(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法
(51)【国際特許分類】
D21C 3/00 20060101AFI20241031BHJP
D21C 1/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
D21C3/00 Z
D21C1/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023072435
(22)【出願日】2023-04-26
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】202211323691.X
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523157955
【氏名又は名称】泰州安田生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】毛海玉
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5460697(US,A)
【文献】特開2002-115188(JP,A)
【文献】特開2020-165057(JP,A)
【文献】特表2009-515059(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112538775(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21C 3/00
D21C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法であって、
ステップ1:収集した木屑をさらに粉砕した後に、リグニン分解菌で処理する酵素処理と、
ステップ2:ステップ1で得られた生成物を、臭素イオンがドープされたg-C3N4系複合材料によって可視光の下で触媒して分解する、光触媒によるリグニン分解処理と、
ステップ3:ステップ2で処理された木屑を、ブレンド剤を加えた50~65℃の温度の水浴槽に加え、一定温度で2~3日間浸漬させる、木屑前処理と、
ステップ4:ステップ3で得られた生成物を蒸煮装置に加え、蒸煮中にナノ炭酸カルシウム、チタネートカップリング剤、二酸化チタンを添加し、ろ過処理後にアセトニトリルを含む水溶液で2~3回洗浄した後に、粉砕ディスクを用いて粉砕してパルプを調製する、パルプ調製処理と、
ステップ5:ステップ4で得られたパルプを高圧ミキサーに加え、二酸化炭素雰囲気下の高圧環境下で混合する、高圧処理と、
ステップ6:ステップ5で得られた生成物を圧力フローボックスによって真空ケージに吹き付け、真空ケージの吸引により紙シートを成形し、乾燥、切断を行い完成品を得る、紙成形処理と、を含む
ことを特徴とする湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法。
【請求項2】
前記ブレンド剤は、キトサン、ひのき油、過マンガン酸カリウムを15:2:3の重量比で混合してなり、前記ブレンド剤と水浴槽内の水との重量比が1:200-235である、ことを特徴とする請求項1に記載の湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法。
【請求項3】
前記リグニン分解菌は、白色腐敗菌、褐色腐敗菌、軟腐敗菌の組み合わせである、ことを特徴とする請求項1に記載の湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法。
【請求項4】
前記ナノ炭酸カルシウム、前記チタネートカップリング剤、前記二酸化チタンの重量比は5:2:2である、ことを特徴とする請求項1に記載の湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法。
【請求項5】
前記高圧ミキサーは、内圧が15MPaであり、前記高圧ミキサーの底部から内部に二酸化炭素を充填し、頂部から空気を排気することにより二酸化炭素雰囲気を得る、請求項1に記載の湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材パルプ紙加工の技術分野に関し、特に、湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特表2009-515059号公報)には、木材パルプ紙の加工方法が記載されている。生木パルプ紙とは、一般に良質の木材を原料として、パルプ調製、蒸煮などの工程を経て作られる紙であり、きめが細かく、柔らかく、表面が滑らかで、強靭な紙となる。品質の悪い原紙で製作される紙は、紙質が粗く、ゆるく、穴が多く、伸縮強度が弱いため、拭き取り場所に紙クズや紙毛が残り、使用に影響が出る。
【0003】
リグニンは熱可塑性物質であるため、製紙に用いられるのは植物繊維の原料におけるセルロースと一部のヘミセルローであり、リグニンは繊維の原料においてバインダーとして働き、除去しなければ繊維の原料が単繊維に分散しないため、製紙業界は通常リグニンを除去しなければならず、加工技術の影響を受け、リグニン除去コストが高くなる。さらに、その結果、出来た製品は、引張特性がないがふわふわした製品、あるいはふわふわしているが引張特性のない製品となり、ユーザー体験が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、リグニンの除去にコストがかかり、引張特性およびふわふわ特性の両立ができず、ユーザー体験に影響する、といった既存の木材パルプ紙の加工方法の問題点を解決できる湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本願は、
以下のステップを含むことを特徴とする、湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法であって、
ステップ1:収集した木屑をさらに粉砕した後に、リグニン分解菌で処理する酵素処理と、
