(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】吸排気弁
(51)【国際特許分類】
F16K 27/02 20060101AFI20241031BHJP
F16K 24/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16K27/02
F16K24/00 S
(21)【出願番号】P 2020170456
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390006736
【氏名又は名称】株式会社日邦バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】粟津原 光明
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特許第3253491(JP,B2)
【文献】特開平04-004374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/02
F16K 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立て管に接続される接続管部分、および吸排気口を備えるハウジングと、
前記ハウジングの内部に区画された弁室と、を有し、
前記弁室の底には、前記接続管部分を介して前記立て管に連通する連通口が設けられ、
前記弁室の天井には、前記吸排気口に連通する空気孔が設けられ、
前記ハウジングにおいて、上下方向で前記連通口と前記空気孔との間に位置するハウジング部分には、前記弁室と前記ハウジングの外とを連通させる開口部が設けられ、
前記開口部には、当該開口部を封鎖するプラグが着脱可能に取り付けられていることを特徴とする吸排気弁。
【請求項2】
前記接続管部分は、前記立て管に同軸に接続され、
前記ハウジング部分は、前記開口部として、前記接続管部分の軸線回りの異なる第1開口部および第2開口部を備え、
前記第1開口部と前記第2開口部とは、前記上下方向で同一の高さ位置に設けられ、
前記第1開口部および前記第2開口部には、それぞれ前記プラグが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸排気弁。
【請求項3】
前記第1開口部と前記第2開口部とは、前記軸線を挟んで反対側に位置することを特徴とする請求項2に記載の吸排気弁。
【請求項4】
前記弁室内に昇降可能に配置されて前記空気孔を開閉する遊動弁体と、
前記遊動弁体に設けられて前記空気孔と前記連通口とを連通させる副空気孔と、
前記遊動弁体に下方から当接可能な状態で前記弁室内に配置され、前記弁室内の水面の昇降に伴って昇降するフロートと、
前記フロートの移動によって前記副空気孔を開閉する弁機構と、を有し、
前記弁機構が前記副空気孔を閉鎖した状態で前記遊動弁体が前記空気孔を閉鎖したときに、前記水面は、前記開口部に達していることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の吸排気弁。
【請求項5】
前記弁機構が前記副空気孔を閉鎖した状態で前記遊動弁体が前記空気孔を閉鎖したときに、前記水面は、前記開口部よりも上方に位置することを特徴とする請求項4に記載の吸
排気弁。
【請求項6】
前記弁機構は、前記副空気孔を閉鎖する閉位置と当該副空気孔を開く開位置との間で変位可能な状態で前記遊動弁体に保持された弁体と、前記フロートが前記遊動弁体に当接しているときに前記弁体を前記閉位置に維持し、前記フロートが前記遊動弁体から下方に離間すると前記弁体を前記開位置に移動させるリンク機構と、を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の吸排気弁。
【請求項7】
前記副空気孔は、前記遊動弁体を
前記上下方向に貫通し、
前記弁機構は、前記副空気孔の下端開口を囲む弁座と、前記フロートの上面に設けた弁部と、を備え、
前記フロートは、前記遊動弁体に当接した状態において、前記弁部が前記弁座に当接して前記副空気孔を閉鎖する閉位置と、前記弁部と前記弁座との間に隙間が形成される開位置との間を移動することを特徴とする請求項4または5に記載の吸排気弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水用の立て管の最頂部に取り付けられる吸排気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンションなどの給水系では給水用の立て管の最頂部に吸排気弁が取り付けられている。吸排気弁は、断水などにより給水圧力が低下した場合に、吸排気口から吸気を行って立て管内の負圧を解消して、各戸の末端の給水用具から立て管へ水が逆流することを防止する。また、吸排気弁は、立て管の充水時に、吸排気口から排気を行って立て管内の空気を排出する。
【0003】
このような吸排気弁は、特許文献1に記載されている。同文献の吸排気弁は、吸排気口を備えるハウジングと、ハウジング内に区画された弁室と、を備える。弁室の天井には、吸排気口に連通する空気孔が設けられており、底部には、立て管に連通する連通口が設けられている。弁室内には、遊動弁体と、フロート弁体と、が配置されている。遊動弁体は天井における空気孔の開口縁に下方から当接可能である。また、遊動弁体は、空気孔に連通する副空気孔を備える。副空気孔は、遊動弁体を上下方向に貫通する。フロート弁体は、遊動弁体の下方に配置されており、弁室内の水面の昇降に伴って昇降する。
【0004】
立て管に充水が行われ、水が吸排気弁に達すると、フロート弁体は水面の上昇とともに浮上する。そして、フロート弁体は、遊動弁体に下方から当接して、遊動弁体を上方に移動させる。遊動弁体が上方に移動する際に、フロート弁体は副空気孔を閉鎖する。その後、遊動弁体は弁室の天井に当接して、空気孔を閉鎖する。遊動弁体が空気孔を閉鎖すると、弁室内の圧力と外部の圧力とが均衡して弁室内の水面は所定の高さに維持される。ここで、立て管への充水後に、立て管内の水に混入した空気が弁室内に溜まると、水面が下がる。このような状態となると、遊動弁体による空気孔の閉鎖が維持されたまま、フロート弁体が傾いて副空気孔を開く。従って、立て管から弁室内に移動した空気は、副空気孔から、空気孔および吸排気口を介して、外部に排出される。副空気孔から空気が排出さると、弁室内の水面が上昇する。従って、フロート弁体の姿勢は元に戻り、副空気孔が閉鎖される。このような副空気孔を開閉する動作を繰り返すことにより、吸排気弁は、脈動や腐食などの要因となる空気を立て管の内部から自動的に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸排気弁の弁室には、立て管からの水とともに、水に混入した異物が侵入することがある。ここで、弁室に侵入した異物がフロート弁体の上面などに付着すると、異物が副空気孔とフロート弁体との間に噛み込まれ、副空気孔を閉鎖できなくなる可能性がある。従って、吸排気弁では、定期的に、弁室に侵入した異物を除去することが望まれる。しかし、弁室から異物を除去するためには、立て管から吸排気弁を取り外し、ハウジングを分解するなどして、弁室内を洗浄しなければならない。