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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】匂い検出装置及び匂い検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20241031BHJP
   G01N 27/414 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01N27/00 J
G01N27/414 301U
G01N27/414 301X
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019137872
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021021613
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】水野 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋夫
(72)【発明者】
【氏名】森田 翔
(72)【発明者】
【氏名】若森 俊樹
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/024791(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131564(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0241944(US,A1)
【文献】特開2013-117469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0057251(US,A1)
【文献】特開2019-002820(JP,A)
【文献】特開2016-080601(JP,A)
【文献】新名直也,ポリアニリン感応膜を用いた電荷転送型センサアレイによるガス分布イメージング,第64回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集,公益社団法人応用物理学会,2017年,p.11-330(16p-416-6)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン感応部を有し、前記イオン感応部の電位変化に応じた出力信号を出力するイオンセンサと、
前記イオン感応部上に配置され、検出対象の匂い物質を吸着することにより状態が変化し、前記イオン感応部の電位変化を生じさせる物質吸着膜と、
前記イオンセンサの出力信号を取得し、当該出力信号における予め定められた基準値からのオフセットが減少するように、前記イオンセンサを駆動させるための駆動信号を調整する調整部と、を備え、
前記イオンセンサは、
前記イオン感応部の電位変化に応じて深さを変化させるポテンシャル井戸に注入するための電荷を蓄積するID部と、
前記ID部から前記ポテンシャル井戸への電荷注入量を制御するICG部と、を有し、
前記イオンセンサは、前記ID部の電位を一定にした状態で前記ICG部の電位を変化させることにより、前記ID部から前記ポテンシャル井戸に電荷を注入するように構成されており、
前記駆動信号は、前記ID部に印加される電圧である、匂い検出装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記出力信号に基づいて前記駆動信号を調整する第1動作モードと、前記第1動作モードにおいて調整された前記駆動信号を維持する第2動作モードと、を切り替え可能に構成されている、請求項1に記載の匂い検出装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記出力信号を入力し、前記出力信号のオフセット方向とは逆方向に調整された信号を出力する第1調整部と、前記第1調整部により出力された前記信号のゲインを調整することにより前記駆動信号を生成する第2調整部と、を有する、請求項1又は2に記載の匂い検出装置。
【請求項4】
前記イオンセンサは、複数の画素グループを有し、
各前記画素グループは、それぞれ独立した前記イオン感応部を有する一以上の画素を有し、
前記調整部は、前記画素グループ毎に設けられており、
一の前記画素グループに設けられた前記調整部は、前記一の前記画素グループに含まれる各前記画素の出力信号に基づいて、前記一の前記画素グループに含まれる各前記画素に共通の前記駆動信号を調整する、請求項1~のいずれか一項に記載の匂い検出装置。
【請求項5】
前記物質吸着膜は、前記画素グループ毎に設けられている、請求項に記載の匂い検出装置。
【請求項6】
イオン感応部を有し、前記イオン感応部の電位変化に応じた出力信号を出力するイオンセンサと、前記イオン感応部上に配置され、検出対象の匂い物質を吸着することにより状態が変化し、前記イオン感応部の電位変化を生じさせる物質吸着膜と、を有する匂い検出装置による匂い検出方法であって、
前記匂い検出装置を前記検出対象の匂い物質が存在しない雰囲気下に配置した状態で、前記イオンセンサの出力信号を取得し、当該出力信号における予め定められた基準値からのオフセットが減少するように、前記イオンセンサを駆動させるための駆動信号を調整する第1ステップと、
前記第1ステップにおいて調整された前記駆動信号を維持した状態で、前記匂い検出装置に対して検査対象となる空気を導入する第2ステップと、
前記第2ステップの後に取得された前記イオンセンサの出力信号に基づいて、前記匂い物質を検出する第3ステップと、を含み、
前記イオンセンサは、
前記イオン感応部の電位変化に応じて深さを変化させるポテンシャル井戸に注入するための電荷を蓄積するID部と、
前記ID部から前記ポテンシャル井戸への電荷注入量を制御するICG部と、を有し、
前記イオンセンサは、前記ID部の電位を一定にした状態で前記ICG部の電位を変化させることにより、前記ID部から前記ポテンシャル井戸に電荷を注入するように構成されており、
前記駆動信号は、前記ID部に印加される電圧である、匂い検出方法。
【請求項7】
前記第2ステップの処理が実行されてから予め定められた期間が経過した後に、前記第1ステップの処理を再度実行する、請求項に記載の匂い検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、匂い検出装置及び匂い検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体バイオセンサの出力信号に対して、検出回路内で電圧オフセット補償を行うことが開示されている。特許文献2には、DNAの検出を行うセンサの出力信号に対して、検出回路内で電流オフセット補償を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-5255号公報
【文献】特表2004-511799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に記載されたオフセット補償の手法は、センサからの出力信号を補正するものである。すなわち、上記手法は、オフセット成分が含まれる出力信号が得られた後に、当該オフセット成分を除去するための補正処理を事後的に行うものである。このような手法では、出力信号に含まれるオフセット成分に起因して、出力のダイナミックレンジが低下してしまうという問題がある。
