(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】審査業務文書作成支援装置、審査業務文書作成支援方法、及び審査業務文書作成支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/03 20230101AFI20241031BHJP
【FI】
G06Q40/03
(21)【出願番号】P 2024099560
(22)【出願日】2024-06-20
【審査請求日】2024-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508289888
【氏名又は名称】ゼネリックソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】小西 亮介
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第7396582(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第116741178(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2024/0012842(US,A1)
【文献】特許第7406031(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2024/0005089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融機関における審査業務文書作成支援装置であって、
対話形式のUI画面を提供するUI提供手段と、
前記UI画面を介し、審査業務文書のフォーマットに設けられた入力項目に関する質問文を入力する質問入力手段と、
前記質問文を言語モデルに回答させるための質問情報を生成する質問生成手段と、
前記言語モデルに、前記質問情報を送信する質問送信手段と、
前記言語モデルから、前記質問情報に対応する回答情報を受信する回答受信手段と、
前記UI画面を介し、前記回答情報に基づいて前記質問文に対応する回答文を出力する回答出力手段と、
前記UI画面を介し、前記入力項目に対する前記回答文の入力指示を入力する指示入力手段と、
前記入力指示に応じて、前記入力項目に、前記回答文に基づく入力情報を入力する回答入力手段と、
を有することを特徴とする審査業務文書作成支援装置。
【請求項2】
前記回答入力手段は、
第1の質問文が入力され、該第1の質問文に対応する第1の回答文が出力され、
第2の質問文が入力され、該第2の質問文に対応する第2の回答文が出力された後に、
前記入力指示が入力された場合、
前記入力項目に、前記第1の回答文及び前記第2の回答文に基づく入力情報を入力すること、
を特徴とする請求項1に記載の審査業務文書作成支援装置。
【請求項3】
前記入力項目は、顧客のSWOT分析に関する入力項目であり、
前記UI画面を介し、審査辞典情報に基づくSWOT分析の着眼点に関する情報が出力され、
前記質問文は、前記SWOT分析の着眼点を前記言語モデルに回答させるための質問文であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の審査業務文書作成支援装置。
【請求項4】
前記UI画面を介し、ユーザにより修正された前記回答文を入力する修正回答入力手段と、を有し、
前記回答入力手段は、
質問文が入力され、該質問文に対応する回答文が出力された後に、
修正された前記回答文の入力指示が入力された場合、
前記入力項目に、修正された前記回答文に基づく入力情報を入力すること、
を特徴とする請求項1に記載の審査業務文書作成支援装置。
【請求項5】
知識ベースから、生成した前記質問情報と関連する質問関連情報を検索する検索手段と、
前記言語モデルに、前記質問情報及び前記質問関連情報を送信する前記質問送信手段と、
前記UI画面を介し、前記質問関連情報を入力する知識入力手段と、
前記知識ベースに、入力された前記質問関連情報を反映させる知識反映手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の審査業務文書作成支援装置。
【請求項6】
入力された前記質問関連情報は、外部情報ソースの所在情報であること、
を特徴とする請求項
5に記載の審査業務文書作成支援装置。
【請求項7】
金融機関における審査業務文書作成支援装置が、
対話形式のUI画面を提供するUI提供手順と、
前記UI画面を介し、審査業務文書のフォーマットに設けられた入力項目に関する質問文を入力する質問入力手順と、
前記質問文を言語モデルに回答させるための質問情報を生成する質問生成手順と、
前記言語モデルに、前記質問情報を送信する質問送信手順と、
前記言語モデルから、前記質問情報に対応する回答情報を受信する回答受信手順と、
前記UI画面を介し、前記回答情報に基づいて前記質問文に対応する回答文を出力する回答出力手順と、
前記UI画面を介し、前記入力項目に対する前記回答文の入力指示を入力する指示入力手順と、
前記入力指示に応じて、前記入力項目に、前記回答文に基づく入力情報を入力する回答入力手順と、
を実行する審査業務文書作成支援方法。
【請求項8】
コンピュータを、
対話形式のUI画面を提供するUI提供手段と、
前記UI画面を介し、審査業務文書のフォーマットに設けられた入力項目に関する質問文を入力する質問入力手段と、
前記質問文を言語モデルに回答させるための質問情報を生成する質問生成手段と、
前記言語モデルに、前記質問情報を送信する質問送信手段と、
前記言語モデルから、前記質問情報に対応する回答情報を受信する回答受信手段と、
前記UI画面を介し、前記回答情報に基づいて前記質問文に対応する回答文を出力する回答出力手段と、
前記UI画面を介し、前記入力項目に対する前記回答文の入力指示を入力する指示入力手段と、
前記入力指示に応じて、前記入力項目に、前記回答文に基づく入力情報を入力する回答入力手段と、
して機能させるための審査業務文書作成支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、審査業務文書作成支援装置、審査業務文書作成支援方法、及び審査業務文書作成支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
事業性評価とは、金融機関が取引先の顧客企業に対して融資等を判断するに際し、その企業の財務諸表といった定量情報のみならず、業界動向、企業の強み弱み、将来ビジョン、経営課題などの定性情報を考慮に入れて、企業を評価しようとするものである。一般的に事業性評価を行うにあたっては、金融機関が自行内での情報連絡に用いるためのシート様式として、「事業性評価シート」と呼ばれる書面を作成する。事業性評価シートは、金融機関が企業評価を適切に行えるよう独自に工夫して作成されたシート様式・書式である。営業店の担当者は、自身が担当する企業の企業情報や財務諸表などの定量情報を収集したり、業界動向、企業の強み弱み、将来ビジョン、経営課題に関することなど、経営者へのヒアリングに基づいた定性情報をまとめることで、シート項目を埋めていく。完成した事業性評価シートは、例えば融資稟議書起案時の添付資料などとして主に用いられる。
【0003】
これに関する技術として、例えば特許文献1には、金融機関における審査業務文書作成支援装置が記載されており、適切にチューニングされた言語モデルや専門的な知識ベースを用いることで、金融機関担当者は、業界動向、SWOT分析、経営者目線の経営課題など、中身の濃い審査業務書の作成を迅速且つ効率化することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら一方で、上記特許文献1に記載される言語モデルや知識ベースによれば、生成されたAI回答の内容がときに不十分・不正確であったり、金融機関担当者の求める着眼点とのズレが生じうるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み提案されたものであり、一つの側面において、審査業務文書の作成における一層の内容の充実化ないし正確性向上等を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る審査業務文書作成支援装置は、金融機関における審査業務文書作成支援装置であって、対話形式のUI画面を提供するUI提供手段と、前記UI画面を介し、審査業務文書のフォーマットに設けられた入力項目に関する質問文を入力する質問入力手段と、前記質問文を言語モデルに回答させるための質問情報を生成する質問生成手段と、前記言語モデルに、前記質問情報を送信する質問送信手段と、前記言語モデルから、前記質問情報に対応する回答情報を受信する回答受信手段と、前記UI画面を介し、前記回答情報に基づいて前記質問文に対応する回答文を出力する回答出力手段と、前記UI画面を介し、前記入力項目に対する前記回答文の入力指示を入力する指示入力手段と、前記入力指示に応じて、前記入力項目に、前記回答文に基づく入力情報を入力する回答入力手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施の形態によれば、一つの側面において、審査業務文書の作成における一層の内容の充実化ないし正確性向上等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る審査業務文書作成支援システム100の構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る知識ベース30のナレッジデータ例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るファインチューニング済み大規模言語モデル40のラベル付き学習データ例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る審査業務文書作成支援サーバ20の機能構成例を示す図である
