IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-蓄電デバイスの評価方法及び製造方法 図1
  • 特許-蓄電デバイスの評価方法及び製造方法 図2
  • 特許-蓄電デバイスの評価方法及び製造方法 図3
  • 特許-蓄電デバイスの評価方法及び製造方法 図4
  • 特許-蓄電デバイスの評価方法及び製造方法 図5
  • 特許-蓄電デバイスの評価方法及び製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの評価方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20241031BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20241031BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20241031BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20241031BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G13/00 361F
H01M10/052
H01M10/058
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022110323
(22)【出願日】2022-07-08
(65)【公開番号】P2024008441
(43)【公開日】2024-01-19
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 博昭
(72)【発明者】
【氏名】長野 彩香
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-044807(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102736034(CN,A)
【文献】特開2019-056672(JP,A)
【文献】特開2000-268887(JP,A)
【文献】特開2010-205469(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0030089(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/058-10/0587
H01M 50/536,50/566
H01G 13/00
G01R 31/389
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの電極体の集電部と上記集電部に接続する端子部材との接続抵抗を評価する蓄電デバイスの評価方法であって、
デバイス電圧が第1デバイス電圧である上記蓄電デバイスを、CCCV充電又はCCCV放電により、第2デバイス電圧とする電圧変更工程と、
上記電圧変更工程における、上記蓄電デバイスのCC電気量、CV電気量、CCCV電気量、CC時間、CV時間、CCCV時間、CV終止電流値の少なくとも2つの値を用いて、上記接続抵抗を評価する評価値として、CV時間/CC時間の時間比、CV電気量/CCCV電気量の量比、CV時間/CCCV時間の時間比、CV終止電流値/CC電気量、CV終止電流値/CC時間、CC時間/CV時間の時間比、CCCV電気量/CV電気量の量比、CCCV時間/CV時間の時間比、CC電気量/CV終止電流値、CC時間/CV終止電流値、(CC電気量-CV電気量)・(CC時間-CV時間)のいずれかを得る評価値取得工程と、
上記評価値に基づいて、上記蓄電デバイスの上記接続抵抗を評価する評価工程と、を備える
蓄電デバイスの評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの評価方法であって、
前記評価値取得工程は、
評価値として、CV時間/CC時間の時間比を得る
蓄電デバイスの評価方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電デバイスの評価方法による、上記蓄電デバイスの前記接続抵抗の選別工程を含む、
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの評価方法、及び、これを用いた蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスの電極体の集電部と端子部材とは、例えば、超音波溶接、レーザ溶接、カシメ圧着などの手法で、電気的及び機械的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-81973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような蓄電デバイスにおいて、集電部と端子部材との溶接状態などの接続状態が良好である場合には、集電部と端子部材との溶接部位などの接続部位に生じる接続抵抗も低い。
【0005】
