(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】含浸装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/52 20060101AFI20241031BHJP
B29B 15/12 20060101ALI20241031BHJP
B29K 105/14 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
B29C70/52
B29B15/12
B29K105:14
(21)【出願番号】P 2020215553
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟野 利宏
(72)【発明者】
【氏名】牧 健二
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-071193(JP,A)
【文献】特開2007-076224(JP,A)
【文献】特開2001-328147(JP,A)
【文献】特開2001-129827(JP,A)
【文献】特表2017-500230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/52
B29B 15/12
B29K 105/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維強化熱可塑性樹脂を製造する際に、溶融した熱可塑性樹脂を繊維束に含浸させて連続繊維強化ストランドを作成する含浸装置であって、
上型および下型を有し、前記熱可塑性樹脂が含浸された前記繊維束が通過する隙間が前記上型と前記下型との間に形成された含浸ダイと、
前記上型および前記下型の少なくとも一方を昇降させることにより、前記隙間の間隔を調整する隙間調整部と
を備えることを特徴とする含浸装置。
【請求項2】
雄ネジ部が形成され
、前記隙間調整部が駆動することにより回転するボールスクリューと、
前記上型に固定された上支持フレーム、および前記下型に固定された下支持フレームとを備え、
前記上支持フレームおよび
前記下支持フレームの
少なくとも一方には、前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成され、
前記ボールスクリューが回転することにより、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部の螺合を通じて
、前記上支持フレーム
と前記下支持フレーム
のうち前記雌ネジ部を有する一方または双方が昇降し、これに合わせて前記上型および前記下型の少なくとも一方が昇降することを特徴とする請求項1記載の含浸装置。
【請求項3】
前記隙間を撮像するカメラと、
前記カメラによる撮像結果から所定量以上の毛羽が発生しているか否かを判定する判定部を備え、
前記隙間調整部は、前記判定部により、所定量以上の毛羽が発生していることが判定された場合に前記隙間を開くことを特徴とする請求項1または2記載の含浸装置。
【請求項4】
前記隙間調整部は、サーボモータであり、
前記ボールスクリューは、前記隙間調整部のモータ軸と同軸に配置されていることを特徴とする請求項
2記載の含浸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維強化熱可塑性樹脂を製造する際に用いられる含浸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維で強化された熱可塑性樹脂として、長繊維強化熱可塑性樹脂が知られている。この長繊維強化熱可塑性樹脂は、繊維と熱可塑性樹脂から成る複合材料であり、熱可塑性樹脂の特性と繊維の強度や耐熱性が複合化され、さまざまな構造部材、耐熱部材に使用されている。
【0003】
従来より、かかる長繊維強化熱可塑性樹脂を製造する際には、含浸ダイが用いられている(例えば、特許文献1参照)。含浸ダイには様々なタイプがあるが、たとえば、
図5に示すように、上型58aと下型58bとから構成される含浸ダイ58においては、上型58aと下型58bとの間の隙間58cにおいて、溶融された熱可塑性樹脂60を繊維束62に含浸させて連続繊維強化ストランド64を作成する。
【0004】
ここで、上型58aと下型58bの隙間58cが狭いほど繊維束62が開繊し易くかつ熱可塑性樹脂60に繊維束62が含浸し易くなるが、隙間58cを狭くすると、繊維束62が断線するリスクが高くなるという問題がある。
このため、現状においては、かかるリスクに対する措置として、隙間58cに薄い鉄板を挟んで隙間を調整するという手段が講じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の含浸ダイ58においては、通常上型58aと下型58bとは図示しないボルトで締結されているため、連続繊維強化ストランド64の状態を確認しながら常時隙間58cの間隔を調整することができないという問題があった。
