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特許7579701媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/06 20060101AFI20241031BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B65H7/06
H04N1/00 002A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020217176
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102443
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】嶋 直章
(72)【発明者】
【氏名】庭田 智行
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039643(JP,A)
【文献】特開2000-321828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/06
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部と、
媒体を給送する給送ローラと、
前記給送ローラと前記給送ローラによって給送される媒体との間のスリップ率を算出する算出部と、
前記給送ローラによって給送された媒体の搬送異常が発生したか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記搬送異常が発生したと判定された場合、前記搬送異常が発生したことを前記記憶部に記憶するとともに、媒体の給送を停止する制御部と、
前記給送ローラによって給送された複数の媒体における前記搬送異常の発生度合いに基づいて、利用者に前記給送ローラの清掃指示を通知する通知部と、を有し、
前記通知部は、前記搬送異常の発生度合いが前記清掃指示を通知するための条件を満たした場合であっても、前記スリップ率が前記清掃指示を通知するための条件を満たさない場合は、前記清掃指示を通知しない、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記搬送異常の発生度合いは、直前に前記搬送異常が発生してから新たに前記搬送異常が発生するまでに給送された媒体の数、又は、給送された媒体の数に対する前記搬送異常が発生した発生率である、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記通知部は、直前に前記搬送異常が発生してから新たに前記搬送異常が発生するまでに給送された媒体の数が第1所定値以下であった場合に、利用者に前記給送ローラの清掃指示を通知し、前記清掃指示を通知してから新たに前記搬送異常が発生するまでに給送された媒体の数が第2所定値以下であった場合に、利用者に前記給送ローラの交換指示を通知する、請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記給送ローラによって給送された所定数の媒体における前記スリップ率の移動平均値を算出し、
前記通知部は、前記移動平均値に基づいて、利用者に前記給送ローラの清掃指示を通知する、請求項1~3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記通知部は、前回前記搬送異常が発生してから今回前記搬送異常が発生するまでに前記算出部により算出された前記移動平均値が閾値以下である場合、利用者に前記給送ローラの清掃指示を通知しない、請求項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記給送ローラを駆動するモータと、
前記給送ローラによって給送される媒体の移動距離を検出するセンサと、をさらに有し、
前記算出部は、前記モータの駆動量と、前記移動距離とに基づいて、前記スリップ率を算出する、請求項1~5の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記給送ローラを駆動するモータと、
媒体搬送方向において間隔を空けて配置された二つのセンサと、をさらに有し、
前記算出部は、前記モータの駆動量と、前記給送ローラによって給送される媒体が前記二つのセンサの間を通過する時間とに基づいて、前記スリップ率を算出する、請求項1~5の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
記憶部と、媒体を給送する給送ローラと、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、
前記給送ローラと前記給送ローラによって給送される媒体との間のスリップ率を算出し、
前記給送ローラによって給送された媒体の搬送異常が発生したか否かを判定し、
前記搬送異常が発生したと判定された場合、前記搬送異常が発生したことを前記記憶部に記憶するとともに、媒体の給送を停止し、
前記給送ローラによって給送された複数の媒体における前記搬送異常の発生度合いに基づいて、利用者に前記給送ローラの清掃指示を通知することを含み
前記通知において、前記搬送異常の発生度合いが前記清掃指示を通知するための条件を満たした場合であっても、前記スリップ率が前記清掃指示を通知するための条件を満たさない場合は、前記清掃指示を通知しない、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
記憶部と、媒体を給送する給送ローラと、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
前記給送ローラと前記給送ローラによって給送される媒体との間のスリップ率を算出し、
前記給送ローラによって給送された媒体の搬送異常が発生したか否かを判定し、
前記搬送異常が発生したと判定された場合、前記搬送異常が発生したことを前記記憶部に記憶するとともに、媒体の給送を停止し、
前記給送ローラによって給送された複数の媒体における前記搬送異常の発生度合いに基づいて、利用者に前記給送ローラの清掃指示を通知することを前記媒体搬送装置に実行させ
前記通知において、前記搬送異常の発生度合いが前記清掃指示を通知するための条件を満たした場合であっても、前記スリップ率が前記清掃指示を通知するための条件を満たさない場合は、前記清掃指示を通知しない、
ことを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者にローラの清掃指示又は交換指示を通知する媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ等の媒体搬送装置は、給送ローラを用いて媒体を給送する。このような媒体搬送装置において、給送ローラが汚れたり摩耗したりすると、媒体のスリップ、ジャム又は重送等が発生する可能性がある。媒体のスリップ、ジャム又は重送等が発生した場合、利用者は、媒体を載置台に再セットし、再給送する必要がある。
【0003】
給紙遅れの発生率に基づき無給紙ジャムの発生の兆候ありを判定し、兆候あり判定から開始条件枚数だけ給紙を行ったとき、又は、兆候あり判定から開始条件期間経過したとき、給紙回転体の交換要求の通知を行う画像形成装置が開示されている(特許文献1)。
【0004】
分離部から繰り出し開始され、用紙検出部で検出されるまでの時間が所定時間より大きかった回数が所定回数以上の場合に、分離部の交換又は清掃を促す給紙装置が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-100864号公報
【文献】特開2008-222345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
媒体搬送装置では、適切なタイミングで利用者に給送ローラの清掃指示又は交換指示を通知することが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、適切なタイミングで利用者に給送ローラの清掃指示又は交換指示を通知することが可能な媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る媒体搬送装置は、記憶部と、媒体を給送する給送ローラと、給送ローラによって給送された媒体の搬送異常が発生したか否かを判定する判定部と、判定部により搬送異常が発生したと判定された場合、搬送異常が発生したことを記憶部に記憶するとともに、媒体の給送を停止する制御部と、給送ローラによって給送された複数の媒体における搬送異常の発生度合いに基づいて、利用者に給送ローラの清掃指示又は交換指示を通知する通知部と、を有する。