しかしながら、接続部位で集電部と端子部材とは導通しており、蓄電デバイスを充放電可能であるが、集電部と端子部材との接続が十分でなく、集電部と端子部材との間に生じる接続抵抗が高くなっている場合があることが判ってきた。このような蓄電デバイスは、接続部位での高い接続抵抗の発生により、性能を適切に発生できない虞がある。また、集電部と端子部材との機械的な接続状態も良好でない虞があり、信頼性が低く好ましくない。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、蓄電デバイスの集電部と端子部材との接続抵抗の高低を容易に評価できる蓄電デバイスの評価方法、及びこれを用いた蓄電デバイスの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、蓄電デバイスの電極体の集電部と上記集電部に接続する端子部材との接続抵抗を評価する蓄電デバイスの評価方法であって、デバイス電圧が第1デバイス電圧である上記蓄電デバイスを、CCCV充電又はCCCV放電により、第2デバイス電圧とする電圧変更工程と、上記電圧変更工程における、上記蓄電デバイスのCC電気量、CV電気量、CCCV電気量、CC時間、CV時間、CCCV時間、CV終止電流値の少なくとも2つの値を用いて、上記接続抵抗を評価する評価値として、CV時間/CC時間の時間比、CV電気量/CCCV電気量の量比、CV時間/CCCV時間の時間比、CV終止電流値/CC電気量、CV終止電流値/CC時間、CC時間/CV時間の時間比、CCCV電気量/CV電気量の量比、CCCV時間/CV時間の時間比、CC電気量/CV終止電流値、CC時間/CV終止電流値、(CC電気量-CV電気量)・(CC時間-CV時間)のいずれかを得る評価値取得工程と、上記評価値に基づいて、上記蓄電デバイスの上記接続抵抗を評価する評価工程と、を備える蓄電デバイスの評価方法である。
【0008】
ところで、前述のように、接続部位で、集電部と端子部材とが接触し導通してはいるが、接続が十分でない不良の蓄電デバイスでは、充放電可能であるが、良品の蓄電デバイスに比して接触部分に生じる接続抵抗が高抵抗になっていると考えられる。
【0009】
そこで、電圧変更工程において、デバイス電圧が第1デバイス電圧である蓄電デバイスにCCCV充電(定電流定電圧充電)を行って、或いはCCCV放電(定電流定電圧放電)を行って、第2デバイス電圧とする。
【0010】
なお、「CCCV充電」及び「CCCV放電」は、下記手法の充電或いは放電をいう。先ず、所定の定電流によるCC充電(定電流充電)或いはCC放電(定電流放電)をデバイス電圧が所定の切替電圧に達するまで行う。切替電圧に到達した後は、切替電圧を維持しつつCV充電(定電圧充電)或いはCV放電(定電圧放電)を、a)CV電流(CV充電電流又はCV放電電流)が所定のCV終止電流値を下回るまで行う。又は、b)切替後のCV経過時間が所定のCV終止時間に達するまで行う。なお、CV充電或いはCV放電の終止時(CV終止時)に蓄電デバイスに流れているCV電流の値をCV終止電流値とする。
【0011】
ここでもし、接続抵抗が高い不良の蓄電デバイスについて、CCCV充電のうちCC充電を行うと、良品の場合に比して、CC電気量は小さくなりCC時間は短くなる。接続抵抗が高い分だけ、CC電流によって接続抵抗に生じる電圧が大きくなり、測定されるデバイス電圧が早期に所定の切替電圧に達するためである。
【0012】
その後、CV充電を行うに当たり、接続抵抗が高い不良の蓄電デバイスでは、良品の場合に比して、CV電気量は大きくなりCV時間は長くなる。CV充電では、流れるCV電流がCC電流に比して小さくなるので、接続抵抗に生じる電圧も小さくなる。前述のように、不良の蓄電デバイスは、良品の蓄電デバイスに比して、CC充電の段階では、接続抵抗に生じる電圧が大きくなり早期に切替電圧に達したために充電不足気味となっていた。そこで、CV充電の段階では、充電不足気味であった電極体を充電するべく、終止電流値に達するまで比較的長い時間に亘りCV電流が流れると考えられる。
或いは、接続抵抗が高い不良の蓄電デバイスでは、CV終止時に流れているCV終止電流値が大きくなる。CV充電に切り換えた後、良品に比して、CV電流値の低下が緩やかであり、所定のCV終止時間に達したCV充電終止時点でのCV終止電流値も大きくなるからである。
【0013】
一方、接続抵抗が高い不良の蓄電デバイスについて、CCCV放電のうちCC放電を行う場合も、前述のCC充電と同じく、良品の場合に比して、CC電気量は小さくなりCC時間は短くなる。接続抵抗が高い分だけ、CC電流によって接続抵抗に生じる電圧が大きくなり、測定されるデバイス電圧が低く見えるので、所定の切替電圧に達するのが早まるためである。
【0014】
その後、CV放電を行うに当たっても、前述のCV充電と同じく、接続抵抗が高い不良の蓄電デバイスでは、良品の場合に比して、CV電気量は大きくなりCV時間は長くなる。CV放電では、流れるCV電流がCC電流に比して小さくなるので、接続抵抗に生じる電圧が小さくなる。このため、不良の蓄電デバイスは、良品の蓄電デバイスに比して、CC放電の段階では、接続抵抗に生じる電圧が大きくなり早期に切替電圧に達するために放電不足気味になる。そこで、CV放電の段階では、放電不足気味であった電極体を更に放電するので、終止電流値に達するまで比較的長い時間に亘りCV電流が流れると考えられる。
【0015】
このような特性を利用して、本発明では、電圧変更工程のほか、評価値取得工程においてCC電気量など少なくとも2つの値を用いて評価値として、CV時間/CC時間の時間比、CV電気量/CCCV電気量の量比、CV時間/CCCV時間の時間比、CV終止電流値/CC電気量、CV終止電流値/CC時間、CC時間/CV時間の時間比、CCCV電気量/CV電気量の量比、CCCV時間/CV時間の時間比、CC電気量/CV終止電流値、CC時間/CV終止電流値、(CC電気量-CV電気量)・(CC時間-CV時間)のいずれかを得て、評価工程で蓄電デバイスの接続抵抗を評価する。このように、本発明によれば、蓄電デバイスの電極体の集電部と端子部材との接続抵抗の高低を容易に評価することができる。
【0016】
なお、「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタなどが挙げられる。
