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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】制御バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/04 20060101AFI20241031BHJP
   F16K 11/085 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16K5/04 E
F16K11/085 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020205831
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2021152405
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2020050173
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大関 哲史
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-048683(JP,A)
【文献】特開2018-071779(JP,A)
【文献】特開2022-025332(JP,A)
【文献】特開2018-080724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0011437(US,A1)
【文献】国際公開第2014/148126(WO,A1)
【文献】特開2018-179122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/04
F16K 11/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から液体が流入する流入口、及び、内部に流入した液体を外部に流出させる流出口を有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に回転可能に配置され、周壁部の軸方向の一端部寄りに弁孔が形成された弁体と、
一端部が前記流出口に連通し、他端部が前記周壁部の外周面に当接して前記弁孔によって開閉されるシール筒部材と、
前記弁体の軸心位置に配置されて前記弁体に回転動力を伝達する駆動軸と、を備え、
前記弁体は、前記周壁部と、当該周壁部の軸方向の一端部寄りの位置と前記駆動軸を連結する連結壁と、を有し、
前記連結壁は、前記弁孔の前記一端部寄りの端縁よりも前記周壁部の軸方向内側位置から径方向内側に延出して、前記周壁部の軸方向の一端部側に開口する凹形状部を形成し、
前記ケーシングの軸方向の一端部側の端部壁は、前記凹形状部の内側に入り込むように膨出し
前記連結壁の径方向外側の端部は、前記周壁部の外周面よりも径方向内側に窪む接続部を介して、前記弁孔の前記一端部寄りの端縁に接続されていることを特徴とする制御バルブ。
【請求項2】
前記シール筒部材は、前記周壁部の外周面に摺動自在に当接する環状の弁摺接面を有し、
前記弁孔の前記一端部寄りの端縁と、当該端縁と対向する他端部寄りの端縁とは、前記シール筒部材の前記弁摺接面のうちの、内周端部よりも径方向外側位置に当接することを特徴とする請求項に記載の制御バルブ。
【請求項3】
前記連結壁は、前記周壁部と前記駆動軸の間を閉塞していることを特徴とする請求項1または2に記載の制御バルブ。
【請求項4】
前記連結壁は、径方向外側の端部から径方向内側に向かって前記周壁部の軸方向内側に湾曲していることを特徴とする請求項に記載の制御バルブ。
【請求項5】
前記弁孔は、前記周壁部の周方向に沿って延びる長孔形状に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の制御バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却水の流路切換等に用いられる制御バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷却水を用いてエンジンを冷却する冷却システムでは、ラジエータとエンジンの間を循環するラジエータ流路とは別に、ラジエータをバイパスするバイパス流路や空調空気を加熱する空調流路等が併設されることがある。この種の冷却システムでは、流路の分岐部に制御バルブが介装され、その制御バルブによって適宜流路が切り換えられるようになっている。制御バルブとしては、周壁部(円筒壁)を有する弁体がケーシング内に回転可能に配置され、弁体の回転位置に応じて任意の流路が開閉されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の制御バルブは、ケーシングに、冷却液等の液体が流入する流入口と、その流入した液体を外部に吐出するための設定数の流出口が設けられている。弁体の周壁部には、内外を連通する弁孔が複数の流出口と対応して複数形成されている。また、ケーシングの各流出口には、円筒状のシール筒部材の一端部側が保持されている。各シール筒部材の他端部側には、弁体の周壁部の外周面に摺動自在に当接する弁摺接面が設けられている。各シール筒部材の弁摺接面は、弁体の対応する弁孔の回転経路とラップする位置において周壁部の外周面に摺接する。各シール筒部材は、弁体上の対応する弁孔によって開閉される。
【0004】
弁体は、シール筒部材が対応する弁孔と連通する回転位置にあるときには、周壁部の内側領域から対応する流出口への液体の流出を許容し、シール筒部材が対応する弁孔と連通しない回転位置にあるときには、周壁部の内側領域から対応する流出口への液体の流出を遮断する。なお、弁体は、電動モータ等のアクチュエータによって回転位置を操作される。
