E(3,4)の右下部、及び右上の部分視域E44(3,2)の右上部の9つの部分視域Eに跨る横長の楕円状の領域である。
【0041】
図4Bは、アイボックス200の部分視域Eの態様と、指向性光源ユニット60の各部分領域Dから出射された照明光に基づく表示光Kが集光される位置との関係を概略的に示す図である。なお、図4Bでは、各部分領域Dから出射された照明光に基づく表示光Kが集光される位置を、点(黒塗りの丸)で描いているが、表示光Kの主光線が向かう位置を示したものであり、点(黒塗りの丸)を中心にした周囲にも表示光Kは照射される。図4Bの例では、指向性光源ユニット60は、1つの部分視域E内に異なる9箇所に照射され得るように部分領域Dを配置する。具体的には、部分視域Eの中心に1箇所、部分視域Eの4隅に4箇所、部分視域Eの4隅それぞれの中点に4箇所の合計9箇所である。図4Bに示す一態様において、表示制御装置30は、目位置700が存在する部分視域E内の異なる9箇所全てに表示光Kが照射されるように指向性光源ユニット60を制御する。発光領域DMは、目位置700が存在する部分視域Eの中心に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する主部分領域DAと、主部分領域DAよりも目位置700が存在する部分視域Eの中心から離れた位置に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する副部分領域DBと、を含む。すなわち、左目位置700Lが部分視域E(4,3)に存在する場合、主部分領域DAは、部分領域D(8,6)であり、副部分領域DBは、部分領域D(7,5),D(8,5),D(9,5),D(7,6),D(9,6),D(7,7),D(8,7),及びD(9,7)である。一方、右目位置700Rが部分視域E(2,3)に存在する場合、主部分領域DAは、部分領域D(4,6)であり、副部分領域DBは、部分領域D(3,5),D(4,5),D(5,5),D(3,6),D(5,6),D(3,7),D(4,7),及びD(5,7)である。
【0042】
図4Cは、図4AのスポットライティングパターンSPに表示光Kを向けるために、光拡散光学系80の発光領域DMに照明用レーザービーム74が照射される様子を示す図である。表示制御装置30は、走査デバイス75がm個の部分領域Dのうち所定の光強度の照明光を出射させる発光領域DMを走査するタイミングに合わせて光源70を駆動する。これにより、図4Aに示すように、光拡散光学系80の発光領域DMに対応する上述のアイボックス200のスポットライティングパターンSP(右目用スポットライティングパターンSPR、左目用スポットライティングパターンSPL)に光変調素子51の表示光Kが向けられる。なお、上述の右目用スポットライティングパターンSPRと対応する発光領域DMを右目用発光領域DMR、上述の左目用スポットライティングパターンSPLと対応する発光領域DMを左目用発光領域DML、とする。したがって、右目用発光領域DMRから出射された照明光が光変調素子51で変調された表示光Kは、右目用スポットライティングパターンSPRに照射され、かつ左目用発光領域DMLから出射された照明光が光変調素子51で変調された表示光Kは、左目用スポットライティングパターンSPLに照射される。また、表示制御装置30は、右目用発光領域DMRや左目用発光領域DML以外の部分領域Dには、照明用レーザービーム74を照射しない、又は非常に低い光強度の照明用レーザービーム74を照射する。これにより、観察者の目位置が存在する視域Eに効率よく表示光Kを照射し、消費電力を低く抑えることができる。
【0043】
図5Aは、スポットライティングパターンSPに表示光Kが配光された際の光量(輝度)の分布の例を示す図である。表示制御装置30は、目位置700が部分視域E(2,3)にあると推定される場合、部分視域E(2,3)に対応付けられた所定のスポットライティングパターンSPになるように、光拡散光学系80の発光領域DM(部分領域D(3,5)、D(4,5)、D(5,5)、D(3,6)、D(4,6)、D(5,6)、D(3,7)、D(4,7)、D(5,7))に照明用レーザービーム74が照射されるように、走査デバイス75が発光領域DMを走査するタイミングに合わせて光源70を駆動する。これにより、図4Aに示すように、光拡散光学系80の発光領域DMに対応するアイボックス200の所定のスポットライティングパターンSPに光変調素子51の表示光Kが向けられる。図5Aにおける符号DB1(DB)は、アイボックス200の左右方向(X軸方向)の光量分布を示す(後述する図5B図5Cも同様)。光量分布Ld1は、発光領域DM(部分領域D(3,5)、D(4,5)、D(5,5)、D(3,6)、D(4,6)、D(5,6)、D(3,7)、D(4,7)、D(5,7)から出射される照明光に基づく表示光の光が合波されたものであり、スポットライティングパターンSPの境界内において、所定閾値Lth(例えば、スポットライティングパターンSPでの最大の光量(輝度)に対して50%)以上の光量が確保されている。また、光量分布Ldは、部分視域EのスポットライティングパターンSPの境界の外側にも光量がはみ出して広がり、光の強度は、急峻に低下せず、徐々に(勾配をもって)低下する。よって、視点が、境界の外側に移動したときでも、表示(虚像)が薄くなって消えることになり、唐突に消えることがない。これによって違和感、不安感が抑制(低減)される。
【0044】
本実施形態では、部分視域E(2,3)の中心から離れた位置に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する副部分領域DBを有する。特に、図5A図5B、及び図5Cに示す態様では、副部分領域DBは、表示光Kが、全て部分視域E(2,3)の境界に集光されるように、配置されているため、部分視域Eの近傍(又は外側に)に目が移動した場合でも、副部分領域DBによる比較的輝度の高い画像(虚像V)を視認させることができる。図5Bは、図5Aの状態の後、目位置700が部分視域E(2,3)からE(3,3)に移動した場合を示す。システムレイテンシーが生じて、部分視域E(2,3)からE(3,3)に移動した瞬間にスポットライティングパターンSPが切り替わらないまま(部分視域E(2,3)に対応したスポットライティングパターンSPのまま)であっても、部分視域E(2,3)の中心から離れた位置に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する副部分領域DBからの光によって、比較的輝度の高い表示光Kを視認させることができる。図5Cは、図5Bの状態の後、スポットライティングパターンSPが、以前の部分視域E(2,3)に対応するものから新しい部分視域E(3,3)に対応するものに切り替わった様子を示す図である。
【0045】
また、他の好ましい例では、スポットライティングパターンSP内においては、所定の輝度レベルとなるように均一(略均一を含む)な光の照射がなされるようにする。具体的には、光量分布Ldがトップハット形状となるように、発光領域DMの配置、出射する光強度の調整、及び/又は集光光学系の全体又は部分的な光学的な調整が行われる。これにより、照明される部分視域E内では、目位置が移動しても画像(虚像V)の輝度を略均一に視認させることができる。但し、本実施形態において、光量分布Ldは、ガウシアン分布であってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、表示制御装置30(プロセッサ33)は、副部分領域DBの発光強度を、主部分領域DAの発光強度の0.7倍より高くしてもよい。これによれば、副部分領域DBの発光強度が比較的強いため、目位置700が部分視域Eの境界付近になった場合でも、副部分領域DBからの光によって、比較的輝度の高い表示光Kを視認させることができる。
【0047】
また、いくつかの実施形態では、表示制御装置30(プロセッサ33は、前記副部分領域(DB)の発光強度を、前記主部分領域(DA)の発光強度より高くしてもよい。これによれば、副部分領域DBの発光強度が比較的強いため、目位置700が部分視域Eの境界付近になった場合でも、副部分領域DBからの光によって、比較的輝度の高い表示光Kを視認させることができる。
【0048】
図6は、いくつかの実施形態に係る、車両用表示システム10のブロック図である。表示制御装置30は、1つ又は複数のI/Oインタフェース31、1つ又は複数のプロセッサ33、1つ又は複数の画像処理回路35、及び1つ又は複数のメモリ37を備える。図6に記載される様々な機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれら両方の組み合わせで構成されてもよい。図6は、1つの実施形態に過ぎず、図示された構成要素は、より数の少ない構成要素に組み合わされてもよく、又は追加の構成要素があってもよい。例えば、画像処理回路35(例えば、グラフィック処理ユニット)が、1つ又は複数のプロセッサ33に含まれてもよい。
【0049】
