(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】液体水素用の可搬型荷役設備
(51)【国際特許分類】
B67D 9/00 20100101AFI20241031BHJP
【FI】
B67D9/00 A
(21)【出願番号】P 2020217762
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押部 貴子
(72)【発明者】
【氏名】大野 勉
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010095(WO,A1)
【文献】特開昭50-139421(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051768(WO,A1)
【文献】特開昭62-237199(JP,A)
【文献】特開2020-104830(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010082(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052374(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102730615(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 9/00- 9/02
B63B 27/30-27/34;25/08-25/16
B60P 3/00; 3/22
F17C 5/00- 5/06; 7/00- 7/04; 9/00- 9/04;13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸側低温タンクに貯留した液体水素を船側低温タンクに移送する液体水素用の可搬型荷役設備であって、
前記船側低温タンクから延びる船側液管の端部と接続可能な第1継手、および、前記陸側低温タンクから延びる陸側液管の端部と接続可能な第2継手を有する液体水素配管と、
前記液体水素配管に設けられた第1緊急離脱装置と、
前記船側低温タンクから延びる船側ガス管の端部と接続可能な第3継手を有する水素ガス配管と、
前記水素ガス配管に設けられた第2緊急離脱装置と、
一端が前記水素ガス配管に接続され、他端が大気開放されたベント配管と、
前記液体水素配管および前記水素ガス配管を支持するフレームと、
を備え
、
前記第1緊急離脱装置は、陸側の第1ユニットと、前記第1ユニットに分離可能に接続された船側の第2ユニットとを有し、
前記第2緊急離脱装置は、陸側の第3ユニットと、前記第3ユニットに分離可能に接続された船側の第4ユニットとを有し、
前記第1ユニットおよび前記第3ユニットが、前記第2ユニットおよび前記第4ユニットにそれぞれ接続された状態で前記フレームに支持されており、
前記可搬型荷役設備は、前記第1ユニット、前記第2ユニット、前記第3ユニットおよび前記第4ユニットの下方で、且つ、上面視で前記第1ユニット、前記第2ユニット、前記第3ユニットおよび前記第4ユニットに重なるように配置された液受け部を更に備える、液体水素用の可搬型荷役設備。
【請求項2】
前記可搬型荷役設備は、
前記フレームを支持する車体と、
前記車体に支持された走行駆動源と、を更に備えた走行車両であ
り、
前記液受け部は、前記車体に支持されている、請求項
1に記載の液体水素用の可搬型荷役設備。
【請求項3】
前記ベント配管に設けられた加温部を更に備える、請求項1
または2に記載の液体水素用の可搬型荷役設備。
【請求項4】
前記液体水素配管における前記第1緊急離脱装置と前記第1継手の間の少なくとも一部は、第1フレキシブルホース部により構成されており、
前記水素ガス配管における前記第2緊急離脱装置と前記第3継手の間の少なくとも一部は、第2フレキシブルホース部により構成されている、請求項3に記載の液体水素用の可搬型荷役設備。
【請求項5】
前記液体水素配管は、
前記フレームに固定された固定液管と、
前記第1フレキシブルホース部を含む第1ホースと、
前記第1緊急離脱装置、前記固定液管の端部に接続可能な第4継手、および、前記第1ホースの端部に接続可能な第5継手を含む第1緊急離脱ユニットと、を有し、
前記水素ガス配管は、
前記フレームに固定された固定ガス管と、
前記第2フレキシブルホース部を含む第2ホースと、
前記第2緊急離脱装置、前記固定ガス管の端部に接続可能な第6継手、および、前記第2ホースの端部に接続可能な第7継手を含む第2緊急離脱ユニットと、を有する、請求項4に記載の液体水素用の可搬型荷役設備。
【請求項6】
陸側低温タンクに貯留した液体水素を船側低温タンクに移送する液体水素用の可搬型荷役設備であって、
前記船側低温タンクから延びる船側液管の端部と接続可能な第1継手、および、前記陸側低温タンクから延びる陸側液管の端部と接続可能な第2継手を有する液体水素配管と、
前記液体水素配管に設けられた第1緊急離脱装置と、
前記船側低温タンクから延びる船側ガス管の端部と接続可能な第3継手を有する水素ガス配管と、
前記水素ガス配管に設けられた第2緊急離脱装置と、
一端が前記水素ガス配管に接続され、他端が大気開放されたベント配管と、
前記液体水素配管および前記水素ガス配管を支持するフレームと、を備え、
前記第1緊急離脱装置は、陸側の第1ユニットと、前記第1ユニットに分離可能に接続された船側の第2ユニットとを有し、
前記第2緊急離脱装置は、陸側の第3ユニットと、前記第3ユニットに分離可能に接続された船側の第4ユニットとを有し、
前記第1ユニットおよび前記第3ユニットが、前記第2ユニットおよび前記第4ユニットにそれぞれ接続された状態で前記フレームに支持されており、
前記液体水素配管における前記第1緊急離脱装置と前記第1継手の間の少なくとも一部は、第1フレキシブルホース部により構成されており、
前記水素ガス配管における前記第2緊急離脱装置と前記第3継手の間の少なくとも一部は、第2フレキシブルホース部により構成されており、
前記液体水素配管は、
前記フレームに固定された固定液管と、
前記第1フレキシブルホース部を含む第1ホースと、
前記第1緊急離脱装置、前記固定液管の端部に接続可能な第4継手、および、前記第1ホースの端部に接続可能な第5継手を含む第1緊急離脱ユニットと、を有し、
前記水素ガス配管は、
前記フレームに固定された固定ガス管と、
前記第2フレキシブルホース部を含む第2ホースと、
前記第2緊急離脱装置、前記固定ガス管の端部に接続可能な第6継手、および、前記第2ホースの端部に接続可能な第7継手を含む第2緊急離脱ユニットと、を有し、
前記フレームは、前記第1緊急離脱装置および前記第2緊急離脱装置の上方に位置するフレーム上部と、前記第1緊急離脱装置および前記第2緊急離脱装置の下方に位置するフレーム下部とを有し、
前記固定液管の端部および前記固定ガス管の端部は、前記フレーム下部より上方に配置され、
前記可搬型荷役設備は、前記固定液管の端部および前記固定ガス管の端部に接続可能な位置まで前記第1緊急離脱ユニットおよび前記第2緊急離脱ユニットを持ち上げる昇降装置を更に備える
、液体水素用の可搬型荷役設備。
【請求項7】
陸側低温タンクに貯留した液体水素を船側低温タンクに移送する液体水素用の可搬型荷役設備であって、