【0005】
本開示の一側面は、ダイナミックレンジの低下を効果的に抑制できる匂い検出装置及び匂い検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る匂い検出装置は、イオン感応部を有し、イオン感応部の電位変化に応じた出力信号を出力するイオンセンサと、イオン感応部上に配置され、検出対象の匂い物質を吸着することにより状態が変化し、イオン感応部の電位変化を生じさせる物質吸着膜と、イオンセンサの出力信号を取得し、当該出力信号における予め定められた基準値からのオフセットが減少するように、イオンセンサを駆動させるための駆動信号を調整する調整部と、を備える。
【0007】
上記匂い検出装置は、イオンセンサの出力信号のオフセットを減少させるように、イオンセンサを駆動させるための駆動信号を調整する調整部を備える。従って、例えばイオン感応部の電位変化が生じていない状態(すなわち、物質吸着膜に匂い物質が吸着されていない状態)で、調整部によって駆動信号を調整することにより、イオンセンサの出力信号のオフセット成分を減少させることができる。そして、イオンセンサに対する入力信号である駆動信号を調整することにより、出力信号のオフセット成分を抑制できる。従って、上記匂い検出装置によれば、出力信号のオフセット成分に起因するダイナミックレンジの低下を効果的に抑制できる。
【0008】
調整部は、出力信号に基づいて駆動信号を調整する第1動作モードと、第1動作モードにおいて調整された駆動信号を維持する第2動作モードと、を切り替え可能に構成されていてもよい。上記構成によれば、駆動信号を調整するための第1動作モードと、調整された駆動信号を利用して匂い検出を行う第2動作モードとを、状況に応じて適切に切り替えることができる。
【0009】
上記匂い検出装置は、物質吸着膜に参照電圧を印加する電極を更に備え、駆動信号は、参照電圧であってもよい。上記構成によれば、物質吸着膜に印加される参照電圧を調整することで、出力信号のオフセット成分を好適に抑制できる。
【0010】
イオンセンサは、イオン感応部の電位変化に応じて深さを変化させるポテンシャル井戸に注入するための電荷を蓄積するID部と、ID部からポテンシャル井戸への電荷注入量を制御するICG部と、を有し、イオンセンサは、ID部の電位を一定にした状態でICG部の電位を変化させることにより、ID部からポテンシャル井戸に電荷を注入するように構成されており、駆動信号は、ID部に印加される電圧であってもよい。上記構成によれば、ID部の電位を一定にした状態でICG部の電位を変化させてポテンシャル井戸に電荷を注入するように構成されたイオンセンサにおいて、電荷の注入量を決定するID部の電圧を調整することで、出力信号のオフセット成分を好適に抑制できる。
【0011】
イオンセンサは、イオン感応部の電位変化に応じて深さを変化させるポテンシャル井戸に注入するための電荷を蓄積するID部と、ID部からポテンシャル井戸への電荷注入量を制御するICG部と、を有し、イオンセンサは、ICG部の電位を一定にした状態でID部の電位を変化させることにより、ID部からポテンシャル井戸に電荷を注入するように構成されており、駆動信号は、ICG部に印加される電圧であってもよい。上記構成によれば、ICG部の電位を一定にした状態でID部の電位を変化させてポテンシャル井戸に電荷を注入するように構成されたイオンセンサにおいて、いわゆる電荷の摺り切り高さを決定するICG部の電圧を調整することで、出力信号のオフセット成分を好適に抑制できる。
【0012】
調整部は、出力信号を入力し、出力信号のオフセット方向とは逆方向に調整された信号を出力する第1調整部と、第1調整部により出力された信号のゲインを調整することにより駆動信号を生成する第2調整部と、を有してもよい。上記構成によれば、第1調整部によって出力信号のオフセットを減少させる方向に調整されると共に、第2調整部によって適切な大きさに調整された駆動信号を得ることができる。
【0013】
イオンセンサは、複数の画素グループを有し、各画素グループは、それぞれ独立したイオン感応部を有する一以上の画素を有し、調整部は、画素グループ毎に設けられており、一の画素グループに設けられた調整部は、一の画素グループに含まれる各画素の出力信号に基づいて、一の画素グループに含まれる各画素に共通の駆動信号を調整してもよい。上記構成によれば、イオンセンサに含まれる全画素に対して一括で駆動信号を調整する場合と比較して、画素グループ毎の特性に応じて駆動信号を個別に調整することができる。
【0014】
物質吸着膜は、画素グループ毎に設けられていてもよい。上記構成によれば、物質吸着膜毎の特性に応じて、駆動信号を適切に調整することができる。
【0015】
本開示の一側面に係る匂い検出方法は、イオン感応部を有し、イオン感応部の電位変化に応じた出力信号を出力するイオンセンサと、イオン感応部上に配置され、検出対象の匂い物質を吸着することにより状態が変化し、イオン感応部の電位変化を生じさせる物質吸着膜と、を有する匂い検出装置による匂い検出方法であって、匂い検出装置を検出対象の匂い物質が存在しない雰囲気下に配置した状態で、イオンセンサの出力信号を取得し、当該出力信号における予め定められた基準値からのオフセットが減少するように、イオンセンサを駆動させるための駆動信号を調整する第1ステップと、第1ステップにおいて調整された駆動信号を維持した状態で、匂い検出装置に対して検査対象となる空気を導入する第2ステップと、第2ステップの後に取得されたイオンセンサの出力信号に基づいて、匂い物質を検出する第3ステップと、を含む。
【0016】
上記匂い検出方法によれば、匂い物質が存在しない雰囲気下(すなわち、イオンセンサの出力信号が基準値と一致することが理想的とされる環境下)で、適切に駆動信号を調整することができる。そして、調整された駆動信号を用いて匂い検出を行うことにより、出力信号のオフセット成分を抑制できる。従って、上記匂い検出方法によれば、出力信号のオフセット成分に起因するダイナミックレンジの低下を効果的に抑制できる。
【0017】
上記匂い検出方法は、第2ステップの処理が実行されてから予め定められた期間が経過した後に、第1ステップの処理を再度実行してもよい。一旦駆動信号を調整したとしても、その後、時間の経過と共に、イオンセンサの周囲の環境(例えば、温度、湿度等)の経時的な変化に起因して、イオンセンサの出力信号のオフセット成分が徐々に大きくなる。上記構成によれば、定期的に駆動信号の調整を行うことで、出力信号のオフセット成分を一定以下に抑えた状態で匂い検出を継続的に実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一側面によれば、ダイナミックレンジの低下を効果的に抑制できる匂い検出装置及び匂い検出方法が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の匂い検出装置の概略平面図である。
図2】検出部の断面構成を模式的に示す図である。
図3】ID駆動方式による検出部の動作例を示す図である。
図4】ICG駆動方式による検出部の動作例を示す図である。
図5】調整部の構成例を示す図である。
図6】匂い検出装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図7】第2実施形態の匂い検出装置の検出部の断面構成を模式的に示す図である。
