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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】流速測定システム及び流量測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/00 20060101AFI20241031BHJP
   G01F 1/20 20060101ALI20241031BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20241031BHJP
【FI】
G01P5/00 A
G01F1/20 F
G01F1/00 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024133926
(22)【出願日】2024-08-09
【審査請求日】2024-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517039483
【氏名又は名称】WOTA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】キルゼンブラト ロマン
(72)【発明者】
【氏名】向原 穂高
(72)【発明者】
【氏名】金 京柱
(72)【発明者】
【氏名】ラドジンスキ テオ
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-106829(JP,U)
【文献】登録実用新案第3212479(JP,U)
【文献】特表2022-529308(JP,A)
【文献】特開2021-9073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 1/00-21/02
G01F 1/00-25/20
E02B 1/00-17/08
G01B 1/00-21/32
G01C 1/00-25/00
G01S 1/00-19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流速測定システムであって、
排水管と、距離センサと、計測手段とを備え、
前記排水管は、水平方向に、吐水口から水を排出可能であり、
前記距離センサは、前記吐水口に対向する任意の位置に、前記吐水口から水平方向の距離D及び鉛直方向の距離Yで配置され、かつ前記吐水口からの水との水平方向の距離Xoを検出可能であり、
前記計測手段は、D、Y、Xo及び重力加速度gから、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
前記流速測定システム。
【請求項2】
前記計測手段は、D、Y、Xo及びgから、下記関係式(I)
【数1】
に基づいて、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
請求項1に記載の流速測定システム。
【請求項3】
流速測定システムであって、
排水管と、距離センサと、計測手段とを備え、
前記排水管は、水平方向を基準とした角度θ(ただし、-90°<θ<90°)の方向に、吐水口から水を排出可能であり、
前記距離センサは、前記吐水口に対向する任意の位置に、前記吐水口から水平方向の距離D及び鉛直方向の距離Yで配置され、かつ前記吐水口からの水との水平方向の距離Xoを検出可能であり、
前記計測手段は、D、Y、Xo及び重力加速度gから、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
前記流速測定システム。
【請求項4】
前記計測手段は、D、Y、Xo及びgから、下記関係式(II)
【数2】
に基づいて、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
請求項3に記載の流速測定システム。
【請求項5】
流速測定システムであって、
排水管と、距離センサと、計測手段とを備え、
前記排水管は、水平方向を基準とした角度θ(ただし、θ=90°)の方向に、吐水口から水を排出可能であり、
前記距離センサは、前記吐水口に対向する任意の位置に、前記吐水口から鉛直方向の距離Yで配置され、かつ前記吐水口からの水との鉛直方向の距離Yoを検出可能であり、
前記計測手段は、Y、Yo及び重力加速度gから、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
前記流速測定システム。
【請求項6】
前記計測手段は、Y、Yo及びgから、下記関係式(III)
【数3】
に基づいて、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
請求項5に記載の流速測定システム。
【請求項7】
前記距離センサは、レーザー、LED、赤外線及び超音波からなる群から選ばれるパルスの投光部及び受光部を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の流速測定システム。
