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特許7579570術後治療用IN SITU噴霧生体応答性免疫療法ゲル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】術後治療用IN SITU噴霧生体応答性免疫療法ゲル
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241031BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241031BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 U
A61K9/14
A61K9/12
A61K9/06
A61K47/42
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 111
A61P35/04
A61K45/00
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020573146
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 US2019039951
(87)【国際公開番号】W WO2020006493
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】62/692,526
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508290987
【氏名又は名称】ノース・キャロライナ・ステイト・ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】グゥー,ヂェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チィェン
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-508072(JP,A)
【文献】Tomoya Yata et al.,DNA nanotechnology-based composite-type gold nanoparticle-immunostimulatory DNA hydrogel for tumor photothermal immunotherapy,Biomaterials,2017年09月09日,doi: 10.1016/j.biomaterials.2017.09.014.
【文献】組織接着剤,一般社団法人日本血液製剤協会website,2017年,http://www.ketsukyo.or.jp/plasma/fibrin-paste/fib_03.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 35/00
A61K 9/00
A61K 47/42
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の成分および第2の成分を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスであって、前記第1の成分がフィブリノゲンを含み、前記マトリックスのゲル化が、前記第1の成分が前記第2の成分と接触したときに起こり、少なくとも1つの前記成分が、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、前記少なくとも1つの第1のナノ粒子が、CaCO と、抗CD47抗体とを含み、前記第2の成分がトロンビンを含む、免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項2】
少なくとも1つの第2のナノ粒子をさらに含む、請求項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項3】
前記第1の成分が、前記少なくとも1つの第1のナノ粒子を含む、請求項1または2に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項4】
前記第1の成分が、第2の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤をさらに含む、請求項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項5】
前記第2の成分が、前記第2の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む、請求項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項6】
前記第2の成分が、前記少なくとも1つの第1のナノ粒子を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項7】
前記第2の成分が、第2の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤をさらに含む、請求項に記載の免疫療法の生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項8】
前記第1の成分が、第2の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む、請求項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項9】
前記第2の成分が、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む、請求項1に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項10】
前記第1の成分が、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む、請求項1に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項11】
前記マトリックスの投与の140時間後に30%未満の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤が放出される、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックスであって、癌腫瘍の外科的切除の部位での転移を阻害する方法であって、前記切除部位に、前記免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを投与することを含む方法における使用のための免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
【請求項13】
癌腫瘍の外科的切除の部位での転移を阻害する方法に用いるための医薬の調製における免疫療法生体応答性ゲルマトリックスの使用であって、前記免疫療法生体応答性ゲルマトリックスが、第1の成分および第2の成分を含み、前記第1の成分がフィブリノゲンを含み、前記マトリックスのゲル化が、前記第1の成分が前記第2の成分と接触したときに起こり、前記成分の少なくとも1つが、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、前記少なくとも1つの第1のナノ粒子が、CaCO と、抗CD47抗体とを含み、前記第2の成分がトロンビンを含む、使用。
【請求項14】
前記第1の成分および第2の成分が、別々に対象に送達される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記第1の成分が、前記第2の成分の前に対象の腫瘍の部位に送達される、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
前記第1の成分が、前記第2の成分の少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、36、48、または72時間前に投与される、請求項13~15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記第1の成分が、前記第2の成分の後に対象の腫瘍の部位に送達される、請求項13または14に記載の使用。
【請求項18】
前記第1の成分が、前記第2の成分の少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、36、48、または72時間後に投与される、請求項13、14、または17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記第1および第2の成分が、同時に(concurrently)投与される、請求項13に記載の使用。
【請求項20】
前記第1および第2の成分が、同時に(simultaneously)投与される、請求項13に記載の使用。
【請求項21】
前記第1および第2の成分が、対象への投与前に一緒に混合される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記第1および第2の成分のうちの少なくとも1つが、腫瘍の除去の前に切除部位に投与される、請求項13~21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記方法が、その後、前記第1の成分および第2の成分を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを投与することをさらに含む、請求項13~22のいずれか1項に記載の使用
【請求項24】
前記方法が、追加の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤の投与をさらに含む、請求項13~23のいずれに記載の使用。
【請求項25】
前記追加の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤が、前記免疫療法生体応答性ゲルマトリックス中で投与される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記追加の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤が、前記免疫療法生体応答性ゲルマトリックスとは別に投与される、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
腫瘍に対する自然または適応免疫応答を前記腫瘍の切除後に増加させるための医薬の調製における免疫療法生体応答性ゲルマトリックスの使用であって、前記免疫療法生体応答性ゲルマトリックスが、第1の成分および第2の成分を含み、前記第1の成分がフィブリノゲンを含み、前記マトリックスのゲル化が、前記第1の成分が前記第2の成分と接触した場合に起こり、前記成分の少なくとも1つが、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、前記少なくとも1つの第1のナノ粒子が、CaCO と、抗CD47抗体とを含み、前記第2の成分がトロンビンを含む、使用。
【請求項28】
前記免疫療法生体応答性ゲルマトリックスの投与が、対象において抗腫瘍応答を増加させ、全身的に腫瘍増殖を遅らせる、請求項13~27のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
I.背景技術
手術用技術が継続的に改善されているにもかかわらず、腫瘍切除後の残存微小腫瘍および/または循環腫瘍細胞(CTC)は、依然として難題である。外傷によって誘発された周術期の炎症は、腫瘍の再発、局所的な残存腫瘍の再発の加速、ならびに腫瘍の浸潤および転移の促進のリスクが高いことも実証されている。しかしながら、全身化学療法および放射線療法などの確立された治療法に依存する現在のアプローチは、高い毒性プロファイルをもたし得る。必要なことは、毒性の発生を回避しながら腫瘍の浸潤および転移を減らす、新しいアプローチである。
【発明の概要】
【0002】
II.概要
免疫療法生体応答性ゲルマトリックスに関連する方法および組成物、ならびに腫瘍増殖を治療、予防、および/または阻害するための、その使用方法が開示される。
【0003】
一態様では、第1の成分(例えば、フィブリニンなどのH+スカベンジャー)および第2の成分(例えば、トロンビンなど)を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスが本明書に開示される。ここで、マトリックスのゲル化は、第1の成分が第2の成分と接触した場合に起こり、成分の少なくとも1つ(すなわち、第1の成分および/または第2の成分)は、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、少なくとも1つの第1のナノ粒子は、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む。
【0004】
抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤が抗CD47抗体である、前述のいずれかの態様の免疫療法生体応答性ゲルマトリックスも本明細書に開示される。
【0005】
一態様では、前述のいずれかの態様の免疫療法生体応答性ゲルマトリックスが本明細書に開示され、ここで免疫療法生体応答性ゲルマトリックスは、少なくとも1つの第2のナノ粒子および/または少なくとも1つの第2の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む。
【0006】
癌腫瘍の外科的切除部位での腫瘍増殖および/または転移を治療、低減、阻害、および/または予防する方法も本明細書に開示され、方法は、第1の成分および第2の成分を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを対象の切除部位に投与することを含む。ここでマトリックスのゲル化は、第1の成分が第2の成分と接触した場合に起こり、成分の少なくとも1つ(すなわち、第1の成分および/または第2の成分)は、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、少なくとも1つの第1のナノ粒子は、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む。したがって、一態様では、癌腫瘍の外科的切除部位での腫瘍の増殖および/または転移を治療、阻害、および/または予防する方法であって、前述のいずれかの態様の免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを対象の切除部位に投与することを含む方法が本明細書に開示される。
【0007】
一態様では、前述のいずれかの態様の、腫瘍増殖および/または転移を治療、低減、阻害、および/または予防する方法が本明細書に開示され、ここで、第1および第2の成分は、対象への送達の前に混合されるか(それにより、投与前にマトリックスを形成する)、成分が対象へ投与される際に同時に投与および混合されるか、または対象に別々に送達される(例えば、同時または連続投与など)。
【0008】
腫瘍の切除後に腫瘍に対する自然または適応免疫応答を増加させる方法も本明細書に開示され、方法は、腫瘍を有する対象に第1の成分および第2の成分を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを投与することを含む。ここで、マトリックスのゲル化は、第1の成分が第2の成分と接触した場合に起こり、成分の少なくとも1つ(すなわち、第1の成分および/または第2の成分)は、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、少なくとも1つの第1のナノ粒子は、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む。
【0009】
添付図面は、本明細書の一部に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、いくつかの実施形態を図示し、明細書と共に、本開示の組成物および方法を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A-1J】図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I、および1Jは、in situで形成された免疫療法フィブリンゲルの概略図および特性を示す。図1Aは、迅速な噴霧後にin situで形成されたaCD47@CaCO3NPを含む免疫療法生体応答性フィブリンゲルが、手術後の腫瘍の再発および転移を効果的に阻害することを示す概略図である。フィブリンにカプセル化されたaCD47@CaCO3NPは、手術創部位および残存TMEにおいてH+を除去、続いてaCD47を放出することができ、それによってTAMのM1様表現型への分極など、免疫を支援する切除後環境を誘発し、癌細胞に発現する「don’t eat me」シグナルを遮断してマクロファージによる癌細胞の食作用を増加させ、T細胞による抗腫瘍反応を開始する。図1Bは、aCD47@CaCO3NPのTEM画像を示す(スケールバー:100nm)。実験は3回繰り返した。図1Cは、カルシウム(緑)、酸素(赤)、およびガドリニウム標識されたaCD47(緑)を示す、aCD47@CaCO3NPの走査型TEM(STEM)画像を示す。実験は3回繰り返した。図1Dは、DLSによって測定されたaCD47@CaCO3NPの平均流体力学的サイズを示す。図1Eおよび図1Fは、aCD47@CaCO3NPを充填されたフィブリンゲルの代表的なCryo-SEM画像を示す。スケールバーは1μmである。図1Gは、フィブリノゲンがFITCで標識され、CaCO3NPがCy5.5で標識され、aCD47がローダミン結合抗ラットIgG抗体で染色されたフィブリンの凍結切片の代表的な蛍光画像を示す。スケールバーは10μmである。図1Hは、異なるpH値の溶液中のフィブリンからのaCD47の累積放出プロファイルを示す。図1Iは、異なる抗体の送達から6日後のaCD47-Cy5.5のin vivo放出プロファイルを示す蛍光IVISイメージングを示す。実験は3回繰り返した。図1Jは、aCD47-Cy5.5のin vivo保持プロファイル(リリースプロファイルとも呼ばれる)の定量化を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す。P値:*P<0.05
図2A-2C】図2A、2B、および2Cは、25mmアルミニウムクロスハッチ平行プレートを備えたTA Instruments AR-2000応力制御レオメータを使用して測定した、25℃でゲル化する前および後のフィブリノゲンの動的レオロジー挙動を表す。全ての実験は、プレート間に500μmの間隙を有する線形粘弾性方式で行われ、少なくとも3回の測定が行われた。図2Aは、溶液のような特性を示す、IgG@CaCO3NPを含むフィブリノゲンサンプルの弾性(G’)および粘性(G’’)率の周波数スペクトルを示す。
図2B】ゲルのような挙動を示すIgG@CaCO3@フィブリンサンプルの弾性(G’)および粘性(G’’)率の周波数スペクトルを示す。図2Cは、IgG@CaCO3を含むフィブリノゲンとトロンビンとの混合物の時間関数としてのG’およびG’’の展開を示し、超高速のゾル-ゲル転移を示している。IgG(免疫グロブリンG)は、この研究で使用されたaCD47を示す。
図3A-3B】図3Aおよび3Bは、aCD47@CaCO3NPのTEM画像および放出プロファイルを示す。図3Aは、異なるpH値(7.4および6.5)のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に、異なる時間浸漬した後のaCD47@CaCO3NPの代表的なTEM画像を示す(スケールバー:100nm)。実験は3回繰り返した。図3Bは、異なるpH値(6.5、6.8、および7.4)のPBSに分散したaCD47@CaCO3NPの経時的なDLS測定サイズ変化を示す。データは、平均±s.e.mとして表示される(n=3)。
図4】異なるpH値(6.5、6.8、および7.4)のPBSに分散したCaCO3NPからのaCD47の経時的なDLS測定サイズ変化を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す(n=3)。
図5】CaCO3NPを含むリン酸緩衝液(PB)のpH値の経時変化を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す(n=3)。
図6】異なる日数でのaCD47-Cy5.5のinvivo放出プロファイルを示す蛍光IVISイメージングを示す。
図7A-7I】図7A、7B、7C、7D、7E、7F、7G、7H、および7Iは、免疫抑制TMEを軽減するためのCaCO3@フィブリンの取り込みを示す。種々の治療の5日後のマウスからB16F10腫瘍を分析のために収集した。図7Aおよび図7Bは、F4/80+CD11b+CD45+細胞におけるM2-マクロファージ(CD206hi)およびM1-マクロファージ(CD80 hi)の代表的なフローサイトメトリー分析画像、ならびに対応する定量化を示す。図7Cは、種々の腫瘍におけるIL10およびIL12p70の分泌レベルを示す。図7Dは、CD45+細胞の代表的なフローサイトメトリー分析画像(左)、および対応する定量化(右)を示す。図7Eは、CD45+細胞でゲーティングするMDSC(CD11b+Gr-1+)の代表的なフローサイトメトリー分析画像(左)、および対応する定量化(右)を示す。図7Fは、CD3+細胞でゲーティングするCD4+Foxp3+T細胞の代表的なフローサイトメトリー分析画像(左)、および対応する定量化(右)を示す。図7Gは、ウエスタンブロッティングによって分析されたB16F10腫瘍におけるHIF1-αタンパク質の発現レベルを示す。図7Hは、CaCO3@フィブリン治療前後の全身IFN-γおよびTNF-αレベルを示す。図7Iは、CD3+細胞でゲーティングするCD4+およびCD8+T細胞の代表的なフローサイトメトリー分析(左)、および対応する定量化(右)を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す。統計的有意性は、テューキーの事後検定(7b、7c、7d-77f、i)またはウェルチのt検定(7h)を使用した一元配置分散分析によって計算した。P値:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
図8図7Gのトリミングされていないウエスタンブロットを示す。図7Gに使用されているレーンは、赤い長方形で示される。
図9A-9B】図9Aおよび図9Bは、CaCO3@フィブリン治療後の、DCおよび腫瘍細胞のPD-L1発現および腫瘍浸潤リンパ球のPD-1発現(9A)、ならびにPD-L1およびPD-1平均強度の対応する定量化(9B)を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す(n=4)。統計的有意性は、テューキーの事後検定を使用した一元配置分散分析によって計算した。P値:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005