図8】第3実施形態の匂い検出装置の検出部の断面構成を模式的に示す図である。
図9】第4実施形態の匂い検出装置の検出部の断面構成を模式的に示す図である。
図10図9に示される検出部5Aの動作例を示す図である。
図11】調整部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の匂い検出装置1の概略平面図である。図1の右部は、各検出部5に共通のレイアウト例を模式的に示している。図2は、図1におけるII-II線に沿った検出部5の断面構成を模式的に示す図である。匂い検出装置1は、イオンセンサ2と、イオンセンサ2上に設けられた物質吸着膜3と、電極4と、検知部6と、調整部7と、を備える。
【0022】
イオンセンサ2は、二次元状に配列された複数の検出部5が基板100上に形成されたセンサである。イオンセンサ2は、いわゆる電荷転送型のCMOSイメージセンサである。複数の検出部5は、イオンセンサ2のチップ上に設けられた画素形成領域R(本実施形態では、チップ中央部に設けられた矩形状の領域)に、M行N列(例えば256行256列)に二次元状に配列されることにより、画素アレイを構成している。M及びNは2以上の整数である。1つの検出部5は、1つの検出単位(画素)に対応している。1つの検出部5のサイズ(画素サイズ)は、例えば30μm×30μmである。
【0023】
各物質吸着膜3は、画素形成領域R内において、複数の検出部5に跨るように配置(成膜)されている。物質吸着膜3は、検出対象の匂い物質を吸着することにより状態(例えば電気的特性)を変化させる薄膜である。物質吸着膜3の検出対象となる匂い物質(すなわち、物質吸着膜3により検出可能な匂い物質)は、物質吸着膜3を構成する材料及び組成等によって異なる。ここで、「匂い」とは、人間、動物等の生物の嗅覚を刺激するものであり、「匂い物質」とは、匂いの原因となる化学物質(例えば、特定の分子単体又は分子群が所定の濃度で集合したもの)である。物質吸着膜3としては、例えばアンモニア等に対して感度を有するポリアニリン感応膜等が用いられ得る。画素形成領域R内に配置された検出部5のうち物質吸着膜3が設けられた検出部5が、匂いを検出可能な単位検出素子として機能する。なお、物質吸着膜3は、画素形成領域Rの全体(すなわち、画素形成領域Rに配置された全ての検出部5)に設けられてもよいし、物質吸着膜3が設けられない検出部5が存在してもよい。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態では、1つのチップ上に、互いに分離した複数(ここでは5つ)の物質吸着膜3が設けられている。1つのイオンセンサ2上に設けられる複数の物質吸着膜3は、同一の材料(例えばポリアニリン)の成分量(含有量)が互いに異なる複数の物質吸着膜であってもよいし、互いに異なる材料で形成された複数の物質吸着膜であってもよい。このように成分量又は材料が互いに異なる複数の物質吸着膜3を用いることにより、各物質吸着膜3の測定結果の組み合わせに基づいて、様々な匂い物質を検出することが可能となる。例えば、複数の物質吸着膜の測定結果の組み合わせと特定の匂い物質とを対応付けたテーブル情報(匂いデータベース)が予め用意されている場合、当該テーブル情報を参照することにより、複数の物質吸着膜3の各々の測定結果の組み合わせに対応する匂い物質を推定することが可能となる。
【0025】
図1及び図2に示されるように、各検出部5は、基板100の一方の主面側に形成されている。基板100は、例えばシリコンにより形成された第1導電型(一例として、n型)の半導体基板である。各検出部5において、基板100の主面に沿って、それぞれ第1導電型領域であるインジェクションダイオード部21(以下「ID部21」)、フローティングディフュージョン部31(以下「FD部31」)、及びリセットドレイン部41(以下「RD部41」)が形成されている。基板100のID部21とFD部31との間には、第2導電型(一例として、p型)の拡散層11が形成されている。拡散層11の表面には、第1導電型にドープされた第1導電型領域12が形成されている。
【0026】
基板100の主面上には、絶縁性の保護膜110を介して、インプットコントロールゲート電極22(以下「ICG部22」)、トランスファーゲート電極32(以下「TG部32」)、及びリセットゲート電極42(以下「RG部42」)が形成されている。保護膜110としては、例えばSiO等が用いられ得る。また、基板100の主面上には、FD部31に蓄積された電荷量に応じたout信号を増幅させるアンプ(信号増幅器)33と、アンプ33により増幅されたout信号を出力するソースフォロワ回路である出力回路34と、が設けられている。
【0027】
ICG部22とTG部32との間の領域には、保護膜110を介して感応膜13(イオン感応部)が設けられている。感応膜13は、感応膜13上に配置された物質吸着膜3の状態に応じて電位(膜電位)を変化させる性質を有するイオン感応膜である。感応膜13としては、例えばSi等が用いられ得る。本実施形態では、感応膜13は、ICG部22及びTG部32が物質吸着膜3と接触しないように、ICG部22及びTG部32の一部を覆うようにして、ICG部22からTG部32にかけてひとつながりに形成されている。ただし、感応膜13は、ICG部22とTG部32との間にのみ設けられてもよく、ICG部22及びTG部32の一部を覆わないように形成されてもよい。すなわち、感応膜13は、ICG部22とTG部32との間において、保護膜110上にのみ形成されてもよい。
【0028】
基板100の主面上に設けられたこれらの部材を覆うように、基板100の主面上には、絶縁性のパッシベーション層120が形成されている。パッシベーション層120としては、例えばSi等が用いられ得る。物質吸着膜3は、パッシベーション層120を覆うように設けられている。パッシベーション層120には、感応膜13の上面を外部に露出させるための開口120aが形成されている。感応膜13は、開口120aを介して物質吸着膜3と接触している。すなわち、物質吸着膜3の一部は、開口120aの内側に入りこんでおり、開口120aの内側において、物質吸着膜の基板100側の内面3aは、感応膜13と接触している。
【0029】
電極4は、物質吸着膜3に参照電圧Vrefを印加する。電極4の形状及び配置等は、特定の形態に限定されない。例えば、電極4は、物質吸着膜3よりも内側に配置される内蔵電極(例えば、CMOSプロセスによって形成されたメタル配線)であってもよい。或いは、電極4は、物質吸着膜3の外面3b(内面3aとは反対側の面)に沿って配置される外部電極(例えば、MEMSプロセスによって形成されたメンブレン構造(膜状)の電極)であってもよい。電極4は、物質吸着膜3に接触して電圧を印加することが可能な材料で形成されていればよい。電極4としては、例えばAl-Si-Cu等が用いられ得る。
【0030】
