(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】起泡性水中油型乳化油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20241031BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
A23D7/00 508
A23L9/20
(21)【出願番号】P 2020191149
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】磯部 敏秀
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-508798(JP,A)
【文献】特開2003-169616(JP,A)
【文献】特表2014-504885(JP,A)
【文献】特開平01-148164(JP,A)
【文献】特表2015-533500(JP,A)
【文献】特開2018-157805(JP,A)
【文献】特表2018-504131(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0035678(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00
A23L 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂を15~40重量%、水分を36~57重量%、糖類を17~23重量%(乾燥重量)、ソルビン酸カリウムを0.01~0.25重量%、タンパク質を0.048~0.8重量%含有し、乳化剤Aを0.3~0.5重量%、乳化剤Bを0.1~0.25重量%、乳化剤Cを0.1~0.25重量%含有し、且つ乳化剤B/乳化剤A(重量比)が0.2~0.67、乳化剤C/(乳化剤A+乳化剤B)(重量比)が0.14~0.5であり、多糖類Xを0.01~0.4重量%、多糖類Yを0.1~0.3重量%含有し、且つ多糖類Y/多糖類X(重量比)が0.25~30であり、カルシウムを2~75ppm含有し、
前記油脂全体中、油脂Aの含有量が48~100重量%であり、
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物中の油滴のメジアン径が0.1~1.2μmであり、
pHが3~6である、
常温販売用ホイップドクリームの作製に用いる起泡性水中油型乳化油脂組成物。
油脂A:C
12以下の飽和脂肪酸を構成脂肪酸全体中50~60重量%含み、25℃のSFCが20~85%、且つ35℃のSFCが3~15%である油脂。
乳化剤A:HLBが12~18、且つC
16~C
18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含むポリソルベート
乳化剤B:HLBが0~9、且つC
16~C
18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含むポリグリセリン脂肪酸エステル
乳化剤C:C
16~C
18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含む、蒸留されたグリセリン酸脂肪酸モノエステル
多糖類X:脱アシル型ジェランガム
多糖類Y:2%水溶液の20℃での粘度が20~110mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
【請求項2】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物中の乳化剤A、乳化剤B及び乳化剤Cの混合物のHLB(加重平均)が9.5~12.9である、請求項1に記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかに記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物がホイップされた、オーバーランが200~350%である常温販売用ホイップドクリーム。
【請求項4】
請求項3に記載の常温販売用ホイップドクリームを、サンド、ナッペ、フィリング、又はトッピングした食品。
【請求項5】
起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂を15~40重量%、水分を36~57重量%含有し、前記油脂全体中、油脂Aの含有量が48~100重量%であり、油滴のメジアン径が0.1~1.2μmである起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法であって、水に、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、乳化剤Aを0.3~0.5重量%、糖類を17~23重量%(乾燥重量)、ソルビン酸カリウムを0.01~0.25重量%、タンパク質を0.048~0.8重量%、多糖類Xを0.01~0.4重量%、多糖類Yを0.1~0.3重量%、カルシウムを2~75ppm含み、且つ多糖類Y/多糖類X(重量比)が0.25~30となるよう各々を溶解した水相部に、前記油脂に、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、乳化剤Bを0.1~0.25重量%、乳化剤Cを0.1~0.25重量%含み、乳化剤B/乳化剤A(重量比)が0.2~0.67且つ乳化剤C/(乳化剤A+乳化剤B)(重量比)が0.14~0.5となるように各々を溶解した油相部を添加して予備乳化し、1段目5~52MPa/2段目3~12の圧力で均質化した後に、殺菌処理することを特徴とする、pHが3~6である、常温販売用ホイップドクリームの作製に用いる起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法。
油脂A:C
12
以下の飽和脂肪酸を構成脂肪酸全体中50~60重量%含み、25℃のSFCが20~85%、且つ35℃のSFCが3~15%である油脂
乳化剤A:HLBが12~18、且つC
16
~C
18
の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含むポリソルベート
乳化剤B:HLBが0~9、且つC
16
~C
18
の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含むポリグリセリン脂肪酸エステル
乳化剤C:C
16
~C
18
の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含む、蒸留されたグリセリン酸脂肪酸モノエステル
多糖類X:脱アシル型ジェランガム
多糖類Y:2%水溶液の20℃での粘度が20~110mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイップドクリーム用の起泡性水中油型乳化油脂組成物、並びに、該組成物がホイップされた常温販売用ホイップドクリーム及びそれを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の販売形態において、設備やエネルギーの観点から、常温で販売できて、日持ちのする食品が重要になってきており、菓子やパンでも同様で、更にソフトで軽い食感が求められている。そこで、このような菓子やパンとの相性の良さの観点から、口溶けが良好で、食感が軽くソフトで、常温でも形崩れせず良好な保形性を有し、且つ離水しにくいホイップドクリームが望まれている。
【0003】
常温での販売を可能にするためには、通常、糖を多くして静菌作用を強めたり、融点の高い油脂を用いて保形性を高める。その状態でオーバーランが低いと口溶けが悪く、重い食感の甘いホイップドクリームになる。そこで、オーバーランを高めるためには、通常、乳化剤を多用したり、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使用する。しかし、それでも常温での保形性や離水耐性は不充分であり、また乳化剤が多いと異味が強くなるし、HPMCが多過ぎると粘性が上がって口溶けが悪化したり、オーバーランが低下したり、離水耐性が低下したり、溶解させ難いために生産性が落ちる。
【0004】
例えば、特許文献1には水溶性炭水化物と、(b1)水素化植物性脂肪と、(c)9未満のHLBを有する乳化剤配合物と、(d1)第1のHPMCと、(d2)第2のHPMCと、(e)タンパク質と、(g)水と、を含み、第2のHPMC(d2)に対する第1のHPMC(d1)の重量比が特定の範囲内にある、高いオーバーラン、硬度(口当たり)、高さ変化率、及び良好な離水性を有するホイップトッピング組成物が開示されている。しかしながら、実施例1のホイップトッピング組成物は、オーバーラン292%で、25℃で5日間での保形性や離水耐性は良好なものの、水分少な目且つHPMC含量が多いため、口溶けが悪く、実施例2のホイップトッピング組成物は、オーバーラン309%で、HPMC含量が多いが水分が多く、口溶けに問題はないものの、離水耐性が不十分であり、25℃1日間で離水が発生するため常温販売に耐えられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、常温販売が容易にできるにもかかわらず、高オーバーランで、保形性及び離水耐性を有し、口溶けに問題がない甘さ控えめのホイップドクリーム、及びその原料となる起泡性水中油型乳化油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油脂、水分、糖類、ソルビン酸カリウム、タンパク質を特定量含み、特定の乳化剤を特定量含み、特定の多糖類を特定量含み、カルシウムを特定量含み、前記油脂中に特定の油脂を特定量含み、油滴のメジアン径及びpHが特定範囲である起泡性水中油型乳化油脂組成物を起泡させて得たホイップドクリームは、高オーバーラン、25℃で5日の保形性および離水耐性を実現でき、口溶けに問題がなく、甘さ控えめであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂を15~40重量%、水分を36~57重量%、糖類を17~23重量%(乾燥重量)、ソルビン酸カリウムを0.01~0.25重量%、タンパク質を0.048~0.8重量%含有し、乳化剤Aを0.3~0.5重量%、乳化剤Bを0.1~0.25重量%、乳化剤Cを0.1~0.25重量%含有し、且つ乳化剤B/乳化剤A(重量比)が0.2~0.67、乳化剤C/(乳化剤A+乳化剤B)(重量比)が0.14~0.5であり、多糖類Xを0.01~0.4重量%、多糖類Yを0.1~0.3重量%含有し、且つ多糖類Y/多糖類X(重量比)が0.25~30であり、カルシウムを2~75ppm含有し、前記油脂全体中、油脂Aの含有量が48~100重量%であり、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物中の油滴のメジアン径が0.1~1.2μmであり、pHが3~6である、常温販売用ホイップドクリームの作製に用いる起泡性水中油型乳化油脂組成物(油脂A:C12以下の飽和脂肪酸を構成脂肪酸全体中50~60重量%含み、25℃のSFCが20~85%、且つ35℃のSFCが3~15%である油脂、乳化剤A:HLBが112~18、且つC16~C18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含むポリソルベート、乳化剤B:HLBが0~9、且つC16~C18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含むポリグリセリン脂肪酸エステル、乳化剤C:C16~C18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含む、蒸留されたグリセリン酸脂肪酸モノエステル、多糖類X:脱アシル型ジェランガム、多糖類Y:2%水溶液の20℃での粘度が20~110mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース)に関する。好ましい実施態様は、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物中の乳化剤A、乳化剤B及び乳化剤Cの混合物のHLB(加重平均)が9.5~12.9である、前記記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物に関する。
