(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20241031BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241031BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241031BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241031BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L29/78 301V
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652S
H01L29/78 658F
H01L29/78 658E
H01L29/78 652T
H01L27/088 A
(21)【出願番号】P 2020183604
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】倪 威
(72)【発明者】
【氏名】丸井 俊治
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 裕一
【審査官】石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-210994(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150467(WO,A1)
【文献】特開2011-249422(JP,A)
【文献】特開平11-103058(JP,A)
【文献】特開2006-049826(JP,A)
【文献】特開2012-06432(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111373547(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/8234
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の溝、および前記第1の溝と交差する前記第1の溝よりも浅い第2の溝が、主面にそれぞれ形成された基板と、
前記第1の溝の内壁面に配置されたゲート絶縁膜と、
前記第1の溝の内部に配置されたゲート電極と、
前記基板に形成され、前記第1の溝の側面の一部と接する第1導電型のドリフト領域と、
前記基板に形成され、前記第1の溝の前記ドリフト領域と接する側面を除く残余の側面において前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するチャネル領域を有する第2導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域の上部に形成され、前記チャネル領域を介して前記ドリフト領域と接続する第1導電型のソース領域と、
前記基板に形成され、前記ウェル領域から離間した位置で前記ドリフト領域と接続する第1導電型のドレイン領域と、
前記第2の溝の内壁面に配置されたゲート配線絶縁膜と、
前記第2の溝の内部に配置され、前記第1の溝と前記第2の溝の交差する部分で前記ゲート電極と電気的に接続するゲート配線と
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記基板の不純物濃度は前記ドリフト領域の不純物濃度よりも低く、
前記ウェル領域は、前記ドリフト領域よりも前記基板の膜厚方向に深く前記基板に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ウェル領域の下方まで前記第1の溝が延伸していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
平面視で前記第2の溝の少なくとも一部が前記ウェル領域に形成され、
前記第2の溝が形成されていない領域での前記基板の前記主面から前記ウェル領域の底面までの距離をX、前記第2の溝の深さをYとしたとき、前記第2の溝の直下での前記基板の前記主面から前記ウェル領域の底面までの距離がX+Yであり、
前記第1の溝の深さがX+Yよりも大きい
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
平面視で前記第2の溝の少なくとも一部が前記ドリフト領域に形成され、
