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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241031BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20241031BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020173617
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064782
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 旭平
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020442(JP,A)
【文献】特開2012-001695(JP,A)
【文献】国際公開第2012/020764(WO,A1)
【文献】特開2022-008017(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098714(WO,A1)
【文献】特開2018-005254(JP,A)
【文献】特開2018-124299(JP,A)
【文献】特開2016-160268(JP,A)
【文献】特開2015-010192(JP,A)
【文献】特開2011-093957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層を構成する粘着剤の屈折率が、1.55以上であり、
前記粘着剤のゲル分率が、30%以上、100%以下であり、
前記粘着剤層のヘイズ値が、10%以下であり、
前記粘着剤が、高屈折率微粒子を含有するアクリル系粘着剤であり、
前記アクリル系粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体が、当該重合体を構成するモノマー単位として、芳香環含有モノマーを含有する
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層の全光線透過率が、70%以上であることを特徴とする請求項に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤の23℃における貯蔵弾性率G’が、0.05MPa以上、20MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が、0.01MPa以上、15MPa以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤のゾル分の重量平均分子量が、1万以上、200万以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された前記粘着剤層と
を備えたことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
表示体用であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体等に用いるのに好適な粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイスの一種である、電子機器の表示体(ディスプレイ)として、屈曲可能な屈曲性ディスプレイが提案されている。屈曲性ディスプレイとしては、1回だけ曲面成形するものの他に、繰り返し屈曲させる(折り曲げる)用途の繰り返し屈曲ディスプレイが提案されている。
【0003】
上記のような繰り返し屈曲ディスプレイにおいては、当該屈曲性ディスプレイを構成する一の屈曲可能な部材(屈曲性部材)と、他の屈曲性部材とを粘着シートの粘着剤層によって貼合することが考えられる。しかしながら、繰り返し屈曲ディスプレイに従来の粘着シートを使用すると、屈曲部における粘着剤層と被着体との界面に剥がれが発生するという問題が生じる。
【0004】
特許文献1は、繰り返し屈曲時における剥がれの発生を抑制することを目的とした粘着剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-108555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上記のような繰り返し屈曲ディスプレイにおいては、長時間の屈曲状態の後に、屈曲部の周辺に光漏れが発生することがある。特許文献1に記載の粘着剤では、かかる光漏れの問題を十分に解決することができない。
【0007】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、長時間の屈曲状態による光漏れを抑制することのできる粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、少なくとも粘着剤層を有する粘着シートであって、前記粘着剤層を構成する粘着剤の屈折率が、1.55以上であり、前記粘着剤のゲル分率が、30%以上、100%以下であることを特徴とする粘着シートを提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)によれば、当該粘着剤層によって一の部材(特に屈曲性部材)と他の部材(特に屈曲性部材)とを貼合してなる積層体を長時間屈曲状態に置いた場合に、屈曲部における光漏れが抑制される。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記粘着剤層のヘイズ値が、10%以下であることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1,2)においては、前記粘着剤層の全光線透過率が、70%以上であることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1~3)においては、前記粘着剤の23℃における貯蔵弾性率G’が、0.05MPa以上、20MPa以下であることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1~4)においては、前記粘着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が、0.01MPa以上、15MPa以下であることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1~5)においては、前記粘着剤のゾル分の重量平均分子量が、1万以上、200万以下であることが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明1~6)においては、前記粘着剤が、高屈折率微粒子を含有することが好ましい(発明7)。
【0016】
上記発明(発明1~7)においては、前記粘着剤が、アクリル系粘着剤であることが好ましい(発明8)。
【0017】
上記発明(発明8)においては、前記アクリル系粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有し、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体が、当該重合体を構成するモノマー単位として、芳香環含有モノマーを含有することが好ましい(発明9)。
【0018】
上記発明(発明1~9)においては、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された前記粘着剤層とを備えたものであることが好ましい(発明10)。
【0019】
上記発明(発明1~10)に係る粘着シートは、表示体用であることが好ましい(発明11)。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る粘着シートによれば、長時間の屈曲状態による光漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る表示体の断面図である。