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、立て管から取り外すことなく、弁室に侵入した異物を除去できる吸排気弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の吸排気弁は、立て管に接続される接続管部分、および吸排気口を備えるハウジングと、前記ハウジングの内部に区画された弁室と、を有し、前記弁室の底には、前記接続管部分を介して前記立て管に連通する連通口が設けられ、前記弁室の天井には、前記吸排気口に連通する空気孔が設けられ、前記ハウジングにおいて、上下方向で前記連通口と前記空気孔との間に位置するハウジング部分には、前記弁室と前記ハウジングの外とを連通させる開口部が設けられ、前記開口部には、当該開口部を封鎖するプラグが着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の吸排気弁は、内部に弁室が区画されたハウジングに、弁室とハウジングの外とを連通させる開口部が設けられている。従って、立て管に吸排気弁を取り付けて充水した後に弁室に異物が侵入した場合には、開口部に取り付けられたプラグを外して開口部を解放することにより、弁室内の水を開口部を介して外に流出させることができる。これにより、弁室内に侵入した異物を弁室内から除去できるので、異物を除去するために吸排気弁を立て管から取り外す必要がない。
【0010】
ここで、立て管の最頂部分は、一般的に、電気メーター、情報系統の配線、給湯器、ガスメーターなどが設置されたパイプシャフト内に配管される。従って、吸排気弁に設けた開口部からプラグを取り外す作業は、パイプシャフト内の比較的狭いスペースで行うことになる。よって、立て管の最頂部分に接続管部分を同軸に接続したときに、軸線回りのハウジングの向きによっては、開口部に取り付けられたプラグを操作するスペースがない場合がある。かかる問題に対し、本発明では、前記接続管部分は、前記立て管に同軸に接続され、前記ハウジング部分は、前記開口部として、前記接続管部分の軸線回りの異なる第1開口部および第2開口部を備え、前記第1開口部と前記第2開口部とは、前記上下方向で同一の高さ位置に設けられ、前記第1開口部および前記第2開口部には、それぞれ前記プラグが取り付けられているものとすることができる。このようにすれば、ハウジング部分の周方向の異なる位置に複数の開口部が設けられる。従って、一の開口部においてプラグを操作するスペースがない場合に、他の開口部に取り付けられたプラグを操作して、当該開口部を開放させることができる。
【0011】
この場合において、前記第1開口部と前記第2開口部とは、前記軸線を挟んで反対側に位置するものとすることができる。このようにすれば、第1開口部と第2開口部とが離間するので、一の開口部においてプラグを操作するスペースがない場合に、他の開口部に取り付けられたプラグを操作できる可能性がある。
【0012】
本発明において、前記弁室内に昇降可能に配置されて前記空気孔を開閉する遊動弁体と、前記遊動弁体に設けられて前記空気孔と前記連通口とを連通させる副空気孔と、前記遊動弁体に下方から当接可能な状態で前記弁室内に配置され、前記弁室内の水面の昇降に伴って昇降するフロートと、前記フロートの移動によって前記副空気孔を開閉する弁機構と、を有し、前記弁機構が前記副空気孔を閉鎖した状態で前記遊動弁体が前記空気孔を閉鎖したときに、前記水面は、前記開口部に達しているものとすることができる。すなわち、立て管への充水後に、弁機構が副空気孔を閉鎖した状態で遊動弁体が空気孔を閉鎖すると、弁室内の圧力とハウジングの外の大気圧とが均衡して、水面が所定の高さに維持される。このような状態において、水面が開口部に達していれば、開口部からプラグを取り外すことにより、弁室内の水を外部に流出させやすい。例えば、吸排気弁が止水栓を介して立て管に接続されている場合には、止水栓を閉状態とした後に開口部からプラグを取り外すことにより、開口部から水を流出させることができる。
【0013】
この場合において、前記弁機構が前記副空気孔を閉鎖した状態で前記遊動弁体が前記空気孔を閉鎖したときに、前記水面は、前記開口部よりも上方に位置するものとすることができる。このようにすれば、例えば、吸排気弁が止水栓を介して立て管に接続されている
場合に、止水栓を閉状態とした後に開口部からプラグを取り外したときに、開口部の下端よりも上方にある所定量の水を、弁室から外に流出させることができる。従って、水に混入した異物が弁室内の水面に浮上している場合などに、この異物を排出しやすい。
【0014】
本発明において、前記弁機構は、前記副空気孔を閉鎖する閉位置と当該副空気孔を開く開位置との間で変位可能な状態で前記遊動弁体に保持された弁体と、前記フロートが前記遊動弁体に当接しているときに前記弁体を前記閉位置に維持し、前記フロートが前記遊動弁体から下方に離間すると前記弁体を前記開位置に移動させるリンク機構と、を備えるものとすることができる。このようにすれば、水面の昇降に伴って昇降するフロートと、副空気孔を開閉する弁体との間に、リンク機構が介在する。従って、リンク機構によって、フロートと弁体とを上下方向で離間させることができる。これにより、弁機構が副空気孔を閉鎖した状態で遊動弁体が前記空気孔を閉鎖したときに、副空気孔および弁体を、水面から上方に離間させることができる。よって、立て管からの水とともに弁室に異物が侵入した場合でも、その異物が副空気孔および弁体に付着することを防止或いは抑制できる。また、弁室に侵入した異物がフロートに付着した場合でも、異物が弁体と副空気孔との間に噛み込まれることを防止或いは抑制できる。
【0015】
本発明において、前記副空気孔は、前記遊動弁体を前記上下方向に貫通し、前記弁機構は、前記副空気孔の下端開口を囲む弁座と、前記フロートの上面に設けた弁部と、を備え、前記フロートは、前記遊動弁体に当接した状態において、前記弁部が前記弁座に当接して前記副空気孔を閉鎖する閉位置と、前記弁部と前記弁座との間に隙間が形成される開位置との間を移動するものとすることができる。かかる構成を備える場合でも、ハウジングが弁室に連通する開口部を備えるので、弁室内の水を開口部を介して外に流出させることができる。これにより、弁室内に侵入した異物を弁室内から除去できるので、異物を除去するために、吸排気弁を立て管から取り外す必要がない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吸排気弁は、内部に弁室が区画されたハウジングに、弁室とハウジングの外とを連通させる開口部が設けられている。よって、立て管からの水とともに弁室に異物が侵入した場合には、開口部に取り付けられたプラグを外して開口部を解放すれば、弁室内の水を開口部を介して外に流出させることができる。これにより、弁室内に侵入した異物を弁室内から除去できるので、異物を除去するために、吸排気弁を立て管から取り外す必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を適用した吸排気弁の設置状態の説明図である。
【
図3】
