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特許7579609p-クマロイル化アントシアニンの分離精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】p-クマロイル化アントシアニンの分離精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/065 20060101AFI20241031BHJP
   A23L 5/43 20160101ALN20241031BHJP
   C09B 61/00 20060101ALN20241031BHJP
   G01N 30/26 20060101ALN20241031BHJP
   G01N 30/42 20060101ALN20241031BHJP
   G01N 30/88 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C07H17/065
A23L5/43
C09B61/00 C
G01N30/26 A
G01N30/42
G01N30/88 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023516730
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2021070637
(87)【国際公開番号】W WO2022052394
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】202010961060.5
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】陳衛
(72)【発明者】
【氏名】徐陽
(72)【発明者】
【氏名】謝佳宏
(72)【発明者】
【氏名】ツェイ ハァォシィン
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102229633(CN,A)
【文献】Food Chemistry,2019年11月07日,Vol. 310,125830,p. 1-8
【文献】Journal of Agricultural and Food Chemistry,2003年,Vol. 51, No. 18,p. 5207-5213
【文献】Journal of Agricultural and Food Chemistry,2013年,Vol. 61, No. 13,p. 3306-3310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A23L
C09B
G01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを分離製造する方法であって、以下の工程が含まれ、
(1)アルコールによる抽出及び濃縮:ブドウを原料とし、酸性アルコール溶液で抽出し、濃縮してブドウ皮のアントシアニン粗抽出液を得、
(2)マクロポーラス樹脂による精製:前記ブドウ皮のアントシアニン粗抽出液をマクロポーラス樹脂に注入し、溶出し、濃縮してアントシアニン溶出液を得、
(3)抽出:有機溶媒を用いて前記アントシアニン溶出液を抽出してから、減圧濃縮し、凍結乾燥後にアントシアニン凍結乾燥粉を得、
(4)分取液体クロマトグラフィーによる精製:アントシアニン凍結乾燥粉末を溶解し、分取液体クロマトグラフィーシステムに注入して精製し、紫外線検出器で測定し、具体的なパラメータ条件は以下の通り:
移動相:A相は純粋なアセトニトリル、B相はギ酸体積パーセント濃度が1%~2%のギ酸水溶液であり、
勾配溶出プログラムは:0~4min、5%~20%A相;4~18min、20~25%A相;18~21min、25~35%A相;21~24min、35~60%A相;24~27min、60~5%A相;27~30min、5%A相であり、
流量は8~10mL/minであり、カラム温度は30℃であり、検出波長は520nmであり、
液体クロマトグラフィーに基づいて保持時間が16.5~18.0minの成分を収集し、その後減圧濃縮し、凍結乾燥し、アントシアニン単量体粗品を得、
(5)高速向流クロマトグラフィーによる分離:メチルtert-ブチルエーテル、メタノール、水とトリフルオロ酢酸を2:2:3:0.001の体積比で混合して2相溶媒系とし、且つ上層を固定相、下層を移動相に用いて、順次に固定相と流動相を高速向流クロマトグラフィー装置にポンプし、2相は管路中で平衡に達した後、アントシアニン単量体粗品を流動相で溶解させ、注入して紫外検出器下で検出し、検出波長は280nmであり、保持時間が105~115minの成分を収集し、減圧濃縮、凍結乾燥し、目的化合物であるデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを得ることを特徴とするデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを分離製造する方法。
