(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および硬化被膜付き基材
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20241031BHJP
C09D 7/42 20180101ALI20241031BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241031BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241031BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20241031BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20241031BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08F290/06
C09D7/42
C09D7/61
C09D7/63
C09D133/04
E04F13/08 A
E04F15/02 A
(21)【出願番号】P 2020167220
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】岩切 智広
(72)【発明者】
【氏名】本田 清二
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊彦
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012068(JP,A)
【文献】特開2001-040248(JP,A)
【文献】特開2010-030100(JP,A)
【文献】特開2007-237022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09D
E04F
E04B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)活性エネルギー線硬化型樹脂と、(B)(メタ)アクリレートモノマーと、(C)シリカ粒子と、(D)艶消し剤と
、(E)光重合開始剤とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(B)(メタ)アクリレートモノマーが、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートを含み、
(A)活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、3質量%以上40質量%以下であり、
(B)(メタ)アクリレートモノマーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、45質量%以上75質量%以下であり、
(C)シリカ粒子の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として1質量%未満であり、
(D)艶消し剤の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、5質量%以上30質量%以下であり、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、120KU未満である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)活性エネルギー線硬化型樹脂が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、2つ以上の不飽和二重結合をもつ多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、(a1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートの含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として10質量%以上70質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
(D)艶消し剤が、ウレタン粒子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
(E)光重合開始剤
の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、1~10質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、請求項1~7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
基材の少なくとも片面が、請求項1~8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材。
【請求項10】
前記基材が、内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、請求項9に記載の硬化被膜付き基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。また、本発明は、基材の少なくとも片面が活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家屋及び店舗等の床材や内装壁等の基材表面には硬化被膜が設けられている。この硬化被膜に求められる性能としては、耐汚染性や意匠性が挙げられる。耐汚染性については、汚れに対する付着し難さが求められている。特に、市販の毛染め液は、高い染色力を持つため、床等に付着した場合、その除去は非常に困難である。
【0003】
上記のような課題に対して、例えば、特許文献1では、有機ポリイソシアネート(A)と、脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(B)と、分子内に1 個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られるウレタンアクリレートを含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて硬化塗膜を形成することが提案されている。また、特許文献2では、分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであって、前記環状構造の環を構成する炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の合計重量が、ウレタン(メタ)アクリレート(100重量%)に対して10重量%以上であり、平均官能基数が3.5~4.5であるウレタン(メタ)アクリレートを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて硬化物層を形成することが提案されている。
【0004】
また、近年、意匠性については、基材表面の低光沢化が望まれている。そのため、硬化被膜に艶消し材料を添加することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-227915号公報
【文献】国際公開第2014/174861号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、低光沢であり、かつ、耐汚染性、特に除去が困難な毛染め液に対する耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、低粘度で作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に(A)活性エネルギー線硬化型樹脂と、(B)(メタ)アクリレートモノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートと、(C)シリカ粒子と、(D)艶消し剤とを含有させ、(C)シリカ粒子の含有量および活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を特定の範囲内に調節することにより、低光沢であり、かつ、耐汚染性、特に除去が困難な毛染め液に対する耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得られることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)活性エネルギー線硬化型樹脂と、(B)(メタ)アクリレートモノマーと、(C)シリカ粒子と、(D)艶消し剤とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(B)(メタ)アクリレートモノマーが、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートを含み、
