(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】測量システム、測量装置、測量方法、および測量プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
(21)【出願番号】P 2021043996
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2024-02-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(令和2年度国土交通省中国地方整備局「「安芸バイパス上瀬野ICオンランプ橋鋼上部工事」施工現場における労働生産性の向上を図る技術の試行業務」業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000142492
【氏名又は名称】株式会社駒井ハルテック
(73)【特許権者】
【識別番号】505466295
【氏名又は名称】株式会社イクシス
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 肇
(72)【発明者】
【氏名】中本 啓介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 高志
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-088114(JP,A)
【文献】特開2017-116453(JP,A)
【文献】特開2017-167092(JP,A)
【文献】特開2017-106755(JP,A)
【文献】特開2020-106334(JP,A)
【文献】特開2015-059812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の上面を測量する測量システムであって、
前記構造物の上面と側面の境界部を含む領域について前記側面側であって且つ前記上面より下方からレーザ走査して第1の点群データを取得するレーザスキャナと、
前記構造物の上面と側面の境界部及び前記上面を含む領域について前記上面より上方の空中から撮像して画像データを取得するカメラを備えた無人航空機と、
前記画像データから算出した前記構造物の上面と側面の境界部及び前記上面を含む領域における第2の点群データを、前記境界部における第1の点群データ及び第2の点群データに基づき、前記第1の点群データに重畳させる重畳手段とを備えた
ことを特徴とする測量システム。
【請求項2】
前記構造物の所定の基準点をレーザ測位する測位装置を備え、
前記重畳手段は、前記測位装置により測位された基準点の位置情報に基づき少なくとも第1の点群データの補正を行う
ことを特徴とする請求項1記載の測量システム。
【請求項3】
前記カメラは、前記構造物の側面が映り込むよう前記構造物の上面に対して側面側の斜め上方の空中から撮像する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の測量システム。
【請求項4】
構造物の上面を測量する測量方法であって、
レーザスキャナを用いて前記構造物の上面と側面の境界部を含む領域について前記側面側であって且つ前記上面より下方からレーザ走査して第1の点群データを取得するステップと、
無人航空機に設けたカメラを用いて前記構造物の上面と側面の境界部及び前記上面を含む領域について前記上面より上方の空中から撮像して画像データを取得するステップと、
前記画像データから前記構造物の上面と側面の境界部及び前記上面を含む領域における第2の点群データを算出するステップと、
前記第2の点群データを、前記境界部における第1の点群データ及び第2の点群データに基づき、前記第1の点群データに重畳させるステップとを備えた
ことを特徴とする測量方法。
【請求項5】
構造物の上面を測量する測量装置であって、
前記構造物の上面より下方に設置されたレーザスキャナにより取得した第1の点群データ及び前記構造物の上面より上方の空中を飛行する無人航空機に設けられたカメラにより撮像された画像データに基づき算出された第2の点群データを取得する点群データ取得手段と、
前記第2の点群データを前記第1の点群データに重畳させる重畳手段とを備え、
前記第1の点群データは前記構造物の上面と側面の境界部を含む領域についてレーザ走査して取得したものであり、
前記第2の点群データは前記構造物の上面と側面の境界部及び前記上面を含む領域について撮像した画像データから算出されたものであり、
前記重畳手段は、前記第2の点群データを、前記境界部における第1の点群データ及び第2の点群データに基づき、前記第1の点群データに重畳させる
ことを特徴とする測量装置。
【請求項6】