検知部6は、感応膜13の電位に応じたイオンセンサ2の出力信号であるout信号を監視する。そして、検知部6は、感応膜13の電位変化に応じたout信号の変化を検出することにより、匂い物質を検知する。具体的には、物質吸着膜3に一定の参照電圧Vrefを印加し続けることにより、以下のようにして匂い物質を検知することができる。感応膜13の電位変化が生じていない場合(すなわち、物質吸着膜3に匂い物質が吸着されていない場合)、out信号(電圧値)は、参照電圧Vrefに対応する基準電位(基準値)となる。従って、検知部6は、out信号として基準電位が出力されている間は、匂い物質が検出されていないと判断することができる。一方、物質吸着膜3に匂い物質が吸着され、物質吸着膜3の状態変化に応じた感応膜13の電位変化が生じると、当該電位変化に応じてout信号が変化する。従って、検知部6は、out信号と基準電位との差(変化量)に基づいて、匂い物質(すなわち、匂い物質が物質吸着膜3に吸着されたこと)を検知することができる。例えば、検知部6は、上記変化量が予め定められた閾値を超えたことを検知することにより、匂い物質を検知することができる。なお、検知部6は、上記電位変化に基づいて、匂いのある状態(物質吸着膜3に匂い物質が吸着された状態)から匂いが消えた状態に変化したことを検知してもよい。また、検知部6は、上記電位変化のパターン(例えば速度等)にも基づいて、匂い物質を推定してもよい。検知部6は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信デバイス等を備えたコンピュータ装置として構成され得る。
【0031】
次に、検出部5の機能構成及び動作原理について説明する。検出部5は、センシング部10と、供給部20と、移動・蓄積部30と、除去部40と、を備える。なお、本実施形態では、電荷は電子である。
【0032】
センシング部10は、パッシベーション層120の開口120aを介して感応膜13が外部に(すなわち、物質吸着膜3に対して)露出した領域である。より具体的には、センシング部10は、ICG部22とTG部32との間において、感応膜13が保護膜110を介して第1導電型領域12と対向する領域である。すなわち、センシング部10は、上述した拡散層11、第1導電型領域12、保護膜110及び感応膜13が積層されることによって構成されたセンシング領域である。物質吸着膜3が検出対象の匂い物質を吸着すると、物質吸着膜3の状態(例えばイオン濃度等)が変化する。そして、感応膜13において、当該物質吸着膜3の状態の変化に応じた電位変化が生じる。この感応膜13の電位変化に応じて、感応膜13と対向する拡散層11のポテンシャル井戸14の深さが変化する。
【0033】
供給部20は、上述したID部21及びICG部22により構成される。ID部21は、ポテンシャル井戸14に注入するための電荷を蓄積する部分である。ICG部22は、ID部21からポテンシャル井戸14への電荷注入量を制御する部分である。
【0034】
移動・蓄積部30は、TG部32及びFD部31により構成される。TG部32は、ポテンシャル井戸14からFD部31に電荷を転送するための部分である。FD部31は、ポテンシャル井戸14から転送された電荷を蓄積する部分である。具体的には、TG部32の電圧を変化させることにより、基板100においてTG部32と対向する領域(以下「TG領域」)の電位(ポテンシャル)を変化させ、ポテンシャル井戸14に充填された電荷をFD部31に転送及び蓄積することができる。
【0035】
除去部40は、RG部42及びRD部41により構成される。除去部40は、FD部31に蓄積された電荷をリセット(除去)するための部分である。具体的には、RG部42の電圧を変化させることにより、基板100においてRG部42と対向する領域(以下「RG領域」)の電位を変化させ、FD部31に蓄積された電荷をRD部41(VDD)へと排出することができる。
【0036】
次に、検出部5の動作例について説明する。図3は、ICG部22の電位を一定にした状態でID部21の電位を変化させることにより、ID部21からポテンシャル井戸14に電荷を注入する方式(以下「ID駆動方式」)の動作例を示している。図4は、ID部21の電位を一定にした状態でICG部22の電位を変化させることにより、ID部21からポテンシャル井戸に電荷を注入する方式(以下「ICG駆動方式」)の動作例を示している。
【0037】
(ID駆動方式)
図3を参照して、ID駆動方式について説明する。まず、図3の(A)に示されるように、物質吸着膜3が匂い物質を吸着して当該物質吸着膜3の状態変化が生じると、当該物質吸着膜3の直下に位置する感応膜13の電位変化が生じ、当該電位変化に応じてポテンシャル井戸14の深さが変化する。続いて、図3の(B)に示されるように、ID部21の電位が下げられることにより、ID部21に電荷が蓄積される。ID部21に蓄積された電荷は、基板100においてICG部22と対向する領域(以下「ICG領域」)を超えて、ポテンシャル井戸14へと注入される。このとき、TG領域の電位は、ID部21の電位よりも低くなるように制御される。従って、ポテンシャル井戸14へ注入される電荷がTG領域を超えてFD部31に達することはない。
【0038】
続いて、図3の(C)に示されるように、ID部21の電位が元に戻される(引き上げられる)ことにより、ID部21から電荷が引き抜かれる。その結果、予め設定されたICG領域の電位の高さで摺り切られた電荷がポテンシャル井戸14に残る。ポテンシャル井戸14に残された電荷量は、ポテンシャル井戸14の深さに対応している。
【0039】
続いて、図3の(D)に示されるように、TG部32の電圧が上げられることにより、ポテンシャル井戸14に残された電荷がFD部31に転送される。その後、TG部32の電圧が元に戻されることにより、図3の(E)に示される状態となる。このような状態において、FD部31に蓄積された電荷量に応じたout信号が、アンプ33及び出力回路34を介して検知部6に出力される。これにより、検知部6において、物質吸着膜3において検出された匂い(すなわち、物質吸着膜3に吸着された匂い物質)が、out信号の基準電位からの変化量に基づいて検知される。続いて、図3の(F)に示されるように、RG部42の電圧が上げられることにより、FD部31に蓄積された電荷がRD部41に排出される。RD部41は、VDD電源に接続されている。これにより、RD部41において、負にチャージされた電荷が吸い上げられる。
【0040】
なお、上述した図3の(B)~(E)の動作は、複数回繰り返されてもよい。これにより、FD部31に蓄積される電荷量を増大させ、繰り返し回数だけout信号を増幅させることができる。また、このような繰り返し動作によってout信号を増幅させることにより、アンプ33が省略されてもよい。図3の(B)~(E)を繰り返す動作(累積動作)を実行することにより、分解能の向上を図ることができる。上記累積動作は、特に、匂い検出装置1のように瞬間的な状態変化が生じ難い匂いセンサにおいて有効である。また、CMOSイメージセンサであるイオンセンサ2によれば、後述する第4実施形態のISFET型のイオンセンサ2Aよりも高速な読み出しが可能であるため、上記累積動作を行ったとしても好適に匂い検出を行うことができる。なお、累積回数(繰り返し回数)をN回にするとゲインがN倍になるが、例えば後述するゲイン調整部72でゲインを1/N倍に調整したり、後述するフィードバック回路71に含まれる容量部C1,C2の比率を調整したりすればよい。
【0041】
(ICG駆動方式)
