(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】対象物の課題の解決に適したソリューションを公募するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20241031BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20241031BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2020142385
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚登
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188030(JP,A)
【文献】特開2003-006319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介してアクセス可能な1又は複数のコンピュータ
を含むサーバによって実行される方法であって、
前記通信ネットワークを介してアップロードされる対象物の時系列的な状態を示す対象物データを取得することと、
前記通信ネットワークを介してアップロードされる前記対象物データに付されるラベルを取得することと、
前記通信ネットワークを介してアップロードされる前記対象物に対する課題を取得することと、
前記対象物データと前記ラベルとは、前記サーバからダウンロード可能であり、前記対象物データと前記ラベルと前記課題とをウェブサイト上で公開して、
前記通信ネットワークを介して、前記課題へのソリューションを公募することと、
前記ソリューションのソフトウェアのアップロードを受け付けること、
を備え
、
前記ソリューションのソフトウェアは、前記サーバからダウンロード可能である、
方法。
【請求項2】
前記ラベルは、前記対象物の状態の分類を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分類は、前記対象物の正常と異常とを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象物は、工作機械である、
請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
対象物の時系列的な状態を示す対象物データを記録するデータロガーと、
前記対象物データに付されるラベルと前記対象物に対する課題とを受け付けるユーザコンピュータと、
通信ネットワークを介して前記対象物データと前記ラベルと前記課題を取得し、前記対象物データと前記ラベルと前記課題とをウェブサイト上で公開して、前記課題へのソリューションを公募するサーバと、
を備え
、
前記対象物データと前記ラベルとは、前記サーバからダウンロード可能であり、
前記サーバは、前記ソリューションのソフトウェアのアップロードを受け付け、
前記ソリューションのソフトウェアは、前記サーバからダウンロード可能である、
システム。
【請求項6】
前記ラベルは、前記対象物の状態の分類を含む、
請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記分類は、前記対象物の正常と異常とを含む、
請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記対象物は、工作機械である、
請求項
5から7のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物の課題の解決に適したソリューションを公募するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業機械などの対象物にIIoT(Industrial Internet of Things)を接続し、対象物への予防保全などのサービスに供されるシステムが提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】M.Pellino et al.、産業用IoTソフトウェアプラットフォーム、2019年第4Q、Forrester Wave、p.9 ll.1-13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物のユーザが、対象物に関する課題に対して、自らがソリューションを創出することは容易ではない。また、ユーザが、他者のソリューションから課題に適したものを探そうとしても、他者のソリューションの情報を知らない場合がある。そのため、ユーザが、課題の解決に適したソリューションを得ることは容易ではない。本開示の目的は、ユーザが、対象物の課題の解決に適したソリューションを容易に得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る方法は、1又は複数のコンピュータによって実行される方法であって、以下の処理を備える。第1の処理は、対象物の時系列的な状態を示す対象物データを取得することである。第2の処理は、対象物データに付されるラベルを取得することである。第3の処理は、対象物に対する課題を取得することである。第4の処理は、対象物データとラベルと課題とをウェブサイト上で公開して、課題へのソリューションを公募することである。なお、各処理の実行の順序は、上記の順序に限らず、変更されてもよい。