図3】静的屈曲試験を説明する説明図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着シート〕
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、少なくとも粘着剤層を有しており、好ましくは、当該粘着剤層の片面または両面に剥離シートを積層してなる。
【0023】
上記粘着剤層を構成する粘着剤の屈折率は、1.55以上であることが好ましく、当該粘着剤のゲル分率は、30%以上、100%以下であることが好ましい。これにより、当該粘着剤層によって一の部材(特に屈曲性部材)と他の部材(特に屈曲性部材)とを貼合してなる積層体を長時間屈曲状態に置いた場合に、屈曲部における光漏れが抑制される。
【0024】
なお、本明細書における粘着剤の屈折率は、JIS K0062-1992に準じて測定した値である。本明細書におけるゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値である。
【0025】
光漏れ抑制の観点から、上記粘着剤の屈折率は、1.55以上であることが好ましく、1.57以上であることがより好ましく、特に1.59以上であることが好ましく、さらには1.60以上であることが好ましい。上記粘着剤の屈折率の上限値は特に限定されないが、通常は、3.00以下であることが好ましく、2.00以下であることがより好ましく、特に1.80以下であることが好ましく、さらには1.70以下であることが好ましい。
【0026】
また、長時間屈曲後の外観を優れたものとする観点から、上記粘着剤のゲル分率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、特に70%以上であることが好ましく、さらには75%以上であることが好ましい。上記と同様の観点から、上記粘着剤のゲル分率は、100%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、特に90%以下であることが好ましく、さらには85%以下であることが好ましい。
【0027】
上記粘着剤層のヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、特に3%以下であることが好ましく、さらには1%以下であることが好ましい。上記粘着剤層は、屈折率が非常に高いにもかかわらず、ヘイズ値が上記のように低いと、長時間の屈曲による外観変化を抑制することができる。上記粘着剤層のヘイズ値の下限値は特に限定されないが、上記粘着剤の屈折率を満たし易くする観点から、0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、特に0.3%以上であることが好ましく、さらには0.5%以上であることが好ましい。
【0028】
また、表示体の視認性の観点から、上記粘着剤層の全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、特に90%以上であることが好ましく、さらには97%以上であることが好ましい。上記粘着剤層の全光線透過率の上限値は特に限定されず、100%であってもよいし、測定の関係で若干100%を超える値であってもよい。なお、本明細書における全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準じて測定した値である。
【0029】
一方、上記粘着剤の23℃における貯蔵弾性率G’は、0.05MPa以上であることが好ましく、0.10MPa以上であることがより好ましく、特に0.30MPa以上であることが好ましく、さらには1.0MPa以上であることが好ましく、2.0MPa以上であることが最も好ましい。また、上記粘着剤の23℃における貯蔵弾性率G’は、20MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましく、特に5MPa以下であることが好ましく、さらには3.5MPa以下であることが好ましい。上記粘着剤の23℃における貯蔵弾性率G’が上記の範囲にあることにより、耐光漏れ性および長時間屈曲後の外観がより優れたものとなる。本明細書における貯蔵弾性率G’は、JIS K7244-6に準拠して、測定周波数1Hzにてねじりせん断法により測定した値とする。具体的には、後述する試験例に示す通りである。
【0030】
また、上記粘着剤の80℃における貯蔵弾性率G’は、0.01MPa以上であることが好ましく、0.03MPa以上であることがより好ましく、特に0.08MPa以上であることが好ましく、さらには0.14MPa以上であることが好ましい。また、上記粘着剤の80℃における貯蔵弾性率G’は、15MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましく、特に5MPa以下であることが好ましく、さらには2MPa以下であることが好ましい。上記粘着剤の80℃における貯蔵弾性率G’が上記の範囲にあることにより、耐光漏れ性および長時間屈曲後の外観がより優れたものとなる。
【0031】
上記粘着剤のゾル分の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、4万以上であることがより好ましく、特に8万以上であることが好ましく、さらには10万以上であることが好ましい。また、上記粘着剤のゾル分の重量平均分子量は、200万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましく、特に50万以下であることが好ましく、さらには30万以下であることが好ましい。上記粘着剤は、上記ゾル分の重量平均分子量が上記の範囲にあり、かつ、ゲル分率が上記範囲にあることにより、長時間屈曲後の外観により優れ、かつ、ヘイズ値を低いものとし易い。
【0032】
なお、本明細書におけるゾル分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0033】
本実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0034】
1.構成要素
1-1.粘着剤層
粘着剤層11は、前述した物性を有する粘着剤からなるものであることが好ましい。粘着剤層11を構成する粘着剤の種類は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、前述した物性を満たし易く、粘着物性、光学特性等にも優れるアクリル系粘着剤が好ましく、特に、溶剤型のアクリル系粘着剤が好ましく、さらには架橋タイプのアクリル系粘着剤が好ましい。
【0035】
また、本実施形態における粘着剤は、活性エネルギー線非硬化性のものであってもよいし、活性エネルギー線硬化性のものであってもよい。さらに、本実施形態における粘着剤は、前述した屈折率を満たすために、高屈折率微粒子を含有することが好ましい。なお、本明細書における高屈折率微粒子とは、得られる粘着剤に、マトリックスよりも高い屈折率を付与することのできる微粒子をいう。
【0036】
本実施形態における粘着剤は、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、高屈折率微粒子(C)と、所望により活性エネルギー線硬化性成分(D)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋したものであることが好ましい。また、活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有する場合には、さらに活性エネルギー線照射により硬化したものであることが好ましい。粘着性組成物Pを架橋(および硬化)して得られる粘着剤は、前述した物性を満たし易いものとなる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0037】
