(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】張線器
(51)【国際特許分類】
H02G 1/04 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02G1/04
(21)【出願番号】P 2024119422
(22)【出願日】2024-07-25
【審査請求日】2024-07-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一出
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/003007(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/080045(WO,A1)
【文献】実開昭51-110169(JP,U)
【文献】実開昭52-149979(JP,U)
【文献】実開平2-135710(JP,U)
【文献】実開昭50-16889(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに回転可能に支持されるドラムと、
前記ドラムに固定され、前記ドラムが回転することで前記ドラムに巻き取られる線状部材と、
前記フレームを他の部材に連結するためのクレビスと、
割ピンによって前記クレビスに固定されるクレビスピンと、
を備え、
前記割ピンは、頭部と、1対の脚部と、を備え、
前記クレビスピンには、溝と、貫通状のピン孔と、が形成され、
前記溝は、前記クレビスピンの外周面に周方向又は接線方向に形成され、
前記割ピンの前記脚部は前記ピン孔を通過するとともに、前記脚部の先端面の少なくとも一部が前記溝の内部に位置していることを特徴とする張線器。
【請求項2】
請求項1に記載の張線器であって、
前記溝は、前記クレビスピンの外周全体にわたってリング状に形成されていることを特徴とする張線器。
【請求項3】
請求項1に記載の張線器であって、
前記ピン孔が前記クレビスピンの外周面に形成する2つの開口のうち少なくとも1つは、前記溝の内壁に配置されていることを特徴とする張線器。
【請求項4】
請求項1に記載の張線器であって、
前記溝は前記クレビスピンの外周面に周方向に形成され、
それぞれの前記脚部は、前記溝の内部で90°を上回る角度で曲げられることを特徴とする張線器。
【請求項5】
請求項1に記載の張線器であって、
前記脚部の一部だけが前記溝の内部に位置し、残りが前記溝から突出していることを特徴とする張線器。
【請求項6】
請求項1に記載の張線器であって、
前記クレビスピンを軸方向と平行な平面で切った断面において、前記溝は円弧状の輪郭を有していることを特徴とする張線器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張線器に関する。
【背景技術】
【0002】
張線器は、電気工事、農業等を含む様々な作業に用いられている。張線器は、例えば、引っ張る対象の条体を掴む掴線器と、尻手ワイヤと、の間に配置される。
【0003】
張線器はフレームを備え、フレームにはドラムが回転可能に支持されている。ドラムにはワイヤが巻き付けられている。ドラムから引き出されたワイヤは、掴線器に接続される。
【0004】
フレームには、クレビス及びクレビスピンが設けられている。このクレビスに、フックを介して尻手ワイヤが接続される。
【0005】
特許文献1には、掴線器及び尻手ワイヤを伴うものではないが、例えば送電鉄塔の部材取換工事において、張線器とUクレビス等を組み合わせて用いる工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
張線器のクレビスピンは、クレビスから抜けないように、例えば割ピンを用いて固定される。各種工事(例えば電線工事)では作業者は手袋を着用するが、割ピンの脚部の先端に手袋が引っ掛かり、作業効率を低下させることがあった。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、割ピンが作業の邪魔になりにくい張線器を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の張線器が提供される。即ち、張線器は、フレームと、ドラムと、線状部材と、クレビスと、クレビスピンと、を備える。前記ドラムは、前記フレームに回転可能に支持される。前記線状部材は、前記ドラムに固定され、前記ドラムが回転することで前記ドラムに巻き取られる。前記クレビスは、前記フレームを他の部材に連結する。前記クレビスピンは、割ピンによって前記クレビスに固定される。前記割ピンは、頭部と、1対の脚部と、を備える。前記クレビスピンには、溝と、貫通状のピン孔と、が形成される。前記溝は、前記クレビスピンの外周面に周方向又は接線方向に形成される。前記割ピンの前記脚部は前記ピン孔を通過するとともに、前記脚部の先端面の少なくとも一部が前記溝の内部に位置している。
