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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】オゾン発生用電極
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/077 20210101AFI20241031BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20241031BHJP
   C25B 11/063 20210101ALI20241031BHJP
   C25B 1/13 20060101ALI20241031BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241031BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20241031BHJP
【FI】
C25B11/077
C25B11/052
C25B11/063
C25B1/13
C25B9/00 A
C02F1/461 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024530730
(86)(22)【出願日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2023022897
(87)【国際公開番号】W WO2024004776
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2022102527
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000198709
【氏名又は名称】石福金属興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】島 朋助
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡
(72)【発明者】
【氏名】石亀 弘基
(72)【発明者】
【氏名】亀ヶ谷 洋一
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151323(JP,A)
【文献】SHEKARCHIZADE, Hamed and AMINI, K. Mohammad,Effect of Elemental Composition on the Structure, Electrochemical Properties, and Ozone Production Activity of Ti/ SnO2-Sb-Ni Electrodes Prepared by Thermal Pyrolysis Method,International Journal of Electrochemistry,2011年12月21日,2011,hindawi.com/journals/ijelc/2011/240837/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 11/00
C25B 1/13
C25B 9/00
C02F 1/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンまたはチタン合金よりなる電極基体と,
前記電極基体上に設けられた,金属換算で,酸化スズ79.0モル%~90.0モル%,酸化アンチモン7.0モル%~17.0モル%,酸化ニッケル0.9モル%(ただし、0.9モル%を除く)~6.0モル%の触媒層とからなる,
ことを特徴とするオゾン発生用電極。
【請求項2】
電気二重層容量の値が2~40(mC/cm)であることを特徴とする請求項1記載のオゾン発生用電極。
【請求項3】
酸化スズ粒子と酸化アンチモン粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,ニッケル化合物を低級アルコールに溶解させた溶液を混合させた後,
前記混合液を,チタン基体上に塗布・乾燥してから,大気中,300℃~700℃で熱処理することを特徴とする請求項1または2記載のオゾン発生用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,オゾン水生成に用いられるオゾン発生用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
水の電気分解により発生する塩素を用いた次亜塩素酸殺菌水の利用が多くの分野で行われている。しかしながら,地域によっては市水中に塩素が含まれず電解前に塩を添加させなければならないという問題がある。そこで次亜塩素酸より殺菌力が強い物質としてオゾンを用いたオゾン水が着目されている。オゾン水生成法は現在大きく分けて2つの手法がある。1つは無声放電等の放電によりオゾンを発生させ,その後水に溶解させオゾン水を得る方法である。もう1つは水を電気分解することによりその陽極での反応で発生したオゾンが電解液である水に溶解し,オゾン水を得る方法である。
