(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】融合一本鎖DNAポリメラーゼBst、融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstをコードする核酸分子、その調製方法およびその利用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241031BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20241031BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20241031BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241031BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241031BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20241031BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N9/12
C12N15/54
C12N15/62 Z
C12P21/02 C
C12Q1/6844 Z
(21)【出願番号】P 2020571711
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 PL2019000046
(87)【国際公開番号】W WO2020005084
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-06
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】520498686
【氏名又は名称】インスティトゥト バイオテクノロジ アイ メディシニ モルクラネジ
【氏名又は名称原語表記】Instytut Biotechnologii i Medycyny Molekularnej
【住所又は居所原語表記】ul. Trzy Lipy 3 80-172 Gdansk, Poland
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】スピディーダ・マルタ
(72)【発明者】
【氏名】スゼミアコ・カスジャン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・オルスシェフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・ニドヴォルスキ
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-520461(JP,A)
【文献】国際公開第2013/033528(WO,A1)
【文献】PLOS ONE,2017年,Vol.12, No.9, e0184162,pp.1-17
【文献】NEQ199 [Nanoarchaeum equitans Kin4-M], ACCESSION No.AAR39053,GenBank[online],2014年1月30日(検索日:2023年4月24日)、<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/40068718?sat=49&satkey=38676405>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 9/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NeqSSBタンパク質
と一本鎖DNAポリメラーゼBst
とが、アミノ酸配列Gly-Ser-Gly-Gly-Val-Aspのリンカーを介して結合した融合
DNAポリメラーゼ
NeqSSB-Bstであって、
前記
一本鎖DNAポリメラーゼ
BstのN末端に、
前記リンカーを
介して前記NeqSSBタンパク質が結合し
ており、
前記ポリメラーゼは3つの異なる変種のうちの1つとして存在し、
前記3つの異なる変種は、
全長-点変異に起因して停止された5’-3’活性を有するDNAポリメラーゼBstの全アミノ酸配列;
長断片-5’-3’ドメインなしのDNAポリメラーゼBst;又は
短断片-両方のエキソ核酸分解ドメインが欠失した短いバージョン;
であり、
すべてのタイプのDNAおよびRNAと結合できる、融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst。
【請求項2】
SEQ1、SEQ2又はSEQ3で表される配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst。
【請求項3】
SEQ4で表される融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst全長をコードする核酸分子であって、前記融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst全長はSEQ1で表される配列である、核酸分子。
【請求項4】
SEQ5で表される融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst長断片をコードする核酸分子であって、前記融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst長断片はSEQ2で表される配列である、核酸分子。
【請求項5】