弁体の周壁部の軸心位置には、アクチュエータの動力を弁体に伝達するための駆動軸が配置されている。弁体の周壁部の軸方向の一端部には、周壁部と駆動軸を連結するための連結壁が一体に形成されている。連結壁は、周壁部の軸方向の一端部から径方向内側に延び、径方向内側の端部が駆動軸に連結されている。ケーシングの軸方向の一端側(アクチュエータ側)の端部壁は、連結壁の軸方向外側に隣接して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-96736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の制御バルブは、弁体の周壁部と駆動軸を連結する連結壁が周壁の軸方向の一端部から径方向内側に延出しているため、連結壁の径方向外側の端部が支障となってケーシングの端部壁を周壁部の軸方向内側方向に充分に入り込ませることができない。このため、弁体の周壁部の内側の液体の流入容積が大きくなり、制御バルブを含む液体分配システム(例えば、上記の冷却システム)を流れる液体の量が増大してしまう。そして、液体分配システムを流れる液体の量が増大すると、液体分配システム内の各部を所望の温度にコントロールするのに長時間を要し、駆動源であるエンジンのフリクションが増大してしまう。
【0007】
そこで本発明は、弁体の周壁部の内側の液体の流入容積を縮小できるようにして、液体分配システム内の各部を所望の温度に迅速にコントロールすることができる制御バルブを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る制御バルブは、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る制御バルブは、外部から液体が流入する流入口、及び、内部に流入した液体を外部に流出させる流出口を有するケーシングと、前記ケーシングの内部に回転可能に配置され、周壁部の軸方向の一端部寄りに弁孔が形成された弁体と、一端部が前記流出口に連通し、他端部が前記周壁部の外周面に当接して前記弁孔によって開閉されるシール筒部材と、前記弁体の軸心位置に配置されて前記弁体に回転動力を伝達する駆動軸と、を備え、前記弁体は、前記周壁部と、当該周壁部の軸方向の一端部寄りの位置と前記駆動軸を連結する連結壁と、を有し、前記連結壁は、前記弁孔の前記一端部寄りの端縁よりも前記周壁部の軸方向内側位置から径方向内側に延出して、前記周壁部の軸方向の一端部側に開口する凹形状部を形成し、前記ケーシングの軸方向の一端部寄りの端部壁は、前記凹形状部の内側に入り込むように膨出し、前記連結壁の径方向外側の端部は、前記周壁部の外周面よりも径方向内側に窪む接続部を介して、前記弁孔の前記一端部寄りの端縁に接続されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成の場合、弁体の連結壁の外周縁部が周壁部の一端部寄りの端部から軸方向内側に大きく窪むように配置されるため、ケーシングの軸方向の一端部寄りの端部壁の膨出部分を凹形状部内に大きく入り込ませることができる。この結果、弁体の周壁部の内側に流入する液体の流入容積を小さくことが可能になる。
【0011】
この場合、連結壁が弁孔の存在する周方向位置においても接続壁によって弁孔の端縁に接続されることになる。このため、本構成を採用した場合には、周壁部に対する連結壁の結合部剛性を高めることができる。
【0012】
前記シール筒部材は、前記周壁部の外周面に摺動自在に当接する環状の弁摺接面を有し、前記弁孔の前記一端部寄りの端縁と、当該端縁と対向する他端部寄りの端縁とは、前記シール筒部材の前記弁摺接面のうちの、内周端部よりも径方向外側位置に当接するようにしても良い。
【0013】
この場合、弁孔の一端部寄りの端縁と他端部寄りの端縁がシール筒部材の弁摺接面の内周端部よりも径方向外側位置において、弁摺接面に摺接する。このため、経時使用によってシール筒部材の弁摺接面に摩耗が生じることがあっても、その摩耗部がシール筒部材の内周端部に跨ることがない。したがって、弁摺接面に上記の摩耗が生じた場合であっても、周壁部と弁摺接面の間の隙間を通してシール筒部材の内部に液体が漏出するのを抑制することができる。
【0014】
前記連結壁は、前記周壁部と前記駆動軸の間を閉塞することが望ましい。
【0015】
この場合、周壁部の内側に流入した液体が連結壁よりも周壁部の軸方向外側に流出しにくいため、不要な部位に液体が流入することによる液体の圧力損失を抑制することができる。
【0016】
前記連結壁は、径方向外側の端部から径方向内側に向かって前記周壁部の軸方向内側に湾曲する形状であっても良い。
【0017】
この場合、周壁部の内側に流入した液体が連結壁の湾曲面によって案内され、弁孔の方向にスムーズに流れるようになる。
【0018】
前記弁孔は、前記周壁部の周方向に沿って延びる長孔形状に形成されるようにしても良い。
【0019】
この場合、弁孔が周方向に沿って延びる長孔形状であるため、弁孔の一部が連結壁によって狭められることがあっても、周方向に延びる長孔形状によって液体の充分な流入部面積を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、弁体の連結壁が弁孔の一端部寄りの端縁よりも周壁部の軸方向内側位置から径方向内側に延出し、当該連結壁が周壁部の軸方向の一端部側に凹形状部を形成するとともに、ケーシングの端部壁が凹形状部に入り込む形状とされている。このため、ケーシングの端部壁によって弁体の周壁部内に流入する液体の流入容積を縮小し、液体分配システムの各部を所望の温度に迅速にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の液体分配システムのブロック図。
図2】実施形態の制御バルブの斜視図。
図3】実施形態の制御バルブの分解斜視図。
図4】実施形態の制御バルブの図2のIV-IV線に沿う断面図。
図5】実施形態の制御バルブの図4のV-V線に沿う断面図。
図6図5のVI部の拡大図。