前記第2の溝が形成されていない領域での前記基板の前記主面から前記ドリフト領域の底面までの距離をZ、前記第2の溝の深さをYとしたとき、前記第2の溝の直下での前記基板の前記主面から前記ドリフト領域の底面までの距離がY+Zである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2の溝の幅が、前記主面から前記基板の膜厚方向に沿って次第に細くなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2の溝の下端の前記ウェル領域と接する端部を中心として前記ウェル領域の膜厚を半径とする扇型形状であり、前記ウェル領域と重なる領域を有して前記基板に形成された、前記ウェル領域と同じ不純物濃度の第2導電型のウェル拡張領域を更に備える
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2の溝の下端の前記ドリフト領域と接する端部を中心として前記ドリフト領域の膜厚を半径とする扇型形状であり、前記ドリフト領域と重なる領域を有して前記基板に形成された、前記ドリフト領域と同じ不純物濃度の第1導電型のドリフト拡張領域を更に備える
ことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記基板が半絶縁性基板または絶縁性基板であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記基板が炭化珪素基板であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ゲート電極と前記ゲート配線が同じ材料であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート電極の材料がポリシリコン膜であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ゲート配線絶縁膜の膜厚が前記ゲート絶縁膜の膜厚よりも厚いことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項14】
基板の主面に、第1の溝、および前記第1の溝と交差する前記第1の溝よりも浅い第2の溝を形成する工程と、
前記第1の溝の内壁面にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の溝の内部にゲート電極を形成する工程と、
前記第1の溝の側面の一部と接する第1導電型のドリフト領域を前記基板に形成する工程と、
前記第1の溝の前記ドリフト領域と接する側面を除く残余の側面において前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するチャネル領域を有する第2導電型のウェル領域を、前記基板に形成する工程と、
前記チャネル領域を介して前記ドリフト領域と接続する第1導電型のソース領域を前記ウェル領域の上部に形成する工程と、
前記ウェル領域から離間した位置で前記ドリフト領域と接続する第1導電型のドレイン領域を前記基板に形成する工程と、
ゲート配線絶縁膜を前記第2の溝の内壁面に形成する工程と
前記第1の溝と前記第2の溝の交差する部分で前記ゲート電極と電気的に接続するゲート配線を前記第2の溝の内部に形成する工程と、
を含み、
前記第2の溝を形成したあと、前記ドリフト領域および前記ウェル領域をイオン注入法により形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1の溝および前記第2の溝を形成した後、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート配線絶縁膜を熱酸化法またはCVD法により一括で形成することを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記ゲート絶縁膜および前記ゲート配線絶縁膜を形成した後、前記ゲート電極と前記ゲート配線を減圧CVD法により一括で形成することを特徴とする請求項14又は15に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート電極を有する半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路のセル領域の表面に、トランジスタの各領域と電気的に接続する配線が配置される。例えば、ゲート電極と接続するゲート配線が基板の主面に配置される。配線の電気抵抗(以下、「配線抵抗」とも称する。)を低減するために、配線の幅を広げる対策を取り得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、配線の幅を広げると、セルピッチが拡大する。その結果、半導体集積回路の集積度が低減する。
【0005】
