(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】走行支援方法及び走行支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20241031BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60W30/10
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2020194350
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒョンソン
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-032994(JP,A)
【文献】特開2019-018827(JP,A)
【文献】国際公開第2014/006759(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30、30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行経路を走行するように前記自車両の走行を支援する走行支援方法であって、
前記自車両が走行する自車線と他車線とが交差する交差点であって、前記自車線から前記他車線へ旋回する前記走行経路が設定された前記交差点を抽出し、
前記交差点において前記他車線を前記自車両が旋回する方向の逆方向から前記旋回する方向に向かって移動する他車両の位置を通って前記他車両の移動方向又はその逆方向に延びる第1延長線と、前記自車両の位置を通って前記自車両の
直進方向に延びる第1直進方向線とを算出し、
前記第1延長線及び前記第1直進方向線に接する、前記自車両の最小の旋回半径を半径とする円弧状の曲線である最外側境界線と、前記最小の旋回半径よりも半径の大きい円弧状の曲線である最内側境界線とを設定し、
前記第1延長線、前記第1直進方向線、前記最外側境界線、及び前記最内側境界線に囲まれた領域である経路設定領域に、前記交差点における前記自車両の旋回経路を設定し、
前記自車両が前記旋回経路を走行するように、前記自車両が備えるステアリング、アクセル及びブレーキを制御する各コントロールユニットを制御する
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項2】
前記交差点において前記他車線を前記自車両が旋回する方向から前記旋回する方向の逆方向に向かって移動する他車両の位置を通って前記他車両の移動方向又はその逆方向に延びる第2延長線と、前記自車両の対向車線側の側面から
前記直進方向に延びる第2直進方向線とを算出し、
前記第1延長線と前記第2延長線との中心線と前記第2直進方向線との交点を、前記交差点の中心位置として検出し、
前記最外側境界線を、前記交差点の中心位置よりも前記最内側境界線の近くに設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行支援方法。
【請求項3】
前記最内側境界線として、曲率の変化率が所定値以下となる曲線であって、前記第1延長線に接続する際の方向が前記第1延長線の方向と一致する前記曲線を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行支援方法。
【請求項4】
前記自車両に対する前記他車両の各時刻における実空間上の相対位置と、自車両の移動量とを測定し、
前記他車両の各時刻における実空間上の相対位置及び前記自車両の移動量から、前記他車両の移動方向を検出することを特徴とする請求項1に記載の走行支援方法。
【請求項5】
前記自車両に対する前記他車両の各時刻における実空間上の相対位置を前記各時刻における前記自車両の移動量に基づいて修正し、
修正した前記他車両の各時刻における実空間上の位置を繋ぎ合わせて実空間における前記他車両の移動軌跡を生成する
ことを特徴とする請求項4に記載の走行支援方法。
【請求項6】
前記自車線と交差する前記他車線から前記自車線へと進入する前記他車両の移動軌跡と、前記自車線と交差する前記他車線から前記自車線の対向車線へと進入する前記他車両の移動軌跡との最短距離をなす直線の中央位置を前記交差点の中心位置と設定し、
前記最外側境界線を、前記交差点の中心位置よりも前記最内側境界線の近くに設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行支援方法。
【請求項7】
前記自車線及び前記自車線の対向車線を直進する前記他車両の各々の自車線方向の移動軌跡と、前記自車線と交差する前記他車線及び前記自車線と交差する前記他車線の対向車線を直進する前記他車両の各々の交差車線方向の移動軌跡との各々の車線方向において対向し合う最も近い車線間の中心線の交点を前記交差点の中心位置として設定し、
前記最外側境界線を、前記交差点の中心位置よりも前記最内側境界線の近くに設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行支援方法。
【請求項8】
前記自車両の位置が前記交差点から所定の距離以内の位置である場合、前記第1直進方向線から前記自車両の旋回する方向での前記交差点の出口までを前記他車両を検出する検出範囲として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行支援方法。
【請求項9】
前記交差点において前記他車線を前記自車両が旋回する方向の逆方向から前記旋回する方向に向かって移動する前記他車両のうち、前記自車両に最も近い前記他車両までの第1距離を測定し、
前記第1直進方向線から前記自車両の旋回する方向であって、前記自車線と交差する前記他車線に平行する方向の距離を、測定した前記第1距離とする前記検出範囲を設定し、
前記検出範囲の中で最も前記自車両から遠い位置を走行する前記他車両の位置及び移動方向に基づいて前記経路設定領域を設定する
ことを特徴とする請求項8に記載の走行支援方法。
【請求項10】
前記旋回経路の上の物体を検出し、
前記経路設定領域の範囲内で前記物体を回避する旋回経路を探索し、
前記物体を回避する旋回経路を設定することができなかった場合、停車するように前記自車両を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行支援方法。