【請求項8】
流量測定システムであって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の流速測定システムを備え、
前記計測手段は、請求項1~6のいずれか1項に記載の流速測定システムによって得られた水の流速Vo及び吐水口から排出される水の断面積Aから、前記吐水口から排出される水の流量Qoを測定可能である、
前記流量測定システム。
【請求項9】
前記計測手段は、Vo及びAから、下記関係式(IV)
【数4】
に基づいて、前記吐水口から排出される水の流量Qoを測定可能である、
請求項8に記載の流量測定システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管から排出される水の流速を測定する流速測定システム、及び、当該流速に基づいて測定される流量測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、排水管内を流れる水の流量は、次式によって表される。
流量Q[m/s]=排水管の断面積A[m]×流速V[m/s]
したがって、水の流量を得るためには、排水管内を流れる流速を測定する。
【0003】
排水管内の水の流速を測定する方法としては、熱線やピトー管などのセンサを排水管内に設置し、当該センサを水中に直接挿入して水の物理量から水の流速を測定する方法が知られている。また、排水管壁に透明窓を設置し、水中に混在する散乱体の移動速度を画像処理などの光学的手法により求め、流速を測定する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-54408号公報
【文献】特開平8-201413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、センサを排水管内に設置する方法は、水とセンサとが接触して、排水の内容によってはセンサが劣化するという問題がある。また、光学的手法により流速を測定する方法は、画像処理が複雑であるとの問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、センサが水と非接触であり、かつ簡易な構成により水の流速を測定することができる流速測定システムを提供することを、本発明が解決しようとする課題とする。また、当該流速に基づいて水の流量を測定することができる新規な流量測定システムを提供することを、本発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、重力下での放物運動の方程式を利用して、排水管の吐水口から排出される水の初流速度が分かれば、排水管から排出される水の流量を推定できるのではないかと考えた。そして、排水管の吐水口から排出される水の落下地点までの距離を測定することにより、排水管の吐水口における流速を測定することを試みた。その結果、本発明者らは、遂に、水に非接触である距離センサを用いることにより、簡易に流速を測定することができる測定システムを創作することに成功した。本発明はこのような本発明者らによって初めて為された成功例に基づいて完成するに至った発明である。
【0008】
すなわち、本発明の各側面によれば、以下の各態様が提供される。
[1]流速測定システムであって、
排水管と、距離センサと、計測手段とを備え、
前記排水管は、水平方向に、吐水口から水を排出可能であり、
前記距離センサは、前記吐水口に対向する任意の位置に、前記吐水口から水平方向の距離D及び鉛直方向の距離Yで配置され、かつ前記吐水口からの水との水平方向の距離Xoを検出可能であり、
前記計測手段は、D、Y、Xo及び重力加速度gから、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
前記流速測定システム。
[2]前記計測手段は、D、Y、Xo及びgから、下記関係式(I)
【数1】
に基づいて、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
[1]に記載の流速測定システム。
[3]流速測定システムであって、
排水管と、距離センサと、計測手段とを備え、
前記排水管は、水平方向を基準とした角度θ(ただし、-90°<θ<90°)の方向に、吐水口から水を排出可能であり、
前記距離センサは、前記吐水口に対向する任意の位置に、前記吐水口から水平方向の距離D及び鉛直方向の距離Yで配置され、かつ前記吐水口からの水との水平方向の距離Xoを検出可能であり、
前記計測手段は、D、Y、Xo及び重力加速度gから、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
前記流速測定システム。
[4]前記計測手段は、D、Y、Xo及びgから、下記関係式(II)
【数2】
に基づいて、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
[3]に記載の流速測定システム。