(1)粘着性組成物Pの成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、良好な粘着性を発現するための(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋点となる反応性官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)とを含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、得られる粘着剤のマトリックスの屈折率を高くすることのできるモノマー(高屈折率モノマー)を、当該重合体を構成するモノマー単位としてさらに含有することが好ましい。高屈折率モノマーを含有することにより、粘着剤のマトリックスの屈折率と高屈折率微粒子(C)の屈折率との差を小さくすることができ、それにより、前述したヘイズ値が満たされ易くなる。したがって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、高屈折率モノマーと、反応性官能基含有モノマーとを含有することがより好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。
【0039】
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、前述した貯蔵弾性率G’および粘着力の観点から、アルキル基の炭素数が1~10の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。具体的には、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソオクチル、またはアクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、所望の粘着力を得る観点、あるいは、貯蔵弾性率G’を低く導く観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを5質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましく、特に15質量%以上含有することが好ましく、さらには20質量%以上含有することが好ましい。また、他のモノマー成分の配合量を確保する観点から、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルを60質量%以下含有することが好ましく、50質量%以下含有することがより好ましく、特に40質量%以下含有することが好ましく、さらには30質量%以下含有することが好ましい。
【0041】
高屈折率モノマーとしては、環状構造を有するモノマーが好ましく挙げられ、特に芳香環を有するモノマー(芳香環含有モノマー)が好ましく挙げられる。芳香環含有モノマーとしては、芳香環を1個または2個以上含むモノマー、多環芳香族骨格を有するモノマー等が挙げられる。それらの中でも、貯蔵弾性率G’を低くし、粘着力を高める観点から、芳香環を1個含む芳香環含有モノマーが好ましい。
【0042】
芳香環を1個含む芳香環含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-フェニルエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシブチル、(メタ)アクリル酸スチリル、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、芳香環含有モノマーを20質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、特に40質量%以上含有することが好ましく、さらには50質量以上%含有することが好ましい。また、芳香環含有モノマー90質量%以下含有することが好ましく、85質量%以下含有することがより好ましく、特に80質量%以下含有することが好ましく、さらには70質量%以下含有することが好ましい。芳香環含有モノマーが上記範囲にあることにより、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と高屈折率微粒子(C)との屈折率差が好適な範囲になるものと推定され、低いヘイズ値でありながら高屈折率の粘着剤を得やすくなる。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含有することで、当該反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基を介して、後述する架橋剤(B)と反応し、これにより架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。当該粘着剤は、前述したゲル分率および貯蔵弾性率G’を満たし易いものとなる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として含有する反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記反応性官能基含有モノマーの中でも、高屈折率微粒子(C)の分散性を向上させ、得られる粘着剤を低いヘイズ値のものとする観点から、水酸基含有モノマーまたはカルボキシ基含有モノマーが好ましく、特に、水酸基含有モノマーが好ましい。
【0047】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。上記の中でも、前述した貯蔵弾性率G’に関する物性の満たし易さの観点から、炭素数が1~4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。具体的には、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはアクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の粘着力の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを、2質量%以上含有することが好ましく、4質量%以上含有することがより好ましく、特に8質量%以上含有することが好ましく、さらには12質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを、34質量%以下含有することが好ましく、28質量%以下含有することがより好ましく、特に24質量%以下含有することが好ましく、さらには18量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で反応性官能基含有モノマーを含有すると、架橋剤(B)との架橋反応により、得られる粘着剤の凝集力が適度なものとなり、前述したゲル分率および貯蔵弾性率G’をより満たし易いものとなる。また、理由は定かではないが、高屈折率微粒子(C)の分散性が良くなるものと推定され、前述したヘイズ値を満たし易いものとなる。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含まないことも好ましい。カルボキシ基含有モノマーを含む場合、高屈折率微粒子(C)との関係で、粘着性組成物の塗布液がゲル化して、塗工不良になってしまうことがある。
【0051】
