(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/536 20210101AFI20241031BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20241031BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241031BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20241031BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20241031BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M50/536
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01G11/06
H01G11/70
H01G11/74
(21)【出願番号】P 2022164714
(22)【出願日】2022-10-13
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 洋明
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-004775(JP,A)
【文献】特開2021-089856(JP,A)
【文献】特開2022-150789(JP,A)
【文献】特開2019-139954(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069659(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/180737(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 10/04
H01M 10/0587
H01G 11/06
H01G 11/74
H01G 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる帯状の正極集電箔上に上記長手方向に延びる帯状の正極活物質層が形成された正極本体部、及び、上記正極集電箔の幅方向の一方側の端縁に沿って上記長手方向に延びる帯状で、上記正極活物質層を有さず上記正極集電箔が露出した正極箔露出部を有する正極板と、帯状の負極板とが、一対の帯状のセパレータを介して捲回軸線の周りに扁平状に捲回されてなり、
上記正極板の上記正極本体部と上記負極板とが上記セパレータを介して対向した電極体本体部、及び、
上記電極体本体部から上記捲回軸線に沿う軸線方向の一方側に上記正極箔露出部が渦巻き状に突出した正極集電部と、を有する
扁平捲回型の電極体と、
上記電極体を収容するケースと、
上記ケースに固設され、上記電極体の上記正極集電部のうち、上記正極箔露出部が扁平な上記電極体の電極体厚み方向に重なった積層集電部に、超音波溶接により接合された正極端子と、を備える
蓄電デバイスであって、
上記超音波溶接によって上記積層集電部に形成された溶接部のうち、上記積層集電部の外表面に現れた表面溶接部は、外周形状が矩形状であり、
上記電極体の外表面、
上記電極体の上記電極体本体部と上記正極集電部との境界に仮想的に設けた、上記軸線方向に直交する第1仮想境界面、及び、
上記電極体のうち、上記正極板、上記負極板及び上記セパレータが平板状に重なった電極平坦部と、上記正極板、上記負極板及び上記セパレータが半円筒状に屈曲しつつ重なった一対の電極R部との境界にそれぞれ仮想的に設けた、上記軸線方向及び上記電極体厚み方向に平行な一対の第2仮想境界面が、
互いに交わる4つの仮想交点のうち、上記表面溶接部に最も近い最近仮想交点の位置を基準位置とし、
上記表面溶接部の4つの角部のうち、上記基準位置に最も近い角部を最近角部とし、
上記電極体の上記外表面における上記基準位置から上記最近角部までの直線距離を距離Aとし、
上記表面溶接部と同形の矩形状で、上記矩形状の矩形中心を上記表面溶接部と同じくし、矩形をなす平行な2辺がそれぞれ上記軸線方向に平行となるように、上記積層集電部の上記外表面に仮想的に配置した仮想表面溶接部を想定し、
上記仮想表面溶接部の4つの仮想角部のうち、上記基準位置に最も近い仮想角部を最近仮想角部とし、