本発明の第二は、前記記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物がホイップされた、オーバーランが200~350%である常温販売用ホイップドクリームに関する。
本発明の第三は、前記記載の常温販売用ホイップドクリームを、サンド、ナッペ、フィリング、又はトッピングした食品に関する。
本発明の第四は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂を15~40重量%、水分を36~57重量%含有し、前記油脂全体中、油脂Aの含有量が48~100重量%であり、油滴のメジアン径が0.1~1.2μmである起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法であって、水に、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、乳化剤Aを0.3~0.5重量%、糖類を17~23重量%(乾燥重量)、ソルビン酸カリウムを0.01~0.25重量%、タンパク質を0.048~0.8重量%、多糖類Xを0.01~0.4重量%、多糖類Yを0.1~0.3重量%、カルシウムを2~75ppm含み、且つ多糖類Y/多糖類X(重量比)が0.25~30となるよう各々を溶解した水相部に、前記油脂に、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、乳化剤Bを0.1~0.25重量%、乳化剤Cを0.1~0.25重量%含み、乳化剤B/乳化剤A(重量比)が0.2~0.67且つ乳化剤C/(乳化剤A+乳化剤B)(重量比)が0.14~0.5となるように各々を溶解した油相部を添加して予備乳化し、1段目5~52MPa/2段目3~12の圧力で均質化した後に、殺菌処理することを特徴とする、pHが3~6である、常温販売用ホイップドクリームの作製に用いる起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法(油脂A:C12以下の飽和脂肪酸を構成脂肪酸全体中50~60重量%含み、25℃のSFCが20~85%、且つ35℃のSFCが3~15%である油脂、乳化剤A:HLBが12~18、且つC16~C18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含むポリソルベート、乳化剤B:HLBが0~9、且つC16~C18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含むポリグリセリン脂肪酸エステル、乳化剤C:C16~C18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含む、蒸留されたグリセリン酸脂肪酸モノエステル、多糖類X:脱アシル型ジェランガム、多糖類Y:2%水溶液の20℃での粘度が20~110mPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロース)に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、常温販売が容易にできるにもかかわらず、高オーバーランで、保形性及び離水耐性を有し、口溶けに問題がない甘さ控えめのホイップドクリーム、及びその原料となる起泡性水中油型乳化油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、油相と水相からなる水中油型の乳化物で起泡性を有し、特定の油脂、水分、糖類、ソルビン酸カリウム、タンパク質、乳化剤、多糖類及びカルシウムを有し、油滴のメジアン径やpHが特定範囲である。
【0011】
起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中には、油脂が15~40重量%含まれることが好ましい。20~40重量%がより好ましく、20~35重量%が更に好ましい。15重量%より少ないと、常温販売に十分な保形性が得られない場合があり、40重量%より多いと口溶けが問題になるほど悪くなる場合がある。そして前記油脂としては、少なくとも油脂Aを含む。
【0012】
前記油脂Aは、C12以下の飽和脂肪酸を構成脂肪酸全体中50~60重量%含み、更に25℃のSFCが20~85%であり、50~85%が好ましく、60~85%がより好ましく、且つ35℃のSFCが3~15%であり、3~12%が好ましい。25℃のSFCが20%より低いと常温販売に十分な保形性や離水耐性が得られない場合があり、85%より高いと口溶けが問題になるほど悪くなる場合がある。また、35℃のSFCが3%より低いと常温販売に十分な保形性や離水耐性が得られない場合があり、15%より高いと口溶けが問題になるほど悪くなる場合がある。ここで、SFCの測定は、IUPAC 2.150(a)に準拠して行う。また構成脂肪酸の測定は、FID恒温ガスクロマトグラフ法により行う。FID恒温ガスクロマトグラフ法は、社団法人日本油化学協会編「基準油脂分析試験法」(発行年:1996年)の「2.4.2.1 脂肪酸組成」に記載された方法に準拠して行う。
【0013】
前記油脂Aの含有量は、起泡性水中油型乳化油脂組成物に含まれる油脂全体中48~100重量%が好ましく、48~90重量%がより好ましく、60~80重量%が更に好ましく、60~70重量%が特に好ましい。48重量%より少ないと、常温販売に十分な保形性や離水耐性が得られない場合がある。
【0014】
前記油脂には、油脂A以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲において他の食用油脂を含んでも良い。そのような他の食用油脂としては、ホイップドクリームに用いられ得るものであれば特に限定はなく、例えば、パーム油、ヤシ油、菜種油、大豆油、サフラワー油、コーン油、米油、綿実油などの植物由来の油脂や乳脂肪などの動物由来の油脂、および、これらの油脂の分別油、極度硬化油、エステル交換油や、それらの混合油などが挙げられる。口溶けを良好にする観点からはヤシ油、パーム核油などが好ましい。
【0015】
起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中には、水分を36~57重量%含むことが好ましく、40~55重量%がより好ましく、45~55重量%がさらに好ましい。36重量%より少ないと、乳化安定性が悪くなる場合があり、57重量%より多いと常温販売に十分な保形性や離水耐性、静菌作用が弱くなり過ぎる場合がある。本発明において、静菌作用とは、一般生菌の増殖を抑制する作用のことである。
【0016】
前記糖類としては、例えば、上白糖、三温糖、グラニュー糖、ざらめ糖、加工糖、液糖などの砂糖類、水あめ、ぶどう糖、異性化糖、果糖、麦芽糖、乳糖などの糖類、還元水あめ、還元麦芽糖水あめなどの糖アルコール類などが例示でき、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0017】
前記糖類の含有量は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中に乾燥重量で17~23重量%が好ましく、20~23重量%がより好ましい。17重量%より少ないと、甘さが足りなかったり、常温販売に十分な保形性や離水耐性が得られなかったり、静菌作用が弱くなり過ぎる場合がある。23重量%より多いと、甘過ぎる場合がある。
【0018】
前記ソルビン酸カリウムは、ソルビン酸のカリウム塩である。その含有量は、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0.01~0.25重量%であることが好ましく、0.05~0.15重量%がより好ましく、0.07~0.12重量%がさらに好ましい。ソルビン酸カリウムの含有量が0.01重量%より少ないと、静菌作用が弱くなり過ぎ常温販売に耐えない場合があり、0.25重量%より多いと、風味が悪くなる場合がある。
【0019】
また、前記ソルビン酸カリウムの静菌作用をより大きくするには、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物のpHを3~6にすることが好ましく、風味の観点を加味すると4~5がより好ましい。本発明において、pHの測定は、ガラス電極法で測定可能なpH計で行えば良い。
【0020】
前記タンパク質としては、カゼインタンパク、ホエイタンパク、大豆タンパク、エンドウタンパクなどが例示でき、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。風味の良さと耐酸性の観点からは、ホエイタンパクを用いることが好ましい。
【0021】
前記タンパク質の含有量は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0.048~0.8重量%が好ましく、0.1~0.5重量%がより好ましく、0.15~0.4重量%が更に好ましい。0.048重量%より少なければ常温販売に十分な離水耐性が得られない場合や、ホイップドクリームの内層のキメが悪くなる場合があり、0.8重量%より多いとオーバーランが高くならない場合がある。
【0022】
前記乳化剤としては、乳化剤A、乳化剤B、乳化剤Cの3種類を含み、それぞれ以下の通りである。
【0023】
前記乳化剤Aは、HLBが12~18であり、14~16が好ましく、且つC16~C18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含むポリソルベートであり、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンが好ましい。