【
図5】本実施形態に係る審査業務文書作成支援システム100の動作概要を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る審査業務文書作成処理1を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る審査業務文書作成処理2を示す図である。
【
図8A】本実施形態に係るシート項目「1.法人属性情報」に対する質問及び回答例を示す図である。
【
図8B】本実施形態に係るシート項目「2.事業内容」に対する質問及び回答例を示す図である。
【
図8C】本実施形態に係るシート項目「3.株主・出資者情報」に対する質問及び回答例を示す図である。
【
図8D】本実施形態に係るシート項目「4.経営陣情報」に対する質問及び回答例を示す図である。
【
図8E】本実施形態に係るシート項目「5.業界動向」に対する質問及び回答例を示す図である。
【
図8F】本実施形態に係るシート項目「6.SWOT分析」に対する質問及び回答例を示す図である。
【
図8G】本実施形態に係るシート項目「損益分岐点売上分析」に対する質問及び回答例を示す図である。
【
図8H】本実施形態に係るシート項目「キャッシュフロー分析」に対する質問及び回答例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る事業性評価シートのシート項目例1を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る事業性評価シートのシート項目例2を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る審査業務文書作成支援システム100の構成例を示す図である。
【
図12】本実施形態に係る審査業務文書作成支援サーバ20の機能構成例を示す図である。
【
図13】本実施形態に係るシート項目「2.事業内容」に対するUI画面例を示す図である。
【
図14A】本実施形態に係るシート項目「6.SWOT分析」に対するUI画面例1を示す図である。
【
図14B】本実施形態に係るシート項目「6.SWOT分析」に対するUI画面例2を示す図である。
【
図15】本実施形態に係るシート項目「6.SWOT分析」に対するUI画面例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
[実施形態1]
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る審査業務文書作成支援システム100の構成例を示す図である。
図1の審査業務文書作成支援システム100は、金融機関システム10、審査業務文書作成支援サーバ20、知識ベース(ベクトルDB)30、ファインチューニング済み大規模言語モデル(LLM)40及び端末50を含み、ネットワーク70を介して接続されている。
【0011】
金融機関システム10は、銀行等の金融機関が保有する各種システム及びDB(データベース)ある。金融機関システム10は、例えば、各種預金や融資などの取引を管理する基幹システム、金融商品の販売実績を管理する販売管理システム、法令や規則に従って取引内容を適切に管理するためのフロントコンプライアンスシステム、融資履歴や顧客との交渉記録(営業記録)を含む顧客情報を管理するSFM(Sales Force Management System)やCRM(Customer Relationship Management)、及び各システムに伴う各DBを有する。金融機関システム10の各DBは、例えば金融機関における顧客企業の顧客情報、取引データ、財務データ、交渉記録データ等のDBを含む。
【0012】
審査業務文書作成支援サーバ(以下単に支援サーバともいう)20は、金融機関担当者が作成すべき審査業務文書の作成を支援するサーバ装置である。支援サーバ20は、担当者の端末50から、審査業務文書として例えば事業性評価シートの作成要求を受信すると、事業性評価シート内の所定の入力項目(以下シート項目ともいう)についてファインチューニング済み大規模言語モデル(以下単に言語モデルともいう)40に質問を問い合わせ、得た回答をもとに当該シート項目を充足していくことで、事業性評価シートを作成する。具体的な作成例は後述する。
【0013】
知識ベース30は、金融機関における顧客企業に関する情報(顧客関係情報という)が例えばベクトル変換されて予め蓄積・構築されたナレッジデータベースである。顧客関係情報は、顧客企業に関して一般に公開されている公開情報のみならず、行内情報のような非公開情報を含む。言語モデル40は、学習データに含まれている内容以外に関する質問には回答ができないため、例えば顧客企業に関して特化した質問に回答しようとしても、質問に対して分からないという回答や異なる知識に基づいた回答が得られてしまうことがある。この問題を解決する方法として、本実施形態においては、予め知識ベース30に質問に回答するために必要そうな顧客関係情報を蓄積(記憶)しておく。支援サーバ20は、まず知識ベース30に蓄積された顧客関係情報の中から、質問に回答するために必要そうな質問関連情報を検索し、検索した質問関連情報を、指示・入力文であるプロンプトにプラスして言語モデル40に渡す。これにより言語モデル40が学習していない内容であっても的確な回答を考えさせることが可能である。
【0014】
ファインチューニング済み大規模言語モデル40は、大量のテキストデータを用いて文法や単語の意味等を教師なし事前学習させた汎用自然言語処理モデル(LLM:Large Language Models)に対し、さらに特定ドメインの知識を教師あり学習させた言語モデルである。汎用自然言語処理モデルに適切な「質問」と望ましい「回答」のセットを学習(ファインチューニング)させることで、審査業務文書に求められる専門性の高い回答文章を生成可能とする言語モデル40とする。汎用自然言語処理モデルは、例えば、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)、GPT(Generative Pre-trained Transformer)-3.5、GPT-4等を用いることができる。なお言語モデル40は、行内ネットワーク70内の記憶装置に記憶するネットワークシステム構成に代えて、外部サービスとして提供されているファインチューニング済み大規模言語モデルのサーバにアクセスして読み出すようにすることも可能である。
【0015】
端末50は、例えばPC(パーソナル・コンピュータ)、スマートフォン、タブレット端末などであって、例えば営業店の担当者が使用するユーザ端末である。端末50には、支援サーバ20にアクセスするための所定のアプリケーション・プログラムや汎用ウェブブラウザ等が予めインストールされる。担当者は端末50を用いて支援サーバ20にアクセスし、支援サーバ20により作成された事業性評価シートを取得し画面上に表示する。なお、事業性評価シート内のシート項目によっては、担当者自身が自ら記入した望ましい項目があるため、支援サーバ20が必ずしも事業性評価シート内の全シート項目を埋めて完成させたものではない。担当者は、支援サーバ20により一次作成された事業性評価シートを見直したり補充することで、最終的な事業性評価シートを完成させることができる。
【0016】
ネットワーク70は、金融機関の通信ネットワークであるが、セキュリティの観点から行内ネットワークであることが望ましい。但し十分なセキュリティ担保の下、ネットワーク70は、例えば、インターネット、公衆回線網、WiFi(登録商標)などを含んでもよい。
【0017】
(知識ベース30)
図2は、本実施形態に係る知識ベース30のナレッジデータ例を示す図である。知識ベース30は、金融機関における顧客関係情報が検索しやすいよう例えばベクトル変換されてから予め蓄積・構築されたナレッジデータベースである。本実施形態に係る知識ベース30のナレッジデータは、金融機関における顧客企業の顧客関係情報として、例えばA社、B社、C社・・等の顧客情報、取引データ、財務データ、交渉記録データを含む。またさらに、本実施形態に係る知識ベース30のナレッジデータは、例えば業種別審査辞典情報、法人企業統計情報を含み、外部参考資料として蓄積される。
【0018】
顧客情報は、金融機関と取引のある顧客企業の顧客情報である。商号又は名称、所在地、電話番号、代表者名など一般的な企業情報のほか、業種・業態など、口座開設時に提出が求められる情報を含む。顧客情報は、例えば金融機関システム10の基幹システムから取得されうる。なお顧客情報は、例えばスクレイピング等により収集された顧客企業自身のWEBサイト掲載や外部の信用調査会社等により提供されている企業情報データベース等の情報をもとに、代表あいさつ、当社強み、将来ビジョン、事業内容、製品・サービス、拠点、営業エリア、沿革、主要取引先、株主などの情報が、さらに補完・充足されうる。事業性評価シートには、例えば「法人属性情報」「事業内容」「株主・出資者情報」「経営陣情報」「業界動向」「SWOT分析」というシート項目があり、顧客情報はこれら質問項目に対する一つの質問関連情報として、言語モデル40による回答時に参考されうる。
