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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】熱転写シートおよび中間転写媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/44 20060101AFI20241031BHJP
   B41M 5/382 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B41M5/44 410
B41M5/44 420
B41M5/382 800
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024030949
(22)【出願日】2024-03-01
【審査請求日】2024-07-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】大西 紘子
(72)【発明者】
【氏名】森 繁太
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-089899(JP,A)
【文献】特開2017-165073(JP,A)
【文献】特開2017-217793(JP,A)
【文献】特開2004-205827(JP,A)
【文献】特開2016-124228(JP,A)
【文献】特開2019-001056(JP,A)
【文献】特開2018-058210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/44
B41M 5/382
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と転写層とを備える熱転写シートであって、
前記転写層が、前記基材側から剥離層と保護層とをこの順に備え、
前記剥離層が、樹脂材料として第1樹脂、第2樹脂、および第3樹脂を含有し、
前記第1樹脂がアクリル樹脂であり、
前記第2樹脂がセルロース系樹脂であり、
前記第3樹脂がポリエステルであり、
前記第1樹脂100質量部に対する前記第2樹脂の含有量が、3質量部以上12質量部以下であり、
前記第1樹脂100質量部に対する前記第3樹脂の含有量が、0.2質量部以上0.8質量部以下である、熱転写シート。
【請求項2】
前記転写層が、接着層をさらに備え、
前記接着層が、前記保護層の表層に設けられている、請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記転写層が、受容層をさらに備え、
前記受容層が、前記保護層の表層に設けられている、請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記基材と前記転写層との間に、離型層をさらに備える、請求項1に記載の熱転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートおよび中間転写媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
印画物の製造方法の一つとして、熱転写方法が広く用いられている。この熱転写方法によれば、基材層の一方の面上に色材層が設けられた熱転写シートと、他の基材層の一方の面上に受容層が設けられた熱転写受像シートとを組み合わせ、熱転写受像シートの受容層に熱転写画像を形成することにより、印画物が得られる。
【0003】
熱転写方法としては、昇華型熱転写方式及び溶融型熱転写方式が知られている。昇華型熱転写方式は、サーマルヘッド等の加熱手段により、熱転写シートの色材層に含まれる昇華性染料を、熱転写受像シートの受容層に移行させる方式である。溶融型熱転写方式は、サーマルヘッド等の加熱手段により、熱転写シートの色材層を溶融又は軟化させ、当該色材層を、熱転写受像シートの受容層上に転写する方式である。
【0004】
印画物の多様化に伴い、熱転写受像シートの受容層に熱転写画像が形成された印画物ではなく、表面に受容層を持たない被転写体に熱転写画像が形成された加飾品を得たいとの要望ある。この要望に対しては、基材層の一方の面上に表層としての受容層を備える転写層が設けられた中間転写媒体を用いる方法が知られている。この方法では、熱転写シートを用いて中間転写媒体の表層である受容層に熱転写画像を形成し、次いで、熱転写画像が形成された受容層を備える転写層を被転写体上に転写することで、該転写層が被転写体上に設けられた加飾品が得られる。
【0005】
従来の熱転写シートを用いて形成される熱転写画像や、中間転写媒体を用いて熱転写画像が形成された受容層を備える転写層は、擦れ又は引っ掻きに弱く、耐擦過性が低い場合がある。また、光沢調の印画物や加飾品が要求される場合がある。そのため、熱転写画像や転写層の表面には、これらの要求を満たすための保護層が設けられている。例えば、特許文献1には、ISO306のB50法により測定されたビカット軟化温度が75℃以上110℃以下の樹脂と、ポリエステルとを含有する剥離層を含む保護層を転写することで、光沢調の印画物が得られる保護層転写シートが開示されている。また、特許文献2には、セルロース系樹脂を含有する剥離層を含む、転写層の転写性が良好な中間転写媒体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-001056号公報