「電極体」としては、例えば、帯状の電極板を帯状のセパレータを介して捲回した円筒形状や扁平形状の捲回型電極体や、複数の矩形状の電極板をセパレータを介して直方体状に積層した積層型電極体などが挙げられる。また、蓄電デバイスが備える電極体は、単数であってもよいし複数であってもよい。
このうち「集電部」は、電極体の正極や負極を外部に取り出す部位であり、捲回型電極体のうち、軸線方向の端部に位置し、電極層が無く露出した電極箔が渦巻き状に重なった部位が挙げられる。また、積層型電極体のうち、積層方向に直交する面拡がり方向に突出し電極層が無く露出した複数の電極箔が重なった部位などが挙げられる。
【0017】
「接続端子」は、電極体の集電部に接続して、電極体の正極や負極の電位を外部に取り出す導電性の部材である。接続端子には、導電材、例えば、アルミニウムや銅などの金属材を用いることができる。
電極体の集電部と接続端子との接続手法としては、集電部と接続端子とを機械的に結合し、かつ、電気的に導通できる手法であれば良いが、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接、カシメ圧着などの手法が挙げられる。
集電部と接続端子との「接続抵抗」の評価は、集電部と接続端子との間に生じる電気抵抗の評価であり、良否(OK/NG)の評価のほか、3以上のランクに分ける層別評価を行っても良い。
【0018】
また、「CC電気量」、「CV電気量」、及び、「CCCV電気量」は、CCCV充電或いはCCCV放電の処理において、CC充電或いはCC放電、CV充電或いはCV放電、及び、これらを併せたCCCV充電或いはCCCV放電により、蓄電デバイスに充電或いは蓄電デバイスから放電された電気量をいう。
「CC時間」、「CV時間」、及び、「CCCV時間」は、それぞれ、CC充電或いはCC放電、CV充電或いはCV放電、及び、CCCV充電或いはCCCV放電に要した時間の長さをいう。
【0019】
評価値取得工程で、CC電気量等を少なくとも2つ用いて取得する接続抵抗の「評価値」は、集電部と端子部材との接続抵抗を評価し得る値である。例えば、CV電気量/CC電気量の量比、CV時間/CC時間の時間比、CV電気量/CCCV電気量の量比、CV時間/CCCV時間の時間比、CV終止電流値/CC電気量、CV終止電流値/CC時間、これらの逆比(例えば、CC電気量/CV電気量の量比など)、(CC電気量-CV電気量)・(CC時間-CV時間)などが挙げられる。
【0020】
なお、(1)の蓄電デバイスの評価方法であって、前記評価値取得工程は、評価値とし
て、CV電気量/CC電気量の量比を得る蓄電デバイスの評価方法とするのも好ましい
【0021】
上述の蓄電デバイスの評価方法では、評価値取得工程において、評価値として、CV電気量/CC電気量の量比を得る。前述したように、接続抵抗が高い不良の蓄電デバイスにCCCV充電或いはCCCV放電を行ったときには、良品の場合に比して、CV電気量は大きくなる、一方、CC電気量は小さくなる。このため、CV電気量/CC電気量の量比を算出すると、蓄電デバイスが良品の場合に比して、大きな値となる。
かくして、CV電気量/CC電気量の量比を用いると、蓄電デバイスにおける接続抵抗の評価が容易にできる。
【0022】
(2)(1)の蓄電デバイスの評価方法であって、前記評価値取得工程は、評価値として、CV時間/CC時間の時間比を得る蓄電デバイスの評価方法とすると良い。
【0023】
上述の蓄電デバイスの評価方法では、評価値取得工程において、評価値として、CV時間/CC時間の時間比を得る。前述したように、接続抵抗が高い不良の蓄電デバイスにCCCV充電或いはCCCV放電を行ったときには、良品の場合に比して、CV時間は長くなる、一方、CC時間は短くなる。このため、CV時間/CC時間の時間比を算出すると、蓄電デバイスが良品の場合に比して、大きな値となる。
かくして、CV時間/CC時間の時間比を用いると、蓄電デバイスにおける接続抵抗の評価が容易にできる。
【0024】
(3)さらに(1)又は(2)に記載の蓄電デバイスの評価方法による、上記蓄電デバイスの前記接続抵抗の選別工程を含む、蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0025】
この蓄電デバイスの製造方法によれば、接続抵抗の評価工程で、前述のようにして蓄電デバイスの集電部と端子部材との接続抵抗を評価するので、適切に接続抵抗を評価し選別された蓄電デバイスを製造することができる。
【0026】
なお、接続抵抗の選別工程によって選別された蓄電デバイスは、接続抵抗の評価結果に応じた処理を行うと良い。例えば、接続抵抗の評価をOK/NGに分ける手法で行った場合には、選別工程で接続抵抗がOKと評価された蓄電デバイスは、そのまま製造工程を進行させる一方、NGと評価された蓄電デバイスは、製造工程から排出する選別処理が挙げられる。また、接続抵抗の評価を3つ以上のランク(例えば、A~Cの3ランク)に分ける手法で行った場合には、選別工程で分けられたランクに応じた処理、例えば、Aランクと評価された蓄電デバイスは、そのまま製造工程を進行させる。Bランクと評価された蓄電デバイスは、別の検査(例えばX線検査)による良否判定を経て製造工程を進行させる。一方、Cランクと評価された蓄電デバイスは、製造工程から排出する選別処理が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1参考形態1,2及び実施形態に係る電池の縦断面図である。
図2参考形態1,2及び実施形態に係る電池に直流電源を接続した状態の等価回路である。
図3参考形態1,2に係り、電池にCCCV充電を行った場合の電圧及び電流の時間変化を示すグラフである。