上記電極体の上記外表面における上記基準位置から上記最近仮想角部までの直線距離を仮想距離Bとしたとき、
上記表面溶接部は、
上記仮想表面溶接部を、上記矩形中心を回転中心として、上記最近仮想角部が上記電極体本体部から遠ざかる回転方向に45度以下で回転させた形態に一致し、かつ、上記距離Aが上記仮想距離Bよりも長い(A>B)形態を有する
蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスであって、
前記電極体は、前記電極体厚み方向の寸法が10mm以上である
蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平捲回型の電極体と、電極体を収容するケースと、ケースに固設され、電極体の正極集電部に超音波溶接によって接合された正極端子とを備える蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
扁平捲回型の電極体を備える電池では、電極体の特定部位で微小短絡が生じ易いことが判ってきた。この特定部位とは、電極体の外表面と、電極体の電極体本体部と正極集電部との境界に仮想的に設けた第1仮想境界面と、電極体の電極平坦部と一対の電極R部との境界にそれぞれ仮想的に設けた一対の第2仮想境界面とが、互いに交わる4つの仮想交点のうち、正極端子との溶接で出来た溶接部の表面溶接部に最も近い最近仮想交点の位置(以下、「基準位置」ともいう)の近傍である。なお、扁平捲回型の電極体を備える電池が開示された従来技術として、例えば特許文献1が挙げられる(特許文献1の
図1~
図3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この電池では、電極体の正極集電部をなす正極箔露出部の一部を電極体厚み方向に重ねて積層集電部を形成し、この積層集電部に正極端子を超音波溶接している。具体的には、正極集電部の電極体厚み方向の一方側に、正極端子を介して、超音波溶接機のアンビルを配置する一方、正極集電部の電極体厚み方向の他方側に、超音波溶接機のホーンを配置する。そして、このホーンを正極集電部に電極体厚み方向の他方側から一方側(アンビル側、正極端子側)に向けて押し付けつつ超音波振動を与える。これにより、正極集電部に積層集電部を形成すると共に、積層集電部に正極端子を超音波溶接している。なお、積層集電部のうちホーンを押し付けた部位には、溶接痕が残される。
【0005】
この超音波溶接の際、互いに隙間を空けて渦巻き状に捲かれていた正極箔露出部の正極集電箔は、ホーンを正極集電部に押し付けた際に大きく移動し変形する。具体的には、正極集電部には、正極端子との溶接部の周囲から上記基準位置に向かって先細のV字状に延び、電極体厚み方向の内側に窪むにV字溝状の凹部が出来る。このV字溝状凹部のうち、上記基準位置に近い先端付近は、溝幅が細く、深さが急激に増す形状となっている。このため、このV字溝状凹部の先端付近では、最外周に位置する正極集電箔が電極体厚み方向の内側に大きく折れ曲がり、この正極集電箔と、そのすぐ内側に位置する負極板のうち軸線方向の外側端部の角部との間で、セパレータに大きな応力が掛かる。
【0006】
これに超音波溶接時の振動が加わると、セパレータのうち、この大きな応力が掛かっている部分に穴が空き、最外周の正極集電箔と、そのすぐ内側の負極板の外側端部の角部との間で微小短絡が生じることがある。また負極板の外側端部にバリが生じている場合があり、基準位置近傍(V字溝状凹部の先端付近)において、前述の応力により、このバリがセパレータを貫通して、上述の微小短絡が生じる場合もある。これらの理由から、電極体の基準位置近傍(V字溝状凹部の先端付近)で微小短絡が生じ易い。
【0007】
なお、このような微小短絡の発生を解決する手法として、表面溶接部の面積を小さくすることにより、基準位置近傍(V字溝状凹部の先端付近)において、凹部の深さの変化を緩やかにし、最外周に位置する正極集電箔の内側への折れ曲がりを緩やかにすることが考えられる。しかし、正極端子と電極体の正極集電部(積層集電部)との溶接強度を十分に確保するには、表面溶接部の面積を小さくするのは好ましくない。
また微小短絡の発生を解決する別の手法として、表面溶接部全体を基準位置から遠ざけることにより、基準位置近傍(V字溝状凹部の先端付近)において、凹部の深さの変化を緩やかにし、最外周に位置する正極集電箔の内側への折れ曲がりを緩やかにすることも考えられる。しかし、この場合、正極端子を長くする必要が生じ好ましくない。
