(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】半導体ウエーハの接合装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01L21/02 B
(21)【出願番号】P 2024130182
(22)【出願日】2024-08-06
【審査請求日】2024-08-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524296279
【氏名又は名称】SHW Technologies Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120226
【氏名又は名称】西村 知浩
(72)【発明者】
【氏名】長田厚
(72)【発明者】
【氏名】王笑寒
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-008228(JP,A)
【文献】特許第7526450(JP,B1)
【文献】国際公開第2021/131080(WO,A1)
【文献】特開2022-181154(JP,A)
【文献】国際公開第2023/032166(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00-H01L 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハに対してプラズマ処理を実行する真空チャンバにおいて、真空環境下で、クーロン力を利用して、相互に対向する一対のウエーハ同士を接合することにより接合強度を高める、半導体ウエーハの接合装置
であって、
相互に対向する前記ウエーハ同士を接合する前に、
前記ウエーハの一方にシリコン電極を用い、前記ウエーハの他方に半導体ウエーハを用い、
前記シリコン電極と前記半導体ウエーハとに対して1度目の前記プラズマ処理を実行した後、前記シリコン電極を貼り合わせウエーハに変更して、前記貼り合わせウエーハと前記半導体ウエーハとに対して2度目の前記プラズマ処理を実行する、半導体ウエーハの接合装置。
【請求項2】
ステージ上で相互に対向する位置に設けられた一対の保持部を有し、
前記保持部により前記ウエーハを吸着させた状態で、前記保持部の少なくとも一方を移動させることにより、相互に対向する前記ウエーハ同士を接合可能にする、請求項1に記載の半導体ウエーハの接合装置。
【請求項3】
ウエーハに対してプラズマ処理を実行する真空チャンバにおいて、真空環境下で、クーロン力を利用して、相互に対向する一対のウエーハ同士を接合することにより接合強度を高める、半導体ウエーハの接合方法であって、
相互に対向する前記ウエーハ同士を接合する前に、
前記ウエーハの一方にシリコン電極を用い、前記ウエーハの他方に半導体ウエーハを用い、
前記シリコン電極と前記半導体ウエーハとに対して1度目の前記プラズマ処理を実行した後、前記シリコン電極を貼り合わせウエーハに変更して、前記貼り合わせウエーハと前記半導体ウエーハとに対して2度目の前記プラズマ処理を実行する、半導体ウエーハの接合
方法。
【請求項4】
ステージ上で相互に対向する位置に設けられた一対の保持部を有し、
前記保持部により前記ウエーハを吸着させた状態で、前記保持部の少なくとも一方を移動させることにより、相互に対向する前記ウエーハ同士を接合可能にする、
請求項3に記載の半導体ウエーハの接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセスにおいて、例えば高周波イオン流動接合(RFIon Flow Bonding,(RFIFB))により半導体ウエーハ同士を接合する半導体ウエーハの接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体製造プロセスの一部であるハイブリッドボンディングは、例えば、プラズマ処理工程と、洗浄工程と、乾燥工程と、接合工程と、を有している。
【0003】
プラズマ処理工程では、例えば、半導体ウエーハに対して大気圧プラズマ又は真空プラズマを作用させて半導体ウエーハの表面を活性化させる。洗浄工程では、例えば、半導体ウエーハを中心軸回りに回転させながら、洗浄液(純水又は薬液)を滴下して半導体ウエーハの表面を洗浄する。乾燥工程では、例えば、半導体ウエーハを中心軸回りに高速で回転させながら半導体ウエーハの表面の水滴を散らす。接合工程では、例えば、プラズマ処理工程から乾燥工程を経た上下2枚の半導体ウエーハ同士を対向させて接合装置により接合する。
【0004】
ここで、従来の接合装置では、相互対向して配置された平面状のステージ上に半導体ウエーハを載置し、相互に対向した一対の半導体ウエーハ同士を常温接合プロセスの表面活性化接合(SAB:Surface Activated Bonding)手法(以下、適宜「SAB手法」という。)により接合していた。
【0005】
表面活性化接合は、アルゴンなどの不活性ガスをイオン化してイオンビームを作り、このイオンビームやプラズマを接合すべき材料の表面に照射することで、接合材料の表面に存在する酸化膜や汚染層を除去し、表面を活性化することで、低温・常温での接合を実現するものである。
【0006】
しかしながら、SAB手法では、酸化膜の除去を行う事で表面が荒れてしまい半導体ウエーハ同士の接合強度が低下する。Arイオンビームのスポット照射によりウエーハもしくはビームを動かす事でパーティクルが発生しボイド等の発生により問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、簡易な構成により、半導体製造プロセスにおけるウエーハ同士の接合強度を向上できる半導体ウエーハの接合装置及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ウエーハに対してプラズマ処理を実行する真空チャンバにおいて、真空環境下で、クーロン力を利用して、相互に対向する一対のウエーハ同士を接合することにより接合強度を高める、半導体ウエーハの接合装置及び接合方法である。
【0010】
相互に対向する前記ウエーハ同士を接合する前に、前記ウエーハの一方にシリコン電極を用い、前記ウエーハの他方に半導体ウエーハを用い、前記シリコン電極と前記半導体ウエーハとに対して1度目の前記プラズマ処理を実行した後、前記シリコン電極を貼り合わせウエーハに変更して、前記貼り合わせウエーハと前記半導体ウエーハとに対して2度目の前記プラズマ処理を実行してもよい。
【0011】
ステージ上で相互に対向する位置に設けられた一対の保持部を有し、前記保持部により前記ウエーハを吸着させた状態で、前記保持部の少なくとも一方を移動させることにより、相互に対向する前記ウエーハ同士を接合可能にしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成により、半導体製造プロセスにおける半導体ウエーハ同士の接合強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の半導体ウエーハの接合装置の構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態の半導体ウエーハの接合装置による半導体ウエーハに対するプラズマ処理と接合処理を示す構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態の半導体ウエーハの接合装置による半導体ウエーハに対するプラズマ処理と接合処理における工程図である。