【0007】
このため、たとえば、隙間58cを進行する繊維束62に毛羽が大量に発生した場合には、その都度長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置(図示せず)の動作を停止してボルトを取り外してから毛羽を除去する必要があった。
本発明の目的は、上型と下型との間の隙間の間隔を常時調整することが可能な含浸装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の含浸装置は、
長繊維強化熱可塑性樹脂を製造する際に、溶融した熱可塑性樹脂を繊維束に含浸させて連続繊維強化ストランドを作成する含浸装置であって、
上型および下型を有し、前記熱可塑性樹脂が含浸された前記繊維束が通過する隙間が前記上型と前記下型との間に形成された含浸ダイと、
前記上型および前記下型の少なくとも一方を昇降させることにより、前記隙間の間隔を調整する隙間調整部と
を備えることを特徴とする。
これにより、含浸ダイで連続繊維強化ストランドが作成される様子を確認しながら、上型と下型との間の隙間の間隔を常時調整することができる。
【0009】
また、本発明の含浸装置は、
雄ネジ部が形成され、前記隙間調整部が駆動することにより回転するボールスクリューと、
前記上型に固定された上支持フレーム、および前記下型に固定された下支持フレームとを備え、
前記上支持フレームおよび前記下支持フレームの少なくとも一方には、前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成され、
前記ボールスクリューが回転することにより、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部の螺合を通じて、前記上支持フレームと前記下支持フレームのうち前記雌ネジ部を有する一方または双方が昇降し、これに合わせて前記上型および前記下型の少なくとも一方が昇降することを特徴とする。
このように、雄ネジ部と雌ネジ部の螺合を利用することで、隙間の間隔を連続的に調整することができる。
【0010】
また、本発明の含浸装置は、
前記隙間を撮像するカメラと、
前記カメラによる撮像結果から所定量以上の毛羽が発生しているか否かを判定する判定部を備え、
前記隙間調整部は、前記判定部により、所定量以上の毛羽が発生していることが判定された場合に前記隙間を開くことを特徴とする。
これにより、ほぼ人手を介することなく上型と下型との間の隙間の間隔を常時調整することができる。
【0011】
また、本発明の含浸装置は、
前記隙間調整部は、サーボモータであり、
前記ボールスクリューは、前記隙間調整部のモータ軸と同軸に配置されていることを特徴とする。
これにより、含浸装置の構造をシンプルにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上型と下型との間の隙間の間隔を常時調整することが可能な含浸装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る含浸ダイを用いた長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置の概略図である。
【
図2】実施の形態に係る含浸装置の概要を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る含浸装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態に係る含浸装置により含浸ダイの隙間の間隔を調整する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態に係る含浸装置を備えた長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置の概略図である。
図1に示すように、長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置2は、繰出機4、開繊バー6、押出機8、含浸装置9、賦形ダイ12、水槽14、フォーミングロール16、引取機18、カッター部20を備えている。
【0015】
ここで、繰出機4には、繊維束32が巻回された複数の炭素繊維ロービング4aが収納されている。また、繰出機4は、炭素繊維ロービング4aから繊維束32を繰り出すための繰出ロール4bを備えている。なお、繊維束32には、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維などが用いられる。
【0016】
開繊バー6は、繰出ロール4bから繰り出された繊維束32を開繊する開繊工程を実行するためのロールバーである。