図7】実施形態の制御バルブの図2のVII-VII線に沿う断面図。
図8】実施形態の弁体とシール筒部材を示す斜視図。
図9】実施形態のシール筒部材の縦断面図。
図10】他の実施形態の図7と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、エンジン冷却用の冷却液をラジエータその他の機器に分配供給する車両の液体分配システムに制御バルブが採用されている。
【0023】
[液体分配システム]
図1は、液体分配システム1のブロック図である。
図1に示すように、液体分配システム1は、車両駆動源に少なくともエンジンを具備する車両に搭載される。なお、車両としては、エンジンのみを有する車両の他、ハイブリッド車両やプラグインハイブリッド車両等であっても構わない。
【0024】
液体分配システム1は、エンジン2(ENG)、ウォータポンプ3(W/P)、ラジエータ4(RAD)、ヒータコア6(HTR)、EGRクーラ7(EGR)及び制御バルブ8(EWV)が各種流路10~14により接続されて構成されている。
ウォータポンプ3、エンジン2及び制御バルブ8は、メイン流路10上で上流から下流にかけて順に接続されている。メイン流路10では、ウォータポンプ3の動作により冷却液(液体)がエンジン2及び制御バルブ8を順に通過する。
【0025】
メイン流路10には、ラジエータ流路11、バイパス流路12、空調流路13及びEGR流路14がそれぞれ接続されている。これらラジエータ流路11、バイパス流路12、空調流路13及びEGR流路14は、メイン流路10のうちウォータポンプ3の上流部分と制御バルブ8とを接続している。
【0026】
ラジエータ流路11には、ラジエータ4が接続されている。ラジエータ流路11では、ラジエータ4において、冷却液と外気との熱交換が行われる。バイパス流路12は、制御バルブ8を通過した冷却液を、ラジエータ4(ラジエータ流路11)を迂回してウォータポンプ3の上流部分に戻す。
【0027】
空調流路13には、ヒータコア6が接続されている。ヒータコア6は、例えば空調装置のダクト(不図示)内に設けられている。空調流路13では、ヒータコア6において、冷却液とダクト内を流通する空調空気との熱交換が行われる。
【0028】
EGR流路14には、EGRクーラ7が接続されている。EGR流路14では、EGRクーラ7において、冷却液とEGRガスとの熱交換が行われる。
【0029】
上述した液体分配システム1では、メイン流路10においてエンジン2を通過した冷却液が、制御バルブ8内に流入した後、制御バルブ8の動作によって各種流路11~13に選択的に分配される。
【0030】
[制御バルブ]
図2は、制御バルブ8の斜視図であり、図3は、制御バルブ8の分解斜視図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う制御バルブ8の断面図であり、図5は、図4のV-V線に沿う制御バルブ8の断面図である。また、図6は、図5のVI部の拡大図であり、図7は、図2のVII-VII線に沿う制御バルブ8の断面図である。
これらの図に示すように、制御バルブ8は、ケーシング21と、弁体22と、駆動ユニット23と、を主に備えている。
【0031】
[ケーシング]
ケーシング21は、有底筒状のケーシング本体25と、ケーシング本体25の開口側の端部に取り付けられる端部カバー26と、を有している。ケーシング21の内部には、弁体22が回転可能に収容されている。ケーシング21のうちの、弁体22の回転中心軸線と合致する軸線をケーシング21の軸線O1と言う。また、以下の説明では、ケーシング21の軸線O1に沿う方向を単にケース軸方向と言う。また、ケース軸方向において、ケーシング本体25のケース周壁31に対してケーシング本体25の底壁である端部壁32に向かう側をケース軸方向の一端側と言い、ケーシング本体25のケース周壁31に対して端部カバー26に向かう側をケース軸方向の他端側と言う。さらに、ケーシング21の軸線O1に直交する方向をケース径方向と言う。
【0032】
ケーシング本体25は、樹脂材料によって外面形状が略直方体状に形成されている。ケース周壁31のケース軸方向の他端側の端部には、複数の取付片33が延設されている。制御バルブ8は、取付片33を介して図示しないエンジンブロック等に固定される。
【0033】
ケーシング21の端部カバー26は、円環状のフレーム枠26aの軸心位置にボス部26cが配置されている。ボス部26cは、複数のスポーク部26bによってフレーム枠26aに支持されている。ボス部26cには、有底円筒状の滑り軸受16が取り付けられている。端部カバー26のうちの、フレーム枠26aと、ボス部26cと、隣接するスポーク部26bとに囲まれた開口部分は、ケーシング21の内部に冷却液を流入させる流入口17とされている。流入口17は、液体分配システム1のメイン流路10(図1参照)のエンジン2の下流側に接続されている。端部カバー26は、ケーシング本体25と同様に樹脂材料によって形成されている。
【0034】
ケース周壁31の一面を成す壁には、ケース径方向の外側に膨出するラジエータポート41(図4参照)が形成されている。ラジエータポート41には、図示しないフェール開口とラジエータ流出口60(流出口)がケース軸方向と直交する方向に並んで形成されている。ラジエータ流出口60は、ラジエータポート41を貫通して形成されている。また、フェール開口とラジエータ流出口60とは、ケース周壁31の一面を成す壁のうちの、ケース軸方向の他端側に偏った位置に形成されている。
【0035】
ラジエータポート41の開口端面には、ラジエータジョイント42が接続されている。ラジエータジョイント42は、ラジエータ流出口60とラジエータ流路11(図1参照)の上流端部との間を接続している。
また、ラジエータ流出口60には、シール機構36が設けられている。シール機構36は、シール筒部材37と、付勢部材38と、シール部材39,40と、を備えている。シール筒部材37は、軸方向の一端部がラジエータ流出口60内(ラジエータ流出口60の下流側)に連通するとともに、軸方向の他端部が、後述する弁体22によって開閉される。シール機構36については、後に詳述する。
