IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社疲労科学研究所の特許一覧

特許7579600自律神経評価装置、自律神経評価方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】自律神経評価装置、自律神経評価方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61B5/16 200
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023056193
(22)【出願日】2023-03-30
(65)【公開番号】P2023153051
(43)【公開日】2023-10-17
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2022061128
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022096553
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505183680
【氏名又は名称】株式会社疲労科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】倉恒 弘彦
(72)【発明者】
【氏名】巽 さくら
(72)【発明者】
【氏名】弥園 護
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-001966(JP,A)
【文献】特開2018-149262(JP,A)
【文献】Che-Hao Hsu, et al.,Poincare plot indexes of heart rate variability detect dynamic autonomic modulation during general anesthesia induction,Acta Anaesthesiologica Taiwanica,2012年,50,12-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3秒以上かつ60秒未満で計測された、評価対象である被験者の心拍データと、前記被験者の年齢とを取得する取得部と、
前記心拍データのRR間隔に基づいて、ローレンツプロット法における楕円面積及び平均距離を算出し、前記楕円面積、前記平均距離及び前記被験者の年齢に基づいて、前記被験者の自律神経活動量を算出する算出部と、
を有する自律神経評価装置。
【請求項2】
律神経活動量について被験者の年齢ごとの分布を示す分布データを記憶する記憶部を有し、
前記算出部は、前記被験者の自律神経活動量と前記被験者の心拍データと前記分布データとを用いて、前記被験者の自律神経活動量の偏差値を算出する、
請求項1に記載の自律神経評価装置。
【請求項3】
前記算出部は、
前記心拍データのRR間隔のうち連続する2つのRR間隔をそれぞれx及びyとする複数の点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットし、
前記グラフにプロットした点をx=y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数を乗算した第1標準偏差を長軸とし、前記グラフにプロットした点をx=-y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に前記所定係数を乗算した第2標準偏差を短軸とする第1楕円を算出し、
前記グラフにプロットした点のうち前記第1楕円の内部に存在する点について、前記グラフにプロットした点をx=y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に前記所定係数を乗算した第3標準偏差を長軸とし、前記グラフにプロットした点をx=-y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に前記所定係数を乗算した第4標準偏差を短軸とする第2楕円を算出し、
前記楕円面積である前記第2楕円の面積、前記平均距離及び前記被験者の年齢を所定計算式に代入することで、前記被験者の自律神経活動量を算出する、
請求項1に記載の自律神経評価装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記心拍データのRR間隔のうち連続しない2つのRR間隔をそれぞれx及びyとする複数の点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットし、
前記グラフにプロットした点をx=y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数を乗算した第1標準偏差を長軸とし、前記グラフにプロットした点をx=-y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に前記所定係数を乗算した第2標準偏差を短軸とする第1楕円を算出し、
前記グラフにプロットした点のうち前記第1楕円の内部に存在する点について、前記グラフにプロットした点をx=y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に前記所定係数を乗算した第3標準偏差を長軸とし、前記グラフにプロットした点をx=-y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に前記所定係数を乗算した第4標準偏差を短軸とする第2楕円を算出し、
前記楕円面積である前記第2楕円の面積、前記平均距離及び前記被験者の年齢を所定計算式に代入することで、前記被験者の自律神経活動量を算出する、
請求項1に記載の自律神経評価装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記連続しない2つのRR間隔をそれぞれx及びyとする複数の点であって、前記連続しない2つのRR間隔の間に存在する他のRR間隔の数が異なる複数の点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットする、
請求項4に記載の自律神経評価装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記被験者の心拍データを、3秒以上かつ25秒未満で前記被験者を計測することで取得する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の自律神経評価装置。
【請求項7】
3秒以上かつ60秒未満で計測された、評価対象である被験者の心拍データと、前記被験者の年齢とを取得するステップと、
前記心拍データのRR間隔に基づいて、ローレンツプロット法における楕円面積及び平均距離を算出し、前記楕円面積、前記平均距離及び前記被験者の年齢に基づいて、前記被験者の自律神経活動量を算出するステップと、
を含む、自律神経評価装置が実行する自律神経評価方法。
【請求項8】
3秒以上かつ60秒未満で計測された、評価対象である被験者の心拍データと、前記被験者の年齢とを取得するステップと、
前記心拍データのRR間隔に基づいて、ローレンツプロット法における楕円面積及び平均距離を算出し、前記楕円面積、前記平均距離及び前記被験者の年齢に基づいて、前記被験者の自律神経活動量を算出するステップと、
をコンピューターに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
ローレンツプロット法に関する第1指標について被験者の年齢ごとの分布を示す分布データを記憶する記憶部と、
評価対象である被験者の年齢と前記被験者の心拍データとを取得する取得部と、
前記心拍データのRR間隔のうち2つのRR間隔をそれぞれx及びyとする複数の点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットすることで、ローレンツプロット法における楕円面積(LP.S)及び平均距離(LP.m)とを算出し、
前記楕円面積(LP.S)及び前記平均距離(LP.m)に基づいて、ローレンツプロット法に関する前記被験者の第1指標を算出し、
前記分布データと、前記被験者の年齢と、前記被験者の第1指標とに基づいて、前記被験者の第1指標の偏差値を算出し、
前記被験者の第1指標の偏差値を、前記心拍データの測定時間に対応する係数と前記被験者の第1指標の偏差値とを入力すると自律神経活動量の偏差値を出力する所定計算式に代入することで、前記被験者の自律神経活動量の偏差値を算出する、算出部と、
を有する、自律神経評価装置。
【請求項10】
ローレンツプロット法に関する第1指標について被験者の年齢ごとの分布を示す分布データを記憶する記憶部に記憶するステップと、
評価対象である被験者の年齢と前記被験者の心拍データとを取得するステップと、
前記心拍データのRR間隔のうち2つのRR間隔をそれぞれx及びyとする複数の点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットすることで、ローレンツプロット法における楕円面積(LP.S)及び平均距離(LP.m)とを算出し、
前記楕円面積(LP.S)及び前記平均距離(LP.m)に基づいて、ローレンツプロット法に関する前記被験者の第1指標を算出し、
前記分布データと、前記被験者の年齢と、前記被験者の第1指標とに基づいて、前記被験者の第1指標の偏差値を算出し、
前記被験者の第1指標の偏差値を、前記心拍データの測定時間に対応する係数と前記被験者の第1指標の偏差値とを入力すると自律神経活動量の偏差値を出力する所定計算式に代入することで、前記被験者の自律神経活動量の偏差値を算出するステップと、
を含む、自律神経評価方法。
【請求項11】
ローレンツプロット法に関する第1指標について被験者の年齢ごとの分布を示す分布データを記憶する記憶部に記憶するステップと、
評価対象である被験者の年齢と前記被験者の心拍データとを取得するステップと、
前記心拍データのRR間隔のうち2つのRR間隔をそれぞれx及びyとする複数の点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットすることで、ローレンツプロット法における楕円面積(LP.S)及び平均距離(LP.m)とを算出し、