【請求項2】
工程(1)において、前記酸性アルコール溶液で抽出し、濃縮してブドウ皮のアントシアニン粗抽出液を得ることは、具体的に、ブドウを洗浄して皮を取り、酸性エタノール溶液と混合した後、ビーティングし、50℃以下で超音波抽出し、濾過し、濾液を40~50℃で減圧濃縮してエタノールを除去し、ブドウ皮のアントシアニン粗抽出液を得、
ブドウ皮と酸性エタノール溶液の質量体積比は1g:4~8mLであり、
前記酸性エタノール溶液中のエタノール体積濃度は50%~80%であり、酸の体積濃度は0.1%~1%であり、
前記超音波抽出時間は40~120minであることを特徴とする請求項1に記載のデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを分離製造する方法。
【請求項3】
前記酸性エタノール溶液中の酸は塩酸、ギ酸、酢酸から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載のデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを分離製造する方法。
【請求項4】
工程(3)において、前記有機溶媒は酢酸エチルであることを特徴とする請求項1に記載のデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを分離製造する方法。
【請求項5】
工程(4)において、分取液体クロマトグラフィーシステムに使用される液体クロマトグラフィーカラムはC18カラムであり、単回注入量はアントシアニン凍結乾燥粉として10~40mgであり、前記減圧濃縮後の体積は濃縮前の体積の40~70%であることを特徴とする請求項1に記載のデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを分離製造する方法。
【請求項6】
工程(5)において、高速向流クロマトグラフィー装置の温度は20~30℃に安定され、forward-inlet溶出モードで、固定相をポンプ注入し、その後、回転速度を800~950r/minに調節し、バランスを取るように2mL/minの流量で移動相を通入し、一回あたりの注入量はアントシアニン単体粗品として30~200mgとすることを特徴とする請求項1に記載のデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを分離製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然産物の分離精製技術分野に関し、具体的にはp-クマロイル化アントシアニンの分離精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブドウはブドウ科ブドウ属の植物の果実で、世界各地で栽培されている。ブドウは高い栄養価を持っている。アントシアニンはブドウ中の重要なポリフェノール類の一つであり、研究により、ブドウ中にはデルフィニジン、マルビジン、ペオニジン、ペツニジンなどのアントシアニンアグリコンとグルコースが結合して形成されたアントシアニンが含まれていることが明らかになった。しかし、アントシアニンは光、温度、pHに感受性であるため、その化学的性質は相対的に不安定であり、しかも生物利用度が低く、これらの性質はアントシアニンの実際の応用を大きく制限している。非アシル化アントシアニンに対してアシル化アントシアニンも同様に生物活性があり、より安定した化学的性質とより高い生物利用度を有することが明らかになった。ブドウにはクマリンアシル化されたアントシアニンが多く含まれており、これはブドウアントシアニンがより良い市場見通しを持っていることを示している。
【0003】
近年、固相抽出技術(SPE)、分取高速液体クロマトグラフィー技術(preparative-HPLC)、高速向流クロマトグラフィー技術(HSCCC)などの新しい精製技術が発展し、応用され始めている。高速液体クロマトグラフィーは固定相及び移動相との吸着原理に基づくクロマトグラフィー技術であり、シリカゲルなどの吸着剤を固定相として使用することによって、異なる化合物分子と固定相の結合能力の違いによって分離され、分離効果は主に固定相フィラーの性質(例えば組成、粒子径の大きさ)、及び液体クロマトグラフィー方法が良好かどうかによるものである。高速液体クロマトグラフィー技術は安定性、信頼性、再現性が良いなどの利点がある。高速向流クロマトグラフィーは液体と液体のクロマトグラフィー技術であり、その固定相と流動相はいずれも液体であり、原理は異なる化合物分子の固定相と流動相における分配係数の違いに基づいて分離するものである。高速向流クロマトグラフィーの分離効果は、主に使用する二相溶媒系が適切かどうかによるものである。高速向流クロマトグラフィー技術はサンプルの前処理が簡単で、適用範囲が広く、サンプル損失が少なく、処理量が大きいなどの利点がある。現在、ブドウアントシアニンの製造において、主に抽出、マクロポーラス樹脂と単一のカラムクロマトグラフィーまたはクロマトグラフィー技術を用いて分離精製を行っている。