【0009】
また、本発明の一側面に係る制御方法は、記憶部と、媒体を給送する給送ローラと、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、給送ローラによって給送された媒体の搬送異常が発生したか否かを判定し、搬送異常が発生したと判定された場合、搬送異常が発生したことを記憶部に記憶するとともに、媒体の給送を停止し、給送ローラによって給送された複数の媒体における搬送異常の発生度合いに基づいて、利用者に給送ローラの清掃指示又は交換指示を通知する。
【0010】
また、本発明の一側面に係る制御プログラムは、記憶部と、媒体を給送する給送ローラと、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、給送ローラによって給送された媒体の搬送異常が発生したか否かを判定し、搬送異常が発生したと判定された場合、搬送異常が発生したことを記憶部に記憶するとともに、媒体の給送を停止し、給送ローラによって給送された複数の媒体における搬送異常の発生度合いに基づいて、利用者に給送ローラの清掃指示又は交換指示を通知することを媒体搬送装置に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムは、適切なタイミングで利用者に給送ローラの清掃指示又は交換指示を通知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】媒体搬送装置100を示す斜視図である。
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
図3】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
図4】記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
図5】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
図6】スリップ率について説明するためのグラフである。
図7】スリップ率の移動平均値について説明するためのグラフである。
図8】通知処理の動作の例を示すフローチャートである。
図9】給送ローラ113の清掃について説明するためのグラフである。
図10】スリップ率の移動平均値の推移の一例を示すグラフである。
図11】他の媒体搬送装置200内部の搬送経路を説明するための図である。
図12】他の実施形態に係る処理回路350の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置について図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、厚紙又はカード等である。用紙は、アート紙、コート紙、マットコート紙、上質紙、中質紙等の複数の種類の用紙を含む。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0015】
媒体搬送装置100は、第1筐体101、第2筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0016】
第1筐体101は、媒体搬送装置100の上側に配置され、媒体つまり時、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより第2筐体102に係合している。
【0017】
載置台103は、搬送される媒体を載置可能に第2筐体102に係合している。載置台103は、第2筐体102の媒体供給側の側面に略鉛直方向(高さ方向)A1に移動可能に設けられる。排出台104は、排出された媒体を保持可能に第1筐体101上に形成され、排出された媒体を積載するトレイである。
【0018】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0019】
図1において矢印A2は媒体搬送方向を示し、矢印A3は媒体搬送方向と直交する幅方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A2の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A2の下流のことをいう。
【0020】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0021】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1媒体センサ111、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114、エンコーダ115、第2媒体センサ116、超音波発信器117a、超音波受信器117b、第1~第8搬送ローラ118a~h、第1~第8従動ローラ119a~h、第1撮像装置120a及び第2撮像装置120b等を有している。
【0022】
なお、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114、第1~第8搬送ローラ118a~h及び/又は第1~第8従動ローラ119a~hのそれぞれの数は一つに限定されず、複数でもよい。その場合、複数の給送ローラ113、ブレーキローラ114、第1~第8搬送ローラ118a~h及び/又は第1~第8従動ローラ119a~hは、それぞれ幅方向A3に間隔を空けて並べて配置される。以下では、第1撮像装置120a及び第2撮像装置120bをまとめて撮像装置120と称する場合がある。
【0023】
第1筐体101の、第2筐体102と対向する面は媒体の搬送路の第1ガイド101aを形成し、第2筐体102の、第1筐体101と対向する面は媒体の搬送路の第2ガイド102aを形成する。
【0024】
第1媒体センサ111は、載置台103に、即ち給送ローラ113及びブレーキローラ114より上流側に配置され、載置台103における媒体の載置状態を検出する。第1媒体センサ111は、媒体が接触している場合、又は、媒体が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサにより、載置台103に媒体が載置されているか否かを判別する。第1媒体センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1媒体信号を生成して出力する。なお、第1媒体センサ111は接触検知センサに限定されず、第1媒体センサ111として、光検知センサ等の、媒体の有無を検出可能な他の任意のセンサが使用されてもよい。
【0025】
ピックローラ112は、第1筐体101に設けられ、媒体搬送路と略同一の高さまで上昇した載置台103に載置された媒体と接触して、その媒体を下流側に向けて給送する。
【0026】
給送ローラ113は、第1筐体101内に、ピックローラ112より下流側に設けられ、載置台103に載置されてピックローラ112により給送された媒体をさらに下流側に向けて給送する。ブレーキローラ114は、第2筐体102内に、給送ローラ113と対向して配置される。給送ローラ113及びブレーキローラ114は、媒体の分離動作を行い、媒体を分離して一枚ずつ給送する。給送ローラ113は、ブレーキローラ114に対して上側に配置されており、媒体搬送装置100は、いわゆる上取り方式により媒体を給送する。なお、ブレーキローラ114の代わりに、ブレーキパッドが用いられてもよい。
【0027】
エンコーダ115は、給送ローラ113によって給送される媒体の移動距離を検出するセンサの一例である。エンコーダ115は、媒体搬送方向A2において、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側且つ第1搬送ローラ118a及び第1従動ローラ119aより上流側に、特に給送ローラ113の近傍に配置される。エンコーダ115は、多数のスリット(光の透過穴)が形成され且つ給送ローラ113によって給送される媒体に従って回転するように設けられた円板と、その円板を挟んで対向するように設けられた発光器及び受光器とを有する。発光器は、LED(Light Emitting Diode)等であり、円板(受光器)に向けて光を照射する。受光器は、発光器により照射された光を、円板を介して受光する。受光器は、所定期間内に、発光器と受光器の間にスリットが存在する状態から、スリットが存在せずに円板により遮られている状態へ変化した変化回数を検出する。受光器は、検出した変化回数に、相互に隣接する二つのスリットの間の距離だけ円板が回転した時にエンコーダ115の外周面が移動する距離を乗算することにより、給送ローラ113によって給送される媒体の移動距離を検出する。エンコーダ115は、検出した移動距離を示す距離信号を生成して出力する。