本発明は、配線抵抗を低減し、かつ半導体集積回路の集積度の低減を抑制できる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体装置は、第1の溝および第1の溝よりも浅い第2の溝が主面にそれぞれ形成された基板と、第1の溝の内部に配置されたゲート電極と、第2の溝の内部に配置されたゲート配線を備える。第1の溝と第2の溝の交差する部分で、ゲート電極とゲート配線は電気的に接続する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、配線抵抗を低減し、かつ半導体集積回路の集積度の低減を抑制できる半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図1のII-II方向に沿った模式的な断面図である。
【
図3】
図1のIII-III方向に沿った模式的な断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV方向に沿った模式的な断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である(その1)。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である(その2)。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である(その3)。
【
図8】本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の他の構成を示す模式的な断面である。
【
図10】本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の他の構成を示す模式的な断面である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図12】本発明のその他の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる部分を含む。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を
図1に示す。
図1に示す半導体装置は、第1の溝および第1の溝と交差する第2の溝が第1主面101にそれぞれ形成された基板10と、第1の溝の内部に配置されたゲート電極30と、第2の溝の内部に配置されたゲート配線40を備える。第2の溝は、第1の溝よりも浅く形成されている。第1の溝と第2の溝の交差する部分で、ゲート電極30とゲート配線40が電気的に接続する。ゲート電極30やゲート配線40は、例えばポリシリコン膜である。
【0011】
第1の溝の内壁面に、ゲート絶縁膜31が配置されている。第2の溝の内壁面に、ゲート配線絶縁膜41が配置されている。ゲート絶縁膜31やゲート配線絶縁膜41は、例えば酸化シリコン膜である。
【0012】
基板10は、半導体基板であってもよいし、半絶縁性基板や絶縁性基板であってもよい。ここで、絶縁性基板は、抵抗率が数kΩ/cm以上の半導体基板のことをいう。例えば、基板10は絶縁性炭化珪素基板である。
【0013】
基板10の上部に、第1導電型のドリフト領域11、第2導電型のウェル領域12、第1導電型のソース領域13および第1導電型のドレイン領域14が形成されている。ドリフト領域11、ウェル領域12、ソース領域13およびドレイン領域14の上面は、基板10の第1主面101に露出している。
【0014】
ドリフト領域11は、基板10の上部の一部に選択的に形成されている。基板10の不純物濃度は、ドリフト領域11の不純物濃度よりも低く設定される。ドリフト領域11は、第1の溝の側面の一部と接する。
【0015】
ウェル領域12は、ドリフト領域11の形成されていない領域において、基板10の上部の一部に形成されている。ウェル領域12は、ゲート絶縁膜31を介してゲート電極30と対向する領域(以下において、「チャネル領域」とも称する。)を有する。チャネル領域は、第1の溝のドリフト領域11が接する側面を除く残余の側面において、ゲート電極30と対向する。ウェル領域12のチャネル領域は、ドリフト領域11と接する。半導体装置のオン動作時に、チャネル領域に反転層が形成される。
【0016】
ソース領域13は、ウェル領域12の上部の一部に形成され、ウェル領域12のチャネル領域を介してドリフト領域11と接続する。ソース領域13は、ドリフト領域11と接する側面に対向する第1の溝の側面において、第1の溝と接する。つまり、ウェル領域12のチャネル領域は、第1の溝の側面のうち、ドリフト領域11が接する側面およびソース領域13が接する側面のそれぞれに隣接する側面において、ゲート絶縁膜31を介してゲート電極30と対向する。