【
図4】高周波イオン流動接合処理の一例を示したフロー図である。
【
図5】本発明の一実施形態の半導体ウエーハの接合装置が組み付けられた半導体製造システムの平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の半導体ウエーハの接合装置が組み付けられた半導体製造システムの側面図である。
【
図7】単極型の静電チャックの構造を示した構成図である。
【
図8】双極型の静電チャックの構造を示した構成図である。
【
図9】本発明の一実施形態の半導体ウエーハの接合装置を構成するステージに設けられた双極型の静電チャックで半導体ウエーハ同士を接合するときの状態を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明の一実施形態の半導体ウエーハの接合装置及び接合方法について説明する。
【0015】
本発明の一実施形態の半導体ウエーハの接合装置及び接合方法は、プラズマチャンバ又は真空チャンバを用いて、半導体ウエーハ同士の接合が実行される。換言すれば、プラズマチャンバ又は真空チャンバは、接合チャンバ、ボンディングチャンバ、接合装置、ボンディング装置等と称することも可能である。
【0016】
[本発明の技術思想]
本発明の技術思想は、ウエーハに対してプラズマ処理を実行する真空チャンバの内部において、真空環境下で、クーロン力(「静電気力」ともいう。以下同じ)を利用して、相互に対向する一対のウエーハ同士を接合することにより相互の接合強度を高める、半導体ウエーハの接合装置である。
【0017】
前記真空チャンバは、ステージ上で相互に対向する位置に設けられた一対の保持部を有し、前記保持部により前記ウエーハを吸着させた状態で、前記保持部の少なくとも一方を移動させることにより、相互に対向する前記ウエーハ同士を接合可能にしてもよい。
【0018】
ここで、相互に対向する前記ウエーハ同士を接合する前に、前記ウエーハの一方にシリコン電極を用い、前記ウエーハの他方に半導体ウエーハを用い、前記シリコン電極と他方の前記半導体ウエーハとに対して1度目の前記プラズマ処理を実行した後、前記シリコン電極を貼り合わせウエーハに変更して、前記貼り合わせウエーハと前記半導体ウエーハとに対して2度目の前記プラズマ処理を実行することが好ましい。
【0019】
1度目の前記プラズマ処理と2度目の前記プラズマ処理との間において、相互に対向する前記半導体ウエーハの表面に形成された酸化膜をエッチングガスの供給により除去してもよい。
【0020】
上述した本発明の技術思想は、半導体ウエーハの接合装置に限定されるものではなく、上記した特徴と同じ特徴を有する半導体ウエーハの接合方法についてもあてはまる。
【0021】
[半導体ウエーハの接合装置の構成]
図1に示すように、本実施形態の半導体ウエーハの接合装置34は、各種のウエーハ同士を接合するものである。なお、半導体ウエーハ及び貼り合わせウエーハは、例えばシリコンウエーハ等が使用されるが、シリコンウエーハに限定されるものではない。従来から使用されている異なる材質の半導体ウエーハを使用したり、異なる材質の半導体ウエーハ同士を接合することも可能である。
【0022】
図1に示すように、半導体ウエーハの接合装置34は、筐体であるチャンバ14と、チャンバ内部の上側に位置する第1のステージ36と、チャンバ内部の下側に位置する第2のステージ38と、を有している。第1のステージ36には、半導体ウエーハ又は電極(例えばシリコン電極)を保持可能な第1の保持部102が配置されている。第2のステージ38には、半導体ウエーハ又は電極(例えばシリコン電極)を保持可能な第2の保持部104が配置されている。
【0023】
なお、筐体であるチャンバ14又は接合装置34を「真空チャンバ」と称することもできる。
【0024】
ここで、第1のステージ36及び第2のステージ38、又は、第1の保持部102及び第2の保持部104は、例えば、静電チャック又はメカニカルクランプなどが用いられる。なお、静電チャックは、例えば、静電チャック78、80(
図7乃至
図9)に示した静電チャックを使用してもよい。
図7乃至
図9の静電チャック78、80の構成については後述する。
【0025】
また、
図2に示すように、重力作用方向の上流側である第1のステージ36又はその近傍には、第1の保持部102及び第1の保持部102で保持された半導体ウエーハW1又はシリコン電極G1を他の保持部で保持された半導体ウエーハ又はシリコン電極と取り換えるための第1の取り換え装置106が配置されている。なお、シリコン電極G1と半導体ウエーハW1との取り換え工程は、シリコン電極G2と当該シリコン電極G1を保持する第1の保持部102とがセットになり、半導体ウエーハW1と半導体ウエーハW1を保持する第1の保持部102とをセットにした単位で、セット毎に交換することが好ましいが、この態様に限定されるものではない。
【0026】
シリコン電極G1は、公知のものであり、例えば、ダミーウエーハ又はベアウエーハともいわれている。
【0027】
第1の保持部102で保持される半導体ウエーハW1には、例えばシリコンウエーハ電極G1のほか、貼り合わせウエーハG2等も含む。
【0028】
第1の取り換え装置106は、第1のステージ36側に設けられている構成に限られず、接合装置34のその他の構成として、又は接合装置34の外部に配置されていてもよい。
【0029】
また、重力作用方向の下流側である第2のステージ38又はその近傍には、第2の保持部38及び第2の保持部38で保持された半導体ウエーハW2又はシリコン電極を他の保持部で保持された半導体ウエーハW2又はシリコン電極と取り換えるための第2の取り換え装置108が配置されてもよい。なお、シリコン電極(図示省略)と半導体ウエーハW2との取り換え工程は、シリコン電極(図示省略)とシリコン電極(図示省略)を保持する第2の保持部104とがセットになり、半導体ウエーハW2と半導体ウエーハW2を保持する第2の保持部104とをセットにした単位で、セット毎に交換することが好ましいが、この態様に限定されるものではない。
【0030】
第2の取り換え装置108は、第2のステージ38側に設けられている構成に限られず、接合装置34のその他の構成として、又は接合装置34の外部に配置されていてもよい。
【0031】
なお、第1の取り換え装置106又は第2の取り換え装置108は、少なくともいずれか一方が配置されている構成が好ましい。
【0032】
ここで、第1の取り換え装置106及び第2の取り換え装置108として、例えばロボットハンドが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