【0003】
前者の場合,気相中のオゾンが水に溶解しにくく,濃度調整が困難であるという問題がある。一方後者の場合,電解によりオゾン水を直接生成することができ,電解条件による濃度調整が容易である。
【0004】
水を電気分解する方法に関し,非特許文献1は,酸性の硫酸水溶液で白金線電極をアノードに用いた電気分解によってオゾンが発生することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】電気化学および工業物理化学,54(10),p890-895,1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の方法は電解液として酸性の硫酸水溶液を用いている。そこで,硫酸より取扱が容易な市水等の中性の水溶液中で,安定してオゾンを生成する電極が,強く望まれている。
【0007】
本発明の目的は,市水等の中性の水溶液中でも優れたオゾン発生効率を有し,且つ耐久性が優れるオゾン発生用電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは,チタンまたはチタン合金よりなる基体上に,金属換算で,酸化スズ79.0モル%~90.0モル%,酸化アンチモン7.0モル%~17.0モル%,酸化ニッケル0.1モル%~6.0モル%からなる触媒層を設けることで,市水中でのオゾン発生効率が高く,耐久性が優れた電極が得られることを見いだし,本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち,上記目的は,電解用電極において,
チタンまたはチタン合金よりなる電極基体と,
前記電極基体上に設けられた,金属換算で,酸化スズ79.0モル%~90.0モル%,酸化アンチモン7.0モル%~17.0モル%,酸化ニッケル0.1モル%~6.0モル%の触媒層とからなる,
ことを特徴とするオゾン発生用電極によって達成される。
【0010】
上記オゾン発生用電極は,電気二重層容量の値が2~40(mC/cm)である。
【0011】
また,上記目的は,
酸化スズ粒子と酸化アンチモン粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,ニッケル化合物を低級アルコールに溶解させた溶液を混合させた後,
前記混合液をチタン基体上に塗布・乾燥してから,大気中,300℃~700℃で熱処理することを特徴とするオゾン発生用電極の製造方法によって得られる。
【0012】
本発明によれば,市水等の中性の水溶液中でも優れたオゾン発生効率を有し,耐久性が優れたオゾン発生用電極を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は,
チタンまたはチタン合金よりなる電極基体と,
前記電極基体上に設けられた,金属換算で,酸化スズ79.0モル%~90.0モル%,酸化アンチモン7.0モル%~17.0モル%,酸化ニッケル0.1モル%~6.0モル%の触媒層とからなる,ことを特徴とするオゾン発生用電極である。
【0014】
また,本発明のオゾン発生電極の製造方法は,酸化スズ粒子および酸化アンチモン粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,ニッケル化合物を低級アルコールに溶解させた溶液を混合させた後,その混合液を,チタン基体上に塗布・乾燥してから,塗布・乾燥済みのチタン基体を,大気中,300℃~700℃で熱処理することを特徴とする。
【0015】
上記において,酸化スズ粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,酸化アンチモン粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,ニッケル化合物を低級アルコールに溶解させた溶液と,を混合させて混合液を作製してもよい。
【0016】
また,それらの混合液を,脱脂し,酸で粗面化したチタン基体上に塗布・乾燥してから,塗布・乾燥済みのチタン基体を,大気中,300℃~700℃で熱処理するようにしてもよい。
【0017】
以下,本発明のオゾン発生用電極およびその製造方法について説明する。
【0018】
〈電極基体〉
本発明において使用される電極基体の材質としては,チタンまたはチタン基合金が挙げられる。チタン基合金としては,チタンを主体とする耐食性のある導電性の合金が使用され,例えば,Ti-Ta-Nb,Ti-Zr,Ti-Al等の組合わせからなる,通常電極材料として使用されているTi基合金が挙げられる。これらの電極材料は板状,有孔板状,棒状,網板状等の所望形状に加工して電極基材として用いることができる。
【0019】
〈電極基体の前処理〉
