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特許7579619MM波近接場通信のための非接触インターフェース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】MM波近接場通信のための非接触インターフェース
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/02 20060101AFI20241031BHJP
   H04B 5/00 20240101ALI20241031BHJP
【FI】
H01P5/02 C
H04B5/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022075918
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2018558146の分割
【原出願日】2017-05-05
(65)【公開番号】P2022105147
(43)【公開日】2022-07-12
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】15/146,965
(32)【優先日】2016-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン スタッセン クック
(72)【発明者】
【氏名】スワミナサン サンカラン
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/106891(WO,A1)
【文献】特開2014-033432(JP,A)
【文献】特開2015-177419(JP,A)
【文献】特開2007-235451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/02
H04B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
モジュールであって、
基板と、
前記基板上の導波路カプラと、
前記基板上の無線周波数(RF)送信機又は受信機であって、前記導波路カプラに結合される、前記RF送信機又は受信機と、
前記基板を囲んで収容するハウジングであって、表面と前記表面上のポート領域とを有する、前記ハウジングと、
前記導波路カプラと前記ポート領域との間の導波路と、
前記ポート領域において前記導波路の端部に近接する共振器であって、前記ポート領域において前記ハウジングの壁の内部に取り付けられ、前記壁の内部が前記基板から離間されている、前記共振器と、
を含む、前記モジュールを含む、システム。
【請求項2】
システムであって、
バックプレーンと、
前記バックプレーンに取り付けられる第1のモジュールであって、
基板と、
前記基板上の導波路カプラと、
前記基板上の無線周波数(RF)送信機又は受信機であって、前記導波路カプラに結合される、前記RF送信機又は受信機と、
前記基板を囲んで収容するハウジングであって、表面と前記表面上のポート領域とを有する、前記ハウジングと、
前記導波路カプラと前記ポート領域との間の導波路と、
前記ポート領域において前記導波路の端部に近接する共振器と、
を含む、前記第1のモジュールと、
前記バックプレーンに取り付けられて前記第1のモジュールに近接する第2のモジュールと、
を含み、
前記第1及び第2のモジュールの各々がそれぞれの第1のポートとそれぞれの第2のポートとを有し、前記第1のモジュールの第1のポートが前記第2のモジュールの第2のポートと整合する、システム。
【請求項3】
システムであって、
第1のモジュールであって、
対向する第1及び第2の表面を有する基板と、
前記基板の第1の表面上の第1の導波路カプラと、
前記基板の第2の表面上の第2の導波路カプラと、
前記基板の第1及び第2の表面の一方の上の無線周波数(RF)送信機であって、前記第1の導波路カプラに結合される、前記RF送信機と、
前記基板の第1及び第2の表面の一方の上のRF受信機であって、前記第2の導波路カプラに結合される、前記RF受信機と、
前記基板を囲んで収容するハウジングであって、前記基板の第1の表面に対応する第1の側部と前記基板の第2の表面に対応する第2の側部と前記第1の側部の表面上の第1のポート領域と前記第2の側部の表面上の第2のポート領域とを有する、前記ハウジングと、
前記第1の導波路カプラと前記第1のポート領域との間の第1の導波路と、
前記第2の導波路カプラと前記第2のポート領域との間の第2の導波路と、
前記第1のポート領域において前記第1の導波路の端部に近隣する第1の共振器と、
前記第2のポート領域において前記第2の導波路の端部に近接する第2の共振器と、
を含む、前記第1のモジュールと、
を含む、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、
前記第1のモジュールと第2のモジュールとが前記システムにおいて互いに近接して設置されるときに前記第1のポート領域が前記第2のモジュールの第3のポート領域に整合するように構成される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、システムモジュール間の通信のための物理的/オーミックコンタクトに代わる近接場通信(NFC)に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁及び通信工学では、導波路という用語は、電磁波を端点間で伝える任意の線形構造を指し得る。元の最も一般的な手段は、電波を運ぶために用いられる中空の金属パイプである。この種の導波路は、電子レンジ、レーダーセット、衛星通信、及びマイクロ波無線リンクなどの機器において、マイクロ波送信機及び受信機をそれらのアンテナに接続するという目的のための伝送媒体として用いられる。
【0003】