SEQ6で表される融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst短断片をコードする核酸分子であって、前記融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst短断片はSEQ3で表される配列である、核酸分子。
【請求項6】
請求項1に記載の融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstの調製方法であって、
第1の工程が、成長温度28~37℃、誘導後の媒体のインキュベーション時間が3~20時間、インダクター濃度が0.1~1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドである微生物振とう機内で最適化された条件にて酵素をコードする遺伝子を発現することを含み、
得られた細胞溶解物は、超音波を用いた分解および二本鎖DNA分解酵素を用いたDNA遺伝子汚染の除去を施され、
第2の精製工程は、ヒスチジン捕捉ビーズを用いた金属アフィニティークロマトグラフィーを利用し、
次の工程は3回の透析(10mMトリス塩酸 pH7.1,50mM塩化カリウム,1mM DTT,0.1mM EDTA,50%グリセリン、0.1%トリトンX-100)、ゲルろ過、および調製物の濃縮をカバーし、
すべてのプロセスは4℃で行われ、
得られたタンパク質の純度はSDS-PAGE電気泳動を用いて試験され、かつ、得られた調製物のユニットの数はEvaEZ蛍光定量ポリメラーゼ活性アッセイキットを用いて調製されたことを特徴とする融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstの調製方法。
【請求項7】
等温増幅反応において請求項1又は2で定義される融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstのインビトロでの利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合一本鎖DNAポリメラーゼBstおよびその調製方法に関する。本発明はまた、Bstポリメラーゼの3つの変種:全長(Full Length)、長断片(Large Fragment)、および短断片(Short Fragment)のうちの1つに係る融合ポリメラーゼNeqSSB-Bstをコードする核酸分子、および等温増幅反応に関する融合DNAポリメラーゼの利用に関する。
【0002】
DNAポリメラーゼはDNAの複製および修復のプロセスにおいて重要な役割を果たす酵素である。これらは科学の様々な分野で幅広く利用され、配列解析または様々なPCR(ポリメラーゼ連鎖反応法)変種に首尾よく活用されており、これらはインビトロでのDNA合成プロセスを触媒し、この反応は厳密に規定された熱ステージを有するサイクルで行われる。
【0003】
人気が高まっている別のアプローチは熱サイクルをベースとしないDNA増幅の等温技法におけるDNAポリメラーゼの利用であり、その反応は一定の伸び(elongation)温度で行われる。これまでにDNA増幅およびRNA増幅の両方についてこのような多くの技法が開発されてきた。
【0004】
所定の技法に対する適切なポリメラーゼの選択は主にその特性に依存する。基本的な重合能力のほかに、ポリメラーゼはまた、エキソ核酸分解ドメインの存在または逆転写酵素活性の存在に起因してDNA分子を加水分解する能力を示すことができる。これらの特徴はそれぞれのドメインの存在により決定される。これらの酵素に存在する基本的なドメインは重合ドメイン、ならびに3’-5’および5’-3’エキソ核酸分解ドメインである。
【0005】
エキソ核酸分解ドメインの欠失が天然酵素と比べて部分的に変化した特徴を有する目的機能タンパク質へと誘導するポリメラーゼが存在する。このタイプで最も人気が高いポリメラーゼはサーマス アクアティクス(Thermus aquaticus)細菌から単離されるTaqポリメラーゼであり、この発見は分子生物学を根本から変換させた。
【0006】
5’-3’エキソヌクレアーゼ活性なしでTaq 289ポリメラーゼは高い熱安定性を発揮し、その一方で、より多くのMg2+イオンを必要とし、新たに形成されたDNA鎖はエラーがより少ない。Bstポリメラーゼは等温増幅技法に用いられている。その天然型は不活性3’-5’エキソ核酸分解ドメインおよび活性5’-3’エキソ核酸分解ドメインを含み、73位(Tyr73->Phe73およびTyr73->Ala73)での点変異によって活性を停止させることができる。
【0007】
このポリメラーゼはTaqポリメラーゼと同様にファミリーAの一員であり、バチルス ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)細菌から単離される。その最適な活性は約60℃で、エキソヌクレアーゼ活性なしでそのポリメラーゼはLAMP反応にて非常に有用な鎖置換活性を示す。そのポリメラーゼはこのファミリーの他のポリメラーゼと比べて医療阻害剤または環境阻害剤に対して高い耐性を有するが、このポリメラーゼの用途を考慮すると、依然として、処理能力および阻害剤に対する抵抗性の改善へと主に導き得る解決策を探すことが重要である。
【0008】
NeqSSBタンパク質は一本鎖DNA結合(SSB)タンパク質ファミリーの一員である。SSBタンパク質は様々なアミノ酸配列および構造を有する。しかしながら、これらは依然として、約100個のアミノ酸からなる特徴的で高度に保存されたオリゴヌクレオチド/オリゴ糖結合(OB)折り畳みドメインを1つ含む。
【0009】
このドメインは一本鎖DNAに結合する能力を示すタンパク質に広く存在し、それゆえに、すべてのSSBタンパク質に基本的な共通点-一本鎖DNAの非特異的な結合と、ずっとのちに発見されたRNA結合能力を決定する。SSBタンパク質は一本鎖DNAと密に関連するプロセスで重要な役割を果たす。これらは複製、遺伝子組み換えおよびDNA修復においてきわめて重要である。これらのタンパク質は一本鎖DNAとの相互作用を担っており、副次的構造が生成するのを抑制し、核酸分解酵素による変質から保護する。