図示するように、プロセッサ33及び画像処理回路35は、メモリ37と動作可能に連結される。より具体的には、プロセッサ33及び画像処理回路35は、メモリ37に記憶されているプログラムを実行することで、例えば、指向性光源ユニット60の制御(指向性光源ユニット60の前記制御は、例えば、光源70が出射する照明用レーザービーム74(照明光)の制御、又は後述する光源アレイ80Aの制御などを含む。)、画像データの生成及び/又は送信するなど、車両用表示システム10(HUD装置20、指向性光源ユニット60)の操作を行うことができる。プロセッサ33及び/又は画像処理回路35は、少なくとも1つの汎用マイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。メモリ37は、ハードディスクのような任意のタイプの磁気媒体、CD及びDVDのような任意のタイプの光学媒体、揮発性メモリのような任意のタイプの半導体メモリ、及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、DRAM及びSRAMを含み、不揮発性メモリは、ROM及びNVRAMを含んでもよい。
【0050】
図示するように、プロセッサ33は、I/Oインタフェース31と動作可能に連結されている。I/Oインタフェース31は、例えば、車両に設けられた後述の車両ECU401、又は他の電子機器(後述する符号403~419)と、CAN(Controller Area Network)の規格に応じて通信(CAN通信とも称する)を行う。なお、I/Oインタフェース31が採用する通信規格は、CANに限定されず、例えば、CANFD(CAN with Flexible Data Rate)、LIN(Local Interconnect Network)、Ethernet(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport:MOSTは登録商標)、UART、もしくはUSBなどの有線通信インタフェース、又は、例えば、Bluetooth(登録商標)ネットワークなどのパーソナルエリアネットワーク(PAN)、802.11x Wi-Fi(登録商標)ネットワークなどのローカルエリアネットワーク(LAN)等の数十メートル内の近距離無線通信インタフェースである車内通信(内部通信)インタフェースを含む。また、I/Oインタフェース31は、無線ワイドエリアネットワーク(WWAN0、IEEE802.16-2004(WiMAX:Worldwide Interoperability for Microwave Access))、IEEE802.16eベース(Mobile WiMAX)、4G、4G-LTE、LTE Advanced、5Gなどのセルラー通信規格により広域通信網(例えば、インターネット通信網)などの車外通信(外部通信)インタフェースを含んでいてもよい。
【0051】
図示するように、プロセッサ33は、I/Oインタフェース31と相互動作可能に連結されることで、車両用表示システム10(I/Oインタフェース31)に接続される種々の他の電子機器等と情報を授受可能となる。I/Oインタフェース31には、例えば、車両ECU401、道路情報データベース403、自車位置検出部405、車外センサ407、操作検出部409、目位置検出部(視線方向検出部)411、IMU413、明るさセンサ415、携帯情報端末417、及び外部通信機器419などが動作可能に連結される。なお、I/Oインタフェース31は、車両用表示システム10に接続される他の電子機器等から受信する情報を加工(変換、演算、解析)する機能を含んでいてもよい。
【0052】
光変調素子51は、例えば、液晶光変調素子であり、プロセッサ33及び画像処理回路35に動作可能に連結される。したがって、光変調素子51によって表示される画像は、プロセッサ33及び/又は画像処理回路35から受信された画像データに基づいてもよい。プロセッサ33及び画像処理回路35は、I/Oインタフェース31から取得される情報に基づき、光変調素子51が表示する画像を制御する。
【0053】
車両ECU401は、車両1に設けられたセンサやスイッチから、車両1の状態(例えば、走行距離、車速、アクセルペダル開度、ブレーキペダル開度、エンジンスロットル開度、インジェクター燃料噴射量、エンジン回転数、モータ回転数、ステアリング操舵角、シフトポジション、ドライブモード、各種警告状態、姿勢(ロール角、及び/又はピッチング角を含む)、車両の振動(振動の大きさ、頻度、及び/又は周波数を含む))などを取得し、車両1の前記状態を収集、及び管理(制御も含んでもよい。)するものであり、機能の一部として、車両1の前記状態の数値(例えば、車両1の車速。)を示す信号を、表示制御装置30のプロセッサ33へ出力することができる。なお、車両ECU401は、単にセンサ等で検出した数値(例えば、ピッチング角が前傾方向に3[degree]。)をプロセッサ33へ送信することに加え、又はこれに代わり、センサで検出した数値を含む車両1の1つ又は複数の状態に基づく判定結果(例えば、車両1が予め定められた前傾状態の条件を満たしていること。)、若しくは/及び解析結果(例えば、ブレーキペダル開度の情報と組み合わせされて、ブレーキにより車両が前傾状態になったこと。)を、プロセッサ33へ送信してもよい。例えば、車両ECU401は、車両1が車両ECU401のメモリ(不図示)に予め記憶された所定の条件を満たすような判定結果を示す信号を表示制御装置30へ出力してもよい。なお、I/Oインタフェース31は、車両ECU401を介さずに、車両1に設けられた車両1に設けられたセンサやスイッチから、上述したような情報を取得してもよい。
【0054】
また、車両ECU401は、車両用表示システム10が表示する画像を指示する指示信号を表示制御装置30へ出力してもよく、この際、画像の座標、サイズ、種類、表示態様、画像の報知必要度、及び/又は報知必要度を判定する元となる必要度関連情報を、前記指示信号に付加して送信してもよい。
【0055】
道路情報データベース403は、車両1に設けられた図示しないナビゲーション装置、又は車両1と車外通信インタフェース(I/Oインタフェース31)を介して接続される外部サーバー、に含まれ、後述する自車位置検出部405から取得される車両1の位置に基づき、車両1の周辺の情報(車両1の周辺の実オブジェクト関連情報)である車両1が走行する道路情報(車線,白線,停止線,横断歩道,道路の幅員,車線数,交差点,カーブ,分岐路,交通規制など)、地物情報(建物、橋、河川など)の、有無、位置(車両1までの距離を含む)、方向、形状、種類、詳細情報などを読み出し、プロセッサ33に送信してもよい。また、道路情報データベース403は、出発地から目的地までの適切な経路(ナビゲーション情報)を算出し、当該ナビゲーション情報を示す信号、又は経路を示す画像データをプロセッサ33へ出力してもよい。
【0056】
自車位置検出部405は、車両1に設けられたGNSS(全地球航法衛星システム)等であり、現在の車両1の位置、方位を検出し、検出結果を示す信号を、プロセッサ33を介して、又は直接、道路情報データベース403、後述する携帯情報端末417、及び/もしくは外部通信機器419へ出力する。道路情報データベース403、後述する携帯情報端末417、及び/又は外部通信機器419は、自車位置検出部405から車両1の位置情報を連続的、断続的、又は所定のイベント毎に取得することで、車両1の周辺の情報を選択・生成して、プロセッサ33へ出力してもよい。
【0057】
車外センサ407は、車両1の周辺(前方、側方、及び後方)に存在する実オブジェクトを検出する。車外センサ407が検知する実オブジェクトは、例えば、障害物(歩行者、自転車、自動二輪車、他車両など)、後述する走行レーンの路面、区画線、路側物、及び/又は地物(建物など)などを含んでいてもよい。車外センサとしては、例えば、ミリ波レーダ、超音波レーダ、レーザレーダ等のレーダセンサ、カメラ、又はこれらの組み合わせからなる検出ユニットと、当該1つ又は複数の検出ユニットからの検出データを処理する(データフュージョンする)処理装置と、から構成される。これらレーダセンサやカメラセンサによる物体検知については従来の周知の手法を適用する。これらのセンサによる物体検知によって、三次元空間内での実オブジェクトの有無、実オブジェクトが存在する場合には、その実オブジェクトの位置(車両1からの相対的な距離、車両1の進行方向を前後方向とした場合の左右方向の位置、上下方向の位置等)、大きさ(横方向(左右方向)、高さ方向(上下方向)等の大きさ)、移動方向(横方向(左右方向)、奥行き方向(前後方向))、移動速度(横方向(左右方向)、奥行き方向(前後方向))、及び/又は種類等を検出してもよい。1つ又は複数の車外センサ407は、各センサの検知周期毎に、車両1の前方の実オブジェクトを検知して、実オブジェクト情報の一例である実オブジェクト情報(実オブジェクトの有無、実オブジェクトが存在する場合には実オブジェクト毎の位置、大きさ、及び/又は種類等の情報)をプロセッサ33に出力することができる。なお、これら実オブジェクト情報は、他の機器(例えば、車両ECU401)を経由してプロセッサ33に送信されてもよい。また、夜間等の周辺が暗いときでも実オブジェクトが検知できるように、センサとしてカメラを利用する場合には赤外線カメラや近赤外線カメラが望ましい。また、センサとしてカメラを利用する場合、視差で距離等も取得できるステレオカメラが望ましい。
【0058】