図10A-10F】図10A、10B、10C、10D、10E、および10Fは、in vitroでの食作用を増加させ、in vivoで抗腫瘍免疫応答を発揮するためのCD47遮断を示す。図10Aは、B16F10癌細胞がCellTracker DeepRed(赤)で標識され、BMDMがCellTracker Green(緑)で標識された、食作用アッセイの代表的な共焦点画像を示す(スケールバー、100μm)。図10Bは、BMDMによる癌細胞の食作用の代表的なフローサイトメトリー分析画像(左)、および対応する定量化(右)を示す(n=3)。貪食された癌細胞は、CellTracker GreenポジティブBMDMまたはCellTracker DeepRed癌細胞におけるダブルポジティブBMDMのパーセンテージとして定量化した。図10Cおよび図10Dは、CD45+細胞でゲーティングするLy6ChiLy6G-マクロファージおよびCD11c+CD11b-DCの代表的なフローサイトメトリー分析画像、ならびに対応する定量化を示す。図10Eおよび図10Fは、CD11c+細胞でゲーティングするCD80+CD86+DCおよびCD103+DCの代表的なフローサイトメトリー分析画像、ならびに対応する定量化を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す(n=4)。統計的有意性は、テューキーの事後検定を使用した一元配置分散分析によって計算した。P値:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
図11A】B16F10および4T1を含む癌細胞がCellTracker DeepRedで標識され、BMDMがCellTracker Greenで標識された食作用アッセイの代表的な共焦点画像を示す(スケールバー、100μm)。
図11B】BMDMによる癌細胞(B16F10および4T1)の食作用の代表的なフローサイトメトリー分析画像(左)、および対応する定量化(右)を示す(n=3)。貪食された癌細胞は、CellTracker GreenポジティブBMDMまたはCellTracker DeepRed癌細胞におけるダブルポジティブBMDMのパーセンテージとして定量化した。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す(n=3)。統計的有意性は、テューキーの事後検定を使用した一元配置分散分析によって計算した。P値:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005
図12】CD45+細胞でゲーティングするLy6G+Ly6Cdim好中球のパーセンテージを示す。
図13A-13E】図13A、13B、および13Cは、手術後のB16F10腫瘍の再発を軽減するためのaCD47@CaCO3@フィブリンを示す。図13Aは、原発腫瘍の除去後のB16F10腫瘍のin vivo生物発光イメージングを示す。治療グループごとに4匹の代表的なマウスを示す。図13Bおよび図13Cは、種々のグループにおける個々の、および平均の腫瘍成長動態を示す。成長曲線は、対応するグループの1匹目のマウスの死によって停止した。統計的有意性は、テューキー事後検定を用いて二元配置分散分析によって計算された。図13Dは、表示された種々の治療後のマウスの腫瘍サイズに対応する生存率を示す。tatistical有意性は、ログラング(マンテル・コックス)検定によって計算した。図13Eは、種々のグループのマウスの体重変化を示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す(n=6~8)。統計的有意性は、テューキー事後検定を用いて二元配置分散分析によって計算された。P値:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
図14A-14F】図14A、14B、14C、14D、14E、および14Fは、強力な抗腫瘍免疫応答を引き起こすaCD47 @ CaCO3 @フィブリンを示す。種々の治療の5日後のマウスから、分析用にB16F10腫瘍を採取した。図14Aは、F4/80+CD11b+CD45+細胞におけるM2-マクロファージ(CD206hi)およびM1-マクロファージ(CD80hi)の代表的なフローサイトメトリー分析画像(左)、ならびに対応する定量化(右)を示す。図14Bは、種々のグループにおける腫瘍内のT細胞浸潤の代表的なフローサイトメトリー分析(左)、および対応する定量化結果(右)を示す。図14Cおよび図14Dは、種々の治療時の腫瘍内のCD8+細胞、およびCD4+T細胞の絶対パーセンテージを示す。図14Eは、CD8+T細胞およびF4/80+マクロファージの浸潤を示す腫瘍の代表的な免疫蛍光画像を示す。スケールバーは50μmである。図14Fは、種々の治療の5日後にマウスから単離された血清中のサイトカインレベルを示す。エラーバーはs.e.mを表す(n=4)。G1:未治療、G2:フィブリン、G3:IgG@CaCO3@フィブリン、G4:aCD47@フィブリン、G5:aCD47@CaCO3@フィブリン統計的有意性は、テューキー事後検定を用いて二元配置分散分析によって計算された。P値:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
図15A-15B】CD45+細胞におけるF4/80+CD11b+マクロファージの代表的なフローサイトメトリー分析画像(15A)、および対応する定量化(15B)示す。
図15C-15D】CD45+細胞におけるM2-マクロファージ(CD206hi)(15C)、およびM1-マクロファージ(CD80 hi)(15D)のパーセンテージを示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す(n=4)。統計的有意性は、テューキー事後検定を用いて二元配置分散分析によって計算された。P値:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005
図16A】種々の治療後の、CD3+細胞でゲーティングするCD4+Foxp3+T細胞の代表的なフローサイトメトリー分析画像を示す。
図16B】種々の治療後の、CD3+細胞でゲーティングするCD4+Foxp3+T細胞の対応する定量化を示す。
図17A-17B】CD4+T細胞、CD8+T細胞、およびF4/80+マクロファージの浸潤を示す腫瘍の代表的な免疫蛍光画像を示す。スケールバーは50μmである。
図18A-18G】図18A、18B、18C、18D、18E、18F、および18Gは、全身性抗腫瘍免疫応答を誘発するaCD47@CaCO3@フィブリンの局所治療を示す。図18Aは、不完全切除および転移のマウスモデルにおけるaCD47@CaCO3@フィブリン療法を説明する概略図を示す。右側の腫瘍をaCD47@CaCO3@フィブリン治療用の「原発腫瘍」として指定し、左側の腫瘍を治療なしの「遠隔腫瘍」として指定した。図18Bは、局所的なaCD47@CaCO3@フィブリン治療に応答したB16F10腫瘍のin vivo生物発光イメージングを示す。図18Cは、未治療および治療済みのマウス(n=8)における左右の腫瘍の成長曲線を示す。図18Dは、22日目の代表的なマウスの写真を示す。赤い矢印は、腫瘍を示す。図18Eは、F4/80+CD11b+CD45+細胞におけるM1-マクロファージ(CD80hi)の代表的なフローサイトメトリー分析画像(左)、および対応する定量化(右)を示す(n=4)。図18Fは、CD11c+細胞におけるCD103+DCの代表的なフローサイトメトリー分析画像(左)、および対応する定量化(右)を示す(n=4)。図18Gは、種々のグループにおける腫瘍内のT細胞浸潤の代表的なフローサイトメトリー分析(左)、およびCD8+T細胞のパーセンテージ(右)を示す(n=4)。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す。統計的有意性は、テューキーの事後検定を使用した一元配置分散分析によって計算した。P値:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
図19】未治療処理および治療済みマウスの左右の腫瘍におけるCD4+細胞のパーセンテージ示す。エラーバーは、平均値の標準誤差(s.e.m.)を表す。統計的有意性は、テューキー事後検定を用いて一元配置分散分析によって計算された。P値:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005
図20A-20D】図20A、20B、20C、および20Dは、併用免疫療法による腫瘍再発および遠隔腫瘍の抑制を示す。図20Aは、種々の治療後の、B16F10腫瘍のin vivo生物発光イメージングを示す。実験は3回繰り返した。図20Bおよび図20Cは、種々のグループにおける個々の、および平均の腫瘍成長動態を示す。データは、平均±s.e.mとして表示される(n=6)。対応するグループの1匹目のマウスの安楽死の時点で、成長曲線を中断した。図20Cは、種々のグループのマウスの体重変化を示す。データは、平均±s.e.mとして表示される(n=6)。統計的有意性は、テューキー事後検定を用いて一元配置分散分析によって計算された。P 値:* P <0.05
【発明を実施するための形態】
【0011】
IV.詳細な説明
本化合物、組成物、物品、機器および/または方法が開示および記載される前に、それらは、別段の明示がない限り、特定の合成法もしくは特定の組換えバイオテクノロジー法に限定されないか、または別段の明示がない限り、特定の試薬に限定されず、したがって、当然のことながら変化し得るものとして理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
A.定義
【0012】
明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「医薬担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物などを含む。
【0013】
本明細書では、範囲は、「約」を用いた一方の特定の値から、および/または「約」を用いた他方の特定の値までを表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、一方の特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用することによって、値が近似値として表される場合、特定の値により別の実施形態が生じることが理解されるであろう。さらに、各範囲の端点は、他の端点と関連している場合も、他の端点とは独立している場合でも、有意であることが理解されるであろう。また、本明細書に開示される多くの値があり、各値はまた、その値自体に加えて、「約」を用いたその特定の値としても本明細書に開示されていることが理解される。例えば、「10」という値が開示されていれば、「約10」も開示されている。また、当業者によって適切に理解されるように、ある値が開示されている場合、その値「より少ないかまたは等しい(その値以下)」、その値「より多いかまたは等しい(その値以上)」および値間の可能な範囲も開示されていることが理解される。例えば、「10」という値が開示されている場合、「10より少ないかまたは等しい(10以下)」だけでなく「10より多いかまたは等しい(10以上)」も開示されている。本出願全体を通じて、データは多くの異なる形式で提供されており、このデータは終点および始点、ならびにデータ点の任意の組み合わせに対する範囲を表していることも理解される。例えば、特定のデータ点「10」と特定のデータ点15が開示されていれば、10と15より多い(超)、より多いかまたは等しい(以上)、より少ない(未満)、より少ないかまたは等しい(以下)、および10と15に等しいことのほかに、10と15の間も考慮されていることが理解される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されていることも理解される。例えば、「10および15」が開示されていれば、11、12、13および14も開示されている。
【0014】
対象への「投与」には、薬剤を対象に導入または送達する任意の経路が含まれる。投与は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮的(transcutaneous)、経皮吸収(transdermal)、筋肉内、関節内、非経口、細動脈内、皮内、心室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸、膣、吸入による、移植されたリザーバー(implanted reservoir)を介して、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、腹腔内、肝臓内、病巣内および頭蓋内注射または注射技法)などを含む、任意の適切な経路によって行うことができる。本明細書で使用される「併用投与」、「組み合わせでの投与」、「同時投与」または「同時に投与された」とは、同じ時点で、または本質的に互いに直後に化合物が投与されることを意味する。後者の場合、2つの化合物は、同じ時点で化合物を投与した場合に達成される結果と観察された結果が、区別がつかないほど十分に近い時点で投与される。「全身投与」とは、例えば、循環系またはリンパ系への入口を通じて、対象の身体の広範な領域(例えば、身体の50%超)に薬剤を導入または送達する経路を介して、薬剤を対象に導入または送達することを指す。これに対して、「局所投与」とは、投与点の領域または投与点に直接隣接した領域に薬剤を導入または送達し、治療的に有意な量で薬剤を全身的には導入しない経路を介して、薬剤を対象に導入または送達することを指す。例えば、局所的に投与された薬剤は、投与点の局所的近傍では容易に検出可能であるが、対象の身体の遠位部分では検出できないか、または無視できる量で検出可能である。投与には、自己投与と他者による投与が含まれる。
【0015】
「生体適合性」とは、一般的にレシピエントに対して無毒であり、かつ対象に重大な悪影響を引き起こさない材料およびその任意の代謝産物または分解産物を一般的に指す。
【0016】
「~を含む」とは、組成物、方法などが、列挙された要素を含むが、他の要素を排除するものではないことを意図している。組成物および方法を定義するために使用される場合の「~から本質的になる」とは、列挙された要素を含むが、その組み合わせにとって本質的に重要ないかなる要素も排除することを意味するものとする。したがって、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、単離および精製方法からの微量の汚染物質ならびに薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、保存剤などを排除しない。「~からなる」とは、他の成分の微量を超える元素および本発明の組成物を投与するための実質的な方法ステップを排除することを意味するものとする。これらの各移行句によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0017】
「対照」とは、比較目的で実験に使用される代替的な対象またはサンプルである。対照は、「陽性」または「陰性」であり得る。
【0018】
「制御放出」または「持続放出」とは、in vivoで所望の薬物動態プロファイルを達成するために、所定の剤形から制御された方法で薬剤を放出することを指す。「制御放出」薬剤送達の一態様は、薬剤放出の所望の動態を確立するために、製剤および/または剤形を操作する能力である。
【0019】
薬剤の「有効量」とは、所望の効果を提供するために十分な薬剤の量を指す。「有効」である薬剤の量は、対象の年齢および全身状態、特定の薬剤または複数種の薬剤などの多くの要因に応じて、対象毎に異なるであろう。したがって、定量化された「有効量」を特定することは必ずしも可能ではない。しかしながら、いかなる対象の場合であっても、適切な「有効量」は、日常的な実験を用いて、当業者によって決定されることができる。また、本明細書で使用される場合、特に別途明記されていない限り、薬剤の「有効量」は、治療有効量と予防有効量の両方をカバーする量を指すことができる。治療効果を達成するために必要な薬剤の「有効量」は、対象の年齢、性別および体重などの要因によって異なる場合がある。投与レジメンは、最適な治療反応を提供するように調整することができる。例えば、数回に分けた用量を毎日投与してもよいし、または治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減らしてもよい。
【0020】
「薬学的に許容される」成分とは、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない成分を指すことができ、すなわち、その成分は、重大な望ましくない生物学的作用を引き起こすことなく、またはそれが含まれる製剤の他のいずれの成分とも有害な形で相互作用することなく、本明細書に記載されているように、本発明の医薬製剤に組み込まれ、対象に投与され得る。ヒトへの投与に関連して使用される場合、この用語は、一般的に、成分が毒性試験および製造試験の要求される基準を満たしていること、または成分が米国食品医薬品局により作成された非活性成分ガイドに掲載されていることを含意する。
【0021】
「薬学的に許容される担体」(「担体」と呼ばれることもある)とは、一般的に安全かつ無毒である医薬組成物もしくは治療用組成物を調製するのに有用な担体または賦形剤を意味し、獣医学的用途および/またはヒト医薬用途もしくは治療用途に許容される担体を含む。「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルジョン(油/水エマルジョンもしくは水/油エマルジョンなど)および/または様々な種類の湿潤剤を含み得るが、これらに限定されない。本明細書で使用されるように、「担体」という用語は、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、または医薬製剤で使用するために当該技術分野で周知であり、本明細書でさらに説明されるような他の材料を包含するが、これらに限定されない。
【0022】
「薬理学的に活性な」誘導体または類似体のように、「薬理学的に活性な」(または単に「活性な」)とは、親化合物と同じ種類の薬理活性を有し、ほぼ同等の程度である誘導体または類似体(例えば、塩、エステル、アミド、コンジュゲート、代謝産物、異性体、断片など)を指すことができる。
【0023】
「治療薬」とは、有益な生物学的効果を有する任意の組成物を指す。有益な生物学的効果には、治療効果、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態の治療、および予防効果、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態(例えば、非免疫原性癌)の予防の両方が含まれる。これらの用語はまた、塩、エステル、アミド、前駆薬剤(proagent)、活性代謝産物、異性体、断片、類似体などを含むがこれらに限定されない、本明細書に具体的に挙げられている有益な薬剤の薬学的に許容される、薬理学的に活性な誘導体も包含する。「治療薬」という用語が使用される場合、または特定の薬剤が具体的に特定されている場合、その用語は、その薬剤自体のほかに、薬学的に許容される、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、前駆薬剤、コンジュゲート、活性代謝産物、異性体、断片、類似体なども含むことを理解されたい。
【0024】
「ポリマー」とは、天然または合成の比較的高分子量の有機化合物を指し、その構造は繰り返しの小単位であるモノマーで表すことができる。ポリマーの非限定的な例として、ポリエチレン、ゴム、セルロースが挙げられる。合成ポリマーは、典型的には、モノマーの付加重合または縮合重合によって形成される。「コポリマー」という用語は、2種以上の異なる繰り返し単位(モノマー残基)から形成されたポリマーを指す。限定としてではなく例示的に、コポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであり得る。特定の態様ではまた、ブロックコポリマーの様々なブロックセグメントは、それ自体がコポリマーを含み得ることも企図される。「ポリマー」という用語は、天然ポリマー、合成ポリマー、ホモポリマー、ヘテロポリマーまたはコポリマー、付加ポリマーなどを含むがこれらに限定されないあらゆる形態のポリマーを包含する。
【0025】
組成物(例えば、薬剤を含む組成物)の「治療有効量」または「治療有効用量」とは、所望の治療結果を達成するために有効である量を指す。いくつかの実施形態では、所望の治療結果は、I型糖尿病の抑制である。いくつかの実施形態では、所望の治療結果は、肥満の抑制である。所定の治療薬の治療有効量は、典型的には、治療下の障害または疾患の種類および重症度、ならびに対象の年齢、性別および体重などの要因に関連して異なるであろう。この用語はまた、疼痛緩和などの所望の治療効果を促進するために有効な治療薬の量または治療薬の送達速度(例えば、経時的な量)を指すこともできる。正確な所望の治療効果は、治療されるべき状態、対象の耐性、投与されるべき薬剤および/または薬剤製剤(例えば、治療薬の効力、製剤中の薬剤の濃度など)、ならびに当業者によって理解される様々な他の要因に応じて異なるであろう。いくつかの例では、所望の生物学的または医学的な反応は、数日、数週間または数年の期間にわたって組成物の複数の用量を対象に投与した後に達成される。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義されるいくつかの用語に言及する。
【0027】
「場合に応じた」または「場合に応じて」とは、続けて記載されるイベントまたは状況が発生する場合と発生しない場合があり、この記載には、当該イベントまたは状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。
【0028】
本出願全体を通じて、様々な刊行物が参照されている。本出願が属する技術分野の水準をより完全に記述するために、これらの刊行物の開示内容の全体は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。開示された参考文献はまた、その参考文献が依拠している文中で論じられている、その中に含まれる材料について、引用することにより個別かつ具体的に本明細書の一部をなすものとする。
B.組成物
【0029】