次に、図4を参照して、ICG駆動方式について説明する。ICG駆動方式は、図3の(A)~(C)の動作を図4の(A)~(C)の動作に置き換えたものである。まず、図4の(A)に示されるように、ID部21の電位は、ポテンシャル井戸14の電位よりも低く且つTG領域の電位よりも高い一定の値に設定される。一方、ICG領域の電位は、ID部21の電位よりも低くされる。続いて、図4の(B)に示されるように、ICG領域の電位をポテンシャル井戸14の電位よりも高くすることにより、ID部21からポテンシャル井戸14へと電荷が供給される。続いて、図4の(C)に示されるように、再びICG領域の電位をID部21の電位よりも低くすることにより、予め設定されたID部21の電位の高さまでの電荷がポテンシャル井戸14に残る。以上により、ポテンシャル井戸14にID部21と同等の電位の電荷が蓄積される。ICG駆動方式におけるその後の動作は、図3の(D)~(F)の動作と同様である。
【0042】
次に、調整部7について説明する。調整部7は、イオンセンサ2を駆動させるための駆動信号を調整する。ここで、駆動信号は、上述したように検出部5を動作させてout信号の計測(匂い計測)を行うために必要となる入力信号である。本実施形態では、駆動信号は、電極4が物質吸着膜3に印加する参照電圧Vrefである。調整部7は、イオンセンサ2のCMOSチップ内の各画素(検出部5)に設けられてもよいし、行単位、列単位又は特定のエリア単位に設けられてもよい。また、調整部7は、CMOSチップ外の図示しない制御基板等に設けられてもよい。この場合、調整部7と電極4との間には、信号処理回路等が設けられてもよい。また、単一の調整部7を複数画素に共通の調整部7として用いる場合、各画素の出力回路34と当該調整部7との間には、画素選択回路、バッファアンプ等が設けられてもよい。
【0043】
まず、調整部7による駆動信号の調整が必要となる理由について説明する。上述したように、検知部6は、out信号と予め定められた基準電位との差に基づいて、匂い物質を検知する。つまり、検知部6は、物質吸着膜3に一定の参照電圧Vrefを印加し続けた場合、物質吸着膜3に匂い物質が吸着されていない状態(以下「標準状態」という。)におけるout信号が基準電位とほぼ一致し、物質吸着膜3に匂い物質が吸着されている状態におけるout信号が基準電位から比較的大きくずれるという特性に基づいて、匂い物質を検知する。従って、匂い物質の検知を適切且つ高精度に行うためには、標準状態におけるout信号が基準電位とほぼ一致するという前提条件が満たされていなければならない。しかし、実際には、匂い検出装置1による測定を長期間(例えば数時間以上)継続した場合、イオンセンサ2の周囲の環境(例えば、温度、湿度等)の経時的な変化に起因して、出力ドリフトが生じ得る。そして、このような出力ドリフトの影響により、標準状態におけるout信号が、予め定めた基準電位から徐々に大きくずれてしまう場合がある。そこで、調整部7は、標準状態におけるout信号と基準電位との差(オフセット)が減少するように(理想的には、オフセットが0になるように)、駆動信号(本実施形態では、参照電圧Vref)を調整する。
【0044】
図5は、調整部7の構成例を示す図である。調整部7は、フィードバック回路71(第1調整部)と、ゲイン調整部72(第2調整部)と、を有する。フィードバック回路71は、out信号を入力し、out信号のオフセット方向とは逆方向に調整された信号をゲイン調整部72に出力する。本実施形態では一例として、フィードバック回路71は、out信号のオフセット方向とは逆方向に、out信号のオフセットと同じ大きさだけ調整された信号を出力するように構成されている。
【0045】
フィードバック回路71は、スイッチSW1と、容量部C1と、積分回路(アンプA、容量部C2、及びスイッチSW2)とをout信号の入力側からこの順に直列的に接続した回路である。容量部C2及びスイッチSW2は、互いに並列的に接続されて、アンプAの入力端と出力端との間に向けられている。スイッチSW2がオン状態であるときに、容量部C2の電荷蓄積が初期化され、フィードバック回路71はアンプAの入力電圧に対応する電圧値を出力する。一方、スイッチSW2がオフ状態であるときに、容量部C2は電荷を蓄積し、フィードバック回路71は容量部C2における電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する。このようなフィードバック回路71によれば、スイッチSW1をオン状態にすることにより、out信号のオフセット方向とは逆方向に調整された信号を出力することができ、スイッチSW2をオフ状態にすることにより、調整された信号を維持したまま出力することができる。
【0046】
ゲイン調整部72は、フィードバック回路71により出力された信号のゲインを調整することにより、駆動信号を生成する。ゲイン調整部72により出力された駆動信号は、電極4に入力される。ここで、out信号と駆動信号との関係は、必ずしも1:1の関係になるとは限らない。すなわち、駆動信号(電圧)を高く(又は低く)した同じ量だけout信号が高く(又は低く)なるとは限らない。例えば、out信号を「v1」だけ高くするために駆動信号を「v1×a」だけ高くする必要があるといった関係が成立する場合が考えられる。ゲイン調整部72は、予め把握されたout信号と駆動信号との関係に応じて、フィードバック回路71から出力された信号を調整することにより、最終的な駆動信号を得る。なお、out信号と駆動信号との関係が1:1である場合等、フィードバック回路71から出力された信号をそのまま駆動信号として用いることができる場合には、ゲイン調整部72は省略されてもよい。
【0047】
調整部7の動作について、図6に示されるタイミングチャートを参照して詳細に説明する。なお、図6に示されるタイミングチャートは、上述したICG駆動方式によりout信号を取り出す場合の例である。また、ここでは説明を簡単にするために、ゲイン調整部72が省略されている。すなわち、フィードバック回路71から出力される信号が、そのまま駆動信号(Vref)として利用される。
【0048】
期間P1は、スイッチSW1をオン状態としてout信号をフィードバック回路71に入力することで、駆動信号の調整を行うフィードバック期間である。期間P1における駆動信号の調整は、標準状態において実施される。図6の例では、ICG駆動方式により取り出されたout信号(出力電圧)に基準電位からのオフセット成分OC(正方向のずれ)が含まれている。フィードバック回路71において、out信号を入力する際にスイッチSW2をオフ状態にしておくことで、out信号のオフセット成分OCをキャンセルするように調整された駆動信号が得られる。すなわち、駆動信号は、out信号のオフセット方向とは逆方向に、out信号のオフセット成分OCと同じ大きさだけずらされる。なお、図6の例では、2フレーム(ICG駆動方式による2回分のout信号の取り出し)で駆動信号の調整が行われているが、1フレーム又は3フレーム以上で駆動信号の調整が行われてもよい。
【0049】
期間P2は、調整された駆動信号を用いて匂い計測を行う計測期間である。具体的には、駆動信号の調整を行った後、スイッチSW1及びスイッチSW2をオフ状態とし続けることにより、調整後の駆動信号が維持される。すなわち、調整部7(フィードバック回路71)は、調整後の駆動信号を出力し続ける。これにより、out信号からオフセット成分OCが除外される。その結果、標準状態において、out信号として基準電位が出力され続けることになる。具体的には、本実施形態では、駆動信号である参照電圧Vrefが上記のように調整されることにより、センシング部10のポテンシャル井戸14の電位が調整される。これにより、out信号のオフセット成分OCがキャンセルされるように、ポテンシャル井戸14に充填される電荷量が調整される。例えば、図6に示される例のように、out信号が正方向(電圧が大きくなる方向(=FD部31から取り出される電荷量が減る方向))のオフセット成分OCを含む場合には、調整部7によって参照電圧Vrefが低くなるように調整される。その結果、ポテンシャル井戸14の電位が上がり、ポテンシャル井戸14に充填されてFD部31から取り出される電荷量が増えるように調整される。これにより、out信号のオフセット成分OCが抑えられる。なお、図6の例では、期間P2において匂い物質が検出されておらず、標準状態が維持されている。