第1の保持部102で保持される半導体ウエーハW1及び第2の保持部104で保持される半導体ウエーハW2として、例えば、Siウエーハ又はSiCウエーハが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0034】
図1に示すように、第1のステージ36及び第2のステージ38には、高周波電源110がそれぞれ接続されている。高周波電源110は、高周波電場(13.56MHz、200W)を実現できる性能を有している。高周波電源110が印加されることにより、電界により原子の流動及び拡散が促進され、半導体ウエーハW1、W2の接合面の密着性が向上する。
【0035】
半導体ウエーハの接合装置34は、筐体内部の圧力を制御することができる自動圧力制御装置112(APC)が設けられている。自動圧力制御装置112により筐体内部の圧力が制御される。
【0036】
半導体ウエーハの接合装置34は、ターボ分子ポンプ114(TMP)が設けられている。ターボ分子ポンプ114とは、例えば、タービン型の翼をもつロータ(動翼)と、ステータ(固定翼)と、から構成されている。
【0037】
ターボ分子ポンプ114は、1×10-6Paという高真空で排気速度の大きな高性能ポンプである。
【0038】
[半導体ウエーハの接合装置の効果]
各々のウエーハ同士の接合がより強固になる。
異なるプラズマ処理時間を要する半導体ウエーハ同士を接合する場合、プラズマ処理時間が短い仕様が要求される半導体ウエーハを貼り合わせウエーハとして、シリコン電極と交換することにより、プラズマ処理時間を短くすることができる。これにより、貼り合わせウエーハに対する短時間のプラズマ処理が実現できる。この結果、貼り合わせウエーハの表面がプラズマ処理の長時間化により劣化することがなく、各々のウエーハが接合して形成された半導体製品(半導体デバイス等)の品質劣化を防止できる。
【0039】
[1度目のプラズマ処理の実行]
図1及び
図2に示すように、半導体ウエーハの接合装置34によれば、並行平板電極構造であり、筐体内部を真空中にして、第1の保持部102でシリコン電極G1(例えば、「シリコンウエーハ電極」ともいう。)を保持し、第2の保持部104で半導体ウエーハW2(例えば、シリコンウエーハ)を保持した状態で、アルゴンプラズマ等による1度目のプラズマ処理を実行する。これにより、真空のチャンバ14の内部でアルゴンプラズマを用いてシリコン電極G1からシリコンがスパッタリングされるとともに、第2の保持部104で保持された半導体ウエーハW2の表面がプラズマにより活性化され、半導体ウエーハW2の表面にはシリコンによる蒸着膜Xが形成される。なお、プラズマによる半導体ウエーハW2の表面活性化では、アルゴン(Ar)又は窒素(N
2)等のガスが使用され、半導体ウエーハW2の表面の酸化膜と汚染物質がそれぞれ除去される。2度目のプラズマ処理における半導体ウエーハW2の表面活性化でも同様の効果がある。
【0040】
ここで、高周波電源110を使用しているため、エネルギーが小さくなり、半導体ウエーハW2の表面のプラズマダメージが少なくて済む。また、半導体ウエーハW2には、シリコンウエーハ電極であるプラズマ電極G1に対するスパッタリングにより、薄い蒸着膜Xが形成される。
【0041】
[等方性エッチング]
なお、1度目の前記プラズマ処理と以下の2度目の前記プラズマ処理との間において、半導体ウエーハW2の表面に形成された酸化膜をSF6などのエッチングガスの供給により除去するための等方性エッチング工程を実行してもよい。等方性エッチング工程後において、プラズマガスをアルゴンガスに切り替えて(ガス置換)、2度目のプラズマ処理においてウエーハ表面の活性化を実行する。
【0042】
[2度目のプラズマ処理の実行]
次に、シリコン電極G1を半導体ウエーハW1である貼り合わせウエーハG2に交換する。貼り合わせウエーハG2とは、例えば、シリコンウエーハ等の半導体ウエーハであるがシリコンに限定されるものではない。シリコン電極G1と貼り合わせウエーハW1との交換工程は、例えば、シリコン電極G1と当該シリコン電極G1を保持する第1の保持部102とがセットになった部品として、貼り合わせウエーハG2と当該貼り合わせウエーハG2を保持する第1の保持部102とがセットになった別の部品に交換されて行われる。また、第1の保持部102はそのままの状態で共通して用い、第1の保持部102からシリコン電極G1だけを分離した後、当該第1の保持部102に貼り合わせウエーハG2を保持してもよい。交換工程時及び交換工程後では、プラズマ処理が実行されており、アルゴン(Ar)又は窒素(N2)等のガスを使用して、第1の保持部102で保持された貼り合わせウエーハG2と第2の保持部104で保持された半導体ウエーハW2の各々の表面が活性化される。第1の保持部102で保持された貼り合わせウエーハG2と第2の保持部104で保持された半導体ウエーハW2の各々の表面の酸化膜と汚染物質がそれぞれ除去される。そして、高周波電源110による印加が継続されている環境で、アルゴン(Ar)又は窒素(N2)等のガスの供給を止め、自動圧力制御装置112を高出力で駆動させて、例えば約10秒でチャンバ14の内部の真空度が到達真空度(例えば、1×10-6Pa(pascal))に至る。このとき、プラズマが消失するが、第1の保持部102で保持された貼り合わせウエーハG2と、第2の保持部104で保持された半導体ウエーハW2との各々の表面にはイオンが分極された状態になる。
【0043】
チャンバ14の内部の到達真空度に至る時間は、約10秒に限定されるものではなく、例えば1秒~30秒の範囲、より好ましくは1秒~15秒の範囲、さらに好ましくは1秒~10秒の範囲で設定されてもよい。チャンバ14の内部の到達真空度に至る時間は、早ければ早いほどよい。
【0044】
[ウエーハ同士の接合処理の実行]
この状態で、例えば
図3に示すように、第1のステージ36又は/及び第2のステージ38が相互に近接するように移動することにより、第1の保持部102で保持された貼り合わせウエーハG2と第2の保持部104で保持された半導体ウエーハW2との離間距離が縮められ、両者の表面に発生するクーロン力(静電気力)により、ウエーハ同士の原子間距離が近くなり、やがて接触する。このとき、第1のステージ36を固定して、第2のステージ38を第1のステージ36側に接近するように移動させてもよい。また、第2のステージ38を固定して、第1のステージ36を第2のステージ38側に接近するように移動させてもよい。第1の保持部102で保持された貼り合わせウエーハG2と第2の保持部104で保持された半導体ウエーハW2との間の初期の結合力が強くなるが、相互に対向するウエーハG2、W2同士が接触した後も高周波電源110の印加を継続することにより、RF高周波がそれぞれのウエーハG2、W2の表面間を流れ、電界によりイオン流動(原子拡散)が発生することにより、両者の接合がより強固になる。
【0045】
本実施形態よる半導体ウエーハの製造手法は、業界初となる製造手法であり、高周波イオン流動接合(RF Ion Flow Bonding,RFIFB)と称する。
【0046】
なお、第1の保持部102で保持された貼り合わせウエーハG2に対するプラズマ処理は1度だけ実行されるものであるが、第2の保持部104で保持された半導体ウエーハW2に対するプラズマ処理は2度だけ実行されたことになる。