【0024】
前記乳化剤Aは水相に添加され、その含有量は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、0.3~0.5重量%が好ましく、0.35~0.5重量%がより好ましく、0.4~0.5重量%が更に好ましい。0.3重量%より少ないと、オーバーランが高くならない場合がある。0.5重量%より多いと頭打ちになる本発明の効果があったり、口溶けが問題になるほど悪くなったり、風味が悪くなる場合がある。
【0025】
前記乳化剤Bは、HLBが0~9であり、好ましくは2~9、より好ましくは3~9、更に好ましくは5~9であり、且つC16~C18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含むポリグリセリン脂肪酸エステルであり、具体的にはその中でもヘキサグリセリントリステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンペンタステアリン酸エステル、テトラグリセリンモノステアリン酸エステル、テトラグリセリントリステアリン酸エステル、テトラグリセリンペンタステアリン酸エステルが好ましく、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0026】
前記乳化剤Bは油相に添加され、その含有量は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、0.1~0.25重量%が好ましく、0.13~0.22重量%がより好ましく、0.15~0.22重量%が更に好ましい。0.1重量%より少ないとオーバーランが高くならない場合があり、0.25重量%より多いと常温販売に十分な保形性が得られない場合がある。
【0027】
前記乳化剤Cは、C16~C18の飽和脂肪酸を合計で構成脂肪酸全体中90~100重量%含む、蒸留されたグリセリン脂肪酸モノエステル(モノグリセライド)であり、HLBは概ね4前後となる。乳化剤Cとしてはグリセリンモノステアレートが好ましい。ここで構成脂肪酸の測定は、FID恒温ガスクロマトグラフ法により行う。FID恒温ガスクロマトグラフ法は、社団法人日本油化学協会編「基準油脂分析試験法」(発行年:1996年)の「2.4.2.1 脂肪酸組成」に記載された方法に準拠して行う。
【0028】
前記乳化剤Cは油相に添加され、その含有量は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0.1~0.25重量%が好ましく、0.13~0.22重量%がより好ましく、0.15~0.22重量%が更に好ましい。0.1重量%より少ないとオーバーランが高くならない場合があり、0.25重量%より多いと本発明の効果によっては頭打ちになったり、常温販売に十分な保形性が得られない場合がある。
【0029】
前記乳化剤B/前記乳化剤A(重量比)は、0.2~0.67が好ましく、0.26~0.57がより好ましい。該比が0.2より小さいとオーバーランが高くならない場合があり、0.67より大きいと常温販売に十分な保形性が得られない場合がある。
【0030】
また、乳化剤C/(乳化剤A+乳化剤B)(重量比)は、0.14~0.5であることが好ましく、0.18~0.42がより好ましい。該比が0.14より小さいとオーバーランが高くならない場合があり、0.5より大きいと常温販売に十分な保形性が得られない場合がある。
【0031】
さらには、オーバーランを高くする観点から、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物中の前記乳化剤A、前記乳化剤B及び前記乳化剤Cの混合物のHLB(加重平均)が、9.5~12.9であることが好ましく、10~12がより好ましい。
【0032】
前記多糖類としては、多糖類X、多糖類Yの2種類を含み、それぞれ以下の通りである。
【0033】
前記多糖類Xは、アシル基が除去された脱アシル型ジェランガムのことである。前記多糖類Xは水相に添加され、その含有量は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0.01~0.4重量%が好ましく、0.03~0.3重量%がより好ましく、0.03~0.2重量%が更に好ましく、0.05~0.15重量%が特に好ましい。0.01重量%より少なければ常温販売に十分な離水耐性が得られない場合があり、0.4重量%より多いとオーバーランが高くならない場合がある。
【0034】
前記多糖類Yは、2%水溶液の20℃での粘度が20~110mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース(略称:HPMC)であり、該粘度は20~90mPa・sが好ましく、30~80mPa・sがより好ましい。ここで前記粘度は、B型粘度計(TOKIMEC INC.製)を用い測定することができる。
【0035】
前記多糖類Yは水相に添加され、その含有量は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0.1~0.3重量%が好ましく、0.13~0.3重量%がより好ましく、0.15~0.3重量%が更に好ましく、0.15~0.25重量%が特に好ましい。0.1重量%より少なければ常温販売に十分な離水耐性が得られない場合があり、0.3重量%より多いと口溶けが問題になるほど悪くなる場合がある。
【0036】
そして、多糖類Y/多糖類X(重量比)は、0.25~30であることが好ましく、0.75~10がより好ましく、1.8~8が更に好ましく、1.8~5が特に好ましい。該比が0.25より小さいと常温販売に十分な保形性が得られない場合があり、30より大きいとオーバーランが高くならない場合がある。
【0037】
前記カルシウムは、供給源として生乳や、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、バターミルク、バターミルクパウダー、脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、加糖練乳、無糖練乳、クリーム、バター、チーズ、ホエイパウダー、ホエイパーミエイトパウダー、ホエイタンパク、カゼインタンパク、乳清ミネラルなどのカルシウムを含有する生乳由来の乳加工品、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウムなどのカルシウム塩などが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。風味の観点からは、特にバターミルクパウダー、ホエイパーミエイトパウダー、ホエイタンパクを用いることが好ましい。
【0038】
前記カルシウムは水相に添加され、その含有量は、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中2~75ppmが好ましく、20~70ppmがより好ましい。2ppmより少ないと常温販売に十分な保形性が得られない場合があり、75ppmより多いとオーバーランが高くならない場合がある。
【0039】
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前述したもの以外の他の乳化剤、増粘剤、乳原料、呈味剤、日持ち向上剤、着色料、香料、塩類、ビタミン類、ミネラル類、酸化防止剤、その他の食品成分を含有してもよい。
【0040】
前記他の乳化剤としては、乳化剤Aを除くポリソルベート、乳化剤Bを除くポリグリセリン脂肪酸エステル、乳化剤Cを除くグリセリン酸脂肪酸モノエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の合成乳化剤などが挙げられる。これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0041】
前記増粘剤としては、例えば、アシル基を有するジェランガム、グアガム、キサンタンガム、寒天、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、乳化剤Yに該当しないヒドロキシメチルセルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、澱粉、デキストリン等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0042】
前記乳原料としては、前記カルシウムの供給源として挙げた生乳や、カルシウムを含有する生乳由来の乳加工品を用いてもよく、さらに、UF膜やイオン交換樹脂処理等により蛋白質を分離、分画したものや、カゼインナトリウムやカゼインカリウムのような乳蛋白質の塩類等などが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0043】
前記呈味剤としては、前記乳原料を酵素分解、加熱、分離、分画等をしたもの等などが挙げられ、これらの群より少なくとも1種を使用することができる。
【0044】
前記日持ち向上剤としては、グリシン、酢酸ナトリウム、リゾチーム等、食品用途として使用できるものが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0045】
前記着色料としては、天然成分や人工成分に関わらず、食品用途として使用できるものが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0046】
前記香料としては、天然成分や人工成分に関わらず、食品用途として使用できるものが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0047】
前記塩類としては、一般に食品に用いられている塩類であれば特に制限はなく、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、乳酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム等などが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0048】
前記ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKを主成分とする食品用途として使用できるものが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0049】
前記ミネラル類としては、亜鉛、カリウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ヨウ素、リン等などが挙げられ、これらの成分を含む食品及び/又は食品添加物に分類されるものを少なくとも1種を使用することができる。
【0050】