誘電体導波路は中空パイプの代わりに中実誘電体コアを用いる。誘電体は、印加される電場によって分極され得る電気的絶縁体である。誘電体が電場に置かれると、電荷はその材料内を、導体内を流れるようには流れず、電荷の平均平衡位置からわずかにシフトするだけであり、それによって誘電分極が生じる。誘電分極により、正の電荷は電場に向かって変位し、負の電荷は反対方向にシフトする。これにより、内部電場がつくられ、この内部電場が誘電体自体内の全体場を低減させる。誘電体が、弱く結合した分子で構成される場合、これらの分子は、分極し、また再配向するため、それらの対称軸が電場と整合する。「絶縁体」という用語は弱い電気伝導を示唆するが、「誘電体」は典型的には高分極性材料のことであり、分極性は、誘電率(εk)と呼ばれる数、及び/又は、比透磁率(εr)と呼ばれる数によって表される。絶縁体という用語は、概して、電気的妨害を示し、誘電体という用語は、分極による材料のエネルギー蓄積容量を示す。
【0004】
金属パイプ導波路内の電磁波は、導波路をジグザグな経路で導波路の両側の壁の間で繰り返し反射されながら進むと想像され得る。矩形導波路という特定のケースでは、厳密な解析がこの見方に基づき得る。誘電体導波路における伝播も同様の見方がされるが、波動は誘電体の壁における全内部反射によって誘電体に閉じ込められる。
【0005】
近接場通信(NFC)は無線技術であり、2つのデバイスが約10cm以下の近距離で通信することを可能にする。NFCを用いる様々なプロトコルが、例えばISO/IEC 18092、ECMA-340、ISO 14443において定義される、NFCフォーラム仕様内で国際的に標準化されてきている。NFCは、モバイルデバイスがサブスクライバの即時環境と相互作用することを可能にする。近接非接触技術により、モバイルデバイスは、公共輸送手段にアクセスするため、安全対策が取られた場所にアクセスするため、及びさらに多くの応用のため、クレジットカードとして用いられ得る。非接触システムは、通常、アクセス制御ID(例えば従業員バッジ)や公共輸送手段などのための支払システムとして用いられる。最近になり、クレジットカードはNFC能力を持つようになってきている。
【発明の概要】
【0006】
システムの説明する例において、第1の導波路が、第1の導波路の端部に結合される第1の共振器を有する。第2の導波路が、第2の導波路に結合される第2の共振器を有する。第1の共振器は第2の共振器から或るギャップ距離により離間される。第1の導波路によってギャップを横切って第2の導波路に伝播される信号の送信が、第2の共振器に結合される伝播波に応答して第1の共振器によって生成される閉じ込め近接場モード磁場によって増強される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】共振器を用いて2つの導波路の間のギャップを横切る近接場結合を例示するシステムの側面図である。
図2】共振器を用いて2つの導波路の間のギャップを横切る近接場結合を例示するシステムの側面図である。
【0008】
図3A図1又は図2の導波路に置かれる例示のカプラ及び共振子をより詳細に図示する。
図3B図1又は図2の導波路に置かれる例示のカプラ及び共振子をより詳細に図示する。
図3C図1又は図2の導波路に置かれる例示のカプラ及び共振子をより詳細に図示する。
図4図1又は図2の導波路に置かれる例示のカプラ及び共振子をより詳細に図示する。
【0009】
図5図1又は図2のシステムのシミュレーションされた動作を図示するグラフである。
図6図1又は図2のシステムのシミュレーションされた動作を図示するグラフである。
図7図1又は図2のシステムのシミュレーションされた動作を図示するグラフである。
【0010】
図8】モジュール間のNFC通信のための共振器を備えた導波路を用いる例示のシステムのブロック図である。
【0011】
図9図8のシステムのためのモジュールをより詳細な例示である。
【0012】
図10図8の例示のシステムの絵図である。
【0013】
図11】近隣のモジュール間の近接場通信(NFC)の動作を図示するフローチャートである。
【0014】
図12】ギャップを横切る近接場結合を用いるシステムの別の実施形態の断面図である。
【0015】
図13】導波路間のギャップを横切るNFCの結合効率を改善するため共振器を用いるシステムの他の実施形態を図示する。
図14】導波路間のギャップを横切るNFCの結合効率を改善するため共振器を用いるシステムの他の実施形態を図示する。
図15】導波路間のギャップを横切るNFCの結合効率を改善するため共振器を用いるシステムの他の実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面において、一貫性を保つため、同様の要素は同様の参照数字によって示されている。
【0017】
電子構成要素及びシステムにおける周波数が高くなると、それに応じて波長は短くなる。例えば、多くのコンピュータプロセッサはいまやギガヘルツ範囲で動作する。動作周波数がサブテラヘルツまで高くなると、波長は、或る近距離よりも長い信号線がアンテナとして振舞い得るほど短くなり、信号放射が起こり得る。例えば、印刷回路基板など、誘電率が3の低誘電率材料において、100GHzの信号は約1.7mmの波長を有し得る。そのため、長さが1.7mmしかない信号線は、全波アンテナとして振舞い得、信号線材料における信号エネルギーのかなりの部分を放射し得る。
【0018】
開空間における波動は球面波として全方向に伝播する。こうして、遠方場状況において、波動はそのパワーを距離の二乗に比例して失う。すなわち、波源から距離Rでは、パワーは波源におけるパワーの1/Rになる。このようなランダムな波動伝播では、近くに位置する他のシステムとの干渉が生じることもあり、FCCやIECなどの標準化団体によって設定されている放出制限に抵触し得る。
【0019】
導波路は、高周波信号を比較的長い距離にわたって搬送するために有用である。導波路は、一次元伝播に波動を閉じ込め、そのため、理想的な条件下では、波動は伝播中にパワーを失わない。導波路の軸に沿う電磁波伝播は波動方程式によって記述される。波動方程式はマックスウェルの方程式から導出され、波長は導波路の構造及び導波路内の材料(空気、プラスチック、真空など)に、並びに波動の周波数に依存する。一般に用いられる導波路のカテゴリはいくつかしかない。最も一般的な種類の導波路は矩形断面を有し、これは通常、正方形断面ではない。この断面の長辺はたいてい、短辺の2倍程度の長さである。これらの導波路は、水平又は鉛直に分極した電磁波を運ぶために有用である。
【0020】
サブテラヘルツ無線周波数(RF)信号で遭遇する極めて短い波長の場合、誘電体導波路は、良好に動作し、製造するのが中空金属導波路よりもはるかに安価である。また、金属導波路は、導波路のサイズによって決まる周波数カットオフを有する。カットオフ周波数未満では(電磁場の)伝播は生じない。誘電体導波路は、固定カットオフ点がなく動作範囲がより広い。