【0047】
また、第1の保持部102と第1の保持部102で保持したシリコン電極G1に替えて、別の第1の保持部102と第1の保持部102で保持した貼り合わせウエーハG2に交換した後、第1の保持部102で保持された貼り合わせウエーハG2と、第2の保持部104で保持される半導体ウエーハW2と、を接合する構成が好ましいが、これに限定されるものではない。また、第1の保持部102が重力作用方向の上流側(上側)に位置し、第2の保持部104が重力作用方向の下流側(下側)に位置することが好ましい。
【0048】
一方、従来技術として、原子拡散接合(ADB:Atomic Diffusion Bonding)がある。原子拡散接合とは、常温活性化接合といわれる技術であり、Arビームによる半導体ウエーハ表面の活性化、又はSiスパッタリングによる半導体ウエーハ表面の活性化によるものが知られているが、いずれも活性化した半導体ウエーハ同士の貼り合わせには数分の時間を要していた。
【0049】
一般に半導体ウエーハ表面の活性化状態は短時間で劣化するため、迅速な真空引きと貼り合わせが必要になる。
【0050】
そこで、本実施形態によれば、ウエーハ表面に対してプラズマ処理により表面を活性化した後、例えば約10秒以内にターボ分子ポンプ114で到達圧力まで真空引きを行い、各々のウエーハ同士の貼り合わせることにより、ウエーハ表面活性化後の表面活性化減衰を極限まで減らした原子拡散接合が可能になった。
【0051】
すなわち、本実施形態は、例えば上下方向の並行平板プラズマ電極で、例えば上下の電極にウエーハを保持できる構造(例えば、静電チャック、メカニカルクランプ等)を利用し、一方の電極は貼り合わせウエーハと交換可能に設計されているものである。
【0052】
本実施形態によれば、シリコン電極G1のスパッタリングによる電極表面の荒れから、並行平板ウエハープラズマ内に微粒子が現れ、ボイドが形成される。当該スパッタリングでシリコン電極G1の表面が荒れ、また再度スパッタリングされたシリコンが成長してシリコン電極G1の表面から剥がれ落ちる。剥がれ落ちたシリコンがパーティクルとしてブラウン運動して浮遊し続け、ウエーハのボイド欠陥を形成する原因になるが、本実施形態では、初期段階で貼り合わせウエーハG2に替えてシリコン電極G1(例えば、Siベアウエーハ等)を使用するため、貼り合わせウエーハG2に対するボイドによるダメージが低減できる。これにより、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2との接合により得られる半導体製品の品質低下及び品質劣化を回避できる。なお、シリコン電極G1は、毎回又は複数回ごとに定期的に交換することが好ましい。
【0053】
以上のようにして、並行平板の方側又は両側に使用するウエーハ類の表面活性化と、シリコン電極G1に対する高周波電源110の印加によるソフトスパッタリングにより、シリコン電極G1に対向する半導体ウエーハW2の処理面に、極薄の高純度Si形成膜である蒸着膜Xが形成される。
【0054】
プラズマ環境における半導体ウエーハW2の表面は、イオンにより叩かれて清浄な面が露出する。半導体ウエーハW2の表面が清浄化された後、上部(上側)に位置するシリコン電極G1(例えば、シリコンウエーハ)に異周波数の高周波電源110を印加させる。これにより、シリコン電極G1から微小なSiが飛び出して、下部(下側)に位置する半導体ウエーハW2の表面にSiが積もり、蒸着による薄膜である蒸着膜Xが形成される。
【0055】
なお、蒸着による薄膜が不要な場合には、この工程を省くことも可能である。
【0056】
次に、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2との接合では、貼り合わせウエーハG2を例えば上部(上側)の電極等にセットした状態において、アルゴン(Ar)又は窒素(N2)等のガスを用いて貼り合わせウエーハG2の表面を活性化させる。このとき、下部(下側)に配置されている半導体ウエーハW2の表面も活性化される。これらのことから、貼り合わせウエーハG2の表面活性化が1回だけ実行され、半導体ウエーハW2の表面活性化が2回だけ実行される。
【0057】
1つの筐体であるチャンバ14の内部において、相互に対向する電極間でプラズマが印加可能な圧力で、かつ、なるべく高真空でプラズマが維持可能な圧力にして2枚のウエーハ(貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2)の各々の表面を活性化させるのである。電極構造として、高真空でプラズマの維持を可能にするために、マグネトロン、ICPコイルなどを追加して構成してもよい。
【0058】
また、プラズマ表面活性化終了後の上側に配置された貼り合わせウエーハG2と下側に配置された半導体ウエーハW2との離間距離は、狭い方が好ましい。また、上側に配置されたシリコン電極G1と下側に配置された半導体ウエーハW2との離間距離は、狭い方が好ましい。前記離間距離として、例えば、プラズマ処理中は、プラズマが均一に印加可能な電極間でかつ最小な間隔で、終了後高真空に圧力変更時は10μm以上50μm以下の範囲でもよい。なぜなら、前記離間距離を狭くすることにより、外部からパーティクル等が電極間に浸入し難くなり、ウエーハ同士の接合処理においてパーティクルが混在することを防止できると同時に、到達真空から貼り合わせまでの時間短縮が可能である。
【0059】
貼り合わせウエーハG2及び半導体ウエーハW2に対するプラズマ処理により、貼り合わせウエーハG2及び半導体ウエーハW2の各々の表面に対する活性化が行われた後、アルゴン(Ar)又は窒素(N2)等のガスの供給を停止し、自動圧力制御装置112を駆動してターボ分子ポンプ114(又はクライオポンプ)の到達真空圧力まで、例えば約10秒以内になるように制御する。このとき、高周波電源110の印加が継続されているが、これに限定されるものではない。
【0060】
これにより、分極されたイオン(電子)は貼り合わせウエーハG2及び半導体ウエーハW2の各々の表面に滞在し、高真空中において貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2との接合を行うと、貼り合わせウエーハG2及び半導体ウエーハW2の各々の表面に帯電したイオン電位により、原子の運動が増加して、貼り合わせウエーハG2及び半導体ウエーハW2の各々の表面上で原子が一時的に移動し易くなる。また、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2との接合後の高周波電源110の印加によっても、原子の運動が増加して、貼り合わせウエーハG2及び半導体ウエーハW2の各々の表面上で原子が一時的に移動し易くなる。これらの相乗効果により、原子は、より安定なエネルギー状態に再配置される。特に貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2の各々の表面が活性化された状態では、原子は、より最適な位置に再配置され易くなる。この結果、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2の各々の表面のエネルギーが最小化され、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2との接合強度が向上するのである。
