(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04014 20160101AFI20241031BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241031BHJP
【FI】
H01M8/04014
H01M8/04 Z
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2018215473
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-10-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村本 知哉
(72)【発明者】
【氏名】上口 聡
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 和沙
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-158530(JP,A)
【文献】国際公開第2012/091031(WO,A1)
【文献】特開2002-231292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 - 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、
前記密閉容器内に設けられた燃料電池本体と、
第1ブロワを含み、前記燃料電池本体の空気極に空気を供給する空気供給部と、
前記第1ブロワとは異なる第2ブロワを含み、前記密閉容器に冷却流体を供給する流体供給部と、
前記密閉容器から前記冷却流体を排出する流体排出部と、
を備え
、
前記燃料電池本体は、固体酸化物形燃料電池であり、
前記第1ブロワおよび前記第2ブロワは、前記密閉容器の外に設けられる燃料電池システム。
【請求項2】
前記流体供給部は、前記密閉容器の上部に形成された供給口を有し、
前記流体排出部は、前記密閉容器における前記供給口の下方に形成された排出口を有する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記密閉容器内には、複数の前記燃料電池本体が設けられ、
前記流体供給部は、開口が形成された供給管を有し、
前記開口は、
1の前記燃料電池本体と、前記
1の燃料電池本体
とは異なる他の前記燃料電池本体との間に位置する請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市ガスを燃料として発電する燃料電池システムが普及し始めている。このような燃料電池システムは、発電の際に燃料電池本体が発熱する。燃料電池本体の温度が所定の上限温度を上回ると、燃料電池システムの発電効率が低下したり、寿命が短縮されたりする。
【0003】
そこで、燃料電池本体が内部に収納された発電室と熱的に接続して配置された冷却部を備え、冷却部に空気を導くことで燃料電池本体を冷却する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の技術は、燃料電池本体を間接的に冷却しているにすぎない。このため、燃料電池本体の冷却効率が低いという課題がある。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑み、燃料電池本体を効率よく冷却することが可能な燃料電池システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る燃料電池システムは、密閉容器と、密閉容器内に設けられた燃料電池本体と、第1ブロワを含み、燃料電池本体の空気極に空気を供給する空気供給部と、第1ブロワとは異なる第2ブロワを含み、密閉容器に冷却流体を供給する流体供給部と、密閉容器から冷却流体を排出する流体排出部と、を備え、燃料電池本体は、固体酸化物形燃料電池であり、第1ブロワおよび第2ブロワは、密閉容器の外に設けられる。
【0008】
また、流体供給部は、密閉容器の上部に形成された供給口を有し、流体排出部は、密閉容器における供給口の下方に形成された排出口を有してもよい。
【0009】
また、密閉容器内には、複数の燃料電池本体が設けられ、流体供給部は、開口が形成された供給管を有し、開口は、1の燃料電池本体と、1の燃料電池本体とは異なる他の燃料電池本体との間に位置してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、燃料電池本体を効率よく冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の燃料電池システムを説明する図である。
【
図2】第1の変形例の燃料電池システムを説明する図である。
【
図3】第2の変形例の燃料電池システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
[燃料電池システム100]
図1は、本実施形態の燃料電池システム100を説明する図である。
図1に示すように、燃料電池システム100は、密閉容器110と、燃料電池本体120と、燃料供給部130と、空気供給部140と、アノード排気管150と、カソード排気管160と、冷却部170とを含む。なお、
図1中、実線の矢印は、ガスの流れを示す。
【0014】
密閉容器110は、内部に空間(以下、「発電室112」と称する。)が形成された容器である。密閉容器110は、断熱材で構成された容器、または、真空容器である。つまり、密閉容器110は、断熱容器である。発電室112には、燃料電池本体120が設けられる。密閉容器110は、燃料電池本体120から外部への伝熱を抑制する。
【0015】
燃料電池本体(セルスタック)120は、燃料極122、空気極124、および、電解質126を含む。燃料極(アノード)122は、NiおよびNi化合物(例えば、NiO)のいずれか一方または両方を含む。燃料極122には、供給マニホールド122aと、排気マニホールド122bとが接続される。
【0016】