【0010】
SSBタンパク質の発見は1960年の前半に行われた。最初に発見されたSSBタンパク質はT4ファージおよび大腸菌のSSBタンパク質である。この発見の間に、一本鎖DNAと相互作用するこれらの高い相互作用能力と、高い塩濃度(2M 塩化ナトリウム)で一本鎖DNA-セルロースビーズを用いた高いタンパク質溶出能力とが判明した。
【0011】
加えて、このタンパク質は一本鎖DNAに対して非常に高い選択性があることも発見された。一本鎖DNAに関連するプロセスにおけるSSBタンパク質の基本的な役割として、これらのタンパク質はウイルスと同様にすべての生存生物に存在するという事実が確認された。
【0012】
SSBタンパク質と一本鎖DNAとの結合はオリゴヌクレオチド鎖の残基間の芳香族アミノ酸残基のパッキング(packing)に基づく。加えて、正に帯電したアミノ酸残基は一本鎖DNA分子のリン酸エステル骨格と相互作用する。
【0013】
NeqSSBタンパク質はSSBタンパク質のファミリーに属するという事実に関わらず、古典的なSSBタンパク質の特徴から外れるがゆえに、NeqSSB様タンパク質とよばれる。このタンパク質は超好熱性の古細菌ナノアーカエウム エクィタンス(Nanoarchaeum equitans)、クラエナーチェオン イグニコッカス ホスピタリス(craenarchaeon Ignicoccus hospitalis)の寄生生物に由来する。この微生物に対する最適な成長条件は90℃の温度での厳密な嫌気的条件を必要とする。
【0014】
興味深いことに、ナノアーカエウム エクィタンスは490,885個の塩基対からなる最も小さな既知のゲノムを含む。少ないゲノムを有する大部分の既知の生物と対照的に、この微生物は複製、修復、DNA組み換えに参加する酵素をフルセット含み、かつSSBタンパク質を含有する。
【0015】
このファミリーの他のタンパク質と同様に、NeqSSBタンパク質はDNAと結合する天然の活性を有する。NeqSSBタンパク質は243アミノ酸残基からなり、その構造中にOBドメインを1つ含み、いくつかのウイルス性SSBタンパク質の場合と類似して、モノマーとして生物学的に活性である。
【0016】
NeqSSBタンパク質は、他のSSBタンパク質と同様に、構造的な選択なしですべてのDNA型(一本鎖DNA、二本鎖DNA)およびmRNAの結合に関して並外れた能力を発揮するとの報告が示されている。加えて、このタンパク質は高い熱安定性を示す。生物学的活性を維持する半減期は100℃で5分であり、融点は100.2℃である。
【0017】
最新の診断技術、分子生物学、または遺伝子エンジニアリングによって課される要求に応えるために、これらの分野の科学において有用な特性を備えるDNAポリメラーゼを改良する必要がある。改良された緩衝液の導入、増幅反応のエンハンサー、またはDNAポリメラーゼの変異に主に焦点を当ててこれまでに修飾が導入された。変異は熱安定性および医療的サンプルまたは環境的サンプルに存在する阻害剤に対する抵抗性が高められた酵素の獲得へと導く。
【0018】
DNAポリメラーゼの活動メカニズムはいくつかの重要な工程を含む。第1の工程はDNAマトリックスへの酵素の接触からなる。3’位の水酸基(OH)末端がヌクレオチドのリン原子に求核攻撃する結果として、得られるDNA-DNA複合体はそれぞれのdNTP(デオキシリボヌクレオチド三リン酸)に関連する。最後の工程はホスホジエステル結合の生成およびピロリン酸の遊離へと導く。
【0019】
これらの酵素の重合活動の重要なステージのひとつは、これらの最終的な効率に寄与するものであり、マトリックスDNAとの結合に関連する初期プロセスである。その理由に起因して、既知のポリメラーゼの修飾は重合を受けるDNA鎖への結合を促進するように調整される。そのような修飾の例が、一本鎖DNAおよび/または二本鎖DNAと結合する天然の能力を示すタンパク質との融合DNAポリメラーゼの生成であろう。主にポリメラーゼ連鎖反応法に使用される熱安定性酵素とその大半が融合するような融合DNAポリメラーゼのいくつかの例のみを文献は表している。
【0020】
その研究はTaq,Pfu,TpaまたはKOD DNAポリメラーゼと超好熱性古細菌であるスルフォロバス ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus))由来のDNA結合タンパク質Sso7dとの融合がポリメラーゼの処理能力を5~17倍の増加へと導くことを示唆する。同様に、RB69バクテリオファージのDNAポリメラーゼの信頼度と処理能力の増加が、一本鎖DNAに結合する生来のSSBタンパク質(RB69SSB)と融合した後で観察された。
【0021】
欧州特許EP1934372B1は、古細菌スルフォロバス ソルファタリカスのSsoSSBタンパク質と融合したサーモコッカス ジリギ(Thermococcus zilligi)のDNAポリメラーゼが、修飾された酵素の効率および処理能力の増加を示すことを開示する。
【0022】
加えて、P.furiosusリガーゼのDBDドメインを用いた、すべての種類のDNAと結合が可能である、NeqSSBタンパク質とTaqStoffelポリメラーゼの融合が最近報告された。双方の融合は酵素の機能的特性の改善へと導き、特に天然酵素の処理能力および熱安定性を改善し、医療阻害剤(ラクトフェリン、ヘパリン、全血)への耐性を大きく向上させた。
【0023】