【請求項11】
前記自車両が前記走行経路を進むことで、前記検出範囲に前記経路設定領域よりも外側を移動する前記他車両が新たに検出された場合、検出された前記他車両の位置及び移動方向に基づいて前記旋回経路を更新する
ことを特徴とする
ことを特徴とする請求項8に記載の走行支援方法。
【請求項12】
前記自車両の旋回する方向が前記他車線を跨いで旋回する方向であって、前記他車線を前記自車両の旋回する方向の逆方向から前記旋回する方向に向かって移動する前記他車両の移動軌跡が複数検出された場合、複数の前記他車両の移動軌跡の間隔を測定し、
前記間隔が所定の閾値以上ある場合、前記自車両から最も遠い前記他車両の移動軌跡に基づいて前記最内側境界線を設定する
ことを特徴とする請求項5に記載の走行支援方法。
【請求項13】
自車両が走行経路を走行するように自車両の走行を支援する走行支援装置であって、
前記自車両の走行する自車線と他車線とが交差する交差点であって、前記自車線から前記他車線へ旋回する前記走行経路が設定された前記交差点を抽出する交差点抽出部と、
前記交差点において前記他車線を前記自車両が旋回する方向の逆方向から前記旋回する方向に向かって移動する他車両の位置を通って前記他車両の移動方向又はその逆方向に延びる第1延長線と、前記自車両の位置を通って前記自車両の
直進方向に延びる第1直進方向線とを算出し、前記第1延長線及び前記第1直進方向線に接する、前記自車両の最小の旋回半径を
半径とする円弧状の曲線である最外側境界線と、前記最小の旋回半径よりも半径の大きい円弧状の曲線である最内側境界線とを設定し、前記第1延長線、前記第1直進方向線、前記最外側境界線及び前記最内側境界線に囲まれた領域である経路設定領域に、前記交差点における前記自車両の旋回経路を設定する旋回経路設定部と
を有することを特徴とする走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援方法及び走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が交差点を右左折する際の交差点内の旋回経路を設定する方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された発明は、地図データと少なくとも過去に一度走行した際にLiDARにより取得した道路データとを組み合わせて、正確な道路車線情報(高精度地図)を生成し、高精度地図に基づいて交差点内の旋回経路を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、車両が交差点を右左折する際の交差点内の旋回経路を設定するためには、当該交差点を少なくとも過去に一度は運転者の運転により走行し、予め車線情報を含んだ高精度地図を生成しておく必要がある。そのため、従来技術においては、新設されたばかりの交差点のように高精度地図のデータが生成されていない交差点を右左折する場合、旋回経路を設定できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両が交差点を右左折する際に、高精度地図を用いることなく、交差点内の旋回経路を設定することができる走行支援方法及び走行支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係わる走行支援方法は、自車両が走行する自車線と他車線とが交差する交差点であって、自車線から他車線へ旋回する走行経路が設定された交差点を抽出する。抽出した交差点において他車線を自車両が旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両の位置を通って他車両の移動方向又はその逆方向に延びる第1延長線と、自車両の位置を通って自車両の直進方向に延びる第1直進方向線とを算出する。第1延長線及び第1直進方向線に接する、自車両の最小の旋回半径を半径とする円弧状の曲線である最外側境界線と、最小の旋回半径よりも半径の大きい円弧状の曲線である最内側境界線とを設定する。第1延長線、第1直進方向線、最外側境界線、及び最内側境界線に囲まれた領域である経路設定領域に旋回経路を設定し、自車両が旋回経路を走行するように、自車両が備えるステアリング、アクセル及びブレーキを制御する各コントロールユニットを制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両が交差点を右左折する際に、高精度地図を用いることなく、走行経路を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る走行支援装置が経路設定領域を設定する処理を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る走行支援装置が設定した旋回経路に合わせて車両を制御する処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る走行支援装置が交差点の中心位置を推定する処理を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る走行支援装置が最外側境界線を修正する処理を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る走行支援装置が設定した旋回経路に合わせて車両を制御する処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る走行支援装置が交差点の中心位置を推定する処理を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る走行支援装置が交差点の中心位置を推定する処理を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る走行支援装置が他車両の検出範囲を設定する処理を模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係る走行支援装置が設定した旋回経路に合わせて車両を制御する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
[走行支援装置の構成]
図1を参照して、本実施形態に係る走行支援装置の全体構成を説明する。走行支援装置は、交差点における自車両の旋回経路を設定し、設定した旋回経路を走行するように自車両の走行を支援する装置である。