押出機8は、溶融した熱可塑性樹脂を、本発明に係る含浸装置9に含まれる含浸ダイ10に供給する装置であり、含浸ダイ10は、開繊された繊維束32に溶融した熱可塑性樹脂を含浸する含浸工程を実行する装置である。かかる含浸工程において連続繊維強化ストランド34が作成される。なお、熱可塑性樹脂には、たとえば、ポリプロピレン、ポリアミドなどが用いられる。
【0017】
賦形ダイ12は、連続繊維強化ストランド34の径を絞るための装置であり、含浸ダイ10の連続繊維強化ストランド34が排出される側に取り付けられている。
水槽14は、賦形ダイ12で径が絞られた連続繊維強化ストランド34を水などの液体に浸し、冷却を行うための装置である。
【0018】
フォーミングロール16は、水槽14で冷却された連続繊維強化ストランド34の外径形状を成形するためのロールバーである。
引取機18は、連続繊維強化ストランド34を引き取る引取工程を実行するためのロールである。
【0019】
カッター部20は、引取機18で引き取った連続繊維強化ストランド34を所定の長さにカッティングするための装置である。このカッター部20で連続繊維強化ストランド34をカットすることにより、長繊維強化熱可塑性樹脂38が製造される。
【0020】
次に、本発明において長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置2の要部を構成する含浸装置9について説明する。
図2は、含浸装置9の概要を示す図である。
図2に示すように、含浸装置9は、含浸ダイ10、支持フレーム42、ボールスクリュー44、サーボモータ46、およびコントローラー48(
図3参照)を備えている。
【0021】
ここで、含浸ダイ10は、上型10aと下型10bとから成り、上型10aと下型10bとの間には、熱可塑性樹脂が含浸された繊維束32(
図1参照)が通過する隙間10cが形成されている。
【0022】
支持フレーム42は、含浸ダイ10を上下から支持する部材であり、それぞれ上型10aに固定された上支持フレーム42a、および下型10bに固定された下支持フレーム42bを有している。そして、上支持フレーム42aには、ボールスクリュー44の雄ネジ部44aと螺合する雌ネジ部43aが内部に形成されたネジ貫通穴43が設けられている。また、下支持フレーム42bには、ボールスクリュー44の雄ネジ部44aが形成されていない非ネジ部44bが貫通する貫通穴45が設けられている。
【0023】
ボールスクリュー44は、下端がサーボモータ46の図示しないモータ軸と同軸に固定され、サーボモータ46上に立設された棒状の部品であり、ネジ貫通穴43および貫通穴45を貫通する。そして、ボールスクリュー44の上半部には雌ネジ部43aと螺合する雄ネジ部44aが形成され、下半部には貫通穴45を貫通するネジ山が形成されていない非ネジ部44bが形成されている。このため、ボールスクリュー44を回転させることにより、上支持フレーム42aを昇降させることができる。
【0024】
サーボモータ46は、下支持フレーム42bの下側に位置しており、隙間10cの間隔を調整する隙間調整部としての機能を備えている。具体的には、
図3に示すブロック図のように、各部を統括的に制御する制御部46aを備えている。制御部46aには、ボールスクリュー44を回転させる駆動部46b、隙間10cの状態を撮像するカメラ46c、撮像された画像の画像データ等を記憶する記憶部46d、隙間10cを広げる間隔(以下、ピッチという。)を記憶する隙間記憶部46e、およびコントローラー48との送受信を有線または無線にて行う通信部46fを備えている。なお、制御部46aは、隙間10cを進行する繊維束32に毛羽が所定量以上発生しているか否かを判定する判定部としても機能する。
【0025】
コントローラー48は、作業者が隙間10cを調整する際の操作を行う部位であり、独立した操作装置であってもよく、パソコンなどの端末機器をコントローラー48として用いてもよい。
【0026】
次に、本発明の含浸装置9を用いて隙間10cの間隔を調整する第1の方法についてその手順を説明する。なお、ここでは、隙間10cを進行する繊維束32に毛羽が所定量以上発生した場合を例に説明する。まず、作業者は、長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置2の稼働中において、含浸ダイ10で連続繊維強化ストランド34が作成される様子を目視で監視している。ここで、たとえば、隙間10cを進行する繊維束32に毛羽が所定量以上発生したと認識した場合、作業者は、隙間10cを開くため、コントローラー48の、たとえば、図示しない開ボタンを操作する。
【0027】
開ボタンが操作されると、隙間10cを開く旨の指令信号がコントローラー48から送信されてサーボモータ46の通信部46fに受信され、制御部46aによって検知される。制御部46aは、指令信号を検知すると、駆動部46bを介して、隙間10cが開く方向にモータ軸を回転させる。これにより、ボールスクリュー44が回転し、ボールスクリュー44の雄ネジ部44aと螺合する雌ネジ部43aがネジ貫通穴43の内部に形成された上支持フレーム42aが上昇し、これに従って上支持フレーム42aに固定された上型10aが上昇することにより、隙間10cが広げられる。