図2の吸排気弁の断面を斜め上方から見た場合の断面図である。
【
図5】
図2の吸排気弁の吸排気動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態である吸排気弁を説明する。
【0019】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した吸排気弁の設置状態の説明図である。
図2は、吸排気弁の縦断面図である。
図3は、吸排気弁の断面を斜め上方から見た場合の断面図である。
図4は、吸排気弁の分解斜視図である。
図3では、プラグを取り外して示す。
図3、
図4において、遊動弁体は、切欠かれた状態で示される。
【0020】
図1に示すように、本例の吸排気弁1は、ビルやマンションなどの建造物の給水用の立て管2の最頂部に取り付けられる。立て管2の最頂部分は、電気メーター、情報系統の配線、給湯器、ガスメーターなどが設置されたパイプシャフト内の狭い空間に配管される。
【0021】
立て管2は、金属製、或いはポリエチレン製である。立て管2は、その上端に止水栓3を備える。立て管2の側方には、排水ホッパー5が設けられている。また、吸排気弁1には、ドレン管6に接続されている。ドレン管6は、吸排気弁1から排水ホッパー5の側に向かって側方に延びた後に下方に屈曲する。ドレン管6の下端開口は、上下方向で予め定められた隙間を開けて排水ホッパー5に対向する。
【0022】
以下では、吸排気弁1を、立て管2の上部に設置した設置姿勢で説明する。また、立て管2の軸線Lに沿った方向を上下方向Xとする。立て管2とドレン管6とが配列されている方向を直交方向Yとする。上下方向Xと直交方向Yとは直交する。
【0023】
(吸排気弁)
図2、
図3に示すように、吸排気弁1は、ハウジング8と、ハウジング8の内部に区画された弁室10と、を有する。ハウジング8は、立て管2の止水栓3に接続されるハウジング部材11と、ハウジング部材11に上方X2から被せられた環状のボンネット部材12と、ボンネット部材12に上方X2から取り付けられた外部排水用カバー13と、を有する。外部排水用カバー13は吸排気口14を備える。吸排気口14には、ドレン管6が接続される。また、ハウジング8は、ボンネット部材12の内周側に空気孔15を区画する空気孔構成部材16と、空気孔構成部材16をボンネット部材12に固定するキャップ17と、を備える。
【0024】
図4に示すように、ハウジング部材11は、止水栓3が接続される接続管部分21と、接続管部分21の上端部分から外周側に向かって上方X2に延びる環状底部分22と、環状底部分22の外周側の端縁から上方X2に延びる筒状胴部分23と、を備える。
図1に示すように、吸排気弁1が止水栓3に取り付けられたときに、立て管2の軸線は、接続管部分21の軸線と同軸となる。
【0025】
図4に示すように、筒状胴部分23は、上端部分の外周面に、雄ねじ23aを備える。筒状胴部分23の上下方向Xの中ほどには、第1開口部18と、第2開口部19と、が設けられている。第1開口部18および第2開口部19は、軸線Lを挟んだ両側に位置する。第1開口部18および第2開口部19は、それぞれ筒状胴部分23を直交方向Yに貫通する。本例では、第1開口部18および第2開口部19は、上下方向Xにおいて、同一の高さ位置に設けられている。また、第1開口部18および第2開口部19は、180°の角度間隔で設けられている。筒状胴部分23の外周面における第1開口部18の縁部分には、外側に突出する環状の第1突出部18aが設けられている。筒状胴部分23の外周面における第2開口部19の縁部分には、外側に突出する環状の第2突出部19aが設けられている。
図1、
図2に示すように、第1開口部18および第2開口部19には、それぞれプラグ20が着脱可能に取り付けられている。各プラグ20は、第1開口部18および第2開口部19をそれぞれ封鎖する。
【0026】
図4に示すように、ボンネット部材12は、筒部25と、筒部25の上端縁から内周側に延びる環状板部26と、環状板部26における径方向の途中から上方X2に突出する環状突部27と、を備える。筒部25の内周面には、筒状胴部分23の雄ねじ23aに螺合する内側雌ねじ25aが設けられている。環状突部27の内周面には内側雌ねじ27aが設けられている。
【0027】
図3に示すように、ボンネット部材12とハウジング部材11とは、ボンネット部材12の内側雌ねじ25aに、ハウジング部材11の雄ねじ23aが捩じ込まれることにより、一体とされる。ボンネット部材12の筒部25とハウジング部材11の筒状胴部分23の間には、Oリング29が挿入されている。
【0028】
図2に示すように、空気孔構成部材16は、筒状の空気孔構成部31と、空気孔構成部31の上端縁から外周側に広がる環状のフランジ部32と、を備える。空気孔構成部31はボンネット部材12(環状板部26)の中心孔に挿入されている。フランジ部32は環状板部26における環状突部27の内周側に位置する。ここで、ボンネット部材12と空気孔構成部材16との間には、パッキン34が挟まれている。
【0029】
図4に示すように、キャップ17は、空気孔構成部材16のフランジ部32に上方X2から当接する環状板部35、環状板部35の外周縁から上方X2に延びる環状壁部36、および、環状壁部36の上端縁から外周側に突出する環状フランジ部37を備える。環状壁部36の外周面には、ボンネット部材12の環状突部27の内側雌ねじ27aと螺合可能な雄ねじ36aが設けられている。
図2に示すように、キャップ17は、環状壁部36が環状突部27の内周側に捩じ込まれ、環状フランジ部37が環状突部27の上端面に当接した状態でボンネット部材12に固定される。これにより、空気孔構成部材16は、ボンネット部材12との間にパッキン34を挟んだ状態で、ボンネット部材12に固定される。
【0030】
パッキン34は、空気孔構成部材16の空気孔構成部31と、ボンネット部材12の環状板部26の内周端との間から下方X1に突出する環状の突出部分を備える。空気孔構成部材16の空気孔構成部31の中心穴は、空気孔15である。パッキン34の突出部分は、空気孔15を包囲する。
図3に示すように、パッキン34の突出部分は、空気孔15を開閉する遊動弁体61が当接する弁座39である。
【0031】
次に、外部排水用カバー13は、
図4に示すように、ボンネット部材12の環状突部27の外周側に位置する筒部41と、筒部41の上方X2で直交方向Yに延びる管部42と、筒部41と管部42との間を接続する流路構成部43と、を備える。外部排水用カバー13は、複数本のねじ45によってボンネット部材12に固定される。
図2、
図3に示すように、筒部41と環状突部27との間には、Oリング46が介在する。管部42の先端は吸排気口14である。外部排水用カバー13がボンネット部材12に固定されると、外部排水用カバー13の内側は、空気孔15と吸排気口14とを連通させる内部流路44となる。内部流路44は、空気孔15から、上方X2に向かって側方に屈曲して、吸排気口14に至る。
【0032】