【0036】
フェール開口には、サーモスタット61が配置されている。サーモスタット61は、ケーシング21内を流れる冷却液の温度に応じてフェール開口を開閉する。フェール開口は、ラジエータジョイント42(ラジエータ流路11)に連通している。サーモスタット61は、ケーシング21内を流れる冷却液の温度が規定の温度よりも高まったときに、フェール開口を開いてケーシング21内の冷却液をラジエータ流路11に流出させる。
【0037】
ケース周壁31のケース軸方向の一端側の端部近傍には、サーモスタット61の収容部に隣接してEGRポート62が形成されている。EGRポート62は、ケース周壁31にケース径方向の外側に膨出して形成されている。EGRポート62には、サーモスタット61の収容部内のサーモスタット61よりも上流側部分に連通するEGR流出口63が形成されている。EGRポート62の開口端面には、EGRジョイント52が接続されている。EGRジョイント52は、EGR流出口63とEGR流路14(図1参照)の上流端部との間を接続している。
【0038】
ケース周壁31のラジエータポート41の形成される壁と対向する側の壁には、ケース径方向の外側に膨出するバイパスポート64が形成されている。バイパスポート64には、バイパスポート64をケース径方向に貫通するバイパス流出口65(流出口)が形成されている。バイパス流出口65は、ケーシング21の軸線O1を間に挟んで、ラジエータ流出口60と対向する位置に形成されている。また、バイパス流出口65は、ラジエータ流出口60と同様にケース周壁31のケース軸方向の他端側に偏った位置に形成されている。
【0039】
バイパスポート64の開口端面には、バイパスジョイント66が接続されている。バイパスジョイント66は、バイパス流出口65とバイパス流路12(図1参照)の上流端部とを接続している。バイパス流出口65には、ラジエータ流出口60に設けられるものと同様のシール機構36が設けられている。このシール機構36のシール筒部材37は、軸方向の一端部がバイパス流出口65内(バイパス流出口65の下流側)に連通するとともに、軸方向の他端部が弁体22によって開閉される。
【0040】
ケース周壁31のうちの、ラジエータポート41の形成される壁の一側に隣接する壁には、ケース径方向の外側に膨出する空調ポート67(図2図3参照)が形成されている。空調ポート67には、空調ポート67をケース径方向に貫通する空調流出口68が形成されている。空調ポート67の開口端面には、空調ジョイント69が接続されている。空調ジョイント69は、空調流出口68と空調流路13(図1参照)の上流端部とを接続している。空調流出口68には、ラジエータ流出口60やバイパス流出口65に設けられるものと同様のシール機構36が設けられている。このシール機構36のシール筒部材37は、軸方向の一端部が空調流出口68内(空調流出口68の下流側)に連通するとともに、軸方向の他端部が弁体22によって開閉される。
以下では、空調流出口68内に連通するシール筒部材37を第1のシール筒部材37Aと言い、バイパス流出口65内に連通するシール筒部材37を第2のシール筒部材37Bと言い、ラジエータ流出口60内に連通するシール筒部材37を第3のシール筒部材37Cと言うことがある。
【0041】
[駆動ユニット]
駆動ユニット23は、ケーシング本体25の端部壁32に取り付けられている。図4に示すように、端部壁32は、ケース周壁31のケース軸方向の一端側の端面を閉塞する端部壁本体32aと、端部壁本体32aの外周縁部からケース軸方向の一端側に突出する囲み壁32bと、を有している。駆動ユニット23は、一部が囲み壁32bの内側に収容され、その状態で端部壁32にボルト締結等によって固定されている。
【0042】
駆動ユニット23は、モータや減速機構、制御基板等から成るユニット本体23Aと、ユニット本体23Aを収容するユニットケース23Bと、を備えている。ユニット本体23Aの出力軸23Aaは、ユニットケース23Bを貫通して外部に突出している。出力軸23Aaには、別体の駆動軸27が一体に連結されている。駆動軸27は、同軸に連結された樹脂製の第1軸27Aと、金属製の第2軸27Bと、によって構成されている。駆動軸27は、ケーシング21の端部壁本体32aに形成された軸孔28を貫通し、後述する弁体22の軸心部に連結されている。駆動軸27は、ケーシング21の軸線O1と同軸に配置される。
【0043】
ケーシング21の端部壁本体32aは、ケース周壁31内に臨む側の肉厚が、周縁部から中心領域(軸孔28の形成される領域)に向かって増大している。即ち、端部壁本体32aのケース周壁31内に臨む側には、弁体22の周壁部44の内側方向に向かって膨出する膨出部32a-1が形成されている。軸孔28は、端部壁本体32aの肉厚の最も厚い部分をケース軸方向に貫通するように形成されている。軸孔28の内部には、駆動軸27(第1軸27A)の外周面を摺動自在に支持するための円筒状の滑り軸受29が保持されている。また、軸孔28の弁体22側の端縁には、軸孔28の他の部位の内周面よりも内径の大きい拡径溝30が形成されている。拡径溝30の内部には、駆動軸27(第2軸27B)の外周面に摺動自在に密接して、ケーシング本体25の内部から駆動ユニット23側への冷却液の漏出を防止するシールリング35が取り付けられている。また、駆動軸27の第2軸27Bのケース軸方向の他端側部分は、滑り軸受16を介して端部カバー26のボス部26cに回転自在に支持されている。
【0044】
[弁体]
弁体22は、ケーシング21の内部に回転可能に配置されている。弁体22は、円筒形状の周壁部44と、周壁部44のケース軸方向の一端部寄り位置から径方向内側に向かって延設された連結壁45と、連結壁45の径方向内側の端部に連設された略筒状の連結筒部46と、を備えている。これらの周壁部44、連結壁45、及び、連結筒部46は、樹脂材料によって一体に形成されている。連結筒部46は、駆動軸27(第2軸27B)に一体に連結されている。周壁部44には、上述した各流出口(空調流出口68、バイパス流出口65及びラジエータ流出口60)と連通可能な弁孔47が形成されている。各弁孔47は、周壁部44をケース径方向に貫通している。