上記の如き電極基体には,通常行われているように,予め前処理をするのが望ましい。そのような前処理の好適具体例としては以下に述べるものが挙げられる。先ず,前述したチタン又はチタン基合金よりなる電極基体(以下「チタン基体」ということがある)表面を常法に従い,例えばアルコール,アセトン等で洗浄し及び/又はアルカリ溶液中での電解により脱脂した後,フッ化水素濃度が1~20重量%のフッ化水素酸又はフッ化水素酸と硝酸,硫酸等の他の酸との混酸で処理することにより,チタン基体表面の酸化膜を除去するとともにチタン結晶粒界単位の粗面化を行う。該酸処理は,チタン基体の表面状態に応じて常温ないし約40℃の温度において数分間ないし十数分間行うことができる。なお,粗面化を十分行なうためにブラスト処理を併用してもよい。
【0020】
〈水素化チタン化処理〉
このように酸処理されたチタン基体表面を濃硫酸と接触させて,該チタン結晶粒界内部表面を突起状に細かく粗面化するとともに該チタン基体表面に水素化チタンの薄い層を形成する。使用する濃硫酸は一般に40~80重量%,好ましくは50~60重量%の濃度のものが適当であり,この濃硫酸には必要により,処理の安定化を図る目的で少量の硫酸ナトリウム,その他の硫酸塩等を添加してもよい。該濃硫酸との接触は通常チタン基体を濃硫酸の浴中に浸漬することにより行うことができ,その際の浴温は一般に約100~約150℃,好ましくは約110~約130℃の範囲内の温度とすることができ,また浸漬時間は通常約0.5~約10分間,好ましくは約1~約3分間で十分である。この硫酸処理により,チタン結晶粒界内部表面を突起状に細かく粗面化するとともに,チタン基体の表面にごく薄い水素化チタンの被膜を形成させることができる。硫酸処理されたチタン基体は硫酸浴から取り出し,好ましくは窒素,アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で急冷してチタン基体の表面温度を約60℃以下に低下させる。この急冷には洗浄も兼ねて大量の冷水を用いるのが適当である。
【0021】
このようにしてごく薄い水素化チタンの被膜層を表面に形成せしめたチタン基体は,希フッ化水素酸又は希フッ化物水溶液(例えば,フッ化ナトリウム,フッ化カリウム等の水溶液)中で浸漬処理して該水素化チタン被膜を生長させ,該被膜の均一化及び安定化を図る。ここで使用しうる希フッ化水素酸又は希フッ化物水溶液中のフッ化水素の濃度は,一般に0.05~3重量%,好ましくは0.3~1重量%の範囲内とすることができ,また,これらの溶液による浸漬処理の際の温度は,一般に10~40℃,好ましくは20~30℃の範囲とすることができる。該処理はチタン基体表面に,通常0.5~10ミクロン,好ましくは1~3ミクロンの厚さの水素化チタンの均一被膜が形成されるまで行うことができる。この水素化チタン(TiHy,ここでyは1.5~2の数である)は水素化の程度に応じて灰褐色から黒褐色を呈するので,上記範囲の厚さの水素化チタン被膜の生成は,経験的に該基体表面の色調の変化を標準色源との明度対比によってコントロールすることができる。
【0022】
〈触媒層の形成〉
次に,上記前処理されたチタン基体上に,酸化スズ粒子および酸化アンチモン粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,ニッケル化合物を低級アルコールに溶解させた溶液を混合させた混合液を,チタン基体上に塗布・乾燥,熱処理(焼成)して,酸化スズ,酸化アンチモン,酸化ニッケルからなる触媒層を形成せしめる。
【0023】
上記において,酸化スズ粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,酸化アンチモン粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,ニッケル化合物を低級アルコールに溶解させた溶液と,を混合させて混合液を作製してもよい。
【0024】
上記の溶液の溶媒としては,低級アルコールが好適であり,例えば,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール,イソブタノール又はこれらの混合物等が有利に用いられる。また,微細な酸化スズ粒子と微細な酸化アンチモン粒子を含む場合,分散剤を加えてもよい。分散剤はアセチルアセトン,アルキルエーテルカルボン酸等が使える。
【0025】
低級アルコール溶液中におけるスズ化合物とアンチモン化合物とニッケル化合物の合計の金属濃度は,一般に20~300g/L,好ましくは40~290g/Lの範囲内とすることができる。該金属濃度が20g/Lより低いと触媒担持効率が悪くなり,また300g/Lを越えると触媒が偏析しやすくなり,触媒活性,密着強度,担持量の不均一性等の問題が生ずる。
【0026】
チタン表面に上記溶液を塗布された基体は,必要により約20~約150℃の範囲内の温度で乾燥させた後,酸素含有ガス雰囲気中,例えば空気中で熱処理する。熱処理は,例えば電気炉,ガス炉,赤外線炉等の適当な加熱炉中で,一般に各金属化合物を分解し,各金属が安定な酸化物を形成する300℃以上,チタン基体の酸化が過度に厚く成長しない温度(700℃以下)に加熱することによって行うことができる。加熱時間は,熱処理すべき基体の大きさに応じて,大体3分~30分間程度とすることができる。この熱処理により,チタンの表面に酸化スズ,酸化アンチモン,酸化ニッケルからなる金属酸化物を形成担持させることができる。