【0017】
ドレイン領域14は、ウェル領域12から離間した位置でドリフト領域11と接続する。
図1に示す半導体装置では、ドリフト領域11の上部の一部にドレイン領域14が形成されている。
【0018】
第1導電型と第2導電型とは互いに反対導電型である。即ち、第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型である。以下では、第1導電型をn型、第2導電型をp型とする場合について説明する。
【0019】
基板10の第1主面101における第1の溝の開口部は、ドリフト領域11、ウェル領域12およびソース領域13にまたがる。第1主面101における第2の溝の開口部は、ウェル領域12に形成されている。ただし、第2の溝が、ウェル領域12とドリフト領域11にまたがって形成されていてもよい。ゲート配線絶縁膜41は、ドリフト領域11、ウェル領域12およびソース領域13を、ゲート配線40と電気的に絶縁する。
【0020】
図2に、第1の溝の延伸方向と垂直な方向に沿った半導体装置の断面図を示す。
図3に、第2の溝の延伸方向と垂直な方向に沿った半導体装置の断面図を示す。
図1では図示を省略したが、基板10の第1主面101にソース電極50とドレイン電極60が配置されている。ソース電極50は、ソース領域13およびウェル領域12と電気的に接続する。ドレイン電極60は、ドレイン領域14と電気的に接続する。
図3に示すように、ウェル領域12のチャネル領域121は、第2の溝の下端よりも深い位置において第1の溝の側面に沿ったウェル領域12である。
【0021】
図4に、第2の溝の延伸方向に沿った半導体装置の断面図を示す。内部にゲート電極30が配置された第1の溝は、基板10の表面から、ウェル領域12を貫通して、ウェル領域12の下方まで延伸している。
図4に示すように、第2の溝と交差する領域を除いて、第1の溝の内壁面にゲート絶縁膜31が配置されている。そして、第1の溝と交差する領域を除いて、第2の溝の内壁面にゲート配線絶縁膜41が配置されている。
図4に示すように、第2の溝の内部に配置されたゲート配線40は、第1の溝と第2の溝の交差する部分で複数のゲート電極30に接続する。ゲート配線40を介して、所定のゲート電圧がゲート電極30に供給される。
【0022】
図2および
図3に示すように、基板10の第1主面101の面法線方向から見て(以下、「平面視」とも称する。)、第2の溝の少なくとも一部がウェル領域12に形成されている。ここで、第2の溝が形成されていない領域での基板10の第1主面101からウェル領域12の底面までの距離をX、第2の溝の深さをYとする。第2の溝の直下での基板10の第1主面101からウェル領域12の底面までの距離はX+Yである。第1の溝はウェル領域12を貫通しており、第1の溝の深さTは、X+Yよりも大きい。
【0023】
ウェル領域12は、ドリフト領域11よりも基板10の膜厚方向に深く基板10に形成されている。つまり、基板10の第1主面101からドリフト領域11の底面までの距離をZとすると、X>Zである。このように、ウェル領域12の底面は、ドリフト領域11の底面よりも下方に位置する。
【0024】
以下に、
図1に示した半導体装置の基本的な動作について説明する。
【0025】
オン動作において、ソース電極50の電位を基準として、ドレイン電極60に正の電位を印加した状態で、ゲート電極30の電位を制御する。これにより、半導体装置がトランジスタとして動作する。即ち、ゲート電極30とソース電極50間の電圧を所定の閾値電圧以上にすることにより、ウェル領域12のチャネル領域に反転層が形成される。その結果、半導体装置がオン状態となり、ソース電極50とドレイン電極60の間に主電流が流れる。
【0026】
一方、オフ動作では、ゲート電極30とソース電極50間の電圧を所定の閾値電圧以下にする。これにより、ウェル領域12の反転層が消滅し、ソース電極50とドレイン電極60の間で主電流が遮断される。
【0027】
半導体装置の動作において、複数のゲート電極30の電位は、ゲート配線40を介して同一の電位に設定される。なお、ゲート絶縁膜31を介してゲート電極30と対向するウェル領域12のチャネル領域は、ゲート配線40の下端よりもゲート電極30の深い部分に形成される。ゲート電極30を深い位置まで形成することにより、チャネル領域の幅も拡大する。これにより、チャネル領域の電気抵抗(チャネル抵抗)を低減することができる。
【0028】
以上に説明したように、