図4参考形態1,2及び実施形態に係る電池の製造工程を示すフローチャートである。
図5参考形態1,2及び実施形態に係る電池の製造工程のうち、初充電工程の詳細を示すフローチャートである。
図6実施形態に係り、電池にCCCV充電を行った場合の電圧及び電流の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
参考形態1
以下、まず参考形態1を、図面を参照しつつ説明する。図1参考形態1等に係る電池(蓄電デバイス)10の縦断面図を示す。なお、以下では、電池10の電池高さ方向AH及び電池幅方向BHを図1に示す方向に定め、更に電池厚み方向CHを図1の紙面に垂直な方向として説明する。この電池10は、例えば、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0029】
電池10は、ケース11と、ケース11の内部に収容された電極体30と、ケース11に支持された正極端子21及び負極端子25等から構成されている。
【0030】
このうちケース11は、金属(本参考形態1ではアルミニウム)からなる直方体箱状である。このケース11は、電池高さ方向AHの上方AHUに開口12Pを有する有底角筒状のケース本体12と、このケース本体12の開口12Pに溶接されて、開口12Pを封口する矩形板状の蓋体15とを有する。
【0031】
蓋体15には、ケース11の内圧上昇時に開裂する安全弁15S、及び、ケース11の内外を連通する注液孔15Hが形成されている。この注液孔15Hは、注液栓16によって気密に封止されている。
【0032】
加えて蓋体15には、アルミニウムの部材から構成される正極端子21が、正極絶縁部材24によって蓋体15と絶縁された状態で固設されている。具体的には、正極端子21のうち、正極内部端子部材22が、ケース11内において、電極体30の正極集電部35(後述する)に接続部22Cで接続し導通している。その一方、正極内部端子部材22は、蓋体15を貫通して電池外部まで延び、正極外部端子部材23に導通接続している。
【0033】
また蓋体15には、銅の部材から構成される負極端子25が、負極絶縁部材28によって蓋体15と絶縁された状態で固設されている。具体的には、負極端子25のうち、負極内部端子部材26が、ケース11内において、電極体30の負極集電部36(後述する)に接続部26Cで接続し導通している。その一方、負極内部端子部材26は、蓋体15を貫通して電池外部まで延び、負極外部端子部材27に導通接続している。
【0034】
またケース11内には、電極体30と共に電解液40が収容されており、その一部は電極体30内に含浸され、一部はケース11の底部に溜まっている。また電極体30は、電池高さ方向AHの上方AHUが開口した有底角袋状の絶縁フィルム50に覆われている。
【0035】
電極体30は、概略、扁平な直方体状であり、帯状の正極板(電極板)31と、帯状の負極板(電極板)32とを、樹脂製多孔質膜からなる2枚の帯状のセパレータ33と共に軸線30Xの周りに捲回し、押し潰して扁平化した扁平捲回型の電極体である。
【0036】
帯状の正極板31は、矩形状のアルミニウム箔からなる正極集電箔(不図示)の両主面上にそれぞれ正極活物質層(不図示)を有する。また帯状の負極板32は、矩形状の銅箔からなる負極集電箔(不図示)の両主面上にそれぞれ負極活物質層(不図示)を有する。
【0037】
電極体30のうち、軸線30Xの一方側BH1(図1において右方)には、正極板31をなす正極集電箔の一部が渦巻き状に巻かれつつ露出した正極集電部35が、軸線30Xの他方側BH2(図1において左方)には、負極板32をなす極集電箔の一部が渦巻き状に巻かれつつ露出した負極集電部36が設けられている。正極集電部35と負極集電部36の間に挟まれた,軸線30Xの中央の部位が、正極板31と負極板32とが重なって捲回された本体部34である。
【0038】
参考形態1では、電極体30の正極集電部35をなす正極集電箔は、接続部35Cにおいて、電池厚み方向CHに互いに密着して、正極内部端子部材22の接続部22Cにレーザ溶接されている。これにより、電極体30の正極集電部35は、正極内部端子部材22に機械的に結合すると共に、電気的にも相互に導通する。かくして、電極体30の正極集電部35は、正極端子21をなす正極内部端子部材22及び正極外部端子部材23により、電池10外の回路部材と電気的に接続可能とされている。
【0039】
また、電極体30の負極集電部36をなす負極集電箔は、接続部36Cにおいて、電池厚み方向CHに互いに密着して、負極内部端子部材26の接続部26Cにレーザ溶接されている。これにより、電極体30の負極集電部36も、負極内部端子部材26に機械的に結合すると共に、電気的にも相互に導通する。かくして、電極体30の負極集電部36は、負極端子25をなす負極内部端子部材26及び負極外部端子部材27により、電池10外の回路部材と電気的に接続可能とされている。
【0040】
加えて、電極体30は、正極端子21及び負極端子25により、蓋体15に支持されている。
なお、電極体30の正極集電部35の接続部35Cと正極内部端子部材22の接続部22Cとの接続や、負極集電部36の接続部36Cと負極内部端子部材26の接続部26Cとの接続は、他の手法、例えば、超音波溶接や、カシメ圧着などの手法を採用することもできる。
【0041】
但し前述したように、正極集電部35と正極内部端子部材22とは導通しているが、接続が十分でなく、正極集電部35と正極内部端子部材22との間に生じる接続抵抗が高くなっている場合がある。また、負極集電部36と負極内部端子部材26とは導通しているが、接続が十分でなく、負極集電部36と負極内部端子部材26との間に生じる接続抵抗が高くなっている場合がある。なお、以下では、正極集電部35と正極内部端子部材22との間に生じる接続抵抗と、負極集電部36と負極内部端子部材26との間に生じる接続抵抗とを併せて、電池10に生じる接続抵抗Rcとする。