【0021】
様々なモジュール間で信号を配信するために導波路と結合されたNFCを用いると、低コストな相互接続解決策が提供され得る。実施形態は、物理的/オーミックコンタクトを用いることなく着脱可能なシステムモジュール同士をインターフェースする方法を提供し得る。
【0022】
図1及び図2は、共振器112、113を用いて2つの導波路110、111の間のギャップ104を横切る近接場通信(NFC)を図示する例示のシステム100の一部の側面図である。この例において、基板101は無線周波数(RF)信号を生成するように構成される高周波回路要素を含み得るか、又はこの高周波回路要素に結合され得る。いくつかの実施形態において、RF信号は、約10~200GHzの例示の範囲の基本周波数を有し得る。基板101は、グラスファイバ、プラスチック、シリコン、セラミック、プレックスガラスなど、電子システム及びパッケージに用いられる、任意の通常用いられる又は将来開発される材料を用いて実現される印刷回路基板(PCB)とし得る。
【0023】
導波路110は、基板101に近接して配置され得、基板101から距離D1にわたって延在し得る。上述したように、導波路110は、金属導波路、誘電体導波路、誘電体充填金属導波路、或いは、RF信号伝播のためのその他の既知の又は将来開発される伝送媒体とし得る。カプラ114は、RF信号を導波路110に放出するため基板101上に製造され得る。例えば、カプラ114は、RF信号を生成する回路要素に接続されるマイクロストリップの短絡ループとし得る。別の実施形態において、カプラ114は、各側のマイクロストリップが差動的にフィードされる差動ループとし得る。他の実施形態において、導波路110内にRF信号を放出するためにその他の既知の又は将来開発される構造が用いられ得る。
【0024】
同様に、別の基板102が、RF信号を受信するように構成される高周波回路要素を含み得るか、又はこの高周波回路要素に結合され得る。いくつかの実施形態において、RF信号は約10~200GHzの例示の範囲の基本周波数を有し得る。基板102は、電子システム及びパッケージに用いられる、任意の通常用いられる又は将来開発される材料を用いて実現されるPCBとし得る。この材料は、グラスファイバ、プラスチック、シリコン、セラミック、プレックスガラスなどである。
【0025】
導波路111が、基板102に近接して配置され得、基板102から距離D2にわたって延在し得る。上述したように、導波路111は、金属導波路、誘電体導波路、誘電体充填金属導波路、或いは、RF信号の伝播のためのその他の既知の又は将来開発される伝送媒体とし得る。カプラ115が、導波路110からRF信号を受信するため基板102上に製造され得る。例えば、カプラ115は、RF信号を受信する回路要素に接続されるマイクロストリップの短絡ループとし得る。別の実施形態において、カプラ115は、各側のマイクロストリップが差動的にフィードされる差動ループとし得る。他の実施形態において、導波路111からRF信号を受信するためにその他の既知の又は将来開発される構造が用いられ得る。
【0026】
共振器112が、これ以降に説明されるように、導波路110の、カプラ114とは反対の端部に製造され得る。同様に、共振器113が、導波路111の、カプラ115とは反対の端部に製造され得る。この例において、導波路110の共振器112を含む端部は、導波路111の共振器113を含む端部からギャップ距離104だけ離間されている。例えば、このギャップは、単に、2つの端部間の空間であり得、空気で充填され得る。いくつかの実施形態において、中実材料103がギャップ104の全て又は一部を充填し得る。中実材料103は、プラスチック、ガラス、グラスファイバ、セラミック、プレックスガラスなど、誘電体又は絶縁材料とし得る。
【0027】
距離D1、D2は、共に近接して配置されるシステムモジュール内に基板がパッケージされる応用例の場合は比較的短くし得る。このような応用例をこれ以降で説明する。他の応用例において、D1及び/又はD2は、基板101が基板102からより長い距離に配置される場合には長くし得る。例えば、基板101は、基板102から数インチ又は数フィート離され得、或いは数百フィート以上離されることもある。導波路110、111は、長距離にわたって低損失で信号の閉じ込め及び伝播を可能とする。
【0028】
図2は、システム100におけるNFCの動作を示す。例えば、放出構造114は、導波路110のTE01モードH場に合うように導波路110において磁場202をつくるマイクロストリップの短絡ループ又は差動ループとし得る。これにより、マイクロストリップ伝播モードから導波路伝播モードへの遷移が可能となる。H場202は、次いで、導波路伝播原理に従って伝播E場203を誘起する。伝播E場203が共振器112と相互作用すると、閉じ込め近接場モード磁場205を生成する電流が生成される。閉じ込め近接場モード磁場205は、本質的に、ギャップ104を横切って共振器113と磁気的に結合して、共振器113において誘起電流を生成する非放射エバネッセント場である。共振器113における誘起電流は、次いで、導波路111において伝播E場207を誘起する磁場206をつくる。E場207がカプラ114に達すると、磁場208がRF信号を生成し、このRF信号は基板102上の受信機回路要素に配路され得る。
【0029】
このようにして、RF信号が、基板101上の回路要素から導波路110、111を介して基板102上の回路要素にギャップ104を横切って伝達され得る。この際、ギャップの近隣の各導波路の端部の共振子によって生成される閉じ込め近接場モード磁場に因る近隣のシステム/構成要素への損失又は放射は最小限である。
【0030】
図3A図3C図4は、図1又は図2の導波路に置かれる例示のカプラ及び共振子をより詳細に図示する。図3Bは、基板301を通して導波路310内を見る端部図である。本明細書における説明は、図1又は図2の導波路110、111の両方に適用され得る。図3Aは、導波路カプラ314に接続されるRF回路要素を含み得る例示のIC320を示す。IC320は、導波路310を介してカプラ314で受信されるRF信号を処理するための受信機回路要素、又はカプラ314によって導波路310内に送信されるRF信号を生成するための送信機回路要素を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、IC320は、送信機回路要素及び受信機回路要素の両方を含み得る。