開示された組成物を調製するために使用される成分のほかに、本明細書に開示される方法の中で使用される組成物自体も開示されている。これらおよび他の材料は本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されている場合、これらの化合物の、各様々な個々かつ集合的な組み合わせおよび並べ替えへの具体的な言及は、明示的に開示されていないことがあるが、それぞれが本明細書で具体的に企図され、記載されていることが理解される。例えば、化学療法剤と遮断阻害剤を含む特定のヒドロゲルマトリックスが開示および論述されており、化学療法剤と閉塞阻害剤を含むヒドロゲルマトリックスを含む多数の分子に対して為し得る多数の修飾が論述されている場合、具体的に反対の記載がなければ、具体的に想定されているのは、化学療法剤と閉塞阻害剤を含むヒドロゲルマトリックスおよび可能である修飾のそれぞれのおよび全ての組み合わせおよび並べ替えである。したがって、分子A、BおよびCのクラスのほかに、分子D、EおよびFのクラスも開示され、組み合わせ分子の例であるA-Dが開示されている場合、それぞれが個別に記載されていないときであっても、それぞれが個別かつ集合的に企図された意味の組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-EおよびC-Fが開示されているものとみなされる。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも開示されている。したがって、例えば、A-E、B-FおよびC-Eのサブグループが、開示されているものとみなされる。この考え方は、開示された組成物を作製および使用する方法における工程を含むがこれらに限定されない、本出願の全ての態様に適用される。したがって、実行可能な様々な追加の工程が存在する場合、これらの追加の工程のそれぞれは、開示された方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせにより実行可能であることが理解される。
【0030】
癌免疫療法の最近の成功は、それが癌の再発を防ぐために利用できることを示唆している。一態様では、第1の成分(例えば、フィブリニンなどのH+スカベンジャー)および第2の成分(例えば、トロンビンなど)を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスが本明書に開示される。ここで、マトリックスのゲル化は、第1の成分が第2の成分と接触した場合に起こり、成分の少なくとも1つ(すなわち、第1の成分および/または第2の成分)は、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、少なくとも1つの第1のナノ粒子は、例えば、抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤などの、少なくとも1つの治療薬カーゴを含む。一態様では、少なくとも1つの第1のナノ粒子は、例えば、デキストラン、CaCO3、キトサン、ヒアルロン酸などのpH応答性材料、ならびにそのポリマー、例えば、デキストランモノマーのポリマー(例えば、m-デキストランモノマーのポリマー)を含み得る。
【0031】
治療薬カーゴは、抗体、小分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド類似物、ポリマー、または核酸を含み得ることが理解され、本明細書で企図される。例えば、治療薬カーゴは、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS-936559、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、またはアベルマブなど);免疫調節剤、例えば、任意の抗体、サイトカイン、ケモカイン、核酸、または小分子などを含み得、これらは、限定されないが、NK細胞、NK T細胞、T細胞、B細胞、形質細胞、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞を含む免疫細胞の活性、産生、増殖、または成熟を阻害または促進する。一態様では、免疫調節剤は、IFN-γ、TNF-α、TGF-β、IL-1β、IL-2 IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、抗CD3抗体抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CTLA-4抗体、抗4-1BB抗体、抗OX40抗体、抗CD25抗体、抗CD27抗体、抗LAG3抗体、および/または抗-CD47抗体、および/または1つ以上の化学治療剤であり得る。開示されたヒドロゲルマトリックスで使用できる化学治療剤は、Abemaciclib、Abiraterone Acetate,Abitrexate(Methotrexate)、Abraxane(Paclitaxel Albumin-stabilized Nanoparticle Formulation)、ABVD、ABVE、ABVE-PC、AC、AC-T、Adcetris(Brentuximab Vedotin)、ADE、Ado-Trastuzumab Emtansine、Adriamycin(Doxorubicin Hydrochloride)、Afatinib Dimaleate、Afinitor(Everolimus)、Akynzeo(Netupitant and Palonosetron Hydrochloride)、Aldara(Imiquimod)、Aldesleukin、Alecensa(Alectinib)、Alectinib、Alemtuzumab、Alimta(Pemetrexed Disodium)、Aliqopa(Copanlisib Hydrochloride)、Alkeran for Injection(Melphalan Hydrochloride)、Alkeran Tablets(Melphalan)、Aloxi(Palonosetron Hydrochloride)
、Alunbrig(Brigatinib)、Ambochlorin(Chlorambucil)、Amboclorin Chlorambucil)、Amifostine、Aminolevulinic Acid、Anastrozole、Aprepitant、Aredia(Pamidronate Disodium)、Arimidex(Anastrozole)、Aromasin(Exemestane)、Arranon(Nelarabine)、Arsenic Trioxide、Arzerra(Ofatumumab)、Asparaginase Erwinia chrysanthemi、Atezolizumab、Avastin(Bevacizumab)、Avelumab、Axitinib、Azacitidine、Bavencio(Avelumab)、BEACOPP、Becenum(Carmustine)
、Beleodaq(Belinostat)、Belinostat、Bendamustine Hydrochloride、BEP、Besponsa(Inotuzumab Ozogamicin)、Bevacizumab、Bexarotene、Bexxar(Tositumomab and Iodine I 131 Tositumomab)、Bicalutamide、BiCNU(Carmustine)、Bleomycin、Blinatumomab、Blincyto(Blinatumomab)、Bortezomib、Bosulif(Bosutinib)、Bosutinib、Brentuximab Vedotin、Brigatinib、BuMel、Busulfan、Busulfex(Busulfan)、Cabazitaxel、Cabometyx(Cabozantinib-S-Malate)、Cabozantinib-S-Malate、CAF、Campath(Alemtuzumab
)、Camptosar、(Irinotecan Hydrochloride)、Capecitabine、CAPOX、Carac(Fluorouracil--Topical)、Carboplatin、CARBOPLATIN-TAXOL、Carfilzomib、Carmubris(Carmustine)、Carmustine、Carmustine Implant、Casodex(Bicalutamide)、CEM、Ceritinib、Cerubidine(Daunorubicin Hydrochloride)、Cervarix(Recombinant HPV Bivalent Vaccine)、Cetuximab、CEV、Chlorambucil、CHLORAMBUCIL-PREDNISONE、CHOP、Cisplatin、Cladribine、Clafen(Cyclophosphamide)
、Clofarabine、Clofarex(Clofarabine)、Clolar(Clofarabine)、CMF、Cobimetinib、Cometriq(Cabozantinib-S-Malate)、Copanlisib Hydrochloride、COPDAC、COPP、COPP-ABV、Cosmegen(Dactinomycin)、Cotellic(Cobimetinib)、Crizotinib、CVP、Cyclophosphamide、Cyfos(Ifosfamide)、Cyramza(Ramucirumab)、Cytarabine、Cytarabine Liposome、Cytosar-U(Cytarabine)、Cytoxan(Cyclophosphamide)、Dabrafenib、Dacarbazine、Dacogen(Decitabine)、Dactinomycin
、Daratumumab、Darzalex(Daratumumab)、Dasatinib、Daunorubicin Hydrochloride、Daunorubicin Hydrochloride and Cytarabine Liposome、Decitabine、Defibrotide Sodium、Defitelio(Defibrotide Sodium)、Degarelix、Denileukin Diftitox、Denosumab、DepoCyt(Cytarabine Liposome)、Dexamethasone、Dexrazoxane Hydrochloride、Dinutuximab、Docetaxel、Doxil(Doxorubicin Hydrochloride Liposome)、Doxorubicin Hydrochloride、Doxorubicin Hydrochloride Liposome、Dox-SL(Doxorubicin Hydrochloride Liposome)、DTIC-Dome(Dacarbazine)、Durvalumab、Efudex(Fluorouracil--Topical)、Elitek(Rasburicase)、Ellence(Epirubicin Hydrochloride)、Elotuzumab、Eloxatin(Oxaliplatin)、Eltrombopag Olamine、Emend(Aprepitant)、Empliciti(Elotuzumab)、Enasidenib Mesylate、Enzalutamide、Epirubicin Hydrochloride、EPOCH、Erbitux(Cetuximab)、Eribulin Mesylate、Erivedge(Vismodegib)、Erlotinib Hydrochloride、Erwinaze(Asparaginase Erwinia chrysanthemi)、Ethyol(Amifostine)
、Etopophos(Etoposide Phosphate)、Etoposide、Etoposide Phosphate、Evacet(Doxorubicin Hydrochloride Liposome)、Everolimus、Evista、(Raloxifene Hydrochloride)、Evomela(Melphalan Hydrochloride)、Exemestane、5-FU(Fluorouracil Injection)、5-FU(Fluorouracil--Topical)、Fareston(Toremifene)、Farydak(Panobinostat)、Faslodex(Fulvestrant)、FEC、Femara(Letrozole)、Filgrastim、Fludara(Fludarabine Phosphate)、Fludarabine Phosphate、Fluoroplex(Fluorouracil--Topical)、Fluorouracil Injection、Fluorouracil--Topical、Flutamide、Folex(Methotrexate)、Folex PFS(Methotrexate)、FOLFIRI、FOLFIRI-BEVACIZUMAB、FOLFIRI-CETUXIMAB、FOLFIRINOX、FOLFOX
、Folotyn(Pralatrexate)、FU-LV、Fulvestrant
、Gardasil(Recombinant HPV Quadrivalent Vaccine)、Gardasil 9(Recombinant HPV Nonavalent Vaccine)、Gazyva(Obinutuzumab)、Gefitinib、Gemcitabine Hydrochloride、GEMCITABINE-CISPLATIN、GEMCITABINE-OXALIPLATIN、Gemtuzumab Ozogamicin、Gemzar(Gemcitabine Hydrochloride)、Gilotrif(Afatinib Dimaleate)、Gleevec(Imatinib Mesylate)、Gliadel(Carmustine Implant)、Gliadel wafer(Carmustine Implant)、Glucarpidase、Goserelin Acetate、Halaven(Eribulin Mesylate)、Hemangeol(Propranolol Hydrochloride)、Herceptin(Trastuzumab)、HPV Bivalent Vaccine、Recombinant、HPV Nonavalent Vaccine、Recombinant、HPV Quadrivalent Vaccine、Recombinant、Hycamtin(Topotecan Hydrochloride)、Hydrea(Hydroxyurea)、Hydroxyurea、Hyper-CVAD、Ibrance(Palbociclib)、Ibritumomab Tiuxetan、Ibrutinib、ICE、Iclusig(Ponatinib Hydrochloride)、Idamycin(Idarubicin Hydrochloride)、Idarubicin Hydrochloride、Idelalisib、Idhifa(Enasidenib Mesylate)、Ifex(Ifosfamide)、Ifosfamide、Ifosfamidum(Ifosfamide)、IL-2(Aldesleukin)、Imatinib Mesylate、Imbruvica(Ibrutinib)、Imfinzi(Durvalumab)、Imiquimod、Imlygic(Talimogene Laherparepvec)、Inlyta(Axitinib)、Inotuzumab Ozogamicin、Interferon Alfa-2b、Recombinant、Interleukin-2(Aldesleukin)、Intron A(Recombinant Interferon Alfa-2b)、Iodine I 131 Tositumomab and Tositumomab、Ipilimumab、Iressa(Gefitinib)、Irinotecan Hydrochloride、Irinotecan Hydrochloride Liposome、Istodax(Romidepsin)、Ixabepilone、Ixazomib Citrate、Ixempra(Ixabepilone)、Jakafi(Ruxolitinib Phosphate)、JEB、Jevtana(Cabazitaxel)、Kadcyla(Ado-Trastuzumab Emtansine)、Keoxifene(Raloxifene Hydrochloride)、Kepivance(Palifermin
)、Keytruda(Pembrolizumab)、Kisqali(Ribociclib)、Kymriah(Tisagenlecleucel)、Kyprolis(Carfilzomib)、Lanreotide Acetate、Lapatinib Ditosylate、Lartruvo(Olaratumab)、Lenalidomide、Lenvatinib Mesylate、Lenvima(Lenvatinib Mesylate)、Letrozole、Leucovorin Calcium、Leukeran(Chlorambucil)、Leuprolide Acetate、Leustatin(Cladribine)、Levulan(Aminolevulinic Acid)、Linfolizin(Chlorambucil)、LipoDox(Doxorubicin Hydrochloride Liposome)、Lomustine、Lonsurf(Trifluridine and Tipiracil Hydrochloride)、Lupron(Leuprolide Acetate)、Lupron Depot(Leuprolide Acetate)、Lupron Depot-Ped(Leuprolide Acetate)、Lynparza(Olaparib)、Marqibo(Vincristine Sulfate Liposome)、Matulane(Procarbazine Hydrochloride)、Mechlorethamine Hydrochloride、Megestrol Acetate、Mekinist(Trametinib)、Melphalan、Melphalan Hydrochloride、Mercaptopurine、Mesna、Mesnex(Mesna)、Methazolastone(Temozolomide)、Methotrexate、Methotrexate LPF(Methotrexate)、Methylnaltrexone Bromide、Mexate(Methotrexate)、Mexate-AQ(Methotrexate)、Midostaurin、Mitomycin C、Mitoxantrone Hydrochloride、Mitozytrex(Mitomycin C)、MOPP、Mozobil(Plerixafor)、Mustargen(Mechlorethamine Hydrochloride)、Mutamycin(MitomycinC)、Myleran(Busulfan)、Mylosar(Azacitidine)、Mylotarg(Gemtuzumab Ozogamicin)、Nanoparticle Paclitaxel(Paclitaxel Albumin-stabilized Nanoparticle Formulation)、Navelbine(Vinorelbine Tartrate)、Necitumumab、Nelarabine、Neosar(Cyclophosphamide)、Neratinib Maleate、Nerlynx(Neratinib Maleate)、Netupitant and Palonosetron Hydrochloride、Neulasta(Pegfilgrastim)、Neupogen(Filgrastim)、Nexavar(Sorafenib Tosylate)、Nilandron(Nilutamide)、Nilotinib、Nilutamide、Ninlaro(Ixazomib Citrate)、Niraparib Tosylate Monohydrate、Nivolumab、Nolvadex(Tamoxifen Citrate)、Nplate(Romiplostim)、Obinutuzumab、Odomzo(Sonidegib)、OEPA、Ofatumumab、OFF、Olaparib、Olaratumab、Omacetaxine Mepesuccinate、Oncaspar(Pegaspargase)、Ondansetron Hydrochloride
、Onivyde(Irinotecan Hydrochloride Liposome)、Ontak(Denileukin Diftitox)、Opdivo(Nivolumab)、OPPA、Osimertinib、Oxaliplatin、Paclitaxel、Paclitaxel Albumin-stabilized Nanoparticle Formulation、PAD、Palbociclib、Palifermin、Palonosetron Hydrochloride、Palonosetron Hydrochloride and Netupitant、Pamidronate Disodium、Panitumumab、Panobinostat、Paraplat(Carboplatin)、Paraplatin(Carboplatin)、Pazopanib Hydrochloride、PCV、PEB、Pegaspargase、Pegfilgrastim、Peginterferon Alfa-2b、PEG-Intron(Peginterferon Alfa-2b)、Pembrolizumab、Pemetrexed Disodium
、Perjeta(Pertuzumab)、Pertuzumab、Platinol(Cisplatin)、Platinol-AQ(Cisplatin)、Plerixafor、Pomalidomide、Pomalyst(Pomalidomide
