(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】哺乳類の眼の従来の房水排出路内の移植物のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61F9/007 160
(21)【出願番号】P 2022570132
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 US2020033296
(87)【国際公開番号】W WO2021230887
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522446753
【氏名又は名称】アイフロー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】カリ,ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン,デイヴィッド・ディーン
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-518679(JP,A)
【文献】国際公開第2020/050968(WO,A1)
【文献】特表2017-501859(JP,A)
【文献】特表2010-540096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
房水排出デバイスであって、前記房水排出デバイスは、
哺乳類の眼の従来の房水排出路内に嵌合される弓状足場
を備え、前記弓状足場は、前記哺乳類の眼の線維柱帯網からの房水を受け入れ、シュレム管の後壁で始まる1つ又は複数の集合管に前記弓状足場を通じて前記房水を流すことを可能にし、前記弓状足場は、
第1の弓状レールと、
前記第1の弓状レールから離間し、前記第1の弓状レールに実質的に平行である第2の弓状レールと、
複数の構造構成要素と
を備え、前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールはそれぞれ、
前記シュレム管に挿入されている際に前記線維柱帯網
のみに隣接する前記弓状足場の内周を
規定する前縁部と、
前記シュレム管に挿入されている際に前記シュレム管の前記後壁
と前記1つ又は複数の集合管
とのみに隣接する前記弓状足場の外周を規定する後縁部と
を備え、前記複数の構造構成要素は、互いに離間し実質的に平行である前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールのそれぞれの前記前縁部及び前記後縁部を維持するため、前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールに結合される、房水排出デバイス。
【請求項2】
前記弓状足場は、長手方向軸に沿って延在し、
前記弓状足場は、前記弓状足場の長手方向軸に沿った第1の端部と、前記弓状足場の長手方向軸に沿った第2の反対の端部とを備え、
前記第1の弓状レール、及び前記第1の弓状レールから離間し、前記第1の弓状レールに実質的に平行である前記第2の弓状レールは、前記弓状足場の前記第1の端部及び前記第2の端部から連続的に延在する、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【請求項3】
前記弓状足場は、先細端部を更に備え、前記弓状足場を前記集合管に挿入する際、前記先細端部は、前記弓状足場の次第に増大する断面積に適応するように集合管入口及び前記集合管を広げるため、前記シュレム管の前記後壁で始まる前記1つ
又は複数の集合管の1つ又は前記集合管入口に前記弓状足場を導入し、前記1つ
又は複数の集合管の1つ又は前記集合管入口を拡張させることを可能にする、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【請求項4】
前記弓状足場は、金属、合金、ニチノール(登録商標)、チタン、ステンレス鋼、ポリマー、薬剤溶出ポリマー、セラミック、生物学的材料又はそれらの組合せから構成される材料の群から選択される生体親和性材料を備える、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【請求項5】
前記弓状足場は、前記弓状足場内で前記房水の流れを改善するように、薬剤コーティング、抗凝固性薬剤コーティング、及び湿潤剤から構成される機能性コーティングの群から選択される機能性コーティングを更に備える、請求項4に記載の房水排出デバイス。
【請求項6】
前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レール並びに前記複数の構造構成要素は、1つ又は複数の開口の枠を形成し、前記1つ又は複数の開口を通じて、前記弓状足場がシュレム管に挿入されている際に前記線維柱帯網から前記房水を受け入れ、前記弓状足場を通じて前記1つ又は複数の集合管に前記房水を流すことを可能にする、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【請求項7】
前記線維柱帯網から前記房水を受け入れる前記1つ又は複数の開口は、線維柱帯切開部によって前記哺乳類の眼の前房に露出され、前記線維柱帯切開部は、前記弓状足場を前記哺乳類の眼の従来の房水排出路内に嵌合する際又は嵌合した後に生成される、請求項6に記載の房水排出デバイス。
【請求項8】
前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レール並びにそれぞれの前記前縁部及び前記後縁部は、前記弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内に第1の断面積を画定し、
前記複数の構造構成要素の少なくとも1つの断面は、前記弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内に、前記第1の断面積より小さい第2の断面積を画定し、
前記第1の断面積と前記第2の断面積との間の差は、開放領域を画定し、
前記弓状足場は、前記シュレム管に挿入されている際、前記弓状足場の長手方向軸にほぼ沿った方向で前記開放領域を通じて前記房水を流すことを可能にする、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【請求項9】
前記弓状足場の長手方向軸に垂直な平面における前記第1の断面積は、自然な静止状態における前記シュレム管の断面積より大きい、請求項
8に記載の房水排出デバイス。
【請求項10】
前記弓状足場は、前記シュレム管に挿入されている際、前記弓状足場の長手方向軸にほぼ沿った方向で、前記シュレム管の複数の小房から、前記シュレム管の前記後壁内で始まる1つ又は複数の集合管への範囲内、及び前記シュレム管の複数の小房と前記シュレム管の前記後壁内で始まる1つ又は複数の集合管との間で、前記開放領域を通じて前記房水を流すのを可能にする、請求項
8に記載の房水排出デバイス。
【請求項11】
前記線維柱帯網は、前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レール並びに前記構造構成要素によって枠が形成され
る開口の少なくとも1つに当接し、
前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レール並びに前記構造構成要素によって枠が形成される前記開口は、前記線維柱帯網
を、前記開口の少なくとも1つの中に伸張
させ、シュレム管の房から1つ又は複数の集合管への範囲内及びシュレム管の房と1つ又は複数の集合管と間に、前記弓状足場の長手方向軸にほぼ沿った方向で、前記シュレム管の複数の小房の第1の小房から第2の小房へ房水の流れを
促進させる、請求項
10に記載の房水排出デバイス。
【請求項12】
前記複数の小房の2つの隣接する小房の間の圧力差は、前記構造構成要素の後縁部から前記シュレム管の前記後壁を強制的に離し、前記後縁部と前記前記後壁との間で膜弁を開放するのに十分であり、前記膜弁は、前記シュレム管の前記後壁及び前記構造構成要素の前記後縁部によって形成され、前記シュレム管の前記後壁に沿って隣接する小房の一方から隣接する小房のもう一方に房水を流すことを可能にする、請求項
10に記載の房水排出デバイス。
【請求項13】
前記シュレム管の前記後壁に沿った前記房水の流れは、前記シュレム管の前記後壁に並ぶ複数の内皮細胞に対してせん断応力を生じさせる、請求項
10に記載の房水排出デバイス。
【請求項14】
前記複数の構造構成要素はそれぞれ、
前記第1の弓状レールに結合される第1の面と、
前記第2の弓状レールに結合される第2の面と、
それぞれの縁部が、前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールの前記前縁部に合流する前面と、
後面と
を備え、前記後面の少なくとも一部分は、前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールの前記後縁部の少なくとも1つに対して凹んでいる、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【請求項15】
前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールの前記後縁部の少なくとも1つに対して凹んでいる前記後面は、少なくとも1つの縁部を有する後面を備え、前記少なくとも1つの縁部は、前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールの前記後縁部の少なくとも1つに対して凹んでいる、請求項
14に記載の房水排出デバイス。
【請求項16】
前記複数の構造構成要素の少なくとも1つの前記前面は、前方に凹んでいる、請求項
14に記載の房水排出デバイス。
【請求項17】
前記弓状足場は、
多角形基部を有する多面体、及び
あらゆる形状の基部を有する円錐体
の1つとして成形された第1の端部を有し、前記基部は、前記弓状足場の長手方向軸に実質的に垂直な平面内にあり、
前記多面体又は前記円錐体は、側部を有し、前記側部は、前記弓状足場の長手方向軸に沿って延在し、前記基部の平面の外側に位置する前記多面体又は前記円錐体の頂点に向かって収束する、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【請求項18】
前記頂点は、穴又は開口を備え、前記穴又は前記開口を通じて、前記シュレム管、前記複数の集合管、及び前記房水排出デバイスに隣接、当接又は合体して配置された1つのデバイスのうち1つの間に前記房水を流すことを可能にする、請求項
17に記載の房水排出デバイス。
【請求項19】
前記弓状足場は、
多角形基部を有する多面体、及び
あらゆる形状の基部を有する円錐体
の1つとして成形された第2の端部を有し、前記基部は、前記弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内にあり、
前記第2の端部の多面体又は円錐体は、側部を有し、前記側部は、前記弓状足場の長手方向軸に沿って延在し、前記基部の平面の外側に位置する前記第2の端部の多面体又は円錐体の頂点に向かって収束する、請求項
17に記載の房水排出デバイス。
【請求項20】
前記第2の端部の多面体又は円錐体の頂点は、穴又は開口を備え、前記穴又は前記開口を通じて、前記シュレム管と、前記複数の集合管の1つと、前記房水排出デバイスに隣接、当接又は合体して配置されたデバイスとの間に前記房水を流すことを可能にする、請求項
19に記載の房水排出デバイス。
【請求項21】
1つ又は複数の開口、又は、前記デバイスの第1のまたは第2の端部において、先端、又は穴を形成する前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レール並びに前記複数の構造構成要素は、ポートを提供し、前記ポート内に、移植デバイスを安定位置で保持する、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【請求項22】
前記移植デバイスは、眼内レンズ、虹彩又は虹彩プロテーゼ、虹彩クリップ/フック、カプセル・バッグ又はカプセル・バッグ支持デバイス
といった眼内への他の天然又は合成構造体の支持又は取付けのための眼の支持デバイス、並びに薬剤溶出デバイス、薬剤送出デバイス、センシング・デバイス、トランスダクション・デバイス、遺伝子/ベクター送出デバイス、トラベキュラー・マイクロバイパス・デバイス、強膜内移植物、脈絡膜上/毛様体上移植物、及び電磁波放出デバイス
といった眼以外の支持デバイスから構成される移植デバイスの群から選択される、請求項21に記載の房水排出デバイス。
【請求項23】
前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールのそれぞれの前記前縁部は、移植デバイスを間に挿入するための案内部を提供する、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【請求項24】
前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールは、前記移植デバイスの挿入を可能にするように屈曲する、請求項
23に記載の房水排出デバイス。
【請求項25】
前記移植デバイスが中に挿入される、前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールのそれぞれの前記前縁部の場所
に対向する
位置において、前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レールのそれぞれの後縁部は、凹んでいる、請求項
23に記載の房水排出デバイス。
【請求項26】
前記第1の弓状レール及び前記第2の弓状レール内に取外し可能に配置される移植デバイスを更に備える、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【請求項27】
前記移植デバイスは、前記線維柱帯網がもたらす圧力によって少なくとも部分的に所定の位置で保持される、請求項
26に記載の房水排出デバイス。
【請求項28】
前記弓状足場は、非先細縁部を更に備え、前記非先細縁部に、第2の弓状足場の先細端部又は非先細端部が挿入される、請求項1に記載の房水排出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
著作権の通知
本文献は、著作権の保護を受ける題材を含む。著作権者は、本特許文献又は本特許開示が特許商標局の特許ファイル又は記録内に掲載される際、何人の複製にも異議を唱えないが、それ以外、全てのいかなる著作権も留保する。
【0002】
本発明の実施形態は、哺乳類の眼の従来の房水流路内で使用することが意図される方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
図1及び
図2は、哺乳類の眼の前区分の断面図であり、本明細書で論じる足場デバイスの様々な実施形態によって対処される問題のより良好な理解に関連する、基本的な解剖学的構造を示す。眼の内部構造は、毛様体101によって生成される液体内に浸漬されている。この流体は、最終的に様々な経路によって眼を離れる。一般的な出口経路は、(水晶体103を支持する)小帯102の間の房水の移動、瞳孔104を通る房水の移動、及び虹彩105と角膜106との間の空間によって画定される前房に入る房水の移動を伴う。虹彩、強膜(即ち白目)107及び角膜の交わる前房のこの部分は、「隅角」と称される。従来の排出路と称されるものの中で、房水は、線維柱帯網108と呼ばれる隅角構造を通じて前房を離れる。線維柱帯網108は、下方で強膜岬109に、上方で角膜106に、後方でシュレム管110に接する。房水は、線維柱帯網108を通過してシュレム管110に入り、シュレム管110から、シュレム管110の後壁122に位置する集合管入口121に入り、房水排出静脈(図示せず)に接続する集合管123に入り、集合管123から、房水は、体内のより大きな静脈血管に入り得る。房水生成率と、房水排出率と、眼の構造の弾性との間の組合せは、哺乳類の眼の眼内圧(IOP)を主に決定する。
