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特許7579567カルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料及びその製造方法並びにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】カルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料及びその製造方法並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/02 20060101AFI20241031BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241031BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20241031BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241031BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241031BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20241031BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241031BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20241031BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09C1/02
A61K8/29
A61Q1/00
A61Q1/12
A61Q17/04
C01G23/00 C
C08K3/22
C08L101/00
C09C1/36
C09D7/61
C09D11/00
C09D201/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020198705
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086603
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000109255
【氏名又は名称】チタン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】三野 航
(72)【発明者】
【氏名】下村 直敬
(72)【発明者】
【氏名】灘 ちひろ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-056535(JP,A)
【文献】特開2007-327059(JP,A)
【文献】特開平10-167929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0175457(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/02
A61K 8/29
A61Q 1/00
A61Q 1/12
A61Q 17/04
C01G 23/00
C08K 3/22
C08L 101/00
C09C 1/36
C09D 7/61
C09D 11/00
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料であって、
前記顔料中のカルシウムチタン複合酸化物の粒子を倍率10万倍の透過型電子顕微鏡写真で観察した際、粒子内に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に点在することが確認でき、
真密度が3500kg/m以上3790kg/m以下である、前記顔料。
【請求項2】
前記周囲よりも色の薄い部分の形状が、直径が1.5nm以上15.0nm以下の円形または長軸の長さが1.5nm以上15.0nm以下の楕円形であり、かつ
前記周囲よりも色の薄い部分が、前記透過型電子顕微鏡写真上の1.0×10nmに相当する範囲に100個以上200個以下存在する、請求項1に記載の顔料。
【請求項3】
前記周囲よりも色の薄い部分の直径または長軸長の数平均値が、2.5nm以上4.5nm以下である、請求項1または2に記載の顔料。
【請求項4】
粒子径が200nm以上500nm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の顔料。
【請求項5】
JISZ8825:2013にて設定されている粒子径分布の幅が10.00より小さい請求項1から4のいずれか一項に記載の顔料。
【請求項6】
X線回折測定において、回折角度が32.50°以上33.50°以下の範囲に出現する(1 2 1)面の回折線の積分回折強度を100.0としたとき、回折角度が24.75°以上28.00°以下の範囲に出現する回折線の積分回折強度の割合が12.00以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の顔料。
【請求項7】
粒子の表面の少なくとも一部に無機物及び/又は有機物の被覆層を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の顔料。
【請求項8】
チタン源とカルシウム源とを含む水溶液を用意し、
前記水溶液を加熱してチタン源とカルシウム源とを反応させて反応物を生成し、
前記反応物に脱カルシウム処理を行い、次いで固液分離して固形分を回収し、及び
得られた固形分を加熱する
ことを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の顔料の製造方法。
【請求項9】
チタン化合物の加水分解物の酸解こう品と、カルシウムを含む水溶性化合物と、アルカリとを混合して常圧下で70℃以上100℃以下に加熱して反応物を生成し、
得られた反応物を冷却した後にpH7.0以下で1時間以上保持し、
上記の保持後の反応物を固液分離して固形分を回収し、及び
固形分を500℃以上で焼成する
ことを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の顔料の製造方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の顔料を含む化粧料。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の顔料を含む樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載の顔料を含む塗料。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載の顔料を含むインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料に関し、特に、暖色光透過効果を有し、更に隠ぺい力が大きい上記顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーション等のメークアップ化粧料は、肌に起因する赤ら顔、くすみ、しみ、そばかす等をカバーし、見た目が均一で美しい肌を演出するため、着色力が大きい酸化チタン顔料と、他の無機顔料、有機顔料等の着色剤を加えることにより、肌の色合いを変化させる化粧料として使用されている。
【0003】
前記の酸化チタンについては肌の色合いを均一にするため、隠ぺい力が大きい顔料が一般的に使用されている。隠ぺい力が小さい顔料を化粧料に使用すると、十分な隠ぺい力を発揮させるためには多量の顔料を配合することが必要となり、化粧料の使用性が悪化する。特許第2584562号(特許文献1)では、球状または楕円形の二酸化チタンを含有する、隠蔽力のある化粧料が提案されている。
【0004】
しかしながら、隠ぺい力が大きい酸化チタンを配合したファンデーションやコンシーラーを使用して肌に化粧した際、白色の散乱光の強度が強くなりすぎてメークアップの仕上がりが青白く不自然に見えるという現象が発生しがちで、いわゆる白浮き現象として問題となっている。
【0005】
白浮き現象を防止する手段の一つとして、特定の形状のルチル型酸化チタンを使用することで、着色力や隠ぺい力と白色の散乱光の強度とのバランスを取ることが挙げられる。例えば、特許第4684970号(特許文献2)には棒状の一次粒子が集合及び/又は結合した扇状のルチル型酸化チタン粒子の凝集体を化粧料に配合することが記載されている。また、特許第6258462号(特許文献3)には粒子表面に針状突起を有するルチル型二酸化チタンを焼成して得られるルチル型二酸化チタン粉体を化粧料に配合することが記載されている。
【0006】
白浮き現象を防止する別の手段として、肌内部での暖色領域の光の散乱を利用することが挙げられる。特許第5363696号(特許文献4)には、素肌における皮膚内部に伝搬する光に着目し、検討を行ったことが記載されている。具体的には、皮膚などの光散乱媒体では、肌上へ照射された光の一部が内部へと透過し、内部の散乱体にて反射されるため、照射部位とは異なる部位からも射出するが、波長630nmから700nmにおける光の吸収率が小さい色材を肌化粧料に用いることにより、上記の射出部位の分布が素肌のものと近くなり、自然な質感が得られることが記載されている。
【0007】
しかし、近年ルチル型酸化チタンを含む酸化チタン(IV)については、健康被害の可能性が否定できない、として欧州を中心に、使用量を低減したり、代替材料を使用する動きが広がっている。特開平5-339121号公報(特許文献5)では、ルチル型酸化チタン以外の顔料として、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウムなどのペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物を使用することが提案されている。特許第3464564号(特許文献6)にも、ペロブスカイト型構造を有する複酸化物又はその固溶体である粒子を用いた紫外線防御化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第2584562号