【0031】
また、例えば、カプラ314は、基板310にはんだ付けされる離散ループとし得る。図3Bに図示されるように、カプラ314は、カプラ314を差動的にフィードするマイクロストリップ321を各側に有する差動ループとし得る。図3Aでは、銅トレース321が、接地面322の上のマイクロストリップとして構成される。図3Cは、ループ314の一方の側がシングルエンドフィードのため接地に短絡(323)され得る別の実装形態を示す。
【0032】
図3Bを参照すると、共振子312は、共振子312が搭載される導波路の伝播波と相互作用するように構成される本質的に開ループである。例えば、共振器312は、単層基板上に製造され得、例えば、接着剤を用いて、又は基板上の搭載パッドを金属導波路にはんだ付けすることによるなど、既知の又は将来開発される技法を用いて、導波路310の端部に取り付けられ得る。いくつかの実施形態において、導波路310は誘電体コアを有し得る。この場合、共振器312は、導電インクを用いるインクジェット印刷など、付加的なプロセスを用いて誘電体コアの端部に形成され得る。別の実施形態において、共振器312は、導波路310の端部の近隣の誘電体103(図1を再度参照)などの誘電体上に搭載され得る。
【0033】
図4は、カプラ112及び113の等角図であり、これらのカプラが互いに対して向けられ得、ギャップ104により離間され得る様子を図示する。
【0034】
図5は、図1又は図2のシステムのシミュレーションされた動作を図示する電界強度のグラフである。この例において、E場203は、ベクトル502で示す方向に導波路110を介して伝播する。E場203が共振器112に当たると、近くのシステム/構成要素への大きな損失又は放射なしに、ギャップ104を横切って共振器113に磁気的に結合する強い閉じ込め近接場モード磁場が生成される。閉じ込め場は、放射しないエバネッセント場として働く。
【0035】
図6は、ギャップ距離に対する結合効率を図示するグラフであり、ギャップ距離は伝播信号の波長で測定される。グラフの線602は共振器なしのシステムを図示し、グラフの線604はギャップの両側の導波路の端部に共振器が配置されたシステムの動作を図示する。共振器を用いると、0.35波長の例示のギャップに対し約1dBの効率改善が観察され得る。上述したように、100GHzの周波数の場合、誘電率3の材料において波長は約1.7mmである。
【0036】
図7は、周波数に対する結合効率を図示するグラフである。グラフの線702は共振器なしのシステムを図示し、グラフの線704はギャップの両側の導波路の端部に置かれる共振器を備えたシステムの動作を図示する。この例において、導波路は、100GHzで始まる伝播モード1、及び200GHzで始まる伝播モード2を有するように構成される。この場合、ギャップに挿入される結合された共振器は、制限された帯域幅を有するように設計され、選択された周波数帯域にわたって結合効率を増加させ得る。
【0037】
別の実施形態において、帯域幅を広げるために、異なる周波数範囲に対して調整されたいくつかの共振器が挿入され得る。別の実施形態において、帯域幅を広げるために広帯域共振器が用いられ得る。
【0038】
図8は、モジュール間のNFC通信のための共振器を備えた導波路を用いる例示のシステムのブロック図である。システム800は、モジュール間で誘導NFC通信を用いる例示のプログラマブルロジックコントローラである。プログラマブルロジックコントローラ(PLC)又はプログラマブルコントローラは、工場の組立ライン、遊戯用乗り物、電灯ソケットなどの機械類の制御など、典型的な工業電気機械的プロセスの自動化のために用いられるデジタルコンピュータである。PLCは多くの産業で多くの機械に用いられる。PLCは、デジタル及びアナログ入力及び出力の複数の配置、拡張された温度範囲、電気ノイズに対する耐性、並びに、振動及び衝撃に対する抵抗に対して設計される。機械動作を制御するためのプログラムは、典型的に、バッテリーバックアップされる又は不揮発性のメモリに記憶される。PLCは、限られた時間内に入力条件に応答して出力結果が生成されなければならず、そうしないと意図せぬ動作が生じ得るので、「厳しい」リアルタイムシステムの例である。PLCシステムは既知であり、本明細書では詳細に説明しない(例えば、2015年12月1日付けのウィキペディア「プログラマブルロジックコントローラ」を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれている)。
【0039】
この例において、いくつかのモジュールを「ラインカード」と称する。様々なタイプのラインカードが、シャシー又はラックに設置され得、様々な目的のために構成され得る。これらの目的には、製造プロセスの制御、建物内の温調、医療機器の制御などが含まれる。したがって、制御下の様々な機器間の接地ループ又はその他の相互作用を防止するために、電気的な隔離がしばしば必要とされるか又は望ましい。これまで、光学アイソレータやトランスなど、様々なタイプの絶縁デバイスが用いられてきている。
【0040】
この例は、電源ラインカード802、データ通信ラインカード810、及びいくつかの処理ラインカード820、840、841を有する。図8は、5つのラインカードモジュールを示すが、例示のシャシーが10個またはそれ以上のモジュールを収容し得る。本明細書においてラインカードを用いるシステムが図示されているが、実施形態はラインカードに限定されない。様々なタイプのモジュールが、取り外し可能なモジュール間の信頼性の高い通信を提供するために本明細書で説明する通信技法を用い得る。
【0041】
この例において、電源ラインカード802は、電源に結合され、バス804を介して配分され得る1又は複数の電圧を生成し得る。バス804は、コネクタ805などのコネクタを介して各ラインカードに結合され得る。通常、電圧バス804は、コネクタ805のためのサポートを提供するバックプレーンに含まれ得る。
【0042】