空気極(カソード)124は、電子伝導性を示す酸化物を含む。電子伝導性を示す酸化物は、例えば、LSM((La,Sr)MnO3)、LSC((La,Sr)CoO3)、または、LSCF((La,Sr)(Co,Fe)O3)である。空気極124には、供給マニホールド124aが接続される。
【0017】
電解質126は、燃料極122と空気極124との間に設けられる。電解質126は、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む。酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)である。
【0018】
燃料供給部130は、燃料極122に燃料FGを供給する。本実施形態において、燃料供給部130は、燃料供給管132と、流量調整機構134とを含む。燃料供給管132は、燃料FGの供給源と、燃料極122(供給マニホールド122a)とを接続する。燃料FGは、水素である。燃料FGの供給源は、例えば、アンモニアを貯留する高圧容器(ボンベ)およびアンモニア分解器、水素ボンベ、または、炭化水素ボンベおよび改質器である。流量調整機構134は、例えば、マスフローコントローラ、または、ポンプ(例えば、ダイヤフラムポンプ、または、回転翼式ポンプ)である。
【0019】
空気供給部140は、空気供給管142と、第1ブロワ144と、空気加熱器146とを含む。空気供給管142は、一端が開放され、他端が空気極124(供給マニホールド124a)に接続される。第1ブロワ144は、空気供給管142に設けられる。第1ブロワ144は、吸入側が空気供給管142の開放端側に接続される。第1ブロワ144は、吐出側が空気供給管142の供給マニホールド124a側に接続される。空気加熱器146は、例えば、電気ヒータで構成される。空気加熱器146は、空気供給管142における第1ブロワ144と供給マニホールド124aとの間に設けられる。したがって、第1ブロワ144は、空気加熱器146によって加熱された空気ARを空気極124に供給する。
【0020】
上記したように、燃料供給部130によって、燃料極122に燃料FG(水素)が供給されると、燃料極122において、下記反応式(1)に示す酸化反応が進行する。
H2 + O2- → 2H2O + 2e- …反応式(1)
【0021】
また、上記したように、空気供給部140によって空気極124に空気ARが供給されることにより、空気極124において、下記反応式(2)に示す還元反応が進行する。そして、酸化物イオン(O2-)が電解質126を伝導(移動)することにより、燃料電池本体120が発電する。燃料電池本体120は、発電を開始すると、ジュール熱によって自体の温度が上昇する。
1/2O2 + 2e- → O2- …反応式(2)
【0022】
アノード排気管150は、排気マニホールド122bと後段の設備(例えば、オフガス燃焼器)とを接続する。カソード排気管160は、密閉容器110に形成された下部開口110aと、後段の設備とを接続する。
【0023】
上記反応式(1)に示す酸化反応が進行した結果生じるアノードオフガスAX(水(水蒸気)、および、水素を含む)は、排気マニホールド122b、および、アノード排気管150を通じて後段の設備に排気される。
【0024】
また、反応式(2)に示す反応が進行した結果生じるカソードオフガスCX(酸素、窒素を含む)は、空気極124から排気される。そして、カソードオフガスCXは、発電室112、下部開口110a、および、カソード排気管160を通じて後段の設備に排気される。
【0025】
上記したように、燃料電池本体120は、発電を開始すると発熱する。燃料電池本体120の温度が所定の上限温度(例えば、800℃)を上回ると、燃料電池システム100の発電効率が低下したり、寿命が短縮されたりする。そこで、本実施形態の燃料電池システム100は、冷却部170を備える。以下、冷却部170について詳述する。
【0026】
[冷却部170]
冷却部170は、燃料電池本体120を冷却する。冷却部170は、流体供給部180と、流体排出部190とを含む。流体供給部180は、密閉容器110に冷却流体CFを供給する。本実施形態では、冷却流体CFとして空気(外気)を例に挙げる。流体供給部180は、供給口182と、流体供給管184と、第2ブロワ186とを含む。
【0027】
供給口182は、密閉容器110の上部に形成される。本実施形態において、供給口182は、密閉容器110における燃料電池本体120の上方に形成される。
【0028】
流体供給管184は、一端が開放され、他端が供給口182に接続される。第2ブロワ186は、流体供給管184に設けられる。第2ブロワ186は、吸入側が流体供給管184の開放端側に接続される。第2ブロワ186は、吐出側が流体供給管184の供給口182側に接続される。
【0029】
流体排出部190は、密閉容器110から冷却流体CFを排出する。流体排出部190は、密閉容器110に形成された排出口と、流体排出管とを含む。本実施形態において、下部開口110aが排出口として機能する。また、カソード排気管160が流体排出管として機能する。下部開口110a(排出口)は、密閉容器110における供給口182および燃料電池本体120の下方に形成される。
【0030】
したがって、供給口182から供給された冷却流体CFは、発電室112内を下降流となって流れ、下部開口110a、カソード排気管160を通じて、カソードオフガスCXとともに後段の設備に排気される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システム100は、冷却部170を備える。これにより、冷却部170は、冷却流体CF(外気)を発電室112に直接供給することができる。したがって、燃料電池システム100は、燃料電池本体120を冷却流体CFで直接冷却することが可能となる。このため、燃料電池システム100は、燃料電池本体120を間接的に冷却する従来技術と比較して、燃料電池本体120を効率よく冷却することができる。
【0032】
したがって、燃料電池システム100は、発電効率の低下を抑制することが可能となる。また、燃料電池システム100は、寿命の短縮を抑制することができる。
【0033】