【文献】特許第4684970号
【文献】特許第6258462号
【文献】特許第5363696号
【文献】特開平5-339121号公報
【文献】特許第3464564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献5では、滑沢性、付着力、カバー力についてのみ論述されており、白浮き現象への対応が考慮されていない。また、特許文献5には、ペロブスカイト型の結晶構造をもつ化合物からなり、平均粒子径が0.05~15μmの範囲にあり、かつ、等軸形状をもつ粒子からなる粉末を化粧料に配合することが記載されるにすぎず、そのような粉末の具体的な作製方法については記載されていない。また、特許文献6においては、CaTiOで表される複酸化物粉末を合成したことは記載されているものの、この粉末を化粧料に配合した具体例は記載されておらず、また、ペロブスカイト型の結晶構造を有する複酸化物を含有する化粧料の紫外線防御効果、安全性、及び安定性は記載されているものの、白浮き現象への対応及び隠ぺい力については検討されていない。
【0010】
酸化チタン代替材料の開発は進んでいるものの、自然な仕上がりを実現する、隠ぺい力が大きい化粧料の開発はまだ途上である。
【0011】
本発明の課題は、暖色領域の光を優先的に透過することで自然な仕上がりを実現し、更に隠ぺい力が大きい、酸化チタン代替材料として使用可能である顔料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、酸化チタンの代替材料としてカルシウムチタン複合酸化物に着目し、鋭意検討した結果、透過型電子顕微鏡写真で観察した際に、特定の斑点状の模様が存在することが確認できるカルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなり、かつ真密度が特定の範囲内にある顔料が、暖色領域の光を優先的に透過し、更に隠ぺい力が大きいことを見いだした。
【0013】
本発明は、これらに限定されないが、以下を含む。
[1]カルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料であって、
前記顔料中のカルシウムチタン複合酸化物の粒子を倍率10万倍の透過型電子顕微鏡写真で観察した際、粒子内に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に点在することが確認でき、
真密度が3500kg/m以上3790kg/m以下である、前記顔料。
[2]前記周囲よりも色の薄い部分の形状が、直径が1.5nm以上15.0nm以下の円形または長軸の長さが1.5nm以上15.0nm以下の楕円形であり、かつ
前記周囲よりも色の薄い部分が、前記透過型電子顕微鏡写真上の1.0×10nmに相当する範囲に100個以上200個以下存在する、[1]に記載の顔料。
[3]前記周囲よりも色の薄い部分の直径または長軸長の数平均値が、2.5nm以上4.5nm以下である、[1]または[2]に記載の顔料。
[4]粒子径が200nm以上500nm以下である[1]から[3]のいずれか一項に記載の顔料。
[5]JISZ8825:2013にて設定されている粒子径分布の幅が10.00より小さい[1]から[4]のいずれか一項に記載の顔料。
[6]X線回折測定において、回折角度が32.50°以上33.50°以下の範囲に出現する(1 2 1)面の回折線の積分回折強度を100.0としたとき、回折角度が24.75°以上28.00°以下の範囲に出現する回折線の積分回折強度の割合が12.00以下である、[1]から[5]のいずれか一項に記載の顔料。
[7]粒子の表面の少なくとも一部に無機物及び/又は有機物の被覆層を有する、[1]から[6]のいずれか一項に記載の顔料。
[8]チタン源とカルシウム源とを含む水溶液を用意し、
前記水溶液を加熱してチタン源とカルシウム源とを反応させて反応物を生成し、
前記反応物に脱カルシウム処理を行い、次いで固液分離して固形分を回収し、及び
得られた固形分を加熱する
ことを含む、[1]から[7]のいずれか一項に記載の顔料の製造方法。
[9]チタン化合物の加水分解物の酸解こう品と、カルシウムを含む水溶性化合物と、アルカリとを混合して常圧下で70℃以上100℃以下に加熱して反応物を生成し、
得られた反応物を冷却した後にpH7.0以下で1時間以上保持し、
上記の保持後の反応物を固液分離して固形分を回収し、及び
固形分を500℃以上で焼成する
ことを含む、[1]から[7]のいずれか一項に記載の顔料の製造方法。
[10][1]から[7]のいずれか一項に記載の顔料を含む化粧料。
[11][1]から[7]のいずれか一項に記載の顔料を含む樹脂組成物。
[12][1]から[7]のいずれか一項に記載の顔料を含む塗料。
[13][1]から[7]のいずれか一項に記載の顔料を含むインク。
【発明の効果】
【0014】
本発明で得られるカルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料は、暖色領域の光を優先的に透過し、更に隠ぺい力が大きい。
【0015】
本発明で得られるカルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料は、特にファンデーション等の肌に塗布する化粧料の材料として用いた場合、透過した暖色領域の光が肌内部で散乱することで、自然な仕上がりを実現し、かつ隠ぺい力が大きい化粧料を得ることが可能である。
【0016】
また本発明で得られる顔料は、酸化チタンの代替材料としても使用することができる。本発明の顔料に用いられるカルシウムチタン複合酸化物は、酸化チタンと同等の紫外線遮へい効果を有するため、サンカットクリームなどに使用することが可能である。
【0017】
本発明で得られる顔料は、化粧料以外の分野でも、暖色領域の光を透過する機能及び隠ぺい力が大きいという機能を活かして、幅広い用途に使用することが可能である。そのような用途としては、例えば、これらに限定されないが、樹脂に添加して暖色光透過効果を有する樹脂組成物を形成すること、塗料に添加して住宅用塗料に用いること、などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例5で得た顔料の透過型電子顕微鏡写真である。
図2】実施例3で得た顔料の透過型電子顕微鏡写真である。
図3】比較例3で得た顔料の透過型電子顕微鏡写真である。
図4】実施例5で得た顔料の透過型電子顕微鏡写真に、面積が1.0×10nmである長方形を書き込んだものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、カルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料であって、前記顔料中のカルシウムチタン複合酸化物の粒子を倍率10万倍の透過型電子顕微鏡写真で観察した際、粒子内に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に点在することが確認でき、かつ、真密度が3500kg/m以上3790kg/m以下である、顔料に関する。
【0020】
「カルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料」とは、顔料を構成する個々の粒子が主にカルシウムチタン複合酸化物の粒子であることを意味する。具体的には、顔料を構成する個々の粒子の850g/kg以上、好ましくは900g/kg以上がカルシウムチタン複合酸化物の粒子であることを意味する。本発明の顔料を構成する個々の粒子は、カルシウムチタン複合酸化物以外にも、カルシウムチタン複合酸化物の合成反応時の未反応物や、原料由来の不可避的不純物や、被覆層由来の無機物及び/又は有機物を含み得る。
【0021】
本発明の顔料を構成する粒子の主成分であるカルシウムチタン複合酸化物は、直方晶系のカルシウムチタン複合酸化物であることが好ましい。「直方晶系のカルシウムチタン複合酸化物」とは、異なる3つの結晶軸の間の角度が全て90°であるカルシウムチタン複合酸化物を指す。
【0022】
本発明の顔料におけるカルシウムチタン複合酸化物の粒子は、図1及び図2に示すように、透過型電子顕微鏡写真において、粒子内に色の濃い部分と薄い部分が存在することが特徴である。具体的には、倍率10万倍の透過型電子顕微鏡写真で観察した際、色の濃い部分の中に、色の薄い部分が斑点状に点在することが確認できる。本発明者らは、カルシウムチタン複合酸化物の粒子においてこの斑点状の模様が見られる場合に、顔料の暖色光透過効果が向上することを見出した。この斑点状の模様と暖色光透過効果との関係は明らかになっていないが、上記のような効果が得られる理由については以下のように推測している:
本発明の顔料は、合成の過程で粒子内部に空孔が発生したと考えられる。空孔に相当する部分は透過型電子顕微鏡で観察すると、周囲よりも色が薄い部分となる。波長が短い光はこのような空孔で容易に散乱及び反射するので、本発明の顔料では、暖色領域の光が優先的に透過したと考えられる。なお、この「空孔」については、他の空孔若しくは外部と繋がっているものと、繋がっていないもの、の両方が存在すると考えている。
本発明者らは、透過型電子顕微鏡写真で観察した際に上記のような斑点状の模様が観察されるカルシウムチタン複合酸化物の粒子を、後述する方法で製造することができることを初めて見出した。市販品のカルシウムチタン複合酸化物を透過型電子顕微鏡写真で観察した場合には、図3に示すように斑点状の模様は見られなかった。
【0023】
本発明の顔料中のカルシウムチタン複合酸化物の粒子における上記の斑点状の模様は、粒子全体に均一に分布していることが望ましい。しかし、透過型電子顕微鏡写真では、粒子同士が重なっていたり、また、粒子の厚みが一部特異的に大きいなどの理由で色の薄い部分を観察できなくなっている場合もある。粒子同士の重なりがなければ、粒子の外縁部では通常、粒子の厚みが特異的に大きくなるということはない。したがって、本発明における斑点状の模様がある粒子は、倍率10万倍の透過型電子顕微鏡写真で観察した際、通常、少なくともその外縁部において斑点状の模様を観察することができる。一方、粒子同士の重なりが無い場合であって、倍率10万倍の透過型電子顕微鏡写真で粒子の外縁部においても斑点状の模様が観察できない場合には、その粒子には斑点状の模様はないと判断することができる。