【0011】
走行支援装置100は、コントローラによって構成されている。走行支援装置100は、自車両に搭載されているカメラ200及びレーダ300を用いて自車両の前方の他車両を検出し、他車両の位置及び他車両の移動方向に基づいて、自車両が右左折する交差点における旋回経路を設定する。
図1では、外部の情報を取得する装置としてカメラ200及びレーダ300を例示するが、ライダー(LiDAR)を利用してもよい。走行支援装置100は、高精度地図ではない地図データを用いて、自車両の現在位置から目的地までの走行経路を設定する。地図データは、記憶部400に記憶しておいてもよいし、クラウドサーバを含む外部サーバからインターネット通信を介して適宜受信してもよい。
【0012】
コントローラは、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、走行支援装置100として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、走行支援装置100が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、本実施形態では、ソフトウェアによって走行支援装置100が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0013】
走行支援装置100は、複数の情報処理回路として、走行経路設定部110、交差点抽出部120、自車位置検出部130、移動物体計測部140、旋回経路設定部150、走行支援部160を備えている。
【0014】
走行経路設定部110は、記憶部400に記憶された地図データを読み出して、自車両の現在の位置から入力された目的地までの走行経路を設定する。走行経路設定部110は、目的地までの複数の走行経路を複数探索してもよい。走行経路としては、走行距離が少ない走行経路、渋滞を避けて目的地までの走行時間が短い走行経路、幹線道路を主体に走行する走行経路などがあるが、入力されたユーザの趣向に基づいて、探索した複数の走行経路の中から最適な走行経路を設定する。走行経路設定部110は、カーナビゲーション機能を用いることにより、走行経路を探索することができる。なお、記憶部400に記憶された地図データは道路単位の情報を含む地図データであり、高精度地図のように車線単位の情報(車線情報)を含む必要は無い。すなわち、記憶部400に記憶された地図データは、カーナビゲーション用の地図の様に、現在の位置から目的地までの道路単位の経路を設定するための情報を含んだ地図であればよく、以下では簡易地図データとも記載する。
【0015】
走行経路設定部110は、設定した交差点を除く走行経路における自車両の走行車線を決定する。例えば、自車両の走行経路に右折する交差点があり、当該右折する交差点までの走行経路が片側2車線以上である場合、交差点から自車両までの距離が所定の距離未満となるまでに、最も右側の車線を走行するように走行経路を設定する。なお、当該右折する交差点に接続する走行経路が2車線以上の右折レーンを有する場合、右折レーンの何れかに走行経路を設定する。左折する交差点も右折時と同様であり、交差点から自車両までの距離が所定の距離未満となるまでに、最も左側の車線を走行するように走行経路を設定する。または、左折する交差点に接続する走行経路が2車線以上の左折レーンを有する場合は、左折レーンの何れかに走行経路を設定する。
【0016】
交差点抽出部120は、走行経路における自車両が右左折する交差点を抽出し、自車両が右左折する交差点の位置を取得する。具体的には、交差点抽出部120は、地図データに登録されている交差点の情報を抽出し、自車両が右左折する交差点の位置を特定する。
【0017】
自車位置検出部130は、自車両の位置を検出する。具体的には、自車位置検出部130は、GPS機能を用いて自車両の位置を検出する。なお、自車位置検出部130は、マップマッチング機能を用いてGPSの誤差を補正することにより、より精度良く自車両の位置を特定することができる。自車位置検出部130は、特定した自車両の位置から次に右左折する交差点までの距離を走行経路から算出する。これにより、自車位置検出部130は、自車両が右左折する交差点に接近しているか否かを判断することができる。自車両が右左折する交差点に接近しているか否かを判断するための具体的な方法としては、交差点に進入するまでの走行時間により判断することができる。例えば、交差点までの走行時間が15秒未満となった場合に、交差点に接近していると判断する。なお、自車両が右左折する交差点に接近しているか否の判断は、自車両から交差点までの距離で判断してもよい。
【0018】
移動物体計測部140は、カメラ200及びレーダ300から自車両の前方の情報を取得し、取得した情報を解析することにより、自車両の前方の他車両を検出し、他車両の位置及び移動方向を測定する。移動物体計測部140は、物体検出部141、物体位置計測部142、物体移動方向計測部143、自車両挙動計測部144を備えている。なお、本実施形態では、カメラ200及びレーダ300を用いて他車両を検出する方法を説明するが、他車両の検出方法はこれに限定されない。例えば、ステレオカメラ、又はライダー(LiDAR)を用いて他車両を検出してもよい。
【0019】
物体検出部141は、カメラ200が撮像した自車両の前方の撮像画像から他車両を検出する。具体的には、物体検出部141は、画像認識機能を用いることにより、撮像画像に含まれる他車両を検出する。画像認識機能とは、撮像画像に含まれる各々物体の特徴量を抽出し、抽出した各々の物体の特徴量から物体が何かを特定する機能である。物体検出部141は、撮像画像に含まれる各々の物体が車両としての特徴を有しているか否かを判断し、各々の物体が他車両であるか否かを判断する。
【0020】
物体位置計測部142は、自車両に対する他車両の各時刻における実空間上の相対位置を計測する。具体的には、物体位置計測部142は、レーダ300が測定した各々の物体の自車両に対する3次元相対位置を取得し、取得した各々の物体の3次元相対位置の中から物体検出部141が検出した他車両の3次元相対位置を抽出する。これにより、物体位置計測部142は、他車両の自車両に対する実空間上の3次元相対位置を測定することができる。
【0021】