【0028】
第2媒体センサ116は、媒体搬送方向A2において、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側且つ第1搬送ローラ118a及び第1従動ローラ119aより上流側に配置される。第2媒体センサ116は、媒体搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられたミラー等の反射部材とを有する。発光器は、LED等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、反射部材により反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第2媒体信号を生成して出力する。
【0029】
第2媒体センサ116の位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により遮光される。そのため、第2媒体センサ116の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで第2媒体信号の信号値は変化する。これにより、第2媒体センサ116は、その位置に媒体が存在するか否かを検出して、給送された媒体を検出する。なお、第2媒体センサ116の発光器及び受光器は、搬送路を挟んで相互に対向する位置に設けられ、反射部材は省略されてもよい。また、第2媒体センサ116は、媒体が接触している場合、又は、媒体が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサ等により、媒体の存在を検出してもよい。
【0030】
超音波発信器117a及び超音波受信器117bは、媒体搬送方向A2において、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側且つ第1搬送ローラ118a及び第1従動ローラ119aより上流側に配置される。超音波発信器117a及び超音波受信器117bは、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置される。超音波発信器117aは、超音波を出力する。一方、超音波受信器117bは、超音波発信器117aにより出力され、給送される媒体を通過した超音波を受信し、受信した超音波に応じた電気信号である超音波信号を生成して出力する。以下では、超音波発信器117a及び超音波受信器117bを総じて超音波センサ117と称する場合がある。
【0031】
第1~第8搬送ローラ118a~h及び第1~第8従動ローラ119a~hは、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側に設けられ、給送ローラ113及びブレーキローラ114により給送された媒体を下流側に向けて搬送する。
【0032】
第1撮像装置120aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置120aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置120aは、搬送される媒体の表面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0033】
同様に、第2撮像装置120bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置120bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、A/D変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置120bは、搬送される媒体の裏面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0034】
媒体搬送装置100は、第1撮像装置120a及び第2撮像装置120bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。
【0035】
載置台103に載置された媒体は、ピックローラ112、給送ローラ113がそれぞれ媒体給送方向A11、A12に回転することによって、第1ガイド101aと第2ガイド102aの間を媒体搬送方向A2に向かって搬送される。一方、ブレーキローラ114が媒体給送方向の反対方向A13に回転することによって、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ113と接触している媒体のみが分離される。
【0036】
媒体は、第1ガイド101aと第2ガイド102aによりガイドされながら、第1~第2搬送ローラ118a~bが矢印A14~A15の方向に回転することによって、撮像装置120の撮像位置に送り込まれ、撮像装置120によって撮像される。さらに、媒体は、第3~第8搬送ローラ118c~hがそれぞれ矢印A16~A21の方向に回転することによって排出台104上に排出される。
【0037】
図3は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0038】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、モータ131、インタフェース装置132、記憶装置140及び処理回路150等をさらに有する。
【0039】
モータ131は、一又は複数のモータを含み、処理回路150からの制御信号によって、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114及び第1~第8搬送ローラ118a~hを回転駆動し、媒体を給送及び搬送させる。なお、第1~第8従動ローラ119a~hは、第1~第8搬送ローラ118a~hの回転に従って従動回転するのでなく、モータ131からの駆動力によって回転するように設けられてもよい。
【0040】
インタフェース装置132は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して読取画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置132の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース回路とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0041】
記憶装置140は、記憶部の一例である。記憶装置140は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置140には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置140にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。
【0042】
処理回路150は、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路150は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路150として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0043】
処理回路150は、操作装置105、表示装置106、第1媒体センサ111、エンコーダ115、第2媒体センサ116、超音波センサ117、撮像装置120、モータ131、インタフェース装置132及び記憶装置140等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路150は、モータ131を制御して媒体を給送及び搬送し、撮像装置120を制御して入力画像を取得し、取得した入力画像を、インタフェース装置132を介して情報処理装置に送信する。また、処理回路150は、給送された媒体の搬送異常が発生したか否かを判定し、搬送異常の発生度合いに基づいて、利用者に警告を通知する。
【0044】
図4は、記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
【0045】