内部流路44には整流ネット50が収容されている。整流ネット50は、金属製または樹脂製の網状の部材である。整流ネット50は、筒部47と、筒部47の上側を閉鎖する閉鎖部48と、を備える。整流ネット50は、キャップ17の環状板部35に載置される。整流ネット50は、吸排気口14から空気孔15に向かう空気を整流する。これにより、吸排気弁1が吸排気口14から吸気を行う際の吸気量を大きくすることができる。また、整流ネット50は、吸排気口14の側から吸排気弁1の内部に異物や虫が侵入することを防止する。
【0033】
ここで、
図2、
図3に示すように、ハウジング部材11、ボンネット部材12および空気孔構成部材16により囲まれた空間は弁室10である。弁室10は、底に、接続管部分21を介して立て管2に連通する連通口52を備える。弁室10の底は、接続管部分21の環状の上端面である。弁室10の底には、連通口52が設けられている。連通口52は、接続管部分21の上端開口である。弁室10の天井は、ボンネット部材12の環状板部
26、弁座39、および空気孔構成部材16の空気孔構成部31により規定されている。弁室10の天井には、吸排気口14に連通する空気孔15が設けられている。空気孔15は、空気孔構成部31の中心孔である。第1開口部18および第2開口部19は、弁室10とハウジング8の外とを連通させる。第1開口部18および第2開口部19は、ハウジング8において、上下方向Xで、連通口52と空気孔15との間に位置するハウジング部分9に設けられている。第2開口部19は、軸線L回りで吸排気口14と同一の角度位置にある。
【0034】
図2に示すように、弁室10は、内部にバケット55を備える。
図4に示すように、バケット55は、輪郭形状が円形のバケット底部56と、バケット底部56の外周縁から上方X2に延びるバケット筒部57と、バケット筒部57の上端から外周側に突出するバケットフランジ部58と、を備える。バケット底部56およびバケット筒部57には、複数の開口59が設けられている。従って、水はバケット55の内側に侵入する。
図3に示すように、バケットフランジ部58は、ハウジング部材11とボンネット部材12との間に挟まれている。これにより、バケット55は、弁室10内で固定されている。
【0035】
また、弁室10内には、遊動弁体61、フロート62、およびコイルバネ63が収容されている。
図2、
図3に示すように、遊動弁体61は、バケット55内を昇降可能に配置されている。遊動弁体61は、空気孔15を開閉する。フロート62は、バケット55内に配置され、弁室10内の水面の昇降に伴って昇降する。フロート62は、遊動弁体61に下方X1から当接可能である。コイルバネ63は、バケット55内において、フロート62の外周側に配置されている。コイルバネ63はフロート62を囲んでいる。
【0036】
図4に示すように、フロート62は、下方X1に向かって外径寸法が小さくなる円錐台形状のフロート本体部65と、フロート本体部65から外周側に突出する複数のリブ66と、を備える。各リブ66は、上下方向Xに延びる。また、各リブ66は、フロート本体部65の外周面に等角度間隔で設けられている。各リブ66を上下方向Xと直交する仮想面で切断した断面は、径方向外側に向かって先細りとなる山型である。ここで、各リブ66は、下方X1に向かってフロート本体部65から突出量が大きくなる。これにより、各リブ66の稜線は、フロート本体部65の中心軸線と平行に延びる。
【0037】
図2に示すように、遊動弁体61は、空気孔15を閉鎖可能な上面71aを備える弁本体部71と、弁本体部71の外周縁から下方X1に延びる筒状のスカート部72と、を有する。弁本体部71を上方X2から見た場合の輪郭形状は円形である。弁本体部71には、空気孔15に連通する副空気孔60が設けられている。副空気孔60は、空気孔15と連通口52とを連通させる。スカート部72は、円筒形状である。
図3に示すように、スカート部72には、フロート62の上側部分が挿入される。スカート部72の下端には、コイルバネ63の上端が当接する。ここで、コイルバネ63は、遊動弁体61を弁座39に付勢する。
【0038】
弁本体部71は、内側に区画された弁体収容室74と、弁体収容室74の下方X1においてフロート62が当接可能な被当接部75と、を備える。被当接部75は、円環状である。スカート部72は、被当接部75の外周側の端縁から下方X1に延びる。被当接部75には、フロート62(フロート本体部65)の上面の外周縁部分が下方X1から当接する。
【0039】
図4に示すように、弁体収容室74は、上下方向Xから見た場合に、弁本体部71の中央部分に設けられている。また、弁体収容室74は、弁本体部71にトンネル状に設けられている。弁体収容室74は、弁本体部71の上下方向Xの中央部分において、直交方向Yの一方側の端から他方側に向かって延びる。従って、弁体収容室74の直交方向Yの一
方側の端は開口している。弁体収容室74の直交方向Yの他方側の端には、側壁面76が存在する。側壁面76は上下方向Xに延びる。
【0040】
さらに、弁体収容室74は、
図2に示すように、直交方向Yの一方側から他方側に向かって、内径寸法が大きい大径部77と、内径寸法が大径部77をよりも小さい小径部78と、大径部77と小径部78との間で直交方向Yの一方側を向く環状面79と、を備える。側壁面76は、小径部78の直交方向Yの一方側の端を封鎖する。
【0041】
図4に示すように、弁体収容室74は、弁体収容室74の側壁面76から離間する位置から下方X1に延びる連通孔80を備える。
図2、
図3に示すように、連通孔80は、環状の被当接部75の内周側において、弁体収容室74と弁室10とを連通させている。
【0042】
ここで、副空気孔60は、弁本体部71の上面71aに設けられた上側開口82と、弁体収容室74の側壁面76に設けられた下側開口83と、弁本体部71を貫通して上側開口82と下側開口83とを接続する空気通路84と、を備える。空気通路84は、下側開口83から直交方向Yに延びる横通路84aと、上側開口82から下方X1に延びて横通路84aに連通する縦通路84bと、を備える。従って、副空気孔60は、弁体収容室74の側壁面76から直交方向Yの他方側に延びた後に、上方X2に屈曲して、弁本体部71の上面71aに達している。
【0043】
弁体収容室74内には、直交方向Yの一方側から他方側(側壁面76の側)に向かって、止め輪86、バネ受け部材87、コイルバネ88(付勢部材)、および、弁体89が、この順に同軸に配置されている。弁体89は、副空気孔60を開閉するものである。
図4に示すように、バネ受け部材87は、円環状である。止め輪86は、外周側に張り出す複数の突起を備えるCR形止め輪である。止め輪86は、直交方向Yにおける大径部77の途中に取り付けられて、バネ受け部材87を環状面79に当接させる。止め輪86は、バネ受け部材87が直交方向Yの他方側に移動するのを阻止する。コイルバネ88は、バネ受け部材87と弁体89との間に配置されて、弁体89を側壁面76に向かって付勢する。ここで、弁体89は、止め輪86、バネ受け部材87、およびコイルバネ88を介して遊動弁体61に保持されている。従って、弁体89は、遊動弁体61と一体に昇降する。また、弁体89は、コイルバネ88により、側壁面76に対して正対して下側開口83を閉鎖する閉位置89Aと、側壁面76に対して傾斜して下側開口83を開放する開位置89Bとの間で変位可能に支持されている(