等温反応で用いられるBstおよび0029などの少数の融合ポリメラーゼも導入された。これらはメタノピラス カンドレリ(Methanopyrus kandleri)のトポイソメラーゼVのHhH(らせん-ヘパリン-らせん)ドメインを経由して繋がり、鎖置換活性に負の影響を与えることなくDNAに対するポリメラーゼの親和性を増加させた(融合ポリメラーゼBstおよび029に記載)。加えて、プラスミドおよびゲノムDNAを用いて、より高い信頼度と増幅効率が観察された(文献029の場合)。
【0024】
その文献はまた、ゲオバシルス(Geobacillu)sp.777から単離されたBst様ポリメラーゼの融合を表す。リガーゼであるピロコッカス アビシ(Pyrococcus abyssi)のDBDドメインを有するポリメラーゼとSto7dタンパク質とのキメラが生成され、天然のポリメラーゼと比較して処理能力および阻害剤(尿素、全血、ヘパリン、EDTA、塩化ナトリウムおよびエタノール)への抵抗性の増加を示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【非特許文献】
【0026】
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【文献】Riggs M. G., Tudor S., Sivaram M., McDonough S. H. Construction of single amino acid substitution mutants of cloned Bacillus stearothermophilusDNA polymerase I which lack 5'- 3' exonuclease activity. Biochim Biophys Acta, 1996; 1307(2): 178-86.
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【文献】Tveit H., Kristensen 1., Fluorescence-Based DNA Polymerase Assay. Anal Biochem. 2001;289:96-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、あらゆる種類のDNAおよびRNAに結合するNeqSSBタンパク質との融合DNAポリメラーゼBstを提供することである。驚くべきことに、この問題は本発明にて高い程度まで解決された。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明はあらゆる種類のDNAおよびRNAに結合するNeqSSBタンパク質との融合DNAポリメラーゼBstに関する。3つのBstポリメラーゼ変種が修飾を施された:全長-点変異に起因して停止された5’-3’活性を有するDNA I Bstポリメラーゼの全アミノ酸配列;長断片-5’-3’ドメインがないDNA I Bstポリメラーゼ;短断片-両方のエキソ核酸分解ドメインを欠失する短いバージョン。Bstポリメラーゼのすべての変種は6つのアミノ酸からなるリンカーを用いて前記ポリメラーゼのN末端にてNeqSSBタンパク質と融合する。
【0029】
本発明の本質は、NeqSSBタンパク質または50%以下の割合でNeqSSBに類似する配列を有するタンパク質と結合する一本鎖DNAポリメラーゼBstまたはこのクラスのDNAポリメラーゼとは別のポリメラーゼの融合ポリメラーゼであって、前記ポリメラーゼのN末端にて、代表的なアミノ酸配列Gly-Ser-Gly-Gly-Val-Aspのリンカーを用いて結合するか、またはリンカーを介さずに直接融合され、前記ポリメラーゼは3つの異なる変種として存在する。
【0030】
融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstは3つのBstポリメラーゼの変種:
全長-点変異に起因して停止された5’-3’活性を有するDNAポリメラーゼI Bstの全アミノ酸配列;
長断片-5’-3’ドメインなしのDNAポリメラーゼI Bst;
短断片-両方のエキソ核酸分解ドメインが欠失した短いバージョン;
のうちの1つを含む。
【0031】
あらゆる種類のDNAおよびRNAに結合する融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst。
SEQ.1で表される配列を有する融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst。
SEQ.2で表される配列を有する融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst。
SEQ.3で表される配列を有する融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst。
SEQ.4で表される融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstの全長をコードする核酸分子。
SEQ.5で表される融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstの長断片をコードする核酸分子。
SEQ.6で表される融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstの短断片をコードする核酸分子。
【0032】
上記融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstをコードする核酸分子。
【0033】
上記融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstの調製方法は、第1の工程が、成長温度が28~37℃、誘導後の媒体のインキュベーション時間が3~20時間、インダクター濃度が0.1~1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドである微生物振とう機内で最適化された条件にて酵素をコードする遺伝子を発現することを含み、