【0042】
参考形態1では、電池10に生じる接続抵抗Rcを以下のようにして評価する(図2参照)。即ち、電池10に直流電源100を接続し、CCCV充電を施す。具体的には、先ず、電池10の正極端子21に、プローブ110Pを介して直流電源100の正極電源端子100Pを接続する。また、電池10の負極端子25に、プローブ110Nを介して直流電源100の負極電源端子100Nを接続する。そして、電池10の電池電圧Vbを、第1電池電圧Vb1から、直流電源100を用いたCCCV充電により、第2電池電圧Vb2とする。
【0043】
この直流電源100は、定電圧源としても定電流源としても機能する電源部101と、直流電源100から電池10に流れる電池電流Ibを計測し、その計測結果を電源部101にフィードバックする電流測定部102と、電池電圧Vbを計測し、その計測結果を電源部101にフィードバックする電圧測定部103とを有している。
【0044】
一方、電池10は、直流的には、図2に示す等価回路で表される。即ち、電池10の等価回路は、電池10の容量成分Csと、容量成分Csと並列回路を構成し電極体の絶縁抵抗に対応する並列抵抗Rpと、容量成分Cs及び並列抵抗Rpに直列に接続され各部の抵抗成分に対応する直列抵抗Rsと、これらの直列に接続された前述の接続抵抗Rcとからなる。なお、前述したように、接続抵抗Rcは、正極集電部35と正極内部端子部材22との接続状態、及び、負極集電部36と負極内部端子部材26との接続状態により、その大きさが変動する。
【0045】
直流電源100を用いて電池10にCCCV充電を施した場合の電池電圧Vb及び電池電流Ibの時間変化を、図3のグラフを用いて説明する。
経過時間T=0のタイミングで、直流電源100により、当初、開放電圧が第1電池電圧Vb1であった電池10に対しCC充電を開始する。具体的には、電池電圧Vbが切替電圧Vchに達する(Vb=Vch)まで、CC充電の期間中、電池電流Ibとして、直流電源100から電池10に一定(例えば6Cの大きさ)のCC電流Iccを流す(Ib=Icc)。
【0046】
なお、図2の等価回路から容易に理解できるように、電池10にCC電流Iccを流すことにより、直列抵抗Rs及び接続抵抗Rcに電圧が生じるので、CC充電開始直後に電池電圧Vbは、第1電池電圧Vb1よりも若干高い値となる。それ以降、電池10が充電されるに従って、徐々に電池電圧Vbが上昇する。
【0047】
但し、図3のグラフにおいて、太実線で示す、接続良好で接続抵抗Rcが低い良品電池10GのCC電圧Vccgの変化に比して、二点鎖線で示す、接続不良により接続抵抗Rcが高い不良電池10NのCC電圧Vccnは、大きい接続抵抗Rcに生じる電圧の分だけ大きな値となって推移する。
【0048】
その後、電池電圧Vbが切替電圧Vchに達したら(Vb≧Vch)、直流電源100は、CC充電を終了し、CV充電に移行する。
【0049】
図3から容易に理解できるように、CC充電の開始(T=0)以降、電池10の電池電圧Vbが切替電圧Vchに達するまでのCC時間Tccについて比較すると、良品電池10GのCC時間Tccgに比して、接続抵抗Rcが高い不良電池10NのCC時間Tccnは短くなっている(Tccg>Tccn)。大きい接続抵抗Rcに生じる電圧の分だけ、電池電圧Vbが早期に切替電圧Vchに達するからである。
【0050】
それと共に、CC充電によって電池10に充電されたCC電気量Qccについて比較すると、良品電池10GのCC電気量Qccgに比して、接続抵抗Rcが大きい不良電池10NのCC電気量Qccnの方が少なくなっている。CC充電の期間が短いからである。従って、不良電池10Nでは、良品電池10Gに比して、若干充電不十分な状態で、CC充電からCV充電に切り替わることになる。
【0051】
続くCV充電の期間には、直流電源100によって、電池電圧Vbを、切替電圧Vchに等しいCV電圧Vcv(Vcv=Vch)に維持する。すると、電池電流Ibは時間の経過と共に0に向けて徐々に減衰する曲線を描くCV電流Icvとなる。本参考形態1では、電池電流Ibが、CV終止電流値Icve以下(例えば2C以下)となるまで、CV充電を継続する。これにより、電池10は、CV電圧Vcvにほぼ等しい第2電池電圧Vb2に充電される。
【0052】
但し、CV充電の期間に電池10に流れるCV電流Icvについて比較すると、図3のグラフに太実線で示す良品電池10GのCV電流Icvgは、その大きさが早期に低下する。一方、二点鎖線で示す不良の電池10のCV電流Icvnは、良品の電池10のCV電流Icvgに比して、その大きさが相対的に緩やかに低下する。このため、CV充電の開始から、CV電流IcvがCV終止電流値Icve以下になるまでのCV時間Tcvは、良品電池10GのCV時間Tcvgに比して、不良電池10NのCV時間Tcvnは長くなっている(Tcvg<Tcvn)。
【0053】
このため、CV充電された電池10のCV電気量Qcv(図3においてCV電流Icvのグラフよりも下側の面積に相当)を比較すると、接続抵抗Rcが低い良品電池10GのCV電気量Qcvgに比して、不良電池10NのCV電気量Qcvnの方が大きくなる。CV時間Tcvgに比してCV時間Tcvnが長く、CV電流も大きい状態が継続するからである。不良電池10Nでは、良品電池10Gに比して、若干充電不十分な状態でCV充電を開始した分だけ、CV充電で多くの電気量が充電されたと考えることもできる。
【0054】
なお、CC時間Tcc(Tccg,Tccn)とCV時間Tcv(Tcvg,Tcvn)とを足した時間を、CCCV時間Tcccv(Tcccvg,Tcccvn)とする(Tcccv=Tcc+Tcv)。