[5]流速測定システムであって、
排水管と、距離センサと、計測手段とを備え、
前記排水管は、水平方向を基準とした角度θ(ただし、θ=90°)の方向に、吐水口から水を排出可能であり、
前記距離センサは、前記吐水口に対向する任意の位置に、前記吐水口から鉛直方向の距離Yで配置され、かつ前記吐水口からの水との鉛直方向の距離Yoを検出可能であり、
前記計測手段は、Y、Yo及び重力加速度gから、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
前記流速測定システム。
[6]前記計測手段は、Y、Yo及びgから、下記関係式(III)
【数3】
に基づいて、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、
[5]に記載の流速測定システム。
[7]前記距離センサは、レーザー、LED、赤外線及び超音波からなる群から選ばれるパルスの投光部及び受光部を備える、[1]~[6]のいずれか1項に記載の流速測定システム。
[8]流量測定システムであって、
[1]~[6]のいずれか1項に記載の流速測定システムを備え、
前記計測手段は、[1]~[6]のいずれか1項に記載の流速測定システムによって得られた水の流速Vo及び吐水口から排出される水の断面積Aから、前記吐水口から排出される水の流量Qoを測定可能である、
前記流量測定システム。
[9]前記計測手段は、Vo及びAから、下記関係式(IV)
【数4】
に基づいて、前記吐水口から排出される水の流量Qoを測定可能である、
[8]に記載の流量測定システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排水管、距離センサ及び計測手段という、より簡易な構成でありつつ、排水管の吐水口から排出される水の落下地点までの距離を測定することにより、排水管の吐水口における水の流速をより簡易に測定することができる。また、本発明によれば、当該流速に基づいて流量を測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、流速測定システムの一実施形態に係る流速測定システム1を示す概略構成図である。
図2図2は、流速測定システム1の計測手段30の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、流速測定システムの別の実施形態に係る流速測定システム1を示す概略構成図である。
図4図4は、流速測定システムのさらに別の実施形態に係る流速測定システム1を示す概略構成図である。
図5図5は、流速測定システムのさらに別の実施形態に係る流速測定システム1を示す概略構成図である。
図6図6は、流速測定システム1により行う流速測定の方法の一例を示すフローチャート図である。
図7図7は、流量測定システム2の計測手段30の機能構成の一例を示すブロック図である。
図8図8は、流量測定システム2により行う流量測定の方法の一例を示すフローチャート図である。
図9図9は、流速Vo及び距離Xoの実測値に係る散布図及び回帰直線の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各態様の詳細について説明するが、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0012】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、水処理分野などの当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている推測及び理論は、本発明者らのこれまでの知見及び経験によってなされたものであることから、本発明はこのような推測及び理論のみによって拘泥されるものではない。
【0013】
「含む」(comprise、contain、include)は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」(consist of)及び「から本質的になる」(essentially consist of)を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。「備える」(have)は「含む」と同義である。要素としては、部分、手段、成分、工程、条件、パラメーターなどの制限事項などが挙げられる。
「及び/又は」は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
数値範囲の「~」は、その前後の数値を含む範囲であり、それらの含まれる限界値の一方を除いた範囲もまた含まれる。例えば、「0%~100%」は、0%以上、100%以下、及び0%以上100%以下のいずれであってもよい。
【0014】
本発明の各態様を図面に基づいて説明する。各図面において、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。なお、各図面において適宜示される矢印UP(→UP)で示す方向を鉛直方向の上方側とする。