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、扁平捲回型の電極体を備える蓄電デバイスにおいて、電極体のうち前述の基準位置近傍で微小短絡が生じるのを抑制することができる蓄電デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、長手方向に延びる帯状の正極集電箔上に上記長手方向に延びる帯状の正極活物質層が形成された正極本体部、及び、上記正極集電箔の幅方向の一方側の端縁に沿って上記長手方向に延びる帯状で、上記正極活物質層を有さず上記正極集電箔が露出した正極箔露出部を有する正極板と、帯状の負極板とが、一対の帯状のセパレータを介して捲回軸線の周りに扁平状に捲回されてなり、上記正極板の上記正極本体部と上記負極板とが上記セパレータを介して対向した電極体本体部、及び、上記電極体本体部から上記捲回軸線に沿う軸線方向の一方側に上記正極箔露出部が渦巻き状に突出した正極集電部と、を有する扁平捲回型の電極体と、上記電極体を収容するケースと、上記ケースに固設され、上記電極体の上記正極集電部のうち、上記正極箔露出部が扁平な上記電極体の電極体厚み方向に重なった積層集電部に、超音波溶接により接合された正極端子と、を備える蓄電デバイスであって、上記超音波溶接によって上記積層集電部に形成された溶接部のうち、上記積層集電部の外表面に現れた表面溶接部は、外周形状が矩形状であり、上記電極体の外表面、上記電極体の上記電極体本体部と上記正極集電部の境界に仮想的に設けた、上記軸線方向に直交する第1仮想境界面、及び、上記電極体のうち、上記正極板、上記負極板及び上記セパレータが平板状に重なった電極平坦部と、上記正極板、上記負極板及び上記セパレータが半円筒状に屈曲しつつ重なった一対の電極R部との境界にそれぞれ仮想的に設けた、上記軸線方向及び上記電極体厚み方向に平行な一対の第2仮想境界面が、互いに交わる4つの仮想交点のうち、上記表面溶接部に最も近い最近仮想交点の位置を基準位置とし、上記表面溶接部の4つの角部のうち、上記基準位置に最も近い角部を最近角部とし、上記電極体の上記外表面における上記基準位置から上記最近角部までの直線距離を距離Aとし、上記表面溶接部と同形の矩形状で、上記矩形状の矩形中心を上記表面溶接部と同じくし、矩形をなす平行な2辺がそれぞれ上記軸線方向に平行となるように、上記積層集電部の上記外表面に仮想的に配置した仮想表面溶接部を想定し、上記仮想表面溶接部の4つの仮想角部のうち、上記基準位置に最も近い仮想角部を最近仮想角部とし、上記電極体の上記外表面における上記基準位置から上記最近仮想角部までの直線距離を仮想距離Bとしたとき、上記表面溶接部は、上記仮想表面溶接部を、上記矩形中心を回転中心として、上記最近仮想角部が上記電極体本体部から遠ざかる回転方向に45度以下で回転させた形態に一致し、かつ、上記距離Aが上記仮想距離Bよりも長い(A>B)形態を有する蓄電デバイスである。
【0010】
上述の蓄電デバイスでは、電極体の正極集電部の積層集電部に形成された溶接部のうち、積層集電部の外表面に現れた表面溶接部は、外周形状が矩形状である。このような矩形状の表面溶接部を含む溶接部は、形成が容易である。
更に、この表面溶接部は、上述のように、仮想表面溶接部を回転させて、電極体の基準位置から表面溶接部の最近角部までの距離Aを、基準位置から仮想表面溶接部の最近仮想角部までの仮想距離Bよりも長くした形態を有する。このような表面溶接部を含む溶接部が形成された電極体では、仮想表面溶接部を電極体に設けた場合(後に比較形態として説明する)に比して、基準位置近傍(V字溝状凹部の先端付近)において、凹部の深さの変化が緩やかになり、最外周に位置する正極集電箔の電極体厚み方向の内側への折れ曲がりが緩やかになる。このため、基準位置近傍で前述のセパレータの損傷が生じ難くなり、基準位置近傍で微小短絡が生じるのを抑制することができる。
【0011】
また上述の表面溶接部は、仮想表面溶接部と同じ大きさであるので、正極端子と電極体の正極集電部の積層集電部との溶接強度を、仮想表面溶接部を設けた場合と同様の溶接強度とすることができる。
また上述の表面溶接部は、仮想表面溶接部と矩形中心が同じであり、表面溶接部全体を基準位置から遠ざけることなく設けているので、正極端子を長くしなくて済む。
【0012】