前記酸化防止剤としては、ビタミンE、ローズマリー抽出物等の抗酸化成分を主成分とする食品用途として使用できるもの等などが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0051】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物の油滴のメジアン径は、0.1~1.2μmであることが好ましく、0.3~1μmがより好ましく、0.5~0.9μmが更に好ましい。0.1μmより小さいと、製造が困難な場合があり、1.2μmより大きいと常温販売に十分な保形性が得られない場合がある。ここで油滴のメジアン径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-960V2(株式会社掘場製作所)で測定した、体積基準での積算分布曲線の50%に相当する粒子径である。
【0052】
また、常温販売における静菌作用の観点から、本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物の水分活性(Aw)は0.9~0.96の範囲であることが好ましい。Awは0.9~0.95の範囲であることがより好ましく、0.91~0.94の範囲であることが更に好ましい。水分活性が0.9より低いと結果的に糖類を減らすことになって風味が悪化する場合があり、0.96より高いと静菌作用が弱くなり過ぎ常温販売に耐えない場合がある。Awを上記の範囲とするには、水相中の糖類の濃度や塩濃度を高めれば良い。ここで前記水分活性は、水分活性測定装置(METER社製)を用い測定することができる。
【0053】
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物および該起泡性水中油型乳化油脂組成物を用いたホイップドクリームの製造方法を以下に例示する。まずは、水に、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、乳化剤Aを0.3~0.5重量%、糖類を20~35重量%、タンパク質を0.048~0.8重量%、多糖類Xを0.01~0.4重量%、多糖類Yを0.1~0.3重量%、カルシウムを2.0~75ppm含み、且つ多糖類Y/多糖類X(重量比)が0.25~30となるよう各々を溶解した水相部を作製する。
【0054】
次いで、油脂に、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、乳化剤Bを0.1~0.25重量%、乳化剤Cを0.1~0.25重量%含み、乳化剤B/乳化剤A(重量比)が0.2~0.67且つ乳化剤C/(乳化剤A+乳化剤B)(重量比)が0.14~0.5となるように各々を溶解した油相部を作製し、それを水相部に添加して予備乳化し、好ましくは、1段目5~52MPa/2段目3~12MPaの圧力、より好ましくは、1段目20~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化した後に、常法に従って殺菌処理することを特徴とする。
【0055】
そして、得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物を、オープン式ホイッパーや密閉式連続ホイップマシンを用いて、サンド、ナッペ、フィリング、又はトッピング等の使用目的に沿った適度な硬さに到達するまでホイップすることで、本発明のホイップドクリームが得られる。
【0056】
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物を、オーバーランが200~350%になるまでホイップして得られるホイップドクリームは、常温販売が容易にでき、保形性及び離水耐性を有し、口溶けに問題がない。
【0057】
そして、前記ホイップドクリームをサンド、ナッペ、フィリング、又はトッピングすることで様々な食品を提供することができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0059】
<実施例、比較例及び参考例で使用した原料>
1)(株)カネカ製「パーム核極度硬化油」(C12以下の飽和脂肪酸含有量:53.0重量%、C12:46.4重量%、25℃におけるSFC:69.2%、35℃のSFC:11.9%)
2)(株)カネカ製「パーム極度硬化油」(C16~C22の飽和脂肪酸含有量:96.8重量%、ヨウ素価:0.3)
3)(株)カネカ製「パーム核油」(C12以下の飽和脂肪酸:51.2重量%、25℃におけるSFC:17.6%、35℃のSFC:0%)
4)阪本薬品工業(株)製テトラグリセリンモノステアリン酸エステル「SYグリスターMS-3S」(C16~C18の飽和脂肪酸含有量:98.3重量%、HLB:8.4)
5)理研ビタミン(株)製モノグリセリンステアリン酸エステル「エマルジーMS」(C16~C18の飽和脂肪酸含有量:96.1重量%、HLB:4.3)
6)ADM(株)製「Yelkin TS」
7)フジ日本精糖(株)製グラニュー糖「グラニュー糖 FNGMS」(水分含量:0重量%)
8)昭和産業(株)製含水結晶ぶどう糖「昭和含水結晶ぶどう糖(CRD)」(水分含量:8.8重量%)
9)昭和産業(株)製マルトースシロップ「MR25‐50」(水分含量:24.6重量%)
10)CPケルコ社製脱アシル型ジェランガム「ケルコゲル」
11)The Dow Chemical Company社製HPMC「Methocel F50」(2%水溶液の20℃での粘度:50mPa・s)
12)花王(株)製ポリソルベート60「エマゾールS-120V」(C16~18の飽和脂肪酸含有量:90.0重量%、HLB:14.9)
13)Lactalis Ingredients社製ホエイパーミエイトパウダー「WHEY PERMEATE POWDER - Food grade」(タンパク質含有量:4.5重量%、カルシウム含有量:0.638重量%)
14)Warrnambool Cheese & Butter Factory Company Holdings Limited社製ホエイタンパク「WPC80」(タンパク質含有量:76.5重量%、カルシウム含有量:0.4重量%)
15)よつ葉乳業(株)製バターミルクパウダー「バターミルクパウダー」(タンパク質含有量:31.0重量%、カルシウム含有量:0.960重量%、乳脂肪含有量7.3重量%)
16))米山化学工業(株)製リン酸水素二ナトリウム「リン酸二ナトリウム(無水)」
17)米山化学工業(株)製リン酸三ナトリウム「リン酸三ナトリウム」
18)ナイカイ塩業(株)製食塩「ナクルN」
19)上野製薬(株)製ソルビン酸カリウム「ソルビン酸カリウム」
20)扶桑化学工業(株)製クエン酸「精製クエン酸(無水)」
21)(株)カネカ製「ヤシ極度硬化油」(C12以下の飽和脂肪酸含有量:52.6重量%、C12:41.5重量%、25℃におけるSFC:20.1%、35℃のSFC:5.1%)
22)(株)カネカ製「パーム核分別硬質部硬化油」(C12以下の飽和脂肪酸含有量:54.7重量%、C12:50.3重量%)、25℃におけるSFC:83.9%、35℃のSFC:3.9%)
23)(株)カネカ製「ヤシ油」(C12以下の飽和脂肪酸含有量:57.6重量%、C12:45.1重量%、25℃におけるSFC:1.1%、35℃のSFC:0%)
24)(株)カネカ製「パーム核分別軟質部硬化油」(C12以下の飽和脂肪酸含有量:46.7重量%、C12:40.0重量%、25℃におけるSFC:64.7%、35℃のSFC:21.0%)
25)阪本薬品工業(株)製テトラグリセリントリステアリン酸エステル「SYグリスターTS-3S」(C16~C18の飽和脂肪酸含有量:98.3重量%、HLB:4.6)
26)三栄源エフ・エフ・アイ(株)製キサンタンガム「サンエース」
27)The Dow Chemical Company製HPMC「Methocel K99」(2%水溶液の20℃での粘度:99mPa・s)
28)The Dow Chemical Company製HPMC「Methocel E19」(2%水溶液の20℃での粘度:19mPa・s)
29)The Dow Chemical Company製HPMC「Methocel F4M」(2%水溶液の20℃での粘度:4000mPa・s)
30)花王(株)製ポリソルベート80「エマゾールO-120V」(C16~C18の飽和脂肪酸含有量:5.0重量%、HLB:15.0)
31)阪本薬品工業(株)製ポリグリセリン混酸エステル「SYグリスターTHL-15」(C16~C18の飽和脂肪酸含有量:56.2重量%、HLB:3.3)
【0060】
<保形性評価>
実施例・比較例で得られたホイップドクリームを、25℃で5日間の保存し、保存後の状態を以下の評価基準に従って評価した。
5点 保存前後の高さの保持率が95%以上であり、常温での保形性が非常に良い
4点 保存前後の高さの保持率が85%以上95%未満であり、常温での保形性が良い
3点 保存前後の高さの保持率が75%以上85%未満であり、常温での保形性に問題がない
2点 保存前後の高さの保持率が65%以上75%未満であり、常温での保形性がやや悪い
1点 保存前後の高さの保持率が65%未満であり、常温での保形性が非常に悪い
【0061】
<離水耐性評価>
実施例・比較例で得られたホイップドクリームを、25℃で5日間保存し、保存後の状態を目視で観察して5点満点で評価した。
5点 実施例X2と比べ、常温での離水耐性が非常に高い
4点 実施例X2と比べ、常温での離水耐性が高い
3点 実施例X2と同等で、常温での離水耐性に問題がない
2点 実施例X2と比べ、常温での離水耐性がやや低く、やや問題がある
1点 実施例X2と比べ、常温での離水耐性が非常に低く、問題がある
【0062】
<静菌作用の評価>
実施例・比較例で得られたホイップドクリームを、25℃で5日間保存し、3M PetrifilmAerobic Count Plate(AC Plate)を用いて一般生菌数を測定した。一般生菌数が1×105個/gを超えた日数を評価し、N=3で最も短い日数を評価点とした。
5点 120時間(5日間)保存後一般生菌数が1×105個/g未満
4点 96時間(4日間)保存後一般生菌数が1×105個/g未満
3点 72時間(3日間)保存後一般生菌数が1×105個/g未満
2点 48時間(2日間)保存後一般生菌数が1×105個/g未満
1点 24時間(1日間)保存後一般生菌数が1×105個/g未満
【0063】
<口どけ評価>
実施例・比較例で得られたホイップドクリームを、熟練のパネラー10人が口に含み、5点満点で評価して、その平均点を評価点とした。その際の評価基準は、以下の通りであった。
5点 実施例X3と比べ口どけが非常に良い
4点 実施例X3と比べ口どけが良い
3点 実施例X3と口どけが同等で、問題がない
2点 実施例X3と比べ口どけがやや悪い
1点 実施例X3と比べ口どけが非常に悪い
【0064】
<甘さ評価>
実施例・比較例で得られたホイップドクリームを、熟練のパネラー10人が口に含み、5点満点で評価して、その平均点を評価点とした。その際の評価基準は、以下の通りであった。