【0011】
これにより、割ピンの脚部の先端が、クレビスピンから大きく突出しなくなる。従って、作業者が装着している手袋等が脚部に引っ掛かることを防止できる。
【0012】
前記の張線器においては、前記溝は、前記クレビスピンの外周全体にわたってリング状に形成されていることが好ましい。
【0013】
これにより、脚部をクレビスピンの外周面にコンパクトに巻くことができる。この結果、脚部がクレビスピンの外周面から突出しにくくなる。
【0014】
前記の張線器においては、前記ピン孔が前記クレビスピンの外周面に形成する2つの開口のうち少なくとも1つは、前記溝の内壁に配置されていることが好ましい。
【0015】
これにより、割ピンの脚部を溝に沿ってコンパクトに巻くことができる。
【0016】
前記の張線器においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記溝は前記クレビスピンの外周面に周方向に形成される。それぞれの前記脚部は、前記溝の内部で90°を上回る角度で曲げられる。
【0017】
これにより、脚部の先端が頭部の近くに配置されるので、脚部の先端に作業者の手袋等が触れにくくなる。この結果、引っ掛かりを防止できる。
【0018】
前記の張線器においては、前記脚部の一部だけが前記溝の内部に位置し、残りが前記溝から突出していることが好ましい。
【0019】
これにより、割ピンの抜止め効果を良好に発揮させることができる。
【0020】
前記の張線器においては、前記クレビスピンを軸方向と平行な平面で切った断面において、前記溝は円弧状の輪郭を有していることが好ましい。
【0021】
これにより、割ピンの脚部がクレビスピンに巻かれる内周側が断面円弧状の部分を有している場合に、溝の内壁に良好に沿わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る張線器の全体的な構成を示す斜視図。
【
図2】クレビスにクレビスピンを取り付ける作業を説明する斜視図。
【
図3】割ピンをクレビスピンに固定する作業を説明する斜視図。
【
図4】クレビスピンの溝に対する割ピンの脚部の配置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る張線器1の全体的な構成を示す斜視図である。
図2は、クレビス6にクレビスピン70を取り付ける作業を説明する斜視図である。
図3は、割ピン80をクレビスピン70に固定する作業を説明する斜視図である。
図4は、クレビスピン70の溝75に対する割ピン80の脚部82の配置を示す断面図である。
【0024】
図1に示す本実施形態の張線器1は、ワイヤ(線状部材)30をドラム10に巻き取ることができる。
【0025】
張線器1は、フレーム2と、ハンドル9と、ドラム10と、クレビス6と、クレビスピン70と、を備える。
【0026】
フレーム2は、2つのベースプレート3,4を備える。それぞれのベースプレート3,4は、板状の部材である。2つのベースプレート3,4は、厚み方向に適宜の間隔をあけて配置されている。
【0027】
フレーム2の端部には、クレビス6が支持されている。クレビス6は、2股状の先端部を有しており、先端部同士はクレビスピン70を介して連結される。クレビスピン70に例えばフックを掛けることで、張線器1のフレーム2を別の部材(例えば、尻手ワイヤ)に連結することができる。
【0028】
ドラム10は、ベースプレート3,4の間に回転可能に支持されている。ドラム10には、ワイヤ30の端部が固定されている。
【0029】
ワイヤ30は可撓性を有している。ワイヤ30の構成は任意であるが、本実施形態では金属製のワイヤが用いられている。ワイヤ30には、例えば滑車を介して、図示しない公知の掴線器が取り付けられる。掴線器は、張線器1により張力を与えたい対象の部材を掴んで固定することができる。
【0030】