【0061】
ここで、一般的に、半導体ウエーハに対するプラズマ処理後から半導体ウエーハ同士が接合されるまでの時間は、半導体ウエーハをプラズマ処理チャンバから接合チャンバまでの移行時間と、2枚目の半導体ウエーハに対するプラズマ処理時間と搬送時間を合わせると、数分の待ち時間が生じることになる。この間、半導体ウエーハの表面は、プラズマ処理直後から10~50%程度、活性度が減衰して劣化する(減衰率10~50%)。
【0062】
これに対して、本実施形態では、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2とに対するプラズマ処理直後から瞬時の接合が実行されるため、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2との各々の表面の活性化状態が減衰率1%以下で維持されたまま、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2とが接合される。この結果、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2との接合が強固になる。
【0063】
[ボイドレスボンディング]
ボイドの多くは、Siスパッタリングのフレークと、チャンバ内のパーティクルである。シリコン電極G1の頻繁な交換は、スパッタリングにより形成されたフレークとパーティクルとを無くし、ボイドを低減する。また、真空プラズマ中において、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2との間に入り込むボイドを形成するためのシードとなる有機物はプラズマにより除去される。また、プラズマにより有機物の外部からウエーハ間への浸入を防止する。これらにより、ボイドレスボンディングが実現される。
【0064】
[高周波イオン流動接合の特徴]
高周波イオン流動接合は、以下の特徴を有する。
(1)プラズマ処理と瞬間真空度の管理制御によるウエーハの表面活性化及び清浄化を実現できる。
(2)クーロン力(静電気力)を利用したウエーハ同士の初期接合力を強化できる。
(3)高周波電源(RF高周波)により原子の流動と拡散を促進し、ウエーハ同士の接合強度を向上できる。
【0065】
[高周波イオン流動接合処理のフロー]
高周波イオン流動接合処理のフローの一例を説明する。
図4に示すように、例えば、ウエーハカセットからウエーハを取り出し(S100)、ウエーハのアライメントを行う(S200)。ウエーハの洗浄処理を行い(S300)、ウエーハをロードロックチャンバに搬送する(S400)。ウエーハに対してプラズマ処理を行い(S500)、ウエーハ同士を接合する(S600)。その後、ウエーハ同士を接合して形成された半導体製品をロードロックチャンバから取り出し(S700)、半導体製品に対して検査を行う(S800)。
ここで、ウエーハに対するプラズマ処理工程(S500)の終了時から接合工程(S600)の終了時までに要する時間として、例えば10秒以下であることが好ましい。
以上のように、例えば、ESCチャックを用いた、クーロン力コントロールアシストボンディングにより、対向するウエーハ同士の接触時のズレを防止するとともに、高周波イオン流動接合技術により高強度の接合を実現することができる。
【0066】
(実施例)
次に、高周波イオン流動接合の実施例について説明する。
【0067】
[概説]
(1)並行平板電極構造で2枚のSiウエーハを真空中で配置する。
(2)片側には交換可能なシリコンウエーハ電極を使用して、シリコンウエーハ電極の表面をアルゴンプラズマで表面を活性化する。
(3)シリコンウエーハ電極の表面から飛び出したシリコンをシリコンウエーハ電極と対向する半導体ウエーハの表面にスパッタリング蒸着させる。
【0068】
[工程]
(1)シリコンウエーハ電極による表面活性化
アルゴンプラズマを用いたプラズマ処理(1度目)によりシリコンウエーハ電極とシリコンウエーハ電極に対向する半導体ウエーハの各々の表面を活性化し、シリコンウエーハ電極からシリコンをスパッタリングする。
シリコンウエーハ電極から接合ターゲットになる貼り合わせウエーハに交換する。
貼り合わせウエーハと半導体ウエーハに対するアルゴンプラズマプラズマ処理(2度目)の実行し、ガス供給の停止後、ターボ分子ポンプ等を用いて、例えば約10秒以内に到達真空度を実現する。
真空引きによりプラズマが消失するが、相互に対向する貼り合わせウエーハと半導体ウエーハの各々の表面には、イオンが分極された状態で滞在する。
(2)ウエーハ同士の接合
貼り合わせウエーハと半導体ウエーハの各々の表面に分極して滞在したイオンによりクーロン力(静電気力)が発生し、ウエーハ同士の原子間距離が近くなり接触する。
RF高周波が各ウエーハの表面を流れ、電界によりイオン流動(原子拡散)が起こり、ウエーハ同士の強力な接合が得られる。
【0069】
[具体的な構造]
(1)並行平板プラズマ電極構造
(1-1)ウエーハ保持機構
各々の保持部として静電チャック又はメカニカルクランプを使用して、上側の電極と下側の電極に各々のウエーハを保持できる構造にする。
上側又は下側の少なくともいずれか一方の電極は、貼り合わせウエーハに交換できる構造にする。交換作業は、ロボットハンド等により行われることが好ましい。また、上側の電極を貼り合わせウエーハに交換することが好ましい。これにより、電極表面の荒れによるパーティクルの発生を抑制できる。
(1-2)電極のスパッタリング
電極として、SIベアウエーハからなるシリコン電極を使用し、プラズマプロセス中におけるパーティクルを制御する。これにより、貼り合わせウエーハと半導体ウエーハの接合時におけるボイドを低減できる。
(1-3)相互に対向する片側又は両側のウエーハの表面活性化
高周波電源を各電極に印加することによりソフトスパッタリングを行い、電極から飛び出したシリコンが対向するウエーハの表面に積もり、高純度の薄いSi膜を形成する。なお、必要に応じて、高純度のSi膜(シリコン膜)を形成する工程を省略することも可能である。
上側の電極には異なる周波数の高周波電源を印加して、Si(シリコン)をスパッタリングしてもよい。
【0070】
(2)貼り合わせウエーハのセット
(2-1)ガスを用いたウエーハ表面の活性化
Ar(アルゴン)又はN2(窒素)のガスを使用してウエーハの表面を活性化する。
上側と下側に配置された上下2枚のウエーハに対して1つのチャンバ内で同時にプラズマ処理を行う。
(2-2)プラズマ処理
高真空中でプラズマ処理を行う。マグネトロン又はICPコイル等を使用することができる。
電極間は、プラズマが均一で外部からの塵の浸入等、外部影響を受けない構造である。
(2-3)プラズマ処理後の真空引き