前記船側低温タンクから延びる船側液管の端部と接続可能な第1継手、および、前記陸側低温タンクから延びる陸側液管の端部と接続可能な第2継手を有する液体水素配管と、
前記液体水素配管に設けられた第1緊急離脱装置と、
前記船側低温タンクから延びる船側ガス管の端部と接続可能な第3継手を有する水素ガス配管と、
前記水素ガス配管に設けられた第2緊急離脱装置と、
一端が前記水素ガス配管に接続され、他端が大気開放されたベント配管と、
前記液体水素配管および前記水素ガス配管を支持するフレームと、を備え、
前記第1緊急離脱装置は、陸側の第1ユニットと、前記第1ユニットに分離可能に接続された船側の第2ユニットとを有し、
前記第2緊急離脱装置は、陸側の第3ユニットと、前記第3ユニットに分離可能に接続された船側の第4ユニットとを有し、
前記第1ユニットおよび前記第3ユニットが、前記第2ユニットおよび前記第4ユニットにそれぞれ接続された状態で前記フレームに支持されており、
前記第1緊急離脱装置は、前記第1ユニットから分離した前記第2ユニットが自重で落下するように配置され、
前記第2緊急離脱装置は、前記第3ユニットから分離した前記第4ユニットが自重で落下するように配置され、
前記可搬型荷役設備は、前記第2ユニットおよび前記第4ユニットの落下衝撃を緩和する衝撃緩和装置を更に備える
、液体水素用の可搬型荷役設備。
【請求項8】
陸側低温タンクに貯留した液体水素を船側低温タンクに移送する液体水素用の可搬型荷役設備であって、
前記船側低温タンクから延びる船側液管の端部と接続可能な第1継手、および、前記陸側低温タンクから延びる陸側液管の端部と接続可能な第2継手を有する液体水素配管と、
前記液体水素配管に設けられた第1緊急離脱装置と、
前記船側低温タンクから延びる船側ガス管の端部と接続可能な第3継手を有する水素ガス配管と、
前記水素ガス配管に設けられた第2緊急離脱装置と、
一端が前記水素ガス配管に接続され、他端が大気開放されたベント配管と、
前記液体水素配管および前記水素ガス配管を支持するフレームと、を備え、
前記第1緊急離脱装置は、陸側の第1ユニットと、前記第1ユニットに分離可能に接続された船側の第2ユニットとを有し、
前記第2緊急離脱装置は、陸側の第3ユニットと、前記第3ユニットに分離可能に接続された船側の第4ユニットとを有し、
前記第1ユニットおよび前記第3ユニットが、前記第2ユニットおよび前記第4ユニットにそれぞれ接続された状態で前記フレームに支持されており、
前記可搬型荷役設備は、前記第1ユニットから分離した前記第2ユニットと、前記第3ユニットから分離した前記第4ユニットとを支持するとともに、前記フレームに対する前記第2ユニットおよび前記第4ユニットの相対移動を可能にする移動装置を更に備える
、液体水素用の可搬型荷役設備。
【請求項9】
陸側低温タンクに貯留した液体水素を船側低温タンクに移送する液体水素用の可搬型荷役設備であって、
前記船側低温タンクから延びる船側液管の端部と接続可能な第1継手、および、前記陸側低温タンクから延びる陸側液管の端部と接続可能な第2継手を有する液体水素配管と、
前記液体水素配管に設けられた第1緊急離脱装置と、
前記船側低温タンクから延びる船側ガス管の端部と接続可能な第3継手を有する水素ガス配管と、
前記水素ガス配管に設けられた第2緊急離脱装置と、
一端が前記水素ガス配管に接続され、他端が大気開放されたベント配管と、
を備え、
前記液体水素配管における前記第2継手と前記第1緊急離脱装置の間の部分には、手動操作可能に構成された遮断弁が設けられており、
前記遮断弁は、前記ベント配管の放出口より下方であって、且つ上面視で前記放出口から水平方向に5m以上離れた位置に配置される
、液体水素用の可搬型荷役設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸側低温タンクから船側低温タンクへ液体水素を移送するための液体水素用の可搬型荷役設備に関する。
【背景技術】
【0002】
船側低温タンクと陸側低温タンクとの間で低温流体を荷役する設備として、特許文献1は、低温流体の荷役の際の地理的制約に係る自由度を向上すべく、陸側低温タンクと船側低温タンクとの間においてLNGを通流する流体通流管を有する移動体を開示している。
【0003】
この移動体は、ポンプを備えており、陸側低温タンクから吐出した液化低温流体を加圧して、流体通流管を通じて船側低温タンクに圧送する。また、この移動体は、流体通流管において船と荷役設備との間の流体の通流を遮断する緊急遮断弁と、緊急時に船と荷役設備とを切り離す緊急離脱装置とを備える。低温流体の荷役中に急な突風等に伴い船が移動する場合などに、緊急離脱装置を離脱させ、船と荷役設備とを分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液体水素を貯留する船側低温タンクでは、液体水素が気化した極低温の水素ガスが発生するが、このような船側低温タンク内の水素ガスを、船以外の設備から大気へ放出したいという要望がある。
【0006】
そこで本発明は、陸側低温タンクから船側低温タンクへ液体水素を荷役する間、船側低温タンク内で液体水素が気化した水素ガスを船以外の設備から大気へ放出することができる、液体水素用の可搬型荷役設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る液体水素用の可搬型荷役設備は、陸側低温タンクに貯留した液体水素を船側低温タンクに移送する液体水素用の可搬型荷役設備であって、前記船側低温タンクから延びる船側液管の端部と接続可能な第1継手、および、前記陸側低温タンクから延びる陸側液管の端部と接続可能な第2継手を有する液体水素配管と、前記液体水素配管に設けられた第1緊急離脱装置と、前記船側低温タンクから延びる船側ガス管の端部と接続可能な第3継手を有する水素ガス配管と、前記水素ガス配管に設けられた第2緊急離脱装置と、一端が前記水素ガス配管に接続され、他端が大気開放されたベント配管と、を備える。
【0008】
この構成によれば、陸側低温タンクから船側低温タンクへ液体水素を移送する間、船側低温タンク内で液体水素が気化した水素ガスを、船側ガス管、水素ガス配管およびベント配管を通じて大気へ放出できる。すなわち、船側低温タンク内で発生した水素ガスを可搬型荷役設備にて大気放出できる。また、液体水素配管および水素ガス配管にそれぞれ第1および第2緊急離脱装置が設けられているため、急な突風等に伴い船が移動する場合などに第1および第2緊急離脱装置をそれぞれ離脱させて、船と可搬型荷役設備とを分離することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、陸側低温タンクから船側低温タンクへ液体水素を荷役する間、船側低温タンク内で液体水素が気化した水素ガスを船以外の設備から大気へ放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る可搬型荷役設備が陸側低温タンクと船側低温タンクとに接続された状態を示す図である。
【
図2】(A)は、
図1に示す可搬型荷役設備の概略側面図あり、(B)は、
図1に示す可搬型荷役設備の概略平面図ある。
【
図3】
図1に示す液体水素移送システムの配管系統図である。
【
図4】