5点 実施例X2と比べ甘さがかなり控えめである
4点 実施例X2と比べ甘さがより控えめである
3点 実施例X2と同等に甘さが控えめである
2点 実施例X2と比べ甘さがやや強い
1点 実施例X2と比べ甘さがかなり強い
【0065】
<総合評価>
A:オーバーランが300%以上350%未満、静菌作用評価が3点以上であって、且つ保形性・口溶け・離水耐性・甘さの評価が全て3.5点以上であるもの
B:オーバーランが210%以上300%未満、静菌作用評価が3点以上であって、且つ保形性・口溶け・離水耐性・甘さの評価が全て3.5点以上であるもの
C:オーバーランが200%以上350%未満、静菌作用評価が3点以上であって、保形性・口溶け・離水耐性・甘さの評価が全て3.0点以上であり、且つ3.0点以上3.5点未満が少なくとも1項目あるもの、又はオーバーランが200%以上210%未満、静菌作用評価が3点以上であって、且つ保形性・口溶け・離水耐性・甘さの評価が全て3.0点以上であるもの
D:Eの要件を満たさず、オーバーランが190%以上200%未満である、及び/又は保形性・口溶け・離水耐性・静菌作用・甘さの評価が全て2.0点以上であり、且つ2.0点以上3.0点未満が少なくとも1項目あるもの
E:オーバーランが190%未満である、及び/又は保形性・口溶け・離水耐性・静菌作用・甘さの評価のうち少なくとも1項目が2.0点未満であるもの
(実施例A1)起泡性水中油型乳化油脂組成物A1の作製
表1の配合に従い、油脂A(パーム核極度硬化油、C12以下の飽和脂肪酸含有量:53.0重量%、25℃でのSFC:69.2、35℃でのSFC:11.9)16.5重量部、パーム核油9.0重量部に、乳化剤B(テトラグリセリンモノステアリン酸エステル、C16~C18の飽和脂肪酸含有量:98.3重量%、HLB:8.4)0.20重量部、乳化剤C(モノグリセリンステアリン酸エステル、C16~C18の飽和脂肪酸含有量:96.1重量%、HLB:4.3)0.20重量部、大豆レシチン0.12重量部を添加し、65℃で溶解して油相部を作製した。
【0066】
一方、グラニュー糖6.0重量部、ぶどう糖14.0重量部、多糖類X(脱アシル型ジェランガム)0.08重量部、多糖類Y(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2%水溶液の20℃での粘度:50mPa・s)0.20重量部、乳化剤A(ポリソルベート、C16~C18の飽和脂肪酸含有量:90.0重量%、HLB:14.9)0.45重量部、ホエイパーミエイトパウダー0.20重量部、ホエイタンパク0.20重量部、食塩0.15重量部、ソルビン酸カリウム0.10重量部、クエン酸0.05重量部を50℃の温水52.55重量部に溶解して水相部を作製した。
【0067】
前記水相部を撹拌しながら、そこへ前記油相部を混合して10分間予備乳化後、高圧ホモジナイザーを用いて1段目25.0MPa/2段目5.0MPaの圧力で均質化した後に、プレート式加熱機を用いて90℃まで予備加熱した後、UHT殺菌機(スチームインジェクション)を用いて140℃で4秒間殺菌処理し、90℃まで蒸発冷却後プレート式冷却機を用いて45℃まで冷却し、再び高圧ホモジナイザーを用いて1段目25.0MPa/2段目5.0MPaの圧力で均質化し、その後、プレート式冷却機で5℃まで冷却したものを容器に充填し、-18℃で3日間冷凍し、5℃の冷蔵庫で解凍し、Aw(水分活性):0.965、pH:4.9の起泡性水中油型乳化油脂組成物A1を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A1のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表1にまとめた。
【0068】
【0069】
(実施例A2)起泡性水中油型乳化油脂組成物A2の作製
表1に従って、油脂A:17.4重量部に変更し、パーム核油を加えずにパーム極度硬化油(C16~C22の飽和脂肪酸含有量:96.8重量%、ヨウ素価:0.3)を0.60重量部加え、グラニュー糖:10.0重量部に変更し、水の量を調整した以外は実施例A1と同様にして、Aw:0.932、pH:4.9の起泡性水中油型乳化油脂組成物A2を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A2のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表1にまとめた。
【0070】
(実施例A3)起泡性水中油型乳化油脂組成物A3の作製
表1に従って、油脂A:36.5重量部に変更し、パーム核油を加えずにパーム極度硬化油を1.5重量部加え、水の量を調整した以外は実施例A1と同様にして、Aw:0.952、pH:4.9の起泡性水中油型乳化油脂組成物A3を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A3のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表1にまとめた。
【0071】
(実施例A4)起泡性水中油型乳化油脂組成物A4の作製
表1に従って、油脂Aを29.0重量部に変更し、パーム核油を加えずパーム極度硬化油を9.0重量部加え、水の量を調整した以外は実施例A2と同様にして、Aw:0.937、pH:4.9の起泡性水中油型乳化油脂組成物A4を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A4のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表1にまとめた。
【0072】
(実施例X1~X4)ホイップドクリームX1~X4の作製
起泡性水中油型乳化油脂組成物A1~A4をそれぞれカントーミキサー(関東混合機工業(株)製「CS型20」)に4kg入れ、品温を5℃に調整し、高速撹拌条件(380rpm)で硬さが0.30Nになるまでホイップし、ホイップドクリームX1~X4を得た。得られたホイップドクリームX1~X4のオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶け、甘さの評価を行い、それらの結果を表1にまとめた。
【0073】
表1にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1~X4より、本発明の効果を奏するには起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中における油脂含有量が15~40重量%の範囲において本発明の効果を奏し、20~35重量%の範囲であって、且つ水分含量が36~57重量%の範囲において本発明の効果が大きくなることがわかった。
【0074】
(実施例A5、A6、比較例B1)起泡性水中油型乳化油脂組成物A5、A6、B1の作製
表2に従って、油脂Aをそれぞれ24.2重量部、13.0重量部、11.5重量部に変更し、パーム核油をそれぞれ1.3重量部12.5重量部、14.0重量部に変更した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A5、A6、B1を得た。それらのAwはそれぞれ0.965であり、pHはそれぞれ4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A5、A6、B1のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表2にまとめた。
【0075】
【0076】
(実施例X5、X6、比較例Y1)ホイップドクリームX5、X6、Y1の作製
起泡性水中油型乳化油脂組成物A5、A6、B1をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX5、X6、Y1を得た。得られたホイップドクリームX5、X6、Y1のオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶け、甘さの評価を行い、それらの結果を表2にまとめた。
【0077】
表2にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X3、X5、X6及び比較例Y1より、油脂全体中における油脂Aの含有量が48~100重量%の範囲において本発明の効果を奏し、48~90重量%において本発明の効果が大きくなることが明らかとなった。また、前記油脂Aの含有量が51.0重量%の場合、全ての評価値が良好だったのに対し、油脂Aの含有量が45.0重量%の場合、常温販売に十分な保形性及び離水耐性が得られなかったことから、油脂全体中の油脂Aの含有量が48重量%を下回ると、本発明の効果を十分に奏さないことが推察された。
【0078】
(実施例A7)起泡性水中油型乳化油脂組成物A7の作製
表3に従って、油脂Aとしてパーム核極度硬化油の代わりにヤシ油極度硬化油(C12以下の飽和脂肪酸含有量:52.6重量%、C12:41.5重量%、25℃におけるSFC:20.1%、35℃のSFC:5.1%)を配合した以外は実施例A1と同様にして、Aw:0.965、pH:4.9の起泡性水中油型乳化油脂組成物A7を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A7のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表3にまとめた。
【0079】
【0080】
(実施例A8)起泡性水中油型乳化油脂組成物A8の作製
表3に従って、油脂Aとしてパーム核極度硬化油の代わりにパーム核分別硬質部硬化油(C12以下の飽和脂肪酸含有量:54.7重量%、C12:50.3重量%、25℃におけるSFC:83.9%、35℃のSFC:3.9%)を配合した以外は実施例A1と同様にして、Aw:0.965、pH:4.9の起泡性水中油型乳化油脂組成物A8を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A8のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表3にまとめた。
【0081】
(比較例B2)起泡性水中油型乳化油脂組成物B2の作製
表3に従って、油脂Aを配合せず、代わりにパーム核分別軟質部硬化油(C12以下の飽和脂肪酸含有量:46.7重量%、C12:40.0重量%、25℃におけるSFC:64.7%、35℃のSFC:21.0%):16.5重量部を配合した以外は実施例A1と同様にして、Aw:0.965、pH:4.9の起泡性水中油型乳化油脂組成物B2を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物B2のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表3にまとめた。
【0082】
(比較例B3)起泡性水中油型乳化油脂組成物B3の作製