【0055】
図3のグラフからも理解できるように、CC時間Tccに関しては、良品電池10GのCC時間Tccgに比して不良電池10NのCC時間Tccnの方が短くなる(Tccg>Tccn)。一方、CV時間Tcvに関しては、良品電池10GのCV時間Tcvgに比して不良電池10NのCV時間Tcvnが長くなる(Tcvg<Tcvn)。このことから、これらの和であるCCCV時間Tcccvについては、良品電池10GのCCCV時間Tcccvgと不良電池10NのCCCV時間Tcccvnとの差は、CV時間Tcvに生じる差に比べると小さくなると解される。
【0056】
また、CC電気量Qcc(Qccg,Qccn)とCV電気量Qcv(Qcvg,Qcvn)とを併せた電気量、CCCV電気量Qcccv(Qcccvg,Qcccvn)とする(Qcccv=Qcc+Qcv)。
【0057】
図3のグラフからも理解できるように、CC電気量Qccに関しては、良品電池10GのCC電気量Qccgに比して不良電池10NのCC電気量Qccnが小さくなる(Qccg>Qccn)。一方、CV電気量Qcvに関しては、良品電池10GのCV電気量Qcvgに比して不良電池10NのCV電気量Qcvnが大きくなる(Qcvg<Qcvn)。このことから、これらの和であるCCCV電気量Qcccvについては、良品電池10GのCCCV電気量Qcccvgと不良電池10NのCCCV電気量Qcccvnとの差は、CV電気量Qcvに生じる差に比べると小さくなると解される。
【0058】
以上の理解から、本参考形態1では、CV電気量QcvをCC電気量Qccで除したCV電気量/CC電気量の量比EPQ(=Qcv/Qcc)を評価値として、供試した電池10の接続抵抗Rcの評価を行う。
【0059】
上述したように、良品電池10GのCV電気量Qcvgに比して不良電池10NのCV電気量Qcvnが大きくなる(Qcvg<Qcvn)一方、良品電池10GのCC電気量Qccgに比して不良電池10NのCC電気量Qccnが小さくなる(Qccg>Qccn)。このため、量比EPQ(=Qcv/Qcc)を用いると、供試された電池10が良品電池10Gである場合に比して、不良電池10Nである場合には、量比EPQ(=Qcv/Qcc)の大きさがさらに大きくなりやすく、良品電池10Gと不良電池10Nとの接続抵抗Rcの差異をより明確にして、接続抵抗Rcの高低を容易に評価することができる。
【0060】
さらに本参考形態1では、上述の手法による電池10の接続抵抗Rcの評価を、電池10の製造工程に組み込んで、電池10を製造する。具体的には、後述する初充電工程S5においてCCCV充電を行い、接続抵抗Rcの評価をして、製造段階での電池10の選別を行う選別工程としても機能させる。まず、本参考形態1に係る電池10の概略の製造工程について、図1図4を参照して説明する。
【0061】
先ず、正極端子21及び負極端子25をなす正極内部端子部材22及び負極内部端子部材26などの各部材と蓋体15とを用意しておき、端子組付工程S1で、蓋体15に正極端子21及び負極端子25を組付け固定する。
【0062】
次いで、電極体接続工程S2で、予め形成しておいた電極体30と正極端子21及び負極端子25を接続する。具体的には、電極体30の正極集電部35の接続部35Cと正極端子21の正極内部端子部材22の接続部22Cとをレーザ溶接によって接続する。また、電極体30の負極集電部36の接続部36Cと負極端子25の負極内部端子部材26の接続部26Cとをレーザ溶接によって接続する。これにより、電極体30が正極端子21及び負極端子25を介して蓋体に保持されると共に、電極体30の正極板31が正極端子21に、負極板32が負極端子25に電気的に導通接続される。
【0063】
さらに、挿入封口工程S3において、開口12Pを通じてケース本体12内に電極体30を挿入し、蓋体15で開口12Pを封口する。具体的には、レーザ溶接によって、蓋体15をケース本体12の開口12Pに溶接する。
【0064】
次いで、蓋体15の注液孔15Hを介して、ケース11内に電解液40を注液し、その後、注液栓16で注液孔15Hを封止し、未充電の電池10を完成する。なお、注液栓16による注液孔15Hの封止は、後述する初充電工程S5~検査工程S7の適宜のタイミングで行うようにしてもよい。
【0065】
初充電工程S5では、未充電の電池10に充電を行う。なお本参考形態1では、後述するように、この初充電工程S5において電池10の接続抵抗Rcの評価を行う。このため、初充電工程S5は、電池10の選別を行う選別工程としても機能している。
【0066】
その後、エージング工程S6で電池10を高温環境下に放置し、検査工程S7で各種検査を行って電池10を完成する。
【0067】
前述した初充電工程S5の詳細について、図2図3図5を用いて説明する。
先ず、CC充電工程S51において、25℃環境下で未充電の電池10に直流電源100を接続し、所定のCC電流Icc(本参考形態1ではIcc=6C)を電池10に流すCC充電を行う。なお、直流電源100では、各工程の経過時間Tを検知するほか、電流測定部102で電池電流Ibを検知し、電圧測定部103で電池電圧Vbを検知し続けており、電池電流Ibを積分(積算)して各工程における電気量も取得可能となっている。
【0068】
続く切換判断工程S52では、電池電圧Vbが切替電圧Vch以上となったか否かを判断する。此処でNo、即ち、電池電圧Vbが切替電圧Vchに達していない場合には、CC充電工程S51に戻り、CC充電工程S51を継続する。一方、切換判断工程S52でYes、即ち、電池電圧Vbが切替電圧Vch以上となった場合には、CC充電工程S51を終了し、次のCV充電工程S53に進む。
【0069】