図1に示す可搬型荷役設備の緊急離脱システムを説明するための図であり、液体水素移送中における緊急離脱システムの状態を示す図である。
【
図5】固定液管およびホースとの接続を解除した状態の第1緊急離脱ユニットを拡大して示す図である。
【
図6】
図4に示す衝撃緩和装置および移動装置を拡大して示す図である。
【
図7】
図1に示す可搬型荷役設備の緊急離脱システムを説明するための図であり、第1緊急離脱装置が離脱した直後の緊急離脱システムの状態を示す図である。
【
図8】
図1に示す可搬型荷役設備の緊急離脱システムを説明するための図であり、第1緊急離脱装置が離脱した後に船が岸から離れる方向に移動したときの緊急離脱システムの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る可搬型荷役設備3が陸側低温タンク10と船側低温タンク20とに接続された状態を示す図である。本実施形態において、陸側低温タンク10は、タンクローリー1の一部を構成するタンクである。ただし、陸側低温タンク10は、走行車両などにより可搬されるタンクコンテナの一部を構成するタンクであってもよい。船側低温タンク20は、例えば船舶2に搭載された燃料タンクまたはカーゴタンクである。タンクローリー1、船舶2および可搬型荷役設備3により、陸側低温タンクから船側低温タンクへ液体水素を移送する液体水素移送システムが構成されている。
【0013】
可搬型荷役設備3は、陸側低温タンク10と船側低温タンク20のうちの一方のタンクから他方のタンクへ液体水素を移送する荷役設備である。本実施形態では、可搬型荷役設備3は、フレーム31と、フレーム31を支持する車体32と、車体32に支持され、車体32を支持する複数の車輪を駆動する走行駆動源を備える走行車両である。
【0014】
図2(A)は、
図1に示す可搬型荷役設備3の概略側面図あり、
図2(B)は、
図1に示す可搬型荷役設備3の概略平面図ある。フレーム31には、可搬型荷役設備3が備える各種機器や配管などが支持されるが、
図2(A)および2(B)では図面の簡単化のため、これら各種機器や配管を省略している。以下の説明における方向の概念は、便宜上、走行車両である可搬型荷役設備3の運転者を基準とする。つまり、可搬型荷役設備3の前、後、上、下、左、右は、車体32の前、後、上、下、左、右にそれぞれ一致するものとする。
【0015】
フレーム31は、可搬型荷役設備3が備える各種機器や配管などを支持する。例えばフレーム31は、後述の液体水素配管50および水素ガス配管60、より詳しくは固定液管51および固定ガス管61を支持する。フレーム31と、フレーム31に支持される各種機器や配管とが一体的に構成されているため、可搬型荷役設備3が備える各種機器や配管は、フレーム31ごと運搬することが可能となっている。
【0016】
フレーム31は、例えばコンテナフレームである。より詳しくは、フレーム31は、複数の延在部材を連結することにより、前後方向の長さが左右方向の長さおよび上下方向の長さよりも長い略直方体形状に形成された構造躯体である。例えば、フレーム31は、前後方向の長さが20フィート(約6m)である20フィートコンテナ用のコンテナフレームであってもよいし、40フィートコンテナ用のコンテナフレームであってもよい。
【0017】
フレーム31は、フレーム上部31aと、フレーム下部31bと、フレーム柱部31cとを含む。例えばフレーム上部31aは、互いに平行で且つ前後方向に延在する2本の前後方向延在部材と、これら2本の前後方向延在部材の前端部同士と後端部同士をそれぞれ連結する2本の左右方向延在部材を含む。例えばフレーム下部31bは、フレーム上部31aと略同形同大であり、2本の前後方向延在部材およびと2本の左右方向延在部材を含む。例えばフレーム柱部31cは、上下方向に延びてフレーム上部31aおよびフレーム下部31bをそれぞれ連結する複数の柱を含む。
【0018】
以下の説明において、フレーム31に囲まれた領域を、フレーム31の内部領域と称することとする。フレーム31の内部領域は、ベント配管配置領域41、ホース配置領域42、緊急離脱装置配置領域43、加温部配置領域44、ボンベ配置領域45、操作機器配置領域46を含む。ベント配管配置領域41、ホース配置領域42、緊急離脱装置配置領域43、加温部配置領域44、操作機器配置領域46は、この順に前から並んでいる。操作機器配置領域46がベント配管配置領域41からできるだけ離れるように、ベント配管配置領域41はフレーム31の内部領域の最も前側の部分に配置し、操作機器配置領域46はフレーム31の内部領域における最も後ろ側の部分に配置している。また、加温部配置領域44とボンベ配置領域45とは左右方向に並んでいる。フレーム31の内部領域に配置される各種機器や配管は、フレーム31に支持されている。
【0019】
また、緊急離脱装置配置領域43、加温部配置領域44、ボンベ配置領域45、操作機器配置領域46の下部近傍に、液受け部34が設けられている。各領域41~46に配置される機器や配管、および液受け部34について、詳細は後述する。
【0020】
図3は、
図1に示す液体水素移送システムの配管系統図である。なお、以下の説明では、便宜上、配管系統における陸側低温タンク10に近い側を「陸側」、配管系統における船側低温タンク20に近い側を「船側」と称することとする。
【0021】
タンクローリー1は、陸側低温タンク10と、陸側低温タンク10から延びる陸側液管11と、陸側低温タンク10から延びる陸側ガス管12とを備える。
【0022】
陸側液管11は、陸側低温タンク10の下部に接続されている。本実施形態では、陸側液管11は、液体水素を貯留した状態の陸側低温タンク10の液相部に接続されている。陸側液管11には、遮断弁11aが設けられている。また、陸側低温タンク10とは反対側の陸側液管11の端部には、継手11bが設けられている。
【0023】
陸側ガス管12は、陸側低温タンク10の上部に接続されている。本実施形態では、陸側ガス管12は、液体水素を貯留した状態の陸側低温タンク10の気相部に接続されている。陸側ガス管12には、ボイルオフガス閉止弁12aが設けられている。また、陸側低温タンク10とは反対側の陸側ガス管12の端部には、継手12bが設けられている。
【0024】
また、陸側液管11における遮断弁11aと継手11bとの間の部分と、陸側ガス管12におけるボイルオフガス閉止弁12aと継手12bとの間の部分とは、陸側接続配管13により接続されている。陸側接続配管13には、開閉弁13aが設けられている。陸側接続配管13は、後述のパージガス供給装置90によりパージガスを通すための流路を構成する。
【0025】
また、タンクローリー1は、還流配管14と、開閉弁15および蒸発器16を備える。還流配管14の上流端は、陸側低温タンク10の液相部に接続され、還流配管14の下流端は、陸側低温タンク10の気相部に接続されている。開閉弁15は、還流配管14に設けられており、蒸発器16は、還流配管14における開閉弁15と還流配管14の下流端との間の部分に設けられている。
【0026】
還流配管14、開閉弁15および蒸発器16は、自己加圧式圧送システムを構成する。この自己加圧式圧送システムは、陸側低温タンク10から還流配管14における蒸発器16より上流部分を通じて蒸発器16に導かれた液体水素を当該蒸発器16で気化し、気化した水素ガスを、還流配管14における蒸発器16の下流側部分を通じて陸側低温タンク10の気相部に戻す。こうして、船側低温タンク20の気相部のガス圧よりも陸側低温タンク10の気相部のガス圧を高くすることにより、陸側低温タンク10から船側低温タンク20へ液体水素を圧送する。