コンピュータを請求項5記載の測量装置として機能させることを特徴とする測量プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋脚などの構造物の測量を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の測量手法としては、従来からトータルステーションやレーザスキャナを用いる方法が一般的である。これらの測量方法では、測定点が目視できる場所にトータルステーション等を設置して計測が行われる。しかし、従来の測量方法では、構造物の建造場所や大きさなどによっては、多大な作業が必要な場合や危険性が高い場合があった。例えば、構造物として上部工と下部工からなる橋梁について考える。従来の上部工着工前の下部工の測量では、高所作業車を設置し橋脚上に登り測量を行っており、特に高橋脚、山間部などでは昇降設備の設置や河川内橋脚ではワイヤーブリッジ又は脚上への搭乗クレーンでの対応が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような問題を解決する方法として、いわゆるドローンと呼ばれる無人航空機にカメラを設け、カメラが撮像する画像データに基づき測量を行う写真測量技術がある(特許文献1参照)。しかし、現状の写真測量技術では測定誤差がセンチメートルのオーダーであり、ミリメートルのオーダーでの精度が求められる測量で用いるには不十分であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業性が良好で且つ危険性が低い測量システム、装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、構造物の上面を測量する測量システムであって、前記構造物の上面と側面の境界部を含む領域について前記側面側であって且つ前記上面より下方からレーザ走査して第1の点群データを取得するレーザスキャナと、前記構造物の上面と側面の境界部及び前記上面を含む領域について前記上面より上方の空中から撮像して画像データを取得するカメラを備えた無人航空機と、前記画像データから算出した前記構造物の上面と側面の境界部及び前記上面を含む領域における第2の点群データを、前記境界部における第1の点群データ及び第2の点群データに基づき、前記第1の点群データに重畳させる重畳手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本願発明は、構造物の上面を測量する測量方法であって、レーザスキャナを用いて前記構造物の上面と側面の境界部を含む領域について前記側面側であって且つ前記上面より下方からレーザ走査して第1の点群データを取得するステップと、無人航空機に設けたカメラを用いて前記構造物の上面と側面の境界部及び前記上面を含む領域について前記上面より上方の空中から撮像して画像データを取得するステップと、前記画像データから前記構造物の上面と側面の境界部及び前記上面を含む領域における第2の点群データを算出するステップと、前記第2の点群データを、前記境界部における第1の点群データ及び第2の点群データに基づき、前記第1の点群データに重畳させるステップとを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本願発明は、構造物の上面を測量する測量装置であって、前記構造物の上面より下方に設置されたレーザスキャナにより取得した第1の点群データ及び前記構造物の上面より上方の空中を飛行する無人航空機に設けられたカメラにより撮像された画像データに基づき算出された第2の点群データを取得する点群データ取得手段と、前記第2の点群データを前記第1の点群データに重畳させる重畳手段とを備え、前記第1の点群データは前記構造物の上面と側面の境界部を含む領域についてレーザ走査して取得したものであり、前記第2の点群データは前記構造物の上面と側面の境界部及び前記上面を含む領域について撮像した画像データから算出されたものであり、前記重畳手段は、前記第2の点群データを、前記境界部における第1の点群データ及び第2の点群データに基づき、前記第1の点群データに重畳させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無人航空機のカメラで撮像した画像データから算出した相対的に誤差の大きい第2の点群データを、レーザスキャナで取得した相対的に誤差の小さい第1の点群データに重畳させているので、レーザスキャナから直接観測できない構造物の上面であっても測量誤差を低減することができる。したがって、構造物の上面の計測のために危険で手間のかかる高所作業を行う必要がなくなり、作業性が良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係る測量システムの構成図
【
図2】第1の実施の形態に係る測量装置の機能ブロック図
【
図3】第1の実施の形態に係る測量システムを用いた測量手順
【
図4】第2の実施の形態に係る測量システムの構成図
【
図5】第2の実施の形態に係る測量装置の機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る測量システムについて図面を参照して説明する。
図1は測量システムの構成図、
図2は測量装置の機能ブロック図である。
【0012】
本実施の形態では、測量対象の構造物として、橋梁の下部工(下部構造や躯体とも言う。)について例示する。また、本実施の形態では、下部工の完成後であって上部工の着工前に、完成後の下部工の上面に設けられた1つ又は複数の支承の位置を測量するとともに、隣り合う下部工上面に設けられた対応する支承間の距離を測量する場合について説明する。なお、隣り合う下部工間の距離は10メートルから100メートルのオーダーであるのに対して、支承位置や支承間距離の許容誤差はミリメートルのオーダーである点に留意されたい。
【0013】
本実施の形態に係る測量システムは、