【0019】
取引データは、例えば普通預金口座、当座預金口座、定期預金口座及び外貨預金口座など顧客毎に保有する各口座情報、クレジットカード情報、及び、為替取引を含むそれら取引明細情報(流動性取引明細情報)、過去に行われた融資情報である。現在から過去の全取引明細が記録されている。取引データは、例えば金融機関システム10の基幹システムから取得されうる。事業性評価シートには、例えば「法人属性情報」というシート項目があり、取引データはこれら質問項目に対する一つの質問関連情報として、言語モデル40による回答時に参考されうる。
【0020】
財務データは、顧客企業の事業年度ごとの決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等)のみならず、1年の損益の途中経過を表した期中における試算表データなど、当該顧客企業財務に関するデータを含む。財務データは、例えば金融機関システム10の基幹システムから取得されうる。事業性評価シートには、例えば「株主・出資者情報」「経営陣情報」「業界動向」「SWOT分析」「損益分岐点売上分析」「キャッシュフロー分析」というシート項目があり、財務データはこれら質問項目に対する一つの質問関連情報として、言語モデル40による回答時に参考されうる。
【0021】
交渉記録データは、過去に営業店の担当者等の金融機関側と、経営者や財務部門担当者等の顧客企業側との間で行われた交渉の記録履歴である。両者で交わされた文書やメールのみならず、面談(訪問、来店)、オンライン会議、電話などといった対話の場で話された会話事項(経営者が考える将来ビジョン、経営課題、後継者問題等々)も、テキスト、音声、画像及び動画などの形式で記録として残されている限りこれを含む。交渉記録データは、例えば金融機関システム10の融資履歴や顧客との交渉記録(営業記録)を含む顧客情報を管理するSFMやCRMから取得されうる。事業性評価シートには、例えば「業界動向」「SWOT分析」というシート項目があり、交渉記録データはこれら質問項目に対する一つの質問関連情報として、言語モデル40による回答時に参考されうる。
【0022】
業種別審査辞典情報は、わが国内の全産業や全業種を網羅し、業種ごとに業界動向や情報分析、審査のポイントなどがまとめられた業界情報辞典の情報である。金融機関の担当者が融資審査の際に融資先の業種がどのようなものなのかを把握するために参考されている。事業性評価シートには、例えば「業種詳細」「業界動向」「SWOT分析」というシート項目があり、業種別審査辞典情報はこれら質問項目に対する一つの質問関連情報として、言語モデル40による回答時に参考されうる。これにより言語モデル40が金融機関の融資審査の観点により即した回答を行うことが期待できる。
【0023】
法人企業統計調査情報は、わが国における営利法人等の企業活動の実態を把握するため、標本調査として実施されている統計法に基づく基幹統計調査の情報である。調査結果としては、営利法人等の売上高、設備投資、経常利益などの財務指標や、業種別、規模別、地域別の企業活動の状況などが把握される。事業性評価シートには、例えば「業界動向」「SWOT分析」というシート項目があり、法人企業統計調査情報はこれら質問項目に対する一つの質問関連情報として、言語モデル40による回答時に参考されうる。これにより言語モデル40が金融機関の融資審査の観点により即した回答を行うことが期待できる。
【0024】
(ファインチューニング済み大規模言語モデル40)
図3は、本実施形態に係るファインチューニング済み大規模言語モデル40のラベル付き学習データ例を示す図である。上述したようにファインチューニング済み大規模言語モデル40は、大量のテキストデータを用いて文法や単語の意味等を教師なし事前学習させた汎用自然言語処理モデル(LLM)に対し、さらに特定ドメインの知識を教師あり学習させた言語モデルである。事業性評価シートのシート項目に対する適切な回答を引き出すための「質問」と模範的な「回答」の文章セットを学習(ファインチューニング)させることで、審査業務文書に求められる専門性の高い回答文章を生成可能なモデルを作成する。
【0025】
事業性評価シートには、例えば「沿革」というシート項目があり、当シート項目「沿革」に対して適切な回答を得るための質問及び模範的な回答のサンプルセットとして、「質問:a社の沿革を年代が古い順に〇〇〇文字でまとめて。」及び「回答:2020年 〇〇が東京都〇区にA社を創業。2021年・・」(学習データa-1)・・を複数セット、予め学習(ファインチューニング)させる。
【0026】
また、事業性評価シートには、例えば「SWOT分析」というシート項目があり、当シート項目「SWOT分析」に対して適切な回答を得るための質問及び模範的な回答のサンプルセットとして、「質問:あなたは銀行員です。融資審査を行う銀行員の立場で、a社における内部環境の強み・弱み、外部環境の機会・脅威の観点から、SWOT分析をしてください。 分析は、同社の財務データのほか、経営者が考える将来ビジョンや経営課題も踏まえてください。」及び「回答:S(強み):・・、W(弱み):・・、O(機会):・・、T(脅威):・・」(学習データa-6)・・を複数セット、予め学習(ファインチューニング)させる。
【0027】
また、支援サーバ20により過去に事業性評価シートが後述する
図6のS1~S5及び
図7のS21~S23の処理を経て出力されたことがある顧客企業について、そのとき過去においてシート項目ごとに生成された質問(S3)及び質問関連情報(S5)と、当該シート項目に対応して入力された言語モデル40の回答(S22)とを、言語モデル40に学習(ファインチューニング)させてもよい。また言語モデル40の当該回答(S22)に代えて、さらに担当者によってより望ましい回答として修正されている場合、最終的な事業性評価シートから取得した修正後の回答を学習させてもよい。
【0028】
(機能構成)
図4は、本実施形態に係る審査業務文書作成支援サーバ20の機能構成例を示す図である。支援サーバ20は、主な機能部として、文書作成要求受信部201、項目特定部202、質問生成部203、検索部204、質問送信部205、回答受信部206、回答入力部207、文書出力部208、及び記憶部209を有する。
【0029】
文書作成要求受信部201は、担当者の端末50から、文書作成対象の顧客企業を指定した審査業務文書(例えば事業性評価シート)の作成要求を受信する機能を有している。
【0030】
項目特定部202は、審査業務文書のフォーマットに設けられた入力項目のうち、審査業務文書の種類に応じて所定の回答入力項目を特定する機能を有している。
【0031】
質問生成部203は、所定の回答入力項目に対する入力情報を言語モデル40に回答させるための質問情報を生成する機能を有している。
【0032】
検索部204は、顧客に関する顧客関係情報が蓄積された知識ベースから、生成した質問情報と関連する質問関連情報を検索する機能を有している。
【0033】
質問送信部205は、言語モデル40に質問情報及び顧客関係情報を送信する機能を有している。
【0034】
回答受信部206は、言語モデル40から質問情報に対応する回答情報を受信する機能を有している。
【0035】
回答入力部207は、所定の回答入力項目に、回答情報を入力する機能を有している。
【0036】
文書出力部208は、審査業務文書内において、全ての所定の回答入力項目に言語モデル40からの回答に基づく回答情報を入力し終えると、端末50に審査業務文書(例えば事業性評価シート)を出力する機能を有している。
【0037】
記憶部209は、審査業務文書のフォーマット、シート項目毎の定型質問文の情報などを、記憶装置に記憶する機能を有している。
【0038】
なお、審査業務文書作成支援サーバ20は、汎用のコンピュータにより実現することができる。具体的に支援サーバ20は、演算処理ユニット(CPU)、メモリ、入出力インターフェース、および通信インターフェース等のハードウェアを備えている。支援サーバ20の機能は、メモリに格納されているコンピュータプログラムに沿った処理を演算処理ユニットが実行することで実現される。即ち各機能部は、支援サーバ20を構成するコンピュータの演算処理ユニット、メモリ等のハードウェア資源上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されるものである。審査業務文書作成支援サーバ20は、審査業務文書作成支援装置や審査業務文書作成支援のための計算用マシンなどと呼んでもよい。またこれらの機能部は、「手段」、「モジュール」、「ユニット」、又は「回路」に読替えてもよい。また各DBは、支援サーバ20のメモリやネットワーク70上の外部記憶装置に配置してもよい。また支援サーバ20の各機能部は単一のサーバ装置のみにより実現されるのみならず、機能分散させて複数の装置からなるシステムとして実現してもよい。また上記コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に格納されていてもよい。
【0039】
<審査業務文書の作成支援処理>
図5は、本実施形態に係る審査業務文書作成支援システム100の動作概要を示す図である。
図6は、本実施形態に係る審査業務文書作成処理1を示す図である。支援サーバ20の演算処理ユニットが処理を実現可能なプログラムを読み込んで実行させることで、以下の各ステップ(以下、「S」と表記する)を実現することができる。