図1に半導体装置は、ゲート配線40を基板10に埋め込む構造である。ゲート配線40の配線抵抗を低減するためには、第2の溝を基板10の膜厚方向に沿って深く形成すればよい。したがって、ゲート配線40の配線抵抗を低減するために、平面視でゲート配線40の幅を広くする必要はない。このため、セルピッチの拡大は抑制される。その結果、第1の実施形態に係る半導体装置によれば、ゲート配線40の配線抵抗を低減し、かつ、半導体集積回路の集積度の低減を抑制できる。
【0029】
また、第1の実施形態に係る半導体装置によれば、ゲート配線40を基板10に埋め込むことにより、基板10の主面の平坦性を向上できる。このため、基板10の主面の段差によって基板10の主面に配置した配線が切断されたり配線の幅が細ったりすることが抑制される。その結果、半導体装置の信頼性が向上する。
【0030】
更に、基板10の不純物濃度がドリフト領域11の不純物濃度よりも低いため、ウェル領域12の端部が接する領域の不純物濃度が低い。このため、半導体装置において電界集中が緩和され、耐圧が向上する。
【0031】
また、第1の実施形態に係る半導体装置では、ウェル領域12が、ドリフト領域11よりも基板10の膜厚方向に深く形成されている。そして、第1の溝がウェル領域12の下方まで延伸し、ゲート電極30が基板10の膜厚方向に深く配置されている。このため、第1の溝の側面に形成されるチャネル領域について、基板10の膜厚方向に沿った幅を広く維持できる。これにより、チャネル抵抗の増大を抑制できる。その結果、半導体装置のオン抵抗を低減できる。
【0032】
第2の溝の少なくとも一部がウェル領域12に形成された場合に、第1の溝の深さTは、第2の溝の直下での基板10の第1主面101からウェル領域12の底面までの距離X+Yよりも大きい。
図1に示す半導体装置は、チャネル領域を拡張することでチャネル幅が大きくなる構造なので、T>X+Yとすることにより、チャネル抵抗を低減できる。
【0033】
基板10に、半絶縁性基板や絶縁性基板を使用してもよい。これにより、第1主面101に対向する基板10の裏面にリーク電流が流れることを抑制できる。また、基板10を半絶縁性基板や絶縁性基板にすることにより、同一の基板10に複数の半導体装置を集積する際の素子分離プロセスを簡易化することができる。
【0034】
基板10に、ワイドバンドギャップ半導体の基板を使用してもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)などである。例えば、絶縁性を有する炭化珪素基板を基板10に使用してもよい。SiCにはいくつかのポリタイプ(結晶多形)が存在するが、代表的な4HのSiC基板を基板10に使用できる。ドリフト領域11をワイドバンドギャップ半導体にすることにより、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0035】
以下に、図面を参照して本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能である。以下では、基板10にノンドープの絶縁性炭化珪素基板を用いる場合を説明する。
【0036】
まず、
図5に示すように、基板10の第1主面101に第2の溝400を形成する。例えば、基板10の第1主面101上にマスク材を形成する。そして、このマスク材をパターニングして、第2の溝400を形成する領域のマスク材を選択的に除去する。その後、パターニングしたマスク材をマスクとするドライエッチング法により、第2の溝400を形成する。
【0037】
一般的なマスク材としては、例えばシリコン酸化膜を用いることができる。マスク材の堆積法としては、熱CVD法やプラズマCVD法を用いてもよい。パターニングの方法としては、フォトリソグラフィ法を用いてもよい。即ち、パターニングされたフォトレジスト膜をマスクにしてマスク材をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウェットエッチング法や、反応性イオンエッチング法などのドライエッチング法を用いてもよい。その後、フォトレジスト膜を酸素プラズマや硫酸などで除去する。このようにして、マスク材がパターニングされる(以下において同様。)。
【0038】
次いで、
図6に示すように、n型のドリフト領域11、p型のウェル領域12、高不純物濃度のn型のソース領域13、および高不純物濃度のn型のドレイン領域14を、基板10に形成する。例えば、基板10の第1主面101にパターニングしたマスク材をマスクとするイオン注入法により、ドリフト領域11、ウェル領域12、ソース領域13およびドレイン領域14を形成する。なお、ウェル領域12の底面の位置は、第2の溝400の底面から不純物をイオン注入した領域においては、第1主面101から不純物をイオン注入した領域よりも下方である。
【0039】