【0024】
また、本発明の顔料は、後述する方法で評価した真密度が小さいという特徴がある。本発明の顔料の真密度は、3500kg/m以上3790kg/m以下である。上記の斑点状の模様が観察でき、かつ真密度が3790kg/m以下である場合、暖色光透過効果に加えて、隠ぺい力の向上効果も得られるようになる。隠ぺい力の大きさは、粒子自体の形状に依存し、具体的には、後述する直方体状の粒子の方が略球状の粒子よりも隠ぺい力が全体的に大きくなる傾向はあるが、同等の形状の粒子同士で比べた場合には、倍率10万倍の透過型電子顕微鏡写真で斑点状の模様が観察でき、真密度が3790kg/m以下である場合に、隠ぺい力がより大きくなることを見出した。真密度と隠ぺい力の向上との関係は明らかになっていないが、真密度が小さい場合、粒子内部に十分な空孔が形成されているため、光が散乱及び反射しやすくなり、暖色光透過効果に加えて、隠ぺい力の向上効果を得られるようになったと考えられる。真密度が3500kg/mより小さいと、粒子が崩壊しやすくなり化粧料としての使用性が悪化するおそれがあるので、真密度は3500kg/m以上が好ましい。
【0025】
前述の斑点状に点在する色の薄い部分は、直径が1.5nm以上15nm以下の円形または長軸の長さが1.5nm以上15nm以下の楕円形の形状を有しており、かつ、倍率10万倍の透過型電子顕微鏡写真上の1.0×10nmに相当する範囲に100個以上200個以下存在すると、同等形状の粒子同士で比較した際に隠ぺい力の更なる向上効果がみられるため、好ましい。また、上記の直径または長軸長の数平均値(以下、「数平均径」とも呼ぶ)は、2.5nm以上4.5nm以下が好ましく、2.5nm以上4.2nm以下が更に好ましく、3.0nm以上4.2nm以下が一層好ましい。粒子の数平均径が2.5nm以上であると、後述する方法で評価した隠ぺい率が大きくなりやすく、4.5nm以下であると、粒子の構造安定性を得られやすいと考えられる。なお、上記の「円形」は、真円のみに限定することを意図したものではなく、円に近い形状を含むことを意図している。「楕円形」についても同様である。
【0026】
また、上記の透過型電子顕微鏡写真上の1.0×10nmに相当する範囲に周囲よりも色の薄い部分が100個以上存在することにより、粒子内部の空孔における波長の短い光の散乱が十分に生じ、暖色領域の光の優先的な透過が得られると共に、顔料の隠ぺい力が向上すると考えられる。一方、200個より多くても隠ぺい力がさらに向上することはなく、また、200個より多いと粒子内部の空孔が多いので粒子が崩壊しやすくなり化粧料としての使用性が悪化するため、上記の色の薄い部分の個数は200個以下がよい。
倍率10万倍の透過型電子顕微鏡写真上の周囲よりも色の薄い部分の直径または長軸長の測定方法、及び1.0×10nmに相当する範囲における周囲よりも色の薄い部分の個数の具体的な測定方法については、後述する。
【0027】
本発明で得られる顔料は、粒子形状が略球状のものと、直方体状のものがある。「略球状」とは、図1にみられるような、一次粒子もしくは二次粒子が、等方的に結晶成長しているか又は等方的に集合体を形成しており、不定形又は球状に近い外形を持つものをいう。例えば、図2にみられるような直方体状であったり、又は細長い針状であったり、ウニのように中心部の径と同じかそれ以上の長さの突起が生えているものは、「略球状」に含まないものとする。「直方体状」とは、図2にみられるような一次粒子もしくは二次粒子が、他の2軸に比べて特定の1軸方向により多く結晶成長しているか又は特定の1軸方向により多く集合体を形成することにより直方体に近い外形を持つものをいう。「直方体状」と呼ぶ場合、完全な直方体(6面すべてが長方形又は正方形で形成されている)である必要はない。また、長軸方向に垂直な粒子断面の形状も長方形又は正方形である必要はなく、全ての断面の断面形状が同一形状である必要はない。
「粒子形状が略球状」又は「粒子形状が直方体状」とは、本発明の顔料を構成する粒子の80個数%以上、好ましくは85個数%以上が、それぞれ、略球状又は直方体状であることを含む。
【0028】
一概には言えないが、略球状の粒子からなる顔料は化粧料に使用した際に滑らかな感触を得るのに適している。一方で直方体状の粒子からなる顔料は、略球状の粒子に比べて、隠ぺい力が大きい傾向があり、隠ぺい力の求められる化粧料を得るのに適している。
本発明の顔料は、直方体状であると、略球状の場合に比べて、さらに大きな隠ぺい力が得られるという利点があるが、本発明の顔料は直方体状に限定されるものではない。例えば、化粧料の所望のテクスチャーに応じて顔料の粒子形状を略球状にすることが望まれる場合、本発明にしたがって「カルシウムチタン複合酸化物の粒子を倍率10万倍の透過型電子顕微鏡写真で観察した際、粒子内に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に点在することが確認でき、かつ、真密度が3500kg/m以上3790kg/m以下である」という特徴を有する略球状の粒子を用いた顔料とすることにより、このような特徴を有しない略球状の粒子による顔料と比べて、大きな隠ぺい力が得られるという利点が得られる。
【0029】
本発明の顔料は、粒子径が200nm以上500nm以下であることが好ましい。粒子径がこのような範囲内にあると、光の散乱が生じやすくなり、大きな隠ぺい力が得られやすい傾向がある。顔料の粒子径の測定方法は後述する。
【0030】
本発明の顔料は、粒子径分布の幅が小さい方が好ましい。粒子径分布の幅が大きいと、粒子径が不均一となり、化粧料等に使用した際に充填率が低下し、隠ぺい力が低下しやすくなる。粒子径分布の幅は、10.00以下であることが好ましく、8.00以下であることが更に好ましく、5.00以下であることが更に好ましい。顔料の粒子径分布の幅の測定方法は後述する。
【0031】
本発明の顔料は、酸化チタンを使用した化粧料の代替材料として使用される可能性があることから、酸化チタンの含有量が小さいことが望ましい。カルシウムチタン複合酸化物中の酸化チタンの厳密な含有量を算出するには、本発明の顔料と酸化チタンとを混合して粉末法によるX線回折測定を実施し、検量線を作成する必要があるが、この方法は多大な時間とコストが必要となる。そこで、より簡易的に酸化チタンの含有量が小さいことを確認する方法として、粉末法によるX線回折測定において、カルシウムチタン複合酸化物で最も積分回折強度が大きい32.50°以上33.50°以下の範囲に出現する(1 2 1)面の回折線と、ルチル型、アナターゼ型及びブルッカイト型の酸化チタンで最も積分回折強度が大きい24.75°以上28.00°以下の範囲に出現する回折線の積分回折強度比を比較する方法が挙げられる。本発明では、32.50°以上33.50°以下に出現する(1 2 1)面の回折線の積分回折強度を100.0としたとき、24.75°以上28.00°以下の範囲に出現する回折線の積分回折強度の割合(以下「XRD酸化チタン積分回折強度」と記す)が、12.00以下であることが好ましい。このような条件を満たすと、顔料中の酸化チタンの含有量が少ないとみなすことができる。上記XRD酸化チタン積分回折強度は、11.00以下であることが更に好ましく、8.50以下が一層好ましい。なお、24.75°以上28.00°以下の範囲にはカルシウムチタン複合酸化物の(1 1 1)面の回折線が存在し、(1 2 1)面の回折線の積分強度を100.0とした場合のこの(1 1 1)面の回折線の積分回折強度は3程度であるため、酸化チタンを全く含有しない場合でも上記積分回折強度はゼロとはならない。
【0032】
本発明の顔料の色は特に制限されない。但し、酸化チタンの代替として使用される可能性があることから、酸化チタンと同じく、白色であることが好ましい。
【0033】
本発明の顔料は、疎水性、光学特性などを付与するために、粒子の表面に無機物からなる被覆層が存在していてもよい。また有機物からなる被覆層が存在していてもよい。二層以上の被覆層が存在していても、あるいは無機層と有機層の両方を含んでいてもよい。
【0034】
本発明の顔料は、後述する方法で算出される暖色光透過効果が0.580以上となることが好ましい。暖色光透過効果が0.580以上であると、化粧料に用いた際に肌内部での暖色領域の反射が十分となり、自然な仕上がりが得られる。なお、暖色光透過効果の上限値は特にないが、本発明で用いる評価方法で算出される暖色光透過効果の理論上の最大値は1.000である。
【0035】
本発明で得られる顔料は隠ぺい力が大きい方が好ましい。隠ぺい力の指標である隠ぺい率を後述する方法で評価した場合、粒子が略球状である顔料については、隠ぺい率が0.690以上であることが好ましい。粒子形状が略球状であって隠ぺい率が前述の範囲にある顔料は、化粧料に対して、滑らかな触感と隠ぺい力を付与することができる。粒子が直方体状である顔料については、隠ぺい率が0.730以上であることが好ましい。粒子形状が直方体状であって隠ぺい率が前述の範囲にある顔料は、化粧料に対して、非常に大きい隠ぺい力を付与することができる。なお、隠ぺい率の上限値は特にないが、本発明で用いる評価方法で算出される隠ぺい率の理論上の最大値は1.00である。
【0036】
本発明の顔料の製造方法の一例を示す。なお、本発明の顔料の製造方法は以下に限定されない。
【0037】
本発明の上記の特徴を有するカルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料は、チタン源とカルシウム源とを含む水溶液を加熱してチタン源とカルシウム源とを反応させて反応物を生成し、得られた反応物に脱カルシウム処理を行った後に固液分離して固形分を回収し、得られた固形分を加熱(焼成)することによって製造することができる。チタン源は、好ましくはチタン化合物の加水分解物の酸解こう品であり、代表的には、硫酸法と呼ばれる方法で得られたメタチタン酸の解こう品である。チタン源とカルシウム源との反応の際には、アルカリを混合して、常圧で70℃以上100℃以下に加熱することが好ましい(常圧加熱反応法)。脱カルシウム処理の際には、常圧加熱反応法で得られた反応物を冷却した後にpH7.0以下で1時間以上保持することが好ましい。得られた固形分は、500℃以上で焼成することが好ましい。