【0040】
S1:支援サーバ20は、担当者の端末50から、文書作成対象の顧客企業を指定した審査業務文書(例えば事業性評価シート)の作成要求を受信する。作成要求には少なくとも対象の顧客企業を特定するための識別子(例えば顧客番号、顧客企業名等)を含む。
【0041】
S2:支援サーバ20は、記憶部209に記憶された審査業務文書のフォーマットに予め設けられたシート項目(入力項目)のうち、言語モデル40に回答させるシート項目(所定の回答入力項目)を特定する。審査業務文書シート内のシート項目によっては、担当者自身が自ら記入した望ましい項目があるため、シート項目のうち支援サーバ20により埋めるべきシート項目は、審査業務文書の種類に応じて予め定められている。事業性評価シートの場合、言語モデル40に回答させるシート項目として、例えば「法人属性情報」「事業内容」「株主・出資者情報」「経営陣情報」「業界動向」「SWOT分析」「損益分岐点売上分析」「キャッシュフロー分析」を特定することができる。
【0042】
S3:支援サーバ20は、S2で特定したシート項目に回答するための質問(問い)を、シート項目ごとに生成する。なお、シート項目ごとに生成する質問(問い)の文章は、シート項目ごとに定められて記憶部209に定型的に記憶されており、また言語モデル40から模範的な回答を得られるようにするため、ファインチューニングの場面における、当シート項目に対して適切な回答を得るためのサンプル質問と同形式の質問文章とする(
図3)。
【0043】
具体的に、支援サーバ20は例えばS2で特定した1つのシート項目「法人属性情報」における「沿革」に回答するための質問として、「A社の沿革を年代が古い順に〇〇〇文字でまとめて。」なるプロンプトを生成する。また支援サーバ20は例えばS2で特定した1つのシート項目「SWOT分析」に回答するための質問として、「あなたは銀行員です。融資審査を行う銀行員の立場で、A社における内部環境の強み・弱み、外部環境の機会・脅威の観点から、SWOT分析をしてください。分析は、同社の財務データのほか、経営者が考える将来ビジョンや経営課題も踏まえてください。」なるプロンプトを生成する。
【0044】
なお、S2で特定した全シート項目に回答するための質問としては、「A社について、事業性評価シートを作成するため、1.法人属性情報、2.事業内容、3.株主・出資者情報、4.経営陣情報、5.業界動向、6.SWOT分析・・・を、最大〇〇〇文字以内でまとめてください。」といったように、1つの質問として全てまとめて作成してもよい。
【0045】
S4:支援サーバ20は、知識ベース30から、S3で生成した質問(問い)に類似する質問関連情報を検索・取得する。具体的に、支援サーバ20は、S3で生成した質問(問い)の文章をそのままクエリとしてベクトルに変換し、知識ベース30(ナレッジベクトルDB)を検索し、ベクトル距離が近い類似文章を、質問関連情報として取得することができる。
【0046】
具体的に、S3で生成した質問「A社の沿革を年代が古い順に〇〇〇文字でまとめて。」に近い類似文章として、例えば、A社の企業情報(≒「A社」「沿革」)を、質問関連情報として取得することができる。また、S3で生成した質問「あなたは銀行員です。融資審査を行う銀行員の立場で、A社における内部環境の強み・弱み、外部環境の機会・脅威の観点から、SWOT分析をしてください。分析は、同社の財務データのほか、経営者が考える将来ビジョンや経営課題も踏まえてください。」に近い類似文章として、例えばA社の企業情報(≒「A社」「経営者」「強み・弱み」「将来ビジョン」)、A社の財務データ(≒「A社」「財務データ」、A社の交渉記録データ(≒「A社」「強み・弱み」「将来ビジョン」「経営課題」)、A社の業種に対応する審査辞典情報(≒「A社」「融資審査」「銀行員」)、A社の業種の法人企業統計情報(≒「外部環境」)を、質問関連情報として取得することができる。
【0047】
なお、当該質問(問い)には、審査業務文書ならでは金融機関観点に基づくSWOT分析を回答としてられるように、同質問内に例えば「融資審査」や「銀行員」という語を入れて、A社の業種に対応する審査辞典情報を類似文章として検索可能にしている。
上述したように業種別審査辞典情報は、わが国内の全産業や全業種を網羅し、業種ごとに業界動向や情報分析、審査のポイントなどがまとめられた業界情報辞典の情報であり、金融機関の担当者が融資審査の際に融資先の業種がどのようなものなのかを把握するために利用されている。このため、知識ベースとして審査辞典情報を検索・取得するにあたり、A社がどのような業種に属するかの特定は極めて重要である。支援サーバ20は、知識ベース30から、S3で生成した質問(問い)に類似する質問関連情報を検索・取得する際、明示的にA社の業種をクエリに入れることで、確実にA社の業種に対応した審査辞典情報を類似文章として検索・取得することが可能となる。
【0048】
この場合、支援サーバ20は、予め少なくともS4以前の時点においてA社の業種を特定しておくとよい。具体的な特定方法は、例えば金融機関システム10の基幹システムから取得されうるし、基幹システムから取得されないかされるのが困難な場合には、他にも例えばスクレイピング等により収集された顧客企業自身のWEBサイト掲載や外部の信用調査会社等により提供されている企業情報データベース等の情報をもとに取得されうる。
【0049】
S5:支援サーバ20は、S3で生成した質問(問い)及びS4で検索・取得した質問関連情報を、言語モデル40に送信する。具体的に、支援サーバ20は、生成した質問と、知識ベース30から検索・取得した質問関連情報とをプロンプト内を埋め込んで、言語モデル40に問い合わせとして入力する。
【0050】
図7は、本実施形態に係る審査業務文書作成処理2を示す図である。
S21:支援サーバ20は、S5における問い合わせに対する応答として、言語モデル40から回答を受信する。例えば質問「A社の沿革を年代が古い順に〇〇〇文字でまとめて。」及び質問関連情報「A社の企業情報」に対する回答として、回答文「2020年 〇〇が東京都〇区にA社を創業。2021年 東京都〇区に本社移転・・」を受信することができる。なお、言語モデル40からの当該回答は、ファインチューニングに基づく望ましいサンプル回答と同形式の回答文章となっている(
図3)。
【0051】
S22:支援サーバ20は、審査業務文書中、S2で特定したシート項目(所定の回答入力項目)に、S21で受信した回答を入力する。例えばS2で特定した1つのシート項目「沿革」に、当該回答文「2020年 〇〇が東京都〇区にA社を創業。2021年 東京都〇区に本社移転・・」を入力する。入力は回答文をシート項目内にそのまま転記してもよいし、シート項目のフォームに応じて書式等を加工してもよい。
【0052】
S23:支援サーバ20は、文書内において言語モデル40に回答させるべき全てのシート項目について入力を終えると、端末50に審査業務文書を出力する。本実施形態に係る事業性評価シートにおいて言語モデル40に回答させるシート項目は、例えば「法人属性情報」「事業内容」「株主・出資者情報」「経営陣情報」「業界動向」「SWOT分析」「損益分岐点売上分析」「キャッシュフロー分析」であるため、これらシート項目に対応する言語モデル40からの回答をすべて事業性評価シート内に入力完了した場合に、端末50に指定顧客企業における事業性評価シートを出力する。
【0053】
<シート項目に対する質問及び回答例>
事業性評価シートのフォーマットに設けられたシート項目のうち、支援サーバ20が言語モデル40からの回答を用いて埋めるべきシート項目の一例として、「法人属性情報」「事業内容」「株主・出資者情報」「経営陣情報」「業界動向」「SWOT分析」「損益分岐点売上分析」「キャッシュフロー分析」を挙げて、以下具体例を示す。
【0054】
図8Aは、本実施形態に係るシート項目「1.法人属性情報」に対する質問及び回答例を示す図である。質問Q1は、シート項目「1.法人属性情報」について、言語モデル40に回答させるために生成した質問(プロンプト)である。また質問Q1は、知識ベース30から検索・取得したA社の企業情報と、A社の取引データとがプロンプト内に埋め込まれて、言語モデル40に問いとして入力される。回答A1は、質問Q1に対する回答として、言語モデル40から受信した回答である。支援サーバ20は、言語モデル40から受信した回答A1の文章を、事業性評価シートのシート項目「1.法人属性情報」IN1に入力(転記)する。
【0055】
図8Bは、本実施形態に係るシート項目「2.事業内容」に対する質問及び回答例を示す図である。質問Q2は、シート項目「2.事業内容」について、言語モデル40に回答させるために生成した質問(プロンプト)である。また質問Q2は、知識ベース30から検索・取得したA社の企業情報と、A社の業種の審査辞典情報とがプロンプト内に埋め込まれて、言語モデル40に問いとして入力される。回答A2は、質問Q2に対する回答として、言語モデル40から受信した回答である。支援サーバ20は、言語モデル40から受信した回答A2の文章を、事業性評価シートのシート項目「2.事業内容」IN2に入力(転記)する。
【0056】
なお、シート項目「2.事業内容」IN2には、「(1)業種」という項目を含んでいるが、顧客企業の「(1)業種」については、言語モデル40に回答させるまでもなく、金融機関システム10の有する顧客情報DB等から取得し入力すれば足りるため、本実施形態において、質問Q2には「(1)業種」に関する質問は含めないものとした。