チャンバ内に対するアルゴンガス及び窒素ガスの供給を停止し、自動圧力制御装置(APC)を駆動し、ターボ分子ポンプにより、例えば約10秒程度でチャンバ内を到達真空圧力に制御する。
製品に応じて、上下の電極に対する高周波電源の印加を継続してもよく、また印加を停止してもよい。
(2-4)真空貼り合わせ(真空接合)
表面が帯電した状態のウエーハ同士を近接させ、クーロン力(静電気力)により接触させる。クーロン力を利用するため、ウエーハ同士の初期接合力が向上する。また、クーロン力を利用するため、原子の運動が増加して、各々のウエーハの表面に滞在する原子が移動し易くなる。
各電極に高周波電源を印加することにより、原子が安定なエネルギー状態に再配置され、ウエーハ同士の強固な結合が形成される。
【0071】
(3)プラズマ処理後のウエーハ同士の瞬時貼り合わせ(瞬時接合)
各々のウエーハの表面が活性した後、例えば約10秒程度で接合されることにより、ウエーハ表面の活性状態(活性度)の劣化を最小限に抑制できる。
これに対して、一般的な常温活性化結合又は原子拡散結合では、ウエーハ同士の貼り合わせに時間を要する。具体的には、数分の待ち時間が生じれば、活性状態が約20%程度減少することになる。半導体ウエーハの製品の品質が劣化する問題が生じていたが、本実施形態の高周波イオン流動接合により、この問題を解決した。
【0072】
[高真空中(1×10-6Pa(pascal))における表面活性化後の減衰率]
真空状態で10秒後の減衰率:A(10秒)≒99.83%A(10秒)=99.83%=0.17%の減衰率
真空状態で2分後の減衰率:A(2分)≒81.87%A(2分)=81.87%=18.13%の減衰率
以上から、迅速な真空引きとウエーハ同士の貼り合わせが表面活性化状態の維持に極めて重要であり、結果としてウエーハ同士の強固な結合が得られることが判明している。
【0073】
次に、シリコンウエーハに対して真空中でプラズマ処理を行い、表面活性化させた後、ガスを止めて高速で真空にて表面活性状態を維持した状態で、ウエーハ同士を貼り合わせ、高周波電源を印加する、高周波イオン流動接合プロセスにおけるイオンの拡散について解析する。
【0074】
[高周波イオン流動接合プロセス]
(1)プラズマ表面活性化
フッ素系ガスを用いたプラズマエッチングにより、ウエーハ表面の有機汚染物及び酸化物を化学的に除去する。
アルゴンスパッタリングにより、残留可能性のある微小な汚染物質及び不均一な化学残留物を除去する。
ウエーハ表面の活性化及びプラズマエッチングによりウエーハ表面が清浄化されると同時に、アルゴンスパッタによってウエーハ表面を物理的に叩くことによってさらにウエーハ表面の原子が活性化され、ウエーハ同士の接合効率が向上する。
ウエーハ表面の清浄化と活性化の両方の効果により原子が拡散され、ウエーハ同士の高い接合強度が得られる。
【0075】
(2)ガス停止及び高速真空引き
ウエーハに対するプラズマ処理後、アルゴンガス及び窒素ガスの供給を停止し、ターボ分子ポンプを用いて、高速で高真空(1×10-6Pa(pascal))に至るように制御する。
約10秒以内に到達真空度に至ることにより、ウエーハ表面の活性化状態が保持される。
【0076】
(3)ウエーハ同士の貼り合わせ
分極されたイオンが各々のウエーハ表面に残る状態で、各々のウエーハ同士を接合する。
クーロン力(静電気力)により、近接された各々のウエーハ表面の原子間距離が近くなり、ウエーハ同士の接触が強化される。
【0077】
(4)高周波電源の印加
ウエーハ同士の接合後に高周波電源を印加し、各々のウエーハ表面に電界を発生させる。
当該電界によりウエーハ表面のイオンが流動し、原子間の結合が強化される。
【0078】
[イオン拡散の考察]
(1)ウエーハ表面のイオンの状態
プラズマ処理による活性化により、ウエーハ表面に残ったイオンが分極された状態になる。
分極された状態のイオンは、ウエーハ表面に強く吸着されているため、イオンの移動が容易になっている。
高真空中では電極間は絶縁状態になり、イオンは電離(放電)せず、ウエーハ表面に留まる。
【0079】
(2)高真空状態
高真空中では、ウエーハ表面の活性化状態が保持され、ウエーハ表面の再汚染が抑制される。
【0080】
(3)高周波電源の効果
高周波電場(13.56MHz、200W)は、ウエーハ表面及び界面に対して、以下のような影響を及ぼしている。
(3-1)表面電位の変動
高周波電場により、ウエーハ表面に交番電場が発生する。これにより、ウエーハ表面の電位が変動し、以下の影響を引き起こす。
表面電位の変動:±200Vの電位が13.56MHzで変動し、ウエーハ表面の電子及びイオンの動きを引き起こす。
高周波電場の影響:高周波電場(交番電場)により、ウエーハ表面の原子及びイオンが再配置される。
(3-2)界面での原子拡散の促進
高周波電場は、ウエーハ表面に対して以下の影響を及ぼしている。
イオンの移動:交番電場により、ウエーハ表面のイオンが移動し易くなる
原子間の変化:交番電場により、ウエーハ間の原子間力が変化し、より強い結合を形成する。
活性化エネルギーの低減:交番電場が原子の拡散に必要となるエネルギーを低減させ、原子間の結合が促進される。
【0081】
[イオン拡散のメカニズム]
高周波電源の印加により、次のようなメカニズムでイオンの拡散が起こる。
(1)電界誘導によるイオンの移動
高周波電界(高周波電場)により、ウエーハ表面のイオンが引き寄せられたり、押し出されたりする。これにより、イオンがウエーハ表面全体にわたって均一に移動する。
【0082】
(2)表面拡散
イオンがウエーハ表面で移動することにより、原子が再配置される。
ウエーハ表面原子の再配置により、より安定なエネルギー状態が形成される。
【0083】
(3)原子間結合の強化
ウエーハ表面原子の再配置により、原子間の結合が強化される。これにより、ウエーハ間の接合が強固になる。
【0084】
高周波イオン流動接合のプロセスによれば、特にシリコンウエーハを真空中で化学反応させ、ウエーハ表面の酸化膜を等方性エッチングした後、アルゴンによるソフトスパッタリングによりウエーハ表面を活性化させる。その後、例えば約10秒程度の高速で高真空環境にして、ウエーハ表面の活性化状態を保持したまま、ウエーハ同士を貼り合わせる。さらに、ウエーハ間に高周波電源を印加させた状態を継続することにより、ウエーハ表面のイオンの拡散により、ウエーハ表面のイオンが移動して、原子間の結合が強化される。これにより、ウエーハ同士の接合が強固になる。このように、高周波イオン流動接合技術は、ウエーハ接合技術において非常に有効であり、ウエーハ同士の接合強度と接合品質を同時に向上させることができるのである。
【0085】
また、電極の頻繁な自動交換とベアウエーハの利用は、Siスパッタリングにより形成されたフレークとパーティクルの低減に寄与し、ボイドレスボンディングを実現する。これにより、チャンバ内のクリーニングの頻度を大幅に削減でき、装置のメンテナンスに伴う時間の削減と、装置の稼働率の向上に貢献する。
【0086】
[半導体製造システムの一例]
本実施形態及び実施例の半導体ウエーハの接合装置が半導体製造システムに組み付けられた一例について説明する。
【0087】
図5及び