【0015】
本発明の流速測定システムにおいては、流速の単位は[距離/時間]であり、例えば[m/s]であり得る。また、本発明の流量測定システムにおいては、流量の単位は[体積/時間]であり、例えば[m/s]であり得る。
【0016】
[本発明の概要]
流速測定システムは、排水管と、距離センサと、計測手段とを基本要素として備える。流速測定システムは、排水管の吐水口から排出される水の落下地点までの水平方向の距離に基づいて、排水管の吐水口における水の流速を計測する。また、流量測定システムは、当該流速測定システムによって測定された流速に基づいて、吐水口における水の流量を測定する。
【0017】
本発明者らは、水に非接触で、かつ、簡易な構成である流速測定(流量測定)方法を種々検討したところ、排水管の吐水口から排出される水の落下地点までの水平方向の距離が分かれば、重力下での放物運動の方程式を利用して、吐水口における水の流速を理論上算出することができることを見出した。
【0018】
上述したように、排水管の吐水口から水が排出される場合、排水管の吐水口から排出される水の流量は、下記式(a)によって表される。
流量Q=吐水口から排出される水の断面積A×流速V・・・(a)
【0019】
吐水口から排出される水の流速(初流速度)は、重力下の放物運動の方程式を利用すると、吐水口から水が水平投射される場合(初速度v、x軸方向の速度v、y軸方向の速度v)、x軸方向には初速度のまま一定の等速度直線運動をすることから、速度と変位は下記式(b)及び(c)によって表される。
【0020】
【数5】
【0021】
一方、y軸方向には、自由落下運動をすることから、鉛直方向下向きを正として、速度と変位は下記式(d)及び(e)によって表される。なお、鉛直方向下向きを正とする。
【0022】
【数6】
【0023】
さらに、式(c)を式(e)に代入してtを消去すると、変位yは下記式(f)によって表される。
【0024】
【数7】
【0025】
そうすると、排水管の吐水口から水が水平投射される場合、吐水口から水平方向の変位xは、吐水口から排出される水の流速v、吐水口の鉛直方向の変位y及び重力加速度gによって、下記式(g)によって表される。
【0026】
【数8】
【0027】
このように、吐水口から排出される水の流速(初流速度)は、吐水口から排出される水の落下地点までの水平方向の距離(x)が分かれば、重力下の放物運動の方程式を利用して求めることができる。そして、水が水平投射される場合だけでなく、斜方投射される場合についても同様に、吐水口から排出される水の流速(初流速度)は、吐水口から排出される水の落下地点までの水平方向の距離(x)が分かれば、重力下の放物運動の方程式を利用して求めることができる。さらに、水が鉛直投射される場合については、吐水口から排出される水の流速(初流速度)は、吐水口から排出される水の最高点までの距離(y)が分かれば、重力下の放物運動の方程式を利用して求めることができる。
【0028】
[第1態様の流速測定システム]
本発明の一態様の流速測定システムは、排水管と、距離センサと、計測手段とを備え、排水管から排出される水が水平投射される場合(水平方向を基準とした角度θ=0°)である。
【0029】
流速測定システムの具体的な一態様について、図1を例証して説明する。
流速測定システム1は、排水管10と、距離センサ20と、計測手段30とを含む。流速測定システム1においては、排水管から排出される水の傾斜角度(θ)を測定するための角度センサを備えていてもよい。
【0030】
排水管10は、水源11からの水12を、水平方向に吐水口10aから排出可能である。すなわち、吐水口10aから排出された水12は、水平投射される。
【0031】
排水管10の吐水口10aから排出される水12は、例えば、トイレ、キッチン、浴室、洗濯機などから排出される生活排水、都市排水、商業施設排水、農業排水、工業排水といった排水、汚水、雨水、表流水、井戸水、上水などの水が挙げられるが、これらに限定されず、流体の他、固形分を含む流体であってもよい。
【0032】
排水管10は、水が移動できるように中空構造を呈している。排水管10は、水が移動可能であるものであればよく、材質、径、長さなどは特に限定されない。
排水管10の材質は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、シリコン、シリコーン、ゴムなどの可塑性素材、ステンレス、チタン、アルミニウムなどの金属素材、コンクリートやセラミック、土(地中を掘削しただけの土坑や土管など)などの無機素材などが挙げられる。
【0033】
距離センサ20は、吐水口10aに対向する任意の位置に、吐水口10aから水平方向の距離D及び鉛直方向の距離Yで配置される。ここで、吐水口10a(吐出口から排出される水の断面積の重心点)を開始点(原点0)として投射される水の放物線において、距離センサ20によって検出される点を、落下地点(X,Y)ともよぶ。距離センサ20は、落下地点(X,Y)から当該距離センサ20までの水平方向(x軸方向)の距離Xoを検出可能であるように配置される。