【0050】
以上述べた匂い検出装置1は、イオンセンサ2のout信号のオフセットを減少させるように、イオンセンサ2を駆動させるための駆動信号(本実施形態では参照電圧Vref)を調整する調整部7を備える。従って、上述したように、例えば標準状態で調整部7によって駆動信号を調整することにより、out信号のオフセット成分OCを減少させることができる。そして、イオンセンサ2に対する入力信号である駆動信号を調整することにより、out信号のオフセット成分OCを抑制できる。従って、匂い検出装置1によれば、out信号のオフセット成分OCに起因するダイナミックレンジの低下を抑制できる。すなわち、out信号のオフセット成分OCを当該out信号に対する事後的な補正により取り除く場合と比較して、出力のダイナミックレンジを大きくすることができる。
【0051】
また、調整部7は、out信号に基づいて駆動信号を調整する第1動作モードと、第1動作モードにおいて調整された駆動信号を維持する第2動作モードと、を切り替え可能に構成されている。本実施形態では、上述したフィードバック期間(期間P1)における動作(すなわち、スイッチSW1をオン状態とし、out信号を入力する際にスイッチSW2をオフ状態として駆動信号を調整する動作)が、上記第1動作モードに相当する。また、上述した計測期間(期間P2)における動作(すなわち、スイッチSW1,SW2をオフ状態とし、調整後の駆動信号を維持する動作)が、上記第2動作モードに相当する。上記構成によれば、駆動信号を調整するための第1動作モードと、調整された駆動信号を利用して匂い検出を行う第2動作モードとを、状況に応じて適切に切り替えることができる。また、本実施形態では、スイッチSW1,SW2の切替処理によって、第1動作モード及び第2動作モードを簡単に切り替えることができる。
【0052】
また、匂い検出装置1は、物質吸着膜3に参照電圧Vrefを印加する電極4を備え、調整部7により調整される対象となる駆動信号は、参照電圧Vrefである。上記構成によれば、物質吸着膜3に印加される参照電圧Vrefを調整することで、out信号のオフセット成分OCを好適に抑制できる。
【0053】
また、上述したように、調整部7は、フィードバック回路71に加えて、ゲイン調整部72を有し得る。上記構成によれば、フィードバック回路71によってout信号のオフセットを減少させる方向に調整されると共に、ゲイン調整部72によって適切な大きさに調整された駆動信号を得ることができる。
【0054】
なお、調整部7による駆動信号の調整は、イオンセンサ2に含まれる全画素に対して一括で行われてもよい。例えば、全画素に対して共通に設けられた調整部7が、複数画素の各々のout信号を取得し、それらを統計処理することで得られる信号(例えば複数画素の各々のout信号を平均した信号)に基づいて駆動信号を調整してもよい。この場合、イオンセンサ2に電極4及び調整部7をそれぞれ1つだけ設ければよいため、回路規模を小さくすることができる。
【0055】
また、調整部7による駆動信号の調整は、任意の画素グループ単位で行われてもよい。画素グループとは、それぞれ独立した感応膜13を有する一以上の画素を有する単位である。本実施形態では一例として、同一の物質吸着膜3に対応する複数の画素(検出部5)が、1つの画素グループを形成している。つまり、物質吸着膜3が、画素グループ毎に設けられている。本実施形態では、イオンセンサ2は、5つの画素グループを有している。この場合、調整部7は、画素グループ毎に設けられる。また、調整部7から出力される駆動信号を入力する対象(ここでは電極4)も、画素グループ毎に設けられる。そして、一の画素グループに設けられた調整部7は、当該一の画素グループに含まれる各画素のout信号に基づいて、当該一の画素グループに含まれる各画素に共通の駆動信号を調整する。このように、画素グループ毎に駆動信号を調整することにより、イオンセンサ2に含まれる全画素に対して一括で駆動信号を調整する場合と比較して、画素グループ毎の特性に応じて駆動信号を個別に調整することが可能となる。特に、本実施形態のように複数(5つ)の異なる物質吸着膜3を設けた場合、上述した出力ドリフト等に起因する特性変化は物質吸着膜3毎に異なり得る。このため、物質吸着膜3毎に異なる大きさのオフセット成分OCが生じ得る。従って、複数の画素グループに対して共通の調整部7によって駆動信号を調整することは好ましくない。一方、上述したように画素グループ毎に駆動信号を調整することにより、物質吸着膜3毎の特性に応じて、駆動信号を適切に調整することができる。
【0056】
次に、匂い検出装置1による匂い検出方法について説明する。まず、匂い検出装置1を検出対象の匂い物質が存在しない雰囲気下に配置した状態で、イオンセンサ2のout信号を取得し、当該out信号における基準電位からのオフセットが減少するように、駆動信号を調整する(第1ステップ)。すなわち、第1ステップの処理は、上述した標準状態におけるout信号に基づいて、図6に示した期間P1のような駆動信号の調整を行う処理である。匂い検出装置1を匂い物質が存在しない雰囲気下に配置する方法は特に限定されない。例えば、第1ステップの処理は、内部の空気の吸引及び内部への任意の空気の導入の両方を行うことが可能なように構成された閉空間内に匂い検出装置1を配置し、当該閉空間内の空気を吸引した後、匂い物質が含まれていない清浄な空気を当該閉空間内に導入することにより実現されてもよい。
【0057】
続いて、第1ステップにおいて調整された駆動信号を維持した状態で、匂い検出装置1に対して検査対象となる空気を導入する(第2ステップ)。本実施形態では、調整部7の動作モードが、図6に示した期間P1に対応する第1動作モードから期間P2に対応する第2動作モードに切り替えられる。これにより、調整部7が電極4に対して調整後の駆動信号(参照電圧Vref)を入力し続けることになる。匂い検出装置1に対して検査対象となる空気を導入する方法は特に限定されない。例えば、上述した閉空間内に匂い検出装置1を配置した状態で当該閉空間内の空気を吸引し、その後、検査対象となる空気を当該閉空間内に導入すればよい。
【0058】
続いて、第2ステップの後に取得されたイオンセンサのout信号に基づいて、匂い物質を検出する(第3ステップ)。本実施形態では、上述したように、検知部6が当該out信号の出力値と基準電位との差(変化量)に基づいて匂い物質を検知する。
【0059】
上記匂い検出方法によれば、匂い物質が存在しない雰囲気下(すなわち、イオンセンサ2のout信号が基準電位と一致することが理想的とされる環境下)で、適切に駆動信号を調整することができる。そして、調整された駆動信号を用いて匂い検出を行うことにより、out信号のオフセット成分OCを抑制できる。従って、上記匂い検出方法によれば、out信号のオフセット成分OCに起因するダイナミックレンジの低下を効果的に抑制できる。
【0060】