例えば、データ通信ラインカード810は、通信チャネルを介して遠隔ホスト或いは別のラック又はシャシーにデータを送信し受信するように構成され得る。様々なタイプの通信ラインカード810が、無線又は有線インターフェースを収容し得る。また、例えば、ローカル又はワイドエリアネットワークへのインターネット接続が、ラインカード810によって提供され得る。或いは、WiFiネットワーク又はセルラーネットワークへの無線接続が、ラインカード810によって提供され得る。
【0043】
例えば、処理ラインカード820は、フロントエンドインターフェースロジック830、処理ロジック831、及びアグリゲータロジック832を含み得る。フロントエンドインターフェースロジック830は、制御下の機器への相互接続を提供するための様々なタイプのものとし得る。例えば、入力及び出力信号、RS232/422/485互換信号、デジタル信号、アナログ信号などがある。アナログデジタルコンバータ(ADC)、デジタルアナログコンバータ(DAC)、リレー、コンタクトなど、様々なタイプのロジックが提供され得る。処理ロジック831は、様々なタイプのハードウェアに組み込まれプログラマム可能なロジック、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、メモリなどを含み得る。ラインカード840、841などは、ラインカード820と同一又は類似のものとし得、所与の制御タスクに必要とされるように、様々なタイプ及び組合せの処理及びインターフェースロジックを含み得る。
【0044】
この例において、各ラインカードは、各ラインカードが両側で最も近いラインカードと通信し得るように構成される。例えば、ラインカード810は、受信機824を有するラインカード820に送信機811を介して送信し得る。同様に、ラインカード820は、送信機823を介してラインカード810の受信機815に送信し得る。同時に、ラインカード820は、送信機822を介して近隣のラインカード840に送信し得、受信機821を介して近隣のラインカード840から受信し得る。
【0045】
同様にして、システム800における各ラインカードは、デイジーチェーン方式で他の各ラインカードと通信し得る。各ラインカードは、オンラインカード820の832などのアグリゲータ/デアグリゲータロジック機能を含む。この機能により、各ラインカードは、そのカードに対して意図されたデイジーチェーンでの通信を認識し得る。また、アグリゲータ/デアグリゲータ機能により、ラインカードが通信パケットを発し得る。この通信パケットは、デイジーチェーンに提供され、その後、近隣のラインカードを介してターゲットラインカード上の最終宛先まで伝播する。この実施形態において、デイジーチェーンは、インターネットネットワークプロトコルと同様に動作し、各アグリゲータ832は、インターネットインターフェースとして機能する。別の実施形態において、異なるタイプの既知の又は将来開発されるピアツーピアプロトコルが用いられ得る。
【0046】
上述したように、NFCは、各近隣のラインカード間で通信するため搬送媒体として用いられ得る。これ以降に説明するように、信号拡散を最小限にし、他のシステム及びデバイスとインターフェースために、各近隣のラインカードモジュール間でNFCを誘導するために導波路セグメント(導波路815、825、及び816、826など)が用いられ得る。
【0047】
図9は、図8のシステムのためのモジュールのより詳細な図である。図9は、システム800の様々なモジュール810、820、840などの典型例である2つの例示のラインカードモジュール921、922を図示する。モジュール921は基板901を含み得、ラインカード820の送信機832及び受信機824及び/又は送信機822及び受信機821などの送信機及び受信機を含む集積回路(IC)951など、様々な回路構成要素が基板901上に搭載される。いくつかの実施形態において、各送信機及び受信機のために別のICが存在し得る。例えば、別の実施形態において、1つまたは複数の受信機及び送信機が単一ICにおいて形成され得る。同様に、モジュール922は基板902を含み得、送信機及び受信機を含む集積回路(IC)952などの様々な回路構成要素が基板902上に搭載される。
【0048】
集積回路951、952はまた、アグリゲーションロジック、処理ロジック、及びフロントエンドロジックを含み得る。或いは、アグリゲーションロジック、処理ロジック、及びフロントエンドロジックを含む付加的なICが、基板901、902上に搭載され得る。例えば、基板901は、単層又は複数層の印刷回路基板とし得る。IC951及び他のICが、動作周波数に応じてスルーホール或いははんだバンプ又はボンディングを用いる表面実装技術、或いは他の既知の又は将来開発されるパッケージング技術を用いて、基板901上に搭載され得る。基板901、902は、グラスファイバ、プラスチック、シリコン、セラミック、プレックスガラスなど、電子システム及びパッケージに用いられる、任意の一般に用いられる又は将来開発される材料とし得る。
【0049】
基板901、902はまた、導波路(WG)カプラ914を含み得、WGカプラ914は、IC951に含まれる受信機及び/又は送信機に接続される。IC951、952に含まれる受信機及び/又は送信機にWGカプラ915も結合され得る。WGカプラ914、915は、図3A及び図3Bを再び参照すると、カプラ314と類似のものとし得る。これらのカプラは、基板901上に搭載される別々の構造とすることもできるし、基板901内に埋め込むこともできる。
【0050】
導波路910が、WGカプラ914上にほぼ中心となる位置に搭載され得る。同様に、導波路911が、WGカプラ915上にほぼ中心位置となる位置に搭載され得る。このようにして、WGカプラ914が発した電磁エネルギーの大部分が、導波路910によって捉えられ閉じ込められ、それによって、近隣のモジュールに向けられる電磁エネルギーは外部放射及び信号損失が最小限になる。
【0051】
上述したように、各導波路における伝播する波動を、共振器の周りの閉じ込め近接場モードエバネッセント磁場に又は共振器の周りの閉じ込め近接場モードエバネッセント磁場から変換するために、共振器が導波路910、911の端部に取り付けられ得、これにより、ギャップ距離904を横切るNFCが実現され得る。実施形態は、近隣のモジュール間の分離が、IC951の送信機によって送信されている周波数の波長の数分の一となる近接場モードで動作する。例えば、100GHz~200GHzの範囲の送信周波数が用いられ得る。しかし、いくつかの実施形態において、この範囲より高い又は低い周波数が用いられてもよい。100GHz信号は、空気中で約3mmの波長を有し得る。