ここで、「カルボキシ基含有モノマーを含まない」とは、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しないことを意味し、カルボキシ基含有モノマーを全く含有しない他、ゲル化が生じない程度にカルボキシ基含有モノマーを含有することを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下の量で含有することを許容するものである。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。かかるモノマーとしては、例えば、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン等の非反応性の窒素原子含有モノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、20万以上であることが好ましく、40万以上であることがより好ましく、特に60万以上であることが好ましく、さらには75万以上であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、200万以下であることが好ましく、150万以下であることがより好ましく、特に100万以下であることが好ましく、さらには90万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が上記の範囲内にあると、前述したゲル分率、ゾル分の重量平均分子量、貯蔵弾性率G’、および後述する粘着力を満たし易いものとなる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記であることにより、前述したヘイズ値を満たし易いものとなる。なお、本明細書における重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の屈折率は、1.40以上であることが好ましく、1.46以上であることがより好ましく、特に1.48以上であることが好ましく、さらには1.50以上であることが好ましい。これにより、前述したヘイズ値が満たされ易くなる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の上限値は特に限定されないが、通常は、2.00以下であることが好ましく、1.80以下であることがより好ましく、特に1.60以下であることが好ましく、さらには1.55以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の屈折率が上記範囲にあると、高屈折率微粒子(C)との屈折率差が最適化されると推定され、低ヘイズかつ高屈折率な粘着剤を得やすい。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の屈折率は、JIS K0062-1992に準じて測定した値である。
【0056】
粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、当該架橋剤(B)を含有する粘着性組成物Pの加熱等をトリガーとして、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を形成する。これにより、得られる粘着剤の凝集力が向上し、前述したゲル分率、貯蔵弾性率G’およびゾル分の分子量が満たされ易くなる。
【0058】
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、反応性官能基含有モノマーとの反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートまたはトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0060】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、特に0.01質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには1質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記の範囲内にあると、前述したゲル分率、貯蔵弾性率G’およびゾル分の分子量がより満たされ易くなる。
【0061】
(1-3)高屈折率微粒子(C)
高屈折率微粒子(C)は、得られる粘着剤に(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)よりも高い屈折率を付与し、前述した屈折率を満たすことができるものであれば、特に限定されない。かかる高屈折率微粒子(C)としては、金属酸化物微粒子の他、スチレン樹脂や硫黄含有樹脂といった高屈折率樹脂を使用する微粒子等が挙げられる。これらの中でも、前述した屈折率の満たし易さの観点から、金属酸化物微粒子が好ましく、特に遷移金属を含む金属酸化物微粒子が好ましい。
【0062】
遷移金属を含む金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化ニオブ等の微粒子が好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。上記の中でも、前述した屈折率を満たし易い酸化ジルコニウム微粒子が特に好ましい。
【0063】
金属酸化物微粒子の表面は、有機化合物等によって化学修飾されていてもよい。また、金属酸化物微粒子の形状は、球状であってもよいし、非球状であってもよいが、前述した屈折率を満たし易い観点から、球状であることが好ましい。
【0064】
高屈折率微粒子(C)の平均粒径は、1000nm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましい。これにより、前述した屈折率およびヘイズ値が満たされ易くなる。また、高屈折率微粒子(C)の平均粒径は、2nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。これにより、分散性が向上するとともに、前述した貯蔵弾性率G’が満たされ易くなる。なお、高屈折率微粒子(C)の平均粒径は、ゼータ電位測定法によって一次粒径を測定したものとする。
【0065】
高屈折率微粒子(C)は、粘着性組成物P中における分散性を考慮して、分散溶液として使用することが好ましい。この場合に使用する分散溶媒としては、疎水性溶媒が好ましく、親水性溶媒は含有しないか、含有しても微量であることが好ましい。これにより、得られる粘着剤のヘイズ値を低くし易くなる。
【0066】
疎水性溶媒は、SP値(溶解パラメータ)が12(cal/cm1/2以下であるものが好ましい。このような溶媒を用いることにより、高屈折率微粒子(C)、特に金属酸化物微粒子の粘着性組成物Pへの分散性が良好なものとなる。疎水性溶媒のSP値は、10(cal/cm1/2以下であることがより好ましく、特に9.5(cal/cm1/2以下であることが好ましい。なお、疎水性溶媒のSP値の下限値は、特に限定されないが、入手容易性の観点から、6.5(cal/cm1/2以上であることが好ましい。
【0067】
SP値が12(cal/cm1/2以下の溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(12.0)等のアミド;アセトニトリル(11.8)等のニトリル;アセトン(10.0)、メチルエチルケトン(9.3)、メチルプロピルケトン(8.7)、メチルイソプロピルケトン(8.5)等のケトン;フタル酸ジn-ブチル(9.4)、酢酸エチル(9.1)、酢酸n-ブチル(8.5)、酢酸イソプロピル(8.4)、酢酸イソブチル(8.3)等のエステル(例えば、カルボン酸エステル);ジオキサン(9.9)、テトラヒドロフラン(9.1)、ジエチルエーテル(7.4)、イソプロピルエーテル(6.9)等の鎖状及び環状のエーテル;ベンゼン(9.2)、トルエン(8.9)、キシレン(8.8)、エチルベンゼン(8.8)、シクロヘキサン(8.2)、n-オクタン(7.6)、n-ヘキサン(7.3)、n-ペンタン(7.0)等の芳香族及び脂肪族炭化水素;塩化メチレン(9.7)、クロロホルム(9.3)、トリクロロエチレン(9.2)、四塩化炭素(8.6)等のハロゲン化炭化水素(例えば、ハロゲン化脂肪族炭化水素);二硫化炭素(10.0)等の硫化炭素等が挙げられる。溶媒名と並記したカッコ内の数値はSP値((cal/cm1/2)を意味する。
【0068】
高屈折率微粒子(C)の分散溶媒が親水性溶媒(SP値が12(cal/cm1/2超)を含有する場合、その含有量は、15質量%以下であることが好ましく、特に10質量%以下であることが好ましく、さらには8質量%以下であることが好ましい。
【0069】