【0027】
船舶2は、船側低温タンク20と、船側低温タンク20から延びる船側液管21と、船側低温タンク20から延びる船側ガス管22とを備える。
【0028】
船側液管21は、船側低温タンク20の下部に接続されている。本実施形態では、船側液管21は、液体水素を貯留した状態の船側低温タンク20の液相部に接続されている。船側液管21には、遮断弁21aが設けられている。また、船側低温タンク20とは反対側の船側液管21の端部には、継手21bが設けられている。
【0029】
船側ガス管22は、船側低温タンク20の上部に接続されている。本実施形態では、船側ガス管22は、液体水素を貯留した状態の船側低温タンク20の気相部に接続されている。船側ガス管22には、ボイルオフガス閉止弁22aが設けられている。また、船側低温タンク20とは反対側の船側ガス管22の端部には、継手22bが設けられている。
【0030】
また、船側液管21における遮断弁21aと継手21bとの間の部分と、船側ガス管22におけるボイルオフガス閉止弁22aと継手22bとの間の部分とは、船側接続配管23により接続されている。船側接続配管23には、開閉弁23aが設けられている。船側接続配管23は、後述のパージガス供給装置90によりパージガスを通すための流路を構成する。
【0031】
可搬型荷役設備3は、液体水素配管50と水素ガス配管60とを備える。液体水素配管50および水素ガス配管60は、例えば周知の二重管構造であってもよいし、防熱材が巻かれた一重管構造であってもよい。液体水素配管50の一端は、陸側液管11の船側の端部と接続され、液体水素配管50の他端は、船側液管21の陸側の端部と接続されるように構成されている。また、水素ガス配管60の一端は、陸側ガス管12の船側の端部と接続され、水素ガス配管60の他端は、船側ガス管22の陸側の端部と接続されるように構成されている。
【0032】
液体水素配管50は、固定液管51、第1緊急離脱ユニット70、ホース52およびホース53を有する。ホース52は、本発明における第1ホースの一例である。
【0033】
固定液管51は、フレーム31に固定部材35により固定されている。固定液管51は、後述のフレキシブルホース部52c,53cに比べて剛性が高い配管である。固定液管51の両端には、それぞれ継手51a,51bが設けられている。
【0034】
第1緊急離脱ユニット70は、第1緊急離脱装置71と、第1配管72と、第2配管73とを有する。第1緊急離脱ユニット70は、緊急離脱装置配置領域43に配置されている。第1緊急離脱装置71は、陸側の第1ユニット71aと、船側の第2ユニット71bと、第1ユニット71aと第2ユニット71bとを互いに分離可能に接続するクランプ71cを有する。第1緊急離脱装置71は、オペレータの判断に応じて離脱させることができるよう、手動操作可能に構成されている。また、第1緊急離脱装置71は、離脱時に流体の漏洩を防止する遮断機能を備えている。具体的には、第1ユニット71aと第2ユニット71bとは、それぞれ内部に緊急遮断弁を有している。これら緊急遮断弁は、第1緊急離脱装置71に離脱動作させる場合に開状態から閉状態に切り換えられる。第1緊急離脱ユニット70は、可搬型荷役設備3の緊急離脱システムの一部を構成する。
【0035】
第1配管72の一端に、第1ユニット71aが設けられている。第1配管72の他端に、固定液管51の継手51aに接続可能な継手72aが設けられている。継手72aは、本発明の第4継手の一例である。第2配管73の一端に、第2ユニット71bが設けられている。第2配管73の他端に、継手73aが設けられている。継手73aは、本発明の第5継手の一例である。
【0036】
ホース52の少なくとも一部がフレキシブルホース部52cで構成されている。フレキシブルホース部52cは、本発明の第1フレキシブルホース部の一例である。ホース52の一端には、第2配管73の継手73aに接続可能な継手52aが設けられており、ホース52の他端には、船側液管21の継手21bに接続可能な継手52bが設けられている。継手52bは、本発明の第1継手の一例である。
【0037】
ホース53の少なくとも一部がフレキシブルホース部53cで構成されている。ホース53の一端には、固定液管51の継手51bに接続可能な継手53aが設けられており、ホース53の他端には、陸側液管11の継手11bに接続可能な継手53bが設けられている。継手53bは、本発明の第2継手の一例である。
【0038】
水素ガス配管60は、固定ガス管61、第2緊急離脱ユニット80、ホース62およびホース63を有する。ホース62は、本発明の第2ホースの一例である。
【0039】
固定ガス管61は、フレーム31に固定部材により固定されている。固定ガス管61は、後述のフレキシブルホース部62c,63cに比べて剛性が高い配管である。固定ガス管61の両端には、それぞれ継手61a,61bが設けられている。
【0040】
第2緊急離脱ユニット80は、第2緊急離脱装置81と、第3配管82と、第4配管83とを有する。第2緊急離脱ユニット80は、緊急離脱装置配置領域43に配置されている。第2緊急離脱装置81は、陸側の第3ユニット81aと、第3ユニット81aにクランプにより分離可能に接続された船側の第4ユニット81bとを有する。第2緊急離脱装置81は、オペレータの判断に応じて離脱させることができるよう、手動操作可能に構成されている。また、第2緊急離脱装置81は、離脱時に流体の漏洩を防止する遮断機能を備えている。具体的には、第3ユニット81aと第4ユニット81bとは、それぞれ内部に緊急遮断弁を有している。これら緊急遮断弁は、第2緊急離脱装置81に離脱動作させる場合に開状態から閉状態に切り換えられる。第2緊急離脱ユニット80は、可搬型荷役設備3の緊急離脱システムの一部を構成する。
【0041】
第3配管82の一端に、第3ユニット81aが設けられている。第3配管82の他端に、固定ガス管61の継手61aに接続可能な継手82aが設けられている。継手82aは、本発明の第6継手の一例である。第4配管83の一端に、第4ユニット81bが設けられている。第4配管83の他端に、継手83aが設けられている。継手83aは、本発明の第7継手の一例である。
【0042】
ホース62の少なくとも一部がフレキシブルホース部62cで構成されている。フレキシブルホース部62cは、本発明の第2フレキシブルホース部の一例である。ホース62の一端には、第4配管83の継手83aに接続可能な継手62aが設けられており、ホース62の他端には、船側ガス管22の継手22bに接続可能な継手62bが設けられている。継手62bは、本発明の第3継手の一例である。
【0043】
ホース63の少なくとも一部がフレキシブルホース部63cで構成されている。ホース63の一端には、固定ガス管61の継手61bに接続可能な継手63aが設けられており、ホース63の他端には、陸側ガス管12の継手12bに接続可能な継手63bが設けられている。
【0044】