得られた細胞溶解物は、超音波を用いた分解および二本鎖DNA分解酵素を用いたDNA遺伝子汚染の除去を施される。
【0034】
第2の精製工程はヒスチジン捕捉ビーズを用いた金属アフィニティークロマトグラフィーを利用し、
次の工程は3回の透析(10mMトリス塩酸 pH7.1,50mM塩化カリウム,1mM DTT,0.1mM EDTA,50%グリセリン、0.1%トリトン(Triton)X-100)、ゲルろ過および調製物の濃縮をカバーする。
【0035】
すべてのプロセスは4℃で行われ、
得られたタンパク質の純度はSDS-PAGE電気泳動を用いて試験され、かつ、得られた調製物のユニットの数はEvaEZ蛍光定量ポリメラーゼ活性アッセイキットを用いて決定された。
【0036】
等温増幅反応に関する上記融合一本鎖DNAポリメラーゼBstのインビトロでの利用。
【図面の簡単な説明】
【0037】
[配列および図面の説明]
Seq.1は融合ポリメラーゼNeqSSB-Bst全長のアミノ酸配列を表す。
Seq.2は融合ポリメラーゼNeqSSB-Bst長断片のアミノ酸配列を表す。
Seq.3は融合ポリメラーゼNeqSSB-Bst短断片のアミノ酸配列を表す。
Seq.4は融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst全長をコードする遺伝子の配列を表す。
Seq.5は融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst長断片をコードする遺伝子の配列を表す。
Seq.6は融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst短断片をコードする遺伝子の配列を表す。
【0038】
【
図1】
図1は融合DNAポリメラーゼの精製の個々のステージ由来のタンパク質の電気泳動による10%ポリアクリルアミドゲル分離を表す。M-標準的なタンパク質の質量を有するタンパク質質量マーカー(サーモ-フィッシャー サイエンティフィック):116;66,2;45;35;25;18.4;14.4kDa;1-遺伝子組み換え大腸菌TOP10F’-pETNeqSSB-Bst株の無細胞抽出物全体;2-予備的な熱変性を施した無細胞抽出物全体3-ヒスチジン捕捉カラムと結合しないフラクション4-40mMのイミダゾールを含むヒスチジン捕捉ビーズの洗浄フラクション5-100mMのイミダゾールを含むヒスチジン捕捉ビーズの洗浄フラクション6-500mMのイミダゾールを用いた溶出後の融合DNAポリメラーゼを含有する回収されたフラクション
【
図2】
図2はDNAポリメラーゼユニット数の計算を可能にする融合DNAポリメラーゼに対するDNA増幅から開始する時間ごとのエヴァグリーン(EvaGreen)染料蛍光に関するチャートを表す。例は、カーブに対して反応に使用されたDNAポリメラーゼの量(マイクロリットル)を示す。
【
図3】
図3は様々な発現条件に対する溶解物の電気泳動による10%ポリアクリルアミドゲル分離を表す。M-標準的なタンパク質の質量を有するタンパク質質量マーカー(サーモ-フィッシャー サイエンティフィック):116;66,2;45;35;25;18.4;14.4kDa;1-誘導前の遺伝子組み換え大腸菌TOP10F’-pETNeqSSB-Bst株の無細胞抽出物全体;2-1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから3時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は28℃で誘導された。3-1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから4時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は28℃で誘導された。4-1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから5時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は28℃で誘導された。5-1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから6時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は28℃で誘導された。6-1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから20時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は28℃で誘導された。7-0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから3時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は28℃で誘導された。8-0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから4時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は28℃で誘導された。9-0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから5時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は28℃で誘導された。10-0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから6時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は28℃で誘導された。