以下、空調流出口68に連通可能な弁孔47を第1弁孔47Aと言い、バイパス流出口65に連通可能な弁孔47を第2弁孔47B、ラジエータ流出口60に連通可能な弁孔47を第3弁孔47Cと言う。
【0045】
図8は、弁体22と、弁体22の周壁部44の周域に配置される各シール筒部材37(第1のシール筒部材37A,第2のシール筒部材37B,第3のシール筒部材37C)を示す斜視図である。
第1弁孔47Aは、周壁部44のケース軸方向の一端側(周壁部44の軸方向の一端部寄り)の領域に一つ形成されている。第1弁孔47Aは、周壁部44の周方向に沿う長孔形状に形成されている。第1弁孔47Aは、弁体22が所定の回動範囲にあるときに、弁体22の周壁部44の内側空間と空調流出口68とを連通可能とする。また、第1弁孔47Aは、周壁部44の軸方向に沿う方向の幅が、第2弁孔47Bや第3弁孔47Cよりも狭く設定されている。
【0046】
第2弁孔47Bは、周壁部44のケース軸方向の他端側(周壁部44の軸方向の他端部寄り)の領域に周方向に離間して二つ形成されている。第3弁孔47Cは、周壁部44のケース軸方向の他端側(周壁部44の軸方向の他端部寄り)の領域に周方向に離間して二つ形成されている。第2弁孔47Bと第3弁孔47Cは、周壁部44上の軸方向で相互にほぼラップする領域に形成されている。また、第2弁孔47Bと第3弁孔47Cは、周壁部44上の第1弁孔47Aと軸方向でラップしない領域(軸方向に離間した領域)に形成されている。第2弁孔47Bと第3弁孔47Cの形状は、真円形状や長円形状、矩形形状等任意であるが、周壁部44の軸方向に沿う方向の幅は、ラジエータ流出口60に連通可能な第3弁孔47Cの方が第2弁孔47Bよりも広くなっている。
【0047】
ここで、前述の弁体22の連結壁45は、第1弁孔47Aのうちの、軸方向の一端部寄り(周壁部44の軸方向の一端部寄り)の端縁よりも周壁部44の軸方向内側位置から径方向内側に延びている。連結壁45の外周側の端部は、周壁部44上の第1弁孔47の存在しない領域では、図4に示すように、周壁部44の内周面に直接接続されている。これに対し、周壁部44上の第1弁孔47の存在する領域では、図7に示すように、周壁部44の外周面よりも径方向内側に窪む接続部50を介して第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1に接続されている。接続部50は、周壁部44の第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1から径方向内側に段差状に窪みつつ、第1弁孔47Aの内側(周壁部44の軸方向内側)に延びている。連結壁45の外周側の端部は、接続部50の延び方向の端部に連結されている。
【0048】
本実施形態の弁体22では、上述のようにして連結壁45の外周側の縁部が、第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1よりも軸方向内側に配置され、それによって周壁部44の軸方向の一端部側に開口する凹形状部51が形成されている。凹形状部51の外周縁部の深さ(周壁部44の軸方向の一端側からの深さ)は、第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1よりも深くなっている。凹形状部51内には、ケーシング21の端部壁32に形成された膨出部32a-1が入り込む。弁体22の凹形状部51は、特に外周縁部の深さが深くなっているため、凹形状部51内に入り込むケーシング21側の膨出部32a-1の容積は大きくなっている。
【0049】
また、連結壁45は、図4図7に示すように、径方向外側の端部から径方向内側に向かって軸方向内側に湾曲している。つまり、連結壁45は、周壁部44の軸方向の他端側の流入口17から流入した冷却液が、連結壁45の湾曲面に沿って円滑に第1弁孔47Aの方向に流れるように形成されている。
また、連結壁45は、弁体22の周壁部44と駆動軸27を連結するための壁であるため、スポーク状に形成することも可能であるが、本実施形態の連結壁45は、周壁部44と駆動軸27の間を閉塞するように隙間や開口のない連続した壁によって構成されている。
【0050】
[シール機構]
つづいて、各流出口(バイパス流出口65、ラジエータ流出口60、空調流出口68)に設けられるシール機構36とその周域部の構造について説明する。なお、各流出口に配置されるシール機構36は、同様の基本構造とされているため、以下では、バイパス流出口65のシール機構36とその周域部の構造について詳細に説明し、ラジエータ流出口60と空調流出口68のシール機構36とその周辺部の構造については説明を省略する。
【0051】
以下の説明では、バイパス流出口65の軸線O2(図5参照)に沿う方向をポート軸方向と言うことがある。この場合、ポート軸方向において、バイパスポート64に対して軸線O1(図5参照)に向かう側を内側と言い、バイパスポート64に対して軸線O1から離間する側を外側と言う。また、軸線O2と直交する方向をポート径方向といい、軸線O2回りの方向をポート周方向と言う場合がある。
図6に示すように、バイパスポート64に形成されるバイパス流出口65は、ケーシング21の内面に隣接する小径孔65aと、小径孔65aのポート軸方向外側に連設される中径孔65bと、中径孔65bのポート軸方向外側に連設される大径孔65cと、を有している。
【0052】