【0057】
図8Cは、本実施形態に係るシート項目「3.株主・出資者情報」に対する質問及び回答例を示す図である。質問Q3は、シート項目「3.株主・出資者情報」について、言語モデル40に回答させるために生成した質問(プロンプト)である。また質問Q3は、知識ベース30から検索・取得したA社の企業情報と、A社の財務データとがプロンプト内に埋め込まれて、言語モデル40に問いとして入力される。回答A3は、質問Q3に対する回答として、言語モデル40から受信した回答である。支援サーバ20は、言語モデル40から受信した回答A3の文章を、事業性評価シートのシート項目「3.株主・出資者情報」IN3に入力(転記)する。
【0058】
図8Dは、本実施形態に係るシート項目「4.経営陣情報」に対する質問及び回答例を示す図である。質問Q4は、シート項目「4.経営陣情報」について、言語モデル40に回答させるために生成した質問(プロンプト)である。また質問Q4は、知識ベース30から検索・取得したA社の企業情報と、A社の財務データとがプロンプト内に埋め込まれて、言語モデル40に問いとして入力される。回答A4は、質問Q4に対する回答として、言語モデル40から受信した回答である。支援サーバ20は、言語モデル40から受信した回答A4の文章を、事業性評価シートのシート項目「4.経営陣情報」IN4に入力(転記)する。
【0059】
図8Eは、本実施形態に係るシート項目「5.業界動向」に対する質問及び回答例を示す図である。質問Q5は、シート項目「5.業界動向」について、言語モデル40に回答させるために生成した質問(プロンプト)である。また質問Q5は、知識ベース30から検索・取得したA社の企業情報と、A社の財務データと、A社の業種の審査辞典情報と、A社の業種の法人企業統計情報とがプロンプト内に埋め込まれて、言語モデル40に問いとして入力される。回答A5は、質問Q5に対する回答として、言語モデル40から受信した回答である。支援サーバ20は、言語モデル40から受信した回答A5の文章を、事業性評価シートのシート項目「5.業界動向」IN5に入力(転記)する。
【0060】
図8Fは、本実施形態に係るシート項目「6.SWOT分析」に対する質問及び回答例を示す図である。質問Q6は、シート項目「6.SWOT分析」について、言語モデル40に回答させるために生成した質問(プロンプト)である。また質問Q6は、知識ベース30から検索・取得したA社の企業情報と、A社の財務データと、A社の交渉記録データと、A社の業種の審査辞典情報と、A社の業種の法人企業統計情報とがプロンプト内に埋め込まれて、言語モデル40に問いとして入力される。回答A6は、質問Q6に対する回答として、言語モデル40から受信した回答である。支援サーバ20は、言語モデル40から受信した回答A6の文章を、事業性評価シートのシート項目「6.SWOT分析」IN6に入力(転記)する。
【0061】
ここで、事業性評価シートにおいてSWOT分析のようなシート項目については、単に顧客企業における業界・業種一般論や、顧客企業の財務データといった定量情報のみでは不十分であり、望ましくは日々の顧客企業側の考えや目線といった定性情報が分析に不可欠である。このため、これまで営業店の担当者は事業性評価シートを作成に際して、あらためて自身が担当する企業の企業情報や財務諸表などの定量情報を収集したり、顧客企業の経営者等へのヒアリングに基づいた定性情報を分析しまとめることで、シート項目を埋めていた。
【0062】
例えば本実施形態に係る回答A6は、知識ベース30から検索・取得されたA社の交渉記録データがプロンプト内に埋め込まれた質問Q6に対する回答であり、言語モデル40からの回答は、その交渉記録データに記録されている情報を踏まえて回答されたものである。上述したように交渉記録データは、元はSFMやCRMから取得された、過去に営業店の担当者等の金融機関側と、経営者や財務部門担当者等の顧客企業側との間で行われた交渉の記録履歴である。両者で交わされた文書やメールのみならず、面談(訪問、来店)、オンライン会議、電話などといった対話の場で話された会話事項(経営者が考える将来ビジョン、経営課題、後継者問題等々)も記録として残されている限りこれを含んでいる。従って例えば回答A6内の「経営者は3年以内に業界トップシェア獲得を目標としており、実現される見込みが高いと予想される。」「開発力向上が経営課題である。」なる文章は、交渉記録履歴として記録されていたA社の経営者が語った目標(3年以内に業界トップシェア獲得)やその実現見込み(高い)、経営課題(開発力向上)などが反映された回答文章となっている。
【0063】
図8Gは、本実施形態に係るシート項目「損益分岐点売上分析」に対する質問及び回答例を示す図である。質問Q7は、シート項目「x.損益分岐点売上分析」について、言語モデル40に回答させるために生成した質問(プロンプト)である。また質問Q7は、知識ベース30から検索・取得したA社の財務データ(損益計算書)がプロンプト内に埋め込まれて、言語モデル40に問いとして入力される。回答A7は、質問Q7に対する回答として、言語モデル40から受信した回答である。支援サーバ20は、言語モデル40から受信した回答A7のグラフを、事業性評価シートのシート項目「x.損益分岐点売上分析」IN7に入力(転記)する。
【0064】
図8Hは、本実施形態に係るシート項目「キャッシュフロー分析」に対する質問及び回答例を示す図である。質問Q8は、シート項目「y.キャッシュフロー分析」について、言語モデル40に回答させるために生成した質問(プロンプト)である。また質問Q8は、知識ベース30から検索・取得したA社の財務データ(キャッシュフロー計算書)がプロンプト内に埋め込まれて、言語モデル40に問いとして入力される。回答A7は、質問Q8に対する回答として、言語モデル40から受信した回答である。支援サーバ20は、言語モデル40から受信した回答A8のグラフを、事業性評価シートのシート項目「y.キャッシュフロー分析」IN8に入力(転記)する。
【0065】
事業性評価シートは、「損益分岐点売上分析」「キャッシュフロー分析」のように、グラフ等の図を入力すべきシート項目(回答入力項目)についても、言語モデル40に質問に基づいて図を回答させ、回答に基づく図を当該シート項目に入力(転記)することができる。
【0066】
(事業性評価シート)
図9は、本実施形態に係る事業性評価シートのシート項目例1を示す図である。
図10は、本実施形態に係る事業性評価シートのシート項目例2を示す図である。担当者は端末50を用いて支援サーバ20にアクセスし、支援サーバ20により作成された事業性評価シートを取得し画面上に表示する。
【0067】
本実施形態に係る事業性評価シートのフォーマットに予め設けられたシート項目のうち、シート項目IN1-IN8には、言語モデル40の回答に基づく文章及びグラフが入力されていることが分かる。
【0068】
一方、例えばシート項目IN0の表題やシート項目IN2-2の「(1)業種」については、金融機関システム10の有する顧客情報DB等から取得・抽出した情報が入力されている。シート項目によっては、金融機関システム10の各種DB又は知識ベース30等から情報を単純に取得・抽出可能な入力項目もある。このようなシート項目については、支援サーバ20は質問を生成し言語モデル40に回答させなくてもよく、これにより事業性評価シートの出力までの処理速度等を向上することができる。
【0069】
また、例えばシート項目IN10の「営業店意見」については、空欄のままとなっている。事業性評価シート内のシート項目によっては、担当者自身が自ら記入した望ましい項目があるためである。担当者は、支援サーバ20により一次作成された事業性評価シートにおいて、自ら空欄のシート項目を補充することで、最終的な事業性評価シートを完成させることができる。勿論、一次作成された事業性評価シートにおけるシート項目IN1-IN8についても、担当者が言語モデル40の回答に基づく文章又はグラフに対して修正を加えた上で、最終的な事業性評価シートを完成させてもよい。
【0070】
(処理類型)
本実施形態に係る支援サーバ20が実行する処理類型について言及する。次に示す処理類型は、支援サーバ20が審査業務文書の入力項目に入力するための入力情報を、どのように取得するかの観点から類型したものである。なお、各々の入力項目に対して何れの処理類型が適用されるかは、入力項目毎にその目内容や性質等に応じて最適とされる処理類型が、支援サーバ20のシステム管理者等により予め定められるものである。
【0071】
・検索・生成型(知識ベース30+言語モデル40)
知識ベース30から生成した質問(問い)に類似する質問関連情報を検索・取得し、生成した質問と、知識ベース30から検索・取得した質問関連情報と、プロンプト内を埋め込んで、言語モデル40に問い合わせとして入力する。検索・生成型は、上述の例えばシート項目IN1-IN8に相当する。
【0072】
・抽出型(金融機関システム10の各種DB及び知識ベース30のみ)
金融機関システム10の各種DB又は知識ベース30等から情報を単純に取得・抽出する。抽出型は、上述の例えばシート項目IN0の表題やシート項目IN2-2の「(1)業種」に相当する。
【0073】
・生成型(言語モデル40のみ)
知識ベース30からは生成した質問(問い)に類似する質問関連情報を検索・取得せず、生成した質問を、言語モデル40に問い合わせとして入力する類型である。質問関連情報がなくとも言語モデル40から十分な回答が得られるタイプの入力項目に適用可能である。
【0074】
<総括>