【0038】
(硫酸法)
イルメナイト鉱石を濃硫酸で溶解し、生じる硫酸鉄成分を除去し、加水分解工程を経ることにより、化学式TiO(OH)で表されるメタチタン酸を得ることができる。
【0039】
(常圧加熱反応法)
チタン源の代表例であるチタン化合物の加水分解物の酸解こう品としては、メタチタン酸の酸解こう品が挙げられる。メタチタン酸としては、硫黄含有量(SO換算)が15g/kg以下、好ましくは10g/kg以下とした化合物をチタン化合物の加水分解物として用い、この加水分解物を塩酸を用いてpH0.8以上1.5以下に調整することにより解こうしたものを用いることが好ましい。こうして得たメタチタン酸の解こう品をチタン源として用いることにより、粒子径分布の幅が小さいカルシウムチタン複合酸化物の粒子を得ることができる。メタチタン酸中の硫黄(SO換算)が15g/kgを超えると解こうが進まないことがある。塩酸の他に、硝酸、臭化水素、ヨウ化水素、ギ酸、酢酸等を用いることもできる。また、チタン化合物の加水分解物の酸解こう品の代わりに、同解こう品をアルカリで中和したものを使用することも出来る。
【0040】
カルシウム源(カルシウムを含む水溶性化合物)は、特に限定されないが、例えば、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどがあげられる。
常圧加熱反応法で得られるカルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料の結晶性及び粒子径に影響を及ぼす因子としては、原料の濃度と混合割合、アルカリの濃度、反応温度、及び添加物等が挙げられる。チタン源と、カルシウムを含む水溶性化合物の混合割合は、カルシウム(Ca元素)の物質量がチタン(Ti元素)の物質量に対して1.00倍以上1.60倍以下となることが好ましく、1.10倍以上1.50倍以下が更に好ましい。チタン源として用いられるチタン化合物の加水分解物の酸解こう品は水への溶解度が小さいため、カルシウムの物質量がチタンの物質量より小さい場合、反応生成物中に、カルシウムチタン複合酸化物粒子だけでなく、未反応の酸化チタンが残存し易くなる。常圧加熱反応法における混合物中のチタン化合物の加水分解物の酸解こう品の濃度としては、Tiとして0.5mol/L以上1.5mol/L以下が好ましく、0.7mol/L以上1.4mol/L以下が更に好ましい。
【0041】
常圧加熱反応時には、チタン源とカルシウム源に加えてアルカリを添加することが好ましい。アルカリとしては、苛性アルカリを使用することができ、中でも水酸化ナトリウムが好ましい。常圧加熱反応時の混合物中のアルカリの濃度は、0.1mol/L以上が好ましく、より好ましくは0.5mol/L以上3.6mol/L以下の範囲である。
【0042】
反応時の温度は、高温であるほど結晶性の良好な生成物が得られる。しかしながら、100℃を超える温度での反応には圧力容器が必要であるため、実用的には70℃以上100℃以下の範囲が適切であり、70℃以上100℃未満の範囲であってもよい。
【0043】
カルシウムチタン複合酸化物の粒子の形状を略球状とする場合、常圧加熱反応時に、添加剤として、グルコース、マルトース等の単糖類及び二糖類から選択される1種又は2種以上の糖を添加してもよい。上記のような糖を添加する場合、これらの濃度は、合計で、常圧加熱反応時に添加したカルシウムの量に対して、0.0115mol/mol以上0.0195mol/mol以下であることが好ましい。濃度が0.115mol/mol未満である場合には粒子は略球状とならず、0.195mol/molより大きいと、酸化チタンが残存しやすくなる傾向がある。また、一般に糖の添加量が大きいと粒子径が小さくなる傾向があるが、化粧料として使用する際には粒子径が小さすぎないことが好ましく、その点からも添加する糖の濃度は0.195mol/mol以下であることが好ましい。
【0044】
常圧加熱反応時に、クエン酸やイソクエン酸等の脂肪族ヒドロキシ酸化合物から選択される1種又は2種以上の化合物を添加してもよい。脂肪族ヒドロキシ酸化合物を添加すると、カルシウムチタン複合酸化物の粒子のアスペクト比が大きくなる。脂肪族ヒドロキシ酸を添加する場合、その添加量は、常圧加熱反応時に添加したカルシウムの量に対して、0.0180mol/mol以下であることが好ましい。
【0045】
(脱カルシウム処理)
常圧加熱反応によってカルシウムチタン複合酸化物を合成した後、未反応のカルシウムが残存して表面処理を妨げることを防ぐため、脱カルシウム処理を実施することが好ましい。脱カルシウム処理は、常圧加熱反応からの反応物を55℃以下となるまで冷却した後、酸を用いてpHを7.0以下に調整することを含む。より好ましくはpH6.0以下である。pHの下限は好ましくは2.5以上であり、より好ましくは4.5以上である。pHの調整に用いる酸の種類としては、例えば、塩酸、硝酸、酢酸等が挙げられる。pHが7.0より大きいと、未反応のカルシウムを除去しきれないおそれがある。一方でpHが2.5より小さいと、カルシウムチタン複合酸化物中のカルシウムが酸中に流出し、部分的に酸化チタンが生じる可能性がある。
【0046】
(焼成)
脱カルシウム処理後、固液分離して固形分を回収し、得られた固形分を焼成することが望ましい。高温で焼成するほど得られる顔料の隠ぺい力が向上する傾向があるが、900℃より高い温度で焼成すると顔料の粒子内部の空孔が減少するおそれがあるため好ましくない。本発明の顔料を製造する際の焼成温度は、500℃以上900℃以下が好ましい。
【0047】
(表面被覆処理)
本発明の顔料は、例えば化粧料を製造する際の分散媒体中での分散安定性および耐久性向上の目的のため、その顔料中の粒子表面の少なくとも一部に、アルミニウム、珪素、亜鉛、チタニウム、ジルコニウム、鉄、セリウム及びスズ等の金属の含水酸化物又は酸化物のような無機物の被覆層を付してもよい。上記以外の金属塩を無機物の被覆として用いてもよい。また、粒子表面の少なくとも一部に、疎水処理に代表される表面改質を施すために、有機物の被覆層を付してもよい。有機物の被覆としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン化合物、シラン系、アルミニウム系、チタニウム系およびジルコニウム系等のカップリング剤、パーフルオロアルキルリン酸化合物等のフッ素化合物、炭化水素、レシチン、アミノ酸、ポリエチレン、ロウ、金属石けん等を処理することを挙げることができる。これらの処理を複数組み合わせて実施してもよく、その際処理の順番に特に制限はない。
【0048】
(顔料の用途)
本発明の顔料は、暖色領域の光を優先的に透過することができ、肌に塗布する化粧料の材料として用いた場合、透過した暖色領域の光が肌内部で散乱することで、白浮きを抑制し、自然な仕上がりを実現することが可能である。また、本発明の顔料は暖色領域以外の光を強く散乱するため、肌に塗布する化粧料の材料として用いた場合、肌に起因する赤ら顔、くすみ、しみ、そばかす等をカバーし、見た目が均一で美しい肌を演出することができる。したがって、本発明の顔料は、化粧料の材料として好適に用いることができる。本発明の顔料を含む化粧料は、本発明の一態様である。また、別の観点からは、本発明の顔料の化粧料としての使用も本発明の一態様であり、また、本発明の顔料の化粧料における白浮き現象を抑制するための使用も本発明の一態様であるといえる。ここで「白浮き現象」とは、化粧料を肌に付与した際の白色の散乱光の強度が強い場合のメークアップの仕上がりが青白く不自然に見える現象をいう。「白浮き現象を抑制する」とは、化粧料に配合された本発明の顔料が、暖色領域の光を優先的に透過して、透過した暖色領域の光が肌内部で散乱することにより、上記の白浮き現象を抑制、低減、又は緩和してメークアップの仕上がりが自然に見えることをいう。なお、「暖色領域の光」とは、570nm以上780nm以下の波長の光をいう。
【0049】
本発明の顔料はまた、化粧料以外の分野でも、暖色領域の光を透過する機能を活かして幅広い用途に使用することが可能である。そのような用途としては、例えば、これらに限定されないが、樹脂に添加してサンルーフ等に使用すること、塗料に添加して暖色領域の光を透過する塗装を施すこと、などが挙げられる。また本発明で得られる顔料は、酸化チタンの代替材料としても使用することができる。
【0050】
(化粧料)
本発明の顔料を化粧料として使用する際は、代表的には、表面を上記のように被覆処理した後、公知の方法にしたがって、無機顔料及び/又は有機顔料等と混合してもよい。化粧料中の本発明の顔料の含有量は、化粧料の種類によって異なり、特に限定されない。例えば、パウダータイプの化粧料であれば1g/kg以上900g/kg以下、油性タイプの化粧料であれば1g/kg以上500g/kg以下、乳化タイプやクリーム状の化粧料であれば1g/kg以上150g/kg以下程度の量で用いることができるが、この範囲に限定されない。
【0051】
本発明の顔料を化粧料として使用する際に混合できる無機顔料及び/又は有機顔料としては、通常の化粧料に使用される無機顔料、有機顔料等を必要に応じて用いればよい。このような無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラに代表される酸化鉄、酸化セリウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、雲母、表面処理を行った雲母、雲母状の合成顔料、セリサイト、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、クレー、ケイ酸、チッ化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、ヒドロキシアパタイト、群青、紺青、およびこれらの脱水物、複合体等を挙げることができる。同じく有機顔料としては、シリコーン粉末、シリコーン弾性粉末、ポリウレタン粉末、セルロース粉末、ナイロン粉末、ウレタン粉末、シルク粉末、ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と記す)粉末、ポリエチレン粉末、澱粉、カーボンブラック、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等、およびこれらの複合体等を挙げることができる。またタール色素や各種天然色素も用いることができる。