前記楕円面積(LP.S)及び前記平均距離(LP.m)に基づいて、ローレンツプロット法に関する前記被験者の第1指標を算出し、
前記分布データと、前記被験者の年齢と、前記被験者の第1指標とに基づいて、前記被験者の第1指標の偏差値を算出し、
前記被験者の第1指標の偏差値を、前記心拍データの測定時間に対応する係数と前記被験者の第1指標の偏差値とを入力すると自律神経活動量の偏差値を出力する所定計算式に代入することで、前記被験者の自律神経活動量の偏差値を算出するステップと、
をコンピューターに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律神経評価装置、自律神経評価方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
疲労を客観的に評価するための指標として、自律神経系の機能解析が注目されている。自律神経は、主に起きているときや緊張しているときに働く交感神経と、主に寝ているときやリラックスしているときに働く副交感神経とがあり、両者がバランスを取りながら機能し、生理的機能を調節していることが知られている。例えば特許文献1には、車両の乗員の自律神経状態を判定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-23702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被験者の自律神経機能を評価する場合、被験者を120秒間計測することで得られた心拍間隔を周波数解析することが一般的である。しかしながら、自律神経機能の評価を就業前検査として実施する場合など、自律神経機能の評価を利用する態様によっては、計測に時間が掛かりすぎであることが問題点として指摘されている。
【0005】
そこで、本発明は、自律神経機能の評価を、より迅速に実施可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る自律神経評価装置は、評価対象である被験者の心拍データを取得する取得部と、ローレンツプロット法に基づいて、前記心拍データから前記被験者の自律神経全体の働きを示す指標であるトータルパワーを算出する算出部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自律神経機能の評価を、より迅速に実施可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る評価装置のハードウェア構成例を示す図である。
図2】ccvTPと年齢との関係を示す図である。
図3】年齢とLF値との関係及び年齢とHF値との関係を調査した結果を示す図である。
図4】評価装置の機能ブロック構成例を示す図である。
図5】評価装置が自律神経機能の評価を迅速に行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】ローレンツプロット法により被験者のトータルパワーを算出する方法を説明するための図である。
図7】LP.S、LP.m、年齢及びTPの重回帰分析結果を示す図である。
図8】LP.S、LP.m、年齢及びTPの相関関係を示す図である。
図9】TP及びLP.Sの相関関係を示す図である。
図10】TP及びLP.Sの相関関係を示す図である。
図11】LP.S、LP.m、年齢及びTPの重回帰分析結果を示す図である。
図12】LP.S、LP.m、年齢及びTPの相関関係を示す図である。
図13】TP及びLP.Sの相関関係を示す図である。
図14】TP及びLP.Sの相関関係を示す図である。
図15】LP.Sの相関関係を示す図である。
図16】評価装置が副交感神経の評価を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
図17】評価装置が交感神経の評価を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
図18】HF間の相関関係を示す図である。
図19】HF間の相関関係を示す図である。
図20】LP.S、LP.m、年齢及びHFの重回帰分析結果を示す図である。
図21】LP.S、LP.m、年齢及びHFの相関関係を示す図である。
図22】HF及びLP.Sの相関関係を示す図である。
図23】HF及びLP.Sの相関関係を示す図である。
図24】TPにおけるHFの割合と被験者の疲労度とを比較した結果を示す図である。
図25】被験者の測定結果を出力する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る評価装置10のハードウェア構成例を示す図である。評価装置10(自律神経評価装置)は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサ11、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置12、入力装置13、出力装置14及び生体情報取得装置15を有する。評価装置10は、専用のハードウェアであってもよいし、パーソナルコンピューター等の汎用のハードウェアであってもよい。
【0011】
入力装置13は、被験者に関するデータを入力するための装置であり、例えば、キーボード、操作ボタン又はタッチパネル上の入力インタフェースなどにより構成される。本実施形態においては、被験者に関するデータとして、少なくとも被験者の年齢が入力装置13に入力される。また、被験者の年齢に加えて、被験者の氏名、住所、性別などが入力されてもよい。
【0012】
出力装置14は、情報の出力を行うための装置であり、例えば、ディスプレイ、LED、タッチパネル、プリンタ及び/又はスピーカ等である。
【0013】
生体情報取得装置15は、被験者の生体情報データを収集するための装置である。被験者の生体情報データは、心拍データ又は脈拍データのいずれかである。生体情報取得装置15は、心電計又は脈拍計であってもよい。また、評価装置10は、入力装置13を介して、外部の心電計や脈拍計で測定された心拍データまたは脈拍データの入力を受け付けるようにしてもよい。この場合、評価装置10は、生体情報取得装置15を備えていなくてもよい。なお、以下の説明では、生体情報データは心拍データであるものとして説明する。
【0014】
交感神経の働きを示す指標であるLF(Low Frequency)値及び副交感神経の働きを示す指標であるHF(High Frequency)値は、生体情報データを周波数解析することで得ることができる。周波数解析(時間周波数解析)の手法は公知の解析手法を利用可能であり、例えば、最大エントロピー法(MEM(Maximum Entropy Model)法)、高速フーリエ変換法(FFT(Fast Fourier Transform)法)、ウェーブレット法等が挙げられる。これらの中でも、最大エントロピー法を用いるのが好ましい。最大エントロピー法によれば、時間分解能の高い解析を行うことができる。例えば、心拍データのR-R間隔を、最大エントロピー法を用いて周波数領域の低周波数成分(LF:0.04-0.15Hz)と高周波数成分(HF:0.15-0.40Hz)に分離し、低周波数成分及び高周波数成分のパワーの総和をそれぞれLF値及びHF値として算出することができる。
【0015】
具体的には、LF値とHF値は、例えば、以下の数式1、数式2及び数式3により算出することができる。
【数1】
【数2】
【数3】
ここで、LF(t)はLF値、HF(t)はHF値、P(f)はパワースペクトル関数、C(t)は心拍(心電図)のR-R間隔の自己相関関数、tは時間、fは周波数を示す。数式3に示すとおり、数式上P(f)は全時間領域で積分するものとしているが、実際は、観測領域で積分すれば足りる。
【0016】
LF値とHF値の総和(LF+HF)は、自律神経全体の働きを示す指標であり、TP(Total Power、トータルパワー)と呼ばれる。TPは、「自律神経活動量」や「自律神経総活動量」などとも呼ばれる。
【0017】
ccvTP(Coefficient of Component Variance TP)は、TPを、LF値及びHF値の測定に用いた時間内の心拍数(より具体的にはR-R間隔の平均)で補正することで算出される値である。ccvTPは、TPと同様、「自律神経活動量」や「自律神経総活動量」とも呼ばれる。ccvTPは、具体的には、ccvTPは、以下の数式4により算出することができる。
【数4】
ここで、RRは、被験者における心拍のR-R間隔(秒)を示す。なお、R-R間隔(秒)は、心電図におけるQRS波から次のQRS波までの間隔を意味する。R-R間隔は、60÷心拍数(回/分)でも算出可能である。
【0018】
心拍数が高い場合はTPが低い値となることが実験により知られていることから、心拍数の高さに応じて補正されたccvTPを用いることで、被験者の心拍数の高低にかかわらず、自律神経活動量を適切に表現することができる。なお、{LF+HF}値は、年齢とともに数値が減少することが本発明者らによって明らかにされており、ccvTPについても同様である。
【0019】
後述するように、評価装置10は、HF値を、HF値の測定に用いた時間内の心拍数(より具体的にはR-R間隔の平均)で補正することで、ccvHFを算出する。HF値及びccvHFは、副交感神経に関する指標、副交感神経の働きを示す指標、副交感神経活動量、副交感神経活動指標及び癒し度などと呼ばれてもよい。また、HF値及びccvHFは、それぞれ、副交感神経に関する第1指標及び副交感神経に関する第2指標などと呼ばれてもよい。また、評価装置10は、LF値を、LF値の測定に用いた時間内の心拍数(より具体的にはR-R間隔の平均)で補正することで、ccvLFを算出する。LF値及びccvLFは、交感神経に関する指標、交感神経の働きを示す指標、交感神経活動指標及び交換神経活動量などと呼ばれてもよい。また、LF値及びccvLFは、それぞれ、交感神経に関する第1指標及び交感神経に関する第2指標などと呼ばれてもよい。
【0020】
図2は、ccvTPと年齢との関係を示す図である。曲線G1は、同年齢の被験者において、ccvTPが高い上位25%の被験者が属する境界線を示している。曲線G2は、同年齢の被験者におけるccvTPの中央値を示している。曲線G3は、同年齢の被験者において、ccvTPが低い下位75%の被験者が属する境界線を示している。図2によれば、年齢とともにccvTPが減少することが分かる。
【0021】
(自律神経機能の迅速評価)