【0052】
シールド963が、各WGカプラによって生成される場の「後方散乱」を最小化するため、左WGカプラ915と右WGカプラ914の間に提供され得る。例えば、シールド963は、このモジュールのための接地基準に接続される導電層とし得る。シールド963は、カプラの帯域幅を狭くし得る静電容量効果を回避するため、各カプラ914、915からλ/10よりも長い距離、離間され、ここで、λはカプラが放出する信号の波長である。例えば、εRが1である誘電体における30GHz信号の波長は約10.0mmである。この例では、基板901は、約1.0のεRを有する典型的なPWB材料である。したがって、シールドが各カプラから少なくとも1mmの距離(973)離間されている限り、30GHzで動作するシステムにおいて静電容量効果は最小限になるはずである。より低い周波数での動作は、より大きな間隔を必要とし得る。
【0053】
近接場モードは、2つの近隣の共振器912、913を結合するエバネッセント場を生成し得る。エバネッセント場は、本来、波源から離れるにつれ指数関数的な減衰を示す。モジュール921の共振器912と、数mmしか離れていない、近隣のモジュール922における別の共振器913との間が近接していることにより、近接場モードにおけるエバネッセント場を用いて適度なTX-RX信号結合が実現され得る一方で、FCC 15章に概説される放射制限/懸念が緩和される。
【0054】
最も類似しているのはトランスである。コイル間の強い自己結合により外部への漏れが減少する。また、いかなる漏れも偶発的とみなし得る。FCCによる偶発的放射に対する要求は、意図的な放出に対する要求と比較して著しく緩和される。
【0055】
モジュール921は、概ね961、961で示されるハウジングに囲まれ得る。ハウジングの一方の側はパネル961として図示され、ハウジングの他方の側はパネル962(例えば金属又はプラスチック)として図示される。通常、ハウジングの厚みは数mmである。
【0056】
また、例えば、導波路910は誘電体ブロックとし得る。誘電体ブロックを介する電磁波伝播は波動方程式によって記述され得る。波動方程式はマックスウェルの方程式から導出され、ここで、波長は誘電体ブロックの構造、その中の材料(空気、プラスチック、真空など)、及び波動の周波数に依存する。導波路910、911は、WGカプラ914が放出する電磁場の波長を著しく低減させ得る周囲の材料及び/又は空気より著しく大きい誘電率及び/又は透磁率を有することによって、WGカプラが放出する場を閉じ込めることが可能となり得る。同様に、導波路910、911は、WGカプラ914が放出する電磁場の波長を著しく増大させ得る周囲の材料及び/又は空気より著しく小さい誘電率及び/又は透磁率を有することによって、WGカプラが放出する場を閉じ込めることが可能となり得る。或いは、導波路910、911は、WGカプラ914が放出する電磁場の波長を著しく低減又は増大させるメタ材料から構築され得る。
【0057】
例えば、導波路910、911は、約2.0より大きい比誘電率を有する誘電体ブロックとし得る。同様に、導波路910、911は、約2.0より小さい比誘電率を有する誘電体ブロックとし得る。
【0058】
別の実施形態において、誘電体導波路910は、周辺部の周りに、WGカプラ914が放射する電磁場をさらに閉じ込め、方向づけるために導電層を有し得る。この導電層は、銅、銀、金などの金属、イオンドープによって形成される導電ポリマー、カーボン及びグラファイトベースの化合物、導電酸化物など、金属又は非金属導電材料を用いて、導波路910、911の周りに側壁を形成し得る。
【0059】
モジュール壁961の材料及び厚みによっては、導波路910は、放射された信号がモジュール壁961を介して通るように、単にモジュール壁961の内側表面に近接するように搭載され得る。いくつかの実施形態において、モジュール壁961にウィンドウが設けられ得、それによって、導波路910の外側表面がモジュール壁961の外側表面と同一面になり得、又はモジュール壁961の外側表面からわずかに窪み得、又はモジュール壁961の外側表面からわずかに出っ張り得るように配置される。ハウジングの表面における、導波路が置かれる概略場所を本明細書では「ポート」と称する。
【0060】
図9は、モジュール921に近接して配置され得る第2モジュール922の一部を示す。モジュール922は、「左」パネルと称され得るパネル962を含むハウジングを有し得る。モジュール921は、「右」パネルと称され得るパネル961を有し得る。モジュール922は、受信機及び送信機、並びにWGカプラ914、915を含み得るIC952などの様々なICを保持する基板902を含み得る。モジュール922は導波路911も含み得、導波路911は、左パネル962に近接し、モジュール921においてWG910と整合して配置される。
【0061】
モジュール921及びモジュール922がシャシー内に設置されるとき、904で示すように、右パネル961は左パネル962に近接する。モジュール921の導波路910及びモジュール922の導波路911は、互いにほぼ整合するように構成される。このようにして、IC951内の送信機によって生成される信号が、カプラ914に提供され、導波路910内へ放射され、それによって、共振器912に向けられ、次いで、モジュール922の共振器913によって受信され、導波路911内へ放出され、基板902上のカプラ914によって受信され、それによって、IC952内の受信機に提供され得る。
【0062】
モジュール921及び922は、モジュール間の信号を通信するために以前は必要とされていたコンタクトの摩滅なしに、容易にシャシーから取り外され得、又はシャシー内に挿入され得る。また、共振器912、913を用いるNFCは、モジュール921とモジュール922との間の完全な電気的隔離を提供する。付加的な隔離機構は必要とされない。
【0063】
図10は、図8のシステム800の別の見方である、例示のシステム1000の絵図である。バックプレーン1006が、図1のコネクタ105に関して説明したように、各ラインカードに電力を提供するためのコネクタ1005のセットを提供する。図示されるように、各ラインカードモジュールは、モジュールを単に引き出してコネクタ1005との接続を断つことによって、バックプレーン1006から取り外し可能である。通常、ラック又はシャシーがバックプレーン1006とともに提供されて、ラインカードがコネクタ1005に挿入されるときラインカードを支持する。