【0027】
そして,1回の担持操作で充分量の酸化スズ,酸化アンチモン,酸化ニッケルからなる金属酸化物を形成担持することができない場合には,以上に述べた溶液の塗布・乾燥・熱処理の工程を所望の回数繰り返し行うことができる。
【0028】
酸化スズ,酸化アンチモン,酸化ニッケルからなる触媒層における,各成分の割合は,金属換算で,酸化スズ79.0モル%~90.0モル%,酸化アンチモン7.0モル%~17.0モル%,酸化ニッケル0.1モル%~6.0モル%とする。また,各成分の割合は,合計で100%とする。
【0029】
ここで上記酸化スズの割合は,別の態様として、金属換算で,79.0モル%超~90.0モル%未満であることができる。また、別の態様として、金属換算で,80.0モル%~89.7モル%であることができる。また、別の態様として、上記酸化スズの割合は,金属換算で,81.0モル%~89.5モル%であることができる。さらに、別の態様として、上記酸化スズの割合は,金属換算で,82.0モル%~89.0モル%であることができる。上記酸化スズの割合が,79.0モル%未満や,90.0モル%を超えると触媒層の耐久性が不十分になる。
【0030】
また上記酸化アンチモンの割合は,別の態様として,金属換算で,7.6モル%~16.0モル%であることができる。また別の態様として、上記酸化アンチモンの割合は,金属換算で,8.0モル%~15.0モル%であることができる。上記酸化アンチモンの割合が,7.0モル%未満や,17.0モル%を超えると触媒層の耐久性が不十分になる。
【0031】
更に上記酸化ニッケルの割合は,別の態様として,金属換算で,0.2モル%~5.5モル%であることができる。また別の態様として、上記酸化ニッケルの割合は,金属換算で,0.4モル%~2モル%であることができる。上記酸化ニッケルの割合が,0.1モル%未満や,6.0モル%を超えると触媒層の耐久性が不十分になる。
【0032】
本発明の製造方法では,微細な酸化スズ粒子と微細な酸化アンチモン粒子が分散した溶液,または,微細な酸化スズ粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,微細な酸化アンチモン粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,を用い,塗布,乾燥させた後熱処理して,触媒層を得ている。ここで用いる酸化スズ粒子と酸化アンチモン粒子の平均粒子径は10から300nmである。好ましくは40から150nmである。
【0033】
本発明のオゾン発生電極は,電気二重層容量の値が2~40(mC/cm)である。
【0034】
本発明のオゾン発生電極の製造方法は,酸化スズ粒子および酸化アンチモン粒子を低級アルコールに分散させた溶液(または,酸化スズ粒子を低級アルコールに分散させた溶液と,酸化アンチモン粒子を低級アルコールに分散させた溶液)と,ニッケル化合物を低級アルコールに溶解させた溶液を混合させた後,その混合液を,チタン基体上に塗布・乾燥してから,塗布・乾燥済みのチタン基体を,大気中,300℃~700℃で熱処理するところ,その溶液の塗布・乾燥・熱処理の工程の回数を増やして触媒層を厚くすると,電気二重層容量も増加する。上記塗布・乾燥・熱処理の工程の回数を数層~20層程度とすることにより,電気二重層容量の値を2~40(mC/cm)とすることができる。
なお、上記触媒層をより安定化させるため、大気中、500℃~700℃で2~20時間の後処理工程を加えてもよい。処理時間は、4~18時間とすることもできる。例えば、大気中、550℃で16時間の後処理を行うことができる。
【0035】
本発明のオゾン発生電極は,電気二重層容量の値が3~30(mC/cm)が好ましい。
【0036】
本発明の製造方法で作製した電極は,電気二重層容量が非常に大きいことが特徴である。
(1)電気二重層容量は電極の表面積と正の相関があり,電気二重層容量の大きい電極ほど触媒層の表面積が大きいと考えられる。
(2)電気二重層容量が大きく,すなわち触媒層の表面積が大きい場合,触媒の利用率が大きいことになる。触媒の利用率が大きいことで,多くの触媒活性点が反応に関与するため活性が向上し,単位面積あたりにかかる負荷が軽減されるため耐久性も向上すると推定される。
【実施例
【0037】
本発明を実施例により具体的に説明するが,本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
二酸化スズ粒子および五酸化アンチモン粒子を分散させたイソブタノール溶液(Sn濃度=197g/kg,Sb濃度=32g/kg)1gに塩化ニッケル(II)六水和物のエタノール溶液(Ni濃度=46g/kg) 0.012gを加え,31kHzの超音波を10分間照射し,塗布液を調合した。ここで使用したブタノール溶液中の二酸化スズ粒子と五酸化アンチモン粒子の平均粒子径を,レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置で測定したところ146nmであった。