以上、事業性評価シート等の審査業務文書の作成は、企業を審査するため重要なプロセスであり、対象企業の市場環境、将来性、経営課題などを適切に評価する必要がある。本実施形態に係る審査業務文書作成支援システムによれば、適切にチューニングされた言語モデルや専門的な知識ベースを用いることで、業界動向、SWOT分析、経営者目線の経営課題など、中身の濃い審査業務書の作成を迅速且つ効率化することが可能である。即ち本実施形態に係る審査業務文書作成支援システムによれば、金融機関担当者による審査業務文書の作成を支援することができる。
【0075】
[実施形態2]
上述の実施形態1においては、事業性評価シートのシート項目に、言語モデル40(いわゆる生成AI)からの回答を入力することで、事業性評価シート作成(シート項目の回答入力)を迅速且つ効率化することを可能としたものである。実施形態2においては、事業性評価シート作成において、対話形式のユーザインターフェースを通じ、AIと人(例えば金融機関担当者)との対話を重ねることで、AIの回答に対して人の知識・知見をさらに反映させ、事業性評価シート(シート項目)における一層の内容の充実化ないし正確性向上等を図るものである。以下詳しく説明する。
【0076】
<システム構成>
図11は、本実施形態に係る審査業務文書作成支援システム100の構成例を示す図である。
図11の審査業務文書作成支援システム100は、
図1と同様で、金融機関システム10、審査業務文書作成支援サーバ20、知識ベース30、ファインチューニング済み大規模言語モデル(LLM)40及び端末50を含み、ネットワーク70を介して接続されている。
【0077】
本実施形態に係る支援サーバ20は、事業性評価シートの作成に際し、担当者は端末50に対話形式のUI画面を提供する。担当者は端末50上の対話形式のUI画面を通じ、AIとの対話(人による知識・知見に基づく質問入力と、AIによる回答出力)を繰り返し重ねていくやり取りのプロセスを経て、シート項目に関して得られたAIの回答の内容を1つ1つ確認し、担当者が納得した回答を対応するシート項目に入力することができる。また担当者はシート項目に関して得られたAIの回答に対して、担当者の知識・知見に基づいて修正しつつ、修正した回答をシート項目に入力することができる。
【0078】
また、知識ベース30に顧客関係情報が十分存在する場合、言語モデル40から適切な回答が得られるため、支援サーバ20は、事業性評価シートのシート項目に適切な回答を入力することができるが、一方、知識ベース30に顧客関係情報が存在しない、不十分又は不正確といった場合、シート項目に適切な回答を得ることができない。この場合、担当者は、対話形式のUI画面を通じ、当該担当者の知識・知見に基づく知識を知識ベース30に反映させることができる。これにより、知識ベース30に回答に必要な情報が充足されることで、適切なAIの回答が得られるようになる。
なお、本実施形態でいうAIとは、担当者から見た対話相手であって、直接的には支援サーバ20及び間接的には言語モデル40を含む。またAIの回答とは、支援サーバ20及び/又は言語モデル40により生成された回答が相当するものである。
【0079】
(機能構成)
図12は、本実施形態に係る審査業務文書作成支援サーバ20の機能構成例を示す図である。支援サーバ20は、主な機能部として、
図4に示した文書作成要求受信部201、項目特定部202、質問生成部203、検索部204、質問送信部205、回答受信部206、回答入力部207、文書出力部208、及び記憶部209、並びに、UI提供部211、質問入力部212、回答出力部213、修正回答入力部214、指示入力部215、知識入力部216、知識反映部217、及び自然言語処理部218を有する。
【0080】
UI提供部211は、対話形式のUI画面を提供する機能を有している。
【0081】
質問入力部212は、対話形式のUI画面を介し、ユーザから、審査業務文書のフォーマットに設けられた入力項目に関する質問文を入力する機能を有している。
【0082】
回答出力部213は、対話形式のUI画面を介し、ユーザに対して、言語モデル40からの回答情報に基づいて質問文に対応する回答文を出力する機能を有している。
【0083】
修正回答入力部214は、対話形式のUI画面を介し、ユーザから、ユーザにより修正された回答文を入力する機能を有している。
【0084】
指示入力部215は、対話形式のUI画面を介し、ユーザから、入力項目に対する回答文の入力指示を入力する機能を有している。
【0085】
知識入力部216は、対話形式のUI画面を介し、ユーザから、質問関連情報を入力する機能を有している。
【0086】
知識反映部217は、知識ベース30に、ユーザから入力された質問関連情報を反映させる機能を有している。
【0087】
自然言語処理部218は、対話形式のUI画面を介し、入出力されるテキスト文(質問文、修正された回答文、入力指示、質問関連情報、回答文等)を自然言語処理し、ユーザとAIとによる対話形式のUIを実現する機能を有している。
【0088】
<事業性評価シート作成に係るUI画面>
図13は、本実施形態に係るシート項目「2.事業内容」に対するUI画面例を示す図である。担当者は端末50を用いて支援サーバ20にアクセスし、事業性評価シート作成に際し、
図13に示すUI画面を画面上に表示する。担当者は、対話形式のUI画面を通じAIとの対話を重ねながらAIの回答に対して人の知識・知見をさらに反映させつつ、事業性評価シートを作成することができる。
【0089】
担当者がUI画面上の入力欄501にテキスト文を入力すると、支援サーバ20は、入力されたテキスト文を担当者の対話文として表示する。例えば担当者がシート項目「2.事業内容」に対する回答を得たい場合、シート項目「2.事業内容」についての回答を求めるための質問502を入力欄501に入力する。なお入力欄501に入力されるテキスト文は、音声入力によるものでもよく、最終的にテキストに変換されればよい。
【0090】
支援サーバ20は、担当者により質問502が入力されると、当該シート項目「2.事業内容」に回答するための質問を生成(
図6のS3)、知識ベース30から質問に類似する質問関連情報を検索・取得(
図6のS4)、質問及び検索・取得した質問関連情報を言語モデル40に問い合わせ(
図6のS5)、言語モデル40から回答を受信(
図7のS21)し、受信した回答をAIの回答503として表示する。このように、UI画面上においては、担当者が入力した質問を示すテキストと、AI(言語モデル40)により生成された回答を示すテキストとが対話形式で表示されるので、担当者は出力されたAIの回答の内容をしっかり1つ1つ確認することができる。
【0091】
ここで、知識ベース30に質問502に関する顧客関係情報が存在しない、不十分又は不正確といった場合、言語モデル40は適切な回答を生成できないため、AIからはその旨の回答が表示される。例えば
図13に示すUI画面においては、担当者の「A社の支店や営業所をまとめて。」との質問502に関し、知識ベース30にA社の支店や営業所に関する顧客情報が存在していなかったことから、言語モデル40はA社の支店や営業所については適切な回答を生成できず、AIからは「申し訳ありませんが、A社の支店や営業所に関する十分な情報がありませんでした。ご確認をお願いいたします。」との回答504が表示されたものとなっている。
【0092】
この回答504を受けた担当者は、例えばA社の支店や営業所の情報を調べるなどして、その情報を得ることができた場合、得られた支店や営業所の情報を入力欄501に追加入力する。この追加入力された情報は例えば日々の営業活動等に基づいて得られたいわば担当者知識・知見である。これにより顧客情報DB及び知識ベース30にもA社の支店や営業所に関する顧客情報が反映されるため、その反映後、言語モデル40は適切な回答を生成することが可能となる。例えば
図13に示すUI画面においては、担当者の「A社には大阪支店があります。」との応答505を受けて、顧客情報DB及び知識ベース30にA社の支店や営業所に関する顧客情報が反映され、言語モデル40がA社の支店や営業所について適切な回答を生成可能となったことで、AIからは「ありがとうございます。A社の顧客情報が更新されました。あらためて、A社の支店や営業所は、大阪支店があります。」との回答506が表示されたものとなっている。
【0093】
そしてこの回答506を受けた担当者は、例えば「事業内容に入力」との応答507を行うことで、AIからは「こちらの内容で、「事業内容」に入力いたします。」との回答508が表示される。そして支援サーバ20は、言語モデル40から受信した回答文をまとめて、事業性評価シートのシート項目「2.事業内容」に入力(転記)する。
【0094】
またUI画面上には、担当者が「AI回答の評価」操作補助を行うための「適正である」及び「適正でない」の選択ボタン509が設けられている。担当者が対話中に「適正である」又は「適正でない」の選択ボタンを適宜押下することで、当該AI回答(言語モデル40により生成された回答)が適切か否かを、支援サーバ20及び言語モデル40にフィードバックすることができる。この場合、例えば言語モデル40は、「適正である」とされたAI回答について次回以降も望ましい「回答」として学習し、「適正でない」とされたAI回答について次回以降は望ましくない「回答」として学習する。これにより、AIの回答に対して人の知識・知見をさらに反映させた、審査業務文書に求められるより専門性の高い回答文章を生成可能とする言語モデル40を構築することができる。