【0052】
化粧料の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いてよい。化粧料の剤型も特に限定されず、例えば、粉末状、粉末固形状、クリーム、乳液状、ローション状、油性液状、油性固形状、ペースト状等のいずれの状態であってもよい。例えば、メークアップベース、ファンデーション、コンシーラー、フェースパウダー、コントロールカラー、日焼け止め化粧料、口紅、ほほ紅、リップクリーム、リップカラー、リップグロス、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、チークカラー、マニキュア、ボディーパウダー、パヒュームパウダー、ベビーパウダー等のメークアップ化粧料、スキンケア化粧料、ヘアケア化粧料等とすることができる。本発明の顔料による暖色領域の光の透過効果及び隠ぺい力を最大に利用するという点では、肌に塗布するメークアップ化粧料に使用することが好ましい。
【0053】
なお、本発明の化粧料は、上記成分の他に、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的範囲及び質的範囲で他の成分を配合することができる。例えば、油性成分、色素、pH調整剤、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、分散剤、安定化剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、収斂剤、消炎剤、紫外線吸収剤、香料、一部の医薬品等を、目的に応じて適宜配合することができる。
【0054】
本発明の顔料は、化粧料以外にも樹脂組成物、塗料、インクといった分野で使用することが可能である。すなわち、本発明の顔料を含む樹脂組成物、塗料、又はインクは、本発明の一態様である。また、別の観点からは、本発明の顔料の樹脂組成物、塗料、又はインクにおける使用も本発明の一態様である。また、例えば、本発明の顔料の、樹脂組成物、塗料、又はインクを製造するための使用も本発明の一態様であるといえる。
【0055】
本発明の顔料は、樹脂組成物の材料の一つとして使用することができる。本発明の顔料を含む樹脂組成物は具体的には、これらに限定されないが、サンルーフ、樹脂製容器などに使用することができる。樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリカーボネートなどの熱硬化性樹脂のいずれを用いても良い。樹脂組成物は公知の方法で製造される。例えば、有機溶剤や水といった溶媒中にモノマーと本発明の顔料を分散し、重合開始剤を添加して加熱し、洗浄、乾燥することで、本発明の顔料を含む樹脂組成物が得られる。難燃剤、フィラーなどを任意で併用することができる。本発明の顔料は、この範囲に限定されないが、得られた樹脂組成物の中で1g/kg以上350g/kg以下となるように添加するのが好ましい。本発明の顔料を用いることで、暖色光を帯びた、白色の樹脂組成物などを得ることができる。
【0056】
本発明の顔料は、塗料の材料の一つとして使用することができる。本発明の顔料を含む塗料は具体的には、これに限定されないが、寒冷地の住宅用塗料などに使用することができる。本発明の顔料は水性塗料にも油性塗料にも使用することができる。塗料はアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコールなどの樹脂と、トルエン、エタノール、水などの溶剤、そして本発明の顔料に代表される着色剤から得ることができる。塗料は公知の方法で製造することができる。例えば樹脂に硬化剤を加え、更に本発明で得られた顔料と溶剤を加え、撹拌することで本発明の顔料を含む塗料が得られる。沈降防止剤、防腐剤、他の顔料などを任意で併用することができる。本発明の顔料は、この範囲に限定されないが、使用後に乾燥した塗膜の中で1g/kg以上700g/kg以下となるように添加するのが好ましい。本発明の顔料を用いることで、暖色領域の光を優先的に透過して室内の温度を上げやすくする住宅用塗料などを得ることができる。
【0057】
本発明の顔料はインクに用いることができる。本発明の顔料を含むインクは具体的には、これらに限定されないが、フィルム、ガラス面などに印刷する特殊インクなどに使用することができる。インクは本発明で得られる顔料に代表される着色剤と、アクリル樹脂などの樹脂と、ケトン、炭化水素、水といった溶媒とから得ることができる。インクは公知の方法で製造される。例えば着色剤、樹脂、溶媒を分散混合することでインクが得られる。pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、本発明で得られた顔料以外の顔料などを任意で併用することができる。本発明の顔料は、この範囲に限定されないが、得られたインクの中で1g/kg以上600g/kg以下となるように添加するのが好ましい。本発明の顔料を用いることで、例えばビニールやガラスなどの透明な基材に印刷し、これまでの白色顔料にはない美観を持たせることが可能となる。
上記以外にも、本発明の顔料は、紙、トナー外添剤、塗布具、繊維製品、包装材、被膜、コート材、といった用途で使用することができる。
【0058】
実施例の説明に先立ち、本発明で用いた試験方法について説明する。
【0059】
(周囲よりも色が薄い部分の直径若しくは長軸長、及び面積当たりの個数)
日本電子社製透過型電子顕微鏡JEM-1400plus(以下、「TEM」と記す)を用いて加速電圧100kV、倍率10万倍で顔料を撮影した。写真中の粒子の中で、粒子同士が重なっているもの、粒子の厚みが大きいため斑点状の模様が計数しづらくなっているもの以外の中から、周囲の粒子と同様の外観を示している粒子に対して可能な限りピントを合わせ、コントラストを明確にした上で撮影した。選択した粒子の写真に、図4に例示するように、面積が1.0×10nmとなる長方形の枠を書き込んだ。枠内の領域で、斑点状に点在する略円形又は略楕円形の外形を有する色の薄い部分の直径または長軸長を測定した。同じ操作を10個以上の粒子に対して実施し、直径又は長軸長が1.5nm以上15.0nm以下の範囲にある斑点状に点在する色の薄い部分の直径または長軸長の数平均値(数平均径)、並びに最大値(最大径)を記録した。斑点同士が繋がっている場合、外径が1/2以上確認できる斑点については、粒子外径より径を推測した。また、上記の1.0×10nmの枠内にある直径又は長軸長が1.5nm以上15.0nm以下の範囲にある斑点状の色の薄い部分の数を目視で数えた。なお、本発明で言及する「色の薄い部分」とは、本発明の顔料中のカルシウムチタン複合酸化物粒子内部に通常広く分布する、周囲よりも色が薄く(通常濃い灰色または黒っぽい周囲に対して白または薄い灰色に)写る部分である。色の薄い部分は、本発明の上記粒子中では通常略円形または楕円形状の斑点状に点在することが観察できる。装置若しくは評価に使用した器具等に起因するTEM写真上のエラーや、局所的な異物及び粒子の欠損などに起因する周囲の他の粒子とは明らかに異なる外観を呈する粒子における特異的な白抜け箇所等は、本発明でいう「色の薄い部分」に含まない。
なお、上記の方法で倍率10万倍で粒子全体を観察し、色の薄い部分が斑点状に点在することを観察できない場合、該粒子内部には斑点状の模様が存在しないと判断した。
(真密度)
JIS K 5101-11-1:2004のA法に準じて、測定を行った。ピクノメーターとしては柴田科学社製50mL比重瓶055520-050型を、置換液体としてはシグマアルドリッチジャパン社製SAJ特級のケロシンを使用した。試料として2gの乾燥品を使用し、25℃に調整することで真密度を測定した。
【0060】
(粒子径分布の幅)
粒子径分布の幅は、マイクロトラック・ベル社製レーザー光回折散乱式粒度分析計マイクロトラック(登録商標)MT3300EXIIを用い、JIS Z 8825:2013に準ずる方法で測定した。分散媒にはイオン交換水を使用した。顔料を測定装置に付設した自動試料循環器の超音波分散槽に適量滴下した後に、超音波分散を出力40Wで360秒行った。この後に、各計測パラメーターは、イオン交換水の屈折率を1.33、測定対象粒子の光透過性を反射、計測時間を30秒として、積算粒度分布(体積基準)の10%に対応した粒子径(X10)と積算粒度分布(体積基準)の90%に対応した粒子径(X90)を測定して、X90/X10を粒子径分布の幅とした。
【0061】
(粒子径)
粒子径は、粒子を二次元に投影した時の粒子の面積をSとして、等面積円相当径Rを2×(S/π)^0.5で求めた。粒子の面積Sは、TEMを用いて観察倍率1万倍で粒子を撮影し、画像解析ソフトImageJを用いて算出した。粒子200個以上のRを平均した値を、粒子径とした。
【0062】
(XRD酸化チタン積分回折強度)
リガク社製X線回折装置RINT-TTR IIIを用い、粉末法によるX線回折測定を実施した。試料量は乳鉢ですり潰した上でセルに約1.5g±0.2gでパッキングし、開始角度は5.0000°、終了角度は90.0000°、サンプリング幅は0.0100°、スキャンスピードは10.0000°/min、発散スリットは0.5°、散乱スリットは0.5°、受光スリットの幅は0.15mm、特性X線は陰極に銅を用い、波長は0.15418nmとした。得られたX線回折パターンについて、リガク社製粉末X線解析ソフトウェアPDXL2を用いてバックグラウンド処理、平滑化及びピーク検出を実施し、回折角度2θが32.50°以上33.50°以下の範囲に出現する(1 2 1)面の回折線の積分回折強度を100.0とした際の、回折角度2θが24.75°以上28.00°以下の範囲に出現する回折線の積分回折強度の割合を算出し、これをXRD酸化チタン積分回折強度とした。