なお、「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタ、全固体電池などが挙げられる
【0013】
(2)更に(1)に記載の蓄電デバイスであって、前記電極体は、前記電極体厚み方向の寸法が10mm以上である蓄電デバイスとすると良い。
【0014】
電極体の電極体厚み方向の寸法を大きくするほど、蓄電デバイスのデバイス容量を大きくできる利点がある。しかし、電極体の電極体厚み方向の寸法を10mm以上にすると、電極体の正極集電部の一部を積層集電部として正極端子を超音波溶接する際に、正極集電部(正極箔露出部の正極集電箔)が大きく変形するため、電極体の基準位置近傍(V字溝状凹部の先端付近)において、凹部の深さが急激に増加し、最外周の正極集電箔の内側への折れ曲がりが大きくなる。そして、前述の微小短絡が生じ易くなる。従って、このような微小短絡が生じ易い、電極体厚み方向の寸法が10mm以上の蓄電デバイスに、本発明を適用するのが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】実施形態に係る電池の電池高さ方向及び電池厚み方向に沿う断面図である。
【
図3】実施形態に係る電池の電池高さ方向及び電池横方向に沿う、
図2におけるA-A矢視断面図である。
【
図4】実施形態に係る電池の電池高さ方向及び電池横方向に沿う、
図2におけるB-B矢視断面図である。
【
図5】実施形態に係る電池の電極体のうち、基準位置及び表面溶接部を含む部位の、電極体厚み方向に見た部分拡大平面図である。
【
図6】実施形態に係る電池の電極体のうち、基準位置を含む部位の、軸線方向及び電極体厚み方向に沿う部分拡大断面図である。
【
図7】比較形態に係る電池の電極体のうち、
図6に対応した、基準位置を含む部位の、軸線方向及び電極体厚み方向に沿う部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態に係る電池(蓄電デバイス)1の斜視図を、
図2~
図4に電池1の断面図を示す。なお、以下では、電池1の電池高さ方向AH、電池横方向BH及び電池厚み方向CH、並びに、電極体30の軸線方向DH、電極体幅方向EH及び電極体厚み方向FHを、
図1~
図4に示す方向と定めて説明する。この電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型(直方体状)で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0017】
電池1は、ケース10と、ケース10内に収容された扁平捲回型の電極体30と、ケース10のケース上部11にそれぞれ支持された正極端子80及び負極端子90等から構成されている。電極体30は、ケース10内で、絶縁フィルムからなり、電池高さ方向AHの上側AH1に開口する袋状の絶縁ホルダ5に覆われている。またケース10内には、電解液3が収容されており、その一部は電極体30内に含浸され、残りはケース10のケース底部12上に溜まっている。
【0018】
このうちケース10は、金属(本実施形態ではアルミニウム)からなる直方体箱状であり、電池高さ方向AHの上側AH1に位置する矩形状のケース上部11と、これに対向し、電池高さ方向AHの下側AH2に位置する矩形状のケース底部12と、これらの間を結ぶ4つの矩形状のケース側部(一対のケース長側部13,14及び一対のケース短側部15,16)とを有する。ケース10は、上側AH1に矩形環状の開口部21cを有する有底角筒状の本体部材21と、開口部21cを閉塞する形態で本体部材21に全周にわたりレーザ溶接された蓋部材22とから構成されている。蓋部材22には、ケース10の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する安全弁25が設けられている。また蓋部材22には、ケース10の内外を連通する注液孔22kが設けられており、アルミニウムからなる円板状の封止部材26で気密に封止されている。
【0019】