図6に示すように、半導体ウエーハの接合装置34が従来のシステムのプラズマチャンバ10に替えて半導体製造システム200に組み付けることも可能である。
図5及び
図6に示す半導体製造システム200は、ロボットハンドが収容されている中央チャンバ202の周囲に、半導体ウエーハに対するプラズマ処理とウエーハ同士の接合が可能である半導体ウエーハの接合装置34と、真空接合チャンバ204と、原子接合チャンバ206と、回転洗浄チャンバ208と、待機チャンバ210と、ロードロックチャンバ212と、が配置されている。ロードロックチャンバ212の近傍には、ウエーハ搬送機構214と、複数のウエーハカセット216が配置されている。
【0088】
[ウエーハ保持機構の一例]
次に、各々のウエーハを保持するためのウエーハ保持機構の一例について説明する。
【0089】
本実施形態の半導体ウエーハの接合装置及び接合方法に関し、半導体ウエーハW1、W2を保持するための第1のステージ36及び第2のステージ38に、ウエーハ保持機構としての静電チャック80(
図7乃至
図9参照)が配置されている構成である。なお、静電チャック80(
図7乃至
図9参照)、第1の保持部102及び第2の保持部104に替えて、配置されている構成でもよい。
【0090】
図7及び
図8は、単極型の静電チャック78と双極型の静電チャック80の構造を図示する。各静電チャック78、80の材質には、例えば、酸化アルミニウム(Al
2O
3)や窒化アルミニウム(AIN)などの絶縁材料が使用されている。絶縁体の中に電極が内蔵された構造になっており、この電極に電圧を印加することで半導体ウエーハW1、W2等の被吸着体86、92を吸着する。
【0091】
図7に示す単極型の静電チャック78は、単極型のものであり、ベース基盤82と、ベース基盤82上に配置された内部電極(電極シート又はポリイミドフィルム電極層ともいう)84と、を有している。ベース基盤82は、内部電極84に対して正(プラス)又は負(マイナス)のいずれか一方の電圧を印加する。例えば、内部電極84に対して正(プラス)の電圧を印加すると、被吸着体86の表面には負(マイナス)の電荷が移動して、被吸着体86が単極型の静電チャック78に吸着される。また、内部電極84に対して負(マイナス)の電圧を印加すると、被吸着体86の表面には正(プラス)の電荷が移動して、被吸着体86が単極型の静電チャック78に吸着される。
【0092】
図8に示す静電チャック80は、双極型のものであり、ベース基盤88と、ベース基盤88上に配置された内部電極(電極シート又はポリイミドフィルム電極層ともいう)90と、を有している。ベース基盤88は、内部電極90に対して正(プラス)及び負(マイナス)の両方の電圧を印加する。例えば、正(プラス)に印加された内部電極90に対向する被吸着体92の表面には負(マイナス)の電荷が移動し、負(マイナス)に印加された内部電極90に対向する被吸着体92の表面には正(マイナス)の電荷が移動して、被吸着体92が双極型の静電チャック80に吸着される。
【0093】
半導体ウエーハの接合装置に双極型の静電チャックが使用されている例を説明する。
図9に示すように、静電チャック80は、第1のステージ36及び第2のステージ38にそれぞれ内蔵されていることが好ましい。説明の便宜上、第1のステージ36に内蔵されている静電チャック80を第1の静電チャック80Aと称し、第2のステージ38に内蔵されている静電チャック80を第2の静電チャック80Bと称する。各静電チャック80A、80Bは、例えば双極型のものである。第1のステージ36及び第2のステージ38が対向して配置されているため、各々の静電チャック80A、80Bは相互に対向した位置に配置されており、これにより一対の静電チャックを構成する。
【0094】
第1の静電チャック80Aは、第1のベース基盤88Aと、第1のベース基盤88A上に配置された第1の内部電極90Aと、を有している。第1の内部電極90Aはアース接続されている。第1のベース基盤88Aは、第1の内部電極90Aに対して印加する電圧を制御する。第1の内部電極90Aは、2つ以上の隣接する第1の単位電極91Aで構成されており、相互に隣接する第1の単位電極91A同士において正(プラス)と負(マイナス)で相互に逆転する電圧がそれぞれ印加される。
【0095】
第2の静電チャック80Bは、第1の静電チャック80Aに対向する位置に配置されている。第2の静電チャック80Bは、第1の静電チャック80Aの構成と同様に、第2のベース基盤88Bと、第2のベース基盤88B上に配置された第2の内部電極90Bと、を有している。第2の内部電極90Bはアース接続されている。第2のベース基盤88Bは、第2の内部電極90Bに対して印加する電圧を制御する。第2の内部電極90Bは、2つ以上の隣接する第2の単位電極91Bで構成されており、相互に隣接する第2の単位電極91B同士において正(プラス)と負(マイナス)で相互に逆転する電圧がそれぞれ印加される。
【0096】
ここで、第1の静電チャック80A側の第1の単位電極91Aと、当該第1の単位電極91Aに対向する第2の静電チャック80B側の第2の単位電極91Bには、それぞれ逆極性(正と負)になる電圧が印加されるように第1のベース基盤88A及び第2のベース基盤88Bにより制御される。このため、第1の静電チャック80Aの第1の内部電極90Aのうち負(マイナス)の電圧に印加される第1の単位電極91Aが、第2の静電チャック80Bの第2の内部電極90Bのうち正(プラス)の電圧に印加される第2の単位電極91Bと対向する位置になる。また同様に、第1の静電チャック80Aの第1の内部電極90Aのうち正(プラス)の電圧に印加される第1の単位電極91Aが、第2の静電チャック80Bの第2の内部電極90Bのうち負(マイナス)の電圧に印加される第1の単位電極91Bと対向する位置になる。
【0097】
双極型の静電チャック80の一般的な原理として、第1の静電チャック80Aに半導体ウエーハW1、第2の静電チャック80Bに半導体ウエーハW2をそれぞれ載せた状態で、第1の内部電極90A及び第2の内部電極90Bに対してプラスとマイナスの電圧をそれぞれ印加する。これにより、半導体ウエーハW1、W2のプラスとマイナスの電荷が、それらに対向する各々の内部電極90A、90Bに対して引き合うように移動する(誘電分極)。その結果、第1の内部電極90Aと半導体ウエーハW1との間、及び第2の内部電極90Bと半導体ウエーハW2との間に吸着力が発生して半導体ウエーハW1、W2が固定されるという仕組みである。
【0098】
図7に示すように、一般的に、単極型の静電チャック78では、被吸着体(半導体ウエーハなど)86と内部電極84(チャック、保持装置ともいう)との間に電圧を印加することにより、被吸着体(半導体ウエーハなど)86の表面に電荷が発生する。具体的には、内部電極84が正(プラス)に帯電していれば、これに対向する被吸着体(半導体ウエーハなど)86の表面は負(マイナス)に帯電し、また内部電極84が負(マイナス)に帯電していれば、これに対向する被吸着体(半導体ウエーハなど)86の表面は正(プラス)に帯電している。この原理は、
図8に示す双極型の静電チャック80においても同様である。
【0099】