次に,JIS1種相当のチタン板(t0.5mm×100mm×50mm)をアセトンに浸漬させ10分間超音波洗浄して脱脂した後,20℃の8重量%フッ化水素酸中で1分間処理し,次いで,120℃の60重量%硫酸水溶液中で1分間処理した。次いでチタン基体を,20℃の0.3重量%のフッ化水素酸中で45秒間処理した。
上記表面処理したチタン基体上に前記塗布液を0.13mL塗布し,室温で5分間乾燥してから,大気中,550℃で5分間処理した。
上記の工程を6回繰り返し,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ86.0モル%,酸化アンチモン13.5モル%,酸化ニッケル0.5モル%からなる金属酸化物を担持させた実施例1の電極を作製した。
【0039】
[実施例2]
塩化ニッケル(II)六水和物のエタノール溶液(Ni濃度=46g/kg) を加える量を0.023gに変更する点以外は実施例1と同様にして,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ85.6モル%,酸化アンチモン13.5モル%,酸化ニッケル0.9モル%からなる金属酸化物を担持させた実施例2の電極を作製した。
【0040】
[実施例3]
塩化ニッケル(II)六水和物のエタノール溶液(Ni濃度=46g/kg)を加える量を0.047gに変更する点以外は実施例1と同様にして,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ84.7モル%,酸化アンチモン13.4モル%,酸化ニッケル1.9モル%からなる金属酸化物を担持させた実施例3の電極を作製した。
【0041】
[実施例4]
塩化ニッケル(II)六水和物のエタノール溶液(Ni濃度=46g/kg) を加える量を0.071gに変更する点以外は実施例1と同様にして,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ83.9モル%,酸化アンチモン13.3モル%,酸化ニッケル2.8モル%からなる金属酸化物を担持させた実施例4の電極を作製した。
【0042】
[実施例5]
塩化ニッケル(II)六水和物のエタノール溶液(Ni濃度=46g/kg) を加える量を0.096gに変更する点以外は実施例1と同様にして,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ83.0モル%,酸化アンチモン13.2モル%,酸化ニッケル3.8モル%からなる金属酸化物を担持させた実施例5の電極を作製した。
【0043】
[実施例6]
二酸化スズ粒子および五酸化アンチモン粒子を分散させたイソブタノール溶液(Sn濃度=256g/kg,Sb濃度=27g/kg)1gに塩化ニッケル(II)六水和物のエタノール溶液(Ni濃度=46g/kg) 0.062gを加え,31kHzの超音波を10分間照射し,塗布液を調合した。ここで使用したブタノール溶液中の二酸化スズ粒子と五酸化アンチモン粒子の平均粒子径を,レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置で測定したところ146nmであった。
次に,JIS1種相当のチタン板(t0.5mm×100mm×50mm)をアセトンに浸漬させ10分間超音波洗浄して脱脂した後,20℃の8重量%フッ化水素酸中で1分間処理し,次いで,120℃の60重量%硫酸水溶液中で1分間処理した。次いでチタン基体を,20℃の0.3重量%のフッ化水素酸中で45秒間処理した。
上記表面処理したチタン基体上に前記塗布液を0.13mL塗布し,室温で5分間乾燥してから,大気中,550℃で5分間処理した。
上記の工程を6回繰り返し,最後に後処理工程として,大気中,550℃で16時間処理し,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ88.9モル%,酸化アンチモン9.1モル%,酸化ニッケル2.0モル%からなる金属酸化物を担持させた実施例6の電極を作製した。
【0044】
[実施例7]
塩化ニッケル(II)六水和物のエタノール溶液(Ni濃度=46g/kg) を加える量を0.159gに変更する点以外は実施例6と同様にして,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ86.2モル%,酸化アンチモン8.8モル%,酸化ニッケル5.0モル%からなる金属酸化物を担持させた実施例7の電極を作製した。
【0045】
[実施例8]
塗布焼成工程の回数が21回である点以外は実施例6と同様にして,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ88.9モル%,酸化アンチモン9.1モル%,酸化ニッケル2.0モル%からなる金属酸化物を担持させた実施例9の電極を作製した。
【0046】
[実施例9]