【0063】
(暖色光透過効果)
東洋精機製作所社製H3型オートマチックフーバーマーラーによりスチレン化アルキッド樹脂3mLと顔料0.3gを混練して塗料化し、得られた分散物を白黒の隠ぺい率試験紙JIS-K5600-4-1上に3ミルのドクターブレードにより塗布し、130℃で30分焼き付けを行い、試験サンプルを得た。試験サンプルの黒地において、波長380nm以上780nm以下における反射率を、日本電色工業社製分光色差計SQ-2000(以下「色差計」と記す)を用いて測定した。100%から当該測定値を引き、各波長における透過率を算出した。380nm以上780nm以下の透過率を合計した値を全透過光量、570nm以上780nm以下の透過率を合計した値を暖色透過光量とし、暖色透過光量/全透過光量の値を暖色光透過効果とした。
【0064】
(隠ぺい率)
顔料の隠ぺい力の指標である隠ぺい率について、色差計を使用し、上記の暖色光透過効果の欄に記載した方法で作製した試験サンプルの黒地における明度指数L及び白地における明度指数Lを測定し、L/Lの値を隠ぺい率とした。
【実施例
【0065】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、以下の実施例は単に例示のために示すものであり、発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。
【0066】
なお、実施例及び比較例中に記載の撹拌操作では、液量や液の粘度、容器の形状といった、撹拌時の液の挙動に関係する性状を考慮し、液全体が均一に混合され、かつ飛沫が周囲に飛び散らないように回転数を適切に調整している。また、水酸化ナトリウムなど、一般的な市販品であればどの企業の製品を使用しても同じ効果が得られる場合、製造元及び販売元の企業名を省略している。
【0067】
[実施例1:直方体状粒子]
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行って、硫黄含有量がSO換算で9.3g/kgのメタチタン酸ケーキ(チタン化合物の加水分解物)を得た。洗浄済みケーキに水を加えて、Tiとして2.13mol/Lのスラリーとした後、塩酸を加えてpH1.4とし、解こう処理を行い、チタン化合物の加水分解物(メタチタン酸)の酸解こう品を得た。処理後のスラリーをTiOとして2.25mol採取して、容量3000mLの反応容器に投入した。これに、Caとしてのカルシウムの物質量がTiとしてのチタンの物質量の1.15倍となるように水酸化カルシウムを添加し、水酸化ナトリウムを0.36mol添加し、水を加えて総容量を2.0Lとして、当該混合溶液を新東科学社製HEIDON600Gを用いて30分間撹拌した。
【0068】
前記スラリーをさらに撹拌混合しつつ、東京技術研究所社製B-E型マントルヒーターを用いて95℃に加温し、18時間撹拌を続け反応を終了した(常圧加熱反応)。撹拌後のスラリーを50℃まで放冷し、pH5.0となるまで塩酸を加えて、さらに1時間撹拌を続けた(脱カルシウム処理)。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、ろ過による分離後、エスペック社製パーフェクトオーブンPHH-202を用いて大気中、120℃で10時間乾燥した。この乾燥物を、500℃に設定したモトヤマ社製SUPER-C C-2035D(以下「焼成炉」と記す)にて大気中で1時間焼成した。この焼成品を石川工場社製石川式撹拌擂潰機AGA型(以下「自動乳鉢」と記す)で粉砕し、白色の顔料を得た。顔料を構成する粒子の形状は主に直方体状であった。当該顔料を上記の試験方法で評価したところ、透過型電子顕微鏡写真において粒子内部に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に存在することが確認され、この周囲よりも色の薄い部分は、円形または楕円形であり、直径又は長軸長の最大値は10.0nm、数平均値は4.1nmであった。また、真密度は3760kg/mであった。また、周囲よりも色が薄い部分は、1.0×10nmの範囲内に165個存在した。顔料の粒子径は294nm、粒子径分布の幅は2.25、XRD酸化チタン積分回折強度は5.23であった。また、暖色光透過効果は0.586、隠ぺい率は0.731であった。
【0069】
[実施例2:直方体状粒子]
焼成炉の設定温度を700℃に変更した以外は、実施例1と同様の条件で常圧加熱反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過、乾燥及び粉砕を行い、白色の顔料を得た。顔料を構成する粒子の形状は主に直方体状であった。当該顔料は透過型電子顕微鏡写真において粒子内部に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に存在することが確認され、この周囲よりも色の薄い部分は、円形または楕円形であった。各測定結果を表2に示す。
【0070】
[実施例3:直方体状粒子]
焼成炉の設定温度を900℃に変更した以外は、実施例1と同様の条件で常圧加熱反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過、乾燥及び粉砕を行い、白色の顔料を得た。顔料を構成する粒子の形状は主に直方体状であった。当該顔料は透過型電子顕微鏡写真において粒子内部に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に存在することが確認され、この周囲よりも色の薄い部分は、円形または楕円形であった。各測定結果を表2に示す。
【0071】
[比較例1:直方体状粒子]
焼成炉による焼成を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の条件で常圧加熱反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過、乾燥及び粉砕を行い、白色の顔料を得た。顔料を構成する粒子の形状は主に直方体状であった。当該顔料は透過型電子顕微鏡写真において粒子内部に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に存在することが確認され、この周囲よりも色の薄い部分は、円形または楕円形であった。各測定結果を表2に示す。
【0072】
[実施例4:略球状粒子]
水酸化カルシウム添加後に添加した水酸化ナトリウムの量を3.60molへ変更し、水酸化ナトリウム添加後にグルコースを1molのCaに対して0.0193mol添加した以外は実施例1と同様の条件で常圧加熱反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過、乾燥、焼成及び粉砕を行い、白色の顔料を得た。顔料を構成する粒子の形状は主に略球状であった。当該顔料は透過型電子顕微鏡写真において粒子内部に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に存在することが確認され、この周囲よりも色の薄い部分は、円形または楕円形であった。各測定結果を表2に示す。
【0073】
[実施例5:略球状粒子]
焼成炉の設定温度を700℃に変更した以外は、実施例4と同様の条件で常圧加熱反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過、乾燥及び粉砕を行い、白色の顔料を得た。顔料を構成する粒子の形状は主に略球状であった。当該顔料は透過型電子顕微鏡写真において粒子内部に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に存在することが確認され、この周囲よりも色の薄い部分は、円形または楕円形であった。各測定結果を表2に示す。
【0074】
[実施例6:略球状粒子]
焼成炉の設定温度を900℃に変更した以外は、実施例4と同様の条件で常圧加熱反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過、乾燥及び粉砕を行い、白色の顔料を得た。顔料を構成する粒子の形状は主に略球状であった。当該顔料は透過型電子顕微鏡写真において粒子内部に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に存在することが確認され、この周囲よりも色の薄い部分は、円形または楕円形であった。各測定結果を表2に示す。
【0075】
[比較例2:略球状粒子]
焼成炉による焼成を行わなかったこと以外は、実施例4と同様の条件で常圧加熱反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過、乾燥及び粉砕を行い、白色の顔料を得た。顔料を構成する粒子の形状は主に略球状であった。当該顔料は透過型電子顕微鏡写真において粒子内部に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に存在することが確認され、この周囲よりも色の薄い部分は、円形または楕円形であった。各測定結果を表2に示す。
【0076】
[比較例3:市販品]
市販品である高純度化学研究所社製カルシウムチタン複合酸化物試薬CAF04PBを比較例3とした。当該試薬の外観は淡桃色で、透過型電子顕微鏡写真において粒子内部の色合いはほぼ一様であり、斑点状の模様は確認できなかった。各測定結果を表2に示す。
【0077】
表1は実施例及び比較例の顔料の製造条件を、表2は実施例及び比較例で得られた顔料の特性についての各測定結果を示す。
【0078】
表2に示される通り、透過型電子顕微鏡写真において粒子内部に周囲よりも色の薄い部分が斑点状に存在することが確認できるカルシウムチタン複合酸化物を主成分とする粒子からなる顔料は、斑点状の模様が確認できない顔料(比較例3)に比べて、暖色光透過効果が大きくなった。さらに、真密度が3500kg/m以上3790kg/m以下である顔料は、同等の粒子形状のもの同士を比較した場合(実施例1~3と比較例1の比較、及び実施例4~6と比較例2の比較)、隠ぺい力も大きくなることがわかった。これらの顔料は、暖色領域の光を優先的に透過し、かつ隠ぺい力が大きい顔料であると言える。