上記のイオン注入法では、例えばn型不純物として窒素を用い、p型不純物としてアルミニウムやボロンを用いてもよい。なお、基板10の温度を600℃程度に加熱した状態で基板10にイオン注入することにより、イオン注入した領域に結晶欠陥が生じるのを抑制することができる。ドリフト領域11やウェル領域12の不純物濃度は、例えば1E15cm-3~1E19cm-3程度が好適である。ドリフト領域11やウェル領域12の底面の位置が第2の溝400の下端よりも下方になるように、ドリフト領域11やウェル領域12を形成する。
【0040】
イオン注入の後、熱処理により、基板10にドープした不純物を活性化させる。例えば、アルゴン雰囲気中や窒素雰囲気中で、1700℃程度の熱処理を行う。
【0041】
次に、
図7に示すように、第1の溝300を基板10の第1主面101に形成する。例えば、基板10の第1主面101上にパターニングしたマスク材をマスクとするドライエッチング法により、第1の溝300を形成する。第1主面101のドリフト領域11、ソース領域13およびウェル領域12にまたがる位置に、第1の溝300の開口部は形成される。また、第2の溝400と交差する位置に、第1の溝300を形成する。第1の溝300は、ウェル領域12を貫通する深さに形成される。
【0042】
その後、第1の溝300の内壁面にゲート絶縁膜31を形成し、第2の溝400の内壁面にゲート配線絶縁膜41を形成する。ゲート絶縁膜31の厚さは、例えば数十nm程度である。以下において、第1の溝300と第2の溝400を総称して、「溝」とも称する。
【0043】
熱酸化法またはCVD法により、ゲート絶縁膜31とゲート配線絶縁膜41を一括で形成してもよい。ゲート絶縁膜31とゲート配線絶縁膜41を熱酸化法で形成する場合、酸素雰囲気中で1100℃程度の温度に基板10を加熱する。これにより、基板10の酸素に触れるすべての部分において、シリコン酸化膜が形成される。或いは、直性NOかN2O雰囲気中での熱酸化によりゲート絶縁膜31とゲート配線絶縁膜41を形成してもよい。その場合の熱酸化の温度は、1100℃~1400℃が好適である。
【0044】
ゲート絶縁膜31とゲート配線絶縁膜41を形成した後、ウェル領域12とゲート絶縁膜31との界面の界面準位を低減するために、窒素、アルゴン、N2Oなどの雰囲気中で1000℃程度のアニール処理を行ってもよい。
【0045】
次に、第1の溝300を埋め込んでゲート電極30を形成し、第2の溝400を埋め込んでゲート配線40を形成する。ゲート電極30とゲート配線40を一括で形成してもよい。ゲート電極30の材料はポリシリコン膜が一般的であり、ここではポリシリコン膜をゲート電極30およびゲート配線40に使用する場合を説明する。ポリシリコン膜の堆積法としては、減圧CVD法を用いてもよい。例えば、堆積させるポリシリコン膜の厚さを溝の幅の2分の1よりも大きな値にして、溝の内部をポリシリコン膜で埋める。溝の内壁面からポリシリコン膜が形成されていくため、上記のようにポリシリコン膜の厚さを設定することにより、溝をポリシリコン膜によって完全に埋めることができる。例えば、溝の幅が2μmの場合は、膜厚が1μmよりも厚くなるようにポリシリコン膜を形成する。ポリシリコン膜を堆積した後に、オキシ塩化リン(POCl3)中で950℃のアニール処理をすることで、n型のポリシリコン膜を形成し、ゲート電極30やゲート配線40に導電性を持たせることができる。
【0046】
ポリシリコン膜は、エッチングなどにより平坦化する。エッチング方法は等方性エッチングでも異方性の選択エッチングでもよい。エッチング量は、溝の内部にポリシリコン膜が残るように設定する。例えば、幅が2μmの溝についてポリシリコン膜を1.5μmの厚さに堆積した場合、ポリシリコン膜のエッチング量は1.5μmにする。しかし、エッチングの制御において、1.5μmのエッチング量について数%のオーバーエッチングでも問題ない。
【0047】
その後、基板10の上面の全体を覆うように層間絶縁膜(図示略)を形成する。層間絶縁膜には、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜などを用いてもよい。そして、ソース領域13のソース電極50と接続する領域の上面の層間絶縁膜、およびドレイン領域14のドレイン電極60と接続する領域の上面の層間絶縁膜を除去する。例えば、フォトリソグラフィ技術などを用いて、パターニングしたレジスト膜をマスクとするドライエッチング法により、層間絶縁膜を選択的に除去する。このようにして、層間絶縁膜の開口部を形成する。その後、層間絶縁膜の開口部でソース領域13と接続するソース電極50、および、層間絶縁膜の開口部でドレイン領域14と接続するドレイン電極60を、それぞれ形成する。ソース電極50やドレイン電極60の電極材料としてはメタル材が一般的である。例えば、電極材料にチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などを使用してもよい。或いは、電極材料に、Ti/Ni/Agなどの積層メタルを使用してもよい。