ドラム10をフレーム2に対して矢印A方向に回転させることで、ワイヤ30を引っ張り、ドラム10の外周に巻き取ることができる。ドラム10をA方向とは逆のB方向に回転させることで、ワイヤ30をドラム10から巻き出すことができる。
【0031】
図示しないが、ドラム10のシャフトはベースプレート3を貫通するように延長されている。このシャフトに、入力歯車11及び入力ホイール15が固定されている。入力歯車11及び入力ホイール15は、ドラム10と一体的に回転する。
【0032】
ハンドル9は、細長い棒状の部材である。ハンドル9は、ドラム10の回転軸を中心にして回転可能に支持されている。ハンドル9は、入力歯車11に対して相対回転可能である。ハンドル9の基部は中空状に形成され、その内部に入力歯車11が配置されている。
【0033】
ハンドル9には、ラチェット爪12が配置されている。ラチェット爪12は、入力歯車11の外周に形成されている歯に噛み合うことができる。ラチェット爪12は、ハンドル9を何れか一側に回転させる場合は、係合状態となって、ハンドル9の回転を入力歯車11へ伝達する。一方、ハンドル9を反対側に回転させた場合は、係合解除状態となり、ハンドル9の回転は入力歯車11へ伝達されない。ハンドル9をP方向、Q方向、P方向、Q方向、・・・と交互に往復回転させることで、入力歯車11を一側へ間欠的に回転させることができる。
【0034】
ラチェット爪12は、図示しないツマミを備える。作業者がツマミを操作することで、ハンドル9をP方向とQ方向のうち何れに回転させた場合にラチェット爪12が係合状態になるかを切り換えることができる。
【0035】
張線器1は、ロック機構(逆転防止機構)16を備える。ロック機構16は、例えば、ラチェット機構として構成される。ロック機構16は、ドラム10がフレーム2に対してA方向に回転するのを許容し、B方向に回転するのを阻止する。ロック機構16により、ワイヤ30の張力がドラム10に加わっても、ワイヤ30を巻き出すB方向にドラム10が回転しないように保持することができる。
【0036】
ロック機構16は、規制歯車7と、ロック部材8と、を備える。規制歯車7は、ドラム10に固定され、一体的に回転する。ロック部材8は、フレーム2に第1支軸46を介して回転可能に支持されている。第1支軸46の中心は、ベースプレート3,4の厚み方向に延びている。ロック部材8は爪を備えており、規制歯車7の外周の歯に噛み合うことができる。図示しないバネにより、ロック部材8には、爪が規制歯車7に噛み合う向きの弾性力が加えられている。これにより、爪が規制歯車7に噛み合ったロック状態が自動的に実現され、ドラム10のB方向への回転を阻止することができる。規制歯車7の外周の歯は鋸歯状に形成されているため、ドラム10がA方向に回転しようとする場合、ロック部材8の爪は規制歯車7の外周を乗り越えることができる。
【0037】
ドラム10をB方向に回転させる必要がある場合、作業者は、バネの力に抗する方向にロック部材8を手で押して回転させる。これにより、爪と規制歯車7との噛合いを解除することができる。
【0038】
フレーム2には、U字状の回転部材5が配置されている。回転部材5はベースプレート3,4の間に配置され、前述の第1支軸46を介して回転可能に支持される。
【0039】
回転部材5は、スイングベース50と、第1プレートアーム51と、第2プレートアーム52と、を備える。
【0040】
スイングベース50は、板状に形成されている。スイングベース50を貫通するように、第2支軸47が配置されている。第1プレートアーム51及び第2プレートアーム52は、スイングベース50に対して垂直な向きに延びている。第1プレートアーム51及び第2プレートアーム52の先端部を貫通するように、第1支軸46が配置されている。
【0041】
クレビス6は、回転部材5に対して、第2支軸47を介して回転可能に連結されている。第2支軸47は、第1支軸46と垂直な向きに延びている。
【0042】
クレビス6は、連結ベース60と、第1アーム61と、第2アーム62と、を備える。
【0043】
連結ベース60は、板状に形成されている。連結ベース60は、回転部材5が備えるスイングベース50に対し、第2支軸47を介して回転可能に連結されている。
【0044】
第1アーム61及び第2アーム62は、連結ベース60に対して垂直な向きに延びている。第1アーム61及び第2アーム62の先端部を貫通するように、クレビスピン70が固定されている。