ステップ2:ステップ1で得られた生成物を、臭素イオンがドープされたg-C3N4系複合材料によって可視光の下で触媒反応して分解する、光触媒によるリグニン分解処理と、
ステップ3:ステップ2で処理された木屑を、ブレンド剤を加えた50~65℃の温度の水浴槽に加え、一定温度で2~3日間浸漬させる、木屑前処理と、
ステップ4:ステップ3で得られた生成物を蒸煮装置に加え、蒸煮中にナノ炭酸カルシウム、チタネートカップリング剤、二酸化チタンを添加し、ろ過処理後にアセトニトリルを含む水溶液で2~3回洗浄した後に、粉砕ディスクを用いて粉砕してパルプを調製する、パルプ調製処理と、
ステップ5:ステップ4で得られたパルプを高圧ミキサーに加え、二酸化炭素雰囲気下の高圧環境下で混合する高圧処理と、
ステップ6:ステップ5で得られた生成物を圧力フローボックスによって真空ケージに吹き付け、真空ケージの吸引により紙シートを成形し、乾燥、切断を行い完成品を得る紙成形処理と、を含む湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法を提供する。
【0007】
好ましくは、前記ブレンド剤は、キトサン、ひのき油、過マンガン酸カリウムを15:2:3の重量比で混合してなり、前記ブレンド剤と水浴槽内の水との重量比が1:200-235である。
【0008】
好ましくは、前記リグニン分解菌は、白色腐敗菌、褐色腐敗菌、軟腐敗菌の組み合わせである。
好ましくは、ナノ炭酸カルシウム、チタネートカップリング剤、酸化チタンの重量比が5:2:2である。
【0009】
好ましくは、前記高圧ミキサーは、内圧が15MPaであり、前記高圧ミキサーの底部から内部に二酸化炭素を充填し、頂部から空気を排気することにより二酸化炭素雰囲気を得る。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、湿式乾式両用の木材パルプ紙の加工方法を提供し、以下の有益な効果がある。
本願発明では、白色腐敗菌、褐色腐敗菌、軟腐敗菌、臭素イオンをドープしたg-C3N4系複合材料の協同作用により、リグニンを十分に分解し、残りの添加成分の協同作用によるプロセスにより、より純度が高く高品質の仕上がりとなるだけでなく、ふわふわして、強靭であり、湿乾両用の特性を有する完成品が得られるという特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を明確かつ詳細に説明するが、説明された実施形態は本発明の実施形態の一部に過ぎず、その全てではないことは明らかである。本発明における実施形態に基づき、当業者が創造的な労働をすることなく得られる他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0012】
本願は、湿式乾式両用木材パルプ紙の加工方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする。
ステップ1:酵素処理
収集した木屑をさらに粉砕した後に、白色腐敗菌、褐色腐敗菌、軟腐敗菌を利用して処理する。白色腐敗菌、褐色腐敗菌、軟腐敗菌はリグニン分解菌であり、白色腐敗菌、褐色腐敗菌、軟腐敗菌の組み合わせで得られるリグニン分解菌グループを用いて収集した木屑に対して分解することで、リグニン含量を大幅に減らすことができる。木質系パネル加工工場から得られる木屑は、木質系パネルを切断した際に得られるおがくずであるため、木質系パネル廃材の利用効率を高めることができる。なお、木屑を採用する場合は、接着剤や染料が付着している物を避けるようにする。
【0013】
ステップ2:光触媒によるリグニン分解処理
ステップ1で得られた生成物を、臭素イオンがドープされたg-C3N4系複合材料によって可視光の下で触媒して分解する。臭素イオンをドープしたg-C3N4系複合材料を用いた触媒により、ステップ1で得られた生成物中のリグニンをさらに分解することができる。
【0014】
ステップ3:木屑前処理
ステップ2で処理された木屑を、ブレンド剤を加えた50~65℃の温度の水浴槽に加え、一定温度で2~3日間浸漬させる。ブレンド剤は、キトサン、ひのき油、過マンガン酸カリウムを15:2:3の重量比で混合してなり、ブレンド剤と水浴槽内の水との重量比が1:200-235である。キトサン、ひのき油、過マンガン酸カリウムによる処理では木材残渣中の微生物を殺し、木屑が一部のキトサン、ひのき油、過マンガン酸カリウムを吸収することで抗菌性を有し、さらに、過マンガン酸カリウムを含む50~65℃の水浴の作用で、非繊維質を洗い流し、完成品の品質を高めることができる。
【0015】
ステップ4:パルプ調製処理
ステップ3で得られた生成物を蒸煮装置に加え、蒸煮中に重量比が5:2:2であるナノ炭酸カルシウム、チタネートカップリング剤、酸化チタンを添加し、ろ過処理後にアセトニトリルを含む水溶液で2~3回洗浄した後に、粉砕ディスクを用いて粉砕してパルプを調製する。ナノ炭酸カルシウム、チタネートカップリング剤、酸化チタンの組み合わせにより、パルプが一定の疎水性を持ち、アセトニトリルを含む水溶液によりアセトニトリルに可溶である有機物の一部を溶解して取り除くことができる。
【0016】
ステップ5:高圧処理
ステップ4で得られたパルプを高圧ミキサーに加え、二酸化炭素雰囲気下の高圧環境下で混合する。高圧ミキサーは内圧が15MPaであり、高圧ミキサーの底部から内部に二酸化炭素を充填し、頂部から空気を排気して二酸化炭素雰囲気を得る。こうすることでパルプがよりふわふわしており、繊維がより強靭である。
【0017】
ステップ6:紙成形処理
ステップ5で得られた生成物を圧力フローボックスによって真空ケージに吹き付け、真空ケージの吸引により紙シートを成形し、乾燥、切断を行い完成品を得る。ステップ5の高圧処理により、パルプは繊維の間に毛羽立ちができ、ステップ6の吹き付けも容易になる。
【0018】
本発明の実施形態を示し、説明したが、当業者であれば、本発明の原理および精神から逸脱することなく、これらの実施形態の様々な変形、修正、置換を行うことができ、その範囲は添付の請求項およびその同等物によって限定されることは理解されよう。