以上のように、カメラ200とレーダ300とのセンサフュージョンにより、他車両の検出及び他車両の自車両に対する実空間上の相対位置を測定ことができる。なお、本実施形態では、レーダ300を用いて他車両の3次元相対位置を計測するが、他車両の3次元相対位置の計測方法はこれに限定されない。例えば、カメラ200をステレオカメラとすることにより、レーダ300を用いずに他車両の自車両に対する3次元相対位置を計測することができる。
【0022】
物体移動方向計測部143は、物体位置計測部142が測定した自車両に対する他車両の各時刻における実空間上の相対位置と、自車両挙動計測部144が計測した自車両の移動量とに基づいて、他車両の移動方向を検出する。
【0023】
自車両挙動計測部144は、自車両の各時刻における実空間上の位置を特定し、自車両の実空間上の位置の変化から自車両の移動量を計測する。具体的には、自車両挙動計測部144は、GPS機能を用いて自車両の座標を取得することにより、自車両の各時刻における実空間上の位置を特定する。なお、自車両挙動計測部144は、GPS機能を用いて取得した自車両の座標に加え、自車両の車速パルス及び自車両のヨーレートセンサを用いて自車両の位置を算出してもよい。自車両挙動計測部144は、取得した自車両の各時刻における実空間上の位置の変化から自車両の移動方向及び移動量を計測することができる。
【0024】
以下にて、物体移動方向計測部143が、自車両に対する他車両の各時刻における実空間上の相対位置及び自車両の移動量から他車両の移動方向を検出する処理について具体的に説明する。
【0025】
物体移動方向計測部143は、物体位置計測部142によって計測された他車両の自車両に対する実空間上の3次元相対位置を、自車両の移動量に基づいて実空間上の位置(絶対位置)へと修正し、他車両の3次元絶対位置をトラッキングすることにより、他車両の移動方向を検出する。より具体的には、時刻T1に計測した他車両の3次元相対位置が(X1、Y1、Z1)であり、時刻T2に計測した他車両の3次元相対位置(X2、Y2、Z2)であったとする。そして、時刻T1から時刻T2の間に移動した自車両の移動距離が(Xc、Yc、Zc)であった場合、自車両の移動距離により修正された他車両の実空間上の位置は、(X2-(X1-Xc)、Y2-(Y1-Yc)、Z2-(Z1-Zc)と計算することができる。これにより、物体移動方向計測部143は、他車両の移動方向を検出することができる。ここで、X、Y、Zは、それぞれカメラ200の位置を基準位置(原点)とする座標であり、Xは左右方向を示し基準位置より右方向を正とし、Yは上下方向を示し基準位置より上側を正とし、Zは前後方向であって基準位置より前側を正とする。なお、上記した他車両の移動方向の算出方法では、他車両の移動方向に加え、他車両の移動ベクトルも検出することができる。
【0026】
旋回経路設定部150は、交差点における自車両の旋回経路を設定する。具体的には、旋回経路設定部150は、自車位置検出部130によって自車両が右左折する交差点に接近していると判断された場合、交差点における自車両が走行可能な領域である経路設定領域を設定し、設定した経路設定領域に自車両の旋回経路を設定する。
【0027】
ここで、
図2を参照して、旋回経路設定部150が経路設定領域8を設定する処理について具体的に説明する。経路設定領域8とは、第1延長線3、第1直進方向線4、最外側境界線6、及び最内側境界線に囲まれた領域(ハッチング部)である。旋回経路設定部150は、自車両が右左折する交差点に接近している場合、先ず、第1延長線3と、第1直進方向線4とを算出する。次に、旋回経路設定部150は、第1延長線3及び第1直進方向線4に接する、最外側境界線6と、最内側境界線7とを設定する。旋回経路設定部150は、第1延長線3、第1直進方向線4、最外側境界線6、及び最内側境界線7に囲まれた領域(ハッチング部)を経路設定領域8として設定する。
【0028】
先ず、旋回経路設定部150が、第1延長線3及び第1直進方向線4を算出する処理について説明する。第1延長線3は、交差点において他車線を自車両1が旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両2Aの位置を通って他車両2Aの移動方向又はその逆方向に延びる延長線であり、第1直進方向線4は、自車両1の
直進方向に延びる延長線である。
図2において、自車両1の旋回する方向は右下方向であり、他車両2Aは自車両が旋回する方向の逆方向である左上方向から自車両が旋回する方向である右下方向に向かって移動している。
【0029】
旋回経路設定部150は、自車位置検出部130によって自車両1が右左折する交差点に接近していると判断された場合、走行経路設定部110から自車両の旋回する方向を取得し、物体移動方向計測部143から他車両2Aの移動方向を取得する。旋回経路設定部150は、複数の他車両(不図示)が検出されている場合、取得した複数の他車両の移動方向の中から自車両1が旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両2Aの移動方向を抽出する。旋回経路設定部150は、他車両2Aの位置を通って他車両2Aの移動方向である右下に延びる第1延長線3を算出する。旋回経路設定部150は、自車位置検出部130から自車両1の移動方向を取得し、自車両1の直進方向に延びる第1直進方向線4を算出する。
【0030】
次に、旋回経路設定部150が、最外側境界線6及び最内側境界線7を設定する処理について説明する。最外側境界線6は、第1延長線3及び第1直進方向線4に接する自車両の最小の旋回半径Rminを半径とする円弧状の曲線であり、最内側境界線7は、第1延長線3及び第1直進方向線4に接する自車両の最小の旋回半径よりも大きい半径Rmaxを有する円弧状の曲線である。
【0031】
旋回経路設定部150は、自車両の最小の旋回半径Rminを半径とする円弧状の曲線を生成し、生成した曲線が第1延長線3及び第1直進方向線4に接する最外側境界線6を設定する。旋回経路設定部150は、自車両、第1延長線3及び第1直進方向線4に接する自車両の最小の旋回半径Rminよりも大きい半径Rmaxを有する円弧状の曲線である最内側境界線7を設定する。
【0032】