【0004】
例えば、CN104177460Aには、超音波補助抽出、抽出、精製などの工程を使用する3,5-二糖類のアントシアニンの製造方法が開示されているが、得られた生成物はアントシアニン混合物であり、3種類の異なる二糖類のアントシアニンを含有し、生成物はアシル化アントシアニンには関連していない。
【0005】
また、CN102229633Aには、ブドウ皮から5種類の高純度アントシアニン単量体を分離製造する方法が開示されている。この方法は浸出、マクロポーラス樹脂を用いて精製し、移動相を製造する方法で精製して5種類のアントシアニンを得たが、2段階を用いて移動相を製造して精製したため、サンプルの損失を招き、精製率を低下させ、その中の2種類のアントシアニン(マルビジンアセチルグルコシド、マルビジントランスクマロイルグルコシド)の純度は相対的に低く、それぞれ91.7%と95.5%にすぎなかった。
【0006】
CN108976268Aには、Vitisdavidiivar.davidiiの2つの主要なアントシアニン標準品を製造する方法が開示されており、この方法はマクロポーラス樹脂を用いてVitisdavidiivar.davidiiの濁り汁を吸着し濃縮させ、その後溶出し、凍結乾燥してアントシアニン粗品を得、さらに高速向流クロマトグラフィーを用いて、水-n-ブタノール-メチルtert-ブチルエーテル-アセトニトリル-トリフルオロ酢酸(体積比5:4:1:2:0.001または5:3:1:1:0.001)を2相溶媒系として分離し、2種類のアントシアニンが得られ、純度はそれぞれ95.8%と92.2%であった。しかし、Vitisdavidiivar.davidiiの濁り汁のHPLC図からは、そのアントシアニン組成が簡単であり、高速向流クロマトグラフィーの限界から、分離したサンプルのアントシアニン成分が複雑である場合、この方法を用いて目的のアントシアニンを得ることが困難であることが推測される。
アシル化アントシアニンの分離精製が困難なため、現在市販されている市販のアシル化アントシアニン標準品はない。そのため、ブドウなどの原料から複雑なアントシアニン原料からアントシアニン単量体を精製する技術を研究開発することは、アントシアニン標準品市場の推進及びブドウ深加工製品の開発に重要な意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は本分野に存在する不足点に対して、アシル化アントシアニンの特性に基づいて、高速液体クロマトグラフィー技術と高速向流クロマトグラフィー技術が異なる分離原理を有することを考慮して、分取液体クロマトグラフィーの製造と高速向流クロマトグラフィーの併用に基づく方法を開示し、本発明はアントシアニン成分が複雑であるブドウの中から、高純度のデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシド単量体を大量に製造することができ、我が国のブドウ資源の開発利用に新しい構想を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
デルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを分離製造する方法を提供し、該方法には以下の工程が含まれる:
(1)アルコールによる抽出及び濃縮:ブドウを原料とし、酸性アルコール溶液で抽出し、濃縮してブドウ皮のアントシアニン粗抽出液を得、
(2)マクロポーラス樹脂による精製:前記ブドウ皮のアントシアニン粗抽出液をマクロポーラス樹脂に注入し、溶出し、濃縮してアントシアニン溶出液を得、
(3)抽出:有機溶媒を用いて前記アントシアニン溶出液を抽出してから、減圧濃縮し、凍結乾燥後にアントシアニン凍結乾燥粉を得、
(4)分取液体クロマトグラフィーによる精製:アントシアニン凍結乾燥粉末を溶解し、分取液体クロマトグラフィーシステムに注入して精製し、紫外線検出器で測定し、具体的なパラメータ条件は以下の通り:
移動相:A相は純粋なアセトニトリル、B相はギ酸体積パーセント濃度が1%~2%のギ酸水溶液であり、
勾配溶出プログラムは:0~4min、5%~20%A相;4~18min、20~25%A相;18~21min、25~35%A相;21~24min、35~60%A相;24~27min、60~5%A相;27~30min、5%A相であり、
流量は8~10mL/minであり、カラム温度は30℃であり、検出波長は520nmであり、
液体クロマトグラフィーに基づいて保持時間が16.5~18.0minの成分を収集し、その後減圧濃縮し、凍結乾燥し、アントシアニン単量体粗品を得、