表3に従って、油脂Aを配合せず、代わりにヤシ油(C12以下の飽和脂肪酸含有量:57.6重量%、C12:45.1重量%、25℃におけるSFC:1.1%、35℃のSFC:0%):16.5重量部を配合した以外は実施例A1と同様にして、Aw:0.965、pH:4.9の起泡性水中油型乳化油脂組成物B3を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物B3のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表3にまとめた。
【0083】
(実施例X7、X8、比較例Y2、Y3)ホイップドクリームX7、X8、Y2、Y3の作製
起泡性水中油型乳化油脂組成物A7、A8、B2、B3をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX7、X8、Y2、Y3を得た。得られた各ホイップドクリームそれぞれのオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶、甘さの評価を行い、それらの結果を表3にまとめた。
【0084】
表3にまとめた結果より、以下のことがわかった。X1、X7、X8及び比較例Y2、Y3より、油脂A中のC12以下の飽和脂肪酸含有量が50~60重量%の範囲において本発明の効果を奏することが明らかとなった。また、25℃のSFC:83.9%、35℃のSFC:3.9%(実施例X8)、25℃のSFC:69.2%、35℃のSFC:11.9%(実施例X1)では全ての評価値が良好だったのに対し、25℃のSFC:20.1%、35℃のSFC:5.1%(実施例X7)では保形性及び離水耐性の評価値が3であり、25℃のSFC:1.1%、35℃のSFC:0%(比較例Y3)では保形性及び離水耐性の評価値が1、25℃のSFC:64.7%、35℃のSFC:21.0%(比較例Y3)では口溶けの評価値が2.0だったことから、25℃でのSFCが20~85%の範囲を満たし、尚且つ35℃でのSFCが3~15%の範囲を満たす場合において本発明の効果を奏することが明らかとなった。また、25℃のSFCが50~85%、且つ35℃のSFCが3~15%を満たす範囲において本発明の効果がより大きいことが推察された。
【0085】
(実施例A9、比較例B4)起泡性水中油型乳化油脂組成物A9、B4の作製
表4に従って、ホイエパーミエイトパウダーを配合せず、ホエイタンパク:0.06重量部、0.04重量部にそれぞれ変更し、水の量を調整した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A9、B4を得た。それらのAwは0.966(A9)、0.966(B4)であり、pHは4.8(A9)、4.8(B4)であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A9、B4のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表4にまとめた。
【0086】
【0087】
(実施例A10、比較例B5)起泡性水中油型乳化油脂組成物A10、B5の作製
表4に従って、ホエイタンパク:0.70重量部、1.05重量部にそれぞれ変更し、それぞれにバターミルクパウダー:0.70重量部を加え、水の量を調整した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A10、B5を得た。それらのAwは0.963(A10)、0.963(B5)であり、pHは5.4(A10)、5.5(B5)であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A10、B5のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表4にまとめた。
【0088】
(実施例X9、X10、比較例Y4、Y5)ホイップドクリームX9、X10、Y4、Y5の作製
起泡性水中油型乳化油脂組成物A9、A10、B4、B5をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX9、X10、Y4、Y5を得た。得られたホイップドクリームX9、X10、Y4、Y5のオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶け、甘さの評価を行い、それらの結果を表4にまとめた。尚、ホイップドクリームY4は、内層のキメが不均一になっていた。
【0089】
表4にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X9、X10及び比較例Y4、Y5より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中のタンパク質含有量が0.048~0.8重量%の範囲において本発明の効果を奏し、0.1~0.5重量%の範囲において本発明の効果がより大きいことが明らかとなった。また、タンパク質含有量が0.17重量%より少なくなるにつれて離水耐性及び静菌作用の評価値が低下する傾向がみられ、該含有量が0.05重量%の場合、保形性及び離水耐性は常温販売に問題の無いレベルであった一方、該含有量が0.03重量%の場合、常温販売に十分な離水耐性が得られなかったことから、タンパク質含有量が0.048重量%を下回る場合、本発明の効果を十分に奏さないことが推察された。更に、タンパク質含有量が0.17重量%より多くなるにつれてオーバーランの値及び口溶けの評価値が低下する傾向がみられ、該含有量が0.79重量%の場合、口溶けは3.5であり問題の無いレベルであった一方、該含有量が1.07重量%の場合、口溶けが問題になるほど悪かったことから、タンパク質含有量が0.8重量%を上回る場合、本発明の効果を十分に奏さないことが推察された。
【0090】
また、実施例X9、X10及び比較例Y4より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中のカルシウム含有量が2~75ppmの範囲において本発明の効果を奏し、20~70ppmの範囲において本発明の効果がより大きいことが明らかとなった。また、カルシウム含有量が26ppmより多くなるほどオーバーランが低下する傾向がみられ、該含有量が71ppmの場合、オーバーランの値が280%だったのに対し、該含有量が79ppmの場合、オーバーランが245で、口どけが悪くなり過ぎたことから、カルシウム含有量が75ppmを上回る場合、本発明の効果を十分に奏さないことが推察された。また、カルシウム含有量が26ppmより少なくなるほど保形性及び離水耐性が低下する傾向がみられ、該含有量が2.4ppmの場合、離水耐性の評価値が3(常温販売に問題が無い)であったことから、カルシウム含有量が2ppmを下回ると常温販売に十分な離水耐性が得られないことが推察された。
【0091】
(実施例A11、A12、比較例B6、B7)起泡性水中油型乳化油脂組成物A11、A12、B6、B7の作製
表5に従って、乳化剤Aの配合量をそれぞれ0.32重量部、0.48重量部、0.25重量部、0重量部(配合なし)に変更し、水の量を調整し、比較例B7のみポリソルベート(C16~C18の飽和脂肪酸含有量:5.0重量%、HLB:15.0):0.45重量部を配合した以外は実施例A1と同様にして、泡性水中油型乳化油脂組成物A11、A12、B6、B7を得た。それらのAwはそれぞれ0.965であり、pHはそれぞれ4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A11、A12、B6、B7のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表5にまとめた。
【0092】
【0093】
(実施例X11、X12、比較例Y6、Y7)ホイップドクリームX11、X12、Y6、Y7の作製
起泡性水中油型乳化油脂組成物A11、A12、B6、B7をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX11、X12、Y6、Y7を得た。得られたホイップドクリームX11、X12、Y6、Y7のオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶け、甘さの評価を行い、それらの結果を表5にまとめた。
【0094】
表5にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X11、X12及び比較例Y6より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の乳化剤Aの含有量が0.3~0.5重量%の範囲において本発明の効果を奏し、0.4~0.5重量%の範囲において本発明の効果がより大きいことが明らかとなった。また、該含有量が0.48重量%より少なくなるほどオーバーラン値が低くなる傾向がみられ、0.32重量%の場合のオーバーラン値が263%であり、0.25重量%の場合、オーバーランが高くならなかったことから、乳化剤Aの含有量が0.3を下回ると本発明の効果を十分に奏さないことが推察された。
【0095】
また、乳化剤AのHLBは12~18且つC16~C18の飽和脂肪酸の合計含有量が構成脂肪酸全体中90重量%以上であれば本願効果を奏することが明らかとなり、乳化剤AのC16~C18の飽和脂肪酸の合計含有量が構成脂肪酸全体中5.0重量%、HLBが15.0の場合の場合、オーバーランが十分に高くならず、口溶けも悪くなったことから、前記飽和脂肪酸の合計含有量が90重量%を下回ると本発明の効果を十分に奏さないことが推察された。
【0096】
(実施例A13、比較例B8)起泡性水中油型乳化油脂組成物A13、B8の作製
表6に従って、乳化剤B(テトラグリセリンモノステアリン酸エステル、C16~C18の飽和脂肪酸含有量:98.3重量%、HLB:8.4)の配合量をそれぞれ0.12重量部、0.05重量部に変更し水の量を調整した以外は、実施例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物A13、B8を得た。それらのAwはそれぞれ0.965であり、pHはそれぞれ4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A13、B8のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表6にまとめた。
【0097】
【0098】
(実施例A14、比較例B9)起泡性水中油型乳化油脂組成物A14、B9の作製