ケース10のケース上部11(蓋部材22)には、アルミニウムからなる内部端子部材81、外部端子部材82及び端子ボルト83から構成される正極端子80が、樹脂からなる内部絶縁部材85及び外部絶縁部材86を介して、ケース10と絶縁された状態で固設されている。この正極端子80は、ケース10内で電極体30の正極集電部62に接合し導通する一方、ケース上部11を貫通してケース10の外部まで延びている。またケース上部11には、銅からなる内部端子部材91、外部端子部材92及び端子ボルト93から構成される負極端子90が、樹脂からなる内部絶縁部材95及び外部絶縁部材96を介して、ケース10と絶縁された状態で固設されている。この負極端子90は、ケース10内で電極体30の負極集電部64に接合し導通する一方、ケース上部11を貫通してケース10の外部まで延びている。
【0020】
正極端子80及び負極端子90は、同様の形態を有するので、以下ではまとめて説明する。正極端子80及び負極端子90の内部端子部材81,91は、主にケース10の内部に配置されて、電極体30の正極集電部62または負極集電部64に接合している一方、ケース上部11を貫通してケース10の外部まで延び、外部端子部材82,92に加締め接続している。一方、外部端子部材82,92は、ケース10の外部に配置されており、クランク状(Z字状)をなす。また端子ボルト83,93も、ケース10の外部に配置されている。端子ボルト83,93は、外部端子部材82,92の下側AH2から外部端子部材82を貫通して、外部端子部材82,92よりも上側AH1に突出している。
【0021】
内部絶縁部材85,95は、主にケース10の内部に配置され、正極端子80または負極端子90の内部端子部材81,91と、ケース上部11との間を絶縁している。一方、外部絶縁部材86,96は、ケース10の外部に配置され、正極端子80または負極端子90の外部端子部材82,92及び端子ボルト83,93と、ケース上部11との間を絶縁している。
【0022】
次に、電極体30について説明する(
図1~
図4のほか、
図5及び
図6も参照)。電極体30は、帯状の正極板31と帯状の負極板41とを、帯状で樹脂製の多孔質膜からなる一対のセパレータ51を介して互いに重ね、捲回軸線DXの周りに円筒状に捲回した後に、扁平状に圧縮したものである。この扁平状の電極体30の各寸法は、捲回軸線DXに沿う軸線方向DHの寸法が117mm、電極体幅方向EHの寸法が58mm、電極体厚み方向FHの寸法FL(
図2参照)が20mmである。電極体30は、軸線方向DHが電池横方向BHに一致し、電極体幅方向EHが電池高さ方向AHに一致し、電極体厚み方向FHが電池厚み方向CHに一致する形態で、ケース10内に収容されている。
【0023】
正極板31は、長手方向GH(
図3及び
図4参照)に延びる帯状のアルミニウム箔からなる正極集電箔32を有する。この正極集電箔32の両主面のうち、幅方向HHの一部でかつ長手方向GHに延びる領域上には、それぞれ長手方向GHに延びる帯状の正極活物質層33(
図6参照)が形成されている。この正極活物質層33は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質粒子、導電粒子及び結着剤から構成されている。正極板31のうち、正極集電箔32上に正極活物質層33を有する帯状の部位が、前述の正極本体部35である。一方、正極集電箔32の幅方向HHの一方側HH1の端縁32fに沿って長手方向GHに延びる帯状の部位は、正極活物質層33を有さず正極集電箔32が露出した正極箔露出部36となっている。
【0024】
負極板41は、長手方向JH(
図3及び
図4参照)に延びる帯状の銅箔からなる負極集電箔42を有する。この負極集電箔42の両主面のうち、幅方向KHの一部でかつ長手方向JHに延びる領域上には、それぞれ長手方向JHに延びる帯状の負極活物質層43(
図6参照)が形成されている。この負極活物質層43は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質粒子、結着剤及び増粘剤から構成されている。負極板41のうち、負極集電箔42上に負極活物質層43を有する帯状の部位が、負極本体部45である。一方、負極集電箔42の幅方向KHの一方側KH1の端縁42fに沿って長手方向JHに延びる帯状の部位は、負極活物質層43を有さず負極集電箔42が露出した負極箔露出部46となっている。
【0025】
電極体30のうち、軸線方向DHの中央部分は、正極板31の正極本体部35の全体と負極板41の負極本体部45の一部とがセパレータ51を介して対向した電極体本体部61である。なお、負極本体部45は、正極本体部35よりも幅が広いため、負極本体部45のうち軸線方向DHの両外側端部は、それぞれ正極本体部35とは対向しておらず、電極体本体部61には含まれない。