【0095】
またUI画面上には、担当者が「シート項目の入力」操作補助を行うための「事業内容に入力」、「別の質問をする」及び「修正する」の選択ボタン510が設けられている。担当者は、対話を通じて得られたAI回答をシート項目「事業内容」に入力してよいと判断した場合、「事業内容に入力」の選択ボタンを押下する。この入力指示を受けて、支援差叔母20は、「こちらの内容で、「事業内容」に入力いたします。」との回答508を行うとともに、当該AI回答(言語モデル40により生成された回答)を、事業性評価シートのシート項目「2.事業内容」に入力(転記)させることができる。
【0096】
一方これに対して、担当者が当該AI回答をシート項目「2.事業内容」に入力(転記)せずに例えば別の質問に切り替えたい場合、「別の質問をする」の選択ボタンを押下することで、AIにこれまでに得たAI回答をリセットさせることができる。
【0097】
なお、回答504を受けた担当者は、例えばA社の支店や営業所の情報を調べるなどして、その情報を得ることができた場合、直接、顧客情報DBにおけるA社の顧客情報に、支店や営業所の情報を追加入力してもよい。この場合、
図13に示すUI画面において担当者は「A社の顧客情報をDBに更新しました。」と応答505を行うことができる。この場合、顧客情報DB及び知識ベース30にA社の支店や営業所に関する顧客情報が反映されるため、応答505を受けて、同様に言語モデル40は適切な回答506を生成することが可能である。
【0098】
図14Aは、本実施形態に係るシート項目「6.SWOT分析」に対するUI画面例1を示す図である。次に例えば担当者がシート項目「6.SWOT分析」の「S(強み)」に対する回答を得たい場合、A社の「S(強み)」についての回答を求めるための質問511を入力欄501に入力する。
【0099】
支援サーバ20は、担当者により質問511が入力されると、当該シート項目「6.SWOT分析」の「S(強み)」に回答するための質問を生成(
図6のS3)、知識ベース30から質問に類似する質問関連情報を検索・取得(
図6のS4)、質問及び検索・取得した質問関連情報を言語モデル40に問い合わせ(
図6のS5)、言語モデル40から回答を受信(
図7のS21)し、受信した回答をAIの回答512として表示する。
【0100】
ここで、担当者はシート項目「6.SWOT分析」の「S(強み)」に入力(転記)される内容を一層充実させるべく、例えば「SWOT分析における着眼点を教えてください。」との質問513を入力欄501に入力する。SWOT分析(事業性評価)を行う際の着眼点をAIに回答させ、その着眼点の見地から、A社のSWOT分析におけるS(強み)をより明らかにしていこうとする意図である。
【0101】
支援サーバ20は、担当者により質問513が入力されると、SWOT分析における着眼点に回答するための質問を生成(
図6のS3)、知識ベース30から質問に類似する質問関連情報を検索・取得(
図6のS4)、質問及び検索・取得した質問関連情報を言語モデル40に問い合わせ(
図6のS5)、言語モデル40から回答を受信(
図7のS21)し、受信した回答をAIの回答514として表示する。なお上述したように、知識ベース30にはわが国内の全産業や全業種を網羅し、業種ごとに業界動向や情報分析、審査のポイントなどがまとめられた審査辞典情報が蓄積されており、支援サーバ20は、知識ベース30からA社の業種に対応する審査辞典情報から「事業性評価の着眼点」の情報を質問関連情報として検索・取得し、質問及び検索・取得した「事業性評価の着眼点」情報を言語モデル40に問いとして入力することができる。
【0102】
支援サーバ20は、言語モデル40から回答を受信し、例えば「中小メーカーであっても独自技術設備が誇れるか、特許権などを有する企業であるか、電材卸ルートの開拓などに努めているかが重要になります。」との回答514を表示する。
【0103】
またこのときのUI画面上には回答514に基づいて抽出生成された事業性評価の着眼点キーワードが選択ボタン515の形式で、支援サーバ20により表示される。例えば「A社の独自技術は?」「A社の特許出願件数は?」「A社の主要取引先は?」は、A社の業種における事業性評価を行うに際し、何れも重要な着眼点(トピック)である。担当者はA社のSWOT分析(事業性評価)に関し確認しておきたいと考える着眼点として、このうち例えば「A社の特許出願件数は?」との選択ボタンを押下することで、「A社の特許出願件数を教えてください。」との質問516を入力することができる。
【0104】
支援サーバ20は、担当者により質問516が入力されると、質問516に回答するための質問を生成、知識ベース30から質問に類似する質問関連情報を検索・取得、質問及び検索・取得した質問関連情報を言語モデル40に問い合わせ、言語モデル40から回答を受信し、受信した回答517を表示する。審査辞典情報から生成された事業性評価の着眼点を起点として、担当者はさらに質問及び回答の対話を重ねることで、当該シート項目に関するより詳細な回答を得る。
【0105】
ここで、例えば知識ベース30に質問516に関するナレッジデータが存在しない、不十分又は不正確といった場合、言語モデル40は適切な回答を生成できないため、AIからはその旨の回答が表示される。例えば
図14Aに示すUI画面においては、担当者の「A社の特許出願件数を教えてください。」との質問516に関し、知識ベース30にA社の特許出願件数に関する情報や外部参考資料(外部情報ソース)が存在していなかったことから、言語モデル40はA社の特許出願件数について適切な回答を生成できず、AIからは「申し訳ありません。A社の特許数に関する情報はデータベースにございません。ご希望のデータベースがありましたらソース欄にURLを記載してください。」との回答517が表示されたものとなっている。
【0106】
この回答517を受けた担当者は、例えばA社の特許数に関するデータベースのURL(Uniform Resource Locator)を調べるなどして、その情報ソースを得ることができた場合、知識ベースDB30に、当該外部情報ソースの追加登録(外部情報ソースのAPI追加リクエスト)を行う。担当者の「https://www...」との応答518は、例えば日々の営業活動等に基づいて得られたいわば担当者知識・知見である。これにより知識ベース30にもA社の特許数に関するデータベースの所在を示すURLが反映されるため、その反映後、言語モデル40は適切な回答を生成することが可能となる。例えば
図14Aに示すUI画面においては、担当者の「https://www...」との応答518を受けて、AIからは「ありがとうございます。利用可能になるまでしばらくお待ちください。」との回答519が表示されたものとなっている。
【0107】
図14Bは、本実施形態に係るシート項目「6.SWOT分析」に対するUI画面例2を示す図である。再び担当者は、例えば「A社の特許出願件数を教えてください。」との質問521を入力する。
【0108】
支援サーバ20は、担当者により質問521が入力されると、質問521に回答するための質問を生成、知識ベース30から質問に類似する質問関連情報(例えばA社の特許数に関するデータベースの所在を示すURL)を検索・取得、質問及び検索・取得した質問関連情報を言語モデル40に問い合わせ、言語モデル40から回答を受信し、受信した回答522を表示する。
【0109】
知識ベース30にA社の特許数に関するデータベースのURLが反映された後、言語モデル40は当該URLにアクセスが可能となり、適切な回答を生成することが可能となる。例えば
図14Bに示すUI画面においては、担当者の質問521を受けて、AIからは「特許情報xxxフォームによると、A社の特許出願件数は○件です。」との回答522が表示されたものとなっている。またさらに、知識ベース30に反映されたデータベースのURLはA社以外の特許出願件数の情報を取得可能であったことから、例えば担当者の「競合他社の特許出願件数を教えてください。」との質問523を受けて、AIからは「同情報源によると、B社の特許出願件数は○件、C社の特許出願件数は〇件です。」との回答524が表示されたものとなっている。
【0110】
次に担当者がこれまで得られたAI回答(A社のSWOT分析におけるS(強み))を修正したいと考える場合、「修正」の選択ボタンを押下することで「修正する」との応答525を発し、続いて例えば修正文を示す「・S(強み):同社の生産工場向けDX製品は、発売から急速に業界シェアを拡大しており、同社の大きく売上に寄与している。経営者は3年以内に業界トップシェア獲得を目標としており、実現される見込みが高いと予想される。
【0111】
・特許情報xxxフォームによると、A社の特許出願件数は○件です。同情報源によると、B社の特許出願件数は○件、C社の特許出願件数は〇件です。他社に比べ、特許出願件数は圧倒しており、研究開発への意欲の高さが伺えます。 ・現在A社では大胆なコストカット策が計画されており、利益率の改善が見込まれます。」との修正526を入力する。
【0112】
なお「他社に比べ、特許出願件数は圧倒しており、研究開発への意欲の高さが伺えます。」の追加修正文の部分は、質問521~回答524の対話に基づいて反映されたいわば担当者知識・知見である。また「・現在A社では大胆なコストカット策が計画されており、利益率の改善が見込まれます。」の追加修正文も、例えば日々の営業活動等に基づいて得られた担当者知識・知見ということができる。
【0113】