バイパスジョイント66は、軸線O2と同軸に配置されたジョイント筒部53と、ジョイント筒部53からポート径方向外側に張り出すジョイントフランジ部54と、を有している。ジョイントフランジ部54は、バイパスポート64の膨出方向の端面に重ねられ、ボルト締結等によってバイパスポート64に固定されている。また、ジョイント筒部53は、バイパス流出口65の大径孔65cに嵌合される大径部53aと、バイパス流出口65の中径孔65bに嵌合される小径部53bと、バイパス流出口65の大径孔65cとの間で環状のシール収容部58を形成する中径部53cと、を有している。
また、ジョイント筒部53の内周面には、ポート軸方向の内側の端部まで連続する拡径溝55が形成されている。拡径溝55のポート軸方向の外側の端部には、段差部55aが設けられている。
【0053】
バイパスポート64のバイパス流出口65とバイパスジョイント66で囲まれた部分には、シール機構36が配置されている。シール機構36は、シール筒部材37と、付勢部材38と、シール部材39,40と、を有している。シール筒部材37は、その一部がバイパス流出口65の小径孔65a内に挿入されている。
【0054】
図9は、シール筒部材37の縦断面図である。
シール筒部材37は、軸線O2と同軸に延びる周壁を有している。シール筒部材37の周壁は、ポート軸方向の外側に向かうに従い外径が段状に縮径する多段筒状に形成されている。具体的には、シール筒部材37の周壁は、ポート軸方向の外側(軸方向の一端部側)に位置され、バイパス流出口65の下流側に連通する第1筒部56と、ポート軸方向の内側(軸方向の他端部側)に位置され、第1筒部56よりも内径及び外径が大きい第2筒部57と、を有している。図9に示すように、第1筒部56の内径寸法をR1、第2筒部57の内径寸法をR2、第1筒部56の外径寸法をR3、第2筒部57の外径寸法をR4とすると、第1筒部56と第2筒部57の内径と外径は、R1<R2、R3<R4を満たすように設定されている。
また、第1筒部56と第2筒部57の内周面は、シール筒部材37のポート軸方向の外側端(一端部)と内側端(他端部)とを連通する内部通路90を構成している。
【0055】
シール筒部材37は、図6に示すように、大径の第2筒部57がバイパス流出口65の小径孔65aの内周面に摺動可能に挿入されている。第2筒部57におけるポート軸方向の内側の端面は、弁体22の周壁部44の外周面に摺動自在に当接する環状の弁摺接面59(摺接面)を構成している。なお、本実施形態において、弁摺接面59は、周壁部44の外周面の形状に沿った連続した湾曲面とされている。
【0056】
第1筒部56の外周面は、第2筒部57の外周面に対して段差面49を介して連なっている。シール筒部材37の第1筒部56の外周面と、バイパス流出口65の中径孔65bの内周面の間には、シール筒部材37の段差面49と、バイパスジョイント66の小径部53bの端面とに挟まれた隙間Q1が形成されている。この隙間Q1には、XパッキンやYパッキン等の環状のシール部材39が介装されている。シール部材39は、シール筒部材37の第1筒部56の外周面と、バイパス流出口65の中径孔65bの内周面とに摺動可能に密接している。
なお、隙間Q1内のシール部材39を挟んでポート軸方向の内側の空間部には、バイパス流出口65の小径孔65aとシール筒部材37の第2筒部57の間の隙間を通してケーシング21内の冷却液の液圧が導入される。段差面49は、ポート軸方向におけるシール筒部材37の弁摺接面59と相反する向きに形成されている。段差面49は、ケーシング21内の冷却液の液圧を受けてポート軸方向の内側に押圧される受圧面を構成している。
また、バイパス流出口65の大径孔65cとバイパスジョイント66の中径部53cの間には、両者の間を液密に密閉するためのOリング等の環状のシール部材40が介装されている。
【0057】
付勢部材38は、シール筒部材37の第1筒部56の軸方向の端面と、バイパスジョイント66の段差部55aとの間に介在している。付勢部材38は、例えばウェーブスプリング等によって構成される。付勢部材38は、シール筒部材37をポート軸方向の内側に向けて(弁体22の周壁部44に向けて)付勢している。
【0058】
ここで、シール筒部材37において、段差面49の面積S1と、弁摺接面59の面積S2とは、以下の式(1),(2)を満たすように設定されている。
S1<S2≦S1/k …(1)
α≦k<1 …(2)
k:弁摺接面59と弁体22の周壁部44との間の微少隙間を流れる冷却液の圧力減少定数
α:冷却液の物性によって決まる圧力減少定数の下限値
なお、段差面49の面積S1と弁摺接面59の面積S2は、ポート軸方向に投影したときの面積を意味する。
【0059】
式(2)におけるαは、冷却液の種類や、使用環境(例えば、温度)等によって決まる圧力減少定数の標準値である。例えば、通常使用条件下において、水の場合にはα=1/2となる。使用する冷却液の物性が変化した場合には、α=1/3等に変化する。
また、式(2)における圧力減少定数kは、弁摺接面59がポート径方向の外側端縁から内側端縁にかけて均一に周壁部44に接しているときには、圧力減少定数の標準値であるα(例えば、1/2)となる。但し、シール筒部材37の製造誤差や組付け誤差等によって、弁摺接面59の外周部分と周壁部44との間の隙間が弁摺接面59の内周部分に対して僅かに増大することがある。この場合、式(2)における圧力減少定数kは、次第にk=1に近づくことになる。
【0060】
本実施形態では、シール筒部材37の弁摺接面59と周壁部44の外周面との間に、摺動を許容するための微小な隙間があることを前提として、段差面49と弁摺接面59の各面積S1,S2の関係が式(1),(2)によって決められている。
すなわち、シール筒部材37の段差面49には、上述したようにケーシング21内の冷却液の圧力がそのまま作用する。一方で、弁摺接面59には、ケーシング21内の冷却液の圧力がそのまま作用しない。具体的には、冷却液の圧力は、弁摺接面59と周壁部44の間の微小な隙間を冷却液がポート径方向の外側端縁から内側端縁に向かって流れるときに圧力減少を伴いつつ作用する。このとき、冷却液の圧力は、ポート径方向の内側に向かって漸減しつつ、シール筒部材37をポート軸方向の外側に押し上げようとする。