現在、被験者の自律神経機能を評価する場合、信頼性のある評価結果を得るために、被験者を連続して120秒間計測することで得られた心拍データを、最大エントロピー法を用いて周波数解析することが一般的である。
【0022】
また、被験者を連続して60秒間計測することで得られた心拍データを用いてTPを分析した場合、120秒間の心拍データから得られたTPとの相関係数が0.7程度であることが知られている。そこで、同一の被験者が繰り返し計測をする場合、2回目以降の計測については60秒間の心拍データを利用してTPを分析することで、被験者の自律神経の状態を把握することも行われている。
【0023】
最大エントロピー法では、LFを算出するために、少なくとも25秒間測定した心拍データが必要になる。これは、LF値は0.04~0.15Hzの低周波数成分であることから、最低25秒間計測しないと、1波長のデータを得ることができないためである。また、1波長のデータのみでは測定精度が不足することから、上述した通り、少なくとも120秒の計測をすることが好適であるとされている。
【0024】
ここで、病院及び検査センター等で自律神経機能の評価を行う場合、被験者を120秒間計測しても特に問題にはならない。しかしながら、自律神経機能の評価は、病院や検査センターのみならず、タクシードライバーやトラックドライバー等に対する日々の就業前検査など、様々な場所で利用されている。このように、120秒間又は60秒間もの間、じっとしたまま心拍データの測定を行うことを日々繰り返すことは、被験者にとってストレスになることから、より短時間で計測可能な方法が望まれている。
【0025】
発明者らは、自律神経機能をより短時間で計測可能な方法を検討したところ、最大エントロピー法に代えて、ローレンツプロット法を利用することで、7秒程度の心拍データがあればTPを高精度に算出可能であることに想到した。そこで、本実施形態に係る評価装置10は、最大エントロピー法に代えて、ローレンツプロット法を利用してTPを算出することで、従来よりも短時間で、被験者の自律神経機能を評価することを可能にする。
【0026】
(副交感神経及び交感神経の評価)
自律神経全体の働きを示す指標であるTPは、年齢により変化する。従って、様々な年齢の被験者を同一に評価するためには、被験者の年齢の影響を受けない共通の指標が必要である。そこで、発明者らは、自律神経全体の働きに関する共通の指標として、TPの偏差値を用いるようにした。ここで、自律神経活動は、上述した通り、主に交感神経の働きを表すLF(0.04-0.15Hzの成分)と、主に副交感神経の働きを表すHF(0.15-0.40Hzの成分)の二つの成分から評価される。しかしながら、個々の成分が年齢によりどのように変化しているのかについてはこれまで明らかでなく、HFを偏差値化して被験者を評価した報告はみられない。
【0027】
図3は、発明者らが、18歳から73歳までの264名について、年齢とLF値との関係及び年齢とHF値との関係を調査した結果を示す図である。図3に示すように、logLFは年齢と有意な負の相関(r=-0.524, p<0.001)が見られ、logHFは年齢と有意な負の相関(r=-0.423, p<0.001)が見られる。つまり、被験者の年齢が異なる状況では、LF値及びHF値をそのまま用いた健康評価はできないことが確認されている。
【0028】
そこで、本実施形態では、年齢によるHF及びLFの変化を明らかにすることにより、HF及びLFを偏差値化し、年齢要素を排除した客観的健康指標であるHFの偏差値及びLFの偏差値を用いることで、被験者間で共通に副交感神経の働き又は交感神経の働きを評価することを可能にする。
【0029】
ここで、最大エントロピー法を用いてHF値を算出する際、HF値は0.15~0.40Hzの高周波数成分であることから、約6.6秒の心拍データがあれば、1波長のデータを得ることができる。すなわち、HF値は、1波長の測定に25秒必要になるLF値よりも短い測定時間で信頼性の高い測定結果を得ることができる。この点を考慮し、90秒間の心拍データから得られたHF値と、10秒程度の心拍データから得られたHF値との間の相関関係を検証したところ、発明者らは、これらのHF値には高い相関関係があることを見出した。そこで、本実施形態に係る評価装置10は、従来よりも短い測定時間でHFを算出することで、より短時間で、被験者の副交感神経の働きを評価することを可能にする。
【0030】
なお、本実施形態に係る評価装置10は、「自律神経機能の迅速評価」を実現する機能と、「副交感神経及び交感神経の評価」を実現する機能のうちいずれか一方のみを備えていてもよいし、両方を備えていてもよい。
【0031】
<機能ブロック構成>
図4は、評価装置10の機能ブロック構成例を示す図である。評価装置10は、記憶部100と、取得部101と、算出部102と、出力部103とを含む。記憶部100は、評価装置10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、取得部101と、算出部102と、出力部103とは、評価装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピューター読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0032】
記憶部100は、ccvTP(自律神経活動量)について被験者の年齢ごとの分布を示す分布データ(ccvTP)100aと、副交感神経の働きを示す指標であるccvHF値について年齢ごとの分布を示す分布データ(ccvHF)100bと、副交感神経の働きを示す指標であるccvLFについて年齢ごとの分布を示す分布データ(ccvLF)100cとを記憶する。
【0033】
分布データ(ccvTP)100aは、年齢の異なる多数の被験者からccvTPを収集して統計的に解析することにより得られる。例えば、本実施形態では、予め収集された年齢の異なる多数の被験者のccvTPから、被験者の年齢ごとのccvTPの平均値と、被験者の年齢ごとのccvTPの標準偏差(σ)を算出し、これらをデータベース化したものを分布データ(ccvTP)100aとして記憶部100に格納しておくこととしてもよい。
【0034】
分布データ(ccvHF)100bは、年齢の異なる多数の被験者からccvHFを収集して統計的に解析することにより得られる。例えば、本実施形態では、予め収集された年齢の異なる多数の被験者のccvHFから、被験者の年齢ごとのccvHFの平均値と、被験者の年齢ごとのccvHFの標準偏差(σ)を算出し、これらをデータベース化したものを分布データ(ccvHF)100bとして記憶部100に格納しておくこととしてもよい。
【0035】
分布データ(ccvLF)100cは、年齢の異なる多数の被験者からccvLFを収集して統計的に解析することにより得られる。例えば、本実施形態では、予め収集された年齢の異なる多数の被験者のccvLFから、被験者の年齢ごとのccvLFの平均値と、被験者の年齢ごとのccvLFの標準偏差(σ)を算出し、これらをデータベース化したものを分布データ(ccvLF)100cとして記憶部100に格納しておくこととしてもよい。
【0036】
取得部101は、評価対象である被験者の心拍データ及び/又は被験者の年齢を取得する。
【0037】
算出部102は、ローレンツプロット法を利用することで、被験者の心拍データから被験者のccvTP(自律神経活動量)の偏差値を算出する。より具体的には、算出部102は、ローレンツプロット法に基づいて、被験者の心拍データから被験者の自律神経全体の働きを示す指標であるTPを算出する。また、算出部102は、被験者のTPと被験者の心拍データとを用いて被験者のccvTP(自律神経活動量)を算出し、分布データ(ccvTP)100aと被験者のccvTPとを用いて、被験者のccvTPの偏差値を算出する。
【0038】
また、算出部102は、被験者の心拍データに基づいて被験者のHF値を算出する。また、算出部102は被験者のHF値と被験者の心拍データとを用いて被験者のccvHFを算出し、算出した被験者のccvHF値と被験者の年齢と分布データ(ccvHF)100bとを用いて、被験者のccvHF値の偏差値を算出する。
【0039】
また、算出部102は、被験者の心拍データを周波数解析することで被験者のHF値を算出し、算出した被験者のHF値から、被験者のccvHF及び被験者のccvHFの偏差値を算出するようにしてもよい。より具体的には、算出部102は、被験者の心拍データを周波数解析することで被験者のHF値を算出し、算出したHF値と被験者の心拍データとを用いて被験者のccvHFを算出し、算出した被験者のccvHF値と被験者の年齢と分布データ(ccvHF)100bとを用いて、被験者のccvHF値の偏差値を算出するようにしてもよい。
【0040】
また、算出部102は、ローレンツプロット法を利用することで、被験者の心拍データから被験者のHF値を算出し、算出した被験者のHF値から、被験者のccvHF及び被験者のccvHFの偏差値を算出するようにしてもよい。より具体的には、算出部102は、ローレンツプロット法を利用することで、被験者の心拍データから被験者のHF値を算出し、算出したHF値と被験者の心拍データとを用いて被験者のccvHFを算出し、算出した被験者のccvHF値と被験者の年齢と分布データ(ccvHF)100bとを用いて、被験者のccvHF値の偏差値を算出するようにしてもよい。
【0041】
また、算出部102は、被験者の心拍データに基づいて被験者のLF値を算出する。また、算出部102は、被験者の心拍データを周波数解析することで被験者のLF値を算出する。また、算出部102は被験者のLF値と被験者の心拍データとを用いて被験者のccvLFを算出し、算出した被験者のccvLF値と被験者の年齢と分布データ(ccvLF)100cとを用いて、被験者のccvLF値の偏差値を算出する。
【0042】
また、算出部102は、ローレンツプロット法を利用することで、被験者の心拍データから被験者のTP(自律神経活動量)を算出し、被験者のTPにおける被験者のHF値の割合(つまり、HF/TP)を算出するようにしてもよい。若しくは、ローレンツプロット法を利用することで、被験者の心拍データから被験者のccvTP(自律神経活動量)を算出し、被験者のccvTPにおける被験者のccvHFの割合(つまり、ccvHF/ccvTP)を算出するようにしてもよい。
【0043】