これら固定液管51および固定ガス管61は、フレーム31に対して常に固定された状態にある。また、第1緊急離脱ユニット70および第2緊急離脱ユニット80は、メンテナンス時など以外は、固定液管51および固定ガス管61に接続されることによりフレーム31に対して固定された状態にある。一方、ホース52、ホース53、ホース62およびホース63は、例えば、荷役現場に移動するなど、可搬型荷役設備3の移動中には、それぞれ、第1緊急離脱ユニット70、固定液管51、第2緊急離脱ユニット80および固定ガス管61との接続が解除された状態となっている。例えばホース52、ホース53、ホース62およびホース63は、可搬型荷役設備3の移動中には、ホース配置領域42に配置されている。
【0045】
液体水素配管50における第1緊急離脱装置71と継手53bとの間の部分には、遮断弁54が設けられている。具体的には、遮断弁54は、固定液管51に設けられている。
【0046】
また、液体水素配管50における遮断弁54より陸側部分には、パージガス閉止弁55が設けられている。具体的には、パージガス閉止弁55は、固定液管51における遮断弁54と継手51bとの間の部分に設けられている。また、水素ガス配管60における固定ガス管61には、パージガス閉止弁64が設けられており、固定ガス管61におけるパージガス閉止弁64と継手61bとの間の部分には、パージガス閉止弁65が設けられている。
【0047】
遮断弁54およびパージガス閉止弁55,64,65は、オペレータによる手動での操作を受け付けるように構成された手動操作弁である。例えば、遮断弁54およびパージガス閉止弁55,64,65は、それぞれオペレータの操作を直接受ける操作レバーまたは操作ハンドルを有する。
【0048】
遮断弁54およびパージガス閉止弁55,64,65は、操作機器配置領域46に配置されている。より詳しくは、遮断弁54およびパージガス閉止弁55,64,65は、ベント配管100の放出口100aより下方であって、且つ上面視で放出口100aから水平方向に5m以上離れた位置に配置される。操作機器配置領域46をフレーム31の内部領域における最も後ろ側の部分に設けることで、遮断弁54およびパージガス閉止弁55,64,65に対してオペレータがアクセスしやすくなっている。
【0049】
可搬型荷役設備3は、液体水素配管50に窒素ガスと水素ガスとを選択的にパージガスとして供給可能に構成されたパージガス供給装置90を更に備える。具体的には、パージガス供給装置90は、窒素ガス供給源91と水素ガス供給源92とを含む。窒素ガス供給源91は、例えば窒素ガスボンベであり、窒素ガス供給源91から液体水素配管50に窒素ガスを供給する流路にはボンベ開閉弁91aが設けられている。水素ガス供給源92は、例えば水素ガスボンベであり、水素ガス供給源92から液体水素配管50に水素ガスを供給する流路にはボンベ開閉弁92aが設けられている。窒素ガス供給源91および水素ガス供給源92は、ボンベ配置領域45に配置されている。パージガス供給装置90は、液体水素配管50における遮断弁54とパージガス閉止弁55との間の部分に、パージガスとして窒素ガスおよび水素ガスのいずれかを供給する。なお、窒素ガス供給源91および水素ガス供給源92は、ボンベ配置領域45に配置されていなくてもよく、フレーム31の内部領域に配置されていなくてもよい。窒素ガス供給源91および水素ガス供給源92は、可搬型荷役設備3の外部に設置されてもよい。
【0050】
可搬型荷役設備3は、ベント配管100を更に備える。ベント配管100は、船側低温タンク20から導かれた水素ガスを大気へ放出する。また、ベント配管100は、パージガス供給装置90から液体水素配管50に供給されたパージガスを大気へ放出する。ベント配管100は、例えば周知の二重管構造であってもよいし、防熱材が巻かれた一重管構造であってもよい。ベント配管100の一端は、水素ガス配管60に接続されている。より詳しくは、ベント配管100の一端は、固定ガス管61におけるパージガス閉止弁64とパージガス閉止弁65との間の部分に接続されている。また、ベント配管100の他端には、大気開放された放出口100aが設けられている。
【0051】
ベント配管100は、ベント配管配置領域41に配置される。ベント配管100は、例えばフレーム31に固定部材により固定されている。ベント配管配置領域41に、ベント配管100の一部だけが配置されてもよい。例えば、ベント配管配置領域41に、ベント配管100の下部を支持する支持部が配置されてもよい。この場合、ベント配管100は、当該支持部から上方へと延び、放出口100aはフレーム上部31aの上方に配置されてもよい。この場合、例えば、ベント配管100は、固定ガス管61に対して着脱可能に構成されており、車体32の移動中は、固定ガス管61から外された状態でフレーム31または車体32に支持されていてもよい。
【0052】
ベント配管100には、ベント弁101が設けられている。ベント弁101は、ベント配管100が形成する流路を開閉する。また、ベント配管100における固定ガス管61との接続箇所とベント弁101との間の部分には、加温部102が設けられている。加温部102は、導かれた液体水素またはそれが気化した水素ガスを加温するように構成されている。加温部102は、加温部配置領域44に配置されている(
図2参照)。本実施形態では、加温部102は、外部の空気と内部の低温流体との間で熱交換することによって、内部の低温流体を加温するように蛇腹状に形成された管体として構成されている。なお、加温部102の構成はこれに限定されない。例えば、加温部102は、内部の低温流体と熱交換する冷媒として、例えば温水など空気以外の冷媒を用いてもよい。
【0053】
また、ベント配管100におけるベント弁101と放出口100aとの間には、逆流防止装置103が接続されている。逆流防止装置103は、大気が放出口100aからベント配管100内に流入することを防ぐ。逆流防止装置103は、窒素ガスボンベを含み、ベント配管100におけるベント弁101と放出口100aとの間に窒素ガスを供給するように構成されている。例えば、逆流防止装置103は、ベント弁101が開状態にあるときに、窒素ガスをベント配管100内に供給して、ベント配管100内が正圧となる状態を維持する。これにより、ベント配管100内が負圧になることで大気が放出口100aからベント配管100内に流入することを防ぐ。なお、逆流防止装置103の窒素ガスボンベは、ボンベ配置領域45に配置されてもよい。
【0054】
(緊急離脱システム)
可搬型荷役設備3は、緊急離脱システムを備える。緊急離脱システムの構成について、
図4~6を参照して説明する。なお、
図4および後述の
図7,8において、緊急離脱システムの説明に関与しない構成は省略している。また、水素ガス配管60および第2緊急離脱ユニット80は、それぞれ液体水素配管50および第1緊急離脱ユニット70とほぼ同じ構造である。このため、
図4~8において、液体水素配管50および第1緊急離脱ユニット70に関連する構成のみ示し、以下、液体水素配管50および第1緊急離脱ユニット70について説明し、水素ガス配管60および第2緊急離脱ユニット80については説明を省略する。
【0055】
図4は、
図1に示す可搬型荷役設備3の緊急離脱システムを説明するための図であり、液体水素移送中における緊急離脱システムの状態を示す図である。