【0064】
各ラインカードモジュールは、プラスチック又は他の適切な材料からつくられ得るハウジングに囲まれる。上述したように、各ラインカードは、モジュールの各側に非接触通信ポートを形成するように配置される、WGカプラ、導波路、及び共振器を有し得る。例えば、モジュール1010はモジュールの右側にポート1055を有し得、モジュール1020はモジュールの左側に、両方のモジュールがバックプレーン1006に差し込まれるときポート1055と整合するポート1056を有し得る。
【0065】
同様に、モジュール1020はモジュールの右側に別のポート(図示せず)を有し得、モジュール1040はモジュールの左側に、両方のモジュールがバックプレーン1006に差し込まれるとき整合するポート(図示せず)を有し得る。上述したように、すべてのモジュール間でデイジーチェーン通信が可能になるように、すべてのモジュールが、各モジュールの両側に同様のポート対を有し得る。
【0066】
図11は、上述したようなモジュール間の近接場通信の動作を図示するフローチャートである。また、上述したように、これらのモジュールは、工業、商業、及び住宅応用例に用いられるプログラマブルロジック制御システムの一部とし得る。通常のシステムは、モジュールのセットが設置されるラック又はシャシーを含み得る。各モジュールは、近接場通信を用いて近接する近隣モジュールと通信し得る。この近接場通信において、1つのモジュールにおいて生成されるRF信号が、放射結合、近接場結合、又はエバネッセント結合、或いはこれらのモードの任意の組合せを用いて近隣のモジュール内の受信機にEM結合され得る。
【0067】
例えば、無線周波数(RF)信号が、第1のモジュールにおいて生成され得る(1102)。図1図10の例において、RF信号は、100~200GHzの範囲の周波数を有し得る。しかし、他のシステムが、本明細書において説明される場結合構成要素及び場閉じ込め構成要素の物理的サイズを調整することによって、より高い又は低い周波数のRF信号を用い得る。
【0068】
第1のモジュールの第1の導波路カプラからのRF信号に応答して、RF電磁場が生じ得る(1104)。例えば、RF電磁場は、図3A及び図3Bに関連して説明したように、マイクロストリップループにおいて形成される移動する波動の結果であり得る。
【0069】
生じたRF電磁場は、第1のモジュールの導波路によって閉じ込められ、導波路の端部の共振器に向けられる(1106)。導波路における伝播する電磁場に応答して、閉じ込められた近接場モード磁気エバネッセント場が共振器によって生成され得る。
【0070】
エバネッセント場は、近隣の第2のモジュールの導波路の端部に配置される類似の共振器に誘導的に結合し得る(1108)。上述したように、これら2つの共振器は、モジュールがシステムに設置されるとき近接して配置され、それによって、生じたエネルギーの周囲への損失が最小限になる。上述したように、この結合は、EM結合によってなされ、共振器からの生じた電磁場の近接場を用い得る。この結合は、第1のWGカプラによって形成されるエバネッセント場も利用し得る。(第1のモジュールの導波路からの)伝播する場の何らかの部分は、モジュール間のギャップを横切って放射され得る。近隣のモジュール間の間隔によっては、これらの結合モードの一方又は他方或いはこれらの組合せが生じ得る。例えば、これにより、FCC放出要件に準拠するプロセスが簡略化され得る。
【0071】
生じたRF電磁場は、第2のモジュールの第2のWGカプラに伝播する(1110)。
【0072】
得られるRF信号が、次いで、第2のモジュールのRF受信機に提供され得る(1112)。上述したように、任意のモジュールがシステム内の任意の他のモジュールと通信し得るように、システム内の複数のモジュールはデイジーチェーン方式で通信し得る。
【0073】
既知の標準通信プロトコル(インターネットプロトコルなど)が用いられ得、デイジーチェーンされたNFC物理媒体がイーサネットとして扱われる。インターネットプロトコル(IP)は、ネットワーク境界を横切ってデータグラムを中継するための一揃いのインターネットプロトコルにおける主要な通信プロトコルである。IPは、パケットヘッダにおけるIPアドレスのみに基づいて発信元ホストから宛先ホストにパケットを搬送するタスクを有する。この目的のため、IPは、搬送されるべきデータをカプセル化するパケット構造を定義する。また、IPは、発信元及び宛先情報でデータグラムを標識するために用いられるアドレス指定方法を定義する。IPの第1の主要バージョン、すなわち、インターネットプロトコルバージョン4(IPv4)は、インターネットの有力なプロトコルである。その後継プロトコルは、インターネットプロトコルバージョン6(IPv6)である。
【0074】
別の実施形態が、本明細書で説明したようにデイジーチェーンされたNFC物理媒体を用いる通信のための、別の既知の或いは将来開発される通信プロトコルを用い得る。
【0075】
このようにして、実施形態は、近接場通信技法を用いて、システムの取り外し可能なモジュール間の高スループット通信を提供し得る。本明細書において説明される技法は、光学カプラなどの代替の技法より安価であり得る。NFCは、モジュール間の非接触通信を可能にし、それによって、モジュール間の隔離を必要とし得るシステムにおける付加的な
隔離の必要性をなくす。
【0076】
図12は、ギャップ1204を横切る近接場結合を用いるシステム1200の一部の別の実施形態の断面図である。この例において、基板1201が、基板内に形成される導波路1210を有する。基板1201は、グラスファイバ、プラスチック、シリコン、セラミック、プレックスガラスなど、電子システム及びパッケージに用いられる、任意の一般に用いられる又は将来開発される材料を用いて実装される印刷回路基板(PCB)とし得る。集積回路1220が、基板1201上に搭載され得、例えば、図3Aのカプラ314に類似のカプラを用いて、導波路1210に結合され得る。基板に形成されICに結合される導波路の他の例が、Juan Herbsommerらによる米国特許番号US9,306,263、発明の名称、「集積回路と誘電体導波路の間の、双極アンテナ及び反射板を用いるインターフェース」に記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれている。