図5参照)。
【0044】
図4に示すように、弁体89には、側壁面76とは反対方向に延びる軸部材91が取り付けられている。
図2に示すように、軸部材91は、コイルバネ88、バネ受け部材87、止め輪86を貫通して、連通孔80の上方X2まで延びる。一方、フロート62には、フロート本体部65の外周縁部分から上方X2に延びるリンク部材92が取り付けられている。リンク部材92は、連通孔80を介して、弁体収容室74内に突出する。リンク部材92は、上端部分に軸部材91が接続される接続部93を備える。接続部93は、上下方向Xに延びる長孔93aと、リンク部材92の外周縁から長孔93aの下端部分に連通する切欠き93bと、を備える。軸部材91の端部分は、切欠き部93bを介して、長孔93aに挿入されている。
【0045】
ここで、
図2に示すように、止め輪86、バネ受け部材87、コイルバネ88(付勢部材)、弁体89、軸部材91、およびリンク部材92は、副空気孔60を開閉するための弁機構95を構成する。コイルバネ88は、弁体89を弁体収容室74の側壁面76に向かって付勢する。また、コイルバネ88は、弁体89を、副空気孔60を閉鎖する閉位置89Aと、副空気孔60を開く開位置89Bとの間で変位可能に支持する。
【0046】
また、軸部材91、およびリンク部材92は、フロート62の昇降に伴って弁体89を閉位置89Aと開位置89Bとの間で変位させるリンク機構96を構成する。リンク機構96は、フロート62が遊動弁体61の被当接部75に当接しているときに、弁体89を閉位置89Aに維持する。また、リンク機構96は、フロート62が遊動弁体61の被当接部75から下方X1に離間すると、弁体89を開位置89Bに移動させる。
【0047】
(吸排気動作)
図5は吸排気弁1による吸排気動作の説明図である。
図5を参照して吸排気弁1による吸排気動作を説明する。
図5(a)は、吸排気弁1が空気を排出している状態である。
図5(b)は、立て管2への充水が完了した後の状態である。
図5(c)は、立て管2の側に負圧が発生した状態である。
【0048】
立て管2への充水が完了する前の状態では、
図5(a)に示すように、遊動弁体61は、コイルバネ63によって、弁座39に付勢されている。従って、遊動弁体61は、空気孔15を閉鎖している。フロート62は、自重によって、バケット底部56に載置された状態である。従って、フロート62は、遊動弁体61から下方X1に離間している。
【0049】
フロート62が遊動弁体61から下方X1に離間している状態では、リンク部材92の長孔93aの開口縁が軸部材91の弁体89とは反対側の端部分に上方X2から当接して、軸部材91の弁体89とは反対側の端部分を下方X1に移動させている。これにより、弁体89が側壁面76に対して傾斜する開位置89Bに配置された状態となるので、下側開口83が解放されて、副空気孔60が開く。副空気孔60と空気孔15とは、連通している。
【0050】
立て管2への充水が行われると、立て管2内の空気は、吸排気弁1の弁室10、副空気孔60、空気孔15を介して吸排気口14から外部に排出される。その後、水が吸排気弁1に達すると、弁室10内の水面100の上昇に伴って、フロート62が浮上する。
【0051】
フロート62が遊動弁体61の被当接部75に当接すると、弁機構95の弁体89は閉位置89Aに配置され、副空気孔60を閉鎖する。すなわち、フロート62が遊動弁体61の被当接部75に当接すると、リンク部材92の長孔93aが、副空気孔60の下側開口83と同じ高さに配置される。これにより、弁体89に取り付けられた軸部材91は、直交方向Yを水平に延びた状態で、リンク部材92の長孔93aを貫通する。この結果、弁体89は、側壁面76に正対する閉位置89Aに配置された状態となるので、下側開口83が閉鎖されて、副空気孔60が閉じる。
【0052】
弁機構95が副空気孔60を閉鎖した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖すると、弁室10の圧力と大気圧との均衡により、弁室10内の水面100は、所定の高さに維持される。この状態は、
図5(b)に示す状態であり、充水が完了した状態である。弁機構95が副空気孔60を閉鎖した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、弁室10内の水面100は、第1開口部18、および第2開口部19に達している。本例では、弁室10内の水面100は、第1開口部18および第2開口部19よりも上方X2に位置する。従って、第1開口部18および第2開口部19は、水没する。
【0053】
充水が完了した状態では、フロート62は、弁室10内で最も上昇した上昇位置62Aに配置される。上昇位置62Aにあるフロート62の上面と水面100の高さ位置とは略同一である。フロート62が上昇位置62Aに配置されたとき、すなわち、フロート62と遊動弁体61とが当接した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、弁体89は閉位置89Aに位置し、副空気孔60は閉鎖されている。弁体89および副空気孔60は、水面100から上方X2に離間する。
【0054】
その後、立て管2内の水に混入している空気が上昇して弁室10内に溜まると、水面100が下がる。このような状態となると、遊動弁体61が空気孔15を閉状態に維持した状態で、フロート62が上昇位置62Aから下方X1に移動する。すなわち、フロート62は、遊動弁体61の被当接部75から、下方X1に離間する。
【0055】
ここで、遊動弁体61に当接しているフロート62が当該遊動弁体61から下方X1に移動すると、
図5(a)に示すように、フロート62の移動に伴ってリンク部材92が下方X1に移動する。これにより、リンク部材92が軸部材91の弁体89とは反対側の端部分を下方X1に移動させる。この結果、弁体89が側壁面76に対して傾斜する開位置89Bに配置された状態となるので、下側開口83が解放されて、副空気孔60が開く。
【0056】
副空気孔60が開くと、立て管2内の水から弁室10内に移動した空気は、副空気孔60から、空気孔15および吸排気口14を介して、外部に排出される。
【0057】
内部の空気が副空気孔60を介して排出されると、水面100は、
図5(b)に示す位置まで上昇する。従って、フロート62は、上昇位置62Aに戻り、遊動弁体61の被当接部75に当接する。フロート62が被当接部75に当接すると、リンク部材92の長孔93aが副空気孔60の下側開口83と同じ高さに配置されるので、弁体89に取り付けられた軸部材91は、直交方向Yを水平に延びる。これにより、弁体89は、側壁面76に正対する閉位置89Aに配置されて、副空気孔60を閉じる。このような副空気孔60を開閉する動作が繰り返されることにより、吸排気弁1は、脈動や腐食などの要因となる立て管2内の空気を立て管2の内部から自動的に排出する。
【0058】
ここで、断水などにより給水圧力が低下すると、水面100が下降するとともに、立て管2内に負圧が発生する。すると、水面の下降に伴ってフロート62が下降する。また、負圧による吸引力により、遊動弁体61がコイルバネ63の付勢力に抗して下降する。この結果、