【文献】特開2018-058210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に開示された剥離層は、アクリル樹脂や塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体にセルロース系樹脂を混合することで剥離性を得ていたが、印画物の光沢感や基材と転写層との密着性に改善の余地があった。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材と転写層との密着性と、転写時の剥離層の剥離性とを両立するとともに、光沢調の印画物が得られる、熱転写シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の熱転写シートは、基材と転写層とを備え、転写層が基材側から剥離層と保護層とをこの順に備え、剥離層が樹脂材料として第1樹脂、第2樹脂および第3樹脂を含有し、第1樹脂がアクリル樹脂であり、第2樹脂がセルロース系樹脂であり、第3樹脂がポリエステルであり、第1樹脂100質量部に対する第2樹脂の含有量が、3質量部以上12質量部以下であり、第1樹脂100質量部に対する第3樹脂の含有量が、0.2質量部以上0.8質量部以下である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、基材と転写層との密着性と、転写時の転写層の剥離性とを両立するとともに、光沢調の印画物が得られる、熱転写シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図2図2は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図3図3は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願明細書でいう箔持ち性とは、熱転写シートに曲げ応力を加えたときの基材層からの転写層の脱落の抑制度合を示し、箔持ち性が良好であるという場合には、熱転写シートに曲げ応力を加えたときに基材層からの転写層の脱落を抑制できること(すなわち、基材層と転写層との密着性に優れること)を意味する。
【0013】
[熱転写シート]
本開示の熱転写シートは、基材と転写層とを備える。転写層は、基材側から剥離層と保護層とをこの順に備える。剥離層は、樹脂材料として第1樹脂、第2樹脂および第3樹脂を含有し、第1樹脂がアクリル樹脂であり、第2樹脂がセルロース系樹脂であり、第3樹脂がポリエステルであり、第1樹脂100質量部に対する第2樹脂の含有量が、3質量部以上12質量部以下であり、第1樹脂100質量部に対する第3樹脂の含有量が、0.2質量部以上0.8質量部以下である。
以下、本開示の熱転写シートの好ましい実施形態を挙げて、更に詳しく説明する。
【0014】
図1は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す断面図である。図1において、熱転写シート1は、基材10と、基材10上に設けられた転写層20とを備える。転写層20は、剥離層21及び保護層22を熱転写シート1の厚さ方向に基材10側からこの順に備える。保護層22は、転写層20の一方側の表層を構成している。
【0015】
図2は、本開示の熱転写シートの他の実施形態を示す断面図である。図2において、転写層20は、剥離層21、保護層22及び接着層23を熱転写シート1の厚さ方向に基材10側からこの順に備える。
【0016】
図3は、本開示の熱転写シートの他の実施形態を示す断面図である。図3において、転写層20は、剥離層21、保護層22及び受容層24を熱転写シート1の厚さ方向に基材10側からこの順に備える。
【0017】
図1及び図2の実施形態の熱転写シートは、基材10と転写層20との間に、離型層30を備える。
図2の実施形態の熱転写シートは、基材10における転写層20が設けられた面とは反対側の面上に、背面層40を備える。
以下、本開示の熱転写シートが備える各層について説明する。
【0018】
<基材>
基材は、熱転写時に加えられる熱エネルギーに対する耐熱性を有し、基材上に設けられる転写層等を支持できる機械的強度を有するものであれば、特に制限なく使用できる。
【0019】
基材としては、例えば、樹脂材料から構成されるフィルム(以下「樹脂フィルム」ともいう)を使用できる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート及びテレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル;ポリアミド;ポリイミド;ポリカーボネート;ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリスチレン;塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等のビニル樹脂;ポリビニルアセトアセタール及びポリビニルブチラール等のビニルアセタール樹脂;ポリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレート等のセルロース樹脂;並びにアイオノマーが挙げられる。
【0020】
上記樹脂材料の中でも、耐熱性及び機械的強度という観点から、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)がより好ましく、PETが更に好ましい。
【0021】
本開示において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する。
【0022】
基材として、樹脂フィルムの積層体を使用してもよい。樹脂フィルムの積層体は、例えば、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法又はエクストリュージョン法を利用することにより作製できる。
【0023】
樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。強度という観点から、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムが好ましい。
【0024】
基材層と転写層との間に、離型層等の中間層を設ける場合は、基材層と中間層との密着性を高めるという観点から、基材層における転写層側の面に表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理及びグラフト化処理が挙げられる。
【0025】
基材の厚さは、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは3μm以上25μm以下である。これにより、例えば、基材の機械的強度及び熱転写時の熱エネルギーの伝達を良好なものとできる。