【0079】
以上の通り、本発明の顔料は暖色領域の光を優先的に透過し、かつ隠ぺい力が大きいといえる。本発明の顔料を化粧料の原料として使用することにより、自然な仕上がりを実現し、かつ隠ぺい力が大きい化粧料を得ることが可能である。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
次に、実施例及び比較例で得られた各顔料を用いて作製したパウダーファンデーションについて、以下の方法で官能評価を行った。
【0083】
(パウダーファンデーションの官能評価)
実施例及び比較例で得られた各顔料にメチルハイドロジェンポリシロキサンを表面処理し、表3に示す配合割合でHANIL Electric.Co.,Lid製LAB.MIXER LM-110T(以下「ミキサー」と記す)により均一に混合した。混合物を東京アトマイザー製造社製サンプルミルTASM-1(以下「サンプルミル」と記す)で粉砕した後に所定量を金皿に充填し、圧縮成型してパウダーファンデーションを作製した。
【0084】
【表3】
【0085】
得られた各パウダーファンデーションをパネラー10人に腕や顔の、特にくすみ、しみ等がある箇所に塗らせ、自然な仕上がりと隠ぺい力を評価した。
【0086】
(自然な仕上がり)
ファンデーションを使用していない箇所と目視で比較した印象を以下の基準で評価し、パネラー10人の平均点により「自然な仕上がり」を判定した。この点数が高いほど、ファンデーションが「白浮き」しておらず、「自然な仕上がり」を達成していることを意味する。表4に官能評価の結果を示す。
(評価基準)
4点:至近距離(30cm)で見ても、塗っていない箇所と見分けが付かない。
3点:至近距離で見て、塗っていること自体はわかるものの、自然な印象を受ける。
2点:至近距離から見て白っぽい印象を受ける。
1点:離れた位置(1m)から見ても白っぽい印象を受ける。
【0087】
(隠ぺい力)
しみやくすみにファンデーションを塗布した際の印象を以下の基準で評価し、パネラー10人の平均点により「隠ぺい力」を判定した。この点数が高いほど、ファンデーションの隠ぺい力が良好であることを意味する。表4に官能評価の結果を示す。
(評価基準)
4点:至近距離(30cm)で見ても、しみやくすみの存在が分からない。
3点:至近距離から見て、しみやくすみの存在は分かるが目立たない。
2点:至近距離から見て、しみやくすみが分かる。
1点:しみやくすみが判別できる距離が、塗っていない時と変わらない。
(総合評価の判定基準)
自然な仕上がりの点数と、隠ぺい力の点数の合計が7点以上:A、5点以上7点未満:B、3点以上5点未満:C、3点未満:D
【0088】
【表4】
【0089】
官能評価の結果、斑点状の模様が存在する粒子を主成分とする顔料を用いて作製したファンデーションは、白浮きが少なく自然な仕上がりであることがわかった。また、同等の粒子形状同士で比べた場合(実施例1~3と比較例1の比較、及び実施例4~6と比較例2、3との比較)、本発明の顔料は、比較例の顔料に比べて、隠ぺい力が大きいことがわかった。また、粒子が略球状である実施例4~6の顔料は、粒子が直方体状のものに比べると滑らかな感触を有していた。このように、本発明の顔料を化粧料に配合することにより、自然な仕上がりを演出し、隠ぺい力にも優れた化粧料を提供することができた。
【0090】
[実施例7]
(パウダーファンデーションの製造)
下記成分1から成分13を混合して均一に粉砕した後(工程A)、成分15から成分17を均一に混合し、工程Aで得られた混合粉砕物に加えて均一にした(工程B)。更に、成分14を添加し、金型にプレス成型してパウダーファンデーションを得た(工程C)。
【0091】
得られたパウダーファンデーションは、肌に塗布した際に白浮きが発生せず、自然な素肌感のある仕上がりであり、また隠ぺい力も良好であることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .カプリリルシラン処理マイカ(注1) 400
2 .カプリリルシラン処理実施例6記載顔料(注1) 50
3 .シリコーン処理タルク(注2) 残余
4 .シリコーン処理顔料級酸化チタン(注2) 50
5 .シリコーン処理微粒子酸化チタン(注2) 50
6 .シリコーン処理硫酸バリウム(注2) 100
7 .シリコーン処理ベンガラ(注2) 4
8 .シリコーン処理黄酸化鉄(注2) 20
9 .シリコーン処理アンバー(注2) 4
10.シリコーン処理黒酸化鉄(注2) 1
11.フェニル変性ハイブリッドシリコーン複合粉体(注3) 20
12.球状ポリメチルシルセスキオキサン粉体(注4) 5
13.防腐剤 適量
14.香料 適量
15.架橋型ジメチルポリシロキサン(注5) 40
16.トリオクタン酸グリセリル 20
17.スクワラン 10
(注1)信越化学工業社製AES-3083で表面を処理済み
(注2)信越化学工業社製KF-9909で表面を処理済み
(注3)信越化学工業社製KSP-300
(注4)信越化学工業社製KMP-590
(注5)信越化学工業社製KSG-16
【0092】
[実施例8]
(プレストパウダーの製造)
下記成分1から成分7を混合粉砕した後(工程A)、この混合粉砕物をミキサーに移し、成分8から成分12を加えて均一になるよう撹拌混合後(工程B)、サンプルミルにて粉砕し、これをアルミ皿にプレス成型してプレストパウダーを得た(工程C)。
【0093】
得られたプレストパウダーは、肌に塗布した際に白浮きは発生せず、自然な素肌感のある仕上がりであり、また隠ぺい力も良好であることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .タルク 残余
2 .PMMA(注1) 100
3 .セリサイト 300
4 .鱗片状シリカ(注2) 30
5 .実施例4記載顔料 60
6 .防腐剤 適量
7 .色材 適量
8 .メトキシケイヒ酸オクチル 30
9 .スクワラン 20
10.防腐剤 適量
11.抗酸化剤 適量
12.香料 適量
(注1)松本油脂製薬社製マツモトマイクロスフェアM-100、7μm品
(注2)洞海化学工業社製サンラブリーC
【0094】
[実施例9]
(ルースパウダーの製造)
下記成分1から成分7を混合粉砕した後(工程A)、この混合粉砕物をミキサーに移し、成分8から成分10を加えて均一になるよう撹拌混合した(工程B)。更に、工程Bで得られた混合物をサンプルミルにて粉砕し、これを充填しルースパウダーを得た(工程C)。
【0095】
得られたルースパウダーは、肌に塗布した際に白浮きは発生せず、自然な素肌感のある仕上がりであり、また隠ぺい力も良好であることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .タルク 残余
2 .実施例3記載顔料 10
3 .アミホープLL 30
4 .PMMA(注1) 80
5 .防腐剤 適量
6 .色材 適量
7 .スクワラン 10
8 .防腐剤 適量
9 .抗酸化剤 適量
10.香料 適量
(注1)松本油脂製薬社製マツモトマイクロスフェアS-100、10μm品
【0096】
[実施例10]
(油性ファンデーションの製造)
下記成分1から成分6をミキサーにて混合し、均一に粉砕した後(工程A)、成分7から成分16を85℃に加熱して溶解し、工程Aで得られた混合粉砕物を加え均一に撹拌し(工程B)、脱泡後、トレイに固形分を流し込み、室温まで徐冷し、油性ファンデーションを得た(工程C)。
【0097】
得られた油性ファンデーションは、肌に塗布した際に白浮きは発生せず、自然な素肌感のある仕上がりであり、また隠ぺい力も良好であることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .シリコーン処理タルク(注1) 53
2 .シリコーン処理実施例4記載顔料(注1) 150
3 .シリコーン処理セリサイト(注1) 282
4 .シリコーン処理ベンガラ(注1) 5
5 .シリコーン処理黄酸化鉄(注1) 18
6 .シリコーン処理黒酸化鉄(注1) 2
7 .キャンデリラロウ 10
8 .カルナウバロウ 10
9 .セレシン 15
10.デカメチルシクロペンタシロキサン 140
11.イソノナン酸イソノニル 残余
12.ジイソステアリン酸ポリグリセリル 20
13.パルミチン酸デキストリン 10
14.メトキシケイヒ酸オクチル 30
15.防腐剤 適量
16.抗酸化剤 適量
(注1)信越化学工業社製KF-96A-50csで表面を処理済み
【0098】
[実施例11]
(スティックファンデーションの製造)
下記成分12から成分16をミキサーにて混合した(工程A)。また、全量が仕込める容器に成分1から成分11を秤量し、85℃に加熱し、溶解した(工程B)。更に、別の容器に成分17から成分21を秤量し、溶解した(工程C)。その後、工程Bで得られた加熱溶解物に、工程Aで得られた混合物を加え、撹拌機にて目視で均一になるまで分散し、更に工程Cで得られた加熱溶解物を加えて乳化した(工程D)。脱泡後、型に固形分を流し込み、室温まで徐冷し、スティックファンデーションを得た(工程E)。
【0099】
得られたスティックファンデーションは、肌に塗布した際に白浮きは発生せず、自然な素肌感のある仕上がりであり、また隠ぺい力も良好であることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .ジメチルポリシロキサン 180
2 .デカメチルシクロペンタシロキサン 300
3 .メトキシケイヒ酸オクチル 50
4 .リンゴ酸ジイソステアリル 40
5 .キャンデリラワックス 60
6 .水素添加ホホバエステル 40
7 .セチルジメチコンコポリオール 20
8 .セスキイソステアリン酸ソルビタン 5
9 .酸化防止剤 適量
10.防腐剤 適量
11.香料 適量
12.シリコーン処理色剤(注1) 5
13.シリコーン処理実施例1記載顔料(注1) 85
14.シリコーン処理タルク(注1) 60
15.シリコーン処理マイカ(注1) 20
16.ポリメタクリル酸メチル 20
17.精製水 残余
18.クエン酸ナトリウム 3
19.1,3-ブチレングリコール 30
20.グリセリン 20
21.防腐剤 適量