【0004】
線維柱帯網108は、従来の排出路における房水の流れに対する最大抵抗点である。この流れに対する抵抗は、生理学的状態及び病気の状態に従って様々である。線維柱帯網108を通る流れに影響を及ぼすことが公知である1つの構造は、毛様体筋111である。毛様体筋111が収縮すると、線維柱帯網108は伸張し、線維柱帯網108にわたりシュレム管110に入る房水の流れに対する抵抗を低減させる(即ち、流れを増大させる)。
【0005】
ヒトの線維柱帯網108は、線維柱帯網細胞、並びにコラーゲン及び細胞外マトリックスと呼ばれる他の分子成分から構成される複雑な支持構造から構成される。この構造は、眼から排出する房水の物理的な絞りとして機能する。数十年の研究室及び臨床における根拠により、開放隅角緑内障を伴ってヒトのIOPが上昇する主な原因は、線維柱帯網108、特に、傍シュレム管(juxtacanalicular)線維柱帯網と呼ばれる線維柱帯網108の一部分、及び細胞外マトリックスと呼ばれる、主としてコラーゲンから構成される支持構造を含むシュレム管110の内壁を通る流れの制限にあることを示唆している。
【0006】
細胞外マトリックス中のコラーゲン量は、固定的ではなく、ターンオーバー率によって動的に変化する。このターンオーバーは、化学的メッセンジャー及び酵素といった複雑なシステムによって制御され、このうち、分子の2つのクラス、即ち、コラーゲンを劣化させるように機能するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、及び細胞外マトリックスの劣化および再構築を防止する組織メタロプロテアーゼ阻害物質(TIMP)は、主な重要性があると思われる。
【0007】
緑内障の出現率は、年齢と共に増大し、このことは、細胞外マトリックス内のコラーゲン及び他の分子成分の量の増大に関連する。緑内障の出現により、剛性が増大し、シュレム管110への房水の透過率が低下する。線維柱帯網108の細胞外マトリックスは、緑内障を伴わない線維柱帯網108の細胞外マトリックスよりも著しく堅いことがわかっている。更に、緑内障を伴う眼の線維柱帯網108は、剛性が変化し、房水の流れに対して均一ではない抵抗がもたらされる。したがって、(例えば、MMP/TIMPのバランスを変化させることを通じた)細胞外マトリックスを標的とする治療に、緑内障の効果的な処置としての可能性があることは、道理にかなっている。
【0008】
研究室での研究は、線維柱帯網108及びシュレム管110の細胞外マトリックスを修正し得るいくつかの可能性のある機序に対する根拠をもたらしている。線維柱帯網108は、線維柱帯網108の伸張及び房水の流れを「知覚」し得るメカノセンシング分子及びメカノトランスダクション分子の両方を有する。メカノトランスダクション(メカノ+トランスダクション)には、細胞が機械的刺激を電気化学活動に変換する様々な機序のいずれかを伴う。この形態の知覚的な変換は、体内のいくつかの生理学的なプロセスに応答するものである。トランスダクションの基本的な機序には、機械的信号を電気的又は化学的信号に変換することを伴う。線維柱帯網108の伸張を長引かせることにより、MMPの上方制御及びTIMPの下方制御をもたらす(細胞外マトリックスの透過性を増大し、房水の流れに対する抵抗を低減する)。線維柱帯網108の伸張は、シュレム管110の内皮細胞による一酸化窒素(NO)及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の放出ももたらし、排出システムを通じた房水の排出を増大させ、付随してIOPを低下させる。線維柱帯網108の伸張は、線維柱帯網細胞によるアデノシンの放出ももたらし、従来の房水排出システムを通じた房水の排出を増加させ、付随してIOPを低下させる。線維柱帯網108の伸張が房水排出の調整及びIOPの低下につながる他の機序の根拠も、存在する。したがって、IOPの低下による可能な利益は、線維柱帯網108を伸張させる機序によってもたらし得る。別様には、ピロカルピンの場合に生じるような線維柱帯網108の表面にわたる張力がもたらされる。
【0009】
線維柱帯網108は、弾性の制限も実証されており、眼の遠近への順応及びまばたき等、正常な生理学的条件下で変形することがわかっている。(心臓周期に相関する)線維柱帯網108の拍動性の動きが正常な生理学的状態で存在し、この動きは、流体排水ポンプ内で、シュレム管110から集合管123に房水を効果的に押し出す膜成形ピストンとして機能するという仮説が立てられている。
【0010】
シュレム管110は、線維柱帯網108によって前房から隔てられる空間として考え得ることに留意されたい。
図2に示すように、シュレム管110は、凹形状断面を有し、凹面は、全体が前房の方に向けられるように画定される。シュレム管110は、通路を形成し、眼の隅角領域内で、シュレム管110の後壁122上で始まる集合管123に房水を流すことを可能にする。
【0011】
(時として緑内障の外科治療として実施されるように)線維柱帯網108を除去した場合、シュレム管110内の空間は、依然として、前房から「屋根のない」又は露出されたシュレム管110及び集合管123に房水が直接アクセスすることを可能にする。しかし、線維柱帯網108を除去すると、眼内圧の恒常性制御を調整する、線維柱帯網に依存するメカノセンシング/メカノトランスダクション機序も破壊する。更に、線維柱帯網108の除去は、シュレム管の内皮細胞上のせん断応力を低減し、可能性として、別の重要な眼内圧の恒常性制御機序を分離させることが予想される。
【0012】
図3は、眼の前房の拡大断面図であり、開放隅角緑内障を伴う眼の隅角を示し、開放隅角緑内障では、線維柱帯網108を通過し、断面積の減少したシュレム管110に入る流れに対する抵抗が増大する。線維柱帯網108は、シュレム管110の後壁122上に陥没し、円周方向の流れを制限している。線維柱帯網108は、集合管入口121にヘルニア108’になり、集合管123への房水の流れを遮断している。
【0013】
図4は、
図3の眼の前房の拡大断面図であり、隅角の解剖学的構造に対するピロカルピンの効果を示す。ピロカルピンは、矢印140によって示されるように、毛様体筋111を伸張させ、線維柱帯網108に付いている強膜岬109に下向きの張力をかける。このことにより、線維柱帯網108を伸張させ、シュレム管110への房水の流れに対する抵抗を低減させる。線維柱帯網108は、矢印141によって示されるように、シュレム管110の後壁122からも離して引っ張られ、線維柱帯網108のヘルニア108’を集合管入口121から引っ張り、集合管123に房水の流れをもたらす。
【0014】
図5Aは、シュレム管110の頭上図であり、シュレム管110の後壁122の不規則な外形を示す。シュレム管110は、平滑な管状の血管のような構造を有するのではなく、一連の不規則な形状及びサイズの小房131を連想させる自然構成を有する。そのような不規則な構成から予想されるように、シュレム管110を通る房水の流れは、均一ではない。眼の脈圧と相まって、房水は、小房から小房へ集合管入口121及び集合管123に向かって移動し、集合管123を通って、房水は、房水静脈(図示せず)に排出され、体の全体循環系(図示せず)に入る。これらの小房131を隔てるシュレム管110の後壁122の部分は、膜弁(即ちダイヤフラム弁)132と同様に作用し、ある成分の指向性の流れの房水が、集合管入口121に向かう圧力勾配を下げることができる。
【0015】
図5Bは、
図5Aに示すシュレム管110の頭上図の一部分の拡大図であり、集合管入口121及び集合管123のより詳細な図を示す。更に、この図は、線維柱帯網108とシュレム管110の後壁122との相互作用が、どのようにシュレム管110を可撓性小房131に機能的に分離する膜弁132を生成し、可撓性小房を拍動性ポンプとして機能させ、房水を小房から小房へ移動可能にするかを示す。
【0016】
図5Cは、
図5Bに示すシュレム管110の拡大頭上図の一部分の別の図であり、眼内圧(IOP)上昇環境において、線維柱帯網108が集合管入口121にヘルニア108’になっていることを示す。線維柱帯網108のヘルニア108’は、集合管123への房水の通過を遮断しており、この場合、更なるIOP上昇をもたらし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
房水排出デバイスは、哺乳類の眼の従来の房水排出路内に嵌合される弓状足場を含み、弓状足場は、哺乳類の眼の線維柱帯網から房水を受け入れ、シュレム管110の後壁122で始まる1つ又は複数の集合管に弓状足場を通じて房水を流すことを可能にする。
【0018】
実施形態を例として、限定としてではなく説明する。実施形態は、図面と共に検討した場合、以下の説明を参照してより完全に理解されるであろう。図面において、同様の参照番号は、同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】眼の前房の拡大断面図であり、緑内障を伴わない、眼の隅角の正常な生理学的状態を示す。
【
図3】眼の前房の拡大断面図であり、緑内障を伴う眼の隅角を示す。
【
図4】眼の前房の拡大断面図であり、隅角の解剖学的構造に対するピロカルピンの効果を示す。
【
図5B】シュレム管の頭上図の拡大部分の図である。
【
図6A】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の前方斜視図である。
【
図6B】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の後方斜視図である。
【
図7A】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の前方斜視図である。
【
図7B】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の後方斜視図である。
【
図8A】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の前方斜視図である。
【
図8B】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の後方斜視図である。
【
図9A】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の前方斜視図である。
【
図9B】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の後方斜視図である。
【
図10A】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の前方斜視図である。
【
図10B】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の後方斜視図である。
【
図11A】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の前方斜視図である。
【
図11B】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の後方斜視図である。
【
図12A】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の斜視図である。
【
図12B】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の端部の拡大斜視図である。
【
図13A】本明細書で開示する房水排出移植物の代替実施形態の前方斜視図である。
【
図13B】本明細書で開示する房水排出移植物の代替実施形態の後方斜視図である。
【
図13C】本明細書で開示する房水排出移植物の代替実施形態の前方斜視図である。
【
図13D】本明細書で開示する房水排出移植物の代替実施形態の後方斜視図である。
【
図13E】本明細書で開示する房水排出移植物の代替実施形態の後方立面図である。
【
図13F】本明細書で開示する房水排出移植物の代替実施形態の頭上断面図である。
【
図13G】本明細書で開示する代替実施形態による、一対の房水排出移植物の後方斜視図である。
【
図13H】本明細書で開示する代替実施形態による、一対の房水排出移植物の後方立面図である。
【
図13I】本明細書で開示する代替実施形態による、一対の房水排出移植物の頭上断面図である。
【
図14A】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の斜視図である。
【
図14B】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の頭上図である。
【
図14C】本明細書で開示する房水排出移植物の実施形態の前方斜視図である。
【
図14D】本明細書で開示する房水排出移植物の実施形態の後方斜視図である。
【
図14E】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の斜視図であり、特に、房水排出移植物の端部の代替実施形態を伴う。
【
図14F】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の後方図であり、特に、房水排出移植物の代替実施形態を伴う。
【
図14G】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の前方図であり、特に、房水排出移植物の代替実施形態を伴う。
【
図14H】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の断面図であり、特に、房水排出移植物の代替実施形態を伴う。
【
図14I】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の斜視図であり、特に、房水排出移植物の端部の別の代替実施形態を伴う。
【
図14J】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の後方図であり、特に、房水排出移植物の端部の別の代替実施形態を伴う。
【
図14K】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の前方図であり、特に、房水排出移植物の別の代替実施形態を伴う。
【
図14L】本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態の断面図であり、特に、房水排出移植物の別の代替実施形態を伴う。
【
図15A】一実施形態の一端部の拡大後方斜視図である。
【
図15B】一実施形態の一端部の拡大前方斜視図である。
【
図15C】一実施形態の一端部の拡大斜視断面図である。
【
図16】本発明の実施形態による房水移植デバイスの一端部の拡大立面図である。
【
図17】本明細書で論じる第2の移植物の1つの一実施形態の斜視図である。
【
図18】本明細書で論じる第2の移植物の1つの一実施形態の斜視図である。
【
図19A】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させる前の第1の移植物及び第2の移植物の斜視図である。
【
図19B】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させた後の第1の移植物及び第2の移植物の斜視図である。
【