旋回経路設定部150は、最内側境界線7として、曲率の変化率が所定値以下となる曲線であって、第1延長線3に接続する際の方向が第1延長線3の方向と一致する曲線を設定する。具体的には、旋回経路設定部150は、自車両の最小の旋回半径Rminよりも大きい半径Rmaxを有する円弧が自車両1及び第1延長線3と接続する際の曲率の変化率が所定値以下となる曲線を設定する。当該所定値は、車両が設定された曲線の上を走行した時に、車両の乗員が車両に発生する横加速度を許容できる曲率である。そして、旋回経路設定部150は、第1延長線3と接続する際の曲線の方向が第1延長線3の方向と一致するように曲率を設定する。なお、旋回半径Rminと半径Rmaxとの差は予め任意に設定可能であり、一定であっても良いし、あるいは道路形状に応じて可変としても良い。
【0033】
以上説明したように、旋回経路設定部150は、第1延長線3、第1直進方向線4、最外側境界線6、及び最内側境界線7に囲まれた領域である経路設定領域8を設定し、設定した経路設定領域8に自車両の旋回経路を設定することができる。なお、旋回経路設定部150は、物体検出部141によって検出された物体が旋回経路の上にあると判断した場合、経路設定領域8の範囲内で物体を回避する旋回経路を探索し、物体を回避する旋回経路を設定する。または、物体の存在位置よりも手前で停車する旋回経路を設定する。
【0034】
図1に戻り、走行支援部160は、経路設定領域8に設定された旋回経路を走行するように自車両を制御する。また、走行支援部160は、旋回経路設定部150が経路設定領域の範囲内で物体を回避する旋回経路を設定することができなかった場合、停車するように自車両を制御する。具体的には、電動パワーステアリングユニット、エンジンコントロールユニット、ABSユニット等のステアリング、アクセル、ブレーキを制御する各コントロールユニットを制御し、自車両を制御する。
【0035】
[走行支援方法]
次に、
図3を参照して
図1に示した走行支援装置が、高精度地図を用いることなく、交差点内の旋回経路を設定し、設定した旋回経路を走行するように自車両を制御する方法を説明する。
図3のフローチャートに示す走行支援装置の動作は、自車両の目的地が設定され、かつ自車両の運転支援機能が有効である場合に開始され、自車両が目的地に到着又は自車両の運転支援機能が無効となった時点で処理を終了する。
【0036】
ステップS10において、走行経路設定部110は、入力された目的地を取得し、記憶部400に記憶された道路単位の簡易地図データを読み出して、自車両の現在の位置から入力された目的地までの道路単位の走行経路を設定する。
【0037】
ステップS20に進み、自車位置検出部130は、自車両の位置を検出し、交差点抽出部120から取得した走行経路における自車両が右左折する交差点の位置を取得する。自車位置検出部130は、特定した自車両の位置から次に右左折する交差点までの距離を走行経路から算出し、自車両が右左折する交差点に接近しているか否かを判断する。自車両が右左折する交差点に接近していないと判断した場合(ステップS20でNO)、ステップS20に滞留し処理を継続する。自車両が右左折する交差点に接近していると判断した場合(ステップS20でYES)、ステップS30に進む。
【0038】
ステップS30において、物体検出部141は、カメラ200が撮像した自車両の前方の撮像画像から他車両を検出する。
【0039】
ステップS40に進み、物体位置計測部142は、レーダ300が測定した各々の物体の自車両に対する相対位置を取得し、自車両に対する他車両の各時刻における実空間上の相対位置を計測する。
【0040】
ステップS50に進み、物体移動方向計測部143は、物体位置計測部142が測定した自車両に対する他車両の各時刻における実空間上の相対位置と、自車両挙動計測部144が計測した自車両の移動量とに基づいて、他車両の移動方向を検出する。
【0041】
ステップS60に進み、旋回経路設定部150は、走行経路設定部110から自車両の旋回する方向を取得し、物体移動方向計測部143から他車両の移動方向を取得する。旋回経路設定部150は、取得した他車両の移動方向の中から他車線を自車両が旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両が検出されたか否かを判断する。
【0042】
他車線を自車両が旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両が検出されていない場合(ステップS60でNO)、ステップS30に戻り自車両周辺の他車両の検出を継続して実施する。他車線を自車両が旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両が検出された場合(ステップS60でYES)、ステップS70に進む。
【0043】
ステップS70において、旋回経路設定部150は、他車線を自車両が旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両の位置を通って他車両の移動方向に延びる第1延長線を算出する。
【0044】
ステップS80に進み、旋回経路設定部150は、自車位置検出部130から自車両の移動方向を取得し、自車両の直進方向に延びる第1直進方向線を算出する。
【0045】
ステップS90に進み、旋回経路設定部150は、自車両の最小の旋回半径Rminを半径とする円弧状の曲線を生成し、生成した曲線が第1延長線及び第1直進方向線に接する最外側境界線を設定する。
【0046】
ステップS100に進み、旋回経路設定部150は、自車両、第1延長線及び第1直進方向線に接する自車両の最小の旋回半径Rminよりも大きい半径Rmaxを有する円弧状の曲線である最内側境界線を設定する。
【0047】
ステップS110に進み、旋回経路設定部150は、第1延長線、第1直進方向線、最外側境界線、及び最内側境界線に囲まれた領域である経路設定領域を設定し、設定した経路設定領域に自車両の旋回経路を設定する。なお、旋回経路設定部150は、物体が旋回経路の上にあると判断した場合、経路設定領域の範囲内で物体を回避する旋回経路を探索し、物体を回避する旋回経路を設定する。または、物体の存在位置よりも手前で停車する旋回経路を設定する。
【0048】
ステップS120に進み、走行支援部160は、電動パワーステアリングユニット、エンジンコントロールユニット、ABSユニット等のステアリング、アクセル、ブレーキを制御する各コントロールユニットを制御し、旋回経路を走行するように自車両を制御する。また、走行支援部160は、旋回経路設定部150が経路設定領域の範囲内で物体を回避する旋回経路を設定することができなかった場合、停車するように自車両を制御する。