図5は、固定液管51およびホース52との接続を解除した状態の第1緊急離脱ユニット70を拡大して示す図である。可搬型荷役設備3の緊急離脱システムは、第1緊急離脱ユニット70および第2緊急離脱ユニット80の他、昇降装置110、衝撃緩和装置120、移動装置130を備える。これら第1緊急離脱ユニット70、第2緊急離脱ユニット80、昇降装置110、衝撃緩和装置120、移動装置130は、緊急離脱装置配置領域43に配置されている。
【0056】
図4および5に示すように、第1緊急離脱装置71は、第1ユニット71aから分離した第2ユニット71bが自重で落下するように配置されている。
図4および5に示すように、固定液管51の継手51a近傍部分は、下方に向かって延びている。第1緊急離脱ユニット70は、第1ユニット71aが第2ユニット71bの上側に配置された状態で固定液管51に接続され支持される。
【0057】
昇降装置110は、固定液管51に対して第1緊急離脱ユニット70を接続したり、固定液管51から第1緊急離脱ユニット70を分離したりする際に用いられる。固定液管51に対して第1緊急離脱ユニット70を接続する際には、昇降装置110は、フレーム下部31bまたは路面の近傍位置から、固定液管51の継手51aに接続可能な位置まで第1緊急離脱ユニット70を持ち上げる。例えば昇降装置110は、フレーム下部31bまたは車体32に固定されている。例えば昇降装置110はウインチであり、昇降装置110は、フレーム上部31aから吊り下げられるように第1緊急離脱ユニット70を持ち上げる。
図5に示すように、第1ユニット71aには、昇降装置110のロープが接続される被接続部74を有する。昇降装置110はウインチでなくてもよくジャッキであってもよい。
【0058】
第1配管72は第1ユニット71aから上方に延びている。第2配管73は第2ユニット71bから下方に延び、U字状に湾曲している。第1配管72には、クランプ71cを支持するクランプ支持部75が固定されている。本実施形態では、クランプ支持部75は、第1配管72に固定された支持体75aと、支持体75aとクランプ71cとを連結するワイヤ75bとを含む。クランプ支持部75は、第1緊急離脱装置71が離脱動作した
【0059】
第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81の下方に、衝撃緩和装置120、移動装置130、液受け部34が配置されている。
図6は、
図4に示す衝撃緩和装置120および移動装置130を拡大して示す図である。衝撃緩和装置120は、第2ユニット71bおよび第4ユニット81bの落下衝撃を緩和する。衝撃緩和装置120は、ユニットサポート121、サポートガイド122および衝撃吸収部材123を含む。
【0060】
ユニットサポート121は、第1緊急離脱装置71が離脱動作した後に第2ユニット71bを支持する。サポートガイド122は、ユニットサポート121を上下方向にスライド可能にガイドする。例えば、ユニットサポート121は、少なくとも第1緊急離脱装置71が離脱動作した後に第2ユニット71bまたは第2配管73と当接する当接部121aと、当接部121aに固定された1以上の棒状のスライド部121bとを含み、サポートガイド122は、1以上の棒状のスライド部121bが挿通する、少なくとも上方に開口した1以上の孔を有する。サポートガイド122は、移動装置130に固定されている。また、ユニットサポート121は、第1緊急離脱装置71が離脱前および離脱後にホース52を下方から支持するホース支持部121cを有する。
【0061】
衝撃吸収部材123は、当接部121aを下方から支持し、弾性変形することで第2ユニット71bおよび第4ユニット81bの落下による衝撃を吸収する。衝撃吸収部材123は、例えばばねである。衝撃吸収部材123は、移動装置130に固定されている。
【0062】
移動装置130は、衝撃緩和装置120を移動可能に構成されている。移動装置130は、第1ユニット71aから分離した第2ユニット71bを、衝撃緩和装置120を介して支持する。また、移動装置130は、分離した第2ユニット71bのフレーム31に対する相対移動を可能にする。すなわち、分離した第2ユニット71bが船舶2の移動に伴ってホース52により引っ張られた場合でも、移動装置130により第2ユニット71bは船舶2に向かって水平方向にスムーズに移動可能となっている。
【0063】
本実施形態では、移動装置130は、少なくとも1つの台車である。
図4に示すように、液体水素を荷役している間、移動装置130を載置した載置面と路面との間には、それらを架け渡す、移動装置130が走行可能なスロープ131が配置される。移動装置130は、可搬型荷役設備3の移動中には所定のロック手段によりフレーム31に対して移動不能にロックされている。そして、可搬型荷役設備3を用いた液体水素の荷役を始めるとき、あるいは、第1緊急離脱装置71が離脱動作したときに、ロック手段によるロックが解除され、移動装置130はフレーム31に対して移動可能となる。
【0064】
なお、衝撃緩和装置120は、1つの構造体として構成されていてもよいし、互いに分離した複数の構造体により構成されていてもよい。また、移動装置130は、1つの構造体として構成されていてもよいし、互いに分離した複数の構造体により構成されていてもよい。例えば、移動装置130は、第2ユニット71bおよび第4ユニット81bの双方を支持する1つの台車であってもよいし、第2ユニット71bおよび第4ユニット81bをそれぞれ支持する2つの台車であってもよい。
【0065】
移動装置130は、液受け部34の上に配置されている。液受け部34は、第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81の近傍で生成され得る液体空気を受けるためのものである。すなわち、第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81は、離脱時に流体の漏洩を防止する遮断機能を備えているが、第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81の動作中に僅かに液体水素が漏洩する可能性がある。液体水素が漏洩すると、第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81近傍の空気が冷却されて、液体空気が生成される場合がある。このような場合でも、生成された液体空気を液受け部34が受けるため、可搬型荷役設備3を構成する他の部材や可搬型荷役設備3が設置された路面などが、液体空気によって損傷を受けることを防ぐことができる。液受け部34は、ステンレス製のパンまたはプレートである。液受け部34は、例えば車体32またはフレーム下部31bに支持される。
【0066】
(液体水素の移送方法)
次に、可搬型荷役設備3を用いた液体水素の移送方法について説明する。なお、以下に説明する移送方法は、陸側低温タンク10から船側低温タンク20に液体水素を移送するためのものである。
【0067】
まず可搬型荷役設備3を陸側低温タンク10および船側低温タンク20に連結する。具体的には、船舶2を港に停泊させ、タンクローリー1を船舶2の停泊位置近傍の陸上に配置する。また、可搬型荷役設備3をタンクローリー1近傍の陸上に配置する。そして、