操作検出部409は、例えば、車両1のCID(Center Information Display)、インストルメントパネルなどに設けられたハードウェアスイッチ、又は画像とタッチセンサなどとを兼ね合わされたソフトウェアスイッチなどであり、車両1の乗員(運転席の着座するユーザ、及び/又は助手席に着座するユーザ)による操作に基づく操作情報を、プロセッサ33へ出力する。例えば、操作検出部409は、ユーザの操作により、虚像表示領域VSを移動させる操作に基づく表示領域設定情報、アイボックス200を移動させる操作に基づくアイボックス設定情報、虚像の明るさを変更する操作に基づく画像明るさ設定情報、観察者の目位置700を設定する操作に基づく情報などを、プロセッサ33へ出力する。
【0059】
目位置検出部411は、車両1の運転席に着座する観察者の目位置700を検出する赤外線カメラなどのカメラを含み、撮像した画像を、プロセッサ33に出力してもよい。プロセッサ33は、目位置検出部411から撮像画像(目位置700を推定可能な情報の一例。)を取得し、この撮像画像を、パターンマッチングなどの手法で解析することで、観察者の目位置700の座標を検出し、検出した目位置700の座標を示す信号を、プロセッサ33へ出力してもよい。
【0060】
また、目位置検出部411は、カメラの撮像画像を解析した解析結果(例えば、観察者の目位置700が、予め設定された複数の表示パラメータ600(後述する。)が対応する空間的な領域のどこに属しているかを示す信号。)を、プロセッサ33に出力してもよい。なお、車両1の観察者の目位置700、又は観察者の目位置700を推定可能な情報を取得する方法は、これらに限定されるものではなく、既知の目位置検出(推定)技術を用いて取得されてもよい。
【0061】
また、目位置検出部411は、観察者の目位置700の移動速度、及び/又は移動方向を検出し、観察者の目位置700の移動速度、及び/又は移動方向を示す信号を、プロセッサ33に出力してもよい。
【0062】
また、目位置検出部411は、(10)観察者の目位置700がアイボックス200外にあることを示す信号、(20)観察者の目位置700がアイボックス200外にあると推定される信号、又は(30)観察者の目位置700がアイボックス200外になると予測される信号、を検出した場合、所定の条件を満たしたと判定し、当該状態を示す信号を、プロセッサ33に出力してもよい。
【0063】
(20)観察者の目位置700がアイボックス200外にあると推定される信号は、(21)観察者の目位置700が検出できないことを示す信号、(22)観察者の目位置700の移動が検出された後、観察者の目位置700が検出できないことを示す信号、及び/又は(23)観察者の目位置700R、700Lのいずれかがアイボックス200の境界200Aの近傍(前記近傍は、例えば、境界200Aから所定の座標以内であることを含む。)にあることを示す信号、などを含む。
【0064】
(30)観察者の目位置700がアイボックス200外になると予測される信号は、(31)新たに検出した目位置700が、過去に検出した目位置700に対して、メモリ37に予め記憶された目位置移動距離閾値以上であること(所定の単位時間内における目位置の移動が規定範囲より大きいこと。)を示す信号、(32)目位置の移動速度が、メモリ37に予め記憶された目位置移動速度閾値以上であることを示す信号、などを含む。
【0065】
また、目位置検出部411は、視線方向検出部411としての機能を有していても良い。視線方向検出部411は、車両1の運転席に着座する観察者の顔を撮像する赤外線カメラ、又は可視光カメラを含み、撮像した画像を、プロセッサ33に出力してもよい。プロセッサ33は、視線方向検出部411から撮像画像(視線方向を推定可能な情報の一例。)を取得し、この撮像画像を解析することで観察者の視線方向(及び/又は前記注視位置)を特定することができる。なお、視線方向検出部411は、カメラからの撮像画像を解析し、解析結果である観察者の視線方向(及び/又は前記注視位置)を示す信号をプロセッサ33に出力してもよい。なお、車両1の観察者の視線方向を推定可能な情報を取得する方法は、これらに限定されるものではなく、EOG(Electro-oculogram)法、角膜反射法、強膜反射法、プルキンエ像検出法、サーチコイル法、赤外線眼底カメラ法などの他の既知の視線方向検出(推定)技術を用いて取得されてもよい。
【0066】
IMU413は、慣性加速に基づいて、車両1の位置、向き、及びこれらの変化(変化速度、変化加速度)を検知するように構成された1つ又は複数のセンサ(例えば、加速度計及びジャイロスコープ)の組み合わせを含むことができる。IMU413は、検出した値(前記検出した値は、車両1の位置、向き、及びこれらの変化(変化速度、変化加速度)を示す信号などを含む。)、検出した値を解析した結果を、プロセッサ33に出力してもよい。前記解析した結果は、前記検出した値が、所定の条件を満たしたか否かの判定結果を示す信号などであり、例えば、車両1の位置又は向きの変化(変化速度、変化加速度)に関する値から、車両1の挙動(振動)が少ないことを示す信号であってもよい。
【0067】
明るさセンサ415は、車両1の車室の前方に存在する前景の所定範囲の照度又は輝度を外界明るさ(明るさ情報の一例)、又は車室内の照度又は輝度を車内明るさ(明るさ情報の一例)として検知する。明るさセンサ415は、例えばフォトトランジスタ若しくはフォトダイオード等であり、図1に示す車両1のインストルメントパネル、ルームミラー又はHUD装置20等に搭載される。
【0068】
携帯情報端末417は、スマートフォン、ノートパソコン、スマートウォッチ、又は観察者(又は車両1の他の乗員)が携帯可能なその他の情報機器である。I/Oインタフェース31は、携帯情報端末417とペアリングすることで、携帯情報端末417と通信を行うことが可能であり、携帯情報端末417(又は携帯情報端末を通じたサーバ)に記録されたデータを取得する。携帯情報端末417は、例えば、上述の道路情報データベース403及び自車位置検出部405と同様の機能を有し、前記道路情報(実オブジェクト関連情報の一例。)を取得し、プロセッサ33に送信してもよい。また、携帯情報端末417は、車両1の近傍の商業施設に関連するコマーシャル情報(実オブジェクト関連情報の一例。)を取得し、プロセッサ33に送信してもよい。なお、携帯情報端末417は、携帯情報端末417の所持者(例えば、観察者)のスケジュール情報、携帯情報端末417での着信情報、メールの受信情報などをプロセッサ33に送信し、プロセッサ33及び画像処理回路35は、これらに関する画像データを生成及び/又は送信してもよい。
【0069】
外部通信機器419は、車両1と情報のやりとりをする通信機器であり、例えば、車両1と車車間通信(V2V:Vehicle To Vehicle)により接続される他車両、歩車間通信(V2P:Vehicle To Pedestrian)により接続される歩行者(歩行者が携帯する携帯情報端末)、路車間通信(V2I:Vehicle To roadside Infrastructure)により接続されるネットワーク通信機器であり、広義には、車両1との通信(V2X:Vehicle To Everything)により接続される全てのものを含む。外部通信機器419は、例えば、歩行者、自転車、自動二輪車、他車両(先行車等)、路面、区画線、路側物、及び/又は地物(建物など)の位置を取得し、プロセッサ33へ出力してもよい。また、外部通信機器419は、上述の自車位置検出部405と同様の機能を有し、車両1の位置情報を取得し、プロセッサ33に送信してもよく、さらに上述の道路情報データベース403の機能も有し、前記道路情報(実オブジェクト関連情報の一例。)を取得し、プロセッサ33に送信してもよい。なお、外部通信機器419から取得される情報は、上述のものに限定されない。
【0070】
メモリ37に記憶されたソフトウェア構成要素は、目位置検出モジュール502、目位置推定モジュール504、目位置予測モジュール506、目位置状態判定モジュール508、スポット照明パターン設定モジュール510、表示パラメータ設定モジュール512、グラフィックモジュール514、光源駆動モジュール516、アクチュエータ駆動モジュール518、及び明るさ検出モジュール520、を含む。
【0071】
図7A図7B、及び図7Cは、いくつかの実施形態に従って、観察者の目位置に基づき、スポット照明パターンを設定する動作を実行する方法S100を示すフロー図である。方法S100は、ディスプレイを含むHUD装置20と、このHUD装置20を制御する表示制御装置30と、において実行される。以下に示す方法S100のいくつかの動作は任意選択的に組み合わされ、いくつかの動作の手順は任意選択的に変更され、いくつかの動作は任意選択的に省略される。
【0072】