【0048】
以上の工程により、
図1に示した半導体装置が完成する。上記の製造方法では、第2の溝400を形成したあと、ドリフト領域11およびウェル領域12をイオン注入法により形成する。これにより、第2の溝400の直下のドリフト領域11およびウェル領域12を一括で形成できるので、製造工数を低減できる。
【0049】
上記のようにゲート電極30とゲート配線40を同じ材料で形成することにより、ゲート電極30とゲート配線40の接触抵抗を低減できる。更に、ゲート電極30とゲート配線40を一括で形成することにより、製造工数を低減できる。
【0050】
また、ゲート電極30とゲート配線40をポリシリコン膜とすることにより、ゲート電極30とゲート配線40を減圧CVD法により形成できる。このため、溝の内部にゲート電極30とゲート配線40をカバレッジよく形成できる。
【0051】
また、ゲート絶縁膜31とゲート配線絶縁膜41を熱酸化法またはCVD法により一括で形成することにより、製造工数を低減できる。なお、ゲート配線絶縁膜41の膜厚を、ゲート絶縁膜31の膜厚よりも厚く形成してもよい。ゲート配線絶縁膜41の膜厚を厚くすることにより、第2の溝に埋め込まれたゲート配線40の端部とドレイン領域14との間の距離が広くなる。これにより、半導体装置の耐圧の低下を抑制できる。
【0052】
<変形例>
図8に示す第1の実施形態の変形例に係る半導体装置のように、平面視で第2の溝の少なくとも一部がドリフト領域11に形成されていてもよい。第2の溝が形成されていない領域での基板10の主面からドリフト領域11の底面までの距離をZとしたとき、第2の溝の直下での基板10の主面からドリフト領域11の底面までの距離はY+Zである。
【0053】
図8に示す半導体装置は、ゲート配線40を形成する第2の溝の深さの分だけ、ドリフト領域11を深くする構造である。このため、ゲート配線40の抵抗を低減するためにゲート配線40の断面積を大きくしても、ドリフト領域11を流れる電流の抵抗(ドリフト抵抗)の増大を抑制できる。
【0054】
図9に示すように、第2の溝の下端のウェル領域12と接する端部を中心とし、ウェル領域12の膜厚を半径とする、扇型形状のウェル拡張領域120を基板10に形成してもよい。ウェル拡張領域120は、ウェル領域12と同じ不純物濃度の第2導電型の領域である。ウェル拡張領域120は、ウェル領域12と重なる領域を有して基板10に形成される。
【0055】
図9に示す半導体装置は、チャネル領域を拡張することでチャネル幅を大きくした構造である。このため、チャネル抵抗を低減できる。
【0056】
ウェル拡張領域120は、ウェル領域12を形成した後に、ウェル領域12と同じ不純物をイオン注入することにより形成してもよい。例えば、第2の溝をドライエッチング法などにより形成した後、パターニングしたマスク材をマスクに用いたイオン注入法によってウェル領域12を形成する。次に、基板10を斜めに傾けた状態で追加の不純物をイオン注入することにより、ウェル拡張領域120を形成する。ウェル拡張領域120を形成するときの不純物濃度および注入する深さは、ウェル領域12の形成時と同様である。その後、ドリフト領域11、ソース領域13およびドレイン領域14をイオン注入法などにより形成する。
【0057】
また、
図10に示すように、第2の溝の下端のドリフト領域11と接する端部を中心とし、ドリフト領域11の膜厚を半径とする、扇型形状のドリフト拡張領域110を基板10に形成してもよい。ドリフト拡張領域110は、ドリフト領域11と同じ不純物濃度の第1導電型の領域である。ドリフト拡張領域110は、ドリフト領域11と重なる領域を有して基板10に形成される。
【0058】
図10に示す半導体装置は、ドリフト領域11を拡張することでドリフト領域11の幅を広くした構造である。このため、ドリフト抵抗を低減できる。
【0059】
ドリフト拡張領域110は、ドリフト領域11を形成した後に、ドリフト領域11と同じ不純物をイオン注入することにより形成してもよい。例えば、ドリフト領域11を形成した後に、基板10を斜めに傾けた状態で追加の不純物をイオン注入することにより、ドリフト拡張領域110を形成する。ドリフト拡張領域110を形成するときの不純物濃度および注入する深さは、ドリフト領域11の形成時と同様である。