【文献】米国特許番号 US9,306,263
【0077】
第2の導波路1211が、導波路1210とインターフェースするように構成され得る。上述したように、導波路1211の端部に配置される共振器1212、及び導波路1210の端部に配置される近隣の共振器が、ギャップ1204を横切る結合効率を改善し得る。この例において、隔離又は誘電体層1202が、基板1201の一部又は全体にわたって形成され得る。層1202は、二酸化シリコン、ガラス、石英、セラミック、プラスチックなどの様々な材料から形成され得る。
【0078】
図13は、より大きなギャップに対して用いられる複数の共振器を備えるシステム1300の一部を図示する。この例において、導波路1310、1311は、より大きなギャップ1304により離間される。上述したように、共振器1312、1313が、ギャップ1304を横切る結合効率を改善するために、導波路1310、1311の端部に配置され得る。しかし、図6を再度参照すると、結合効率はギャップが広くなるにつれ減少する。半波長ギャップをほぼ超えると、良好な結果を得るには効率が低すぎ得る。
【0079】
例えば、ギャップを横切って離間される1つ又は複数の共振器1314を設置することで、各対の共振器間のギャップの有効長が約0.5波長未満に維持され得る。
【0080】
図14は、共振器が導波路1410、1411の端部の近隣の誘電体上に搭載されるシステム1400の一部を図示する。上述したように、共振器1412、1413は、ギャップ1404を横切る結合効率を改善し得る。この例において、共振器1412、1423は、ギャップの全て又は一部を形成する誘電体1461、1462の表面に適用され得る。例えば、図9を再度参照すると、誘電体1461はモジュールの右パネル961を表し得、誘電体1462はモジュールの左パネル962を表し得る。このようにして、導波路1410、1411は、各モジュールが組み立てられるとき共振器1312、1413に近接して配置される、シンプルな導波路となり得る。
【0081】
図15は、導波路1510及び導波路1511がそれらの間にギャップ1504を備えて「T」交差部を形成する、システム1500の一部を図示する。この例において、ギャップ1504を横切る結合効率を改善するために、共振器1512、1513が導波路に設置され得る。他の実施形態において、90度曲げ交差、45度曲げ交差など、他の交差構成も共振器によって改善され得る。
【0082】
様々な他の実施形態が可能である。例えば、本明細書においてプログラマブルロジックコントローラシステムを説明したが、信頼性を改善するために他のタイプのモジュラーシステムが例示の実施形態の態様を具現化し得る。
【0083】
誘導NFCポートがモジュールの側部に配置されるモジュールを本明細書において説明したが、別の実施形態において、ポートがモジュールの縁部に配置され得、対合するポートがバックプレーン上に又はモジュールの縁部の近隣にある他の表面上に配置され得る。
【0084】
デイジーチェーンされた通信構成を本明細書において説明したが、別の実施形態において他のトポロジーが形成され得る。例えば、各モジュールにおける縁部搭載されるポートと対合するバックプレーン上にポートを提供することによって、ツリートポロジーが形成され得る。
【0085】
シンプルな誘電体ブロックを本明細書において説明したが、別の実施形態が、導波路場閉じ込め器の側壁を形成するために、例えば、イオンドープによって形成される導電ポリマー、カーボン及びグラファイトベースの化合物、導電酸化物など、金属又は非金属の導電材料を用い得る。
【0086】
例えば、誘電体又はメタ材料導波路場閉じ込め器が、インクジェット印刷プロセス又は他の3D印刷プロセスを用いて、基板又はモジュールパネルの表面上に製造され得る。
【0087】
ポリマー誘電体コアを備えた誘電体導波路場閉じ込め器を本明細書において説明したが、他の実施形態が、セラミック、ガラスなどの他の材料を誘電体コアのために用い得る。
【0088】
矩形断面を有する導波路を本明細書において説明したが、他の実施形態も容易に実装され得る。例えば、導波路は、正方形、台形、円筒形、楕円形、又は多くの他の選択された幾何形状である断面を有し得る。
【0089】
例えば、導電導波路の誘電体コアは、約2.4~12の範囲から選択され得る。これらの値は、一般に入手可能なポリマー誘電体材料に対する値である。より高い又は低い値を有する誘電体材料が、それらが入手可能になった場合に用いられ得る。
【0090】
100~200GHzの範囲のサブテラヘルツ信号を本明細書において説明したが、より高い又は低い周波数信号を分配するための、WGカプラ、共振器を備えた導波路、及びシステムが、導波路及び共振器の物理的サイズを適宜調整することによって、本明細書において説明した原理を用いて実装され得る。
【0091】
デジタルシステムにおける構成要素は、異なる名称で呼ばれ得、及び/又は、説明した機能性から逸脱することなく、本明細書では示されない方式で組み合わせられ得る。本記載において、「結合」という用語及びその派生語は、間接的、直接的、光学的、及び/又は無線の電気接続を意味する。そのため、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、この接続は、直接的な電気接続を介するもの、他のデバイス及び接続を介する間接的な電気接続を介するもの、光学的な電気接続を介するもの、及び/又は無線電気接続を介するものとし得る。
【0092】
本明細書において、方法ステップが順次提示及び説明されることがあるが、上記で示され説明されたステップの1つ又は複数が、省かれ得、繰り返され得、同時に実施され得、及び/又は、本明細書において図示及び/又は説明された順とは異なる順で実施され得る。したがって、例示の実施形態は、本明細書において図示及び/又は説明されたステップの特定の順に限定されない。
【0093】
特許請求の範囲内で、説明した実施形態における改変が可能であり、他の実施形態が可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15