図6の目位置検出モジュール502は、観察者の目位置700を検出する(S110)。目位置検出モジュール502は、観察者の目位置700を示す座標(X,Y軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、観察者の目の高さを示す座標(Y軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、観察者の目の高さ及び奥行方向の位置を示す座標(Y及びZ軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、及び/又は観察者の目位置700を示す座標(X,Y,Z軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、に関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。
【0073】
なお、目位置検出モジュール502が検出する目位置700は、右目と左目のそれぞれの位置700R,700L、右目位置700R及び左目位置700Lのうち予め定められた一方の位置、右目位置700R及び左目位置700Lのうち検出可能な(検出しやすい)いずれか一方の位置、又は右目位置700Rと左目位置700Lとから算出される位置(例えば、右目位置と左目位置との中点)、などを含む。例えば、目位置検出モジュール502は、目位置700を、表示設定を更新するタイミングの直前に目位置検出部411から取得した観測位置に基づき決定する。
【0074】
また、目位置検出部411は、目位置検出部411から取得する観察者の目の検出タイミングの異なる複数の観測位置に基づき、観察者の目位置700の移動方向、及び/又は移動速度を検出し、観察者の目位置700の移動方向、及び/又は移動速度を示す信号を、プロセッサ33に出力してもよい。
【0075】
目位置推定モジュール504は、目位置を推定可能な情報を取得する(S114)。目位置を推定可能な情報は、例えば、目位置検出部411から取得した撮像画像、車両1の運転席の位置、観察者の顔の位置、座高の高さ、又は複数の観察者の目の観測位置などである。目位置推定モジュール504は、目位置を推定可能な情報から、車両1の観察者の目位置700を推定する。目位置推定モジュール504は、目位置検出部411から取得した撮像画像、車両1の運転席の位置、観察者の顔の位置、座高の高さ、又は複数の観察者の目の観測位置などから、観察者の目位置700を推定すること、など観察者の目位置700を推定することに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。すなわち、目位置推定モジュール504は、目の位置を推定可能な情報から観察者の目位置700を推定するためのテーブルデータ、演算式、などを含み得る。
【0076】
目位置推定モジュール504は、目位置700を、スポット照明パターンを更新するタイミングの直前に目位置検出部411から取得した目の観測位置と、1つ又は複数の過去に取得した目の観測位置とに基づき、例えば、加重平均などの手法により、算出してもよい。
【0077】
目位置予測モジュール506は、観察者の目位置700を予測可能な情報を取得する(S116)。観察者の目位置700を予測可能な情報は、例えば、目位置検出部411から取得した最新の観測位置、又は1つ又はそれ以上の過去に取得した観測位置などである。目位置予測モジュール506は、観察者の目位置700を予測可能な情報に基づいて、目位置700を予測することに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。具体的に、例えば、目位置予測モジュール506は、新たな表示設定が適用された画像が観察者に視認されるタイミングの、観察者の目位置700を予測する。目位置予測モジュール506は、例えば、最小二乗法や、カルマンフィルタ、α-βフィルタ、又はパーティクルフィルタなどの予測アルゴリズムを用いて、過去の1つ又はそれ以上の観測位置を用いて、次回の値を予測するようにしてもよい。
【0078】
スポット照明パターン設定モジュール510は、S110で取得した目位置に基づいて、表示光Kを向ける領域を設定する(S130)。スポット照明パターン設定モジュール510は、観察者の左目位置700Lが存在する部分視域Eとその周辺の部分視域Eの一部又は全部とを含む領域を左目用スポットライティングパターンSPLに設定し、観察者の右目位置700Rが存在する部分視域Eとそれと隣接する部分視域Eの一部又は全部とを含む領域を右目用スポットライティングパターンSPRに設定する(S132)。具体的には、スポット照明パターン設定モジュール510は、図4Bに示すように、観察者の右目700Lが存在する部分視域E(2,3)と周辺の部分視域E(1,2)、E(2,2)、E(2,3)、E1,3)、E(3,3)、E(1,4)、E(2,4)、及びE(2,5)の一部を含む右目用スポットライティングパターンSPRと、観察者の左目700Lが存在する部分視域E(4,3)と周辺の部分視域E(3,2)、E(4,2)、E(5,2)、E3,3)、E(5,3)、E(3,4)、E(4,4)、及びE(5,4)の一部を含む右目用スポットライティングパターンSPRと、に表示光Kを向ける。この場合、スポット照明パターン設定モジュール510は、観察者の右目700Rが存在する部分視域E(2,3)の中心に表示光Kを向ける主部分領域DA(D(4,6))と、右目700Rが存在する部分視域E(2,3)内の中心ではない領域に表示光Kを向ける副部分領域DB(D(3,5),D(4,5),D(5,5),D(3,6),D(5,6),D(3,7),D(4,7),及びD(5,7))と、を所定の光強度以上で発光させ、観察者の左目700Lが存在する部分視域E(4,3)の中心に表示光Kを向ける主部分領域DA(D(8,6))と、左目700Lが存在する部分視域E(2,3)内の中心ではない領域に表示光Kを向ける副部分領域DB(D(7,5),D(8,5),D(9,5),D(7,6),D(9,6),D(7,7),D(8,7),及びD(9,7))と、を所定の光強度以上で発光させる。そして、スポット照明パターン設定モジュール510は、これら右目用発光領域DMR(右目用の主部分領域DA+副部分領域DB)、左目用発光領域DML(左目用の主部分領域DA+副部分領域DB)以外の部分領域Dには、照明用レーザービーム74を照射しない(又は光強度が非常に低い照明用レーザービーム74を照射する)。
【0079】
また、スポット照明パターン設定モジュール510は、観察者の左目位置700Lが存在する部分視域Eと観察者の右目位置700Rが存在する部分視域Eとを含む連なった1つの両眼向けスポットライティングパターンSPCに設定する(S134)。具体的には、スポット照明パターン設定モジュール510は、図8Aに示すように、観察者の右目700Lが存在する部分視域E(2,3)、左目700Lが存在する部分視域E(4,3)、及びこれらの周辺の部分視域E(1,2)、E(2,2)、E(3,2)、E(4,2)、E(5,2)、E(1,3)、E(3,3)、E(3,5)、E(1,4)、E(2,4)、E(3,4)、E(4,4)、及びE(5,4)の一部を含む両眼向けスポットライティングパターンSPC、に表示光Kを向ける。この場合、スポット照明パターン設定モジュール510は、観察者の右目700Rが存在する部分視域E(2,3)の中心に表示光Kを向ける主部分領域DA(D(4,6))、左目700Lが存在する部分視域E(4,3)の中心に表示光Kを向ける主部分領域DA(D(8,6))、主部分領域DA(D(4,6))と主部分領域DA(D(8,6))の周辺の副部分領域DB(D(5,4)~D(7,4)、D(2,5)~、D(9,5)、D(2,6)、D(3,6)、D(5,6)~D(7,6)、D(9,6)、D(2,7)~D(9,7)及び、D(5,8)~D(7,8))と、を所定の光強度以上で発光させる。そして、スポット照明パターン設定モジュール510は、これら両眼向け発光領域DMC(右目用の主部分領域DA+右目用の主部分領域DA+副部分領域DB)以外の部分領域Dには、照明用レーザービーム74を照射しない(又は光強度が非常に低い照明用レーザービーム74を照射する)。
【0080】
また、スポット照明パターン設定モジュール510は、S110で取得した自車両1における前後方向の目位置(Z軸座標)に基づいて、面状照明部SEにおける発光領域DMの広さを設定する(発光面積変更処理S136を実行する。)。図13は、自車両1における前後方向の目位置の違いによる、ヘッドアップディスプレイ装置20における光路の違いを説明する図である。なお、この図では、上記の照明光学系などを省略している。面状照明部SEの特定の発光領域DMから出射された照明光は、光変調素子51に画像を示す表示光Kに変調され、この表示光Kが集光光学系により前記発光領域DMに対応するスポットパターンSPに集光される。スポット照明パターン設定モジュール510は、被投影部2から第1の距離D1だけ離れた第1の位置701にある目に対し、第1の発光領域DM1を設定し、第1の距離D1よりも被投影部2に近い位置(換言すると、第1の距離D1より前方の位置)である第2の位置702にある目に対し、第1の発光領域DM1よりも広い第2の発光領域DM2を設定する。
【0081】