【0026】
<転写層>
転写層は、基材側から剥離層と保護層とを、熱転写シートの厚さ方向にこの順に備える。転写層は、熱転写によって基材から剥離可能な層である。一実施形態において、転写層は、接着層を更に備える。接着層は、転写層における保護層側の表層を構成している。また、一実施形態において、転写層は、受容層を更に備える。受容層は、転写層における保護層側の表層を構成している。
【0027】
(剥離層)
熱転写シートにおける転写層は、一実施形態において、転写層を構成する層のうち、基材の最も近くに位置する層として剥離層を備える。剥離層は、熱転写時に保護層と共に転写される層である。剥離層を設けることにより、転写層の転写性をより向上できる。換言すると、熱転写シートから転写層を転写するときの、基材層からの転写層の剥離性を向上できる。剥離層は、熱転写時に転写層の一部として転写される。転写後の剥離層は、印画物や熱転写画像等の被転写体の表層となり、被転写体の耐擦過性を向上させる作用や、光沢調の表層を付与する作用を奏する。
【0028】
剥離層は、一実施形態として、樹脂材料として、第1樹脂、第2樹脂および第3樹脂を含有する。ここで、第1樹脂はアクリル樹脂であり、第2樹脂はセルロース系樹脂であり、第3樹脂はポリエステルである。
【0029】
「第1樹脂」
第1樹脂は、アクリル樹脂である。本開示の熱転写シートは、剥離層が第1樹脂としてアクリル樹脂を含むため、転写層の箔持ち性と、熱転写シートから転写層を転写する際の、基材層からの転写層の剥離性(熱時剥離性)とを、両立することができる。また、転写後において、剥離層が被転写体の表層となった際、被転写体の耐擦過性を向上させる作用や、光沢調の表層を付与する作用を奏する。
【0030】
アクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルが挙げられる。これらの中でも、耐擦過性の観点から、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。剥離層は、第1樹脂を1種又は2種以上含有できる。
また、アクリル樹脂は、他のモノマーと共重合させてもよい。共重合させるモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸及びスチレンが挙げられる。
【0031】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、下限値が好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。また、上限値は、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは105℃以下である。アクリル樹脂のガラス転移温度の下限値が40℃以上であると、塗膜の箔切れ性が向上する。また、上限値が120℃以下であると、熱時剥離性が良化する。
本開示において、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121:2012に準拠して、DSCにより得られる値である。
【0032】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下限値が好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。また、上限値は、好ましくは300,000以下、より好ましくは150,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。アクリル樹脂の重量平均分子量の下限値が10,000以上であると、耐擦過性が向上する。また、上限値が300,000以下であると、塗膜の箔切れ性が向上する。
本開示において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された値である。
【0033】
アクリル樹脂の酸価(mgKOH/g)が、下限値が好ましくは0以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは10以上である。また、上限値は、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。
本開示において、酸価(mgKOH/g)は、JIS K0070:1992に準拠して得られる値である。
【0034】
「第2樹脂」
第2樹脂は、セルロース系樹脂である。本開示の熱転写シートは、剥離層が第2樹脂としてセルロース系樹脂を含むため、熱転写シートから転写層を転写する際の、基材層からの転写層の剥離性(熱時剥離性)を調整することができる。具体的には、熱転写シートから転写層を転写する際の、基材層からの転写層の剥離力を軽減することができる。すなわち、剥離層が樹脂材料として第1樹脂(アクリル樹脂)のみを含む場合、上述した箔持ち性と熱時剥離性とを両立できる領域(プロセスマージン)が狭いが、剥離層が樹脂材料として第2樹脂(セルロース系樹脂)を含むことで熱時剥離性の調整が可能となるため、上述のプロセスマージンを拡げることができる。
【0035】
セルロース系樹脂としては、例えば、セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。これらの中でも、熱時剥離性の観点から、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートが好ましい。剥離層は、第2樹脂を1種又は2種以上含有できる。
【0036】
セルロース系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、下限値が好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。また、上限値は、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。セルロース系樹脂のガラス転移温度の下限値が80℃以上であると、熱時剥離性が向上する。また、上限値が150℃以下であると、光沢が向上する。