【0006】
本開示の他の態様に係るシステムは、データロガーと、ユーザコンピュータと、サーバとを備える。データロガーは、対象物の時系列的な状態を示す対象物データを記録する。ユーザコンピュータは、対象物データに付されるラベルと、対象物に対する課題とを受け付ける。サーバは、通信ネットワークを介して対象物データとラベルと課題を取得する。サーバは、対象物データとラベルと課題とをウェブサイト上で公開して、課題へのソリューションを公募する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ユーザが、対象物の課題の解決に適したソリューションを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】公募プラットフォームによるソリューションを募集する仕組みを示す模式図である。
【
図3】公募プラットフォームの募集用の画面の一例を示す図である。
【
図5】公募プラットフォームのラベルの入力画面の一例を示す図である。
【
図6】公募プラットフォームの応募用の画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。本実施形態に係るシステム1は、対象物の課題の解決に適したソリューションを公募するためのシステムである。システム1は、対象物に関する課題をウェブサイト上で公開し、ソリューションを公募する。
図1は、システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、システム1は、データロガー2と、ユーザコンピュータ3と、サーバ4とを含む。
【0010】
データロガー2は、対象物5に接続される。本実施形態において、対象物5は、研削盤、マシニングセンタなどのCNC(Computerized Numerical Control)工作機械である。対象物5は、本体11と、センサ12と、コントローラ13とを含む。本体11は、例えば駆動機構と、駆動機構によって動作する工具とを含む。駆動機構は、モータと、モータによって駆動される主軸を含む。
【0011】
センサ12は、対象物5の状態を示す複数の状態パラメータを検出する。状態パラメータの値は、対象物5の使用に応じて変化する。状態パラメータの値は、時間の経過に応じて変化する。状態パラメータは、例えば、主軸負荷、主軸回転速度、及び送り速度を含む。コントローラ13は、本体11の動作を制御する。コントローラ13は、NC(Numerical Control)プログラムを記憶しており、NCプログラムに従って、本体11を制御する。
【0012】
データロガー2は、対象物5と無線、或いは有線によって接続されている。データロガー2は、記憶装置14と通信モジュール15とを含む。記憶装置14は、電子データを記憶する。記憶装置14は、例えばHDDなどの磁気記録装置、SSDなどの半導体記録装置、或いは、光学的記録装置であってもよい。通信モジュール15は、無線、或いは有線によって、通信ネットワークに接続される。通信モジュール15は、インターネットなどの通信ネットワークを介して外部のコンピュータと通信を行う。
【0013】
データロガー2は、対象物5とデータ通信を行い、対象物5からNCプログラムと、そのNCプログラムによる制御下の状態パラメータを受信する。NCプログラムには、プログラム識別のためのプログラム番号(Oコード)と、プログラムを見やすくするための行番号(Nコード)とが含まれる。データロガー2は、状態パラメータが検出された時刻と、状態パラメータと、検出された時刻に実行中のNCプログラムのプログラム番号及び行番号とを、対象物データDとして記録する。対象物データDは、対象物5の時系列的な状態を示す。対象物データDは、一定の時間間隔で検出された対象物の複数の状態パラメータの値と、検出時刻とを含む。なお、データロガー2は、対象物5と別体であってもよい。或いは、データロガー2は、対象物5に内蔵されてもよい。
【0014】
ユーザコンピュータ3は、対象物5のユーザによって使用されるコンピュータである。ユーザコンピュータ3は、汎用のPC(Personal Computer)であってもよく、或いは対象物5用の専用コンピュータであってもよい。或いは、ユーザコンピュータ3は、タブレット、スマートフォンなどのモバイルコンピュータであってもよい。ユーザコンピュータ3は、インターネットなどの通信ネットワークを介して外部のコンピュータ等と通信を行う。
【0015】
サーバ4は、通信ネットワークを介して、データロガー2、ユーザコンピュータ3、及び応募者コンピュータ6と通信を行う。サーバ4は、1又は複数のコンピュータによって構成される。サーバ4は、クラウドサーバであってもよい。サーバ4は、