出力部103は、算出部102で算出された被験者の自律神経に関する各種データを画面又は紙等に出力する。例えば、出力部103は、被験者のTP、及び/又は、ccvTPの偏差値を出力する。また、出力部103は、被験者のccvHFの偏差値を出力する。また、出力部103は、被験者のccvHFの偏差値と、被験者のccvTP(自律神経活動量)の偏差値とを並べて出力してもよい。また、出力部103は、被験者のccvLFの偏差値を出力する。また、出力部103は、被験者のccvLFの偏差値と、被験者のccvTPの偏差値とを並べて出力してもよい。また、出力部103は、被験者のccvLFの偏差値と、被験者のccvHFの偏差値と、被験者のccvTPの偏差値とを並べて出力してもよい。また、出力部103は、算出部102で算出された、被験者のTPにおける被験者のHF値の割合を出力してもよい。若しくは、出力部103は、算出部102で算出された、被験者のccvTPにおける被験者のccvHFの割合を出力してもよい。
【0044】
<処理手順>
(自律神経機能の迅速評価)
図5は、評価装置10が自律神経機能の評価を迅速に行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0045】
ステップS11で、取得部101は、被験者の年齢及び心拍データを取得する。
【0046】
ステップS12で、算出部102は、ローレンツプロット法を用いて被験者のTPを算出する。
【0047】
図6は、ローレンツプロット法により被験者のTPを算出する方法を説明するための図である。算出部102は、以下の手順1~手順4に従い、被験者のTPを算出する。
【0048】
「手順1」:算出部102は、被験者の心拍データから、心拍データのR-R間隔(RRI(RR Interval))のうちn番目(以下、(RRIn)とする)を横軸とし、n番目と連続するn+1番目(以下、(RRIn+1)とする)を縦軸とするグラフにプロットする。すなわち、算出部102は、心拍データのR-R間隔のうち、連続する2つのR-R間隔からなる点(x、y)=(RRIn、RRIn+1)をグラフ上にプロットしていく。例えば、10秒間の心拍データにおいて、1番目のR-R間隔が1000msであり、2番目のR-R間隔が900msであり、3番目のR-R間隔が950msであり、4番目のR-R間隔が1050msである場合、算出部102は、例えば、点(1000, 900)と点(900,950)と点(950,1050)とをグラフ上にプロットする。
【0049】
「手順2」:算出部102は、グラフ上にプロットされた全ての点を、y=x軸及びy=-x軸に投影する。例えば、点(1000, 900)をy=x軸に投影すると、当該点は、座標(1000, 900)からy=x軸に垂線を下した位置(線A上のいずれかの位置)に投影される。同様に、点(1000, 900)をy=-x軸に投影すると、当該点は、座標(1000, 900)からy=-x軸に垂線を下した位置(線B上のいずれかの位置)に投影される。
【0050】
「手順3」:算出部102は、原点(0,0)からy=x軸に投影した各点までの距離の平均(LP.m)を算出する。続いて、算出部102は、原点(0,0)からy=x軸に投影した各点までの距離の標準偏差σxと、原点(0,0)からy=-x軸に投影した各点までの距離の標準偏差σ-xとを算出する。
【0051】
「手順4」:算出部102は、長軸を所定係数(D)×σxとし、短軸を所定係数(D)×σ-xとする楕円Mの面積(LP.S)を、以下の数式5を用いて算出する。楕円Mの面積(LP.S)が小さいほど、R-R間隔のゆらぎが小さいことを意味する。なお、所定係数(D)は、正の整数であれば、どのような値であってもよい。例えば2でもよいし3でもよい。図6の例では、所定係数(D)=2とした場合の楕円が図示されている。
【数5】
「手順5」:算出部102は、以下の数式6を用いて、被験者のTPを推定(算出)する。
【数6】
なお、数式6において、4つの係数(a、b、c、d)は、心拍データの測定時間ごとに、TP90を従属変数とし、LP.S、LP.m及び年齢を独立変数として重回帰分析を行うことで算出された係数であってもよい。すなわち、記憶部100に、心拍データの測定時間ごとに4つの係数(a、b、c、d)のセットを予め記憶しておき、算出部102は、心拍データの測定時間に対応する係数のセットを記憶部100から取得し、取得した係数を数式6に適用することで、被験者のTPを算出(推定)するようにしてもよい。例えば、心拍データの測定時間が連続10秒である場合、算出部102は、係数としてa=0.02968、b=0.69965、c=-12.966及びd=110.826を利用するようにしてもよい。なお、当該4つの係数は、心拍データの測定時間に関わらず固定値であってもよい。この場合、4つの係数は、a=0.02968、b=0.69965、c=-12.966及びd=110.826であってもよい。
【0052】
以上説明した手順1~手順5について、算出部102は、図6の楕円Mの外部にあるデータはノイズであるとみなし、ノイズである点を除去した後、再度、楕円Mの面積(LP.S)を算出するようにしてもよい。具体的には、算出部102は、手順1~手順4を実行することで楕円Mの面積(LP.S)を算出し、グラフにプロットされた点のうち、楕円Mの外側に存在する点を除去し、再度、手順1~手順4を実行することで、ノイズ除去後の楕円Mの面積(LP.S)を算出するようにしてもよい。また、算出部102は、ノイズ除去後の楕円Mの面積(LP.S)を用いて、手順5により被験者のトータルパワーを算出するようにしてもよい。言い換えると、算出部102は、以下の処理を行うようにしてもよい。
1.心拍データのR-R間隔のうち連続する2つのR-R間隔をそれぞれx及びyとする点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットする。
2.グラフにプロットした点をx=y軸に投射した投影点と原点(0,0)との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第1標準偏差を長軸とし、グラフにプロットした点をx=-y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第2標準偏差を短軸とする第1楕円を算出する。
3.グラフにプロットした点のうち楕円Mの内部に存在する点について、グラフにプロットした点をx=y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第3標準偏差を長軸とし、グラフにプロットした点をx=-y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第4標準偏差を短軸とする第2楕円を算出する。
4.第2楕円の面積を所定計算式(数式6)に代入することで、被験者のTPを推定(算出)する。
【0053】
図5に戻り、ステップS13で、算出部102は、ステップS12で算出した被験者のTPと被験者の心拍データとを用いて、被験者のccvTPを算出する。また、算出部102は、被験者のccvTPと分布データ(ccvTP)100aとを用いて、被験者のccvTPの偏差値を算出する。例えば、算出部102は、被験者のccvTPの偏差値を以下の手順で算出することができる。
1.数式4に従い、ステップS12で算出されたTPを被験者の心拍数で補正することで被験者のccvTPを算出する。
2.分布データ(ccvTP)100aから、被験者の年齢に対応するccvTPの平均値と標準偏差(σ)を取得する。
3.「ccvTPの偏差値=10×(被験者のccvTP-被験者の年齢に対応するccvTPの平均値)÷被験者の年齢に対応するccvTPの標準偏差(σ)+50」の式を用いて、被験者のccvTPの偏差値を算出する。
【0054】
(自律神経機能の迅速評価の変形例1)
以上説明した、自律神経機能の評価方法について、対数変換したLP.S(以下、「logLP.S」と言う)及びLP.m(以下、「logLP.m」と言う)を使用することで、対数変換したTP(以下、「logTP」と言う)の推定を行うようにしてもよい。
【0055】
具体的には、以上説明した処理手順の「手順5」において、数式6に代えて以下の数式7を利用することで、logTPを推定するようにしてもよい。なお、対数は常用対数であってもよい。
【数7】
数式7において、4つの係数(e、f、g、h)は、心拍データの測定時間ごとに、logTP90を従属変数とし、logLP.S、logLP.m及び年齢を独立変数として重回帰分析を行うことで算出された係数であってもよい。すなわち、記憶部100に、心拍データの測定時間ごとに4つの係数(e、f、g、h)のセットを予め記憶しておき、算出部102は、心拍データの測定時間に対応する係数のセットを記憶部100から取得し、取得した係数を数式7に適用することで、被験者のlogTPを算出(推定)するようにしてもよい。例えば、心拍データの測定時間が連続10秒である場合、算出部102は、係数としてe=0.51333、f=1.42446、g=-0.0081及びh=-3.3016を利用するようにしてもよい。なお、当該4つの係数は、心拍データの測定時間に関わらず固定値であってもよい。この場合、4つの係数は、e=0.51333、f=1.42446、g=-0.0081及びh=-3.3016であってもよい。
【0056】
また、算出部102は、推定したlogTPから推定TP(つまり対数変換前のTP)を算出し、算出した推定TPを用いてステップS13の処理手順を実行するようにしてもよい。
【0057】
なお、「(自律神経機能の迅速評価)」で説明したノイズ除去の処理についても、当該変形例1に適用してもよい。すなわち、算出部102は、以下の処理を行うようにしてもよい。
1.心拍データの間隔のうち連続する2つの間隔をそれぞれx及びyとする点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットする。
2.グラフにプロットした点をx=y軸に投射した投影点と原点(0,0)との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第1標準偏差を長軸とし、グラフにプロットした点をx=-y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第2標準偏差を短軸とする第1楕円を算出する。