図4に示すように、記憶装置140には、制御プログラム141、算出プログラム142、判定プログラム143及び通知プログラム144等の各プログラムが記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路150は、記憶装置140に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作することにより、制御部151、算出部152、判定部153及び通知部154として機能する。
【0046】
図5は、媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0047】
以下、図5に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
【0048】
最初に、制御部151は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105又はインタフェース装置132から受信するまで待機する(ステップS101)。
【0049】
次に、制御部151は、第1媒体センサ111から第1媒体信号を取得し、取得した第1媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部151は、処理をステップS101へ戻し、操作装置105又はインタフェース装置132から新たに操作信号を受信するまで待機する。
【0050】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部151は、モータ131を駆動し、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114及び第1~第8搬送ローラ118a~hを回転させる(ステップS103)。これにより、制御部151は、載置台103に載置された媒体を給送及び搬送させる。
【0051】
次に、算出部152は、モータ131の駆動量と、給送ローラ113によって給送される媒体の移動距離とに基づいて、給送ローラ113と給送ローラ113によって給送される媒体との間のスリップ率を算出する(ステップS104)。スリップ率は、給送ローラ113の外周面上で媒体が滑ってしまい、給送ローラ113を回転させたにも関わらず媒体が移動しなかった度合いを示す。
【0052】
算出部152は、制御部151が給送ローラ113を回転させるためにモータ131を駆動した駆動量を監視し、その駆動量が所定範囲内である間、エンコーダ115から定期的に距離信号を取得する。所定範囲は、例えば媒体の給送を開始した後に、媒体がエンコーダ115の位置を通過してから、第1搬送ローラ118aと第1従動ローラ119aのニップ位置に到達するまでの期間に相当する範囲に設定される。なお、所定範囲は、媒体によりエンコーダ115が安定して回転する期間に相当する範囲に限定されることがより好ましい。
【0053】
算出部152は、エンコーダ115から距離信号を取得した期間におけるモータ131の駆動量(パルス数)と、1パルスあたりの給送ローラ113の外周面の移動距離とを乗算することにより、給送ローラ113の外周面の移動距離を算出する。また、算出部152は、その期間にエンコーダ115から取得した距離信号に示される移動距離の総和を、給送される媒体の移動距離として算出する。算出部152は、給送ローラ113の外周面の移動距離と、給送される媒体の移動距離とに基づいて、以下の式(1)に従ってスリップ率を算出する。
(スリップ率)=1-(給送される媒体の移動距離)/(給送ローラ113の外周面の移動距離) (1)
【0054】
図6は、スリップ率について説明するためのグラフである。
【0055】
図6のグラフ600、グラフ610及びグラフ620の横軸はモータ131の駆動量を示し、縦軸はスリップ率を示す。グラフ600は、給送ローラ113が正常である場合のスリップ率を示す。グラフ610は、給送ローラ113の表面が汚れている場合、即ち給送ローラ113の表面に紙粉が付着している場合のスリップ率を示す。グラフ620は、給送ローラ113が摩耗している場合、即ちローラ径が縮小して溝がすり減った場合のスリップ率を示す。グラフ600に示すように、給送ローラ113が正常である場合のスリップ率の最大値は0.3未満である。一方、グラフ610に示すように、給送ローラ113の表面が汚れている場合のスリップ率の最大値は0.3以上であり且つ0.4未満である。また、グラフ620に示すように、給送ローラ113が摩耗している場合のスリップ率の最大値は0.6以上である。
【0056】
即ち、媒体搬送装置100は、スリップ率に基づいて、給送ローラ113が正常であるか、汚れているか又は摩耗しているかを精度良く判別することができる。
【0057】
また、算出部152は、現在給送されている媒体に識別番号(媒体ID)を割り当て、算出したスリップ率を媒体IDと関連付けて、記憶装置140に記憶する。媒体IDとして、初期値が1であり、媒体が給送されるたびにインクリメントされる数値、即ち、その媒体が媒体搬送装置100の使用開始(出荷後)から何番目に給送された媒体であるかを示す数値が割り当てられる。
【0058】
次に、算出部152は、給送ローラ113によって給送された所定数の媒体におけるスリップ率の移動平均値を算出する(ステップS105)。算出部152は、記憶装置140から直近の所定数の媒体について算出されたスリップ率を読み出し、読み出した所定数のスリップ率の平均値を算出する。
【0059】
図7は、スリップ率の移動平均値について説明するためのグラフである。
【0060】
図7のグラフ700は、給送ローラ113が摩耗している場合のスリップ率を示し、グラフ710は、直近の50個の媒体について算出されたスリップ率の移動平均値を示す。グラフ700の横軸はモータ131の駆動量を示し、縦軸はスリップ率を示す。一方、グラフ710の横軸はモータ131の駆動量を示し、縦軸はスリップ率の移動平均値を示す。グラフ700に示すように、給送ローラ113が摩耗している場合、スリップ率は、測定されるタイミングによって大きく変動している。一方、グラフ710に示すように、スリップ率の移動平均値は、大きく変動することなく、安定している。
【0061】
即ち、媒体搬送装置100は、スリップ率の移動平均値に基づいて、給送ローラ113が正常であるか、汚れているか又は摩耗しているかをより精度良く判別することができる。なお、移動平均値を算出するためのデータサンプリング数が20個以下である場合、移動平均値の変動が大きすぎ、逆にデータサンプリング数が100個以上である場合、移動平均値の変動が小さすぎる(感度が低下する)。そのため、データサンプリング数は20個より大きく且つ100個より小さいことが好ましく、50個程度であることがより好ましい。
【0062】
次に、通知部154は、算出された移動平均値がスリップ閾値以下であるか否かを判定する(ステップS106)。スリップ閾値は、媒体搬送装置100の媒体読取速度(処理速度)等を考慮して事前に設定され、例えば0.25に設定される。移動平均値がスリップ閾値より大きい場合、通知部154は、特に処理を実行せずに、処理をステップS108に移行する。
【0063】
一方、移動平均値がスリップ閾値以下である場合、通知部154は、正常フラグをONに設定する(ステップS107)。正常フラグは、直前に媒体の搬送異常が発生してから現在までに、スリップ率が正常な値を示しているか否かを示すフラグである。正常フラグは、媒体搬送装置100の使用開始時(出荷時)、又は、媒体の搬送異常が発生した場合にOFFに設定される。正常フラグは、装置起動時にもOFFに設定されてもよい。即ち、正常フラグは、直前に媒体の搬送異常が発生してから現在までに算出された移動平均値が一度でもスリップ閾値以下であった場合はONに設定され、算出された移動平均値が常にスリップ閾値より大きい場合はOFFに設定される。
【0064】
なお、正常フラグは、直前に媒体の搬送異常が発生してから現在までに算出された移動平均値が常にスリップ閾値以下である場合にONに設定され、算出された移動平均値が一度でもスリップ閾値より大きかった場合にOFFに設定されてもよい。
【0065】
次に、判定部153は、媒体の先端が第2媒体センサ116の位置を通過したか否かを判定する(ステップS108)。判定部153は、第2媒体センサ116から定期的に第2媒体信号を取得し、取得した第2媒体信号に基づいて、第2媒体センサ116の位置に媒体が存在するか否かを判定する。判定部153は、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から媒体が存在することを示す値に変化したときに、媒体の先端が第2媒体センサ116の位置を通過したと判定する。