図2に示す公募プラットフォーム7を実現する。ユーザコンピュータ3と応募者コンピュータ6とは、通信ネットワーク上に公開されるウェブサイトを介して、公募プラットフォーム7にアクセスする。
【0016】
ソリューションの募集を行うユーザは、ユーザコンピュータ3から公募プラットフォーム7にアクセスする。ユーザは、公募プラットフォーム7において、対象物5の対象物データDとラベルLとを一般に公開し、対象物5の課題に対するソリューションを募集する。ラベルLの詳細は後述する。
【0017】
図3は、公募プラットフォーム7のウェブサイトの一例を示す図である。
図3は、募集用の画面20の一例を模式的に示している。募集用の画面20は、募集条件の欄を含む。ユーザは、ユーザコンピュータ3から募集条件を公募プラットフォーム7に入力する。募集条件は、依頼者名21、募集の期限22、報酬23、及び依頼内容24を含む。依頼内容24は、対象物5の課題を示す。例えば、依頼内容24は、対象物データDから、工作機械の異常と正常とを判定するためのソリューションを求めることを含む。依頼内容24は、判定の精度に関する条件を含んでもよい。
【0018】
また、公募プラットフォーム7には、対象物データDがアップロードされている。対象物データDは、データロガー2から公募プラットフォーム7にアップロードされる。或いは、対象物データDは、ユーザコンピュータ3を介してサーバ4にアップロードされてもよい。対象物データDは、公募プラットフォーム7に自動的にアップロードされてもよい。或いは、対象物データDは、ユーザの操作により手動で、公募プラットフォーム7にアップロードされてもよい。
図4は、対象物データDの一例を示す図である。
図4に示すように、対象物データDは、主軸負荷、主軸回転速度、及び送り速度などの状態パラメータを含む。対象物データDは、状態パラメータが取得された日時、実行中のプログラム番号及び行番号を含む。
【0019】
また、対象物データDにはラベルLが付されている。ラベルLは、対象物データDが示す対象物5の状態の分類を示す。分類は、対象物5の正常と異常とを含む。正常のラベルLが付された対象物データDは、対象物5が正常であるときの状態パラメータを示している。異常のラベルLが付された対象物データDは、対象物5が異常であるときの状態パラメータを示している。ユーザは、ユーザコンピュータ3を用いて、公募プラットフォーム7にアップロードした対象物データDにラベルLを付ける。ユーザは、公募プラットフォーム7にアップロードされた複数の対象物5のそれぞれにラベルLを付ける。
【0020】
ユーザは、対象物5が正常であるときの対象物データDに対して、正常のラベルLを付ける。ユーザは、対象物5が異常であるときの対象物データDに対して、異常のラベルLを付ける。例えば、
図3に示すように、第1対象物データD1には正常のラベルLが付されている。第2対象物データD2には異常のラベルLが付されている。
【0021】
図5は、ラベルLの入力画面30の一例を示している。ユーザは、ユーザコンピュータ3から、ラベルLの入力画面30上で対象物データDにラベルLを付ける。入力画面30は、対象物データDのグラフ表示欄31を含む。グラフ表示欄31には、対象物データDのグラフが表示される。
図5では、選択された“20200001.csv”の対象物データDとラベルLとが、グラフ表示欄31に表示されている。グラフの横軸は時間を示す。グラフの縦軸は、状態パラメータの値を示す。ラベルLの入力画面30は、対象物データDのリスト32と、ラベルLの入力欄33とを含む。リスト32は、対象物データのファイル名を含む。ユーザは、ラベルLの入力欄33に、各対象物データDのラベルLを入力する。詳細には、入力欄33は、「正常」ラベルのチェック欄と、「異常」ラベルのチェック欄と、「除外」ラベルのチェック欄とを含む。チェック欄は、対象物データの各ファイル名の横に配置されている。例えば、ユーザは、ファイル名“20200001.csv”の横の「正常」ラベルのチェック欄にチェックを入力することにより、“20200001.csv”の対象物データDに「正常」のラベルLを付ける。除外のラベルLが付された対象物データDは、募集用の画面20から除外される。ラベル横の括弧内の数値は、各ラベルLが付与されたファイル数を示す。
【0022】
図2に示すように、ユーザは、対象物データDに付加情報を付与することができる。付加情報は、例えば公開データ設定と公開相手設定とを含む。公開データ設定は、対象物5の機械の種類、部品の種類、或いは工程の種類を示す。公開相手設定は、ソリューションの募集を公開する相手の条件を示す。公募プラットフォーム7は、応募者の登録情報を受け付けて保存し、登録情報から、公開相手設定に適合する応募者のみに公募を公開してもよい。
【0023】