【0034】
距離Dは、吐水口10aから距離センサ20までの水平方向(x軸方向)の距離であり、距離Xoは、落下地点(X,Y)から距離センサ20までの水平方向(x軸方向)の距離である。また、距離(D-Xo)は、開始点(原点0)から落下地点(X,Y)までの水平方向(x軸方向)の距離である。
距離Yは、吐水口10aから排出される水の断面積の重心点から落下地点(X,Y)(距離センサ20)までの鉛直方向(y軸方向)の距離である。
なお、図1においては、鉛直方向下向きを正とする。
【0035】
距離センサ20は、距離Xoを検出して信号を出力するものであればよい。距離センサ20は、例えば、レーザー、LED、赤外線及び超音波からなる群から選ばれるパルスの投光部及び受光部を備える。距離センサ20は、例えば、レーザーなどの光線や超音波を吐水口10aから排出される水の落下地点における水の表面へ照射し、反射した光線や波線を受信することにより、距離Xoを検出する。例えば、距離センサとしては、例えば、飛行時間型(TOF)センサなどが挙げられる。
【0036】
計測手段30は、D、Y、Xo及び重力加速度gから、吐水口10aから排出される水の流速Voを測定可能であるように構成される。
【0037】
具体的には、計測手段30は、D、Y、Xo及びgから、下記関係式(I)に基づいて、吐水口10aから排出される水12の流速Voを測定可能であるように構成されることが好ましい。
【0038】
【数9】
【0039】
計測手段30の機能構成は、例えば、図2に例証される通り、処理部310と、記憶部320と、入出力部330とを備え、さらに表示部を備えてもよい。各構成は、バス340を介して相互に通信可能に接続される。
【0040】
処理部310は、例えば、距離センサ20の検出値である距離Xoや吐水口10aから排出される水12の傾斜角度(θ)を取得可能であるように構成され、流速測定プログラムを用いることにより、吐水口10aから排出される水12の流速Voを例えば関係式(I)を用いて算出するように構成される。
【0041】
記憶部320は、記憶装置で構成され、流速測定プログラムを少なくとも格納し、距離センサ20の検出値である距離Xoや水12の傾斜角度(θ)などを格納する。流速測定プログラムは、距離センサ20の検出値である距離Xoに基づいて、例えば関係式(I)により、吐水口10aから排出される水12の流速Voを算出するように機能する。
【0042】
入出力部330は、距離センサ20の検出値である距離Xoや吐水口10aから排出される水12の傾斜角度(θ)を処理部310に伝送可能であり、また、処理部310の算出結果を表示部に伝送可能であるように構成される。吐水口10aから排出される水12の傾斜角度(θ)の値は、予め設定された傾斜角度(θ)が手動で入力されてもよいし、角度センサなどにより検出された傾斜角(θ)が自動で入力されるように設定してもよい。
【0043】
計測手段30は、例えば、マイクロコントローラ、シングルボードコンビュー夕、パーソナルコンビュータ(ノートPC、デスクトップPC)、タブレット端末、スマートフォンなどであり得る。
【0044】
距離センサ20と計測手段30とは、それぞれ独立して有線で繋がっていてもよいし、ルーターなどを介して、又は介さずに無線で繋がっていてもよい。距離センサ20と計測手段30とは、物理的に分離されていることが好ましいが、それぞれの機能を果たす限り、一体的に構成されてもよい。
【0045】
[第2態様の流速測定システム]
本発明の第2態様の流速測定システムは、排水管と、距離センサと、計測手段とを備え、排水管から排出される水が、水平方向を基準とした角度θ(ただし、-90°<θ<90°)の方向に斜方投射される場合である。
【0046】
流速測定システムの具体的な一態様について、図3及び4を例証して説明する。図3及び4では、図1の流速測定システム1と共通する構成については、同じ符号を付してある。また、以下では、原則として、第2態様の流速測定システムについて、第1態様の流速測定システムと異なる部分について説明し、第1態様の流速測定システムと重複する部分については説明を省略する。図3は、排水管から排出される水が、水平方向を基準とした角度θ(ただし、0°<θ<90°)の方向に斜方投射される場合であり、図4は、排水管から排出される水が、水平方向を基準とした角度θ(ただし、-90°<θ<0°)の方向に斜方投射される場合である。
なお、図3及び4においては、鉛直方向下向きを正とする
【0047】
排水管10は、水源11からの水12を、水平方向を基準とした角度θ(ただし、-90°<θ<90°)の方向に、吐水口10aから水を排出可能である。すなわち、吐水口10aから排出された水12は、水平方向を基準とした角度θ(ただし、-90°<θ<90°)の方向に斜方投射される。
【0048】
計測手段30は、D、Y、Xo及び重力加速度gから、吐水口10aから排出される水12の流速Voを測定可能であるように構成される。