また、第1ブロワ144の吐出空気量を増加させる従来技術と比較して、燃料電池本体120を効率よく冷却することができる。具体的に説明すると、第1ブロワ144の吐出空気量を増加させた場合、空気加熱器146によって加熱された空気で燃料電池本体120を冷却することになる。一方、本実施形態の冷却部170は、外気を冷却流体CFとして利用する。このため、冷却部170は、第1ブロワ144の吐出空気量を増加させる従来技術と比較して、燃料電池本体120を効率よく冷却できる。
【0034】
また、冷却部170は、供給口182の下方に形成された下部開口110a(排出口)を有する。これにより、燃料電池本体120のうち、相対的に高温となる上部から相対的に低温となる下部に向かって冷却流体CFを通過させることができる。したがって、冷却部170は、燃料電池本体120を効率よく冷却することが可能となる。
【0035】
また、燃料電池システム100は、冷却流体CFとして外気を利用する。これにより、冷却流体CFに要するコストを削減することができる。
【0036】
[第1の変形例]
上記実施形態において、燃料電池本体120は、カソードオフガスCXが空気極124から直接排気される構成を例に挙げて説明した。しかし、カソードオフガスCXの排気態様に限定はない。
【0037】
図2は、第1の変形例の燃料電池システム200を説明する図である。
図2に示すように、燃料電池システム200は、密閉容器110と、燃料電池本体220と、燃料供給部130と、空気供給部140と、アノード排気管150と、カソード排気管260と、冷却部270とを含む。なお、
図2中、実線の矢印は、ガスの流れを示す。
【0038】
また、上記燃料電池システム100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
燃料電池本体220は、燃料極122と、供給マニホールド122aと、排気マニホールド122bと、空気極124と、供給マニホールド124aと、排気マニホールド224bと、電解質126とを含む。排気マニホールド224bは、空気極124に接続される。
【0040】
カソード排気管260は、排気マニホールド224bに接続される。
【0041】
冷却部270は、燃料電池本体220を冷却する。冷却部270は、流体供給部180と、流体排出部290とを含む。流体排出部290は、下部開口110a(排出口)と、流体排気管292とを含む。流体排気管292は、下部開口110aとカソード排気管260とを接続する。
【0042】
以上説明したように、第1の変形例の燃料電池システム200は、冷却部270を備える。これにより、冷却部270は、冷却流体CF(外気)を発電室112に直接供給することができる。したがって、燃料電池システム200は、燃料電池本体220を冷却流体CFで直接冷却することが可能となる。このため、燃料電池システム200は、燃料電池本体220を間接的に冷却する従来技術と比較して、燃料電池本体220を効率よく冷却することができる。
【0043】
[第2の変形例]
上記実施形態では、燃料電池システム100が、1の燃料電池本体120を備える場合を例に挙げた。しかし、燃料電池システムは、複数の燃料電池本体120を備えてもよい。
【0044】
図3は、第2の変形例の燃料電池システム300を説明する図である。燃料電池システム300は、密閉容器110と、燃料電池本体120と、燃料供給部130と、空気供給部140と、アノード排気管150と、カソード排気管160と、冷却部370とを含む。なお、
図3中、実線の矢印は、ガスの流れを示す。また、
図3中、理解を容易にするために、燃料供給部130、空気供給部140、アノード排気管150を省略する。また、上記燃料電池システム100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図3に示すように、燃料電池システム300では、密閉容器110の発電室112には、複数の燃料電池本体120が設けられる。
【0046】
冷却部370は、複数の燃料電池本体120を冷却する。冷却部370は、流体供給部380と、流体排出部190とを含む。流体供給部380は、流体供給管384と、第2ブロワ186とを含む。流体供給管384は、両端が開放される。つまり、流体供給管384は、両端に開口が形成される。流体供給管384は、密閉容器110を貫通する。流体供給部380の他端の開口384aは、燃料電池本体120と燃料電池本体120との間に位置する。本実施形態において、開口384aは、複数の燃料電池本体120のうち、中央に配される燃料電池本体120間に位置する。つまり、開口384aは、燃料電池本体120の群の中央に位置する。
【0047】
これにより、冷却部370は、相対的に高温となる、複数の燃料電池本体120のうち、中央に配される燃料電池本体120間に冷却流体CFを供給することができる。したがって、冷却部370は、燃料電池本体120を効率よく冷却することが可能となる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
例えば、上記実施形態において、冷却流体CFとして空気を例に挙げて説明した。しかし、冷却流体CFに限定はない。冷却流体CFは、例えば、窒素または水であってもよい。冷却流体CFが水である場合、冷却部170は、水の潜熱で燃料電池本体120を冷却することができる。
【0050】
また、上記実施形態において、供給口182が燃料電池本体120の上方に形成され、下部開口110a(排出口)が燃料電池本体120の下方に形成される構成を例に挙げて説明した。しかし、供給口182および下部開口110aの位置に限定はない。例えば、供給口182および下部開口110aは、密閉容器110の側面に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示は、燃料電池システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100 燃料電池システム
110 密閉容器
110a 下部開口(排出口)
120 燃料電池本体
180 流体供給部
182 供給口
190 流体排出部
200 燃料電池システム
220 燃料電池本体
290 流体排出部
292 流体排気管
300 燃料電池システム
380 流体供給部
384 流体供給管
384a 開口