また、高屈折率微粒子(C)の分散性をより向上させるために、分散剤を用いてもよい。分散剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性の観点から、アクリル系成分を含有することが好ましい。また、一例として、後述する活性エネルギー線硬化性成分(D)(および光重合開始剤)を分散剤として使用することも好ましい。高屈折率微粒子(C)が、かかる分散剤を含んだ分散溶液として使用される場合、当該分散溶液を高屈折率化成分という。
【0070】
高屈折率微粒子(C)の屈折率は、得られる粘着剤が前述した屈折率を満たし易い観点から、1.5以上であることが好ましく、1.6以上であることがより好ましく、特に1.7以上であることが好ましく、さらには1.8以上であることが好ましい。高屈折率微粒子(C)の屈折率の上限値は特に限定されないが、通常は5.0以下であることが好ましく、特に3.0以下であることが好ましく、さらには2.0以下であることが好ましい。なお、高屈折率微粒子(C)の屈折率は、JIS K7142:2014のB法に準じて測定した値とする。
【0071】
また、高屈折率化成分の塗膜の屈折率は、得られる粘着剤が前述した屈折率を満たし易い観点から、1.4以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、特に1.6以上であることが好ましく、さらには1.7以上であることが好ましい。高屈折率化成分の屈折率の上限値は特に限定されないが、通常は3.0以下であることが好ましく、特に2.0以下であることが好ましく、さらには1.8以下であることが好ましい。なお、高屈折率化成分の塗膜の屈折率は、JIS K0062-1992に準じて測定した値とする。
【0072】
粘着性組成物P中における高屈折率微粒子(C)の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、特に35質量%以上であることが好ましく、さらには45質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、特に70質量%以下であることが好ましく、さらには65質量%以下であることが好ましい。高屈折率微粒子(C)の含有量が上記の範囲内にあると、前述した屈折率、貯蔵弾性率G’およびヘイズ値が満たされ易くなるとともに、良好な粘着性が維持される。なお、高屈折率微粒子(C)が、粘着性組成物Pに高屈折率化成分として配合される場合、上記の「粘着性組成物P中における高屈折率微粒子(C)の含有量」は、「粘着性組成物P中における高屈折率化成分の固形分(高屈折率微粒子(C)の他、分散剤等のマトリックス)の含有量」であるものとする。
【0073】
(1-4)活性エネルギー線硬化性成分(D)
本実施形態における粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有する場合、当該粘着性組成物Pを熱架橋および活性エネルギー線硬化して得られる粘着剤においては、活性エネルギー線硬化性成分(D)が互いに重合し、その重合した活性エネルギー線硬化性成分(D)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の架橋構造(三次元網目構造)に絡み付くものと推定される。かかる高次構造を有する粘着剤は、前述したゲル分率および貯蔵弾性率G’を満たし易い。
【0074】
活性エネルギー線硬化性成分(D)は、活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、多官能アクリレート系モノマー、オリゴマーまたはポリマーであることが好ましく、それらの混合物であってもよい。なお、活性エネルギー線硬化性成分(D)が少なくとも多官能アクリレート系モノマーを含有することにより、当該活性エネルギー線硬化性成分(D)を高屈折率微粒子(C)の分散剤として使用することができる。
【0075】
(1-5)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、シランカップリング剤、光重合開始剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。なお、上記の高屈折率化成分に含まれない活性エネルギー線硬化性成分(D)は、ここでいう添加剤に含まれ得るものとする。また、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0076】
粘着性組成物Pは、上記のシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤層において、被着体である屈曲性部材との密着性が向上し、粘着力がより好ましいものとなる。
【0077】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0078】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤層は、被着体である屈曲性部材との密着性が向上し、粘着力がより大きいものとなる。
【0080】
粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有する場合において、粘着性組成物Pを硬化させる活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着性組成物Pは、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、従来公知のものを使用することができる。粘着性組成物P中における光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(D)100質量部に対して、0.1~30質量部程度である。
【0081】
粘着性組成物Pは、粘着付与剤を含有することも好ましい。粘着付与剤を含有することにより、薄膜の粘着剤層であっても所定の粘着力を得やすいからである。
【0082】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂等の天然樹脂、C5系、C9系、ジシクロペンタジエン系等の石油樹脂、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0083】
粘着性組成物Pが粘着付与剤を含有する場合、粘着性組成物P中における粘着付与剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、特に10質量部以上であることが好ましく、さらには15質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、90質量部以下であることが好ましく、特に50質量部以下であることが好ましく、さらには30質量部以下であることが好ましい。
【0084】
(2)粘着性組成物Pの製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、高屈折率微粒子(C)(または高屈折率化成分)とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
【0085】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。溶液重合法によって(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を重合することにより、得られる重合体の高分子量化と、分子量分布の調整とが容易となり、さらに低分子量体の生成を低減することが可能となる。このため、ゲル分率を比較的小さくして架橋の程度を緩めた場合であっても、屈曲に伴う粘着剤の偏りが生じ難く、耐剥離性に優れた粘着剤が得られ易い。
【0086】
溶液重合法で使用する重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0087】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0088】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0089】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0090】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、高屈折率微粒子(C)(または高屈折率化成分)、ならびに所望により添加剤および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