【0026】
また電極体30のうち、電極体本体部61よりも軸線方向DHの一方側DH1の部位は、正極板31の正極箔露出部36が、電極体本体部61から軸線方向DHの一方側DH1に渦巻き状をなして突出した正極集電部62である。この正極集電部62の軸線方向DHの寸法は、8.5mmである。正極集電部62は、主に正極箔露出部36で構成されているが、正極集電部62には、正極箔露出部36のほか、負極板41のうち、正極本体部35と対向していない、軸線方向DHの一方側DH1の外側端部45a(
図6参照)、及び、セパレータ51のうち、正極本体部35と対向していない、軸線方向DHの一方側DH1の外側端部51aも含まれている。
【0027】
この正極集電部62の一部、具体的には、電極体幅方向EHの一方側EH1寄りの中央部分は、渦巻き状の正極箔露出部36が電極体厚み方向FHに重なって積層集電部63を形成している。そして、この積層集電部63に、正極端子80の内部端子部材81が、超音波溶接によって接合している。この積層集電部63に形成された溶接部70のうち、積層集電部63の外表面63mに現れた部位が、前述の表面溶接部71である。この表面溶接部71については、後に詳述する。
【0028】
また電極体30のうち、電極体本体部61よりも軸線方向DHの他方側DH2の部位は、負極板41のうち、負極本体部45の外側端部(不図示)及び負極箔露出部46が、電極体本体部61から軸線方向DHの他方側DH2に渦巻き状をなして突出した負極集電部64である。この負極集電部64の軸線方向DHの寸法は、正極集電部62と同様に、8.5mmである。この負極集電部64には、セパレータ51のうち、正極本体部35と対向していない、軸線方向DHの他方側DH2の外側端部51bも含まれている。
この負極集電部64の一部、具体的には、電極体幅方向EHの一方側EH1寄りの中央部分は、渦巻き状の負極箔露出部46が電極体厚み方向FHに重なって積層集電部65を形成している。そして、この積層集電部65に、負極端子90の内部端子部材91が、超音波溶接によって接合している。
【0029】
また電極体30は、電極平坦部67と一対の電極R部68とを有する。即ち、電極平坦部67は、正極板31、負極板41及びセパレータ51が平板状に重なった部位である。一方、電極R部68は、正極板31、負極板41及びセパレータ51が半円筒状に屈曲しつつ重なった部位である。
【0030】
ここで、この電極体30における前述の「4つの仮想交点」、「最近仮想交点」及び「基準位置」について説明する。まず、電極体30の電極体本体部61と正極集電部62との境界に、軸線方向DHに直交する第1仮想境界面IM1(
図3~
図6中に一点鎖線で示す)を仮想的に設けると共に、電極体30の電極平坦部67と一対の電極R部68との境界に、それぞれ軸線方向DH及び電極体厚み方向FHに平行な(電極体幅方向EHに直交する)一対の第2仮想境界面IM2(
図2~
図5中に二点鎖線で示す)を仮想的に設ける。電極体30の外表面30mと第1仮想境界面IM1と一対の第2仮想境界面IM2とが互いに交わる4つの交点が、仮想交点IP1,IP2,IP3,IP4である。また、これらの仮想交点IP1~IP4のうち、積層集電部63に形成された溶接部70の表面溶接部71に最も近い仮想交点IP1が、最近仮想交点IP1(
図2、
図4~
図6参照)である。この最近仮想交点IP1の位置が、基準位置SPである。
【0031】
次に、表面溶接部71について説明する(
図5及び
図4参照)。この表面溶接部71は、外周形状が矩形状であり、平行な2つの辺72,73(本実施形態では、これらの長さは10mm)と、これらに直交する、平行な2つの辺74,75(本実施形態では、これらの長さは4mm)とを有する。表面溶接部71の4つの角部71r1,71r2,71r3,71r4のうち、基準位置SPに最も近い角部71r1が、前述の最近角部71r1である。電極体30の外表面30mにおける基準位置SPから、この最近角部71r1までの直線距離を距離Aとする。
【0032】
また比較形態として、実施形態の表面溶接部71と同形の矩形状で、平行な2つの辺972,973と、これらに直交する、平行な2つの辺974,975とを有し、この矩形状の矩形中心Cを表面溶接部71と同じくする仮想表面溶接部971(