【0066】
媒体の先端が第2媒体センサ116の位置をまだ通過していない場合、判定部153は、媒体の給送を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS109)。所定時間は、媒体のジャム等の搬送異常が発生しており、媒体が正しく給送されていないとみなせる時間に予め設定される。媒体の給送を開始してから所定時間がまだ経過していない場合、判定部153は、処理をステップS108へ戻し、ステップS108~S109の処理を繰り返す。
【0067】
一方、媒体の給送を開始してから所定時間が経過した場合、判定部153は、給送ローラ113及びブレーキローラ114の周辺で媒体のジャム(紙詰まり)又はスリップ等の搬送異常が発生していると判定する(ステップS110)。
【0068】
判定部153により媒体の搬送異常が発生したと判定された場合、制御部151は、媒体の搬送異常が発生したことを記憶装置140に記憶する。また、制御部151は、現在給送されている媒体に割り当てられた媒体IDを、搬送異常が発生した媒体の媒体IDとして記憶装置140に記憶する。また、制御部151は、モータ131を停止して、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114及び第1~第8搬送ローラ118a~hの回転を停止させ、媒体の給送及び搬送を停止する(ステップS111)。
【0069】
次に、通知部154は、通知処理を実行し(ステップS112)、一連のステップを終了する。通知処理において、通知部154は、給送された複数の媒体における搬送異常の発生度合い及びスリップ率に基づいて、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知する。通知処理の詳細については後述する。
【0070】
一方、ステップS108において、媒体の先端が第2媒体センサ116の位置を通過した場合、判定部153は、給送ローラ113及びブレーキローラ114の周辺で媒体の搬送異常が発生していないと判定する(ステップS113)。このように、判定部153は、給送ローラ113によって給送された媒体の搬送異常が発生したか否かを判定する。特に、判定部153は、媒体の給送を開始してから第2媒体センサ116が媒体を検出するまでの時間と閾値(所定時間)との比較に基づいて、媒体の搬送異常が発生したか否かを判定する。
【0071】
次に、制御部151は、撮像装置120に搬送される媒体を撮像させて入力画像を取得し、取得した入力画像を、インタフェース装置132を介して情報処理装置へ送信することにより出力する(ステップS114)。制御部151は、媒体の後端が撮像装置120の撮像位置を通過してから入力画像を取得する。制御部151は、媒体の給送を開始してから第2所定時間が経過した時に、媒体の後端が撮像装置120の撮像位置を通過したと判定する。なお、制御部151は、撮像装置120の周辺に配置された不図示の媒体センサによる媒体の検出結果に基づいて、媒体の後端が撮像装置120の撮像位置を通過したか否かを判定してもよい。
【0072】
次に、制御部151は、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS115)。載置台103に媒体が残っている場合、制御部151は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104~S115の処理を繰り返す。
【0073】
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部151は、モータ131を停止して、各ローラの回転を停止させ(ステップS116)、一連のステップを終了する。
【0074】
なお、ステップS105の処理が省略され、ステップS106~S107において、通知部154は、今回給送される媒体について算出されたスリップ率がスリップ閾値以下である場合に、正常フラグをONに設定してもよい。この場合、後述する通知処理において、通知部154は、スリップ率に基づいて、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知する。その場合、給送ローラ113が汚れていないにも関わらず、又は摩耗していないにも関わらず、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知する可能性が高くなるが、媒体搬送装置100は、媒体読取処理の処理負荷を低減させることが可能となる。
【0075】
また、ステップS108~S109において、判定部153は、媒体が第2媒体センサ116の位置を通過するまでの時間を用いることに加えて、又は代えて、他の方法を用いて、媒体の搬送異常が発生したか否かを判定してもよい。
【0076】
例えば、媒体搬送装置100は、音により媒体のジャムが発生したか否かを判定する。その場合、媒体搬送装置100は、マイクロフォン、フィルタ、増幅器及び音A/D変換器等(不図示)をさらに有する。マイクロフォンは、給送ローラ113の近傍、特に給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側且つ第1搬送ローラ118a及び第1従動ローラ119aより上流側に、第1筐体101又は第2筐体102内部のフレームに固定されて配置される。マイクロフォンは、媒体が搬送中に発生する音を集音し、集音した音の強度に応じたアナログの音信号を出力する。フィルタは、マイクロフォンから出力されたアナログの音信号に対して、予め定められた周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタを適用し、増幅器に出力する。増幅器は、フィルタから出力された信号を増幅させて音A/D変換器に出力する。音A/D変換器は、増幅器から出力されたアナログの音信号をデジタルの音信号に変換し、処理回路150に出力する。
【0077】
判定部153は、A/D変換器から受信する音信号に基づいて、媒体のジャムが発生したか否かを判定する。判定部153は、音信号の信号値が所定値以上となる状態が所定時間以上継続する場合、媒体の歪み等により大きい音が発生しており、媒体のジャムが発生したと判定する。所定値及び所定時間は、事前の実験により予め定められる。判定部153は、音により媒体のジャムが発生したと判定した場合、媒体の搬送異常が発生したと判定する。
【0078】
また、判定部153は、媒体の搬送異常として、媒体の重送が発生したか否かを判定してもよい。その場合、判定部153は、超音波センサ117から受信する超音波信号に基づいて、媒体の重送が発生したか否かを判定する。判定部153は、超音波信号の信号値が所定値未満であった場合、媒体の重送が発生したと判定し、超音波信号の信号値が所定値以上であった場合、媒体の重送が発生していないと判定する。
【0079】
図8は、通知処理の動作の例を示すフローチャートである。図8に示す動作のフローは、図5に示すフローチャートのステップS112において実行される。
【0080】
最初に、通知部154は、今回発生した搬送異常が、媒体搬送装置100の使用開始後(出荷後)に最初に発生した搬送異常であるか否かを判定する(ステップS201)。今回発生した搬送異常が最初に発生した搬送異常である場合、通知部154は、利用者に通知する指示の種類を決定するためのカウンタ値をリセット(0に初期化)する(ステップS202)。次に、通知部154は、正常フラグをOFFに設定し(ステップS203)、一連のステップを終了する。この場合、通知部154は、利用者に給送ローラ113の清掃指示及び交換指示を通知しない。
【0081】
一方、今回発生した搬送異常が最初に発生した搬送異常でない場合、通知部154は、給送ローラ113によって給送された複数の媒体における搬送異常の発生度合いを算出する(ステップS204)。通知部154は、搬送異常の発生度合いとして、例えば直前に搬送異常が発生してから新たに搬送異常が発生するまでに給送された媒体の数を算出する。通知部154は、記憶装置140から直前に搬送異常が発生した媒体の媒体IDを読み出し、現在給送されている媒体に割り当てられた媒体IDと比較することにより、直前に搬送異常が発生してから新たに搬送異常が発生するまでに給送された媒体の数を算出する。
【0082】