図5(c)に示すように、空気孔15が開放されるので、吸排気弁1による吸気が行われ、立て管2内に空気が供給される。従って、負圧により各戸末端の給水用具から立て管2へ水が逆流することを防止できる。
【0059】
(弁室からの異物の排出)
立て管2に充水した後に、吸排気弁1の弁室10には、水とともに異物が侵入することがある。ここで、弁室10に侵入した異物が副空気孔60と弁体89との間に噛み込まれると、副空気孔60が閉鎖できなくなる。この結果、吸排気弁1の弁室10に達した水が副空気孔60から流出し続けるという事態が発生する。かかる事態を未然に防ぐために、吸排気弁1では、定期的に、弁室10に侵入した異物を除去するメンテナンス作業を行うことが望まれる。
【0060】
このようなメンテナンス作業では、まず、止水栓3を閉じる。次に、吸排気弁1のハウジング8からプラグ20を取り外す。
【0061】
ここで、吸排気弁1に設けた第1開口部18、第2開口部19からプラグ20を取り外す作業は、パイプシャフト内の比較的狭いスペースで行なわれる。また、立て管2の最頂部分に接続管部分21を同軸に接続したときに、軸線L回りのハウジング8の向きによっては、プラグ20を操作するスペースがない場合がある。このような場合に、本例では、ハウジング部分9は、接続管部分21の軸線L回りの異なる位置に設けられた第1開口部18および第2開口部19を備える。さらに、第1開口部18と第2開口部19とは、軸線Lを挟んで反対側に位置する。従って、一の開口部(第1開口部18および第2開口部19の一方)においてプラグ20を操作するスペースがない場合には、他の開口部(第1
開口部18および第2開口部19の他方)に取り付けられたプラグ20を操作して、当該開口部(第1開口部18または第2開口部19)を開放させることができる。
【0062】
また、弁機構95が副空気孔60を閉鎖した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、水面100は、開口部(第1開口部18、第2開口部19)よりも上方X2に位置する。従って、止水栓3を閉状態とした後にプラグ20を取り外したときに、開口部(第1開口部18および第2開口部19)の下端よりも上方X2にある所定量の水を、弁室10から外に流出させることができる。よって、弁室10内の水に異物が混入しており、異物が水面100に浮遊している場合に、この異物を排出しやすい。なお、開口部(第1開口部18、第2開口部19)を介して水を流出させると、弁室10内の水面100の位置が下降する。従って、フロート62は、下降する。
【0063】
その後は、止水栓3を開いて立て管2の水を弁室10に導入する。すなわち、止水栓3を開くと、立て管2に供給されている水の圧力により、立て管2内の水は自然に弁室10に流入する。これにより、弁室10内の水を更に外部に流出させて、残留する異物を排出する。
【0064】
しかる後に、再び止水栓3を閉じて、プラグ20によって解放していた開口部(第1開口部18または第2開口部19)を封鎖する。その後、止水栓3を開き、立て管2内の水を弁室10に流入させる。これにより、メンテナンス作業は完了する。
【0065】
ここで、止水栓3を開いて立て管2の水を吸排気弁1に流入させれば、充水時と同様に、弁室10内の水面100の上昇に伴ってフロート62は上昇する。そして、
図5(b)に示す状態となる。
図5(b)に示す状態では、水面100が、第1開口部18および第2開口部19の上方X2に位置する。
【0066】
(作用効果)
本例の吸排気弁1は、内部に弁室10が区画されたハウジング8に、弁室10とハウジング8の外とを連通させる開口部(第1開口部18、第2開口部19)を備える。従って、立て管2に吸排気弁1を取り付けて充水した後に弁室10に異物が侵入した場合には、開口部(第1開口部18または第2開口部19)に取り付けられたプラグ20を外して開口部(第1開口部18または第2開口部19)を解放すれば、弁室10内の水を開口部(第1開口部18または第2開口部19)を介して外に流出させることができる。これにより、水とともに弁室10内に侵入した異物を弁室10内から除去できるので、異物を除去するために、吸排気弁1を立て管2から取り外す必要がない。
【0067】
また、本例では、水面100の昇降に伴って昇降するフロート62と、副空気孔60を開閉する弁体89との間に、リンク機構96が介在する。これにより、フロート62と弁体89とをリンク機構96によって上下方向Xで離間させることができる。従って、弁機構95が副空気孔60を閉鎖した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、副空気孔60および弁体89を、水面100から上方X2に離間させることができる。よって、立て管2からの水とともに弁室10に異物が侵入した場合でも、その異物が副空気孔60および弁体89に付着することを防止或いは抑制できる。また、弁室10に侵入した異物がフロート62に付着した場合でも、異物が弁体89と副空気孔60との間に噛み込まれることを防止或いは抑制できる。
【0068】
ここで、副空気孔60を開閉する弁体89は、遊動弁体61に保持されているので、遊動弁体61とともに昇降する。また、弁機構95が副空気孔60を閉鎖した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、弁体89および副空気孔60は、水面100から上方X2に離間する。従って、水とともに異物が弁室10に侵入した場合でも、この異物
が弁体89および副空気孔60に付着することを防止或いは抑制できる。よって、弁体89と副空気孔60との間に異物を噛み込んでしまい、副空気孔60が閉鎖不能となることを防止あるいは抑制できる。
【0069】
また、弁機構95は、遊動弁体61に保持されて弁体89を閉位置89Aに付勢するコイルバネ88を備える。さらに、コイルバネ88は、弁体89を開位置89Bと閉位置89Aとの間で変位可能に支持する。従って、弁体89により副空気孔60を閉鎖した状態を維持することが容易である。また、弁体89を付勢するコイルバネ88利用して、弁体89を変位可能に支持できるので、部品点数を抑制できる。
【0070】
さらに、遊動弁体61は、空気孔15を閉鎖可能な上面71aを備える弁本体部71と、弁本体部71の内側に区画された弁体収容室74と、弁体収容室74の下方X1においてフロート62が当接可能な被当接部75と、を備える。また、副空気孔60は、弁本体部71の上面71aに設けられた上側開口82と、弁体収容室74の側壁面76に設けられた下側開口83と、弁本体部71を貫通して上側開口82と下側開口83とを接続する空気通路84と、を備える。さらに、弁体89は、弁体収容室74に収容されて、下側開口83を開閉する。従って、充水が完了してフロート62と遊動弁体61とが当接した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、弁体収容室74が水面100およびフロート62から上方X2に離間する。これにより、弁室10内の水が弁体収容室74に達することを防止あるいは抑制できるので、水とともに弁室10に侵入した異物が弁体収容室74に侵入して、弁体89と副空気孔60の下側開口83との間に噛み込まれてしまうことを防止或いは抑制できる。