また、上述した第2ステップの処理が実行されてから予め定められた期間が経過した後に、第1ステップの処理を再度実行してもよい。一旦駆動信号を調整したとしても、その後、時間の経過と共に、イオンセンサ2の周囲の環境(例えば、温度、湿度等)の経時的な変化に起因して、out信号のオフセット成分OCが徐々に大きくなる。上記構成によれば、定期的に駆動信号の調整を行うことで、out信号のオフセット成分OCを一定以下に抑えた状態で匂い検出を継続的に実施することが可能となる。
【0061】
なお、上記実施形態では、匂い物質が存在しない状態から匂い物質が存在する状態に変化したことを検知する場合に着目して説明したが、匂い検出装置1を用いた匂い検出方法によれば、匂い物質が存在する状態(匂い物質が充満した状態)を基準として、当該状態から匂い物質が減少していく状態を検知(観測)することも可能である。
【0062】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の匂い検出装置1Aの検出部5の断面構成を模式的に示す図である。匂い検出装置1Aでは、イオンセンサ2は、上述したICG駆動方式(図4)により各検出部5を動作させるように構成されている。また、図7に示されるように、匂い検出装置1Aは、参照電圧Vrefを調整する調整部7の代わりに、ID部21に印加される電圧を調整する調整部7Aを備える点で、匂い検出装置1と相違している。すなわち、匂い検出装置1Aでは、ID部21に印加される電圧が、out信号のオフセットが減少するように調整される対象の駆動信号として用いられる。
【0063】
調整部7Aの構成及び動作は、図5及び図6における「Vref」を「ID部21に印加される電圧」に置き換えたものと同様である。なお、匂い検出装置1Aでは、調整部7Aとは異なる電源から電極4に参照電圧Vrefが入力される。
【0064】
匂い検出装置1Aによれば、out信号のオフセット成分OCがキャンセルされるように、ID部21に印加される電圧(すなわち、ID部21の電位)が調整される。例えば、図6に示される例のように、out信号が正方向(電圧が大きくなる方向(=FD部31から取り出される電荷量が減る方向))のオフセット成分OCを含む場合には、調整部7AによってID部21の電位が低くなるように調整される。その結果、ポテンシャル井戸14に充填されてFD部31から取り出される電荷量が増えるように調整される。これにより、out信号のオフセット成分OCが抑えられる。
【0065】
匂い検出装置1Aによれば、ID部21の電位を一定にした状態でICG部22の電位を変化させてポテンシャル井戸14に電荷を注入するように構成されたイオンセンサ2において、電荷の注入量を決定するID部21の電圧を調整することで、out信号のオフセット成分OCを好適に抑制できる。
【0066】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の匂い検出装置1Bの検出部5の断面構成を模式的に示す図である。匂い検出装置1Bでは、イオンセンサ2は、上述したID駆動方式(図3)により各検出部5を動作させるように構成されている。また、図8に示されるように、匂い検出装置1Bは、参照電圧Vrefを調整する調整部7の代わりに、ICG部22に印加される電圧を調整する調整部7Bを備える点で、匂い検出装置1と相違している。すなわち、匂い検出装置1Bでは、ICG部22に印加される電圧が、out信号のオフセットが減少するように調整される対象の駆動信号として用いられる。
【0067】
調整部7Bの構成及び動作は、図5及び図6における「Vref」を「ICG部22に印加される電圧」に置き換えたものと同様である。なお、匂い検出装置1Bでは、調整部7Bとは異なる電源から電極4に参照電圧Vrefが入力される。
【0068】
匂い検出装置1Bによれば、out信号のオフセット成分OCがキャンセルされるようにICG部22に印加される電圧(すなわち、ICG領域のポテンシャル)が調整される。例えば、図6に示される例のように、out信号が正方向(電圧が大きくなる方向(=FD部31から取り出される電荷量が減る方向))のオフセット成分OCを含む場合には、調整部7BによってICG領域の電位が低くなるように調整される。その結果、ポテンシャル井戸14に充填されてFD部31から取り出される電荷量が増えるように調整される。これにより、out信号のオフセット成分OCが抑えられる。
【0069】
上記構成によれば、ICG部22の電位を一定にした状態でID部21の電位を変化させてポテンシャル井戸14に電荷を注入するように構成されたイオンセンサ2において、いわゆる電荷の摺り切り高さを決定するICG部22の電圧を調整することで、out信号のオフセット成分OCを好適に抑制できる。
【0070】
なお、ID駆動方式の摺り切り動作(すなわち、図3の(B)~(C)の動作)には、比較的多くの時間がかかる。このため、1サイクル当たりの検出動作をなるべく高速化する観点からは、ICG駆動方式を採用した上で、参照電圧Vrefを調整する第1実施形態、又はID部21に印加される電圧を調整する第2実施形態を採用することが好ましい。さらに、電極4を画素グループ毎に分離することが困難な場合(例えば、電極4を上述した外部電極として構成する場合等)であって、且つ画素グループ毎に駆動信号の調整を行いたい場合には、ID部21を画素グループ毎に設けた上で、第2実施形態を採用することが好ましい。
【0071】
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態の匂い検出装置1Cの検出部5Aの断面構成を模式的に示す図である。匂い検出装置1Cは、いわゆる電荷転送型のCMOSイメージセンサであるイオンセンサ2に代えて、いわゆるISFET型のイオンセンサ2Aを備える点で、匂い検出装置1と相違している。その他の構成については、匂い検出装置1と同様である。イオンセンサ2Aは、単位検出素子(画素)として、電荷転送型の測定方式が採用された検出部5に代えてISFET型の測定方式が採用された検出部5Aを備える点で、イオンセンサ2と相違している。
【0072】
検出部5Aでは、基板100の一方の主面側に、3つの第1導電型(ここではn型)のn型領域131~133が形成されている。また、基板100の主面上には、絶縁性の保護膜110を介して、2つのゲート電極134,135が形成されている。ゲート電極134は、n型領域131とn型領域132との間に位置している。n型領域131、n型領域132及びゲート電極134により、MOSトランジスタが構成されている。n型領域131には、図示しない制御部からID信号(電圧)が与えられる。ゲート電極135は、n型領域132とn型領域133との間に位置している。ゲート電極135には、図示しない制御部からTG信号(電圧)が与えられる。n型領域133は、検知部6と電気的に接続されている。感応膜13が載置される導電部材136が、導電性の接続部材137を介してゲート電極134と電気的に接続されている。導電部材136上に感応膜13が設けられた部分が、センシング部10Aとして機能する。センシング部10Aは、後述するパッシベーション層120の開口120aを介して感応膜13が外部に(すなわち、物質吸着膜3に対して)露出した領域である。導電部材136は、例えば、感応膜13と物質吸着膜3とが対向する対向方向Dから見て、感応膜13とほぼ同じ大きさの矩形状をなしている。導電部材136の上面に感応膜13が成膜されている。