図19C】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させた後の第1の移植物及び第2の移植物の拡大斜視図である。
【
図20A】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させる前の、線維柱帯網の背後でシュレム管内に配置された第1の移植物、及び前房内に配置された第2の移植物の斜視図である。
【
図20B】本発明の実施形態による、線維柱帯網を通じて第2の移植物を第1の移植物に合体させる前の、線維柱帯網の背後でシュレム管内に配置された第1の移植物、及び前房内に配置された第2の移植物の斜視図であり、第2の移植物が置かれる線維柱帯切開部を示す。
【
図20C】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させた後の、線維柱帯網の背後でシュレム管内に配置された第1の移植物及び第2の移植物の斜視図である。
【
図20D】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させた後の、線維柱帯網の背後でシュレム管内に配置された第1の移植物及び第2の移植物の拡大斜視図である。
【
図21A】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させる前の、線維柱帯網の背後でシュレム管内に配置される第1の移植物、及び前房内に配置される第2の移植物の拡大頭上図である。
【
図21B】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させる間の、線維柱帯網の背後でシュレム管内に配置される第1の移植物及び第2の移植物の拡大頭上図である。
【
図21C】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させた後の、線維柱帯網の背後でシュレム管内に配置された第1の移植物及び第2の移植物の拡大頭上図である。
【
図22A】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させる前の、第1の移植物、及び第1の移植物に隣接して配置された第2の移植物の拡大正面図である。
【
図22B】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させる間の、第1の移植物及び第2の移植物の拡大正面図であり、第2の移植物から離れたレールの屈曲を示す。
【
図22C】本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させた後の、第1の移植物及び第2の移植物の拡大正面図であり、レールが静止位置に戻り、第2の移植物を第1の移植物上に効果的に係止していることを示す。
【
図23A】一実施形態による、シュレム管の頭上図であり、弓状足場がシュレム管に移植される一実施形態を伴う。
【
図23B】一実施形態による、シュレム管の頭上図であり、弓状足場がシュレム管に移植される2つの実施形態を伴う。
【
図23C】一実施形態による、シュレム管の頭上図であり、弓状足場がシュレム管に移植される3つの実施形態を伴う。
【
図24A】シュレム管の拡大頭上図であり、線維柱帯網が集合管開口にヘルニアになっている。
【
図24B】シュレム管の拡大頭上図であり、一実施形態は、シュレム管に移植され、シュレム管の後壁から線維柱帯網を隔て、線維柱帯網のヘルニアを軽減させる。
【
図24C】シュレム管の拡大頭上図であり、一実施形態は、移植物の端部又は先端が集合管開口を通過するようにシュレム管に移植され、線維柱帯網のヘルニアを解決し、集合管入口及び近位集合管を拡張させる。
【
図25A】シュレム管内に完全に移植された一実施形態の端部又は先端の拡大頭上図である。
【
図25B】シュレム管内に完全に移植された一実施形態の端部又は先端の拡大頭上図であり、線維柱帯切開部を通じて線維柱帯網の前方に先端が配置されているが、依然としてシュレム管によって形成された隅角凹部内にあることを示す。
【
図25C】一実施形態の端部又は先端の拡大頭上図であり、小さな線維柱帯切開部を通じた端部入口及び先端側方ポートの露出を示し、移植物開口への房水の直接的な流れを可能にする。
【
図25D】一実施形態の端部又は先端の拡大頭上図であり、小型線維柱帯切開部を通じた内側窓の露出を示す。小型線維柱帯切開部は、初期の手術の際、又は後の、レーザー隅角穿刺術の際のいずれかで生成される。
【
図26A】シュレム管内に完全に移植された一実施形態の端部又は先端の拡大斜視図である。
【
図26B】シュレム管内に配置された一実施形態の端部又は先端の拡大斜視図であり、線維柱帯切開部を通じて、先端が線維柱帯網の前方に配置されるが、依然として、シュレム管によって形成される隅角凹部内にあることを示す。
【
図26C】一実施形態の端部又は先端の拡大斜視図であり、小型線維柱帯切開部を通じた端部入口及び先端側方ポートの露出を示し、移植物開口への房水の直接的な流れを可能にする。
【
図26D】一実施形態の端部又は先端の拡大斜視図であり、小さな線維柱帯切開部を通じた内側窓の露出を示す。線維柱帯切開部は、初期の手術の際、又は後の、レーザー隅角穿刺術の際のいずれかで生成される。
【
図27】前房の隅角の拡大断面図であり、隅角構造に対する移植物の関係を示す。
【
図28】前房隅角の拡大断面図であり、シュレム管内に配置された一実施形態の先端を示し、房水は、側方ポート開口への直接的なアクセスを有する。
【
図29A】一実施形態の拡大前面斜視部分図であり、線維柱帯網を通り、実施形態の内腔に入る房水の流れを示す。
【
図29B】一実施形態の拡大背面斜視部分図であり、線維柱帯網を通り、実施形態の内腔に入る房水の流れを示す。
【
図30A】一実施形態の拡大頭上図であり、眼が低脈圧段階である間の、線維柱帯網とシュレム管の後壁との関係を示す。
【
図30B】一実施形態の拡大頭上平面図であり、眼が上昇脈圧段階である間の、線維柱帯網とシュレム管の後壁との関係、及び房水の流れを示す。
【
図30C】一実施形態の拡大頭上平面図であり、眼が高脈圧段階の最後に向かう、線維柱帯網とシュレム管の後壁との関係、及び房水の流れを示す。
【
図30D】一実施形態の拡大頭上平面部分図であり、線維柱帯網を通り、端部内の穴及び側方開口を通り、実施形態の内腔に入る水の流れの方向を示す。
【
図31】眼の前方区分の断面図、及び一実施形態の1つを挿入するために使用されるデバイスの斜視図であり、線維柱帯網を通じてシュレム管に入れる実施形態の初期の挿入の間のデバイスの位置を示す。
【
図32】眼の前方区分の断面図、及び
図31の挿入デバイスの斜視図であり、シュレム管の内腔内に実施形態を挿入することを示す。
【
図33】眼の前方区分の断面図、及び
図31の挿入デバイスの斜視図であり、シュレム管の内腔内に完全に挿入された実施形態を示す。
【
図34】眼の前方区分の断面図、及び一実施形態の斜視図であり、線維柱帯網を通じてシュレム管に挿入する前の実施形態の位置を示す。
【
図35】眼の前方区分の断面図、及び一実施形態の斜視図であり、線維柱帯網を通じてシュレム管にほぼ完全に挿入した後の実施形態の位置を示す。
【
図36】眼の前方区分の断面図、及び一実施形態の斜視図であり、シュレム管内に完全に挿入された実施形態の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態は、哺乳類の眼の従来の房水排出路内で使用することが意図される足場デバイスに関する。物理的な足場として、足場は、眼からの房水の排出を調節することが公知である又は仮定される解剖学的構造、メカノセンシング及びメカノトランスダクション、並びに関連する生理学的恒常性フィードバック・ループを支持するように機能し得る。足場デバイスは、房水排出の調整に関連する又は関連しない診断又は治療機能を有し得る第2の移植物又はデバイスを支持するようにも機能し得る。以下の例において、可能な詳細で本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図6Aは、本明細書で開示する房水排出移植デバイスの1つに対する一実施形態600の前方斜視図である。
図6Bは、本明細書で開示する房水排出移植デバイスの一実施形態600の後方斜視図である。
【0022】
房水排出移植デバイスの実施形態600は、弓状足場を備え、弓状足場は、弓のように成形されるか又は湾曲しており、長さ及び断面積の点で、哺乳類の眼の線維柱帯網108、シュレム管110、集合管及び房水静脈を含めた従来の房水排出路内に嵌合されるサイズである。一実施形態によれば、房水排出デバイスは、従来の房水排出路と完全に嵌合可能である。房水排出デバイスが従来の房水排出路内に完全に嵌合することが有利であることには、内皮細胞の消失防止、移植物開口への虹彩嵌入の防止、及び房水排出デバイスの配置の容易さ(即ち、トラベキュラー・マイクロバイパス・デバイスで必要であるような前房への拡張体の「適切な量」を推定する必要がない)を含めていくつかの理由がある。
【0023】
他の実施形態によれば、房水排出デバイスは、例えば、従来通りではない房水排出路を利用するために毛様体上又は脈絡膜上空間又は強膜を用いてデバイスの一部分を意図的に配置する実施形態では、従来の房水排出路内に部分的にのみ嵌合し得る。
【0024】
デバイスは、従来の房水排出路内に挿入する場合、哺乳類の眼の線維柱帯網108から房水を受け入れ、シュレム管110の後壁122で始まる1つ又は複数の集合管123に、弓状足場によって画定される空間を通じて房水を流すことを可能にする。
図6A及び
図6Bを参照すると、弓状足場は、第1の(即ち、上部又は上側)弓状レール601と、第1の弓状レール601から離間し、第1の弓状レール601に実質的に平行である第2の(即ち、下部又は下側)弓状レール602とを備える。一実施形態では、第1の弓状レール及び第2の弓状レールはそれぞれ、前縁部603を備え、前縁部603は、シュレム管110に挿入されている際に線維柱帯網108に隣接する足場の内側湾曲部又は円周部を画定する。同様に、第1の弓状レール及び第2の弓状レールはそれぞれ、後縁部604を備え、後縁部604は、シュレム管110に挿入されている際にシュレム管110の後壁122及び1つ又は複数の集合管に隣接する弓状足場の外側湾曲部又は円周部を画定する。デバイス600は、いくつかの構造構成要素605A、605B及び605Cを更に備え、いくつかの構造構成要素605A、605B及び605Cは、互いに離間し、実質的に平行である第1の弓状レール601及び第2の弓状レール602のそれぞれの前縁部603及び後縁部604を維持するように、第1の弓状レール及び第2の弓状レールに結合される。本実施形態及び本明細書に記載の全ての他の実施形態における構造支柱は、これらの構造支柱が本明細書で説明する機能、即ち、互いに離間し実質的に平行である第1の弓状レール及び第2の弓状レールのそれぞれの前縁部及び後縁部を維持する機能に役立つ限り、あらゆるサイズ又は形状とし得る。実施形態は、ただ1つの構造構成要素605Bを示すが、本発明の実施形態に従って、複数の構造構成要素605Bが存在し得ることを理解されたい。第1の弓状レール601及び第2の弓状レール602並びに構造構成要素605A、605B及び605Cが接する空間は、可能な空間608を画定する。実施形態によれば、構造構成要素605Bは、まっすぐな支柱である一方で、弓状足場のそれぞれの端部における構造構成要素605A及び605Cは、シュレム管110に沿った弓状足場の通過を容易にするように、異なる形状、例えば、外側に湾曲するか又は弓なりの形状である。
【0025】
上記の実施形態及び以下で説明する実施形態では、第1の弓状レール及び第2の弓状レールの形状は、前縁部と後縁部との間で同じである、例えば、平坦又はまっすぐ又は湾曲しており、第1のレール及び第2のレールが向けられる平面は、実質的に同じであるが、互いからずれている。他の実施形態が可能であり、第1の弓状レール及び第2の弓状レールの形状は異なってよい、例えば、第1の弓状レール及び第2の弓状レールのそれぞれの前方縁部と後縁部との間で、第1の弓状レールが湾曲である一方で、第2の弓状レールが平坦であり得る、又は第1の弓状レールが凸形である一方で、第2の弓状レールが凹形であり得ることを了解されたい。同様に、第1のレール及び第2のレールが向けられる平面は、異なってよく、例えば、第1の弓状レール及び第2の弓状レールのそれぞれの前縁部の間の距離は、それぞれの後縁部の間の距離とは異なる。
【0026】
図7A及び
図7Bは、平坦シートと共に生成される一実施形態700を示すそれぞれの前方図及び後方図であり、シート材料は、開放空間が弓状レールを隔てる構造を形成する弓状レールを生成するように、適切な場所で除去されている。代替的に、実施形態700は、平坦シートが切り抜かれ、平坦シート自体の上に折り返されることにより生成される。房水排出移植デバイスの実施形態700は、哺乳類の眼の従来の房水排出路内に嵌合する実施形態600のような形状及びサイズの弓状足場を備え、弓状足場は、哺乳類の眼の線維柱帯網108から房水を受け入れ、シュレム管110の後壁122で始まる1つ又は複数の集合管123に弓状足場を通じて房水を流すことを可能にする。弓状足場は、第1の(即ち、上部又は上側)弓状レール701と、第1の弓状レール701から離間し、第1の弓状レール701に実質的に平行である第2の(即ち、下部又は下側)弓状レール702とを備える。一実施形態では、第1の弓状レール及び第2の弓状レールはそれぞれ、前縁部703を備え、前縁部703は、シュレム管110内に挿入されている際に線維柱帯網108に隣接する足場の内側湾曲部又は円周部を画定する。同様に、第1の弓状レール及び第2の弓状レールはそれぞれ、後縁部704を備え、後縁部704は、シュレム管110に挿入されている際にシュレム管110の後壁122及び1つ又は複数の集合管入口121に隣接する弓状足場の外側湾曲部又は円周部を画定する。実施形態700は、いくつかの構造構成要素705を更に備え、いくつかの構造構成要素705は、互いに離間し実質的に平行である第1の弓状レール701及び第2の弓状レール702のそれぞれの前縁部703及び後縁部704を維持するように、第1の弓状レール及び第2の弓状レールに結合される。実施形態600とは異なり、実施形態700は、第1の弓状レール701及び第2の弓状レール702のそれぞれの前縁部703と後縁部704との間に窓又は空間728を含む。本実施形態では、第1の弓状レール及び第2の弓状レールに結合される構造構成要素705も、互いから離間し互いに実質的に平行である第1の弓状レール701の前縁部703及び後縁部704を維持し、互いから離間し互いに実質的に平行である第2の弓状レール702の前縁部703及び後縁部704を維持する。上述のように、実施形態700は、平坦シートにより生成され、材料は、開放空間が弓状レールを隔てる構造を形成する弓状レールを生成するように、適切な場所で除去されている。折曲げ点710及び折曲げ点720は、構造構成要素705に隣接するそれぞれの端部715及び721を確立する。端部は、四角い又は角張るというより、外側に湾曲する又は弓なりであり、シュレム管110に沿った弓状足場の通過を容易にする。端部715及び721はそれぞれ、房水の流れを促進するように、穴又は開口716、722を備える。以下で更に説明するように、弓状足場の両端部の穴は、送出デバイス機構と相互作用するようにも使用し得る。
【0027】
図8A及び