【0071】
また、副空気孔60の下側開口83は、弁体収容室74の側壁面76に設けられている。従って、仮に、弁体89と副空気孔60の下側開口83との間に異物が挟まった場合でも、弁体89が変位したときに、異物は側壁面76に沿って下方X1に落下しやすい。
【0072】
(実施例2)
図6は、実施例2の吸排気弁1Aの断面図である。本例の吸排気弁1Aは、実施例1の吸排気弁1と対応する構成を備える。従って、対応する構成には、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0073】
図6に示すように、吸排気弁1Aは、ハウジング8と、ハウジング8の内部に区画された弁室10と、を有する。ハウジング8は、立て管2の上端の止水栓3に接続されるハウジング部材11と、ハウジング部材11に上方X2から被せられた環状のボンネット部材12と、ボンネット部材12に上方X2から取り付けられた外部排水用カバー13と、を有する。外部排水用カバー13は吸排気口14を備える。吸排気口14には、ドレン管6が接続される。また、ハウジング8は、ボンネット部材12の内周側に空気孔15を区画する空気孔構成部材16と、空気孔構成部材16をボンネット部材12に固定するキャップ17と、を備える。
【0074】
ハウジング部材11は、止水栓3が接続される接続管部分21と、接続管部分21の上端部分から外周側に向かって上方X2に延びる環状底部分22と、環状底部分22の外周側の端縁から上方X2に延びる筒状胴部分23と、を備える。筒状胴部分23の上下方向Xの中ほどには、第1開口部18と、第2開口部19と、が設けられている。第1開口部18および第2開口部19は、軸線Lを挟んだ両側に位置する。第1開口部18および第2開口部19は、それぞれ筒状胴部分23を直交方向Yに貫通する。本例では、第1開口部18および第2開口部19は、上下方向Xにおいて、同一の高さ位置に設けられている。また、第1開口部18および第2開口部19は、180°の角度間隔で設けられている。筒状胴部分23の外周面における第1開口部18の縁部分には、外側に突出する環状の
第1突出部18aが設けられている。筒状胴部分23の外周面における第2開口部19の縁部分には、外側に突出する環状の第2突出部19aが設けられている。第1開口部18および第2開口部19には、それぞれを封鎖するプラグ20が着脱可能に取り付けられている。
【0075】
ボンネット部材12と空気孔構成部材16との間には、パッキン34が挟まれている。パッキン34は、空気孔構成部材16の空気孔構成部31と、ボンネット部材12の環状板部26の内周端との間から下方X1に突出する環状の突出部分を備える。空気孔構成部材16の空気孔構成部31の中心穴は、空気孔15である。パッキン34の突出部分は、空気孔15を包囲する。パッキン34の突出部分は、空気孔15を開閉する遊動弁体61が当接する弁座39である。
【0076】
ハウジング部材11、ボンネット部材12および空気孔構成部材16により囲まれた空間は弁室10である。弁室10の底は、接続管部分21の環状の上端面である。弁室10の底には、連通口52が設けられている。連通口52は、接続管部分21の上端開口である。弁室10の天井は、ボンネット部材12の環状板部26、弁座39、および空気孔構成部材16の空気孔構成部31から構成される。弁室10の天井には、吸排気口14に連通する空気孔15が設けられている。空気孔15は、空気孔構成部31の中心孔である。第1開口部18および第2開口部19は、弁室10とハウジング8の外とを連通させる。第1開口部18および第2開口部19は、ハウジング8において、上下方向Xで、連通口52と空気孔15との間に位置するハウジング部分9に設けられている。
【0077】
弁室10の内部には、バケット55、遊動弁体61、フロート62が収容されている。
図6に示すように、遊動弁体61は、バケット55内を昇降可能に配置されている。遊動弁体61は、空気孔15を閉鎖可能な上面71aを備える弁本体部71と、弁本体部71の外周縁から下方X1に延びる筒状のスカート部72と、を有する。また、弁本体部71は、弁本体部71に設けられた副空気孔60と、弁本体部71に下方X1から捩じ込まれたボルト103と、を有する。
【0078】
副空気孔60は、弁本体部71を上下方向Xに貫通して空気孔15と連通口52とを連通させる。弁本体部71の下面において、副空気孔60と重なる位置には、凹部101が設けられている。凹部101には、環状の弁座102が固定されている。弁座102は、環状の弾性部材であり、副空気孔60の下端開口を囲む。弁座102の下端面は、弁本体部71の下面よりも下方X1に突出する。また、弁本体部71の下面において、凹部101から離間する位置には、ボルト103が下方X1から捩じ込まれている。ボルト103の頭部は、弁座102の下端面から下方X1に突出する。
【0079】
フロート62は、バケット55内に配置され、弁室10内の水面100の昇降に伴って昇降する。フロート62は、遊動弁体61に下方X1から当接可能である。フロート62の上面には、平坦な弁部105が設けられている。フロート62が、ボルト103に当接したときに、弁部105は弁座102に当接して、副空気孔60を閉鎖することが可能である。フロート62に設けられた弁部105と、遊動弁体61に固定された弁座102とは、フロート62の移動によって副空気孔60を開閉する弁機構95を構成する。
【0080】
(吸排気動作)
立て管2に充水が行われ、水が吸排気弁1Aに達すると、フロート62は水面100の上昇とともに浮上する。そして、フロート62は、ボルト103に下方から当接して、遊動弁体61を上方X2に移動させる。遊動弁体61が上方X2に移動する際に、フロート62の弁部105は遊動弁体61の弁座102に当接して副空気孔60を閉鎖する。その後、遊動弁体61は弁室10の天井に当接して、空気孔15を閉鎖する。弁機構95が副
空気孔60を閉鎖して遊動弁体61が空気孔15を閉鎖すると、弁室10内の圧力と外部の圧力とが均衡して弁室10内の水面100は所定の高さに維持される。
図6には、この状態の水面100の位置が仮想線で示されている。
図6に示すように、弁機構95が副空気孔60を閉鎖した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、弁室10内の水面100は、第1開口部18、および第2開口部19に達している。本例では、弁室10内の水面100は、第1開口部18および第2開口部19よりも上方X2に位置する。
【0081】
ここで、立て管2への充水後に、立て管2内の水に混入した空気が弁室10内に溜まると、水面100が下がる。このような状態となると、遊動弁体61による空気孔15の閉鎖が維持されたまま、フロート62が傾いて弁部105と弁座102との間に隙間が形成される。これにより、副空気孔60が開くので、立て管2から弁室10内に移動した空気は、副空気孔60から、空気孔15および吸排気口14を介して、外部に排出される。副空気孔60から空気が排出さると、弁室10内の水面100が上昇する。従って、フロート62の姿勢は元に戻り、副空気孔60が閉鎖される。このような副空気孔60を開閉する動作を繰り返すことにより、吸排気弁1Aは、脈動や腐食などの要因となる空気を立て管2の内部から自動的に排出する。