続くCV充電工程S53では、直流電源100によって、電池電圧Vbを、切替電圧Vchに等しいCV電圧Vcv(Vcv=Vch)に維持する。なお、CV充電工程S53では、CV電流Icv(電池電流Ib)は時間の経過と共に0に向けて徐々に減衰する曲線となる。
【0070】
そこで、続く終止判断工程S54では、電池電流IbがCV終止電流値Icve以下(本参考形態1ではIcve≦2C)となったか否かを判断する。此処でNo、即ち、電池電流IbがCV終止電流値Icveを上回っている場合には、CV充電工程S53に戻り、CV充電工程S53を継続する。一方、終止判断工程S54でYes、即ち、電池電流IbがCV終止電流値Icve以下となった場合には、充電終止工程S55に進む。
【0071】
充電終止工程S55では、CV充電工程S53を終了して、CCCV充電全体も終了する。
【0072】
次いで、評価値算出工程S56では、CCCV充電を行った電池10について、評価値、即ち、CV電気量/CC電気量の量比EPQ(=Qcv/Qcc)を算出する。
【0073】
参考形態1の評価値判定工程S57では、適切に定めたしきい値を用いて、供試された電池10の量比EPQの良否判定を行う。即ち、量比EPQがしきい値以上の大きさである場合には、供試された電池10の接続抵抗Rcが大きい不良電池10Nであると考えられるので、Noと判定し、排出工程S58に進み、製造工程から排出する。一方、量比EPQがしきい値未満の大きさである場合には、供試された電池10が、接続抵抗Rcが小さく、接続状態が良好な良品電池10Gであると考えられるので、Yesと判定し、メインルーチンに戻って、エージング工程S6に進む。
【0074】
かくして本参考形態1の電池10の製造方法によれば、接続抵抗Rcが大きい不良電池10Nを排除し、接続抵抗Rcが小さな良品電池10Gを製造することができる。
【0075】
なお、上述した本参考形態1では、評価値判定工程S57で、しきい値を用いて電池10の量比EPQの良否判定を行った。しかし前述のように、3以上のランクに分ける層別評価を行っても良い。
【0076】
参考形態2
上述の参考形態1では、評価値算出工程S56において、評価値として、CV電気量/CC電気量の量比EPQ(=Qcv/Qcc)を用いて、供試された電池10の評価を行った。
これに対し、他の評価値を算出し、電池10の評価を行っても良い。例えば参考形態2では、CV時間/CC時間の時間比EPT(=Tcv/Tcc)を用いて、電池10の評価を行う。即ち、参考形態1と同様に、充電終止工程S55でCCCV充電を終了する。
【0077】
次いで、評価値算出工程S56で、CCCV充電を行った電池10について、量比EPQに代えて、評価値として、CV時間/CC時間の時間比EPT(=Tcv/Tcc)を算出する。
【0078】
続く評価値判定工程S57では、適切に定めたしきい値を用いて、供試された電池10の時間比EPTの良否判定を行う。即ち、時間比EPTがしきい値以上の大きさである場合には、供試された電池10は不良電池10Nであると考えられるので、Noと判定し、排出工程S58に進み、製造工程から排出する。一方、時間比EPTがしきい値未満の大きさの場合には、供試された電池10は良品電池10Gであると考えられるので、Yesと判定し、メインルーチンに戻りエージング工程S6に進む。
【0079】
かくして本参考形態2の電池10の製造方法でも、接続抵抗Rcが大きい不良電池10Nを排除し、接続抵抗Rcが小さな良品電池10Gを製造することができる。なお、上述の時間比EPTによる電池10の良否判定に代えて、前述のように、3以上のランクに分ける層別評価を行うこともできる。
【0080】
実施形態
前述した参考形態1,2では、CV充電においてCV電流Icvの大きさを終止条件とした。即ち、初充電工程S5のうちCV充電工程S53に続く終止判断工程S54において、CV電流IcvがCV終止電流値Icve以下となったか否かを繰り返し判定し、Yesの場合に、充電終止工程S55に進んでCV充電を終了した。このため、図3からも理解できるように、供試した電池10が良品電池10Gでも不良電池10Nであっても、CV充電工程S53を終了する際のCV電流Icvは同じCV終止電流値Icveである。しかし、CV時間Tcv(Tcvg,Tcvn)の長さは、互いに異なるものとなる。
【0081】
これに対し、本実施形態図6参照)では、CV充電においてCV時間Tcvを終止条件とする。即ち、初充電工程S105のうちCV充電工程S53に続き、終止判断工程S54に代えた破線で示す終止判断工程S154において、CV時間Tcvが予め定めたCV時間Tcvを過ぎたか否かを判定する。ここでNo、即ち、CC充電からCV充電に切り換えてから、未だ所定のCV時間Tcvを経過していない場合には、CV充電工程S53に戻り、CV充電工程S53を継続する。一方、終止判断工程S154でYes、即ち、CC充電からCV充電に切り換えてから、所定のCV時間Tcvを経過した場合には、充電終止工程S55に進んでCV充電を終了する。
【0082】
このため、図6から容易に理解できるように、供試した電池10が良品電池10Gでも不良電池10Nであっても、CV充電工程S53を開始してから終了するまでのCV時間Tcvは同じ長さとなる。しかし、CV終止電流値Icve(Icveg,Icven)の大きさは、互いに異なるものとなる。
【0083】
即ち、CV充電の期間に電池10に流れるCV電流Icvについて比較すると、図6のグラフに太実線で示す良品電池10GのCV電流Icvgは、その大きさが早期に低下する。一方、二点鎖線で示す不良の電池10のCV電流Icvnは、良品の電池10のCV電流Icvgに比して、その大きさが相対的に緩やかに低下する。このため、CV充電の開始から同じCV時間Tcvが経過した時点では、良品電池10GのCV終止電流値Icvegに比して、不良電池10NのCV終止電流値Icvenは大きな値になっている(Icveg<Icven)。