)、Ponatinib Hydrochloride、Portrazza(Necitumumab)、Pralatrexate、Prednisone、Procarbazine Hydrochloride、Proleukin(Aldesleukin)、Prolia(Denosumab)、Promacta(Eltrombopag Olamine)、Propranolol Hydrochloride、Provenge(Sipuleucel-T)、Purinethol(Mercaptopurine)、Purixan(Mercaptopurine)、Radium 223 Dichloride、Raloxifene Hydrochloride、Ramucirumab、Rasburicase、R-CHOP、R-CVP、Recombinant Human Papillomavirus(HPV)Bivalent Vaccine、Recombinant Human Papillomavirus(HPV)Nonavalent Vaccine、Recombinant Human Papillomavirus(HPV)Quadrivalent Vaccine、Recombinant Interferon Alfa-2b、Regorafenib、Relistor(Methylnaltrexone Bromide)、R-EPOCH、Revlimid(Lenalidomide)、Rheumatrex(Methotrexate)、Ribociclib、R-ICE、Rituxan(Rituximab)、Rituxan Hycela(Rituximab and Hyaluronidase Human)、Rituximab、Rituximab and、Hyaluronidase Human、、Rolapitant Hydrochloride、Romidepsin、Romiplostim、Rubidomycin(Daunorubicin Hydrochloride)、Rubraca(Rucaparib Camsylate)、Rucaparib Camsylate、Ruxolitinib Phosphate、Rydapt(Midostaurin)、Sclerosol Intrapleural Aerosol(Talc)、Siltuximab、Sipuleucel-T、Somatuline Depot(Lanreotide Acetate)、Sonidegib、Sorafenib Tosylate、Sprycel(Dasatinib)、STANFORD V、Sterile Talc Powder(Talc)、Steritalc(Talc)、Stivarga(Regorafenib)、Sunitinib Malate、Sutent(Sunitinib Malate)、Sylatron(Peginterferon Alfa-2b)、Sylvant(Siltuximab)、Synribo(Omacetaxine Mepesuccinate)、Tabloid(Thioguanine)、TAC、Tafinlar(Dabrafenib)、Tagrisso(Osimertinib)、Talc、Talimogene Laherparepvec、Tamoxifen Citrate、Tarabine PFS(Cytarabine)、Tarceva(Erlotinib Hydrochloride)、Targretin(Bexarotene)、Tasigna(Nilotinib)、Taxol(Paclitaxel)、Taxotere(Docetaxel)、Tecentriq、(Atezolizumab)、Temodar(Temozolomide)、Temozolomide、Temsirolimus、Thalidomide、Thalomid(Thalidomide)、Thioguanine、Thiotepa、Tisagenlecleucel、Tolak(Fluorouracil--Topical)、Topotecan Hydrochloride、Toremifene、Torisel(Temsirolimus)、Tositumomab and Iodine I 131 Tositumomab、Totect(Dexrazoxane Hydrochloride)、TPF、Trabectedin、Trametinib、Trastuzumab、Treanda(Bendamustine Hydrochloride)、Trifluridine and Tipiracil Hydrochloride、Trisenox(Arsenic Trioxide)、Tykerb(Lapatinib Ditosylate)、Unituxin(Dinutuximab)、Uridine Triacetate、VAC、Vandetanib、VAMP、Varubi(Rolapitant Hydrochloride)、Vectibix(Panitumumab)、VeIP、Velban(Vinblastine Sulfate)、Velcade(Bortezomib)、Velsar(Vinblastine Sulfate)、Vemurafenib、Venclexta(Venetoclax)、Venetoclax、Verzenio(Abemaciclib)、Viadur(Leuprolide Acetate)、Vidaza(Azacitidine)、Vinblastine Sulfate、Vincasar PFS(Vincristine Sulfate)、Vincristine Sulfate、Vincristine Sulfate Liposome、Vinorelbine Tartrate、VIP、Vismodegib、Vistogard(Uridine Triacetate)、Voraxaze(Glucarpidase)、Vorinostat、Votrient(Pazopanib Hydrochloride)、Vyxeos(Daunorubicin Hydrochloride and Cytarabine Liposome)、Wellcovorin(Leucovorin Calcium)、Xalkori(Crizotinib)、Xeloda(Capecitabine)、XELIRI、XELOX、Xgeva(Denosumab)、Xofigo(Radium 223 Dichloride)、Xtandi(Enzalutamide)、Yervoy(Ipilimumab)、Yondelis(Trabectedin)、Zaltrap(Ziv-Aflibercept
)、Zarxio(Filgrastim)、Zejula(Niraparib Tosylate Monohydrate)、Zelboraf(Vemurafenib
)、Zevalin(Ibritumomab Tiuxetan)、Zinecard(Dexrazoxane Hydrochloride)、Ziv-Aflibercept、Zofran(Ondansetron Hydrochloride)、Zoladex(Goserelin Acetate)、Zoledronic Acid
、Zolinza(Vorinostat)、Zometa(Zoledronic Acid)、Zydelig(Idelalisib)、Zykadia(Ceritinib)、および/またはZytiga(Abiraterone Acetate)を含むが、これらには限定されない当技術分野で知られている任意の抗癌剤を含むことができる。
【0032】
自然免疫の重要な構成要素であるマクロファージは、表面に特定の「自己シグナル」タンパク質がなくても異物を貪食し、それらをTリンパ球(T細胞)に提示することができる。しかしながら、巧妙な癌細胞は、マクロファージによる食作用を回避するために、CD47とも呼ばれるインテグリン関連タンパク質(IAP)の、抗食作用性「don’t eat me」シグナルをアップレギュレートする。CD47とそのリガンド、マクロファージ、樹状細胞(DC)、好中球に発現するシグナル調節タンパク質-α(SIRPα)との相互作用を遮断すると、これらの食細胞が活性化し、癌細胞の食作用を促進する。第1相臨床試験における多額の投資および著しい進歩にもかかわらず、従来のCD47封鎖戦略にはまだ多くの制限がある。抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、通常これらの適用を制限する。これらの重篤な副作用を回避するための努力が、CD47を介した免疫療法の分野において強く要求されている。一態様では、第1の成分(例えば、フィブリニンなどのH+スカベンジャー)および第2の成分(例えば、トロンビンなど)を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスが本明細書に開示される。ここで、マトリックスのゲル化は、第1の成分が第2の成分と接触したときに起こり、少なくとも1つの成分(すなわち、第1の成分および/または第2の成分)は、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、少なくとも1つの第1のナノ粒子は、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含み、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤は、抗CD47抗体を含む。
【0033】
上記のように、開示された免疫療法生体応答性ゲルマトリックスは、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤の持続放出のために設計されたナノ粒子を含む。免疫療法生体応答性ゲルマトリックスの、どの成分(すなわち、第1または第2の成分)がナノ粒子を含むかの選択は、医学的効果よりも製造および貯蔵の懸念に関わる決定であることが理解され、本明細書で企図される。したがって、第1の成分、第2の成分のいずれか、または両方の成分がナノ粒子を含むことができることが理解される。
【0034】
一態様では、本明細書に開示される免疫療法生体応答性ゲルマトリックスは、複数のナノ粒子を含むことができる。例えば、免疫療法生体応答性ゲルマトリックスは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10種のナノ粒子を含むことができる。したがって、一態様では、生体応答性ゲルマトリックスは、少なくとも1つの第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、および/または第10のナノ粒子を含むことができる。第1および任意の後続のナノ粒子は、第1の成分、第2の成分、または両方の成分に含まれ得ることがさらに理解され、本明細書で企図される。一態様では、第1のナノ粒子および後続の任意のナノ粒子(例えば、第2のナノ粒子)は、同じ成分に含まれる。別の態様では、第1のナノ粒子および後続の任意のナノ粒子(例えば、第2のナノ粒子)は、異なる成分に含まれる。例えば、第1の成分が第1のナノ粒子を含み、第2の成分が少なくとも1つの第2のナノ粒子を含む生体応答性ゲルマトリックスが本明細書に開示される。また、第1の成分が少なくとも1つの第1のナノ粒子、および少なくとも1つの第2のナノ粒子を含む生体応答性ゲルマトリックスが、本明細書に開示される。一態様では、第2の成分が少なくとも1つの第1のナノ粒子、および少なくとも1つの第2のナノ粒子を含む生体応答性ゲルマトリックスが、本明細書に開示される。さらに、第2の成分が第1のナノ粒子を含み、第1の成分が少なくとも1つの後続のナノ粒子(例えば、第2のナノ粒子)を含む生体応答性ゲルマトリックスも開示される。
【0035】
生体応答性ゲルマトリックスの成分は、複数のタイプの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含み得ることがさらに理解され、本明細書で企図される。一態様では、ナノ粒子は、複数のタイプの抗癌剤、閉塞阻害剤、または免疫調節剤、および前記抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含むことができる。例えば、ナノ粒子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の抗癌剤、遮断阻害剤、免疫調節剤の任意の組み合わせを含むことができる。生体応答性ゲルマトリックスは1つ以上のナノ粒子を含むことができるので、各ナノ粒子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤の任意の組み合わせを含み得ることが理解され、本明細書で企図される。さらに、第1および/または第2の成分のナノ粒子のいずれかに含まれる1つ以上の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤に加えて、免疫療法生体応答性ゲルマトリックスは、追加の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤も含み得ることが理解され、本明細書で企図される。ナノ粒子内に含まれる任意の追加の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤は、任意の第1の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤が第1のナノ粒子内または任意の第1のナノ粒子の外部のいずれかに提供される成分と同じか、または異なる成分に含まれ得ることも理解され、本明細書で企図される。
【0036】
これらの機能を促進するために、生体応答性ヒドロゲルをポリマーとして設計することができる。「ポリマー」とは、天然または合成の比較的高分子量の有機化合物を指し、その構造は繰り返しの小単位であるモノマーで表すことができる。ポリマーの非限定的な例として、ポリエチレン、ゴム、セルロースが挙げられる。合成ポリマーは、典型的には、モノマーの付加重合または縮合重合によって形成される。「コポリマー」という用語は、2種以上の異なる繰り返し単位(モノマー残基)から形成されたポリマーを指す。限定としてではなく例示的に、コポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであり得る。特定の態様ではまた、ブロックコポリマーの様々なブロックセグメントは、それ自体がコポリマーを含み得ることも企図される。「ポリマー」という用語は、天然ポリマー、合成ポリマー、ホモポリマー、ヘテロポリマーまたはコポリマー、付加ポリマーなどを含むがこれらに限定されないあらゆる形態のポリマーを包含する。一態様では、ゲルマトリックスは、コポリマー、ブロックコポリマー、ジブロックコポリマー、および/またはトリブロックコポリマーを含むことができる。
【0037】
本明細書に開示されるトリブロックコポリマーは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(ビニルピロリドン-コ-ビニルアセテート)、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-グリコール)酸、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体などのコアポリマーを含む。一態様では、コアポリマーは、ポリペプチドブロックの側面に位置することができる。
【0038】
本明細書に開示される免疫療法生体応答性ゲルマトリックスは、治療薬を効率的に輸送するための局所的な薬物送達デポーとして機能するだけでなく、治療の有効性を促進するために腫瘍内微小環境を調節する。例えば、第1の成分中のH+スカベンジャー(例えば、フィブリニンなど)は、微小環境のpHを上げ、活性酸素種を変更し、T細胞をTH1またはTH2型に調節し、マクロファージをM1型に調節することができる。例えば、腫瘍微小環境(TME)におけるpHの調節は、ナノ粒子に含まれるか、さもなければ免疫療法生体応答性ゲルマトリックス内に含まれる任意の抗癌剤、遮断阻害剤、および/または免疫療法剤の放出速度に影響を及ぼし得る。本明細書に示されるように、腫瘍微小環境のpHが6.5である場合、抗癌剤、遮断阻害剤、および/または免疫療法剤の50%が24時間までに放出され、約80%が140時間までに放出される。しかしながら、TMEのpHをpH7.4に上げ、したがって血液のpHをより厳密に反映することにより、抗癌剤、遮断阻害剤、および/または免疫療法剤の140時間での放出が約20%、大幅に延長されることが示された。一態様では、本明細書で開示されるのは、80、75、70、65、60、55、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、または10%未満の抗癌剤、遮断阻害剤、および/または免疫療法剤が140時間で放出された、本明細書に開示される生体応答性ゲルマトリックスのいずれかである。一態様では、10~50%の抗癌剤、遮断阻害剤、および/または免疫療法剤が140時間で放出され、好ましくは、20~40%の抗癌剤、遮断阻害剤、および/または免疫療法剤が140時間で放出された。放出速度はまた、その逆、すなわち、保持率(ある時点で保持される量)によって本明細書で言及され得ることが理解され、本明細書で企図される。したがって、一態様では、本明細書に開示されるのは、少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、または90%の抗癌剤、遮断阻害剤、および/または免疫療法剤が140時間保持される、本明細書に開示される生体応答性ゲルマトリックスのいずれかである。
【0039】
抗体
(1)抗体全般
「抗体」という用語は、本明細書において、広義に使用され、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を含む。インタクトな免疫グロブリン分子に加えて、用語「抗体」には、これらの免疫グロブリン分子の断片またはポリマー、および、免疫グロブリン分子またはその断片のヒトまたはヒト化バージョンもまた含まれる。抗体は、その所望の活性に関して、本明細書に記載されているin vitroアッセイを用いて、または類似の方法によって検査することができ、その後、そのin vivo治療および/または予防活性が、既知の臨床的検査方法に従って検査される。ヒト免疫グロブリンの5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3およびIgG-4;IgA-1およびIgA-2にさらに分けられ得る。当業者は、マウスに対する同等のクラスを認識するであろう。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。
【0040】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を表す、すなわち、抗体分子の小さな部分集団中に存在し得る天然に存在する可能性がある変異を除いて、集団内の各抗体が同一である。本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一もしくは相同であるが、鎖の残りは、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一もしくは相同である「キメラ」抗体、ならびに所望の拮抗活性を示す限り、このような抗体の断片を含む。
【0041】
開示されているモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を産生するあらゆる手法を用いて作製することができる。例えば、開示されているモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)によって記載されているものなど、ハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法では、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生する、または産生することができるリンパ球を誘発するために、通例、マウスまたはその他の適切な宿主動物が免疫化剤で免疫化されるあるいは、リンパ球は、in vitroで免疫化され得る。
【0042】
モノクローナル抗体は、組換えDNA法によっても作製され得る。開示されたモノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用の手法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離し、配列決定することができる。抗体または活性な抗体断片のライブラリーは、例えば、Burton et al.の米国特許第5,804,440号およびBarbas et al.の米国特許第6,096,441号に記載されているような、ファージディスプレイ技術を用いて、生成し、スクリーニングすることもできる。
【0043】
In vitro法も、一価抗体を調製するのに適している。抗体の断片、特にFab断片を作製するための抗体の消化は、本分野において既知の慣例技術を用いて達成することができる。例えば、消化は、パパインを用いて実施することができる。パパイン消化の例は、1994年12月22日に公開された国際公開第94/29348号および米国特許第4,342,566号に記載されている。抗体のパパイン消化は、典型的には、各々が単一の抗原結合部位を有する、Fab断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、および残りのFc断片を成分する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、抗原をなおも架橋することができる断片が生じる。
【0044】
本明細書において使用される「抗体またはその断片」という用語は、二重もしくは多重抗原特異性またはエピトープ特異性を有するキメラ抗体およびハイブリッド抗体ならびにハイブリッド断片を含む、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどの断片を包含する。このように、特異的な抗原を結合する能力を保持する抗体の断片が提供される。このような抗体および断片は、本分野において既知の技術によって作製することができ、実施例に記載されている方法に従って、抗体を生成し、抗体を特異性および活性についてスクリーニングするための一般的な方法で、特異性および活性に関してスクリーニングすることができる(Harlow and Lane.Antibodies,A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Publications,New York,(1988)を参照)。
【0045】
抗体断片および抗原結合タンパク質(一本鎖抗体)のコンジュゲートも、「抗体またはその断片」という意味に含まれる。
【0046】
抗体または抗体断片の活性が修飾されていない抗体または抗体断片と比較して、著しく変化されまたは損なわれていなければ、断片は、他の配列に付着されているか否かを問わず、特定の領域または特異的なアミノ酸残基の挿入、欠失、置換またはその他の選択された修飾も含むことができる。これらの修飾は、ジスルフィド結合が可能であるアミノ酸の除去/付加、その生体寿命の延長、その分泌特性の変更など、いくつかの追加の特性を与えることができる。いずれの事例でも、抗体または抗体断片は、そのコグネイト抗原への特異的結合など、生理活性特性を保有しなければならない。抗体または抗体断片の機能的なまたは活性な領域は、タンパク質の特異的領域の変異誘発に続く、発現したポリペプチドの発現および検査によって特定され得る。このような方法は当業者にとって自明であり、抗体または抗体断片をコードする核酸の部位特異的変異誘発を含むことができる。(Zoller、M.J.Curr.Opin.Biotechnol.3:348-354、1992)
【0047】
本明細書において使用される、「抗体」または「抗体(複数)」という用語は、ヒト抗体および/またはヒト化抗体も指すことができる。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラットまたはウサギに由来するもの)は、ヒトでは本来抗原性であり、このため、ヒトに投与された場合、望ましくない免疫応答が生じ得る。したがって、方法中でのヒト抗体またはヒト化抗体の使用は、ヒトに投与された抗体が望ましくない免疫応答を惹起する可能性を減らす役割を果たす。
【0048】
(2)ヒト抗体