【0037】
セルロース系樹脂の数平均分子量(Mn)は、下限値が好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。また、上限値は、好ましくは60,000以下、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは40,000以下である。セルロース系樹脂の数平均分子量の下限値が10,000以上であると、熱時剥離性が向上する。また、上限値が60,000以下であると、光沢が向上する。
本開示において、数平均分子量(Mn)は、JIS K7252-1:2016に準拠して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算により得られる値である。
【0038】
第1樹脂100質量部に対する第2樹脂の含有量は、下限値が3質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。また、上限値が12質量部以下、好ましくは11質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。具体的には、剥離層における第1樹脂100質量部に対する第2樹脂の含有量は、3質量部以上12質量部以下である。第1樹脂100質量部に対する第2樹脂の含有量が下限値以上であると、熱転写シートから転写層を転写する際の、基材層からの転写層の剥離力を軽減することができる。また、第1樹脂100質量部に対する第2樹脂の含有量が上限値以下であると、転写後の剥離層が被転写体の表層となった際、表層の光沢性を損なうことがない(光沢調の表層が得られる)。
【0039】
「第3樹脂」
第3樹脂は、ポリエステルである。本開示の熱転写シートは、剥離層が第3樹脂としてポリエステルを含むため、転写層の箔持ち性を調整することができる。具体的には、熱転写シートにおける基材層と転写層との密着性を向上することができる。すなわち、剥離層が樹脂材料として第1樹脂(アクリル樹脂)のみを含む場合、上述した箔持ち性と熱時剥離性とを両立できる領域(プロセスマージン)が狭いが、剥離層が樹脂材料として第3樹脂(ポリエステル)を含むことで箔持ち性の調整が可能となるため、上述のプロセスマージンを拡げることができる。
【0040】
ポリエステルとしては、例えば、ジカルボン酸化合物とジオール化合物とを含むモノマー成分の共重合体が挙げられる。
【0041】
ジカルボン酸化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸及びこれらのエステル誘導体が挙げられる。
【0042】
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオール、パラキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールが挙げられる。
【0043】
ポリエステルを形成するモノマー成分は、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物以外の他の化合物を共重合成分として含んでいてもよい。ポリエステルにおける他の化合物由来の構成単位の割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0044】
剥離層は、第3樹脂を1種又は2種以上含有できる。
【0045】
ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、下限値が好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。また、上限値は、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。ポリエステルのガラス転移温度の下限値が20℃以上であると、箔持ち性が向上する。また、上限値が90℃以下であると、熱時剥離性が向上する。
【0046】
ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、下限値が好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上、さらに好ましくは10,000以上である。また、上限値は、好ましくは70,000以下、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは30,000以下である。ポリエステルの数平均分子量の下限値が3000以上であると、熱時剥離性が向上する。また、上限値が50,000以下であると、箔持ち性が向上する。
【0047】
ポリエステルの酸価(mgKOH/g)は、上限値が好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。上限値が10以下であると、箔持ち性が向上する。
【0048】
第1樹脂100質量部に対する第3樹脂の含有量は、下限値が0.2質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上である。また、上限値が0.8質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。具体的には、剥離層における第1樹脂100質量部に対する第3樹脂の含有量は、0.2質量部以上0.8質量部以下である。第1樹脂100質量部に対する第3樹脂の含有量が下限値以上であると、熱転写シートにおける基材層と転写層との密着性を担保することができる。また、第1樹脂100質量部に対する第3樹脂の含有量が上限値以下であると、熱転写シートから転写層を転写する際の、基材層からの転写層の剥離力を軽減することができる。
【0049】
剥離層における樹脂材料の含有割合は、一実施形態において、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下である。これにより、転写層の熱転写性を維持しつつ、印画物や熱転写画像等の被転写体の耐擦過性をより向上できる。