図1に示すように、陸側低温タンク10と船側低温タンク20との間に可搬型荷役設備3を介在させる。
【0068】
すなわち、ホース52、ホース53、ホース62およびホース63を、ホース配置領域42から取り出す。そして、ホース52を第1緊急離脱ユニット70および船側液管21に接続し、ホース53を固定液管51および陸側液管11に接続し、ホース62を第2緊急離脱ユニット80および船側ガス管22に接続し、ホース63を固定ガス管61および陸側ガス管12に接続する。このように、走行車両である可搬型荷役設備3は、液体水素配管50をフレーム31に固定したまま、液体水素配管50を船側液管21および陸側液管11に接続可能で、かつ、水素ガス配管60をフレーム31に固定したまま、水素ガス配管60を船側ガス管22および陸側ガス管12に対して接続可能である。
【0069】
次に、配管内の空気を窒素ガスでパージする。具体的には、まず液体水素用の配管系統において、ボンベ開閉弁91a、パージガス閉止弁55、開閉弁13a、パージガス閉止弁65、ベント弁101を開状態とし、これら以外の弁を閉状態とし、その後、窒素ガス供給源91より窒素ガスの供給を行う。これにより、液体水素用の配管系統における窒素ガス供給源91およびベント配管100より陸側部分の配管内の空気をベント配管100より排出する。
【0070】
また、液体水素用の配管系統において、ボンベ開閉弁91a、遮断弁54、開閉弁23a、パージガス閉止弁64、ベント弁101を開状態とし、これら以外の弁を閉状態とし、その後、窒素ガス供給源91より窒素ガスの供給を行う。これにより、液体水素用の配管系統における窒素ガス供給源91およびベント配管100より船側部分の配管内の空気をベント配管100より排出する。
【0071】
次に、配管内の窒素ガスを水素ガスでパージする。具体的には、まず液体水素用の配管系統において、ボンベ開閉弁92a、パージガス閉止弁55、開閉弁13a、パージガス閉止弁65、ベント弁101を開状態とし、これら以外の弁を閉状態とし、その後、水素ガス供給源92より水素ガスの供給を行う。これにより、液体水素用の配管系統における水素ガス供給源92およびベント配管100より陸側部分の配管内の窒素ガスをベント配管100より排出する。
【0072】
また、液体水素用の配管系統において、ボンベ開閉弁92a、遮断弁54、開閉弁23a、パージガス閉止弁64、ベント弁101を開状態とし、これら以外の弁を閉状態とし、その後、水素ガス供給源92より水素ガスの供給を行う。これにより、液体水素用の配管系統における水素ガス供給源92およびベント配管100より船側部分の配管内の窒素ガスをベント配管100より排出する。
【0073】
次に、陸側低温タンク10から船側低温タンク20に液体水素を移送する。具体的には、まず液体水素用の配管系統において、遮断弁11a、パージガス閉止弁55、遮断弁54、遮断弁21a、ボイルオフガス閉止弁22a、パージガス閉止弁64、ベント弁101を開状態とし、これら以外の弁を閉状態とする。
【0074】
そして、開閉弁15を開き、陸側低温タンク10の液相部から還流配管14を通じて蒸発器16に液体水素を導き、導かれた液体水素を蒸発器16にて気化させる。蒸発器16で気化した水素ガスは、還流配管14を通じて陸側低温タンク10の気相部に戻される。こうして、陸側低温タンク10の気相部のガス圧を上昇させる。また、船側低温タンク20に液体水素を供給する間、船側ガス管22、水素ガス配管60、ベント配管100を通じて、船側低温タンク20内で液体水素が気化した水素ガスを排出可能となっている。このため、船側低温タンク20の気相部のガス圧に比べて陸側低温タンク10の気相部のガス圧を高くすることができ、陸側低温タンク10の気相部のガス圧により陸側低温タンク10から船側低温タンク20へ液体水素を圧送できる。
【0075】
(緊急離脱の流れ)
次に、可搬型荷役設備3の緊急離脱システムによる緊急離脱の流れについて、
図4,7,8を参照して説明する。
【0076】
図4に示すように、液体水素移送中、第1緊急離脱ユニット70は、第1ユニット71aが第2ユニット71bに接続された状態にある。第2緊急離脱ユニット80は、第3ユニット81aが第4ユニット81bに接続された状態にある。
【0077】
液体水素を移送している途中で強風、津波、地震などが発生した場合などの緊急事態が発生したとき、まず遮断弁11a、遮断弁54、遮断弁21aおよびボイルオフガス閉止弁22aを閉じる。その後、第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81の離脱動作を開始させる。これにより、
図7に示すように、第2ユニット71bおよび第4ユニット81bがそれぞれ自重で落下し、衝撃緩和装置120に支持される。
【0078】
その後、
図8に示すように、船舶2が岸から離れる方向に移動すると、ホース52,62に引っ張られて、第2ユニット71bおよび第4ユニット81bが移動装置130とともに船舶2の移動方向に移動する。なお、第1ユニット71aおよび第3ユニット81aは、それぞれ固定液管51および固定ガス管61に接続されたままとなっている。このため、適時に継手51a,72a同士の接続と継手61a,82a同士の接続とを解除し、昇降装置110により第1ユニット71aおよび第3ユニット81aを降ろす。
【0079】
以上に説明したように、本実施形態では、陸側低温タンク10から船側低温タンク20へ液体水素を移送する間、船側低温タンク20内で液体水素が気化した水素ガスを、船側ガス管22、水素ガス配管60およびベント配管100を通じて大気へ放出できる。すなわち、船側低温タンク20内で発生した水素ガスを可搬型荷役設備3にて大気放出できる。
【0080】
また、液体水素配管50および水素ガス配管60にそれぞれ第1および第2緊急離脱装置71,81が設けられているため、急な突風等に伴い船舶2が移動する場合などに第1および第2緊急離脱装置71,81をそれぞれ離脱させて、船舶2と可搬型荷役設備3とを分離することができる。
【0081】
さらに、船側低温タンク20から水素ガスを排出することで船側低温タンク20内の気相の圧力が抜けるため、陸側低温タンク10から船側低温タンク20へ少ない動力で液体水素を圧送できる。
【0082】
ところで、液体水素の沸点(約-253℃)は、窒素の沸点(約-196℃)や酸素の沸点(約-183℃)より低い。液体水素が気化した極低温の水素ガスがベント配管100から放出されると、水素ガスにより空気が冷却されて、液体空気が生成される場合がある。本実施形態では、ベント配管100に設けられた加温部102により、水素ガスを加温できるため、ベント配管100の放出口100a近傍で液体空気が生成されることを抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態では、液体水素の移送中、第1緊急離脱装置71の第1ユニット71aおよび第2緊急離脱装置81の第3ユニット81aが固定液管51および固定ガス管61を介してフレーム31に支持される。このため、これら緊急離脱装置71,81に関連する周辺設備をフレーム31の近傍に設置したり、フレーム31で支持したりできる。
【0084】