【0084】
この場合でも参考形態1と同様、図6のグラフからも理解できるように、CC電気量Qccに関しては、良品電池10GのCC電気量Qccgに比して不良電池10NのCC電気量Qccnが小さくなる(Qccg>Qccn)。一方、CV電気量Qcvに関しては、良品電池10GのCV電気量Qcvgに比して不良電池10NのCV電気量Qcvnが大きくなる(Qcvg<Qcvn)。
【0085】
そこで、評価値算出工程S156では、CCCV充電を行った電池10について、評価値として、参考形態1と同様、CV電気量/CC電気量の量比EPQ(=Qcv/Qcc)を算出する。
【0086】
続く評価値判定工程S157では、適切に定めたしきい値を用いて、供試された電池10の量比EPQの良否判定を行う。即ち、量比EPQがしきい値以上の大きさである場合には、供試された電池10が不良電池10Nであると考えられるので、Noと判定し、排出工程S58に進み、製造工程から排出する。一方、量比EPQがしきい値未満の大きさの場合には、供試された電池10は良品電池10Gであると考えられるので、Yesと判定し、メインルーチンに戻りエージング工程S6に進む。
【0087】
かくして本実施形態の電池10の製造方法でも、接続抵抗Rcが大きい不良電池10Nを排除し、接続抵抗Rcが小さな良品電池10Gを製造することができる。なお、上述の量比EPQによる、電池10の良否判定に代えて、前述のように、3以上のランクに分ける層別評価を行うこともできる。
【0088】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、評価値として、CV電気量/CC電気量の量比EPQ(=Qcv/Qcc)を用いて、電池10の評価を行った。また、参考形態2では、CV時間/CC時間の時間比EPT(=Tcv/Tcc)を用いて、電池10の評価を行った。
【0089】
しかし、CC電気量Qcc、CV電気量Qcv、CCCV電気量Qcccv、CC時間Tcc、CV時間Tcv、CCCV時間Tcccv、CV終止電流値Icveの少なくとも2つの値を用いて、供試された電池10の接続抵抗Rcを評価可能な評価値が得られるようにすれば良い。例えば、量比EPQの逆比であるCC電気量/CV電気量の量比(=Qcc/Qcv)や、時間比EPTの逆比であるCC時間/CV時間の時間比(=Tcc/Tcv)を用いることもできる。また、CV電気量/CCCV電気量、CV時間/CCCV時間、CV終止電流値/CC電気量、(CC電気量-CV電気量)・(CC時間-CV時間)などの、供試された電池10の接続抵抗Rcを評価可能な評価値も用いることができる。
【0090】
また、実施形態では、電池10の製造工程のうち、初充電工程S5,S105におけるCCCV充電を利用して、接続抵抗Rcの評価を行う例を示した。しかし、初充電工程を経た後に、たとえば検査工程に別途CCCV充電を行い、供試された電池10の接続抵抗Rcを評価するようにしても良い。
【0091】
更に、実施形態では、CCCV充電を行い、量比EPQや時間比EPTなどの評価値を得て、電池10の接続抵抗Rcを評価した。しかし、初充電などにより既に充電された電池10について、CCCV放電を行い、CC時間Tcc、CV時間Tcv、CC電気量Qcc、CV電気量Qcvなどを取得し、これらの値から量比EPQや時間比EPTなどの評価値を得て、電池10の接続抵抗Rcを評価するようにしても良い。
また、電池10の製造工程において、電池10の接続抵抗Rcを評価するだけで無く、既に使用された電池10について、CCCV充電或いはCCCV放電を行い、接続抵抗Rcを評価可能な評価値を得て、電池10の接続抵抗Rcを評価するようにしても良い。
【符号の説明】
【0092】
10 電池(蓄電デバイス)
10G 良品電池
10N 不良電池
21 正極端子
22 正極内部端子部材(端子部材)
22C (正極端子部材の)接続部
25 負極端子
26 負極内部端子部材(端子部材)
26C (負極端子部材の)接続部
30 電極体
34 本体部
35 正極集電部(集電部)
35C (正極集電部の)接続部
36 負極集電部(集電部)
36C (負極集電部の)接続部
Cs (電池の)容量成分
Rs (電池の)直列抵抗
Rp (電池の)並列抵抗
Rc (集電部と端子部材との)接続抵抗
100 直流電源
101 電源部
102 電流測定部
103 電圧測定部
Ib 電池電流(デバイス電圧)
Vb 電池電圧
Vb1 第1電池電圧(第1デバイス電圧)
Vb2 第2電池電圧(第2デバイス電圧)
T 経過時間
Tcc,Tccg,Tccn CC時間
Tcv,Tcvg,Tcvn CV時間
Tcccv,Tcccvg,Tcccvn CCCV時間
Icc CC電流
Vcc,Vccg,Vccn CC電圧
Vch 切替電圧
Icv,Icvg,Icvn CV電流
Icve,Icveg,Icven CV終止電流値
Vcv,Vcvg,Vcvn CV電圧
Qcc,Qccg,Qccn CC電気量
Qcv,Qcvg,Qcvn CV電気量
Qcccv,Qcccvg,Qcccvn CCCV電気量
EPQ 量比(評価値)
EPT 時間比(評価値)
S5,S105 初充電工程(選別工程)
S51 CC充電工程
S52 切換判断工程
S53 CV充電工程
S54,S154 終止判断工程
S55 充電終止工程
S56,S156 評価値算出工程(評価値取得工程)
S57,S157 評価値判定工程
S58 排出工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6