【0060】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る半導体装置は、
図11に示すように、第1主面101に対向する基板10の第2主面102に露出するように、ドレイン領域14が配置されている。そして、ゲート配線40が内部に配置された第2の溝が、ウェル領域12から離間した位置でドリフト領域11に形成されている。ゲート電極30が内部に配置された第1の溝の開口部は、基板10の第1主面101に露出するドリフト領域11、ウェル領域12およびソース領域13にまたがって、第1主面101に形成されている。ドリフト領域11に囲まれた領域において、ゲート電極30とゲート配線40は接続している。他は、
図1に示した第1の実施形態と同様である。
【0061】
図11に示した半導体装置の基本的な動作は、
図1に示した半導体装置の基本的な動作と同様である。
図11に示した半導体装置では、ウェル領域12に形成されるチャネル領域を基板10の主面と平行に流れる電流は、ドリフト領域11を基板10の膜厚方向に流れる。
図11に示した半導体装置では、ゲート配線40がウェル領域12から離れた位置でドリフト領域11に配置されている。このため、
図11に示した半導体装置によれば、ゲート配線40による電流経路の阻害を、
図1に示した半導体装置よりも小さくできる。つまり、第2の実施形態に係る半導体装置によれば、内部にゲート配線40を配置した第2の溝を基板10に形成することによる、電流経路の電気抵抗に対する影響を、第1の実施形態に係る半導体装置よりも小さくできる。
【0062】
第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の例を以下に説明する。
【0063】
まず、基板10に、エピタキシャル成長法により、ドリフト領域11を形成する。基板10は、例えば高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素半導体基板である。炭化珪素半導体基板の部分が、ドレイン領域14である。
【0064】
次いで、パターニングしたマスク材をマスクに用いたイオン注入法によって、ウェル領域12とソース領域13をドリフト領域11の上部に選択的に形成する。イオン注入法および活性化の工程については、第1の実施形態で説明した方法と同様である。
【0065】
そして、フォトリソグラフィ技術などを用いて、第1の溝と第2の溝を形成する。次いで、第1の溝の内壁面にゲート絶縁膜31を形成した後、第1の溝の内部をゲート電極30で埋め込む。また、第2の溝の内壁面にゲート配線絶縁膜41を形成した後、第2の溝の内部をゲート配線40で埋め込む。ゲート電極30やゲート配線40の形成方法は、第1の実施形態と同様である。
【0066】
その後、基板10の第1主面101に、ソース領域13と電気的に接続するソース電極50を形成する。また、基板10の第2主面102に、ドレイン領域14と電気的に接続するドレイン電極60を形成する。ドレイン電極60には、例えばメタル材を使用する。以上により、
図11に示した半導体装置が完成する。
【0067】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0068】
例えば、
図12に示すように、基板10の主面から基板10の膜厚方向に沿って第2の溝の幅が次第に細くなるようにしてもよい。ゲート配線40を形成する第2の溝にテーパーをつけることにより、ゲート配線絶縁膜41の端部の角度が緩やかになる。これにより、電界集中を緩和できる。
【0069】
また、上記ではゲート電極30にn型のポリシリコン膜を使用する例を説明したが、p型のポリシリコン膜をゲート電極30に使用してもよい。また、他の半導体材料をゲート電極30に使用してもよいし、メタル材などの他の導電性材料をゲート電極30に使用してもよい。例えば、p型のポリ炭化ケイ素、SiGe、Alなどをゲート電極30の材料に使用してもよい。
【0070】
また、ゲート絶縁膜31にシリコン酸化膜を使用する例を説明したが、シリコン窒化膜をゲート絶縁膜31に使用してもよい。または、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層膜をゲート絶縁膜31に使用してもよい。
【0071】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0072】
10…基板
11…ドリフト領域
12…ウェル領域
13…ソース領域
14…ドレイン領域
30…ゲート電極
31…ゲート絶縁膜
40…ゲート配線
41…ゲート配線絶縁膜
50…ソース電極
60…ドレイン電極
110…ドリフト拡張領域
120…ウェル拡張領域
121…チャネル領域