【0091】
なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0092】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0093】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0094】
(3)粘着剤の製造
本実施形態における粘着剤層11を構成する粘着剤は、好ましくは粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0095】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
【0096】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0097】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋されて架橋構造が形成され、粘着剤が得られる。
【0098】
粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有する場合、粘着剤層11を構成する粘着剤は、粘着性組成物Pを熱架橋および活性エネルギー線硬化してなるものであることが好ましい。この場合、上記のような加熱処理を行った後、活性エネルギー線を照射して粘着性組成物Pを硬化させることが好ましい。
【0099】
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0100】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cmであることが好ましく、80~5000mJ/cmであることがより好ましく、200~2000mJ/cmであることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
【0101】
粘着性組成物Pに対する活性エネルギー線の照射により、複数の活性エネルギー線硬化性成分(D)は互いに重合し、その重合した活性エネルギー線硬化性成分(D)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の架橋構造に絡み付くものと推定される。
【0102】
なお、高屈折率微粒子(C)は、粘着剤層11中に均一に分散していることが好ましい。高屈折率微粒子(C)が粘着剤層11中に均一に分散していると、ヘイズ値を再現性よく低い値に抑えることができる。
【0103】
(4)粘着剤層の厚さ
本実施形態に係る粘着シート1における粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、特に10μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの下限値が上記であると、所望の粘着力を発揮し易くなる。
【0104】
また、粘着剤層11の厚さは、上限値として1000μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、特に80μm以下であることが好ましく、さらには35μm以下であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの上限値が上記であると、屈曲により粘着剤層に発生する応力が大きくなり過ぎることを抑制し、耐光漏れ性をより優れたものにすることができる。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0105】
1-2.剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0106】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0107】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0108】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0109】
2.物性(粘着力)
本実施形態に係る粘着シート1のソーダライムガラスに対する粘着力は、下限値として0.01N/25mm以上であることが好ましく、0.05N/25mm以上であることがより好ましく、特に0.1N/25mm以上であることが好ましく、さらには1.0N/25mm以上であることが好ましい。粘着シート1のソーダライムガラスに対する粘着力の下限値が上記であると、長時間屈曲後の外観がより優れたものとなる。一方、上記粘着力の上限値については、特に制限されないが、リワーク性が必要な場合がある。このような観点から、上記粘着力は、50N/25mm以下であることが好ましく、40N/25mm以下であることがより好ましく、20N/25mm以下であることが特に好ましい。なお、本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0110】
3.粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例として、上記粘着性組成物Pを使用した場合について説明する。一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋して塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせ、所望により活性エネルギー線を照射する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0111】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋して塗布層を形成し、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋して塗布層を形成し、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせ、所望により活性エネルギー線を照射する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が比較的厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0112】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0113】
本実施形態における粘着剤層11は、上記のように形成することにより、高屈折率微粒子(C)が層中に均一に分散した構造となる。
【0114】
〔表示体〕
上記粘着シート1を使用することにより、各種の光学部材や光学製品を製造することができ、特に表示体を製造することができる。表示体の種類としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチック基板(フィルム)を用いた液晶ディスプレイ等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。上記の表示体の中でも、有機ELディスプレイが特に好ましい。有機ELディスプレイでは光取り出し効率が要求されることが多いが、上記粘着シート1の粘着剤層11は高屈折率であることから光取り出し効率に優れるため、当該粘着シート1は特に有機ELディスプレイ用として有用である。
【0115】
また、上記の表示体は、屈曲可能なディスプレイであってもよく、繰り返し屈曲可能なディスプレイ(フォルダブルディスプレイ)であってもよい。
【0116】