(5)高速向流クロマトグラフィーによる分離:メチルtert-ブチルエーテル、メタノール、水とトリフルオロ酢酸を2:2:3:0.001の体積比で混合して2相溶媒系とし、且つ上層を固定相、下層を移動相に用いて、順次に固定相と流動相を高速向流クロマトグラフィー装置にポンプし、2相は管路中で平衡に達した後、アントシアニン単量体粗品を流動相で溶解させ、注入して紫外検出器下で検出し、検出波長は280nmであり、保持時間が105~115minの成分を収集し、減圧濃縮、凍結乾燥し、目的化合物であるデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを得る。
【0009】
特別な説明がなければ、本発明に出現する原料の百分率はすべて体積百分濃度を指し、本発明における各種溶液、特に説明がなければ、すべて水を溶媒とする。
工程(1)において、前記酸性アルコール溶液で抽出し、濃縮してブドウ皮のアントシアニン粗抽出液を得ることは、具体的に、ブドウを洗浄して皮を取り、酸性エタノール溶液と混合した後、ビーティングし、50℃以下(好ましくは室温)で超音波抽出し、濾過し、濾液を40~50℃で減圧濃縮してエタノールを除去し、ブドウ皮のアントシアニン粗抽出液を得、
ブドウ皮と酸性エタノール溶液の質量体積比は1g:4~8mLであり、
前記酸性エタノール溶液中のエタノール体積濃度は50%~80%、好ましくは60%~70%であり、酸の体積濃度は0.1%~1%であり、
前記超音波抽出時間は40~120minである。
工程(1)において、前記酸性エタノール溶液中の酸は塩酸、ギ酸、酢酸から選択される少なくとも1種である。
工程(2)において、前記マクロポーラス樹脂による精製方法は、具体的に以下のようであり:
ブドウ皮のアントシアニン粗抽出液をマクロポーラス樹脂に注入し、その後、エタノール体積濃度0、5%、20%、40%の酸性エタノール溶液を順次に使用して各4倍カラム体積(4BV)で溶出し、エタノール体積濃度40%の酸性エタノール溶出液を収集し、40~50℃で減圧蒸発してエタノールを除去し、アントシアニン溶出液を得、
前記マクロポーラス樹脂はAB-8、D101、XAD-7、HPD-100またはDM-130から選択され、その比表面積は450~550m/g、平均孔径は10~50nm、粒子径範囲は0.3~1.25mmであり、
工程(2)において、前記酸性エタノール溶液は、酸の体積百分濃度が0.1%~1.5%のエタノール溶液から選択され、ここで、酸は塩酸、ギ酸、酢酸から選択される少なくとも1種である。
【0010】
工程(3)において、前記有機溶媒は酢酸エチルである。
【0011】
工程(3)において、前記有機溶媒とアントシアニンの溶出液の体積比1:1の割合で抽出し、2回以上抽出することが好ましい。
【0012】
工程(4)において、前記アントシアニン凍結乾燥粉末はB相または水で溶解することができる。
【0013】
工程(4)において、分取液体クロマトグラフィーシステムに使用される液体クロマトグラフィーカラムはC18カラムであり、単回注入量はアントシアニン凍結乾燥粉として10~40mgであり、前記減圧濃縮後の体積は濃縮前の体積の40~70%である。
【0014】
工程(5)において、高速向流クロマトグラフィー装置の温度は20~30℃で安定され、forward-inlet溶出モードで、固定相をポンプ注入し、その後、回転速度を800~950r/minに調節し、バランスを取るように2mL/minの流量で移動相を通入し、一回あたりの注入量はアントシアニン単体粗品として30~200mgとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は従来技術と比較して、主な利点は以下を含む:
1.ブドウ皮からデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシド(分子構造を図1に示す)を分離する方法を初めて確立し、収率は8mg/kgブドウ皮以上であり、純度は98%以上である。
2.分取高速液体クロマトグラフィーと高速向流クロマトグラフィーを併用することにより、ポリフェノール成分が複雑であるブドウ原料から、大量にデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを調製することができ、処理量が大きく、繰り返し性が良いなどの利点があり、工業上の生産の実現に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】デルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドの分子構造図を示す。
図2】実施例1におけるブドウ皮のアントシアニン粗抽出液の高速液体クロマトグラフィー図である。
図3】実施例1において、マクロポーラス樹脂による分離精製の後、デルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシド部分を含む高速液体クロマトグラフィー図である。