3.グラフにプロットした点のうち楕円Mの内部に存在する点について、グラフにプロットした点をx=y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第3標準偏差を長軸とし、グラフにプロットした点をx=-y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第4標準偏差を短軸とする第2楕円を算出する。
4.第2楕円の面積を所定計算式(数式7)に代入することで、被験者のlogTFを推定(算出)する。
【0058】
(自律神経機能の迅速評価の変形例2)
以上説明した「手順1」において、算出部102は、心拍データのR-R間隔のうち、連続する2つのR-R間隔からなる点(x、y)=(RRIn、RRIn+1)をグラフ上にプロットしていくようにしたが、連続しない2つのR-R間隔からなる点をグラフ上にプロットするようにしてもよい。つまり、算出部102は、心拍データのR-R間隔のうち連続しない2つのR-R間隔をそれぞれx及びyとする複数の点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットするようにしてもよい。
【0059】
具体的には、「手順1」において、算出部102は、被験者の心拍データから、心拍データのR-R間隔のうちn番目を横軸とし、n+α番目(以下、(RRIn+α)とし、αは2以上の整数)を縦軸とするグラフにプロットするようにしてもよい。すなわち、算出部102は、心拍データのR-R間隔のうち、連続しない2つのR-R間隔からなる点(x、y)=(RRIn、RRIn+α)をグラフ上にプロットしていくようにしてもよい。αの値は、2以上の整数であればよく、例えば、α=4であってもよいし、5であってもよいし、6以上であってもよい。
【0060】
ここで、n番目のR-R間隔を、RRI(n)と表現する。α=2とした場合、算出部102は、例えば、点(RRI(1), RRI(3))、点(RRI(2), RRI(4))及び点(RRI(3), RRI(5))をグラフ上にプロットするようにしてもよい。また、α=3とした場合、算出部102は、例えば、点(RRI(1), RRI(4))、点(RRI(2), RRI(5))及び点(RRI(3), RRI(6))をグラフ上にプロットするようにしてもよい。
【0061】
また、αの値は、1以上の任意の値で変化するようにしてもよい。任意の値は、例えば、正しく計測できていない期間の心拍データをスキップするように決定された値であってもよい。つまり、算出部102は、連続しない2つのR-R間隔をそれぞれx及びyとする複数の点であって、当該連続しない2つのR-R間隔の間に存在するR-R間隔の数が異なる複数の点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットするようにしてもよい。なお、αの値は、ランダムに変化するようにしてもよい。
【0062】
ここで、αの値を任意に変化させる場合、算出部102は、例えば、点(RRI(1), RRI(2))、点(RRI(2), RRI(4))、点(RRI(3), RRI(6))、点(RRI(4), RRI(5))、点(RRI(5), RRI(7))及び点(RRI(6), RRI(7))などをグラフ上にプロットするようにしてもよい。
【0063】
なお、nの値は、必ずしも1ずつ増加させる必要はなく、1以上の任意の値ずつ増加させるようにしてもよい。任意の値は、例えば、正しく計測できていない期間の心拍データをスキップするように決定された値であってもよい。また、nの値は、ランダムな値で増加してもよい。例えば、算出部102は、点(RRI(1), RRI(2))、点(RRI(2), RRI(4))、点(RRI(4), RRI(8))、点(RRI(5), RRI(6))、点(RRI(8), RRI(9))及び点(RRI(10), RRI(13))などをグラフ上にプロットするようにしてもよい。
【0064】
なお、「自律神経機能の迅速評価の変形例1」で説明した、対数変換したLP.Sを利用して対数変換したTPの推定を行う方法を、当該変形例2に適用するようにしてもよい。また、「(自律神経機能の迅速評価)」で説明したノイズ除去の処理を、当該変形例2に適用してもよい。この場合、ノイズ除去の処理のうち「1.心拍データの間隔のうち連続する2つの間隔をそれぞれx及びyとする点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットする。」の処理を、「1.心拍データの間隔のうち連続しない2つの間隔をそれぞれx及びyとする点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットする。」に置き換えることが可能である。
【0065】
従来のように、病院及び検査センター等で心拍データを取得する場合、比較的安定したデータを取得可能である。一方、タクシードライバーやトラックドライバー等に対する日々の就業前検査など、病院及び検査センター等以外で心拍データを取得する場合、必ずしも安定したデータが取得できるとは限られず、ノイズが多く混じった心拍データを用いらざるを得ない状況が想定される。例えば、心拍データにノイズが混ざっていることで、ノイズに該当する部分の心拍データを利用することができないこと等が想定される。本変形例2によれば、連続した心拍データを利用することが困難な状況であっても、自律神経機能を評価することが可能になる。また、これにより、今後予想される種々の環境(運動中、作業中、勉強中など)において、より簡便な心拍間隔の計測器を用いた自律神経機能の測定を実現することが可能になる。
【0066】
(TPに関する実験結果その1)
「TPに関する実験結果その1」及び後述する「TPに関する実験結果その2」の説明において、「TPxx」は、xx秒連続で測定された心拍データを用いて、最大エントロピー法により算出されたTPを意味する。例えば「TP90」は、90秒連続で測定された心拍データを用いて、最大エントロピー法により算出されたTPを意味する。また、「LP.Sxx」は、xx秒連続で測定された心拍データを用いて、上述したローレンツプロット法を用いて算出されたLP.S(楕円の面積)を意味する。例えば「LP.S10」は、10秒連続で測定された心拍データを用いて、ローレンツプロット法を用いて算出されたLP.Sを意味する。また、「LP.mxx」は、xx秒連続で測定された心拍データを用いて、上述したローレンツプロット法を用いて算出されたLP.m(原点からの距離の平均)を意味する。例えば「LP.m10」は、10秒連続で測定された心拍データを用いて、ローレンツプロット法を用いて算出されたLP.mを意味する。
【0067】
図7は、LP.S、LP.m、年齢及びTPの重回帰分析結果を示す図である。より具体的には、図7は、被験者500名を対象に、TP90を従属変数とし、LP.S、LP.m及び年齢を独立変数として重回帰分析を行った結果を示している。図7の秒数は、重回帰分析に用いた心拍データの測定時間を示す。例えば、心拍データの測定時間が15秒の欄における重相関係数は0.81955であり、自由度調整済み決定係数は0.66967である。これは、TP90とLP.S15とLP.m15と被験者の年齢とについて、被験者500名を15秒間測定することで得られた心拍データを重回帰分析した結果、重相関係数は0.81955であり、自由度調整済み決定係数は0.66967であったことを示している。
【0068】
図7によれば、測定時間が3秒から11秒である心拍データから得られた重相関係数は0.49以上であり、更に、測定時間が12秒以上である場合、重相関係数は0.8以上であることが分かる。また、自由度調整済み決定係数は、測定時間が8秒以上であれば0.5を上回っている。従って、測定時間が8秒以上である場合、数式6は、TPの推定モデルとして使用可能な水準であると言える。また、測定時間が4秒以上であれば、重相関係数は0.6を上回っていることから、測定時間が4秒以上かつ8秒未満である心拍データであっても、自律神経の簡易計測として利用することは可能であると言える。
【0069】
図8は、LP.S、LP.m、年齢及びTPの相関関係を示す図である。また、図9及び図10は、TP及びLP.Sの相関関係を示す図である。図8図10は、被験者500名を対象に測定を行った結果を示している。図8図10において、上段の数値は相関係数(r値)であり、下段の数値は有意確率(p値)である。図8によれば、LP.S10及びLP.m10は、TP90と有意な相関があることが分かる。また、被験者の年齢とTP90も負の相関があることが分かる。
【0070】
また、図9及び図10によれば、LP.S4~LP.S13は、TP90との相関係数が0.49以上であり、更に、LP.S14~LP.S90は、TP90との相関係数が0.8以上であることが分かる。つまり、4秒間以上の心拍データを利用してローレンツプロット法により算出した楕円の面積は、最大エントロピー法により算出したTP90と相関関係にあることが分かる。この結果からも、ローレンツプロット法を利用して数式6によりTPを推定することで、心拍データの測定時間が短くても、被験者のTPを推定することが可能であることが分かる。
【0071】
(TPに関する実験結果その2)
図11は、LP.S、LP.m、年齢及びTPの重回帰分析結果を示す図である。より具体的には、図11は、被験者500名を対象に、TP90を従属変数とし、LP.S、LP.m及び年齢を独立変数として重回帰分析を行った結果を示している。なお、図11おいて、LP.S、LP.m及びTPについては対数変換した値を用いた。
【0072】
図11の秒数は、重回帰分析に用いた心拍データの測定時間を示す。例えば、心拍データの測定時間が15秒の欄における重相関係数は0.83456であり、自由度調整済み決定係数は0.69466である。これは、TP90とLP.S15とLP.m15と被験者の年齢とについて、被験者500名を15秒間測定することで得られた心拍データを重回帰分析した結果、重相関係数は0.83456であり、自由度調整済み決定係数は0.69466であったことを示している。
【0073】
図11によれば、測定時間が3秒から8秒である心拍データから得られた重相関係数は0.67以上であり、更に、測定時間が9秒以上である場合、重相関係数は0.8以上であることが分かる。また、自由度調整済み決定係数は、測定時間が4秒以上であれば0.5を上回っている。従って、測定時間が4秒以上である場合、数式7は、TPの推定モデルとして使用可能な水準であると言える。また、測定時間が3秒以上であれば、重相関係数は0.6を上回っていることから、測定時間が3秒以上かつ4秒未満である心拍データであっても、自律神経の簡易計測として利用することは可能であると言える。