一例としての表示体、具体的には有機ELディスプレイを図2に示す。図2に示される表示体3は、上から順に、カバーフィルム31と、第1の粘着剤層32と、偏光フィルム33と、第2の粘着剤層34と、タッチセンサーフィルム35と、第3の粘着剤層36と、有機EL素子37と、第4の粘着剤層38と、TFT基板39とを積層して構成される。上記のカバーフィルム31、偏光フィルム33、タッチセンサーフィルム35、有機EL素子37およびTFT基板39は、屈曲可能な屈曲性部材であってもよい。
【0117】
第1の粘着剤層32、第2の粘着剤層34、第3の粘着剤層36および第4の粘着剤層38の少なくともいずれか1層は、前述した粘着シート1の粘着剤層11である。第1の粘着剤層32、第2の粘着剤層34、第3の粘着剤層36および第4の粘着剤層38のいずれか2層以上が前述した粘着シート1の粘着剤層11であることが好ましく、全ての粘着剤層32,34,36,38が粘着シート1の粘着剤層11であることが最も好ましい。
【0118】
上記の表示体3は、長期間屈曲状態に置いた場合にも、屈曲による光漏れが抑制される。
【0119】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0120】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の部材(例えば屈曲性部材)が積層されてもよい。
【実施例
【0121】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0122】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸n-ブチル25質量部、アクリル酸2-フェノキシエチル60質量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル15質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)80万であった。
【0123】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(綜研化学社製,製品名「L-45」)0.3質量部と、高屈折率微粒子(C)としての酸化ジルコニウム微粒子を含む高屈折率化成分(C1;サカタインクス社製,製品名「エコステージ TM RT-HRU-1」)100質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Si1)0.3質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0124】
3.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0125】
次いで、上記塗布層に対し、軽剥離型剥離シートをその剥離処理面が塗布層に接するように積層し、当該軽剥離型剥離シート越しに、以下の条件で紫外線を照射し、上記塗布層を硬化させて、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。これにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:25μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを製造した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0126】
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,光量200mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0127】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
BA:アクリル酸n-ブチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
PhEA:アクリル酸2-フェノキシエチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
AA:アクリル酸
[高屈折率微粒子(C)]
C1:ナノオーダーの酸化ジルコニウム微粒子を含む高屈折率化成分(サカタインクス社製,製品名「エコステージ TM RT-HRU-1」,酸化ジルコニウム微粒子の他、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および分散溶媒を含む分散溶液,単体塗膜の屈折率:1.73(JIS K0062-1992に準じた測定値))
C2:酸化ジルコニウム微粒子(大研化学社製,製品名「DLZ-007」,平均粒径:10nm,分散溶媒:メチルエチルケトン,分散溶液濃度:40質量%,微粒子の屈折率:1.9(JIS K7142:2014のB法に準じた測定値))
C3:酸化ジルコニウム微粒子(堺化学社製,製品名「SZR-K」,平均粒径:6nm,分散溶媒:メチルエチルケトン(63質量%)およびメタノール(7質量%),分散溶液濃度:30質量%,微粒子の屈折率:1.9(JIS K7142:2014のB法に準じた測定値))
[シランカップリング剤]
Si1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
Si2:3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
[粘着付与剤]
T1:ロジン系タッキファイヤー(荒川化学社製,製品名「パインクリスタル ME-GH」)
T2:ロジン系タッキファイヤー(荒川化学社製,製品名「パインクリスタル ME-G」)
【0128】
〔実施例2~8,比較例1~5〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、高屈折率微粒子(C)の種類および配合量、シランカップリング剤の種類、ならびに粘着付与剤の種類および配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0129】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0130】
〔試験例1〕(相溶性の評価)
実施例および比較例で調製した粘着性組成物の塗布溶液をバイアル瓶に分取し、塗布溶液の濁り具合を目視により判断した。また、実施例および比較例にて重剥離型剥離シートの剥離処理面に形成した塗布層の状態を目視により判断した。それらの判断結果に基づき、以下の基準により粘着性組成物の相溶性を評価した。結果を表2に示す。
〇:塗布溶液は透明であり、塗布層も透明であった。
△:塗布溶液は白濁していたが、塗布層では透明であった。
×:塗布溶液は白濁しており、塗布層にしても透明性が改善することはなかった。
【0131】
なお、比較例3及び4の粘着性組成物の塗布溶液は、ゲル化して塗布ができず、粘着剤層を形成することができなかったため、他の試験例を行わなかった。
【0132】
〔試験例2〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(品名:テトロンメッシュ #200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0133】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
【0134】
〔試験例3〕(ゾル分の重量平均分子量の測定)
試験例2のゲル分率の測定で使用した酢酸エチルをエバポレーターで濃縮することにより、ゾル分を得た。次いで、ゾル分をテトラヒドロフランで0.3質量%溶液になるように希釈し、0.45μmのフィルターで濾過した後、GPC測定によりゾル分の重量平均分子量(Mw)を測定した。なお、GPC測定の測定条件は前述のとおりである。結果を表2に示す。
【0135】