図4】実施例1における高速向流クロマトグラフィーである。
図5】実施例1における最終生成物デルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドの高速液体クロマトグラフィー図である。
図6】実施例1におけるデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドの質量スペクトルと二次質量スペクトルである。
図7】比較例1における最終生成物の高速液体クロマトグラフィー図である。
図8】比較例2における最終生成物の高速液体クロマトグラフィー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面及び具体的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明を説明するのみに使用されることを理解されたい。以下の実施例に具体的な条件が記載されていない操作方法は、通常の条件に従って、またはメーカーが提案した条件に従うものである。
【0018】
実施例1
ブドウを洗浄して皮をむき、8kgのブドウの皮を得て、質量体積比1g:4mLの割合で0.5%(v/v)塩酸を含む70%のエタノール溶液を加えて十分に混合し、超音波で120min抽出し(温度を50℃以下に制御し、光を避け)、ガーゼで濾過し、濾液を4000rpmで10min遠心分離し、上清を取った。濾滓は同じ方法で1回再抽出した。濾液を合わせ、ブフナー漏斗を用いて、もう一度濾過した。濾液を45℃で減圧蒸発させてエタノールを除去し濃縮し、ブドウ皮のアントシアニン粗抽出液を得た。ブドウ皮のアントシアニン粗抽出液の高速液体クロマトグラフィーを図2に示す。
【0019】
AB-8マクロポーラス樹脂をクロマトグラフィーカラムに入れ、エタノール、0.5mol/Lの塩酸溶液、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を順次に使用し、水で洗浄した後、アントシアニン粗抽出液を0.2BV/hの流量でクロマトグラフィーカラムに注入した。サンプル注入後、酸の水溶液(0.5%塩酸を含む)、5%、20%、40%の酸性エタノール(0.5%塩酸を含む)を順次に用いて各4倍カラム体積で溶出し、40%酸性エタノール溶出液を収集し、減圧蒸発してエタノールを除去した。その後、酢酸エチルを用いて1:1の割合で2回抽出し、水相を取り、適切に減圧濃縮し、凍結乾燥した後、アントシアニン凍結乾燥粉を得た。マクロポーラス樹脂による分離精製後のデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシド部分を含む高速液体クロマトグラフィーを図3に示す。
【0020】
液体クロマトグラフによる分離にUltimateXB-C18を使用(7μm,21.2×250mm)してカラムを作製した。移動相は純粋なアセトニトリル(A相)と1.5%のギ酸水溶液(B相)からなる。勾配溶出方法は以下の通りである:0~4min、5%~20%A相;4~18min、20~25%A相;18~21min、25~35%A相;21~24min、35~60%A相;24~27min、60~5%A相、;27~30min、5%A相;流量10mL/min、カラム温度が30℃であり、検出波長が520nmである。アントシアニン凍結乾燥粉末を溶解して注入し、注入量は4mLで、16.5~18.0minの成分を収集し、減圧濃縮し、その後凍結乾燥し、デルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシド単量体粗品を得た。
【0021】
メチルtert-ブチルエーテル:メタノール:水:トリフルオロ酢酸を2:2:3:0.001の体積比で分液漏斗中に入れ、十分に揺動し、30min静置した後、上下層を分離し、それぞれ30min超音波脱気した。高速向流クロマトグラフィーシステムの温度を20℃に安定させ、固定相をポンプ注入し、その後回転速度を850r/minに調整し、forward-inlet溶出モードで、2mL/minの流量で平衡になるまで流動相を流動させ、5mgの凍結乾燥粉が1mLの流動相に溶解する割合で粗品凍結乾燥粉を溶解し、微孔ろ過膜を用いてろ過した後、1回あたり10mL注入し、紫外線検出器で測定し、検出波長が280nmであった。105~115minの標的ピークの成分(図4)を収集し、減圧濃縮し、凍結乾燥し、70mgのデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを得た。高速液体クロマトグラフィーは図5に示すように、HPLC純度は98.7%である。
【0022】
得られたアントシアニン試料を質量分析計に注入し、質量スペクトルに基づいて試料を分析し(図6)、分離したアントシアニンの質量数が正常であることを確認した。
【0023】
実施例2