図8Bは、微細溶接体による実施形態800を示すそれぞれの前方図及び後方図であり、弓状レールは、上部弓状レールを底部弓状レールと接続する1つ又は複数の構造構成要素によって接合されている。構造構成要素は、あらゆる断面形状のものとし得る。構造構成要素は、構造構成要素の端部と、端部を弓状レール内に受け入れる穴との間の締まりばめ、及び弓状レールへの構造構成要素の溶接を含む様々な方法によって上部弓状レールと底部弓状レールとを接続し得る。房水排出移植デバイスの実施形態800は、従来の哺乳類の眼の房水排出路内に嵌合する実施形態600及び700のような形状及びサイズの弓状足場を備え、弓状足場は、哺乳類の眼の線維柱帯網108から房水を受け、シュレム管110の後壁122で始まる1つ又は複数の集合管123に弓状足場を通じて房水を流すことを可能にする。弓状足場は、第1の(即ち、上部又は上側)弓状レール801と、第1の弓状レール801から離間し、第1の弓状レール801に実質的に平行である第2の(即ち、下部又は下側)弓状レール802とを備える。一実施形態では、第1の弓状レール801及び第2の弓状レール802はそれぞれ、前縁部803を備え、前縁部803は、シュレム管110内に挿入されている際に線維柱帯網108に隣接する足場の内側湾曲部又は円周部を画定する。同様に、第1の弓状レール801及び第2の弓状レール802はそれぞれ、後縁部804を備え、後縁部804は、シュレム管110に挿入されている際にシュレム管110の後壁122及び1つ又は複数の集合管入口121に隣接する弓状足場の外側湾曲部又は円周部を画定する。実施形態800は、いくつかの構造構成要素805を更に備え、いくつかの構造構成要素805は、互いに離間し実質的に平行である第1の弓状レール801及び第2の弓状レール802のそれぞれの前縁部803及び後縁部804を維持するように、第1の弓状レール及び第2の弓状レールに結合される。
【0028】
図9A及び
図9Bは、実施形態600及び800と同様の一実施形態900を示すそれぞれの前方図及び後方図であり、前方-後方(前-後)対称(即ち、完全な前方-後方レール厚さ)を有する。実施形態700とは異なり、実施形態900は、上部又は下部の窓又は空間を伴わない。実施形態900は、哺乳類の眼の従来の房水排出路内に嵌合するように設計された弓状足場を備える。弓状足場は、第1の弓状レール901と、第1の弓状レール901から離間し、第1の弓状レール901に実質的に平行である第2の弓状レール902とを備える。一実施形態では、第1の弓状レール及び第2の弓状レールはそれぞれ、前縁部903を備え、前縁部903は、シュレム管110内に挿入されている際に線維柱帯網108に隣接する足場の内側湾曲部又は円周部を画定する。同様に、第1の弓状レール及び第2の弓状レールはそれぞれ、後縁部904を備え、後縁部904は、シュレム管110に挿入されている際にシュレム管110の後壁122及び1つ又は複数の集合管入口121に隣接する弓状足場の外側湾曲部又は円周部を画定する。実施形態900は、いくつかの構造構成要素905を更に備え、いくつかの構造構成要素905は、互いに離間し実質的に平行である第1の弓状レール901及び第2の弓状レール902のそれぞれの前縁部903及び後縁部904を維持するように、第1の弓状レール及び第2の弓状レールに結合される。構造構成要素905は、開口、例えば、弓状足場の長手方向軸に垂直な円形開口909の枠を形成し得る。更に、構造構成要素905は、弓状足場の長手方向軸に沿って、開口909を開口又は空間908と接続する開口919を更に含み得る。この実施形態は、構造構成要素905の間に開口又は空間908を有し、共有対の構造構成要素905の範囲内又はこれらの間に上述のより小さな空間又は開口909を有する。これら2つの空間908及び909は、異なる機能を有する。空間908は、線維柱帯網108及びシュレム管110の後壁122と組み合わされ、類似小房908’を形成する(
図9Bの点線によって示される)。しかし、構造構成要素905内のより小さな空間909は、主に、工具又は機器により移植デバイスを操作するためのものである。他の実施形態に関して以下で更に説明するように、構造構成要素905は、第1の弓状レール901及び第2の弓状レール902の後端部904まで延在しなくもてよく、多数の開口をもたらすのではなく、陥没部又は凹部をもたらす(例えば、
図10A及び
図10Bの1007、
図12A及び
図12Bの1207、
図14A~
図14Dの1407並びに対応する説明を参照)。この凹部は、開口919と同じ機能をもたらすが、これにより、類似小房908’の間に房水を流すことを可能にする。構造構成要素内の凹部対開口に対する更なる利益は、シュレム管110の後壁122に接する移植デバイスの表面積を低減することである。このことにより、移植物によるシュレム管110の後壁122への損傷を制限し、集合管入口121を閉塞する可能性を減少させる。
図10B、
図12B、
図14A、
図14B、
図15Aに示す実施形態及び本明細書の対応する説明によれば、凹部1007、1207及び1407は、前方に陥没する程度に応じて、例えば、
図10B、
図12B、
図14A、
図14D、
図15Aに示すそれぞれの開口1019、1219及び1419と結合又は合併し、それぞれの類似小房1008’、1208’及び1408’の間の房水の流れを更に増大し得る。
【0029】
開口909は
図9A及び
図9Bで示す実施形態では円形であるが、移植デバイスを操作するために開口909で弓状足場を係合する工具又は機器の形状因子に従って他の幾可学的形状又は形状が想定されることを了解されたい。同様に、以下で説明する実施形態の開口1009、1109、1209、1309、1409は、円形であっても、移植デバイスを操作する工具を収容する何らかの他の形状であってもよい。
【0030】
図10A及び
図10Bは、一実施形態を示すそれぞれの前方図及び後方図であり、凹んだ後方支柱/構造構成要素を伴う(即ち、完全な幅の前方-後方第1の弓状レール及び第2の弓状レールに対して、完全な前方-後方支柱/構造構成要素の厚さを伴わない)。実施形態1000は、哺乳類の眼の従来の房水排出路内に嵌合するように設計された弓状足場を備える。弓状足場は、第1の弓状レール1001と、第1の弓状レール1001から離間し、第1の弓状レール1001に実質的に平行である第2の弓状レール1002とを備える。一実施形態では、第1の弓状レール及び第2の弓状レールはそれぞれ、前縁部1003を備え、前縁部1003は、シュレム管110内に挿入されている際に線維柱帯網108に隣接する足場の内側湾曲部又は円周部を画定する。同様に、第1の弓状レール及び第2の弓状レールはそれぞれ、後縁部1004を備え、後縁部1004は、シュレム管110に挿入されている際にシュレム管110の後壁122及び1つ又は複数の集合管入口121に隣接する弓状足場の外側湾曲部又は円周部を画定する。実施形態1000は、いくつかの構造構成要素1005を更に備え、いくつかの構造構成要素1005は、互いに離間し実質的に平行である第1の弓状レール1001及び第2の弓状レール1002のそれぞれの前縁部1003及び後縁部1004を維持するように、第1の弓状レール及び第2の弓状レールに結合される。
図9A及び
図9Bに示す実施形態900とは異なり、実施形態1000内の構造構成要素1005(即ち、「支柱」)は、第1の弓状レール及び第2の弓状レールの前縁部と後縁部との間に完全な幅で延在しない。特に、構造構成要素1005の前縁部1006は第1の弓状レール1001及び第2の弓状レール1002の前縁部1003と位置合わせされているが、構造構成要素1005の後縁部1007は、第1の弓状レール1001及び第2の弓状レール1002の後縁部1004に対して凹んでいる。更に、構造構成要素1005は、弓状足場の長手方向軸に沿って、開口1009を開口又は空間1008と接続する開口1019を含み得る。
【0031】
別様に言うと、房水排出デバイス内の構造構成要素は、第1の弓状レールに結合された第1の面(即ち、上面)と、第2の弓状レールに結合された第2の面(即ち、下面)と、第1の弓状レール及び第2の弓状レールの前縁部で合流するそれぞれ第1の/上縁部及び第2の/底縁部を有する前面と、後面とを備え、後面の少なくとも一部分が、第1の弓状レール及び第2の弓状レールの後縁部の少なくとも1つに対して凹んでいる。房水排出デバイスの一実施形態では、第1の弓状レール及び第2の弓状レールの後縁部の少なくとも1つに対して凹んでいる構造構成要素の後面は、少なくとも1つの縁部(上縁部又は下縁部のいずれか)が、第1の弓状レール及び第2の弓状レールの後縁部の少なくとも1つに対して凹んでいる後面を備える。
【0032】
一実施形態では、房水排出デバイスの製造方法は、例えば、溶接、微細溶接又はウィービングによって第1の弓状レール及び第2の弓状レールに構造構成要素を締結することを伴う。しかし、房水排出デバイスの作製に使用される製造方法に応じて、構成要素及びレールが、原料のブロック、条片、ワイヤ、管、シートから単一構成要素として製造されるのではなく、個別に製造され、次に組み立てられるという意味において、構造構成要素並びに第1の弓状レール及び第2の弓状レールが互いにさほど結合されていないことを了解されたい。例えば、デバイスは、金属、ニチノール(登録商標)(
図6A及び
図6Bに示す)、チタン、ポリマー、薬剤溶出ポリマー、セラミック材料、生物学的材料又はそれらの組合せを含む生体親和性材料等の原料の3D印刷、打抜き、押出成形、レーザーエッチング、又は切抜きが可能である。生物学的材料の場合、房水排出デバイスの製造方法は、実験室内で、生体細胞から構造構成要素並びに第1の弓状レール及び第2の弓状レールを成長させること、又はこれらを生体親和性基体上に3D印刷することを伴い得る。
【0033】
房水排出デバイスの別の実施形態によれば、弓状足場は、弓状足場内で房水の流れを改善させるように、薬剤コーティング、抗凝固性薬剤コーティング又は湿潤剤等の機能性コーティングを更に備え得る。
【0034】
図11A及び
図11Bは、前方-後方(前-後)対称を有する別の実施形態1100を示すそれぞれの前方図及び後方図である。
図11A及び
図11Bは、実施形態600及び800と同様の一実施形態1100を示し、前方-後方(前-後)対称(即ち、完全な前方-後方レール厚さ)を有する。更に、実施形態700のように、実施形態1100は、上窓若しくは空間及び/又は下窓若しくは空間1128を含む。実施形態1100は、哺乳類の眼の従来の房水排出路内に嵌合するように設計された弓状足場を備える。弓状足場は、第1の弓状レール1101と、第1の弓状レール1101から離間し、第1の弓状レール1101に実質的に平行である第2の弓状レール1102とを備える。一実施形態では、第1の弓状レール及び第2の弓状レールはそれぞれ、前縁部1103を備え、前縁部1103は、シュレム管110内に挿入されている際に線維柱帯網108に隣接する足場の内側湾曲部又は円周部を画定する。同様に、第1の弓状レール及び第2の弓状レールはそれぞれ、後縁部1104を備え、後縁部1104は、シュレム管110に挿入されている際にシュレム管110の後壁122及び1つ又は複数の集合管入口121に隣接する弓状足場の外側湾曲部又は円周部を画定する。実施形態1100は、いくつかの構造構成要素1105を更に備え、いくつかの構造構成要素1105は、互いに離間し実質的に平行である第1の弓状レール1101及び第2の弓状レール1102のそれぞれの前縁部1103及び後縁部1104を維持するように、第1の弓状レール及び第2の弓状レールに結合される。構造構成要素1105は、開口、例えば、弓状足場の長手方向軸に垂直な円形開口1109の枠を形成し得る。更に、構造構成要素1105は、弓状足場の長手方向軸に沿って、開口1109を開口又は空間1108と接続する開口1119を更に含み得る。
【0035】
図12A及び
図12Bは、一実施形態1200を示し、
図10A及び
図10Bに示す実施形態1000並びに
図11A及び
図11Bに示す実施形態1100よりも長い弓形長さを有するが、それ以外は多くの点でこれらと同様である。実施形態1000のように、実施形態1200は、陥没部1207によって示されるように、第1の弓状レール1201及び第2の弓状レール1202の前方-後方の完全な幅に対して、完全な前方-後方支柱/構造構成要素1205の厚さを含まない。しかし、実施形態は、実施形態1200内の構造構成要素1205(即ち、「支柱」)が、第1の弓状レール1201及び第2の弓状レール1202の前縁部1203と後縁部1204との間で完全な幅で延在しない
図9A及び
図9Bに示す実施形態900と同様に修正し得ることを了解されたい。特に、構造構成要素1205の後縁部1207は、後縁部1207が第1の弓状レール1201及び第2の弓状レール1202の後縁部1204と位置合わせされるように、後方向で延在し得る。構造構成要素905のように、構造構成要素1205は、弓状足場の長手方向軸に沿って、開口1209を開口又は空間1208と接続する開口1219を更に含み得る。
【0036】
図13A及び
図13Bは、一実施形態1300を示すそれぞれの前方図及び後方図であり、第1の(上)弓状レール1301及び第2の(下)弓状レール1302においてただ1つのそれぞれの窓1328を有する。
図11A及び
図11Bに示す実施形態1100のように、実施形態1300は、前方-後方(前-後)対称を有する実施形態600及び800と同様に、前方-後方(前-後)対称を呈する。構造構成要素1305は、端部1310又は1320と共に、弓状足場の長手方向軸に垂直な開口、例えば円形開口1309の枠を形成し得る。更に、構造構成要素1305は、弓状足場の長手方向軸に沿って、開口1309を開口又は空間1308と接続する開口1319を更に含み得る。同様に、実施形態1300の端部1310及び1320に隣接して位置するそれぞれの開口1319は、端部1310及び1320内でそれぞれの開口1316及び1322に接続する内腔を形成する。
【0037】
更に、実施形態1100のように、実施形態1300は、上窓若しくは空間及び/又は下窓若しくは空間1328を含む。他の態様において、この実施形態は、実施形態1100等の既に説明した実施形態と同様である。このより短い実施形態によれば、頂点の方に先細になる第1の端部及び/又は第2の端部を有する弓状足場は、弓状足場を集合管123に挿入する際、弓状足場の次第に増大する断面積に適応するように集合管入口121及び集合管123が広がるため、シュレム管110の後壁122で始まる1つ若しくは複数の集合管123又は集合管入口の1つに弓状足場を導入し、拡張させることを可能にする。
【0038】
実施形態600、700、800、900、1000、1100、1200及び1300の房水排出デバイスでは、第1の弓状レール及び第2の弓状レール並びに構造構成要素は、それぞれの開口608、708、808、908、1008、1108、1208及び1308の枠を形成する。理想的には、いくつかの実施形態によっては不要であるが、シュレム管の小房131ごとに少なくとも1つの開口があり、この開口を通じて、弓状足場がシュレム管110に挿入されている際に房水を線維柱帯網108から受け入れ、弓状足場を通じて1つ又は複数の集合管123に房水を流すことを可能にする。シュレム管110内に移植されている場合、第1の弓状レール及び第2の弓状レール601、602、701、702、801、802、901、902、1001、1002、1101、1102、1201、1202及び1301、1302、隣接する構造構成要素605A、605B、605C、705、805、905、1005、1105、1205及び1305、線維柱帯網108並びにシュレム管110の後壁122に接する開口608、708、808、908、1008、1108、1208及び1308は、可能性として、点線によって示され、608’、708’、808’、908’、1008’、1108’、1208’及び1308’で参照される3次元空間又は小房を画定し、これらは、健康なシュレム管110中に存在する小房131に類似する。
【0039】
図10A、
図10B、
図12A及び