(C)シリカ粒子の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として1質量%未満であり、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の25℃における粘度が、120KU未満である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[2] 前記(A)活性エネルギー線硬化型樹脂が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、[1]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[3] 前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、2つ以上の不飽和二重結合をもつ多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、[2]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[4] 前記多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、(a1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、[3]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[5] トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートの含有量が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として10質量%以上70質量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[6] (D)艶消し剤が、ウレタン粒子である、[1]~[5]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[7] (E)光重合開始剤をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[8] 床材用である、[1]~[7]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[9] 基材の少なくとも片面が、[1]~[8]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材。
[10] 前記基材が、内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、[9]に記載の硬化被膜付き基材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜を形成可能な、低粘度で作業性が良い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、低光沢であり、かつ、耐汚染性に優れた硬化被膜付き基材を提供することができる。特に、本発明による硬化被膜は、除去が困難な毛染め液に対して優れた耐汚染性(以下、耐毛染め液性)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
「活性エネルギー線」とは、紫外線の他、可視光線、赤外線、電子線、X線、γ線、プロトン線、中性子線等を含むものを意味する。
「固形分」とは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに硬化被膜を構成する成分を示す。
【0011】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物>
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、少なくとも、(A)活性エネルギー線硬化型樹脂と、(B)(メタ)アクリレートモノマーと、(C)シリカ粒子と、(D)艶消し剤とを含むものである。本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(E)光重合開始剤や他の成分をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、低粘度であり、作業性に優れるものである。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、JIS K 5600-2-2に準拠し、25℃でストーマー粘度計により測定した粘度が、好ましくは120KU未満であり、より好ましくは100KU未満であり、また、好ましくは50KU以上であり、より好ましくは70KU以上である。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、作業性に優れるため、塗料として好適である。
【0013】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、木質フローリング床材上に塗布して形成した厚さ10~15μmの硬化被膜の60度鏡面光沢度が30以下であることが好ましい。木質フローリング床材上に形成した硬化被膜の60度鏡面光沢度が30未満であれば、低光沢化が望まれている床材用の塗料として好適である。なお、60度鏡面光沢度は、市販の光沢度計を用いて測定することができる。
【0014】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、低光沢であり、かつ、耐汚染性、特に耐毛染め液性に優れるものである。したがって、本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、耐汚染性に優れた基材用として、特に床材等の内装材、または屋外もしくは半屋外の床材に好適に使用できる。以下、本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0015】
((A)活性エネルギー線硬化型樹脂)
(A)活性エネルギー線硬化型樹脂(以下、(A)成分ともいう。)とは、少なくとも1つ以上の不飽和二重結合を有するオリゴマーおよびポリマーから選択される少なくとも1種である。(A)成分は、エネルギー照射された時に不飽和二重結合が重合することで、硬化被膜(硬化物)を形成する。前記不飽和二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基等を挙げることができ、活性エネルギー線照射時の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0016】
(A)成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、硬化被膜の耐汚染性の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。このような(A)成分は、従来公知の方法により製造することができる。
【0017】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートと、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとを反応させることによって得られ、分子中に官能基としてアクリロイル基(CH2=CHCO-)および/またはメタクリロイル基(CH2=C(CH3)-CO-)と、ウレタン結合(-NH・COO-)とを有する。
【0018】
上記ポリイソシアネートとしては、本発明の効果を損なわない限り炭素数を限定するものではないが、たとえば、全炭素数が4~20、好ましくは6~15の直鎖状または分岐状のイソシアネート基含有炭化水素、イソシアネート基含有環状炭化水素、イソシアネート基含有芳香族炭化水素を用いることができる。
【0019】
具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有直鎖状炭化水素、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有分岐鎖状炭化水素、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等のイソシアネート基含有環状炭化水素、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4、4-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート基含有芳香族炭化水素等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0020】