【0045】
クレビスピン70は、軸部71と、頭部72と、割ピン装着部73と、を備える。
【0046】
軸部71は、丸棒状に形成されている。軸部71は、第1アーム61及び第2アーム62に形成された貫通孔に差し込まれている。
【0047】
頭部72は、軸部71の一端に形成されている。頭部72は、公知のボルトの頭部と同様に、6角形状に構成されている。
【0048】
割ピン装着部73は、軸部71のうち、頭部72と反対側の端部に配置されている。割ピン装着部73には、割ピン80を装着するための直線状のピン孔74が貫通状に形成されている。割ピン装着部73に割ピン80が固定されることにより、クレビス6からクレビスピン70が抜けるのを阻止することができる。
【0049】
割ピン80は、頭部81と、1対の脚部82と、を備える公知の構成である。割ピン80は、例えば金属により構成されている。
【0050】
頭部81は、360°に近い角度の円弧状に形成されている。頭部81は、上述のピン孔74を通過することはできない。
【0051】
1対の脚部82のそれぞれは、頭部81の端部に接続されている。変形前の状態において、2つの脚部82は、互いに平行な直線状に延び、互いに隣接して配置されている。この状態で、2つの脚部82は、ピン孔74を通過することができる。
【0052】
割ピン80を割ピン装着部73に固定する場合、
図2に示すように、2つの脚部82を、頭部81と反対側の端部からピン孔74に差し込む。続いて、
図3に示すように、2つの脚部82のうちピン孔74から出ている部分を互いに離すように曲げ、割ピン装着部73の外周に巻くように配置する。2つの脚部82が割ピン装着部73に巻き付けられる向きは、互いに逆である。図面の簡潔さのため、
図2及び
図3等において、張線器1のうちフレーム2及び回転部材5等は省略されている。
【0053】
割ピン装着部73においては、軸部71の外周に、周方向に細長い溝75が形成されている。この溝75には、割ピン80の脚部82を軸部71の外周に巻き付けた場合に、
図4に示すように、先端の少なくとも一部を収容することができる。
【0054】
割ピン80の脚部82の先端面の少なくとも一部が溝75に入っているので、脚部82が割ピン装着部73から突出しにくくなる。
図5には溝75が省略された比較例が示され、この比較例では、脚部82(特に、曲げの塑性変形が困難な先端部)が、軸部71の外周面から離れ易くなっている。これに対し、本実施形態では
図5に示すように、脚部82の先端面のうち一部(最も内周側の部分)が、溝75の内部に位置している。これにより、軸部71の外周面から脚部82の先端が突出する距離を減らすことができる。従って、脚部82が作業者の手袋等に引っ掛かって作業の支障となることを回避できる。
【0055】
本実施形態において、溝75は周方向に細長く形成されている。従って、脚部82が曲がる向きが溝75によって案内されるので、割ピン80を整然と変形させることができる。
【0056】
図6には、クレビスピン70を軸に平行な平面で切った断面が示されている。この
図6に示すように、溝75の断面は円弧状となっている。これにより、脚部82の断面が実質的に半円状となっている割ピン80を使用した場合において、脚部82と溝75との間の隙間が大きくなりにくい。従って、手袋等が溝75と脚部82との間に挟まることを防止できる。
【0057】
図4等に示すように、溝75は、貫通状のピン孔74の両方の開口に接続するように、軸部71の外周全体にわたってリング状に形成されている。これにより、ピン孔74の2つの開口のうち何れから脚部82を差し込んでも差し支えない対称的な構成となるため、作業性が良好である。
【0058】
以上に説明したように、本実施形態の張線器1は、フレーム2と、ドラム10と、ワイヤ30と、クレビス6と、クレビスピン70と、を備える。ドラム10は、フレーム2に回転可能に支持される。ワイヤ30は、ドラム10に固定され、ドラム10が回転することでドラム10に巻き取られる。クレビス6は、フレーム2を他の部材に連結する。クレビスピン70は、割ピン80によってクレビス6に固定される。割ピン80は、頭部81と、1対の脚部82と、を備える。クレビスピン70には、溝75と、貫通状のピン孔74と、が形成される。溝75は、クレビスピン70の外周面に周方向又は接線方向に形成される。割ピン80の脚部82はピン孔74を通過するとともに、1対のうち少なくとも一方の脚部82の先端面の少なくとも一部が溝75の内部に位置している。