11-0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから20時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は28℃で誘導された。12-誘導前の遺伝子組み換え大腸菌TOP10F’-pETNeqSSB-Bst株の無細胞抽出物全体;13-1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから3時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は37℃で誘導された。14-1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから4時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は37℃で誘導された。15-1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから5時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は37℃で誘導された。16-1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから6時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は37℃で誘導された。17-1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから20時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は37℃で誘導された。18-誘導前の遺伝子組み換え大腸菌TOP10F’-pETNeqSSB-Bst株の無細胞抽出物全体;19-0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから3時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は37℃で誘導された。20-0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから4時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は37℃で誘導された。21-0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから5時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は37℃で誘導された。22-0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから6時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は37℃で誘導された。23-0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトシドで誘導してから20時間後の無細胞抽出物全体であり、発現は37℃で誘導された。
【
図4】
図4は対照例であるDNAポリメラーゼI Bstと比較した、温度の増加に伴う融合DNAポリメラーゼ活性の変化を表すグラフである。青線はDNAポリメラーゼI Bstの結果を表し、赤線は融合DNAポリメラーゼBst全長を表し、紫線は融合DNAポリメラーゼBst長断片を表し、緑線は融合DNAポリメラーゼBst短断片を表す。活性はアガロースゲルにおいて得られたPCR生成物の強度に基づくゲルアナライザー(GelAnalyzer)プログラムを用いて評価される。
【
図5】
図5は等温PCRの間の増幅率として定義されたDNAポリメラーゼの処理能力の比較を表す臭化エチジウムを用いた1.5%アガロースゲル中での電気泳動分離を示す。反応は下線で示す様々な周期で行われた。
【
図6】
図6は阻害剤:血中ラクトフェリン(A)、土壌ポリフェノール(B)に対するDNAポリメラーゼ抵抗性の比較を表す1.5%アガロースゲル中での電気泳動分離を示す。A:1-6μgのラクトフェリンを追加したDNA増幅の結果として生じた反応生成物2-0.6μgのラクトフェリンを追加したDNA増幅の結果として生じた反応生成物3-0.06μgのラクトフェリンを追加したDNA増幅の結果として生じた反応生成物4-6ngのラクトフェリンを追加したDNA増幅の結果として生じた反応生成物K
+-阻害剤の添加なしでのDNA増幅中に生じた反応生成物 B:1-100μgのポリフェノールを追加したDNA増幅の結果として生じた反応生成物2-10μgのポリフェノールを追加したDNA増幅の結果として生じた反応生成物3-1μgのポリフェノールを追加したDNA増幅の結果として生じた反応生成物4-0.1μgのポリフェノールを追加したDNA増幅の結果として生じた反応生成物5-0.01μgのポリフェノールを追加したDNA増幅の結果として生じた反応生成物K
+-阻害剤の添加なしでのDNA増幅中に生じた反応生成物
【
図7】
図7は、融合DNAポリメラーゼの存在下でDNA電気泳動の移動度シフトアッセイの結果を表す臭化エチジウムを用いた2%アガロースゲルでの電気泳動分離を示す。反応混合物は10pmol(dT
76)のフルオロセイン標識化物(緑)および100塩基対の2.5pmolのPCR産物(橙)を含んでいた。1-d(T)
762-100塩基対3-d(T)
76+100塩基対+3.3pmolの融合DNAポリメラーゼ4-d(T)
76+100塩基対+6.6pmolの融合DNAポリメラーゼ5-d(T)