上記ポリイソシアネートは、イソシアヌレート等に変性されていてもよく、イソシアヌレート変性されたものとしては、たとえば、イソシアヌレート変性トルエンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記以外のポリイソシアネートとして、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソシアネート基含有アクリレート等の多官能イソシアネートを用いてもよい。このようなポリイソシアネートは、1種単独でも、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基を少なくとも1個以上、好ましくは1~5個有する(メタ)アクリレートを用いることができる。また、このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、本発明の効果を損なわない限りその炭素数を限定するものではないが、好ましくは炭素数が2~20の炭化水素部位を有することが望ましい。ここで、炭化水素部位とは、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基を有する有機基をいい、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。なお、当該炭化水素部位の一部には、エーテル結合(C-O-C結合)が含まれていてもよい。
【0022】
具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。また、上記以外にも、ポリカプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の変性体を用いてもよい。このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
必要に応じて用いられる、上記水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等の公知のポリオールを用いることができ、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ポリカプロラクトンポリオール、アルキレンジオール等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。このようなポリオールは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(A)活性エネルギー線硬化型樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーの重量平均分子量は、通常500~100,000、好ましくは600~50,000、より好ましくは1,000~30,000である。本明細書において、重量平均分子量は、(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0025】
(A)活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常3質量%以上40質量%以下、好ましくは5質量%以上35質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、油や薬品等の各種の汚れに対する耐汚染性により優れたものとなる。
【0026】
((a1)2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)活性エネルギー線硬化型樹脂として、2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、(a1)成分ともいう。)を用いることが好ましい。(a1)成分を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される硬化被膜は、耐汚染性により優れる。
【0027】
(a1)2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前記のポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよび必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールと反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのうち、2官能のものを適宜選択して利用することができる。市販されているものとしては、具体的には、EBECRYL210、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL280、EBECRYL284、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL9270、(商品名、以上ダイセル・オルネクス株式会社製)、紫光UV-3310B、紫光UV-6630B、紫光UV-6640B(商品名、以上三菱ケミカル株式会社製)、UA-122P、U-200PA、UA-4200(商品名、以上新中村化学工業株式会社製)、アートレジンUN-333、アートレジンUN-2601、アートレジンUN-2701、アートレジンUN-9000PEP(商品名、以上根上工業株式会社製)等が挙げられる。このような2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a1)は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(a1)2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、通常500~50,000、好ましくは600~20,000、より好ましくは1,000~15,000である。
【0029】
((a2)3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)活性エネルギー線硬化型樹脂として、2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a1)とともに、あるいは2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a1)の代わりに、3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a2)(以下、(a2)成分ともいう。)を含有しても良い。(a2)成分を用いる本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される硬化被膜は、表面硬度が向上することによって、より汚れが付着しにくくなり、耐汚染性が向上する。(a1)成分と(a2)成分を併用する場合、得られる硬化被膜は、耐汚染性により優れたものとなる。
【0030】
(a2)3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前記のポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよび必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのうち、3官能以上のものを適宜選択して利用することができる。市販されているものとしては、具体的には、EBECRYL 4738、EBECRYL 4740、EBECRYL 8254(商品名、ダイセル・オルネクス株式会社製)等が挙げられる。このような3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a2)は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(a2)3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、通常500~50,000、好ましくは600~20,000、より好ましくは1,000~15,000である。
【0032】
((B)(メタ)アクリレートモノマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(メタ)アクリレートモノマー(以下、(B)成分ともいう。)を含む。(B)(メタ)アクリレートモノマーは、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を調整する反応性希釈剤としての役割を有し、樹脂組成物に対して活性エネルギー線照射した際、(A)活性エネルギー線硬化性樹脂とともに硬化被膜を形成する。
【0033】