【0049】
具体的には、計測手段30は、D、Y、Xo及びgから、下記関係式(II)に基づいて、吐水口10aから排出される水12の流速Voを測定可能であるように構成されることが好ましい。
【0050】
【数10】
【0051】
計測手段30の処理部310においては、流速測定プログラムを用いることにより、吐水口10aから排出される水12の流速Voを例えば関係式(II)を用いて算出するように構成される。
【0052】
[第3態様の流速測定システム]
本発明の第3態様の流速測定システムは、排水管と、距離センサと、計測手段とを備え、排水管から排出される水が、水平方向を基準とした角度θ(ただし、θ=+90°)の方向に鉛直投射される場合である。
【0053】
流速測定システムの具体的な一態様について、図5を例証して説明する。図5では、図1,3及び4の流速測定システム1と共通する構成については、同じ符号を付してある。また、以下では、原則として、第3態様の流速測定システムについて、第1態様及び第2態様の流速測定システムと異なる部分について説明し、第1態様及び第2態様の流速測定システムと重複する部分については説明を省略する。
【0054】
排水管10は、水源11からの水12を、鉛直方向に吐水口10aから排出可能である。吐水口10aから排出された水12は、水平方向を基準とした角度θ=90°の方向に鉛直投射される。
【0055】
距離センサ20は、吐水口10aに対向する任意の位置に、吐水口10aから鉛直方向の距離Yで配置される。ここで、距離センサ20によって検出される点を、最高点ともよぶ。距離センサ20は、最高点から当該距離センサ20までの鉛直方向(y軸方向)の距離Yoを検出可能であるように配置される。
なお、図4においては、鉛直方向上向きを正とする。
【0056】
計測手段30は、Y、Yo及び重力加速度gから、吐水口10aから排出される水の流速Voを測定可能であるように構成される。
【0057】
具体的には、計測手段30は、Y、Yo及びgから、下記関係式(III)に基づいて、吐水口10aから排出される水の流速Voを測定可能であるように構成されることが好ましい。
【0058】
【数11】
【0059】
計測手段30の処理部310においては、流速測定プログラムを用いることにより、吐水口10aから排出される水12の流速Voを例えば関係式(III)を用いて算出するように構成される。
【0060】
[流速測定方法]
第1態様~第3態様の流速測定システム1による流速測定の方法の一例を、図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0061】
図6に例証される通り、流速測定システム1は、排水管10の吐水口10aから水12を排出し(S101)、距離センサ20により落下地点(X,Y)における水平方向(x軸)の距離Xを検出し(S102)、水平方向(x軸)を基準とした水12の傾斜角度(θ)を手動により設定入力又は角度センサにより検出する(S103)。次いで、水12の傾斜角度(θ)をパターン分けし(S104)、水12の傾斜角度(θ)が0°の場合、計測手段30において距離Xに基づく関係式(I)を用いた流速Vの算出を行い(S105)、水12の傾斜角度(θ)が-90°<θ<+90°の場合、計測手段30において距離Xに基づく関係式(II)を用いた流速Vの算出を行い(S106)、水12の傾斜角度(θ)が+90°の場合、計測手段30において距離Xに基づく関係式(III)を用いた流速Vの算出を行う(S107)。
【0062】
[流量測定システム]
流速測定システムの具体的な一態様は、本発明の流速測定システムを備え、当該流速測定システムによって測定された流速に基づいて流量を測定する。
【0063】
ここでは、流量測定システムの具体的な一態様について説明するが、本発明の流速測定システムと共通する構成については、説明を省略する。
【0064】
流量測定システム2は、流速測定システム1を備え、計測手段30は、当該流速測定システム1によって得られた水の流速Vo及び吐水口10aから排出される水の断面積Aから、吐水口10aから排出される水の流量Qoを測定可能であるように構成される。ここで、吐水口10aから排出される水の断面積Aは、排水管10内を流れる水12の水位が、吐水口10aの径と一致する場合においては、吐水口10aの断面積と一致する。また、吐水口10aから排出される水の断面積Aは、排水管10内を流れる水12の水位が、吐水口10aの径より小さい場合においては、水の断面積を画像センサや重量計などにより取得し、吐水面積を解析することにより取得することができる。
【0065】
具体的には、計測手段30は、流速測定システム1によって取得された水の流速Vo及び吐水口から排出される水の断面積Aから、下記関係式(IV)に基づいて、吐水口10aから排出される水の流量Qoを測定可能であるように構成されることが好ましい。
【0066】
【数12】
【0067】