次に、通知部154は、搬送異常の発生度合いとして算出した媒体数が媒体数閾値以下であるか否かを判定する(ステップS205)。媒体数閾値は、第1所定値及び第2所定値の一例である。媒体数閾値は、例えば一度にまとめて載置台103に載置されて搬送される媒体の最大数の半分(例えば、250)に設定される。これにより、通知部154は、まとめて搬送された媒体群で搬送異常が二回発生した場合に、後述する処理において、利用者に給送ローラ113の清掃指示を通知することができる。なお、媒体数閾値は、例えば大量の紙粉が付着した給送ローラ113を用いて媒体を給送する事前の実験において搬送異常の発生度合いとして算出された媒体数の平均値、最大値又は最小値に設定されてもよい。
【0083】
搬送異常の発生度合いとして算出した媒体数が媒体数閾値より大きい場合、通知部154は、カウンタ値をリセットし(ステップS202)、正常フラグをOFFに設定し(ステップS203)、一連のステップを終了する。この場合、通知部154は、搬送異常の発生頻度が低いため、まだ給送ローラ113を清掃又は交換する必要がないとみなして、利用者に給送ローラ113の清掃指示及び交換指示を通知しない。
【0084】
一方、搬送異常の発生度合いとして算出した媒体数が媒体数閾値以下である場合、通知部154は、正常フラグがOFFに設定されているか否かを判定する(ステップS206)。正常フラグがONに設定されている場合、通知部154は、カウンタ値をリセットし(ステップS202)、正常フラグをOFFに設定し(ステップS203)、一連のステップを終了する。この場合、通知部154は、給送ローラ113は正常であるため、まだ給送ローラ113を清掃又は交換する必要がないとみなして、利用者に給送ローラ113の清掃指示及び交換指示を通知しない。
【0085】
一方、正常フラグがOFFに設定されている場合、通知部154は、カウンタ値をインクリメント(+1)する(ステップS207)。
【0086】
次に、通知部154は、カウンタ値が1であるか否かを判定する(ステップS208)。カウンタ値が1である場合、通知部154は、利用者に給送ローラ113の清掃指示を通知する(ステップS209)。通知部154は、給送ローラ113の清掃指示を、表示装置106に表示又はインタフェース装置132を介して情報処理装置に送信することにより、利用者に通知する。次に、通知部154は、正常フラグをOFFに設定し(ステップS203)、一連のステップを終了する。
【0087】
一方、カウンタ値が1でない場合、即ちカウンタ値が2以上である場合、通知部154は、媒体搬送装置100が使用開始(出荷)から現在までに給送した媒体の総数が総数閾値以上であるか否かを判定する(ステップS210)。通知部154は、現在給送されている媒体に割り当てられた媒体IDを、媒体搬送装置100が給送した媒体の総数として特定し、総数閾値と比較する。総数閾値は、給送ローラ113の部品寿命を考慮して設定され、例えば600,000等に設定される。
【0088】
媒体搬送装置100が給送した媒体の総数が総数閾値未満である場合、通知部154は、正常フラグをOFFに設定し(ステップS203)、一連のステップを終了する。この場合、通知部154は、まだ給送ローラ113を交換する必要がないとみなして、利用者に給送ローラ113の交換指示を通知しない。
【0089】
一方、媒体搬送装置100が現在までに給送した媒体の総数が総数閾値以上である場合、通知部154は、利用者に給送ローラ113の交換指示を通知する(ステップS211)。通知部154は、給送ローラ113の交換指示を、表示装置106に表示又はインタフェース装置132を介して情報処理装置に送信することにより、利用者に通知する。次に、通知部154は、正常フラグをOFFに設定し(ステップS203)、一連のステップを終了する。
【0090】
このように、通知部154は、給送ローラ113によって給送された複数の媒体における搬送異常の発生度合いに基づいて、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知する。通知部154は、媒体の搬送異常が頻発する場合に、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知しつつ、媒体の搬送異常が離散的に発生している場合には、利用者に各指示を通知しない。即ち、通知部154は、給送ローラ113が汚れている場合、又は摩耗している場合のように、媒体の搬送異常の原因が給送ローラ113にある可能性が高い場合にのみ、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知する。利用者は、媒体の搬送異常の原因が給送ローラ113にない場合に給送ローラ113の清掃又は交換を行う必要がなくなり、媒体搬送装置100は、利用者の手間を低減させることが可能となる。また、媒体の搬送異常の原因が給送ローラ113にない場合に、給送ローラ113が交換される可能性が低減するため、媒体搬送装置100は、交換部品の消費を抑制することが可能となる。
【0091】
特に、通知部154は、媒体の搬送異常の発生度合いとして、直前に搬送異常が発生してから新たに搬送異常が発生するまでに給送された媒体の数を算出する。これにより、媒体搬送装置100は、低負荷に媒体の搬送異常の発生度合いを算出することが可能となり、媒体読取処理の処理負荷及び処理速度を低減させることが可能となる。
【0092】
また、通知部154は、直前に搬送異常が発生してから新たに搬送異常が発生するまでに給送された媒体の数が媒体数閾値以下であった場合に、利用者に給送ローラ113の清掃指示を通知する。また、通知部154は、利用者に清掃指示を通知してから新たに搬送異常が発生するまでに給送された媒体の数が媒体数閾値以下であった場合に、利用者に給送ローラ113の交換指示を通知する。これにより、通知部154は、利用者に清掃指示及び交換指示を段階的に通知することが可能となり、利用者は、給送ローラ113の清掃及び交換を段階的に実行することが可能となる。給送ローラ113の交換前に清掃が実行されることにより、給送ローラ113が交換される頻度が低減するため、媒体搬送装置100は、交換部品の消費を抑制することが可能となる。
【0093】
また、ステップS206において、正常フラグがOFFである場合、通知部154は、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知する。即ち、通知部154は、給送ローラ113と給送ローラ113によって給送される媒体との間のスリップ率に基づいて、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知する。これにより、通知部154は、給送ローラ113が汚れているか否か、又は摩耗しているか否かをより精度良く判定することが可能となる。
【0094】
特に、通知部154は、スリップ率の移動平均値に基づいて、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知する。これにより、通知部154は、給送ローラ113が汚れているか否か、又は摩耗しているか否かをさらに精度良く判定することが可能となる。
【0095】
また、通知部154は、正常フラグがONである場合、即ち前回搬送異常が発生してから今回搬送異常が発生するまでに算出部152により算出された移動平均値がスリップ閾値以下である場合、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知しない。これにより、通知部154は、媒体の搬送異常が発生している場合でも、原因が給送ローラ113にない可能性が高い場合には、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知しない。したがって、媒体搬送装置100は、利用者への誤った指示の通知を抑制することが可能となり、利用者がわずらわしさを感じることを抑制できる。
【0096】
なお、ステップS204において、通知部154は、媒体の搬送異常の発生度合いとして、給送された媒体の数に対する搬送異常が発生した発生率を算出してもよい。その場合、通知部154は、直近の所定数の媒体について搬送異常が発生した発生率を算出する。なお、通知部154は、媒体搬送装置100の使用開始(出荷後)から、又は、前回給送ローラ113が交換されてから給送された媒体について発生率を算出してもよい。
【0097】
その場合、ステップS205において、通知部154は、搬送異常の発生度合いとして算出した発生率が発生率閾値以下であるか否かを判定する。発生率閾値は、例えば大量の紙粉が付着した給送ローラ113を用いて媒体を給送する事前の実験において搬送異常の発生度合いとして算出された発生率の平均値、最大値又は最小値に設定される。発生率が発生率閾値以下である場合、通知部154は、処理をステップS202へ移行し、利用者に給送ローラ113の清掃指示及び交換指示を通知しない。一方、発生率が発生率閾値より大きい場合、通知部154は、処理をステップS206へ移行し、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知する。これにより、通知部154は、利用者に適切に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知することが可能となる。