【0028】
その後、作業者は、隙間10cを進行する繊維束32に毛羽が所定量以上発生しなくなったことを確認すると図示しない停止ボタンを操作する。停止ボタンが操作されると、隙間10cを開くことを停止する旨の指令信号がコントローラー48から送信され、サーボモータ46の通信部46fを介して制御部46aによって検知される。制御部46aは、指令信号を検知すると、駆動部46bはモータ軸の回転を停止させ、ボールスクリュー44の回転が停止する。これにより、隙間10cが適切な間隔に広げられた状態が維持され、多くの毛羽を発生させることなく含浸ダイ10で連続繊維強化ストランド34が作成され続ける。なお、広げられた隙間10cの間隔は、おおよそ0.1mm以上10mm以下である。
【0029】
次に、本発明の含浸装置9を用いて隙間10cの間隔を調整する第2の方法について、その手順を説明する。まず、長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置2が稼働し、一定期間が経過すると、制御部46aは、カメラ46cにより、含浸ダイ10で連続繊維強化ストランド34が作成される様子の撮像を開始する(ステップS1)。撮像は、たとえば、動画や連続的な静止画を撮像して行われる。
【0030】
撮像開始後、制御部46aは、カメラ46cによって撮像された画像データを記憶部46dから読み出して、隙間10cを進行する繊維束32に毛羽が所定量以上発生しているか否かを判定する(ステップS2)。なお、判定は、たとえば、画像データに基づく画像から繊維束32に所定量以上の毛羽が発生している状態をパターンマッチング等によって検出することにより行う。
【0031】
毛羽が所定量以上発生していない場合(ステップS2:No)、ステップS2の判定操作を繰り返す。一方、毛羽が所定量以上発生している場合(ステップS2:Yes)、制御部46aは、駆動部46bを介して、隙間10cが開く方向にモータ軸を回転させる(ステップS3)。これにより、ボールスクリュー44が回転して上型10aが上昇することにより、隙間10cが広げられる。ここで、隙間10cを広げる際のピッチは、たとえば0.05mmなど、隙間記憶部46eにおいて予め設定されており、隙間10cの間隔の設定は、適宜変更することができる。なお、ピッチは、0.02mm以上0.10mm以下であれば好ましい。
【0032】
次に、制御部46aは、直近に撮像された画像データを用いて、隙間10cを進行する繊維束32に毛羽が所定量以上発生しなくなったか否かを判定する(ステップS4)。隙間10cを進行する繊維束32に未だに毛羽が所定量以上認められる場合(ステップS4:No)、制御部46aは、さらに隙間10cを広げ(ステップS3)、判定を繰り返す(ステップS4)。
【0033】
一方、隙間10cを進行する繊維束32に所定量以上の毛羽が発生しなくなった場合(ステップS4:Yes)、制御部46aは、駆動部46bによりモータ軸の回転を停止させ、ボールスクリュー44の回転を停止させる(ステップS5)。これにより、隙間10cが適切な間隔に広げられた状態が維持され、隙間10cを進行する繊維束32に所定量以上の毛羽を発生させることなく、含浸ダイ10で連続繊維強化ストランド34が作成され続ける。
【0034】
この実施の形態の含浸装置9によれば、含浸ダイ10で連続繊維強化ストランド34が作成される様子を確認しながら、上型10aと下型10bとの間の隙間10cの間隔を常時調整することができる。このため、含浸ダイ10の隙間10cが狭いために繊維束32に毛羽が多く発生することを容易に防止することができる。
【0035】
これにより、従来の技術のように、繊維束32に毛羽が大量に発生するたびに長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置2の稼働を停止し、ボルトを外して含浸ダイ10を開いた後に毛羽を取り除くという一連の手間を大幅に省略することができる。
【0036】
また、雄ネジ部44aと雌ネジ部43aの螺合を利用することで、隙間10cの間隔を連続的に調整することができる。
また、大量の毛羽が発生した場合において、すぐに隙間10cの間隔を開くことができるため、繊維束32に負担を掛けずに毛羽の発生を抑制することができる。
【0037】
さらに、従来のような鉄板による隙間調整では、たとえば0.1mm毎程度の間隔でしか隙間58c(
図5参照)を調整することができなかったが、実施の形態に係る含浸装置9によれば、隙間10cを所望の間隔に微調整することができるため、より精密な隙間10cの調整を実現することができる。
【0038】
なお、上述の実施の形態においては、上型10aを昇降させて隙間10cの間隔を調整する場合が例示されているが、隙間10cの間隔の調整は必ずしもこの方法に限定されない。たとえば、下型10bを昇降させて隙間10cの間隔を調整してもよい。