図1に示すように、複数の下部工100をそれぞれレーザ走査して点群データを取得するレーザスキャナ200と、複数の下部工100をそれぞれ空中から撮像して画像データを取得するカメラ310が搭載された無人航空機300と、レーザスキャナ200及びカメラ310から取得したデータに基づき測量を行う測量装置400とを含む。レーザスキャナ200による点群データの取得及び無人航空機300による画像データの取得作業は、レーザスキャナ200の設置位置や無人航空機300の飛行位置を変更して下部工100ごとに実施する。
【0014】
各下部工100は、上面110が水平であり且つ側面120に直行する方向が鉛直方向に形成されている。上面110には測量対象である支承111が形成されている。上面110と側面120の境界部130には、上面110と側面120が交わる角部を平面状に面取りしたC面131が形成されている。
【0015】
レーザスキャナ200は、レーザ光を照射するとともに対象物で反射した反射光を受光し、照射から受光までの時間や反射光の位相に基づき対象物までの距離を測定する。レーザスキャナ200は、レーザ光を空間内に走査させて空間内にある対象物の各点について距離を測定し、各点の三次元空間座標の集合である点群データを生成する。
【0016】
レーザスキャナ200は、測量対象である支承111が形成された上面110よりも下方に設置されている。すなわち、レーザスキャナ200からは支承111を含む上面110を観測することができず、レーザスキャナ200は支承111を含む上面110については点群データを生成できない点に留意されたい。
【0017】
本発明では、レーザスキャナ200は、下部工100の側面120から所定距離離れた地上に設置され、境界部130を含む領域についてレーザ走査を行って点群データを生成する。レーザスキャナ200の設置位置は既知であるものとする。レーザスキャナ200の設置位置は、レーザスキャナ200により既知の基準点を測位することにより取得することができる。また、レーザスキャナ200の設置位置は、トータルステーションなど他の測位装置によりレーザスキャナ200の設置位置を測位することにより取得することができる。
【0018】
レーザスキャナ200は、生成した点群データを所定の記録媒体に記録する。いくつかの実施例では、レーザスキャナ200は、有線接続又は無線接続した外部機器に対して、生成した点群データを送信することができる。レーザスキャナ200が記録・送信する点群データの座標は、レーザスキャナ200の設置位置を基準とした相対的なものであってよいし、既知の設置位置により補正した絶対的なものであってもよい。
【0019】
無人航空機300は、いわゆるドローンを呼ばれる飛行体であり、遠隔地からのユーザの操作指令により或いは予めプログラムされた飛行計画に基づき飛行する。無人航空機300は、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)とも呼ばれる。無人航空機300は、モータなどの動力、モータに設けられたプロペラ、慣性計測装置、無線送受信装置、電源、測量用の前記カメラ310、各部を制御する制御装置を備えている。慣性計測装置は、無人航空機300の挙動や現在位置を計測・制御するために用いられる。慣性計測装置は、3軸の加速度センサ、3軸の角速度センサのほか、気圧センサ、超音波センサ、磁気方位センサ、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信装置など各種のセンサを含むことができる。
【0020】
カメラ310は静止画又は動画を撮影して画像データを生成する。カメラ310は、画像データを所定の記録媒体に記録する。いくつかの実施例では、カメラ310は、有線接続又は無線接続した外部機器に対して、画像データをリアルタイムに又は撮影後に一括して送信することができる。画像データは、メタデータとして撮影時の位置情報などの撮影条件を含む。撮影時の位置情報は、無人航空機300の慣性計測装置から取得することができる。カメラ310は、無人航空機300の制御装置から画角・撮影方向などの撮影条件を制御可能である。カメラ310は、無人航空機300に固定されている。いくつかの実施例では、カメラ310は、無人航空機300に対する相対的な撮影方向を変えるための駆動装置を備えている。いくつかの実施例では、カメラ310は、振動による画像データのぶれを防止するための衝撃吸収装置を備えている。
【0021】
本発明では、カメラ310が下部工100の境界部130及び上面110を含む領域を撮像するよう、遠隔操作により又は飛行計画に基づき無人航空機300を飛行させる。ここで、撮影対象の一部である上面110は、上面110の全領域である必要はなく、測量対象である支承111を含む領域であればよい。また、下部工100の側面120が撮像領域に含まれていてもよい。カメラ310がこのような領域を撮像可能とするために、無人航空機300は少なくとも下部工100の上面110より上方の上空を飛行する。本実施の形態では、下部工100の側面120の少なくとも境界部130と隣接する領域も撮像するため、無人航空機300は下部工100の上面110に対して、レーザスキャン200を設置した側の側面120側の斜め上方の上空を飛行する。カメラ310は、後述するように画像データから点群データを生成することができるよう、撮像位置が異なる少なくとも2つの画像データを取得する。カメラ310は、無人航空機300を移動させながら所定のフレームレートで動画として撮像することにより複数の画像データを取得することができる。