ブドウを洗浄して皮をむき、2kgのブドウ皮を得て、質量体積比1g:6mLの割合で0.5%(v/v)塩酸を含む80%エタノール溶液を加えて十分に混合し、超音波で60min抽出し(温度を50℃以下に制御し、光を避け)、ガーゼで濾過し、濾液を4000rpmで10min遠心分離し、上清を取った。濾滓は同じ方法で1回再抽出した。濾液を合わせ、ブフナー漏斗を用いて、もう一度濾過した。濾液を45℃で減圧蒸発させてエタノールを除去し濃縮し、ブドウ皮のアントシアニン粗抽出液を得た。
【0024】
AB-8マクロポーラス樹脂をクロマトグラフィーカラムに入れ、エタノール、0.5mol/Lの塩酸溶液、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を順次に使用し、水で洗浄した後、アントシアニン粗抽出液を0.2BV/hの流量でクロマトグラフィーカラムに注入した。サンプル注入後、酸の水溶液(0.5%塩酸を含む)、5%、20%、40%の酸性エタノール(0.5%塩酸を含む)を順次に用いて各4倍カラム体積で溶出し、40%酸性エタノール溶出液を収集し、減圧蒸発してエタノールを除去した。その後、酢酸エチルを用いて1:1の割合で2回抽出し、水相を取り、適切な減圧濃縮し、凍結乾燥した後、アントシアニン凍結乾燥粉を得た。
【0025】
液体クロマトグラフによる分離にUltimate XB-C18を使用(7μm,21.2×250mm)でカラムを作製した。移動相は純粋なアセトニトリル(A相)と1.5%のギ酸水溶液(B相)からなる。勾配溶出方法は以下の通りである:0~4min、5%~20%A相;4~18min、20~25%A相;18~21min、25~35%A相;21~24min、35~60%A相;24~27min、60~5%A相、;27~30min、5%A相;流量10mL/min、カラム温度が30℃であり、検出波長520nmである。アントシアニン凍結乾燥粉末を溶解して注入し、注入量は4mLで、16.5~18.0minの成分を収集し、減圧濃縮し、その後凍結乾燥し、デルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシド単量体粗品を得た。
【0026】
メチルtert-ブチルエーテル:メタノール:水:トリフルオロ酢酸を2:2:3:0.001の体積比で分液漏斗中に入れ、十分に揺動し、30min静置した後、上下層を分離し、それぞれ30min超音波脱気した。高速向流クロマトグラフィーシステムの温度を25℃に安定させ、固定相をポンプ注入し、その後回転速度を850r/minに調整し、forward-inlet溶出モードで、2mL/minの流量で平衡になるまで流動相を流動させ、5mgの凍結乾燥粉が1mLの流動相に溶解する割合で粗品凍結乾燥粉を溶解し、微孔ろ過膜を用いてろ過した後、注入し、1回あたり10mL注入し、紫外線検出器で測定し、検出波長が280nmであった。105~115minの標的ピークの成分を収集し、減圧濃縮し、凍結乾燥し、19mgのデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドが得られ、HPLC純度は98.2%であった。
【0027】
実施例3
ブドウを洗浄して皮をむき、20kgのブドウの皮を得て、質量体積比1g:4mLの割合で0.5%(v/v)塩酸を含む70%のエタノール溶液を加えて十分に混合し、超音波で90min抽出し(温度を50℃以下に制御し、光を避け)、ガーゼで濾過し、濾液を4000rpmで10min遠心分離し、上清を取った。濾滓は同じ方法で1回再抽出した。濾液を合わせ、ブフナー漏斗を用いて、もう一度濾過した。濾液を45℃で減圧蒸発させてエタノールを除去し濃縮し、ブドウ皮のアントシアニン粗抽出液を得た。
【0028】
AB-8マクロポーラス樹脂をクロマトグラフィーカラムに入れ、エタノール、0.5mol/Lの塩酸溶液、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を順次に使用し、水で洗浄した後、アントシアニン粗抽出液を0.2BV/hの流量でクロマトグラフィーカラムに注入した。サンプル注入後、酸の水溶液(0.5%塩酸を含む)、5%、20%、40%の酸性エタノール(0.5%塩酸を含む)を順次に用いて各2倍カラム体積で溶出し、40%酸性エタノール溶出液を収集し、減圧蒸発してエタノールを除去した。その後、酢酸エチルを用いて1:1の割合で2回抽出し、水相を取り、適切に減圧濃縮し、凍結乾燥した後、アントシアニン凍結乾燥粉を得た。
【0029】