開示されているヒト抗体は、任意の技術を用いて調製することができる。開示されているヒト抗体は、トランスジェニック動物から取得することもできる。例えば、免疫化に応答して、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるトランスジェニック変異マウスが記載されている(例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551-255(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255-258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)を参照)。具体的には、これらのキメラおよび生殖系列変異体マウス中の抗体重鎖連結領域(J(H))遺伝子のホモ接合型欠失は、内在性抗体産生の完全な阻害をもたらし、ヒト生殖系列抗体遺伝子アレイをこのような生殖系列変異体マウス中に首尾よく移植すると、抗原チャレンジに際してヒト抗体の産生をもたらす。所望の活性を有する抗体は、本明細書において記載されているように、Env-CD4-共受容体複合体を用いて選択される。
【0049】
(3)ヒト化抗体
抗体ヒト化技術は、一般に、抗体分子の1種以上のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作するための組換えDNA技術の使用を伴う。したがって、非ヒト抗体(またはその断片)のヒト化形態は、ヒト(レシピエント)抗体のフレームワーク中に組み込まれた非ヒト(ドナー)抗体由来の抗原結合部位の一部を含有するキメラ抗体または抗体鎖(または、sFv、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2もしくは抗体のその他の抗原結合部分などのそれらの断片)である。
【0050】
ヒト化抗体を生成するために、レシピエント(ヒト)抗体分子の1つ以上の相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の抗原結合特性(例えば、標的抗原に対するあるレベルの特異性および親和性)を有することが知られているドナー(非ヒト)抗体分子の1つ以上のCDRからの残基によって置き換えられる。いくつかの事例では、ヒト抗体のFvフレームワーク(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換されている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にも、移入されるCDRまたはフレームワーク配列中にも見出されない残基も含有し得る。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からヒト化抗体中に導入された1種以上のアミノ酸残基を有する。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基が、および場合によりいくつかのFR残基がげっ歯類抗体中の類似の部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。ヒト化抗体は、一般に、典型的にはヒト抗体のものである抗体定常領域(fc)の少なくとも一部を含有する(Jones et al.,Nature,321:522-525(1986,Reichmann et al.,Nature,332:323-327(1988),およびPresta,Curr.Opin.Struct.Biol.,2:593-596(1992))。
【0051】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、本分野において周知である。例えば、ヒト化抗体は、Winterおよび共同研究者の方法に従って(Jones et al.,Nature,321:522-525(1986),Riechmann et al.,Nature,332:323-327(1988)、Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536(1988))、げっ歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列で置換することによって生成することができる。ヒト化抗体を作製するために使用することができる方法は、米国特許第4,816,567号(Cabilly et al.,)、米国特許第5,565,332号(Hoogenboom et al.,)、米国特許第5,721,367号(Kay et al.)、米国特許第5,837,243号(Deo et al.)、米国特許第5,939,598号(kucherlapati et al.)、米国特許第6,130,364号(Jakobovits et al.)および米国特許第6,180,377号(Morgan et al.)にも記載されている。
【0052】
(4)抗体の投与
抗体の投与は、本明細書に開示されているように行うことができる。抗体送達のための核酸アプローチも存在する。患者または対象自身の細胞が核酸を取り込み、コードされている抗体または抗体断片を産生および分泌するように、広く中和する抗体および抗体断片を、抗体または抗体断片をコードする核酸調製物(例えば、DNAまたはRNA)として患者または対象に投与することもできる。核酸の送達は、例えば、本明細書に開示されているようなあらゆる手段によることができる。
【0053】
医薬担体/医薬生成物の送達
上記のように、組成物は、薬学的に許容される担体中でin vivo投与することもできる。「薬学的に許容される」とは、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、その材料は、いかなる望ましくない生物学的作用も引き起こすことなく、またはそれが含まれる医薬組成物の他のいずれの成分とも有害な形で相互作用することなく、核酸またはベクターと共に対象に投与され得る。担体は、当業者に周知であるとおり、当然のことながら、活性成分のいかなる分解も最小限に抑え、対象におけるいかなる有害な副作用も最小限に抑えるように選択されるであろう。
【0054】
組成物は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与)、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮投与、体外投与などで投与することができ、局所鼻腔内投与または吸入剤による投与を含む。本明細書で使用されるように、「局所鼻腔内投与」は、鼻孔の一方または両方を通じた鼻および鼻腔内への組成物の送達を意味し、噴霧機構もしくは液滴機構による、または核酸もしくはベクターのエアロゾル化を介した送達を含むことができる。吸入剤による組成物の投与は、噴霧機構または液滴機構による送達を介した鼻または口を通じたものであり得る。挿管を介して呼吸器系の任意の領域(例えば、肺)に直接送達することもできる。必要とされる組成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重および全身状態、治療下のアレルギー性障害の重症度、使用される特定の核酸またはベクター、その投与形式などに応じて、対象毎に異なるであろう。したがって、全ての組成物に対して正確な量を特定することは不可能である。しかしながら、適切な量は、本明細書の教示があれば、通例の実験のみを用いて、当業者によって決定されることができる。
【0055】
組成物の非経口投与は、使用される場合、一般的に注射によって行われることを特徴とする。注射剤は、液体溶液もしくは懸濁液として、注射前の液体中での懸濁液の溶解に適した固体形態として、またはエマルジョンとして、慣用の形態で調製することができる。比較的最近になって改訂された非経口投与のためのアプローチは、一定の用量が維持されるように徐放または持続放出システムの使用を伴う。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,610,795号を参照されたい。
【0056】
材料は、溶液、懸濁液(例えば、微粒子、リポソームまたは細胞中に組み込まれている)の状態であってもよい。これらは、抗体、受容体または受容体リガンドを介して、特定の細胞型を標的とし得る。以下の参考文献は、特定のタンパク質が腫瘍組織を標的とする本技術の使用例である(Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,2:447-451,(1991);Bagshawe,K.D.,Br.J.Cancer,60:275-281,(1989);Bagshawe,et al.,Br.J.Cancer,58:700-703,(1988);Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,4:3-9,(1993);Battelli,et al.,Cancer Immunol.Immunother.,35:421-425,(1992);PieterszおよびMcKenzie,Immunolog.Reviews,129:57-80,(1992);およびRoffler,et al.,Biochem.Pharmacol,42:2062-2065,(1991))。ビヒクル、例えば「ステルス」および抗体がコンジュゲートされた他のリポソーム(結腸癌腫への脂質媒介性薬物標的化を含む)、細胞特異的リガンドを介したDNAの受容体媒介性標的化、リンパ球誘導腫瘍標的化、およびin vivoでのマウス神経膠腫細胞の高特異的治療レトロウイルス標的化。以下の参考文献は、特定のタンパク質が腫瘍組織を標的とする本技術の使用例である(Hughes et al.,Cancer Research,49:6214-6220,(1989);ならびにLitzingerおよびHuang,Biochimica et Biophysica Acta,1104:179-187,(1992))。一般に、受容体は、構成性またはリガンド誘導性のいずれかで、エンドサイトーシスの経路に関与している。これらの受容体は、クラスリンで被覆されたピットに集まり、クラスリンで被覆された小胞を介して細胞内に入り、酸性化されたエンドソームを通過し、その中で受容体は選別され、次いで、細胞表面にリサイクルされるか、細胞内に貯蔵されるか、またはリソソーム中で分解されるかのいずれかである。インターナリゼーション経路は、栄養素の取り込み、活性化タンパク質の除去、高分子のクリアランス、ウイルスおよび毒素の日和見的侵入、リガンドの解離および分解、ならびに受容体レベルの調節などの様々な機能を果たす。多くの受容体は、細胞の種類、受容体の濃度、リガンドの種類、リガンドの価数、およびリガンドの濃度に応じて、1つ以上の細胞内経路をたどる。受容体媒介性エンドサイトーシスの分子・細胞機序が概説されている(BrownおよびGreene,DNA and Cell Biology 10:6,399-409(1991))。
【0057】
a)薬学的に許容される担体
抗体を含む組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて治療的に使用することができる。
【0058】
適切な担体およびそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載されている。典型的には、製剤を等張性にするために、適切な量の薬学的に許容される塩が製剤中で使用される。薬学的に許容される担体の例として、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられるがこれらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である。更なる担体として、持続放出製剤、例えば、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、リポソームまたは微粒子の形態である。ある担体が、例えば、投与される組成物の投与経路および濃度に応じて、より好ましいものであり得ることは、当業者に自明であろう。
【0059】
医薬担体は、当業者に知られている。これらは、最も典型的には、無菌水、生理食塩水および生理的pHで緩衝化された溶液などの溶液を含む、ヒトへの薬物投与のための標準的な担体であろう。組成物は、筋肉内投与にまたは皮下投与することができる。他の化合物は、当業者によって使用される標準的な手順に従って投与されるであろう。
【0060】
医薬組成物は、選択された分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤および界面活性剤などを含み得る。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤などの1種以上の活性成分も含み得る。
【0061】
医薬組成物は、局所的または全身的な治療が所望されるか否かと、治療されるべき領域に応じて、いくつかの方法で投与され得る。投与は、局所的(点眼、経膣、直腸内、経鼻を含む)、経口的、吸入により、または非経口的、例えば、点滴、皮下、腹腔内または筋肉内注射により行うことができる。開示された抗体は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、腔内投与、または経皮投与することができる。
【0062】
非経口投与のための調製物として、滅菌水性溶液または非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体として、生理食塩水および緩衝化媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとして、塩化ナトリウム溶液、デキストロースリンゲル液、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルとして、流体および栄養素補充液、電解質補充液(デキストロースリンゲル液をベースとするものなど)などが挙げられる。保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスなども存在し得る。
【0063】
局所投与用の製剤として、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、ドロップ、坐剤、スプレー、液体および粉末が挙げられ得る。慣用の医薬担体、水性、粉末または油性の基剤、増粘剤などが必要であり得、または望ましくあり得る。
【0064】
免疫療法生体応答性ゲルマトリックスの第1および第2の成分は、同時投与のために投与前に混合しても、または別々の局所投与を含む別々の投与のために別々に維持しても(例えば別々の2つの噴霧器)、または同時投与中に混合してもよい(例えば、適用中に別々の成分を混合する、または同時(simultaneous)もしくは同時(concurrent)適用を可能にする単一のアプリケーター)。
【0065】
経口投与用の組成物として、粉末もしくは顆粒、水もしくは非水性媒体中の懸濁液もしくは溶液、カプセル、サシェまたは錠剤が挙げられる。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましいことがあり得る。
【0066】
組成物のいくつかは、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、ならびにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸などの有機酸との反応によって、または水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、ならびにモノ、ジ、トリアルキルアミンおよびアリールアミンおよび置換されたエタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成される、薬学的に許容される酸または塩基付加塩として潜在的に投与され得る。
【0067】
b)治療用途
組成物を投与するための有効用量およびスケジュールは実験により決定され得、そのような決定を行うことは当該技術分野の範疇である。組成物の投与のための用量範囲は、障害の症状が影響を受ける所望の効果を生じるのに十分大きな投与量範囲である。用量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー型反応などの副作用を引き起こすほど多いものであってはならない。一般的に、用量は、患者の年齢、状態、性別、疾患の程度、投与経路により、または他の薬物がレジメンに含まれているか否かで異なり、当業者によって決定されることができる。用量は、任意の禁忌の場合には、個々の医師によって調整されることができる。用量は変えることができ、1日または数日間で、毎日1回以上の用量投与で投与されることができる。所与の部類の医薬製品の適切な用量については、文献に手引きを見出すことができる。例えば、抗体の適切な用量を選択する上での手引きは、抗体の治療用途に関する文献、例えば、Handbook of Monoclonal Antibodies,Ferrone et al.,eds.,Noges Publications,Park Ridge,N.J.,(1985)ch.22 and pp.303-357;Smith et al.,Antibodies in Human Diagnosis and Therapy,Haber et al.,eds.,Raven Press,New York(1977)pp.365-389中に見出すことができる。単独で使用される抗体の典型的な一日用量は、上記の要因に応じて、1日当たり約1μg/kg~最大100mg/kg(体重)またはそれを超える範囲であり得る。
【0068】
C.癌の治療法
一態様では、本明細書に開示される治療薬送達ビヒクルは、癌もしくは転移を治療、予防、阻害もしくは軽減するために、または外科的切除(すなわち、切除)後の再発または転移を治療、予防、阻害もしくは軽減するために対象に投与することが意図されていることが理解される。したがって、癌腫瘍の外科的切除部位での腫瘍増殖および/または転移を治療、阻害、および/または予防する方法が本明細書に開示され、方法は、第1の成分および第2の成分を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを対象の切除部位に投与することを含む。ここでマトリックスのゲル化は、第1の成分が第2の成分と接触した場合に起こり、成分の少なくとも1つは、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、少なくとも1つの第1のナノ粒子は、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む。したがって、一態様では、癌腫瘍の外科的切除部位での腫瘍増殖および/または転移を治療、阻害、および/または予防する方法であって、本明細書で開示された免疫療法生体応答性ゲルマトリックスのいずれかを対象の切除部位に投与することを含む方法が、本明細書に開示される。
【0069】
本明細書に記載されるように、開示された免疫療法生体応答性ゲルマトリックスは、制御されない細胞増殖が起こるあらゆる疾患、例えば癌などを治療するために使用することができる。開示された組成物を使用して治療できる、代表的だが非限定的な癌のリストは、以下の通りである。白血病(これらに限定されないが、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)を含む);リンパ腫;B細胞リンパ腫;T細胞リンパ腫;菌状息肉症;ホジキン病;限定されないが、骨髄性白血病を含む白血病;形質細胞腫;組織球腫;膀胱癌;脳癌、神経系癌、頭部および頸部癌、頭部および頸部の扁平上皮細胞癌腫、尿路上皮癌、腎臓癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌などの肺癌(lung cancer)、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、黒色腫、口、喉、喉頭および肺の扁平上皮細胞癌腫;結腸癌;子宮頸癌;子宮頸癌腫;乳癌;上皮癌;腎癌、泌尿生殖器癌;肺癌(pulmonary cancer);食道癌腫;頭部および頸部癌腫;大腸癌;造血器癌;精巣癌;結腸および直腸の癌;前立腺癌;AIDS関連リンパ腫もしくは肉腫、転移性癌もしくは癌全般;または膵臓癌。
【0070】
したがって、一態様では、対象の癌(急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、黒色腫、腎細胞癌、尿路上皮癌、非小細胞肺癌、および/または膀胱癌を含むがこれらに限定されない);癌(急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、黒色腫、腎細胞癌、尿路上皮癌、非小細胞肺癌、および/または膀胱癌を含むがこれらに限定されない)の増殖;癌(急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、黒色腫、腎細胞癌、尿路上皮癌、非小細胞肺癌、および/または膀胱癌含むがこれらに限定されない)の転移を治療、軽減、阻害、または予防する方法;および/または腫瘍(急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、黒色腫、腎細胞癌、尿路上皮癌、非小細胞肺癌、および/または膀胱癌を含むがこれらに限定されない)の外科的切除後の癌の再発、増殖または転移を治療、軽減、阻害、または予防する方法が開示され、方法は、本明細書に開示される免疫療法生体応答性ゲルを、癌を有する患者に投与することを含む。したがって、一態様では、対象の癌もしくは癌の増殖を治療、軽減、阻害、もしくは予防する方法、および/または腫瘍の外科的切除後の癌の再発、増殖もしくは転移を治療、軽減、阻害、または予防する方法であって、本明細書に開示される生体応答性ヒドロゲルマトリックス(例えば、抗CD47抗体を含む生体応答性ヒドロゲルマトリックス)のいずれかを含む組成物を対象に投与することを含む方法が、本明細書に開示される。
【0071】
上記のように、癌の外科的切除部位での腫瘍増殖および/または転移を治療、阻害、および/または予防する、開示された方法で使用される免疫療法生体応答性ゲルマトリックスは、例えば抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤などの治療薬カーゴを含む。例えば、治療薬カーゴは、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS-936559、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、またはアベルマブなど);免疫調節剤、例えば、任意の抗体、サイトカイン、ケモカイン、核酸、または小分子などを含み得、これらは、限定されないが、NK細胞、NK T細胞、T細胞、B細胞、形質細胞、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞を含む免疫細胞の活性、産生、増殖、または成熟を阻害または促進する。一態様では、免疫調節剤は、IFN-γ、TNF-α、TGF-β、IL-1β、IL-2 IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、抗CD3抗体抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CTLA-4抗体、抗4-1BB抗体、抗OX40抗体、抗CD25抗体、抗CD27抗体、抗LAG3抗体、および/または抗CD47抗体であり得る。