【0022】
測量装置400は、
図2に示すように、点群データ変換処理部410と、点群データ取得部420と、重畳処理部430と、測定点探索部440と、測量演算部450と、記憶部460とを備えている。測量装置400の各部は、主演算装置、主記憶装置、補助記憶装置、表示装置、入力装置等を備えたコンピュータにプログラムをインストールすることにより構成される。いくつかの実施例では、測量装置400は専用のハードウェアにより構成される。いくつかの実施例では、測量装置400は複数の装置に分散して構成される。いくつかの実施例では、測量装置400はクラウドサーバに実装される。
【0023】
点群データ変換処理部410は、カメラ310から取得した複数の画像データを点群データに変換する。画像データから点群データに変換するアルゴリズムは写真測量で用いられている種々のものを用いることができる。以降の説明では、前述したレーザスキャナ200で生成した点群データを地上側点群データと呼び、点群データ変換処理部410で生成した点群データを空中側点群データと呼ぶものとする。
【0024】
本実施の形態では、カメラ310では画像データとして位置情報を含む動画データを生成し、点群データ変換処理部410はこの動画データから三次元空間座標の集合である空中側点群データを生成する。また、点群データ変換処理部410は、所定の記憶媒体を介してカメラ310から動画データを取得する。画像データに含まれる位置情報は無人航空機300の慣性計測装置で計測されたものである。このため、空中側点群データの座標の誤差は通常センチメートルのオーダーであり、ミリメートルのオーダーである支承位置の許容誤差を満たさない点に留意されたい。
【0025】
点群データ取得部420は、地上側点群データと空中側点群データを取得し、記憶部460に記憶する。本実施の形態では、点群データ取得部420は、所定の記憶媒体を介してレーザスキャナ200から地上側点群データを取得するとともに、点群データ変換処理部410から空中側点群データを取得する。
【0026】
重畳処理部430は、記憶部460に記憶された地上側点群データ及び空中側点群データの重畳処理を行って重畳点群データを生成し、この重畳点群データを記憶部460に記憶する。すなわち、空中側点群データを、境界部130における地上側点群データ及び空中側点群データに基づき、地上側点群データに重畳させる。換言すれば、重畳処理部430は、相対的に誤差の大きい空中側点群データの座標系を、相対的に誤差の小さい地上側点群データの座標系に一致するよう座標変換を行い、空中側点群データと地上側点群データを1つの重畳点群データに合成する。さらに換言すれば、重畳処理部430は、地上側点群データを用いて空中側点群データを補正すると考えることもできる。
【0027】
ここで重畳処理は、地上側点群データ及び空中側点群データの重畳領域である境界部130におけるデータを基準とする。すなわち、境界部130における空中側点群データを、境界部130における地上側点群データに一致させるように座標変換を行う。より具体的には、境界部130における空中側点群データに含まれる下部工100の境界部130における特徴点の座標を、境界部130における地上側点群データに含まれる前記特徴点の座標に一致させるように座標変換を行う。このため重畳処理部430は、各点群データから境界部130における特徴点を抽出する特徴点抽出機能部を有する。本実施の形態では、境界部130と側面120との境界線である稜線を特徴点として抽出する。なお、前記稜線は、橋脚天端外形線又はC面下部外形線とも言う。
【0028】
測定点探索部440は、重畳点群データから測量対象に係る点群データを探索し、測量対象の位置(座標データ)を測量結果として算出し、記憶部460に記憶する。具体的には、測定点探索部440は、重畳点群データから測量対象に係る特徴点を抽出し、この特徴点の位置(座標データ)を測量結果として算出し、記憶部460に記憶する。本実施の形態では、測定点探索部440は、下部工100の上面110に設けられた支承111の位置(座標データ)を算出する。
【0029】
上述の重畳処理部430及び測定点探索部440による処理は、取得した地上側点群データごとに実施される。本実施の形態では、複数の下部工100についてそれぞれレーザスキャナ200で取得した地上側点群データごとに当該下部工100の上面110に設けられた1つ又は複数の支承111の位置(座標データ)を算出する。
【0030】
測量演算部450は、測定点探索部440により測量された複数の測量対象の位置(座標データ)から、任意の測量対象間の距離を算出する。本実施の形態では、隣り合う下部工100の上面110に設けられた対応する支承111間の距離を算出し、測量結果として出力するとともに、記憶部460に記憶する。
【0031】
本実施の形態に係る測量の手順について
図3のフローチャートを参照して説明する。まず、レーザスキャナ200を用いて境界部130を含む領域について側面120側であって且つ上面110より下方からレーザ走査して地上側点群データを取得する(ステップS1)。
【0032】