表6に従って、乳化剤B(テトラグリセリンモノステアリン酸エステル、C16~C18の飽和脂肪酸含有量:98.3重量%、HLB:8.4)を配合せず、実施例A14では乳化剤B(テトラグリセリントリステアリン酸エステル、C16~C18の飽和脂肪酸含有量:98.3重量%、HLB:4.6):0.20重量部を配合し、比較例B9ではポリグリセリン脂肪酸エステル(C16~C18の飽和脂肪酸含有量:56.2重量%、HLB:3.3):0.20重量部を配合した以外は、実施例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物A14、B9を得た。それらのAwはそれぞれ0.965であり、pHはそれぞれ4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A14、B9のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表6にまとめた。
【0099】
(実施例X13、X14、比較例Y8、Y9)ホイップドクリームX13、X14、Y8、Y9の作製
起泡性水中油型乳化油脂組成物A13、A14、B8、B9をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX13、X14、Y8、Y9を得た。得られたホイップドクリームX13、X14、Y8、Y9のオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶け、甘さの評価を行い、それらの結果を表6にまとめた。
【0100】
表6にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X13及び比較例Y8より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の乳化剤Bの含有量が0.1~0.25重量%の範囲において本発明の効果を奏することが明らかとなった。また、該含有量が0.20重量%より少なくなるにつれてオーバーラン値及び口溶けの評価値が低下する傾向がみられ、0.12重量%の場合、口溶けの評価値が3.5であったのに対し、0.05重量%の場合、口溶けが問題になるほど悪かったことから、乳化剤Bの含有量が0.1重量%を下回ると本発明の効果を十分に奏さないことが推察された。
【0101】
また、実施例X1、X14、及び比較例Y9より、乳化剤BのHLBは0~9であれば本願効果を奏し、5~9の範囲において本発明の効果がより大きいことが明らかとなった。更には、C16~C18の飽和脂肪酸の合計含有量が構成脂肪酸全体中56.2重量%の場合、口溶けが問題になるほど悪くなることが明らかとなった。
【0102】
更に、実施例X1、X11、X13、X14及び比較例Y6、Y8より、乳化剤B/乳化剤Aの重量比が0.2~0.67の範囲内であれば本発明の効果を好適に奏すること、該重量比が0.80ではオーバーランが高くならず、0.11では口溶けが問題になるほど悪くなることが明らかとなった。
【0103】
(実施例A15、A16、比較例B10)起泡性水中油型乳化油脂組成物A15、A16、B10の作製
表7に従って、乳化剤C(モノグリセリンステアリン酸エステル、C16~C18の飽和脂肪酸含有量:96.1重量%、HLB:4.3)の配合量をそれぞれ0.12重量部、0.24重量部、0.05重量部に変更し、水の量を調整した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A15、A16、B10を得た。それらのAwはそれぞれ0.965であり、pHはそれぞれ4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A15、A16、B10のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表7にまとめた。
【0104】
【0105】
(実施例X15、X16、比較例Y10)ホイップドクリームX15、X16、Y10の作製
得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A15、A16、B10をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX15、X16、Y10を得た。得られたホイップドクリームそれぞれのオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶けの評価を行い、それらの結果を表7にまとめた。
【0106】
表7にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X15、X16及び比較例Y10より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の乳化剤Cの含有量が0.1~0.25重量%の範囲において本発明の効果を奏し、0.18~0.22重量%の範囲において本発明の効果がより大きいこと、該含有量が0.05重量%の場合、オーバーランが高くならず、口溶けも問題になるほど悪くなることが明らかとなった。
【0107】
更に、表5、6、7にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X11~X26及び比較例Y6~Y10より、乳化剤C/(乳化剤A+B)の重量比が0.14~0.5の範囲内であれば本発明の効果を奏することが示唆され、該重量比が0.08では、オーバーランが高くならず口溶けも問題になるほど悪く、1.00では口溶けが問題になるほど悪くなることが明らかとなった。
【0108】
(実施例A17~A20、比較例B11)起泡性水中油型乳化油脂組成物17~A20、B11の作製
表8に従って、多糖類X:0.03重量部、0.35重量部、0.01重量部、0.35重量部、0.42重量部にそれぞれ変更し、多糖類Y:0.20重量部、0.10重量部、0.10重量部、0.25重量部、0.20重量部とし、それぞれ水の量を調整した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A17~A20、B11を得た。それらのAwはそれぞれ0.965であり、pHはそれぞれ4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A17~A20、B11のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表8にまとめた。
【0109】
【0110】
(比較例B12)起泡性水中油型乳化油脂組成物B12の作製
表8に従って、多糖類Xを配合せず、代わりにキサンタンガム:0.08重量部を加えた以外は実施例A1と同様にして、Aw:0.965、pH:4.9の起泡性水中油型乳化油脂組成物B12を得た。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物B12のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表8にまとめた。
【0111】
(実施例X17~X20、比較例Y11、Y12)ホイップドクリームX17~X20、Y11、Y12の作製
起泡性水中油型乳化油脂組成物A17~A20、B11、B12をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX17~X20、Y11、Y12を得た。得られたホイップドクリームそれぞれのオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶け、甘さの評価を行い、それらの結果を表8にまとめた。
【0112】
表8にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X17及び比較例Y11より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の多糖類Xの含有量が0.01~0.4重量%の範囲において本発明の効果を奏し、0.05~0.15重量%の範囲において本発明の効果がより大きいこと、また0.42重量%の場合、オーバーランが高くならず、口溶けも問題になるほど悪くなることが明らかとなった。更に、実施例X1及び比較例Y12より、脱アシル型ジェランガムである多糖類Xの代わりにキサンタンガムを用いると、常温販売に十分な離水耐性が得られないことが明らかとなった。
【0113】
(実施例A21、A22)起泡性水中油型乳化油脂組成物A21、A22の作製
表9に従って、多糖類Y(HPMC、2%水溶液の20℃での粘度:50mPa・s)の配合量をそれぞれ0.12重量部、0.28重量部に変更し、それぞれ水の量を調整した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A21、A22を得た。それらのAwはそれぞれ0.965であり、pHはそれぞれ4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A21、A22のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表9にまとめた。
【0114】
【0115】
(実施例A23、比較例B13、B14)起泡性水中油型乳化油脂組成物A23、B13、B14の作製
表9に従って、多糖類Y(HPMC、2%水溶液の20℃での粘度:50mPa・s)を添加せず、代わりに多糖類Y(HPMC、2%水溶液の20℃での粘度:99mPa・s):0.20重量部、HPMC(2%水溶液の20℃での粘度:19mPa・s):0.20重量部、HPMC(2%水溶液の20℃での粘度:4000mPa・s):0.20重量部にそれぞれ変更した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A23、B13、B14を得た。それらのAwはそれぞれ0.965であり、それぞれpHは4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A23、B13、B14のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表9にまとめた。
【0116】
(実施例X21~X23、比較例Y13、Y14)ホイップドクリームX21~X23、Y13、Y14の作製
得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A21~A23、B13、B14をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX21~X23、Y13、Y14を得た。得られたホイップドクリームそれぞれのオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶け、甘さの評価を行い、それらの結果を表9にまとめた。
【0117】