【0074】
図12は、LP.S、LP.m、年齢及びTPの相関関係を示す図である。また、図13及び図14は、TP及びLP.Sの相関関係を示す図である。図12図14は、被験者500名を対象に測定を行った結果を示している。図12図14において、上段の数値は相関係数(r値)であり、下段の数値は有意確率(p値)である。なお、図12図14において、LP.S、LP.m及びTPについては対数変換した値を用いた。
【0075】
図12によれば、LP.S10及びLP.m10は、TP90と有意な相関があることが分かる。また、被験者の年齢とTP90も負の相関があることが分かる。
【0076】
また、図13及び図14によれば、LP.S3~LP.S12は、TP90との相関係数が0.49以上であり、更に、LP.S13~LP.S90は、TP90との相関係数が0.8以上であることが分かる。つまり、3秒間以上の心拍データを利用してローレンツプロット法により算出した楕円の面積は、最大エントロピー法により算出したTP90と相関関係にあることが分かる。この結果からも、ローレンツプロット法を利用して数式7によりTPを推定することで、心拍データの測定時間が短くても、被験者のTPを推定することが可能であることが分かる。
【0077】
以上説明した実験結果その1及びその2に基づいて、取得部101は、被験者の心拍データを、3秒以上かつ60秒未満で被験者を計測することで取得するようにしてもよい。また、算出部102は、3秒以上かつ60秒未満で被験者を計測することで取得された心拍データを用いて、ローレンツプロット法により被験者のTPを算出(推定)するようにしてもよい。これにより、従来よりも短時間で、被験者の自律神経機能を評価することが可能になる。
【0078】
また、取得部101は、被験者の心拍データを、3秒以上かつ25秒未満で被験者を計測することで取得するようにしてもよい。また、算出部102は、3秒以上かつ25秒未満で被験者を計測することで取得された心拍データを用いて、ローレンツプロット法により被験者のTPを算出(推定)するようにしてもよい。前述したように、最大エントロピー法を利用する場合、LPを算出するためには最低でも25秒間の計測が必要になる。したがって、25秒未満で被験者を測定することで、従来では不可能であった短い時間で、被験者の自律神経機能を評価することが可能になる。
【0079】
なお、上記に限定されず、取得部101は、N秒以上かつM秒未満で被験者を計測することで、被験者の心拍データを取得するようにしてもよい。また、算出部102は、N秒以上かつM秒未満で被験者を計測することで取得された心拍データを用いて、ローレンツプロット法により被験者のTPを算出(推定)するようにしてもよい。N及びMには、4秒~60秒の範囲で任意の時間を設定してもよい。例えば、N及びMは、それぞれ、3秒及び15秒であってもよいし、それぞれ、8秒及び60秒であってもよい。また、N及びMは、それぞれ、8秒及び15秒であってもよい。また、N及びMは、それぞれ、4秒及び15秒であってもよいし、4秒及び60秒であってもよいし、4秒及び25秒であってもよい。
【0080】
(楕円面積に関する実験結果)
図15は、LP.Sの相関関係を示す図である。LP.S(n、n+1)は、連続する2つのR-R間隔からなる点をプロットした場合の楕円面積LP.Sを示す。LP.S(n、n+2)は、連続しない2つのR-R間隔(α=2の場合)からなる点をプロットした場合の楕円面積LP.Sを示す。LP.S(n、n+3)は、連続しない2つのR-R間隔(α=3の場合)からなる点をプロットした場合の楕円面積LP.Sを示す。LP.S(n、ランダム)は、連続しない2つのR-R間隔(α=ランダムの場合)からなる点をプロットした場合の楕円面積LP.Sを示す。
【0081】
図15のAに示すように、楕円面積LP.S(n、n+1)と楕円面積LP.S(n、n+2)の間には、有意な相関があることが分かる。また、図15のBに示すように、楕円面積LP.S(n、n+1)と楕円面積LP.S(n、n+3)の間には、有意な相関があることが分かる。また、図15のCに示すように、楕円面積LP.S(n、n+1)と楕円面積LP.S(n、ランダム)の間には、有意な相関があることが分かる。
【0082】
(副交感神経の評価)
図16は、評価装置10が副交感神経の評価を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0083】
ステップS21で、取得部101は、被験者の年齢及び心拍データを取得する。
【0084】
ステップS22で、算出部102は、最大エントロピー法を用いて被験者のHFを算出する。
【0085】
ステップS23で、算出部102は、ステップS22で算出した被験者のHFと被験者の心拍データとを用いて、被験者のccvHFを算出する。また、算出部102は、被験者のccvHFと分布データ(ccvHF)100bとを用いて、被験者のccvHFの偏差値を算出する。例えば、算出部102は、被験者のccvHFの偏差値を以下の手順で算出することができる。
1.数式8に従い、ステップS22で算出されたHFを被験者の心拍数(より具体的にはR-R間隔の平均)で補正することで被験者のccvHFを算出する。
【数8】
2.分布データ(ccvHF)100bから、被験者の年齢に対応するccvHFの平均値と標準偏差(σ)を取得する。
3.「ccvHFの偏差値=10×(被験者のccvHF-被験者の年齢に対応するccvHFの平均値)÷被験者の年齢に対応するccvHFの標準偏差(σ)+50」の式を用いて、被験者のccvHFの偏差値を算出する。
【0086】
ステップS24で、算出部102は、ローレンツプロット法に基づいて算出した被験者のTPに対する、ステップS22の処理手順で算出した被験者のHFの割合(つまり、HF/TP)を算出する。なお、算出部102は、ローレンツプロット法に基づいて算出した被験者のccvTPに対する、ステップS23の処理手順で算出した被験者のccvHFの割合(つまり、ccvHF/ccvTP)を算出するようにしてもよい。また、ステップS24の処理手順は省略されてもよい。
【0087】
(副交感神経の評価の変形例1)
以上説明した、副交感神経の評価方法のステップS22の処理手順において、算出部102は、ローレンツプロット法に基づいて、被験者のHFを算出するようにしてもよい。
【0088】
具体的には、「(自律神経機能の迅速評価)」で説明した被験者のTPを算出する処理手順の「手順5」において、数式6に代えて数式9を利用することで、logHFを推定するようにしてもよい。なお、対数は常用対数であってもよい。
【数9】
数式9において、4つの係数(i、j、k、l)は、心拍データの測定時間ごとに、logHF90を従属変数とし、logLP.S、logLP.m及び年齢を独立変数として重回帰分析を行うことで算出された係数であってもよい。すなわち、記憶部100に、心拍データの測定時間ごとに4つの係数(i、j、k、l)のセットを予め記憶しておき、算出部102は、心拍データの測定時間に対応する係数のセットを記憶部100から取得し、取得した係数を数式9に適用することで、被験者のlogHFを算出(推定)するようにしてもよい。例えば、心拍データの測定時間が連続10秒である場合、算出部102は、係数としてi=0.65660、j=1.81074、k=-0.0072及びl=-5.5880を利用するようにしてもよい。なお、当該4つの係数は、心拍データの測定時間に関わらず固定値であってもよい。この場合、4つの係数は、i=0.65660、j=1.81074、k=-0.0072及びl=-5.5880であってもよい。 また、算出部102は、推定したlogHFから推定HF(つまり対数変換前のHF)を算出し、算出した推定HFを用いてステップS23の処理手順を実行するようにしてもよい。
【0089】
また、「(自律神経機能の迅速評価)」で説明したノイズ除去の処理についても、ローレンツプロット法に基づいて、被験者のHFを推定する方法に適用してもよい。すなわち、算出部102は、以下の処理を行うようにしてもよい。
1.心拍データの間隔のうち連続する2つの間隔をそれぞれx及びyとする点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットする。
2.グラフにプロットした点をx=y軸に投射した投影点と原点(0,0)との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第1標準偏差を長軸とし、グラフにプロットした点をx=-y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第2標準偏差を短軸とする第1楕円を算出する。
3.グラフにプロットした点のうち楕円Mの内部に存在する点について、グラフにプロットした点をx=y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第3標準偏差を長軸とし、グラフにプロットした点をx=-y軸に投射した投影点と原点との間の距離の標準偏差に所定係数(D)を乗算した第4標準偏差を短軸とする第2楕円を算出する。
4.第2楕円の面積を所定計算式(数式9)に代入することで、被験者のlogHFを推定(算出)する。
【0090】
また、算出部102は、ローレンツプロット法に基づいて被験者のHFを算出する際、「自律神経機能の迅速評価の変形例2」で説明したように、心拍データのR-R間隔のうち、連続しない2つのR-R間隔からなる点(x、y)=(RRIn、RRIn+α)をグラフ上にプロットすることで、LP.S及びLP.mを算出するようにしてもよい。特に言及しない点は、「自律神経機能の迅速評価の変形例2」の説明と同一でよい。
【0091】
(副交感神経の評価の変形例2)
上述したステップS23の処理手順において、ccvHFは、数式8を用いて算出されることとしたが、これに限定されない。本実施形態では、ccvHFは、以下の数式10~13のいずれかを用いて算出されることとしてもよい。なお、「平均HF」は、所定数の被験者を測定することで得られた複数のHFの平均値である。また、「HFの標準偏差」は、所定数の被験者を測定することで得られた複数のHFの標準偏差(σ)である。また、「HFmax」及び「HFmin」は、それぞれ、所定数の被験者を測定することで得られた複数のHFの最大値及び最小値を意味する。