本発明においては、(B)(メタ)アクリレートモノマーとしては、硬化被膜の耐汚染性、特に耐毛染め液性を向上させるために、少なくともトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートを含む。(B)(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート以外にも、アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパン(エトキシレート)トリアクリレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、このような(メタ)アクリレート系モノマーは、たとえばε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート等のラクトン変性体であってもよい。これらの(メタ)アクリレートモノマーは、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートに加えて、1種もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
(B)トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートの含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、好ましくは20質量%以上65質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上60質量%以下である。また、(B)(メタ)アクリレートモノマーの合計含有量(トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートおよび他の(メタ)アクリレートモノマーの合計含有量)は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは40質量%以上75質量%以下であり、より好ましくは45質量%以上65質量%以下である。
【0035】
((C)シリカ粒子)
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化被膜の表面のムラを抑制するために低量のシリカ粒子を含む。シリカ粒子は、特に限定されず、従来公知のシリカ粒子を用いることができる。シリカ粒子の形状は特に限定されず、球状、板状、および薄片状のいずれであってもよい。シリカ粒子としては、非晶質シリカおよび結晶質シリカのいずれであってもよく、これらの混合物でもよい。シリカ粒子としては、市販品を用いることもできる。
【0036】
シリカ粒子の体積平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上50μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、さらにより好ましくは1μm以上15μm以下である。
【0037】
(C)シリカ粒子の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として1質量%未満であり、好ましくは0.01質量%以上0.9質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.8質量%以下である。シリカ粒子の含有量が上記の通り低量であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜の表面がムラにならず、安定して良好な外観となる。
【0038】
((D)艶消し剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、艶消し剤を含む。艶消し剤としては、例えば、無機微粉体(上記のシリカ粒子を除く)および有機微粉体からなる群より選ばれる少なくとも一種が使用される。無機微粉体としては、ガラス、マイカ、ゼオライト、珪藻土、グラファイト、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の塩類、金属、金属酸化物等も使用できる。有機微粉体としては、ウレタン粒子(ビーズ)が好ましく使用され、アクリル樹脂やポリアミド等の各種の樹脂粒子(ビーズ)、シリコーンゴム、パルプ、セルロース等も使用できる。これらの微粉体は二種以上を併用してもよい。艶消し剤は好ましくは球状であり、平均粒子径は特に制限されず、0.1~30μmのものが好ましい。
【0039】
(D)艶消し剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常、0超30質量%以下、好ましくは5質量%以上20質量%以下である。艶消し剤の含有量が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜を低光沢化することができる。
【0040】
((E)光重合開始剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を紫外線等の光により重合硬化させる場合には、光重合開始剤(以下、(E)成分ともいう。)を使用する。電子線により重合硬化させる場合は、通常用いない。
【0041】
(E)光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタール(別名、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、ジエトキシアセトフェノン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-トリクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、メチルベンゾイルホルメート等のアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。中でも、ベンゾフェノン系光重合開始剤が好ましく、ベンゾフェノンがより好ましい。このような(D)光重合開始剤は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(E)光重合開始剤を用いる場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に、組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常1~10質量%、好ましくは3~7質量%の割合で用いることが望ましい。
【0043】
(その他の成分)
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中には、上記成分の他に、更に必要に応じて、重合禁止剤、非反応性希釈剤、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防汚性向上剤、基材密着性向上剤、光増感剤、帯電防止剤、耐傷剤、防カビ剤、シランカップリング剤、可塑剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。
【0044】
なお、本実施形態に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、シンナーやアルコール等の有機溶剤(非反応性希釈剤)で希釈する溶剤型樹脂組成物、また、有機溶剤で希釈する必要が無い無溶剤型樹脂組成物のどちらとしても構わない。ただし、揮発性有機化合物(VOC)の残留がないため、人体への影響がなく環境対応性に優れる等の理由から、無溶剤型樹脂組成物であることが好ましい。
【0045】
(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製方法)
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記の諸成分を従来より公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用い、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0046】
[硬化被膜付き基材]
本発明に係る硬化被膜付き基材は、少なくとも片面が、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる。硬化被膜は、基材の片面全面に設けられていてもよく、片面の一部にのみ設けられていてもよく、また基材の両面に設けられていてもよい。一部に設ける場合の硬化被膜の態様は特に制限されず、たとえば、海島状の海部または島部、格子状、モザイク状など任意の態様を特に制限することなく採用できる。
【0047】
(基材)
本発明において、基材は、内装材として用いることができる。内装材とは、建築物や車両等の内部で使用される部材をいう。例えば、窓、壁、天井、床、屋根、建具、壁紙などが挙げられる。また、基材は、屋外や半屋外の床材としても用いることもできる。特に、耐汚染性が要求される床材や壁材等が好ましく、床材がより好ましい。基材としては、例えば、合成樹脂からなる基材が挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化型樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的にはポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。また熱硬化型樹脂としては、具体的にはフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられる。それらのうち、合成樹脂製床材用とする場合は、加工性や床材としての施工容易性の面から、熱可塑性樹脂が好ましく、中でも塩化ビニル系樹脂がより好ましい。基材の厚さは特に制限されないが、0.2~10mmが好ましく、1~5mmがより好ましい。