また、本実施形態では、第1および第2緊急離脱装置71,81の離脱動作時に、第1および第2緊急離脱装置71,81の近傍から落下した液体空気を液受け部34で受けることができる。このため、可搬型荷役設備3を構成する他の部材や可搬型荷役設備3が設置された路面などが、液体空気によって損傷を受けることを防ぐことができる。
【0085】
また、本実施形態では、第1緊急離脱ユニット70および第2緊急離脱ユニット80は、それぞれ固定液管51および固定ガス管61に対して着脱可能な構成となっている。このため、第1緊急離脱ユニット70および第2緊急離脱ユニット80を可搬型荷役設備3のフレーム31などの他の構成要素とは別に搬送できる。これにより、第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81のメンテナンスを容易に行うことができる。第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81の工場への搬送や、搬送先での第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81の点検・部品交換を容易に行うことができる。
【0086】
また、本実施形態では、昇降装置110により、第1緊急離脱ユニット70および第2緊急離脱ユニット80を、それぞれ、固定液管51の継手51aおよび固定ガス管61の継手61aに接続可能な位置まで持ち上げることができる。このため、第1緊急離脱ユニット70および第2緊急離脱ユニット80を、それぞれ固定液管51および固定ガス管61に接続する作業が容易になる。
【0087】
また、本実施形態では、衝撃緩和装置120が第2ユニット71bおよび第4ユニット81bの落下衝撃を緩和するため、第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81の離脱動作時に、落下衝撃によって第2ユニット71bおよび第4ユニット81bが破損することを抑制できる。
【0088】
また、本実施形態では、移動装置130により、分離した第2ユニット71bおよび第4ユニット81bが、これらを支持する支持面上で引きずられることを抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態では、遮断弁54が、ベント配管100の放出口100aより下方であって、且つ上面視で放出口100aから水平方向に5m以上離れた位置に配置されるため、オペレータが放出口100aから離れた位置で遮断弁54を操作できる。
【0090】
また、本実施形態では、可搬型荷役設備3が走行駆動源を備えた走行車両であるため、可搬型荷役設備3を所望の場所に自由に移動させることができる。
【0091】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0092】
例えば、配管系統において、配管の口径や剛性、配管に設けられる機器の位置、配管と配管との接続箇所は、上記実施形態で説明されたものに限定されない。
【0093】
また、上記実施形態では、フレーム31の内部領域を領域41~46のように定めたが、可搬型荷役設備3を構成する各種機器や配管の位置は、適宜変更可能である。
【0094】
また、上記実施形態では、液受け部34が、緊急離脱装置配置領域43、加温部配置領域44、操作機器配置領域46の下部近傍に設けられていたが、液受け部34は、緊急離脱装置配置領域43の下部近傍にのみ設けられてもよい。また、液受け部34は、緊急離脱装置配置領域43の下部近傍に加え、ベント配管配置領域41の下部近傍に設けられてもよい。
【0095】
上記実施形態では、第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81が、第1緊急離脱装置71は、第1ユニット71aから分離した第2ユニット71bおよび第3ユニット81aから分離した第4ユニット81bが自重で落下するように配置されていたが、第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81は、第1ユニット71aに接続した状態の第2ユニット71bおよび第3ユニット81aに接続した状態の第4ユニット81bが下方から支持されるように配置されてもよい。この場合、第1緊急離脱装置71および第2緊急離脱装置81の下方に衝撃緩和装置120を配置しなくてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、移動装置130は台車であったが、移動装置130は、駆動源をもたない搬送ベルトコンベアなどであってもよい。また、本発明の可搬型荷役設備は移動装置を備えなくてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、パージガス供給装置90が、液体水素配管50に窒素ガスと水素ガスとを選択的にパージガスとして供給可能に構成されていたが、パージガス供給装置90の構成はこれに限定されない。例えば、パージガス供給装置90は、空気をパージするパージガスとして、ヘリウムガスを液体水素配管50に供給可能に構成されていてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、遮断弁54およびパージガス閉止弁55,64,65が、オペレータの操作を直接受ける操作レバーまたは操作ハンドルを有した手動操作弁であったが、遮断弁54およびパージガス閉止弁55,64,65は、空圧式、油圧式、電動式の駆動弁であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、可搬型荷役設備3を用いた液体水素の移送方法として、陸側低温タンク10から船側低温タンク20に液体水素を移送する場合を例に説明したが、本発明は、船側低温タンク20から陸側低温タンク10に液体水素を移送するものにも適用可能である。
【0100】
また、上記実施形態で説明された第1緊急離脱ユニット70を固定液管51に対して脱着可能とする構成や、昇降装置110、衝撃緩和装置120、移動装置130は、水素ガス配管60、ベント配管100、および第2緊急離脱装置81などを備えない可搬型荷役設備にも適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
3 :可搬型荷役設備
10 :陸側低温タンク
11 :陸側液管
12 :陸側ガス管
20 :船側低温タンク
21 :船側液管
22 :船側ガス管
31 :フレーム
31a :フレーム上部
31b :フレーム下部
32 :車体
34 :液受け部
50 :液体水素配管
52 :ホース(第1ホース)
52b :継手(第1継手)
52c :フレキシブルホース部(第1フレキシブルホース部)
53b :継手(第2継手)
54 :遮断弁
60 :水素ガス配管
62 :ホース(第2ホース)
62b :継手(第3継手)
62c :フレキシブルホース部(第2フレキシブルホース部)
71 :第1緊急離脱装置
71a :第1ユニット
71b :第2ユニット
72a :継手(第4継手)
73a :継手(第5継手)
81 :第2緊急離脱装置
81a :第3ユニット
81b :第4ユニット
82a :継手(第6継手)
83a :継手(第7継手)
100 :ベント配管
100a :放出口
101 :ベント弁
102 :加温部
110 :昇降装置
120 :衝撃緩和装置
130 :移動装置