【0098】
また、ステップS205において、通知部154は、カウンタ値が0である場合に使用する媒体数閾値、及び、カウンタ値が1以上である場合に使用する媒体数閾値として、相互に異なる閾値を用いてもよい。即ち、通知部154は、清掃指示を通知する際に使用する媒体数閾値、及び、交換指示を通知する際に使用する媒体数閾値として、相互に異なる閾値を用いてもよい。
【0099】
例えば、通知部154は、清掃指示を通知する際に使用する媒体数閾値として、交換指示を通知する際に使用する媒体数閾値より小さい値を有する閾値を使用する。これにより、通知部154は、頻繁に清掃指示を通知して、給送ローラ113の表面に付着している紙粉の量を低減させることが可能となる。または、通知部154は、交換指示を通知する際に使用する媒体数閾値として、清掃指示を通知する際に使用する媒体数閾値より小さい値を有する閾値を使用してもよい。これにより、通知部154は、給送ローラ113が清掃されたにも関わらず媒体の搬送異常が発生する場合に早期に交換指示を通知し、媒体の搬送異常の発生を低減させることが可能となる。
【0100】
また、ステップS206の処理が省略され、通知部154は、スリップ率を用いずに、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知してもよい。また、ステップS207~S208の処理が省略され、通知部154は、カウンタ値に関わらず、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示のうちの何れか一方を固定的に通知してもよい。また、ステップS210の処理が省略され、通知部154は、媒体搬送装置100が現在までに給送した媒体の総数に関わらず、利用者に給送ローラ113の交換指示を通知してもよい。
【0101】
図9は、給送ローラ113の清掃と、媒体のスリップとの関係について説明するためのグラフである。
【0102】
図9のグラフ900の横軸は媒体搬送装置100が給送した媒体数を示し、縦軸はスリップ率の移動平均値を示す。直線901は、給送ローラ113を清掃していない場合のスリップ率の移動平均値を示し、点線902は、給送ローラ113を清掃している場合のスリップ率の移動平均値を示す。給送ローラ113を清掃していない場合、給送ローラ113には、給送した用紙に付着していた紙粉等が付着する。直線901に示すように、給送した媒体数が増大していくと、給送ローラ113に付着する紙粉の量が増大していく。そのため、給送ローラ113と媒体の間でスリップが発生しやすくなり、媒体の搬送異常が発生しやすくなる。一方、給送ローラ113が清掃されると、給送ローラ113に付着していた紙粉が取り除かれる。そのため、点線902に示すように、給送ローラ113と媒体の間でのスリップの発生が抑制され、媒体の搬送異常の発生が抑制される。
【0103】
但し、給送した媒体数がある程度大きくなると、給送ローラ113が摩耗し、給送ローラ113の表面に形成された溝がすり減る。そのため、点線902に示すように、給送した媒体数がある程度大きくなると、給送ローラ113が清掃されているにも関わらず、スリップ率の移動平均値は指数関数的に増大し、給送ローラ113と媒体の間でスリップが発生しやすくなる。
【0104】
媒体搬送装置100は、利用者に給送ローラ113の交換指示を通知する前に、給送ローラ113の清掃指示を通知する。これにより、媒体搬送装置100は、給送ローラ113の摩耗でなく、給送ローラ113に付着した紙粉に起因する媒体の搬送異常によって給送ローラ113が交換されることを抑制し、交換部品の消費を抑制することが可能となる。
【0105】
また、媒体搬送装置100は、総数閾値として、スリップ率の移動平均値が指数関数的に増大する媒体数より小さい値を設定し、媒体搬送装置100が給送した媒体の総数が総数閾値未満である場合、利用者に給送ローラ113の交換指示を通知しない。これにより、媒体搬送装置100は、給送ローラ113の摩耗でなく、他の要因に起因する媒体の搬送異常によって給送ローラ113が交換されることを抑制し、交換部品の消費を抑制することが可能となる。
【0106】
また、媒体搬送装置100は、給送した媒体の総数が総数閾値である時点での、給送ローラ113を清掃していない場合のスリップ率の移動平均値と、給送ローラ113を清掃している場合のスリップ率の移動平均値との間にスリップ閾値を設定する。そして、媒体搬送装置100は、スリップ率の移動平均値がスリップ閾値以下である場合、利用者に給送ローラ113の清掃指示及び交換指示を通知しない。これにより、媒体搬送装置100は、給送ローラ113が清掃されているにも関わらず、利用者に各指示を通知することを抑制し、給送ローラ113の過剰な清掃又は交換を抑制することが可能となる。
【0107】
図10は、スリップ率の移動平均値の推移の一例を示すグラフである。
【0108】
図10のグラフ1000の横軸は媒体搬送装置100が給送した媒体数を示し、縦軸はスリップ率の移動平均値を示す。図10に示す例では、N1~N7番目に給送された媒体についてそれぞれ搬送異常が発生している。N1番目に給送された媒体とN2番目に給送された媒体との間に給送された媒体には移動平均値がスリップ閾値以下である媒体が含まれるため、図5のステップS107で正常フラグがONに設定される。したがって、N2番目に給送された媒体について搬送異常が発生したときには、図8のステップS206で正常フラグがONに設定されていると判定され、給送ローラ113の清掃指示は通知されない。
【0109】
また、N2番目に給送された媒体とN3番目に給送された媒体との間に給送された媒体数は媒体数閾値より大きい。したがって、N3番目に給送された媒体について搬送異常が発生したときには、図8のステップS205で媒体数が媒体数閾値より大きいと判定され、カウンタ値がリセットされ、給送ローラ113の清掃指示は通知されない。
【0110】
一方、N3番目に給送された媒体とN4番目に給送された媒体との間に給送された媒体には移動平均値がスリップ閾値以下である媒体が含まれず、且つ、その間に給送された媒体数は媒体数閾値以下である。したがって、N4番目に給送された媒体について搬送異常が発生したときには、図8のステップS207でカウンタ値が1に設定され、給送ローラ113の清掃指示が通知される。これにより、以後に給送される媒体について、スリップ率の移動平均値が低減する。
【0111】
また、N4番目に給送された媒体とN5番目に給送された媒体との間に給送された媒体数は媒体数閾値より大きい。したがって、N5番目に給送された媒体について搬送異常が発生したときには、図8のステップS205で媒体数が媒体数閾値より大きいと判定され、カウンタ値がリセットされ、給送ローラ113の交換指示は通知されない。
【0112】
一方、N5番目に給送された媒体とN6番目に給送された媒体との間に給送された媒体には移動平均値がスリップ閾値以下である媒体が含まれず、且つ、その間に給送された媒体数は媒体数閾値以下である。したがって、N6番目に給送された媒体について搬送異常が発生したときには、図8のステップS207でカウンタ値が1に設定され、給送ローラ113の清掃指示が通知される。これにより、以後に給送される媒体について、スリップ率の移動平均値が低減する。
【0113】
また、N6番目に給送された媒体とN7番目に給送された媒体との間に給送された媒体には移動平均値がスリップ閾値以下である媒体が含まれず、且つ、その間に給送された媒体数は媒体数閾値以下である。したがって、N7番目に給送された媒体について搬送異常が発生したときには、図8のステップS207でカウンタ値が2に設定され、給送ローラ113の交換指示が通知される。
【0114】
このように、媒体搬送装置100は、媒体の搬送異常が発生した場合でも、搬送異常の発生頻度が低い場合、又は、スリップ率の移動平均値が小さい場合には、利用者に警告を通知しない。これにより、媒体搬送装置100は、給送ローラ113の過剰な清掃又は交換を抑制することが可能となる。
【0115】