【0072】
一態様では、対象の癌を治療する開示された方法で使用される生体応答性ゲルマトリックスは、抗癌剤を含む。開示された方法で使用される抗癌剤は、Abemaciclib
、Abiraterone Acetate、Abitrexate(Methotrexate)、Abraxane(Paclitaxel Albumin-stabilized Nanoparticle Formulation)、ABVD、ABVE
、ABVE-PC、AC、AC-T、Adcetris(Brentuximab Vedotin)、ADE、Ado-Trastuzumab Emtansine、Adriamycin(Doxorubicin Hydrochloride)、Afatinib Dimaleate、Afinitor(Everolimus)、Akynzeo(Netupitant and Palonosetron Hydrochloride)、Aldara(Imiquimod)、Aldesleukin、Alecensa(Alectinib)、Alectinib、Alemtuzumab、Alimta(Pemetrexed Disodium)、Aliqopa(Copanlisib Hydrochloride)、Alkeran for Injection(Melphalan Hydrochloride)、Alkeran Tablets(Melphalan)、Aloxi(Palonosetron Hydrochloride)、Alunbrig(Brigatinib)、Ambochlorin(Chlorambucil)、Amboclorin Chlorambucil)、Amifostine、Aminolevulinic Acid、Anastrozole、Aprepitant、Aredia(Pamidronate Disodium)、Arimidex(Anastrozole)、Aromasin(Exemestane)、Arranon(Nelarabine)、Arsenic Trioxide、Arzerra(Ofatumumab)、Asparaginase Erwinia chrysanthemi、Atezolizumab、Avastin(Bevacizumab)、Avelumab、Axitinib、Azacitidine
、Bavencio(Avelumab)、BEACOPP、Becenum(Carmustine)、Beleodaq(Belinostat)、Belinostat、Bendamustine Hydrochloride、BEP、Besponsa(Inotuzumab Ozogamicin)、Bevacizumab、Bexarotene、Bexxar(Tositumomab and Iodine I 131 Tositumomab)、Bicalutamide、BiCNU(Carmustine)、Bleomycin、Blinatumomab、Blincyto(Blinatumomab)、Bortezomib、Bosulif(Bosutinib)、Bosutinib、Brentuximab Vedotin、Brigatinib、BuMel、Busulfan、Busulfex(Busulfan)、Cabazitaxel、Cabometyx(Cabozantinib-S-Malate)、Cabozantinib-S-Malate、CAF、Campath(Alemtuzumab)、Camptosar、(Irinotecan Hydrochloride)、Capecitabine、CAPOX、Carac(Fluorouracil--Topical)、Carboplatin、CARBOPLATIN-TAXOL、Carfilzomib、Carmubris(Carmustine)
、Carmustine、Carmustine Implant、Casodex(Bicalutamide)、CEM、Ceritinib、Cerubidine(Daunorubicin Hydrochloride)、Cervarix(Recombinant HPV Bivalent Vaccine)、Cetuximab、CEV、Chlorambucil、CHLORAMBUCIL-PREDNISONE、CHOP、Cisplatin、Cladribine、Clafen(Cyclophosphamide)、Clofarabine、Clofarex(Clofarabine)、Clolar(Clofarabine)、CMF、Cobimetinib
、Cometriq(Cabozantinib-S-Malate)、Copanlisib Hydrochloride、COPDAC、COPP、COPP-ABV、Cosmegen(Dactinomycin)、Cotellic(Cobimetinib)、Crizotinib、CVP、Cyclophosphamide、Cyfos(Ifosfamide)、Cyramza(Ramucirumab)、Cytarabine、Cytarabine Liposome、Cytosar-U(Cytarabine)、Cytoxan(Cyclophosphamide)、Dabrafenib、Dacarbazine、Dacogen(Decitabine)、Dactinomycin、Daratumumab、Darzalex(Daratumumab)、Dasatinib、Daunorubicin Hydrochloride、Daunorubicin Hydrochloride and Cytarabine Liposome、Decitabine、Defibrotide Sodium、Defitelio(Defibrotide Sodium)、Degarelix、Denileukin Diftitox、Denosumab、DepoCyt(Cytarabine Liposome)、Dexamethasone、Dexrazoxane Hydrochloride、Dinutuximab、Docetaxel、Doxil(Doxorubicin Hydrochloride Liposome)、Doxorubicin Hydrochloride、Doxorubicin Hydrochloride Liposome、Dox-SL(Doxorubicin Hydrochloride Liposome)、DTIC-Dome(Dacarbazine)、Durvalumab、Efudex(Fluorouracil--Topical)、Elitek(Rasburicase)、Ellence(Epirubicin Hydrochloride)、Elotuzumab、Eloxatin(Oxaliplatin)、Eltrombopag Olamine、Emend(Aprepitant)、Empliciti(Elotuzumab
)、Enasidenib Mesylate、Enzalutamide、Epirubicin Hydrochloride、EPOCH、Erbitux(Cetuximab)、Eribulin Mesylate、Erivedge(Vismodegib)、Erlotinib Hydrochloride、Erwinaze(Asparaginase Erwinia chrysanthemi)、Ethyol(Amifostine)、Etopophos(Etoposide Phosphate
)、Etoposide、Etoposide Phosphate、Evacet(Doxorubicin Hydrochloride Liposome)、Everolimus、Evista、(Raloxifene Hydrochloride)、Evomela(Melphalan Hydrochloride)、Exemestane、5-FU(Fluorouracil Injection)、5-FU(Fluorouracil--Topical)、Fareston(Toremifene
)、Farydak(Panobinostat)、Faslodex(Fulvestrant)、FEC、Femara(Letrozole)、Filgrastim、Fludara(Fludarabine Phosphate)、Fludarabine Phosphate、Fluoroplex(Fluorouracil--Topical)、Fluorouracil Injection、Fluorouracil--Topical、Flutamide、Folex(Methotrexate
)、Folex PFS(Methotrexate)、FOLFIRI、FOLFIRI-BEVACIZUMAB、FOLFIRI-CETUXIMAB、FOLFIRINOX、FOLFOX、Folotyn(Pralatrexate)、FU-LV、Fulvestrant、Gardasil(Recombinant HPV Quadrivalent Vaccine)、Gardasil 9(Recombinant HPV Nonavalent Vaccine)、Gazyva(Obinutuzumab)、Gefitinib、Gemcitabine Hydrochloride
、GEMCITABINE-CISPLATIN、GEMCITABINE-OXALIPLATIN、Gemtuzumab Ozogamicin、Gemzar(Gemcitabine Hydrochloride)、Gilotrif(Afatinib Dimaleate)、Gleevec(Imatinib Mesylate)、Gliadel(Carmustine Implant)、Gliadel wafer(Carmustine Implant)、Glucarpidase、Goserelin Acetate、Halaven(Eribulin Mesylate)、Hemangeol(Propranolol Hydrochloride)、Herceptin(Trastuzumab)、HPV Bivalent Vaccine、Recombinant、HPV Nonavalent Vaccine、Recombinant、HPV Quadrivalent Vaccine、Recombinant、Hycamtin(Topotecan Hydrochloride)、Hydrea(Hydroxyurea)、Hydroxyurea、Hyper-CVAD、Ibrance(Palbociclib)、Ibritumomab Tiuxetan、Ibrutinib、ICE、Iclusig(Ponatinib Hydrochloride)、Idamycin(Idarubicin Hydrochloride)、Idarubicin Hydrochloride、Idelalisib、Idhifa(Enasidenib Mesylate)、Ifex(Ifosfamide)、Ifosfamide、Ifosfamidum(Ifosfamide
)、IL-2(Aldesleukin)、Imatinib Mesylate、Imbruvica(Ibrutinib)、Imfinzi(Durvalumab)、Imiquimod、Imlygic(Talimogene Laherparepvec)、Inlyta(Axitinib)、Inotuzumab Ozogamicin、Interferon Alfa-2b、Recombinant、Interleukin-2(Aldesleukin)、Intron A(Recombinant Interferon Alfa-2b)、Iodine I 131 Tositumomab and Tositumomab、Ipilimumab、Iressa(Gefitinib)、Irinotecan Hydrochloride、Irinotecan Hydrochloride Liposome、Istodax(Romidepsin)、Ixabepilone、Ixazomib Citrate、Ixempra(Ixabepilone)、Jakafi(Ruxolitinib Phosphate)、JEB、Jevtana(Cabazitaxel)、Kadcyla(Ado-Trastuzumab Emtansine)、Keoxifene(Raloxifene Hydrochloride)、Kepivance(Palifermin)、Keytruda(Pembrolizumab)、Kisqali(Ribociclib)、Kymriah(Tisagenlecleucel)、Kyprolis(Carfilzomib)、Lanreotide Acetate、Lapatinib Ditosylate、Lartruvo(Olaratumab
)、Lenalidomide、Lenvatinib Mesylate、Lenvima(Lenvatinib Mesylate)、Letrozole、Leucovorin Calcium、Leukeran(Chlorambucil)、Leuprolide Acetate、Leustatin(Cladribine)、Levulan(Aminolevulinic Acid)、Linfolizin(Chlorambucil)、LipoDox(Doxorubicin Hydrochloride Liposome)、Lomustine、Lonsurf(Trifluridine and Tipiracil Hydrochloride)、Lupron(Leuprolide Acetate)、Lupron Depot(Leuprolide Acetate)、Lupron Depot-Ped(Leuprolide Acetate)、Lynparza(Olaparib)、Marqibo(Vincristine Sulfate Liposome)、Matulane(Procarbazine Hydrochloride)、Mechlorethamine Hydrochloride、Megestrol Acetate、Mekinist(Trametinib)、Melphalan、Melphalan Hydrochloride、Mercaptopurine、Mesna、Mesnex(Mesna)、Methazolastone(Temozolomide)、Methotrexate、Methotrexate LPF(Methotrexate)、Methylnaltrexone Bromide、Mexate(Methotrexate)、Mexate-AQ(Methotrexate)、Midostaurin、Mitomycin C、Mitoxantrone Hydrochloride、Mitozytrex(Mitomycin C)、MOPP、Mozobil(Plerixafor)、Mustargen(Mechlorethamine Hydrochloride)、Mutamycin(Mitomycin C)、Myleran(Busulfan)、Mylosar(Azacitidine)、Mylotarg(Gemtuzumab Ozogamicin)、Nanoparticle Paclitaxel(Paclitaxel Albumin-stabilized Nanoparticle Formulation)、Navelbine(Vinorelbine Tartrate)、Necitumumab、Nelarabine、Neosar(Cyclophosphamide)、Neratinib Maleate、Nerlynx(Neratinib Maleate)、Netupitant and Palonosetron Hydrochloride、Neulasta(Pegfilgrastim)、Neupogen(Filgrastim)、Nexavar(Sorafenib Tosylate)、Nilandron(Nilutamide)、Nilotinib、Nilutamide、Ninlaro(Ixazomib Citrate)、Niraparib Tosylate Monohydrate、Nivolumab、Nolvadex(Tamoxifen Citrate)、Nplate(Romiplostim)、Obinutuzumab、Odomzo(Sonidegib)、OEPA、Ofatumumab、OFF、Olaparib、Olaratumab、Omacetaxine Mepesuccinate、Oncaspar(Pegaspargase)、Ondansetron Hydrochloride、Onivyde(Irinotecan Hydrochloride Liposome)、Ontak(Denileukin Diftitox)、Opdivo(Nivolumab)、OPPA、Osimertinib、Oxaliplatin、Paclitaxel、Paclitaxel Albumin-stabilized Nanoparticle Formulation、PAD、Palbociclib、Palifermin、Palonosetron Hydrochloride、Palonosetron Hydrochloride and Netupitant、Pamidronate Disodium、Panitumumab、Panobinostat、Paraplat(Carboplatin)、Paraplatin(Carboplatin)、Pazopanib Hydrochloride、PCV、PEB、Pegaspargase、Pegfilgrastim、Peginterferon Alfa-2b、PEG-Intron(Peginterferon Alfa-2b)、Pembrolizumab、Pemetrexed Disodium、Perjeta(Pertuzumab)、Pertuzumab、Platinol(Cisplatin)、Platinol-AQ(Cisplatin
)、Plerixafor、Pomalidomide、Pomalyst(Pomalidomide)、Ponatinib Hydrochloride、Portrazza(Necitumumab)、Pralatrexate、Prednisone、Procarbazine Hydrochloride、Proleukin(Aldesleukin)、Prolia(Denosumab)、Promacta(Eltrombopag Olamine)、Propranolol Hydrochloride、Provenge(Sipuleucel-T)、Purinethol(Mercaptopurine)、Purixan(Mercaptopurine)、Radium 223 Dichloride、Raloxifene Hydrochloride、Ramucirumab、Rasburicase、R-CHOP、R-CVP、Recombinant Human Papillomavirus(HPV)Bivalent Vaccine、Recombinant Human Papillomavirus(HPV)Nonavalent Vaccine、Recombinant Human Papillomavirus(HPV)Quadrivalent Vaccine、Recombinant Interferon Alfa-2b
、Regorafenib、Relistor(Methylnaltrexone Bromide)、R-EPOCH、Revlimid(Lenalidomide)、Rheumatrex(Methotrexate)、Ribociclib、R-ICE
、Rituxan(Rituximab)、Rituxan Hycela(Rituximab and Hyaluronidase Human)、Rituximab、Rituximab and、Hyaluronidase Human、、Rolapitant Hydrochloride、Romidepsin、Romiplostim、Rubidomycin(Daunorubicin Hydrochloride)、Rubraca(Rucaparib Camsylate)、Rucaparib Camsylate、Ruxolitinib Phosphate、Rydapt(Midostaurin)、Sclerosol Intrapleural Aerosol(Talc)、Siltuximab、Sipuleucel-T、Somatuline Depot(Lanreotide Acetate)、Sonidegib、Sorafenib Tosylate、Sprycel(Dasatinib)、STANFORD V、Sterile Talc Powder(Talc)、Steritalc(Talc)、Stivarga(Regorafenib)、Sunitinib Malate、Sutent(Sunitinib Malate)、Sylatron(Peginterferon Alfa-2b)、Sylvant(Siltuximab)、Synribo(Omacetaxine Mepesuccinate)、Tabloid(Thioguanine)、TAC、Tafinlar(Dabrafenib)、Tagrisso(Osimertinib)、Talc、Talimogene Laherparepvec、Tamoxifen Citrate、Tarabine PFS(Cytarabine)、Tarceva(Erlotinib Hydrochloride)、Targretin(Bexarotene)、Tasigna(Nilotinib)、Taxol(Paclitaxel)、Taxotere(Docetaxel)、Tecentriq、(Atezolizumab
)、Temodar(Temozolomide)、Temozolomide、Temsirolimus、Thalidomide、Thalomid(Thalidomide)、Thioguanine、Thiotepa、Tisagenlecleucel、Tolak(Fluorouracil--Topical)、Topotecan Hydrochloride、Toremifene、Torisel(Temsirolimus)、Tositumomab and Iodine I 131 Tositumomab、Totect(Dexrazoxane Hydrochloride)、TPF、Trabectedin、Trametinib、Trastuzumab、Treanda(Bendamustine Hydrochloride)、Trifluridine and Tipiracil Hydrochloride、Trisenox(Arsenic Trioxide)、Tykerb(Lapatinib Ditosylate)、Unituxin(Dinutuximab)、Uridine Triacetate、VAC、Vandetanib、VAMP、Varubi(Rolapitant Hydrochloride)、Vectibix(Panitumumab)、VeIP、Velban(Vinblastine Sulfate)、Velcade(Bortezomib)、Velsar(Vinblastine Sulfate)、Vemurafenib、Venclexta(Venetoclax)、Venetoclax、Verzenio(Abemaciclib)、Viadur(Leuprolide Acetate)、Vidaza(Azacitidine)、Vinblastine Sulfate、Vincasar PFS(Vincristine Sulfate)、Vincristine Sulfate、Vincristine Sulfate Liposome、Vinorelbine Tartrate、VIP、Vismodegib、Vistogard(Uridine Triacetate)、Voraxaze(Glucarpidase)、Vorinostat、Votrient(Pazopanib Hydrochloride)、Vyxeos(Daunorubicin Hydrochloride and Cytarabine Liposome)、Wellcovorin(Leucovorin Calcium)、Xalkori(Crizotinib)、Xeloda(Capecitabine)、XELIRI、XELOX、Xgeva(Denosumab)、Xofigo(Radium 223 Dichloride)、Xtandi(Enzalutamide)、Yervoy(Ipilimumab)、Yondelis(Trabectedin)、Zaltrap(Ziv-Aflibercept