図12Bに示す実施形態1000及び1200では、構造構成要素1005、1205(即ち、「支柱」)は、第1の弓状レール及び第2の弓状レールの前縁部と後縁部との間に完全な幅で延在しない。特に、構造構成要素1005、1205の前縁部1006、1206は第1の弓状レール1001、1201及び第2の弓状レール1002、1202の前縁部1003、1203と位置合わせされているが、構造構成要素1005、1205の後縁部1007、1207は、第1の弓状レール1001、1201及び第2の弓状レール1002、1002の後縁部1004、1204に対して凹んでいる。このことは、以下の幾何学的形状の観点で表すことができる:
a.房水排出デバイスの第1の弓状レール及び第2の弓状レール並びにそれぞれの前縁部及び後縁部は、弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内に第1の断面積を画定する、
b.構造構成要素の少なくとも1つの断面は、弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内に、第1の断面積より小さい第2の断面積を画定する、
c.第1の断面積と第2の断面積との間の差は、開放領域を規定する。このため、弓状足場は、以下で説明する
図29A及び
図29Bの例で示すように、シュレム管110内に挿入されている際、弓状足場の前縁部から弓状足場の後縁部への方向、及び弓状足場の長手方向軸にほぼ沿った方向で開放領域を通じた房水の流れを可能にする。房水排出デバイスの実施形態1000及び1200によれば、弓状足場は、シュレム管110に挿入されている際、弓状足場の長手方向軸にほぼ沿った方向で、特に、シュレム管110の小房131からシュレム管110の後壁122内で始まる1つ又は複数の集合管123への範囲内、及びこれらの間で、開放領域を通じて房水を流すのを可能にする。
【0040】
一実施形態では、弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内の房水排出デバイスの第1の断面積は、シュレム管110の断面積より大きい。特に、一実施形態によれば、弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内の房水排出デバイスの第1の断面積は、(直径の点で測定されるか、断面外形の点で測定されるかにかかわらず)予測される、若しくは予測より小さい静止構成の緑内障又は他の眼病の状態を伴わない患者のシュレム管110又は集合管に対する年齢及び/又は象限に特異的な平均断面積より大きい。
【0041】
一実施形態によれば、弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内の房水排出デバイスの第1の断面積は、シュレム管110の断面積より大きく、シュレム管110及び/又は集合管123を拡張させる。一実施形態によれば、弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内の房水排出デバイスの第1の断面積は、シュレム管110の断面積より大きく、線維柱帯網108を物理的に伸張させることによって、房水の流れを改善する。一実施形態では、弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内の房水排出デバイスの第1の断面積は、シュレム管110の断面積より大きく、シュレム管110の後壁122から線維柱帯網108を分離し、これにより、房水の流れを改善する。
【0042】
一実施形態によれば、弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内の房水排出デバイスの第1の断面積は、シュレム管110の断面積より大きく、複数の集合管123の1つの入口121に入る線維柱帯網108のヘルニア108’を軽減し得る。
【0043】
一実施形態によれば、弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内の房水排出デバイスの第1の断面積は、シュレム管110の断面積より大きく、シュレム管110と線維柱帯網108との間のメカノセンシング又はメカノトランスダクションのフィードバック・ループを改善する。特に、線維柱帯網108は、線維柱帯網108の伸張及び房水の流れを「知覚」し得るメカノセンシング分子及びメカノトランスダクション分子の両方を有する。線維柱帯網108の伸張を長引かせることにより、MMPの上方制御及びTIMPの下方制御をもたらす(細胞外マトリックスの透過性を増大し、房水の流れに対する抵抗を低減する)。線維柱帯網108の伸張は、シュレム管110の内皮平滑筋細胞による一酸化窒素(NO)及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の放出ももたらし、排出システムを通じた房水の排出を増大させ、付随してIOPを低下させる。線維柱帯網108の伸張は、線維柱帯網細胞によるアデノシンの放出ももたらし、従来の房水排出排液システムを通じた房水の排出を増大させ、付随してIOPを低下させる。線維柱帯網108の伸張が房水排出の調整及びIOPの低下につながる他の機序の根拠も、存在する。したがって、線維柱帯網108を伸張させる本実施形態は、可能なIOP低下による利益をもたらし得る。別様には、線維柱帯網108の表面にわたる張力がもたらされる。
【0044】
本明細書で説明する実施形態によれば、線維柱帯網108は、第1の弓状レール及び第2の弓状レール並びに構造構成要素によって枠が形成される開口の少なくとも1つに当接する。例えば、
図8A及び
図8Bに示す実施形態800に関し、以下を想起されたい。弓状足場は、第1の弓状レール801と第2の弓状レール802とを備え、第1の弓状レール801及び第2の弓状レール802はそれぞれ、前縁部803を備え、前縁部803は、シュレム管110内に挿入されている際に線維柱帯網108に隣接する足場の内側湾曲部又は円周部を画定する。同様に、第1の弓状レール801及び第2の弓状レール802はそれぞれ、後縁部804を備え、後縁部804は、シュレム管110に挿入されている際にシュレム管110の後壁122及び1つ又は複数の集合管入口121に隣接する弓状足場の外側湾曲部又は円周部を画定する。最後に、実施形態800は、いくつかの構造構成要素805を更に備え、いくつかの構造構成要素805は、互いに離間し実質的に平行である第1の弓状レール801及び第2の弓状レール802のそれぞれの前縁部803及び後縁部804を維持するように、第1の弓状レール及び第2の弓状レールに結合されることを想起されたい。開口808は、第1の弓状レール及び第2の弓状レール並びに構造構成要素805によって枠が形成される。シュレム管110に移植されている際、第1の弓状レール801及び第2の弓状レール802、隣接する構造構成要素805、線維柱帯網108並びにシュレム管110の後壁122が接する空間808は、可能性として、3次元空間又は小房808’を画定し、3次元空間又は小房808’は、健康なシュレム管110中に存在する小房131に類似する。
【0045】
一実施形態によれば、線維柱帯網108は、前房とシュレム管110との間に非対称な圧力、特に、眼内脈圧を受けた際、開口808内に伸張し、広がる膜(即ち、ダイアフラム)として作用し、シュレム管110の膜弁(即ち、ダイアフラム弁)(例えば、
図5Bのシュレム管110内の膜弁132を参照)と連動してピストンとして作用し、膜ポンプ(即ち、ダイアフラム・ポンプ)として作用し、シュレム管110に対するこれら類似小房808’から1つ又は複数の集合管入口121への範囲内、及び類似小房808’と1つ又は複数の集合管入口121との間で、弓状足場の長手方向軸にほぼ沿った方向で開放領域を通じて房水を流す。
【0046】
一実施形態1400を
図14A、
図14B、
図14C及び
図14Dに示す。実施形態600、700、800、900、1000、1100、1200及び1300の房水排出デバイスのように、第1の弓状レール1401及び第2の弓状レール1402並びに構造構成要素1405は、開口1408の枠を形成し、開口1408の枠は、線維柱帯網108及びシュレム管110の後壁122と組み合わされると、類似小房1408’を形成する。更に、構造構成要素1405は、弓状足場の長手方向軸に垂直な1つ又は複数のそれぞれの開口、例えば円形開口1409の枠を形成する。
図10A、
図10B、
図12A及び
図12Bに示す実施形態1000及び1200のように、構造構成要素1405(即ち、「支柱」)は、第1の弓状レール1401及び第2の弓状レール1402の前縁部1403と後縁部1404との間で完全な幅で延在しない。特に、構造構成要素1405の前縁部1406は第1の弓状レール1401及び第2の弓状レール1402の前縁部1403と位置合わせされているが、構造構成要素1405の後縁部1407は、第1の弓状レール1401及び第2の弓状レール1402の後縁部1404に対して凹んでいる。構造構成要素905、1005、1105及び1205のように、構造構成要素1405は、弓状足場の長手方向軸に沿って、開口1409を開口又は空間1408と接続する開口1419を更に含み得る。更に、房水排出デバイスの本実施形態1400では、構造構成要素1405の範囲内又はこれらの間の開口1409は、1426で示すように、後方に凹んでいる、即ち、凹形、窪んでいる又は弓なりになっており、第1の弓状レールの前縁部の頂点から第2の弓状レールの前縁部の頂点まで直線内に延在する縁部を備える。一実施形態によれば、構造構成要素のこの後方に凹んでいる部分1426は、開口1409内に配置される工具又は機器の結合を容易にし、シュレム管110の内部で弓状足場を長手方向軸回りに機械的に伝達すること(時計回り又は反時計回りの移動)を可能にする。更に、後方に凹んでいる部分1426は、開口1409及び機器と連携して、シュレム管110内への最初の移植後、シュレム管110内に房水排出デバイスが適切に設置されているかという検査/確認の制御形態として、房水排出デバイスの微調整又は移動も可能にする。例えば、房水排出デバイスは、挿入後、シュレム管110内への正確な配置を確認するために調節し得る。房水排出デバイスの本実施形態1400では、構造構成要素1405の後方に凹んでいる部分1426は、第1の弓状レールの前縁部の頂点から第2の弓状レールの前縁部の頂点まで直線で延在する縁部を備える。しかし、これらの縁部は、他の実施形態により、傾斜させても、面取りをしてもよいことを了解されたい。
【0047】
図9A、
図9B、
図10A、
図10B、
図11A、
図11B、
図12A、
図12B、
図13A、
図13B、
図14A、
図14B、
図14C及び14Dに示す実施形態900、1000、1100、1200、1300及び1400によれば、房水排出デバイスの弓状足場は、第1の端部910、1010、1110、1210、1310、1410を有する。第1の端部910、1010、1110、1210、1310、1410は、頂点915、1015、1115、1215、1315、1415内に穴又は開口916、1016、1116、1216、1316、1416も備え、房水の流れを促進する。第1の端部は、規則的又は不規則な多角形基部を有する多面体、あらゆる形状(例えば、何らかの種類の又は不規則な湾曲、円形、楕円)の基部を有する円錐体又は切頭円錐体の1つとして成形される。例えば、
図15Aを参照すると、基部1411は、基部1411が、対応して湾曲する第1の弓状レール及び第2の弓状レールに合流する場所で湾曲し、基部1411が、第1の弓状レール及び第2の弓状レールのそれぞれの前縁部及び後縁部と位置合わせされる場所でまっすぐである。このことは
図16でより良好に示される。基部1411は、基部1411が、対応して湾曲する足場の第1の弓状レール及び第2の弓状レールに合流する場所1412で湾曲し、基部1411が、第1の弓状レール及び第2の弓状レールのそれぞれの前縁部及び後縁部と位置合わせされる場所1413でまっすぐである。
【0048】
図15A~
図15Cに示すように、多面体又は円錐体の基部は、弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内にある。多面体又は円錐体は、側部1414を有し、側部1414は、弓状足場の長手方向軸に沿って、基部の平面の外側に位置する多面体又は円錐体の頂点1415に向かって(線形に又は非線形に)延在するか、収束するか又は先細になる。実施形態は、頂点が基部に対して中心をなすことを示す。他の実施形態では、頂点は、足場の長手方向軸に対する上方向、下方向、前方向又は後方向にかかわらず、基部の中心に対して中心がずれていてもよいことを了解されたい。更に、本実施形態は、多面体又は円錐体の基部が弓状足場の長手方向軸に垂直な平面内にあることを示すが、他の実施形態では、基部は、弓状足場の長手方向軸に実質的に垂直な平面内、又は長手方向軸に垂直な平面に対してある角度でずれた平面内にある。
【0049】
実施形態によれば、第1の端部を有する弓状足場は、頂点まで先細になる円錐体、円錐台又は多面体として成形されるかにかかわらず、足場をシュレム管110に挿入する際、弓状足場の次第に増大する断面積に適応するようにシュレム管110が広がるため、シュレム管110に弓状足場を導入し、シュレム管110を拡張させることを可能にする。同様に、代替実施形態では、頂点まで先細になる第1の端部を有する弓状足場は、集合管入口121を介してシュレム管110の後壁122内で始まる1つ又は複数の集合管123の1つに弓状足場を導入し、1つ又は複数の集合管123の1つを拡張させることを可能にする。同様に、第1の先細端部は、シュレム管110内側での弓状足場の並進移動を促進する。即ち、第1の先細端部は、前後移動を含めた3次元空間(x、y及びz方向)内での移動を促進する。一実施形態によれば、第1の端部が十分に先細になることで、線維柱帯網108の貫通、又は制御された再貫通を可能にする。線維柱帯網108の貫通は、移植デバイスの挿入時、望ましい場合があることを了解されたい。移植デバイスをシュレム管110に入れた後、移植デバイスが、移植デバイスの意図的な制御下以外で、線維柱帯網108を貫通しないことが重要である。
【0050】
図16を参照すると、
図14A~
図14Dに示す実施形態1400によれば、房水排出デバイスの弓状足場は、頂点1415に穴又は開口1416を備える第1の端部1410を有し、穴又は開口1416を通じて、シュレム管110、集合管123の1つ、又は房水排出デバイスに隣接、当接又は合体して配置されたデバイス(別の房水排出デバイス等)のうち1つの間に房水を流すことを可能にする。
【0051】
図9A、
図9B、
図10A、
図10B、
図11A、
図11B、
図12A、
図12B、
図13A、
図13B、
図14A、
図14B、
図14C及び14Dに示す実施形態900、1000、1100、1200、1300及び1400によれば、房水排出デバイスの弓状足場は、弓状足場の長手方向軸に沿って、第1の端部から反対側に第2の端部920、1020、1120、1220、1320、1420を有する。図示の実施形態では、第2の端部は、規則的又は不規則な多角形基部を有する多面体、あらゆる形状の基部を有する円錐体又は切頭円錐体の1つとして、第1の端部と同様の形状である。房水排出デバイスの一実施形態によれば、弓状足場の第2の端部は、第1の端部と同様の形状であり、これにより、弓状足場を両方向からシュレム管110に挿入し得る対称度をもたらし、このため、全ての付随する利益及び適用を伴って、いずれの方向からも足場をシュレム管110に挿入し得る。例えば、シュレム管110が、足場の次第に増大する断面積に適応するように広がるため、第2の端部からシュレム管110に弓状足場を導入し、シュレム管110を拡張させることを可能にする。同様に、第2の先細端部は、シュレム管110内側での弓状足場の並進移動を促進する。即ち、第2の先細端部は、前後移動を含めた3次元空間(x、y及びz方向)内での移動を促進する。第2の先細端部も、線維柱帯網108の貫通を可能にする。上述のように、そのような実施形態は、前房からシュレム管110に入る間、線維柱帯網108の貫通が可能であるが、シュレム管110に入った後、先端は、意図せずに線維柱帯網108を通って戻り前房を貫通させるべきではない。代替実施形態では、端部910、1010、1110、1210、1310、1410又は920、1020、1120、1220、1320、1420は、先細でなくてよいことを了解されたい。例えば、一方又は両方の端部は、端部の長さ部に沿ってまっすぐ、又は実質的にまっすぐとし得る(円筒形である、又はまっすぐで平行な側部を有する)。そのような実施形態では、端部の先端は、わずかに先細にする又は丸めることができる。