【0049】
以上説明した処理を実行することにより、走行支援装置は、高精度地図を用いることなく、交差点内の旋回経路を設定し、設定した旋回経路を走行するように自車両を制御することができる。
【0050】
以上説明したように、第1実施形態によれば以下の作用効果が得られる。
【0051】
走行支援装置100は、第1延長線と第1直進方向線とを算出し、第1延長線と第1直進方向線とに接続する、自車両の最小の旋回半径を半径とする円弧状の曲線である最外側境界線と最小の旋回半径よりも半径の大きい円弧状の曲線である最内側境界線とを設定する。これにより、走行支援装置100は、第1延長線、第1直進方向線、最外側境界線、及び最内側境界線に囲まれた、自車両が走行可能な領域である経路設定領域を設定することができ、経路設定領域に自車両が旋回するための旋回経路を設定することができる。
【0052】
走行支援装置100は、最内側境界線として、曲率の変化率が所定値以下となる曲線であって、第1延長線に接続する際の方向が第1延長線の方向と一致する曲線を設定する。これにより、走行支援装置100は、自車両の旋回経路を曲率変化が緩やかな曲線で設定することができ、自車両を滑らかに旋回させることができる。
【0053】
走行支援装置100は、自車両に対する他車両の各時刻における実空間上の相対位置と、自車両の移動量とに基づいて、他車両の移動方向を検出する。これにより、他車両の自車両に対する実空間上の相対位置を自車両の移動量に基づいて実空間上の位置(絶対位置)へと修正することができ、他車両の実空間上の位置をトラッキングすることで他車両の移動方向を検出することができる。
【0054】
走行支援装置100は、設定した旋回経路の上に物体が検出された場合、経路設定領域の範囲内で物体を回避する旋回経路を探索する。これにより、物体を回避する旋回経路を設定することができる。また、物体を回避する旋回経路を設定することができなかった場合、物体の存在位置よりも手前で車両を停車させる旋回経路を設定する。これにより、物体との衝突を回避することができる。
【0055】
(第2実施形態)
[走行支援装置の構成]
図4を参照して、第2実施形態に係る走行支援装置の構成について説明する。第1実施形態との相違点は、交差点中心推定部170をさらに備える点、及び旋回経路設定部150の処理である。よって、交差点中心推定部170及び旋回経路設定部150についてのみ説明し、その他共通する構成については説明を省略する。
【0056】
交差点中心推定部170は、自車両が右左折する交差点の中心位置を検出する。ここで、
図5を参照して、交差点中心推定部170が交差点の中心位置5を検出する処理について具体的に説明する。
図5において自車両1の旋回する方向は右方向である。
【0057】
先ず、交差点中心推定部170は、第1延長線3、第2延長線9、及び第2直進方向線を算出する。次に、交差点中心推定部170は、第1延長線3と第2延長線9との中心線10と第2直進方向線11との交点を、交差点の中心位置5として検出する。
【0058】
以下にて、交差点中心推定部170が、第1延長線3、第2延長線9、及び第2直進方向線を算出する具体的な処理内容について説明する。
【0059】
交差点中心推定部170は、走行経路設定部110から自車両1の旋回する方向を取得し、物体移動方向計測部143から他車両(2A、2B)の移動方向を取得する。交差点中心推定部170は、取得した他車両(2A、2B)の移動方向の中から他車線を自車両1が旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両2Aの移動方向を抽出し、他車両2Aの位置を通って他車両2Aの移動方向に延びる第1延長線3を算出する。
【0060】
交差点中心推定部170は、取得した他車両2(2A、2B)の移動方向の中から他車線を自車両1が旋回する方向から旋回する方向の逆方向に向かって移動する他車両2Bの移動方向を抽出し、他車両2Bの位置を通って他車両2Bの移動方向に延びる第2延長線9を算出する。交差点中心推定部170は、自車位置検出部130から自車両1の移動方向を取得し、自車両1の対向車線側の側面から直進方向に延びる第2直進方向線11を算出する。
【0061】
以上説明したように、交差点中心推定部170は、第1延長線3、第2延長線9、及び第2直進方向線を算出する。そして、交差点中心推定部170は、第1延長線3と第2延長線9の中心線10を算出し、中心線10と第2直進方向線11との交点を、交差点の中心位置5として検出することができる。
【0062】
図4に戻り、旋回経路設定部150は、交差点中心推定部170が検出した交差点の中心位置を取得し、最外側境界線が交差点の中心位置よりも旋回半径方向の外側にある場合、最外側境界線を、交差点の中心位置よりも最内側境界線の近くに設定する。
【0063】
ここで、
図6を参照して旋回経路設定部150が、最外側境界線6を交差点の中心位置5よりも最内側境界線の近くに設定する処理について説明する。
図6に示す最外側境界線6は交差点の中心位置5よりも旋回半径方向の外側に設定されている。
【0064】
旋回経路設定部150は、設定した最外側境界線6が交差点の中心位置5よりも旋回半径方向の外側にあると判断し、最外側境界線6を、最外側境界線6Aへと変更する。具体的には、旋回経路設定部150は、交差点の中心位置5を通り、第1延長線3及び第1直進方向線4と交差する直線6Bを生成し、直線6Bよりも旋回半径方向の外側に設定されている最外側境界線6を直線6Bへと変更した最外側境界線6Aを設定する。直線6Bの傾きは、下記の式(1)で算出される。
【0065】
【0066】
これにより、旋回経路設定部150は、最外側境界線6を、交差点の中心位置よりも最内側境界線の近くに設定することができる。なお、最外側境界線6を交差点の中心位置5よりも最内側境界線の近くに設定する方法は、上記した方法に限定されず、例えば、最外側境界線6を交差点の中心位置5に接するまでオフセットさせてもよい。
【0067】
[走行支援方法]
次に、
図7を参照して、第2実施形態に係る走行支援方法について説明する。第1実施形態との相違点は、ステップS101、ステップS102をさらに備える点である。よって、ステップS101、ステップS102での処理についてのみ説明し、その他共通する処理については説明を省略する。