図10は、面状照明部SEにおける、第1の発光領域DM1(第1の左目用発光領域DML1、第1の右目用発光領域DMR1)及び、第2の発光領域DM2(第2の左目用発光領域DML2、第2の右目用発光領域DMR2)、の一態様を示す図である。発光領域DMの縦方向の長さを符号PV、横方向の長さを符号PHとすると、第1の発光領域DM1は、第2の発光領域DM2よりも縦方向の長さPVも横方向の長さPHも短くなる。また、第2の発光領域DM2は、第1の発光領域DM1とその周辺の発光領域DMを含む。このように、目位置700が前方(第1の位置701を基準とした第2の位置702)に配置される場合、光源素子60(後述する光源素子60A)の発光領域DMを広くすることで、光変調素子51の表示面52の全体(ここでの『全体』は、光変変調素子51の表示可能領域の全域100%及び、表示可能領域において予め設定された表示領域(例えば全域の70%)も含む。)に表示され得る画像の虚像Vを所望の輝度(所望の輝度以上)で観察者に視認させることができる。なお、図14の例では、左目700L用の第1の左目用発光領域DML1(第2の左目用発光領域DML2)及び、右目700R用の第1の右目用発光領域DMR1((第2の右目用発光領域DMR2)を設けるものであったが、これに限定されない。他の例のスポット照明パターン設定モジュール510は、自車両1における前後方向の目位置(Z軸座標)に基づいて、いずれか一方の目に向けられた発光領域DMに対してのみ広さを変更してもよい。また、他の例のスポット照明パターン設定モジュール510は、自車両1における前後方向の目位置(Z軸座標)に基づいて、左目位置700Lが存在する部分視域Eと右目位置700Rが存在する部分視域Eとを含む連なった1つの両眼向けスポットライティングパターンSPCに向ける連なった1つの両眼向け発光領域DMCの広さを変更してもよい。
【0082】
スポット照明パターン設定モジュール510は、S110で取得した自車両1における前後方向の目位置(Z軸座標)に基づいて、面状照明部SEにおける発光領域DMにおける光量分布Ldを制御する(S138)。
【0083】
いくつかの実施形態では、スポット照明パターン設定モジュール510は、副部分領域DBの発光強度を、主部分領域DAの発光強度の0.7倍より高くしてもよい。これによれば、副部分領域DBの発光強度が比較的強いため、目位置700が部分視域Eの境界付近になった場合でも、副部分領域DBからの光によって、比較的輝度の高い表示光Kを視認させることができる。
【0084】
また、いくつかの実施形態では、スポット照明パターン設定モジュール510は、前記副部分領域(DB)の発光強度を、前記主部分領域(DA)の発光強度より高くしてもよい。これによれば、副部分領域DBの発光強度が比較的強いため、目位置700が部分視域Eの境界付近になった場合でも、副部分領域DBからの光によって、比較的輝度の高い表示光Kを視認させることができる。また、虚像表示領域VSの全体に表示され得る虚像Vの輝度の均斉度を向上させることができる。
【0085】
図6の表示パラメータ設定モジュール512は、目位置検出モジュール502で検出した目位置700、目位置推定モジュール504で推測した目位置700、又は目位置予測モジュール506で予測した目位置700が、予め定められた複数の部分視域Eのどこに属しているか判定し、目位置700に対応する表示パラメータ600を設定する。表示パラメータ設定モジュール512は、目位置700が示すX軸座標、Y軸座標、Z軸座標、又はこれらの組み合わせが、複数の空間的な領域(部分視域E)のどこに属するのかを判定し、目位置700が属する部分視域Eに対応する表示パラメータ600を設定することに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。すなわち、表示パラメータ設定モジュール512は、目位置700が示すX軸座標、Y軸座標、Z軸座標、又はこれらの組み合わせから、表示パラメータ600を特定するためのテーブルデータ、演算式、などを含み得る。
【0086】
表示パラメータ設定モジュール512は、部分視域E毎に対応する表示パラメータを適用してもよい(S152)。表示パラメータ設定モジュール512は、例えば、発光領域DMが時分割的に発光する場合、1つの発光領域DMが発光するタイミング毎に異なる表示パラメータ600に切り替えてもよい。図4Bの例では、発光領域DM(7,6)が発光するタイミングで発光領域DM(7,6)に対応する表示パラメータ600を光変調素子51に適用し、発光領域DM(8,6)が発光するタイミングで発光領域DM(8,6)に対応する表示パラメータ600を光変調素子51に適用してもよい。
【0087】
また、他の表示パラメータ設定モジュール512は、複数の発光領域DMで1つの共通の表示パラメータを適用してもよい(S154)。表示パラメータ設定モジュール512は、例えば、図4Bに示す右目用スポットライティングパターンSPRに表示光Kが向けるため、右目用発光領域DMR(部分領域D(8,6)、D(7,5)、D(8,5)、D(9,5)、D(7,6)、D(9,6)、D(7,7)、D(8,7)、D(9,7))を発光させるそれぞれのタイミングで共通の表示パラメータ600を光変調素子51に適用する。具体的には、表示パラメータ設定モジュール512は、スポットライティングパターンSPの中心に表示光Kを向かせる主部分領域DA(図4Bの例ではD(8,6))に対応する表示パラメータ600を光変調素子51に適用してもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、表示パラメータ設定モジュール512は、右目用発光領域DMRを発光させるタイミングと、左目用発光領域DMLを発光させるタイミングと、で表示パラメータ600を切り替えてもよい。ここで、表示パラメータ600が表示させる画像を異ならせるパラメータであるとすると、表示パラメータ設定モジュール512は、右目用発光領域DMRを発光させるタイミングで右目用画像を表示させ、左目用発光領域DMLを発光させるタイミングで左目用画像を表示させる、ことで左右の視差による立体画像(虚像)を観察者に知覚させることができる。
【0089】
また、他の表示パラメータ設定モジュール512は、1つのスポットライティングパターンSPに2つ以上の表示パラメータを適用してもよい(S154)。この場合、表示パラメータ設定モジュール512は、予め複数の部分領域Dで共通の表示パラメータ600を設定しておく。例えば、図4Bの例で、部分領域D(7,5)、D(8,5)、及びD(9,5)が共通の第1の表示パラメータが設定され、部分領域D(7,6)、D(8,6)、及びD(9,6)が共通の第2の表示パラメータ(第1の表示パラメータとは異なる。)が設定され、かつ部分領域D(7,7)、D(8,7)、及びD(9,7)が共通の第3の表示パラメータ(第1、第2の表示パラメータとは異なる。)が設定されるとすると、表示パラメータ設定モジュール512は、部分領域D(7,5)、D(8,5)、及びD(9,5)がそれぞれ発光する際に、第1の表示パラメータを光変調素子51に適用し、部分領域D(7,6)、D(8,6)、及びD(9,6)がそれぞれ発光する際に、第2の表示パラメータを光変調素子51に適用、並びに部分領域D(7,7)、D(8,7)、及びD(9,7)がそれぞれ発光する際に、第3の表示パラメータを光変調素子51に適用する。
【0090】
表示パラメータ600の種類は、(1)目位置700から見て、車両1の外側に位置する実オブジェクトと所定の位置関係になるような画像の配置(画像の配置を制御するために表示器50を制御するパラメータ、及び/又はアクチュエータを制御すパラメータ。)、(2)目位置700から見た虚像光学系90などにより生じ得る画像の歪みを軽減するために画像を事前に歪ませるためのパラメータ(表示器50上で表示される画像を事前に歪ませるために表示器50を制御するパラメータであり、ワーピングパラメータとも呼ばれる。)、(3)目位置から見て、所望の立体画像を視認させるためのパラメータ(表示器50を制御するパラメータ、表示器50の前記光源を制御するパラメータ、アクチュエータを制御するパラメータ、又はこれらの組み合わせを含むパラメータ。)、などを含む。ただし、表示パラメータ設定モジュール512が設定(選択)する表示パラメータ600は、観察者の目位置700に応じて変更されることが好ましいパラメータであればよく、表示パラメータ600の種類は、これらに限定されない。
【0091】
表示パラメータ設定モジュール512は、1種類の表示パラメータにつき、目位置700に対応する1つ又は複数の表示パラメータ600を選定する。目位置700が、例えば、右目位置700R、及び左目位置700Lのそれぞれを含む場合、表示パラメータ設定モジュール512は、右目位置700Rに対応する表示パラメータ600と、左目位置700Lに対応する表示パラメータ600と、の2つを選定し得る。一方、目位置700が、例えば、右目位置700R及び左目位置700Lのうち予め定められた一方の位置、右目位置700R及び左目位置700Lのうち検出可能な(検出しやすい)いずれか一方の位置、又は右目位置700Rと左目位置700Lとから算出される1つの位置(例えば、右目位置700Rと左目位置700Lとの中点)である場合、表示パラメータ設定モジュール512は、目位置700に対応する1つの表示パラメータ600を選定し得る。なお、表示パラメータ設定モジュール512は、目位置700に対応する表示パラメータ600と、当該目位置700の周囲に設定される表示パラメータ600も選定し得る。すなわち、表示パラメータ設定モジュール512は、目位置700に対応する3つ以上の表示パラメータ600を選定し得る。