図5中に、破線で示す)を想定する。この仮想表面溶接部971は、平行な2つの辺972,973がそれぞれ電極体幅方向EHと平行で、残りの平行な2つの辺974,975がそれぞれ軸線方向DHに平行となるように、電極体30の積層集電部63の外表面63に仮想的に配置する。仮想表面溶接部971の4つの仮想角部971r1,971r2,971r3,971r4のうち、基準位置SPに最も近い仮想角部971r1が、前述の最近仮想角部971r1である。電極体30の外表面30mにおける基準位置SPから、この最近仮想角部971r1までの直線距離を仮想距離Bとする。
【0033】
すると、本実施形態の表面溶接部71は、比較形態の仮想表面溶接部971を、矩形中心Cを回転中心として、最近仮想角部971r1が電極体本体部61から遠ざかる回転方向RH(
図5及び
図4中、時計回り)に回転角度θが45度以下(具体的にはθ=30度)で回転させた形態に一致し、かつ、距離Aが仮想距離Bよりも長い(A>B)形態を有している。
【0034】
次いで、上記電池1の製造方法について説明する。まず、各々帯状をなす正極板31、負極板41及び一対のセパレータ51を用意し、これらをセパレータ51、負極板41、セパレータ51、正極板31の順に重ね、捲回軸線DXの周りに円筒状に捲回して、円筒状の電極体(不図示)を形成する。その後、この円筒状の電極体をプレスして、電極平坦部67及び一対の電極R部68を有する扁平状の電極体30を形成する。
【0035】
また別途、蓋部材22、内部端子部材81,91、外部端子部材82,92、端子ボルト83,93、内部絶縁部材85,95及び外部絶縁部材86,96を用意する。そして、蓋部材22に、内部絶縁部材85及び外部絶縁部材86を介して、内部端子部材81、外部端子部材82及び端子ボルト83からなる正極端子80を固設すると共に、内部絶縁部材95及び外部絶縁部材96を介して、内部端子部材91、外部端子部材92及び端子ボルト93からなる負極端子90を固設する。
【0036】
次に、蓋部材22に固設された正極端子80を電極体30の正極集電部62に、蓋部材22に固設された負極端子90を電極体30の負極集電部64にそれぞれ超音波溶接で接合する。具体的には、正極集電部62をなす、互いに隙間を空けて渦巻き状に捲かれている正極箔露出部36の一部を、電極体厚み方向FHに重ねて積層集電部63を形成し、この積層集電部63に正極端子80の内部端子部材81を超音波溶接する。
【0037】
詳細には、正極集電部62の電極体厚み方向FHの一方側FH1に、正極端子80の内部端子部材81を介して、超音波溶接機のアンビル(不図示)を配置する一方、正極集電部62の電極体厚み方向FHの他方側FH2に、超音波溶接機のホーン(不図示)を配置する。このホーンを正極集電部62に電極体厚み方向FHの他方側FH2から一方側FH1(アンビル側、正極端子80の内部端子部材81側)に向けて押し付けつつ超音波振動を与える。これにより、正極集電部62に積層集電部63を形成すると共に、積層集電部63に正極端子80の内部端子部材81を超音波溶接し、積層集電部63に、内側辺72、外側辺73、近側辺74及び遠側辺75を含む外周形状の表面溶接部71を有する溶接部70を形成する。また同様にして、負極端子90の内部端子部材91を電極体30の負極集電部64に超音波溶接する。
【0038】
ここで、前述した比較形態では(
図7も参照)、超音波溶接のホーンを正極集電部62に押し付けた際に、正極箔露出部36の正極集電箔32が大きく移動し変形する。そして、正極集電部62に、正極端子80の内部端子部材81との溶接部970の周囲から基準位置SPに向かって先細のV字状に延び、電極体厚み方向FHの内側FH3に窪むにV字溝状凹部962vが出来る。このV字溝状凹部962vのうち、基準位置SPに近い先端付近は、溝幅が細く、深さが急激に増す形状となっている。
【0039】
このため、このV字溝状凹部962の先端付近では、最外周に位置する正極集電箔32A(
図7参照)が電極体厚み方向FHの内側FH3(
図7中、下方)に大きく折れ曲がる。 特に電極体30の電極体厚み方向FHの寸法FLが10mm以上であるため、正極集電部62が大きく変形し、V字溝状凹部962vの先端付近で、凹部の深さが急激に増加し、最外周の正極集電箔32Aが内側FH3に大きく折れ曲がる。そして、この正極集電箔32Aと、そのすぐ内側に位置する負極板41Aの外側端部45aの角部45atとの間で、セパレータ51の外側端部51aに大きな応力が掛かる。
【0040】