【0068】
ステップS101において、旋回経路設定部150は、交差点中心推定部170が検出した交差点の中心位置を取得し、最外側境界線が交差点の中心位置よりも旋回半径方向の外側にあるか否かを判断する。
【0069】
最外側境界線が交差点の中心位置よりも旋回半径方向の外側にないと判断した場合(ステップS101でNO)、ステップS110に進む。最外側境界線が交差点の中心位置よりも旋回半径方向の外側にあると判断した場合(ステップS101でYES)、ステップS102に進む。
【0070】
ステップS102において、旋回経路設定部150は、最外側境界線を交差点の中心位置よりも最内側境界線の近くに設定する。
【0071】
以上説明したように、第2実施形態によれば第1実施形態に加え、以下の作用効果が得られる。
【0072】
走行支援装置100は、第1延長線、第2延長線、及び第2直進方向線を算出し、第1延長線と第2延長線との中心線10と第2直進方向線11との交点を、交差点の中心位置5として検出する。これにより、走行支援装置100は、交差点の中心位置を推定することができる。
【0073】
走行支援装置100は、交差点の中心位置を取得し、最外側境界線が交差点の中心位置よりも旋回半径方向の外側にある場合、最外側境界線を、交差点の中心位置よりも最内側境界線の近くに設定する。これにより、走行支援装置100は、経路設定領域を修正し、対向車線を走行する他車両との衝突を防止する旋回経路を設定することができる。
【0074】
(第3実施形態)
図8を参照して、第3実施形態に係る走行支援装置の構成について説明する。第2実施形態との相違点は、物体軌跡生成部180をさらに備える点、及び旋回経路設定部150と交差点中心推定部170の処理である。よって、物体軌跡生成部180、交差点中心推定部170、旋回経路設定部150についてのみ説明し、その他共通する構成については説明を省略する。
【0075】
物体軌跡生成部180は、物体移動方向計測部143から他車両の各時刻における実空間上の位置(絶対位置)のトラッキングデータを取得し、他車両の各時刻における実空間上の位置を繋ぎ合わせて実空間における他車両の移動軌跡を生成する。
【0076】
交差点中心推定部170は、物体軌跡生成部180によって生成された他車両の移動軌跡を用いて交差点の中心位置を推定する。ここで、
図9及び
図10を参照して、交差点中心推定部170が、他車両の移動軌跡を用いて交差点の中心位置を推定する方法について具体的に説明する。
【0077】
先ずは、
図9を参照して、交差点中心推定部170が、他車両(2C、2D)の移動軌跡を用いて交差点の中心位置5を推定する方法について具体的に説明する。交差点中心推定部170は、物体軌跡生成部180から自車線と交差する他車線から自車線へと進入する他車両2Cの移動軌跡12と、自車線と交差する他車線から自車線の対向車線へと進入する他車両2Dの移動軌跡13とを取得する。そして、交差点中心推定部170は、移動軌跡12と移動軌跡13との最短距離をなす直線の中央位置を交差点の中心位置5として設定する。
【0078】
次に、
図10を参照して、交差点中心推定部170が、他車両(2A、2B、2E、2F)の移動軌跡を用いて交差点の中心位置5を推定する方法について具体的に説明する。交差点中心推定部170は、自車線及び自車線の対向車線を直進する他車両(2E、2F)の各々の自車線方向の移動軌跡(16、17)と、自車線と交差する他車線及び自車線と交差する他車線の対向車線を直進する他車両(2A、2B)の各々の交差車線方向の移動軌跡(14、15)とを取得する。そして、交差点中心推定部170は、各々の車線方向において対向し合う最も近い車線間の中心線(18、19)の交点を交差点の中心位置5として設定する。
【0079】
また、交差点中心推定部170は、交差車線方向の移動軌跡(14、15)において対向し合う最も近い車線間の中心線18と第2直進方向線(不図示)との交点を交差点の中心位置5として設定することもできる。
【0080】
図8に戻り、旋回経路設定部150は、他車両を検出する範囲を設定する。具体的には、自車両の位置が交差点から所定の距離以内の位置である場合、第1直進方向線から自車両の旋回する方向の交差点の出口までを検出範囲として設定する。
【0081】
ここで、
図11を参照して、旋回経路設定部150が、検出範囲21を設定する処理について具体的に説明する。
図11において、自車両1の旋回する方向は右方向である。
【0082】
先ず、旋回経路設定部150は、他車線を自車両1が旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両のうち、自車両に最も近い他車両2Aまでの距離20を測定する。具体的には、旋回経路設定部150は、自車両から他車両2Aの移動軌跡までの距離を測定する。または、自車両から第1延長線までの距離を測定してもよい。
【0083】
次に、旋回経路設定部150は、第1直進方向線4から自車両の旋回する方向であって、自車線と交差する他車線に平行する方向の距離を、測定した距離20とする検出範囲21を設定する。旋回経路設定部150は、検出範囲21の中で最も自車両から遠い位置を走行する他車両の位置及び移動方向(不図示)に基づいて経路設定領域を設定する。
【0084】
図8に戻り、旋回経路設定部150は、自車両が走行経路を進むことで、設定した検出範囲に経路設定領域よりも外側を移動する他車両が新たに検出された場合、検出された他車両の位置及び移動方向に基づいて旋回経路を更新する。
【0085】
旋回経路設定部150は、自車両の旋回する方向が他車線を跨いで旋回する方向であって、他車線を自車両の旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両の移動軌跡が複数検出された場合、複数の他車両の移動軌跡の間隔を測定する。旋回経路設定部150は、複数の他車両の移動軌跡の間隔が所定の閾値以上ある場合、自車両から最も遠い他車両を抽出し、自車両から最も遠い他車両の移動軌跡に基づいて最内側境界線を設定する。
【0086】
[走行支援方法]
次に、
図12を参照して、第3実施形態に係る走行支援方法について説明する。第2実施形態との相違点は、ステップS51、ステップS52、ステップS61をさらに備える点である。よって、ステップS51、ステップS52、ステップS61での処理についてのみ説明し、その他共通する処理については説明を省略する。