【0050】
剥離層は、一実施形態において、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、例えば、蜜蝋、鯨蝋、木蝋、米ぬか蝋、カルナバワックス、キャンデリラワックス及びモンタンワックス等の天然ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、オゾケライト、セレシン、エステルワックス及びポリエチレンワックス等の合成ワックス;マルガリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロイン酸及びベヘニン酸等の高級飽和脂肪酸;ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等の高級飽和一価アルコール;ソルビタンの脂肪酸エステル等の高級エステル;ステアリン酸アミド及びオレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミドが挙げられる。これらの中でも、転写層の熱転写性という観点から、ポリエチレンワックスが好ましい。
剥離層は、1種又は2種以上のワックスを含有できる。
【0051】
剥離層におけるワックスの含有割合は、一実施形態において、バインダー樹脂の固形分質量に対して、好ましくは0.1質量%以上15質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。これにより、転写層の熱転写性をより向上できる。
【0052】
剥離層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、金属石鹸、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、無機粒子、有機粒子、離型剤及び分散剤が挙げられる。剥離層は、添加剤を1種又は2種以上含有できる。
耐擦過性をより向上させるために、イソシアネート硬化剤、チタンキレート剤、およびエポキシ硬化剤などによって、剥離層に含まれる樹脂を硬化してもよい。
【0053】
剥離層の厚さは、好ましくは0.1μm以上3.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。これにより、例えば、転写層の転写性をより向上できる。
【0054】
(保護層)
保護層は、印画物や熱転写画像等の被転写体を、転写層が受容層を備える場合は受容層を保護するための層である。本開示の熱転写シートは、一実施形態において、転写層の剥離層の面上に、剥離層と接着層との間に、又は剥離層と受容層との間に、保護層を備える。
【0055】
保護層は、一実施形態において、樹脂材料を1種又は2種以上含有する。樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂及び(メタ)アクリルポリオール樹脂が挙げられる。
保護層は、上記添加剤を1種又は2種以上含有してもよい。
【0056】
保護層の厚さは、好ましくは0.5μm以上7μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下である。これにより、例えば、保護層の耐久性をより向上できる。
【0057】
剥離層は、例えば、以上に説明した成分を水又は適当な有機溶剤に分散又は溶解させて塗工液を調製し、該塗工液を、上述した塗工方法により、基材又は基材上に設けられる任意の層(例えば離型層)上に塗布及び乾燥することにより形成できる。一実施形態において、剥離層用塗工液として有機溶剤系塗工液を用いて剥離層を形成し、保護層用塗工液として有機溶剤系塗工液を用いて保護層を形成する。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0058】
(接着層)
本開示の熱転写シートは、一実施形態において、転写層における保護層の面上に、接着層を備えることができる。この場合、被転写体に転写層を転写したときの、被転写体と転写層(保護層)との密着性をより良好にできる。
【0059】
接着層は、樹脂材料を含有することが好ましい。樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂及びフェノール樹脂が挙げられる。接着層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含有できる。
【0060】
接着層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0061】
接着層は、樹脂材料を硬化剤によって硬化させた層でもよい。硬化剤としては、例えば、イソシアネート化合物、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物が挙げられる。
【0062】
接着層の厚さは、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。
【0063】
接着層は、例えば、以上に説明した成分を適当な溶媒に分散又は溶解させて得られた塗工液を、上述した公知の塗工方法により、保護層上に塗布及び乾燥することにより形成できる。
【0064】
(受容層)
本開示の熱転写シートは、一実施形態において、転写層における保護層の面上に、受容層を備えることができる。本開示の熱転写シートは、中間転写媒体として用いることが可能である。この場合、受容層は、中間転写媒体の一方側の表層を構成する層となる。
【0065】
受容層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロース樹脂、並びにアイオノマー樹脂が挙げられる。
受容層は、樹脂材料を1種又は2種以上含有できる。
【0066】
受容層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは80質量%以上99質量%以下、より好ましくは85質量%以上98質量%以下である。これにより、例えば、昇華性染料の受容性をより向上できる。