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【0092】
(副交感神経の評価の変形例3)
ステップS23で、算出部102は、1~3の手順を用いて被験者のccvHFの偏差値を算出したが、これに代えて、以下の手順を用いて被験者のHF偏差値を算出するようにしてもよい。
【0093】
1.以下の数式14を用いて、ローレンツプロット(LP)指標を算出する。LP指標は、ローレンツプロット法に関する第1指標と呼ばれてもよい。なお、算出部102は、LP.S及びLP.mを算出する際、「自律神経機能の迅速評価の変形例2」で説明したように、心拍データのR-R間隔のうち、連続しない2つのR-R間隔からなる点(x、y)=(RRIn、RRIn+α)をグラフ上にプロットすることで、LP.S及びLP.mを算出するようにしてもよい。特に言及しない点は、「自律神経機能の迅速評価の変形例2」の説明と同一でよい。若しくは、算出部102は、連続する2つのR-R間隔からなる点(x、y)=(RRIn、RRIn+1)をグラフ上にプロットすることで、LP.S及びLP.mを算出するようにしてもよい。
【数14】
すなわち、算出部102は、被験者の心拍データのR-R間隔のうち2つのR-R間隔をそれぞれx及びyとする複数の点を、一方の軸がx軸であり他方の軸がy軸であるグラフにプロットすることで、ローレンツプロット法における楕円面積(LP.S)及び平均距離(LP.m)とを算出してもよい。また、算出部102は、算出した楕円面積(LP.S)及び平均距離(LP.m)に基づいて、被験者のLP指標を算出するようにしてもよい。
【0094】
なお、LP.S=S、LP.m=Mとした場合、数式14におけるS/Mの部分は、対数化又は正規化した値に置き換えてもよい。具体的には、「S/M」の値を以下に示すいずれかの値に置き換えてもよい。S/logM、S/rootM、logS/M、logS/logM、logS/rootM、rootS/M、rootS/logM、rootS/rootM、log(S/M)、log(S/logM)、log(S/rootM)、log(logS/M)、log(logS/logM)、log(logS/rootM)、log(rootS/M)、log(rootS/logM)、log(rootS/rootM)、root(S/M)、root(S/logM)、root(S/rootM)、root(logS/M)、root(logS/logM)、root(logS/rootM)、root(rootS/M)、root(rootS/logM)、root(rootS/rootM)。
【0095】
2.「LP指標の偏差値=10×(被験者のLP指標-被験者の年齢に対応するLP指標の平均値)÷被験者の年齢に対応するLP指標の標準偏差(σ)+50」の式を用いて、被験者のLP指標の偏差値を算出する。
【0096】
LP指標の偏差値を算出可能にするため、記憶部100は、LP指標について被験者の年齢ごとの分布を示す分布データを記憶してもよい。また、算出部102は、当該分布データと、被験者の年齢と、被験者のLP指標とに基づいて、被験者のLP指標の偏差値を算出するようにしてもよい。
【0097】
3.以下の数式15を用いて、HF偏差値を算出する。
【数15】
すなわち、算出部102は、被験者のLP指標の偏差値を所定計算式(数式15)に代入することで、被験者のHF値の偏差値を算出するようにしてもよい。
【0098】
数式15において、2つの係数(m、n)は、心拍データの測定時間ごとに、周波数解析により算出したHF偏差値を従属変数とし、LP指標の偏差値を独立変数として回帰分析を行うことで算出された係数であってもよい。すなわち、記憶部100に、心拍データの測定時間ごとに2つの係数(m、n)のセットを予め記憶しておき、算出部102は、心拍データの測定時間に対応する係数のセットを記憶部100から取得し、取得した係数を数式15に適用することで、被験者のHF偏差値を算出(推定)するようにしてもよい。
【0099】
なお、数式15において、2つの係数(m、n)は、それぞれ、LP.Sを算出する際に用いる長軸の係数oと短軸の係数pから算出される係数とすることもできる。例えば、図6に示す長軸と短軸を用いて、係数o=2σx、p=2σ-xとしてもよい。
【0100】
副交感神経の評価の変形例3によれば、ローレンツプロット法で算出される実測値である面積と距離の値そのものを用いて、LP指標を算出し、当該LP指標の偏差値からHF偏差値を算出するようにした。これにより、一旦HF値を推定してからHF値を偏差値化する場合と比較して、測定値の誤差を少なくすることが可能になる。
【0101】
(LP指標を用いた自律神経機能の評価)
「副交感神経の評価の変形例3」では、LP指標からHF偏差値を算出するようにしたが、LP指標からTP偏差値を算出することも可能である。具体的には、算出部102は、「副交感神経の評価の変形例3」で算出した被験者のLP指標の偏差値を、数式15に代えて以下の数式16に代入することで、被験者のTP値の偏差値を算出するようにしてもよい。すなわち、算出部102は、被験者のLP指標の偏差値を所定計算式(数式16)に代入することで、被験者のTP値の偏差値を算出するようにしてもよい。
【数16】
数式16において、2つの係数(q、r)は、心拍データの測定時間ごとに、周波数解析により算出したTP偏差値を従属変数とし、LP指標の偏差値を独立変数として回帰分析を行うことで算出された係数であってもよい。すなわち、記憶部100に、心拍データの測定時間ごとに2つの係数(q、r)のセットを予め記憶しておき、算出部102は、心拍データの測定時間に対応する係数のセットを記憶部100から取得し、取得した係数を数式16に適用することで、被験者のTP偏差値を算出(推定)するようにしてもよい。
【0102】
なお、数式16において、2つの係数(q、r)は、それぞれ、LP.Sを算出する際に用いる長軸の係数oと短軸の係数pから算出される係数とすることもできる。例えば、図6に示す長軸と短軸を用いて、係数q=3σx、r=3σ-xとしてもよい。
【0103】
LP指標を用いた自律神経機能の評価によれば、ローレンツプロット法で算出される実測値である面積と距離の値そのものを用いて、LP指標を算出し、当該LP指標の偏差値からTP偏差値を算出するようにした。これにより、一旦TP値を推定してからTP値を偏差値化する場合と比較して、測定値の誤差を少なくすることが可能になる。
【0104】
(交感神経の評価)
図17は、評価装置10が交感神経の評価を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0105】
ステップS31で、取得部101は、被験者の年齢及び心拍データを取得する。
【0106】
ステップS32で、算出部102は、最大エントロピー法を用いて被験者のLFを算出する。
【0107】
ステップS33で、算出部102は、ステップS32で算出した被験者のLFと被験者の心拍データとを用いて、被験者のccvLFを算出する。また、算出部102は、被験者のccvLFと分布データ(ccvLF)100cとを用いて、被験者のccvLFの偏差値を算出する。例えば、算出部102は、被験者のccvLFの偏差値を以下の手順で算出することができる。
1.数式10に従い、ステップS32で算出されたLFを被験者の心拍数(より具体的にはR-R間隔の平均)で補正することで被験者のccvLFを算出する。
【数17】
2.分布データ(ccvLF)100cから、被験者の年齢に対応するccvLFの平均値と標準偏差(σ)を取得する。
3.「ccvLFの偏差値=10×(被験者のccvLF-被験者の年齢に対応するccvLFの平均値)÷被験者の年齢に対応するccvLFの標準偏差(σ)+50」の式を用いて、被験者のccvLFの偏差値を算出する。
【0108】
(交感神経の評価の変形例1)
上述したステップS33の処理手順において、ccvLFは、数式10を用いて算出されることとしたが、これに限定されない。本実施形態では、ccvLFは、以下の数式18~21のいずれかを用いて算出されることとしてもよい。なお、「平均LF」は、所定数の被験者を測定することで得られた複数のLFの平均値である。また、「LFの標準偏差」は、所定数の被験者を測定することで得られた複数のLFの標準偏差(σ)である。また、「LFmax」及び「LFmin」は、それぞれ、所定数の被験者を測定することで得られた複数のLFの最大値及び最小値を意味する。
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【0109】
(HFに関する実験結果その1)
「HFに関する実験結果その1」及び後述する「HFに関する実験結果その2」の説明において、「HFxx」は、xx秒連続で測定された心拍データを用いて、最大エントロピー法により算出されたHFを意味する。例えば「HF90」は、90秒連続で測定された心拍データを用いて、最大エントロピー法により算出されたHFを意味する。
【0110】
HFは、0.15~0.4Hzの周波数帯を分析することから、1波長は最低1/0.15(≒6.66)秒である。すなわち、少なくとも1/0.15秒の心拍データがあればHFを計測することが可能である。そこで、1/0.15秒以上の心拍データから得られたHFとHF90との相関分析を行った結果を図18に示す。図18は、被験者500名を対象に測定を行った結果を示している。図18において、上段の数値は相関係数(r値)であり、下段の数値は有意確率(p値)である。図18によれば、HF6.66~HF10は、HF90との相関係数が概ね0.5以上であり、更に、HF11~HF60は、HF90との相関係数が概ね0.8以上であることが分かる。つまり、6.66秒間の心拍データを利用して最大エントロピー法により算出したHFは、最大エントロピー法により算出したHF90と相関関係にあることが分かる。また、理論上最も短い時間(つまり、1/0.15秒)で心拍データを測定した場合であっても、HF90との相関係数が0.5以上であることから、副交感神経の簡易計測として利用が可能であることが確認された。
【0111】
なお、文献によっては、HFの定義を、0.15~0.4Hzの周波数帯ではなく0.2~0.5Hzの周波数帯と定義している例もある。そこで、当該定義に従い、0.2~0.5Hzの周波数帯を分析することで求めたHFと、0.2~0.5Hzの周波数帯を分析することで求めたHF90との相関分析を行った結果を図19に示す。図19に示すように、理論上最短時間である5秒の計測でも、HF90との相関係数が0.5以上であることが認められた。従って、HFの定義を変更し、理論上最も短い時間(1/0.2秒、つまり5秒)で心拍データを測定した場合であっても、HF90との相関係数が0.5以上であることから、副交感神経の簡易計測として利用が可能であることが確認された。