【0052】
図13C~
図13Iに示す代替実施形態1330によれば、第1の房水排出デバイス1330のフレア形端部1323は、第2の房水排出デバイスの先細端部又は非先細端部を、第1の房水排出デバイスのフレア形端部1323内の空間又は空洞1324に挿入することによって、第2の房水排出デバイスと合体することを可能にする。本実施形態では、フレアは、
図13F及び
図13Iでより容易に見えるように前方-後方の向きで存在する。
図13C~
図13Iは、第1の房水排出デバイスの一実施形態1330を示し、フレア形端部1323は、空間又は空洞1324と、第2の房水排出デバイスの一端部を受け入れる「案内部」として働くフレア形先端部1325とを有する。本実施形態によれば、第1の房水排出デバイスは、既にシュレム管110内に配置されており、次に、第2の房水排出デバイスの一端部は、先端部1325を通過し、第1の房水排出デバイスのフレア形端部1323の空洞1324に入る。
図13G~
図13Iに示すように、第2の房水排出デバイスの一端部が第1の房水排出デバイスのフレア形端部1323の空間1324内に合体し、第2の房水排出デバイスがシュレム管110に入った後、(外科器具又は挿入デバイスによる)第2の房水排出デバイスの操作により、第1の房水排出デバイス及び第2の房水排出デバイスの両方に対する制御された並進移動を可能にする。このように、適切に合体した第2の房水排出デバイスは、現在のゴニオスコープによる外科技法では容易にアクセスできないシュレム管110の一部分に第1の房水排出デバイスを配置させるために使用される。更なる臨床的な利益を達成するため、第1の房水排出デバイスと対になった又は合体した第2の房水排出デバイスの背後に、更なる房水排出デバイスをシュレム管110内に移植し得る。実施形態1330は、第1の房水排出デバイスを実施形態1330のフレア形端部1323と結合させることによって、先細端部を有する第1の房水排出デバイスと合体し得ることを理解されたい。即ち、実施形態900、1000、1100、1300、1400等の本明細書で説明する他の実施形態は、実施形態の一方の端部又は両端部が、実施形態1300の端部1323と同様にフレア形であるように修正し得る。このように、実施形態1330又はその同様の実施形態は、第1の房水排出デバイスの先端形状(先細、まっすぐ、フレア形、対称又は非対称)にかかわらず、シュレム管110に既に移植してある房水排出デバイスをシュレム管に沿って更に押すために使用し得る。
【0053】
代替実施形態(図示せず)によれば、第1の房水排出デバイス1330の非先細端部、例えば、まっすぐな端部(円筒形又はまっすぐな平行側部を有する)は、第2の房水排出デバイスの先細端部1310又は1320を第1の房水排出デバイスのまっすぐな端部内の空間又は空洞1324に挿入することによって、第2の房水排出デバイス1330との合体を可能にする。房水排出デバイス1330のそのような実施形態では、端部1323は、その基部からその先端1325までその長さ部に沿ってまっすぐである。
【0054】
房水排出デバイスの第1の端部の場合と同じように、一実施形態によれば、第2の端部720、920、1020、1120、1220、1320、1420も、房水の流れを促進するように、頂点721、921、1021、1121、1221、1321、1421内に穴又は開口722、922、1022、1122、1222、1322、1422を備える。以下で更に説明する弓状足場の両端部における頂点の穴は、送出デバイス機構と相互作用するように使用し得る。
【0055】
図14Eは、本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態1450の斜視図であり、特に、房水排出移植物の端部1420の代替実施形態を伴う。実施形態1450は、弓状足場内の連続長手方向スロット(
図14Hの点線1454によって示される)を特徴とし、連続長手方向スロットは、弓状足場の前側から後側まで開放又は延在し、端部1420に最も近接する開口1408からほぼ端部1420の先端又は頂点1421まで延在する。長手方向スロットは、端部1420に最も近接する開口1409の両側に2つの部分1452及び1453を備える。長手方向スロット1454の部分1453は、最も近接する開口1408から最も近接する開口1409まで延在する。部分1452は、最も近接する開口1409から頂点1421まであと少しのところまで延在する。環状リング1451は、頂点1421に形成され、穴1422は、実施形態1400のように存在する。
【0056】
実施形態1450は、同じく又は代替的に、端部1410にスロット1454を備えることを了解されたい。いずれの場合も、実施形態1450のスロット1454は、シュレム管110の実施形態を通じた房水の流れを改善する。
【0057】
図14Fは、
図14Eに示す同じ実施形態1450の後方図である。
図14Gは、実施形態1450の前方図であり、長手方向スロットが弓状足場の前側から後側までを通じて延在することを示す。
図14Hは、実施形態1450の断面図を提供する。
【0058】
図示しない実施形態1450の一変形形態は、弓状足場内の不連続長手方向スロット1454を特徴とする。このスロットは、依然として、弓状足場の前側から後側までを通じて開口又は延在し、端部1420に最も近接する開口1408から端部1420のほぼ先端又は頂点1421までを通じて延在するが、上レール1401と下レール1402との間に1つ又は複数の構造支持体を含み得る。
【0059】
図14Iは、本明細書で開示する房水排出移植物の一実施形態1480の斜視図であり、特に、房水排出移植物の端部1420の別の代替実施形態を伴う。実施形態1480は、弓状足場内の長手方向スロット(
図14Lの点線1454によって示される)を特徴とし、連続長手方向スロットは、弓状足場の前側から後側まで開放又は延在し、端部1420に最も近接する開口1408から端部1420の先端又は頂点1421を通じて延在する。長手方向スロットは、端部1420に最も近接する開口1409の両側に2つの部分1452及び1453を備える。長手方向スロット1544の部分1453は、最も近接する開口1408から頂点1421に最も近接する開口1409まで延在する。部分1452は、最も近接する開口1409から頂点1421まで延在する。実施形態1450とは異なり、環状リング1451は、頂点1421に形成されず、この場合、必ずしも穴1422はない。そうではなく、スロットは、頂点1421まで連続する。こうすることにより、端部1420の対応する下部分1486から距離1482によって隔てられた端部1420の上部分1487がもたらされる。頂点1421のスロットは、実施形態1450の穴1422又は環状リング1451の直径と実質的に対応する距離1481の幅を有する。
【0060】
実施形態1480は、同じく又は代替的に、端部1410にスロット1454を備えることを了解されたい。いずれの場合も、実施形態1480のスロット1454は、シュレム管110内で実施形態1480を通じて房水の流れを改善すると考えられる。
【0061】
図14Jは、
図14Iに示す同じ実施形態1480の後方図である。
図14Kは、実施形態1480の前方図であり、長手方向スロットが弓状足場の前側から後側までを通じて延在することを示す。
図14Lは、実施形態1480の断面図を提供する。
【0062】
図示しない実施形態1480の一変形形態は、弓状足場内の不連続長手方向スロット1454を特徴とする。このスロットは、依然として、弓状足場の前側から後側までを通じて開口又は延在し、端部1420に最も近接する開口1408から端部1420の先端又は頂点1421までを通じて延在するが、上レール1401と下レール1402との間に1つ又は複数の構造支持体を含み得る。
【0063】
図14E~
図14H及び図に示す実施形態1450及び
図14I~
図14Lに示す実施形態1480の両方において、房水排出デバイスは、移植された際、端部1420の場所に関係なく、シュレム管110内に配置され、房水排出デバイスは、線維柱帯網108の下に配置されるか、又は(例えば、
図25Cに示すように)線維柱帯切開部を通じて露出し得ることが企図される。房水排出デバイスを挿入する間、先端の一部分は、線維柱帯切開部を通じて(意図的又は意図せずのいずれかによって)完全に挿入しなくてもよく、先端がシュレム管110によって形成された通路内に依然としてあるにもかかわらず、線維柱帯網108に対して前方にあること、又は(例えば、
図25Bに示すように)先端が線維柱帯網の前面をシュレム管110内で押圧し得ることも企図される。
【0064】
房水排出デバイスの実施形態1450及び1480の後続端部1420は、デバイスがシュレム管110の所定の位置にある場合、線維柱帯網108に対して前方であるか、又はデバイスの移植のために生成した線維柱帯切開部によって露出し得ることを企図される。こうすることにより、デバイス自体がシュレム管110内に位置するにもかかわらず、線維柱帯切開部を通じて、又は線維柱帯網108より前方にあるデバイスの部分を通じて、房水排出デバイスにより良好な流れがもたらされる。
【0065】
房水排出デバイスの一実施形態によれば、第1の弓状レール及び第2の弓状レールは、第1の弓状レール及び第2の弓状レールのそれぞれの前縁部内に、合体ステーション又はポートを提供し、本明細書では第2の移植デバイスとも呼ぶ移植デバイスを安定位置内に挿入、合体、配置又は保持する(永続的な保持又は取外し可能な保持のいずれか)(房水排出デバイスは、第1の移植デバイスである(以下「第1の移植物」))。実施形態によれば、第2の移植デバイスは、1)眼の前房移植デバイス、2)眼の支持デバイス、即ち、眼内レンズ、虹彩又は虹彩プロテーゼ、虹彩クリップ/フック、カプセル・バッグ若しくはカプセル・バッグ支持デバイス等、天然か合成かにかかわらず眼内での他の構造体の支持又は取付けを目的とするデバイス、又は3)薬剤溶出デバイス、薬剤送出デバイス、センシング・デバイス、トランスダクション・デバイス、遺伝子/ベクター送出デバイス、トラベキュラー・マイクロバイパス・デバイス、強膜内移植物、脈絡膜上/毛様体上移植物又は電磁波放出デバイス等の眼以外の支持デバイスとし得る。房水排出デバイスに対する上述の製造方法及び可能な機能性コーティングは、第2の移植デバイスに等しく適用可能であることを了解されたい。
【0066】
図17は、本明細書で論じる第2の移植物1700の1つの一実施形態の斜視図である。特に、
図17は、球根状頭部1701を有する第2の移植物1700を示す。
図19Aは、本発明の実施形態による、第2の移植物1700を第1の移植物1900に合体させる前の、実施形態1700による第1の移植物1900及び第2の移植物の斜視図である。
図19Bは、第2の移植物1700を第1の移植物1900に合体させた後の、実施形態1700による第1の移植物1900及び第2の移植物の斜視図である。
図19Cは、第2の移植物1700を第1の移植物1900に合体させた後の、実施形態1700による第1の移植物1900及び第2の移植物の拡大斜視図である。球根状頭部1701は、第1の弓状レール1904及び第2の弓状レール1903のそれぞれの前縁部の間で第2の移植物1700の挿入を容易にするように、1702で先細になっている。球根状頭部1701は、同様に1704で先細になっている。第1の移植物1900の第1の弓状レール及び第2の弓状レールの前縁部の間の距離、及び後縁部の間の距離は、第2の移植物1700の最大円周部における球根状頭部1701の直径より小さい。第1の移植物の長手方向軸に実質的に垂直な角度で第2の移植物1700を第1の移植物1900に挿入すると、最大円周部1706における球根状頭部1701は、第1の弓状レール1901、2101及び第2の弓状レール1902、2102の内側面を係合し、第2の移植物1700は、これにより、摩擦及び/又は圧縮力によって所定の位置に保持される。追加又は代替として、一実施形態によれば、第2の移植物1700は、第1の弓状レール及び第2の弓状レールのそれぞれの窓のそれぞれの前縁部及び後縁部内に取外し可能に配置される(
図11A、
図13A及び
図21A~Cに示されるそれぞれの実施形態1100、1300及び2100の窓1128、1328、2128等)。追加又は代替として、一実施形態によれば、第2の移植物1700は、第1の弓状レール1901及び第2の弓状レール1902のそれぞれの前縁部及び後縁部内に取外し可能に配置され、線維柱帯網108によってもたらされる圧力によって少なくとも部分的に所定の位置に保持される。
【0067】
1つ又は複数の貫通孔1703は、第2の移植物を弓状足場内の所定の位置に置いた後、第2の移植物を通じて房水が流れるのを可能にする。少なくとも、
図6A、
図6B、
図7A、
図7B、
図8A、
図8B、
図9A、
図9B、
図10A、
図10B、
図11A、
図11B、
図12A、
図12B、
図14A~
図14D、
図15A~
図15Cに示す実施形態600、700、800、900、1000、1100、1200及び1400を参照して上記で説明したように、弓状足場(第1の移植物)600、700、800、900、1000、1100、1200及び1400は、シュレム管110に挿入されている際、シュレム管110内、特にシュレム管110の小房131又は類似小房1408’から、シュレム管110の後壁122で始まる1つ又は複数の集合管通路123までの範囲及びこれらの間に挿入されていると、弓状足場600、700、800、900、1000、1100、1200及び1400の長手方向軸にほぼ沿った方向で開放領域を通じて房水を流すのを可能にする。貫通孔1703は、第2の移植物1700が第1の弓状レール601、701、801、901、1001、1101、1201、1401及び第2の弓状レール602、702、802、902、1002、1102、1202及び1402の間の所定の位置にある場合でさえ、弓状足場600、700、800、900、1000、1100、1200及び1400の長手方向軸にほぼ沿った方向で開放領域内で連続性を維持する。特定の実施形態では、第2の移植物1700は、貫通孔1703の数及び位置に応じて、貫通孔1703が、弓状足場600、700、800、900、1000、1100、1200及び1400の長手方向軸にほぼ沿った方向で開放領域608、708、808、908、1008、1108、1208及び1408と実質的に位置合わせされるように、挿入時に回転させる必要があり得ることを了解されたい。
【0068】
図17に示す実施形態1700は、形状が概ね円形であるが、楕円形又は実質的に楕円形状等の他の形状でも効果があり、第2の移植物の断面を通る第1の軸に沿った楕円形の長さは、第1の軸に垂直な第2の移植物の断面を通る第2の軸に沿った楕円形の幅より長いことを更に了解されたい。第2の移植物は、挿入し、次に、挿入後、必要に応じて例えば、90度回転させることができ、第1の移植物の第1の弓状レール601、701、801、901、1001、1101、1201、1401及び第2の弓状レール602、702、802、902、1002、1102、1202、1402のそれぞれの前縁部603、703、803、903、1003、1103、1203、1403と後縁部604、704、804、904、1004、1104、1204、1404との間の距離より大きくてよい楕円形の長さ部が、第1の弓状レール601、701、801、901、1001、1101、1201、1401及び第2の弓状レール602、702、802、902、1002、1102、1202、1402のそれぞれの後縁部604、704、804、904、1004、1104、1204、1404を係合し、第2の移植物1700を所定の位置に保持するようにする。別の実施形態によれば、第2の移植物は、正方形又は長方形断面を有する。