【0039】
この場合、ボールスクリュー44の下半部に雄ネジ部44aが形成され、上半部に非ネジ部44bが形成されることになる。そして、ボールスクリュー44の雄ネジ部44aと螺合する雌ネジ部43aが下支持フレーム42bに設けられ、上支持フレーム42aはボールスクリュー44に回転可能に固定される。
【0040】
また、上型10aと下型10bの双方を昇降させて隙間10cを調整してもよい。この場合、ボールスクリュー44の高さ方向に広く雄ネジ部44aが設けられ、雌ネジ部43aが上支持フレーム42aと下支持フレーム42bの双方に設けられることになる。ただし、上支持フレーム42aと下支持フレーム42bの螺合方向は逆方向になる。
【0041】
また、上述の実施の形態において、第1の方法では、コントローラー48から開ボタンや閉ボタンを操作することで隙間10cの開閉を調整しているが、開ボタンや閉ボタンに代えてダイヤルを用いてもよい。この場合、たとえば、ダイヤルを正方向に操作している間は隙間10cが連続的に開かれ、ダイヤルを逆方向に操作している間は隙間10cが連続的に閉じられれる。これにより、隙間をさらに微調整することができる。
【0042】
また、上述の実施の形態において、第2の方法では、隙間記憶部46eに候補となるピッチを複数記憶するようにしてもよい。そして、複数の候補の中から所望のピッチを選択する選択部を備えていてもよい。選択部は、独立した部位であってもよいが、たとえば、コントローラー48を選択部として用い、所望するピッチをコントローラー48から指示してもよい。
【0043】
また、上述の実施の形態において、第2の方法に第1の方法を補完的に用いてもよい。すなわち、第2の方法によって調整された隙間10cの間隔を開ボタンや閉ボタン、ダイヤルなどで再修正してもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態の第2の方法においては、隙間記憶部46eでピッチを設定しておき、たとえば0.05mm毎に隙間10cの間隔を調整する場合を例示しているが、第1の方法と同様に、隙間10cの間隔を連続的に調整するようにしてもよい。これにより、隙間10cの間隔をさらに細かく微調整することができる。なお、この場合、隙間10cの間隔を広げながらステップS2~ステップS4の操作を行うことになる。
【0045】
また、上述の実施の形態においては、繊維束32に毛羽が所定量以上発生しているか否かの判定をパターンマッチングによって行う場合を例示しているが、判定は、必ずしもパターンマッチングである必要はない。すなわち、毛羽が所定量以上発生したことが検知できれば、その他の既存技術を用いてもよい。
【0046】
また、上述の実施の形態において、隙間調整部は、所望の間隔で隙間を調整することが可能なモータであれば必ずしもサーボモータ46でなくてもよい。
また、上述の実施の形態においては、含浸装置9が長繊維強化熱可塑性樹脂を製造する場合に用いられる場合を例示して説明しているが、含浸装置9は、長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置2以外の長繊維強化樹脂を製造する装置に用いられてもよい。たとえば、繊維束32を熱硬化樹脂との複合材とする場合に含浸装置9を用いてもよい。
【0047】
さらに、含浸装置9は、長繊維強化樹脂のみならず、開繊が必要な他の製品を製造する際にも適用することが可能である。たとえば、UDテープ、シート状成形材料(SMC)、プリプレグ、および繊維の織物などを製造する場合にも用いることができる。なお、これらの製品を製造する場合と比較して、長繊維強化熱可塑性樹脂を製造する場合には、繊維束32の進行速度が速く毛羽が発生しやすい。このため、毛羽の抑制という観点からすれば、実施の形態に係る含浸装置9は、長繊維強化熱可塑性樹脂を製造するのに最適である。
【符号の説明】
【0048】
2 長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置
4 繰出機
4a 炭素繊維ロービング
4b 繰出ロール
6 開繊バー
8 押出機
9 含浸装置
10 含浸ダイ
10a 上型
10b 下型
10c 隙間
12 賦形ダイ
14 水槽
16 フォーミングロール
18 引取機
20 カッター部
32 繊維束
34 連続繊維強化ストランド
38 長繊維強化熱可塑性樹脂
42 支持フレーム
42a 上支持フレーム
42b 下支持フレーム
43 ネジ貫通穴
43a 雌ネジ部
44 ボールスクリュー
44a 雄ネジ部
44b 非ネジ部
45 貫通穴
46 サーボモータ
46a 制御部
46b 駆動部
46c カメラ
46d 記憶部
46e 隙間記憶部
46f 通信部
48 コントローラー
58 含浸ダイ
58a 上型
58b 下型
58c 隙間
60 熱可塑性樹脂
62 繊維束
64 連続繊維強化ストランド