後処理工程の温度が650℃である点以外は実施例6と同様にして,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ88.9モル%,酸化アンチモン9.1モル%,酸化ニッケル2.0モル%からなる金属酸化物を担持させた実施例10の電極を作製した。
【0047】
[比較例1]
JIS1種チタン板(t0.5mm×100mm× 100mm)をアセトンに浸漬させ10分間超音波洗浄して脱脂した後,20℃の8重量%フッ化水素酸中で2分間処理し,次いで,120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間処理した。次いでそのチタン基体を硫酸水溶液から取りだし,窒素雰囲気中で冷水を噴霧し急冷した。更に20℃の0.3重量%弗化水素酸水溶液中に2分間浸漬した後水洗した。チタン基体の水洗後,ジニトロジアンミン白金を硫酸溶液に溶解して白金含有量5g/L,pH≒2,50℃に調整した状態の白金めっき浴中で電気めっきを行い,白金を6.5mg/cm担持した比較例1の電極を作製した。
【0048】
[比較例2]
エタノール34.5gに塩化スズ(IV)五水和物を14.770g,酸化アンチモン(III)を0.620g,塩化ニッケル(II)六水和物を0.107gを加え撹拌することで塗布液を調製した。
次に,JIS1種相当のチタン板(t0.5mm×100mm×100mm)をアセトンに浸漬させ10分間超音波洗浄して脱脂した後,20℃の8重量%フッ化水素酸中で1分間処理し,次いで,120℃の60重量%硫酸水溶液中で1分間処理した。次いでチタン基体を,20℃の0.3重量%のフッ化水素酸中で45秒間処理した。
上記表面処理したチタン基体上に前記塗布液を0.24mL塗布し,室温で10分間乾燥してから,大気中,550℃で10分間処理した。
上記の工程を14回繰り返し,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ93.0モル%,酸化アンチモン6.0モル%,酸化ニッケル1.0モル%からなる金属酸化物を担持させた比較例2の電極を作製した。
【0049】
[比較例3]
二酸化スズ粒子および五酸化アンチモン粒子を分散させたイソブタノール溶液(Sn濃度=256g/kg,Sb濃度=27g/kg)1gに塩化ニッケル(II)六水和物のエタノール溶液(Ni濃度=46g/kg) 0.009gを加え,31kHzの超音波を10分間照射し,塗布液を調合した。ここで使用したブタノール溶液中の二酸化スズ粒子と五酸化アンチモン粒子の平均粒子径を,レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置で測定したところ146nmであった。
次に,JIS1種相当のチタン板(t0.5mm×100mm×50mm)をアセトンに浸漬させ10分間超音波洗浄して脱脂した後,20℃の8重量%フッ化水素酸中で1分間処理し,次いで,120℃の60重量%硫酸水溶液中で1分間処理した。次いでチタン基体を,20℃の0.3重量%のフッ化水素酸中で45秒間処理した。
上記表面処理したチタン基体上に前記塗布液を0.13mL塗布し,室温で5分間乾燥してから,大気中,550℃で5分間処理した。
上記の工程を6回繰り返し,後処理工程を行わず,チタン基体上に金属換算で,酸化スズ90.5モル%,酸化アンチモン9.2モル%,酸化ニッケル0.3モル%からなる金属酸化物を担持させた比較例3の電極を作製した。
【0050】
<オゾン発生効率>
実施例1~5及び比較例1~2を陽極として用いて以下の条件で電解し,オゾン発生効率を求めた。電解液には,1L中に0.25mmolのMgSO,0.25mmolのNaHCO,0.25mmolのCaCl,0.025mmolのKHCOを含む水溶液150mlを用いた。そして電流密度2A/dmの定電流制御にて120秒間電解をした。その後,インジゴ法を用いてオゾン生成量を求め,オゾン発生効率を算出した。
【0051】
<耐久試験>
実施例1~5及び比較例1~2の各電極を陽極として用いて以下の条件で耐久試験を行い,
耐久試験前,および,耐久試験途中の実施例1~5及び比較例1~2のオゾン発生効率を上記方法で求めた。その結果を表1に示す。
電解液には,1L中に0.25mmolのMgSO,0.25mmolのNaHCO,0.25mmolのCaCl,0.025mmolのKHCOを含む水溶液150mlを用いた。そして,電流密度2A/dmの定電流制御にて電解した。
【0052】
<電気二重層容量の測定方法>
三電極式の電解セルを用いてCV(サイクリックボルタンメトリー)測定を行い,得られたサイクリックボルタモグラムから電気二重層容量を求めた。具体的には,実施例および比較例の電極(20×25 mm)を作用電極,参照電極に銀塩化銀電極,対極にはPt板を用いて,0.5M硫酸中で,電位範囲は0.8から1.3V(vs.Ag/AgCl),走査速度50mV/sでCV測定を行った。得られた電気二重層の充電と放電の電気量の和の1/2を求め,それを電極面積5cmで割って上記電極の電気二重層容量とした。得られた電気二重層容量(mC/cm)を表1に記載する。
【0053】
【表1】