計測手段30の機能構成は、流速測定システムが備える機能構成に加え、以下の構成を備える。
【0068】
図7に例証される通り、処理部310においては、流速測定プログラムの実行によって取得された水12の流速Vo及び吐水口10aから排出される水の断面積Aを取得可能であるように構成され、流量測定プログラムを用いることにより、水12の流量Qを例えば関係式(IV)を用いて算出するように構成される。
【0069】
記憶部320においては、流速測定プログラムに加え、流量測定プログラムをさらに格納する。また、処理部310によって算出された流速Vo及び吐水口10aから排出される水の断面積Aなどをさらに格納する。流量測定プログラムは、流速測定プログラムによって取得された流速Vo及び断面積Aに基づいて、例えば関係式(IV)により、吐水口10aから排出される水12の流量Qoを算出するように機能する。
【0070】
計測手段30の入出力部330は、流速測定プログラムによって取得された流速Vo及び吐水口10aのから排出される水断面積Aを処理部310に伝送可能であるように構成される。吐水口10aの断面積Aの値は、予め測定された吐出口10aの断面積Aを手動で入力してもよいし、あるいは吐出口から吐出する水の断面積を画像センサや重量計などにより取得し、吐水面積を解析した値を自動入力してもよい。
【0071】
計測手段30の処理部310において、算出された流量Qoの値を水12の動粘度、密度及び/又は温度や連続・非連続の有無(非連続の場合は、吐出間隔や吐出頻度)などのパラメーターに基づいて補正するプログラムを実行するように構成してもよい。
【0072】
[流量測定方法]
流量測定システム2による流量測定の方法の一例を、図8に示すフローチャートを用いて説明する。
【0073】
図8に例証される通り、流量測定システム2は、流速測定システム1によって行われるS101~S107に加え、吐水口10aから排出される水の断面積Aを手動または自動により入力し(S108)、流速測定システム1によって算出された流速Vo及び断面積Aに基づく関係式(IV)を用いた流量Qoの算出を行う(S109)。
【0074】
本実施形態に係る流速測定システムによって測定される流速値の信頼性を検証するため、距離センサを吐水口に対向する位置に、吐水口から水平方向の距離X及び鉛直方向の距離Yの位置に配置し、排水管の吐水口から排出される水の流速を段階的に変化させながら、距離Xo及び流速Voを実測した。なお、距離Xoは、「階段目盛シリーズ」(新潟世紀株式会社製)を用い、流速VoはTOPSFLO社製のギアポンプ「TG-01」の仕様に基づいて行われ、タイマーと株式会社サンプラテック社製のメスシリンダーを用いて確認した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1の結果に基づいて、流速Voと距離Xoの散布図(N=10)を作成し、回帰直線を作成した(図9)。図9において、横軸は流速Voであり、縦軸は距離Xoであり、また、波線は回帰直線を表す。相関係数は0.987であった。
【0077】
以上の結果より、流速Voと距離Xoとの回帰直線の相関係数が0.987であったことから、関係式(I)に基づく理論値と実測値とが高い精度で一致していることが立証された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の一態様の流速測定システム及び流量推定システムは、センサが水と非接触であり、かつ簡易な構成でありながら、排水管から排出される水の流速を高い精度で測定することができることに加え、排水管から排出される水の流量を測定することができることから、例えば、大規模プラントの放水などにも利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 流速測定システム
2 流量測定システム
10 排水管
10a 吐水口
11 水源
12 水
20 距離センサ
30 計測手段
310 処理部
320 記憶部
330 入出力部
340 バス

【要約】
【課題】
本発明の目的は、センサが水と非接触であり、かつ簡易な構成により水の流速を測定することができる流速測定システムを提供することにある。また、当該流速に基づいて水の流量を測定することができる新規な流量測定システムを提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、流速測定システムであって、排水管と、距離センサと、計測手段とを備え、前記排水管は、水平方向に、吐水口から水を排出可能であり、前記距離センサは、前記吐水口に対向する任意の位置に、前記吐水口から水平方向の距離D及び鉛直方向の距離Yで配置され、かつ前記吐水口からの水との水平方向の距離Xoを検出可能であり、前記計測手段は、Xo、D、Y及び重力加速度gから、前記吐水口から排出される水の流速Voを測定可能である、前記流速測定システムなどにより解決される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9