これに超音波溶接時の振動が加わると、セパレータ51の外側端部51aのうち、この大きな応力が掛かっている部分に穴が空き、最外周の正極集電箔32Aと、そのすぐ内側の負極板41Aの外側端部45aの角部45atとが接触し(
図7中に、矢印TRで示す位置)、これらの間で微小短絡が生じることがある。また負極板41の外側端部45aにバリが生じている場合があり、基準位置SP近傍(V字溝状凹部962vの先端付近)において、前述の応力により、このバリがセパレータ51の外側端部51aを貫通して、上述の微小短絡が生じる場合もある。
【0041】
これに対し、本実施形態では(
図6参照)、超音波溶接のホーンを正極集電部62に押し付けた際に、正極集電部62に、比較形態のV字溝状凹部962vと概ね同じ形態のV字溝状凹部62vが出来る。しかし、本実施形態で形成されるV字溝状凹部62vは、比較形態のV字溝状凹部962vと比べて、基準位置SP近傍(V字溝状凹部62vの先端付近)において、凹部の深さの変化が緩やかになり、最外周に位置する正極集電箔32Aの内側FH3(
図6中、下方)への折れ曲がりが緩やかになる。このため、基準位置SP近傍で前述のセパレータ51の外側端部51aの損傷が生じ難くなり、基準位置SP近傍で、最外周の正極集電箔32Aと、そのすぐ内側の負極板41Aの外側端部45aの角部45atとが接触して、微小短絡が生じるのを抑制することができる。
【0042】
また本実施形態の表面溶接部71は(
図5参照)、比較形態の仮想表面溶接部971と同じ大きさであるので、正極端子80の内部端子部材81と電極体30の正極集電部62の積層集電部63との溶接強度を、比較形態の仮想表面溶接部971を設けた場合と同様の溶接強度とすることができる。
また本実施形態の表面溶接部71は、比較形態の仮想表面溶接部971と矩形中心Cが同じであり、表面溶接部71全体を基準位置SPから遠ざけることなく設けているので、正極端子80の内部端子部材81を長くしなくて済む。
【0043】
次に、電極体30を袋状の絶縁ホルダ5で包む。その後、本体部材21を用意し、絶縁ホルダ5で覆われた電極体30を本体部材21内に挿入し、蓋部材22で本体部材21の開口部21cを塞ぐ。そして、本体部材21の開口部21c及び蓋部材22の周縁部を全周にわたりレーザ溶接して、ケース10を形成する。次に、電解液3を注液孔22kを通じてケース10内に注液し、電解液3を電極体30内に含浸させる。その後、注液孔22kを外部から封止部材26で覆い、封止部材26を全周にわたり蓋部材22に溶接して、封止部材26と蓋部材22との間を気密に封止する。次に、この電池1に充電装置(不図示)を接続して、電池1に初充電を行う。その後、初充電した電池1を所定時間にわたり静置して、電池1をエージングする。かくして、電池1が完成する。
【0044】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 電池(蓄電デバイス)
10 ケース
30 電極体
30m (電極体の)外表面
31 正極板
32,32A 正極集電箔
32f 端縁
33 正極活物質層
35 正極本体部
36 正極箔露出部
41,41A 負極板
51 セパレータ
61 電極体本体部
62 正極集電部
63 (正極集電部の)積層集電部
63m (積層集電部の)外表面
67 電極平坦部
68 電極R部
70 溶接部
71 表面溶接部
72,73,74,75 (表面溶接部の)辺
71r1 (表面溶接部の)最近角部(角部)
71r2,71r3,71r4
80 正極端子
90 負極端子
970 溶接部
971 仮想表面溶接部
972,973,974,975 (仮想表面溶接部の)辺
971r1 (仮想表面溶接部の)仮想最近角部(仮想角部)
971r2,971r3,971r4 (仮想表面溶接部の)仮想角部
DX 捲回軸線
DH 軸線方向
DH1 (軸線方向の)一方側
EH 電極体幅方向
EH1 (電極体幅方向の)一方側
FH 電極体厚み方向
GH (正極集電箔の)長手方向
HH (正極集電箔の)幅方向
HH1 (幅方向の)一方側
RH 回転方向
θ 回転角度
IM1 第1仮想境界面
IM2 第2仮想境界面
IP1 最近仮想交点(仮想交点)
IP2,IP3,IP4 仮想交点
SP 基準位置
FL (電極体の電極体厚み方向の)寸法
A (基準位置から最近角部までの)距離
B (基準位置から最近仮想角部までの)仮想距離
C 矩形中心