また、無人航空機300に設けたカメラ310を用いて境界部130及び上面110を含む領域について上面110より上方の空中から撮像して画像データを取得する(ステップS2-1)。次に、画像データから境界部130及び上面110を含む領域における空中側点群データを生成する(ステップS2-2)。
【0033】
上記のステップS1~ステップS2-2は、測量対象である構造物のそれぞれに対して実施する。本実施の形態では、複数の下部工100のそれぞれに対して実施する。
【0034】
次に、測量装置400により、飛行側点群データを、境界部130における地上側点群データ及び飛行側点群データに基づき、地上側点群データに重畳して重畳点群データを生成する(ステップS3)。次に、測量装置400により、重畳点群データから測定点の位置(座標データ)を算出する(ステップS4)。最後に、測量装置400により、任意の測量点間の距離を算出する(ステップS5)。本実施の形態では、隣り合う下部工100の上面110に設けられた対応する支承111間の距離を算出する。
【0035】
なお、前記ステップS2-1の画像データの取得は、前記ステップS1の地上側点群データの取得よりも前に実施してもよい。
【0036】
このような測量システムによれば、相対的に誤差の大きい空中側点群データを、相対的に誤差の小さい地上側点群データに重畳させているので、レーザスキャナ200から直接観測できない下部工100の上面110であっても測量誤差を低減することができる。したがって、下部工100の上面の計測のために危険で手間のかかる高所作業を行う必要がなくなり、作業性が良好なものとなる。
【0037】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る測量システムについて図面を参照して説明する。
図4は測量システムの構成図、
図5は測量装置の機能ブロック図である。
【0038】
本実施の形態に係る測量システムが第1の実施の形態と異なる点は、
図4に示すように、レーザ測位を行う測位装置500をさらに備えている点、及び、測量装置400における測量処理にある。他の構成については第1の実施の形態と同様なので、ここでは相違点のみを説明する。
【0039】
測位装置500は、レーザスキャナ200による下部工100のスキャンエリアに含まれる所定の基準点の位置(座標)をレーザ測位により計測する。本実施の形態では測位装置500としてトータルステーションを用いた。測位装置500の設置位置は既知であるものとする。測位装置500の設置位置は、測位装置500により既知の別の基準点を測位することにより取得することができる。前記所定の基準点は、境界部130における何れかの点とすることができる。また、所定の基準点は、境界部130以外における何れかの点とすることができる。測位装置500による計測結果は、測量装置400に提供される。また、所定の基準点は、下部工100の構成要素であってもよいし、測量のために下部工100に設置したものであってもよい。本実施の形態では、下部工100のいずれかの角部を基準点とした。
【0040】
測量装置400は、
図5に示すように、測位装置500で計測した基準点位置を取得して記憶部460に記憶する基準点位置取得部470を備えている。基準点位置の取得方法は不問である。例えば、所定の記憶媒体を介して取得してもよい。また、測位装置500と測量装置400を有線接続又は無線接続して基準点位置の送受信を行ってもよい。また、人手により測定装置400に基準点位置を入力させるようにしてもよい。
【0041】
重畳処理部430は、地上側点群データ又は重畳点群データを、前記基準点位置を用いて補正する機能を有する。このため、重畳処理部430は、地上側点群データ又は重畳点群データから所定の基準点を特徴点として抽出する機能を有する。
【0042】
このような測量システムによれば、第1の実施の形態と同様に、相対的に誤差の大きい空中側点群データを、相対的に誤差の小さい地上側点群データに重畳させているので、レーザスキャナ200から直接観測できない下部工100の上面110であっても測量誤差を低減することができる。ところで、第1の実施の形態の構成において精度をより向上させるにはレーザスキャナ200としてより高価なものを用いる必要がある。一方、本実施の形態では、レーザスキャナ200よりも一般的に安価な測位装置500を用いて補正を行っているので、安価で精度を向上させることができる。他の作用効果については第1の実施の形態と同様である。
【0043】
以上、本発明の一実施の形態について詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。
【0044】
例えば、上記実施の形態では、カメラ310で撮像した画像データから空中側点群データを算出する点群データ変換処理部410を測量装置400に設けたが、この処理部は他のコンピュータに実装してもよいし、無人航空機300に実装してもよい。
【0045】
また、上記実施の形態では測量対象の構造物として橋梁の下部工について説明したが、他の構造物であっても本発明を実施できる。
【符号の説明】
【0046】
100…構造物
110…上面
120…側面
130…境界部
200…レーザスキャナ
300…無人航空機
310…カメラ
400…測量装置
410…点群データ変換処理部
420…点群データ取得部
430…重畳処理部
440…測定点探索部
450…測量演算部450
460…記憶部
470…基準点位置取得部