【0092】
図6の目位置状態判定モジュール508は、観察者の目位置700が不安定状態であるか判定する(S170)。目位置状態判定モジュール508は、(10)観察者の目位置700が移動しているか否かを判定し、目位置の移動を検出した場合、不安定状態であると判定すること、(20)観察者の目位置700が所定の閾値以上の速度で移動しているか否かを判定し、所定の閾値以上の速度での移動を検出した場合、不安定状態であると判定すること、(30)観察者の目位置700が検出できるか否かを判定し、目位置700が検出できない場合、不安定状態であると判定すること、(40)観察者の目位置700がアイボックス200外にあるか否かを判定し、アイボックス200外にある場合、不安定状態であると判定すること、(50)観察者の目位置700がアイボックス200外にあると推定できるか判定し、アイボックス200外にあると推定できる場合、不安定状態であると判定すること、又は(60)観察者の目位置700がアイボックス200外になると予測されるか否かを判定し、アイボックス200外になると予測される場合、不安定状態であると判定すること、など観察者の目位置700が不安定状態であることに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。すなわち、目位置状態判定モジュール508は、目位置700の検出情報、推定情報、又は予測情報から、目位置が移動している状態か、目位置が高速で移動している状態か、及び/又はその他の不安定状態であるか否かを判定するためのテーブルデータ、演算式、などを含み得る。
【0093】
(S176)目位置検出モジュール502は、目位置検出部411から所定の測定時間内において取得された複数の観測位置の各々の位置データの分散を算出し、目位置状態判定モジュール508は、目位置検出モジュール502により算出された分散が所定の閾値よりも大きい場合、観察者の目位置の安定度が低い(不安定である。)と判定する形態であってもよい。
【0094】
(S178)目位置検出モジュール502は、目位置検出部411から所定の測定時間内において取得された複数の観測位置の各々の位置データの偏差を算出し、目位置状態判定モジュール508は、目位置検出モジュール502により算出された偏差が所定の閾値よりも大きい場合、観察者の目位置の安定度が低い(不安定である。)と判定する(不安定状態ではない)形態であってもよい。
【0095】
また、方法S176の分散や方法S178の偏差を用いずに、目位置検出モジュール502は、所定の単位時間当りに、目位置700が移動した部分視域の数が、所定の閾値より多くなったときに、観察者の目位置の安定度が低い(不安定である。)と判定する(不安定状態ではない)形態であってもよい。また、目位置検出モジュール502は、所定の単位時間当りに、目位置700が移動総距離(単位時間当りに複数回取得される複数の観測位置の間の距離の総和)が、所定の閾値より長くなったときに、観察者の目位置の安定度が低い(不安定である。)と判定する(不安定状態ではない)形態であってもよい。
【0096】
(S176)観察者の目位置700が検出できるか否かの判定する方法は、(1)目位置検出部411から所定期間内において取得される観察者の目の観測位置の一部(例えば、所定の回数以上。)又は全部が検出できないこと、(2)目位置検出モジュール502が、通常の動作において、観察者の目位置700を検出できないこと、(3)目位置推定モジュール504が、通常の動作において、観察者の目位置700を推定できないこと、(4)目位置予測モジュール506が、通常の動作において、観察者の目位置700を予測できないこと、又はこれらの組み合わせにより、観察者の目位置700が検出できない(観察者の目位置700が不安定状態である)と判定すること、を含む(なお前記判定方法は、これらに限定されない。)。
【0097】
(S178)観察者の目位置700がアイボックス200外にあるか否かの判定する方法は、(1)目位置検出部411から所定期間内において取得される観察者の目の観測位置の一部(例えば、所定の回数以上。)又は全部をアイボックス200外で取得すること、(2)目位置検出モジュール502が観察者の目位置700をアイボックス200外で検出すること、又はこれらの組み合わせにより、観察者の目位置700がアイボックス200外にある(観察者の目位置700が不安定状態である)と判定すること、を含む(なお前記判定方法は、これらに限定されない。)。
【0098】
(S180)観察者の目位置700がアイボックス200外にあると推定できるか判定する方法は、(1)目位置検出部411で観察者の目位置700の移動が検出された後、観察者の目位置700が検出できなくなったこと、(2)目位置検出モジュール502が観察者の目位置700をアイボックス200の境界200Aの近傍で検出すること、(3)目位置検出モジュール502が観察者の右目位置700R及び左目位置700Lのいずれかアイボックス200の境界200Aの近傍で検出すること、又はこれらの組み合わせにより、観察者の目位置700がアイボックス200外にあると推定できる(観察者の目位置700が不安定状態である)と判定すること、を含む(なお前記判定方法は、これらに限定されない。)。
【0099】
(S182)観察者の目位置700がアイボックス200外になると予測されるか否かを判定する方法は、(1)目位置予測モジュール506が所定時間後の観察者の目位置700をアイボックス200外に予測すること、(2)目位置検出モジュール502が新たに検出した目位置700が、過去に検出した目位置700に対して、メモリ37に予め記憶された目位置移動距離閾値以上であること(目位置700の移動速度が、メモリ37に予め記憶された目位置移動速度閾値以上であること。)、又はこれらの組み合わせにより、観察者の目位置700がアイボックス200外にあると予測できる(観察者の目位置700が不安定状態である)と判定すること、を含む(なお前記判定方法は、これらに限定されない。)。
【0100】
スポット照明パターン設定モジュール510は、目位置状態判定モジュール508により不安定状態ではないと判定された場合、第1のスポットライティングパターンSP1に設定する(S192)。一方、表示パラメータ設定モジュール512は、目位置状態判定モジュール508により不安定状態であると判定された場合、第1のスポットライティングパターンSP1より表示光Kを向ける領域を拡げた第2のスポットライティングパターンSP2に設定してもよい(S194)。
【0101】
再び図6を参照する。グラフィックモジュール514は、レンダリングなどの画像処理をして画像データを生成し、表示器50を駆動するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含む。また、グラフィックモジュール514は、表示される画像の、種類、配置(位置座標、角度)、サイズ、表示距離(3Dの場合。)、視覚的効果(例えば、輝度、透明度、彩度、コントラスト、又は他の視覚特性)、を変更するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含んでいてもよい。グラフィックモジュール514は、画像の種類(表示パラメータの1つ。)、画像の位置座標(表示パラメータの1つ。)、画像の角度(X方向を軸としたピッチング角、Y方向を軸としたヨーレート角、Z方向を軸としたローリング角などであり、表示パラメータの1つ。)、及び画像のサイズ(表示パラメータの1つ。)で観察者に視認されるように画像データを生成し、HUD装置20を駆動し得る。
【0102】
光源駆動モジュール516は、指向性光源ユニット60を駆動することを実行するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含む。光源駆動モジュール516は、設定されたスポットライティングパターン、表示パラメータ600に基づき、指向性光源ユニット60を駆動し得る。
【0103】
アクチュエータ駆動モジュール518は、第1アクチュエータ28及び/又は第2アクチュエータ29を駆動することを実行するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含むアクチュエータ駆動モジュール518は、設定された表示パラメータ600に基づき、第1アクチュエータ28及び第2アクチュエータ29を駆動し得る。
【0104】
図6の明るさ検出モジュール520は、明るさセンサ415により、車両1の車室の前方に存在する前景の所定範囲の照度又は輝度を外界明るさ(明るさ情報の一例)、又は車室内の照度又は輝度を車内明るさ(明るさ情報の一例)として検出する。明るさ検出モジュール520は、明るさ情報を取得すること(検出すること)、取得された明るさ情報と所定の閾値とを比較して比較結果を出力すること、に関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。
【0105】
また、明るさ検出モジュール520は、車両1の車室の前方に存在する前景の所定範囲の照度又は輝度である外界明るさ、又は車室内の照度又は輝度である車内明るさなど、明るさを予測可能な情報を取得する。明るさを予測可能な情報は、例えば、道路情報データベース403から明るさが暗くなる位置などを示す情報である。これに基づき、明るさ検出モジュール520は、例えば、所定の時間後に明るくなること又は暗くなることを予測して、予測結果を出力しても良い。