【0067】
受容層は、一実施形態において、離型剤を含有する。これにより、例えば、本開示の熱転写シートを中間転写媒体として用いる場合、受容層と、昇華転写型色材層を備える熱転写シートとの離型性を向上できる。
【0068】
離型剤としては、例えば、フッ素化合物、リン酸エステル化合物、高級脂肪酸アミド化合物、金属石けん、シリコーンオイル、並びにポリエチレンワックス及びパラフィンワックス等のワックスが挙げられる。これらの中でも、上記離型性という観点から、シリコーンオイルが好ましい。
【0069】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル及びメチルフェニルシリコーンオイル等のストレートシリコンオイル、並びにアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、(メタ)アクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル及びポリエーテル変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルには、片末端型、両末端型及び側鎖片末端型が含まれる。
受容層は、離型剤を1種又は2種以上含有できる。
【0070】
受容層における離型剤の含有割合は、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。これにより、例えば、上記離型性を向上できる。
【0071】
受容層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、無機粒子、有機粒子及び分散剤が挙げられる。受容層は、添加剤を1種又は2種以上含有できる。受容層に含まれる樹脂材料100質量部に対する、添加剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。
【0072】
受容層の厚さは、好ましくは0.5μm以上20μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下である。これにより、受容層に形成される画像の濃度を向上できると共に、転写層の転写性を向上できる。
【0073】
受容層は、例えば、以上に説明した成分を適当な溶媒に分散又は溶解させて得られた塗工液を、上述した公知の塗工方法により、保護層上に塗布及び乾燥することにより形成できる。
【0074】
<離型層>
本開示の熱転写シートは、一実施形態において、基材と転写層との間に、離型層を備えてもよい。離型層は、基材上に設けられた転写層の剥離性を向上させる層である。離型層は、転写層を構成しない層であり、転写層を被転写体上に転写したときに、基材側に残る層である。
【0075】
離型層を構成する樹脂材料としては、基材に対する密着性が高く、かつ転写層を容易に剥離できる適度な剥離性を有する樹脂材料であれば特に制限はない。このような樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ-アミノ樹脂、熱架橋性アルキッド-アミノ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂及びセルロース樹脂が挙げられる。これらの中でも、転写層の転写性を向上できることから、シリコーン樹脂が好ましい。
離型層は、上記樹脂材料を1種又は2種以上含有できる。
【0076】
離型層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、離型剤及び分散剤が挙げられる。離型層は、添加剤を1種又は2種以上含有できる。
【0077】
離型層の厚さは、好ましくは0.1μm以上3μm以下、より好ましくは0.3μm以上2μm以下である。これにより、例えば、転写層の転写性をより向上できる。
【0078】
離型層は、例えば、以上に説明した成分を水又は適当な有機溶剤に分散又は溶解させて塗工液を調製し、該塗工液を、上述した塗工方法により、基材上に塗布及び乾燥することにより形成できる。乾燥後、塗膜を加熱することにより、例えばシリコーン樹脂の硬化を効果的に進めることができ、転写層の転写性をより向上できる。
【0079】
<背面層>
本開示の熱転写シートは、一実施形態において、基材の転写層が設けられた側とは反対側の面上に、背面層を備えてもよい。これにより、例えば、熱転写時の加熱によるスティッキング及び印画シワの発生を抑制できる。
【0080】
一実施形態において、背面層は、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル変性シリコーン樹脂、ビニル樹脂、ビニルアセタール樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂及びフェノール樹脂が挙げられる。背面層は、樹脂材料を1種又は2種以上含有できる。
【0081】
一実施形態において、背面層は、水酸基等の反応性基を有する樹脂材料を、ポリイソシアネート化合物等の架橋剤を用いて架橋させて形成された層であってもよい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、キシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。架橋剤は1種又は2種以上用いることができる。
【0082】
背面層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、離型剤及び分散剤が挙げられる。背面層は、添加剤を1種又は2種以上含有できる。
背面層の厚さは、好ましくは0.05μm以上3μm以下である。
【0083】
背面層は、例えば、以上に説明した成分を水又は適当な有機溶剤に分散又は溶解させて塗工液を調製し、該塗工液を、上述した塗工手段により基材上に塗布して塗膜及び乾燥することにより形成できる。
【0084】
[熱転写シートの使用形態]
<熱転写シート>