)、Zarxio(Filgrastim)、Zejula(Niraparib Tosylate Monohydrate)、Zelboraf(Vemurafenib
)、Zevalin(Ibritumomab Tiuxetan)、Zinecard(Dexrazoxane Hydrochloride)、Ziv-Aflibercept、Zofran(Ondansetron Hydrochloride)、Zoladex(Goserelin Acetate)、Zoledronic Acid
、Zolinza(Vorinostat)、Zometa(Zoledronic Acid)、Zydelig(Idelalisib)、Zykadia(Ceritinib)、および/またはZytiga(Abiraterone Acetate)を含むがこれらには限定されない、当技術分野で知られている任意の化学治療剤を含むことができる。
【0073】
ヒドロゲルマトリックスは、腫瘍の微小環境に生体応答性を有し、例えば活性酸素種またはpHなどの微小環境内の因子への曝露に際し、抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を放出するように設計できることが理解され、本明細書で企図される。マトリックスは、TMEのpHを変更して、抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤の放出速度を調節するように設計できる。例えば、生体応答性マトリックスは、例えば、微小環境のpHを上昇させ、持続放出をもたらすフィブリニンなどのH+スカベンジャーを含むことができる。一態様では、生体応答性ゲルマトリックスは、抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、または90日間、腫瘍微小環境内に放出するように設計できることが本明細書で企図される。
【0074】
本明細書において使用される「治療する」、「治療すること」、「治療」およびこれらの文法的変形は、1種以上の、疾病もしくは症状、疾病もしくは症状の症候または疾病もしくは症状の根底に存在する原因の強度または頻度を部分的にまたは完全に抑制し、遅延し、治療し、治癒し、緩和し、和らげ、変化させ、治し、軽減し、改善し、安定化し、鎮静化し、および/または低減する意図または目的での、組成物の投与を含む。本発明による治療は、予防的に、予防的に、緩和的にまたは治療的に適用することができる。予防的治療は、発症前に(例えば、癌の明白な徴候の前に)、早期の発症中に(例えば、癌の初期の徴候および症候の際に)または癌の発症が確定した後に対象に投与される。予防的投与は、感染症の症状が現れる前の数日から数年間にわたって実施され得る。
【0075】
一態様では、癌もしくは転移を治療、予防、阻害、もしくは低減する、または外科的切除(すなわち、切除)後の再発もしくは転移を治療、予防、阻害、もしくは低減する開示された方法は、本明細書に開示されるいずれかの治療薬送達ビヒクルまたは医薬組成物を対象に投与することを含み、対象における特定の癌の治療に適切な任意の頻度での治療薬送達ビヒクルまたは医薬組成物の投与を含み得る。例えば、治療薬送達ビヒクルまたは医薬組成物は、少なくとも12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48時間毎に1回、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31日間毎に1回、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12か月毎に1回、患者に投与することができる。一態様では、治療薬送達ビヒクルまたは医薬組成物は、週に少なくとも1、2、3、4、5、6、7回投与される。
【0076】
免疫療法生体応答性ゲルマトリックス用に接触して配置される第1および第2の成分は、投与前に混合してゲルマトリックスを形成でき、同時に投与、または別々に投与して投与部位でゲルマトリックスを形成できることが理解され、本明細書で企図される。したがって、本明細書では、免疫療法生体応答性ゲルマトリックスの第1および第2の成分を別々に維持し、同時にまたは連続して投与できることが企図される。例えば、第1の成分は、第2の成分投与の少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分前、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、36、48、または72時間前に、対象の腫瘍の部位に投与できる。同様に、第1の成分は、第2の成分投与の少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分前、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、36、48、または72時間後に、対象の腫瘍の部位に投与できる。
【0077】
腫瘍の転移または切除後の増殖の防止を、切除前に免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを投与することによって達成することができる利益があり得ることが理解され、本明細書で企図される。したがって、一態様では、癌もしくは転移を治療、予防、阻害、もしくは低減する方法、または外科的切除(すなわち、切除)後の再発もしくは転移を治療、予防、阻害、もしくは低減する方法が本明細書に開示され、ここで第1および第2の成分のうちの少なくとも1つは、腫瘍の除去の前に切除部位に投与される。
【0078】
腫瘍関連マクロファージ(TAM)は通常、腫瘍浸潤免疫細胞の相当な割合を占める。TAMは、多様な機能的表現型へと分化し、古典的に活性化された(M1様表現型とも呼ばれる)マクロファージ、あるいは活性化された(M2様表現型とも呼ばれる)マクロファージと表示される。M1型TAMは、抗原提示に不可欠な主要組織適合遺伝子複合体クラスIおよびクラスII分子を過剰発現し、これは、抗腫瘍免疫において重要な役割を果たす。逆に、M2型TAMは、腫瘍形成促進活性を発揮する。進行性腫瘍は通常、様々な腫瘍決定因子、特に低pH値に応答してM2型TAM活性化を実行する。M2に分極したTAMの腫瘍への浸潤は、一般に腫瘍の浸潤および移動および血管新生を促進し、T細胞応答も抑制するため、通常、臨床転帰不良に関連する。したがって、特定のTMEにおけるTAMのM2分極は、癌治療における重大な予後不良因子であると思われる。
【0079】
本明細書において、噴霧された生物応答性免疫療法フィブリンゲルは、手術後の腫瘍の再発および転移を抑制するように設計された。FDA承認の材料であるフィブリンゲルは、フィブリノゲンとトロンビンとの相互作用によって形成された。抗CD47抗体と共に事前にカプセル化されたCaCO3ナノ粒子(NP)(aCD47 @ CaCO3)を含むフィブリノゲン溶液、およびトロンビン溶液を手術後に腫瘍切除部位にすばやく噴霧し、直ちにin situで免疫療法フィブリンゲルを形成した(図1a)。CaCO3 NPは徐々に溶解し、その後、酸性炎症および腫瘍微小環境(TME)においてカプセル化されたaCD47を放出すると予想され、これは通常、TAM分極、T細胞増殖、サイトカイン産生などの免疫細胞機能に影響を与えることで、免疫抑制の役割を果たす。CaCO3NPは、M1型TAMの活性化を促進するなど、酸性環境の悪影響を緩和できるという仮説が立てられた。
【0080】
一方、放出された抗CD47抗体は、CD47とSIRPαとの間の相互作用を遮断することができ、癌細胞のマクロファージ食作用およびT細胞への腫瘍抗原提示を増加させることにより、適応免疫応答を活性化する。結果は、臨床的に承認されたaCD47 @ CaCO3NPを含むフィブリンゲルが、腫瘍の再発を効果的に防止し、手術後の転移を抑制できることを示した。
【0081】
腫瘍の切除後に腫瘍に対する自然または適応免疫応答を増加または調節する方法も本明細書に開示され、方法は、腫瘍を有する対象に第1の成分および第2の成分を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを投与することを含む。ここで、マトリックスのゲル化は、第1の成分が第2の成分と接触した場合に起こり、成分の少なくとも1つは、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、少なくとも1つの第1のナノ粒子は、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む。例えば、マクロファージがM1型に合致するように自然免疫応答を調節する方法であって、開示される免疫療法生体応答剤を投与することを含む方法が、本明細書に開示される。
【0082】
開示された生体応答性ゲルは、局所的に投与されたにもかかわらず、全身的効果を有し得ることが理解され、本明細書で企図される。したがって、一態様では、対象の癌を治療、軽減、阻害、および/または予防する方法について本明細書に開示される。ここで、免疫療法生体応答性ゲルマトリックスの投与が、抗腫瘍応答を増加させ、対象において全身的に腫瘍増殖を遅らせる。
【0083】
一態様では、開示された方法で使用するために対象に投与される、本明細書に開示される治療薬または医薬組成物の量は、医師によって決定される特定の癌の対象の治療に適切な任意の量を含み得る。例えば、治療薬送達ビヒクルまたは医薬組成物の量は、約10mg/kg~約100mg/kgであり得る。例えば、投与される治療薬送達ビヒクル剤または医薬組成物の量は、少なくとも10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、または100mg/kgであり得る。したがって、一態様では、投与される治療薬送達ビヒクルまたは医薬組成物の用量が約10mg/kg~約100mg/kgである、対象の癌を治療する方法が本明細書に開示される。
【実施例
【0084】
D.実施例
以下の実施例は、本明細書の特許請求の範囲に記載された化合物、組成物、物品、装置および/または方法がどのように作製され評価されるかの完全な開示および記述を当業者に提供するために提示されており、純粋に例示的であることが意図されており、本開示を限定することは意図されていない。数字(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、一部の誤差および偏差が考慮されるべきである。特に明記しない限り、部は、重量部であり、温度は、℃単位または周囲温度であり、圧力は、大気圧または大気圧に近い。
【0085】
実施例1
a)結果
(1)迅速な噴霧によるaCD47@CaCO3NPを含むフィブリンゲルの形成
ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(グルタミン酸)(PEG-b-P(Glu))ブロックコポリマーを含む溶液中で、Ca2+およびCO32-の添加により、充填容量5%、およびカプセル化効率50%のaCD47 @ CaCO3NPを沈殿させた。直径約100nmの単分散aCD47@CaCO3NPが得られ、そのサイズは、カルボキシルおよびCa2+間の相互作用を介してPEG-b-P(Glu)によって制御され、PEGシェルを用いてさらなる凝集および集合体を排除した(図1b、図1c、および図1d)。元素マッピング画像(図1c)は、これらのCaCO3NPにおけるaCD47(ガドリニウムキレート化)の均一な分布を示す。
【0086】
フィブリンゲルは、aCD47@CaCO3NPを含むフィブリノゲン、またはトロンビンのいずれかを含む等量の溶液を同時に噴霧および混合することによって迅速に形成でき、これはレオロジー試験によって検証された(図2A図2B、および図2C)。CaCO3NPに関連する溶液中のCa2+は、フィブリンゲルの形成を促進し得る。2つの溶液の混合により、弾性率(G’)が急速に上昇した。aCD47@CaCO3NPを含むフィブリンゲルの形態は、クライオ走査型電子顕微鏡(Cryo-SEM)イメージングによって観察された(図1eおよび図1f)。ヒドロゲル中のaCD47@CaCO3NPの分布をさらに実証するために、フルオレセイン(FITC)で標識されたフィブリノゲンおよびCy5.5で標識されたCaCO3NPをヒドロゲル形成に使用した。次に、凍結切片をローダミン結合ロバ抗ラットIgG抗体で染色して、aCD47を追跡した。共焦点イメージングで示されるように、CaCO3からのCy5.5シグナルは均一な分布パターンを示し、これはaCD47と共局在しており、さらにaCD47のCaCO3NPへのカプセル化を示す(図1g)。Cy5.5標識フィブリンゲルの生分解挙動を、蛍光in vivoイメージングシステムによって監視した。噴霧の3週間後、ゲルからの蛍光シグナルは検出できず、ゲルが完全に分解したことを示す。
【0087】
CaCO3NPは、酸性緩衝液中のH+と反応することにより溶解し、カプセル化されたaCD47を放出することができる。一方、プロトンスカベンジャーとして機能するCaCO3uNPは、酸性溶液のpH値を上昇させることもできる(図3および図4)。Cy5.5標識フィブリンゲルの生分解挙動を、蛍光in vivoイメージングシステムによって監視した。噴霧の3週間後、ゲルからの蛍光シグナルは検出できず、ゲルが完全に分解したことを示す。
【0088】
CaCO3NPは、酸性緩衝液中のH+と反応することにより溶解し、カプセル化されたaCD47を放出することができる(図3A図3B、および図4)。一方、CaCO3NPは、プロトンスカベンジャーとして酸性溶液のpH値を上昇させた(図5)。ヒドロゲルにaCD47@CaCO3NPをカプセル化すると、aCD47が徐々に放出される(図1h)。in vivoでの放出挙動を評価するために、aCD47をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に分散させ、CaCO3 NPにカプセル化するか、またはCaCO3@フィブリンゲルにカプセル化し、腫瘍切除腔内に注入または噴霧した。Cy5.5で標識されたaCD47シグナルは、in vivoイメージングシステム(IVIS)によって監視および定量化した(図1i、図1j、および図6)。切除部位において、注入された溶液中の抗体からのシグナルの80%が検出不能になっても、CaCO3@フィブリンゲルから放出されるaCD47の79%は、検出可能なままであった。aCD47の持続放出は、残存腫瘍切片の共焦点イメージングによってさらに実証された。ここでは、抗体に関連する顕著な蛍光シグナルがNPのシグナルから離れて観察され、CaCO3NPの分解およびNPからの抗体の持続放出を示している。ゲルナノ粒子リザーバー(reservoir)からの治療薬の持続放出は、遊離カーゴ(free cargo)と比較して有利であるが、この適用に要求される放出動態をさらに最適化して、治療効果を最大化し、毒性を最小化する必要がある。
【0089】
(2)CaCO3NPおよびaCD47によって誘発される免疫応答
低酸素TMEにおける癌細胞の解糖代謝は、乳酸およびH+(pH=6.5-6.8)の生成をもたらし、腫瘍内の免疫細胞の役割および機能を調節する。さらに、局所的な酸性化(pH=6.0-7.0)が、炎症および組織損傷部位でも見られる。残存TMEおよび炎症環境でH+を排除するCaCO3の能力を考慮して、CaCO3@フィブリンゲル治療後に全体的な免疫効果を試験した。CaCO3@フィブリン治療後にM2-TAM(CD206hiCD11b+F4/80+)の著しい減少およびM1-TAM(CD80hiCD11b+F4/80+)の増加が見られ、腫瘍を抑制するM1表現型へのTAMの分極が促進されたことを示す(図7aおよび図7b)。このTAMの分極は、TMEのサイトカインのレベル変動によってさらに確認された(図7c)。観察されたマクロファージのM1表現型への分極は、通常M2様マクロファージ分極を好むTMEの酸性の度調節に起因する可能性がある。M1様マクロファージ分極を促進する小分子と比較して、炎症を起こした腫瘍切除内におけるCaCO3のH+スカベンジングは、より簡単なアプローチを提供する。フローサイトメトリーによって評価されるように、CaCO3NPの濃度とマクロファージ分極との間に相関関係が観察された。CaCO3 @フィブリン治療後、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)および制御性T細胞(Treg)の減少、ならびにTMEでのHIF1-aの発現の減少も観察された(図7d、図7e、図7f、および図7g;図8)。注目すべきことに、CaCO3@フィブリン治療は、腫瘍内の腫瘍浸潤リンパ球(TIL、CD3+)、特に細胞傷害性Tリンパ球(CTL、CD3+CD8+)の増加(図7i)、ならびにインターフェロン-γ(IFN-γ)および血漿中の腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の増加(図7h)を引き起こした。一方、免疫細胞および癌細胞でのプログラム死-1(PD-1)およびプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現は、それぞれほとんど変化しないか、わずかに減少した(図9Aおよび図9B)。
【0090】
CD47遮断は、共焦点イメージングおよびフローサイトメトリーの結果に示されるように、マクロファージによる癌細胞の食作用をin vitroで増加させた(図3a、図3b、図11a、および図11b)。aCD47をフィブリンゲルに充填し(aCD47:マウスあたり50μg)、腫瘍切除部位に噴霧すると、切除腫瘍腔内のLy6ChiLy6G-マクロファージの頻度の増加が観察されたが、Ly6G+Ly6Cdim好中球では観察されなかった(図3c、図3d、および図12)。CD11c+DCの増加も記録され、これらの細胞は、CD80、CD86、およびCD103の発現を示し、それらの成熟状態を示している(図3eおよび図3f)。したがって、CD47遮断は、マクロファージおよびDCの両方による癌細胞の食作用を増強し、自然免疫系を活性化する。
【0091】
(3)腫瘍再発抑制のためのaCD47@CaCO3@フィブリン療法
手術後の残存微小腫瘍に対するaCD47@CaCO3@フィブリンの治療効果を検証するために、B16F10マウスモデルでの不完全な腫瘍切除を設定して、手術後の腫瘍再発を模倣した。IgG@CaCO3、aCD47、またはaCD47@CaCO3(aCD47:マウスあたり50μg)を含む、in situ形成されたフィブリンを切除部位に噴霧した。腫瘍の再発は、B16F10細胞からの生物発光シグナルによって監視した(図13a)。aCD47@CaCO3@フィブリン治療後のグループのマウスは、最小の再発腫瘍サイズを示し、このグループの8匹のマウスのうち4匹は検出可能な腫瘍を示さなかった(図13bおよび図13c)。対照的に、IgG@CaCO3@フィブリンまたはaCD47@フィブリンで治療されたマウスは、腫瘍の成長が控えめに遅延し、腫瘍の再発がなかったマウスは6匹中1匹のみであった。未治療の対照グループと比較して、当たり障りのないフィブリンゲルは、ごくわずかな治療効果を示した(図13bおよび図13c)。腫瘍サイズと相関するマウスの生存を監視した。aCD47@CaCO3@フィブリン治療後のマウスの50%は、60日間の観察期間生存した。対照的に、全ての対照グループ中、2ヶ月後に生存したマウスは、2匹のみであった(図13d)。マウスの体重は、種々の治療後、明白には影響されなかった(図13e)。さらに、aCD47@CaCO3@フィブリン治療の30日後にマウスから収集された主要臓器の組織学的分析、ならびに治療の1、7、および14日後に実施された全血パネル試験および血清生化学アッセイは、aCD47の局所送達が、マウスへの重大な副作用を引き起こさないことを示した。
【0092】
免疫細胞間の変化を分析するために、再発腫瘍を収集し、手術の5日後にフローサイトメトリーおよび免疫蛍光染色によって分析した。自然免疫系および適応免疫系の両方、特にマクロファージおよびTILに焦点を当てた。CaCO3治療後のM1表現型TAMの分極の増加に伴い、残存腫瘍におけるマクロファージの割合が、aCD47遮断後に増加した(図14a、図15a、図15b、図15c、および図15d)。同様に、TIL(CD3+細胞)の絶対数も、aCD47@CaCO3@フィブリン治療後の残存腫瘍で増加した(図14b)。さらに、CD8+T細胞の割合は、他の全ての対照と比較して、aCD47@CaCO3@フィブリン治療後の腫瘍で著しく増加した(図14b-図14c)。未治療またはブランクのフィブリン治療対照と比較して、CD4+T細胞の増殖も増加する一方、制御性T細胞(CD4+Foxp3+T細胞)の割合は減少した(図14d、図16a、および図16b)。免疫蛍光染色は、aCD47@CaCO3@フィブリン療法後の残存腫瘍での、マクロファージおよびCD8+T細胞の著しい増加を視覚的に示した(図14e、図17a、および図17b)。免疫応答の過程における重要な指標であるサイトカインの分泌は、aCD47@CaCO3@フィブリンによって誘発される効果的な自然免疫および適応免疫応答をさらに確認した(図14f)。
【0093】
(4)遠隔腫瘍を治療するためのaCD47@CaCO3@フィブリン療法
aCD47@CaCO3@フィブリンが残存腫瘍の自然免疫細胞および適応免疫細胞を活性化できることを確認した上で、aCD47@CaCO3@フィブリンの局所治療が全身性免疫応答を引き起こし得るかどうか調査することが求められた。転移性腫瘍を模倣するために、B16F10癌細胞を各マウスの原発腫瘍の反対側に接種した。次に、原発腫瘍を部分的に切除し、aCD47@CaCO3NPを含むフィブリンゲルを腫瘍切除部位に噴霧した(図18a)。B16F10細胞からの生物発光シグナルに従って、IVISイメージングシステムで腫瘍量を監視した。局所腫瘍の再発が、aCD47@CaCO3@フィブリン治療によって効果的に抑制され、追加治療なしの反対側の遠隔腫瘍も、遅い成長速度を示すことが見出された(図18b、図18c、および図18d)。これらの結果と一致して、M1様TAMおよびCD103+DCの数は、aCD47@CaCO3@フィブリンを噴霧した腫瘍で著しく増加し(図18eおよび図18f)、CD8+T細胞は、治療した腫瘍および遠隔腫瘍の両方で増加した(図18gおよび図19)。遠隔腫瘍におけるCD8+T細胞の増加は、全身性抗腫瘍免疫を誘発するマクロファージおよびDCによる腫瘍抗原の局所的な交差提示に起因する可能性がある。免疫系の活性化は、デュアルシリンジ投与法によるaCD47@CaCO3@Fibrinの腫瘍周囲注射によってさらに確認された。aCD47@CaCO3@フィブリンによる治療は、局所腫瘍および遠隔腫瘍の両方の成長を効果的に抑制した。