【0061】
その結果、シール筒部材37の段差面49には、段差面49の面積S1にケーシング21内の圧力Pを乗じた力がそのまま作用する。一方、シール筒部材37の弁摺接面59には、弁摺接面59の面積S2にケーシング21内の圧力Pと圧力減少定数kとを乗じた力が作用する。
【0062】
本実施形態の制御バルブ8は、式(1)からも明らかなようにk×S2≦S1が成り立つように面積S1,S2が設定されている。このため、P×k×S2≦P×S1の関係も成り立つ。
したがって、シール筒部材37の段差面49に作用する押し付け方向の力F1(F1=P×S1)は、シール筒部材37の弁摺接面59に作用する浮き上がり方向の力F2(F2=P×k×S2)以上に大きくなる。よって、本実施形態の制御バルブ8においては、ケーシング21内の冷却液の圧力の関係のみによっても、シール筒部材37と周壁部44との間をシールすることができる。
【0063】
一方、本実施形態では、上述したようにシール筒部材37の段差面49の面積S1が弁摺接面59の面積S2よりも小さい。そのため、ケーシング21内の冷却液の圧力が大きくなっても、シール筒部材37の弁摺接面59が過剰な力で周壁部44に押し付けられるのを抑制できる。したがって、本実施形態の制御バルブ8を採用した場合には、弁体22を回転駆動する駆動ユニット23の大型化及び高出力化を回避することができる上、シール筒部材37や駆動部のブッシュ類の早期摩耗を抑制できる。
【0064】
このように、本実施形態では、シール筒部材37に作用するポート軸方向の内側への押し付け力が、シール筒部材37に作用するポート軸方向の外側への浮き上がり力を下回らない範囲で、弁摺接面59の面積S2が段差面49の面積S1よりも大きく設定されている。そのため、周壁部44に対するシール筒部材37の過剰な力での押し付けを抑制しつつ、シール筒部材37と周壁部44との間をシールできる。
【0065】
[弁体とシール筒部材]
弁体22の周壁部44の軸方向の一端部寄りに形成される第1弁孔47Aは、前述のように周壁部44の円周方向に長い長孔形状に形成されている。第1弁孔47は、弁体22の回動操作により第1のシール筒部材37Aを開閉する。第1のシール筒部材37Aが周壁部44によって閉塞された状態で弁体22が回転する間は、第1のシール筒部材37の弁摺接面59のほぼ全面が周壁部44の外周面に接して摺動する。また、第1のシール筒部材37Aが第1弁孔47Aによって開かれた状態で弁体22が回転する間は、第1のシール筒部材37の弁摺接面59の一部が第1弁孔47Aの軸方向の一端部寄りの端縁47Ae-1と他端部寄りの端縁47Ae-2(第1弁孔47Aを挟んで一端部寄りの端縁47Ae-1と対向する側の端側)に接して摺動する。
【0066】
本実施形態では、第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1と他端部寄りの端縁47Ae-2とは、第1のシール筒部材37Aの弁摺接面59のうちの、内周端部59e(図9参照)よりも径方向外側位置に接するように設定されている。つまり、一端部寄りの端縁47Ae-1と他端部寄りの端縁47Ae-2とは、弁体22の回転時に、周壁部44の軸方向において、弁摺接面59の内周端部59eよりも内側位置(弁摺接面59の内周面よりも内側位置)を移動することがない。
【0067】
[制御バルブの動作]
次に、上述した制御バルブ8の動作について説明する。
図1に示すように、メイン流路10において、ウォータポンプ3により送出される冷却液は、エンジン2で熱交換された後、制御バルブ8に向けて流通する。メイン流路10においてエンジン2を通過した冷却液は、流入口17を通して制御バルブ8のケーシング21内に流入する。
【0068】
制御バルブ8のケーシング21内に流入した冷却液のうち、一部の冷却液はEGR流出口63内に流入する。EGR流出口63内に流入した冷却液は、EGRジョイント52を通ってEGR流路14内に供給される。EGR流路14内に供給された冷却液は、EGRクーラ7において、冷却液とEGRガスとの熱交換が行われた後、メイン流路10に戻される。
【0069】
一方、制御バルブ8のケーシング21内に流入した冷却液のうち、EGR流出口63内に流入しなかった冷却液は、ケーシング21内の弁体22の回転位置に応じて、弁体22によって開かれているいずれかの流出口(ラジエータ流出口60、バイパス流出口65、空調流出口68)を通して各流路11~13に分配される。
【0070】
制御バルブ8において、弁孔と流出口との連通パターンを切り替えるには、駆動ユニット23によって弁体22を軸線O1回りに回転させる。そして、設定したい連通パターンに対応する位置で弁体22の回転を停止させることで、弁体22の停止位置に応じた連通パターンで弁孔と流出口とが連通する。
【0071】
[実施形態の効果]
以上のように、本実施形態の制御バルブ8は、弁体22の連結壁45が第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1よりも周壁部44の軸方向内側位置から径方向内側に延出する構造とされ、周壁部44の軸方向の一端側に、径方向外側領域の深さの深い凹形状部51が形成されている。そして、この凹形状部51の内側に、ケーシング21の端部壁32の膨出部32a-1が入り込んでいる。このため、本実施形態の制御バルブ8を採用した場合には、ケーシング21の端部壁32によって弁体22の周壁部44内に流入する冷却液の流入容積を縮小し、液体分配システム1の各部を所望の温度に迅速にコントロールすることができる。この結果、駆動源であるエンジン2のフリクションを低減することができる。
【0072】
また、本実施形態の制御バルブ8は、弁体22の連結壁45の径方向外側の端部が、周壁部44の外周面よりも径方向内側に窪む接続部50を介して第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1に接続されている。このため、連結壁45が第1弁孔47Aの開口していない領域だけでなく、第1弁孔47Aの開口している領域においても周壁部44に連結されることになる。したがって、本構成を採用した場合には、弁体22の周壁部44に対する連結壁45の結合部剛性を高めることができる。