【0112】
以上説明した実験結果その1に基づいて、取得部101は、被験者の心拍データを、HFを周波数解析により算出する際の周波数成分の定義に基づく最短計測時間以上かつ60秒未満で被験者を計測することで取得するようにしてもよい。また、算出部102は、HFを周波数解析により算出する際の周波数成分の定義に基づく最短計測時間以上かつ60秒未満で被験者を計測することで取得された心拍データを用いて、最大エントロピー法により被験者のHFを算出するようにしてもよい。これにより、従来よりも短時間で、被験者のHFの偏差値を評価することが可能になる。
【0113】
なお、HFの周波数成分を0.15~0.4Hzと定義する場合、上記の最短計測時間は、1/0.15秒(≒6.66秒)である。また、HFの周波数成分を0.2~0.5Hzと定義する場合、上記の最短計測時間は、1/0.2秒(=5秒)である。
【0114】
なお、上記に限定されず、取得部101は、P秒以上かつQ秒未満で被験者を計測することで、被験者の心拍データを取得するようにしてもよい。また、算出部102は、P秒以上かつQ秒未満で被験者を計測することで取得された心拍データを用いて、最大エントロピー法により被験者のHFを算出するようにしてもよい。P及びQには、最短計測時間秒~60秒の範囲で任意の時間を設定してもよい。例えば、P及びQは、それぞれ、11秒及び60秒であってもよいし、それぞれ、11秒及び15秒であってもよい。
【0115】
(HFに関する実験結果その2)
図20は、LP.S、LP.m、年齢及びHFの重回帰分析結果を示す図である。より具体的には、図20は、被験者500名を対象に、HF90を従属変数とし、LP.S、LP.m及び年齢を独立変数として重回帰分析を行った結果を示している。なお、図20おいて、LP.S、LP.m及びHFについては対数変換した値を用いた。
【0116】
図20の秒数は、重回帰分析に用いた心拍データの測定時間を示す。例えば、心拍データの測定時間が15秒の欄における重相関係数は0.85625であり、自由度調整済み決定係数は0.73154である。これは、HF90とLP.S15とLP.m15と被験者の年齢とについて、被験者500名を15秒間測定することで得られた心拍データを重回帰分析した結果、重相関係数は0.85625であり、自由度調整済み決定係数は0.73154であったことを示している。
【0117】
図20によれば、測定時間が3秒から5秒である心拍データから得られた重相関係数は0.71以上であり、更に、測定時間が6秒以上である場合、重相関係数は0.8以上であることが分かる。また、自由度調整済み決定係数は、測定時間が3秒以上であれば0.5を上回っている。従って、測定時間が3秒以上である場合、数式9は、HFの推定モデルとして使用可能な水準であると言える。
【0118】
図21は、LP.S、LP.m、年齢及びHFの相関関係を示す図である。また、図22及び図23は、TP及びLP.Sの相関関係を示す図である。図21図23は、被験者500名を対象に測定を行った結果を示している。図21図23において、上段の数値は相関係数(r値)であり、下段の数値は有意確率(p値)である。なお、図21図23において、LP.S、LP.m及びHFについては対数変換した値を用いた。
【0119】
図21によれば、LP.S10及びLP.m10は、TP90と有意な相関があることが分かる。また、被験者の年齢とTP90も負の相関があることが分かる。
【0120】
また、図22及び図23によれば、LP.S3~LP.S9は、HF90との相関係数が0.6以上であり、更に、LP.S10~LP.S90は、HF90との相関係数が0.8以上であることが分かる。つまり、3秒間以上の心拍データを利用してローレンツプロット法により算出した楕円の面積は、最大エントロピー法により算出したHF90と相関関係にあることが分かる。この結果からも、ローレンツプロット法を利用して数式9によりHFを推定することで、心拍データの測定時間が短くても、被験者のHFを推定することが可能であることが分かる。
【0121】
以上説明した実験結果その2に基づいて、取得部101は、被験者の心拍データを、HFを3秒以上かつ60秒未満で被験者を計測することで取得するようにしてもよい。また、算出部102は、HFを3秒以上かつ60秒未満で被験者を計測することで取得された心拍データを用いて、ローレンツプロット法により被験者のHFを算出(推定)するようにしてもよい。これにより、従来よりも短時間で、被験者のHFの偏差値を評価することが可能になる。
【0122】
なお、上記に限定されず、取得部101は、R秒以上かつS秒未満で被験者を計測することで、被験者の心拍データを取得するようにしてもよい。また、算出部102は、R秒以上かつS秒未満で被験者を計測することで取得された心拍データを用いて、ローレンツプロット法により被験者のHFを算出(推定)するようにしてもよい。R及びSには、3秒~60秒の範囲で任意の時間を設定してもよい。例えば、R及びSは、それぞれ、6秒及び60秒であってもよいし、6秒及び15秒であってもよいし、3秒及び15秒であってもよいし、3秒及び7秒であってもよい。
【0123】
(副交感神経の評価に関する補足)
図24は、TPにおけるHFの割合と被験者の疲労度とを比較した結果を示す図である。図24は、19名の健常者を対象に、精神作業負荷に伴う疲労の前後で自律神経機能評価を行うことで取得されたデータであり、縦軸「%HF」は、TPにおけるHFの割合(すなわち、HF÷TP×100)を示している。横軸は、被験者の疲労度を示すスコアであり、スコアが高いほど疲労していることを示す。図24によれば、TPにおけるHFの割合が低下するほど、被験者の疲労度が高くなることが分かる。なお、TPは、LF+HFで算出されることから、TPにおけるHFの割合が低下するほど、LFの割合が多くなることを意味する。
【0124】
そこで、評価装置10は、ローレンツプロット法に基づいて算出した被験者のTPに対する被験者のHFの割合(つまり、HF/TP)を算出し、算出したHFの割合を示す情報を出力するようにしてもよい。前述した通り、本実施形態に係る評価装置10は、ローレンツプロット法を用いることで、従来よりも短い時間でTPを測定することが可能であり、更に、HFについても、従来よりも短い時間で測定することが可能である。そのため、被験者の「TPに対するHFの割合」についても、従来よりも短い時間で算出することが可能である。従って、本実施形態では、極めて短時間で、被験者に対する測定の負担を軽減した状況で、疲労やストレス性障害の状態を判定することが可能になる。
【0125】
(出力例)
図25は、被験者の測定結果を出力する画面の一例を示す図である。図25に示すように、出力部103は、被験者のccvTPの偏差値と、被験者のccvHF値の偏差値と、を並べて画面に表示させるようにしてもよい。図25の上段はccvTPの偏差値に対応し、図25の下段はccvHFの偏差値に対応する。これにより、被験者は、ccvTPとccvHFを同時に確認することができる。また、本実施形態によれば、25秒未満など、従来では困難であった時間で測定した心拍データから、ccvTPの偏差値を算出することが可能であることから、被験者は、ストレスを感じることなく、自身の脳の疲労度とストレスの大きさを把握することが可能になる。
【0126】
また、ccvHFの偏差値の算出についても、例えば7秒未満などで被験者を測定することで、従来では不可能であった短い時間で、被験者の副交感神経の自律神経機能を評価することが可能になる。また、周波数解析によるHFからの副交感神経活動の推測に加え、ローレンツプロット法の面積からの副交感神経活動の推測を行うことにより、短時間での評価における信頼性を高めることができる。
【0127】
<まとめ>
以上説明した実施形態によれば、最大エントロピー法に代えて、ローレンツプロット法を利用することで、短時間で測定した心拍データからTPを算出することを可能とした。これにより、自律神経機能の評価を、より迅速に実施することが可能になる。また、本実施形態によれば、ccvHFの偏差値を算出したことで、副交感神経に関する指標を、年齢の異なる被験者間においても共通の指標として利用することが可能になる。また、本実施形態によれば、ccvLFの偏差値を算出したことで、交感神経に関する指標を、年齢の異なる被験者間においても共通の指標として利用することが可能になる。また、より短時間で測定した心拍データからHFを算出するようにしたことで、従来よりも迅速に副交感神経の状態を把握することが可能になる。また、本実施形態によれば、短時間で測定した心拍データにより算出されたccvTPの偏差値とccvHFの偏差値を同時に出力することで、従来よりも迅速に副交感神経の状態を把握することが可能になる。また、本実施形態によれば、短時間で測定したHF値のTPにおける割合(HF/TP)を出力することで、従来よりも迅速に副交感神経の状態(例えば、TPにおけるHFの占める割合が多いか少ないか等)を把握することが可能になる。また、周波数解析によるHFからの副交感神経活動の推測に加え、ローレンツプロット法の面積からの副交感神経活動の推測を行うことにより、短時間での評価における信頼性を高めることができる。また、本実施形態によれば、短時間で測定した心拍データにより算出されたccvTPの偏差値とHFの偏差値を同時に出力することができることから、被験者は、ストレスを感じることなく、自身の自律神経の状態を他の被験者と比較可能な態様で把握する可能になる。
【0128】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。HF値及びLF値は、それぞれ、HF及びLFと呼ばれてもよい。
【符号の説明】
【0129】
10…評価装置、11…プロセッサ、12…記憶装置、13…入力装置、14…出力装置、15…生体情報取得装置、100…記憶部、100a…分布データ(ccvTP)、100b…分布データ(ccvHF)、100c…分布データ(ccvLF)、101…取得部、102…算出部、103…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25