【0082】
(弁室からの異物の排出)
本例では、水とともに弁室10に侵入した異物がフロート62の上面などに付着すると、異物が副空気孔60を囲む弁座102とフロート62の弁部105との間に噛み込まれ、副空気孔60を閉鎖できなくなる場合がある。副空気孔60が閉鎖できなくなると、立て管2からの水が弁室10を介して副空気孔60から水が流出し続けるという事態が発生する。かかる事態を未然に防ぐために、吸排気弁1Aでは、定期的に、弁室10に侵入した異物を除去するメンテナンス作業を行うことが望まれる。
【0083】
このようなメンテナンス作業は、上記の吸排気弁1と同様である。まず、止水栓3と閉じる。次に、吸排気弁1Aのハウジング8からプラグ20を取り外す。ここで、本例においても、ハウジング8のハウジング部分9は、接続管部分21の軸線L回りの異なる位置に設けられた第1開口部18および第2開口部19を備える。さらに、第1開口部18と第2開口部19とは、軸線Lを挟んで反対側に位置する。従って、一の開口部(第1開口部18および第2開口部19の一方)においてプラグ20を操作するスペースがない場合には、他の開口部(第1開口部18および第2開口部19の他方)に取り付けられたプラグ20を操作して、当該開口部(第1開口部18または第2開口部19)を開放させることができる。
【0084】
また、弁機構95が副空気孔60を閉鎖した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、水面100は、開口部(第1開口部18、第2開口部19)よりも上方X2に位置する。従って、止水栓3を閉状態とした後にプラグ20を取り外したときに、開口部(第1開口部18および第2開口部19)の下端よりも上方X2にある所定量の水を、弁室10から外に流出させることができる。よって、弁室10内の水に異物が混入しており、異物が水面100に浮遊している場合に、この異物を排出しやすい。なお、開口部(第1開口部18、第2開口部19)を介して水を流出させると、弁室10内の水面100の位置が下降する。従って、遊動弁体61およびフロート62は、下降する。
【0085】
その後は、止水栓3を開いて立て管2の水を弁室10に導入する。すなわち、止水栓3を開くと、立て管2に供給されている水の圧力により、立て管2内の水は自然に弁室10に流入する。これにより、弁室10内の水を更に外部に流出させて、残留する異物を排出する。しかる後に、再び、止水栓3を閉じて、プラグ20によって解放されていた開口部(第1開口部18または第2開口部19)を封鎖する。そして、止水栓3を開き、立て管2内の水を弁室10に流入させる。これにより、メンテナンス作業は完了する。
【0086】
ここで、止水栓3を開いて立て管2の水を吸排気弁1Aに流入させれば、充水時と同様に、弁室10内の水面100の上昇に伴って遊動弁体61およびフロート62は上昇する。その後、弁機構95が副空気孔60を閉鎖して遊動弁体61が空気孔15を閉鎖すると、弁室10内の圧力と外部の圧力とが均衡して弁室10内の水面100は所定の高さに維持される。弁機構95が副空気孔60を閉鎖して遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、水面100は、第1開口部18および第2開口部19の上方X2に位置する。
【0087】
本例の吸排気弁1Aにおいても、定期的なメンテナンス作業により、弁室10内に侵入した異物をハウジング8の外に排出できる。
【0088】
また、異物が副空気孔60を囲む弁座102とフロート62の弁部105との間に噛み込まれて副空気孔60を閉鎖できなくなっている場合に、上記のメンテナンス作業を行えば、副空気孔60を解放した後に止水栓3を開いて立て管2から弁室10に導入する水により、フロート62の弁部105、および遊動弁体61に固定した弁座102を洗浄できる。これにより、弁座102と弁部105との間に噛み込まれた異物を排除することができる場合があるので、副空気孔60を閉鎖できなくなっている状態を、解消できる可能性がある。
【0089】
(変形例)
ハウジング部分9に設ける開口部は、1つでもよい。また、開口部は、ハウジング部分9の軸線L回りの異なる位置に3つ以上設けてもよい。また、ハウジング部分9に複数の開口部を設ける場合に、各開口部の上下方向Xの高さ位置は、相違していてもよい。
【0090】
また、上記の例では、弁機構95が副空気孔60を閉鎖した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、水面100が第1開口部18および第2開口部19に達しているが、水面100は第1開口部18および第2開口部19に達していなくてもよい。すなわち、弁機構95が副空気孔60を閉鎖した状態で遊動弁体61が空気孔15を閉鎖したときに、第1開口部18および第2開口部19は、水面100よりも上方X2に位置していてもよい。この場合には、止水栓3を閉状態とした後に開口部(第1開口部18、第2開口部19)からプラグ20を取り外したときに、弁室10内の水を外に流出させることはできない。しかし、プラグ20を取り外した後に、止水栓3を開けば、立て管2に供給される水の圧力により、立て管2から弁室10に水が流入する。これにより、弁室10内の水を外に流出させることができるので、弁室10内の水に混入した異物を外に排出できる。
【符号の説明】
【0091】
1,1A…吸排気弁、2…立て管、3…止水栓、5…排水ホッパー、6…ドレン管、8…ハウジング、9…ハウジング部分、10…弁室、11…ハウジング部材、12…ボンネット部材、13…外部排水用カバー、14…吸排気口、15…空気孔、16…空気孔構成部材、16…空気孔15構成部材、17…キャップ、18…第1開口部、18a…第1突出部、19…第2開口部、19a…第2突出部、20…プラグ、21…接続管部分、22…環状底部分、23…筒状胴部分、25…筒部、26…環状板部、27…環状突部、29…Oリング、31…空気孔構成部、32…フランジ部、34…パッキン、35…環状板部、36…環状壁部、37…環状フランジ部、39…弁座、41…筒部、42…管部、43…流路構成部、44…内部流路、46…Oリング、47…筒部、48…閉鎖部、50…整流ネット、52…連通口、55…バケット、56…バケット底部、57…バケット筒部、58…バケットフランジ部、59…開口、60…副空気孔、61…遊動弁体、62…フロート、62A…上昇位置、63…コイルバネ、65…フロート本体部、66…リブ、71…弁本体部、72…スカート部、74…弁体収容室、75…被当接部、76…側壁面、77
…大径部、78…小径部、79…環状面、80…連通孔、82…上側開口、83…下側開口、84…空気通路、84a…横通路、84b…縦通路、86…止め輪、87…バネ受け部材、88…コイルバネ、89…弁体、89A…閉位置、89B…開位置、91…軸部材、92…リンク部材、93…接続部、95…弁機構、96…リンク機構、100…水面、101…凹部、102…弁座、103…ボルト、105…弁部、L…軸線、X…上下方向、Y…直交方向