(注1)信越化学工業製KF-99Pで表面を処理済み
【0100】
[実施例12]
(W/O乳化型ファンデーションの製造)
下記成分12から成分14をミキサーにて撹拌混合した後(工程A)、成分1から成分11を加え、撹拌機を用いて目視で均一になるまで分散した(工程B)。一方、別の容器に成分15から成分19を加熱溶解した(工程C)。その後、工程Bで得られた分散物に工程Cで得られた加熱溶解物を加え乳化した後、室温まで冷却し、W/O乳化型ファンデーションを得た(工程D)。
【0101】
得られたW/O乳化型ファンデーションは、肌に塗布した際に白浮きは発生せず、自然な素肌感のある仕上がりであり、また隠ぺい力も良好であることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .POE変性シリコーン(注1) 8
2 .ポリリシノレイン酸ポリグリセリル 5
3 .ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 30
4 .スクワラン 10
5 .テトラオクタン酸ペンタエリスリチル 20
6 .ステアリン酸イヌリン(注2) 10
7 .メトキシケイヒ酸オクチル 40
8 .デカメチルシクロペンタシロキサン 154
9 .防腐剤 適量
10.抗酸化剤 適量
11.香料 適量
12.シリコーン処理実施例5記載顔料(注3) 80
13.シリコーン処理タルク(注3) 57
14.シリコーン処理色剤(注3) 10
15.精製水 残余
16.1,3-ブチレングリコール 60
17.グリセリン 10
18.塩化ナトリウム 10
19.防腐剤 適量
(注1)HLB値4.5品
(注2)千葉製粉社製レオパール(登録商標)ISK
(注3)信越化学工業社製KF-9901で表面を処理済み
【0102】
[実施例13]
(O/W乳化型ファンデーションの製造)
下記成分1から成分7を85℃にて加熱溶解した(工程A)。また、成分8から成分10を混合粉砕した(工程B)。更に、成分11から成分15を85℃に加熱し、溶解混合した(工程C)。その後、工程Aで得られた加熱溶解物に工程Bで得られた混合粉砕物を加え、撹拌機を用いて目視で均一になるまで分散し、これに工程Cで得られた溶解混合物を徐々に添加し乳化を行い、室温まで撹拌冷却した。次いで、適当な容器に充填しO/W乳化型ファンデーションを得た(工程D)。
【0103】
得られたO/W乳化型ファンデーションは、肌に塗布した際に白浮きは発生せず、自然な素肌感のある仕上がりであり、また隠ぺい力も良好であることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .ステアリン酸 4
2 .イソステアリン酸 3
3 .2-エチルヘキサン酸セチル 40
4 .流動パラフィン 110
5 .ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル 20
6 .セチルアルコール 3
7 .防腐剤 2
8 .タルク 150
9 .色剤 40
10.実施例1記載顔料 30
11.トリエタノールアミン 4
12.プロピレングリコール 50
13.精製水 541
14.防腐剤 2
15.抗酸化剤 1
【0104】
[実施例14]
(W/Oリキッドファンデーションの製造)
下記成分8から成分12を均一に混合後(工程A)、成分4の一部と成分13を混合し、工程Aで得られた混合物に加え、撹拌機を用いて目視で均一になるまで分散した。(工程B)。また、成分1から成分3、成分4の残部、及び成分5から成分7を混合し、撹拌機にて目視で均一になるまで分散した(工程C)。更に、成分14から成分18、及び成分20を混合し、撹拌機にて目視で均一になるまで分散した(工程D)。撹拌下で、工程Cで得られた混合物に工程Dで得られた混合物を徐添して乳化し、更に工程Bで得られた分散物及び成分19を添加してW/Oリキッドファンデーションを得た(工程E)。
【0105】
得られたW/Oリキッドファンデーションは、肌に塗布した際に白浮きは発生せず、自然な素肌感のある仕上がりであり、また隠ぺい力も良好であることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .架橋型ポリエーテル変性シリコーン(注1) 30
2 .架橋型ジメチルポリシロキサン(注2) 50
3 .分岐型ポリエーテル変性シリコーン(注3) 20
4 .デカメチルシクロペンタシロキサン 211
5 .イソオクタン酸セチル 50
6 .ジメチルポリシロキサン(注4) 65
7 .ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 12
8 .シリコーン処理実施例1記載顔料(注5) 50
9 .シリコーン処理顔料級酸化チタン(注5) 50
10.シリコーン処理ベンガラ(注5) 4
11.シリコーン処理黄酸化鉄(注5) 10
12.シリコーン処理黒酸化鉄(注5) 1
13.アクリルシリコーン樹脂溶解品(注6) 20
14.1,3-ブチレングリコ-ル 50
15.キサンタンガム(注7) 50
16.クエン酸ナトリウム 2
17.塩化ナトリウム 5
18.防腐剤 適量
19.香料 適量
20.精製水 320
(注1)信越化学工業社製KSG-210
(注2)信越化学工業社製KSG-15
(注3)信越化学工業社製KF-6028P
(注4)6mm/秒(25℃)品
(注5)信越化学工業社製KF-9909で表面を処理済み
(注6)信越化学工業社製KP-575
(注7)20g/kg水溶液
【0106】
[実施例15]
(サンカットクリームの製造)
本発明の顔料の紫外線遮へい能を確認するため、サンカットクリームを作製した。下記成分5の一部に成分7を加えて均一にし、成分8、成分9を添加してビーズミルにて分散した(工程A)。また、成分1から成分4、成分5の残部、及び成分6を均一に混合した(工程B)。更に、成分10から成分12、及び成分14を撹拌機にて目視で均一になるまで分散した(工程C)。ついで、工程Cで得られた混合物を工程Bで得られた混合物に添加して乳化し、工程Aで得られた分散物及び成分13を加えてサンカットクリームを得た(工程D)。
【0107】
得られたサンカットクリームは、紫外線遮へい能が酸化チタンと同程度であること、また肌に塗布した際に白浮きは発生せず、自然な素肌感のある仕上がりであることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .架橋型ポリエーテル変性シリコーン(注1) 30
2 .架橋型ジメチルポリシロキサン(注2) 20
3 .アルキル変性分岐型ポリエーテル変性シリコーン(注3) 10
4 .ジオクタン酸ネオペンチルグリコール 50
5 .デカメチルシクロペンタシロキサン 175
6 .メトキシケイヒ酸オクチル 60
7 .アクリルシリコーン樹脂溶解品(注4) 100
8 .カプリリルシラン処理微粒子酸化亜鉛(注5) 200
9 .カプリリルシラン処理実施例2記載顔料(注5) 30
10.1,3-ブチレングリコール 20
11.クエン酸ナトリウム 2
12.塩化ナトリウム 5
13.香料 適量
14.精製水 298
(注1)信越化学工業社製KSG-240
(注2)信越化学工業社製KSG-15
(注3)信越化学工業社製KF-6038
(注4)信越化学工業社製KP-575
(注5)信越化学工業社製AES-3083で表面を処理済み
【0108】
[実施例16]
(樹脂組成物の製造)
本発明の顔料を含む樹脂組成物を作製した。成分1を蒸留し、更に窒素で30分間バブリングした(工程A)。成分5と成分6を混合し、ビーズミルで分散した(工程B)。工程Aで得た液と、成分2から成分4を成分7に投入し、撹拌しながら加熱し、65℃になってから5分後に工程Bで得られた分散液を投入し、65℃に保持したまま撹拌を続けた(工程C)。10時間後に成分8を添加して中和し(工程D)、ろ過、洗浄して樹脂組成物を得た(工程E)。
【0109】
得られた樹脂組成物は、太陽光にかざすと透過光は暖色領域の割合が有意に大きく、暖色光透過効果を有していることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .メタクリル酸メチル 600
2 .アゾイソブチルニトリル 0.3
3 .塩化ナトリウム 1
4 .リン酸カルシウム 6
5 .メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理実施例4記載顔料 200
6 .トルエン 140
7 .精製水 適量
8 .塩酸 適量
【0110】
[実施例17]
(塗料の製造)
本発明の顔料を含む塗料を作製した。成分1から成分4を30分間以上120分間以下ミキサーで混合した(工程A)後、ビーズミルにて分散した(工程B)。
【0111】
得られた塗料は、透明なガラス基板の上に塗布して光にかざすと、透過光は暖色領域の割合が有意に大きく、暖色光透過効果を有していることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .アクリル樹脂(注1) 300
2 .メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理実施例4記載顔料 300
3 .トルエン 200
4 .イソホロン 200
(注1)重合開始剤を含む
【0112】
[実施例18]
(インクの製造)
本発明の顔料を含むインクを作製した。成分1から成分4を30分間以上120分間以下ミキサーで混合した(工程A)後、ビーズミルにて24時間分散した(工程B)。
【0113】
得られたインクをガラス板の上に塗布して光にかざすと、透過光は暖色領域の割合が有意に大きく、暖色光透過効果を有していることが確認された。
(成分) 配合比(g/kg)
1 .アクリル樹脂 75
2 .メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理実施例4記載顔料 495
3 .メチルシクロヘキサン 400
4 .分散剤(注1) 10
5 .ゲル化剤(注2) 20
(注1)花王社製ホモゲノール(登録商標)L-18
(注2)日本有機粘土株式会社製オルガナイト(登録商標)-T
図1
図2
図3
図4