表9にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X21、X22より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の多糖類Yの含有量が0.1~0.3重量%の範囲、より好ましくは0.15~0.25重量%の範囲において本発明の効果を好適に奏することが明らかとなった。また、該含有量が0.20重量%の場合(実施例X1)と0.12重量%(実施例X21)の場合を比較すると、該含有量が低い実施例X21の方が離水耐性が低く、評価値が3(常温販売に問題がない)であることから、該含有量が0.1重量%を下回ると常温販売に十分な離水耐性が得られないことが推察された。また、該含有量が0.20重量%の場合(実施例X1)と0.28重量%(実施例X22)の場合を比較すると、該含有量が高い実施例X22の方が口溶けの評価値が低く3.7であったことから、該含有量が0.3重量%を上回ると口溶けが問題になるほど悪くなることが示唆された。
【0118】
また、実施例X1、X23及び比較例Y13、Y14より、多糖類Yとして用いるヒドロキシプロピルメチルセルロースの2%水溶液の20℃での粘度が20~110mPa・sの範囲であれば本発明の効果を奏し、30~70mPa・sが好ましいこと、該粘度が19mPa・sの場合、常温販売に十分な離水耐性が得られなくなること、4000mPa・sではオーバーランが高くならず、口溶けも問題になるほど悪くなることが明らかとなった。
【0119】
そして、表8、表9にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X27~X23及び比較例Y11、Y12より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の多糖類Y/多糖類X(重量比)が0.25~30の範囲において本発明の効果を奏すること、1.8~5の範囲において本発明の効果がより大きいことが明らかとなった。
【0120】
(実施例A24、A25)起泡性水中油型乳化油脂組成物A24、A25の作製
表10に従って、グラニュー糖:4.2重量部、8.0重量部に変更し、実施例A25のみマルトースシロップ:2.7重量部を加え、水の量を調整した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A24、A25を得た。それらのAwはそれぞれ0.971(A24),0.952(A25)であり、それぞれpHは4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A24、A25のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表10にまとめた。
【0121】
【0122】
(実施例X24、X25)ホイップドクリームX24、X25の作製
実施例A24、A25で得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物X24、X25をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX24、X25を得た。得られたホイップドクリームそれぞれのオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶け、甘さの評価を行い、それらの結果を表10にまとめた。
【0123】
表10にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X24、X25より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中の糖類の含有量(乾燥重量)が17~23重量%の範囲において本発明の効果を奏し、18~21重量%の範囲において本発明の効果がより大きいことが明らかとなった。また、該含有量が18.9重量%の場合(実施例X1)と比べ17.1重量%の場合(実施例X24)、離水耐性が低く評価値が3であったことから、前記範囲を下回ると常温販売に十分な離水耐性が得られないことが推察された。また、該含有量が18.9重量%の場合(実施例X1)と比べ22.8重量%の場合(実施例X25)、甘さが強く評価値が3.0であったことから、前記範囲を上回ると甘さが強くなりすぎてしまうことが推察された。
【0124】
(実施例A26、A27)起泡性水中油型乳化油脂組成物A26、A27の作製
表11に従って、ソルビン酸カリウム:0.03重量部、0.23重量部に変更し、水の量を調整した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A26、A27を得た。それらのAwはそれぞれ0.965(A26)、0.962(A27)であり、pHはそれぞれ4.7(A26)、5.4(A27)であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A26、A27のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表11にまとめた。なお、ホイップドクリームX27はホイップドクリームX1と比べわずかに苦味が感じられるものであった。
【0125】
【0126】
(実施例A28、A29)起泡性水中油型乳化油脂組成物A28、A29の作製
表11に従って、クエン酸:0.10重量部、0.015重量部に変更し、水の量を調整した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A28、A29を得た。それらのAwはそれぞれ0.965(A28),0.965(A29)であり、pHはそれぞれ3.3(A28),5.8(A29)であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A28、A29のメジアン径の測定を行い、それらの結果を表11にまとめた。
【0127】
(実施例X26~X29)ホイップドクリームX26~X29の作製
実施例A26~A29で得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A26~A29をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX26~X29を得た。得られたホイップドクリームそれぞれのオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶け、甘さの評価を行い、それらの結果を表11にまとめた。なお、ホイップドクリームX28はホイップドクリームX1と比べわずかに酸味が感じられるものであった。
【0128】
表11にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X26、X27より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中のソルビン酸カリウムの含有量が0.01~0.25重量%の範囲において本発明の効果を奏することが明らかとなった。また、該含有量が0.10重量%である実施例X1と0.03重量%である実施例X26とを比べると、該含有量が少ないX26の方が静菌作用が低かったことから、前記含有量が0.01重量%より低いと静菌作用が常温販売に十分な強さとならないことが推察された。また、該含有量が0.10重量%である実施例X1と0.23重量%である実施例X27とを比べると、該含有量が多いX27はわずかに苦味が感じられるものであったことから、0.25重量%より高いと苦味が強くなり過ぎてしまう場合があることが推察された。
【0129】
また、実施例X1、X28、X29より、起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中のpHが3~6の範囲において本発明の効果を奏することが明らかとなった。また、pH4.9である実施例X1とpH3.3である実施例X28とを比べると、pHが低いX28はわずかに酸味が感じられるものであったことから、pHが3より低いと酸味が強くなり過ぎてしまうことが推察された。また、pH4.9である実施例X1とpH5.8である実施例X29とを比べると、pHが高いX29の方が静菌作用が弱く評価値が3であったことから、pHが6より高いと静菌作用が常温販売に十分な強さとならない場合があることが推察された。
【0130】
(実施例A30)起泡性水中油型乳化油脂組成物A30の作製
表12に従って、殺菌後の高圧ホモジナイザーの圧力を1段目50.0MPa/2段目10.0MPaに変更した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A30を得た。起泡性水中油型乳化油脂組成物A30のAwは0.965、pHは4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A30のメジアン径の測定を行い、結果を表12にまとめた。
【0131】
【0132】
(実施例A31)起泡性水中油型乳化油脂組成物A31の作製
表12に従って、殺菌後の高圧ホモジナイザーの圧力を1段目6.0MPa/2段目2.0MPaに変更した以外は実施例A1と同様にして、起泡性水中油型乳化油脂組成物A31を得た起泡性水中油型乳化油脂組成物A31のAwは0.965、pHは4.9であった。得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A31のメジアン径の測定を行い、結果を表12にまとめた。
【0133】
(実施例X30、X31)ホイップドクリームX30、X31の作製
実施例A30、A31で得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物A30、A31をそれぞれ実施例X1と同様にしてホイップし、ホイップドクリームX30、X31を得た。得られたホイップドクリームそれぞれのオーバーラン、保型性、離水耐性、静菌作用、口溶け、甘さの評価を行い、それらの結果を表12にまとめた。
【0134】
表12にまとめた結果より、以下のことがわかった。実施例X1、X30、X31より、水中油型乳化油脂組成物の油滴のメジアン径が0.1~1.2μmの範囲において本発明の効果を奏することが明らかとなった。また、該値が0.552μmである実施例A1と該値が1.192μmである実施例X31とを比べると、実施例X31の方が保形性及び離水耐性の評価値が低く3であったことから、該値が1.2μmを上回ると常温販売に十分な保形性や離水耐性を得られないことが推察された。更に、該値が0.552μmである実施例A1と該値が0.246μmである実施例A30とを比べると、実施例A30の方がオーバーランの値及び口溶けの評価値が低く口溶けの評価値が3.4であったことから、該値が0.1μmを下回るとオーバーランが高くならず、口溶けが問題になるほど悪くなることが推察された。
【0135】
また、水相部に油相部を添加して予備乳化した後の均質化の圧力条件が1段目:5~52MPa、2段目:3~12MPaの範囲において本発明の効果を好適に奏する水中油型乳化油脂組成物が得られることが明らかとなった。
【0136】
以上より、本発明に従えば、常温販売が容易にできるにもかかわらず、高オーバーランで、保形性及び離水耐性を有し、口溶けに問題がない甘さ控えめのホイップドクリーム、及びその原料となる起泡性水中油型乳化油脂組成物を提供することができることがわかった。