【0048】
(硬化被膜)
硬化被膜は、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される。硬化被膜の膜厚は特に限定されないが、耐汚染性の長期的な維持の観点から、通常1~100μm、好ましくは3~70μm、さらに好ましくは5~50μmが望ましい。本発明における膜厚とは、硬化被膜の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等にて観察した際の、硬化被膜の厚さを指す。このような膜厚の被膜を形成する際は、1回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよいし、複数回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよい。
【0049】
<硬化被膜付き基材の製造方法>
本発明による硬化被膜付き基材は、基材の少なくとも片面に、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する工程(塗布工程)と、該塗布面に活性エネルギー線を照射して、該組成物を硬化させる工程(硬化工程)とを含むものである。
【0050】
(塗布工程)
塗布工程は、基材の少なくとも片面に、従来公知の方法により、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する工程である。塗布には、例えば、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からロールコーターを用いた塗布方法が好ましい。
【0051】
塗布膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、1~100μmであることが好ましい。乾燥性、硬化性の観点から更に好ましい上限は100μmであり、耐摩耗性、耐汚染性の観点から更に好ましい下限は1μmである。
【0052】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗布後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは10~200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0053】
(硬化工程)
硬化工程は、基材の塗布面に活性エネルギー線を照射して、塗布された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させて、硬化被膜を形成する工程である。活性エネルギー線としては、紫外線(遠紫外線、近紫外線等)、赤外線等の光線に加えて、電子線等が挙げられ、中でも、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等の面から、紫外線が好ましい。
【0054】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、上記紫外線等の光線により硬化させる場合は、光重合開始剤を使用する。一方、上記電子線等により硬化させる場合は、通常、光重合開始剤を使用しなくてもよい。
【0055】
紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100~3,000mJ/cm2であり、より好ましくは200~2,000mJ/cm2である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
まず、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製のために、以下の原材料を準備した。
・ウレタンアクリレートオリゴマー(粘度(25℃)7000~13000mPa・s)
・エステルアクリレートオリゴマー(粘度(25℃)7000~12000mPa・s)
・エポキシアクリレートオリゴマー(粘度(25℃)250~400dPa・s)
・2官能アクリレートモノマー(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名:EBECRYL 130)
・単官能アクリレート(アクリロイルモルホリン、Beijing RBL Chemicals Co., Ltd.、商品名:RBL-ACMO)
・3官能アクリレートモノマー1(トリメチルプロパン(エトキシレート)トリアクリレート、KPX Green Chemical Co., Ltd.、商品名:KOMERATE-T033)
・3官能アクリレートモノマー2(ペンタエリスリトールトリアクリレート、KPX Green Chemical Co., Ltd.、商品名:KOMERATE-T001)
・シリカ粒子(体積平均粒径:6μm、水澤化学工業株式会社製、商品名:ミズカシルP-801)
・艶消し剤(ウレタンビーズ、平均粒子径:10.0±2.0μm)
・光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASFジャパン株式会社製、商品名:Omnirad 184)
【0058】
[実施例1~9、比較例1~3]
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
表1に記載の配合に従って、(A)成分~(D)成分および他の成分を、ホモディスパーを用いて混合・攪拌して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0059】
<評価>
(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度)
上記で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を、JIS K 5600-2-2に準拠し、25℃でストーマー粘度計により測定した。また、粘度を下記の基準で評価した。組成物粘度が低いほど、塗料としての作業性に優れるものである。測定値および評価結果を表2に示した。
[評価基準]
◎:組成物の粘度が100KU未満であった。
○:組成物の粘度が100KU以上120KU未満であった。
×:組成物の粘度が120KU以上であった。
【0060】
(鏡面光沢度)
上記で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、厚さ12mmの木質フローリング床材にロールコーターを用いて硬化後の被膜の厚さが10~15μmになるように塗布した。続いて、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)にて、紫外線を積算光量250mJ/cm2で照射し硬化させて、硬化被膜付き基材を得た。次に、得られた硬化被膜付き基材について、光沢度計(株式会社堀場製作所製、型番:IG-320)を用いて、60度鏡面光沢度を測定した。また、60度鏡面光沢度(%)を下記の基準で評価した。測定値および評価結果を表2に示した。
[評価基準]
○:60度鏡面光沢度が30以下であった。
×:60度鏡面光沢度が30超であった。
【0061】
(耐汚染性)
上記で得られた硬化被膜付き基材を水平に置いた後、硬化被膜の表面に油性インキ(黒色)ならびに一般市販品事務用青色インキでそれぞれ幅10mmの線を引いた。続いて、25℃で4時間静置した後、溶剤(酢酸ブチルまたは酢酸エチル)を含ませた紙ウェスで各インキを吹き取り、汚染状態について下記の基準で評価した。評価結果を表2に示した。
[評価基準]
〇:硬化被膜の表面に色が残らなかった。
×:硬化被膜の表面に色が残っていた。
【0062】
(耐毛染め液性)
上記で得られた硬化被膜付き基材を水平に置いた後、硬化被膜の表面に毛染め液(ヘアダイメンズビゲン/クリーム7G、ホーユー株式会社製)を塗布し、直径約3cmの円形に塗り広げた。続いて、25℃で30分間静置した後、溶剤(酢酸ブチルまたは酢酸エチル)を含ませた紙ウェスで毛染め液を吹き取り、汚染状態について下記の基準で評価した。評価結果が◎および○を合格とした。評価結果を表2に示した。
[評価基準]
◎:痕跡が認められなかった。
○:痕跡がうっすらと部分的に認められたが、実用上は全く問題無かった。
×:痕跡が明確に認められた。
【0063】
(外観評価)
上記で得られた硬化被膜付き基材の硬化被膜の表面について、目視により以下の基準で評価を行った。
[評価基準]
○:硬化被膜の表面がムラにならず、安定して良好な外観であった。
×:硬化被膜の表面にムラなどが発生していた。
【0064】
【0065】