【0106】
いくつかの実施形態では、プロセッサ33は、明るさ検出モジュール520から取得した周囲の明るさに関する情報、又は周囲の明るさを予測可能な情報を取得し、スポット照明パターン設定モジュール510を実行することで、周囲の明るさが暗いと推定される場合、副部分領域DBの発光強度の、主部分領域DAの発光強度に対する割合を高くしてもよい。具体的に例えば、スポット照明パターン設定モジュール510は、周囲が明るい場合、主部分領域DAと副部分領域DBとの光強度の割合は、1:0.7に設定し、周囲が暗い場合、1:0.8に設定してもよい。また、いくつかの実施形態では、スポット照明パターン設定モジュール510は、周囲が明るい場合、主部分領域DAと副部分領域DBとの光強度の割合は、1:1.3に設定し、周囲が暗い場合、1:1.5に設定してもよい。暗い環境では、各発光領域DMから出射される照明光の強度を全体的に低下させるが、これにより、周囲の発光領域DMに基づく光量同士の合波の影響(光量の増加)が少なくなるが、暗い環境下で、副部分領域DBの発光強度の、主部分領域DAの発光強度に対する割合を高くすることで、部分視域Eの境界付近での画像(虚像)の輝度低下を抑えることができる。
【0107】
上述の処理プロセスの動作は、汎用プロセッサ又は特定用途向けチップなどの情報処理装置の1つ以上の機能モジュールを実行させることにより実施することができる。これらのモジュール、これらのモジュールの組み合わせ、及び/又はそれらの機能を代替えし得る公知のハードウェアとの組み合わせは全て、本発明の保護の範囲内に含まれる。
【0108】
車両用表示システム10の機能ブロックは、任意選択的に、説明される様々な実施形態の原理を実行するために、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実行される。図6で説明する機能ブロックが、説明される実施形態の原理を実施するために、任意選択的に、組み合わされ、又は1つの機能ブロックを2以上のサブブロックに分離されてもいいことは、当業者に理解されるだろう。したがって、本明細書における説明は、本明細書で説明されている機能ブロックのあらゆる可能な組み合わせ若しくは分割を、任意選択的に支持する。
【0109】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態における指向性光源ユニット60Aの構成を示す図である。図12は、図8に示す光源アレイ80Aの一態様を示す図である。指向性光源ユニット60は、フィールドレンズ77A、及びアレイ状に複数の光源(本実施形態では、図12に示すように81個)を配置した光源アレイ80Aから構成される。光源アレイ80A(面状照明部SE)は、m個(m>n)の部分領域D(本実施形態の部分領域Dは、D(1,1)~D(11,11)までの121個。)にそれぞれ配置され、表示制御装置30が、目位置検出部411で検出した目位置が存在する部分視域Eに対応するスポットライティングパターンSPに強い表示光Kが向くように、部分的に光源を駆動する(部分駆動する)ことで、上記の指向性光源ユニット60Aの場合と同様に、観察者に画像(虚像V)を視認させることで、観察者の目が存在しない部分視域Eに光を向かわないようにすることができる。
【0110】
フィールドレンズ77Aは、光源アレイ80Aと光変調素子51との間の各部分領域Dに配置された光源から出射された照明光の光路上に配置されている。本実施形態の第2のフィールドレンズ77は、1つ又は複数のフィールドレンズから構成され、光拡散光学系80の各部分領域Dにより拡散された照明用レーザービーム74が光変調素子51の全面を透過照明するように設計された前段光学部材(バックライト光学部材)である。また、フィールドレンズ77Aは、光変調素子51から出射される表示光Kが虚像光学系90(リレー光学系40及びフロントウインドシールド2から構成されるHUD光学部材)を経てアイボックス200内の任意の位置にある部分視域Eに届くように設計されている。
【0111】
拡散板78は、光変調素子51とフィールドレンズ77Aとの間の照明光の光路上に配置されている。拡散板78は、受光した照明光を拡散させて光変調素子51に出射する。これにより、アイボックス200の部分視域E内で視認される複数の発光領域DMから出射された照明光により生成される表示光Kにおける輝度ムラを低減できる。拡散板78は、光を拡散させる機能がある光学部材であれば良く、例えばその表面がビーズ部材や微細な凹凸構造、粗面で構成される。また、ドットシートや透過性の乳白色のシートでも良い。
【0112】
本実施形態の光源アレイ80Aは、m個の部分領域DにそれぞれLEDなどの光源が1つずつ配置されており(複数配置されてもよい)、m個のいずれの部分領域Dに配置された光源が出射する照明光は、フィールドレンズ77、拡散板78、を透過した後に、光変調素子51の全面に照射され、光変調された表示光Kが虚像光学系90を通過した後に、所定の部分領域Dに対応する所定のアイボックス200内の所定の領域に照射される。
【0113】
図12図13A、及び図13Bを参照して、発光領域DMの縦方向の長さPVと、横方向の長さPHとの関係を説明する。図12図13A、及び図13Bは、発光パターンが異なるが、所定の光強度以上で発光させる1群の部分領域Dを全て含むバウンディングボックスを、発光領域DMと定義すると、図12図13A、及び図13Bにおける発光領域DMの大きさは同じと言える。発光領域DMの横方向は、アイボックス200の左右方向(X軸方向)に対応し、発光領域DMの縦方向は、アイボックス200の上下方向(Y軸方向)に対応する。本実施形態では、発光領域DMの横方向の長さPHが、縦方向の長さPVの2倍以上に設定される。これにより、発光領域DMに対応するスポットライティングパターンSPの横方向の長さが、縦方向の長さの概ね2倍以上に設定される。これにより、スポットライティングパターンSPの縦方向を小さくして光源の電力を抑えつつも、スポットライティングパターンSPの横方向を大きくして目位置700が横方向に移動しても画像(虚像)を所望の輝度で視認させることができる。
【0114】
すなわち、いくつかの実施形態において、スポットライティングパターンSPの広さは、部分視域Eより広く設定されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、スポットライティングパターンSPの左右方向の長さは、部分視域Eの2倍以上に設定されてもよい。具体的には、部分視域Eの縦方向の長さが26[mm]、横方向の長さが10[mm]に対して、スポットライティングパターンSPの縦方向の長さが52[mm]、横方向の長さが20[mm]になるように、発光領域DMの配置、発光領域DMが出射する光強度の調整(バランス)、及び/又は集光光学系の全体又は部分的な光学的な調整が行われる。
【0115】
図14A乃至図14Dは、いくつかの実施形態に係る、アイボックスの部分視域と、指向性光源ユニットの各部分領域から出射された照明光に基づく表示光が集光される位置と、の関係の変形例示す図である。
【0116】
図14Aの例では、指向性光源ユニット60は、1つの部分視域E内に異なる5箇所に照射され得るように部分領域Dを配置する。具体的には、部分視域Eの中心に1箇所、部分視域Eの4隅に4箇所の合計5箇所である。図14Aに示す一態様において、表示制御装置30は、目位置700が存在する部分視域E内の異なる5箇所全てに表示光Kが照射されるように指向性光源ユニット60を制御する。発光領域DMは、目位置700が存在する部分視域Eの中心に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する主部分領域DAと、主部分領域DAよりも目位置700が存在する部分視域Eの中心から離れた位置に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する副部分領域DBと、を含む。すなわち、左目位置700Lが部分視域E(4,3)に存在する場合、主部分領域DAは、部分領域D(8,6)であり、副部分領域DBは、部分領域D(7,5),D(9,5),D(7,7),及びD(9,7)である。一方、右目位置700Rが部分視域E(2,3)に存在する場合、主部分領域DAは、部分領域D(4,6)であり、副部分領域DBは、部分領域D(3,5),D(5,5),D(3,7),及びD(5,7)である。
【0117】
図14Bの例では、指向性光源ユニット60は、1つの部分視域E内に異なる3箇所に照射され得るように部分領域Dを配置する。具体的には、部分視域Eの中心に1箇所、部分視域Eの4隅のうち2箇所の合計3箇所である。図14Bに示す一態様において、表示制御装置30は、目位置700が存在する部分視域E内の異なる3箇所全てに表示光Kが照射されるように指向性光源ユニット60を制御する。発光領域DMは、目位置700が存在する部分視域Eの中心に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する主部分領域DAと、主部分領域DAよりも目位置700が存在する部分視域Eの中心から離れた位置に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する副部分領域DBと、を含む。すなわち、左目位置700Lが部分視域E(4,3)に存在する場合、主部分領域DAは、部分領域D(8,6)であり、副部分領域DBは、部分領域D(7,5),及びD(9,7)である。一方、右目位置700Rが部分視域E(2,3)に存在する場合、主部分領域DAは、部分領域D(4,6)であり、副部分領域DBは、部分領域D(3,5),及びD(5,7)である。