【0069】
房水排出デバイスの実施形態1400によれば、それぞれの後縁部1404は、図示のように、枠開口1408に直接対向する場所1425で凹んでいる。特に、房水排出デバイスの一実施形態によれば、それぞれの後縁部1404は、図示のように、第1の弓状レール及び第2の弓状レールのそれぞれの前縁部の全体的な場所に直接対向する場所1425で凹んでおり、1425に、第2の移植物が挿入される。後縁部1404は、前方で凹んでおり、レールの後縁部、又はレールの後部の所定の位置に固着される第2の移植物の部分による外傷からシュレム管110の後壁122を保護する。同様に、
図14D及び
図15Aを参照すると、それぞれの後縁部1404の一部分は、図示のように、枠開口1409に直接対向する場所1427で凹んでいる。特に、房水排出デバイスの一実施形態によれば、それぞれの後縁部1404は、図示のように1427で前方に凹んでおり、レールの後縁部1404とシュレム管110の後壁122との間の接触量を制限し、これにより、レールの後縁部による外傷からシュレム管110の後壁122を更に保護する。
【0070】
実施形態1700は、弓状足場1000、1200及び1400の長手方向軸に垂直な前方向で延在する一部分1711を含む。一実施形態では、部分1711は、第2の移植物1700が第1の移植物1000、1200及び1400内に配置されている際に線維柱帯網108を通り、眼の前房内に延在する。
【0071】
一実施形態によれば、第2の移植物は、穴又は開口又は門1710を有し、穴又は開口又は門1710を介して、第2の移植物1700の長さに応じて、房水又は線維柱帯網108から第2の移植物1700に房水を流し得る。穴1710は、1つ又は複数の貫通孔1703に接続され、第2の移植物1700が第1の弓状レール1001、1201、1401と第2の弓状レール1002、1202、1402との間の位置にある場合でさえ、弓状足場1000、1200及び1400の開放領域を通じて、穴1710を介して受け入れた房水の流れを弓状足場1000、1200及び1400の長手方向軸にほぼ沿った方向で流し得る。
【0072】
図18は、本明細書で論じる第2の移植物の1つの一実施形態1800の斜視図である。特に、
図18は、羽根1801を有する第2の移植物を示す。羽根は、第1の弓状レール601、701、801、901、1001、1101、1201、1301、1401及び第2の弓状レール602、702、802、902、1002、1102、1202、1302、1402のそれぞれの前縁部603、703、803、903、1003、1103、1203、1303、1403の間で第2の移植物の挿入を容易にするように、1802で先細になっている。第1の移植物の第1の弓状レール及び第2の弓状レールの前縁部の間の距離は、一方の羽根1801の先端からもう一方の羽根1801の先端までの第2の移植物1800の幅より小さい。
【0073】
実施形態1800によれば、第2の移植物は、第1の移植物に挿入され、羽根1801は、第1の移植物700、1100、1200、1300の長手方向軸と実質的に位置合わせされる。次に、第2の移植物は、実質的に90度回転され、羽根が、第1の弓状レール701、1101、1201、1301及び第2の弓状レール702、1102、1202、1302の窓728、1128、1228、1328に合体するようにし、これにより、第2の移植物は、所定の位置に保持される。代替的に、第1の弓状レール601、801、901、1001、1401及び第2の弓状レール602、802、902、1002、1402内に窓がない実施形態600、800、900、1000、1400等の第1の移植物に対し、第2の移植物は、第1の移植物に挿入され、羽根1801は、第1の移植物の長手方向軸に実質的に垂直である。第2の移植物がそのように第1の移植物に挿入された場合、窓1801の先細縁部1802は、第1の弓状レール601、801、901、1001、1401及び第2の弓状レール602、802、902、1002、1402のそれぞれの前縁部603、803、903、1003、1403を係合し、レールを第2の移植物から離して屈曲させる。第2の移植物を連続して挿入すると、羽根1801の前縁部1808が弓状レールの後縁部604、804、904、1004、1404を越えて通過し、レールが元の静止位置に実質的に戻り、第1の弓状レール601、801、901、1001、1401及び第2の弓状レール602、802、902、1002、1402の後縁部604、804、904、1004、1404に対して第2の移植物の羽根1808を効果的に係止するのを可能にする。
【0074】
1つ又は複数の貫通孔1803は、第2の移植物を弓状足場内の所定の位置に置いた後、第2の移植物を通じて房水が流れるのを可能にする。貫通孔1803は、第2の移植物が第1の弓状レールと第2の弓状レールとの間の位置にある場合でさえ、弓状足場の長手方向軸にほぼ沿った方向で開放領域内で連続性を維持する。第2の移植物は、貫通孔1803が、弓状足場の長手方向軸にほぼ沿った方向で開放領域と実質的に位置合わせされるように、挿入時に回転し得ることを了解されたい。
【0075】
図18に示す実施形態1800は、形状がほぼ円形であるが、楕円形又は実質的に楕円形状等の他の形状でも効果があり、第2の移植物の断面を通る第1の軸に沿った楕円形の長さは、第1の軸に垂直な第2の移植物の断面を通る第2の軸に沿った楕円形の幅より長く、羽根1801は、第1の軸に沿って固着されていることを更に了解されたい。第2の移植物は、挿入され、次に、必要な場合、挿入後、例えば90度回転させることができ、第1の移植物の第1の弓状レール及び第2の弓状レールのそれぞれの前縁部と後縁部との間の距離より大きくてよい羽根を含む楕円形の長さ部が、第1の弓状レール及び第2の弓状レールのそれぞれの後縁部を係合し、第2の移植物を所定の位置に保持するようにする。
【0076】
実施形態1800は、弓状足場の長手方向軸に垂直な前方向で延在する一部分1811を含む。一実施形態では、部分1811は、第2の移植物が第1の移植物内に配置されている際に線維柱帯網108を通り、眼の前房内に延在する。
【0077】
一実施形態によれば、第2の移植物は、穴又は開口又は門1810を有し、穴又は開口又は門1810を介して、前房又は線維柱帯網108から第2の移植物に房水を流し得る。穴1810は、貫通孔1803に接続され、第2の移植物が第1の弓状レールと第2の弓状レールとの間の位置にある場合でさえ、弓状足場の開放領域を通じて、穴1810を介して受け入れた房水の流れを弓状足場の長手方向軸にほぼ沿った方向で流し得る。実施形態1800は、開口1810内にスロット付き区分1807も含む(実施形態1700もそのようなスロット付き区分を含み得ることを了解されたい)。スロット付き区分は、平頭ねじが平頭ねじ回しを受け入れるのと同様に、スロット付き区分に合わせられた挿入デバイス又は工具の受け入れを促進する。対応する工具を受け入れる開口1810に関して、内部六角形、正方形凹部又は星形の構成等、他の構成があってよいことを了解されたい。
【0078】
図20A及び
図20Bは、本発明の実施形態による、第2の移植物2002を第1の移植物2001に合体させる前の、シュレム管110内で線維柱帯網108の背後に配置された第1の移植物2001、及び眼の前房に配置された第2の移植2002の斜視図を提供する。
図20Bは、線維柱帯網108を通じて、シュレム管110内の房水排出デバイスの第1の弓状レールと第2の弓状レールとの間に第2の移植物2002を配置する間、外科機器又は挿入デバイス又は第2の移植物2002により生成した線維柱帯網108内の開口(「線維柱帯切開部」とも呼ぶ)を示す。
図20Cは、本発明の実施形態による、線維柱帯網108を通じて第2の移植物2002を第1の移植物2001に合体させた後の、線維柱帯網108の背後でシュレム管110内に配置された第1の移植物2001及び第2の移植物2002の斜視図である。
図20Dは、本発明の実施形態による、線維柱帯網108の開口を通じて第2の移植物2002を第1の移植物2001に合体させた後の、線維柱帯網108の背後でシュレム管110内に配置された第1の移植物2001及び第2の移植物2002の拡大斜視図である。第1の移植物2001の第1の弓状レール及び第2の弓状レールの前縁部の間の距離、及び後縁部の間の距離は、最大円周部における第2の移植物2002の頭部の直径より小さい。第1の移植物の長手方向軸に実質的に垂直な角度で第2の移植物2002を第1の移植物2001に挿入すると、最大円周部における第2の移植物の頭部は、第1の(即ち、上)弓状レール及び第2の(即ち、下)弓状レールの内側面を係合し、第2の移植物2002は、これにより、摩擦及び/又は圧縮力によって所定の位置に保持される。
【0079】
図21Aは、本発明の実施形態による、第2の移植物2200を第1の移植物2100に合体させる前の、線維柱帯網108の背後でシュレム管110内に配置された第1の移植物2100、及び前房内に配置された第2の移植物2200の一実施形態の拡大頭上図である。上(第1の弓状)レール2101内の窓2128を通して見るとわかるように、第2の移植物は、まだ、第1の移植物に挿入又は合体されておらず、第1の弓状レール2101と第2の弓状レール2102との間の空間2108は、空いている。
図21Bは、本発明の実施形態による、線維柱帯網108を通じて第2の移植物2200を第1の移植物2100に合体させる間の、線維柱帯網108の背後でシュレム管110内に配置された第1の移植物2100、及び第2の移植物2200の拡大頭上図である。上(第1の弓状)レール2101内の窓2128を通して見るとわかるように、第2の移植物が第1の移植物に挿入又は合体されている過程にあるので、第1の弓状レール2101と第2の弓状レール2102との間の空間2108は、第2の移植物で部分的に充填されている。
図21Cは、本発明の実施形態による、線維柱帯網108を通じて第2の移植物を第1の移植物に合体させた後の、線維柱帯網108の背後でシュレム管110内に配置された第1の移植物2100、及び第2の移植物2200の拡大頭上図である。上(第1の弓状)レール2101内の窓2128を通して見るとわかるように、今や第2の移植物が第1の移植物に完全に挿入又は合体されているので、第1の弓状レール2101と第2の弓状レール2102との間の空間2108は、第2の移植物が所定の位置で合体されているのを示す。このように、一実施形態によれば、第2の移植物2200は、第1の弓状レール及び第2の弓状レールの窓2128のそれぞれの前縁部及び後縁部内に取外し可能に配置される。
【0080】
上記で説明したように、一実施形態によれば、第1の弓状レール2101及び第2の弓状レール2102は、第2の移植物2200を間に挿入する案内部又は開口を提供する。一実施形態では、第1の弓状レール2101及び第2の弓状レール2102は、第2の移植物2200の挿入を可能にするように屈曲する。
図22Aは、本発明の実施形態による、第1の移植物の拡大正面図であり、第2の移植物2100は、第2の移植物2200を第1の移植物2100に合体させる前、第1の移植物2100に隣接して配置されている。第2の移植物は、まだ第1の移植物に挿入又は合体されていないため、第1の弓状レール2101と第2の弓状レール2102との間の空間2108は、空いている。
図22Bは、本発明の実施形態による、第2の移植物を第1の移植物に合体させる間の、第1の移植物2100及び第2の移植物2200の拡大正面図であり、第1の弓状レール2101及び第2の弓状レール2102が第2の移植物2200から離れて屈曲する2106のを示す。
図22Bは、第1の弓状レール2101と第2の弓状レール2102との間の空間2108を示し、第2の移植物は、第1の移植物に挿入又は合体される過程にある。
図22Cは、本発明の実施形態による、第2の移植物2200を第1の移植物2100に合体させた後の、第1の移植物2100及び第2の移植物2200の拡大正面図であり、レールが元の静止位置に実質的に戻り、第2の移植物2200を第1の移植物2100上に効果的に係止するのを示す。
図22Cは、第1の弓状レール2101と第2の弓状レール2102との間の空間2108を示し、第2の移植物2200は、第1の移植物2100に完全に最終的に挿入又は合体されている。
【0081】
図23A~
図23Cは、一実施形態による、シュレム管110の頭上図であり、1つ又は複数の弓状足場は、シュレム管110に移植されている。特に、
図23Aは、実施形態1400による、シュレム管110に移植された単一弓状足場を示す。
図5Cを参照して上記でも説明したように、線維柱帯網108は、シュレム管110の後壁122上に陥没し、円周方向の流れを制限している。
図23Aに示すように弓状足場を挿入すると、線維柱帯網108がシュレム管110の後壁122上に陥没するのを矯正し、これにより、弓状足場が存在するシュレム管110の部分で少なくとも円周方向の流れを改善する。
図5C及び
図23Aに示すように、線維柱帯網108は、集合管入口121にヘルニア108’になり、集合管123への房水の流れを遮断する場合もある。
図23Bに示すように、第2の弓状足場を挿入すると、集合管入口121への線維柱帯網108のヘルニア108’を矯正し、これにより、第2の弓状足場が存在するシュレム管の少なくとも当該部分から集合管入口121への房水の流れを改善する。
図23Cに示すように、第1の弓状足場及び第2の弓状足場に加えて、第3の弓状足場を挿入すると、シュレム管110の全円周部に実質的に沿ってシュレム管110の後壁122への線維柱帯網108の陥没を矯正し、これにより、シュレム管110内の円周方向の流れを改善する。
【0082】
図24Aは、シュレム管110の一部分及び集合管123の頭上図であり、集合管123は、集合管入口121内への線維柱帯網108のヘルニア点108’で陥没している。
図24Bは、実施形態1400による、シュレム管110及び弓状足場の一部分の頭上図であり、弓状足場は、シュレム管110内に配置され、シュレム管110の後壁122から線維柱帯網108を効果的に分離し、集合管入口121への線維柱帯網108のヘルニア108’を解決し、ヘルニア108’を更に防止している。
図24Cは、シュレム管110及び一実施形態の一部分の頭上図であり、実施形態1400による弓状足場は、集合管入口121を通じて挿入され、近接する集合管123を拡張させている。
【0083】
図25Aは、シュレム管110及び実施形態1400による弓状足場の一部分の頭上図であり、実施形態1400による弓状足場は、シュレム管110内に完全に配置され、足場内の開口1408、1409及び1416は、線維柱帯網108によって覆われている。図に更に示すように、端部開口1422は、シュレム管110の内腔と連通し、シュレム管110の内腔と端部開口1422との間の房水の直接的な流れを可能にする。
図25Bは、シュレム管110の一部分、及びシュレム管110内に配置された実施形態1400による弓状足場の頭上図であり、足場の端部1420は、線維柱帯網108の前方に、線維柱帯切開部を通じて配置されているが、依然として、シュレム管110が形成する隅角陥没内にある。
図25Cは、シュレム管110の一部分、及びシュレム管110内に配置された実施形態1400による弓状足場の頭上図であり、足場の開口1409及び端部1420は、線維柱帯切開部によって露出され、足場の開口1409及び端部1420内の開口1422の両方への直接的な房水の流れを可能にする。