【0094】
噴霧ゲルで同時送達された抗PD-1(aPD1)およびaCD47の併用効果も評価した。同様に、原発腫瘍を部分的に切除し、aCD47 @ CaCO3NP(aCD47:マウスあたり50μg)、aPD1@ CaCO3 NP(aPD1:マウスあたり50μg)またはaCD47&aPD1 @ CaCO3NP(aCD47:マウスあたり25μg、aPD1:マウスあたり25μg)を含むフィブリンゲルを手術部位に噴霧した。心強いことに、生物発光イメージングならびに局所腫瘍および遠隔腫瘍の成長プロファイルに示されているように、aCD47&aPD1@CaCO3@フィブリン治療によって、腫瘍の再発および転移の抑制における相乗効果が達成された(図20A図20B、および図20C)。
b)結論
結論として、腫瘍切除部位に噴霧された免疫療法フィブリンは、免疫抑制TMEを逆行させ、全身性抗腫瘍免疫応答を誘発して癌の局所再発を防ぎ、現行の転移を抑制することができる。CaCO3NPは、生体応答性方法でH+を排除することにより、残存TMEおよび炎症環境に関連する酸性の腫瘍切除環境を調節し、それによって抗腫瘍免疫応答を効果的に促進することができる。この反応に加えて、CaCO3NPから放出されたaCD47は、癌細胞のアップレギュレートされた「don’t eat me」シグナルを遮断し、マクロファージによるプログラムされた癌細胞除去を可能にする。CD47の遮断は、マクロファージおよびDCによる腫瘍特異的抗原の提示が促進されるため、T細胞を介した癌細胞の破壊にもつながり得る。
【0095】
c)材料および方法
(1)材料、細胞株、および動物
全ての化学物質は、精製せずにSigma-Aldrichから購入した。マウストロンビンおよびフィブリノゲンは、Molecular Innovationsから購入した。抗CD47抗体(aCD47)はBiolegend Inc(カタログ番号127518、クローン:miap301)から購入した。マウス黒色腫(B16F10)細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。B16F10-luc細胞は、UNCのDr.Leaf Huangから入手した。細胞は、10%ウシ胎児血清(Invitrogen、Carlsbad,CA)および100 U/mLペニシリン(Invitrogen)を含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco、Invitrogen)で、37℃の5%CO2雰囲気下でインキュベーター(Thermo Scientific)内で維持した。雌のC57BL/6マウス(6~10週)は、Jackson Labから購入した。全てのマウス実験は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校およびノースカロライナ州立大学の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認されたプロトコルに従って実施した。
【0096】
(2)aCD47@CaCO3の調製および特性評価
aCD47@CaCO3NPは、化学沈殿によって調製した。典型的に、100mMのCaCl2を含む1mlのTris-HCl緩衝液(1mM、pH7.6)を、最初に100gのaCD47、合成された10mgのPEG-b-P(Glu)ブロックコポリマー、および10mMのNaCO3を含む1mlのHEPES生理食塩水緩衝剤(50mM、pH7.1、NaCl 140mM)と混合した。次に、混合物を4℃で一晩撹拌した。過剰のイオン、コポリマー、および抗体を、14800rpmで10分間の遠心分離によって除去した。サイズ分布はDLSで評価し、形態をTEM(JEOL 2000FX)で測定した。aCD47@CaCO3(aCD47はキレート化されたガドリニウム)の元素分析は、分析TEM(Titan)を使用して特性評価した。CaCO3にカプセル化されたaCD47の量を、ELISA(ラットIgG total ELISAキット、eBioscience、カタログ番号88-50490-22)によって測定した。CaCO3NPの充填容量(LC)およびカプセル化効率(EE)を、式、LC=(A-B)/C、およびEE=(A-B)/Aで計算した。式中Aは抗体の予想されるカプセル化量、Bは遊離の非捕捉抗体、Cは粒子の総重量である。
【0097】
(3)aCD47@CaCO3@Fibrinの形成および特性評価
フィブリンゲルは、aCD47@CaCO3およびトロンビン(5 NIH U/mL)を含む等量のフィブリノゲン(10mg/ml)を噴霧することによって得た。aCD47@CaCO3@フィブリンの形態は、Cryo-SEM(JEOL 7600F with Gatan Alto)によって特性評価した。フィブリンへのaCD47@CaCO3のカプセル化は、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 710)によってさらに特性評価した。
【0098】
(4)aCD47のin vitro放出
aCD47の放出挙動は、異なるpH値(pH6.5および7.4)のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で、37℃で調査した。放出されたaCD47は、Rat IgG total ELISAキットで測定した。
【0099】
(5)aCD47のin vivo放出
aCD47のin vivo 放出挙動を調査するために、PBSに分散したCy5.5標識遊離aCD47またはaCD47@CaCO3を腫瘍切除部位に注射した。さらに、aCD47@CaCO3およびトロンビン(5NIH U/mL)を含む等量のフィブリノゲン溶液(10mg/ml)を、手術後の腫瘍部位に噴霧した。蛍光イメージングを、IVISスペクトルシステム(Perkin Elmer)によって監視した。
【0100】
(6)In vitro食作用アッセイ
骨髄由来マクロファージ(BMDM)をCellTracker Green(C7025、Thermo-Fisher Scientific)で標識し、癌細胞をCellTracker DeepRed(C34565、Thermo-Fisher Scientific、USA)で標識した。マクロファージ(1×105)を、IgGまたはaCD47で事前に遮断された癌細胞(4×105)と無血清培地で共培養した。37℃で2時間インキュベートした後、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 710)およびCytoFLEXフローサイトメトリー(Beckman)によって食作用を調査した。
【0101】
(7)In vivo腫瘍モデルおよび治療
腫瘍再発に対する治療効果を調査するために、1×106のfLuc-B16F10をマウスの右脇腹に移植してから10日後に、マウスをランダムに5つのグループ(n=6-8)に分け、手術後の残存微小腫瘍を模倣する約1%の残存腫瘍組織を残して、それらの腫瘍を切除した。簡単に説明すると、イソフルランを使用して誘導チャンバー内で動物を麻酔し(誘導は最大5%、維持の場合は1~3%)、ノーズコーンを介して麻酔を維持した。腫瘍領域を切り取り、無菌的に準備した。滅菌器具を使用して、腫瘍の約99%を除去した。手術直後に、フィブリン、IgG@CaCO3@フィブリン、aCD47@フィブリン、およびaCD47@CaCO3@フィブリンを含む、異なる形態のフィブリンゲルを同じ用量で手術台に噴霧した。Autoclip創傷クリップシステムによって、創傷を塞いだ。
【0102】
転移性腫瘍モデルでは、1×106のfLuc-B16F10をマウスの右脇腹に移植してから7日後に、転移性腫瘍としての2番目の腫瘍(1×106 fLuc-B16F10)を各マウスの左脇腹に接種した。3日後、それらの原発腫瘍を切除し、上記のように手術後の残存微小腫瘍を模倣するために約1%の残存腫瘍組織を残した。同様に、手術後にaCD47@CaCO3@フィブリンを同じ用量で手術台に噴霧した。
【0103】
腫瘍のサイズをノギスで測定し、幅2×長さ×0.5の式に従って計算した。腫瘍を生物発光イメージングによっても監視した。DPBS(15mg/mL)中のd-ルシフェリン(Thermo Scientific(商標)Pierce(商標))をマウスに腹腔内注射(10μL/g体重)してから10分後、マウスをIVISスペクトルイメージングシステム(Perkin Elmer Ltd.)によって5分間画像化した。関心領域は、Living Imageソフトウェアを使用して、平均放射輝度(光子s-1 cm-2 sr-1)として定量化した。健康障害の兆候を示したとき、または腫瘍の体積が1.5cm3を超えたとき、動物を二酸化炭素で安楽死させた。
【0104】
(8)サイトカインの検出
IL10、IL12p70、IL6、IFN-γ、またはTNF-αの局所および血漿レベルは、ベンダーのプロトコル(eBioscience)に従ってELISAキットで測定した。サイトカインの局所(腫瘍)濃度を検出するために、フィブリンゲルを噴霧してから5日後に腫瘍組織を収集し、冷PBS中で均質化して単一細胞懸濁液を形成した。血漿レベルについては、種々の治療後のマウスから血清サンプルを分離し、分析のために希釈した。
【0105】
(9)フローサイトメトリー
腫瘍内の免疫細胞を調査するために、種々のグループのマウスから収集された腫瘍を小片に切断し、染色冷緩衝液中で均質化して単一細胞懸濁液を形成した。次に、消化酵素を添加せずにホモジナイザーで穏やかに加圧することにより、単一細胞懸濁液を調製した。蛍光標識抗体CD45(Biolegend、カタログ番号103108)、CD11b(Biolegend、カタログ番号101208)、CD206(Biolegend、カタログ番号141716)、F4/80(Biolegend、カタログ番号.123116)、CD80(Biolegend、カタログ番号104722)、Gr-1(Biolegend、カタログ番号108412)、CD3(Biolegend、カタログ番号100204)、CD4(Biolegend、カタログ番号100412)、CD8(Biolegend、カタログ番号140408)、Foxp3(Biolegend、カタログ番号126404)、CD11c(Biolegend、カタログ番号117310)、CD86(Biolegend、カタログ番号105008)、CD103(Biolegend、カタログ番号121406)、Ly6C(Biolegend、カタログ番号128016)、およびLy6G(Biolegend、カタログ番号127608)を用いて、製造元の指示に従って細胞を染色した。実験で使用したこれらの抗体は、全て200倍に希釈した。染色された細胞をCytoFLEXフローサイトメーター(Beckman)で測定し、FlowJoソフトウェアパッケージ(バージョン10.0.7;TreeStar、USA、2014)によって分析した。
【0106】
(10)免疫蛍光染色
腫瘍をマウスから切断し、最適切断温度(OCT)培地で急速凍結した。クリオトームを使用して腫瘍切片を切断し、次にスライドに載せた。次に、切片を一次抗体、すなわちCD4(Abcam、カタログ番号ab183685)、CD8(Abcam、カタログ番号ab22378)、およびF4/80(Abcam、カタログ番号ab100790)で4°Cで一晩、製造元の指示に従って染色した。蛍光標識された二次抗体、すなわちヤギ抗ラットIgG(H+L;Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A18866)およびヤギ抗ウサギIgG(H+L;Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A32733)の添加後、スライドを、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 710)を使用して分析した。実験で使用したこれらの抗体は、全て200倍に希釈した。
【0107】
(11)ウエスタンブロッティング
ウエスタンブロッティングのために、ビシンコニン酸タンパク質アッセイキット(BCA)で測定した等量のタンパク質を含む各サンプルを、等量の2×Laemmli緩衝液と混合し、95℃で5分間煮沸した。ゲル電気泳動の完了後、タンパク質をHybondニトロセルロースメンブレンに転写した。次に、1:1000希釈の抗HIF1-α抗体(Santa Cruz、sc-13515)、および1:5000希釈の抗β-アクチン抗体(Abcam、ab8226)を一次抗体として使用した。これらのブロットに使用された二次抗体は、ヤギ抗マウス抗体(Novus Biologicals、NBP175151)であった。
【0108】
(12)統計分析
全ての結果は、示されるように、平均±s.e.mとして表示される。多重比較には(3つ以上のグループを比較した場合)、テューキー事後検定および一元配置/二元配置分散分析(ANOVA)を使用した。生存率は、ログランク検定を用いて決定した。全ての統計分析は、Prismソフトウェアパッケージ(PRISM 5.0;GraphPad Software、USA、2007)を使用して実施した。統計的有意性の閾値は、P<0.05であった。
【0109】
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出願時の特許請求の範囲は以下の通り。

[請求項1]
第1の成分および第2の成分を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスであって、前記マトリックスのゲル化が、前記第1の成分が前記第2の成分と接触したときに起こり、少なくとも1つの前記成分が、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、前記少なくとも1つの第1のナノ粒子が、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む、免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項2]
前記第1の成分が、H+スカベンジャーを含む、請求項1に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項3]
H+スカベンジャーがフィブリニンである、請求項2に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項4]
前記第2の成分がトロンビンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス
[請求項5]
前記遮断阻害剤または免疫調節剤が抗CD47抗体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項6]
少なくとも1つの第2のナノ粒子をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項7]
前記第1の成分が少なくとも1つの第1のナノ粒子を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項8]
前記第1の成分が、第2の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤をさらに含む、請求項7に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項9]
前記第2の成分が、前記第2の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む、請求項7に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項10]
請求項1~6のいずれか1項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項11]
前記第2の成分が、前記少なくとも1つの第1のナノ粒子を含む。
[請求項12]
前記第2の成分が、第2の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤をさらに含む、請求項10に記載の免疫療法の生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項13]
前記第1の成分が、第2の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む、請求項10に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項14]
前記第2の成分が、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む、請求項1に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項15]
前記第1の成分が、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む、請求項1に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項16]
前記マトリックスの投与の140時間後に30%未満の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤が放出される、請求項1~14のいずれか1項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックス。
[請求項17]
癌腫瘍の外科的切除の部位での転移を阻害する方法であって、前記切除部位に、請求項1~15のいずれか一項に記載の免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを投与することを含む方法。
[請求項18]
癌腫瘍の外科的切除の部位での転移を阻害する方法であって、前記切除部位に第1の成分および第2の成分を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを投与することを含み、前記マトリックスのゲル化が、前記第1の成分が前記第2の成分と接触したときに起こり、前記成分の少なくとも1つが、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、前記少なくとも1つの第1のナノ粒子が、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む方法。
[請求項19]
前記第1の成分および第2の成分が、別々に対象に送達される、請求項17に記載の方法。
[請求項20]
前記第1の成分が、前記第2の成分の前に対象の腫瘍の部位に送達される、請求項17または18に記載の方法。
[請求項21]
前記第1の成分が、前記第2の成分の少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、36、48、または72時間前に投与される、請求項17~19のいずれに記載の方法。
[請求項22]
前記第1の成分が、前記第2の成分の後に対象の腫瘍の部位に送達される、請求項17または18に記載の方法。
[請求項23]
前記第1の成分が、前記第2の成分の少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、36、48、または72時間後に投与される、請求項17、18、または21のいずれか一項に記載の方法。
[請求項24]
前記第1および第2の成分が、同時に(concurrently)投与される、請求項17に記載の方法。
[請求項25]
前記第1および第2の成分が、同時に(simultaneously)投与される、請求項17に記載の方法。
[請求項26]
前記第1および第2の成分が、前記対象への投与前に一緒に混合される、請求項24に記載の方法。
[請求項27]
前記第1および第2の成分のうちの少なくとも1つが、腫瘍の除去の前に切除部位に投与される、請求項17~25のいずれか1項に記載の方法。
[請求項28]
その後、前記第1の成分および第2の成分を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを投与することをさらに含む、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法
[請求項29]
追加の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤の投与をさらに含む、請求項17~27のいずれに記載の方法。
[請求項30]
前記追加の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤が、前記免疫療法生体応答性ゲルマトリックス中で投与される、請求項17~28のいずれに記載の方法。
[請求項31]
前記追加の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤が、前記免疫療法生体応答性ゲルマトリックスとは別に投与される、請求項28に記載の方法。
[請求項32]
腫瘍に対する自然または適応免疫応答を前記腫瘍の切除後に増加させる方法であって、腫瘍を有する対象に第1の成分および第2の成分を含む免疫療法生体応答性ゲルマトリックスを投与することを含み、前記マトリックスのゲル化が、前記第1の成分が前記第2の成分と接触した場合に起こり、前記成分の少なくとも1つが、少なくとも1つの第1のナノ粒子を含み、前記少なくとも1つの第1のナノ粒子が、少なくとも1つの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含む方法。
[請求項33]
前記免疫療法生体応答性ゲルマトリックスの投与が、対象において抗腫瘍応答を増加させ、全身的に腫瘍増殖を遅らせる、請求項17~31のいずれか1項に記載の方法。
図1A
図1B
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図1G
図1H
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図1J
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図2B
図2C
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図3B
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図7B
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