特に、媒体搬送装置100がスキャナである場合、給送される媒体には、アート紙、コート紙、マットコート紙、上質紙、中質紙等の様々な種類の用紙が含まれる。また、媒体搬送装置100は、利用者の用途に応じて、様々な設定(搬送速度)で媒体を給送及び搬送する。用紙の種類及び装置の設定によって、媒体の搬送異常の発生の度合いは変化する。媒体搬送装置100は、媒体の搬送異常の発生の度合い、及び/又は、スリップ率の移動平均値に基づいて、給送ローラ113が正常であるか否かを統計的に判定することにより、給送ローラ113が正常であるか否かを精度良く判定することができる。
【0116】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、媒体の搬送異常の発生度合いに基づいて、利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知する。これにより、媒体搬送装置100は、適切なタイミングで利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知することが可能となった。
【0117】
また、媒体搬送装置100は、給送ローラ113の過剰な清掃又は交換を抑制しつつ、媒体の搬送異常の発生を抑制することが可能となった。これにより、媒体搬送装置100は、利用者に媒体の再セット及び再給送させる手間を低減させること、及び、媒体の損傷の発生を抑制することが可能となった。
【0118】
なお、媒体搬送装置100は、給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知した際に、ピックローラ112及び/又はブレーキローラ114も給送ローラ113と同様に摩耗している又は汚れていると判定してもよい。その場合、媒体搬送装置100は、給送ローラ113の清掃指示又は交換指示とともに、ピックローラ112及び/又はブレーキローラ114の清掃指示又は交換指示を通知してもよい。
【0119】
図11は、他の実施形態に係る媒体搬送装置200内部の搬送経路を説明するための図である。
【0120】
図11に示すように、媒体搬送装置200は、媒体搬送装置100が有する各部を有する。但し、媒体搬送装置200は、エンコーダ115を有さず、代わりに第3媒体センサ221を有する。
【0121】
第3媒体センサ221は、媒体搬送方向A2において、第2媒体センサ116より下流側且つ第1搬送ローラ118a及び第1従動ローラ119aより上流側に配置される。第2媒体センサ116及び第3媒体センサ221は、媒体搬送方向A2において間隔を空けて配置された二つのセンサの一例である。第3媒体センサ221は、媒体搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられたミラー等の反射部材とを有する。発光器は、LED等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、反射部材により反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第3媒体信号を生成して出力する。
【0122】
第3媒体センサ221の位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により遮光される。そのため、第3媒体センサ221の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで第3媒体信号の信号値は変化する。これにより、第3媒体センサ221は、その位置に媒体が存在するか否かを検出して、給送された媒体を検出する。なお、第3媒体センサ221の発光器及び受光器は、搬送路を挟んで相互に対向する位置に設けられ、反射部材は省略されてもよい。また、第3媒体センサ221は、媒体が接触している場合、又は、媒体が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサ等により、媒体の存在を検出してもよい。
【0123】
媒体搬送装置200において、算出部152は、モータ131の駆動量と、給送ローラ113によって給送される媒体が第2媒体センサ116と第3媒体センサ221の間を通過する時間とに基づいて、スリップ率を算出する。即ち、図5のステップS104において、算出部152は、第2媒体センサ116及び第3媒体センサ221から、それぞれ第2媒体信号及び第3媒体信号を定期的に取得する。算出部152は、ステップS108の処理と同様にして、第2媒体信号及び第3媒体信号に基づいて、媒体の先端が第2媒体センサ116及び第3媒体センサ221の位置を通過したタイミングを検出する。
【0124】
算出部152は、媒体の先端が第2媒体センサ116の位置を通過してから第3媒体センサ221の位置を通過するまでの間に、制御部151がモータ131を駆動した駆動量(パルス数)を特定する。算出部152は、特定した駆動量(パルス数)と、1パルスあたりの給送ローラ113の外周面の移動距離とを乗算することにより、給送ローラ113の外周面の移動距離を算出する。また、算出部152は、第2媒体センサ116と第3媒体センサ221の間の距離を、給送される媒体の移動距離として算出する。算出部152は、給送ローラ113の外周面の移動距離と、給送される媒体の移動距離とに基づいて、以下の式(2)に従ってスリップ率を算出する。
(スリップ率)=1-(給送される媒体の移動距離)/(給送ローラ113の外周面の移動距離) (2)
【0125】
以上詳述したように、媒体搬送装置200は、モータ131の駆動量と、媒体が第2媒体センサ116と第3媒体センサ221の間を通過する時間とを用いる場合も、精度良く媒体のスリップ率を算出することが可能となった。したがって、媒体搬送装置200は、適切なタイミングで利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知することが可能となった。
【0126】
図12は、他の実施形態に係る媒体搬送装置の処理回路350の概略構成を示す図である。
【0127】
処理回路350は、媒体搬送装置100又は200の処理回路150の代わりに使用され、処理回路150の代わりに、媒体読取処理等を実行する。処理回路350は、制御回路351、算出回路352、判定回路353及び通知回路354等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0128】
制御回路351は、制御部の一例であり、制御部151と同様の機能を有する。制御回路351は、操作装置105から操作信号を、第1媒体センサ111から第1媒体信号を、第2媒体センサ116から第2媒体信号を受信する。制御回路351は、受信した各情報に基づいて各ローラを制御するようにモータ131を制御する。また、制御回路351は、撮像装置120から入力画像を取得し、インタフェース装置132に出力する。
【0129】
算出回路352は、算出部の一例であり、算出部152と同様の機能を有する。算出回路352は、エンコーダ115から距離信号を受信し、又は、第2媒体センサ116及び第3媒体センサ221から第2媒体信号及び第3媒体信号を受信する。算出回路352は、受信した信号に基づいて媒体のスリップ率及びスリップ率の移動平均値を算出し、算出結果を通知回路354に出力する。
【0130】
判定回路353は、判定部の一例であり、判定部153と同様の機能を有する。判定回路353は、第2媒体センサ116から第2媒体信号を受信し、又は、超音波センサ117から超音波信号を受信する。算出回路352は、受信した信号に基づいて媒体の搬送異常が発生したか否かを判定し、判定結果を通知回路354に出力する。
【0131】
通知回路354は、通知部の一例であり、通知部154と同様の機能を有する。通知回路354は、算出回路352から移動平均値の算出結果を、判定回路353から媒体の搬送異常の判定結果を受信する。通知回路354は、受信した各情報に基づいて、給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を、表示装置106に表示又はインタフェース装置132を介して情報処理装置に送信することにより、利用者に通知する。
【0132】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路350によって媒体読取処理を実行する場合も、適切なタイミングで利用者に給送ローラ113の清掃指示又は交換指示を通知することが可能となった。
【符号の説明】
【0133】
100 媒体搬送装置、113 給送ローラ、115 エンコーダ、116 第2媒体センサ、221 第3媒体センサ、131 モータ、140 記憶部、151 制御部、152 算出部、153 判定部、154 通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12