本開示の熱転写シートは、一実施形態において、基材層の一方の面上に、転写層と面順次に色材層をさらに備えてもよい。この実施形態では、基材層の一方の面上に、色材層と転写層とが面順次に設けられている。この実施形態の熱転写シートを用いることにより、被転写体の受容層、あるいは中間転写媒体の受容層に熱転写画像を形成できる。したがって、色材層を備える別の熱転写シートを用いることなく、本開示の熱転写シートを用いて、被転写体あるいは中間転写媒体の受容層への熱転写画像の形成と、熱転写画像上への転写層(保護層)の転写とを併せて行うことができる。
【0085】
例えば、熱転写画像を昇華型熱転写方式により形成する場合は、色材層は、昇華性染料とバインダー樹脂とを含有する昇華転写型色材層である。
【0086】
昇華性染料としては、充分な着色濃度を有し、光及び熱等により変色又は退色しないものが好ましい。このような昇華性染料としては、例えば、赤色染料、黄色染料及び青色染料等の各色染料が挙げられる。昇華転写型色材層は、昇華性染料を1種又は2種以上含有できる。昇華転写型色材層における昇華性染料の含有割合は、好ましくは5質量%以上80質量%以下、より好ましくは10質量%以上70質量%以下である。
【0087】
昇華転写型色材層におけるバインダー樹脂としては、例えば、セルロース樹脂、ビニル樹脂、ビニルアセタール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、並びにポリエステルが挙げられる。昇華転写型色材層は、バインダー樹脂を1種又は2種以上含有できる。昇華転写型色材層におけるバインダー樹脂の含有割合は、好ましくは20質量%以上75質量%以下、より好ましくは30質量%以上60質量%以下である。
【0088】
昇華転写型色材層は、硬化剤により硬化されていてもよい。硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂、イソシアネート及びカルボジイミドが挙げられる。硬化剤は1種又は2種以上用いることができる。
【0089】
昇華転写型色材層は、無機粒子及び有機粒子等の粒子を1種又は2種以上含有してもよい。無機粒子としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、二酸化チタン及び二硫化モリブデンが挙げられる。有機粒子としては、例えば、ポリエチレン粒子が挙げられる。
【0090】
昇華転写型色材層は、離型剤を1種又は2種以上含有してもよい。離型剤としては、例えば、フッ素化合物、リン酸エステル化合物、高級脂肪酸アミド化合物、金属石けん、シリコーンオイル、並びにポリエチレンワックス及びパラフィンワックス等のワックスが挙げられる。昇華転写型色材層における離型剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上1質量%以下である。
【0091】
例えば、熱転写画像を溶融型熱転写方式により形成する場合は、色材層は、着色剤とバインダー樹脂とを含有する溶融転写型色材層である。
【0092】
着色剤としては、充分な着色濃度を有し、光及び熱等により変色又は退色しないものが好ましい。例えば、有機顔料、無機顔料及び染料が挙げられる。着色剤の色としては、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー又はブラックに限定されるものではなく、種々の色が挙げられる。溶融転写型色材層は、着色剤を1種又は2種以上含有できる。溶融転写型色材層における着色剤の含有割合は、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
【0093】
溶融転写型色材層におけるバインダー樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ビニル樹脂、ビニルアセタール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、セルロース樹脂及び石油樹脂が挙げられる。溶融転写型色材層は、バインダー樹脂を1種又は2種以上含有できる。溶融転写型色材層におけるバインダー樹脂の含有割合は、好ましくは20質量%以上75質量%以下、より好ましくは30質量%以上60質量%以下である。
【0094】
溶融転写型色材層は、従来公知のワックスをさらに含有してもよい。
色材層は、上記添加剤を1種又は2種以上含有してもよい。
【0095】
本開示の熱転写シートは、基材層の一方の面上に、一つの色材層を備えていてもよく、色相が異なる複数の色材層、例えば、イエロー色材層、マゼンタ色材層、シアン色材層及びブラック色材層を面順次に備えていてもよい。
色材層の厚さは、好ましくは0.1μm以上5μm以下である。
【0096】
<中間転写媒体>
本開示の熱転写シートは、一実施形態において、転写層における保護層の表面上に受容層を備える(図3を参照)。この実施形態の熱転写シートは、中間転写媒体として用いることができる。これにより、上述した色材層を備える熱転写シートを用いて、本開示の中間転写媒体の受容層に熱転写画像を形成できる。したがって、所要の被転写体上に、熱転写画像と保護層とを含む転写層の転写を行うことができる。
【0097】
<保護層転写シート>
本開示の熱転写シートは、一実施形態において、保護層転写シートとして用いることができる(図1及び図2を参照)。この実施形態の保護層転写シートによれば、印画物や熱転写画像等の被転写体の表層に保護層となる転写層を転写することができるため、被転写体の耐擦過性を向上させる作用や、光沢調の表層を付与する作用を奏する。
【0098】
本開示は、例えば、以下の[1]~[4]に関する。
[1]基材と転写層とを備える熱転写シートであって、
前記転写層が、前記基材側から剥離層と保護層とをこの順に備え、
前記剥離層が、樹脂材料として第1樹脂、第2樹脂、および第3樹脂を含有し、
前記第1樹脂がアクリル樹脂であり、
前記第2樹脂がセルロース系樹脂であり、
前記第3樹脂がポリエステルであり、
前記第1樹脂100質量部に対する前記第2樹脂の含有量が、3質量部以上12質量部以下であり、