76+100塩基対+13.2pmolの融合DNAポリメラーゼ6-d(T)
76+100塩基対+26.4pmolの融合DNAポリメラーゼ7-d(T)
76+100塩基対+52.8pmolの融合DNAポリメラーゼ8-d(T)
76+100塩基対+105.6pmolの融合DNAポリメラーゼ9-d(T)
76+100塩基対+211.2pmolの融合DNAポリメラーゼ
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明を実施形態によって説明する。本発明は実施形態を含むが、本発明は実施形態に限定されない。
【実施例】
【0040】
<融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bst>
融合DNAポリメラーゼNeqSSB-Bstは以下の配列:Gly-Ser-Gly-Gly-Val-Aspの6つのアミノ酸からなるリンカーを用いてポリメラーゼのN末端でNeqSSBタンパク質と3つの多様なBstポリメラーゼとを融合することにより得られた。融合DNAポリメラーゼの3つの変種の配列は図面、SEQ.1-3(アミノ酸配列)およびSEQ.4-6(ヌクレオチド配列)に表されている。DNAポリメラーゼは大腸菌をベースとする原核生物系で実験室規模にて得られた。
【0041】
[調製-実施例1]
DNAポリメラーゼの調製の第1工程は、成長温度が30℃、誘導後の媒体のインキュベーション時間が3~20時間、インダクター濃度が0.1~1mMのイソプロピル-β-D-チオグリコシドである微生物振とう機内で最適化された条件にて酵素をコードする遺伝子を発現することを含む。
【0042】
タンパク質精製プロセスにおいて、得られた細胞溶解物は超音波を用いた分解および二本鎖DNA分解酵素を用いたDNA遺伝子汚染の除去を施される。オリゴヒスチジンドメインが存在するおかげで、第2の精製工程はヒスチジン捕捉ビーズを用いた金属アフィニティークロマトグラフィーを利用する(
図1)。
【0043】
次の工程は、DNAポリメラーゼに対する安定性を備える条件が得られるまで3回の透析(10mMトリス塩酸 pH7.1,50mM塩化カリウム,1mM DTT,0.1mM EDTA,50%グリセリン、0.1%トリトンX-100)、ゲルろ過および調製物の高密度化をカバーする。すべてのプロセスは4℃で行われた。
【0044】
得られたタンパク質の純度はSDS-PAGE電気泳動を用いて試験され、かつ、得られた調製物のユニットの数はBiotium社(アメリカ合衆国)のEvaEZ蛍光定量ポリメラーゼ活性アッセイキットを用いて、ユニットの定義(1活性ユニット[1U]は最適な操作温度65℃にて30分間、10nmolのヌクレオチドを取り込むことができるDNAポリメラーゼの量(
図2))にしたがって決定された。1Lの実験室規模の培地は増幅反応の各々の数を可能にする、約10,000Uの活性を有する約5mgの精製調製物を備える。
【0045】
[調製-実施例2]
融合DNAポリメラーゼをコードする遺伝子の発現は、28℃の温度で液状培地の適切な酸素添加を備える条件で行われた。1mM~0.1mMの範囲のイソプロピル-β-D-チオガラクトシド、3~20時間のインキュベーションでタンパク質発現を提供する量のイソプロピル-β-D-チオガラクトシドを用いて対数増殖期の培地を誘導した(
図3)。
【0046】
その後、細胞溶解物を機械的に分解し、金属アフィニティークロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを用いて精製した。得られた融合DNAポリメラーゼは保存条件(10mMトリス塩酸 pH7.1,50mM塩化カリウム,1mM DTT,0.1mM EDTA,50%グリセリン、0.1%トリトンX-100)のために透析を施され、ユニットの定義にしたがって、市販のBiotium社(アメリカ合衆国)のEvaEZ蛍光定量ポリメラーゼ活性アッセイキットに基づいて1U/μLの濃度で供された。
【0047】
[調製-実施例3]
NeqSSBタンパク質と融合させたポリメラーゼBstをコードする遺伝子の効率的な発現は37℃の培地で3~20時間、1mM~0.1mMの範囲のイソプロピル-β-D-チオガラクトシドの誘導により得られた(
図3)。
【0048】
遠心分離処理され、機械的に粉砕された細胞溶解物はクロマトグラフィー技法(金属アフィニティークロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィー)を用いて精製され、製剤緩衝液(10mMトリス塩酸 pH7.1,50mM塩化カリウム,1mM DTT,0.1mM EDTA,50%グリセリン、0.1%トリトンX-100)中に懸濁させて、1U/μLの濃度で供された。DNAユニットの量はBiotium社(アメリカ合衆国)のEvaEZ蛍光定量ポリメラーゼ活性アッセイキットを用いてユニットの定義に基づいて同定された。
【0049】
対照例であるDNAポリメラーゼBstとの比較における本発明の主題に係る酵素特性の分析によれば、追加されたDNA結合NeqSSBタンパク質の存在は、DNAポリメラーゼ特性にプラスの効果をもたらすことを示している。対照例であるDNAポリメラーゼBstと比較して、得られたすべてのDNAポリメラーゼの融合変種の熱安定性は約20%増加した(
図4)。
【0050】
加えて、NeqSSBタンパク質と融合させたDNAポリメラーゼは3倍の処理能力を示した(
図5)。融合DNAポリメラーゼは反応混合物中で医療阻害剤(ラクトフェリン、ヘパリン)および環境阻害剤(フミン酸、土壌、ポリフェノール)の濃度に耐性を有し、対照例のポリメラーゼと比べて数十倍も耐性が増加した(
図6)。融合DNAポリメラーゼは対照例のDNAポリメラーゼBstと比較して数倍の感度増加を示したことから、DNAマトリックスに対する親和性が増加した。
【配列表】