さらに担当者が「S(強み)に入力」の選択ボタンを押下することで「強みに入力」との応答527を発し、AIからは「こちらの内容で、「S(強み)」に入力いたします。」との回答528が表示される。そして支援サーバ20は、当該修正後のAI回答を、事業性評価シートのシート項目「6.SWOT分析」の「強み」に入力(転記)することができる。
【0114】
なお、
図14Bに示すUI画面上には、「S(強み)に入力」に加え、「W(弱み)に入力」の選択ボタン510が設けられている。例えばA社の強みを得るための質問をしている対話プロセスであっても得られたAI回答が必ずしも強みでなく、担当者がむしろこれは弱みであると判断した場合、「W(弱み)に入力」の選択ボタンを押下することで、当該AI回答(言語モデル40により生成された回答)を、事業性評価シートのシート項目「6.SWOT分析」の「W(弱み)」に入力(転記)させることができる。具体的に例えばAの特許出願件数が競合他社の特許出願件数に比べ、特許出願件数が少ない件数である旨の回答を得た場合である。
【0115】
図15は、本実施形態に係るシート項目「6.SWOT分析」に対するUI画面例3を示す図である。次に例えば担当者がシート項目「6.SWOT分析」の「W(弱み)」に対する回答を得たい場合、A社の「W(弱み)」についての回答を求めるための質問531を入力欄501に入力する。
【0116】
支援サーバ20は、担当者により質問531が入力されると、当該シート項目「6.SWOT分析」の「W(弱み)」に回答するための質問を生成(
図6のS3)、知識ベース30から質問に類似する質問関連情報を検索・取得(
図6のS4)、質問及び検索・取得した質問関連情報を言語モデル40に問い合わせ(
図6のS5)、言語モデル40から回答を受信(
図7のS21)し、受信した回答をAIの回答532として表示する。
【0117】
ここで、担当者はシート項目「6.SWOT分析」の「W(弱み)」に入力(転記)される内容を一層充実させるべく、例えば「会社の資金繰りに関しての着眼点を教えてください。」との質問533を入力欄501に入力する。会社の資金繰り評価を行う際の着眼点をAIに回答させ、その着眼点の見地から、A社のSWOT分析におけるW(弱み)になりうるかを明らかにしていこうとする意図である。
【0118】
支援サーバ20は、担当者により質問533が入力されると、A社の業種に対応する審査辞典情報から「会社の資金繰りの着眼点」の情報を取得し、取得した「会社の資金繰りの着眼点」が質問533とともにプロンプト内に埋め込んで、言語モデル40に問いとして入力する。
【0119】
支援サーバ20は、言語モデル40から回答を受信し、例えば「支払手形による決済の割合が高くないか。回収条件が長期化していないか。仕入先や販売先に対する前渡金手交等、商社金融が発生しているか。その頁金負担が過剰になっていないか。」との回答534を表示する。
【0120】
またこのときのUI画面上には回答534に基づいて抽出生成された資金繰りの着眼点キーワードが選択ボタン535の形式で表示されている。例えば「A社の支払手形の決済割合は?」「A社の回収条件は?」「A社の商社金融は?」は、会社の資金繰り評価を行うに際し、何れも重要な着眼点である。担当者はA社の資金繰りに関し確認しておきたいと考える着眼点として、このうち例えば「A社の支払手形の決済割合は?」との選択ボタンを押下することで、「A社の支払手形の決済割合を教えてください。」との質問536を入力することができる。
【0121】
支援サーバ20は、担当者により質問536が入力されると、質問536に回答するための質問を生成、知識ベース30から質問に類似する質問関連情報を検索・取得、質問及び検索・取得した質問関連情報を言語モデル40に問い合わせ、言語モデル40から回答を受信し、受信した回答537を表示する。審査辞典情報から生成された事業性評価の着眼点を起点として、担当者はさらに質問及び回答の対話を重ねることで、当該シート項目に関するより詳細な回答を得る。
【0122】
担当者が「W(弱み)に入力」の選択ボタンを押下することで、AIからは「こちらの内容で、「W(弱み)」に入力いたします。」との回答539が表示される。そして支援サーバ20は、当該AI回答を、事業性評価シートのシート項目「6.SWOT分析」の「弱み」に入力(転記)することができる。
【0123】
<総括>
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
事業性評価シートの作成に際し、金融機関担当者は対話形式のUI画面を通じてAIとの対話を重ねながら、シート項目に関して得られたAI回答の内容を1つ1つ確認を行ったうえで、担当者が納得した回答を対応するシート項目に入力(507、527、538)しこれを反映させることができる。
【0124】
またシート項目に関して得られたAI回答(512、531)に加え、金融機関担当者は当該担当者の知識・知見に基づく質問(513、516、521、523、536)を重ねていくプロセスにより、当該シート項目に関してさらなるAI回答(514、522、524)を得ることができる。
【0125】
また金融機関担当者はシート項目に関して得られたAI回答に対して、AI回答を担当者の知識・知見に基づいて修正(525、526)しつつ、対応するシート項目に入力(527)させることができる。
【0126】
また知識ベース30のナレッジデータが存在しない、不十分又は不正確といった場合、支援サーバ20が言語モデル40からシート項目について適切な回答(504、517)を得られない。対話形式のUI画面を通じ、AIは金融機関担当者に不足するナレッジデータの追加を促し、担当者は担当者の知識・知見に基づいて知識ベース30に不足するナレッジデータを追加(505、518)することができる。また知識ベース30の充実化ないし正確性向上等により、以降の事業性評価シート作成の精度向上・効率化が期待できる。
【0127】
以上本実施形態によれば、事業性評価シート作成において、対話形式のユーザインターフェースを通じ、AIと人(例えば金融機関担当者)との対話を重ねることで、AIの回答に対して人の知識・知見をさらに反映させ、事業性評価シート(シート項目)における一層の内容の充実化ないし正確性向上等を図ることが可能である。
【0128】
なお、本発明の好適な実施の形態により、特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【0129】
本実施形態に係る事業性評価シートは、審査業務文書の一例である。支援サーバ20により作成される審査業務文書は、融資審査のための融資稟議書そのものであってもよい。また各金融機関では、事業性評価シートを、「企業概要書」「審査表」「経営課題共有シート」「ヒアリングシート」などさまざまな名称で呼ぶことがある。
【0130】
(付記)
金融機関(銀行等)における審査業務文書作成支援装置(審査業務文書作成支援サーバ20)であって、
対話形式のUI画面を提供するUI提供手段と、(UI提供部211)
前記UI画面を介し、審査業務文書(事業性評価シート)のフォーマットに設けられた入力項目(回答入力項目)に関する質問文を入力する質問入力手段と、(質問入力部212)
前記質問文を言語モデル(ファインチューニング済み大規模言語モデル40)に回答させるための質問情報(プロンプト)を生成する質問生成手段と、(質問生成部203、S3)
前記言語モデルに、前記質問情報を送信する質問送信手段と、(質問送信部205、S5)
前記言語モデルから、前記質問情報に対応する回答情報を受信する回答受信手段と、(回答受信部206、S21)
前記UI画面を介し、前記回答情報に基づいて前記質問文に対応する回答文を出力する回答出力手段と、(回答出力部213)
前記UI画面を介し、前記入力項目に対する前記回答文の入力指示を入力する指示入力手段と、(指示入力部215)
前記入力指示に応じて、前記入力項目に、前記回答文に基づく入力情報を入力する回答入力手段と、(回答入力部207、S22)
を有することを特徴とする審査業務文書作成支援装置。
【符号の説明】
【0131】
10 金融機関システム
20 審査業務文書作成支援サーバ
30 知識ベース
40 ファインチューニング済み大規模言語モデル
50 端末
70 ネットワーク
100 審査業務文書作成支援システム
201 文書作成要求受信部
202 項目特定部
203 質問生成部
204 検索部
205 質問送信部
206 回答受信部
207 回答入力部
208 文書出力部
209 記憶部
211 UI提供部
212 質問入力部
213 回答出力部
214 修正回答入力部
215 指示入力部
216 知識入力部
217 知識反映部
218 自然言語処理部
【要約】
【課題】審査業務文書の作成における一層の内容の充実化ないし正確性向上等を図る。
【解決手段】本発明に係る金融機関における審査業務文書作成支援装置は、対話形式のUI画面を提供するUI提供手段と、UI画面を介し、審査業務文書のフォーマットに設けられた入力項目に関する質問文を入力する質問入力手段と、質問文を言語モデルに回答させるための質問情報を生成する質問生成手段と、言語モデルに、質問情報を送信する質問送信手段と、言語モデルから、質問情報に対応する回答情報を受信する回答受信手段と、UI画面を介し、回答情報に基づいて質問文に対応する回答文を出力する回答出力手段と、UI画面を介し、入力項目に対する回答文の入力指示を入力する指示入力手段と、入力指示に応じて、入力項目に、回答文に基づく入力情報を入力する回答入力手段と、を有する。
【選択図】
図13