〔試験例4〕(貯蔵弾性率G’の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、厚さ800μmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ800μm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0136】
上記サンプルについて、JIS K7244-1に準拠し、粘弾性測定装置(Anton paar社製,製品名「MCR302」)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率G’を測定し、23℃における貯蔵弾性率G’(MPa)および80℃における貯蔵弾性率G’(MPa)を取得した。結果を表2に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:-20℃~150℃
昇温速度:2℃/分
【0137】
〔試験例5〕(屈折率の測定)
実施例および比較例で調製した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を溶剤希釈して、剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP-PET382150」)の剥離面上に、層状に塗布した。そして、90℃で1分間加熱処理して、厚さ25μmの塗布層とした。形成された塗布層の屈折率を、アッベ屈折計(アタゴ社製,製品名「アッベ屈折計DR-M2」,Na光源,波長:589nm)を使用して、JIS K0062-1992に準じて測定した。結果を表1に示す。
【0138】
また、実施例および比較例で製造した粘着シートの粘着剤層の屈折率を、上記と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0139】
なお、比較例1及び2の粘着剤層は白化していたため、屈折率の測定はできなかった。
【0140】
〔試験例6〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートの粘着剤層をガラスに貼合して、これを測定用サンプルとした。ガラスでバックグラウンド測定を行った上で、上記測定用サンプルについて、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH5000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0141】
〔試験例7〕(全光線透過率の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートの粘着剤層をガラスに貼合して、これを測定用サンプルとした。ガラスでバックグラウンド測定を行った上で、上記測定用サンプルについて、JIS K7361-1:1997に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH5000」)を用いて全光線透過率(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0142】
〔試験例8〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、重剥離型剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、110mm長に裁断した。
【0143】
23℃、50%RHの環境下にて、上記積層体から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層をソーダライムガラス板(日本板硝子社製,製品名「ソーダライムガラス」,厚さ:1.1mm)の一方の面に貼付し、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で、PETフィルムと粘着剤層との積層体を被着体から剥離したときの粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
【0144】
〔試験例9〕(耐光漏れ性の評価)
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ25μm)、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム偏光子(厚さ12μm)、およびシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(厚さ23μm)がその順に積層されてなるCOP偏光板(厚さ60μm)を複数枚用意した。それらCOP偏光板における粘着剤層と貼合される側の面をコロナ処理した。
【0145】
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、一のCOP偏光板のTACフィルム側に貼付した。次いで、重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、別のCOP偏光板のCOPフィルム側に、クロスニコル状態になるように貼り合わせた。そして、千代田電機工業社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。このようにして得たCOP偏光板/粘着剤層/COP偏光板からなる積層体を、50mm幅、200mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0146】
得られたサンプルを、耐久試験機(ユアサシステム機器社製,製品名「面状体無負荷U字伸縮試験機 形式:CL09-typeD01-FSC90」)を用いて、図3に示すように、立設した2枚のガラス板からなる保持プレート(相互間距離:3mm)の間に、屈曲させた状態で1000時間保持した(試験条件は以下の通り)。その後、23℃、50%RHの環境下にて屈曲状態を解放して24時間放置した。そして、バックライト(電通産業社製,製品名「HF-SL-A312LC」)の透過光により、光漏れを目視により確認し、以下の基準により耐光漏れ性を評価した。結果を表2に示す。
【0147】
<試験条件>
屈曲方向:一方のCOP偏光板のTACフィルムが外側、他方のCOP偏光板のCOPフィルムが内側になるよう屈曲
最小屈曲径:3mmφ
屈曲時間:1000時間
試験環境:60℃,50%RH
<耐光漏れ性の評価基準>
◎…屈曲部に光漏れが発生しなかった。
〇…屈曲部にわずかに光漏れが発生したが、実用上問題のないレベルであった。
△…屈曲部に光漏れが発生した。
×…屈曲部に光漏れが発生するとともに、当該光漏れは、屈曲部周辺まで広がりを有するものであった。
【0148】
〔試験例10〕(長時間屈曲後の外観の評価)
試験温度を80℃に変更する以外、試験例9と同様にして試験を行い、その後、以下の基準で長時間屈曲後の外観を評価した。
◎…屈曲部及びその周辺のいずれにも変化は見られなかった。
〇…屈曲部及びその周辺のいずれかで若干の気泡が確認されたが、剥がれは確認されなかった。
△…屈曲部及びその周辺のいずれかで連なる程度の気泡が確認されたが、剥がれは確認されなかった。
×…屈曲部及びその周辺のいずれかで大きめの気泡や剥がれが確認された。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
表2から分かるように、実施例の粘着シートの粘着剤層は、2つの屈曲性部材を貼合して屈曲状態に長時間置いたときに、耐光漏れ性に優れるものであった。また、実施例の粘着シートの粘着剤層は、長時間屈曲後の外観にも優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、表示体を構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するのに好適である。
【符号の説明】
【0153】
1…粘着シート
11…粘着剤層
12a,12b…剥離シート
3…表示体
31…カバーフィルム
32…第1の粘着剤層
33…偏光フィルム
34…第2の粘着剤層
35…タッチセンサーフィルム
36…第3の粘着剤層
37…有機EL素子
38…第4の粘着剤層
39…TFT基板
S…試験片
P…保持プレート
図1
図2
図3