応募者は、公募プラットフォーム7のウェブサイトにおいて、募集条件を確認する。また、応募者は、公募プラットフォーム7から、対象物データDとラベルLとを応募者コンピュータ6にダウンロードできる。応募者は、募集条件と対象物データDとラベルLとに基づいて、ソリューションを検討する。
図6は、応募用の画面40の一例を示している。
図6に示すように、応募用の画面40は、ソリューションのアップロード欄41を含む。応募者は、応募者コンピュータ6から、公募プラットフォーム7にソリューションをアップロードする。ソリューションは、例えばプログラム、ソースコード、説明用のドキュメントを含む。或いは、ソリューションは、テキストで公募プラットフォーム7に入力されてもよい。例えば、応募者は、対象物データDから工作機械の異常と正常とを判定するためのAI(Artificial Intelligence)のソフトウェアをソリューションとして提案する。
【0024】
ユーザは、公募プラットフォーム7からソリューションを取得する。ユーザは、公募プラットフォーム7からユーザコンピュータ3に、ソリューションをダウンロードすることができる。ユーザは、応募されたソリューションを採用するか否かを決定する。ユーザは、採用されたソリューションの応募者に直接的に連絡を取ってもよい。その場合、公募プラットフォーム7は、電子メールアドレスなど応募者の連絡先をユーザに提供してもよい。また、ユーザは、応募者に直接的に報酬を与えてもよい。
【0025】
或いは、公募プラットフォーム7は、ユーザからのソリューションの採用の決定を受け付けてもよい。公募プラットフォーム7は、採用されたソリューションの応募者に通知を送信してもよい。ユーザは、公募プラットフォーム7を介して、応募者に報酬を与えてもよい。報酬はお金であってもよい。或いは、報酬は、応募者からの商品の購入の契約であってもよい。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0027】
課題は、対象物5の正常と異常との判定に限らず、他の課題であってもよい。例えば、作業性を向上するためのNCプログラムの改善であってもよい。或いは、課題は、対象物5への指令値の変更、或いは工具の変更であってもよい。或いは、課題は、加工時間の削減、或いは、停止時間の削減であってもよい。
【0028】
或いは、課題は、設備の保全であってもよい。例えば、設備の保全のタイミング及び内容を判定するためのソリューションが募集されてもよい。或いは、故障で対象物5が使えなくなる時間を削減するためのソリューションが募集されてもよい。その場合、対象物データDは、対象物5が出力したアラームの時系列データであってもよい。アラームは、例えば異常負荷、異常振動、オーバートラベルなどを含む。付加情報は、対象物5の点検の日時及び点検内容を含んでもよい。付加情報は、対象物5の故障日時及び故障内容を含んでもよい。
【0029】
対象物5は、工作機械に限らず、溶接ロボット、熱処理装置、或いは建設機械などの他の機械であってもよい。建設機械は、例えばショベル、ダンプトラック、ホイールローダー、或いはブルドーザーを含む。
【0030】
対象物5は、機械の冷却装置であってもよい。例えば、対象物5は、機械にクーラントを供給する装置であってもよい。その場合、クーラントの適切な交換時期を判定するためのソリューションが募集されてもよい。対象物データDは、クーラントの劣化情報を含んでもよい。クーラントの劣化情報は、クーラントのpH、クーラントの濃度、及びクーラントの臭気を含んでもよい。付加情報は、クーラントの型番とクーラントの交換日時を含んでもよい。
【0031】
或いは、対象物5は、ファンにより冷却風を発生させる装置であってもよい。その場合、装置のメンテナンスのタイミングを判定するためのソリューションが募集されてもよい。対象物データDは、機械の温度とファンの駆動モータの電流値を含んでもよい。
【0032】
或いは、対象物5は、人であってもよい。その場合、対象物データDは、人の位置を含んでもよい。人の位置は、カメラ、或いはGPS受信機によって取得されてもよい。ラベルLは、対象物データDが示す人の作業内容であってもよい。対象物データDから人が行っている作業内容を判定するためのソリューションが募集されてもよい。
【0033】
或いは、対象物5は、加工前の原材料、及び加工後の製品であってもよい。対象物データDは、加工前の原材料及び加工後の製品の形状データであってよい。形状データが無い場合は、3Dスキャナ等で作成された3Dモデルが、形状データとして用いられてもよい。ラベルLは、品番等の識別記号、「加工前」或いは「加工後」などの状態であってよい。その場合、加工前の原材料を加工後の製品の状態にするNCプログラムが、ソリューションとして募集されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本開示によれば、ユーザが、対象物の課題の解決に適したソリューションを容易に得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
2 データロガー
3 ユーザコンピュータ
4 サーバ
D 対象物データ
L ラベル