前記第1樹脂100質量部に対する前記第3樹脂の含有量が、0.2質量部以上0.8質量部以下である、熱転写シート。
[2]前記転写層が、接着層をさらに備え、
前記接着層が、前記保護層の表層に設けられている、上記[1]に記載の熱転写シート。
[3]前記転写層が、受容層をさらに備え、
前記受容層が、前記保護層の表層に設けられている、上記[1]に記載の熱転写シート。
[4]前記基材と前記転写層との間に、離型層をさらに備える、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【実施例
【0099】
次に実施例を挙げて、本開示の熱転写シートを更に詳細に説明するが、本開示の熱転写シートはこれら実施例に限定されない。以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。以下の記載及び表1に表示される配合量は、水及び有機溶剤を除き、固形分換算後の数値である。
【0100】
[調製例]
以下の配合組成を有する剥離層用塗工液、及び保護層用塗工液をそれぞれ調製した。
【0101】
<剥離層用塗工液(1)>
・第1樹脂(アクリル樹脂) 100部
(ダイヤナール(登録商標)MB-7333、三菱ケミカル(株))
・第2樹脂(セルロース系樹脂) 3.5部
(セルロースアセテートブチレート、CAB-381-0.5、イーストマン)
・第3樹脂(ポリエステル) 0.5部
(バイロン(登録商標)200、東洋紡(株))
・ポリエチレンワックス 15部
(スリップ剤C、昭和インク工業(株))
・メチルエチルケトン(MEK) 125部
・トルエン 125部
【0102】
<剥離層用塗工液(2)~(13)>
第2樹脂および第3樹脂の量比を表1に記載したとおりに変更したこと以外は剥離層用塗工液(1)と同様にして、剥離層用塗工液(2)~(13)を調製した。
【0103】
<保護層用塗工液>
・酸変性ポリエチレン 8部
(アローベース(登録商標)SA-1200、ユニチカ(株))
・ポリエステル 2部
(エリーテル(登録商標)KA-5034、Tg:67℃、Mn:9,000、
ユニチカ(株))
・水 22部
・IPA 68部
【0104】
[実施例1]
厚さ4.5μmのPETフィルムの一方の面に、剥離層用塗工液(1)を塗布及び乾燥し、厚さ0.8μmの剥離層を形成した。剥離層上に、保護層用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ1.2μmの保護層を形成した。このようにして、熱転写シートを得た。実施例1において、転写層は、剥離層及び保護層から構成される。
【0105】
[実施例2~9及び比較例1~4]
剥離層用塗工液を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、熱転写シートを作製した。表1において、剥離層の欄には、アクリル樹脂を1とした場合のセルロース系樹脂およびポリエステルの相対量のみを記載した。
【0106】
[評価]
<箔持ち性>
実施例及び比較例において得られた熱転写シートの面積が100cmの転写層形成箇所を、長手方向、短手方向に1回ずつ折りたたみ、静置した。静置後、折りたたみを戻し、目視により観察し、下記評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
◎:転写層の箔落ちが、3mm未満であった。
○:転写層の箔落ちが、3mm以上7mm未満であった。
△:転写層の箔落ちが、7mm以上10mm未満であった。
×:転写層の箔落ちが、10mm以上であった。
【0107】
<剥離性>
昇華型熱転写プリンタ(DS-40、大日本印刷(株))の純正受像紙を使用し、下記テストプリンタ条件で、純正受像紙上に、各実施例、及び比較例の熱転写シートの保護層を転写して、各実施例、及び比較例の転写物を得た。
(テストプリンタ条件)
・発熱体平均抵抗値:5545(Ω)
・主走査方向印字密度:300(dpi)
・副走査方向印字密度:300(dpi)
・ライン周期:4(msec./line)
・印画パターン(エネルギー階調):180/255階調
【0108】
上記転写物を形成するときの、各実施例、及び比較例の熱転写シートの保護層の剥離性を、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:純正受像紙上に転写層を転写するときに、剥離音の発生がなく、転写層の転写不良や、印画物に剥離痕が生じていない。
○:純正受像紙上に転写層を転写するときに、剥離音が発生するが、転写層の転写不良や、印画物に剥離痕が生じていない。
△:純正受像紙上に転写層を転写するときに、剥離音が発生し、印画物に剥離痕が生じている。
×:NG:純正受像紙上に転写層を転写した後に熱転写シートを剥がす時に、剥離が重くて熱転写シートの一部が破れた。
【0109】
<光沢感>
剥離性評価において得られた印画物を目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:印画物が極めて高い鏡面光沢感を有していることを確認できた。
○:印画物が高い鏡面光沢感を有していることを確認できた。
△:印画物の一部に曇った部分が見られた。
×:印画物の全面が曇ったすりガラス状であった。
【0110】
【表1】
【符号の説明】
【0111】
1 :熱転写シート
10:基材
20:転写層
21:剥離層
22:保護層
23:接着層
24:受容層
30:離型層
40:背面層
【要約】
【課題】基材と転写層との密着性と、転写時の剥離層の剥離性とを両立するとともに、光沢調の印画物が得られる、熱転写シートを提供する。
【解決手段】基材と転写層とを備え、転写層が基材側から剥離層と保護層とをこの順に備え、剥離層が、樹脂材料として第1樹脂、第2樹脂および第3樹脂を含有し、第1樹脂がアクリル樹脂であり、第2樹脂がセルロース系樹脂であり、第3樹脂がポリエステルであり、第1樹脂100質量部に対する第2樹脂の含有量が、3質量部以上12質量部以下であり、第1樹脂100質量部に対する第3樹脂の含有量が、0.2質量部以上0.8質量部以下である、熱転写シートである。
【選択図】図1
図1
図2
図3