通常、プラズマ処理が施されて活性化した後の半導体ウエーハW1、W2の表面はマイナス(又はプラスの場合も有り得る)に帯電する。このため、表面がマイナス同士(又はプラス同士)の半導体ウエーハW1、W2を接合しようとすると、両者は電気的に反発する。このような状態において、半導体ウエーハW1、W2同士を強引に貼り合わせすると、相互に反発して位置ずれが生じてしまい、半導体ウエーハW1、W2の接合精度が低下する事態に至る。
【0100】
図9に示すように、相互に対向する一方側の半導体ウエーハW1の表面を正(負)に帯電させ、他方側の半導体ウエーハW2の表面を負(正)に帯電させることにより、接合される半導体ウエーハ同士を逆極性に帯電した状態を意図的に作り上げる。これにより、例えば、両者の間に発生するファンデルワールス力(分子間力)とクーロン力(静電気力)の双方を利用して吸着力を向上させ、半導体ウエーハW1、W2同士の接合をアシストする。
【0101】
一般に、マイナスの静電気を帯びた物同士(あるいはプラスに帯電した物同士)を合わせると反発する。これは静電気の基本的な性質の一つであり、同じ符号の電荷同士(例えば、両方がマイナス電荷をもつ場合など)は互いに反発し合い、逆極性の電荷同士(例えば、一方がプラス、他方がマイナスなど)は互いに引き合う。
【0102】
相互に異なる極性(逆極性)となるように帯電した半導体ウエーハW1、W2は、放電を行わない程度の表面間の電圧で制御し、正(プラス)に帯電した半導体ウエーハW1(あるいはW2)と、負(マイナス)に帯電した半導体ウエーハW2(あるいはW1)との接触により、電子が正(プラス)に帯電した物体から負(マイナス)に帯電した物体に移動することにより、電荷が中和される。これにより、静電気の効果が弱まると同時に貼り合わせ時のボンディング吸着力が増大される。
【0103】
一般的な双極型の静電チャックでは、正(プラス)側と負(マイナス)側で同じ大きさ(絶対値の大きさ)の電圧を印加することにより半導体ウエーハの表面を電気的な平衡状態を維持している。
【0104】
これに対して、正(プラス)と負(マイナス)で同じ大きさ(絶対値の大きさ)の電圧を印加するのではなく、敢えて異なる大きさの電圧を印加して、正(プラス)又は負(マイナス)のバランスを意図的に崩すように設定されている。換言すれば、正(プラス)の電圧と負(マイナス)の電圧との間において印加電圧の大きさの観点からアンバランスの状態を作る。
【0105】
図9に示すように、例えば、第1の静電チャック80Aの第1の内部電極90Aを構成する一方側の第1の単位電極91Aに対して-400ボルトの電圧を印加し、他方側の第1の単位電極91Aに対して+500ボルトの電圧を印加する。同時に、第2の静電チャック80Bの第2の内部電極90Bを構成する一方側の第2の単位電極91Bに対して+400ボルトの電圧を印加し、他方側の第2の単位電極91Bに対して-500ボルトの電圧を印加する。
【0106】
ここでは、第1の静電チャック80Aの第1の内部電極90Aのうち、-400ボルトの電圧が印加される一方側の第1の単位電極91Aと、第2の静電チャック80Bの第2の内部電極90Bのうち、+400ボルトの電圧が印加される一方側の第2の単位電極91Bと、が対向する位置になるように設定される。これらは、正と負で極性が異なるものの、絶対値の大きさとして同じ大きさの電圧が印加される。
【0107】
また、第1の静電チャック80Aの第1の内部電極90Aのうち、+500ボルトの電圧が印加される他方側の第1の単位電極91Aと、第2の静電チャック80Bの第2の内部電極90Bのうち、-500ボルトの電圧が印加される他方側の第2の単位電極91Bと、が対向する位置になるように設定される。これらは、正と負で極性が異なるものの、絶対値の大きさとして同じ大きさの電圧が印加される。
【0108】
これらにより、第1の静電チャック80Aにして対向する半導体ウエーハW1の表面には、第1の静電チャック80Aの+500ボルトと-400ボルトの差分である+100ボルトの電荷が帯電した状態になる。同様にして、第2の静電チャック80Bにして対向する半導体ウエーハW2の表面には、第2の静電チャック80Bの+400ボルトと-500ボルトの差分である-100ボルトの電荷が帯電した状態になる。
【0109】
このとき、半導体ウエーハW1、W2の表面にフローディング電荷が発生する。これにより、相互に対向する内部電極90A、90B同士(あるいは単位電極同士)に逆電圧を印加することにより強力なクーロン力で半導体ウエーハW1、W2同士が引き付けられて貼り合わされる。この結果、半導体ウエーハW1、W2同士の貼り合わせ時におけるバブルの発生を抑制できる。
【0110】
ここで、一対の静電チャック80A、80Bで保持された半導体ウエーハW1、W2同士は、両者の離間間隔が10μm以上50μm以下とした微小空間(ミニマル空間)の環境に置かれることが好ましい。微小空間では、半導体ウエーハW1、W2同士が当該半導体ウエーハW1、W2の平面姿勢を維持しながら接合される。
【0111】
なお、本実施形態及び実施例は、本発明の一態様を示したものであり、本発明がこれに限られるものではない。本実施形態及び実施例に対する設計変更程度の差異は、当然に、本発明の技術的思想の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
14 チャンバ
16 ステージ
34 半導体ウエーハの接合装置
36 第1のステージ
38 第2のステージ
78 単極型の静電チャック
80 双極型の静電チャック
80A 第1の静電チャック
80B 第2の静電チャック
82 ベース基盤
84 内部電極
86 被吸着体
88 ベース基盤
88A 第1のベース基盤
88B 第2のベース基盤
90 内部電極
90A 第1の内部電極
90B 第2の内部電極
91A 第1の単位電極
91B 第2の単位電極
92 被吸着体
102 第1の保持部
104 第2の保持部
106 第1の取り換え装置
108 第2の取り換え装置
110 高周波電源
112 自動圧力制御装置
114 ターボ分子ポンプ
200 半導体製造システム
202 中央チャンバ
204 真空接合チャンバ
206 原子接合チャンバ
208 回転洗浄チャンバ
210 待機チャンバ
212 ロードロックチャンバ
214 ウエーハ搬送機構
216 ウエーハカセット
G1 シリコンウエーハ
G2 貼り合わせウエーハ
W1 半導体ウエーハ
W2 半導体ウエーハ
【要約】
【課題】簡易な構成により、半導体製造プロセスにおけるウエーハ同士の接合強度を向上できる。
【解決手段】ウエーハに対してプラズマ処理を実行する真空チャンバ14において、相互に対向するウエーハ同士を接合する前に、ウエーハW1、W2の一方にシリコン電極G1を用い、他方に半導体ウエーハW2を用い、シリコン電極G1と半導体ウエーハW2とに対して1度目のプラズマ処理を実行した後、シリコン電極G1を貼り合わせウエーハG2に変更して、貼り合わせウエーハG2と半導体ウエーハW2とに対して2度目のプラズマ処理を実行し、その後、真空環境下で、クーロン力を利用して、相互に対向する一対のウエーハW1、W2同士を接合する。
【選択図】
図2