【0073】
第1実施形態の検出部5と同様に、上述したような基板100の主面上に設けられた部材を覆うように、基板100の主面上には、絶縁性のパッシベーション層120が形成されている。また、物質吸着膜3は、パッシベーション層120を覆うように設けられている。パッシベーション層120には、感応膜13の上面を外部に露出させるための開口120aが形成されている。感応膜13は、開口120aを介して物質吸着膜3と接触している。物質吸着膜3には、電極4によって基準電圧が印加されている。なお、図9の例では、感応膜13の上面は、パッシベーション層120の上面よりも基板100側に窪んだ位置に位置しているが、感応膜13は、感応膜13の上面がパッシベーション層120における開口120aが形成されていない部分と連続するように(フラットに接続されるように)設けられてもよい。
【0074】
次に、検出部5Aの動作原理について説明する。物質吸着膜3に匂い物質が吸着すると、物質吸着膜3の特性変化が生じ、これに応じて感応膜13の膜電位が変化する。その結果、感応膜13と電気的に接続されたゲート電極134の電位が変化する。物質吸着膜3において検出された匂い(すなわち、物質吸着膜3に吸着された匂い物質)は、このようなゲート電極134の電位変化に応じた出力信号(out信号)と基準電位との差に基づいて検知される。以下、検出部5Aの動作(駆動方法)の一例について説明する。
【0075】
本実施形態では一例として、イオンセンサ2Aは、概略的には、基板100においてゲート電極134と対向する領域(以下「ゲート領域」)を、上述した電荷転送型の検出部5におけるICG領域として機能させると共に、n型領域132を、検出部5におけるFD部31として機能させる方式により、匂いを検知する。図10を参照して、検出部5Aの動作例について詳細に説明する。図10の(A)に示されるように、ゲート領域のポテンシャル井戸の深さは、感応膜13の電位変化に応じて変化する。図10の(B)に示されるように、ID信号を制御することにより、n型領域131(図10における「ID」)の電位が下げられる。これにより、n型領域131に電荷が蓄積される。n型領域131に蓄積された電荷は、ゲート領域を超えてn型領域132へと注入される。このとき、TG領域の電位は、n型領域131の電位よりも低くなるように制御される。従って、n型領域132へ注入される電荷がTG領域を超えてn型領域133(図10における「out」)に達することはない。
【0076】
続いて、図10の(C)に示されるように、n型領域131の電位が元に戻される(引き上げられる)ことにより、n型領域131から電荷が引き抜かれる。その結果、ゲート領域によって摺り切られた電荷がn型領域132に残る。n型領域132に残された電荷量は、ゲート領域のポテンシャル井戸の深さに対応している。
【0077】
続いて、図10の(D)に示されるように、ゲート電極135の電圧が上げられることにより、n型領域132に残された電荷がn型領域133に転送される。その後、ゲート電極135の電圧が元に戻されることにより、図10の(E)に示される状態となる。このような状態において、n型領域133に蓄積された電荷量に応じた信号(すなわち、感応膜13の電位に応じた信号)がout信号として検知部6及び調整部7Cに出力される。
【0078】
調整部7Cは、調整部7と同様に、out信号に基づいて参照電圧Vref(駆動信号)を調整する。調整部7Cの構成及び動作は、調整部7の構成(図5)及び動作(図6)と同様である。匂い検出装置1Dによれば、駆動信号である参照電圧Vrefが上記のように調整されることにより、上述したゲート領域の電位が調整される。これにより、out信号のオフセット成分OCがキャンセルされるように、n型領域132に残される電荷量が調整される。例えば、図6に示される例のように、out信号が正方向(電圧が大きくなる方向(=n型領域132から取り出される電荷量が減る方向))のオフセット成分OCを含む場合には、調整部7Cによって参照電圧Vrefが低くなるように調整される。その結果、上述したゲート領域の電位が下がり、n型領域132から取り出される電荷量が増えるように調整される。これにより、out信号のオフセット成分OCが抑えられる。
【0079】
以上、本開示の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本開示は上記実施形態に限定されない。例えば、イオンセンサ2A,2Bにおいて、複数の検出部は、二次元状に配列されてもよいし、一次元状に配列されてもよい。また、イオンセンサは、1つの検出部のみを有してもよい。また、基板100は必ずしも半導体基板でなくてもよく、例えば表面に半導体領域(例えば半導体膜等)が形成された半導体以外の基板であってもよい。
【0080】
また、上述したように、図5に示した調整部7の構成によれば、スイッチSW2がオン状態であるときに、容量部C2の電荷蓄積が初期化され、フィードバック回路71は、アンプAの入力電圧に対応する電圧値を出力することができる。よって、調整部7において、スイッチSW2をオン状態にしてアンプAの入力電圧を手動で調整することにより、フィードバック回路71の出力(駆動信号)を調整することもできる。すなわち、スイッチSW2の切替処理によって、上述したout信号に基づく駆動信号の調整(フィードバック調整)と、上述した駆動信号の手動調整とを簡単に切り替えることができる。
【0081】
また、上述したように、図5に示される調整部7(及び調整部7A,7B,7C)は、ゲイン調整部72を必ずしも備える必要はない。例えば、フィードバック回路71を適切に設計することにより、ゲイン調整部72を省略することが可能である。例えば、第1導電型領域12の容量をCsens、FD部31の容量をCfd、アンプ33のゲインをGsfと表した場合(図2参照)、下記式(1)を満たすように容量部C1及び容量部C2の容量を設定することにより、ゲイン調整部72を省略することが可能となる。
容量部C1の容量:容量部C2の容量=Gsf×Csens:Cfd …(1)
【0082】
また、図11に示されるように、調整部7は、フィードバック回路71の代わりにフィードバック回路71Aを有してもよい。フィードバック回路71Aは、容量部C1の代わりに抵抗R1を有し、容量部C2の代わりに抵抗R2を有している。また、フィードバック回路71Aは、スイッチSW1から入力される信号線と基準電位との間に並列に設けられたホールド容量部C3を有している。フィードバック回路71Aでは、ホールド容量部C3に蓄えられた電荷が電圧に変換され、反転増幅回路(アンプA及び抵抗R2が並列接続された部分)に入力される。この場合には、下記式(2)を満たすように抵抗R1及び抵抗R2の抵抗値を設定することにより、ゲイン調整部72を省略することが可能となる。
抵抗R1の抵抗値:抵抗R2の抵抗値=Gsf×Csens:Cfd …(2)
【符号の説明】
【0083】
1,1A,1B,1C…匂い検出装置、2,2A,2B…イオンセンサ、3…物質吸着膜、4…電極、5,5A…検出部(画素)、7,7A,7B,7C…調整部、13…感応膜(イオン感応部)、14…ポテンシャル井戸、21…ID部、22…ICG部、71…フィードバック回路(第1調整部)、72…ゲイン調整部(第2調整部)。
図1
図2
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図7
図8
図9
図10
図11