【0087】
ステップS51において、物体軌跡生成部180は、物体移動方向計測部143から他車両の位置のトラッキングデータを取得し、他車両の各時刻における実空間上の位置を繋ぎ合わせて実空間における他車両の移動軌跡を生成する。
【0088】
ステップS52に進み、旋回経路設定部150は、他車線を自車両1が旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両のうち、自車両に最も近い他車両までの距離20を測定する。旋回経路設定部150は、第1直進方向線から自車両の旋回する方向であって、自車線と交差する他車線に平行する方向の距離を、測定した距離とする検出範囲を設定する。
【0089】
ステップS62において、旋回経路設定部150は、自車両の旋回する方向が他車線を跨いで旋回する方向であって、他車線を自車両の旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両の移動軌跡が複数検出された場合、複数の他車両の移動軌跡の間隔を測定する。旋回経路設定部150は、複数の他車両の移動軌跡の間隔が所定の閾値以上ある場合、自車両から最も遠い他車両抽出する。
【0090】
以上説明したように、第3実施形態によれば第2実施形態に加え、以下の作用効果が得られる。
【0091】
走行支援装置100は、自車両に対する他車両の各時刻における実空間上の相対位置を各時刻における自車両の移動量に基づいて修正し、修正した他車両の各時刻における実空間上の位置を繋ぎ合わせて実空間における他車両の移動軌跡を生成する。これにより、走行支援装置100は、他車両の自車両に対する実空間上の相対位置を自車両の移動量に基づいて実空間上の位置(絶対位置)へと修正することができ、他車両の実空間上の位置を繋ぎ合わせることで他車両の移動軌跡を生成することができる。
【0092】
走行支援装置100は、他車両の移動軌跡を用いて交差点の中心位置を推定する。これにより、他車両の移動する方向の延長線に加え、他車両の移動軌跡を用いて交差点の中央位置を推定することができる。
【0093】
走行支援装置100は、自車線と交差する他車線から自車線へと進入する他車両の移動軌跡と、自車線と交差する他車線から自車線の対向車線へと進入する他車両の移動軌跡との最短距離をなす直線の中央位置を交差点の中心位置と設定する。これにより、他車両が実際に交差点を旋回した時の移動軌跡に基づいて交差点の中心位置を設定することができる。
【0094】
走行支援装置100は、自車線及び自車線の対向車線を直進する他車両の各々の自車線方向の移動軌跡と、自車線と交差する他車線及び自車線と交差する他車線の対向車線を直進する他車両の各々の交差車線方向の移動軌跡とを取得する。そして、走行支援装置100は、各々の車線方向において対向し合う最も近い車線間の中心線の交点を交差点の中心位置として設定する。これにより、走行支援装置100は、他車両が実際に交差点を直進した時の自車線方向の移動軌跡と交差車線方向の移動軌跡とに基づいて交差点の中心位置を設定することができる。
【0095】
走行支援装置100は、交差車線方向の移動軌跡において対向し合う最も近い車線間の中心線と第2直進方向線との交点を交差点の中心位置として設定する。これにより、走行支援装置100は、他車両の移動軌跡として、交差車線方向の移動軌跡のみが検出された場合でも交差点の中心位置を設定することができる。
【0096】
走行支援装置100は、他車両を検出する検出範囲を設定することにより、自車両の旋回経路を設定するにあたり関係のない他車両を除外することができる。
【0097】
走行支援装置100は、自車両の位置が交差点から所定の距離以内の位置である場合、第1直進方向線から自車両の旋回する方向の交差点の出口までを検出範囲として設定する。これにより、走行支援装置100は、自車両の位置が交差点から所定の距離以内の位置となった場合に検出範囲を設定することにより、適切なタミングで検出範囲を設定することができる。さらに、走行支援装置100は、第1直進方向線から自車両の旋回する方向の交差点の出口までを検出範囲として設定することにより、交差点出口近傍を走行する他車両の位置及び移動方向に基づいて自車両の旋回経路を設定でき、交差点通過後の道路形状を考慮した旋回経路を設定することができる。
【0098】
走行支援装置100は、交差点内において他車線を自車両の旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両のうち、自車両に最も近い他車両までの距離を測定することにより、交差点のおおよその大きさを推定することができる。走行支援装置100は、第1直進方向線から自車両の旋回する方向であって自車線と交差する他車線の方向の距離を、測定した距離とする検出範囲を設定することにより、自車両の旋回方向側の交差点を含むように検出範囲を設定することができる。これにより、交差点出口近傍を走行する他車両の位置及び移動方向に基づいて自車両の旋回経路を設定でき、交差点通過後の道路形状を考慮した旋回経路を設定することができる。
【0099】
走行支援装置100は、自車両が移動することで検出範囲が更新され、検出範囲に経路設定領域よりも外側を移動する他車両が新たに検出された場合、検出された他車両の位置及び移動する方向に基づいて旋回経路を更新する。これにより、走行支援装置100は、死角になどにより検出できなかった他車両の情報を取得し、より新しい他車両の位置及び移動方向に基づいて旋回経路を設定することができる。
【0100】
走行支援装置100は、自車両の旋回する方向が他車線を跨いで旋回する方向であって、他車線を自車両の旋回する方向の逆方向から旋回する方向に向かって移動する他車両の移動軌跡が複数検出された場合、複数の他車両の移動軌跡の間隔を測定する。これにより、走行支援装置100は、他車両の移動軌跡の間隔から自車両が旋回して進入する他車線の車線数を推定することができる。そして、走行支援装置100は、移動軌跡の間隔が所定の閾値以上ある場合、自車両から最も遠い他車両の移動軌跡に基づいて最内側境界線を設定することにより、自車両を進入する車線の第1通行帯に進入させることができる。
【0101】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0102】
100 走行支援装置
120 交差点抽出部
150 旋回経路設定部