【0118】
図14Cの例では、指向性光源ユニット60は、1つの部分視域E内に異なる4箇所に照射され得るように部分領域Dを配置する。具体的には、部分視域Eの4隅の4箇所である。図14Cに示す一態様において、表示制御装置30は、目位置700が存在する部分視域E内の異なる4箇所全てに表示光Kが照射されるように指向性光源ユニット60を制御する。発光領域DMは、目位置700が存在する部分視域Eの中心に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する主部分領域DAを含まず、主部分領域DAよりも目位置700が存在する部分視域Eの中心から離れた位置に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する副部分領域DBのみを含む。すなわち、左目位置700Lが部分視域E(4,3)に存在する場合、主部分領域DAはなく、副部分領域DBは、部分領域D(7,5),D(9,5),D(7,7),及びD(9,7)である。一方、右目位置700Rが部分視域E(2,3)に存在する場合、主部分領域DAはなく、副部分領域DBは、部分領域D(3,5),D(5,5),D(3,7),及びD(5,7)である。
【0119】
図14Dの例では、指向性光源ユニット60は、1つの部分視域E内に異なる2箇所に照射され得るように部分領域Dを配置する。具体的には、部分視域Eの4隅以外の2箇所である。図14Dに示す一態様において、表示制御装置30は、目位置700が存在する部分視域E内の異なる2箇所全てに表示光Kが照射されるように指向性光源ユニット60を制御する。発光領域DMは、目位置700が存在する部分視域Eの中心に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する主部分領域DAを含まず、主部分領域DAよりも目位置700が存在する部分視域Eの中心から離れた位置であり、部分視域Dの境界ではない位置に集光する表示光Kの元となる照明光を出射する副部分領域DBのみを含む。すなわち、左目位置700Lが部分視域E(4,3)に存在する場合、主部分領域DAはなく、副部分領域DBは、部分視域Dの境界ではない部分領域D(7.5,6),及びD(8.5,6)である。一方、右目位置700Rが部分視域E(2,3)に存在する場合、主部分領域DAはなく、副部分領域DBは、部分領域D(3.5,6),及びD(4.5,6)である。
【0120】
いくつかの実施形態の光源素子60(60A)は、図4B図14A、及び図14Bに示すように、部分視域Eの中心に表示光Kが向けられるための照明光を出射する主部分領域DAを有していてもよい。この場合、プロセッサ33は、発光領域DMが、部分視域Eの中心に表示光が向けられるための照明光を出射する主部分領域DAを含むように発光パターンを設定してもよい。
【0121】
また、いくつかの実施形態の光源素子60(60A)は、図4B図14A図14B図14C、及び図14Dに示すように、部分視域Eの中心に表示光が向けられるための照明光を出射し得る位置を点対称とした2つ以上の副部分領域DBを有している。この場合、プロセッサ33は、発光領域DMが、部分視域Eの中心に表示光が向けられるための照明光を出射し得る位置を点対称とした2つ以上の副部分領域DBを含むように発光パターンを設定する。
【0122】
また、いくつかの実施形態の光源素子60(60A)は、図4B図14A図14B、及び図14Cに示すように、部分視域Eの中心に表示光が向けられるための照明光を出射し得る位置を点対称とした上述の2つ以上の副部分領域DBを、部分視域Eの境界に表示光が向けられるための照明光を出射し得る位置に配置してもよい。
【0123】
また、いくつかの実施形態の光源素子60(60A)は、図4B図14A図14B、及び図14Cに示すように、部分視域Eの中心に表示光が向けられるための照明光を出射し得る位置を点対称とした上述の2つ以上の副部分領域DBを、部分視域Eの4隅のうち点対称な2隅又は4隅全てに表示光が向けられるための照明光を出射し得る位置に配置してもよい。
【0124】
いくつかの実施形態の光源素子60(60A)は、図14C、及び図14Dに示すように、部分視域Eの中心に表示光が向けられるための照明光を出射する主部分領域DAを有さず、部分視域Eの中心に表示光が向けられるための照明光を出射し得る位置を点対称とした上述の2つ以上の副部分領域DBのみ有していてもよい。
【0125】
なお、光源素子60(60A)における部分領域Dの配置は、全体で規則的に配列されている必要はなく、例えば、アイボックス200の中心(及びその周辺)に対応する位置と、アイボックス200の周辺に対応する位置と、で異ならせてもよい。また、光源素子60(60A)における部分領域Dの配置は、アイボックス200の左右方向の中心(及びその周辺)に対応する位置と、アイボックス200の左右方向における周辺に対応する位置と、で異ならせてもよい。また、光源素子60(60A)における部分領域Dの配置は、アイボックス200の上下方向の中心(及びその周辺)に対応する位置と、アイボックス200の上下方向における周辺に対応する位置と、で異ならせてもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、光源素子60(60A)は、n個の部分視域Eより多いm個の部分領域Dを有するものであったが、これに限定されない。すなわち、部分視域Eの数(n個)と部分領域Dの数(m個)は、等しくてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、表示制御装置30(プロセッサ33)は、自車両1における前後方向の目位置(Z軸座標)に基づいて、面状照明部SEにおける発光領域DMの広さを変更していたが、これに限定されるものではない。表示制御装置30(プロセッサ33)は、自車両1における前後方向の目位置(Z軸座標)に加えて、(1)自車両1における左右方向の目位置(X座標)、(2)自車両1における上下方向の目位置(Y座標)、(3)又はこれらの組み合わせの目位置(X座標、Y座標)、に基づいても、面状照明部SEにおける発光領域DMの広さを変更してもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 :車両
2 :フロントウインドシールド(被投影部)
3 :非正反射素子
10 :車両用表示システム
20 :HUD装置
28 :第1アクチュエータ
29 :第2アクチュエータ
30 :表示制御装置
31 :I/Oインタフェース
33 :プロセッサ
35 :画像処理回路
37 :メモリ
40 :リレー光学系
41 :第1ミラー
42 :第2ミラー
50 :表示器
51 :光変調素子
52 :表示面
60 :指向性光源ユニット(光源素子)
60A :指向性光源ユニット(光源素子)
70 :光源
74 :照明用レーザービーム
75 :走査デバイス
76 :第1のフィールドレンズ
77 :第2のフィールドレンズ
77A :フィールドレンズ
78 :拡散板
80 :光拡散光学系(面状照明部)
80A :光源アレイ(面状照明部)
81 :レンズアレイ
82 :ホログラム記録媒体
90 :虚像光学系
100 :虚像表示領域
101 :上端
102 :下端
200 :アイボックス
200A :境界
205 :中心
401 :車両ECU
403 :道路情報データベース
405 :自車位置検出部
407 :車外センサ
409 :操作検出部
411 :目位置検出部(視線方向検出部)
413 :IMU
415 :明るさセンサ
417 :携帯情報端末
419 :外部通信機器
502 :目位置検出モジュール
504 :目位置推定モジュール
506 :目位置予測モジュール
508 :目位置状態判定モジュール
510 :スポット照明パターン設定モジュール
512 :表示パラメータ設定モジュール
514 :グラフィックモジュール
516 :光源駆動モジュール
518 :アクチュエータ駆動モジュール
520 :明るさ検出モジュール
600 :表示パラメータ
700 :目位置
700L :左目
700R :右目
D :部分視域
DA :主部分領域
DB :副部分領域
DM :発光領域
DML :左目用発光領域
DMR :右目用発光領域
E :部分視域
SP :スポットライティングパターン
SP1 :第1のスポットライティングパターン
SP2 :第2のスポットライティングパターン
SPL :左目用スポットライティングパターン
SPR :右目用スポットライティングパターン
V :虚像
θt :チルト角
θv :縦配置角
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D