図25Dは、シュレム管110及び実施形態1400による弓状足場の一部分の頭上図であり、弓状足場は、足場の窓又は開口1409により挿入され、別の窓又は開口1408は、線維柱帯切開部によって部分的に露出されており、線維柱帯切開部は、以下で更に説明するように、最初の手術時に作成されるか、又はレーザー隅角穿刺術により後に作成される。
【0084】
第1の移植物内の空間に房水を直接アクセス可能にし、第1の移植物から集合管121に流し、集合管121を通じて出すために、(例えば、線維柱帯網のメカノセンシング/メカノトランスダクション機序が不適当であるか又は本発明の実施形態による房水排出デバイスの配置によって十分に向上できない場合)線維柱帯網108内に直接的な開口を生成する(線維柱帯切開としても公知)ことが望ましいと考慮し得る。
【0085】
房水排出デバイスを移植せずに、眼の線維柱帯網108を通じて線維柱帯切開部を外科的に作成することが可能であるが、線維柱帯切開を行うには、現在、手術室内の無菌条件下で実施される切開手術を必要とする。線維柱帯切開は、本発明の実施形態で使用し得るが、房水排出デバイスを設置した後、後に実施し得る。一実施形態によれば、より一般的には「YAG」レーザーと呼ばれる、レーザーの一種であるNd:YAG(ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット)を使用し、ゴニオレンズ又はゴニオプリズムを通じて線維柱帯切開を実施し得る。この処置は、YAGレーザー隅角穿刺術と呼ばれることが多い。
【0086】
一般的な慣例では、この処置は、カナロプラスティの後にのみ実施される(カナロプラスティは、シュレム管を拡張させる一種の手術であり、ポリプロピレン糸を使用してシュレム管110を拡張させる)。ポリプロピレン糸は、青で染色されることが多いため、線維柱帯網108の背後に容易に見え、レーザー・ビームの標的化を可能にする。しかし、この環境で実施する場合、線維柱帯切開を通じてレーザーが糸を破損する、又は糸がチーズワイヤのようになる、即ちスライスし、シュレム管110の拡張が失われるおそれがある。
【0087】
ポリプロピレン糸の存在がなければ、線維柱帯網108を着色しない限り、線維柱帯網108を見ることは困難であることが多い。そうでなければ、シュレム管110に血液が充満する。線維柱帯網108の前方にレーザー治療をかけると、角膜内皮を損傷する可能性がある一方で、後方すぎる場所にレーザー治療をかけると、血管組織を損傷し、眼内に出血をもたらす可能性がある。これらの合併症は共に、一時的又は永続的な失明をもたらすことがある。トラベキュラー・マイクロバイパス移植物は、線維柱帯網108を通じて見えるが、そのようなマイクロバイパス移植物上にレーザー治療をかけると、移植物を変位させ、移植物の効果を低減し、眼内組織を損傷する可能性がある。
【0088】
本明細書に記載の房水排出デバイスの実施形態によれば、デバイスは、従来の房水排出路内に完全に移植される。デバイスは、線維柱帯網108を通じてゴニオレンズ又はゴニオプリズムにより見える。デバイスは、診療室又は外来患者手術環境において、最初に、本発明の実施形態による移植物を外科的に置いた後、任意の時間に、レーザーを使用して線維柱帯切開を安全にかけることを可能にする。構造構成要素と組み合わされた第1の弓状レール及び第2の弓状レールは、線維柱帯網108を通じて見え、レーザーを向けることができる標的をもたらす。このことにより、眼の隣接構造への意図しない損傷に対する危険性を低減する。房水排出デバイスは、シュレム管110内に完全に位置するので、トラベキュラー・マイクロバイパス・デバイスの場合に予想される危険性と比較して、シュレム管110から押し出される危険性又は前房内で変位する可能性が低減されることに更に留意されたい。
【0089】
図26Aは、シュレム管110及び実施形態1400による弓状足場の一部分の拡大斜視図であり、実施形態1400による弓状足場は、シュレム管110内に完全に配置され、足場内の全ての開口1408、1409、1416及び1422は、線維柱帯網108によって覆われている。
図26Bは、シュレム管110の一部分、及びシュレム管110内に配置された実施形態1400による弓状足場の拡大斜視図であり、足場の端部1420は、線維柱帯網108の前方に、線維柱帯切開部を通じて配置されているが、依然として、シュレム管110が形成する隅角陥没内にある。
図26Cは、シュレム管110の一部分、及びシュレム管110内に配置された実施形態1400による弓状足場の拡大斜視図であり、足場の開口1409及び端部1409は、線維柱帯切開部によって露出され、足場のそれぞれの端部開口1422及び側部開口1409への直接的な房水の流れを可能にする。
図26Dは、シュレム管110、及び挿入された実施形態1400による弓状足場の一部分の拡大斜視図であり、足場の窓又は開口1408は、線維柱帯切開部によって露出されており、線維柱帯切開部は、最初の手術時に作成されるか、又はレーザー隅角穿刺術により後に作成される。
【0090】
図2~
図4の説明を参照し、
図27は、本発明の実施形態による、前房隅角の拡大断面図であり、隅角構造に対する弓状足場の関係を示す。特に、
図27は、前房隅角の拡大断面図であり、シュレム管110内に配置された実施形態1400による弓状足場の一端部1410を示す。この図は、
-シュレム管110の拡張、
-線維柱帯網108の拡大、
-シュレム管110の後壁122からの線維柱帯網108の分離、及び
-集合管入口121からの線維柱帯網108のヘルニア108’の解消
を示す。
【0091】
虹彩105、強膜107及び角膜106が交わる前房の部分が「隅角」と称される、
図2~
図4の説明を想起されたい。従来の流路と称されるものの中で、房水は、線維柱帯網108と称される隅角構造を通じて前房を離れる。線維柱帯網108は、下方で強膜岬109に、上方で角膜106に、後方でシュレム管110に接する。房水は、線維柱帯網108を通過し、シュレム管110に入り、シュレム管110から、シュレム管110の後壁122に位置する集合管入口121に入り、集合管123に入る。集合管123は、房水排出静脈に接続され、房水排出静脈から、房水は、体のより大きな血管に入ることができる。
【0092】
図28は、前房隅角の拡大断面図であり、シュレム管110内に配置された実施形態1400による弓状足場の一端部1410を示し、房水は、側部ポート開口1409に直接アクセスする。
【0093】
図29A及び
図29Bは、実施形態1400による弓状足場の拡大前方斜視図及び拡大後方斜視図を示し、線維柱帯網108を通じて弓状足場の内腔に入る房水の流れ2900を示し、流れは、シュレム管110の小房131の範囲内(小房内の流れ)及び小房131の間(小房間の流れ)を長手方向2901で移動し得る。上述のように、実施形態1400による房水排出デバイスと、線維柱帯網108と、シュレム管110の後壁122との組合せにより、正常なシュレム管110内に存在する小房131に類似する小房1408’がもたらされる。この説明の目的で、「弓状足場の内腔」とは、弓状足場の内部表面と、弓状足場と直接接触する線維柱帯網108と、シュレム管110の壁と、集合管123の内部表面との組合せによって画定される体積部を意味すると理解されたい。
【0094】
図30A~
図30Dは、シュレム管110の断面図を示し、実施形態1400による弓状足場は、シュレム管110に移植されており、足場内を流れ、集合管123から出る房水を示す。
【0095】
シュレム管110の後壁122の不規則な外形を示す、
図5A及び
図5Bのシュレム管110の頭上図に関する説明を想起されたい。線維柱帯網108とシュレム管110の後壁122との相互作用により膜弁132を生成し、シュレム管110を不規則な形状でサイズの小房131に機能的に分離し、房水がシュレム管110を通って流れる一連のそのような小房131は、均一ではない。
図30B~
図30Dの3001で+Pによって示される眼の脈圧と相まって、房水は、線維柱帯網108を通じて類似小房1408’A及び1408’Bに入り、小房1408’A及び1408’Bから、集合管入口121及び集合管123に入り、集合管入口121及び集合管123を通って、房水は、房水静脈(図示せず)に排出され、体の全体循環系(図示せず)に入る。これらの類似小房1408’A及び1408’Bを分離する、構造構成要素1405の後面1407に並置されるシュレム管110の後壁122の部分は、膜弁132と同様に作用し、房水に対して、ある成分の方向の流れ3002をもたらし、集合管入口121に向かう圧力勾配を下げる。本質的に、線維柱帯網108に対する脈圧は、類似小房1408’Aをピストンとして作用させ、房水を隣接する類似小房1408’Bに押し出す。線維柱帯網108の変位によっても、類似小房1408’Bをピストンとして作用させ、集合管入口121を通じて房水を押し、集合管123から出す。脈圧の間の類似小房1408’Bにおける線維柱帯網108の変位、及び類似小房1408’Aからの房水の流れは、シュレム管110から集合管123に入る房水の圧力勾配を強制的に下げるように機能することに留意されたい。
【0096】
図14A~
図14D及び
図30A~
図30Dを参照すると、線維柱帯網108は、第1の弓状レール1401及び第2の弓状レール1402並びに構造構成要素1405によって枠が形成された開口1408に当接する。一実施形態によれば、線維柱帯網108は、眼内圧力3001を受けると、特に、眼内脈圧を受けると、膜(即ち、ダイアフラム)として作用し、3003で示すように膜を伸張させ、開口1408内に拡張し、これにより、
図30B~
図30Dで「+P」として示される陽圧を房内にもたらす。開口1408は、第1の弓状レール1401及び第2の弓状レール1402並びに構造構成要素1405によって枠が形成される。シュレム管110に移植されている際、第1の弓状レール1401及び第2の弓状レール1402、隣接する構造構成要素1405、線維柱帯網108並びにシュレム管110の後壁122が接する開口1408は、可能性として、3次元空間又は小房1408’A及び1408’Bを画定し、3次元空間又は小房1408’A及び1408’Bは、健康なシュレム管110中に存在する小房1408に類似する。房水は、開口1408及び1409を通り、次に、シュレム管110の小房の範囲内及び小房の間で弓状足場の長手方向軸にほぼ沿った方向3002で1つ又は複数の集合管123に流れる。
【0097】
図30Cは、異なる小房の間の圧力差がシュレム管110の後壁122を強制的に構造構成要素1405の後縁部1407から離すのに十分である場合に生じる、房水が1つの類似小房1408’Aから別の類似小房1408’Bまで流れる際の房水の流れ方向3002を示す。そのような圧力差は、例えば、集合管入口121を伴わない一方の類似小房1408’Aと、集合管入口121を伴う別の類似小房1408’Bとの間で予期される。この圧力差は、シュレム管110の後壁122及び構造構成要素1405の後縁部1407によって形成された膜弁132を効果的に開放し、一方の類似小房1408’Aから別の類似小房1408’Bへの房水の流れを可能にする。房水がシュレム管110の後壁122に沿って円周方向に通過する際、構造構成要素1405より後方の比較的効果的なシュレム管内腔の直径が低減されるため、この領域内のシュレム管110の後壁122に並ぶ内皮細胞によってより大きなせん断応力を受ける。シュレム管110の内皮細胞は、線維柱帯網108内で見られるのと同様のメカノセンシング/メカノトランスダクション能力を呈することが実証されていることに留意されたい。線維柱帯網108の細胞は、最も伸張に反応すると思われるが、シュレム管110の内皮細胞は、一酸化窒素(NO)生成の増大によるせん断応力の変化に応答し、房水排出の容易さを増大させ(排出の抵抗を低減させ)、IOPの低下をもたらすことがわかっている。したがって、構造構成要素1405の別の機能は、メカノセンシング/メカノトランスダクションの恒常性機序を活性化し、更なるIOPの低減をもたらすように、シュレム管110の内皮細胞が受けるせん断応力を増大させることである。
【0098】
実施形態1400によれば、構造構成要素1405の後縁部1407における陥没は、例えば
図14A、
図15Aに示すそれぞれの開口1419と結合又は合併し、それぞれの類似小房1408’の間の房水の流れを更に増大し得る。それぞれの類似小房1408’は、小房の間の圧力差が膜弁132を完全に開放するには不十分である場合でさえ、類似小房1408’の間の房水の一部の流れを可能にするように機能する。構造構成要素1405の後縁部1407内のこの陥没領域内の内腔が、小さい効果的な直径であると仮定すると、シュレム管110の内皮細胞は、房水がこの空間を通る際に増大したせん断応力を受けることが予期され、可能性として、上述のシュレム管内皮細胞のメカノセンシング/メカノトランスダクション機序をトリガし、IOPの低減をもたらす。
【0099】
図30Dは、一実施形態1400による弓状足場の拡大頭上平面部分図であり、弓状足場の端部1410内の穴1416及び側方開口1409を通り、内腔に入る房水の流れの方向を示す。
【0100】
図31は、典型的な挿入システム3100の図であり、カニューレは、シュレム管110の挿入場所3101に配置されている。
図32は、典型的な挿入システム3100の図であり、カニューレは、シュレム管110の挿入場所3101に配置されており、(例えば実施形態1400による)弓状足場のほぼ半分は、シュレム管110内にある。
図33は、典型的な挿入システム3100の図であり、カニューレは、シュレム管110の挿入場所3101に配置されており、弓状足場は、シュレム管110内に完全に配置されている。
図34は、眼の前方区分の断面図及び一実施形態による弓状足場の斜視図であり、線維柱帯網108を通じてシュレム管110の場所3101に挿入する前の足場の位置を示す。弓状足場1400の端部1410は、弓状足場をシュレム管110に挿入するのを容易にするように先細になっていることに留意されたい。先端を先細にすると、シュレム管構造への損傷を最小にした状態で、シュレム管110に沿って移植物を容易に通すことも可能にする。
【0101】
実施形態によれば、弓状足場の挿入は、角膜内の小さな切開部を通じて、又は眼の他の組織内の小さな切開部を通じて実施し得る。
【0102】
実施形態によれば、挿入デバイスは、房水排出デバイスの挿入を簡略化する一方で、房水排出デバイス先端の設計は、デバイスの挿入及び/又は再配置工程用に特別に設計し得る標準的な顕微手術器具又は外科器具のいずれかを用いて、手でも挿入し得るようなものである。
【0103】
図35は、眼の前方区分の断面図及び一実施形態1400による弓状足場の斜視図であり、線維柱帯網108を通じてシュレム管110にほぼ完全に挿入した後の足場の位置を示す。
【0104】
図36は、眼の前方区分の断面図及び実施形態1400の弓状足場の斜視図であり、シュレム管110内に完全に挿入された弓状足場の位置を示す。
【0105】
本発明の実施形態をかなり詳細に説明してきたが、他の実施形態が可能である。当業者には、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、上述の特徴及び構成要素の一部又は全てを使用してデバイスの実施形態を提供し得ることは、明らかであろう。当業者には、教示する単一の説明のいずれかよりも広範な範囲を有し得る単一のより広範なデバイスの上記の実施形態が特定の例であることは、明らかであろう。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本明細書では多数の改変を行い得る。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲は、本明細書に含まれる実施形態の説明に限定すべきではない。