【0073】
さらに、本実施形態の制御バルブ8は、周壁部44のうちの第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1と、他端部寄りの端縁47Ae-2とが、第1のシール筒部材37Aの弁摺接面59の内周端部59eよりも径方向外側位置に当接する構成とされている。特に、周壁部44の第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1は、周壁部44の外周面よりも径方向内側に窪む接続部50を介して連結壁45に接続されている。このため、周壁部44の軸方向の一端側に径方向外側領域の深さの深い凹形状部51を確保しつつも、第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1を、第1のシール筒部材37Aの弁摺接面59のうちの、内周端部59eよりも径方向外側位置に当接させることができる。このため、上記の構成により、経時使用によって第1のシール筒部材37Aの弁摺接面59に摩耗が生じることがあっても、その摩耗部が第1のシール筒部材37Aの内周端部59eに跨ることがない。したがって、弁摺接面59の摩耗時に、周壁部44の外周面と弁摺接面59の間の隙間を通して第1のシール筒部材37A内に液体が漏出するのを抑制することができる。よって、本構成を採用した場合には、第1シール筒部材37Aのシール寿命を延ばすことができる。
【0074】
また、本実施形態の制御バルブ8は、弁体22の連結壁45が周壁部44と駆動軸27の間を閉塞し、周壁部44の内側に流入した冷却液が連結壁45の外側に流出しにくい構造とされている。このため、本実施形態の制御バルブ8を採用した場合には、不要な部位に冷却液が流れ込み難くなり、制御バルブ8を流れる冷却液の圧力損失をより低減することができる。
【0075】
また、本実施形態の制御バルブ8は、弁体22の連結壁45が径方向外側の端部から内側に向かって周壁部44の軸方向内側に湾曲しているため、流入口17から周壁部44の内側に流入した冷却液を連結壁45の湾曲面に沿って第1弁孔47Aの方向にスムーズに流すことができる。
【0076】
さらに、本実施形態の制御バルブ8は、弁体22の第1弁孔47Aが周壁部44の周方向に沿って延びる長孔形状に形成されているため、第1弁孔47Aの一部が連結壁45によって狭められることがあっても、周方向に延びる長孔形状によって冷却液の充分な流入部面積を確保することができる。
【0077】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、シール筒部材37が第1筒部56と第2筒部57を持つ段付き円筒形状のものを採用しているが、シール筒部材37は段差部のない筒状形状であっても良い。
ただし、上記の実施形態のようにシール筒部材37が第1筒部56と第2筒部57を持つ段付き円筒形状である場合には、シール筒部材37を開閉する弁体22側の弁孔が周方向に延びる長孔形状でなくても、充分な量の冷却液を対応する流出口に流出させることができる。
【0078】
すなわち、シール筒部材37を流れる冷却液の圧力損失は、第2筒部57よりも内径の小さい第1筒部56の開口面積のみによって影響を受ける。このため、弁体22の周壁部44の軸方向の一端側に形成される弁孔が長孔形状でなく、しかも、その弁孔の一部が連結壁32によって狭められることがあっても、弁孔の開口面積がシール筒部材37の第1筒部56の内部通路の開口面積よりも大きければ、弁孔側の開口面積に拘らず、充分な量の冷却液を対応する流出口に流出させることができる。この場合、流出口からの冷却液の流出流量の低下を抑制しつつ、連結壁32を弁孔の内側方向に(ケース軸方向の内側に)オフセット配置することができる。
【0079】
また、上記の実施形態では、弁体22の連結壁45の径方向外側の端部が接続部50を介して第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1に接続されている。しかし、図10に示すように、連結壁145の径方向外側の端部は、第1弁孔47Aの一端部寄りの端縁47Ae-1よりも軸方向内側位置から径方向内側に延びていれば、第1弁孔47Aの端縁47Ae-1に接続されていなくても良い。なお、図10では、上記の実施形態と共通部分には同一符号を付してある。
【0080】
また、上述した実施形態では、弁体22が円筒状の周壁部44を備え、その円筒状の周壁部44の外周面に、シール筒部材37の流出口を開閉する弁孔47が形成されている。しかし、弁体22の周壁部44の形状は、外周面の径が軸方向で一定である円筒形状に限定されるものではない。すなわち、弁体22の周壁部44の形状は外周面の径が軸方向で変化するものであっても良い。この場合、弁体22の周壁部44は、例えば、球状(軸方向の中央から両端部に向かうに従い径が縮小する形状)や、球状が軸方向に複数連なった形状、テーパ状(軸方向の第1側から第2側にかけて漸次径が変化する形状)、階段状(軸方向の第1側から第2側にかけて段々と径が変化する形状)等、種々の形状を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…液体分配システム
8…制御バルブ
17…流入口
21…ケーシング
22…弁体
27…駆動軸
32…端部壁
37…シール筒部材
44…周壁部
45…連結壁
47A…第1弁孔(弁孔)
47Ae-1…一端部寄りの端縁
47Ae-2…他端部寄りの端縁
50…接続部
51…凹形状部
59…弁摺接面
59e…内周端部
68…空調流出口(流出口)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10