【0059】
これにより、作業者がクレビスピン70の周辺で作業をする場合において、割ピン80の脚部82に手袋等が引っ掛かって作業の支障となることを防止できる。
【0060】
本実施形態の張線器1において、溝75は、クレビスピン70の外周全体にわたってリング状に形成されている。
【0061】
これにより、脚部82をクレビスピン70の外周面にコンパクトに巻くことができる。この結果、脚部82がクレビスピン70の外周面から突出しにくくなる。
【0062】
本実施形態の張線器1において、ピン孔74がクレビスピン70の外周面に形成する2つの開口のうち何れも、溝75の内周面に配置されている。
【0063】
これにより、ピン孔74と溝75との接続部分において、脚部82をコンパクトに曲げて配置することができる。
【0064】
本実施形態の張線器1において、溝75はクレビスピン70の外周面に周方向に形成される。それぞれの脚部82は、溝75に沿って、90°を上回る角度(α>90°)でクレビスピン70に巻かれる。
【0065】
これにより、曲げられた状態の脚部82の先端が、頭部81に近接するように配置される。手袋が脚部82の先端に近づくのを頭部81が阻止する形となるので、脚部82への引っ掛かりを防止できる。
【0066】
本実施形態の張線器1において、脚部82の一部だけが溝75の内部に位置し、残りが溝75から突出している。
【0067】
これにより、割ピン80の抜止め作用を確実に発揮させることができる。
【0068】
本実施形態の張線器1において、クレビスピン70を軸方向と平行な平面で切った断面において、溝75は円弧状の輪郭を有している。
【0069】
これにより、脚部82の断面が円弧状となっている割ピン80を用いた場合に、溝75と脚部82との間を小さくすることができる。従って、手袋が脚部82の先端に引っ掛かることを防止できる。
【0070】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0071】
図7の第1変形例で示すように、脚部82が巻かれる角度αが90°以下であっても良い。また、溝75が、軸部71の全周にわたるリング状でなく、円弧状に形成されても良い。本変形例では、ピン孔74の2つの開口のうち割ピン80の頭部81が位置する側は、溝75の内壁に位置していない。
【0072】
図8の第2変形例で示すように、溝75が円弧状でなく、軸部71の外周面に対する接線の向きに直線状に形成されても良い。この構成では、脚部82が溝75に入っている部分は、溝75に沿って直線状に配置される。この変形例では、ピン孔74の2つの開口は何れも、溝75の内壁に位置していない。
【0073】
図9に示す第3変形例では、リング状の溝75が、軸部71の中心に対して偏心して形成されている。溝75の深さは、割ピン80の頭部81に近づくに従って大きくなっている。脚部82の先端面は、その全部が溝75の内部に位置している。
【0074】
溝75の断面輪郭は、
図6のように円弧状とすることに代えて、例えば矩形状、V字状等とすることもできる。
【0075】
1対の脚部82のうち1つだけの先端面が、溝75に一部又は全部が入るように配置されても良い。
【0076】
張線器1は、電線工事及び農業に限定されず、他の様々な作業に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 張線器
2 フレーム
6 クレビス
10 ドラム
30 ワイヤ(線状部材)
70 クレビスピン
72 頭部
74 ピン孔
75 溝
80 割ピン
81 頭部
82 脚部
【要約】
【課題】クレビスピンに取り付けた状態の割ピンが作業の邪魔になりにくい構成の張線器を提供する。
【解決手段】張線器は、フレームと、ドラムと、ワイヤと、クレビス6と、クレビスピン70と、を備える。ドラムは、フレームに回転可能に支持される。ワイヤは、ドラムに固定され、ドラムが回転することでドラムに巻き取られる。クレビス6は、フレームを他の部材に連結する。クレビスピン70は、割ピン80によってクレビス6に固定される。割ピン80は、頭部81と、1対の脚部82と、を備える。クレビスピン70には、溝75と、貫通状のピン孔74と、が形成される。溝75は、クレビスピン70の外周面に周方向又は接線方向に形成される。割ピン80の脚部82はピン孔74を通過する。脚部82の先端面の少なくとも一部が溝75の内部に位置している。
【選択図】
図3