液体クロマトグラフによる分離にUltimateXB-C18を使用(7μm,21.2×250mm)でカラムを作製した。移動相は純粋なアセトニトリル(A相)と1.5%のギ酸水溶液(B相)からなる。勾配溶出方法は以下の通りである:0~4min、5%~20%A相;4~18min、20~25%A相;18~21min、25~35%A相;21~24min、35~60%A相;24~27min、60~5%A相;27~30min、5%A相;流量10mL/min、カラム温度30℃、検出波長520nm。アントシアニン凍結乾燥粉末を溶解して注入し、注入量は3mLで、16.5~18.0min成分を収集し、減圧濃縮し、その後凍結乾燥し、デルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシド単量体粗品を得た。
【0030】
メチルtert-ブチルエーテル:メタノール:水:トリフルオロ酢酸を2:2:3:0.001の体積比で分液漏斗中に入れ、十分に揺動し、30min静置した後、上下層を分離し、それぞれ30min超音波脱気した。高速向流クロマトグラフィーシステムの温度を25℃に安定させ、固定相をポンプ注入し、その後回転速度を850r/minに調整し、forward-inlet溶出モードで、2mL/minの流量で平衡になるまで流動相を流動させ、10mgの凍結乾燥粉が1mLの流動相に溶解する割合で単量体粗品凍結乾燥粉を溶解し、微孔ろ過膜を用いてろ過した後、1回あたり15mL注入し、紫外線検出器の下で測定し、検出波長が280nmであった。105~115minの標的ピークの成分を収集し、減圧濃縮し、凍結乾燥し、163mgのデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドが得られ、HPLC純度は98.4%であった。
【0031】
比較例1
製造プロセスは実施例1と同じであり、区別は高速向流クロマトグラフィーによる精製の工程を取り除くことのみにあり、その他の工程は変わらず、得られた最終生成物の高速液体クロマトグラフィーは図7に示し、この比較例はデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを含む混合物しか得られず、デルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシド単量体は得られなかったことがわかる。
【0032】
比較例2
製造プロセスは、実施例1と同じであり、区別は高速向流クロマトグラフィー精製における流量を5mL/minに設定したことのみにある。測定により、標的成分であるデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを収集することができたが、流量が速すぎたため、標的成分は他のアントシアニン、他の不純物から完全に分離されておらず、得られた標的成分の純度は90%にすぎなかった(図8に示す)。
【0033】
比較例3
製造プロセスは、実施例1と同様であり、区別は高速向流クロマトグラフィーにより分離された溶媒系をn-ブタノール:メチルtert-ブチルエーテル:メタノール:水:トリフルオロ酢酸の2:2:1:5:0.001系に置き換えることのみにある。測定により、標的化合物のデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドは主として上層中に保持され、標的物質を収集することができなかった。
【0034】
比較例4
製造プロセスは、実施例1と同じであり、区別は高速向流クロマトグラフィーにより分離された溶媒系をメチルtert-ブチルエーテル:メタノール:水:トリフルオロ酢酸の2:1:3:0.001系に置き換えることのみにある。測定により、標的成分であるデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシドを得ることができなかった。
【0035】
比較例5
製造工程は実施例1と同様であり、区別は、製造液クロマトグラフィーによる精製過程における成分収集時間を変更したことのみにあり、成分収集時間が16.5~18.0minの範囲でなければ、デルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシド含有組成を得ることができなかった。成分収集時間が16.5~18.0minの範囲を含み、およびその範囲より広い場合、最終的に分離で得られたデルフィニジン-3-O-(6-O-グルコシル)グルコシド単量体の純度に影響を与える。
【0036】
比較例6
製造プロセスは実施例1と同様であり、区別は抽出プロセスで酸性エタノール溶液を使用せずに、酸を含まないエタノール溶液を用いて抽出することに変更することのみであった。その他の工程が変わらない場合、最終標的生成物であるデルフィニジン-3-O-(6-O-p-クマロイル)グルコシド単量体の収率は2mg/kgブドウ皮であり、8mg/kgブドウ皮よりはるかに低い。
【0037】
さらに、本発明の上述の説明を読んだ後、当業者は、本発明を種々の変更または修正することができ、これらの等価の形態も本願に添付された特許請求によって規定された範囲内であることを理解されたい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8